JP2009035946A - 柱状構造物の動揺防止構造、柱状構造物の設置システム及び柱状構造物の設置方法 - Google Patents

柱状構造物の動揺防止構造、柱状構造物の設置システム及び柱状構造物の設置方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡単な構造によって柱状構造物の動揺を防止できる柱状構造物の動揺防止構造を提供する。
【解決手段】柱状構造物1を設置する際に、流れによってこの柱状構造物1に生じる動揺を防ぐ柱状構造物の動揺防止構造Cである。
そして、この柱状構造物1は小判型断面を有するとともに、この柱状構造物1の軸方向に沿って、小判型断面の半円弧部11において、小判型断面の長径について線対称な位置に、一対の突出翼2,2が取付けられている。
【選択図】図1

Description

本発明は、流れの中において柱状構造物に生じる動揺を防止する柱状構造物の動揺防止構造と、この柱状構造物の動揺防止構造を備える柱状構造物の設置システムと、この柱状構造物の動揺防止構造を備える柱状構造物の設置方法と、に関する。
従来、海や川などにおいて、柱状構造物を曳航したり、流れの中で設置したりする場合、柱状構造物の左右で交互にカルマン渦が発生して、柱状構造物が左右に動揺することが問題となっている。
このように柱状構造物が動揺すると、曳航の際に抵抗が大きくなることや正確に設置できなくなることなどが問題となる。
この動揺を防止する方法として、例えば特許文献1に示す工法が知られている。この方法によれば、渦が発生する箇所にシートを取付けることで、渦が消去されるため、曳航の際の抵抗を軽減することができる。
また、特許文献2には、構造物に回転自在に設置された少なくとも2枚1組のブレードの角度を制御することで、ブレードに加わる風力を構造物の制振力として利用する構造物の振動制御方法が開示されている。
特開昭58−152692号公報 特開平2−120476号公報
しかしながら、上記した特許文献1,2の方法では、構造物の規模と比較して対策工の規模が大きくなってしまうという問題があった。
そこで、本発明は、簡単な構造によって柱状構造物の動揺を防止できる柱状構造物の動揺防止構造と、柱状構造物の設置システムと、柱状構造物の設置方法と、を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の柱状構造物の動揺防止構造は、柱状構造物を設置する際に、流れによって前記柱状構造物に生じる動揺を防ぐ柱状構造物の動揺防止構造であって、前記柱状構造物の側面に、前記柱状構造物の軸方向に沿って、一対の突出翼が取付けられることを特徴とする。
また、前記柱状構造物は小判型断面を有するとともに、該小判型断面の半円弧部において、該小判型断面の長径について線対称な位置に、前記一対の突出翼を取付けることができる。
さらに、前記一対の突出翼は、前記半円弧部の頂点から円周方向に30度〜60度の位置に取付けられることが好ましい。
そして、前記一対の突出翼の突出長は、前記小判型断面の短径の0.1倍〜0.2倍に形成されることが好ましい。
また、本発明の柱状構造物の設置システムは、上記したいずれかの柱状構造物の動揺防止構造をクレーン船によって水中に設置する柱状構造物の設置システムであって、前記柱状構造物の軸方向の上端を吊下げる吊下げワイヤと、前記柱状構造物の側面を交差するように逆方向に引っ張る一対の位置制御ワイヤと、を備えることを特徴とする。
さらに、本発明の柱状構造物の設置方法は、上記したいずれかの柱状構造物の動揺防止構造をクレーン船によって水中に設置する柱状構造物の設置方法であって、前記柱状構造物の軸方向の上端を吊下げワイヤによって吊下げ、前記柱状構造物の側面を一対の位置制御ワイヤによって交差するように逆方向に引っ張ることを特徴とする。
このように、本発明の柱状構造物の動揺防止構造は、流れによって柱状構造物に生じる動揺を防ぐ柱状構造物の動揺防止構造であって、前記柱状構造物の側面に、前記柱状構造物の軸方向に沿って、一対の突出翼が取付けられている。
そして、この一対の突出翼によってカルマン渦が分散して発生するようになるため、柱状構造物の動揺を防止することができる。
また、前記柱状構造物は小判型断面を有するとともに、該小判型断面の半円弧部において、該小判型断面の長径について線対称な位置に、前記一対の突出翼を取付けることで、流れによって柱状構造物に発生する抵抗を抑制しつつ、効率よく動揺を防止できる。
