JP2009025489A - 液晶光学素子の製造方法および光ヘッド装置 - Google Patents

液晶光学素子の製造方法および光ヘッド装置 Download PDF

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Abstract

【課題】青色レーザ光に対して良好な耐光性を有する液晶光学素子の製造方法を提供する。また、これにより得られた液晶光学素子を備えた光ヘッド装置を提供する。
【解決手段】基板上に高分子液晶膜を形成した後、高分子液晶膜をプラズマエッチングして凹凸形状を形成する。次いで、プラズマエッチングによって高分子液晶膜に生成した活性種をシランカップリング剤と反応させる。その後、凹凸形状の凹部に、高分子液晶膜の常光屈折率または異常光屈折率に略等しい屈折率を有する等方性充填剤、または、高分子液晶膜の常光屈折率に対応する屈折率が該常光屈折率に略等しい液晶を充填する。
【選択図】図1

Description

本発明は、液晶光学素子の製造方法および光ヘッド装置に関する。
液晶を用いた光学素子(以下、液晶光学素子と称する。)として、従来より各種の素子が知られている。それらの中で内部に凹凸形状を設けた液晶光学素子としては、例えば、液晶レンズ素子や回折格子などがある。これらの素子は、小型であり、また、機械的な稼動部がないため耐久性が高い。それ故、近年、光回折素子として注目されている。例えば、光ヘッド装置に搭載されて、光ディスクへの情報の書き込みや、光ディスクからの情報の読み出しの際に、レーザ光を回折して3ビーム化したり、光検出器に向けて光を曲げたり、焦点距離を変更したりするのに用いられている。
特許文献1に記載の光ヘッド装置では、半導体レーザから出射された光は、ビームスプリッタ、液晶レンズ素子および対物レンズなどを透過した後、光ディスクに集光される。そして、光ディスクで反射された光は、再び対物レンズや液晶レンズ素子などを透過して、ビームスプリッタで反射された後、検出器に入射する。ここで、液晶レンズ素子は、入射光の焦点距離を変える手段として用いられる。また、液晶レンズ素子は、フレネルレンズ部を有し、このフレネルレンズ部は、鋸歯状の断面形状または鋸歯を階段形状で近似した断面形状を備えている。
特許文献2には、光学異方性ポリマーにより形成された光学異方性を有する回折格子を用いた光ヘッド装置が開示されている。この光ヘッド装置では、半導体レーザから出射された光は、回折格子および対物レンズを透過した後、光ディスクに照射される。そして、光ディスクで反射された光は、再び対物レンズを透過し、回折格子で分岐した後に検出部に入射する。ここで、光学異方性ポリマーは、低分子液晶を光または熱により重合して製造される。特許文献2には、基板上に液晶モノマーを重合させた光学異方性ポリマーで形成された凹凸部を形成し、その凹部に等方性充填剤を充填して回折格子を形成すること、基板の表面に凹凸部を設けて、この凹部に液晶モノマーを充填して重合させ光学異方性ポリマーとして回折格子を形成すること、凹凸部が階段状に形成されることが示されている。
このように、表面が鋸歯状や階段状などに加工された液晶光学素子の例は多い。しかし、特許文献1では、フレネルレンズ部の形状は、フォトリソグラフィ法や反応性イオンエッチング法によって形成できる旨が記載されているものの、その具体的な製造方法については開示されていない。
特許文献2には、フォトリソグラフィ法とドライエッチング法を用いて、ガラス基板の表面に、回折格子のパターンに対応した凹凸部を形成することが記載されている。そして、上記のガラス基板に、表面に配向処理が施されたポリイミド膜を有するガラス基板を重ね合わせて接着し、この中に低分子液晶を注入した後、露光により低分子液晶を重合させることによって、回折格子が作製される。
特許文献2では、基板に形成した凹凸部に低分子液晶を充填し、凹部での配向力によって液晶を配向させている。しかしながら、この方法では、液晶がうまく配向しないおそれがあった。また、液晶は、凹凸部の延長方向、すなわち格子ストライプの方向に沿って配向するので、この方向に直交する偏光に対しては液晶の常光屈折率が対応する一方、平行な偏光に対しては、液晶の異常光屈折率が対応することになる。このため、格子ストライプの方向は、入射光の偏光方向に対して平行または垂直のいずれかであって、且つ、略一様な方向にしかとれないという制約もあった。
また、特許文献2には、基板の表面に配向処理が施されたポリイミド膜を形成した後、液晶モノマーを供給し、次いで、フォトリソグラフィ法を用いて、液晶モノマーを格子状に光硬化させてから未硬化部分を溶解除去し、凹部を等方性のフォトポリマーで充填することによって、回折格子を作製することも記載されている。
しかしながら、この方法では、回折格子の高さ(深さ)が格子ピッチに比してかなり大きいため、フォトマスクからの光が広がってしまい、回折格子の側面を所望の形状にするのが困難となる。すなわち、回折格子の側面は、基板に対して垂直な平面となっていることが好ましいが、特許文献2では、フォトマスクから離れた部分まで露光しているので、このような平面とはならない傾向にあり、回折格子の特性に悪影響を及ぼしていた。
これに対して、高分子液晶からなる膜(以下、高分子液晶膜と称する。)を基板上に形成した後、この表面を凹凸に加工する方法も開示されている(特許文献3参照)。
特許文献3に記載の方法では、まず、ガラス基板の上に配向膜を形成し、この配向膜にラビング処理を施した後、さらに、高分子液晶膜、SiO膜およびレジストを順に形成する。次いで、フォトリソグラフィ法によって、レジストを回折格子のパターンに加工した後、これをマスクとして、高分子液晶膜およびSiO膜をエッチングする。次に、等方性充填材を介して、上記のガラス基板を他の基板と貼り合わせる。その後、紫外線を照射して等方性充填材を硬化させることにより、異方性回折格子が作製される。
特許文献3によれば、配向処理が施された2枚の平坦な基板の間に低分子液晶を挟み込み、この状態で低分子液晶を重合させることによって高分子液晶膜を形成する。その後で、高分子液晶膜の表面を凹凸に加工するので、液晶の配向状態が良好で、且つ、表面に階段形状を有する回折格子を作製することができる。また、入射光の偏光方向は、液晶の配向方向に依存するが、格子ストライプの方向は、高分子液晶膜に対して任意の方向を選ぶことができる。さらに、素子内に、複数の方向を有する格子ストライプを形成することもできる。
特開2006−85801号公報 特開平9−50642号公報 特開平11−125710号公報
最近では、光ディスクの大容量化を図るため、レーザ光を短波長化して、光ディスクのビットサイズを小さくすることが進められている。具体的には、これまで、CD(compact disk)では波長780nmのレーザ光が、DVD(digital versatile disk)では波長660nmのレーザ光がそれぞれ使用されてきたが、次世代の光記録メディアでは、波長300nm〜450nmのレーザ光(青色レーザ光)が使用され始めている。そして、これに伴って、青色レーザ光を変調するための液晶光学素子が求められている。
しかしながら、従来の液晶光学素子では、青色レーザ光に対する耐性が低く、所望とするよりも早い時期に光学特性が劣化するという問題があった。特に、高分子液晶膜の表面を凹凸に加工するのにプラズマエッチングを行った場合、この部分に青色レーザ光が照射されると光学特性の劣化が著しく速まってしまう。
こうした問題に対しては、例えば、プラズマエッチングされる高分子液晶材料に光安定化剤や抗酸化剤などを添加することが考えられる。しかし、この方法によっても、青色レーザ光に対する劣化を抑制するには十分でない。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、青色レーザ光に対しても良好な耐光性を有する液晶光学素子の製造方法を提供することにある。
また、本発明は、青色レーザ光に対しても良好な耐光性を有する液晶光学素子を備えた光ヘッド装置を提供することにある。
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
本発明の第1の態様は、基板上に高分子液晶膜を形成する工程と、
前記高分子液晶膜をエッチングして前記基板上に凹凸形状を形成する工程と、
前記エッチングを終えた後に、前記高分子液晶膜に生成した活性種をシランカップリング剤と反応させる工程と、
前記凹凸形状の凹部に、等方性屈折率を有する等方性充填剤、または、複屈折を有する液晶を充填する工程とを有することを特徴とする液晶光学素子の製造方法に関する。
本発明の第1の態様において、前記エッチングはプラズマエッチングであることが好ましい。
本発明の第1の態様において、前記凹部に等方性充填剤を充填する工程が、前記凹凸形状の上に低分子材料を流延し、該低分子材料を光重合させることによって前記等方性充填剤とする工程である場合には、前記シランカップリング剤は、前記低分子材料と反応する官能基を有することが好ましい。
本発明の第1の態様において、前記高分子液晶膜を形成する工程は、重合性液晶、ヒンダードアミン系化合物およびヒンダードフェノール系化合物を含む液晶組成物を重合する工程であることが好ましい。
本発明の第1の態様において、前記凹凸形状は格子形状とすることができる。
本発明の第1の態様において、前記凹凸形状は、鋸歯形状または鋸歯を階段形状で近似した形状とすることができる。
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様によって製造された液晶光学素子を有する光ヘッド装置に関する。
本発明の第1の態様によれば、エッチングを終えた後に、高分子液晶膜に生成した活性種をシランカップリング剤と反応させるので、青色レーザ光に対しても良好な耐光性を有する液晶光学素子を製造することができる。
本発明の第2の態様によれば、光学特性と信頼性に優れた光ヘッド装置とすることができる。
実施の形態1.
