JP2009030181A - 弾性不織布及びこれを用いた伸縮性不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】永久伸びが小さく且つ良好な成形性を有する弾性不織布、並びにこれを用いた伸縮性不織布及び吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の弾性不織布は、下記スチレン系ブロック共重合体(A)50〜97重量部と、下記スチレン系ブロック共重合体(B)3〜50重量部とを、両者の合計量が90〜100重量部となるように含有する樹脂組成物を用いた弾性繊維を含む。スチレン系ブロック共重合体(A):ビニル芳香族からなる重合体ブロックを20〜35重量%含み、MFRが10〜100g/10分、GPC法により測定される重量平均分子量が50000〜100000。スチレン系ブロック共重合体(B):ビニル芳香族からなる重合体ブロックを15〜35重量%含み、MFRが0.05〜20g/10分、GPC法により測定される重量平均分子量が70000〜130000。
【選択図】図1

Description

本発明は、特定の樹脂組成物を用いた弾性繊維を含む弾性不織布、並びに該弾性不織布を用いた伸縮性不織布及び吸収性物品に関する。
使い捨ておむつ等の吸収性物品には、ずれ落ち防止やフィット性向上のため、伸縮性の部材が用いられており、この伸縮性の部材として、エラストマー樹脂からなる弾性繊維を含む伸縮性不織布が用いられている。伸縮性不織布は、風合い、肌触り感に優れているため、使い捨ておむつのような触感の良さが求められる用途に特に好適である。
伸縮性不織布に求められる重要な特性の一つとして、永久伸び(たるみ)がある。永久伸びとは、材料に引張り荷重をかけ、その荷重を除いた後にも永久的に残る材料の伸び率であり(JIS K−6301参照)、永久歪の一種である。使い捨ておむつ等に用いられる伸縮性不織布の永久伸びは、ずれ落ち防止やフィット性向上の観点から、できるだけ小さいことが好ましい。永久伸びの大きい伸縮性不織布をおむつに用いると、おむつのフィット性が乏しくり、ずれ落ちが生じやすくなる。
伸縮性不織布の永久伸びは、該伸縮性不織布を形成するエラストマー樹脂の永久伸びに大きく左右され、エラストマー樹脂の永久伸びが小さければ、該エラストマー樹脂から形成される伸縮性不織布の永久伸びも小さくなる。しかし、従来のエラストマー樹脂は、永久伸びと不織布成形性(不織布への成形のし易さ)とが反比例の関係にあり、永久伸びが小さく、ずれ落ち防止やフィット性の向上に有効なエラストマー樹脂は、不織布に成形することが難しいという問題があった。このため、伸縮性不織布の材料としては、永久伸びがある程度大きく、ずれ落ち防止やフィット性の向上の点で難があっても、成形性の良いエラストマー樹脂を用いざるを得ないのが現状である。
成形性と伸縮素材としての要求特性との両立を図った伸縮性不織布として、例えば特許文献1には、エチレン・α−オレフィン共重合体の1種と、スチレン系ブロック共重合体の2種とを含む樹脂組成物を紡糸してなる伸縮性繊維から構成された伸縮性不織布が記載されている。しかし、この伸縮性不織布は、主として他の不織布との積層接着性の向上のために添加されたエチレン・α−オレフィン共重合体に起因して、永久伸びと不織布成形性との両立の点で十分なものとはなっていない。
特開2006−45291号公報
従って本発明の目的は、永久伸びが小さく且つ良好な成形性を有する弾性不織布、並びにこれを用いた伸縮性不織布及び吸収性物品を提供することにある。
本発明は、下記スチレン系ブロック共重合体(A)50〜97重量部と、下記スチレン系ブロック共重合体(B)3〜50重量部とを、両者の合計量が90〜100重量部となるように含有する樹脂組成物を用いた弾性繊維を含む不織布を提供することにより前記目的を達成したものである。
スチレン系ブロック共重合体(A):ビニル芳香族からなる重合体ブロックを20〜35重量%含み、メルトフローレート(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)が10〜100g/10分、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量が50000〜100000。
スチレン系ブロック共重合体(B):ビニル芳香族からなる重合体ブロックを15〜35重量%含み、メルトフローレート(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)が0.05〜20g/10分、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量が70000〜130000。
また本発明は、前記弾性不織布を有し、該弾性不織布からなる弾性繊維層の少なくとも一面に、実質的に非弾性の非弾性繊維層が配されている伸縮性不織布を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、前記伸縮性不織布を用いた吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
本発明の弾性不織布及び伸縮性不織布は、永久伸びが小さく且つ良好な不織布成形性を有する樹脂組成物を含んで構成されているため、成形性に優れ、また、使い捨ておむつ等の吸収性物品をはじめとする各種の着衣、その他の人体に装着される種々の物品の形成材料として適用された場合には優れたフィット性を示し、着衣のずれ落ちを効果的に防止することができる。また、本発明の吸収性物品は、その構成部材に本発明の伸縮性不織布が適用されているため、装着中のフィット性に優れ、ずれ落ちしにくい。
以下、先ず、本発明で用いられる樹脂組成物及び弾性繊維について順次説明する。該弾性繊維は、該樹脂組成物を必須成分として含有する繊維である。
[樹脂組成物]
本発明で用いられる樹脂組成物は、スチレン系ブロック共重合体(A)とスチレン系ブロック共重合体(B)とを必須成分として含有する。
前記スチレン系ブロック共重合体(A)は、ビニル芳香族からなる重合体ブロック(以下、重合体ブロック(a)ともいう)を、全構造単位に対して25〜35重量%、好ましくは28〜33重量%、更に好ましくは29〜31重量%含み、メルトフローレート(MFR)が30〜100g/10分、好ましくは40〜70g/10分、更に好ましくは50〜60g/10分であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量が50000〜100000、好ましくは50000〜80000、更に好ましくは50000〜60000である。
また、前記スチレン系ブロック共重合体(B)は、前記重合体ブロック(a)を、全構造単位に対して15〜35重量、好ましくは15〜30重量%、更に好ましくは18〜30重量%含み、MFRが0.05〜20g/10分、好ましくは0.1〜10g/10分、更に好ましくは0.1〜7g/10分であり、GPC法により測定される重量平均分子量が70000〜130000、好ましくは70000〜110000、更に好ましくは70000〜95000である。
尚、MFRは、ASTM D−1238に準拠して測定され、その測定条件は、温度230℃、荷重2.16kgである。
また、GPC法により測定される重量平均分子量は、カラム:TSKgel G−2000H、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフラン(THF)、流量:1.0mL/min、試料濃度:10mg/5mL−THF、注入量:500μLの条件で測定され、ポリスチレンにより換算した値である。なお、分析試料には、前処理として、試料10mgを5mLのTHF(テトラヒドロフラン)に常温で10分間溶解後、孔径0.45μmの焼結フィルターでろ過したものを用いる。
本発明で用いられる樹脂組成物は、前記のように、重合体ブロック(a)の含有率、MFR及び重量平均分子量という3つの物性で特徴付けられる2種類のスチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)を含有することにより、永久伸びの低減と不織布成形性の向上との両立を実現している。スチレン系ブロック共重合体(A)は、主として不織布成形性の向上に寄与し、スチレン系ブロック共重合体(B)は、主として永久伸びの低減に寄与する。
前記の2種類のスチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)の組み合わせとしては、1)スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)間で前記の3つの物性(重合体ブロック(a)の含有率、MFR、重量平均分子量)の全てが異なる組み合わせ、2)(A)及び(B)間でMFRと他の2つの物性のうちの何れか一方との2つの物性が異なり、残りの1つの物性は同一という組み合わせ、あるいは3)(A)及び(B)間でMFRのみが異なり、他の2つの物性は同一という組み合わせがある。上記1)〜3)の何れの組み合わせも本発明の範囲内である。
このように、前記の2種類のスチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)は、少なくともMFRが異なっており、これら2種類のスチレン系ブロック共重合体は、前記の3つの物性の中でも特にMFRによって区別される。MFRを前記範囲に調整する方法としては、重合体ブロック(a)の含有率・重量平均分子量を調整することが挙げられる。重合体ブロック(a)の含有率を高くすればMFRは低くなり、重量平均分子量を高くすればMFRは低くなる。
前記の2種類のスチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)は、前記の3つの物性(重合体ブロック(a)の含有率、MFR、重量平均分子量)以外の他の物性によっても特徴付けられる。例えば、重合体ブロック(a)以外の重合体ブロックの構造が挙げられる。
前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)それぞれに期待される前記作用効果を確実に発現させ、永久伸びの低減と不織布成形性の向上との両立を図るために、本発明の樹脂組成物は、スチレン系ブロック共重合体(A)50〜97重量部、好ましくは60〜95重量部、更に好ましくは70〜95重量部と、スチレン系ブロック共重合体(B)3〜50重量部、好ましくは5〜40重量部、更に好ましくは5〜30重量部とを、両者の合計量が90〜100重量部となるように含有する。
