移動体通信において、通信の信号をスロットと呼ばれる短い時間に区分し、このスロット単位で信号の送信電力を制御する通信方式が知られている。このような通信方式としては、例えばCDMA方式がある。CDMA方式では、複数の移動端末機の信号が同一周波数帯域で符号多重されているため、基地局から近い移動端末機の影響を受けて、基地局から遠い移動端末機と基地局との通信が行えなくなるという遠近問題がある。このため、CDMA方式では、この遠近問題の対策として、移動端末機の送信電力をスロット単位で高速に制御する技術が用いられている。
図11に、例として、このCDMA方式の一つであるW−CDMA方式のアップリンク(移動端末機から基地局への送信)のフレームフォーマットを示す。W−CDMA方式においては、通信の単位として、フレーム長10msのフレームが規定されている。1つのフレームは、Slot#0〜Slot#14の合計15のスロットから成っており、1つのスロットのスロット長は667μsである。各スロットは、ユーザ・データを伝送するデータチャネルであるDPDCHと、制御情報を伝送する制御チャネルであるDPCCHとが多重されている。DPCCHは、基準信号であるパイロット信号、伝送フォーマットの情報であるTFCI、フィードバック情報であるFBI、送信電力制御指示であるTPCから成っている。
なお、このアップリンクにおけるTPCは、移動端末機から基地局に対して送信電力制御を指示するものであるが、逆にダウンリンク(基地局から移動端末機への送信)のフレームのスロットには、基地局から移動端末機に対して送信電力制御を指示するTPCが含まれている。このダウンリンクのTPCにより、移動端末機の送信電力は、アップリンクのスロット単位で制御される。
このように基地局から移動端末機の送信電力を制御する機能は、クローズドループパワーコントロール(ClosedLoop Power Control。インナーループパワーコントールと呼称される場合もある。以下、省略してCLPCと記載する。)と呼ばれている。CLPCでは、基地局が移動端末機からの信号を受信して測定し、この測定結果に基づいて移動端末機の送信電力の増減を前述のTPCにより移動端末機に指示し、この指示に応じて信号を増減させて出力するように移動端末機の送信電力が制御される。なお、この送信電力の増減の単位は、CLPC機能におけるスロット間の電力の変化量の設定値であるステップサイズで決まり、このステップサイズは基地局から移動端末機に設定される。
つまり、移動端末機は、基地局からのTPCによる送信電力の増加又は低下(減少)の指示を受けると、自己に設定されているステップサイズの分だけ送信電力を増加又は低下させて信号を出力する。この送信電力の増加又は低下は、前述の通り、アップリンクのスロット単位で行われる。
このような移動端末機に対して、上述のCLPC機能の試験を行う移動端末機試験装置が従来から知られている。図12に、そのような従来の移動端末機試験装置の機能を有する信号解析装置1の構成を示す。
図12の信号解析装置1は、接続端子1a、方向性結合器2、電力制御設定手段3、制御部4、送信手段5、受信手段6、解析部7、判定手段8、表示制御手段9、表示器10から構成されている。さらに、送信手段5は、電力制御要求手段5a、送信回路5bから構成されている。また、受信手段6は、受信回路6a、A/D変換器6b、メモリ6cから構成されている。また、解析部7は、スロット検出手段7a、スロット電力検出手段7b、解析結果メモリ7cから構成されている。
接続端子1aは、試験対象の移動端末機11が同軸ケーブルにより接続可能となっている。接続端子1aは、方向性結合器2を介して送信回路5bと受信回路6aにそれぞれ接続される。
電力制御設定手段3は、移動端末機11から送信させる信号のスロット数、送信電力の増減、ステップサイズ等の情報を制御部4を介して電力制御要求手段5aに設定している。また、電力制御設定手段3は、試験開始や試験停止の指令も行っている。
制御部4は、電力制御設定手段3からの設定情報に基づき、電力制御要求手段5aに対して移動端末機11から送信させる信号のスロット数、送信電力の増減、ステップサイズ等の情報の設定を制御している。また、制御部4は、電力制御設定手段3より試験開始が指令されたときに、解析部7のスロット検出手段7aに測定の開始を知らせる信号を出力し、所定の測定時間が経過した後に測定の終了を知らせる信号を出力している。
電力制御要求手段5aは、制御部4の制御により設定されるスロット数、送信電力の増減、ステップサイズ等の情報に対応した送信要求信号を送信回路5bに出力している。また、電力制御要求手段5aは、送信回路5bに送信要求信号を出力するタイミングで解析部7のスロット検出手段7aにトリガ信号を出力している。
送信回路5aは、制御部4の制御に基づく電力制御要求手段5aからの送信要求信号を受けると、電力制御要求手段5aの送信要求信号の内容に対応した制御情報を方向性結合器2および接続端子1aを介して移動端末機11に出力している。そして、移動端末機11は、送信回路5aからの制御情報を受けると、その制御情報の内容に対応した送信電力の信号を出力する。その際、スロット単位で送信電力が制御されて送信される。
受信手段6の受信回路6aは、移動端末機11から送信された信号を接続端子1a、方向性結合器2を介して受信している。この受信回路6aで受信された信号は、A/D変換器6bに入力される。なお、受信回路6aの受信周波数は、移動端末機11から出力される信号の搬送周波数に等しくなるように、予め制御部4によって設定制御されている。
A/D変換器6bは、受信した信号をディジタル信号に変換し、その波形データをメモリ6cへ出力する。メモリ6cは、A/D変換器6bから出力される移動端末機11からの送信信号の波形データを、制御部4からの測定開始を知らせる信号を受けてから測定終了を知らせる信号を受けるまでの間連続的に記憶する。なお、このメモリ6cは、データの書き込みとデータの読み出しとが独立に行える構造のものである。
メモリ6cに記憶された波形データは、解析部7によって読み出され解析される。解析部7は、DSP(ディジタルシグナルプロセッサ)によって構成されており、スロット検出手段7a、スロット電力検出手段7bおよび解析結果メモリ7cを有している。
スロット検出手段7aは、電力制御要求手段5aからトリガ信号が入力されると、メモリ6cに記憶された波形データをその記憶順に読み出しながら波形データに含まれるスロット数を検出している。ここで、波形データとは、横軸が時間(メモリではアドレス)、縦軸が電圧レベル(メモリの値)であるが、縦軸を電圧レベルから電力値に換算して用いることもできる。
スロット電力検出手段7bは、スロット検出手段7aが検出したスロット毎の電力値を算出している。また、あるスロットと、このスロットから規定されたスロット間隔数だけ離れたスロットとの電力の差をスロット間の電力の変化量(相対値)として算出している。
解析結果メモリ7cは、スロット検出手段7aおよびスロット電力検出手段7bによって検出されたスロット数、各スロットの電力値、スロット間の電力の変化量(相対値)を解析結果として記憶している。
判定手段8は、スロット間の電力の変化量について、電力制御要求手段5aに記憶されている内容と、解析結果メモリ7cに記憶された内容とを比較し、測定対象の移動端末機11の送信機能が正常か否かを判定し、移動端末機11の動作チェックを行っている。つまり、解析結果メモリ7cに記憶されたスロットそれぞれについて、スロット間の電力の変化量(相対値)が設定されたステップサイズにおける許容誤差範囲に収まっているかを判定する。例えば、ステップサイズが1dB、許容誤差範囲が±0.5dBのとき、あるスロットとその1つ前のスロットとの電力の差が0.8dBであれば正常スロット、1.7dBであれば異常スロットと判定する。