さらに、前記一対の突出翼は、前記半円弧部の頂点から円周方向に30度〜60度の位置に取付けられることで、高い動揺防止効果を得ることができる。
同様に、前記一対の突出翼の突出長は、前記小判型断面の短径の0.1倍〜0.2倍に形成されることで、高い動揺防止効果を得ることができる。
また、本発明の柱状構造物の設置システムは、上記したいずれかの柱状構造物の動揺防止構造をクレーン船によって水中に設置する柱状構造物の設置システムであって、前記柱状構造物の軸方向の上端を吊下げる吊下げワイヤと、前記柱状構造物の側面を交差するように逆方向に引っ張る一対の位置制御ワイヤと、を備えている。
したがって、柱状構造物に発生する動揺を防止しつつ、位置制御ワイヤによって位置を制御できるため、柱状構造物を正確に設置することができる。
さらに、本発明の柱状構造物の設置方法は、上記したいずれかの柱状構造物の動揺防止構造をクレーン船によって水中に設置する柱状構造物の設置方法であって、前記柱状構造物の軸方向の上端を吊下げワイヤによって吊下げ、前記柱状構造物の側面を一対の位置制御ワイヤによって交差するように逆方向に引っ張ることを特徴とする。
したがって、柱状構造物に発生する動揺を防止しつつ、位置制御ワイヤによって位置を制御できるため、柱状構造物を正確に設置することができる。
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図2を用いて本実施の形態の柱状構造物の動揺防止構造Cを設置する柱状構造物の設置システムSの全体的な構成を説明する。
本実施の形態の柱状構造物の設置システムSは、流れVのある海6に浮かべられたクレーン船3と、このクレーン船3によって吊下げられる柱状構造物の動揺防止構造Cと、を備えている。
そして、この柱状構造物の設置システムSによって、流れVを受けながら、柱状構造物の動揺防止構造Cを受架台4に設置する。
クレーン船3は、図2(b)の平面図に示すように、略長方形状の平面形状に形成された台船30に、クレーン船3の舵を操るための操舵室34と、クレーン部33と、が設置されている。
そして、この操舵室34とクレーン部33との間の台船30上には、広い平面スペースとして、重量物を載置することができるように作業台35が設けられている。
また、クレーン部33は、重量物を吊下げることができるように形成されたもので、作業員がクレーン部33を操作する操作室332と、アーム部331と、を備えている。
このアーム部331は、鋼材をトラス状に組み立てて形成されたもので、先端に吊下げワイヤ31が架け渡され、重量物を吊下げた際にはトラス構造によって荷重を支持することができる。
そして、クレーン船3の台船30には、クレーン部33の脇に、位置制御ワイヤ32,32を張ることができる位置制御ワイヤ掛止部36,36が形成されている。
この位置制御ワイヤ掛止部36,36は、台船30の隅角部近傍に設けられることによって、吊下げられた柱状構造物1に対して横方向に引っ張るための角度を大きくとることができるように形成される。
そして、クレーン部33のアーム部331の先端から垂下した吊下げワイヤ31は、柱状構造物1の上端14に取付けた掛止部(不図示)に掛けられて、柱状構造物1の重量を支えている。
さらに、左舷側の位置制御ワイヤ掛止部36に掛けられた位置制御ワイヤ32によって柱状構造物1の右舷側を引っ張り、右舷側の位置制御ワイヤ36に掛けられた位置制御ワイヤ32によって柱状構造物1の左舷側を引っ張ることで、柱状構造物1を左右に固定している。
そして、本実施の形態の柱状構造物の動揺防止構造Cは、図1に示すように、柱状構造物1と、この柱状構造物1の側面13に取付けられる一対の突出翼2,2と、を備えている。
この柱状構造物1は、金属板などによって中空の小判型断面に形成されるもので、中空の内部には支保工(不図示)などを備えているとともに、その側面13は半円弧部11と直線部12とに分けられている。
また、半円弧部11は、設置地点において流れVが卓越する方向に頂点11a(図3参照)を向けられ、中央の直線部12を挟んだ両側に対称に形成されている。
さらに、流れVの方向に対して下流側に形成される半円弧部11には、この柱状構造物1の軸方向に沿って、後述する一対の突出翼2,2が取付けられている。