本実施の形態における液晶光学素子の製造方法について、図1のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、透明基板を準備する(ステップ1)。
透明基板としては、例えば、可視光に対する透過率が高い材料からなる基板を用いることができる。具体的には、アルカリガラス、無アルカリガラスおよび石英ガラスなどの無機ガラスの他に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、および、ポリフッ化ビニルなどのフッ素含有ポリマーなどの透明樹脂からなる基板が挙げられる。剛性が高い点で、無機ガラスからなる基板を用いることが好ましい。
透明基板の厚みは、特に限定は無いが、通常は0.2mm〜1.5mmとすることができ、好ましくは0.3mm〜1.1mmである。この透明基板には、必要に応じて、アルカリ溶出防止、接着性向上、反射防止またはハードコートなどを目的とした、無機物または有機物などからなる表面処理層が設けられていてもよい。
次に、透明基板の表面に配向処理を施す(ステップ2)。
例えば、透明基板の上に配向膜を形成し、配向膜に対して水平配向処理を行う。但し、配向処理は、水平配向処理に限られるものではなく、液晶分子の配向方向が基板に略垂直となる垂直配向処理などとすることもできる。尚、場合に応じて、透明基板の上に電極層を設けてから配向膜を形成することもできる。
配向膜は、液晶を配向させる機能を有するものであればよく、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルシンナメートおよびポリスチレンなどの有機材料、または、SiOおよびAlなどの無機材料を用いることができる。
配向処理は、具体的には、ラビング法などを用いて行うことができる。例えば、ナイロンやレーヨンなどのラビング布で、配向膜の表面を一方向に擦ることによって、その方向に液晶分子が配向するようにする。また、ラビング法以外にも、SiOの斜め蒸着、イオンビーム法または光配向膜などによって、液晶分子の配向を揃えることもできる。
次に、配向膜の上に高分子液晶膜を形成する(ステップ3)。
上記の透明基板(以下、第1の基板と称す。)とは別に、表面に配向膜が形成された第2の基板を新たに準備する。この配向膜については、第1の基板と同様にして形成すればよい。次いで、配向膜が形成された側の第2の基板の表面に離型処理を行う。離型剤としては、例えば、フルオロシラン系または含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体などを使用することができる。
次に、この第2の基板に第1の基板を重ね合わせて仮接着する。このとき、第2の基板の離型処理された面と、第1の基板の配向膜が形成された面とが互いに内側を向くようにする。また、外部から重合性液晶を充填可能な開口部を設けておく。次いで、この開口部を通じて、基板間に重合性液晶を注入する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。
重合性液晶を注入した後は、所定の波長の光を照射して重合性液晶を重合させる。必要に応じて、光照射の後でさらに加熱処理を行ってもよい。
その後、仮接着していた第2の基板を取り除くことによって、第1の基板の上に、配向膜と高分子液晶膜が形成された構造を得ることができる。本実施の形態では、重合性液晶は、第1の基板の表面と略平行な方向に配向し、高分子液晶膜は、この配向が固定された状態で得られる。
また、高分子液晶膜の形成は、例えば、次のようにして行うこともできる。
まず、配向膜が形成された第1の基板と、配向膜が形成された上に離型剤が施された第2の基板とを準備する。次いで、第1の基板に形成された配向膜の上に、光硬化性の重合性液晶を滴下する。その後、第2の基板を、離型剤の塗布面が重合性液晶側になるようにして、第1の基板と重ね合わせる。
次いで、所定の波長の光を照射して重合性液晶を重合させる。その後、第2の基板を除去すると、上記と同様に、第1の基板の上に、配向膜と高分子液晶膜が形成された構造を得ることができる。
尚、上記の例における重合性液晶は、重合性の官能基を有する化合物であって、組成物として重合性の性質と液晶としての性質とを併有する。このため、重合性液晶を配向させた後に重合反応を行うと、液晶の配向が固定された光学異方性ポリマーが得られる。光学異方性ポリマーは、一般に、メソゲン骨格に由来した光学異方性を示すので、この性質を利用して光学素子に応用することができる。光学異方性ポリマーの屈折率異方性を大きくするには、芳香環基を有する材料を用いることが好ましい。尚、重合性液晶は、ネマチック、スメクチックおよびコレステリックのいずれの液晶性を示してもよいが、ネマチック液晶性を示すものが好ましく用いられる。
本実施の形態においては、高分子液晶膜として、青色レーザに対する耐光性のよいものを用いることが好ましい。例えば、重合性液晶、ヒンダードアミン系化合物およびヒンダードフェノール系化合物を含む液晶組成物を重合して得られる膜を用いることができる。この場合、ヒンダードアミン系化合物の含有量は、重合性液晶に対して0.05質量%〜5質量%であることが好ましい。また、ヒンダードフェノール系化合物の含有量は、重合性液晶に対して0.05質量%〜10質量%であることが好ましい。尚、高分子液晶膜は、光安定化剤や抗酸化剤などを含むこともできる。
上記の例において、重合性液晶としては、1個以上の重合性官能基とメソゲン構造とを有する液晶性化合物、または、これらの2種以上が混合された液晶組成物を用いることができる。この場合、重合性官能基としては、アクリロイル基またはメタクリロイル基が好ましく用いられ、特にアクリロイル基が好ましく用いられる。重合性官能基の数は1個または2個であることが好ましい。また、メソゲン構造は、青色レーザに対する耐光性が良好であるとともに、屈折率異方性の値を大きくする点から、次の構造を有することが好ましい。
(イ)環基として、トランス−1、4−シクロヘキシレン基および1、4−フェニレン基を含み、その合計数が3〜5個である。
(ロ)環基のうち、少なくとも1個がトランス−1、4−シクロヘキシレン基であり、少なくとも2個が1、4−フェニレン基である。
(ハ)1、4−フェニレン基が3個以上含まれる場合、直接結合する、または、不飽和結合を有する連結基を介して結合する1、4−フェニレン基の連続する数は2個までである。したがって、1、4−フェニレン基が3個以上連続しないように、1、4−フェニレン基の間にトランス−1、4−シクロヘキシレン基を存在させる。
(ニ)−Ph−CO−構造を含まない。ここで、−Ph−は1,4−フェニレン基を意味し、−CO−はカルボニル基を意味する。
このような重合性液晶の具体例としては、例えば、国際公開第2007/046384号パンフレットに記載のものが挙げられる。
尚、上記重合性液晶は例示に過ぎず、液晶組成物は、重合性の性質と液晶としての性質とを有している範囲内で、非液晶重合性化合物、オリゴマー、非重合性液晶または色素などを含むことができる。但し、非重合性材料は、重合後に流出して高分子液晶に悪影響を与えるものであってはならない。
高分子液晶膜を形成した後は、これをエッチングして所定のパターンに加工する。本実施の形態においては、プラズマエッチングして所定のパターンに加工する(ステップ4)。例えば、液晶光学素子としてフレネルレンズ形状を有する液晶レンズ素子を作製する場合、高分子液晶膜は、断面形状が鋸歯状または鋸歯を階段形状で近似した形状に加工される。また、液晶光学素子として回折格子を作製する場合、高分子液晶膜は、断面が矩形格子形状となるように加工される。
