JP2009023923A - 有機酸塩の製造方法、並びにその用途 - Google Patents

有機酸塩の製造方法、並びにその用途 Download PDF

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吉守 高森
Yoshihiro Taniguchi
佳弘 谷口
Tadashi Shinobu
正 信夫
Seiji Kurozumi
誠司 黒住
Izuho Kaga
出穂 加賀
Minoru Fukuda
稔 福田
Koji Sakamoto
廣司 坂本
Hikari Takada
光 高田
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Abstract

【課題】両親媒性のグルコサミン、キトサンオリゴ糖、ヘテロオリゴ糖の有機酸塩の簡便な製造方法、並びにその用途に関する。
【解決手段】アルコキシドのアルコール溶液にグルコサミン塩酸塩、又はグルコサミン硫酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のグルコサミンを含有する第1のアルコール溶液に、有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液を添加することで前記遊離状態のグルコサミンと前記有機酸とを反応させる。
【選択図】なし

Description

この発明は、両親媒性のグルコサミン、キトサンオリゴ糖、ヘテロオリゴ糖の有機酸塩の簡便な製造方法、並びにその用途に関する。
従来、グルコサミンは、蟹等の甲殻類から抽出されるキチンから得られ、その多くは甲殻類の殻から脱蛋白、脱炭酸カルシウムから得られるキチンを濃塩酸で煮沸し、加水分解して生成される。そのため、多くのグルコサミンは、グルコサミン塩酸塩の状態で、冷暗所において比較的安定な結晶状の物質として生成される。そして、これらのグルコサミン塩酸塩は単体、若しくは、コラーゲン等と共に錠剤等に成形され、若しくは、食品等に添加され、生体防御、疾病予防、老化制御等を目的とする機能性食品に使用されている。
そして、従来のグルコサミン塩酸塩の製造方法としては、甲殻類の外骨格等に含まれるアミノ多糖類であるキチンを、高濃度の塩酸等の強酸処理で加水分解して単糖にし、活性炭による脱色、濃縮、再結晶等の精製工程を経て製造されている(例えば、特許文献1)。
特開2005−29519号公報
しかし、グルコサミン塩酸塩は親水性であるため、食品としては油を含有するものに馴染みにくく、また、化粧料として使用する際には、皮脂と馴染みにくいという問題がある。
この発明は上記のような種々の課題を解決することを目的としてなされたものであって、水、及び油の両方に対して親和性を高くすることができ、さらに、工業的に簡便に生成することのできる両親媒性のグルコサミン、キトサンオリゴ糖、ヘテロオリゴ糖の有機酸塩、及びこれらを含有する粉体、結晶、エマルジョン等の製造方法、並びにその用途に関する。
請求項1記載の有機酸塩の製造方法は、アルコキシドのアルコール溶液にグルコサミン塩酸塩、又はグルコサミン硫酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のグルコサミンを含有する第1のアルコール溶液に、有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液を添加することで前記遊離状態のグルコサミンと前記有機酸とを反応させることを特徴としている。
請求項2記載の有機酸塩の製造方法は、アルコキシドのアルコール溶液に、β−1,4結合されたグルコサミン残基から成るキトサンオリゴ糖の塩酸塩であるキトサンオリゴ糖塩酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のキトサンオリゴ糖を含有する第1のアルコール溶液に、有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液を添加することで前記遊離状態のキトサンオリゴ糖と前記有機酸とを反応させることを特徴としている。