なお、上記したような小判型断面の柱状構造物1として、例えば、沈埋函などの水中を横断する構造物のアクセスシャフトや、橋脚基礎などに用いるケーソンなどがある。
そして、本実施の形態の柱状構造物の動揺防止構造Cが備える一対の突出翼2,2は、金属や樹脂などによって長尺の略L字断面の部材として形成され、L字の短辺側の取付部21と、L字の長辺側の翼部22と、を備えている。
この取付部21は、図3に示すように、小判型断面の柱状構造物1の下流側の半円弧部11において、この小判型断面の長径18を対称軸として線対称な位置に、ボルト(不図示)などによって取付けられている。
なお、突出翼2,2は、取付部21を有しないものであっても、あらかじめ柱状構造物1に埋め込まれるものなど、どのように取付けられるものであってもよい。
また、翼部22は、半円弧部11から略垂直に突出するように、取付部21に対して略垂直に形成される。
そして、本実施の形態の突出翼2,2は、図3に示すように、半円弧部11の頂点11aから円周方向に45度の位置に取付けられている。
この突出翼2と半円弧部11の円弧中心と頂点11aとを線分によって結ぶことで形成される設置角θは、後述する模型実験によって、30度〜60度であれば、どのような角度であってもよいことが確認されている。
さらに、本実施の形態の突出翼2,2は、図3に示すように、半円弧部11からの突出長Wが、短径19の長さの0.2倍となるように調整されている。
この突出長Wは、後述する模型実験によって、小判型断面の短径19の0.1倍〜0.2倍であれば動揺防止効果を有することが確認されている。
次に、本実施の形態の柱状構造物の設置システムSを用いた柱状構造物1を、流れVのある海6において設置する方法について、図2を用いて説明する。
まず、陸上の製作ヤードにおいて、柱状構造物1を製作する。さらに、この柱状構造物1に、突出翼2,2を取付けておく。
そして、製作された柱状構造物1は、クレーン船3の作業台35に積み込まれ、作業台35に載置された状態で設置地点まで運搬される。
設置地点まで運搬された柱状構造物1は、上縁14の掛止部(不図示)にクレーン部33に架けられた吊下げワイヤ31が取付けられて、海6の中に吊下げられる。
同時に、柱状構造物1の流れVに沿った両側面には、位置制御ワイヤ32,32が掛けられて、流れVに対して左右に動揺しないように、それぞれが逆方向に引っ張られている。
次に、吊下げワイヤ31を伸ばして、柱状構造物1をさらに沈降させていく。この際、吊下げワイヤ31に合わせて、位置制御ワイヤ32,32も伸ばしながら沈降させていく。
ここにおいて、流れVに逆らうように海6の中に吊下げられた柱状構造物1には、下流側にカルマン渦が発生することが知られている。
このカルマン渦とは、流れVが柱状構造物1によって堰きとめられることで、柱状構造物1の後方の中央部で流れが遅くなり、両側で速くなるために発生する速度差によって2列の渦列が形成されるものである。
そして、この2列の渦列の周波数と柱状構造物1の固有振動数とがほぼ一致すれば、柱状構造物1の下流側で左右交互に発生する渦と共振して、流れと直交方向に大きな振動が発生することとなる。
しかしながら、本実施の形態では、後述する模型実験によって示したように、突出翼2,2によって2列の渦列が相互に離れて発生するようになるため、渦列と柱状構造物1とが共振して振動することはない。
このように、カルマン渦などによる動揺を防止しつつ、慎重に沈降させられた柱状構造物1の下端が、受架台4の上端に合わせられて固定されることで設置が完了する。
次に、本実施の形態の柱状構造物の動揺防止構造Cの突出翼2,2の設置角θと突出長Wとを求めた模型実験について、図4,5,6を用いて説明する。
まず、実験条件から説明する。この実験は、大成建設株式会社の技術センターの水理実験棟に設置された2次元長水槽で行われた。この2次元長水槽は、幅0.8(m)で長さが47.0(m)のものである。実験縮尺は、全て1/50とし、水深45.0(cm)(実機換算22.5(m))とした。
この模型実験では、図4に示すように、クレーン船3としてのクレーン船模型3Aによって吊下げられた柱状構造物1としてのアクセスシャフト模型1Aについて、突出翼2A,2Aを取付けた状態で動揺を計測した。
アクセスシャフト模型1Aは、実機に合わせて、厚さ0.4(mm)のステンレス製のものを用い、重量は1.568(kg)で重心位置が上端から32.0(cm)である。