ステップ4の工程は、具体的には次のようにして行うことができる。
まず、高分子液晶膜の上にレジスト膜を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてレジスト膜のパターニングを行う。この場合、高分子液晶膜のエッチング用マスクとして、高分子液晶膜の上にSiO膜を形成することが好ましい。このSiO膜は、高分子液晶膜の汚染抑制にも役立つ。次に、SiO膜の上にレジスト膜を設ける。そして、フォトリソグラフィ法によって、レジスト膜を所望とする高分子液晶膜のパターンに対応した形状に加工する。次いで、レジスト膜をマスクとして、SiO膜および高分子液晶膜に対しプラズマエッチングを行う。例えば、CFガスを用いてSiO膜のエッチングを行った後、Oガスに変えて高分子液晶膜のエッチングを行う。
図2(a)および(b)は、高分子液晶膜のエッチングを終えた後の状態を示す模式的な断面図である。尚、これらの図において、1は透明基板、2は配向膜、3は高分子液晶膜である。尚、高分子液晶膜の凸部の上面には、SiO膜が残存していてもよい。
エッチング後においては、透明基板1の上に凹凸形状が形成されていればよいので、高分子液晶膜3の断面形状は、図2(a)および(b)のいずれであってもよい。すなわち、透明基板1の表面が露出するまで高分子液晶膜3がエッチングされていてもよいし(図2(a))、高分子液晶膜3がその途中までエッチングされていてもよい(図2(b))。尚、液晶光学素子としてフレネルレンズ形状を有する液晶レンズ素子を作製する場合、上記の凹凸形状は、回転対称性を有する鋸歯形状または鋸歯を階段形状で近似した形状となる。また、液晶光学素子として回折格子を作製する場合、上記の凹凸形状は格子形状となる。
エッチングの際に、高分子液晶膜にプラズマ光(波長:300nm以下)が照射されると、高分子液晶膜を構成する分子のエステル結合などが切断されて、活性種であるラジカルが生成する。その後、ラジカル連鎖反応が起こることによって、高分子液晶膜の劣化が進行すると考えられる。このような高分子液晶膜を用いて製造された液晶光学素子に、青色レーザ光を照射すると、高分子液晶膜の劣化が急激に進行し、液晶光学素子の光学特性は著しく低下する。そこで、本発明者は、こうした液晶光学素子の光学特性の低下を抑制するため、プラズマエッチングを終えた高分子液晶膜の表面をシランカップリング剤で処理することを見出した。シランカップリング剤は、加水分解した状態で高分子液晶膜の表面に付着した後、高分子液晶膜の活性種と脱水縮合するものと思われる。これにより、プラズマエッチングでダメージを受けた高分子液晶膜の表面がシランカップリング剤によって修飾されるので、ラジカル連鎖反応による高分子液晶膜の劣化を抑制することができる。
そこで、本実施の形態においては、ステップ4の工程の後で高分子液晶膜に対してシランカップリング剤による表面処理を行う(ステップ5)。
例えば、ステップ4の工程までを終えた後、透明基板をシランカップリング剤溶液の中に浸漬する。次いで、加熱処理を行うことによって、高分子液晶膜の表面にシランカップリング剤の被膜を形成する。
Figure 2009025489
シランカップリング剤としては、例えば、上記の一般式(1)で表わされる化合物が用いられる。ここで、R、R、Rのうちの少なくとも1つは、加水分解性の官能基である。高分子液晶膜の表面にあるラジカル種との脱水縮合を促す点から、この加水分解性の官能基は2〜3個とすることが好ましい。3個すべてが加水分解性の官能基であれば、特に好ましい。加水分解性の官能基としては、例えば、メトキシ基およびエトキシ基などのアルコキシ基またはクロル基などが挙げられる。但し、クロル基とした場合、高分子液晶膜にダメージを与えるおそれがあることから、アルコキシ基を用いることが好ましく、なかでも加水分解性能が高いことからメトキシ基が特に好ましい。一方、加水分解性の官能基以外としては、メチル基またはエチル基などが挙げられる。また、上記の一般式において、n=2〜15であることが好ましく、n=3〜12であることがより好ましい。さらに、Xは、水素原子、アルキル基、アルキル基の水素の一部がフッ素または塩素などの他の原子で置換されたもの、芳香環、脂肪環、または、重合性有機材料と共重合可能な基である。例えば、メタクリル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、スルフィド基またはビニル基などが挙げられる。尚、シランカップリング剤の被膜が形成された高分子液晶膜の表面が等方性充填材に接する場合には、用いる等方性充填材の種類に応じてXを適宜選択することができる。例えば、Xとして、等方性充填材を構成する化合物の未反応の官能基と反応する官能基を選択することができる。これにより、高分子液晶膜の表面状態を改質した上で、さらに等方性充填材との接着力の向上を図ることができる。尚、高分子液晶膜の上に設けられる材料であれば、等方性充填材以外の材料であっても同様のことが言える。
一般式(1)で表わされる化合物としては、例えば、次式に示すものが挙げられる。
1021−Si−(OCH
CH=C(CH)−CO−O−C−Si−(OCH
17−C−Si−(OCH
1021−Si(CH)−(OCH
Ph−C−Si−(OCH
17−C−SiCl−(OCH
CH=CH−C16−Si−(OCH
13−Si−(OCH
−Si−(OCH
CH=C(CH)−CO−O−C−Si−(OCH
NH−C−NH−C−Si−(OCH
O−CH−O−C−Si−(OCH
SH−C−Si−(OCH
(CO)−Si−C−S−C−Si−(OC
CH=CH−Si−(OCH
CF−C−Si−(OCH
シランカップリング剤による表面処理には、上記のような浸漬法の他に、スピンコータなどを用いた塗布法またはスプレー法などを用いてもよい。尚、処理の容易性を考えると、シランカップリング剤が溶剤に溶解したシランカップリング剤溶液を用いることが好ましい。この場合、溶剤にはアルコールが好ましく用いられる。但し、アルコール100%の溶剤では、高分子液晶膜にクラックを発生させたり、クラックを発生させないまでも光学特性を低下させたりする。このため、アルコール成分を75質量%以下とした水との混合溶剤を用いることが好ましい。さらに、加水分解後の溶液安定性を考慮すると、アルコール成分を50質量%〜75質量%とした水との混合溶剤を用いることが好ましい。尚、本実施の形態はこれに限られるものではなく、シランカップリング剤の加水分解を促進するために、pH4〜6程度に調整した有機酸溶剤を用いることもできる。
高分子液晶膜と、加水分解後のシランカップリング剤との脱水縮合を促進させるには、加熱処理をすることが好ましい。加熱処理の温度は、官能基の分解温度に至らない温度であって、冷却後に高分子液晶の配向性が大きく劣化しない温度であればよく、室温以上の温度から適宜調整可能である。但し、一般に、温度が160℃以上になると高分子液晶膜がダメージを受けるおそれがある。一方、脱水縮合は可逆反応であるため、室温では反応に時間がかかり過ぎてしまう。したがって、反応を促進する点からは、溶剤の沸点以上の温度に加熱するのがよい。そこで、例えば、シランカップリング剤の水溶液を用いて表面処理を行った場合、水の沸点である100℃以上の温度であって、且つ、高分子液晶膜にダメージを与えるおそれのない160℃以下の温度として加熱するのがよい。
以上のようにして、高分子液晶膜に対しシランカップリング剤による表面処理を行った後は、常法にしたがって液晶光学素子の製造工程を行えばよい。