請求項3記載の有機酸塩の製造方法は、アルコキシドのアルコール溶液に、ランダムにβ−1,4結合されたN−アセチルグルコサミン残基とグルコサミン残基とから成るヘテロオリゴ糖の塩酸塩であるヘテロオリゴ糖塩酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のへテロオリゴ糖を含有する第1のアルコール溶液に、有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液を添加することで前記遊離状態のへテロオリゴ糖と前記有機酸とを反応させることを特徴としている。
請求項4記載の有機酸塩の製造方法は、請求項1乃至3記載の有機酸塩の製造方法において、前記第2のアルコール溶液を、有機酸としたことを特徴とする有機酸塩の製造方法。
請求項5記載の有機酸塩の製造方法は、前記有機酸が、脂肪酸であることを特徴としている。
請求項6記載の有機酸塩の製造方法は、前記第1のアルコール溶液に前記第2のアルコール溶液を添加した後に、さらに、室温以下で静置すること特徴としている。
請求項7記載の化粧料は、請求項1乃至6記載の有機酸塩の製造方法により製造されてなる有機酸塩を含有することを特徴としている。
請求項8記載の食品は、請求項1乃至6記載の有機酸塩の製造方法により製造されてなる有機酸塩を含有することを特徴としている。
請求項1記載の有機酸塩の製造方法によれば、アルコキシドのアルコール溶液にグルコサミン塩酸塩、又はグルコサミン硫酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のグルコサミンを含有する第1のアルコール溶液に、有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液を添加することで前記遊離状態のグルコサミンと前記有機酸とを反応させている。そのため、グルコサミンと有機酸とから温和な条件で、且つ、簡便にグルコサミン有機酸塩を製造することができる。
また、グルコサミン有機酸塩は、グルコサミンと有機酸とが反応している。そのため、グルコサミン、若しくは、グルコサミン塩酸塩の単体では、親水性を示すが、疎水性である炭素鎖を有する有機酸とカップリングさせることで、当該グルコサミン有機酸塩の水、及び油の両方に対する親和性を高くすることができる。従って、グルコサミン有機酸塩を溶解させる溶媒、すなわち、水、油、その他の有機溶媒等、若しくは、その他の担体の性質に応じて適宜その親水性、疎水性のバランスを調節して、これらに対する親和性を高めることができる。
請求項2記載の有機酸塩の製造方法によれば、アルコキシドのアルコール溶液に、β−1,4結合されたグルコサミン残基から成るキトサンオリゴ糖の塩酸塩であるキトサンオリゴ糖塩酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のキトサンオリゴ糖を含有する第1のアルコール溶液に、有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液を添加することで前記遊離状態のキトサンオリゴ糖と前記有機酸とを反応させている。そのため、キトサンオリゴ糖と有機酸とから温和な条件で、且つ、簡便にキトサンオリゴ糖有機酸塩を製造することができる。
また、キトサンオリゴ糖有機酸塩は、キトサンオリゴ糖と有機酸とが反応している。そのため、キトサンオリゴ糖、若しくは、キトサンオリゴ糖塩酸塩の単体では、親水性を示すが、疎水性である炭素鎖を有する有機酸とカップリングさせることで、当該キトサンオリゴ糖有機酸塩の水、及び油の両方に対する親和性を高くすることができる。従って、キトサンオリゴ糖有機酸塩を溶解させる溶媒、すなわち、水、油、その他の有機溶媒等、若しくは、その他の担体の性質に応じて適宜その親水性、疎水性のバランスを調節して、これらに対する親和性を高めることができる。