前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)について更に説明すると、スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)にそれぞれ含有される前記重合体ブロック(a)(ビニル芳香族からなる重合体ブロック)を構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、ビニルトルエン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられる。重合体ブロック(a)は、これらのビニル芳香族化合物の1種単独で構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。これらのビニル芳香族化合物のうち、重合の容易性や汎用性の点からスチレンを用いることが好ましい。
前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)は、前記重合体ブロック(a)に加えて、共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(以下、重合体ブロック(b)ともいう)を含んでいる。
前記重合体ブロック(b)を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、フェニルブタジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。重合体ブロック(b)は、これらの共役ジエン化合物の1種単独で構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。また、その後に水素添加されて二重結合の一部又は全部が飽和された状態でも良い。
前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)それぞれにおける前記重合体ブロック(b)の量は、各スチレン系ブロック共重合体中における、上述した前記重合体ブロック(a)の量の残部である。即ち、スチレン系ブロック共重合体(A)中における重合体ブロック(b)の量は、全構造単位に対して65〜75重量%、好ましくは67〜72重量%、更に好ましくは69〜71重量%である。また、スチレン系ブロック共重合体(B)中における重合体ブロック(b)の量は、全構造単位に対して65〜85重量%、好ましくは70〜85重量%、更に好ましくは70〜82重量%である。
前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)それぞれにおける前記重合体ブロック(a)と前記重合体ブロック(b)との配列様式としては種々のものがあり、例えば、(a)−(b)−(a)型のトリブロック共重合体、((a)−(b))n、((a)−(b))n−(a)、((a)−(b))nX(ここでnは2以上の整数、Xはカップリング残基)で示されるマルチブロック共重合体などが挙げられる。これらの配列様式の中でも、特に、
(a)−(b)−(a)型のトリブロック共重合体は、永久伸びが小さい点で好ましい。
前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、SBSの水素添加物であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、SISの水素添加物であるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。これらの中でも、SEBS、SEPS、SEEPSは、熱安定性・耐候性の点で好ましい。
特に、前記スチレン系ブロック共重合体(A)が、SEPSであり、前記スチレン系ブロック共重合体(B)が、SEEPSであることが好ましい。即ち、本発明の樹脂組成物は、スチレン系ブロック共重合体(A)として上述した物性を有するSEPSのみを含有し、スチレン系ブロック共重合体(B)として上述した物性を有するSEEPSのみを含有する構成であることが好ましい。斯かる構成により、少量のブロック共重合体(B)としてのSEEPSの添加による、SEPSの大きな永久伸び低減効果が得られる。
前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)は、それぞれ、例えば次の工程で合成できる。先ず、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒に、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物を適宜の順序で添加し、有機リチウム化合物や金属ナトリウム等を開始剤としてアニオン重合を行い共役ジエンに基づく二重結合を有する共重合体を得る。
次に、この共重合体の共役ジエンに基づく二重結合に水素を添加して、目的とするスチレン系ブロック共重合体(A)又は(B)を得る。共役ジエンに基づく二重結合の水素添加率は、その80%以上、特に90%以上であることが、耐熱性、耐候性の点から好ましい。水素添加反応は、白金、パラジウム等の貴金属系触媒や、有機ニッケル化合物、有機コバルト化合物又はこれらの化合物と他の有機金属化合物との複合触媒を用いて行うことができる。水素添加率は、ヨウ素価測定法によって算出される。
前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)としては、市販品を用いることもできる。スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)として本発明で好ましく用いられる市販品としては、例えば、クレイトンポリマー社の商品名「クレイトン」、旭化成ケミカルズ株式会社の商品名「タフテック」及び「タフプレン」、株式会社クラレの商品名「セプトン」「ハイブラー」シリーズ等が挙げられる。
本発明で用いられる樹脂組成物は、樹脂成分として前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)のみを含有して構成されることによって、永久伸びと不織布成形性との両立を実現するものであるが、必要に応じ本発明の目的を損なわない範囲で、更に他の1種又は2種以上の樹脂や可塑剤を含有して構成されていてもよい。本発明で用いられる樹脂組成物が前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)並びに他の樹脂や可塑剤を含有する場合、該樹脂組成物における該スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)の合計含有量は90〜99重量%、特に95〜99重量%であることが好ましい。但し、特に、永久伸びの低減効果を最大限に発現させる観点から、本発明で用いられる樹脂組成物は、樹脂成分としてスチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)のみを含有して構成されることが好ましい。
本発明で用いられる樹脂組成物が前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)並びに他の樹脂を含有する場合、当該他の樹脂としては、例えば、ゴム、又はポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー等を用いることができる。また、熱可塑性エラストマー以外の樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらは2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、本発明で用いられる樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、当該可塑剤としては、パラフィン系オイル、パラフィン系ワックス、ナフテン系オイル、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、低分子量ポリエチレン等を用いることができる。これらは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明で用いられる樹脂組成物は、そのMFRが15〜100g/10分、特に20〜50g/10分であり、その溶融張力が230℃において0.1〜0.35cN、特に0.15〜0.30cNであることが好ましい。MFR及び溶融張力がそれぞれ上記範囲にあることにより、成形性が良く、成形品の外観が良いという効果が奏される。MFRの調整は、例えば、該スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)の比率の調整や、熱可塑性エラストマー以外の樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂等および可塑剤の添加によって行なうことができる。溶融張力の調整も同様に、例えば、該スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)の比率の調整や、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂等可塑剤の添加によって行なうことができる。上述の如く構成される本発明で用いられる樹脂組成物は、そのMFR及び溶融張力がそれぞれ上記範囲にある。尚、MFRの測定方法は上述の通りであり、溶融張力は、キャピログラフ(東洋精機製)を用いて測定される。
前記キャピログラフを用いた溶融張力の測定条件は次の通りである。バレルのシリンダー直径は10mm、ピストン直径は9.55mmである。ダイのノズル孔の直径は1.0mmである。バレルを230℃に保ち、気泡が入らないように少量ずつ樹脂ペレットをシリンダー内に入れながら棒で押して充填する。樹脂を充填後、樹脂温度が安定するまで約5分間保持する。溶融粘度は、ピストン速度5mm/分における粘度の安定点で測定する。この時のせん断速度は60sec-1である。溶融張力は、同温度にてピストン速度15mm/分、ドロー速度15m/分におけるテンションを測定して求められる。測定結果はN=3の平均値とした。
本発明で用いられる樹脂組成物は、そのガラス転移点温度Tgが−70〜−45℃、特に−60〜−50℃であることが、これら共重合体を含む繊維の伸縮特性の一層の向上の点、及び該繊維がべたつき感を呈することを抑える点から好ましい。
また、本発明で用いられる樹脂組成物は、その示差走査熱量分析(DSC)による変曲点温度が200〜250℃、特に215〜250℃であることが好ましい。この理由は、物理架橋点(スチレン系エラストマーの場合はスチレンブロック同士)の結合力が比較的低い温度で弱くなるので、温度を上げた際に粘度の低下が大きくなるからである。
