JP2009034743A - 検出装置および方法、並びにプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】ロボットハンドによる物体の把持、操りなどで必要な滑りの情報を取得することができるようにする。
【解決手段】圧力時間変化量算出部131は、各センサエレメントからの圧力値を用いて、各センサエレメントの圧力時間変化量を算出する。最大値探索部132および最小値探索部133は、各センサエレメントの圧力時間変化量の中から最大値および最小値を探索し、最大値および最小値の圧力時間変化量を有するセンサエレメントの位置情報を求める。滑り検出部134は、圧力時間変化量の最大値および最小値に基づいて、滑りを検出する。滑り方向算出部135は、最大値および最小値の圧力時間変化量を有するセンサエレメントの位置情報を用いて、滑りの向きを算出する。本発明は、任意物体を把持して操ったり、移動させる動作を行うロボットハンドマニピュレータに適用できる。
【選択図】図12
【解決手段】圧力時間変化量算出部131は、各センサエレメントからの圧力値を用いて、各センサエレメントの圧力時間変化量を算出する。最大値探索部132および最小値探索部133は、各センサエレメントの圧力時間変化量の中から最大値および最小値を探索し、最大値および最小値の圧力時間変化量を有するセンサエレメントの位置情報を求める。滑り検出部134は、圧力時間変化量の最大値および最小値に基づいて、滑りを検出する。滑り方向算出部135は、最大値および最小値の圧力時間変化量を有するセンサエレメントの位置情報を用いて、滑りの向きを算出する。本発明は、任意物体を把持して操ったり、移動させる動作を行うロボットハンドマニピュレータに適用できる。
【選択図】図12
Description
本発明は、検出装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、ロボットハンドによる物体の把持、操りなどで必要な滑りの情報を取得することができるようにした検出装置および方法、並びにプログラムに関する。
ロボットハンドによる物体の把持、操りなどの複雑な制御を行うためには、把持物体と指先間の滑りなど、把持状態を取得する必要がある。
把持状態取得のための触覚センサとして、従来、様々な構成のセンサが提案されている。例えば、特許文献1には、弾性体にひずみゲージを埋め込んだ触覚センサが提案されている。また、特許文献2や特許文献3には、CCD(charge coupled device)カメラを用いて滑りを検出する触覚センサが提案されている。しかしながら、これらのセンサは、構造が複雑であったり、ロボットハンドへの実装が困難であったりして、汎用性に乏しい。
一方、センサ面に対して垂直方向に加わる力の分布を検出する分布型圧力センサとして、検出素子に導電性を有するゴムまたはプラスチックをマトリクス状に配置したものや、複数の行電極および列電極を上下にマトリクス状に配置し、押されたときの電極間の距離の変動による静電容量の変化を検出するものなどがある。
これらの分布型圧力センサを応用した触覚センサは、比較的実装が容易であるため、多数提案されており、その1つとして、例えば、特許文献4には、分布型圧力センサと柔軟な粘弾性体を組み合わせた多層構造のセンサが記載されている。
しかしながら、従来の提案は、圧力分布を統計処理する、または圧力総和の時間変化を解析するなどにより、対象物の形状あるいは粘弾性特性を取得する手法を開示しているに過ぎず、例えば、ロボットハンドによる物体の把持、操りなどで必要な滑りの情報を取得することは一切想定されていなかった。
したがって、早急に、ロボットハンドによる物体の把持、操りなどで必要な滑りの情報を取得する提案が必要とされていた。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ロボットハンドによる物体の把持、操りなどで必要な滑りの情報を取得することができるようにするものである。
本発明の一側面の検出装置は、複数のエレメントで構成される圧力センサを備える検出装置において、前記圧力センサのエレメント毎の圧力値の時間変化量を算出する時間変化算出手段と、前記時間変化算出手段により算出された前記圧力値の時間変化量の空間分布から、正および負のピークを探索する探索手段と、前記探索手段により探索された前記正および負のピークに基づいて、滑りを検出する滑り検出手段と、前記滑り検出手段により検出された前記滑りの方向を算出する方向算出手段とを備える。
前記滑り検出手段は、前記探索手段により探索された前記正および負のピークの値が共に所定の閾値以上であるか否かを判定し、前記正および負のピークの値が共に所定の閾値以上であると判定した場合、前記滑りを検出することができる。
前記方向算出手段は、前記負のピークを示すエレメントの位置から、前記正のピークを示すエレメントの位置までのベクトルを求めることで、前記滑り検出手段により検出された前記滑りの方向を算出することができる。
前記圧力センサは、その表面に粘弾性材料で構成される粘弾性体を有することができる。
前記粘弾性体と前記圧力センサは、二色成形法により薄膜のシリコンゴムと一体化されていることができる。
前記粘弾性体は、静電気シールド材料が混合されて成形されていることができる。
前記粘弾性体と前記圧力センサは、二色成形法により薄膜のシリコンゴムと一体化されていることができる。
本発明の一側面の検出方法は、複数のエレメントで構成される圧力センサを備える検出装置の検出方法において、前記圧力センサのエレメント毎の圧力値の時間変化量を算出し、算出された前記圧力値の時間変化量の空間分布から、正および負のピークを探索し、探索された前記正および負のピークに基づいて、滑りを検出し、検出された前記滑りの方向を算出するステップを含む。
本発明の一側面のプログラムは、複数のエレメントで構成される圧力センサを備える検出装置に、所定の処理を行わせるプログラムであって、前記圧力センサのエレメント毎の圧力値の時間変化を算出し、算出された前記圧力値の時間変化量の空間分布から、正および負のピークを探索し、探索された前記正および負のピークに基づいて、滑りを検出し、検出された前記滑りの方向を算出するステップを含む。
