JP2009035667A - 湿式摩擦係合装置用摺動部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、従来の湿式摩擦係合装置用摺動部材と比較して、プレートが充分に大きな摩擦係数を有しながらもこのプレートの相手材の摩耗量を顕著に低減した湿式摩擦係合装置用摺動部材を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、摺動面に非晶質炭素膜を施したプレートと、前記摺動面に接するように配置される炭素系摩擦材との組み合わせからなる湿式摩擦係合装置用摺動部材であって、前記非晶質炭素膜のマルテンス硬度が5000N/mm2以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、摺動面に非晶質炭素膜を施したプレートと、前記摺動面に接するように配置される炭素系摩擦材との組み合わせからなる湿式摩擦係合装置用摺動部材であって、前記非晶質炭素膜のマルテンス硬度が5000N/mm2以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、例えば、自動車用変速機の変速クラッチや、ブレーキクラッチ、ロックアップクラッチ等の湿式摩擦係合装置に使用される湿式摩擦係合装置用摺動部材に関する。
自動車用変速機の変速クラッチに代表される湿式摩擦係合装置は、一般に、鉄系材料で形成されたプレートと、鋼板にペーパ系摩擦材を貼り付けたディスクとの組からなる摺動部材を備えている。ちなみに、ペーパ系摩擦材としては、例えば、セルロース繊維、アラミド樹脂繊維等の繊維成分と、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂(バインダ)と、珪藻土、ガラス等のセラミック粉末(摩擦調整材)とを含むものが知られている。
このような湿式摩擦係合装置では、その軽量化およびコンパクト化を図るためにトルク容量の向上が望まれている。
このような湿式摩擦係合装置では、その軽量化およびコンパクト化を図るためにトルク容量の向上が望まれている。
従来、湿式摩擦係合装置のプレートとしては、ペーパ系摩擦材(ディスク)との摺動面に、熱処理、浸炭窒化処理等を施したものや、摺動面に、カニゼンめっき、CrN膜、TiC膜、TiN膜、SiCセラミック膜、非晶質炭素(DLC)膜等を形成したものが知られている。このように摺動面に表面加工が施されたプレートは、湿式条件下でペーパ系摩擦材に対する摩擦係数を増大させることから湿式摩擦係合装置のトルク容量を向上させることができる。中でも、非晶質炭素膜を形成したプレートは、ペーパ系摩擦材に対する摩擦係数が大きく、しかもプレート自体の耐摩耗性も向上することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−225762号公報
しかしながら、摺動面に表面加工が施されたプレートは、ディスクに対する攻撃性が高くなる場合がある。つまり、プレートの相手材となる前記ペーパ系摩擦材の摩耗量が増大してしまう。
また、一般に、潤滑油の湿式条件化で使用される摺動部材は、プレートとディスクとの間に潤滑油の境界膜が形成される。特に、潤滑油の保持量が多くなるペーパ系摩擦材を有するディスクを使用した場合には、境界膜が積極的に形成させるために、充分に大きな摩擦係数を得ることができないこととなる。
また、一般に、潤滑油の湿式条件化で使用される摺動部材は、プレートとディスクとの間に潤滑油の境界膜が形成される。特に、潤滑油の保持量が多くなるペーパ系摩擦材を有するディスクを使用した場合には、境界膜が積極的に形成させるために、充分に大きな摩擦係数を得ることができないこととなる。
本発明は、従来の湿式摩擦係合装置用摺動部材と比較して、プレートが充分に大きな摩擦係数を有しながらもこのプレートの相手材の摩耗量を顕著に低減した湿式摩擦係合装置用摺動部材を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための発明は、摺動面に非晶質炭素膜を施したプレートと、前記摺動面に接するように配置される炭素系摩擦材との組み合わせからなる湿式摩擦係合装置用摺動部材であって、前記非晶質炭素膜のマルテンス硬度が5000N/mm2以上であることを特徴とする。