前記ガラス転移点温度は、市販の粘弾性測定装置を用いて求めることができる。ガラス転移点温度の測定条件は、測定対象である樹脂組成物からなる厚さ2mm幅5mm長さ2cmのシートを、窒素雰囲気中10Hz引っ張りモードで−75℃から昇温速度5℃/分にて加熱して測定して求めることができる。
また、前記DSCによる変曲点温度は、DSCによる測定で求められる。DSCによる変曲点温度の測定条件は、3〜5mgの試料を窒素雰囲気中で、−60℃から昇温速度10℃/分にて加熱して測定して求めることができる。
本発明で用いられる樹脂組成物は、前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)、又は前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)並びに前記他の樹脂を、種々の公知の方法で溶融混合して得られる。例えば、上記各成分を同時に、または逐次的に、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー等に装入して混合した後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練装置で溶融混練することによって得られる。
本発明で用いられる樹脂組成物には、前記樹脂成分(スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)、他の樹脂)以外に、必要に応じ、公知の耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、滑剤、スリップ剤、核剤、難燃剤、顔料、染料、無機あるいは有機充填剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で含有させることができる。
[弾性繊維]
本発明で用いられる弾性繊維は、上述した樹脂組成物、即ち、永久伸びが従来のこの種の樹脂組成物に比べて小さく且つ不織布成形性が良好な樹脂組成物を含んでいる繊維である。この弾性繊維は、上述した樹脂組成物を含んでいるため、例えば使い捨ておむつ用の不織布ライクなシートの材料として用いた場合には、シートへの成形を容易に行なうことができ、また成形によって得られたシートは、おむつのずれ落ち防止やフィット性の向上に有効である。
本発明で用いられる弾性繊維は、樹脂成分として上述した樹脂組成物のみから構成されていてもよく、あるいは該樹脂組成物と他の1種又は2種以上の樹脂や可塑剤とを含有して構成されていてもよい。弾性繊維が上述した樹脂組成物及び他の樹脂を含有する場合、弾性繊維における該樹脂組成物の含有量は90〜99重量%、特に95〜99重量%であることが好ましい。また、当該他の樹脂や可塑剤としては、前記[樹脂組成物]の項で述べた「他の樹脂や可塑剤」を用いることができる。これらの中でも特に、ポリプロピレンおよびパラフィン系オイルは、汎用性が高くかつ前記樹脂組成物との相溶性が良いため、本発明でも用いることができる。
本発明で用いられる弾性繊維が、上述した樹脂組成物及び他の樹脂を含有する場合、該弾性繊維の繊維形態としては、(イ)該樹脂組成物と他の樹脂とのブレンドポリマーからなる単一繊維、(ロ)該樹脂組成物と他の樹脂とを含有する複合繊維の形態が挙げられる。該複合繊維としては、芯鞘型複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維、分割繊維などが挙げられる。
上述したスチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)を含有する樹脂組成物は、それ単独で溶融紡糸しても紡糸性が非常に良好である。これに対して従来のスチレン系エラストマーは、それ単独での紡糸性が低いので、他の樹脂を併用して紡糸性を高めていた。しかしその分、スチレン系エラストマーが本来的に有する伸縮特性が損なわれていた。従って、単独で溶融紡糸可能な上述した樹脂組成物は、それが本来的に有する伸縮性が損なわれない観点から極めて有利である。つまり、本発明で用いられる弾性繊維は、樹脂成分として、上述した樹脂組成物のみから構成されていることが特に好ましい。
また従来、スチレン系エラストマーの溶融粘度を下げる目的で、パラフィンオイルなどのオイル成分を含有させて繊維化する試みが行われてきた。オイル成分は繊維の表面にブリードアウトする場合があり、それに起因して他の樹脂との融着性が低下することがある。これに対して本発明で用いられる弾性繊維にオイル成分を添加する必要はない。オイル成分が含まれていない弾性繊維は、弾性繊維同士の融着性、及び非弾性繊維との融着性が高くなる。その結果、後述する図1に示す本発明の伸縮性不織布の実施形態においては、弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3との接合が良好になり、層間剥離が起こりづらくなる。また伸縮性不織布10の表面の毛羽立ちも抑えられる。更に、オイル成分が含まれていないことで、弾性繊維の溶融紡糸時に、揮発成分の発生が少なくなり、環境負荷が小さくなる。これらの観点から、本発明の弾性繊維はオイル成分を実質的に含んでいないことが好ましい。実質的に含んでいないとは、オイル成分を全く含まないことを意味せず、弾性繊維の製造時に不可避的に混入するオイル成分は許容する趣旨である。
本発明で用いられる弾性繊維は、長繊維及び短繊維の何れの形態であってもよい。長繊維とは50mm以上の長さのものをいい、連続繊維も含むものである。弾性繊維は好ましくは連続繊維の形態である。弾性繊維が連続繊維であると、ノズルリップからの熱風によって連続して伸長されるので、繊維径が細くなるばかりでなく、繊維径のバラツキが少なくなるという利点があるからである。また、冷風にて延伸する場合も同様の傾向となる。これによって、本発明で用いられる弾性繊維を用いて不織布を製造した場合、該不織布を透かして見たときの地合いが良好となり、また、不織布の伸縮特性のバラツキが小さくなる。繊維径の細いものが得られるということは、熱風及び冷風の容量を小さくでき、製造コストの点でもメリットがある。
本発明で用いられる弾性繊維は、例えば溶融した樹脂をノズル孔より押し出し、この押し出された溶融状態の樹脂を熱風により伸長させることによって繊維を細くするメルトブローン法や、半溶融状態の樹脂を冷風や機械的ドロー比によって延伸するスパンボンド法によって製造される。また、溶融紡糸法の一種であるスピニングブローン法によって弾性繊維を製造することもできる。
次に、上述した樹脂組成物及び弾性繊維を用いた本発明の弾性不織布及び伸縮性不織布について順次説明する。
[弾性不織布]
本発明の弾性不織布は、上述した弾性繊維(上述した樹脂組成物を用いた弾性繊維)を含んでいる不織布である。本発明の弾性不織布における該弾性繊維の含有量は、該弾性繊維(樹脂組成物)による効果を充分に発揮させる観点から、該弾性不織布の全重量に対して、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70〜100重量%である。
本発明の弾性不織布は、繊維成分として、上述した弾性繊維のみを含んでいても良く、あるいは該弾性繊維に加えて、該弾性繊維以外の他の繊維を含んでいても良い。本発明の弾性不織布における他の繊維の含有量は、該弾性不織布の全重量に対して、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは0〜30重量%である。
本発明の弾性不織布で用いることのできる前記他の繊維としては、上述した弾性繊維(上述した樹脂組成物を用いた弾性繊維)以外の他の弾性繊維、及び非弾性繊維が挙げられる。本発明の弾性不織布は、他の弾性繊維の1種以上、及び/又は非弾性繊維の1種以上を含んでいても良い。本発明の弾性不織布に他の弾性繊維を含有させることにより、不織布の伸縮特性が高まる、低コスト化が図られる(生産性が高まる)等の利点が得られる場合がある。また、本発明の弾性不織布に非弾性繊維を含有させることにより、肌触りや風合いが良好になる、強度が高まる等の利点が得られる場合がある。
本発明の弾性不織布で用いることのできる他の弾性繊維(上述した樹脂組成物を用いた弾性繊維以外の弾性繊維)としては、上述した弾性繊維(上述した樹脂組成物を用いた弾性繊維)と共に不織布を形成し得るものであればその種類に特に制限はない。他の弾性繊維としては、例えば上述した樹脂組成物とは異なる種類のスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーを含有する弾性繊維が挙げられる。
本発明の弾性不織布が上述した弾性繊維に加えて他の弾性繊維を含んで構成されている場合、該弾性不織布に含有されている全ての弾性繊維に占める他の弾性繊維の割合は、好ましくは5〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%である。
また、本発明の弾性不織布で用いることのできる非弾性繊維としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。非弾性繊維は、短繊維でも長繊維でも良く、親水性でも撥水性でも良い。また、非弾性繊維として、芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの非弾性繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の弾性不織布が弾性繊維(他の弾性繊維を含む)及び非弾性繊維を含んで構成されている場合、該弾性不織布における両繊維の重量比は、弾性繊維/非弾性繊維=20/80〜80/20、特に弾性繊維/非弾性繊維=30/70〜70/30であることが、良好な伸縮特性を有し、高い強度を実現させ、肌触りが良好で、風合いが向上する点から好ましい。
本発明の弾性不織布は、例えば、スピニングブローン法、スパンボンド法、メルトブローン法等の公知の不織布形成法によって製造することができる。
本発明の弾性不織布の坪量や厚みは、その具体的な用途に応じて適切に調整できる。
本発明の弾性不織布は、伸ばすことができ且つ伸ばした力から解放したときに収縮する性質を有するものである。本発明の弾性不織布は、少なくとも面と平行な一方向において、100%伸長後に収縮させたときの残留歪みが20%以下、特に10%以下であることが好ましい。この値は、少なくとも、MD方向及びCD方向の何れか一方において満足することが好ましく、両方向において満足することがより好ましい。
[伸縮性不織布]
本発明の伸縮性不織布は、上述した本発明の弾性不織布を有し、該弾性不織布からなる弾性繊維層の少なくとも一方の面に、実質的に非弾性の非弾性繊維層が配されている。