本発明においては、複数のエレメントで構成される圧力センサのエレメント毎の圧力値の時間変化が算出され、算出された前記圧力値の時間変化量の空間分布から、正および負のピークが探索され、探索された前記正および負のピークに基づいて、滑りが検出される。そして、検出された前記滑りの方向が算出される。
本発明によれば、ロボットハンドによる物体の把持、操りなどで必要な滑りの情報を取得することができる。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書または図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書または図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書または図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
本発明の一側面の検出装置は、複数のエレメントで構成される圧力センサ(例えば、図2の圧力検出部32)を備える検出装置(例えば、図2のセンサ21)において、前記圧力センサのエレメント毎の圧力値の時間変化量を算出する時間変化算出手段(例えば、図12の圧力時間変化量算出部131)と、前記時間変化算出手段により算出された前記圧力値の時間変化量の空間分布から、正および負のピークを探索する探索手段(例えば、図12の最大値探索部132および最小値探索部133)と、前記探索手段により探索された前記正および負のピークに基づいて、滑りを検出する滑り検出手段(例えば、図12の滑り検出部134)と、前記滑り検出手段により検出された前記滑りの方向を算出する方向算出手段(例えば、図12の滑り方向算出部135)とを備える。
前記圧力センサは、その表面に粘弾性材料で構成される粘弾性体(例えば、図2の変形部31)を有することができる。
前記粘弾性体と前記圧力センサは、二色成形法により薄膜のシリコンゴム(例えば、図22のシリコンゴム222)と一体化されていることができる。
前記粘弾性体(例えば、図22の変形部31)は、シールド材料が混合されて成形されていることができる。
前記粘弾性体と前記圧力センサは、二色成形法により薄膜のシリコンゴム(例えば、図22のシリコンゴム222)と一体化されていることができる。
本発明の一側面の検出方法またはプログラムは、複数のエレメントで構成される圧力センサを備える検出装置の検出方法またはプログラムにおいて、前記圧力センサのエレメント毎の圧力値の時間変化量を算出し(例えば、図14のステップS31)、算出された前記圧力値の時間変化量の空間分布から、正および負のピークを探索し(例えば、図14のステップS32およびS33)、探索された前記正および負のピークに基づいて、滑りを検出し(例えば、図14のステップS35)、検出された前記滑りの方向を算出する(例えば、図14のステップS36)ステップを含む。
以下、図を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用したロボットハンドマニピュレータの外観の構成例を表している。
ロボットハンドマニピュレータは、肩関節部11、上腕部12、肘関節部13、前腕部14、手首部15、および手部16などからなるロボットハンド1と、ロボットハンド1の肩関節部11を介して、ロボットハンド1を支持する支持部2で構成されている。
ロボットハンド1の上腕部12および前腕部14の内側には、それぞれセンサ21−1および21−2が設けられている。また、図1の左側に拡大して示すように、ロボットハンド1の手部16を構成する掌には、センサ21−3および21−4が設けられており、手部16を構成する親指の指掌面における第1関節より上には、センサ21−5、第1関節と第2関節の間には、センサ21−6がそれぞれ設けられており、人指し指の指掌面における第1関節より上には、センサ21−7、第1関節と第2関節の間には、センサ21−8がそれぞれ設けられている。
さらに、中指の指掌面における第1関節より上には、センサ21−9、第1関節と第2関節の間には、センサ21−10がそれぞれ設けられており、薬指の指掌面における第1関節より上には、センサ21−11、第1関節と第2関節の間には、センサ21−12がそれぞれ設けられており、小指の指掌面における第1関節より上には、センサ21−13、第1関節と第2関節の間には、センサ21−14がそれぞれ設けられている。
なお、センサ21−1乃至21−14を特に区別する必要がない場合、以下、単にセンサ21と称する。
ロボットハンドマニピュレータは、ロボットハンド1の肩関節部11、肘関節部13、手首部15や、手部16の指関節部などの各関節部に内蔵されるアクチュエータを動作させて、図1に示されるマグカップなどの任意物体に、手部16などの各センサ21を接触させる。
ロボットハンド1に設けられた各センサ21は、そのセンサ面に垂直な法線力(例えば、圧力)のみを検出する分布型圧力センサで構成され、その表面に、人間の皮膚のような柔らかさを有する粘弾性体を有している。その粘弾性体は、外部から受ける力とその形によって様々な形状に変化し、それによって内部のセンサ21に対して圧力が拡散される。センサ21は、粘弾性体に物体が接触した際に、その拡散された圧力値を検出し、検出した圧力値の時間変化の分布に基づいて、ロボットハンド1による物体の把持、操りなどの複雑な制御を行うために必要な把持情報である、把持物体と指先間の滑りを検出する。
ここで、本実施の形態の把持、操りにおける「滑り」とは、次のように定義される。
一般的には、指と対象物の間の相対運動を「滑り」と呼ぶ。
この相対運動には大きく分けて、「並進運動」と「回転運動」の2つがあり、前者の「並進運動」は、把持接触点における把持力(法線力)と直交する方向(せん断方向、接線方向)への運動であり、後者の「回転運動」は、接触を保ちながら回転移動する「転がり運動」と、把持接触点の「法線軸まわりの回転運動」である。これらを、それぞれ、並進滑り、回転滑りと呼んで区別するが、これらは、同時に組み合わさって発生することが多い。
また一方で、把持の安定性やロバスト性などを考慮すると、指先は柔軟な構造とすることが望ましい。この柔軟な指先で対象物を把持している際に対象物へのせん断力を加えていくと、接触領域の外周部から徐々に相対運動が生じて、固着領域と滑り領域が混在する「初期局所滑り」が発生する。さらに、せん断力を加えていくと、ある点を境にして、動摩擦係数に支配される運動状態(狭義の「滑り」)に至る。この滑り出しに相当する「初期局所滑り」時には、振動が発生するため、その観測が可能である。さらに、初期局所滑りに至る前の段階において、指先と対象物の接触領域は略不変であるものの、柔軟素材が変形して「ずれ」が発生する状態も存在する。
