しかしながら、例えば特許文献1に開示された技術のように光学異方性素子を傾けて配置する場合、光学異方性素子を配置するための空間を確保する必要がある。このため、液晶装置自体或いは液晶装置を備えたプロジェクタの小型化が困難であり、且つレイアウトの自由度が阻害されてしまうという技術的問題点がある。
更に、液晶分子の配向方向に応じて、光学異方性素子を傾斜させているので、配向方向によっては、光学異方性素子を傾斜させる機構が複雑になったり、組立工程において追加的な調整が必要になったりする可能性があるという技術的問題点がある。
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、例えば、コントラストの比較的高い高品位な画像を表示可能であり、且つ小型化に適した液晶装置、及びそのような液晶装置を具備してなる電子機器を提供することを課題とする。
本発明の液晶装置は上記課題を解決するために、互いに対向して配置されると共に、配向膜を夫々有する一対の基板と、前記一対の基板間に挟持されており、前記配向膜によってプレチルトが付与された液晶分子からなる液晶と、前記一対の基板を挟み込むように配置された一対の偏光板と、前記一対の偏光板間に配置されており、正の一軸性を有すると共に光軸として、前記一対の基板に沿った一の平面に対して、前記プレチルトが付与された液晶分子の長軸が傾斜する方向と異なる方向に傾斜した第1光軸を有する第1光学補償素子と、前記一対の偏光板間に配置されており、前記一の平面の法線に沿った方向から見たときに遅相軸を有し、且つ前記一の平面の法線に沿った軸を中心として回転可能に構成された第2光学補償素子とを備える。
本発明の液晶装置によれば、一対の基板は、互いに対向して配置され、該一対の基板間には液晶が挟持される。液晶は、典型的には、垂直配向型の液晶、即ちVA(Vertical Alignment)型液晶である。一対の基板の各々には、配向膜が設けられている。配向膜は、液晶を構成する液晶分子に対して、所定方位に所定角度だけ立ち上がるプレチルトを付与する。例えば液晶がVA型液晶の場合、液晶分子は、一対の基板に沿った一の平面の法線に対して所定方位にプレチルト角だけ傾いて配向する。例えば液晶がTN(Twisted Nematic)型の液晶の場合、液晶分子は、一対の基板に沿った一の平面に対して所定方位にプレチルト角だけ傾いて配向する。このような配向膜は、典型的には、所定方位にラビングが施された有機配向膜である。或いは、配向膜は、無機配向膜であってもよい。液晶が挟持された一対の基板は、一対の偏光板の間に挟み込まれるように配置される。当該液晶装置の動作時には、当該液晶装置に投射光等の光が入射され、当該液晶装置は、液晶ライトバルブとして機能する。
本発明では特に、第1及び第2光学補償素子を備える。第1及び第2光学補償素子の各々は、一対の偏光板間に配置される。より具体的には、一対の偏光板のうち一方の偏光板と一対の基板との間、或いは、一対の偏光板のうち他方の偏光板と一対の基板との間に配置される。言い換えれば、一対の偏光板間であって、一対の基板における光が入射される側或いは光が出射される側に設けられる。第1光学補償素子は、正の一軸性を有しており、例えば、正の一軸性結晶を含んでなる。第1光学補償素子の光軸(即ち光学軸)である第1光軸は、一対の基板に沿った一の平面に対して、プレチルトが付与された液晶分子の長軸が傾斜する方向と異なる方向に傾斜している。即ち、第1光軸が一対の基板に沿った一の平面に対して傾斜する方向と、液晶装置の非動作時における配向膜に接する個所での液晶分子の長軸が一対の基板に沿った一の平面に対して傾斜する方向とは、互いに異なっている。例えば液晶がVA型液晶である場合、第1光軸は、典型的には、一対の基板に沿った一の平面について、プレチルトが付与された液晶分子の長軸と対称な方向に沿っている。第2光学補償素子は、一対の基板に沿った一の平面の法線に沿った方向から見たときに遅相軸を有しており、例えば、正の一軸性の位相差板(即ち、Aプレート)や二軸プレートからなる。第2光学補償素子は、当該第2光学補償素子の遅相軸が一対の基板に沿うように、該一対の基板に対向配置され、更に、一対の基板に沿った一の平面の法線に沿った軸を中心として回転可能に構成されている。よって、例えば、第2光学補償素子は、液晶、第1光学補償素子によって生ずる光の位相差を打ち消すように、或いは、光の偏光状態を微調整できるように回転調整されることが可能である。
従って、例えば液晶ライトバルブとして機能する当該液晶装置の動作時に、入射された光が、一対の基板に対して傾斜した液晶分子からなる液晶を通過することで発生する光の位相差を、第1及び第2光学補償素子によって補償することができる。つまり、先ず、プレチルトが付与された液晶分子からなる液晶に対して、該液晶分子の長軸が傾斜する方向と異なる方向に傾斜した第1光軸を有する第1光学補償素子が配置されることで、液晶及び第1光学補償素子の全体の屈折率異方性を示す屈折率楕円体は、二軸性の屈折率楕円体に近似される。このため、第1光学補償素子によって、プレチルトが付与された液晶分子の長軸が一対の基板に沿った一の平面の法線に対して傾斜していることに起因して生じる位相差を補償することができる。更に、液晶及び第1光学補償素子に対して、前記一の平面に沿った遅相軸を有し且つ該一の平面の法線に沿った軸を中心として回転可能に構成された第2光学補償素子が配置される。第2光学補償素子が、例えば、液晶及び第1光学補償素子によって生ずる光の位相差を打ち消すように、回転調整されることで、液晶、第1及び第2光学補償素子の全体の屈折率異方性を小さくすることができる。また、第2光学補償素子は、光の偏光状態を微調整する機能も兼ねている。