図1には、本発明の伸縮性不織布の好ましい一実施形態における断面構造の模式図が示されている。本実施形態の伸縮性不織布10は、弾性繊維層1の両面に、同一の又は異なる、実質的に非弾性の非弾性繊維層2,3が積層されて構成されている。弾性繊維層1は、上述した本発明の弾性不織布からなる。
非弾性繊維層2,3は、伸長性を有するが、実質的に非弾性のものである。ここでいう、伸長性は、構成繊維自体が伸長する場合と、構成繊維自体は伸長しなくても、繊維同士の交点において熱融着していた両繊維同士が離れたり、繊維同士の熱融着等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたりして、繊維層全体として伸長する場合の何れであっても良い。
非弾性繊維層2,3を構成する繊維としては、弾性繊維層1に含まれ得る伸長性の非弾性繊維として、前記[弾性不織布]の項で述べたものと同様のものを用いることができる。非弾性繊維層2,3は、連続フィラメント又は短繊維のウエブ又は不織布であり得る。特に、短繊維のウエブであることが、厚みのある嵩高な非弾性繊維層2,3を形成し得る点から好ましい。2つの非弾性繊維層2,3は、構成繊維の材料、坪量、厚み等に関して同じであっても良く、或いは異なっていてもよい。芯鞘型の複合繊維の場合、芯がPET、PP、鞘が低融点PET、PP、PEが好ましい。特に非弾性繊維としてこれらの複合繊維を用いると、弾性繊維層1の構成繊維との熱融着が強くなり、層剥離が起こりにくい点で好ましい。
2つの非弾性繊維層2,3のうち少なくとも一方は、その厚みが弾性繊維層1の厚みの1.2〜20倍、特に1.5〜5倍になっていることが好ましい。一方、坪量に関しては、2つの非弾性繊維層2,3のうち少なくとも一方は、その坪量よりも弾性繊維層1の坪量の方が高くなっていることが好ましい。換言すれば、非弾性繊維層は、弾性繊維層よりも厚く且つ坪量が小さいことが好ましい。厚みと坪量とがこのような関係になっていることで、非弾性繊維層は、弾性繊維層に比較して厚みのある嵩高なものとなる。その結果、伸縮性不織布10は柔らかで風合いの良好なものとなる。
非弾性繊維層2,3の厚みそのものに関しては、0.05〜5mm、特に0.1〜1mmであることが好ましい。一方、弾性繊維層1の厚みそのものに関しては、非弾性繊維層2,3の厚みよりも小さいことが好ましく、具体的には0.01〜2mm、特に0.1〜0.5mmであることが好ましい。厚みの測定は、伸縮性不織布を20±2℃、65±2%RHの環境下に無荷重にて2日以上放置した後、次の方法にて求める。伸縮性不織布を0.5cN/cm2の荷重にて平板間に挟む。その状態下に、伸縮性不織布断面をマイクロスコープにより50〜200倍の倍率で観察し、各視野において平均厚みをそれぞれ求める。3視野の厚みの平均値を、伸縮性不織布の厚みとする。
非弾性繊維層2,3の坪量そのものに関しては、弾性繊維層1の表面を均一に覆う観点及び残留歪みの観点から、それぞれ1〜60g/m2、特に5〜15g/m2であることが好ましい。一方、弾性繊維層1の坪量そのものに関しては、伸縮特性及び残留歪みの観点から、非弾性繊維層2,3の坪量よりも大きいことが好ましい。具体的には5〜80g/m2、特に10〜40g/m2であることが好ましい。
構成繊維の繊維径に関し、弾性繊維層1の構成繊維の繊維径は、少なくとも一方の非弾性繊維層2,3の構成繊維の繊維径の1.2〜5倍、特に1.2〜2.5倍であることが好ましい。これに加えて弾性繊維層1の構成繊維は、通気性及び伸縮特性の観点から、その繊維径が5μm以上、特に10μm以上が好ましく、100μm以下、特に40μm以下であることが好ましい。一方、非弾性繊維層2,3の構成繊維は、その繊維径が1〜30μm、特に10〜20μmであることが好ましい。つまり、非弾性繊維層2,3の構成繊維としては、弾性繊維層1の構成繊維よりも細めのものを用いることが好ましい。これによって、表層に位置する非弾性繊維層2,3の構成繊維の融着点が増加する。融着点の増加は、伸縮性不織布10の毛羽立ち発生の防止に有効である。さらに、細めの繊維を用いることで肌触りの良い伸縮性不織布10が得られる。
図1に示すように、弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3とは、弾性繊維層1の構成繊維が繊維形態を保った状態で、繊維交点の熱融着によって全面で接合されている。つまり、部分接合されている従来の伸縮性不織布とは、接合状態が異なっている。弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3とが全面接合されている本実施形態の伸縮性不織布10においては、弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3との界面及びその近傍において、弾性繊維層1の構成繊維と、非弾性繊維層2,3の構成繊維との交点が熱融着しており、実質的に全面で均一に接合されている。全面で接合されていることによって、弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3との間に浮きが生じること、つまり、両層が離間して空間が形成されることが防止される。両層間に浮きが生じると、弾性繊維層と非弾性繊維層との一体感がなくなり伸縮性不織布10の風合いが低下する傾向にある。本実施形態によれば、あたかも一層の不織布の如き一体感のある多層構造の伸縮性不織布が提供される。
「弾性繊維層1の構成繊維が繊維形態を保った状態」とは、弾性繊維層1の構成繊維のほとんどが、熱や圧力等を付与された場合であっても、フィルム状、又はフィルム−繊維構造に変形していない状態をいう。弾性繊維層1の構成繊維が繊維形態を保った状態にあることで、本実施形態の伸縮性不織布10には十分な通気性が付与されるという利点がある。
弾性繊維層1は、その層内において、構成繊維の交点が熱融着している。同様に、非弾性繊維層2,3も、その層内において、構成繊維の交点が熱融着している。
2つの非弾性繊維層2,3のうちの少なくとも一方においては、その構成繊維の一部が弾性繊維層1に入り込んだ状態、及び/又は、弾性繊維層1の構成繊維の一部が少なくとも一方の非弾性繊維層2,3に入り込んだ状態になっている。このような状態になっていることで、弾性繊維層1と、非弾性繊維層2,3との一体化が促進され、両層間に浮きが生じることが一層効果的に防止される。結果としてそれぞれの層の表面に追従した形で層と層が組み合わさっている状態となる。非弾性繊維層の構成繊維は、その一部が弾性繊維層1に入り込み、そこにとどまっているか、あるいは弾性繊維層1を突き抜けて、他方の非弾性繊維層にまで到達している。それぞれの各層において表面繊維間を結ぶ面をマクロ的に想定したとき、この面から層の内側に形成される繊維空間に、他の層の構成繊維の一部が前記層の断面厚み方向へ入り込んでいる。非弾性繊維層の構成繊維が弾性繊維層1に入り込み、そこにとどまっている場合、該構成繊維は、更に弾性繊維層1の構成繊維と交絡していることが好ましい。同様に、非弾性繊維層の構成繊維が弾性繊維層1を突き抜けて、他方の非弾性繊維層にまで到達している場合には、該構成繊維は、他方の非弾性繊維層の構成繊維と交絡していることが好ましい。これは伸縮性不織布の厚み方向断面をSEMやマイクロスコープなどで観察した際に、層間において実質的に空間が形成されていないことで確認される。また、ここで言う「交絡」とは、繊維同士が十分に絡み合っている状態を意味し、繊維層を単に重ね合わせただけの状態は交絡に含まれない。交絡しているか否かは、例えば、繊維層を単に重ね合わせた状態から、繊維層を剥離するときに要する力と、繊維層を重ね合わせ、それに熱融着を伴わないエアスルー法を適用した後に、繊維層を剥離する力とを比較して、両者間に実質的に差異が認められる場合には、交絡していると判断できる。
非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維を非弾性繊維層に入り込ませるには、非弾性繊維層の構成繊維と弾性繊維層の構成繊維を熱融着させる処理前において非弾性繊維または弾性繊維の少なくともどちらかがウエブ状態(熱融着していない状態)であることが好ましい。構成繊維を他の層に入り込ませる観点から、ウエブ状態である繊維層は、短繊維の方が長繊維に比べ自由度が高いことから好ましい。
また、非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維を非弾性繊維層に入り込ませるには、エアスルー法を用いることが好ましい。エアスルー法を用いることで、相対する繊維層に構成繊維を入り込ませ、また、相対する繊維層から構成繊維を入り込ませることが容易となる。またエアスルー法を用いることで、非弾性繊維層の嵩高さを維持しつつ、非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層1に入り込ませることが容易となる。非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層1を突き抜けさせて他方の非弾性繊維層にまで到達させる場合にも、同様にエアスルー法を用いることが好ましい。特に、ウエブ状態の非弾性繊維層を、弾性繊維層と積層して、エアスルー法を用いることが好ましい。この場合、弾性繊維層はその構成繊維同士が熱融着をしていてもよい。さらに、後述する製造方法において説明するように、特定の条件下でエアスルー法を行うことで、また、熱風の通りをよくするため伸縮性不織布の通気性、特に弾性繊維層の通気度を高いものとすることで、繊維をより均一に入り込ませることができる。エアスルー法以外の方法、例えばスチームを吹きかける方法も使用することができる。また、スパンレース法、ニードルパンチ法などを用いることも可能であるが、その場合には非弾性繊維層の嵩高さが損なわれたり、表面に弾性繊維層の構成繊維が表面にでてきてしまい、得られる伸縮性不織布の風合いが低下する傾向にある。
特に、非弾性繊維層の構成繊維が、弾性繊維層1の構成繊維と交絡している場合には、エアスルー法のみによって交絡していることが好ましい。
エアスルー法によって繊維を交絡させるためには、気体の吹きつけ圧、吹きつけ速度、繊維層の坪量や厚み、繊維層の搬送速度等を適切に調整すればよい。通常のエアスルー不織布を製造するための条件を採用しただけでは、非弾性繊維層の構成繊維と弾性繊維層1の構成繊維とを交絡させることはできない。後述する製造方法において説明するように、特定の条件下でエアスルー法を行うことによって、本発明において目的とする伸縮性不織布が得られる。