表示制御手段9は、解析結果メモリ7cに記憶されたスロット毎の電力値を時系列に並べてグラフ表示させる表示データを作成し、必要ならば判定手段8の判定結果を併せて、表示器10に表示させる。
図13は、上述のCLPC機能の試験について、信号解析装置1と移動端末機11とのシーケンスを表した図である。以下、本図の図中に記した記号(a)〜(j)に従って、シーケンスを説明する。なお、ここでは、CLPC機能の試験は、移動端末機11のステップサイズを1dB、2dB、3dBの順に設定し、それぞれのステップサイズについて、移動端末機11の送信電力を制御したときの、移動端末機11からの送信信号の電力値を測定するものとして例示している。
(a)において、同軸ケーブルで接続された状態の信号解析装置1と移動端末機11との間で、通信のやり取りが行われ、通信の接続の確立が行われる。この際、移動端末機11に対して、初期値としてのステップサイズが設定される。そして、(b)で信号解析装置1でCLPC機能の試験の開始が指示される。なお、(a)から(b)の間に、別な試験が行われる場合もあり、その際に移動端末機11のステップサイズは変更されている場合もある。
(c)において、信号解析装置1は、移動端末機11の送信電力をCLPC測定における最大電力とするように、移動端末機11に対して制御を行う。なお、図12の例では、このとき移動端末機11に設定されているステップサイズは2dBであるとする。
信号解析装置1は、CLPC機能の試験について、移動端末機11のステップサイズを1dB、2dB、3dBの順に変更し、それぞれのステップサイズでのスロット毎の電力値を測定するように定められている。このため、(d)において、信号解析装置1は、移動端末機11のステップサイズを、先ず1dBに設定する。
(e)において、信号解析装置1は、移動端末機11の送信電力をCLPC測定における最大電力から最小電力とするように、移動端末機11に対して制御を行い、さらに、CLPC測定における最小電力から最大電力とするように、移動端末機11に対して制御を行う。そして、信号解析装置1は、これらの制御に対応して移動端末機11から出力される信号を受け、スロット毎の電力値を測定する。これにより、ステップサイズ=1dBにおける測定が終了する。
引き続き(f)において、信号解析装置1は、移動端末機11のステップサイズを2dBに設定する。そして、前述の(e)と同様に、(g)において、信号解析装置1は、移動端末機11の送信電力をCLPC測定における最大電力から最小電力、最小電力から最大電力とするように制御し、スロット毎の電力値を測定する。
さらに、(h)において、信号解析装置1は、移動端末機11のステップサイズを3dBに設定する。そして、前述の(e)、(g)と同様に、(i)において、信号解析装置1は、移動端末機11の送信電力をCLPC測定における最大電力から最小電力、最小電力から最大電力とするように制御し、スロット毎の電力値を測定する。
このようにして、全てのステップサイズでの測定が完了すると、(j)において、信号解析装置1は、測定した各スロットの電力値を時系列に並べたグラフを表示する。
図14は、上述した図13において、信号解析装置1が移動端末機11の送信電力をCLPC測定における最大電力から最小電力、最小電力から最大電力とするように制御する(e)、(g)、(i)のシーケンスを詳細に示したシーケンス図である。以下、本図の図中に記した記号(k)〜(w)に従って、シーケンスを説明する。
(k)において、移動端末機11は、信号解析装置1からの制御により、送信電力PueをCLPC測定における最大送信電力Pmaxとした状態で送信を行っている。(l)において、信号解析装置1は、前述したダウンリンクのTPCにより、移動端末機11に送信電力低下を要求する。この要求を受けた移動端末機11は、(m)において、設定されているステップサイズPs分だけ送信電力を低下させて送信を行う。このとき、移動端末機11の送信電力Pueは、Pmax−Psとなる。
引き続き(n)において、信号解析装置1は、移動端末機11に送信電力低下を要求し、これに対して移動端末機11は、(o)において、設定されているステップサイズPs分だけ送信電力を低下させて送信を行う。このとき、移動端末機11の送信電力Pueは、Pmax−2Psとなる。以下同様に、信号解析装置1からの送信電力低下要求に対し、移動端末機11は、設定されているステップサイズPs分だけ送信電力を低下させて送信を行うことを繰り返す。
そして、(p)における信号解析装置1からの送信電力低下要求に対し、移動端末機11は、(q)において、設定されているステップサイズPs分だけ送信電力を低下させて送信を行う。このとき、移動端末機11の送信電力Pueは、Pmax−(n−1)PsからPmax−nPsとなる。ここで、nは自然数であり、信号解析装置1から移動端末機11に送信電力低下要求が送られた回数である。
このとき、(r)において、信号解析装置1は、移動端末機11の送信電力Pueが、CLPC測定における最小送信電力Pmin以下となっているか否かを判断する。図13の例では、Pue=Pmax−nPs=Pminと判定されている。また、図13では省略しているが、信号解析装置1は、本図の(m)、(o)、・・・の送信電力それぞれについて、この判断を行っている。
この判定を受け、(s)において、信号解析装置1は、前述したダウンリンクのTPCにより、移動端末機11に送信電力増加を要求する。この要求を受けた移動端末機11は、(t)において、設定されているステップサイズPs分だけ送信電力を増加させて送信を行う。このとき、移動端末機11の送信電力Pueは、Pmin+Psとなる。以下同様に、信号解析装置1からの送信電力増加要求に対し、移動端末機11は、設定されているステップサイズPs分だけ送信電力を増加させて送信を行うことを繰り返す。
そして、(u)における信号解析装置1からの送信電力増加要求に対し、移動端末機11は、(v)において、設定されているステップサイズPs分だけ送信電力を増加させて送信を行う。このとき、移動端末機11の送信電力Pueは、Pmax+(m−1)PsからPmax+mPsとなる。ここで、mは自然数であり、信号解析装置1から移動端末機11に送信電力増加要求が送られた回数である。
このとき、(w)において、信号解析装置1は、移動端末機11の送信電力Pueが、CLPC測定における最大送信電力Pmax以上となっているか否かを判断する。図13の例では、Pue=Pmin+mPs=Pmaxと判定されている。これにより、1つのステップサイズにおいて、移動端末機11の送信電力をCLPC測定における最大電力から最小電力、最小電力から最大電力とするように制御するシーケンスは終了する。なお、図13では省略しているが、信号解析装置1は、本図の(t)、・・・の送信電力それぞれについて、この判断を行っている。
なお、図14における移動端末機11の送信電力Pueの変化は理想値であり、この場合m=nとなる。実際には、設定されたステップサイズに対して、移動端末機11からの送信電力の低下分又は増加分には誤差が生じる。
このようなCLPC機能の試験における信号解析装置1の動作を、図15を用いて説明する。図15は、信号解析装置1の動作を表したフローチャートである。
まず、電力制御設定手段3からの情報により、制御部4を介してCLPC機能の試験を行うための設定が信号解析装置1の各部に対してなされ、電力制御設定手段3からの指令で測定が開始される(S1)。