このような補償を行うことで、液晶を通過した光が出射側の偏光板に対し、位相がずれた状態で入射するのを防止することができる。よって、例えば出射側の偏光板において、本来通過させないはずの光が漏れる可能性は小さくなり、コントラストの低下や視野角の縮小を防止することができる。
更に、第1及び第2光学補償素子は、一対の基板に対して傾斜して配置されることなく、液晶で生じる光の位相差を補償することができる。よって、当該液晶装置等の小型化に適することができる。
尚、第1及び第2光学補償素子の各々は、一対の基板に対して光が入射する側(言い換えば、液晶に対して光が入射する側)に設けられてもよいし、一対の基板から光が出射する側に設けられてもよい。
尚、VA型液晶に限らず、第1光学補償素子の第1光軸と第2光学補償素子の遅相軸との関係を適切に設定することによって、TN型液晶やOCB(Optically Compensated Birefringence)型液晶等であっても効果的に補償を行うことができる。
以上説明したように、本発明の液晶装置によれば、第1及び第2光学補償素子によって、液晶で生じる位相差を補償できる。よって、コントラストの比較的高い高品位な画像を表示可能であり、且つ小型化に適することができる。
本発明の液晶装置の一態様では、前記第2光学補償素子は、正の一軸性を有すると共に光軸として、前記一の平面に沿った第2光軸を有する。
この態様によれば、第2光学補償素子は、当該第2光学補償素子の第2光軸が一対の基板に沿うように、該一対の基板に対向配置される。更に、一対の基板に沿った一の平面の法線に沿った軸を中心として回転可能に構成されている。よって、例えば、第2光学補償素子は、液晶及び第1光学補償素子によって生ずる光の位相差を打ち消すように、或いは、光の偏光状態を微調整できるように回転調整されることが可能である。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記第2光学補償素子は、前記液晶及び前記第1光学補償素子によって生ずる光の位相差を打ち消すように、回転調整されている。
この態様によれば、第2光学補償素子は、例えば当該液晶装置の外部に設けられた回転調整手段によって、液晶及び第1光学補償素子によって生ずる光の位相差を打ち消すように、回転調整されている。よって、液晶、第1及び第2光学補償素子の全体の屈折率異方性を、より一層小さくすることができる。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記第2光学補償素子は、前記遅相軸が前記一対の偏光板のうちいずれか一方の偏光板の透過軸に沿った状態から、前記一対の偏光板のうち前記一対の基板に対して光が入射する側に配置された偏光板から出射された光の偏光状態を調整するように、回転調整されている。
この態様によれば、先ず、第2光学補償素子は、当該第2光学補償素子の遅相軸が入射側或いは出射側の偏光板の透過軸に沿った状態とされ、続いて、第2光学補償素子は、例えば当該液晶装置の外部に設けられた回転調整手段によって、入射側の偏光板から出射された光の偏光状態を調整するように、回転調整されている。よって、第2光学補償素子によって、光の偏光状態が調整され、出射側の偏光板に対してより最適な偏光状態で光を入射させることができる。よって、より一層高品位な画像を表示することが可能となる。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記液晶は、垂直配向型の液晶である。
この態様によれば、液晶分子は垂直配向されており、一対の基板の各々に設けられた配向膜の両方が、液晶分子に付与するプレチルトは同じである。従って2枚の配向膜によってプレチルトが付与された液晶分子の長軸が該一の平面の法線に対して傾斜していることに起因して生じる光の位相差を、第1及び第2光学補償素子によって効果的に補償することができる。
上述した液晶が垂直配向型の液晶である態様では、前記第1光軸が前記一の平面の法線に対してなす角度は、前記プレチルトが付与された液晶分子の長軸が前記一の平面の法線に対してなす角度であるプレチルト角に等しいように構成してもよい。
この場合には、第1光軸が、一対の基板に沿った一の平面の法線に対して傾斜する角度(即ち、第1光軸と該法線とがなす角の大きさ)は、プレチルト角に等しいので、液晶分子の長軸が該一の平面の法線に対して傾斜していることに起因して生じる光の位相差を効果的に補償することができる。ここに「プレチルト角に等しい」とは、液晶分子の長軸が傾斜していることに起因して生じる光の位相差を、製品仕様上で許容される程度に補償するのに十分な範囲でプレチルト角に近ければよい趣旨であり、即ち、プレチルト角に文字通り等しい場合の他、プレチルト角に実質的に等しい場合を含む意味である。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記第1光学補償素子は、正の一軸性結晶を含んでなると共に光軸が一表面に対して傾斜するように研磨されることにより形成された結晶板からなる。