把持、操りにおいて、指と対象物の間の完全な相対運動のみを基に制御していたのでは制御の遅れによりうまく実現できないことが多い。したがって、「滑り」を予知し、未然に防ぐことも重要であると考え、上記の「初期局所滑り」および「ずれ」も含めたものまでを広義の「滑り」と呼ぶことにする。
なお、図1のセンサ21においては、このように定義される「滑り」のうち、「初期局所滑り」および「ずれ」を含めた「並進運動」と「回転運動」のうちの「転がり運動」を検出することができる。
ロボットハンドマニピュレータは、検出された把持物体と指先間の滑りに基づき、センサ21自体の柔らかさおよび表面の摩擦によるグリップ性などを利用して、各関節部のアクチュエータを動作させることで、マグカップを把持し、マグカップの移動や運搬を行う。
以上のように、ロボットハンドマニピュレータは、多種多様な大きさや形状、表面状態、重量などの任意物体を器用に把持して操ることができる。
図2は、図1のセンサ21の構造例を示す断面図である。
センサ21は、大きく分けて、変形する柔軟な粘弾性体からなり、外部からの荷重印加を受ける変形部31、抵抗変化や静電容量変化などの検出原理を利用して、圧力を検出する分布型圧力センサなどからなる圧力検出部32、および、例えば、ロボットハンド1の表面の各部からなり、変形部31を支える固定部33により構成される。すなわち、センサ21は、固定部33の層の上に、圧力検出部32の層があり、さらにその上に、変形部31の層があるという、多層構造となっている。
図2の例において、変形部31は、荷重印加を受けるセンサ面(以下、入力面と称する)31aが四角形である四角柱で形成されている。また、変形部31は、粘弾性特性を有する粘弾性材料(粘弾性体)で構成され、外部からの荷重により様々な形状に容易に変形が可能である。この変形によって応力緩和や応力分散が生じ、内部の圧力検出部32に対して圧力が拡散されるので、粘弾性体の変形による補間特性に基づき、圧力検出部32は、分布型圧力センサの空間分解能以上のセンシング性能を得ることができる。
粘弾性材料には、耐熱、耐寒、しゅう動、耐摩擦性の高いシリコンゲルが適しているが、他の材料を用いることもできる。また、固定部33との境界は拘束面になっており、接着や一体成形により固着されている。そのため、ゴム材料同等の非圧縮性から、例えば、側面や上面の一部が膨らむ、いわゆるバルジング現象を起こすこととなり、その形は、荷重値や入力面形状により様々な特徴を現すことが、出願人による実験の結果、認められている。
また、粘弾性材料は、一般的に柔らかくなるほど表面の粘着性が高くなり、物体把持や人への接触を想定した場合、それをコーティングやパウダー処理などで改質し、摩擦を低減する必要がある。しかしながら、これらの改質方法では、耐久性が低く、使用環境で表面状態が変化する可能性が高いため、改質方法によっては、表面にムラができて、センサ21表面の位置的な特性差が発生する恐れがある。
そこで、図22を参照して後述するように、粘弾性材料の表面に、二色成形法で、薄膜のシリコンゴムを一体化して変形部31を構成することで、表面の薄膜のシリコンゴムにより、内部(すなわち、粘弾性体)の柔らかさを損なうことなく、耐久性向上や摩擦のコントロールをすることが可能となる。
なお、以下、特に言及しない場合、この入力面31aと平行な面をxy平面とし、入力面31aに垂直な方向をz軸方向として説明する。
図3は、図2の圧力検出部32を構成する分布型圧力センサの構造例を示す図である。
圧力検出部32は、複数の行電極41および列電極42を上下にマトリクス状に配置されて構成されている。この行電極41と列電極42が交差する四角い領域が、圧力を検出するセンサエレメントとして機能する。
すなわち、圧力検出部32は、静電容量変化を検出原理として、圧力を検出する複数(例えば、168個)のセンサエレメントにより構成されている。1センサエレメントは、図4に示されるように、行電極41および列電極42がスペーサ51を挟んで重ねて構成されており、圧力が加わることで、行電極41および列電極42の電極間のギャップが変化し、その結果として静電容量が変化するため、この静電容量の変化に基づいて、加えられた圧力を検出することができる。
次に、図5および図6を参照して、センサ21を用いた滑り検出の方法について説明する。なお、図5は、球状の対象物61およびセンサ21の状態を示す断面図であり、図6は、図5の対象物61およびセンサ21の圧力検出部32のXY座標系を上から見た上面図である。図6においては、説明の便宜上、変形部31の図示は省略されている。
例えば、図5Aに示されるように、外部より矢印G方向(図中下方向)に荷重印加されて、対象物61がセンサ21の変形部31に押し付けられた状態から、その対象物61を押し付けながら、図5Bに示されるように、センサ21の変形部31上を矢印R方向(図中右方向)に移動させた場合を考える。
なお、簡単のため、センサ21の圧力検出部32のうち、対象物61が押し付けられている直下のセンサエレメントを含む1列(図6のハッチング部分)のみについて考えると、このセンサエレメント列が検出する圧力値は、図7の点線に示される分布となる。
図7は、図5Bの場合の圧力値の分布を表している。図7の例において、縦軸は、センサエレメント列の各センサエレメントが検出する圧力値を表し、横軸は、センサエレメント列における各センサエレメントの位置を表している。なお、横軸には、対象物61の中心近傍の位置Eが示されている。
例えば、時刻t=T-ΔTの圧力値が、点線に示される分布を示すとき、そのΔT時間後の時刻t=Tにおける圧力値の分布は、実線に示されるように変化する。すなわち、ΔT時間後の時刻t=Tにおける圧力値の分布は、ΔT時間前の時刻t=T-ΔTの分布から、図5Bにおける移動方向である矢印R方向にほぼ平行に移動している。
ここで、pmn(t)をマトリクス位置(m,n)のセンサエレメントの時刻tにおける圧力値として、センサエレメント毎に圧力値の時間変化量を算出する。圧力時間変化量Δpmn(t)は、次の式(1)で表される。
