JP2008065987A - 固体高分子形燃料電池用電解質膜とこれを用いた電解質膜−触媒層接合体及び電解質膜−電極接合体、並びに燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】均一な分布と強固な構造を持ち、寸法安定性とガスバリア性の高い固体高分子形燃料電池用電解質膜とこれを用いた電解質膜−触媒層接合体及び電解質膜−電極接合体、並びに燃料電池を提供する。
【解決手段】プロトン伝導性材料(3)とシリカ粒子材料(2)を含む固体高分子形燃料電池用電解質膜(1)であって、シリカ粒子材料(2)は、粒子間結合による自己造膜性があり、かつプロトン伝導性官能基をもつ分子鎖(10)により表面修飾されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池用電解質膜(1)とする。
【選択図】図1
【解決手段】プロトン伝導性材料(3)とシリカ粒子材料(2)を含む固体高分子形燃料電池用電解質膜(1)であって、シリカ粒子材料(2)は、粒子間結合による自己造膜性があり、かつプロトン伝導性官能基をもつ分子鎖(10)により表面修飾されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池用電解質膜(1)とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、固体高分子形燃料電池用電解質膜とこれを用いた電解質膜−触媒層接合体及び電解質膜−電極接合体、並びに燃料電池に関するものである。
固体高分子形燃料電池はプロトン伝導性を有する固体高分子膜を電解質とし、この膜の両面に燃料極及び空気極を接合して構成され、燃料極に水素、空気極に酸素あるいは空気を供給して電気化学反応により発電するシステムである。各電極では下記反応が起こっている。
燃料極:H2 → 2H+ + 2e-
空気極:(1/2)O2 + 2H+ + 2e- → H2O
全反応:H2 + (1/2)O2 → H2O
空気極:(1/2)O2 + 2H+ + 2e- → H2O
全反応:H2 + (1/2)O2 → H2O
これらの反応式からわかるように、発電時に生成するのは水のみである。燃料電池は次世代のクリーンエネルギーシステムの一つとして注目されている。
そして、固体高分子形燃料電池は、メタノールを燃料として供給しても発電させることが可能であり、この場合は特にメタノール直接燃料電池と呼ばれる。各電極では下記反応が起こっている。
燃料極:CH3OH+H2O→6H++6e-+CO2
空気極:(3/2)O2+6H++6e-→3H2O
全反応:CH3OH+(3/2)O2→2H2O+CO2
空気極:(3/2)O2+6H++6e-→3H2O
全反応:CH3OH+(3/2)O2→2H2O+CO2
固体高分子形燃料電池は、電解質膜としてプロトン伝導性高分子電解質膜を用い、その両面に触媒層を配置し、ついでその両面に電極基材を配置し、更にこれをセパレータで挟んだ構造をしている。電解質膜の両面に触媒層を配置したもの(即ち、触媒層/電解質膜/触媒層の層構成のもの)は、電解質膜−触媒層接合体(略称:CCM)と称されており、さらに、その電解質膜−触媒層接合体の両面に電極基材を配置したもの(即ち、電極基材/触媒層/電解質膜/触媒層/電極基材の層構成のもの)は、電解質膜−電極接合体(略称:MEA)と称されている。
プロトン伝導性高分子電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC−H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このようなプロトン伝導性高分子電解質膜の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等が挙げられる。
これらのパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーは、上記のとおり電解質膜として高い性能を示すが、一方で、コストが高いという問題がある。また、80℃以上の高温域においては著しい劣化がみられたり、電解質膜の乾燥によりプロトン伝導性が著しく低下したりするといった不具合もみられる。さらに、含水により膨潤して大きな寸法変化を示すために、起動・停止(加湿・乾燥)の繰り返しにおいて電解質膜上に形成した触媒層が剥離するという問題も生じる。これらの欠点を補うために、高分子電解質膜に高分子繊維や無機粒子などのフィラーを埋め込むことで、高温条件下での保水性を増したり、寸法変化を抑制したりという工夫が提案されている(例えば特許文献1〜2)。
特開2003−157862号公報
特開平6−111827号公報