請求項3記載の有機酸塩の製造方法によれば、アルコキシドのアルコール溶液に、ランダムにβ−1,4結合されたN−アセチルグルコサミン残基とグルコサミン残基とから成るヘテロオリゴ糖の塩酸塩であるヘテロオリゴ糖塩酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のへテロオリゴ糖を含有する第1のアルコール溶液に、有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液を添加することで前記遊離状態のへテロオリゴ糖と前記有機酸とを反応させている。そのため、前記へテロオリゴ糖と有機酸とから温和な条件で、且つ、簡便にへテロオリゴ糖有機酸塩を製造することができる。
また、ヘテロオリゴ糖有機酸塩は、ヘテロオリゴ糖と有機酸とが反応している。そのため、ヘテロオリゴ糖、若しくは、ヘテロオリゴ糖塩酸塩の単体では、親水性を示すが、疎水性である炭素鎖を有する有機酸とカップリングさせることで、当該ヘテロオリゴ糖有機酸塩の水、及び油の両方に対する親和性を高くすることができる。従って、ヘテロオリゴ糖有機酸塩を溶解させる溶媒、すなわち、水、油、その他の有機溶媒等、若しくは、その他の担体の性質に応じて適宜その親水性、疎水性のバランスを調節して、これらに対する親和性を高めることができる。
請求項4記載の有機酸塩の製造方法によれば、請求項1乃至3記載の有機酸塩の製造方法において、前記第2のアルコール溶液の代わりに有機酸を第1のアルコール溶液に添加している。そのため、請求項1乃至3記載の効果に加えて、第2のアルコール溶液を調製する必要がないので、より簡便にグルコサミン有機酸塩を製造することができる。
請求項5記載の有機酸塩の製造方法によれば、有機酸が、脂肪酸であるので、該有機酸塩の製造方法が簡便になるだけでなく、原料の価格も抑えることができ経済的である。
請求項6記載の有機酸塩の製造方法によれば、前記第1のアルコール溶液に前記第2のアルコール溶液を添加した後に、さらに、室温以下で静置している。そのため、グルコサミン有機酸塩の収率を向上させることができる。
請求項7記載の化粧料によれば、請求項1乃至6記載の有機酸塩の製造方法により製造されてなる有機酸塩を含有している。そのため、化粧料に含まれるその他の有機溶媒、ポリエチレングリコール、グリセリン、ツバキ油、ホホバ油等、若しくは、その他の担体に対しても親和性を高めることで、グルコサミン、キトサンオリゴ糖、ヘテロオリゴ糖の有機酸塩を容易に相溶、または、均一に分散させることができ、余分な分散剤等を使用する必要がない。さらに、親水性のグルコサミン塩酸塩、キトサンオリゴ糖塩酸塩、前記へテロオリゴ糖塩酸塩と異なり、これらが有機酸とカップリングし両親媒性となった場合には、これらの有機酸塩は例えば顔に塗布した際には、該有機酸塩は皮脂に対して親和性を高めることができ、そのため、肌に塗布されたこれらの有機酸塩は皮下に浸透しやすく、体内のヒアルロン酸の生産等を促し、化粧料による保湿効果等をより発揮することが期待できる。また、生理活性を有する脂肪酸と上述の遊離のグルコサミン等とカップリングさせることで、当該脂肪酸も皮下まで浸透させることができ、その効果をより発揮することが期待できる。そして、大掛かりな設備を必要とせず、また、温和な条件で、該化粧料の原料である上述の有機酸塩を製造することができる。
請求項8記載の食品によれば、請求項1乃至5記載の有機酸塩の製造方法により製造されてなる有機酸塩を含有している。そのため、例えばオリーブオイル等の油を含有する食品に対しても容易に配合することができるので、上述の有機酸塩の体内からの摂取に適している。そして、大掛かりな設備を必要とせず、また、温和な条件で、該食品の原料であるこれらの有機酸塩を製造することができる。
この発明における有機酸塩の製造方法の最良の実施形態について、以下に説明する。本発明に係る有機酸塩の製造方法は、アルコキシドのアルコール溶液にグルコサミン塩酸塩、又はグルコサミン硫酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のグルコサミンを含有する第1のアルコール溶液に、有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液を添加することで前記遊離状態のグルコサミンと前記有機酸とを反応させるものである。