このような湿式摩擦係合装置用摺動部材においては、前記非晶質炭素膜の水素含有率が、35原子%以下であることが望ましい。
また、このような湿式摩擦係合装置用摺動部材においては、前記炭素系摩擦材が、気孔率20〜60%である多孔質炭素繊維複合材からなるものが望ましい。
このような湿式摩擦係合装置用摺動部材においては、前記非晶質炭素膜の水素含有率が、35原子%以下であることが望ましい。
また、このような湿式摩擦係合装置用摺動部材においては、前記炭素系摩擦材が、気孔率20〜60%である多孔質炭素繊維複合材からなるものが望ましい。
本発明によれば、プレートが充分に大きな摩擦係数を有しながらもこのプレートの相手材の摩耗量を顕著に低減した湿式摩擦係合装置用摺動部材を提供することができる。
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、実施形態に係る湿式摩擦係合装置用摺動部材が組み込まれた湿式多板クラッチの断面図である。図2は、湿式摩擦係合装置用摺動部材の斜視図である。
本実施形態に係る湿式摩擦係合装置用摺動部材(以下、単に「摺動部材」ということがある)を説明するに先立って、まず、この摺動部材が組み込まれた湿式摩擦係合装置としての湿式多板クラッチについて説明する。
(湿式多板クラッチ)
図1に示すように、本実施形態での湿式多板クラッチ1は、プレート4とディスク5とをそれぞれ複数備えた公知の構造を有するものである。なお、プレート4とディスク5とは、後記する摺動部材10を構成している。
図1に示すように、本実施形態での湿式多板クラッチ1は、プレート4とディスク5とをそれぞれ複数備えた公知の構造を有するものである。なお、プレート4とディスク5とは、後記する摺動部材10を構成している。
この湿式多板クラッチ1では、シャフト30が回転することによってクラッチドラム2が中心軸周りに回転すると、クラッチドラム2の内周面にスプライン嵌合しているプレート4とリテーニングプレート4aとが回転する。その一方で、シャフト30に形成された流路31を介して潤滑油(ATF:オートマティックトランスミッションフルード)が油圧室9b内に輸送されると、その油圧によってクラッチピストン9は、スプリング9aの付勢力に抗してハブ3側に向かって移動する。そして、クラッチピストン9が、クラッチドラム2の受け止め部6との間にプレート4、ディスク5及びリテーニングプレート4aを挟み込む。その結果、ディスク5は、回転するプレート4と接触して、ディスク5とスプライン嵌合しているハブ3をクラッチドラム2の中心軸周りに回転させる。つまり、この湿式多板クラッチ1では、シャフト30の回転力がハブ3側に伝達される際に、プレート4は、ディスク5に対して摺動することとなる。
(摺動部材)
本実施形態での摺動部材10は、前記したように、ディスク5とプレート4とで構成されている。
図2に示すように、ディスク5は、環状の板部材であって、ハブ3(図1参照)の外周面にスプライン嵌合可能なように、その内周面に歯T1(内歯)が形成されている。このディスク5は、多孔質炭素繊維複合材5aで形成されている。この多孔質炭素繊維複合材5aは、特許請求の範囲にいう「炭素系摩擦材」に相当する。
本実施形態での摺動部材10は、前記したように、ディスク5とプレート4とで構成されている。
図2に示すように、ディスク5は、環状の板部材であって、ハブ3(図1参照)の外周面にスプライン嵌合可能なように、その内周面に歯T1(内歯)が形成されている。このディスク5は、多孔質炭素繊維複合材5aで形成されている。この多孔質炭素繊維複合材5aは、特許請求の範囲にいう「炭素系摩擦材」に相当する。