しかし、高分子電解質膜の内部にフィラーを埋め込むことにより、耐熱性の向上や機械強度の向上、保水性の向上など一定の性能向上が見られる一方で、フィラー成分が凝集したり、電解質膜内部に不均一に分布したりすることにより、期待された性能が十分に発揮されていない可能性がある。また、フィラー成分が抵抗成分となってイオン伝導性能が低下し、結果として燃料電池の発電性能が低下する恐れがある。
本発明は、上記課題を解決するため、均一な分布と強固な構造を持ち、寸法安定性とガスバリア性の高い固体高分子形燃料電池用電解質膜とこれを用いた電解質膜−触媒層接合体及び電解質膜−電極接合体、並びに燃料電池を提供する。
本発明の固体高分子形燃料電池用電解質膜は、プロトン伝導性材料とシリカ粒子材料を含む固体高分子形燃料電池用電解質膜であって、
前記シリカ粒子材料は、粒子間結合による自己造膜性があり、かつプロトン伝導性官能基をもつ分子鎖により表面修飾されていることを特徴とする。
前記シリカ粒子材料は、粒子間結合による自己造膜性があり、かつプロトン伝導性官能基をもつ分子鎖により表面修飾されていることを特徴とする。
本発明の電解質膜−触媒層接合体は、前記電解質膜の両面に、それぞれ触媒粒子および電解質バインダーからなる触媒層が形成されていることを特徴とする。
本発明の電解質膜−電極接合体は、前記電解質膜の両面に、それぞれ触媒粒子および電解質バインダーからなる触媒層と電極基材からなる電極が形成されていることを特徴とする。
本発明の燃料電池は、前記電解質膜−電極接合体を用いた燃料電池である。
本発明によれば、均一な分布と構造を持つ支持体を内包し、かつ高いイオン伝導性を有するプロトン伝導性電解質膜を得ることができる。また、内包するシリカ粒子材料が無機基材として電解質膜の構造を保持するために、加湿に際して大きな形状変化を示すことがなく、加湿・乾燥を繰り返した際の電解質膜上に形成された触媒層の剥離を抑制できる。さらに、保水性の高いシリカ粒子材料を用いることにより、高温運転における電解質膜の乾燥が抑制され、より高温での発電性能の向上効果が得られる。また、自己造膜性のあるシリカ粒子材料の存在により高いガスバリア性が発現し、燃料あるいは酸化剤のクロスリークによる発電性能の低下を抑制できる。さらに、液体燃料を用いる直接メタノール燃料電池での使用においても、アノード側からカソード側へのメタノール水溶液のクロスオーバーを抑制し、発電性能の低下を防ぐ効果を示す。また、シリカ粒子材料が、プロトン伝導性官能基をもつ分子鎖により表面修飾されているため、プロトン伝導性が向上する。
本発明において、シリカの粒子間結合による自己造膜性があるとは、例えばシリカ表面のシラノール基同士が脱水縮合してシロキサン結合(-Si-OH + HO-Si- → -Si-O-Si-,但しSiは4価であるが2価を省略している。)を形成し、粒子間が結合することをいう。その結果、粒子自体で造膜性を有する。
本発明に用いられるシリカ粒子材料は、本発明の電解質膜の2重量%〜50重量%の範囲であることが好ましく、本発明に用いられるプロトン伝導性材料は本発明の電解質膜の50重量%〜98重量%の範囲であることが好ましい。シリカ粒子材料が2重量%未満では、強固な構造と寸法安定性とガスバリア性の改善はそれほど高くはならない。また、シリカ粒子材料が50重量%を超えると、成膜性が悪くなり膜形状を保てなくなる傾向がある。
前記シリカ粒子材料を表面修飾する分子鎖は、放射線グラフト、吸電子付加反応、脱水縮重合などの公知の手法により上記シリカ表面に付与された分子であり、一分子あたり一つ以上のプロトン伝導性官能基を持つ分子鎖である。例えばシラン化合物を出発材料とし、シロキサン結合により上記シリカ材料粒子と結合していればよい。また、上記シラン化合物は、炭素数が1から10程度、より好ましくは3から6程度の直鎖状もしくは側鎖を持つ炭化水素分子鎖をもち、前記炭化水素分子鎖は、その一部もしくは全ての水素原子がフッ素に置換されていてもよい。また、前記炭化水素分子鎖は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などのプロトン伝導性官能基からなる群から選択される1つ以上のプロトン伝導性官能基を有していればよい。