そして、後述のキトサンオリゴ糖有機酸塩を製造する際には、上述のグルコサミン塩酸塩をキトサンオリゴ糖塩酸塩とすればよく、また、ヘテロオリゴ糖有機酸塩を製造する際には、上述のグルコサミン塩酸塩をヘテロオリゴ糖とすればよい。また、有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液の代わりに液体、若しくは粉末状の有機酸をそのまま使用することができる。
前記グルコサミン塩酸塩は、下記の構造式(I)に示す構造を有し、甲殻類の外骨格等に含まれるアミノ多糖類であるキチンを、高濃度の塩酸等の強酸処理で加水分解して単糖にし、活性炭による脱色、濃縮、再結晶等の精製工程を経て製造されて得られるものが好適に使用されるが、その他の製造法により製造されていてもよく特に限定されるものではない。また、グルコサミン硫酸塩は上述の強酸を高濃度の硫酸とすることで製造されたものを好適に使用できる。
Figure 2009023923
また、本発明における前記キトサンオリゴ糖塩酸塩は、β−1,4結合されたグルコサミン残基から成るキトサンオリゴ糖の塩酸塩であり、下記の構造式(II)に示す構造を有し、上記グルコサミン塩酸塩が例えば2〜10個程度結びついたものである。
Figure 2009023923
そして、前記ヘテロオリゴ糖は、ランダムにβ−1,4結合されたN−アセチルグルコサミン残基とグルコサミン残基とから成るヘテロオリゴ糖の塩酸塩であり、下記の構造式(III)に示す構造を有し、下記の単位構造を例えば1〜5個程度結びついたものである。
Figure 2009023923
前記アルコキシドとしては、例えばナトリウムメトキシドが好適に使用されるが、その他にもナトリウムエトキシドやカリウムメトキシド等も適宜使用することができる。また、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシドを使用することで、グルコサミン、キトサンオリゴ糖、ヘテロオリゴ糖の塩酸塩の塩素を塩化ナトリウムとして、後述のアルコール溶液中において沈殿させ取除くことができ、当該塩の処分も容易に行うことができる。
前記アルコール溶液は、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコールが好適に使用され、また、1級アルコールを好適に使用することができるが、2級、若しくは、3級アルコールであってもよい。尚、グルコサミン塩酸塩は親水性であるので、炭素数が多い高級アルコールには溶解しにくくなるので好ましくない。また、アルコール溶液は、前述のようなメタノール単体で使用することも可能であるが、メタノールに少量の水を添加したものをアルコール溶液として使用してもよく、さらに、その他の分散材等の添加剤を添加してもよい。しかし、製造されたグルコサミン有機酸塩の変色等を考慮するとアルコール溶液は、例えばモレキュラーシーブ等で脱水されているものを使用することが好ましい。
また、アルコール溶液と、ナトリウムアルコキシドを製造する際に使用されるアルコールとは同様の構造である方が、該ナトリウムアルコキシドと該アルコール溶液との相溶性がよく好ましい。そして、本実施例においては、第1のアルコール溶液に使用されるアルコール溶液と、第2のアルコール溶液に使用されるアルコール溶液とは、これらを混合した際の相溶性を考慮して、同様のアルコール溶液を使用している。しかし、第1のアルコール溶液と第2のアルコール溶液とが互いに相溶するものであれば、異なるアルコール溶液を使用してもよい。