多孔質炭素繊維複合材5aは、炭素繊維と、この炭素繊維同士を接合するマトリックスとで主に構成されている。この多孔質炭素繊維複合材5aは、マトリックスで接合された炭素繊維11同士の隙間で形成された粗大気孔(孔径4〜60μm)と、マトリックスに形成された微細気孔(孔径3.5〜100nm)とを備えている。ちなみに、微細気孔は、多孔質炭素繊維複合材5aの製造工程(後記する焼成工程)において、マトリックスから揮発成分や分解ガスが発生することによって形成されたものである。
粗大気孔および微細気孔の合計の気孔率は、20〜60%が好ましい。なお、気孔率が20%を下回ると潤滑油で形成される境界膜の排除性が不充分となって、初期の摩擦係数を示さない場合がある。また、気孔率が60%を上回ると、前記した境界膜の排除性が高まり過ぎて、ディスク5とプレート4との接続時や摺動時に接続ショックやジャダー等を生じる場合がある。ちなみに、気孔率は、公知の方法で測定することができ、例えば、水銀ポロシメータを使用して測定することができる。
このような多孔質炭素繊維複合材5aとしては、例えば、特開2006−160768号公報に記載されたものを好適に使用することができる。
このような多孔質炭素繊維複合材5aとしては、例えば、特開2006−160768号公報に記載されたものを好適に使用することができる。
以上のような多孔質炭素繊維複合材5aは、樹脂を含ませた炭素繊維をホットプレスで加圧しながら加熱することによって成形し、その後、焼成工程を経て製造される。
炭素繊維としては、例えば、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等が挙げられる。なお、炭素繊維の繊維長さ及び繊維径は特に限定されるものではない。
樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
炭素繊維としては、例えば、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等が挙げられる。なお、炭素繊維の繊維長さ及び繊維径は特に限定されるものではない。
樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
炭素繊維に対する樹脂の配合比は、製造しようとする多孔質炭素繊維複合材5aの粗大気孔の径の大きさに応じて適宜に調節することができる。そして、焼成は、300〜800℃で30分〜2時間程度行うことが望ましい。
そして、本実施形態に係るディスク5は、このようにして得られた多孔質炭素繊維複合材5aを、図2に示す形状に切削加工することによって製造することができる。
前記プレート4は、図2に示すように、環状の板部材であって、クラッチドラム2(図1参照)の内周面にスプライン嵌合可能なように、その外周面に歯T2(外歯)が形成されている。このプレート4は、後記する非晶質炭素膜Dを基板4bに形成したものである。なお、非晶質炭素膜Dは、ディスク5と接触する側の面(ここでは両面)に形成されている。
基板4bとしては、公知のものを使用することができ、例えば、金属系、およびセラミック系のものが挙げられる。金属系の基板5bとしては、例えば、鉄、SUS440C、S45C等の鉄系合金、A2000等のアルミニウム合金が挙げられる。セラミック系の基板5bとしては、窒化ケイ素、アルミナ等が挙げられる。中でも、冷間圧延鋼板が好ましい。
次に、非晶質炭素膜Dについて説明する。本実施形態での非晶質炭素膜Dは、そのマルテンス硬度が5000N/mm2以上のものが好ましい。なお、マルテンス硬度が5000N/mm2未満の非晶質炭素膜Dは、相手材の多孔質炭素繊維複合材5aと摺接することによって摩耗する場合がある。ちなみに、このマルテンス硬度は、ISO14577に準拠して測定することができる。
また、非晶質炭素膜Dは、水素含有率が35原子%以下であるものが好ましい。なお、水素含有率が35原子%を超える非晶質炭素膜Dは、硬度が低下して相手材の多孔質炭素繊維複合材5aと摺接することによって摩耗する場合がある。ちなみに、この水素含有率は、弾性反跳検出法(ERDA:Elastic Recoil Detection Analysis)等の公知の方法で測定することができる。
