JP2009026535A - 固体高分子形燃料電池用電解質膜とこれを用いた電解質膜−触媒層接合体及び電解質膜−電極接合体、並びに燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プロトン伝導性材料からなる層(3)と鱗片状粒子材料からなる層(2)を積層した固体高分子形燃料電池用電解質膜であって、プロトン伝導性材料からなる層(3)は2層以上、鱗片状粒子材料からなる層(2)は1層以上で構成され、鱗片状粒子材料(2)は自己組織化による造膜性があり、電解質膜の少なくとも一方の面はプロトン伝導性材料を多く含む層(3)が存在する。本発明の電解質膜−触媒層接合体は、前記電解質膜の両面に、それぞれ触媒粒子及び電解質バインダーからなる触媒層が形成されている。
【選択図】図1
Description
空気極:(1/2)O2 + 2H+ + 2e- → H2O
全反応:H2 + (1/2)O2 → H2O
これらの反応式からわかるように、発電時に生成するのは水のみである。燃料電池は次世代のクリーンエネルギーシステムの一つとして注目されている。
空気極:(3/2)O2+6H++6e-→3H2O
全反応:CH3OH+(3/2)O2→2H2O+CO2
固体高分子形燃料電池は、電解質膜としてプロトン伝導性高分子電解質膜を用い、その両面に触媒層を配置し、ついでその両面に電極基材を配置し、更にこれをセパレータで挟んだ構造をしている。電解質膜の両面に触媒層を配置したもの(即ち、触媒層/電解質膜/触媒層の層構成のもの)は、電解質膜−触媒層接合体(略称:CCM)と称されており、さらに、その電解質膜−触媒層接合体の両面に電極基材を配置したもの(即ち、電極基材/触媒層/電解質膜/触媒層/電極基材の層構成のもの)は、電解質膜−電極接合体(略称:MEA)と称されている。
(1)電解質膜の作製
無機フィラーとして、旭硝子エスアイテック社の鱗片状シリカの水スラリー(“サンラブリー
LFS”(商品名):HN−050、固形分約14重量%)を使用した。プロトン伝導性材料と
してDuPont社の5重量%“Nafion”(商品名)溶液を使用した。粘度調整のため、
それぞれ純水により約10倍に希釈して使用した。
得られた膜を長方形に切り出し、室温で蒸留水に浸漬することで十分に加湿し、加湿による寸法変化率を評価した。加湿前後の長さを測定することで次式により寸法変化率を算出した。
[(加湿後の長さ)÷(加湿前の長さ)]×100(%)
室温(25℃)で蒸留水に浸漬した電解質膜の寸法変化率は、109%であった。市販品の“
Nafion117”(商品名)膜について同様に測定した寸法変化率は、120%であった。
電解質膜は、加湿時における寸法変化率が“Nafion117”膜に比べて小さく、寸法安
定性に優れるといえる。無機フィラーとして用いた鱗片状シリカが膜内で強固なマトリックスを形成することによる効果と考える。その結果として、燃料電池の起動・停止の際の膜の湿潤・乾燥に伴う寸法変化が抑制されることにより、電極触媒層の剥離など電解質膜−電極接合体の破損を抑制する効果が期待できる。
得られた膜を長方形に切り出し、室温で蒸留水に浸漬することで十分に加湿し、インピーダンスアナライザーを用いて膜の伝導率を測定した。その結果、25℃−100%RHにおける電解質膜の伝導率は0.06S/cmであった。これは、“Nafion117”膜の伝導率0.0
8S/cmに比べて25%低い。電解質膜内の鱗片状シリカのマトリックスがプロトン伝導を阻害する要因になりうると考えられるが、一方で、高温耐性や保湿性、形状安定性などの性能向上が達成できるのであれば、伝導率の低下は問題にはならないといえる。
電解質膜−触媒層接合体及び電解質膜−電極接合体の作製:上記(1)にて作製した厚さ約110μmの電解質膜の両面に、触媒(田中貴金属製Pt/C(TEC10E50E)、Pt−Ru/C(TEC61E54))及び電解質バインダー(DuPont社、5重量%”Nafion”(商品名)溶液)からなる触媒層を形成した。具体的には、一対の基材フィルム上に上記触媒及び電解質バインダーからなる触媒層を形成した触媒転写フィルムで電解質膜を挟持し、熱プレス(温度:135−150℃、圧力:4−6MPa)により電解質膜上に触媒層を転写・形成した。さらに、上記電解質膜−触媒層接合体を一対のガス拡散層(東レ社製、カーボンペーパー)で挟持し、電解質膜−電極接合体を形成した。上記電解質膜−電極接合体を燃料及び酸化剤を供給するための流路を持つセパレータ及び集電体で挟持し、単セルを構成した。燃料極は3mg−Pt−Ru/cm2、空気極は1mg−Pt/cm2とした。
に評価したところ、本実施例と大きな差異は見られなかった。つまり、低電流密度領域はメタノールのクロスオーバーの影響でセル電位の低下が見られる領域であるが、上記本実施例の電解質膜の厚さは約110μmで、“Nafon117”膜の厚さ(約200μm)の約半分であるに