エアスルー法では一般に、所定温度に加熱された気体を、繊維層の厚み方向に貫通させている。その場合には、繊維の交絡及び繊維交点の融着が同時に起こる。しかし本実施形態においては、エアスルー法によって各層内の構成繊維間で繊維交点を融着させることは必須ではない。換言すれば、エアスルー法は、非弾性繊維層の構成繊維を、弾性繊維層1に入り込ませるために、或いは、該構成繊維を弾性繊維層1の構成繊維と交絡させ、そして、非弾性繊維層の構成繊維と弾性繊維層の構成繊維とを熱融着させるために必要な操作である。また、繊維が入り込む方向は、加熱された気体の通過方向と非弾性繊維層と弾性繊維層との位置関係によって変わる。非弾性繊維層は、エアスルー法によって、その構成繊維内で繊維交点が融着されたエアスルー不織布(非弾性エアスルー不織布)となることが好ましい。
以上の説明から明らかなように、本実施形態の伸縮性不織布の好ましい形態においては、上述した本発明の弾性不織布からなる弾性繊維層の少なくとも一面に、実質的に非弾性の非弾性繊維層が配されており、該弾性繊維層と該非弾性繊維層とは、該弾性繊維層の構成繊維がその繊維形態を保った状態で、繊維交点の熱融着によって全面接合されており、該非弾性繊維層の構成繊維の一部が該弾性繊維層に入り込んだ状態、及び/又は、該弾性繊維層の構成繊維の一部が該非弾性繊維層に入り込んだ状態になっている。
特に本実施形態においては、実質的に非弾性の非弾性エアスルー不織布(非弾性繊維層)の厚み方向内部に、構成繊維が繊維形態を保った状態の弾性繊維層1が含まれており、該非弾性エアスルー不織布の構成繊維の一部が弾性繊維層1に入り込んだ状態、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維の一部が非弾性エアスルー不織布に入り込んだ状態になっている。更に好ましい形態においては、非弾性エアスルー不織布の構成繊維の一部が弾性繊維層1の構成繊維とエアスルー法によってのみ交絡している。弾性繊維層1が非弾性エアスルー不織布の内部に含まれていることによって、弾性繊維層1の構成繊維は、実質的に伸縮性不織布の表面には存在しないことになる。このことは、弾性繊維に特有のべたつき感が生じない点から好ましいものである。
図1には示していないが、本実施形態の伸縮性不織布10にはエンボス加工が施されていてもよい。エンボス加工は、弾性繊維層1と非弾性繊維層2,3との接合強度を一層高める目的で行われる。従って、エアスルー法によって弾性繊維層1と非弾性繊維層2,3とを十分に接合できれば、エンボス加工を行う必要はない。なお、エンボス加工は、構成繊維同士を接合させるが、エアスルー法と異なり、エンボス加工によっては、構成繊維同士は交絡しない。
本実施形態の伸縮性不織布10は、その面内方向の少なくとも一方向に伸縮性を有する。面内のすべての方向に伸縮性を有していてもよい。その場合には、方向によって伸縮性の程度が異なることは妨げられない。最も伸縮する方向に関し、伸縮性の程度は、100%伸長時の荷重が20〜500cN/25mm、特に40〜150cN/25mmであることが好ましい。また100%伸長状態から収縮させたときの残留歪みが15%以下、特に10%以下であることが好ましい。
本実施形態の伸縮性不織布10は、その良好な風合いや、毛羽立ち防止性、伸縮性、通気性の点から、外科用衣類や清掃シート等の各種の用途に用いることができる。特に生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の構成材料として好ましく用いられる。例えば、使い捨ておむつの外面を構成するシート、胴回り部やウエスト部、脚周り部等に弾性伸縮性を付与するためのシート等として用いることができる。また、ナプキンの伸縮性ウイングを形成するシート等として用いることができる。また、それ以外の部位であっても、伸縮性を付与したい部位等に用いることができる。伸縮性不織布の坪量や厚みは、その具体的な用途に応じて適切に調整できる。例えば吸収性物品の構成材料として用いる場合には、坪量20〜160g/m2程度、厚み0.1〜5mm程度とすることが望ましい。
また、本発明の伸縮性不織布は、弾性繊維層の構成繊維が繊維形態を保っていることに起因して、柔軟であり、また通気性が高くなっている。柔軟性の尺度である曲げ剛性に関し、本発明の伸縮性不織布は、曲げ剛性値が10cN/30mm以下と低いものとなっていることが好ましい。通気性に関しては、通気度が16m/(kPa・s)以上となっていることが好ましい。また、伸縮方向の最大伸度は100%以上であることが望ましい。
曲げ剛性は、JIS L−1096に準拠して測定され、ハンドルオメーターによる押し込み量8mm、スリット幅10mmの条件において、それぞれ流れ方向とそれに対して直角方向に曲げた際の平均値として得られる。通気度は、カトーテック製AUTOMATIC AIR−PERMEABILITY TESTER KES-F8-AP1により通気抵抗を測定し、その逆数として求められる。
次に、本実施形態の伸縮性不織布10の好ましい製造方法を、図2を参照しながら説明する。図2には、本実施形態の伸縮性不織布10の製造方法に用いられる好ましい製造装置が模式的に示されている。図2に示す装置は、製造工程の上流側から下流側に向けて、ウエブ形成部100、熱風処理部200及び延伸部300をこの順で備えている。
ウエブ形成部100には、第1ウエブ形成装置21、第2ウエブ形成装置22及び第3ウエブの形成装置23が備えられている。第1ウエブの形成装置21及び第3ウエブの形成装置23としては、カード機が用いられている。カード機としては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。一方、第2ウエブ形成装置22としては、メルトブローン紡糸装置が用いられている。
熱風処理部200は熱風炉24を備えている。熱風炉24内では、所定温度に加熱された加熱ガス、特に加熱空気が吹き出すようになっている。互いに重ね合わされた3層のウエブが熱風炉内に導入されると、該ウエブの上方から下方に向けて、若しくはその逆方向に、又は両方向に加熱ガスが強制的に貫通する。
延伸部300は、弱接合装置25及び延伸装置30を備えている。弱接合装置25は、一対のエンボスロール26,27を備えている。弱接合装置25は、熱風処理部200によって形成された繊維シートにおける各層のウエブの接合を確実にするためのものである。弱接合装置25の下流には、これに隣接して延伸装置30が配置されている。延伸装置30は一対のロール31,32を備えている。各ロール31,32はその周面部に、軸線方向に延び且つ互いに噛み合う歯溝を有している。従って、以下の説明においては、ロール31,32を歯溝ロールと呼ぶこととする。歯溝ロール31,32が回転しているときに繊維シートがそれらの噛み合い部分に供給されて噛み込まれることで、該繊維シートが歯溝ロール31,32の周面方向(即ちシートの長手方向)へ延伸される。
以上の構成を有する装置を用いた伸縮性不織布の製造方法について説明すると、先ず、弾性繊維からなるウエブの各面に、同一の又は異なる非弾性繊維からなる一対のウエブを配する。なお「弾性繊維からなるウエブ」とは、弾性繊維のみからなるウエブだけでなく、該ウエブから形成される弾性繊維層(図1で符号1で示される層)の伸縮弾性を損なわない範囲において、弾性繊維に加えて少量の非弾性繊維が含まれているウエブも包含する。
図2に示すように、ウエブ形成部100においては、非弾性の短繊維を原料として用い、第1ウエブ形成装置21であるカード機によって非弾性繊維ウエブ3’を製造し、一方向に連続搬送させる。前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)を含有する樹脂組成物を原料として用い、第2ウエブ形成装置22であるメルトブローン紡糸装置によって紡出された繊維は捕集ネットからなるコンベア上に堆積され、弾性繊維の連続フィラメントを含む弾性繊維ウエブ1’が製造される。これをコンベアから剥離させ第1ウエブ形成装置21より形成され一方向に連続搬送されている非弾性繊維ウエブ3’上に積層させる。この弾性繊維ウエブ1’上には、更に、第3ウエブ形成装置23であるカード機によって製造された非弾性繊維ウエブ2’が積層される。
また、非弾性繊維ウエブ3’を熱処理により仮融着させた後、又は仮交絡させた後に、その上に直接紡糸された弾性繊維を、直接堆積させることが好ましい。このようにすることで、弾性繊維の自由度が高くなり、風等によってお互いの繊維を一層入り込ませやすくなるので好ましい。熱処理による仮融着としては、ヒートロール法、加圧カレンダーロール法、スチーム法、エアスルー法などが挙げられ、仮交絡としては、ニードルパンチ法、ウオータージェット法などが挙げられる。特にヒートロールおよびエアスルー法を用いると、不織布の風合いを損ねることがない点、及び設備スペースを小さくできる点で好ましい。非弾性繊維ウエブ3’は仮融着後、又は仮交絡後に巻き取らず、インラインにてその上に弾性繊維を直接堆積させることが好ましい。一旦巻き取ってしまうと、巻き付き圧によって非弾性繊維ウエブ3’が潰れてしまう場合がある。仮融着、仮交絡させる目的は、ウエブ上に弾性繊維を直接溶融紡糸して堆積させるとき、該ウエブが風等で吹き飛ばされないようにすることにある。
3つのウエブの積層体は、エアスルー方式の熱風炉24に送られ、そこで熱風処理が施される。熱風処理によって、繊維同士の交点が熱融着し、弾性繊維ウエブ1’はその全面において非弾性繊維ウエブ2’,3’と接合する。熱風処理に際しては、各層のウエブが一体化していないことが好ましい。これによって各ウエブが有する嵩高で厚みのある状態が熱風処理後も維持されて、風合いの良好な伸縮性不織布が得られる。
熱風処理によって、繊維同士の交点を熱融着させ、各層のウエブを全面接合することに加えて、主として熱風の吹き付け面側に位置する非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維の一部を、弾性繊維ウエブ1’に入り込ませることが好ましい。また、熱風処理の条件を制御することによって、非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維の一部を、弾性繊維ウエブ1’に入り込ませ、更に、該ウエブ1’の構成繊維と交絡させることが好ましい。あるいは、非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維の一部を、弾性繊維ウエブ1’を突き抜けさせて、非弾性繊維ウエブ3’にまで到達させ、該ウエブ3’の構成繊維と交絡させることが好ましい。