前記プロトン伝導性材料は、フッ素系プロトン伝導性高分子材料、炭化水素系プロトン伝導性材料、無機プロトン伝導性材料、有機−無機ハイブリッドプロトン伝導性材料、イオン液体、およびこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。フッ素系プロトン伝導性高分子材料は、ナフィオン(商品名)、フレミオン(商品名)、アシプレックス(商品名)等がある。炭化水素系プロトン伝導性材料はリン酸含浸ポリベンズイミダゾール、アルキルスルホン酸含浸ポリベンズイミダゾール、スルホン化4-フェノキシベンゾイル-1,4-フェニレン(SPBP)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)、スチレン−エチレン/ブチレン/エチレンブロック共重合体等がある。無機プロトン伝導性材料としては、酸化タングステンや酸化スズの水和物などの金属水和酸化物、SiO2-H3PO4やSiO2-TiO2-P2O5などの多元系シリカ、TiO2-H3PO4などの金属リン酸化合物、リンタングステン酸やリンモリブデン酸などのヘテロポリ酸複合体、CsHSO4やCsH2PO4などの無機酸素酸塩などが例示できる。有機−無機ハイブリッド材料としては、シリカとポリエチレンオキシド(PEO)やポリプロピレンオキシド(PPO)、またはポリテトラメチレンオキシド(PTMO)などのポリエーテルポリマーからなるハイブリッド材料や、さらにこれらにタングストリン酸などの固体酸を添加したものが例として挙げられる。イオン液体としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EMI-TFSI)や1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフレート(EMI-Tf)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム フルオロヒドロジェネレート(EMIm(HF)nF)などが例として挙げられる。
前記シリカ粒子材料は、平均粒子径が0.10μm〜10.00μmの範囲の鱗片状シリカであることが好ましい。鱗片状、すなわち扁平な円盤状の粒子であると、平面方向に配列しやすく、プロトン伝導性材料と混合してキャスト成膜する際に成膜性が良好となる。また、シリカはシロキサン結合による自己造膜性がある。また、平均粒子径が前記の範囲であると成膜しやすい。
前記シリカ粒子材料は、前記プロトン伝導性材料により厚さ0.01μm〜1.00μmで覆われていることが好ましい。プロトン伝導性を高く維持できるからである。
以下、本発明に係る固体高分子形燃料電池用電解質膜及びその製造方法の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、自己造膜性があり、かつプロトン伝導性官能基をもつ分子鎖10により表面修飾されたシリカ粒子材料2およびプロトン伝導性材料3からなる電解質膜1の断面を示す模式図である。上記シリカ粒子材料2の懸濁液と上記プロトン伝導性材料3の溶液を攪拌、混合した液を図示しない基板表面上にコーティングし、乾燥することにより上記電解質膜1が得られる。シリカ粒子材料2の懸濁液とプロトン伝導性材料3の溶液の混合、攪拌においては、マグネチックスターラーや超音波照射、ボールミルなどの公知の方法を用いることができる。また、シリカ粒子材料2の懸濁液とプロトン伝導性材料3の溶液を混合、攪拌した液の上記基板上へのコーティングにおいては、ナイフコートやグラビアコート、バーコート、スクリーン印刷などの公知の方法を用いることができる。また、上記基板としては、上記電解質膜1が乾燥後に該基材から剥離することが可能な材質であれば、ガラスやアルミナなどの公知のセラミックスからなる基板や、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルムなどの公知のポリマーフィルムなどのいかなる材質の基板でも用いることができる。また、任意の形状の皿状の容器に上記溶液を注ぎ、加熱、乾燥させることにより成膜を行ってもよい。乾燥方法は、2段階の加熱により行うのが好ましい。第1段階の加熱は、シリカ粒子材料2の懸濁液とプロトン伝導性材料3の溶液を攪拌する際に、50℃から100℃の範囲で行う。これは、上記溶液の粘度をコーティングに適した状態に調整することを目的とする。第2段階の加熱は、上記手法によりコーティングされた溶液を乾燥、成膜することを目的に80℃から150℃の範囲で行う。上記加熱温度は、用いるプロトン伝導性材料の耐熱性やガラス転移点により最適値が異なるため、上記温度領域に限定するものではない。成膜処理は枚葉で行ってもよいし、長尺の基材フィルム上に連続的にコーティングすることにより任意の長さの長尺の膜を成膜してもよい。