例えば、ステップ5までの工程を終えた透明基板を2枚用意し、少なくとも一方の透明基板の周縁部にシール材を塗布する。シール材には、例えば、エポキシ樹脂を用いることができる。尚、シール材を塗布する面は、高分子液晶膜が形成されている側の面とする。次いで、2枚の基板を重ね合わせた後、シール材を介してこれらを貼り合わせる。このとき、高分子液晶膜が形成された面が、所定の間隔(セルギャップ)を置いて互いに内側を向くようにするとともに、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておく。凸部でのセルギャップは、例えば、1μm〜10μmとすることができ、好ましくは2μm〜8μmである。次いで、真空注入法により、開口部を通じて2枚の透明基板の間に液晶を注入する。これにより、液晶レンズ素子や回折格子などの液晶レンズ素子が製造される。
上記の例においては、2枚の透明基板の間に液晶を注入することにより、基板上に形成された凹凸形状の凹部に液晶を充填している。この場合、高分子液晶膜の常光屈折率に対応する液晶の屈折率、すなわち、高分子液晶膜の常光屈折率を示す方向と同じ方向における液晶の屈折率は、高分子液晶膜の常光屈折率に略等しいものとすることが好ましい。可変偏光依存性の液晶光学素子を得ることができる。
非重合性液晶を注入して用いる場合には、基板上または凹凸部上に電極を形成しておくとともに、さらに、少なくとも一方の側の液晶と接する面に配向膜を形成しておく必要がある。また、上記の例では、高分子液晶からなる凹凸部のある透明基板を2枚用いたが、高分子液晶からなる凹凸部のある透明基板1枚と、単なる透明基板1枚とで液晶光学素子を形成してもよい。
以下に、高分子液晶からなる凹凸部を設けた透明基板1枚と、単なる透明基板1枚とを用いて構成された液晶光学素子の動作について説明する。尚、液晶には、電圧を印加しないときにホモジニアス配向をする正の誘電異方性のネマチック液晶を用いる。また、高分子液晶膜の常光屈折率と液晶の常光屈折率とを一致させるとともに、高分子液晶膜の異常光屈折率と液晶の異常光屈折率とを一致させる。さらに、回折格子の格子長手方向が、液晶および高分子液晶の異常光屈折率方向に一致するように配置する。
液晶に電圧を印加しない状態では、高分子液晶と液晶の屈折率は、常光屈折率を示す方向でも、異常光屈折率を示す方向でも一致する。したがって、光は、偏光方向の如何にかかわらず、回折しないで透過する。液晶に電圧を印加すると、液晶分子は、ホメオトロピック配向をし、入射偏光方向によらず常光屈折率を示すようになる。このため、高分子液晶の異常光屈折率方向に平行な直線偏光は、液晶が常光屈折率を示すことによって回折を受ける。一方、高分子液晶の常光屈折率方向に平行な直線偏光は、液晶が常光屈折率を示すことにより、回折を受けずに透過する。この性質を利用することにより、電圧印加の有無によって偏光依存性の変化する回折格子を得ることができる。
上記の液晶光学素子を2個用意し、各々の格子の長手方向が互いに直交するように配置する。すなわち、各液晶光学素子における高分子液晶の異常光屈折率方向が互いに直交するように配置する。このようにすると、各液晶光学素子の偏光依存性が打ち消された可変回折格子が得られる。
上記例では、高分子液晶膜の常光屈折率と液晶の常光屈折率とを一致させるとともに、高分子液晶膜の異常光屈折率と液晶の異常光屈折率とを一致させた。しかし、本発明は、これに限られるものではなく、使用目的に合わせて、屈折率差と格子の高さによる光路差とが所望の値となるようにすればよい。以下で説明する等方性充填剤を用いる場合や液晶レンズ素子として用いる場合も同様である。
凹凸形状の凹部に充填する材料は、高分子液晶膜の所望する波長における常光屈折率または異常光屈折率に略等しい屈折率を有する等方性の材料(等方性充填剤)であってもよい。等方性充填剤は、光学的に等方なポリマーであって、非晶質のポリマーであればよい。例えば、凹凸形状の上に非晶質のポリマーを流延した後、溶剤を揮散させることによって充填することができる。また、凹凸形状の上に低分子材料を流延した後、この低分子材料を光重合させることによっても充填できる。このとき、シランカップリング剤が、低分子材料と反応する官能基を有していれば、シランカップリング剤を介して液晶高分子膜と等方性充填剤とを接着することができる。尚、低屈折率の等方性ポリマーの方が得やすく、紫外線に対する信頼性も高いので、等方性充填剤の屈折率は、(異常光屈折率よりも低い)常光屈折率に一致させる方が好ましい。
本実施の形態によれば、プラズマエッチングを終えた高分子液晶膜の表面をシランカップリング剤で処理することにより、プラズマエッチングでダメージを受けた高分子液晶膜がラジカル反応によって連鎖的に劣化していくのを防ぐことができる。したがって、青色レーザが照射された場合にも劣化が急速に進行することがないので、青色レーザ光に対する耐性の高い液晶光学素子とすることができる。
尚、上記実施の形態では、高分子液晶膜をシランカップリング剤で処理する例について述べたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、高分子液晶膜に代えて等方性の高分子膜を用いて液晶光学素子を製造する場合にも本発明を適用できる。すなわち、プラズマエッチングによってダメージを受けた等方性高分子膜の表面をシランカップリング剤で処理することにより、等方性高分子膜がラジカル反応によって連鎖的に劣化していくのを防ぐことができる。したがって、上記と同様に、青色レーザ光に対する耐性の高い液晶光学素子とすることができる。
実施の形態2.
本実施の形態では、実施の形態1の方法を用いて製造された液晶レンズ素子について述べる。
図3は、本実施の形態による液晶レンズ素子の断面模式図である。
図3に示すように、液晶レンズ素子1010は、平行に配置された一対の透明基板101a,101bと、これらの間に挟持された液晶層104と、液晶層104に電圧を印加する第1の透明電極102aおよび第2の透明電極102bと、第1の透明電極102aの上に形成され、フレネルレンズ形状を有し、複屈折材料からなる第1のフレネルレンズ部材103aと、第2の透明電極102bの上に形成され、フレネルレンズ形状を有し、複屈折材料からなる第2のフレネルレンズ部材103bと、シール部材105とを備える。
透明基板101a,101bには、実施の形態1と同様に、耐久性の点からガラス基板を用いることが好ましいが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂またはポリカーボネートなどを用いることもできる。
第1の透明電極102aおよび第2の透明電極102bには、光透過性および機械的耐久性の点から、ITO(Indium
Tin Oxide)または酸化スズ(SnO)などを用いることが好ましいが、金(Au)を用いることもできる。尚、図3は透過型の液晶レンズ素子の例であるが、反射型の液晶レンズ素子では、透明電極と、アルミニウム(Al)などの不透明な金属材料からなる不透明電極とを用いることもできる。
図3において、第1の透明電極102aおよび第2の透明電極102bには、外部の電圧信号源1020が接続し、これから出力された所定の電圧信号が液晶層104に印加されるようになっている。ここで、電圧信号としては、矩形交流電圧信号が好ましい。また、このとき、矩形交流電圧信号の周波数は10Hz〜10kHzであることが好ましい。さらに、矩形交流電圧信号中の直流成分を十分に小さくすることが好ましい。
第1のフレネルレンズ部材103aと第2のフレネルレンズ部材103bは、高分子液晶からなり、入射光の波長の近傍でフレネルレンズとして機能するように、複数の輪(ブレーズ輪)が光軸0を中心とした回転対称性を有する鋸歯形状に形成されている。尚、鋸歯を階段形状で近似した形状としてもよい。