前記有機酸は、長鎖脂肪酸の1価のカルボン酸である、脂肪酸を好適に使用することができ、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、9−ヘキサデセン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等をより好適に使用することができる。また、有機酸は、前述のような飽和脂肪酸だけでなく、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸も好適に使用することができる。さらに、クエン酸、グルコン酸、グルタミン酸,酢酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、イノシン酸、アスコルビン酸や、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸も好適に使用することができるが、グルタミン酸も使用することができ、特に、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等がより好適に使用される。しかし、前述の有機酸塩に限定されるものでなく、カルニチン、アスタキサンチン、フェルラ酸、αリポ酸、さらに、ウロン酸であるグルクロン酸等も使用することができる。また、上記以外の有機酸でも食品として、若しくは、化粧料として許容することができるものであれば、適宜使用することができる。
また、上述のグルコサミンと塩を形成する有機酸としては、目的のグルコサミン有機酸塩の親水性、疎水性のバランスによって炭素鎖の多いもの、若しくは、少ないもの等の選択が可能である。すなわち、イコサン酸等の高級脂肪酸とグルコサミンとがグルコサミンイコサン酸塩を形成した場合には、本来グルコサミンは親水性であるが、当該グルコサミンイコサン酸塩は疎水性側にシフトする。また、親水性であるアスコルビン酸とグルコサミンとがグルコサミンアスコルビン酸塩を形成した場合には、本来親水性のグルコサミンがより親水性側にシフトする。さらに、上述の有機酸の中でもフェルラ酸、アスコルビン酸、グルクロン酸等のそれ単体で生理活性を示す有機酸とグルコサミンとが塩を形成した場合には、該グルコサミンの生理活性と、該有機酸の生理活性との両方を単一物質で発現させることが期待できる。
また、本発明のグルコサミン有機酸塩とは、例えば下記に示す構造式(IV)に示すグルコサミンと有機酸とが共有結合するものではなく、後述の構造式(V)等に示すように、エマルジョン、若しくは、結晶状態においてグルコサミンと有機酸とがイオン的に結合した塩を形成するものである。
Figure 2009023923
また、本発明に係る有機酸塩の製造方法は、第1のアルコール溶液調製工程、第2のアルコール溶液調製工程、反応工程、そして、必要に応じて後処理工程を含んでおり、グルコサミン有機酸塩の製造方法をその一例として示す。尚、前述の何れの工程も断りのない限り常温常圧下で行われ、後述する各工程のグルコサミン塩酸塩を、前記キトサンオリゴ糖塩酸塩、若しくは、前記へテロオリゴ糖塩酸塩とすることで、それぞれの有機酸塩を得ることができる。また、有機酸をアルコール溶液に溶解した第2のアルコール溶液の代わりに液体、若しくは粉末状の有機酸をそのまま使用する際には、第2のアルコール溶液調製工程を省略することも可能である。
〔第1のアルコール溶液調製工程〕
前記第1のアルコール溶液は、ナトリウムアルコキシドのアルコール溶液にグルコサミン塩酸塩、又はグルコサミン硫酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のグルコサミンを含有するものである。そして、ナトリウムアルコキシドのアルコール溶液は、グルコサミン塩酸塩に対して、0.2〜2.0倍当量程度のナトリウムアルコキシドが含有されることが好ましいが、これ以外でも、後述のように塩化ナトリウムの塩を生じ、遊離状態のグルコサミンを得ることができる。また、ナトリウムアルコキシドのアルコール溶液に溶解させるグルコサミン塩酸塩の量は、後に遊離状態のグルコサミンと塩を形成する有機酸と当量程度であることが好ましいが、グルコサミン塩酸塩、若しくは、有機酸のどちらか一方が他方に対して、例えば2.0〜3.0当量程度であってもよく、さらに、これらの反応性によっては一方が他方に対してさらに過剰であってもよい。