また、アクセスシャフト模型1Aの軸方向の長さは52.0(cm)で、小判型断面の長径が17.2(cm)、短径が63.0(cm)である。したがって、半円弧の半径は31.5(cm)となり、直線部の長さは10.9(cm)となる。
さらに、クレーン船模型3Aには、吊下ウインチ54と位置制御ウインチ53,53とが取付けられて、それぞれ吊下げワイヤ31と位置制御ワイヤ32,32とが架け渡されている。
この吊下げワイヤ31はアクセスシャフト模型1Aを吊下げ、位置制御ワイヤ32,32は、アクセスシャフト模型1Aを横方向に引っ張って固定している。
そして、上記したクレーン船模型3Aに吊下げられたアクセスシャフト模型1Aに対して、流速29.1(cm/s)(実機換算4.0(kt))の流れVを作用させて、アクセスシャフト模型1Aの下端の動揺量を計測した。
なお、この他、細部の寸法(単位(mm))などは、図4に示したとおりであるから説明は省略する。
次に、実験結果について説明する。まず、突出翼2の設置角θを求めた実験結果について、図5を用いて説明する。
この実験では、上述した実験条件において、突出翼2の突出長Wを短径19の長さD(図3参照)で無次元化した無次元突出長W/DをW/D=0.08,0.16,0.24,0.32の4通りに固定したうえで、設置角θを変化させて、アクセスシャフト模型1Aの下端の動揺量dを計測した。
図5に示すように、突出長Wが短い無次元突出長W/D=0.08のケースでは、設置角θ=45°〜52.5°の範囲で無次元動揺量d/D=0.1以下の高い動揺防止効果が得られた。
また、ある程度、突出長が長い無次元突出長W/D=0.16以上のケースでは、動揺防止効果の得られる設置角の範囲が設置角θ=30°〜60°に拡大することが確認された。
次に、突出翼2の突出長Wを求めた実験結果について、図6を用いて説明する。
この実験では、上述した突出長Wを求めた実験において、4通りの無次元突出長W/Dのすべてにおいて高い動揺防止効果が得られた設置角θ=45°に固定したうえで、無次元突出長W/Dを変化させて、アクセスシャフト模型1Aの下端の動揺量dと発生する流体力Fxとを計測した。
図6に示すように、無次元突出長W/D=0.08以上で無次元動揺量がd/D=0.05程度に収束し、これ以上無次元突出長W/Dが大きくなっても動揺防止効果がなくなることはない。
ただし、無次元突出長W/D=0.20以上では、アクセスシャフト模型1Aの流下方向に作用する流体力Fxが急激に増大する。
以上のように、柱状構造物の動揺防止構造Cの突出長Wと設置角θについて、高い動揺低減効果が得られる有効範囲は、無次元突出長W/D=0.1〜0.2、設置角θ=30°〜60°であることが明らかとなった。
次に、本実施の形態の柱状構造物の動揺防止構造C及び柱状構造物の設置システムSの作用について説明する。
本実施の形態の柱状構造物の動揺防止構造Cは、図1に示すように、柱状構造物1の側面13に、柱状構造物の軸方向に沿って、一対の突出翼2,2が取付けられている。
したがって、この一対の突出翼2,2によってカルマン渦が分散して発生するようになるため、柱状構造物1の動揺を防止できる。
つまり、一般に、カルマン渦の周波数と柱状構造物1の固有振動数とがほぼ一致すれば、柱状構造物1の下流側で左右交互に発生する渦と共振して、流れVと直交する方向に大きな振動が発生することとなる。
しかし、本実施の形態では、突出翼2,2によって2列の渦列が相互に離れて発生するようになるため、渦列と柱状構造物1とが共振して振動することはない。
すなわち、突出翼2,2は、柱状構造物1の側面13に略垂直に突設されているため、この柱状構造物1に沿って流れる水を柱状構造物1の外側に離すように作用する。
そうすると、突出翼2,2の先端を離れた水は、柱状構造物1から外側に離れた状態で周囲の流れVによって下流側に流されるため、カルマン渦が発生した場合でも、2列の渦列は相互に離れて発生することとなる。
そして、このように2列の渦列が離れて発生した場合には、柱状構造物1の下流側の圧力変動が小さくなるため、柱状構造物1が交互に発生する渦に引っ張られるようにして振動することもなくなる。
また、柱状構造物1は小判型断面を有するとともに、この小判型断面の半円弧部11において、小判型断面の長径18について線対称な位置に、一対の突出翼2,2を取付けることで、流れVによって柱状構造物1に発生する抵抗を抑制しつつ、効率よく動揺を防止できる。