上記の鋸歯形状または鋸歯を階段形状で近似した形状は、フォトリソグラフィ法を用いたプラズマエッチングによって得られる。そして、実施の形態1で述べたように、エッチング後の高分子液晶の表面にはシランカップリング剤を用いた処理が施される。
図3には、第1のフレネルレンズ部材103aおよび第2のフレネルレンズ部材103bと、入射光が異常光屈折率を感じる方向(異常光屈折率方向)とが、符号AおよびBで示されている。すなわち、第1のフレネルレンズ部材103aの異常光屈折率方向Aは、透明基板101a,101bと紙面に平行な方向(X軸方向)となっている。そして、第2のフレネルレンズ部材103bの異常光屈折率方向Bは、透明基板101a,101bに平行で紙面に垂直な方向(Y軸方向)となっている。
液晶層104には、ツイステッドネマティック液晶が好ましく用いられ、透明基板101a,101bの間で液晶分子の長軸方向が90度捩れてツイスト配向するようになっている。尚、本実施の形態では、高分子液晶を用いて第1のフレネルレンズ部材103aと第2のフレネルレンズ部材103bを形成し、高分子液晶の表面分子の配列を利用して液晶分子を配向させているので、配向膜を用いた配向処理は不要である。
液晶分子の配向方向は、液晶層104に接する第1のフレネルレンズ部材103aおよび第2のフレネルレンズ部材103bの異常光屈折率方向に一致させることが好ましい。さらに、液晶の常光屈折率nloと異常光屈折率nle、および、複屈折材料の常光屈折率nと異常光屈折率nとを一致させるのが好ましい。したがって、図3の構成では、符号Cで示すように、液晶分子の配向方向が、第1のフレネルレンズ部材103aとの界面で透明基板101a,101bと紙面に平行な方向(異常光屈折率方向A)となるようにし、第2のフレネルレンズ部材103bとの界面で透明基板101a,101bに平行で紙面に垂直な方向(異常光屈折率方向B)となるようにし、nlo=nおよびnle=neの関係が成立するようにすることが好ましい。
液晶層104の厚みは、第1のフレネルレンズ部材103aと第2のフレネルレンズ部材103bとを足した厚みよりも厚くする必要があり、これらのフレネルレンズ部材の凸部の高さは、所望の光学特性を得ることを重視する場合には厚い方が好ましく、所望の応答速度を得ることを重視する場合には薄い方が好ましい。また、液晶層104には、誘電率異方性が正の液晶分子を用いてもよく、誘電率異方性が負の液晶分子を用いてもよい。誘電率異方性の相違は、電圧を印加したときに、液晶分子の長軸方向が電界方向を向くか、電界方向に垂直な方向を向くかという相違に過ぎない。但し、誘電率異方性が負の場合には、電圧を印加しないときに液晶分子の配向方向が透明基板101a,101bに対して概ね垂直となるようなものが好ましい。
図3において、シール材105は、液晶層104が透明基板101a,101bの間から漏れ出さないようにするためのものであり、必要とされる光学的有効領域の外周に設けられる。シール材105としては、エポキシ系またはアクリル系などの樹脂を用いることができる。これらは、加熱によって硬化するものであってもよいし、紫外線によって硬化するものであってもよい。尚、透明基板101a,101bの間隔を所望の値とするために、ガラスファイバーなどのスペーサを数%混入させることができる。
液晶レンズ素子1010に電圧を印加しない場合、液晶分子は、第1のフレネルレンズ部材103aと第2のフレネルレンズ部材103bの近傍で異常光屈折率方向AおよびBの方向に配向している。このとき、X軸方向に偏光しZ軸方向に進行する光が、液晶レンズ素子1010に入射すると、第1のフレネルレンズ部材103aとの界面で、液晶分子は異常光屈折率方向A(すなわち、X軸方向)に配向しているため、液晶の常光屈折率nloと異常光屈折率nle、および、複屈折材料の常光屈折率nと異常光屈折率nとの間にnle=nの関係があれば、入射光は、同一の異常光屈折率を感じて、第1のフレネルレンズ部材103aをそのまま透過する。すなわち、第1のフレネルレンズ部材103aは、フレネルレンズとして機能しない。その後、入射光は、液晶層104を透過することにより、偏光方向を90度旋光させて、第2のフレネルレンズ部材103bに達する。液晶分子は、第2のフレネルレンズ部材103bとの界面で異常光屈折率方向B(すなわち、Y軸方向)に配向しているので、nle=nとなっていれば、入射光は、同一の異常光屈折率を感じて、第2のフレネルレンズ部材103bをそのまま透過する。すなわち、第2のフレネルレンズ部材103bは、フレネルレンズとして機能しない。その結果、X軸方向に偏光しZ軸方向に進行する光は、偏光方向がY軸方向に変化するものの、液晶レンズ素子1010のレンズ効果を受けずにこれを透過する。
一方、Y軸方向に偏光しZ軸方向に進行する光について、液晶レンズ素子1010は次のように作用する。すなわち、Y軸方向に偏光しZ軸方向に進行する光が、液晶レンズ素子1010に入射すると、液晶分子は、第1のフレネルレンズ部材103aとの界面で異常光屈折率方向A(すなわち、X軸方向)に配向しているので、液晶の屈折率がnlo=nとなっていれば、入射光は、同一の常光屈折率を感じて、第1のフレネルレンズ部材103aをそのまま透過する。すなわち、第1のフレネルレンズ部材103aは、フレネルレンズとして機能しない。その後、入射光は、液晶層104を透過することにより、偏光方向を90度旋光させて、第2のフレネルレンズ部材103bに達する。液晶分子は、第2のフレネルレンズ部材103bとの界面で異常光屈折率方向B(すなわち、Y軸方向)に配向しているので、nlo=nとなっていれば、入射光は、同一の常光屈折率を感じて、第2のフレネルレンズ部材103bをそのまま透過する。すなわち、第2のフレネルレンズ部材103bは、フレネルレンズとして機能しない。その結果、Y軸方向に偏光しZ軸方向に進行する光は、偏光方向がX軸方向に変化するものの、液晶レンズ素子1010のレンズ効果を受けずにこれを透過する。
このように、液晶レンズ素子1010に電圧を印加しない場合には、偏光方向がX軸方向であるかY軸方向であるかにかかわらず、入射光は液晶レンズ素子1010をそのまま透過する。次に、液晶レンズ素子1010に電圧を印加する場合について述べる。
X軸方向に偏光しZ軸方向に進行する光が、液晶レンズ素子1010に入射すると、液晶層104と第1のフレネルレンズ部材103aの界面において、入射光は、液晶層104の側では常光屈折率を感じ、第1のフレネルレンズ部材103aの側では異常光屈折率を感じる。すなわち、屈折率差を生じるために、第1のフレネルレンズ部材103aは、フレネルレンズとして機能する。その結果、入射光は、発散光または収束光となって、第1のフレネルレンズ部材103aから出射される。その後、液晶層104と第2のフレネルレンズ部材103bの界面に到達した光は、液晶層104の側と第2のフレネルレンズ部材103bの側の双方で常光屈折率を感じる。したがって、nlo=nとなっていれば、光は同一の常光屈折率を感じて第2のフレネルレンズ部材103bをそのまま透過する。その結果、X軸方向に偏光しZ軸方向に進行する光は、第1のフレネルレンズ部材103aの作用を受け、発散光または収束光となって液晶レンズ素子1010を透過する。