このような非晶質炭素膜Dは、基板4bを配置した反応室内に炭素原料を導入するとともに、この炭素原料を励起させることによって基板4bに蒸着させることができる。蒸着方法としては、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオン化蒸着法等が挙げられる。
炭素原料としては、例えば、メタン、エチレン、ベンゼン等が挙げられる。
ちなみに、基板4bに形成する非晶質炭素膜Dの厚さは、3μm程度でよい。
炭素原料としては、例えば、メタン、エチレン、ベンゼン等が挙げられる。
ちなみに、基板4bに形成する非晶質炭素膜Dの厚さは、3μm程度でよい。
以上のような摺動部材10は、プレート4に非晶質炭素膜Dが形成されていることからプレート4が充分に大きい摩擦係数を有しながらもプレート4の相手材であるディスク5(多孔質炭素繊維複合材5a)に対する攻撃性を顕著に低減することができる。そして、多孔質炭素繊維複合材5aは、従来のペーパ系摩擦材と比較して、耐摩耗性に優れる。つまり、このようなプレート4とディスク5とで構成される摺動部材10によれば、多孔質炭素繊維複合材5aの摩耗量を少なくすることができる。その結果、摺動部材10は、湿式多板クラッチ1の耐用年数を延ばすことができる。
また、摺動部材10では、ディスク5が炭素系摩擦材(多孔質炭素繊維複合材5a)で形成されているので、従来のペーパ系摩擦材と比較して熱容量が大きい。その結果、摺動部材10の耐久性が向上するので湿式多板クラッチ1の耐用年数を延ばすことができる。
また、この摺動部材10では、ディスク5が多孔質炭素繊維複合材5aで形成されており、その気孔によって潤滑油の境界膜の排除性が増大する。さらに具体的に説明すると、例えば、0.048μm以上の表面粗度(Ra:算術平均粗さ)を有する非晶質炭素膜D(プレート4)と、多孔質炭素繊維複合材5a(ディスク5)とを組み合わせた場合に、非晶質炭素膜Dは、多孔質炭素繊維複合材5aに気孔が形成されていることで、境界膜を積極的に引掻き、または掘り起こして破断する。その結果、この摺動部材10は、前記した非晶質炭素膜D自体の機械的特性による摩擦係数の増大とも相俟って、ディスク5に対するプレート4の摩擦係数がさらに増大することとなる。その結果、湿式多板クラッチ1のトルク容量の向上を図ることができることから、湿式多板クラッチ1を構成するプレート4およびディスク5の枚数を削減することができる。つまり、この摺動部材10は、湿式多板クラッチ1の軽量化およびコンパクト化を図ることができる。
また、摺動部材10では、ディスク5が炭素系摩擦材(多孔質炭素繊維複合材5a)で形成されているので、従来の鋼板にペーパ系摩擦材を貼り付けたディスクと比較して軽量となる。つまり、この摺動部材10は、従来の摺動部材よりも軽量となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、本実施形態では、摺動部材10が自動車用変速機の湿式多板クラッチ1に適用される例を示したが、本発明の摺動部材10は、ブレーキクラッチ、ロックアップクラッチ、発進クラッチ、シンクロナイザ、ディファレンシャル用クラッチ等の他の湿式摩擦係合装置に使用されてもよい。
また、前記実施形態では、ディスク5が多孔質炭素繊維複合材5aに切削加工を施すことによって製造したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記したように、樹脂を含ませた炭素繊維を加熱成形する際に、目的とするディスク5にニアネットシェイプの成形物を得て、この成形物を焼成したものであってもよい。
次に、本発明の摺動部材の効果を確認した実施例について説明する。
(実施例1)
本実施形態では、次のようにして摺動部材のプレートとディスクとを製造した。
プレートの製造工程では、準備した冷間圧延鋼板製の基板に、高周波プラズマCVD装置を使用して非晶質炭素膜を形成した。
(実施例1)
本実施形態では、次のようにして摺動部材のプレートとディスクとを製造した。