図8は、図7の場合に式(1)により算出された圧力時間変化量Δpmn(t)の分布を表している。図8の例において、縦軸は、0を基準とした圧力時間変化量を表し、横軸は、センサエレメント列における各センサエレメントの位置を表している。なお、横軸には、図7と同様に、対象物61の中心近傍の位置Eが示されている。
図7を参照すると、対象物61の中心近傍の位置Eを境として、移動する方向(矢印R方向)側の位置においては、実線に示される時刻t=Tの圧力値は、点線に示される時刻t=T-ΔTの圧力値よりも大きくなる。一方、その反対側の位置においては、実線に示される時刻t=Tの圧力値は、点線に示される時刻t=T-ΔTの圧力値よりも小さくなる。
すなわち、圧力時間変化量は、図8に示されるように、対象物61の中心近傍の位置Eを境として、移動する方向(矢印R方向)側の位置においては、正の圧力変化量となり、その反対側の位置においては、負の圧力変化量となることがわかる。
なお、対象物61が静止している場合には、圧力分布は変化しないため、式(1)による圧力時間変化量はゼロとなる。
また、対象物61をセンサ21の変形部31に対して垂直に押し込んで、例えば、図5Aの矢印G方向に荷重をかけていくのみの場合、その軸(矢印G方向)以外の方向に移動しなければ、圧力値の分布は、図9の点線に示される時刻t=T-ΔTの圧力値の分布から、実線に示される時刻t=Tの圧力値の分布に変化する。すなわち、点線に示される時刻t=T-ΔTの圧力値は、対象物61の中心近傍の位置Eを中心として薄めの山なりの分布となるが、時刻t=Tの圧力値の分布は、時刻t=T-ΔTの圧力値の分布と較べて、さらに、対象物61の中心近傍の位置Eを中心とした山なりに変化する。
したがって、図10に示されるように、図5の矢印G方向に荷重をかけていくのみの場合の圧力時間変化量の分布は、正側にだけ現れることがわかる。
なお、図示はしないが、同様に、対象物61をセンサ21の変形部31に対して垂直に押し込んでいる状態から、荷重を減らしていく場合には、圧力時間変化量は、負側にだけ現れる。
以上より、圧力時間変化が正負両側に分布しているときにのみ、対象物61が移動していることになるため、圧力時間変化の正のピークである最大値および負のピークである最小値を求めることで、滑りを検出することができる。
なお、上記説明においては、滑り検出の方法を、1列のセンサエレメントに対して行う場合を説明したが、全センサエレメントに対して行うように拡張した滑り検出の方法は、図14を参照して詳しく後述する。
図11は、図1のロボットハンドマニピュレータの内部の電気的な構成例を示している。なお、図11の例の場合、説明の便宜上、センサ21は、1つしか図示されていない。
図11の例においては、ロボットハンドマニピュレータは、メイン制御部101、アクチュエータ102−1乃至102−n、および複数のセンサ21により構成されている。
メイン制御部101は、CPU(central processing unit)やメモリ等を内蔵しており、CPUにおいて、メモリに記憶された制御プログラムが実行されることにより、各種の処理を行う。すなわち、メイン制御部101は、各センサ21により検出された把持物体と指先間の滑りの情報を受け、各センサ21からの把持物体と指先間の滑りの情報に基づき、センサ21自体の柔らかさおよび表面の摩擦によるグリップ性などを利用して、アクチュエータ102−1乃至102−nのうちの必要なものを駆動させ、これにより、ロボットハンド1に、物体を把持させて、移動や運搬などを行わせる。
アクチュエータ102−1乃至102−nは、それぞれ、ロボットハンド1の各関節部分(すなわち、肩関節部11、肘関節部13、手首部15や、手部16の指関節部)に配設されており、これにより、各関節部分は、所定の自由度を持って回転することができるようになっている。アクチュエータ102−1乃至102−nは、メイン制御部101からの駆動信号に従って駆動する。
センサ21は、圧力検出部32および信号処理部111により構成されている。圧力検出部32は、図3を参照して上述したように、複数のセンサエレメントにより構成されており、複数のセンサエレメントにより静電容量変化を検出原理としてそれぞれ検出された圧力値を、信号処理部111に出力する。
信号処理部111は、圧力検出部32からの圧力値を用いて、所定の信号処理を行うことで、把持物体と指先間の滑りおよび滑りの方向を検出し、検出した滑りの情報を、メイン制御部101にリアルタイムに出力する。
図12は、図11の信号処理部111の構成例を示している。図12の例において、信号処理部111は、圧力時間変化量算出部131、最大値探索部132、最小値探索部133、滑り検出部134、および滑り方向算出部135により構成されている。
圧力時間変化量算出部131は、圧力検出部32からの各センサエレメントからの圧力値を用いて、各センサエレメントの圧力時間変化量を式(1)により算出する。算出された各センサエレメントの圧力時間変化量は、最大値探索部132および最小値探索部133に出力される。
最大値探索部132は、圧力時間変化量算出部131により算出された各センサエレメントの圧力時間変化量の中から最大値を探索するとともに、最大値の圧力時間変化量を有するセンサエレメントの位置情報を求める。圧力時間変化量の最大値とそのセンサエレメントの位置情報は、滑り検出部134に出力される。
最小値探索部133は、圧力時間変化量算出部131により算出された各センサエレメントの圧力時間変化量の中から最小値を探索するとともに、最小値の圧力時間変化量を有するセンサエレメントの位置情報を求める。圧力時間変化量の最小値とそのセンサエレメントの位置情報は、滑り検出部134に出力される。
滑り検出部134には、滑りの誤検出を抑制するためのある任意の閾値THが予め設定されている。滑り検出部134は、圧力時間変化量の最大値が閾値THよりも大きく、かつ、圧力時間変化量の最小値が−閾値THよりも小さいか否かを判定する。すなわち、滑り検出部134においては、圧力時間変化量の最大値の絶対値および圧力時間変化量の最小値の絶対値が共に閾値THよりも大きいか否かが判定される。
滑り検出部134は、圧力時間変化量の最大値が閾値THよりも大きく、かつ、圧力時間変化量の最小値が−閾値THよりも小さいと判定した場合、滑り(の発生)を検出する。滑り検出部134は、滑りを検出したときの最大値および最小値の圧力時間変化量を有するセンサエレメントの位置情報を、滑り方向算出部135に出力する。