そして、電力制御要求手段5aが送信回路5bに対して、移動端末機11の送信電力をCLPCの規格における最大送信電力以上に制御するための制御信号を出力する。送信回路5bは、電力制御要求手段5aからの制御信号を受け、これに対応した制御情報を方向性結合器2および接続端子1aを介して移動端末機11に出力し、移動端末機11の送信電力をCLPCの規格における最大送信電力以上に設定させるように制御する(S2)。
さらに、電力制御要求手段5aからの要求により、送信回路5b、方向性結合器2および接続端子1aを介して、移動端末機11に対して、移動端末機11の送信電力制御のステップサイズを1dBとする設定がなされる(S3)。
同様に、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して送信要求がなされ、移動端末機11がCLPC規格における最大送信電力での送信を開始する。そして、移動端末機11からの信号は受信回路6aで受信される。受信回路6aで受信された信号は、A/D変換器6bによってディジタルの波形データに変換され、メモリ6cへの波形データの記憶が開始される。それとともに、スロット検出手段7aはメモリ6cへ記憶された波形データを読み出し、制御部4又は電力制御要求手段5aからの情報に基づいて各スロットの開始位置を検出する。スロット電力検出手段7bは、スロット検出手段7aで検出されたスロットそれぞれの電力値を検出し、解析結果メモリ7cに記憶する(S4)。スロット検出手段7a、スロット電力検出手段7b、解析結果メモリ7cのこれらの動作は、メモリ6cへの波形データの記憶が終了するまで逐次行われる。
そして、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を低下させる要求がなされ、移動端末機11は、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を低下させて送信を継続する(S5)。なお、この送信電力の変更はスロット単位で行われる。
ここで、制御部4は、移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最小送信電力以下となっているか否かの判定を行う(S6)。移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最小送信電力以下となっていない場合(S6−No)は、さらに送信電力を低下させる制御を行う(S5)。移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最小送信電力以下となっている場合(S6−Yes)は、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を増加させる要求がなされ、移動端末機11は、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を増加させて送信を継続する(S7)。
そして、制御部4は、移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最大送信電力以上となっているか否かの判定を行う(S8)。移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最大送信電力以上となっていない場合(S8−No)は、さらに送信電力を増加させる制御を行う(S7)。移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最大送信電力以上となっている場合(S8−Yes)は、制御部4は、CLPC測定規格における全てのステップサイズ設定について、上述した、移動端末機11の送信電力を最大送信電力→最小送信電力→最大送信電力と制御してその送信電力の測定を実施したか否かを判定する(S9)。全て実施していない場合(S9−No)は、移動端末機11のステップサイズの設定を、測定を実施していない別のステップサイズに変更するよう、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して、ステップサイズ設定を行う(S10)。例えば、現在設定されているステップサイズが1dBであれば、+1dBさせて、ステップサイズを2dBに設定する。
制御部4は、全てのステップサイズについて、移動端末機11の送信電力の測定を実施したと判定する(S9−Yes)と、メモリ6cへの波形データの記憶と、解析結果メモリ7cへの検出されたスロットの電力値の記憶とを終了する(S11)。表示制御手段9は、解析結果メモリ7cに記憶されている検出されたスロットの電力値を読み出し、これらの電力値を時系列に連続して並べてグラフ表示するための表示データを作成する。そして、表示制御手段9は、この表示データを表示器10に表示させる(S12)。
図16は、信号解析装置1の表示器10に表示されたCLPC機能の試験における測定結果の一例を示している。表示画面15には、縦軸を電力P(単位dBm、目盛の値については表記を省略している)、横軸を時間tとするグラフが表示されている。ここでは、スロット毎の電力値が階段状のグラフで表され、画面に向かって左側から右側に時系列に連続して並べられ、1スロット毎に変化した状態が示されている。図14の区間イにおいては、移動端末機1の送信電力を1dBステップで低下させるように制御したときの測定結果が示されており、同様に、区間ロは1dBステップで増加、区間ハは2dBステップで低下、区間ニは2dBステップで増加させるように制御したときの測定結果が示されている。
なお、実際には、区間ロと区間ハとの間、区間ニと区間ホとの間は、ステップサイズの設定が行われることによる時間経過があるが、信号解析装置1の表示制御手段9は、その時間経過の分の測定データの表示を省略している。
また、図16では図示していないが、信号解析装置1の判定手段8は、測定結果とCLPC機能の試験の規格値とを対比し、異常と判定される場合は、表示制御手段9により異常を示す表示が表示器10に表示される。
判定手段8による移動端末機11の動作チェックは、例えば図17、図18に示す規格テーブルに基づいて行なわれる。これら規格テーブルは、CLPC機能の試験の規格値の一例を示したものであり、予めテーブル形式で不図示のメモリに記憶されている。図17に示す規格テーブルにおいて、(1)は送信電力を1dB〜3dBのステップサイズで増加するときの規格値を示す。(2)は送信電力を1dB〜3dBのステップサイズで現状維持するときの規格値を示す。(3)は送信電力を1dB〜3dBのステップサイズで低下するときの規格値を示す。ここで、図17の規格値は、あるスロットと、そのスロットに隣接するスロットとの電力の変化量(相対値)を示している。
また、図18に示す規格テーブルにおいて、(1)は送信電力を1dB〜3dBのステップサイズで増加するときの規格値を示す。(2)は送信電力を1dB〜3dBのステップサイズで現状維持するときの規格値を示す。(3)は送信電力を1dB〜3dBのステップサイズで低下するときの規格値を示す。ここで、図18の規格値は、あるスロットと、そのスロットから10スロット(3dBについては7スロット)離れたスロットとの電力の変化量(相対値)を示している。
このような信号解析装置の構成は、例えば特許文献1に開示されている。
特開2003−46431
(第1の実施の形態)
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した信号解析装置21の構成を示している。なお、従来の信号解析装置1と同様の構成については、適宜説明を省略する。