一方、Y軸方向に偏光しZ軸方向に進行する光について、液晶レンズ素子1010は次のように作用する。すなわち、Y軸方向に偏光しZ軸方向に進行する光が、液晶レンズ素子1010に入射すると、液晶層104と第1のフレネルレンズ部材103aの界面において、液晶層104の側と第2のフレネルレンズ部材103bの側の双方で常光屈折率を感じる。したがって、nlo=nとなっていれば、入射光は、同一の常光屈折率を感じて第1のフレネルレンズ部材103aをそのまま透過する。その後、液晶層104と第2のフレネルレンズ部材103bの界面に到達した入射光は、液晶層104と第2のフレネルレンズ部材103bの界面において、液晶層104の側では常光屈折率を感じ、第2のフレネルレンズ部材103bの側では異常光屈折率を感じる。すなわち、屈折率差を生じるために、第2のフレネルレンズ部材103bは、フレネルレンズとして機能する。その結果、入射光は、発散光または収束光となって、第2のフレネルレンズ部材103bから出射される。その結果、Y軸方向に偏光しZ軸方向に進行する光は、第2のフレネルレンズ部材103bの作用を受け、発散光または収束光となって液晶レンズ素子1010を透過する。
尚、本実施の形態の液晶レンズ素子は、上記の例に限られるものではない。
例えば、上記の例で、高分子液晶によって構成されたフレネルレンズ部材はそのままとし、液晶層の部分を等方性充填材とすることもできる。この場合、等方性充填材の屈折率を高分子液晶の常光屈折率に一致させると、入射光の偏光方向が高分子液晶の異常光屈折率方向に一致するときには光が発散または収束し、高分子液晶の常光屈折率方向に一致するときには光はそのまま透過する。
また、上記の例で、高分子液晶によって構成されたフレネルレンズ部を等方性の高分子とし、液晶層の部分を高分子液晶とすることもできる。この場合、プラズマエッチングによってダメージを受けるのは等方性高分子である。したがって、この等方性高分子の表面をシランカップリング剤で処理することによって、等方性高分子がラジカル反応によって連鎖的に劣化していくのを防ぐことができるので、青色レーザ光に対する耐性の高い液晶レンズ素子とすることができる。尚、この例では、等方性高分子の屈折率を高分子液晶の常光屈折率に一致させると、入射光の偏光方向が高分子液晶の異常光屈折率方向に一致するときには光が発散または収束し、高分子液晶の常光屈折率方向に一致するときには光はそのまま透過する。
さらに、上記の例で、高分子液晶によって構成されたフレネルレンズ部を等方性の高分子とし、液晶層の部分はそのままとすることもできる。この場合にも、プラズマエッチングによってダメージを受けるのは等方性高分子である。したがって、この等方性高分子の表面をシランカップリング剤で処理することによって、等方性高分子がラジカル反応によって連鎖的に劣化していくのを防ぐことができる。したがって、青色レーザ光に対する耐性の高い液晶レンズ素子とすることができる。尚、この例では、液晶層への電圧印加の有無によって、液晶レンズ素子の機能を変化させることができる。具体的には、等方性高分子の屈折率と液晶層の常光屈折率とを一致させた場合、液晶層に電圧が印加されない状態では、入射光は次のようになる。すなわち、入射光の偏光方向が液晶層の異常光屈折率方向に一致するときには、光は発散または収束する。一方、入射光の偏光方向が液晶の常光屈折率方向に一致するときには、光はそのまま透過する。また、液晶層に電圧が印加された状態では、液晶層は常光屈折率を示すので、入射光の偏光方向によらずに両者は同じ屈折率を示し、光はそのまま透過する。
図4は、図3の液晶レンズ素子1010を用いた光ヘッド装置の構成図の一例である。
図4に示すように、光ヘッド装置200は、所定の波長の光を出射する光源201と、偏光方向に応じて光を透過または反射させる偏光ビームスプリッタ202と、入射光を略平行な光に変換するコリメータレンズ203と、上記の液晶レンズ素子1010と、1/4波長板204と、1/4波長板204を透過して光を光ディスク300に集光させる対物レンズ205と、偏光ビームスプリッタ202で反射された光ディスク300からの戻り光を検出する光検出器206とを備える。ここで、「戻り光」とは、光源201から出射された後、情報記録面300a,300bで反射されて液晶レンズ素子1010の方向に戻る光を言う。
光源201から出射された光は、偏光ビームスプリッタ202、コリメータレンズ203、液晶レンズ素子1010、1/4波長板204および対物レンズ205をこの順に透過した後、光ディスク300の2層の情報記録面である、情報記録面300aまたは300bに集光する。その後、これらによって反射されて、対物レンズ205、1/4波長板204、液晶レンズ素子1010およびコリメータレンズ203を透過し、偏光ビームスプリッタ202で反射されてから光検出器206に入る。
光検出器206から出力された電気信号は、光ディスク300の情報記録面300a,300bに記録された情報の読み取り信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号の生成に用いられる。尚、光ヘッド装置200は、上記のフォーカスエラー信号に基づいて対物レンズ205を光軸に略垂直となるよう制御する機構(トラッキングサーボ機構)を備えるが、図4では省略されている。
光源201には、通常の光ヘッド装置に使用される通常のレーザ光源が使用される。具体的には、半導体レーザが好適であるが、他のレーザであってもよい。特に、本実施の形態の液晶レンズ素子1010では、高分子液晶の表面をシランカップリング剤によって処理しているので、青色レーザ(波長300nm〜450nm)を光源として使用した場合にも、優れた耐光性を示すことができる。
尚、偏光ビームスプリッタ202、コリメータレンズ203、1/4波長板204、対物レンズ205および光検出器206については周知であり、さらなる説明を省略する。
光ヘッド装置200の動作は、次の通りである。
光源201から出射された光は、偏光ビームスプリッタ202を透過した後、コリメータレンズ203によって略平行光とされ、直線偏光のまま液晶レンズ素子1010に入射する。ここで、光源201から出射した光の偏光方向は、液晶レンズ素子1010が有する2つの複屈折フレネルレンズ部材のうちで往路光が入射する側に設けられた第1のフレネルレンズ部材103aの異常光屈折率方向に一致または直交するようになっている。液晶レンズ素子1010に入射した光は、液晶レンズ素子1010に所定の電圧が印加されていると、焦点距離が切り替えられて透過する。一方、液晶レンズ素子1010に電圧が印加されていない場合には、焦点距離が切り替わらず、偏光方向が90度変化して液晶レンズ素子1010を透過した後、1/4波長板204に入射する。1/4波長板204に入射した光は、1/4波長板204によって円偏光の光となり、対物レンズ205によって光ディスク300の情報記録面300aまたは300bに集光される。
液晶レンズ素子1010に電圧を印加しないとき、入射光に対する液晶レンズ素子1010の透過波面は不変であり、対物レンズ205によって光ディスク300の情報記録面300aに集光され、記録または再生される。一方、液晶レンズ素子1010に所定の電圧を印加すると、入射光に対する液晶レンズ素子1010の透過波面は凹レンズの発散波面となり、対物レンズ205によって光ディスク300の情報記録面300bに集光され、記録または再生される。その結果、2層の光ディスク300の安定した記録または再生を実現できる。
光ディスク300からの戻り光は、対物レンズ205を透過し、1/4波長板204によって入射光と偏光方向が90度異なる直線偏光の光に変えられ、さらに、液晶レンズ素子1010によって偏光方向を変えられるとともに、液晶レンズ素子1010に印加された電圧に応じて焦点距離が変えられる。その後、コリメータレンズ203を透過し、偏光ビームスプリッタ202で反射されて光検出器206に入射し、光検出器206に記録された情報が電気信号に変換される。
本実施の形態の光ヘッド装置は、耐光性に優れた液晶レンズ素子を使用しているので、優れた光学特性と高い信頼性とを兼ね備えることができる。
実施の形態3.