滑り方向算出部135は、最大値および最小値の圧力時間変化量を有するセンサエレメントの位置情報を用いて、滑りの向きを算出し、算出した滑りの向きの情報を、メイン制御部101に出力する。
次に、図13のフローチャートを参照して、ロボットハンドマニピュレータの動作およびそれに伴う情報検出処理について説明する。なお、図13の例においては、図1のロボットハンドマニピュレータの物体把持を例に説明する。
メイン制御部101は、ステップS11において、メモリに記憶された制御プログラム、または、後述するステップS14において検出された各センサ21から把持物体と指先間の滑りの情報に基づき、センサ21自体の柔らかさおよび表面の摩擦によるグリップ性などを利用して、ロボットハンド1の各関節部などに設けられるアクチュエータ102−1乃至102−nのうちの必要なものを駆動させ、ロボットハンド1による所定の物体(例えばマグカップ)の把持動作を制御する。
ステップS12において、メイン制御部101からの把持動作の制御のもと、ロボットハンド1の対応するアクチュエータ102は、把持動作を行う。これにより、ロボットハンド1の各部に備えられているセンサ21が、把持する物体と接触し、その物体の形状とそれにより発生する応力により粘弾性体で構成される変形部31が変形を始める。それによって内部の圧力検出部32に対して圧力が拡散される。
ステップS13において、複数のセンサマトリックスからなる圧力検出部32は、圧力を検出する。すなわち、圧力検出部32を構成する複数のセンサマトリックスは、それぞれ、圧力が加わることで、行電極41および列電極42の電極間のギャップが変化し、その結果として静電容量が変化するため、この静電容量の変化に基づいて、加えられた圧力を検出し、その圧力値を、信号処理部111に出力する。
ステップS14において、信号処理部111は、圧力検出部32からの各センサマトリックスの圧力値を用いて、把持物体と指先間の滑りおよび滑りの方向を検出し、検出した滑りの情報を、メイン制御部101にリアルタイムに出力する。ステップS14における滑り検出処理は、図14を参照して後述する。
ステップS15において、メイン制御部101は、動作を終了するか否かを判定する。ステップS15において、動作を終了しないと判定した場合、処理は、ステップS11に戻り、それ以降の処理を繰り返す。すなわち、メイン制御部101は、ステップS14において検出された把持物体と指先間の滑りの情報に基づいて、ロボットハンド1の動作を制御する。一方、ステップS15において、終了すると判定された場合、図13の物体把持処理は終了される。
次に、図14のフローチャートを参照して、図13のステップS14の滑り検出処理について詳しく説明する。なお、図5乃至図10を参照して、滑り検出の方法を、1列のセンサエレメントに対して行う場合を説明したが、図14の例においては、それを全センサエレメントに対して行うように拡張した滑り検出の方法について説明する。
例えば、圧力検出部32が、m=1,2,…,M,n=1,2,…,NのM×N個のセンサエレメントからなる分布型圧力センサで構成されているとする。
ステップS31において、圧力時間変化量算出部131は、ある時刻tにおける各センサエレメントの圧力時間変化量Δpmnを式(1)により算出する。
ステップS32において、最大値探索部132は、圧力時間変化量算出部131により算出された各センサエレメントの圧力時間変化量Δpmnの中から最大値を探索し、Δpmaxとする。また、最大値探索部132は、このときの m,n(センサエレメントの(X,Y)位置情報)をそれぞれ、MmaxおよびNmaxとする。そして、Δpmax,Mmax,およびNmaxは、滑り検出部134に出力される。
ステップS33において、最小値探索部133は、圧力時間変化量算出部131により算出された各センサエレメントの圧力時間変化量Δpmnの中から最小値を探索し、Δpminとする。また、最小値探索部133は、このときの m,nをそれぞれ、MminおよびNminとする。そして、Δpmin,Mmin,およびNminは、滑り検出部134に出力される。
ここで、図5乃至図8を参照して上述したように、Δpmaxが正で、かつ、Δpminが負であれば、対象物は滑っているのであるが、センサの出力ノイズなどによる滑りの誤検出を抑制するため、ステップS34において、滑り検出部134は、ある任意の閾値THを用いて、次の式(2)が成立するか否かを判定する。
ステップS34において、式(2)が成立しない、すなわち、ΔpmaxがTH以下であると判定された場合、あるいは、Δpminが-TH以上であると判定された場合、処理は、ステップS31に戻り、次に圧力検出部32により検出される圧力値が用いられて、それ以降の処理が繰り返される。
ステップS34において、式(2)が成立すると判定された場合、滑りが発生したと判定され、処理は、ステップS35に進む。ステップS35において、滑り検出部134は、滑りを検出する。このとき、滑り検出部134は、Δpmax,Mmax,およびNmax並びにΔpmin,Mmin,およびNminを、滑り方向算出部135に出力する。
ステップS36において、滑り方向算出部135は、滑り検出部134からのMmax,Nmax, Mmin,およびNminを用いて、滑りの向きを算出する。
すなわち、x軸をm方向、y軸をn方向にとり、x方向の単位ベクトルをi,y方向の単位ベクトルをjとしたとき、滑りの向きを与えるベクトルPは、次の式(3)で表される。
滑り方向算出部135は、算出された滑りの向きの情報(たとえば、ベクトルP)を、メイン制御部101に出力する。この後、処理は、ステップS31に戻り、次に圧力検出部32により検出される圧力値が用いられて、それ以降の処理が繰り返される。
以上のように、各センサエレメントの圧力時間変化量の中から正のピークである最大値、および負のピークである最小値を探索し、探索された最大値がある閾値THより大きく、かつ、最小値がある閾値-THより小さいか否かを判定するようにしたので、圧力時間変化量が正負両側に分布している場合に検出される滑りと、その方向を検出することができる。