図1の信号解析装置21は、接続端子1a、方向性結合器2、設定操作手段23、制御部24、送信手段5、受信手段6、解析部27、判定手段8、表示制御手段29、表示器10から構成されている。また、送信手段5は、電力制御要求手段5a、送信回路5bから構成されている。また、受信手段6は、受信回路6a、A/D変換器6b、メモリ6cから構成されている。また、解析部27は、スロット検出手段27a、スロット電力検出手段27b、解析結果メモリ27cから構成されている。
ここで、接続端子1a、方向性結合器2、送信手段5、受信手段6、判定手段8、表示器10、さらに、送信手段5に含まれる電力制御要求手段5a、送信回路5b、受信手段6に含まれる受信回路6a、A/D変換器6b、メモリ6cは、従来の信号解析装置1と同様の構成である。
設定操作手段23は、従来の信号解析装置1の電力制御設定手段3の機能を有するとともに、表示画面の設定やマーカを移動する指示について測定者からの操作を受け付ける構成とされている。また、あるスロットと、そのスロットから所定数離れたスロットとの電力の相対値を表示させるために、この所定数としてのスロット間隔数を指定可能とする機能を有している。このスロット間隔数は、1(即ち隣接したスロット)か10のいずれかを選択して指定可能となっている。なお、任意の自然数を指定可能とするように構成されていても良い。
制御部24は、従来の信号解析装置1の制御部4が有する機能の他に、設定操作手段23で受け付けた設定や指示の情報、自己が記憶している測定規格の情報を、スロット電力検出手段27b、表示制御手段29に伝えている。
解析部27は、スロット検出手段27a、スロット電力検出手段27b、解析結果メモリ27cから構成されている。ここで、スロット検出手段27aは、従来の信号解析装置1で説明したスロット検出手段7aと同様の構成である。
スロット電力検出手段27bは、スロット検出手段27aが検出した各スロット毎の電力を算出する。また、設定操作手段23で指定されたスロット間隔数の情報を受けて、各スロットの電力を時系列に並べた場合に、この並べられたスロットそれぞれについて、このスロットと、このスロットから指定されたスロット間隔数だけ離れたスロットとの電力の相対値を算出している。このスロット間隔数は、1(即ち隣接したスロット)が初期値に設定されており、設定操作手段23からスロット間隔数の指定が無い場合は、スロット間隔数=1として処理を行う。なお、スロット電力検出手段27bは、設定操作手段23で指定されたスロット間隔数の情報を受けずに、指定される可能性のある全てのスロット間隔数での電力の相対値を算出してしまうように構成しても良い。
さらに、スロット電力検出手段27bは、スロットそれぞれについて、このスロットと、このスロットから指定されたスロット間隔数だけ離れたスロットとの相対値の差分を算出している。なお、スロット電力検出手段27bは、設定操作手段23で指定されたスロット間隔数の情報を受けずに、指定される可能性のある全てのスロット間隔数での電力の相対値の差分を算出してしまうように構成しても良い。
さらに、スロット電力検出手段27bは、スロットそれぞれについて、相対値から基準値を差し引いた誤差値を算出している。ここで、基準値とは、相対値がとるべき値であり、すなわち移動端末機11に設定されるステップサイズである。なお、この基準値の情報は、制御部24から通知される。
解析結果メモリ27cは、スロット検出手段27aおよびスロット電力検出手段27bによって検出されたスロット数、各スロットの電力、各スロットの電力の相対値、誤差値、各スロットの電力の相対値の差分を解析結果として記憶している。
表示制御手段29は、解析結果メモリ27cに記憶された各スロット毎の電力値、各スロットの電力の相対値、誤差値、各スロットの電力の相対値の差分を読み出し、この電力値、相対値、差分を時系列に連続して並べてグラフ表示するための表示データを作成して、表示器10に出力する。また、判定手段8から異常と判定されたスロットの情報を受けて、グラフ中に識別可能に表示させるようにする。さらに、制御部24から規格値の情報を受けて、グラフ中に規格線として表示させるようにする。この規格線については後述する。
このように構成された信号解析装置21の動作を、図2を用いて説明する。図2は、CLPC機能の試験の一部について表したフローチャートである。ここでは、CLPC機能の試験、すなわち送信電力制御試験は、移動端末機11のステップサイズを1dB、2dB、3dBの順に設定し、それぞれのステップサイズについて、移動端末機11の送信電力を制御したときの、移動端末機11からの送信信号の電力値を測定する送信電力制御測定を行うものとして例示している。
まず、設定操作手段23からの情報により、制御部24を介してCLPC機能の試験を行うための設定が信号解析装置21の各部に対してなされ、設定操作手段23からの指令で測定が開始される(S21)。
そして、電力制御要求手段5aが送信回路5bに対して、移動端末機11の送信電力をCLPCの規格における最大送信電力以上に制御するための制御信号を出力する。送信回路5bは、電力制御要求手段5aからの制御信号を受け、これに対応した制御情報を方向性結合器2および接続端子1aを介して移動端末機11に出力し、移動端末機11の送信電力をCLPCの規格における最大送信電力以上に設定させるように制御する(S22)。
さらに、電力制御要求手段5aからの要求により、送信回路5b、方向性結合器2および接続端子1aを介して、移動端末機11に対して、移動端末機11の送信電力制御のステップサイズを1dBとする設定がなされる(S23)。
そして、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して送信要求がなされ、移動端末機11がCLPC規格における最大送信電力以上での送信を開始する。そして、移動端末機11からの信号は受信回路6aで受信される。受信回路6aで受信された信号は、A/D変換器6bによってディジタルの波形データに変換され、メモリ6cへの波形データの記憶が開始される。それとともに、スロット検出手段27aはメモリ6cへ記憶された波形データを読み出し、制御部24又は電力制御要求手段5aからの情報に基づいて各スロットの開始位置を検出する。スロット電力検出手段27bは、スロット検出手段7aで検出されたスロットそれぞれの電力値を検出し、解析結果メモリ27cに記憶する(S24)。スロット検出手段27a、スロット電力検出手段27b、解析結果メモリ27cのこれらの動作は、メモリ6cへの波形データの記憶が終了するまで逐次行われる。
そして、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を低下させる要求がなされ、移動端末機11は、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を低下させて送信を継続する(S25)。なお、この送信電力の変更はスロット単位で行われる。
ここで、制御部24は、移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最小送信電力以下となっているか否かの判定を行う(S26)。移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最小送信電力以下となっていない場合(S26−No)は、さらに送信電力を低下させる制御を行う(S25)。移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最小送信電力以下となっている場合(S26−Yes)は、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を増加させる要求がなされ、移動端末機11は、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を増加させて送信を継続する(S27)。