プレートの製造工程では、準備した冷間圧延鋼板製の基板に、高周波プラズマCVD装置を使用して非晶質炭素膜を形成した。
このプレートの製造工程では、まず、高周波プラズマCVD装置の反応容器内に配置した基板にイオンボンバートメント処理を施して基板を洗浄した。イオンボンバートメント処理は、反応容器内にアルゴンガス(Ar)を流量40sccmで供給するとともに、高周波(周波数13.56MHz)の出力を100Wに設定し、基板のバイアス電圧を2kVに設定することによって行われた。なお、イオンボンバートメント処理は、10分間行われた。
次に、このプレートの製造工程では、基板に中間層(下地層)を形成した。中間層は、反応容器内にテトラメチルシランガス(TMS)を流量10sccmで供給するとともに、高周波(周波数13.56MHz)の出力を100Wに設定し、基板のバイアス電圧を2kVに設定することによって行われた。なお、この中間層の形成工程は、5分間行われた。ちなみに、中間層は炭化ケイ素を含む膜となった。
次に、このプレートの製造工程では、中間層上に非晶質炭素膜を形成した。この際、反応容器内には、気化させた炭素原料としてのベンゼン20ccが導入された。そして、反応容器内の圧力は、0.10〜0.12Paに設定され、高周波(周波数13.56MHz)の出力は、100Wに設定され、基板には、負のバイアス電圧2kVが印加された。非晶質炭素膜の形成時間は、60分間であった。その結果、基板上には、中間層を介して厚さが3μmの非晶質炭素膜が形成された。なお、この非晶質炭素膜のマルテンス硬度は
、5097.9N/mm2であり、水素含有率は、20原子%であった。
、5097.9N/mm2であり、水素含有率は、20原子%であった。
ディスクの製造工程では、まず、フェノール樹脂40質量%とポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維(東レ株式会社製、TORAYCA(登録商標) T−300)60質量%とからなる組成物を調製した。次に、ディスクの形状にニアネットシェイプとなるように組成物を成形した後、得られた成形物をアルゴンガス雰囲気中で2時間焼成した。なお、成形は180〜200℃で行い、焼成は400℃で行った。その結果、気孔率が40%の多孔質炭素繊維複合材からなるディスクが得られた。そして、得られたプレートとディスクとを組み合わせることで摺動部材が構成された。
<非晶質炭素膜の静止摩擦係数の測定>
プレートに形成した非晶質炭素膜について、多孔質炭素繊維複合材からなるディスクに対する静止摩擦係数μS(以下、単に「摩擦係数」という)を測定した。その結果を表1に示す。
プレートに形成した非晶質炭素膜について、多孔質炭素繊維複合材からなるディスクに対する静止摩擦係数μS(以下、単に「摩擦係数」という)を測定した。その結果を表1に示す。
摩擦係数の測定には、SAE No.2試験機が使用された。図3は、摩擦係数の測定に使用された試験機におけるトルク波形図である。
この測定試験では、まず、ディスクを、2つのプレートで挟み、これらをSAE No.2試験機に組み込んだ。そして、面圧0.95MPa、回転速度0.7rpm(一定)、試験油温100℃、および試験サイクル数500サイクルの条件で摩擦係数の測定が行われた。ちなみに摩擦係数は、クラッチが係合するときの面圧でトルクを除した値であり、回転マスを止めるブレーキングテストで求められた。
この測定試験では、まず、ディスクを、2つのプレートで挟み、これらをSAE No.2試験機に組み込んだ。そして、面圧0.95MPa、回転速度0.7rpm(一定)、試験油温100℃、および試験サイクル数500サイクルの条件で摩擦係数の測定が行われた。ちなみに摩擦係数は、クラッチが係合するときの面圧でトルクを除した値であり、回転マスを止めるブレーキングテストで求められた。
<相手材である多孔質炭素繊維複合材の摩耗量の測定>
SAE No.2試験機を使用して相手材である多孔質炭素繊維複合材からなるディスクの摩耗量(μm)が測定された。その結果を表1に示す。
