JP2009023769A - スタッカクレーンの制振制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易な方法で確実にマストの揺動を低減するようにしたスタッカクレーンの制振制御方法を提供すること。
【解決手段】2値の加速度の切替によりスタッカクレーンのマスト揺動の固有周波数成分を加振減となる速度と加速度から除去した運転パターンによりスタッカクレーンの振動を抑制するようにする。特に、運転パターンからマスト揺動の固有周波数の3次高調波成分を速度指令値の移動平均により除去し、振動を抑制することにより、簡易な方法でスタッカクレーン本体だけでなく、それに付設の昇降体や移載機等の機械的な余分な振動をも抑制する。
【選択図】図1

Description

本発明は、スタッカクレーンの制振制御方法に関し、特に、インバータあるいはサーボモータで走行軸の駆動制御を行うようにした自動倉庫あるいはクリーンルーム内で稼動する液晶カセット搬送用のスタッカクレーンで、マスト上部に機械的な制振装置を用いることなく、マストの揺動を確実に低減するようにしたスタッカクレーンの制振制御方法に関するものである。
従来、天井クレーンの振止めに関しては、特許文献1〜3に示すような速度パターンでクレーンの振れを止める技術が公開されている。
特許文献1(特開平6−255984号公報)は、制振パターンの計算方法において、加速側と減速側が非対称になっている。
特許文献2(特開2000−153989号公報)は、加速度が2値の速度パターンであるが、絶対値が同じで極性の異なる加速度を使用している。このため、最短時間の加減速時間で移動可能な速度パターンになるが、加速度と速度の周波数に着目した場合、振動の固有周波数よりも高い周波数成分を多く含み、高次の振動やクレーンの吊具(トング)の振動を誘発しやすい。
特許文献3(特開2005−67747号公報)は、振動を誘起しないようなフィードフォワードの制御入力をデジタル処理によるノッチフィルタで実現しているので、制御が複雑となる。
ところで、天井クレーンは、荷の振れを単振子の運動として捉え、スタッカクレーンは梁の振動として振動を捉えるが、走行の加速度により固有の振動数で振動を起こす点では本質的に同様な物理現象である。しかしながら天井クレーンの技術をスタッカクレーンに転用するには以下の理由により不都合が生じる。
(1)スタッカクレーンのマスト揺動の固有振動数は天井走行の振動数に比較して振動数は1Hz近傍の値と非常に高く、動作も短時間の加減速を繰り返すため、走行駆動の速度、加速度に含まれる周波数成分が広範囲にわたり、固有周波数以外の高次の周波数でも振動を起こしやすくなる。
(2)制御装置に汎用のPLC(シーケンサ)とサーボモータあるいはインバータ駆動の誘導電動機で駆動することが多く、据付調整にかかる時間が長くなる。このため、据付調整時間を短縮し、短期間で装置を稼動させるために、これらの汎用制御装置で制御が行いやすく、調整が容易に行える簡便な制御方法が望まれている。
また、スタッカクレーンのマストの揺動を低減する方法として、特許文献4(特開2005−212919号公報)に示すものが提案されている。
この方法は、スタッカクレーンのマストの揺動を低減するため、マストの上部にも走行方向の駆動力を発生するモータを取り付けて、マスト下部の走行駆動を行う下部駆動モータの速度指令を上部駆動モータにも与え、マストの上部と下部で速度差が生じた場合に速度差に比例したトルクを発生しマストの揺動を抑制する上部の駆動機構とその機構を制御する制御装置を具備するようにしている。
ところで、この方法ではマストの上部に上部駆動装置及びその制御装置を要するとともに、スタッカクレーン本体の軽量化に限度があり、またクリーンルーム内の搬送においては、該上部駆動により塵挨が発生し、該塵挨がクリーンルームの上部から気流を下に流すダウンフローにより搬送物を汚染させるという問題があった。
また、発生塵挨による汚染から搬送物を防ぐための対策、例えば、FFU(ファンフィルタユニット)等の清浄装置の取り付けなどにコストがかかるという問題もあった。
特開平6−255984号公報 特開2000−153989号公報 特開2005−67747号公報 特開2005−212919号公報