すなわち、小判型断面は、直線部12の両側に半円弧部11,11を備えているため、この半円弧部11,11によって流れVに対する抵抗を低減することができる。
つまり、半円弧部11を流れVに正対させた場合、正面の半円弧部11に沿って水が流れることで形状抵抗が小さくなることに加えて、反対側の半円弧部11に沿って水が流れることで下流側の流れVの乱れが少なくなるため、流れVに対する抵抗が減少することとなる。
さらに、一対の突出翼2,2は、半円弧部11の頂点11aから円周方向に設置角θ=30°〜60°の位置に取付けられることで、高い動揺防止効果を得ることができる。
このことは、模型実験における無次元突出長W/D=0.08のケースにおいて設置角θ=45°〜52.5°の範囲で無次元動揺量d/D=0.1以下となり、無次元突出長W/D=0.16以上の各ケースにおいて設置角θの範囲が設置角θ=30°〜60°に拡大することによって明らかである。
つまり、図5の無次元突出長W/D=0.08以外の各ケースにおいて、無次元動揺量d/Dはいずれもほぼ同じ変化傾向を示していることや、図6において無次元突出長W/D=0.08付近に無次元動揺量d/Dの変曲点があることから考えて、無次元突出長W/D=0.08のケースは特異なケースであると考えられる。
そうすると、図5において仮に無次元突出長W/D=0.10のケースがあったとすれば、無次元突出長W/D=0.16のケースとほぼ同等の傾向を示すと考えられる。したがって、無次元突出長がW/D=0.10〜0.20の範囲にあったとすれば、θ=30°〜60°で動揺低減効果が大きいといえる。
ただし、無次元突出長W/D=0.08の場合などの突出長Wが短い場合にも対応することができるように、θ=45°〜52.5°とすることがより好ましい。
同様に、一対の突出翼2,2の突出長Wは、小判型断面の短径19の長さDの0.1倍〜0.2倍に形成されることで、高い動揺防止効果を得ることができる。
このことは、模型実験における無次元突出長W/D=0.08以上では無次元動揺量がd/D=0.05程度に収束することや、無次元突出長W/D=0.20以上ではアクセスシャフト模型1Aの流下方向に作用する流体力Fxが急激に増大することによって明らかである。
すなわち、無次元動揺量d/Dのみに着目すれば、無次元突出長W/D=0.08以上で効果が大きいといえるが、流体力FxがW/D=0.20以上で急激に増大するため、位置制御ワイヤ32,32の耐力を考慮すると、無次元突出長W/D=0.08〜0.20が適切な範囲と考えられる。
加えて、上記したように、無次元突出長W/D=0.08のケースが特異なケースである可能性を考慮すると、無次元突出長W/D=0.10〜0.20が高い動揺防止効果を得ることができる範囲であると考えられる。
また、本発明の柱状構造物の設置システムSは、上記したいずれかの柱状構造物の動揺防止構造Cを、クレーン船3によって設置する柱状構造物の設置システムSであって、柱状構造物1の軸方向の上縁14を吊下げワイヤ31によって吊下げるとともに、柱状構造物1の流れVに沿う側面12を一対の位置制御ワイヤ32,32によって交差するように逆方向に引っ張っている。
したがって、柱状構造物1に発生する動揺を防止しつつ、位置制御ワイヤ32,32によって柱状構造物1の水平方向の位置を制御できるため、柱状構造物1を正確に設置することができる。
つまり、上記したような突出翼2,2を備えることによって、柱状構造物1の流れVに直交する方向の動揺を防止したうえで、位置制御ワイヤ32,32によって柱状構造物1を流れVと直交する方向に固定すれば、柱状構造物1の流れVに直交する方向の動揺を、ほぼ完全に防止することができる。
ここにおいて、この位置制御ワイヤ32,32は、クレーン船3の隅角部近傍に設置された位置制御ワイヤ掛止部36,36に掛けられたうえで、クロスされて柱状構造物1の反対側の側面13を引っ張っている。
したがって、流れVに直交する方向の角度を大きくとった状態で、柱状構造物1を引っ張ることができるため、流れVに直交する方向に位置制御ワイヤ32,32の張力を効率よく伝達することができる。
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、本実施の形態では、柱状構造物1が小判型断面を有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、円形断面や楕円形断面や長方形断面など、どのような断面の柱状構造物にも適用することができる。