そして、制御部24は、移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最大送信電力以上となっているか否かの判定を行う(S28)。移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最大送信電力以上となっていない場合(S28−No)は、さらに送信電力を増加させる制御を行う(S27)。移動端末機11の送信電力が、CLPC測定規格における最大送信電力以上となっている場合(S28−Yes)は、制御部24は、CLPC測定規格における全てのステップサイズ設定について、上述した、移動端末機11の送信電力を最大送信電力→最小送信電力→最大送信電力と制御して、その送信電力の測定を実施したか否かを判定する(S29)。
全て実施していない場合(S29−No)は、移動端末機11のステップサイズの設定を、測定を実施していない別のステップサイズに変更するよう、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して、ステップサイズ設定を行う(S30)。例えば、現在設定されているステップサイズが1dBであれば、+1dBさせて、ステップサイズを2dBに設定する。
制御部24は、全てのステップサイズについて、移動端末機11の送信電力の測定を実施したと判定する(S29−Yes)と、メモリ6cへの波形データの記憶と、解析結果メモリ27cへの検出されたスロットの電力値の記憶とを終了する(S31)。
解析部27のスロット電力検出手段27bは、各スロットの電力を時系列に連続して並べた場合に、この並べられたスロットそれぞれについて、このスロットと、このスロットから所定のスロット間隔数だけ離れたスロットとの電力の相対値を算出し、解析結果メモリ27cに記憶する(S32)。なお、この際、スロット電力検出手段27bは、電力の相対値の差分も算出する。
そして、表示制御手段28は、算出した各スロットの電力の相対値を解析結果メモリ27cから読み出し、この相対値を時系列に連続して並べてグラフ表示するための表示データを作成し、この表示データを表示器10に表示させる(S33)。なお、測定者が設定操作手段23から設定を行うことにより、表示内容を、各スロットの電力値、各スロットの電力の相対値、相対値の差分のいずれかを選択、もしくは組み合わせて表示させることも可能である。
なお、前述したスロット間隔数の指定は、試験開始前に予め行うことができる。また、一度相対値がグラフ表示された後に指定することもできる。この場合、スロット電力検出手段27bは、解析結果メモリ27cに記憶された各スロットの電力値を読み出し、指定されたスロット間隔数と検出した各スロットの電力値とから、改めて相対値を算出し、表示制御手段48は、算出した相対値のグラフを表示器10に表示させる。
図3は、信号解析装置21の表示器10に表示された解析結果の一例を示している。図3は、相対値と、この相対値の算出元のスロットの電力とを1つの画面に表示した例であり、表示画面31には、電力グラフ表示部32、区分表示部33、相対値グラフ表示部34が表示されている。
電力グラフ表示部32には、縦軸を電力P(通常、単位dBm)、横軸を時間tとするグラフが表示されている。なお、横軸には、単位として、時間の代わりにスロット個数を用いても良い。ここでは、スロット毎の電力が階段状のグラフで表され、画面に向かって左側から右側に時系列に連続して並べられている。
区分表示部33は、測定結果がどの区間(Step)に区分されるかを測定者が把握できるようにするため、Stepの区分を表示しているものである。区分表示部33には、CLPC機能の試験の規格に対応したStepの記号B〜Gが表示されている。ここで、StepBの区間は、移動端末機11の送信電力を1dBステップで低下させるように制御する区間であり、以下同様に、StepCは1dBステップで増加、StepDは2dBステップで低下、StepEは2dBステップで増加、StepFは3dBステップで低下、StepGは3dBステップで増加させるように制御する区間である。この区分は、電力グラフ表示部32に表示される測定結果に対応して表示される。
相対値グラフ表示部34には、縦軸を電力差(単位dB)、横軸を時間tとし、測定結果としての各スロットの電力の相対値が、画面に向かって左側から右側に時系列に連続して並べられて階段状のグラフで表示されている。なお、横軸は、電力グラフ表示部34と同一であり、測定者が相対値グラフと電力グラフとを容易に比較できるようになっている。この例では、前述のスロット間隔数は1、即ち隣接したスロットが指定されており、あるスロットについて、そのスロットの時系列的に1つ前のスロットとの電力の相対値が示されている。
なお、相対値は正の数(以下、正数という)をとって算出されて、表示されている。具体的には、移動端末機11の送信電力を低下させる区間(StepB,StepD,StepF)では、2つのスロットの電力の差分を算出したものに−1を乗じて正数の相対値とし、移動端末機11の送信電力を増加させる区間(StepC,StepE,StepG)では、2つのスロットの電力の差分を算出したものに1を乗じて(つまりそのままの値として)正数の相対値として算出している。このように、相対値を正数で表示することにより、正負の値で表示するのに比べて、表示画面31における相対値グラフ表示部34の表示面積を小さくすることができる。
図3において、StepB及びStepCの区間では、移動端末機11のステップサイズの設定は、1dBである。従って、移動端末機11の送信電力が精度良く制御されていれば、相対値グラフ表示部34のStepB及びStepCの区間のグラフは1dBで横に一直線となるはずである。ところが、相対値グラフ表示部34のc点で大きな乱れが生じており、この部分で移動端末機11の送信電力に大きな誤差が生じていることが、測定者に容易に分かる。なお、電力グラフ表示部32のa点は、時間軸上でこのc点に対応している。
同様に、StepD及びStepEの区間では、移動端末機11のステップサイズの設定は2dBであり、理想的には、相対値グラフ表示部34のStepB及びStepCの区間のグラフは2dBで横に一直線となるはずである。相対値グラフ表示部34のStepDの区間では、グラフは3dB付近に位置しており、測定者は、StepDの区間において、全体的に、設定値である2dBから大きく外れているという傾向を観測できる。また、この中で、d点においては、相対値は3dBを超えている。なお、電力グラフ表示部32のb点は、時間軸上でこのd点に対応している。
相対値グラフ表示部34のStepEの区間では、グラフは、時刻経過に従って(グラフが右に行くに従って)徐々に相対値が大きくなるという、特異な傾向を示している。このように、相対値グラフ表示部34の表示により、測定者は、ある区間又は全体に生じるような傾向を観測できる。
同様に、StepF及びStepGの区間では、移動端末機11のステップサイズの設定は3dBである。相対値グラフ表示部34のStepDの区間では、グラフは3dB付近に位置しており、測定者は、StepDの区間において、全体的に、設定値である2dBから大きく外れているという傾向を観測できる。