この態様によれば、第1光学補償素子を、比較的容易にして、一対の基板に沿った一の平面に対して傾斜した光軸を有する結晶板として構成することができる。よって、第1光学補償素子を該一の平面に対して傾斜させて配置する必要がなく、当該液晶装置の小型化を図ることが可能となる。ここに本発明に係る「一表面」とは、二つの主面を有する平板状の結晶板における、一方の主面を意味する。尚、正の一軸性結晶として水晶を用いる場合には、例えば、サファイア等を用いる場合に比べて安価であり、且つ結晶板の加工が容易である。よって、コストの削減を図ることが可能である。
光軸が一表面に対して傾斜する結晶板は、例えば、結晶を、該結晶の光軸に対して所定の角度だけ傾けて切断し、所定の厚さになるように研磨して形成すればよい。尚、一表面と反対側の面は、一表面と平行になるように研磨されていることが好ましい。
本発明の液晶装置の他の態様では、負の一軸性を有すると共に光軸として前記一の平面の法線方向に沿った第3光軸を有する第3光学補償素子を更に備える。
この態様によれば、第3光学補償素子は、例えば、負の一軸性の位相差板(即ち、Cプレート)からなり、その光軸である第3光軸が一対の基板に沿った一の平面の法線方向に沿うように、該一対の基板に対向配置される。よって、液晶を通過することで発生する光の位相差を、より確実に補償することができる。言い換えれば、第1、第2及び第3光学補償素子によって、一対の基板間に挟持された液晶、当該第1、第2及び第3光学補償素子の全体の屈折率の異方性を、より一層小さくすることができる。即ち、液晶、第1、第2及び第3光学補償素子の全体の屈折率の異方性を示す屈折率楕円体を球状に、より一層近づけることができる。従って、コントラストの低下や視野角の縮小を、より確実に防止することができる。
上述した第3光学補償素子を備える態様では、前記第3光学補償素子は、無機材料で構成されてもよい。
この場合には、第3光学補償素子は、例えば蒸着法等を用いて無機材料から形成される。よって、第3光学補償素子は、紫外線等による劣化が殆ど或いは全く起こらない。従って、第3光学補償素子の耐光性或いは耐久性を向上させることができ、表示画像における経時的な品質の劣化を低減或いは防止することができる。
上述した第3光学補償素子を備える態様では、前記一対の基板に対して光が入射する側に配置されたマイクロレンズアレイを更に備え、前記第3光学補償素子は、前記一対の基板に対して光が出射する側に設けられてもよい。
この場合には、第3光学補償素子をマイクロレンズアレイに対して光が出射する側に配置できるので、マイクロレンズアレイによって曲げられた光が、液晶を通過することで発生する位相差を第3光学補償素子によって確実に補償することができる。言い換えれば、マイクロレンズアレイによる光の位相ずれに対する悪影響を殆ど或いは完全に無くすことができる。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記第2光学補償素子は、前記一対の基板に対して光が入射する側に設けられる。
この態様によれば、当該液晶装置が、例えば、ライトバルブとしてプロジェクタ内に設けられる場合、他の部材と殆ど或いは全く接触することなく、第2光学補償素子を容易に回転調整することができる。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記第1及び第2光学補償素子は、前記一対の基板に対して光が出射する側に設けられる。
この態様によれば、第1及び第2光学補償素子を、例えば、マイクロレンズアレイに対して光が出射する側に配置できるので、マイクロレンズアレイによって曲げられた光が、液晶を通過することで発生する位相差を第1及び第2光学補償素子によって確実に補償することができる。言い換えれば、マイクロレンズアレイによる光の位相ずれに対する悪影響を殆ど或いは完全に無くすことができる。
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の液晶装置(但し、その各種態様を含む)を具備してなる。
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の液晶装置を具備してなるので、液晶層を通過する光に生じる位相差を補償することができ、高コントラストを実現することが可能である。この結果、高品質な画像表示を行うと共に小型化に適した、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、本発明の液晶装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係る液晶装置を構成する液晶パネルについて、図1及び図2を参照して説明する。本実施形態に係る液晶装置は、液晶プロジェクタ等の投写型表示装置のライトバルブに用いられる液晶装置である。ここに図1は、本実施形態に係る液晶パネルの構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´断面図である。尚、図1及び図2には、後に詳述する光学補償素子及び偏光板は配置されておらず、液晶パネルのみが示されている。