非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維の一部を、弾性繊維ウエブ1’に入り込ませる、及び/又は、弾性繊維ウエブ1’の構成繊維の一部を非弾性繊維ウエブ2’に入り込ませるための条件は、熱風風量0.4〜3m/秒、温度80〜160℃、搬送速度5〜200m/分、熱処理時間0.5〜10秒であることが好ましい。特に好ましくは熱風風量1〜2m/秒である。エアスルー熱処理に用いるネットに通気度の高いものを用いると、エアの通りによって繊維が一層入り込みやすくなる。同様に非弾性繊維ウエブ3’上に弾性繊維ウエブ1’を直接紡糸する場合も、紡糸時の風によって弾性繊維ウエブ1’の構成繊維が非弾性繊維ウエブ3’に入り込み易くなる。熱風処理に用いるネット、及び弾性繊維の直接紡糸に用いるネットは、それらの通気度が250〜800cm3/(cm2・s)、特に400〜750cm3/(cm2・s)であることが好ましい。上記条件は繊維を軟化させて均一に入り込ませる点と繊維を融着させる点においても好ましい。更に、繊維を交絡させるためには、熱風風量を3〜5m/秒とし、吹きつけ圧を0.1〜0.3kPaとすることで可能となる。弾性繊維ウエブ1’の通気度が8m/(kPa・s)以上、更に好ましくは24m/(kPa・s)以上であると、熱風の通りがよくなり、繊維をより均一に入り込ませることができるので好ましい。また、繊維の融着が良好で最大強度が高くなる。更に毛羽立ちも防止される。
熱風処理においては、非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維の一部が、弾性繊維ウエブ1’に入り込むのと同時に、非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維及び/又は非弾性繊維ウエブ3’の構成繊維と、弾性繊維ウエブ1’の構成繊維とが、それらの交点で熱融着することが好ましい。この場合、熱風処理を、該熱風処理後の弾性繊維が繊維形態を維持するような条件下に行うことが好ましい。即ち、熱風処理によって弾性繊維ウエブ1’の構成繊維がフィルム状、或いはフィルム−繊維構造にならないようにすることが好ましい。そして、熱風処理においては、非弾性繊維ウエブ2’の構成繊維同士が交点において熱融着し、同様に弾性繊維ウエブ1’の構成繊維同士、及び非弾性繊維ウエブ3’の構成繊維同士が交点において熱融着する。
エアスルー方式の熱風処理によって、3つのウエブが一体化された繊維シート10Bが得られる。繊維シート10Bは、一定幅を有して一方向に延びる長尺帯状のものである。繊維シート10Bは、次いで延伸部300へ搬送される。延伸部300においては、繊維シート10Bは先ず弱接合装置25に搬送される。弱接合装置25は、周面にエンボス用凸部が規則的に配置された金属製のエンボスロール26及びそれに対向配置された金属製又は樹脂製の受けロール27を備えたエンボス装置からなる。弱接合装置25によって繊維シート10Bには熱エンボス加工が施される。これによって、エンボス加工が施された繊維シート10Aが得られる。なお弱接合装置25による熱エンボス加工に先立って熱風処理部200により行われる熱融着によって、各層のウエブは互いに接合して一体化しているので、弱接合装置25による熱エンボス加工は、本発明において必須のものではない。各層のウエブの接合一体化を確実にしたい場合は、弱接合装置25による熱エンボス加工は有効である。また、弱接合装置25によれば、各層のウエブの接合一体化に加えて、繊維シート10Aの毛羽立ちが抑えられるという利点がある。
弱接合装置25による熱エンボス加工は、熱風処理部200によって行われる熱融着に対して補助的に行われるものであるから、その加工条件は比較的穏やかでよい。逆に、熱エンボス加工の条件を過酷にすると、繊維シート10Aの嵩高さが損なわれ、また繊維のフィルム化が起こり、最終的に得られる伸縮性不織布の風合いや通気性にマイナスに作用する。このような観点から熱エンボス加工の線圧及びエンボスロールの加熱温度を設定する。
熱エンボス加工によって得られた繊維シート10Aは、個々独立した散点状の接合部を多数有する。接合部は規則的な配置パターンで形成されている。接合部は、例えば、繊維シート10Aの流れ方向(MD)及びその直交方向(CD)の両方向に不連続に形成されていることが好ましい。
弱接合装置25において熱エンボス加工が施された繊維シート10Aは、引き続き延伸装置30へ送られる。図3に示すように延伸装置30は、延伸加工される繊維シート10Aの機械流れ方向の滑りを防ぐ滑り防止手段33と、歯溝ロール31,32による延伸加工前後の繊維シート10Aに張力を加える張力付与手段34、35を備えている。
滑り防止手段33は、歯溝ロール31と接触したロールからなる。ロールはゴムロールで構成されており、それらの周面部を歯溝ロール31に押し当てることで、歯溝ロール31,32間を通過する繊維シート10Aの滑りや収縮を抑制する。ロールからなる滑り防止手段33は、歯溝ロール32に周面部を押し当てるように配置することもでき、これにより、前記と同様の効果を奏させることができる。
図3に示す滑り防止手段33の別の例として、一方のロールにその周面部において開孔する吸引路を設け、該吸引路を通して延伸加工済みの繊維シート10Aを吸引する吸引手段を付設したものを用いることもできる。
張力付与手段34は、歯溝ロール31,32の上流側に配された一組のテンションロール34a,34bを備えている。張力付与手段35は、歯溝ロール31,32の下流側に配された一組のテンションロール35a,35bを備えている。
図4に示すように、各歯溝ロール31,32における隣接する歯31a,32a同士のピッチPは、好ましくは1.0mm〜5.0mmであり、前記各歯の幅Wが前記ピッチの好ましくは1/2未満であり、且つ前記歯の高さHは好ましくは隣接する歯のピッチ以上である。各ロールにおける歯溝の形態が斯かる範囲であると、これら歯溝ロール31,32間に供給される繊維シート10Aに従来にない高い伸縮性を付与することができる。歯溝ロール31,32における隣接する歯同士のピッチとは、1つの歯の中心線とそれと隣り合う歯の中心線との距離をいう。歯溝ロールの歯の幅とは、1つの歯の幅をいう。歯の幅は均等でなく、歯の根元から歯の先端に向って細くなる台形型の歯であってもよい。ロールの歯の高さとは、歯の根元から先端までの長さをいう。
各歯溝ロール31,32における隣接する歯同士のピッチPは、繊維シート10Aの伸びの均一化を考慮すると、1.5〜3.5mmが更に好ましく、2.0〜3.0mmが一層好ましい。また、各ロール2、3における歯の幅Wは、歯の強度を考慮すると、歯同士のピッチの1/4〜1/2が更に好ましく、1/3〜1/2が一層好ましい。さらに、各ロールの歯の高さHは、繊維シート10Aに伸縮性を与えるために延伸倍率を高くすることを考慮すると、歯のピッチが例えば2.0mmの場合は2.0(ピッチの1.0倍)〜4.0(ピッチの2.0倍)mmが好ましく、2.5(ピッチの1.25倍)〜3.5(ピッチの1.75倍)mmが一層好ましい。
各歯溝ロール31,32における歯31a,32aの先端の角部は、歯31a,32aの角部によって繊維シート10Aにダメージが与えられないようにするために、面取りしておくことが好ましい。面取りの曲率半径は0.1〜0.3mmが好ましい。
歯溝ロール31,32の歯31a、32aの噛み合い深さDは、繊維シート10Aに伸縮性を与えるために延伸倍率を高くすることを考慮すると、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上が一層好ましい。ここで、歯の噛み合い深さとは、歯溝ロール31,32同士を噛み合わせて回転させるとき、隣接する歯の重なり合う長さをいう。
歯溝ロール31,32は、何れか一方の回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって噛み合って回転する。歯溝ロール31,32の各軸に歯31a,32aとは別に、一般的な、JIS B1701に規定されているギアを駆動用のギアとして取り付けてもよい。それによって、歯溝ロール31,32の歯31a,32aが噛み合うのではなく、これらのギアが噛み合うことによって、歯溝ロール31,32に駆動が伝達され、歯溝ロール31,32を回転させることができる。この場合、歯溝ロール31,32の歯31a,32aは接触することはない。
図5には、延伸装置30による繊維シート10Aの延伸加工の状態が模式的に示されている。詳細には、延伸装置30における一対の歯溝ロール31,32を回転させながらそれらの噛み合い部分に繊維シート10Aを供給する。そして、図5に示すように、歯溝ロール31,32間において、繊維シート10Aに延伸加工を施す。繊維シート10Aに一層効果的に伸縮性を付与する観点から、延伸加工前の繊維シート10Aにテンションロール34a,34bによって張力を加えた状態で、歯溝ロール31,32間に繊維シート10Aを供給することが好ましい。供給する繊維シート10Aに加える張力は、延伸加工前の繊維シート10Aの破断応力の10%〜80%が好ましく、20%〜70%が一層好ましい。
同様の観点から、延伸加工済みの繊維シート10Aにテンションロール35a,35bによって張力を加えて歯溝ロール31,32間から該シートを引き出すことが好ましい。供給する繊維シート10Aに加える張力は、延伸加工後の繊維シート10Aの破断応力の5%〜80%が好ましく、10%〜70%が一層好ましい。シートの破断応力は歯溝延伸加工の加工前に比べて、加工後では小さくなる。また、歯溝延伸加工によって伸縮性を付与された延伸加工済みの繊維シート10Aはわずかな張力でも伸びやすい。そのような観点から、延伸加工済みの繊維シート10Aに加える張力を、延伸加工前の繊維シート10Aに加える張力よりも弱くすることが好ましい。
前記の延伸加工により、繊維シート10A中の非弾性繊維ウエブ2,3が十分に伸長され、それによって非弾性繊維ウエブ2,3が、弾性繊維ウエブ1の自由な伸縮を阻害する程度が大きく低下する。その結果、本製造方法によれば、高伸縮性であり、また、破れや毛羽立ちの少ない外観の良好な伸縮性不織布を効率的に製造することができる。
前記の延伸加工によって、繊維シート10Aの厚みは、延伸加工前後で1.1倍〜4倍、特に1.3倍〜3倍に増すことが好ましい。これによって、非弾性繊維層2,3の繊維が塑性変形して伸びることで繊維が細くなる。これと同時に、非弾性繊維層2,3が一層嵩高となり肌触りが良くクッション性が良好になる。
延伸加工される前の繊維シート10Aの厚みが薄いと、繊維シート10Aのロール原反を運搬及び保管するスペースを小さくできるメリットがある。
更に、前記の延伸加工によって、繊維シート10Aの曲げ剛性は、延伸加工前に比較して30〜80%、特に40〜70%に変化することが好ましい。これによって、ドレープ性が良く柔らかな不織布が得られる。また、延伸加工される前の繊維シート10Aの曲げ剛性が高いことで、搬送ラインで繊維シート10Aに皺が入りにくくなるので好ましい。その上、延伸加工時にも繊維シート10Aに皺が入らず加工しやすいものとなるので好ましい。
延伸加工前後での繊維シート10Aの厚みや曲げ剛性は、非弾性繊維層2,3に用いられる繊維の伸度、エンボスロールのエンボスパターン、凹凸ロール33,34のピッチや先端部の厚み、噛み合わせ量によって制御することができる。