なお、上述したa〜d点は、判定手段8により異常スロットと判定されており、図3に示すように、グラフ中の他のスロットと異なる色で表示されている。また、相対値グラフ表示部34には複数の相対値グラフを表示するようにしても良い。ここで、複数の相対値グラフの表示とは、例えば各スロットについて、時系列的に1つ前のスロットとの電力の相対値と、時系列的に10ヶ前のスロットとの電力の相対値との2つのグラフを、同一の相対値グラフ表示部34に表示するということである。
図4は、解析結果の別な表示例を示している。図4の表示画面31には、電力グラフ表示部32、区分表示部33、相対値グラフ表示部34が表示されている。この例では、スロット間隔数は図3と同様に1が指定され、相対値グラフ表示部34には、各スロットについて、時系列的に1つ前のスロットとの電力の相対値が示されている。ここで、図3の例と異なり、相対値グラフ表示部34は、相対値は正負の値として算出されており、表示も正負の値で示されている。
さらに、図4の相対値グラフ表示部34には、各スロットの相対値が正常か異常かを判定する規格値を、規格線36として表示している。この規格値は、ここでは図17で示した規格値を用いている。図17の規格値は、区間StepB〜Gでそれぞれ異なるので、それぞれの区間毎に、上限値と下限値に対応する2本の規格線36が表示されている。なお、測定者が、任意の規格値を設定操作手段23を介して設定し、規格線36として表示する構成であっても良い。
相対値グラフ表示部34のStepBの区間では、上限値として−0.5dB、下限値として−1.5dBの2本の規格線36が表示されている。相対値グラフは、多少のバラツキはあるが、この2本の規格線36の間に収まっており、区間StepBのスロットはすべて正常であることが分かる。
相対値グラフ表示部34のStepCの区間では、上限値として1.5dB、下限値として0.5dBの2本の規格線36が表示されている。相対値グラフは、c点のみ上限値である1.5dBを超えており、異常であることが分かる。また、c点以外の部分は1.0dBで安定しており、この2本の規格線36の間に収まっている。この結果から、測定者は、区間StepCにおけるc点の異常は、突発的なものであると推測できる。
同様に、StepDの区間では、上限値として−1.0dB、下限値として−3.0dBの2本の規格線36が表示されている。相対値グラフは、下限値である−3.0dBの規格線付近に位置しており、さらに、d点においては、相対値は3dBを超えているので異常であることが分かる。測定者は、区間StepDは全体的に規格線に対するマージンが少ない傾向があり、d点における異常の原因は、この傾向によるところが大きいと推測できる。
同様に、StepEの区間では、上限値として3.0dB、下限値として−1.0dBの2本の規格線36が表示されている。相対値グラフは2本の規格線の間に収まっており、正常と判定されるが、時刻経過に従って(グラフが右に行くに従って)徐々に相対値が大きくなるという、特異な傾向を測定者が観測できる。
同様に、StepFの区間では、上限値として−1.5dB、下限値として−4.5dBの2本の規格線36が表示され、StepGの区間では、上限値として4.5dB、下限値として1.5dBの2本の規格線36が表示されている。相対値グラフは、StepF、Gいずれの区間でも2本の規格線の間に収まっており、正常と判定されることが分かる。
このように、相対値グラフ表示部34に規格線を表示することにより、被測定信号の解析に有用となる。なお、図3と同様に、図4におけるa〜d点も、判定手段8により異常スロットと判定されて、グラフ中の他のスロットと異なる色で表示されている。
なお、図4のように規格線を表示する変わりに、相対値グラフ表示部34で、規格値に基づいて正常と判定される領域と、異常と判定される領域とを識別可能に表示するようにしても良い。具体的には、例えば相対値グラフ表示部34のStepBの区間で、−0.5dB〜−1.5dBの範囲の背景色を青、−0.5dBより大きい範囲と−1.5dBより小さい範囲との背景色を黄とする。また、StepCの区間で、0.5dB〜1.5dBの範囲の背景色を青、0.5dBより小さい範囲と1.5dBより大きい範囲との背景色を黄とする。同様に、StepD〜Gの区間でも、規格値に対応させて、相対値グラフ表示部34の背景色を色分けする。このようにしても、規格線を表示するのと同様の効果が得られる。
図5は、解析結果のさらに別な表示例を示している。図5の表示画面31には、区分表示部33、相対値グラフ表示部34が表示されている。この例では、スロット間隔数は図4と同様に1が指定されている。ここで、図4の例と異なり、相対値グラフ表示部34に表示されるグラフは、相対値から基準値を差し引いた誤差値を時系列に連続して並べた誤差値グラフである。
ここで、基準値とは、相対値がとるべき値であり、予め定められるものである。図5の例では、基準値は設定されたステップサイズと電力制御の増加/低下の制御とから定まり、区間StepBでは−1dB、同様にCでは1dB、Dでは−2dB、Eでは2dB、Fでは−3dB、Gでは3dBである。
図5では、相対値グラフ表示部34に、誤差値グラフとともに規格線36も表示されている。ここで、規格線36は、規格値をそのまま表示したものではなく、規格値から基準値を差し引いたものを表示している。例えば、区間StepBにおいては、上限値−0.5dB、下限値−1.5dBからそれぞれ−1dBを差し引いた0.5dB、−0.5dBが規格線36の値となる。
なお、図4と同様に、図5におけるe、f点も、判定手段8により異常スロットと判定されて、グラフ中の他のスロットと異なる色で表示されている。
この例でも、図4の例と同様に、グラフのe点及びf点は規格値を外れた異常スロットであること、e点の異常は突発的なものであると推測できること、区間StepDは全体的に規格線に対するマージンが少ない傾向があり、f点における異常の原因は、この傾向によるところが大きいと推測できること、StepEの区間では、時刻経過に従って徐々に相対値が大きくなるという、特異な傾向を観測できることなどの、様々な利点を有する。
さらに、相対値から基準値を差し引いた誤差値を表示することで、通常、相対値方向(図5の縦軸方向)のグラフの幅が狭くなる。これは、図4の相対値グラフ表示部34と、図5の相対値グラフ表示部34との比較から明らかである。これにより、表示画面31中の相対値グラフ表示部34の表示面積を小さくする、あるいは、グラフを相対値方向(図5の縦軸方向)に拡大表示して、より解像度の高い表示とする、などが容易に行えるようになる。
図6は、解析結果のさらに別な表示例を示している。図6の表示画面31には、相対値グラフ表示部34、区分表示部33、差分グラフ表示部35が表示されている。この例では、スロット間隔数は図4と同様に1が指定され、相対値グラフ表示部34には、各スロットについて、時系列的に1つ前のスロットとの電力の相対値が示されている。そして、差分グラフ表示部35には、各スロットについて、時系列的に1つ前のスロットとの相対値の差分が階段状グラフで表示されている。
ここで、差分グラフ表示部35に表示される相対値の差分の算出方法について、例を挙げて説明する。図6において、相対値グラフ表示部34のc点と、差分グラフ表示部35のg点とは同一のスロットに対応した値である。c点の値は+2.0dB、c点の1つ前のスロットの値は+1.0dBであるので、g点における相対値の差分は、2.0−1.0=1.0dBとなる。同様に、c点の1つ後のスロットの値は+1.0dBであるので、g点の一つ後のスロットにおける相対値の差分は、1.0−2.0=−1.0dBとなる。このようにして、各スロットについて、相対値の差分が算出され、グラフ表示される。ただし、図6において、StepC〜Gの区間開始点については、便宜的に相対値の差分を0dBと算出している。