上述のように調製されたナトリウムアルコキシドのアルコール溶液に、グルコサミン塩酸塩を添加した後、2〜8分程度、より好ましくは4〜5分程度、スリーワンモーター等の周知の方法により強攪拌する。その場合には、溶液中に塩、すなわち、グルコサミン塩酸塩の塩素と、ナトリウムアルコキシドのナトリウムとが反応し生成した塩化ナトリウムが、生じる。そして、塩である塩化ナトリウムをろ過することにより除去する。さらに、当該塩化ナトリウムに付着した残留物を取除くために冷アルコール溶液で数回洗浄する。また、このようにして得られる第1のアルコール溶液中にはグルコサミンが遊離状態で存在している。
〔第2のアルコール溶液調製工程〕
第2のアルコール溶液は有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる。そして、既述の有機酸をアルコール溶液に溶解させる際には、アルコール溶液の温度を0℃、若しくは、室温、さらにはその他の温度に調整して使用してもよい。また、アルコール溶液に溶解させる有機酸の量は、第1のアルコール溶液中のグルコサミンに対して1.0〜3.0倍当量であることが好ましいが、これらよりも、少量、若しくは、過剰であってもよい。また、既述の通り、有機酸をアルコール溶液に溶解させた第2のアルコール溶液の代わりに液体、若しくは、粉末の有機酸をそのまま使用する場合には、本工程を省略することも可能である。
〔反応工程〕
第1のアルコール溶液に第2のアルコール溶液、若しくは、有機酸を添加し、第1のアルコール溶液中の遊離状態のグルコサミンと、第2のアルコール溶液中の有機酸、若しくは、前記有機酸とを反応させる。この際には、第1のアルコール溶液中のグルコサミンと、第2のアルコール溶液中の有機酸、若しくは、前記有機酸とを均一に反応させるため、第1のアルコール溶液は、周知の方法で攪拌されていることが好ましい。そして、第2のアルコール溶液、若しくは、前記有機酸の第1のアルコール溶液への添加が終了した後も、4〜48時間程度、より好ましくは12〜36時間程度、さらに好ましくは24時間程度、第1のアルコール溶液と、第2のアルコール溶液、若しくは、前記有機酸とを混合反応させた混合溶液を、さらに均一に反応させるため室温下で攪拌し続ける。
また、反応工程において、第1のアルコール溶液と、第2のアルコール溶液、若しくは、前記有機酸とを混合反応させた混合溶液は、攪拌終了後には、生成したグルコサミン有機酸塩が混合溶液に溶解する等して、当該グルコサミン有機酸塩の沈殿が生じない場合がある。その場合には、混合溶液を4〜48時間程度、より好ましくは12〜36時間程度、さらに好ましくは24時間程度、4℃程度の冷蔵庫等で静置する。これにより、グルコサミン有機酸塩が析出するのである。また、反応工程において、第1のアルコール溶液と、第2のアルコール溶液、若しくは、前記有機酸とを混合反応させた混合溶液中にすでにグルコサミン有機酸塩の結晶が析出している場合には、静置する工程を省くことも可能であるが、前述のように冷蔵庫等で静置させることで、若しくは、室温で静置させることで、グルコサミン有機酸塩の収率を向上させることができる。
また、本実施形態においては、第1のアルコール溶液に、第2のアルコール溶液、若しくは、有機酸を添加しているが、第2のアルコール溶液、若しくは、有機酸に、第1のアルコール溶液を添加してもよい。すなわち、第1のアルコール溶液と、第2のアルコール溶液、若しくは、有機酸とを混合させ、遊離状態のグルコサミンと有機酸とを反応させればよいのである。
〔後処理工程〕
反応工程において混合溶液中に析出したグルコサミン有機酸塩をろ過し、当該グルコサミン有機酸塩に付着した残留物を取除くために冷アルコール溶液で数回洗浄する。その後グルコサミン有機酸塩を温風、若しくは、真空乾燥等の周知の方法により乾燥させ、白色の粉末状を得ることができる。また、前述のように粉末状でなくとも、使用する有機酸によってはエマルジョンの状態で有機酸塩を得ることができる。
上述のように製造されるグルコサミン有機酸塩の実施例について以下に示す。尚、以下の実施例においては、断りのない限りすべての工程において常温常圧下で行われるものとする。
〔第1のアルコール溶液の調製工程〕