厚みは、伸縮性不織布を20±2℃、65±2%RHの環境下に無荷重にて、2日以上放置した後、次の方法にて求める。先ず伸縮性不織布を0.5cN/cm2の荷重にて平板間に挟む。その状態下にマイクロスコープにて断面を25倍から200倍の倍率で観察し、各層の平均厚みを求める。また平板間の距離から全体の厚みを求める。繊維の入り込みについては相互の入り込みの中間点を厚みとする。
延伸装置30から送り出された繊維シート10Aは、その幅方向への延伸状態が解放される。即ち伸長が緩和される。その結果、繊維シート10Aにその長手方向への伸縮性が発現し、該シート10Aはその長手方向へ収縮する。これによって目的とする伸縮性不織布10が得られる。なお、延伸状態を解放する場合、延伸状態が完全に解放されるようにしてもよく、或いは伸縮性が発現する限度において、延伸状態が或る程度維持された状態で延伸状態を解放してもよい。
こうして得られた伸縮性不織布10は、パンツ型使い捨ておむつの外層シートとして好適に用いられる。この場合、本発明の伸縮性不織布を外層シートとし、内層シートとして非伸縮性のシートを用い、両シートを張り合わせて使用することもできる。
またこの用途以外に、その良好な風合いや、毛羽立ち防止性、伸縮性、通気性等の利点を生かし、外科用衣類や清掃シート等の各種の用途に用いることもできる。特に生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の構成材料として好ましく用いられる。該構成材料としては、例えば、吸収体よりも肌側に位置する液透過性のシート(サブレイヤー等を含む)である表面シートや、使い捨ておむつの外面を構成するシート、胴回り部やウエスト部、脚周り部等に弾性伸縮性を付与するためのシート等が挙げられる。また、ナプキンの伸縮性ウイングを形成するシート等として用いることができる。また、それ以外の部位であっても、伸縮性を付与したい部位等に用いることができる。伸縮性不織布10の坪量や厚みは、その具体的な用途に応じて適切に調整できる。例えば吸収性物品の構成材料として用いる場合には、坪量20〜60g/m2程度、厚み0.5〜1.5mm程度とすることが望ましい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されない。
例えば、前記実施形態の伸縮性不織布10は、弾性繊維層1の両面に、同一の又は異なる、実質的に非弾性の非弾性繊維層2,3が積層された形態のものであったが、これに代えて、弾性繊維層の一面に非弾性繊維層が積層された2層構造の形態であってもよい。この2層構造の形態の伸縮性不織布の詳細については、3層構造に係る前記実施形態の伸縮性不織布10に関する説明が適宜適用される。尚、2層構造の伸縮性不織布を、吸収性物品の構成材料として用いる場合、特に使用者の肌に触れる箇所に使用する場合には、非弾性繊維層を着用者の肌側に向くように使用することが、肌触りやべたつき防止等の観点から好ましい。
また本発明の伸縮性不織布は、弾性繊維層と非弾性繊維層の構造は図1に示すものに制限されない。
また前記の製造方法においては、繊維シート10Aを長手方向に延伸させたが、これに代えて幅方向に延伸させることもできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
弾性繊維用の樹脂材料として用いる樹脂組成物の形成材料として、下記の6種類のスチレン系ブロック共重合体(A−1)、(A−2)、(B−1)、(B−2)、(B−3)及び(C)を用意した。スチレン系ブロック共重合体(A−1)及び(A−2)は、前記スチレン系ブロック共重合体(A)の一種であり、スチレン系ブロック共重合体(B−1)、(B−2)及び(B−3)は、何れも前記スチレン系ブロック共重合体(B)の一種である。スチレン系ブロック共重合体(C)は、前記スチレン系ブロック共重合体(A)及び(B)の何れにも含まれない本発明の範囲外のものである。
スチレン系ブロック共重合体(A−1): 前記重合体ブロック(a)としてスチレンを30重量%含有し、MFRが50g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、GPC法により測定される重量平均分子量が50,000のSEPS樹脂を、スチレン系ブロック共重合体(A−1)として用いた。
スチレン系ブロック共重合体(A−2): 前記重合体ブロック(a)としてスチレンを20重量%含有し、MFRが20g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、GPC法により測定される重量平均分子量が94,000のSEPS樹脂を、スチレン系ブロック共重合体(A−2)として用いた。
スチレン系ブロック共重合体(B−1): 前記重合体ブロック(a)としてスチレンを18重量%含有し、MFRが6g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、GPC法により測定される重量平均分子量が90,000のSEPS樹脂を、スチレン系ブロック共重合体(B−1)として用いた。
スチレン系ブロック共重合体(B−2): 前記重合体ブロック(a)としてスチレンを30重量%含有し、MFRが0.1g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、GPC法により測定される重量平均分子量が73,000のSEEPS樹脂を、スチレン系ブロック共重合体(B−2)として用いた。
スチレン系ブロック共重合体(B−3): 前記重合体ブロック(a)としてスチレンを20重量%含有し、MFRが15g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、GPC法により測定される重量平均分子量が120,000のSEBS樹脂を、スチレン系ブロック共重合体(B−3)として用いた。
スチレン系ブロック共重合体(C): 前記重合体ブロック(a)としてスチレンを30重量%含有し、MFRが140g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、GPC法により測定される重量平均分子量が30,000のSEBS樹脂を、スチレン系ブロック共重合体(C)として用いた。
〔実施例1〕
前記スチレン系ブロック共重合体(A−1)80重量部と、前記スチレン系ブロック共重合体(B−1)20重量部とをヘンシェルミキサーで混合後、2軸混練押出機(日本製鋼所(株)製、型式TEX−30)を用いて240℃で溶融混練してストランド状に成形した後、適切な長さにカットすることでペレット状の樹脂組成物を製造した。
この樹脂組成物のMFRは32g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、230℃での溶融張力は0.19cNであった。
前記ペレット状の樹脂組成物を用い、図1に示す伸縮性不織布を、図2に示す装置を用いて製造した。先ず直径20μm、繊維長44mmの短繊維(芯:PET、鞘:PE)をカード機に供給し、カードウェブからなる非弾性繊維ウエブ3’を形成した。ウエブ3’の坪量は10g/m2であった。押出機を用い、溶融した前記ペレットを紡糸ノズルから弾性繊維として押し出し、メルトブローン法によって非弾性繊維ウエブ3’上に弾性繊維ウエブ1’を成形した。このメルトブローン法においては、シリンダー温度280℃、ダイス温度290℃、ダイス内エアー温度300℃、単孔吐出量0.15g/分、捕集距離150mm、エアー量4Nm3/hrとした。弾性繊維ウエブ1’を構成する弾性繊維の繊維径は15μm、弾性繊維ウエブ1’の坪量は15g/m2であった。
次いで、弾性繊維ウエブ1’上に、前述と同様の短繊維からなる非弾性繊維ウエブ2’を積層した。ウエブ2’の坪量は10g/m2であった。
これら3層のウエブの積層体を熱処理機に導入し、エアスルー方式で熱風を吹き付け、熱処理を行った。熱処理の条件は、ネット上温度140℃、熱風風量2m/秒、吹き付け圧0.1kPa、吹き付け時間15秒であった。この熱処理によって3層のウエブが一体化された繊維シート10Bが得られた。
次いで、繊維シート10Bに熱エンボス加工を施した。熱エンボス加工は、エンボス凸ロールとフラット金属ロールとを備えたエンボス装置を用いて行った。エンボス凸ロールとしてMDのピッチ2mm、CDのピッチ2mmである多数の凸部を有するドット状凸ロールを用いた。各ロールの温度は120℃、線圧は300N/cmとした。このエンボス加工によって接合部が規則的なパターンで形成された繊維シート10Aを得た。
次いで、繊維シート10Aに対して延伸加工を施した。延伸加工は、軸線方向に延び且つ互いに噛み合う歯溝を周面部に有している一対の歯溝ロールを備えた延伸装置を用いて行った。歯溝ロールのピッチは2mm、歯の噛み合い深さは5mmとし、3.5倍の延伸率で繊維シート10AをMDに延伸させた。これによりMDに伸縮する坪量35g/m2の伸縮性不織布が得られた。なお、各工程の搬送速度は何れも10m/分であった。
〔実施例2〕
前記スチレン系ブロック共重合体(A−1)60重量部と、前記スチレン系ブロック共重合体(B−1)40重量部とをヘンシェルミキサーで混合後、2軸混練押出機(日本製鋼所(株)製、型式TEX−30)を用いて240℃で溶融混練してストランド状に成形した後、適切な長さにカットすることでペレット状の樹脂組成物を製造した。
この樹脂組成物のMFRは16g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、230℃での溶融張力は0.30cNであった。この樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で坪量35g/m2の伸縮性不織布を得た。
〔実施例3〕
前記スチレン系ブロック共重合体(A−1)95重量部と、前記スチレン系ブロック共重合体(B−2)5重量部とをヘンシェルミキサーで混合後、2軸混練押出機(日本製鋼所(株)製、型式TEX−30)を用いて240℃で溶融混練してストランド状に成形した後、適切な長さにカットすることでペレット状の樹脂組成物を製造した。
この樹脂組成物のMFRは41g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、230℃での溶融張力は0.11cNであった。この樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で坪量35g/m2の伸縮性不織布を得た。
〔実施例4〕
前記スチレン系ブロック共重合体(A−2)70重量部と、前記スチレン系ブロック共重合体(B−3)30重量部とをヘンシェルミキサーで混合後、2軸混練押出機(日本製鋼所(株)製、型式TEX−30)を用いて240℃で溶融混練してストランド状に成形した後、適切な長さにカットすることでペレット状の樹脂組成物を製造した。