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置を構成する液晶パネル100では、本発明に係る「一対の基板」の一例としてのTFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
図1において、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。この一辺に沿ったシール領域よりも内側に、サンプリング回路7が額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿ったシール領域の内側に、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
TFTアレイ基板10上には、外部回路接続端子102と、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104、上下導通端子106等とを電気的に接続するための引回配線90が形成されている。
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFT(Thin Film Transistor)や走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成されている。画像表示領域10aには、画素スイッチング用TFTや走査線、データ線等の配線の上層に画素電極9aがマトリクス状に設けられている。画素電極9a上には、配向膜16が形成されている。他方、対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば遮光性金属膜等から形成されており、対向基板20上の画像表示領域10a内で、例えば格子状等にパターニングされている。そして、遮光膜23上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向してベタ状に形成されている。対向電極21上には配向膜22が形成されている。液晶層50は、誘電率異方性が負である液晶分子を含んで構成されている。従って、本実施形態に係る液晶装置は、垂直配向(VA)モードで液晶分子の配向が制御される液晶装置である。尚、本発明に係る液晶装置は、誘電率異方性が負である液晶分子を有する液晶装置に限定されるものではなく、例えば、一種又は数種のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜16及び22間で、所定の配向状態をとる液晶装置であってもよい。
ここでは図示しないが、対向基板20における液晶層50に対向する側とは反対側の面(即ち、入射光が入射される側の面)には、図3を参照して後述するマイクロレンズアレイ400が設けられている。
尚、ここでは図示しないが、TFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の他に、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路、検査用パターン等が形成されていてもよい。
次に、本実施形態に係る液晶装置が備える第1及び第2光学補償素子並びに偏光板について、図3から図6を参照して説明する。
先ず、第1及び第2光学補償素子並びに偏光板の配置位置について、図3を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る液晶装置の構成と入射光の入射方向とを示す、本実施形態に係る液晶装置の断面図である。尚、以降の図においては、図1及び図2で示した、液晶パネル100の詳細な部材については適宜省略し、直接関連のある部材のみを示す。また、図3は、説明の便宜上、図2に示したTFTアレイ基板10及び対向基板20を上下逆転させて図示している。
図3において、本実施形態に係る液晶装置は、液晶パネル100、マイクロレンズアレイ400、第1光学補償素子210、第2光学補償素子220、偏光板310及び320を備えている。液晶パネル100、マイクロレンズアレイ400、第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220は、偏光板310及び320間に挟み込まれるように配置されている。
マイクロレンズアレイ400は、液晶パネル100の各画素に対応するマイクロレンズが作り込まれたマイクロレンズアレイ板であり、入射側の偏光板310と液晶パネル100との間に設けられている。マイクロレンズアレイ400によって、入射光を画素単位で集光することができ、液晶パネル100における実質的な開口率を向上させることができる。即ち、マイクロレンズアレイ400によって、液晶パネル100における光の利用効率及び明るさや色純度を向上させることができる。
第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220は、出射側の偏光板320と液晶パネル100との間に設けられている。第1光学補償素子210は、TFTアレイ基板10に貼り付けられている。第2光学補償素子220は、第1光学補償素子210と出射側の偏光板320との間に、TFTアレイ基板10とは別に設けられた支持体によって支持されており、TFTアレイ基板10の基板面の法線に沿った軸を中心として回転可能に構成されている。尚、第1光学補償素子210は、TFTアレイ基板10とは別に支持体を設けて、その支持体と一体に構成されてもよい。