SAE No.2試験機を使用して相手材である多孔質炭素繊維複合材からなるディスクの摩耗量(μm)が測定された。その結果を表1に示す。
この測定試験では、ディスクを2940rpmで回転させておき、このディスクにプレートが押し当てられて、ディスク(多孔質炭素繊維複合材)の摩耗量(μm)が測定された。この際、ディスクにプレートが押し当てられてからディスクの回転速度が0rpmとなって停止するまでの慣性吸収動作が1000サイクル繰り返された。その後、多孔質炭素繊維複合材の摩り減った厚み(μm)で摩耗量が測定された。なお、潤滑油としては、市販のATFが使用された。
(比較例1)
比較例1では、実施例1のプレートに代えて、非晶質炭素膜が形成されていない冷間圧延鋼板のみからなるプレートが使用され、実施例1のディスクに代えて、鋼板(ディスク基板)にペーパ系摩擦材を貼り付けたディスクを使用した以外は、実施例1と同様に、ディスクに対するプレートの摩擦係数、およびディスクの摩耗量(μm)が測定された。その結果を表1に示す。ちなみに、ペーパ系摩擦材には、エフ・シー・シー社製のFCC3551が使用された。
比較例1では、実施例1のプレートに代えて、非晶質炭素膜が形成されていない冷間圧延鋼板のみからなるプレートが使用され、実施例1のディスクに代えて、鋼板(ディスク基板)にペーパ系摩擦材を貼り付けたディスクを使用した以外は、実施例1と同様に、ディスクに対するプレートの摩擦係数、およびディスクの摩耗量(μm)が測定された。その結果を表1に示す。ちなみに、ペーパ系摩擦材には、エフ・シー・シー社製のFCC3551が使用された。
(比較例2)
比較例2では、実施例1のディスクに代えて、比較例1での鋼板(ディスク基板)にペーパ系摩擦材を貼り付けたディスクを使用した以外は、実施例1と同様に、ディスクに対するプレートの摩擦係数、およびディスクの摩耗量(μm)が測定された。その結果を表1に示す。
比較例2では、実施例1のディスクに代えて、比較例1での鋼板(ディスク基板)にペーパ系摩擦材を貼り付けたディスクを使用した以外は、実施例1と同様に、ディスクに対するプレートの摩擦係数、およびディスクの摩耗量(μm)が測定された。その結果を表1に示す。
<摺動部材の評価結果>
ここで参照する図4は、実施例1、比較例1、および比較例2におけるプレートの摩擦係数を表すグラフである。図5は、実施例1、比較例1、および比較例2におけるディスクの摩耗量を表すグラフである。
ここで参照する図4は、実施例1、比較例1、および比較例2におけるプレートの摩擦係数を表すグラフである。図5は、実施例1、比較例1、および比較例2におけるディスクの摩耗量を表すグラフである。
図4に示すように、実施例1での摺動部材は、マルテンス硬度が5000N/mm2以上となる非晶質炭素膜を形成したプレートと、炭素系摩擦材(多孔質炭素繊維複合材)からなるディスクとの組み合わせで構成されていることから、0.132という充分に大きな摩擦係数を示すことが確認された。
これに対して、比較例1での摺動部材は、冷間圧延鋼板のみからなるプレートと、相手材としてのペーパ系摩擦材を有するディスクとの組み合わせで構成されていることから、摩擦係数が0.083程度に止まっている。つまり、実施例1のプレートの摩擦係数は、比較例1のプレートの摩擦係数の1.5倍以上となっている。ちなみに、比較例2のプレートは、非晶質炭素膜を形成したものであることから、実施例1のプレートの摩擦係数には及ばないものの0.122となっている。
これに対して、比較例1での摺動部材は、冷間圧延鋼板のみからなるプレートと、相手材としてのペーパ系摩擦材を有するディスクとの組み合わせで構成されていることから、摩擦係数が0.083程度に止まっている。つまり、実施例1のプレートの摩擦係数は、比較例1のプレートの摩擦係数の1.5倍以上となっている。ちなみに、比較例2のプレートは、非晶質炭素膜を形成したものであることから、実施例1のプレートの摩擦係数には及ばないものの0.122となっている。