なお、上記説明においては、図2を参照して上述したような平面状の(すなわち、平面上に配置される)センサ21について説明してきたが、図15に示されるように、ロボットハンド1などの3次元立体形状上に、3次元立体形状のセンサ21を配置する場合でも、同様な方法で滑り検出が可能である。
図15は、図1の手部16を構成する親指141の指掌面における第1関節より上に設けられるセンサ21−5の圧力検出部32が示されている。なお、図15の例においては、説明の便宜上、変形部31の図示が省略されている。
親指141は、円柱で構成されているため、固定部31である親指141の指掌面は、曲面となっている。すなわち、曲面形状の圧力検出部32が曲面上に設けられている。このように、ロボットハンド1などの3次元立体形状上にセンサ21を配置する場合においても、圧力時間変化量の最大値と最小値が求まり、それらが式(2)を満たすならば、滑りが発生したと判定することができる。
そして、この場合における滑りの向きを与えるベクトルPは、圧力時間変化量の最大値Δpmaxを出力するセンサエレメントの中心位置の位置ベクトルをrmaxとし、圧力時間変化量の最小値Δpminを出力するセンサエレメントの中心位置の位置ベクトルをrminとすると、次の式(4)で表される。
すなわち、センサ21による滑り検出を、ロボットハンド1などの3次元立体形状に適用する場合には、滑りの向きの算出以外は、すべて、平面の場合と同様に行うことができる。
次に、上述した滑り検出の方法の有効性について説明する。
図16は、滑り検出の方法の有効性を確認するために行われた実験の実験装置の構成を示している。
実験装置151は、変形部31、圧力検出部32、および固定部33からなる図2のセンサ21に、車輪などのスライド機構161を設けて、固定台162の上を、x軸方向(図中左右方向)にのみ可動できるように構成されている。実験装置151は、また、センサ21に対して荷重を印加するための球体163を先端に付した部材164が、固定台162に固定されている柱165に取り付けられており、センサ21を印加する荷重(押し込み量)を調整できるように構成されている。
この実験装置151において、球体163を変形部31に押し付けたまま、センサ21をx軸の負の方向(図中左方向)に、図17のようなプロファイルで移動させる。
図17の例においては、縦軸が実験装置151において、移動前の位置を0としたx軸方向のセンサ21の移動位置を表し、横軸が実験開始からの時間の経過を表すグラフが示されている。すなわち、実験装置151が、実験開始から、球体163を変形部31に押し付けたまま、センサ21をx軸の負の方向(図中左方向)に移動させるように力を加えると、図17に示されるように、センサ21は、実験開始の3秒後から、x軸の負の方向に移動しはじめ、実験開始の6秒過ぎに、移動前の位置から-10mm離れた位置に移動する。
このとき、上述した式(1)で算出される圧力時間変化量の分布は、時刻とともに、図18に示されるように変化していく。
図18は、図17の時刻t=1.844[s]乃至t=8.141[s]間におけるセンサ21のXY座標系を、センサ21の上側から見た図である。図18の例においては、センサ21における圧力時間変化量がゼロに近い場所では灰色に、圧力時間変化量が正側に増加するに従い白色に、圧力時間変化量が負側に減少するに従い黒色になるように、圧力時間変化量の分布を表したものである。なお、図18における灰色部分は、センサ21の出力ノイズなどの影響により、多少まだらになっている。
例えば、時刻t=4.063の圧力時間変化量の分布に示されるように、白色領域の中心近傍にΔpmaxがあり、黒色領域の中心近傍にΔpminがある。時刻t=1.844乃至8.141[s]間のうち、センサ21が移動している時刻t=3.0乃至6.5[s]の範囲において、ΔpmaxおよびΔpminが顕著に現れるとともに、センサ21の移動に伴ってΔpmaxおよびΔpminの位置も、図中右側に移動していることがわかる。
すなわち、ΔpmaxおよびΔpminは、時刻とともに、図19のように変化する。図19の例においては、縦軸がΔpmaxおよびΔpminの圧力時間変化量(kPa)を表し、横軸が時間(秒)を表すグラフが示されている。
センサ21が移動していない時刻t=0乃至3.0 [s]および時刻t=6.5乃至10.0 [s]においては、ΔpmaxおよびΔpminの圧力時間変化量は、それぞれ、+0.2近傍および-0.2近傍の値となっており、センサ21が移動している時刻t=3.0乃至6.5[s]の範囲において、ΔpmaxおよびΔpminは、それぞれ、少なくとも+0.5以上の値および-0.5以上の値となっている。
したがって、図19の例の場合、閾値THを0.3程度に設定することで、式(2)により滑りを検出することができることがわかる。
また、式(3)により求まるベクトルPの大きさと向きは、図20のように変化する。図20の例においては、縦軸がベクトルの大きさ(絶対値)|P|およびベクトルの向き∠Pを表し、横軸が時間(秒)を表すグラフが示されている。
センサ21が移動している時刻t=3.0乃至6.5[s]の範囲において、ベクトルの大きさ|P|は、略2mm前後の値となっており、ベクトルの向きは、±12程度の誤差を持つものの、0度近傍の値となっており、図19における滑りを検出した区間内で、滑っている方向が概ね検出できていることがわかる。
以上より、圧力時間変化の正のピークである最大値および負のピークである最小値を求め、最大値および最小値に基づいて、滑りを検出すること、および、最大値を有するセンサエレメントの位置と、最小値を有するセンサエレメントの位置で、滑りの向きを算出することが有効であることが明らかとなった。
図21は、図2のセンサ21の他の外観の構成例を示している。図21の例においては、図中上には、変形部31の形状が異なるセンサ201乃至204を真上から見た上面図が示されており、図中下には、センサ201乃至204の断面図が示されている。なお、変形部31と固定部33の間には、例えば、分布型圧力センサで構成される圧力検出部32が示されている。
センサ201は、真上から見ると入力面31aが円形で、側面から見ると四角の形状である円柱型の変形部31で構成されている。センサ202は、真上から見ると入力面31aが円形で、側面から見るとドーム形状であるドーム型の変形部31で構成されている。センサ203は、真上から見ると入力面31aが四角形で、側面から見るとかまぼこ形状であるかまぼこ型の変形部31で構成されている。例えば、センサ203においては、フレキシブル基板に構成される圧力検出部32などが用いられる。