図2は、上記自己造膜性のあるシリカ粒子材料2の表面の一部を拡大した模式図である。なお、図2は概念を示すことを主旨としており、結合手の数や結合角などは正確性に欠ける場合がある。シリカ粒子材料2の表面には多数のシラノール基が存在しており、その一部が、プロトン伝導性官能基(X)を有する分子鎖(RX)を持つシラン化合物とシロキサン結合を形成することにより、シリカ粒子材料2が表面修飾されている。なお、分子鎖(RX)は、図1の分子鎖10に相当する。シリカ粒子材料2がプロトン伝導性官能基(X)を有する分子鎖(RX)により表面修飾されていることにより、高いプロトン伝導性を発揮する。また、上記分子鎖(RX)は、例えばプロトン伝導性を示さない官能基を持つ分子鎖にてシリカ粒子材料2を表面修飾した後に、酸化処理などの処置を施すことによりプロトン伝導性官能基が付与された分子鎖(RX)となってもよい。例えば、プロトン伝導性官能基(X)が-SO3H基の場合、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランのように末端に-SH基を持つ分子鎖を持つシランをシロキサン結合によりシリカ粒子材料2の表面に付与した後に、上記-SH基を酸化処理により-SO3H基としてもよい。また、n-プロピルトリメトキシシランのようにアルキル基を持つシランをシロキサン結合によりシリカ粒子材料2の表面に付与した後に、スルホン化剤により-SO3H基を付与してもよい。ここでは、プロトン伝導性官能基(X)を持つ分子鎖(RX)の付与方法に関して、シロキサン結合の形成による表面修飾について例示したが、放射線グラフト、吸電子付加反応、脱水縮重合などの公知の手法により表面修飾してもよい。
シリカ粒子材料2は、プロトン伝導性材料3により薄く被覆されており、プロトン伝導性材料3の厚さは0.01μm〜1.00μmであることが好ましい。上記プロトン伝導性官能基(X)との相互作用により、さらなるプロトン伝導性向上効果が得られるからである。なお、プロトン伝導性材料3の厚さが1.00μmを超えると、シリカ粒子材料2の粒子同士の間に働く相互作用がプロトン伝導性材料3により阻害され自己造膜性が弱まるおそれがある。したがって、シリカ粒子材料2が自己造膜性を示し、かつシリカ粒子材料2を覆うプロトン伝導性材料3が十分なプロトン伝導率を示すには、上記シリカ粒子材料2を覆う上記プロトン伝導性材料3の厚さが、適切な領域にある必要がある。
図3は、図1に示す本発明の電解質膜1を用いた電解質膜−触媒層接合体の断面を示す模式図である。図3に示すように、電解質膜1の両面に、それぞれ触媒粒子および電解質バインダーからなる触媒層4,4’が形成されている。
図4は、図1に示す本発明の電解質膜1を用いた電解質膜−電極接合体の断面図である。電解質膜1の上に触媒層4と電極基材5とからなる燃料極6が配置され、電解質膜1の下には触媒層4’と電極基材7とからなる空気極8が配置されている。そして、これらの両外側にさらにリブ付きセパレータおよび集電板(図示せず)が配置されることによって、単セル(燃料電池)が構成される。プロトンは燃料極6から電解質膜1内を通過して空気極8に流れる。また、電子は燃料極6から外部回路を介して空気極8に流れる。これにより燃料極6と空気極8との間に電気が流れる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
(1)シリカ粒子材料の表面修飾
シリカ粒子材料として、洞海化学工業社の鱗片状シリカ水スラリー("サンラブリーLFS"(商品名):HN−050、固形分約14重量%)を使用した。この鱗片状シリカをトルエンに分散し、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランを加えて100℃で終夜還流した。さらに、過酸化水素水を用いて酸化処理を行うことで、スルホン酸基をもつ分子鎖で上記鱗片状シリカを表面修飾した。
シリカ粒子材料として、洞海化学工業社の鱗片状シリカ水スラリー("サンラブリーLFS"(商品名):HN−050、固形分約14重量%)を使用した。この鱗片状シリカをトルエンに分散し、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランを加えて100℃で終夜還流した。さらに、過酸化水素水を用いて酸化処理を行うことで、スルホン酸基をもつ分子鎖で上記鱗片状シリカを表面修飾した。
(2)電解質膜の作製
無機基材として上記表面修飾した鱗片状シリカを使用し、プロトン伝導性材料としてDuPont社の5重量%"Nafion"(商品名)溶液を使用した。組成は、乾燥重量比で鱗片状シリカが10重量%、Nafionが90重量%となるように仕込んだ。鱗片状シリカとNafion溶液を混合し、マグネチックスターラーによる撹拌と超音波攪拌を繰り返すことで均一な分散液を作製した。得られた分散液を50−80℃で加熱しながらマグネチックスターラーで攪拌し、分散媒を蒸発させながら粘度を調整した。得られた高粘度分散液をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基板上にキャスティングし、約100℃の乾燥オーブン内で静置・乾燥することにより電解質膜を成膜した。得られた電解質膜は厚さが約110μmであり、白色透明であった。