そして、図5に示すように、実施例1での摺動部材は、マルテンス硬度が5000N/mm2以上となる非晶質炭素膜を形成したプレートと、炭素系摩擦材(多孔質炭素繊維複合材)からなるディスクとの組み合わせで構成されていることから、ディスク(多孔質炭素繊維複合材)の摩耗量が、16μmと小さい値に収まっている。
これに対して、比較例2の摺動部材は、マルテンス硬度が5000N/mm2以上となる非晶質炭素膜を形成したプレートと、鋼板(ディスク基板)にペーパ系摩擦材を貼り付けたディスクとの組み合わせで構成されていることから、ディスク(ペーパ系摩擦部材)の摩耗量が54μmにも及んでいる。つまり、実施例1のディスクの摩耗量は、比較例2のディスクの摩耗量よりも70%以上低減されていることとなる。ちなみに、比較例1のディスクの摩耗量は、29μmである。つまり、実施例1の摺動部材では、非晶質炭素膜を形成したプレートを使用しているにも関らず、比較例1での非晶質炭素膜を形成しないプレートと比較して、ディスクの摩耗量が半分近くにまで低減されている。
これに対して、比較例2の摺動部材は、マルテンス硬度が5000N/mm2以上となる非晶質炭素膜を形成したプレートと、鋼板(ディスク基板)にペーパ系摩擦材を貼り付けたディスクとの組み合わせで構成されていることから、ディスク(ペーパ系摩擦部材)の摩耗量が54μmにも及んでいる。つまり、実施例1のディスクの摩耗量は、比較例2のディスクの摩耗量よりも70%以上低減されていることとなる。ちなみに、比較例1のディスクの摩耗量は、29μmである。つまり、実施例1の摺動部材では、非晶質炭素膜を形成したプレートを使用しているにも関らず、比較例1での非晶質炭素膜を形成しないプレートと比較して、ディスクの摩耗量が半分近くにまで低減されている。
以上のように、前記した実施例1の摺動部材では、プレートが充分に大きな摩擦係数を有しながらもこのプレートの相手材であるディスクの摩耗量を顕著に低減できることが確認された。
1 湿式多板クラッチ(湿式摩擦係合装置)
4 プレート
5 ディスク
10 摺動部材(湿式摩擦係合装置用摺動部材)
5a 多孔質炭素繊維複合材(炭素系摩擦材)
D 非晶質炭素膜
4 プレート
5 ディスク
10 摺動部材(湿式摩擦係合装置用摺動部材)
5a 多孔質炭素繊維複合材(炭素系摩擦材)
D 非晶質炭素膜
Claims (3)
- 摺動面に非晶質炭素膜を施したプレートと、前記摺動面に接するように配置される炭素系摩擦材との組み合わせからなる湿式摩擦係合装置用摺動部材であって、
前記非晶質炭素膜のマルテンス硬度が5000N/mm2以上であることを特徴とする湿式摩擦係合装置用摺動部材。 - 前記非晶質炭素膜の水素含有率が、35原子%以下であることを特徴とする請求項1に記載の湿式摩擦係合装置用摺動部材。
- 前記炭素系摩擦材が、気孔率20〜60%である多孔質炭素繊維複合材からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の湿式摩擦係合装置用摺動部材。
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JP (1) | JP2009035667A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN111065757A (zh) * | 2017-10-20 | 2020-04-24 | 株式会社理研 | 滑动构件和活塞环 |
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2007
- 2007-08-03 JP JP2007202589A patent/JP2009035667A/ja active Pending
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CN111065757A (zh) * | 2017-10-20 | 2020-04-24 | 株式会社理研 | 滑动构件和活塞环 |
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