次に、第1及び第2光学補償素子並びに偏光板の構成について、図4及び図5を参照して説明する。ここに図4は、本実施形態に係る第1及び第2光学補償素子並びに偏光板の斜視図であり、図5は、本実施形態に係る第1光学補償素子の形成方法を示す概念図である。尚、図4では、第1及び第2光学補償素子並びに偏光板に加えて、電圧を印可されない状態での液晶パネル100における液晶分子の状態を概念的に示してある。また、図4では、説明の便宜上、角度α及び角度θ1を実際よりも大きくなるように図示している。
図4において、液晶層50における液晶分子501は、電圧を印可されない状態において、配向膜22及び16(図2参照)によって、対向基板20(或いはTFTアレイ基板10)の面内で所定方位(図4中、X方向に沿う方位である、配向膜22の界面付近の液晶のチルト方向20r(即ち配向膜16の界面付近の液晶のチルト方向10r)に沿う方位)に、該面内から所定角度だけ立ち上がるプレチルトを付与されており、対向基板20(或いはTFTアレイ基板10)の法線に対してプレチルト角αだけ傾斜して配向する。
偏光板310及び320の各々は、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)等からなる、光の偏光を規定する偏光膜と、該偏光膜の両面の各々に配置されたTAC(トリアセチルセルロース)等からなる保護層とを備えた偏光板である。偏光板310は、液晶パネル100に対して光が入射する側に、対向基板20に対向するように設けられており、偏光板320は、液晶パネル100に対して光が出射する側に、TFTアレイ基板10に対向するように設けられている。偏光板310及び320は、偏光板310の透過軸311と偏光板320の透過軸321とが互いに直交するようにクロスニコル配置されている。透過軸311及び321の各々は、配向膜22の界面付近の液晶のチルト方向20r(即ち配向膜16の界面付近の液晶のチルト方向10r)に対して、約45度ずれた方向に沿っている。液晶層50の液晶分子501は、上述したようにVAモードで配向が制御されるので、本実施形態に係る液晶装置は、液晶層50に電圧が印加されない状態において、画像表示領域10a(図1参照)に黒が表示されるノーマリーブラックモードで画像を表示する。
第1光学補償素子210は、例えば水晶等である正の一軸性結晶から形成された結晶板からなる。第1光学補償素子210の光軸211は、第1光学補償素子210の液晶パネル100に対向する面(即ち、XY平面)に対して、液晶分子501の長軸が傾斜する方向と異なる方向に傾斜している。即ち、例えばTFTアレイ基板10対してチルト方向10rに沿って直交する一の平面内で見れば、光軸211は、TFTアレイ基板10の法線(即ち、Z軸)に対して、液晶分子501の長軸が傾斜する方向と異なる方向に角度θ1だけ傾斜している。従って、想定屈折率楕円体212もTFTアレイ基板10の法線に対して、液晶分子501の長軸が傾斜する方向と異なる方向に角度θ1だけ傾斜している。第1光学補償素子210の遅相軸213は、配向膜16の界面付近の液晶のチルト方向10r(即ち、配向膜22の界面付近の液晶のチルト方向20r或いはX方向)に沿っている。より具体的には、第1光軸211は、第1光学補償素子210の液晶パネル100に対向する面(即ち、XY平面)について、プレチルトが付与された液晶分子501の長軸と対称な方向に沿っており、角度θ1が、プレチルト角αに殆ど或いは実践上完全に等しくなるように設定されている。
図5(a)に示すように、本実施形態では、正の一軸性結晶2bを、光軸Lに対して角度θ2(ここで角度θ2は、90度と角度θ1との差である)だけ傾いている切断線q1及びq2で切断し、所定の厚さd1になるように研磨することによって、図5(b)に示すような、第1光学補償素子210を形成する。このような形成方法によれば、例えば、角度θ2を85度に設定した場合、角度θ1が5度(即ち、プレチルト角αに殆ど等しい角度)である第1光学補償素子210を容易に形成できる。尚、研磨としては、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械研磨)等の各種研磨技術を適用可能である。
再び図4において、第2光学補償素子220は、正の一軸性の位相差板(即ち、Aプレート)からなる。第2光学補償素子220は、その光軸221がTFTアレイ基板10の基板面(即ち、XY平面)に沿うように、第1光学補償素子210に対向配置されている。更に、第2光学補償素子220は、TFTアレイ基板10の法線方向(即ち、Z方向)に沿った軸を中心として回転可能に構成されている。加えて、後に詳細に説明するが、本実施形態では特に、第2光学補償素子220は、液晶層50及び第1光学補償素子210によって生ずる光の位相差を打ち消すように、回転調整されている。また、第2光学補償素子220は、光の偏光状態を微調整する機能も備えている。
次に、上述のように構成された本実施形態に係る液晶装置の動作について、図3及び図4に加えて図6を参照して説明する。ここに図6は、液晶層の想定屈折率楕円体と第1光学補償素子の想定屈折率楕円体とが合成されてなる想定屈折率楕円体を概念的に示す概念図である。