無機基材として上記表面修飾した鱗片状シリカを使用し、プロトン伝導性材料としてDuPont社の5重量%"Nafion"(商品名)溶液を使用した。組成は、乾燥重量比で鱗片状シリカが10重量%、Nafionが90重量%となるように仕込んだ。鱗片状シリカとNafion溶液を混合し、マグネチックスターラーによる撹拌と超音波攪拌を繰り返すことで均一な分散液を作製した。得られた分散液を50−80℃で加熱しながらマグネチックスターラーで攪拌し、分散媒を蒸発させながら粘度を調整した。得られた高粘度分散液をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基板上にキャスティングし、約100℃の乾燥オーブン内で静置・乾燥することにより電解質膜を成膜した。得られた電解質膜は厚さが約110μmであり、白色透明であった。
(3)加湿時の寸法変化率測定
得られた電解質膜を正方形(3cm角)に切り出し、室温で蒸留水に浸漬することで十分に加湿し、加湿による寸法変化率を評価した。寸法変化率は、加湿前後の長さを測定することで次式により算出した。
得られた電解質膜を正方形(3cm角)に切り出し、室温で蒸留水に浸漬することで十分に加湿し、加湿による寸法変化率を評価した。寸法変化率は、加湿前後の長さを測定することで次式により算出した。
[{(加湿後の長さ)−(加湿前の長さ)}÷(加湿前の長さ)]×100(%)
室温(25℃)で蒸留水に浸漬した電解質膜の寸法変化率は、110%であった。市販品の"Nafion117"(商品名)膜について同様に測定した寸法変化率は、120%であった。
室温(25℃)で蒸留水に浸漬した電解質膜の寸法変化率は、110%であった。市販品の"Nafion117"(商品名)膜について同様に測定した寸法変化率は、120%であった。
電解質膜は、加湿時における寸法変化率が"Nafion117"膜に比べて小さく、寸法安定性に優れるといえる。無機基材として用いた鱗片状シリカが膜内で強固なマトリックスを形成することによる効果と考える。その結果として、燃料電池の起動・停止の際における膜の湿潤・乾燥に伴う寸法変化が抑制されることにより、電極触媒層の剥離など電解質膜−電極接合体の破損を抑制する効果が期待できる。
(4)加湿時のプロトン伝導率測定
得られた電解質膜を3cm角に切り出し、室温で蒸留水に浸漬することで十分に加湿し、インピーダンスアナライザー(Solartron製、SI 1255)を用いて伝導率を測定した。その結果、25℃−100%RHにおける電解質膜の伝導率は0.065S/cmであった。これは、"Nafion117"膜の伝導率0.08S/cmに比べて19%低い。一方で、表面修飾処理をしていない鱗片状シリカとNafionとの複合膜(0.06S/cm)に比べると若干ではあるが高いプロトン伝導率を示すことから、電解質膜内の鱗片状シリカからなるマトリックスが抵抗成分としてプロトン伝導を阻害する要因となる一方で、表面修飾分子鎖により性能低下が抑制されていると解釈できる。また、高温耐性や保湿性、形状安定性などの性能向上が達成できるのであれば、伝導率の若干の低下は問題にはならないといえる。
得られた電解質膜を3cm角に切り出し、室温で蒸留水に浸漬することで十分に加湿し、インピーダンスアナライザー(Solartron製、SI 1255)を用いて伝導率を測定した。その結果、25℃−100%RHにおける電解質膜の伝導率は0.065S/cmであった。これは、"Nafion117"膜の伝導率0.08S/cmに比べて19%低い。一方で、表面修飾処理をしていない鱗片状シリカとNafionとの複合膜(0.06S/cm)に比べると若干ではあるが高いプロトン伝導率を示すことから、電解質膜内の鱗片状シリカからなるマトリックスが抵抗成分としてプロトン伝導を阻害する要因となる一方で、表面修飾分子鎖により性能低下が抑制されていると解釈できる。また、高温耐性や保湿性、形状安定性などの性能向上が達成できるのであれば、伝導率の若干の低下は問題にはならないといえる。
(5)発電性能評価
電解質膜−触媒層接合体および電解質膜−電極接合体の作製:上記(2)にて作製した厚さ約110μmの電解質膜の両面に、触媒(田中貴金属製Pt/C(TEC10E50E)、Pt-Ru/C(TEC61E54))および電解質バインダー(DuPont社製、5重量%”Nafion”(商品名)溶液)からなる触媒層を形成した。具体的には、一対の基材フィルム上に上記触媒および電解質バインダーからなる触媒層を形成した触媒転写フィルムで電解質膜を挟持し、熱プレス(温度:135−150℃、圧力:4−6MPa)により電解質膜上に触媒層を転写・形成した。さらに、上記電解質膜−触媒層接合体を一対のガス拡散層(東レ社製、カーボンペーパー)で挟持し、電解質膜−電極接合体を形成した。上記電解質膜−電極接合体を燃料および酸化剤を供給するための流路を持つセパレータおよび集電板で挟持し、単セルを構成した。アノード極は3mg−Pt−Ru/cm2、カソード極は1mg−Pt/cm2とした。