実施の形態2では、液晶光学素子として液晶レンズ素子を例に挙げた。本実施の形態では、実施の形態1で述べた方法を回折格子に適用する場合について述べる。
図5は、本実施の形態によるバイナリ型の回折格子の断面模式図である。但し、本実施の形態においては、表面が傾斜したブレーズ型の回折格子であってもよく、また、ブレーズ型の1周期の表面形状を、階段状に形成されたバイナリ型の表面形状で近似したバイナリブレーズ型の回折格子であってもよい。
図5に示すように、回折格子41は、第1の透明基板42と、これに対向する第2の透明基板43とを有する。
第1の透明基板42の裏面には、第1の低反射膜44が形成されている。この第1の透明基板42の反対側の表面には、第1の配向膜45と、高分子液晶膜46とが形成されている。高分子液晶膜46は、フォトリソグラフィ法を用いたプラズマエッチングによって、断面が矩形格子状となるように加工されている。そして、実施の形態1で述べたように、エッチング後の高分子液晶膜46の表面にはシランカップリング剤を用いた処理が施されている。
第2の透明基板43の裏面には、第2の低反射膜47が形成されている。そして、第1の透明基板42の表面と第2の透明基板43の表面とは、等方性充填材48を介して貼り合わされている。
等方性充填材48は、高分子液晶膜46を構成する高分子液晶の常光屈折率または異常光屈折率に等しい屈折率を有する材料からなる。等方性充填材48の屈折率が常光屈折率に等しい場合、回折格子41は、常光屈折率方向の偏光を回折せずに、この光を高い透過率で透過させる。一方、異常光屈折率方向の偏光に対しては、高い回折効率で回折する。等方性充填材48を構成する材料としては、例えば、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂などが用いられる。これらは、液体の状態で充填された後、加熱や紫外線照射などによって固化される。
高分子液晶膜46の表面処理に、一般式(1)で表わされるシランカップリング剤を用いる場合には、等方性充填材の種類に応じてXを適宜選択することができる。高分子液晶膜46と等方性充填材48との接着力を向上させる点からは、等方性充填材48を構成する化合物の未反応の官能基と反応するものを、Xに用いることが好ましい。
Figure 2009025489
本実施の形態の回折格子41では、高分子液晶膜46の表面をシランカップリング剤によって処理しているので、青色レーザ(波長300nm〜450nm)を光源として使用した場合にも、優れた耐光性を示すことができる。
尚、本実施の形態の回折格子は上記の例に限られるものではない。
例えば、上記の例で、高分子液晶膜46によって構成された凸部を等方性の高分子とし、等方性充填材48によって構成された部分を高分子液晶とすることもできる。この場合、プラズマエッチングによってダメージを受けるのは等方性高分子である。したがって、この等方性高分子の表面をシランカップリング剤で処理することによって、等方性高分子がラジカル反応によって連鎖的に劣化していくのを防ぐことができるので、青色レーザ光に対する耐性の高い回折格子とすることができる。尚、この例では、等方性高分子の屈折率を高分子液晶の常光屈折率に一致させると、入射光の偏光方向が高分子液晶の異常光屈折率方向に一致するときには光が回折し、高分子液晶の常光屈折率方向に一致するときには光は回折せずに透過する。
また、上記の例で、高分子液晶膜46によって構成された凸部はそのままとし、等方性充填材48によって構成された部分を液晶層とすることもできる。この場合、液晶層への電圧印加の有無によって、回折格子の回折機能を変化させることができる。すなわち、高分子液晶の常光屈折率と液晶層の屈折率とを一致させるとともに、両者の異常光屈折率方向を一致させた場合、電圧を印加しない状態では、入射光の偏光方向によらずに両者は同じ屈折率を示す。一方、電圧を印加すると、入射光の偏光方向が高分子液晶の異常光屈折率方向に一致すると光が回折し、高分子液晶の常光屈折率方向に一致すると光が回折せずに透過する。
さらに、上記の例で、高分子液晶膜46によって構成された凸部を等方性の高分子とし、等方性充填材48によって構成された部分を液晶層あるいは他の等方性高分子層とすることもできる。この場合、プラズマエッチングによってダメージを受けるのは等方性高分子である。したがって、この等方性高分子の表面をシランカップリング剤で処理することによって、等方性高分子がラジカル反応によって連鎖的に劣化していくのを防ぐことができるので、青色レーザ光に対する耐性の高い回折格子とすることができる。尚、この例でも、液晶層への電圧印加の有無によって、回折格子の回折機能を変化させることができる。具体的には、等方性高分子の屈折率と液晶層の常光屈折率とを一致させた場合、液晶層に電圧が印加されない状態では、入射光は次のようになる。すなわち、入射光の偏光方向が液晶層の異常光屈折率方向に一致するときには、光は回折する。一方、入射光の偏光方向が液晶の常光屈折率方向に一致するときには、光は回折せずに透過する。また、液晶層に電圧が印加された状態では、液晶層は常光屈折率を示すので、入射光の偏光方向によらずに両者は同じ屈折率を示し、光は回折せずに透過する。
図6は、図5の回折格子41を用いた光ヘッド装置の構成図の一例である。
図6に示す光ヘッド装置51では、光源52から出射された光は、回折格子41を透過し、対物レンズ53によって光ディスク54に集光される。次いで、光ディスク54で反射した光は、再び対物レンズ53を透過した後に、回折格子41によって回折されて、光検出器55に到達する。
光源52には、通常の光ヘッド装置に使用される通常のレーザ光源が使用される。具体的には、半導体レーザが好適であるが、他のレーザであってもよい。特に、本実施の形態の回折格子41に使用される配向膜は、波長400nm付近での吸収係数が十分に小さい有機材料からなる主骨格を有しているので、青色レーザ(波長300nm〜450nm)を光源として使用した場合にも、優れた耐光性を示すことができる。
図6において、回折格子41は、ホログラムビームスプリッタとして機能する。そして、回折格子41と光ディスク54との間に、1/4波長板56を挿入することにより、光源52から出射された直線偏光の偏光方向を、往路と復路とで90度回転させることができる。これにより、往路の偏光方向の光に対しては透過率を高めることができ、復路の偏光方向の光に対しては回折効率を高めることができるので、光ヘッド装置51の全体としての光の利用効率をさらに向上させることができる。
本実施の形態の光ヘッド装置は、耐光性に優れた回折格子を使用しているので、優れた光学特性と高い信頼性とを兼ね備えることができる。
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
例えば、実施の形態1〜3では、高分子液晶または等方性高分子からなる高分子材料層の表面がプラズマエッチングによってダメージを受ける場合について述べた、しかし、本発明は、これに限られるものではなく、例えば、ウェットエッチングによって高分子材料層の表面が酸化されてダメージを受けている場合にも適用可能である。すなわち、ウェットエッチング後の高分子材料層の表面に、予め加水分解処理したシランカップリング剤を塗布した後、高分子材料層との間で脱水縮合を起こすことにより、ラジカル連鎖反応による高分子材料層の劣化を抑制することができる。したがって、青色レーザ光に対しても良好な耐性を有する液晶光学素子とすることが可能である。
以下、本発明の実施例について述べる。
<重合性液晶組成物の調整>
式(A−1)、式(A−2)、式(A−4)および式(A−5)で表わされる各化合物を、14:14:36:36のモル比で混合した後、重合開始剤(チスペシャリティーケミカルズ社製、商品名:イルガキュア754)を0.5質量%、式(B−1)で表わされるヒンダードアミン系の光安定化剤(旭電化工業社製、商品名:LA62)を0.3質量%、式(B−2)で表わされるヒンダードフェノール系の重合禁止剤(旭電化工業社製、商品名:AO60)を0.2質量%加えた。これにより、重合性液晶組成物(C−1)を得た。
式(A−3)、式(A−4)および式(A−5)で表わされる各化合物を、50:25:25のモル比で混合した後、重合開始剤(チスペシャリティーケミカルズ社製、商品名:イルガキュア754)を0.5質量%、式(B−1)で表わされるヒンダードアミン系の光安定化剤(旭電化工業社製、商品名:LA62)を0.3質量%、式(B−3)で表わされるヒンダードフェノール系の重合禁止剤(旭電化工業社製、商品名:AO50)を1.5質量%加えた。これにより、重合性液晶組成物(C−2)を得た。
Figure 2009025489
<回折格子(1)の作製>
まず、縦5cm、横5cm、厚さ0.5mmのガラス基板を2枚準備し、それぞれのガラス基板にポリイミド溶液をスピンコータで塗布して乾燥した。そして、得られたポリイミド膜の各々に対して、ナイロンクロスで一定方向にラビング処理を行い、配向膜とした。次に、一方のガラス基板の配向膜の上に離型剤を塗布してから、他方のガラス基板とエポキシ系のシール材を介して貼り合わせ、セルとした。このとき、配向膜を形成した面が互いに内側を向くようにするとともに、それぞれのガラス基板に対して行った配向処理の方向が同じとなるようにした。また、ガラス基板の間には、直径2.2μmのガラスビーズを散布して、これらの間隔が2.2μmとなるようにした。