図3において、本実施形態に係る液晶装置の動作時には、入射光は先ず入射側の偏光板310に入射する。偏光板310では、透過軸311に沿った方向に振動する光のみが通過できる。即ち、入射光は偏光板310を通過することにより直線偏光となる。偏光板310を通過した入射光は、マイクロレンズアレイ400及び対向基板20を通過して、液晶層50に入射する。
図4において、液晶層50における液晶分子501は、電圧が印加されない状態では、TFTアレイ基板10の法線方向(即ち、Z方向)に対してチルト方向10rに沿った一の方位(即ち、X軸の正の方位)にプレチルト角αだけ傾いて配向している。よって、図6に示すように、液晶層50全体の屈折率の異方性を示す想定屈折率楕円体501eも、TFTアレイ基板10の法線方向(即ち、Z方向)に対してラビング方向10rに沿った一の方位(即ち、X軸の正の方位)にプレチルト角αだけ傾斜している。よって、仮に、何らの対策も施さねば、液晶層50に入射された光は、液晶層50の想定屈折率楕円体501eがプレチルト角αだけ傾斜していることに起因して位相差を生じ、液晶層50を通過した光は、出射側の偏光板320に対し、位相がずれた状態で入射してしまう。また、入射光が、マイクロレンズアレイ400や偏光板310及び320を通過することによっても位相差が生じてしまうおそれがある。このため、出射側の偏光板320において、本来通過させないはずの光が漏れてしまうおそれがある。
しかるに、図4及び図6において、本実施形態に係る液晶装置によれば、第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220を備えるので、入射光が、液晶層50を通過することで発生する光の位相差を補償することができる。言い換えれば、第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220によって、液晶層50、第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220の全体の屈折率の異方性を小さくすることができる。つまり、先ず、プレチルト角αだけ傾斜した想定屈折率楕円体501eを有する液晶層50に対して、角度θ1だけ想定屈折率楕円体501eとは反対側に傾斜した想定屈折率楕円体212を有する第1光学補償素子210が配置されることで、液晶層50及び第1光学補償素子210の全体の想定屈折率楕円体292は、二軸性の屈折率楕円体に近似される。このため、第1光学補償素子210によって、液晶層50の想定屈折率楕円体501eがプレチルト角αだけ傾斜していることに起因して生じる位相差を補償することができる。更に、第2光学補償素子220が、液晶層50及び第1光学補償素子210によって生ずる光の位相差を打ち消すように、回転調整されているので、液晶層50、第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220の全体の屈折率異方性を小さくすることができる。言い換えれば、第2光学補償素子220は、例えば、電圧が印加されない状態において出射側の偏光板320から光が殆ど或いは全く出射されないように、回転調整されることで、液晶層50及び第1光学補償素子210によって生ずる光の位相差を確実に補償することができる。
このような補償を行うことで、液晶層50を通過した光が出射側の偏光板320に対し、位相がずれた状態で入射するのを防止することができる。更に、第2光学補償素子220は、光の偏光状態を調整する機能も備えているため、出射側の偏光板320に対してより最適な偏光状態で光を入射させることができる。よって、例えば出射側の偏光板320において、本来通過させないはずの光が漏れる可能性は小さくなり、コントラストの低下や視野角の縮小を防止することができる。
更に、第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220は、TFTアレイ基板10及び対向基板20に対して傾斜して配置されることなく、液晶層50で生じる光の位相差を補償することができる。よって、当該液晶装置等の小型化に適することができる。
尚、第1光学補償素子210のZ方向に対するリタデーション(Δn・d)は、液晶層50のZ方向に対するリタデーションと殆ど或いは完全に等しいことが望ましい。この場合には、液晶層50で生じる位相差を補償する効果をより一層高めることができる。但し、第1光学補償素子210のZ方向に対するリタデーションが、液晶層50のZ方向に対するリタデーションと殆ど或いは完全に等しくなくても、第1光学補償素子210のZ方向に対するリタデーションと液晶層50のZ方向に対するリタデーションとの差に応じて、液晶層50で生じる位相差を補償する効果を相応に高めることができる。即ち、例えば、液晶層50のZ方向に対するリタデーションが450nmである場合には、第1光学補償素子210のリタデーションは、450nmであることが望ましいが、例えば300nm〜500nmの範囲内であれば、液晶層50で生じる位相差を補償する効果を確実に高めることができる。また、第2光学補償素子220のZ方向に対するリタデーションは、例えば10nmから100nmの範囲内であることが望ましい。この場合には、回転調整された第2光学補償素子220により、液晶層50及び第1光学補償素子210によって生ずる光の位相差を補償する効果を確実に得ることができる。