本発明は、スタッカクレーンの制振制御方法の有する問題点に鑑み、インバータあるいはサーボモータで走行軸の駆動制御を行う自動倉庫、あるいはクリーンルーム内で稼動する、特に限定されるものではないが、例えば、液晶カセット搬送用のスタッカクレーンにおいて、簡易な方法で確実にマストの揺動を低減するようにしたスタッカクレーンの制振制御方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のスタッカクレーンの制振制御方法は、2値の加速度の切替によりスタッカクレーンのマスト揺動の固有周波数成分を加振減となる速度と加速度から除去した運転パターンによりスタッカクレーンの振動を抑制するようにしたことを特徴とする。
この場合において、請求項1における運転パターンから、マスト揺動の固有周波数の3次高調波成分を速度指令値の移動平均により除去し、振動を抑制するようにすることができる。
また、請求項1におけるモータのトルク指令値からマスト揺動の固有周波数の3次高調波成分を速度指令値の移動平均により除去し、振動を抑制するようにすることができる。
本発明のスタッカクレーンの制振制御方法によれば、2値の加速度の切替によりスタッカクレーンのマスト揺動の固有周波数成分を加振減となる速度と加速度から除去した運転パターンによりスタッカクレーンの振動を抑制するようにしたことにより、スタッカクレーンのマストの上部に駆動機構やその機構を制御する制御装置、さらにはFFU等の清浄装置を設けることなく、スタッカクレーン下部の駆動装置の制御のみでマストの揺動を確実に、かつ簡易な方法で低減することができ、メンテナンスも簡易に行うことができる。
また、運転パターンからマスト揺動の固有周波数の3次高調波成分を速度指令値の移動平均により除去し、振動を抑制することにより、簡易な方法でスタッカクレーン本体だけでなく、それに付設の昇降体や移載機等の機械的な余分な振動をも抑制することができ、より高精度の滑らかな制振を行うことができる。
また、モータのトルク指令値からマスト揺動の固有周波数の3次高調波成分を速度指令値の移動平均により除去し、振動を抑制することにより、簡易な方法でスタッカクレーン本体だけでなく、それに付設の昇降体や移載機等の機械的な余分な振動をも抑制することができ、より高精度の滑らかな制振を行うことができる。
以下、本発明のスタッカクレーンの制振制御方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜図6に、本発明のスタッカクレーンの制振制御方法の一実施例を示す。
本発明の制御構成の制御ブロック図を示す図1に基づいて説明する。なお、本発明に関係する走行制御に関してのみ説明し、直接関係のない荷の移載関係については言及しないものとする。
図1において、まず、スタッカクレーンの移動に関係する動作指令と現在のスタッカクレーンの状態から移動距離と加速できる最大の速度を決定する。また、移動条件として搬送物に許容される加速度あるいは機械的条件から加速できる加速度、機械の定格速度を制約条件として移動できる速度を決定する。
速度パターンを、特に限定されるものではないが、例えば、図2に示すように、台形状とし、加速と減速を対称になるように速度を決定する。その他の制約条件として、加速終了後の等速時間を条件設定された値を限度として指定時間以上の等速移動時間が得られない場合には加速する限界の最大速度を下げ、等速時間を確保し、後述する速度パターンの変形に対応するようにする。なお、この場合、サーボコントローラには位置指令を与え位置を制御するようにする。
なお、汎用されているサーボコントローラでは、位置の指令をパルス列で与え、パルスの数が移動距離に比例し、パルスの発生間隔がモータの回転数に比例する、コントローラと、サーボコントローラに移動距離データを通信により数値データとして与え、サーボコントローラの内部で移動距離データから速度パターンに展開するタイプと、アナログの電圧指令により速度指令を行うタイプ等があるが、インターフェースの相違や速度パターンを展開する制御装置がサーボの内部か外部化の相違は、本発明と本質的な相違はないが、本発明では通信により移動指令をサーボコントローラに与え、サーボコントローラ内部で速度パターンを展開する構成で説明する。
制御装置は、動作中に加速度を切り替える時刻に達したら動作条件の変更をサーボコントローラに指示する。このサーボコントローラは位置制御ループ、速度制御ループ、図では省略しているトルク制御ループの多重フィードバック系でサーボモータ軸の設けたエンコーダ信号により速度と位置を帰還し、サーボモータの速度制御と位置制御を行い、指令された位置までスタッカクレーンを走行するようにする。
サーボコントローラの位置指令と速度指令の間のフィルタ処理としては、特に限定されるものではないが、例えば、S字加減速機能、振動抑制フィルタにて行う。