上記で得たセルに、重合性液晶組成物(C−1)を70℃〜80℃の温度で注入した。次いで、温度66℃で、強度45mW/cmの紫外線を積算光量が8100mJ/cmとなるように照射し、重合性液晶組成物(C−1)の光重合を行った。その後、ホットプレートを用い、145℃で15分間の加熱処理を行った。これにより、高分子液晶膜(C−1)が得られた。
次に、離型剤が設けられた方のガラス基板をセルから取り外し、露出した高分子液晶膜(C−1)の上に、スパッタ法でSiO膜を形成した。その後、SiO膜の上にレジスト膜を設け、フォトリソグラフィ法によって、レジスト膜を所定の形状に加工した。次いで、レジスト膜をマスクとして、SiO膜および高分子液晶膜(C−1)に対し反応性イオンエッチングを行い、断面が矩形格子形状となるように加工した。尚、格子のピッチは6μmとした。また、エッチング後の断面は、実施の形態1で述べた図2(a)に対応する形状である。
次に、エタノールと水を1:1の質量比で混合した溶液に、式(2)で表わされるシランカップリング剤(n−デシルトリメトキシシラン)を0.1質量%加え、室温で2時間攪拌してシランカップリング剤溶液を調整した。
Figure 2009025489
エッチングを終えた高分子液晶膜(C−1)が形成された透明基板を、上記のシランカップリング剤溶液に5分間浸漬してから、温度110℃の電気炉に入れて30分間加熱した。
高分子液晶膜(C−1)の表面に純水を滴下し、シランカップリング剤による表面処理の前後における接触角を比較した。その結果、表面処理前の接触角は33.9度であったのに対し、表面処理後では54.8度になった。これは、高分子液晶膜(C−1)の表面が式(2)の化合物のアルキル基で覆われることにより、疎水性が高くなったためと考えられる。したがって、この結果から、シランカップリング剤によって高分子液晶膜(C−1)の表面が改質されていることが確認された。
次に、シランカップリング剤による表面処理を終えた高分子液晶膜(C−1)の上に等方性充填剤を載せ、格子の隙間がこの媒質で充填されるようにした。そして、縦5cm、横5cm、厚さ0.5mmのガラス基板をさらに1枚用意し、このガラス基板を等方性充填剤の上に載せて、高分子液晶膜と等方性充填剤が2つのガラス基板によって挟み込まれるようにした。その後、強度3000mW/cmの紫外線を積算光量が3500mJ/cmとなるように照射し、等方性充填剤を光重合によって固化させた。以上の工程によって、回折格子(1)を得た。
<回折格子(2)の作製>
回折格子(1)と同様にして作製したセルに、重合性液晶組成物(C−2)を120℃の温度で注入した。次いで、温度120℃で、強度45mW/cmの紫外線を積算光量が8100mJ/cmとなるように照射し、重合性液晶組成物(C−2)の光重合を行った。その後、ホットプレートを用い、145℃で15分間の加熱処理を行った。これにより、高分子液晶膜(C−2)が得られた。
次に、回折格子(1)と同様にして、高分子液晶膜(C−2)の反応性イオンエッチングを行い、断面が矩形格子形状となるように加工した。尚、格子のピッチは6μmとした。また、エッチング後の断面は、実施の形態1で述べた図2(a)に対応する形状である。その後、回折格子(1)と同様のシランカップリング剤溶液を用いて、高分子液晶膜(C−2)の表面処理を行った。
高分子液晶膜(C−2)の表面に純水を滴下し、シランカップリング剤による表面処理の前後における接触角を比較した。その結果、表面処理前の接触角は33.7度であったのに対し、表面処理後では49.5度になった。これは、高分子液晶膜(C−2)の表面が式(2)の化合物のアルキル基で覆われることにより、疎水性が高くなったためと考えられる。したがって、この結果から、シランカップリング剤によって高分子液晶膜(C−2)の表面が改質されていることが確認された。
次に、シランカップリング剤による表面処理を終えた高分子液晶膜(C−2)の上に等方性充填剤を載せ、格子の隙間がこの媒質で充填されるようにした。そして、縦5cm、横5cm、厚さ0.5mmのガラス基板をさらに1枚用意し、このガラス基板を等方性充填剤の上に載せて、高分子液晶膜と等方性充填剤が2つのガラス基板によって挟み込まれるようにした。その後、強度3000mW/cmの紫外線を積算光量が3500mJ/cmとなるように照射し、等方性充填剤を光重合によって固化させた。以上の工程によって、回折格子(2)を得た。
<回折格子の評価>
回折格子(1)および(2)に対し、Krレーザ装置(コヒーレント社製、商品名:イノーバ302)を用いてKrレーザ光(波長407、413nmのマルチモード)を照射した。尚、試験温度は80℃とし、積算光量は10〜15Wh/mmとした。
表1は、回折格子(1)について、積算光量を10Wh/mmとした場合の表面処理の有無における総合光量の変化率を比較した結果である。尚、総合光量は、0次光(透過光)と1次光(回折光)の和である。また、表面処理がない回折格子とは、エッチング後の高分子液晶膜(C−1)に対しシランカップリング剤による表面処理を行わない以外は、回折格子(1)と同様にして作製したものである。
表1.
Figure 2009025489
表1より、表面処理をしない回折格子では、積算光量10Wh/mmの曝露試験をすることにより、試験前の総合光量に対して2.8%低下した。一方、表面処理をした回折格子では、試験前の総合光量に対して1.5%の低下に留まった。したがって、表面処理を行うことにより、総合光量の低下を抑制できることが分かった。
表2は、回折格子(2)について、積算光量を10Wh/mmおよび15Wh/mmとした場合の表面処理の有無における総合光量の変化率を比較した結果である。尚、表面処理がない回折格子とは、エッチング後の高分子液晶膜(C−2)に対しシランカップリング剤による表面処理を行わない以外は、回折格子(2)と同様にして作製したものである。
表2.
Figure 2009025489
表2より、表面処理をしない回折格子では、積算光量10Wh/mmの曝露試験をすることにより、試験前の総合光量に対して3.8%低下した。さらに、積算光量が15Wh/mmになると、総合光量の低下は5.3%にもなった。これに対して、表面処理をした回折格子では、試験前の総合光量に対して、積算光量10Wh/mmでは2.1%、積算光量15Wh/mmでも3.0%の低下に留まった。この結果から、回折格子(2)についても、表面処理を行うことで総合光量の低下を抑制できることが分かった。
実施の形態1で液晶光学素子の製造方法を示すフローチャートである。 (a)および(b)は、実施の形態1で、高分子液晶膜のエッチング後の状態を示す模式的な断面図である。 実施の形態2における液晶レンズ素子の断面模式図である。 実施の形態2における光ヘッド装置の構成図の一例である。 実施の形態3におけるバイナリ型の回折格子の断面模式図である。 実施の形態3における光ヘッド装置の構成図の一例である。
符号の説明
1,101a,101b 透明基板
2 配向膜
3,46 高分子液晶膜
102a 第1の透明電極
102b 第2の透明電極
103a 第1のフレネルレンズ部材
103b 第2のフレネルレンズ部材
104 液晶層
105 シール材
1010 液晶レンズ素子
1020 電圧信号源
200,51 光ヘッド装置
201,52 光源
202 偏光ビームスプリッタ
203 コリメータレンズ
204 1/4波長板
205,53 対物レンズ
206,55 光検出器
300,54 光ディスク
300a,300b 情報記録面
41 回折格子
42 第1の透明基板
43 第2の透明基板
44 第1の低反射膜
45 第1の配向膜
47 第2の低反射膜
48 等方性充填剤

Claims (7)

  1. 基板上に高分子液晶膜を形成する工程と、
    前記高分子液晶膜をエッチングして前記基板上に凹凸形状を形成する工程と、
    前記エッチングを終えた後に、前記高分子液晶膜に生成した活性種をシランカップリング剤と反応させる工程と、
    前記凹凸形状の凹部に、等方性屈折率を有する等方性充填剤、または、複屈折を有する液晶を充填する工程とを有することを特徴とする液晶光学素子の製造方法。
  2. 前記エッチングはプラズマエッチングであることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子の製造方法。
  3. 前記凹部に等方性充填剤を充填する工程は、前記凹凸形状の上に低分子材料を流延し、該低分子材料を光重合させて前記等方性充填剤とする工程であって、
    前記シランカップリング剤は、前記低分子材料と反応する官能基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶光学素子の製造方法。
  4. 前記高分子液晶膜を形成する工程は、重合性液晶、ヒンダードアミン系化合物およびヒンダードフェノール系化合物を含む液晶組成物を重合する工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶光学素子の製造方法。
  5. 前記凹凸形状は格子形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶光学素子の製造方法。
  6. 前記凹凸形状は、鋸歯形状または鋸歯を階段形状で近似した形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶光学素子の形成方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により製造された液晶光学素子を有することを特徴とする光ヘッド装置。
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