加えて、本実施形態では特に、第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220は、液晶パネル100に対して光が出射する側に設けられている。即ち、第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220は、マイクロレンズアレイ400に対して光が出射する側に配置されている。よって、マイクロレンズアレイ400によって曲げられた光が、液晶層50を通過することで発生する位相差を第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220によって確実に補償することができる。言い換えれば、マイクロレンズアレイ400による光の位相差に対する悪影響を殆ど或いは完全に無くすことができる。尚、第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220は、液晶パネル100に対して光が入射する側(言い換えば、液晶層50に対して光が入射する側)に設けられてもよい。この場合にも、光の位相差を補償する効果を得ることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る液晶装置によれば、第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220によって、液晶層50で生じる位相差を補償できる。よって、コントラストの比較的高い高品位な画像を表示可能であり、且つ小型化に適することができる。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る液晶装置について、図7及び図8を参照して説明する。ここに図7は、第2実施形態における図3と同趣旨の断面図である。図8は、第2実施形態における図4と同趣旨の斜視図である。尚、図7及び図8において、図1から図6に示した第1実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
図7において、第2実施形態に係る液晶装置は、第3光学補償素子230を更に備える点で、上述した第1実施形態に係る液晶装置と異なり、その他の点については、上述した第1実施形態に係る液晶装置と概ね同様に構成されている。
図7において、第2実施形態に係る液晶装置は、液晶パネル100、マイクロレンズアレイ400、第1光学補償素子210、第2光学補償素子220、第3光学補償素子230、偏光板310及び320を備えている。
第3光学補償素子230は、出射側の偏光板320と液晶パネル100との間(より具体的には、第1光学補償素子210と第2光学補償素子220との間)に設けられている。第1光学補償素子210、第2光学補償素子220及び第3光学補償素子230は、液晶パネル100に近い側から、第1光学補償素子210、第3光学補償素子230、第2光学補償素子220の順で配置されている。尚、第1光学補償素子210、第2光学補償素子220及び第3光学補償素子230は、他の順(例えば、第1光学補償素子210、第2光学補償素子220、第3光学補償素子230の順)で、液晶パネル100に近い側から配置されてもよい。また、第3光学補償素子230は、第1光学補償素子210或いはTFTアレイ基板10に貼り付けられてもよいし、TFTアレイ基板10とは別に支持体を設けて、その支持体と一体に構成されてもよい。
図8において、第3光学補償素子230は、負の一軸性の位相差板(即ち、Cプレート)からなる。第3光学補償素子230の光軸231は、第3光学補償素子230の第1光学補償素子210に対向する面(即ち、XY平面或いはTFTアレイ基板10の基板面)の法線方向(即ち、Z方向)に沿っている。従って、想定屈折率楕円体232も該法線方向(即ち、Z方向)に沿っている。
このように構成された第3光学補償素子230によって、液晶層50を通過することで発生する光の位相差を、より確実に補償することができる。言い換えれば、第1光学補償素子210、第2光学補償素子220及び第3光学補償素子230によって、液晶層50、第1光学補償素子210、第2光学補償素子220及び第3光学補償素子230の全体の屈折率の異方性を、より一層小さくすることができる。即ち、液晶層50、第1光学補償素子210、第2光学補償素子220及び第3光学補償素子230の全体の屈折率の異方性を示す屈折率楕円体を球状に、より一層近づけることができる。従って、コントラストの低下や視野角の縮小を、より確実に防止することができる。
本実施形態では特に、第3光学補償素子230は、例えば蒸着法等を用いて無機材料から形成されている。よって、第3光学補償素子230は、紫外線等による劣化が殆ど或いは全く起こらない。従って、第3光学補償素子230の耐光性或いは耐久性を向上させることができ、表示画像における経時的な品質の劣化を低減或いは防止することができる。
<第3実施形態>