また、本実施の形態では、突出翼を半円弧部の頂点から円周方向に設置角θ=45°の位置に取付ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、設置角θ=30°〜60°の範囲であれば、どのような設置角に取付けるものであってもよい。
さらに、本実施の形態では、柱状構造物1をクレーン船3によって設置する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、陸地に近い場合などにおいて、陸上のクレーンを用いて設置するものであってもよい。
そして、本実施の形態では、柱状構造物1として、沈埋函のアクセスシャフトを流れVの中で設置する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、流れのない水域において柱状構造物1を曳航する場合など、柱状構造物1をこれと相対的に移動する流体中におく場合であれば、どのような場合にも適用することができる。
本発明の最良の実施の形態の柱状構造物の動揺防止構造の構成を説明する斜視図である。 本発明の最良の実施の形態の柱状構造物の設置システムの全体構成を説明する説明図である。(a)は側面図であり、(b)は平面図である。 本発明の最良の実施の形態の柱状構造物の動揺防止構造の突出翼の設置角と突出長とを説明する断面図である。 本発明の最良の実施の形態の柱状構造物の動揺防止構造の突出翼の設置角と突出長とを求める実験の条件を説明する説明図である。(a)は側面図であり、(b)は平面図である。 本発明の最良の実施の形態の柱状構造物の動揺防止構造の突出翼の設置角を求める実験の結果を説明するグラフである。 本発明の最良の実施の形態の柱状構造物の動揺防止構造の突出翼の突出長を求める実験の結果を説明するグラフである。
符号の説明
S 柱状構造物の設置システム
C 柱状構造物の動揺防止構造
θ 設置角
W 突出長
D 短径の長さ
d 動揺量
1 柱状構造物
11 半円弧部
11a 頂点
13 側面
14 上縁
18 長径
19 短径
2 突出翼
3 クレーン船
31 吊下げワイヤ
32 位置制御ワイヤ

Claims (6)

  1. 柱状構造物を設置する際に、流れによって前記柱状構造物に生じる動揺を防ぐ柱状構造物の動揺防止構造であって、
    前記柱状構造物の側面に、前記柱状構造物の軸方向に沿って、一対の突出翼が取付けられることを特徴とする柱状構造物の動揺防止構造。
  2. 前記柱状構造物は小判型断面を有するとともに、
    該小判型断面の半円弧部において、該小判型断面の長径について線対称な位置に、前記一対の突出翼が取付けられることを特徴とする請求項1に記載の柱状構造物の動揺防止構造。
  3. 前記一対の突出翼は、前記半円弧部の頂点から円周方向に30度〜60度の位置に取付けられることを特徴とする請求項2に記載の柱状構造物の動揺防止構造。
  4. 前記一対の突出翼の突出長は、前記小判型断面の短径の0.1倍〜0.2倍に形成されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の柱状構造物の動揺防止構造。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の柱状構造物の動揺防止構造を、クレーン船によって水中に設置する柱状構造物の設置システムであって、
    前記柱状構造物の軸方向の上端を吊下げる吊下げワイヤと、前記柱状構造物の側面を交差するように逆方向に引っ張る一対の位置制御ワイヤと、を備えることを特徴とする柱状構造物の設置システム。
  6. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の柱状構造物の動揺防止構造を、クレーン船によって水中に設置する柱状構造物の設置方法であって、
    前記柱状構造物の軸方向の上端を吊下げワイヤによって吊下げ、前記柱状構造物の側面を一対の位置制御ワイヤによって交差するように逆方向に引っ張ることを特徴とする柱状構造物の設置方法。
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