2.8%のナトリウムメトキシドのメタノール溶液50mlにグルコサミン塩酸塩11gを添加し、およそ4〜5分間、常温下で強攪拌する。この際には、ナトリウムメトキシドのナトリウムと、グルコサミン塩酸塩の塩素とが反応し、塩化ナトリウムの沈殿を生じる。そのため、塩である塩化ナトリウムをろ過すると共に、該塩化ナトリウムを10mlの冷メタノールで2回洗浄する。以上のようにして第1のアルコール溶液としてのグルコサミンメタノール溶液を得る。また、第1のアルコール溶液中においては、グルコサミンは遊離状態で存在している。また、これらの量は、所望する有機酸塩の量に応じて適宜変更することが可能である。
〔第2のアルコール溶液の調製工程〕
第1のアルコール溶液に含有するグルコサミンと等モル、若しくは、2〜3倍等量の有機酸として脂肪酸であるデカン酸を0℃、若しくは、常温下で溶解させる。
〔反応工程〕
攪拌状態の第1のアルコール溶液に第2のアルコール溶液を添加する。そして、第2のアルコール溶液の添加後も、24時間程度攪拌し続け、第1のアルコール溶液中の遊離状態のグルコサミンと、第2のアルコール溶液中のデカン酸とを反応させる。
そして、反応工程において調製された第1のアルコール溶液と、第2のアルコール溶液とを攪拌しながら混合反応させた混合溶液において、その攪拌終了後にグルコサミンデカン酸塩の塩は生じていない。そのため、前記混合溶液を、冷蔵庫内、すなわち、4℃程度の暗所で24時間程度静置させる。これにより、メタノール溶液内に白色結晶状のグルコサミンデカン酸塩の塩を得ることができる。
〔後処理工程〕
前記混合溶液中で得られたグルコサミンデカン酸塩をろ過し、該グルコサミンデカン酸塩に付着した残留物を除去するために、メタノール溶液で洗浄し、その後乾燥させることで、下記の構造式(V)に示す構造を有する白色の粉末状のグルコサミンデカン酸塩を得ることができる。
Figure 2009023923
実施例2においては、第2のアルコール溶液に溶解させる有機酸として脂肪酸であるラウリン酸を、第1のアルコール溶液中のグルコサミンと等モル使用したこと以外は、実施例1と同様である。この場合にも、下記の構造式(VI)に示す構造を有する白色の粉末状のグルコサミンラウリン酸塩を得ることができる。
Figure 2009023923
実施例3においては、第2のアルコール溶液に溶解させる有機酸として不飽和脂肪酸であるオレイン酸を、第1のアルコール溶液中のグルコサミンと等モル使用した以外は、実施例1と同様である。この場合にも、下記の構造式(VII)に示す構造を有する白色の粉末状のグルコサミンオレイン酸塩を得ることができる。
Figure 2009023923
実施例4においては、実施例3と同様に有機酸としてオレイン酸を使用しているが、第2のアルコール溶液の調製工程を省略し、オレイン酸をメタノール溶液に溶解させた第2のアルコール溶液の代わりにオレイン酸をそのまま使用した以外は実施例3と同様である。この場合にも上記の構造式(VII)に示す構造を有する白色の粉末状のグルコサミンオレイン酸塩を得ることができる。
以上のような実施例1〜4はグルコサミン有機酸塩の一例であり、その他にも有機酸としてウロン酸であるグルクロン酸や、芳香族カルボン酸であるフェルラ酸、その他のジカルボン酸やトリカルボン酸を使用しても、グルコサミン有機酸塩を得ることができ、用途や、親水性、疎水性のバランスに応じて、これらの有機酸を適宜変更することができる。このようにすることで、グルコサミン単体の生理活性、及び有機酸の生理活性も期待でき、また、水、及び油の両方に対する親和性を高くすることができ、大掛かりな設備を必要とせず、温和な条件で簡便にグルコサミン有機酸塩を製造することができる。
また、既述の実施例において、グルコサミン塩酸塩を、キトサンオリゴ糖塩酸塩とすることで、下記の構造式(VIII)に示す構造を有するエマルジョン状態、若しくは、粉末状のキトサンオリゴ糖有機酸塩を得ることができる。
Figure 2009023923
また、既述の実施例において、グルコサミン塩酸塩を、ヘテロオリゴ糖とすることで、下記の構造式(IX)に示す構造を有するエマルジョン状態、若しくは、粉末状のヘテロオリゴ糖有機酸塩を得ることができる。
Figure 2009023923