センサ204は、真上から見ると入力面31aがドーナツ形状で、側面から見ると、固定部33を挟むように固定部33の上下に変形部31が構成される四角の形状である円柱型の変形部31で構成されている。なお、センサ204におけるドーナツの穴(空洞)部分には、点線に示されるように軸を設けることができる。
以上、センサ201やセンサ202ように、変形部31の形状を入力面31aが円形となるように形成することもできる。
また、側面から見た場合の変形部31の形状を、センサ202やセンサ203のように、ドーム形状やかまぼこ形状にすることもできる。なお、このセンサ202やセンサ203などのドーム型やかまぼこ型は、物体に接触させる際に、平面のものを平面で接触させると生じやすい検出の誤差を抑制することができるため、ものに接触する場合、例えば、ロボットハンド1に設けられる場合などに適している。
さらに、変形部31の形状をセンサ204のようにドーナツ型にすることもできる。この場合、ドーナツ部分に軸を通すことができるので、例えば、ロボットハンド1などの各関節部などに設けられる場合に適している。
図22は、図2のセンサの他の構成例の側断面図を示している。
センサ211は、変形部31が、粘弾性体221とシリコンゴム222で構成されている点が、図2のセンサ21と異なっており、変形部31と固定部223の間に圧力検出部32が構成されている点は共通している。センサ211の変形部31は、粘弾性体221の表面に、例えば、二色成形法で、薄膜のシリコンゴム222が一体化されて形成されている。
センサ212は、圧力検出部32が、粘弾性体231と一体化され、その表面に、例えば、二色成形法で、薄膜のシリコンゴム232が一体化されて形成されている点が、図2のセンサ21と異なっているが、変形部31と固定部233の間に圧力検出部32が構成されている点は共通している。
以上、センサ211やセンサ212のように、粘弾性材料の表面に、二色成形法で、薄膜のシリコンゴムを一体化して変形部31を構成することで、表面の薄膜のシリコンゴムにより、内部(すなわち、粘弾性体)の柔らかさを損なうことなく、耐久性向上や摩擦のコントロールをすることが可能となる。
また、粘弾性体221および231を、静電気シールド機能を有する粘弾性体としたり、シリコンゴム222および232を、静電気シールド機能を有するように構成することもできる。これにより、センサ211やセンサ212の性能の低下を抑制することができる。
さらに、図23のセンサ241および242に示されるように、磁石原料が混練成形された粘弾性体磁石層251および261の上に、磁気シールド機能を有する粘弾性体層252および262をそれぞれ一体化し、これを粘弾性体221および231として用いると同時に、固定部223および233に磁気シールド機能を持たせ、さらに、圧力検出部32を例えば、磁束密度ベクトルの変化を検出する磁気検出素子で構成することにより、磁束変化を検出原理とした触覚センサ241および242を構成でき、この触覚センサ241および242により、上記説明した圧力を検出するセンサ21と同様に滑りを検出することが可能である。
なお、粘弾性体層252および262を磁気シールド機能を有するように構成したが、それらの代わりに、例えば、シリコンゴム222および232を磁気シールド機能を有するように構成してもよい。
以上説明したように、図2のセンサ21を、センサ面(入力面31a)に垂直な法線力を検出する分布型圧力センサと粘弾性材料を組み合わせた多層に構成し、このセンサ21を用いて、圧力時間変化量を求めるなどの信号処理を行うようにしたので、その法線力に直交する接線力による対象物の滑りとその方向を検出することができる。
なお、滑りとは、指と対象物の間の完全な「相対運動」だけでなく、「初期局所滑り」および「ずれ」も含まれている。また、圧力時間変化量を基にした検出手法であるため、「転がり運動」の滑りも検出することができる。
したがって、このセンサ21を適用した図1のロボットハンドマニピュレータにおいては、指と対象物の間の完全な「相対運動」、「初期局所滑り」、および「ずれ」も含めた「滑り」を検出することができるので、未然に物体の落下などを抑制して、正確に、任意物体の把持や操作(移動や運搬)を行うことができる。さらには、柔軟な素材であることから、人間に対する安全性も向上し、人間とより親和性の高い物理インタラクションの実現が可能になる。
また、柔軟な素材であることを活かして、人間と親和性の高い各種入力装置(例えば、リモートコントローラなど)に応用することも可能である。例えば、力、圧力による表現だけでなく、「材料自身のずれ」などの滑り現象を表現できることで、より多彩な表現入力手段を有する新感覚のヒューマンインタフェースの実現が考えられる。
以上により、本発明を適用したセンサによれば、ロボットハンドマニピュレータにおける正確な任意物体把持や操りを容易に行ったり、人とより親和性の高い物理的インタラクション(相互作用)を容易にとることが可能である。
なお、上記説明においては、センサ21がロボットハンドマニピュレータの腕や手などに設けられる場合を説明したが、本発明は、各種ロボットの関節機構部、ゲームのコントローラやジョイスティック、様々な入力装置、衝撃吸収装置、生態計測装置、ヘルスケア商品、スポーツ分野などの分野や製品などにも適用することができる。
また、上記説明においては、センサ21を1層の分布型圧力センサで構成する例を説明したが、例えば、変形部31の上層に圧力検出部を追加した、2つの分布型圧力センサで粘弾性体を挟む構成の2層タイプのセンサや、2層以上の分布型圧力センサで構成することも可能である。さらに、図23を参照して上述したように、変形部31に、磁石原料が混練成形された粘弾性磁石を用い、圧力検出部32を、例えば、粘弾性磁石の変形による磁束密度ベクトルの変化を検出する磁気検出素子(例えば、3軸)で構成することにより、磁束変化を検出原理とした触覚センサを構成でき、この触覚センサで、同様に滑りを検出することが可能である。
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。