図2に速度と加速度の関係を示す。該図において、指定の移動距離を走行する台形の速度パターンに対し、マスト揺動の固有周期をTとし、起動から固有周期の1/6の時間経過後に等速に遷移し、その状態を固有周期の1/6だけ維持し、再度、加速に移るようにし、また加速の終了時点の手前でも固有周期の1/6の等速時間と、固有周期の1/6の加速時間を設け、加速を終了するようにする。
このような加速を行うと、加速時の加速度と速度にはマスト揺動の固有周波数を含まない速度パターンを得ることができる。このため、初期条件としてマストの揺動がない状態でスタートしたスタッカクレーンは、加速終了時点でも振れを起こさない運転が可能になる。この加速ではマスト揺動の固有周期の1/6の等速時間が台形加速に対して動作時間が長くなる。また、減速側も加速と対称に、固有周期の1/6で減速開始と停止前に等速領域を設けるようにする。
このような速度パターンを展開すると、加速度が加速領域では正の値とゼロの2値を、減速領域では加速領域と絶対値が同じで極性が負に反転した値とゼロの2値をとる。
速度の切り替え点は、マスト揺動の固有周期に対してタイマで時刻管理をすることで決定でき、処理としては、スタッカクレーンの移動している速度を、切り替え点で、目標速度を速度パターン展開で得られた上限速度と現在速度のいずれかを選択的に再設定することで、2値の加速度を切り替えることができる。
本実施例では、特に限定されるものではないが、固有周期がT=1.43s、即ち固有周波数がf=0、7Hz、ω=2πf=4.4rad/sとして説明している。
スタッカクレーンでは、昇降体は昇降体と搬送物の合計質量と釣り合うカウンタウエイトを装備するようにしているが、昇降体の上下方向の位置が変わってもマスト揺動の固有振動数が大きく変わらない。このような場合には昇降位置に関係なく単一の固有振動数に対して制振パターンを展開することができる。
一方、カウンタウエイトを装備しない場合やカウンタウエイトを装備していても、昇降体質量に対して搬送物の質量が大きい場合、不完全な釣り合い状態になり昇降体の位置によっては固有振動数が変化する場合がある。この場合、加速領域と減速領域での固有振動数に対して制振パターンを展開するようにする。
スタッカクレーンに移動指示がなされた後の処理の、動作のフローチャートを図3に示す。速度パターン展開を行い、マストの固有周期から速度変更を行う時刻を決定する。次にサーボコントローラに必要な動作パラメータの設定を行い、全ての動作パラメータを設定した後にサーボに起動を指令し移動開始する。
移動開始後は速度の変更時刻に時刻が到達するのを待って目標速度を更新する。速度変更時刻に達したかを知る方法としては周期的に時刻を監視する方法や、イベント発生タイマを設定し、イベント発生を待つ手法などがあり、制御を実装する制御装置に適した方法で時間監視を行う。
目標位置に到着すれば、停止処理を行う。この一連の走行移動はスタッカクレーンの移動、搬送の中で適宜行う。
図2に示す速度と加速度のパターンは時間的に不連続であり、不連続点で加速度が急変することで、その周波数は非常に幅の広い周波数帯域を含むことになり、マスト揺動の固有周波数の成分は小さいが、それよりも高い周波数の加速度成分を含み、これが加振の信号源となって振動を発生するものとなる。
図5(a)に速度パターンを示す。速度3m/秒まで5秒で加速する台形の加減速を行う場合と、固有周期の1/6の時間で速度変更を行う制振運転の場合のスタッカクレーンの速度を示す。
図5(b)に制振運転を行った系の台形速度パターンに対するスタッカクレーンの伝達関数の振幅線図を示す。振幅線図の(ア)の点はマスト揺動の固有振動周波数を示し、固有振動周波数よりも周波数の低い領域での差は少ないが、この(ア)の固有振動周波数よりも高い周波数領域では振幅が増加する、振動を起こしやすい、不安定な系であることを示している。
次にこの系の持っている不安定要因を解消するフィルタ処理について説明する。図1のフィルタ処理は時々刻々と変化する位置指令に対してのフィルタ処理として移動平均を例に説明する。移動平均の角周波数ωに対する伝達関数H(ω)は、式1で示される。該式において、Mは移動平均をとるデータの数、Tはサンプリング間隔を示す。
Figure 2009023769
この式1は、移動平均をとるデータ数が多いほうが減衰が大きく、最大の減衰が得られる角周波数は周期的に発生することを示している。また減衰がほとんど得られない角周波数の周期的に発生する。