もかかわらず、比較例に対しセル電位に差異が見られなかった。これは、上記電解質膜が“Na
fion117”膜に比べてメタノール透過阻止能が高いことを示している。
電解質膜−触媒層接合体及び電解質膜−電極接合体の作製:上記(1)にて作製した厚さ約110μmの電解質膜の両面に、触媒(田中貴金属製Pt/C(TEC10E50E)、Pt−Ru/C(TEC62E58))及び電解質バインダー(DuPont社、5重量%”Nafion”(商品名)溶液)からなる触媒層を形成した。具体的には、一対の基材フィルム上に上記触媒及び電解質バインダーからなる触媒層を形成した触媒転写フィルムで電解質膜を挟持し、熱プレス(温度:135−150℃、圧力:4−6MPa)により電解質膜上に触媒層を転写・形成した。さらに、上記電解質膜−触媒層接合体を一対のガス拡散層(東レ社製、カーボンペーパー)で挟持し、電解質膜−電極接合体を形成した。そして、上記電解質膜−電極接合体を燃料及び酸化剤を供給するための流路を持つセパレータ及び集電体で挟持し、単セルを構成した。燃料極は1.0mg−Pt−Ru/cm2、空気極は0.5mg−Pt/cm2とした。
に評価したところ、開放起電力は0.98Vであった。上記本実施例では、電解質膜の厚さは約110μmであり、“Nafon115”膜の厚さ(約125μm)に比べて12%薄いにもか
かわらず、比較例に比べ30mVも高い開放起電力が得られた。これは、上記電解質膜が“Na
fion115”膜に比べて燃料ガス及び酸化剤ガスのクロスリークに対するバリア性に優れる
ことを示している。
複合膜を傾斜材料とし、水素を使用した燃料電池の場合、空気極側に前記鱗片状粒子材料を多く含む層を配置して酸素バリヤー性を強化することを目的に、空気極側に鱗片状粒子材料リッチ層を配置した実験をした。製法は、実施例1と同様に、初回をNafion溶液で塗膜形成した後、鱗片状シリカ水スラリーとNafion溶液を30回交互に塗布した。最後にNafion溶液だけを70回分重ねて塗布し、乾燥させた。その結果、約100μの厚さの複合膜が得られた。膜厚方向の分布としては、厚さの約1/3にはシリカとNafionが積層された領域となり、残り2/3にはNafionのみからなる領域となった。
複合膜を傾斜材料とし、メタノールを使用した燃料電池の場合、燃料極側に前記鱗片状粒子材料を多く含む層を配置しメタノールバリヤー性を強化することを目的に、燃料極側に鱗片状材料リッチ層を配置した実験をした。複合膜の製法、及び膜性能は上記実施例2と同様とした。
2 鱗片状粒子材料
3 プロトン伝導性材料
4,4’ 触媒層
5,7 電極基材
6 燃料極
8 空気極
10 プロトン伝導性材料の溶液
11 鱗片状粒子材料の分散媒
12 基材フィルム
Claims (8)
- プロトン伝導性材料からなる層と鱗片状粒子材料からなる層を積層した固体高分子形燃料電池用電解質膜であって、
前記プロトン伝導性材料からなる層は2層以上、前記鱗片状粒子材料からなる層は1層以上で構成され、
前記鱗片状粒子材料は、自己組織化による造膜性があり、
前記電解質膜の少なくとも一方の面は前記プロトン伝導性材料を多く含む層が存在することを特徴とする固体高分子形燃料電池用電解質膜。 - 前記プロトン伝導性材料は、フッ素系プロトン伝導性高分子材料、炭化水素系プロトン伝導性材料、無機プロトン伝導性材料、有機−無機ハイブリッドプロトン伝導性材料、イオン液体及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
- 前記自己組織化による造膜性のある鱗片状粒子材料は、平均直径が0.01μm〜10.00μmの範囲、平均厚みが0.01〜1.00μmの範囲である請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
- 前記自己組織化による造膜性のある鱗片状粒子材料からなる層は、厚さが0.01μm〜10.00μmである請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
- 前記プロトン伝導性材料からなる層は、厚さが0.01μm〜100.00μmである請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解質膜の両面に、それぞれ触媒粒子及び電解質バインダーからなる触媒層が形成されていることを特徴とする電解質膜−触媒層接合体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解質膜の両面に、それぞれ触媒粒子及び電解質バインダーからなる触媒層と電極基材からなる電極が形成されていることを特徴とする電解質膜−電極接合体。
- 請求項7に記載の電解質膜−電極接合体を用いた燃料電池。
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