電解質膜−触媒層接合体および電解質膜−電極接合体の作製:上記(2)にて作製した厚さ約110μmの電解質膜の両面に、触媒(田中貴金属製Pt/C(TEC10E50E)、Pt-Ru/C(TEC61E54))および電解質バインダー(DuPont社製、5重量%”Nafion”(商品名)溶液)からなる触媒層を形成した。具体的には、一対の基材フィルム上に上記触媒および電解質バインダーからなる触媒層を形成した触媒転写フィルムで電解質膜を挟持し、熱プレス(温度:135−150℃、圧力:4−6MPa)により電解質膜上に触媒層を転写・形成した。さらに、上記電解質膜−触媒層接合体を一対のガス拡散層(東レ社製、カーボンペーパー)で挟持し、電解質膜−電極接合体を形成した。上記電解質膜−電極接合体を燃料および酸化剤を供給するための流路を持つセパレータおよび集電板で挟持し、単セルを構成した。アノード極は3mg−Pt−Ru/cm2、カソード極は1mg−Pt/cm2とした。
燃料として6重量%メタノール水溶液(4mL/min)、酸化剤として乾燥空気(80mL/min)をそれぞれ燃料極と空気極に供給し、室温(30℃)で上記電解質膜−電極接合体の直接メタノール燃料電池の発電性能を評価した。得られた開放起電力は、約650mVであった。比較例として、約200μmの厚みを有する"Nafion117"膜を用いた単セルを同様に評価したところ、本実施例と大きな差異は見られなかった。つまり、低電流密度領域はメタノールのクロスオーバーの影響でセル電位の低下が見られる領域であるが、上記本実施例の電解質膜の厚さは約110μmで、"Nafon117"膜の厚さ(約200μm)の約半分であるにもかかわらず、比較例に対しセル電位に差異が見られなかった。これは、上記電解質膜が"Nafion117"膜に比べてメタノール透過阻止能が高いことを示している。
1 電解質膜
2 シリカ粒子材料
3 プロトン伝導性材料
4,4’ 触媒層
5,7 電極基材
6 燃料極
8 空気極
10 プロトン伝導性官能基をもつ分子鎖
2 シリカ粒子材料
3 プロトン伝導性材料
4,4’ 触媒層
5,7 電極基材
6 燃料極
8 空気極
10 プロトン伝導性官能基をもつ分子鎖
Claims (8)
- プロトン伝導性材料とシリカ粒子材料を含む固体高分子形燃料電池用電解質膜であって、
前記シリカ粒子材料は、粒子間結合による自己造膜性があり、かつプロトン伝導性官能基をもつ分子鎖により表面修飾されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池用電解質膜。 - 前記シリカ粒子材料は前記電解質膜の2重量%〜50重量%の範囲であり、前記プロトン伝導性材料は前記電解質膜の50重量%〜98重量%の範囲である請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
- 前記プロトン伝導性材料は、フッ素系プロトン伝導性高分子材料、炭化水素系プロトン伝導性材料、無機プロトン伝導性材料、有機−無機ハイブリッドプロトン伝導性材料、イオン液体、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
- 前記シリカ粒子材料は、平均粒子径が0.10μm〜10.00μmの範囲の鱗片状シリカである請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
- 前記シリカ粒子材料は、前記プロトン伝導性材料により厚さ0.01μm〜1.00μmで覆われている請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用電解質膜。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解質膜の両面に、それぞれ触媒粒子および電解質バインダーからなる触媒層が形成されていることを特徴とする電解質膜−触媒層接合体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解質膜の両面に、それぞれ触媒粒子および電解質バインダーからなる触媒層と電極基材からなる電極が形成されていることを特徴とする電解質膜−電極接合体。
- 請求項7に記載の電解質膜−電極接合体を用いた燃料電池。
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2006
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