なお、図4と同様に、図6におけるc、g点、d、h点はそれぞれグラフの横軸上で対応しており、いずれも、判定手段8により異常スロットと判定されて、グラフ中の他のスロットと異なる色で表示されている。
このように、差分を算出するということは、元の値を微分することに等しい。つまり、差分を算出してグラフ表示することにより、元のグラフの変化点を見つけ易くなる。
以上、図3〜図6について説明したが、表示画面31に表示させる内容の組合せは適切に選べば良い。例えば、電力グラフ表示部32、相対値グラフ表示部34、差分グラフ表示部35のうち、いずれかのみを表示する、いずれか2つを組み合わせて表示する、全て同一の表示画面31に並べて表示する、といった表示種別がある。これらをどのように表示するかは、測定者が、設定操作手段23から設定可能となっている。
(第2の実施の形態)
以下、図面に基づいて、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図7は、本発明を適用した信号解析装置41の構成を示している。なお、上述した第1の実施の形態の信号解析装置21と同様の構成については、同じ符番を付し、適宜説明を省略する。
制御部44は、第1の実施の形態の信号解析装置21の制御部24が有する機能の他に、内部に送信電力低下制御回数と送信電力増加制御回数を記憶したメモリ(不図示)を有している。これらの送信電力低下/増加制御回数は、ステップサイズ毎にそれぞれ決められた値となっている。
ここで、送信電力低下/増加制御回数について説明する。CLPC測定規格における最大送信電力と最小送信電力との電力差をステップサイズで除算することにより、そのステップサイズで、移動端末機11の送信電力を最大から最小、又は最小から最大とするのに必要な制御の回数が予め想定できる。例えば、電力差が73dBであれば、ステップサイズ1dBなら73回、ステップサイズ2dBなら37回である。誤差等を考慮してこの回数に十分にマージンを持たせた制御回数を、それぞれのステップサイズ毎に予め決定しておく。これが送信電力低下/増加制御回数である。
後述するように、制御部44は、移動端末機11がCLPC測定規格における最大送信電力以上の送信電力となっている状態から、この送信電力低下制御回数分、送信電力を低下させる制御を行い、さらに続いて、この送信電力増加制御回数分、送信電力を増加させる制御を行う。このようにすることで、移動端末機11に特段の異常が無い限り、移動端末機11の送信電力をCLPC測定における最大と最小との間で変化させる制御を行うことができ、そして、制御部44については、第1の実施の形態で説明した、CLPC測定規格における最小送信電力以下又は最大送信電力以上となっているか否かの判定処理が不要となっている。
なお、前述のマージンにより、CLPC測定規格における最小送信電力以下となっていても送信出力を低下させ続けたり、CLPC測定規格における最大送信電力以上となっていても送信出力を増加させ続けたりするように制御される状態が発生する可能性がある。その状態となっている測定データは、CLPC測定規格において、スロットの送信電力が正常か異常かの判定は不要と定められている。なお、移動端末機11は、物理的には、CLPC測定規格における最小送信電力よりも小さい電力、CLPC測定規格における最大送信電力よりも大きい電力で送信可能となっている。
図8は、判定手段48の内部構成を示している。判定手段48は、スロット判定部48a、判定不要領域判定部48bから構成されている。
スロット判定部48aは、スロット間の電力の変化量について、制御部44に記憶されている内容と、解析結果メモリ27cに記憶された内容とを比較し、測定対象の移動端末機11の送信機能が正常か否かを判定し、移動端末機11の動作チェックを行っている。つまり、解析結果メモリ27cに記憶されたスロットそれぞれについて、スロット間の電力の変化量(相対値)が設定されたステップサイズにおける許容誤差範囲に収まっているかを判定し、この判定結果を表示制御手段49に通知する。
判定不要領域判定部48bは、解析結果メモリ27cに記憶されたスロット毎の電力値を読み出し、各スロットの電力値とCLPC測定規格における最大/最小送信電力規格値とを比較して、スロットの電力値が、CLPC測定規格における最小送信電力以下最大送信電力以上となっているものを区別し、これによりCLPC測定規格においてスロットの送信電力が正常か異常かの判定は不要とされる領域を判定し、その結果を表示制御手段49に通知している。この通知は、例えば、解析結果メモリ27cに記憶されているm番目のスロットからn番目のスロットは判定不要領域に属するという内容の情報である。
図7に戻り、表示制御手段49は、解析結果メモリ27cに記憶された各スロット毎の電力値、各スロットの電力の相対値、誤差値、各スロットの電力の相対値の差分を読み出し、この電力値、相対値、差分を時系列に連続して並べてグラフ表示するための表示データを作成して、表示器10に出力する。それとともに、判定手段48から、異常と判定されたスロットの情報と判定不要領域に属すると判定されたスロットの情報とを受けて、グラフ中に識別可能に表示させるようにする。
このように構成された信号解析装置41の動作を、図9を用いて説明する。図9は、CLPC機能の試験の一部について表したフローチャートである。ここでは、CLPC機能の試験、すなわち送信電力制御試験は、移動端末機11のステップサイズを1dB、2dB、3dBの順に設定し、それぞれのステップサイズについて、移動端末機11の送信電力を制御したときの、移動端末機11からの送信信号の電力値を測定する送信電力制御測定を行うものとして例示している。
まず、設定操作手段23からの情報により、制御部44を介してCLPC機能の試験を行うための設定が信号解析装置41の各部に対してなされ、設定操作手段23からの指令で測定が開始される(S41)。
そして、電力制御要求手段5aが送信回路5bに対して、移動端末機11の送信電力をCLPCの規格における最大送信電力以上に制御するための制御信号を出力する。送信回路5bは、電力制御要求手段5aからの制御信号を受け、これに対応した制御情報を方向性結合器2および接続端子1aを介して移動端末機11に出力し、移動端末機11の送信電力をCLPCの規格における最大送信電力以上に設定させるように制御する(S42)。
さらに、電力制御要求手段5aからの要求により、送信回路5b、方向性結合器2および接続端子1aを介して、移動端末機11に対して、移動端末機11の送信電力制御のステップサイズを1dBとする設定がなされる。また、それとともに、制御部44は、不図示のメモリから、ステップサイズを1dBとしたときの、送信電力低下/増加制御回数を読み出して、自身の内部に設定する(S43)。
そして、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して送信要求がなされ、移動端末機11がCLPC規格における最大送信電力以上での送信を開始する。そして、移動端末機11からの信号は受信回路6aで受信される。受信回路6aで受信された信号は、A/D変換器6bによってディジタルの波形データに変換され、メモリ6cへの波形データの記憶が開始される。それとともに、スロット検出手段27aはメモリ6cへ記憶された波形データを読み出し、制御部24又は電力制御要求手段5aからの情報に基づいて各スロットの開始位置を検出する。スロット電力検出手段27bは、スロット検出手段7aで検出されたスロットそれぞれの電力値を検出し、解析結果メモリ27cに記憶する(S44)。スロット検出手段27a、スロット電力検出手段27b、解析結果メモリ27cのこれらの動作は、メモリ6cへの波形データの記憶が終了するまで逐次行われる。