この樹脂組成物のMFRは18g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、230℃での溶融張力は0.15cNであった。この樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で坪量35g/m2の伸縮性不織布を得た。
〔実施例5〕
前記スチレン系ブロック共重合体(A−2)50重量部と、前記スチレン系ブロック共重合体(B−3)50重量部とをヘンシェルミキサーで混合後、2軸混練押出機(日本製鋼所(株)製、型式TEX−30)を用いて240℃で溶融混練してストランド状に成形した後、適切な長さにカットすることでペレット状の樹脂組成物を製造した。
この樹脂組成物のMFRは17g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、230℃での溶融張力は0.30cNであった。この樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で坪量35g/m2の伸縮性不織布を得た。
〔比較例1〕
前記スチレン系ブロック共重合体(A−1)40重量部と、前記スチレン系ブロック共重合体(B−1)60重量部とをヘンシェルミキサーで混合後、2軸混練押出機(日本製鋼所(株)製、型式TEX−30)を用いて240℃で溶融混練してストランド状に成形した後、適切な長さにカットすることでペレット状の樹脂組成物を製造した。
この樹脂組成物のMFRは10g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、230℃での溶融張力は0.38cNであった。
この樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で伸縮性不織布を製造しようとしたところ、メルトブローン法による紡糸工程において、繊維が細くならずに目が粗い網になってしまい、不織布に成形することができなかった。従って、目的の伸縮性不織布は得られなかった。
〔比較例2〕
前記スチレン系ブロック共重合体(C)100重量部を用い、実施例1と同様の方法で伸縮性不織布を製造しようとしたところ、メルトブローン法による紡糸工程において、溶融した繊維がブローで切れてしまい、実用上十分な強度を有する不織布に成形することができなかった。従って、目的の伸縮性不織布は得られなかった。この樹脂組成物のMFRは140g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、230℃での溶融張力は0.02cNであった。
〔比較例3〕
前記スチレン系ブロック共重合体(A−1)100重量部を用い、実施例1と同様の方法で坪量35g/m2の伸縮性不織布を得た。樹脂組成物のMFRは50g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、230℃での溶融張力は0.06cNであった。
〔比較例4〕
前記スチレン系ブロック共重合体(A−2)100重量部を用い、実施例1と同様の方法で坪量35g/m2の伸縮性不織布を得た。樹脂組成物のMFRは20g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、230℃での溶融張力は0.20cNであった。
〔比較例5〕
前記スチレン系ブロック共重合体(A−2)30重量部と、前記スチレン系ブロック共重合体(B−3)70重量部とをヘンシェルミキサーで混合後、2軸混練押出機(日本製鋼所(株)製、型式TEX−30)を用いて240℃で溶融混練してストランド状に成形した後、適切な長さにカットすることでペレット状の樹脂組成物を製造した。
この樹脂組成物のMFRは16g/10min(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)、230℃での溶融張力は0.50cNであった。
この樹脂組成物を用い、実施例1と同様の方法で伸縮性不織布を製造しようとしたところ、メルトブローン法による紡糸工程において、繊維が細くならずに目が粗い網になってしまい、不織布に成形することができなかった。従って、目的の伸縮性不織布は得られなかった。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた伸縮性不織布の特性を以下の表1及び表2に示す。表中の各評価項目の測定方法は次の通りである。
<不織布成形性>
前記の伸縮性不織布の製造におけるメルトブローン法による弾性繊維ウエブ1’(不織布)の成形工程を目視で観察し、緻密で繊維切れのない不織布が成形できるものを○(不織布成形性良好)、緻密で繊維切れのない不織布が成形できないものを×(不織布成形性に劣り、実用不可)と判定した。判定は、3人で行い、2人以上が同じ意見である場合にその意見を判定結果とした。
<100%伸長時応力、戻り50%伸長時応力、永久伸び>
実施例及び比較例で得られた伸縮性不織布から、該伸縮性不織布の伸縮方向へ200mm且つ該伸縮方向と直交する方向へ50mmの大きさの矩形の試験片を切り出した。この試験片を引張試験機(島津製作所製)に装着した。装着時のチャック間距離は150mmとした。試験片の伸縮方向へ300mm/分の速度で150mm伸長させ(チャック間隔が計300mmとなる)、ただちに毎分300mmの速度で初期長さに戻した。このときの伸長率と引っ張り力の関係をチャート紙に記録した。伸長率は以下の式によって表される。
伸長率(%)=伸長した長さ(mm)/初期長さ(mm)×100
つまり、前記測定方法において、試験片は伸長率100%まで伸長されることとなる。このときの引っ張り力を、「100%伸長時応力」とする。また、100%伸長後、初期長さに戻す過程において、伸長時が50%になった時点での引っ張り力を、「戻り50%伸長時応力」とする。
一般に、エラストマーは伸長すると永久伸び(残留歪み)が発生する。永久伸び(%)は、伸長率100%から初期長さ(伸長度0%)へ戻るとき(戻り過程)、引っ張り力が0となった点に達したときの伸長率とした。伸縮特性を永久伸びで評価し、永久伸びが小さいほど伸縮特性が良い。
<おむつずれ落ち性>
実施例及び比較例で得られた伸縮性不織布をおむつの外層シートとして用い、ウエスト部の周長が35cmのパンツ型使い捨ておむつを作製した。図6に示すように、このおむつを周長44cmのアクリルパイプにはかせ、おむつ下部を鰐口クリップで留め、該クリップが上側に来るようにし、アクリルパイプをジャッキに載せた。このときに、おむつのウエスト部の位置をアクリルパイプに記しておき(このときの位置を初期位置Aとする)、クリップを固定したまま、ジャッキを50mm下げた。ジャッキを50mm下げた後のウエスト部の位置(このときの位置をズレ位置とする)と初期位置Aとの距離を測定し、この距離をおむつのズレ落ち量とした。該ズレ落ち量が10mm未満の場合を○(おむつずれ落ち性良好)、10mm以上30mm未満を△(実用上問題ないレベル)、30mm以上を×(おむつずれ落ち性に劣り、実用不可)と判定した。
表1及び表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜5の伸縮性不織布は、不織布成形性に優れ、且つ永久伸びが比較例1〜5に比して小さく、おむつずれ落ち性に優れることがわかる。また、実施例3で用いた樹脂組成物は、不織布成形性に関わるMFRを大きく落とさずに永久伸びを低減できる点で、他の実施例で用いた樹脂組成物に比して優れている。
比較例1及び5は、何れも樹脂組成物中におけるスチレン系重合体ブロック(A)及び(B)の含有割合が本発明の範囲外であるため、また比較例2は、樹脂組成物の形成材料として本発明の範囲外のスチレン系重合体ブロックを用いたため、何れも不織布成形性に劣り、伸縮性不織布を得ることができなかった。比較例3及び4の伸縮性不織布は、何れも樹脂組成物の形成材料として本発明に係るスチレン系重合体ブロック(A)を含んでいるため不織布成形性は良好であるものの、本発明に係るスチレン系重合体ブロック(B)を含んでいないため、おむつのずれ落ち性の点で実施例の伸縮性不織布に劣る結果となった。
尚、実施例の伸縮性不織布の断面をSEM観察したところ、何れの不織布においても弾性繊維層の構成繊維と非弾性繊維層の構成繊維とが熱融着しており、これらの繊維層は全面接合されていた。また、非弾性繊維層の構成繊維の一部が弾性繊維層の厚み方向に入り込んでいることが確認された。弾性繊維層の構成繊維は繊維形態を保っていた。
図1は、本発明の伸縮性不織布の一実施形態の断面構造を示す模式図である。 図2は、図1に示す伸縮性不織布の製造に用いられる好ましい装置を示す模式図である。 図3は、図1に示す装置における延伸装置の要部を示す斜視図である。 図4は、図3に示す延伸装置における歯溝ロールの要部を示す拡大図である。 図5は、図3に示す延伸装置における歯溝ロールによってシートが延伸される状態を示す模式図である。 図6は、おむつずれ落ち性の評価方法の説明図である。
符号の説明
1 弾性繊維層(弾性不織布)
2,3 非弾性繊維層
4 接合部
10A 繊維シート
10 伸縮性不織布

Claims (3)

  1. 下記スチレン系ブロック共重合体(A)50〜97重量部と、下記スチレン系ブロック共重合体(B)3〜50重量部とを、両者の合計量が90〜100重量部となるように含有する樹脂組成物を用いた弾性繊維を含む弾性不織布。
    スチレン系ブロック共重合体(A):ビニル芳香族からなる重合体ブロックを20〜35重量%含み、メルトフローレート(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)が10〜100g/10分、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量が50000〜100000。
    スチレン系ブロック共重合体(B):ビニル芳香族からなる重合体ブロックを15〜35重量%含み、メルトフローレート(ASTM D−1238準拠、230℃、荷重2.16kg)が0.05〜20g/10分、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量が70000〜130000。
  2. 請求項1記載の弾性不織布を有し、該弾性不織布からなる弾性繊維層の少なくとも一面に、実質的に非弾性の非弾性繊維層が配されている伸縮性不織布。
  3. 請求項2記載の伸縮性不織布を用いた吸収性物品。
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