スタッカクレーンではマストの固有振動数以外に3次の振動が発生しやすい。更に高次の5次、7次あるいはそれ以上の振動は振動の減衰が大きく、また走行駆動を行うサーボ系が追従できないこともあり、固有周期、3次、5次の振動を抑制することが望ましい。
最初の最大減衰の得られる周波数をマスト揺動の固有振動数の3倍に設定することで、基本となる固有振動数と3次振動数の周波数成分、更に高次の周波数成分も効果的に減衰することができる。
図6(a)に制振パターンと移動平均のフィルタ処理を併用した場合のスタッカクレーンの走行速度と台形加減速の速度を比較した速度線図を示す。図6(b)にはその場合の台形の速度指令に対する速度伝達関数の振幅線図を示す。図6(a)における(イ)の点がマスト揺動の固有振動を示す。この値は図5(b)における(ア)の点と同じ周波数となっているのは制振パターンによるものである。
一方、図6(a)における(ウ)の周波数は移動平均により図6(a)における(イ)の周波数の3倍の周波数に選んだ点を示し、(イ)と(ウ)で減衰し、(ウ)よりも高い周波数でも減衰する。図6(a)における(エ)は移動平均による効果とサーボ系が応答できないため、図5(b)でもある程度減衰していたものが、移動平均により5次の高調波振動の周波数近傍での減衰が大きくなっている。このようにマスト揺動の原因となる周波数の成分を速度指令の値を加減速中に操作することと、汎用サーボコントローラが装備している付加機能のS字加速、制振機能等のフィルタ機能を併用する簡便な方法でマストの揺動を起こしにくくする制振制御を実現することができる。
本実施例ではフィルタ処理は移動平均を例にとって説明したがこれに限定するものではない。
移動平均はFIRフィルタ(Finite Impulse Response filter)の一種類でそれ以外のデジタルフィルタでも最大減衰点の周波数が固有振動の3倍の周波数に設定できればその種類を問わない。
また、汎用サーボコントローラは速度指令や位置指令に対するフィルタ機能を装備していたい場合でも、トルク指定に対してのノッチフィルタで特定周波数の振動成分を駆動トルクから減衰させる機能を図4に示すような構成で装備することもできる。このノッチフィルタで固有振動数の3倍の周波数を減衰することで、図1の構成と同様な効果を得ることもできる。
また本発明の方法はスタッカクレーンだけでなく、天井クレーンやジブクレーン等の吊荷の制振制御に対しても有効である。
以上、本発明のスタッカクレーンの制振制御方法について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
本発明のスタッカクレーンの制振制御方法は、発塵を抑制してマストの揺動を低減するという特性を有していることから、クリーンルーム内で稼動するスタッカクレーンの用途に好適に用いることができるほか、例えば、天井クレーンやジブクレーン等の吊荷の制振制御の用途にも用いることができる。
本発明のスタッカクレーンの制振制御方法の一実施例を示す制御のブロック説明図である。 速度と加速度のパターン図である。 動作のフローチャート図である。 ノッチフィルタのブロック説明図である。 制振パターンを示し、(a)は台形の加減速を行う場合と固有周期で速度変更を行う制振運転の場合のスタッカクレーンの速度線図、(b)は制振運転を行った系の台形速度パターンに対するスタッカクレーンの伝達関数の振幅線図である。 制振パターンと移動平均のフィルタ処理を併用した場合のグラフを示し、(a)はスタッカクレーンの走行速度と台形加減速の速度を比較した速度線図、(b)はその台形の速度指令に対する速度伝達関数の振幅線図である。

Claims (3)

  1. 2値の加速度の切替によりスタッカクレーンのマスト揺動の固有周波数成分を加振減となる速度と加速度から除去した運転パターンによりスタッカクレーンの振動を抑制するようにしたことを特徴とするスタッカクレーンの制振制御方法。
  2. 請求項1における運転パターンから、マスト揺動の固有周波数の3次高調波成分を速度指令値の移動平均により除去し、振動を抑制するようにしたことを特徴とするスタッカクレーンの制振制御方法。
  3. 請求項1におけるモータのトルク指令値からマスト揺動の固有周波数の3次高調波成分を速度指令値の移動平均により除去し、振動を抑制するようにしたことを特徴とするスタッカクレーンの制振制御方法。
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