さらに、既述のようにして得られたグルコサミン、キトサンオリゴ糖、ヘテロオリゴ糖の有機酸塩は、両親媒性を有するため、例えばグリコールや、ポリエチレングリコール、若しくは、乳酸等から構成される化粧料の基礎溶液、若しくは、ワックス状の担体等に容易に相溶させることができる。また、前記基礎溶液に溶解させ、長期間保存しておくと、該基礎溶液中における例えば遊離状態のグルコサミン等が分解等することで変色の可能性があるため、該基礎溶液に上述の有機酸塩を溶解させた直後に使用することが好ましい。すなわち、例えば手の平の上に粉末状のグルコサミン有機酸塩を適量のせ、その後基礎溶液を滴下することで、該基礎溶液にグルコサミン塩酸塩を溶解させる。こうして手の平の上で、基礎溶液とグルコサミン有機酸塩とから化粧料を調製して使用するのである。このようにすることで、基礎溶液中の遊離状態のグルコサミンは分解することなく、さらに、両親媒性のグルコサミン有機酸塩は、皮脂に馴染みやすいため容易に皮下に浸透し、ヒアルロン酸の生産を促進する等して、肌の保湿や老化防止等の効果をより発揮することが期待できる。
また、既述のようにして得られたグルコサミン、キトサンオリゴ糖、ヘテロオリゴ糖の有機酸塩は、両親媒性を有するため、例えばオリーブオイルや、その他の油を含有した食品とも容易に相溶させることができ、ドレッシング等に使用することができる。また、それ以外にも、機能性食品として、水やお茶等共に摂取してもよい。そして、予め食品に添加する、若しくは、後から食品に添加することができ、グルコサミンの体内からの摂取に適している。
本発明に係る有機酸塩の製造方法は、グルコサミン、キトサンオリゴ糖、ヘテロオリゴ糖だけでなく、その他にも、オリゴ糖等の糖の誘導体にも使用することができる。

Claims (8)

  1. アルコキシドのアルコール溶液にグルコサミン塩酸塩、又はグルコサミン硫酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のグルコサミンを含有する第1のアルコール溶液に、
    有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液を添加することで前記遊離状態のグルコサミンと前記有機酸とを反応させることを特徴とする有機酸塩の製造方法。
  2. アルコキシドのアルコール溶液に、β−1,4結合されたグルコサミン残基から成るキトサンオリゴ糖の塩酸塩であるキトサンオリゴ糖塩酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のキトサンオリゴ糖を含有する第1のアルコール溶液に、
    有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液を添加することで前記遊離状態のキトサンオリゴ糖と前記有機酸とを反応させることを特徴とする有機酸塩の製造方法。
  3. アルコキシドのアルコール溶液に、ランダムにβ−1,4結合されたN−アセチルグルコサミン残基とグルコサミン残基とから成るヘテロオリゴ糖の塩酸塩であるヘテロオリゴ糖塩酸塩を添加し、生成する塩を除去して得られる遊離状態のへテロオリゴ糖を含有する第1のアルコール溶液に、
    有機酸をアルコール溶液に溶解させて得られる第2のアルコール溶液を添加することで前記遊離状態のへテロオリゴ糖と前記有機酸とを反応させることを特徴とする有機酸塩の製造方法。
  4. 請求項1乃至3記載の有機酸塩の製造方法において、前記第2のアルコール溶液を、有機酸としたことを特徴とする有機酸塩の製造方法。
  5. 前記有機酸が、脂肪酸であることを特徴とする請求項1乃至4記載の有機酸塩の製造方法。
  6. 前記第1のアルコール溶液に前記第2のアルコール溶液を添加した後に、
    さらに、室温以下で静置すること特徴とする請求項1乃至5記載の有機酸塩の製造方法。
  7. 請求項1乃至6記載の有機酸塩の製造方法により製造されてなる有機酸塩を含有することを特徴とする化粧料。
  8. 請求項1乃至6記載の有機酸塩の製造方法により製造されてなる有機酸塩を含有することを特徴とする食品。
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