そして、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を低下させる要求がなされ、移動端末機11は、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を低下させて送信を継続する(S45)。なお、この送信電力の変更はスロット単位で行われる。また、制御部44は、この送信電力を低下させる要求を出力した回数(送信電力低下制御実行回数)をカウントしている。
ここで、制御部44は、カウントしている送信電力低下制御実行回数が、設定された送信電力低下制御回数と一致しているか否かの判定を行う(S46)。一致していない場合(S46−No)は、さらに送信電力を低下させる制御を行う(S45)。一致している場合(S46−Yes)は、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を増加させる要求がなされ、移動端末機11は、現在設定されているステップサイズ分だけ送信電力を増加させて送信を継続する(S47)。そして、制御部44は、この送信電力を増加させる要求を出力した回数(送信電力増加制御実行回数)をカウントする。
そして、制御部44は、カウントしている送信電力増加制御実行回数が、設定された送信電力増加制御回数と一致しているか否かの判定を行う(S48)。一致していない場合(S48−No)は、さらに送信電力を増加させる制御を行う(S47)。一致している場合(S48−Yes)は、制御部44は、CLPC測定規格における全てのステップサイズ設定について、上述した、移動端末機11の送信電力を最大送信電力→最小送信電力→最大送信電力と制御してその送信電力の測定を実施したか否かを判定する(S49)。
全て実施していない場合(S49−No)は、移動端末機11のステップサイズの設定を、測定を実施していない別のステップサイズに変更するよう、電力制御要求手段5aから移動端末機11に対して、ステップサイズ設定を行う。例えば、現在設定されているステップサイズが1dBであれば、+1dBさせて、ステップサイズを2dBに設定する。それとともに、制御部44は、不図示のメモリから、新たに設定したステップサイズにおける送信電力低下/増加制御回数を読み出して、自身の内部に設定する(S50)。
制御部44は、全てのステップサイズについて、移動端末機11の送信電力の測定を実施したと判定する(S49−Yes)と、メモリ6cへの波形データの記憶と、解析結果メモリ47cへの検出されたスロットの電力値の記憶とを終了する(S51)。
解析部27のスロット電力検出手段27bは、各スロットの電力を時系列に連続して並べた場合に、この並べられたスロットそれぞれについて、このスロットと、このスロットから所定のスロット間隔数だけ離れたスロットとの電力の相対値を算出し、解析結果メモリ27cに記憶する(S52)。なお、この際、スロット電力検出手段27bは、電力の相対値の差分も算出する。
判定手段48の判定不要領域判定部48bは、解析結果メモリ27cから各スロットの電力値を読み出し、各スロットの電力値とCLPC測定規格における最大/最小送信電力規格値とを比較して、判定不要領域を判定し、表示制御手段49に通知する。(S53)。
そして、表示制御手段49は、算出した各スロットの電力の相対値を解析結果メモリ27cから読み出し、この相対値を時系列に連続して並べてグラフ表示するための表示データを作成する。また、この表示データは、判定手段48から受けた判定不要領域の情報に基づいて、このグラフ中に判定不要領域を識別可能に表示させるように作成される。そして、表示制御手段48は、この表示データを表示器10に表示させる(S54)。
図10は、信号解析装置41の表示器10に表示された解析結果の一例を示している。図10は、相対値と、この相対値の算出元のスロットの電力とを1つの画面に表示した例であり、表示画面31には、電力グラフ表示部32、区分表示部33、相対値グラフ表示部34が表示されている。
図10の電力グラフ表示部32において、ト、チで示される範囲は、判定不要領域37である。電力グラフ表示部32における判定不要領域37は、CLPC測定規格における最大/最小送信電力規格値に従って表示されている。判定不要領域37は、電力グラフ表示部32中の他の部分と異なる背景色が付され、測定者が容易に識別可能となっている。
同様に、図10の区分表示部33、相対値グラフ表示部34において、リ〜ヨで示される範囲は、判定不要領域37である。区分表示部33、相対値グラフ表示部34における判定不要領域37は、判定手段48の判定結果に基づいて表示されている。判定不要領域37は、区分表示部33、相対値グラフ表示部34中の他の部分と異なる背景色が付され、測定者が容易に識別可能となっている。なお、相対値グラフ表示部34中には、第1の実施の形態で説明した規格線36が、判定不要領域37以外の部分に表示されている。
ここで、判定不要領域37について電力グラフ表示部32と相対値グラフ表示部34とを比較すると、電力グラフ表示部32では電力値として図10の縦軸方向で判定不要領域37が定まるのに対し、相対値グラフ表示部34では時間(スロット単位)として図10の横軸方向で判定不要領域37が定まる。このように判定不要領域の表示が変わることにより、相対値グラフでは、判定不要領域とそれ以外の領域とがスロット単位で区分されるため、測定者が判定不要領域を把握し易くなる。
ところで、電力グラフ表示部32のi,j,k,l,m,nの各点では、電力値が変化せず一定となっている。これは、前述の通り、CLPC測定規格における最小送信電力以下となっていても送信出力を低下させ続けたり、CLPC測定規格における最大送信電力以上となっていても送信出力を増加させ続けたりするように移動端末機11が制御される状態となり、その結果、移動端末機11に規定された最大送信電力又は物理的な最小送信電力に到達してしまい、送信電力が飽和し、電力値が一定となっているものである。
移動端末機11の送信電力制御の特性を解析するとき、CLPC測定規格に規定された範囲外の測定結果も表示させて観測することが、測定者にとって有用な場合がある。例えば、上述の送信電力が飽和する様子をCLPC測定結果と併せて観測したい場合などである。このような場合に、測定者が判定不要領域を把握し易くなるので、相対値グラフ中に判定不要領域を識別可能に表示することは有用である。
なお、表示制御手段49は、測定者が設定操作手段23を介して設定することにより、判定不要領域を非表示とすることも可能となっている。具体的には、図10のリ、ヌ、ル、ヲ、ワ、カ、ヨの区間を表示せず、区間StepB〜Gについて、隣りあった区間がそれぞれ接した状態で表示される。
以上説明したように、本願発明は、スロット単位で電力が制御される通信方式であるTD−SCDMA、W−CDMA、CDMA2000等の信号を解析する信号解析装置として有用である。
1a…接続端子、2…方向性結合器、3…電力制御設定手段、5…送信手段、5a…電力制御要求手段、5b…送信回路、6…受信手段、6a…受信回路、6b…A/D変換器、6c…メモリ、27…解析部、27a…スロット検出手段、27b…スロット電力検出手段、27c…解析結果メモリ、8…判定手段、10…表示器、11…移動端末機、21…信号解析装置、23…設定操作手段、24…制御部、29…表示制御手段、44…制御部、48…判定手段、48a…スロット判定部、48b…判定不要領域判定部、31…表示画面、32…電力グラフ表示部、33…区分表示部、34…相対値グラフ表示部、35…差分グラフ表示部、36…規格線、37…判定不要領域