一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
図24は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するパーソナルコンピュータ301の構成の例を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)311は、ROM(Read Only Memory)312、または記憶部318に記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)313には、CPU311が実行するプログラムやデータなどが適宜記憶される。これらのCPU311、ROM312、およびRAM313は、バス314により相互に接続されている。
CPU311にはまた、バス314を介して入出力インタフェース315が接続されている。入出力インタフェース315には、上述したセンサ21、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部316、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部317が接続されている。CPU311は、入力部316から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU311は、処理の結果を出力部317に出力する。
入出力インタフェース315に接続されている記憶部318は、例えばハードディスクからなり、CPU311が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。通信部319は、インターネットやローカルエリアネットワークなどのネットワークを介して外部の装置と通信する。
また、通信部319を介してプログラムを取得し、記憶部318に記憶してもよい。
入出力インタフェース315に接続されているドライブ320は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア321が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータなどを取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記憶部318に転送され、記憶される。
コンピュータにインストールされ、コンピュータによって実行可能な状態とされるプログラムを格納するプログラム記録媒体は、図24に示すように、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア321、または、プログラムが一時的もしくは永続的に格納されるROM312や、記憶部318を構成するハードディスクなどにより構成される。プログラム記録媒体へのプログラムの格納は、必要に応じてルータ、モデムなどのインタフェースである通信部319を介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を利用して行われる。
なお、本明細書において、プログラム記録媒体に格納されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
1 ロボットハンド, 21,21−1乃至21−14 センサ, 31 変形部, 32 圧力検出部, 33 固定部, 101 メイン制御部, 102−1乃至102−n アクチュエータ, 111 信号処理部, 131 圧力時間変化量算出部, 132 最大値探索部, 133 最小値探索部, 134 滑り検出部, 135 滑り方向算出部
Claims (9)
- 複数のエレメントで構成される圧力センサを備える検出装置において、
前記圧力センサのエレメント毎の圧力値の時間変化量を算出する時間変化算出手段と、
前記時間変化算出手段により算出された前記圧力値の時間変化量の空間分布から、正および負のピークを探索する探索手段と、
前記探索手段により探索された前記正および負のピークに基づいて、滑りを検出する滑り検出手段と、
前記滑り検出手段により検出された前記滑りの方向を算出する方向算出手段と
を備える検出装置。 - 前記滑り検出手段は、前記探索手段により探索された前記正および負のピークの値が共に所定の閾値以上であるか否かを判定し、前記正および負のピークの値が共に所定の閾値以上であると判定した場合、前記滑りを検出する
請求項1に記載の検出装置。 - 前記方向算出手段は、前記負のピークを示すエレメントの位置から、前記正のピークを示すエレメントの位置までのベクトルを求めることで、前記滑り検出手段により検出された前記滑りの方向を算出する
請求項1に記載の検出装置。 - 前記圧力センサは、その表面に粘弾性材料で構成される粘弾性体を有する
請求項1に記載の検出装置。 - 前記粘弾性体と前記圧力センサは、二色成形法により薄膜のシリコンゴムと一体化されている
請求項4に記載の検出装置。 - 前記粘弾性体は、静電気シールド材料が混合されて成形されている
請求項4に記載の検出装置。 - 前記粘弾性体と前記圧力センサは、二色成形法により薄膜のシリコンゴムと一体化されている
請求項6に記載の検出装置。 - 複数のエレメントで構成される圧力センサを備える検出装置の検出方法において、
前記圧力センサのエレメント毎の圧力値の時間変化量を算出し、
算出された前記圧力値の時間変化量の空間分布から、正および負のピークを探索し、
探索された前記正および負のピークに基づいて、滑りを検出し、
検出された前記滑りの方向を算出する
ステップを含む検出方法。 - 複数のエレメントで構成される圧力センサを備える検出装置に、所定の処理を行わせるプログラムであって、
前記圧力センサのエレメント毎の圧力値の時間変化を算出し、
算出された前記圧力値の時間変化量の空間分布から、正および負のピークを探索し、
探索された前記正および負のピークに基づいて、滑りを検出し、
検出された前記滑りの方向を算出する
ステップを含むプログラム。
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Legal Events
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20101005 |