第3実施形態に係る液晶装置について、図9を参照して説明する。ここに図9は、第3実施形態における図3と同趣旨の断面図である。尚、図9において、図1から図6に示した第1実施形態に係る構成要素及び図7及び図8に示した第2実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
図9において、第3実施形態に係る液晶装置は、上述した第2実施形態における第2光学補償素子220に代えて第2光学補償素子220cを備える点で、上述した第2実施形態に係る液晶装置と異なり、その他の点については、上述した第2実施形態に係る液晶装置と概ね同様に構成されている。
図9において、第3実施形態に係る液晶装置は、液晶パネル100、マイクロレンズアレイ400、第1光学補償素子210、第2光学補償素子220c、第3光学補償素子230、偏光板310及び320を備えている。
本実施形態では特に、第2光学補償素子220cは、入射側の偏光板310と液晶パネル100との間(より具体的には、偏光板310とマイクロレンズアレイ400との間)に設けられている点で、上述した第2実施形態における第2光学補償素子220と異なり、その他の点については、上述した第2実施形態における第2光学補償素子220と概ね同様に構成されている。
よって、当該液晶装置が、例えば、ライトバルブとしてプロジェクタ内に設けられる際、他の部材と殆ど或いは全く接触することなく、第2光学補償素子220cを容易に回転調整することができる。
次に、上述した第1及び第2実施形態に係る液晶装置の視野角について、図10を参照して説明する。ここに図10は、シミュレーションにより得られた視野角特性図の一例である。図10(a)は、第1実施形態に係る液晶装置の視野角特性図であり、図10(b)は、第2実施形態に係る液晶装置の視野角特性図であり、図10(c)は、第1比較例に係る液晶装置の視野角特性図であり、図10(d)は、第2比較例に係る液晶装置の視野角特性図である。
本シミュレーションでは、液晶パネル100は、液晶層50として、プレチルト角αが5度であってZ方向に対するリタデーション(Δnd)が420nmである液晶層を含んでいる。更に、本シミュレーションでは、第1光学補償素子210の光軸211が傾斜する角度θ1は、5度(即ち、プレチルト角αに等しい角度)である。第1光学補償素子210のZ方向に対するリタデーションは300nmである。加えて、本シミュレーションでは、第2光学補償素子220の正面位相差は、20nmであり、第3光学補償素子230のZ方向に対するリタデーションは、−300nmである。
図10(a)から図10(d)では、コントラストが、各方位角において極角(即ち、液晶パネルの表示画面の法線と測定或いは観察方向となす角)毎に算出され、コントラストは各方位角において極角の角度毎にマッピングされる。また、同種の領域は、同一範囲のコントラストを示しており、色の濃い領域ほどコントラストが高いことを表している。また、視野角特性図の中心から外縁に向かう方向に沿った位置は、同一方位角における極角の大きさを示している。図10(a)から図10(d)に示すように、コントラストは、方位角及び極角の各々に依存する。
図10(a)に示す第1実施形態に係る液晶装置(即ち、液晶パネル100に対して第1光学補償素子210及び第2光学補償素子220が設けられた液晶装置)における高いコントラストを示す領域(即ち、色の濃い領域)700aは、図10(c)に示す第1比較例に係る液晶装置(即ち、液晶パネル100単体で構成された液晶装置)における高いコントラストを示す領域700c(即ち、図10(a)に示す第1実施形態に係る液晶装置における領域700aが示すコントラストと同一範囲のコントラストを示す領域)よりも広くはない。しかしながら、領域700aは、領域700cと比較して、特に、液晶装置がプロジェクタの液晶ライトバルブとして用いられる場合において比較的高いコントラストが要求される極角が0度から15度の範囲内(図中、破線で示す円Cの内側領域)に限って見たときには広い、即ち、視野角が広い。よって、図10(a)に示すように、第1実施形態に係る液晶装置によれば、例えば図10(c)に示す第1比較例に係る液晶装置よりも、投影表示をおこなったときのコントラストを高めることができる。
更に、図10(d)に示す第2比較例に係る液晶装置(即ち、液晶パネル100に対して第1光学補償素子210のみが設けられた液晶装置)における高いコントラストを示す領域700d(即ち、図10(a)に示す第1実施形態に係る液晶装置における領域700aが示すコントラストと同一範囲のコントラストを示す領域)は、図10(c)に示す第1比較例に係る液晶装置(即ち、液晶パネル100単体で構成された液晶装置)における高いコントラストを示す領域700cよりも狭い。よって、液晶パネル100に対して第1光学補償素子210だけではなく第1光学補償素子210及び第2光学補償素子の両方を設けることによって、効果的にコントラストを高めることが可能である。
図10(b)に示す第2実施形態に係る液晶装置(液晶パネル100に対して第1光学補償素子210、第2光学補償素子220及び第3光学補償素子230が設けられた液晶装置)における高いコントラストを示す領域700b(即ち、図10(a)に示す第1実施形態に係る液晶装置における領域700aが示すコントラストと同一範囲のコントラストを示す領域)は、図10(c)が示す第1比較例に係る液晶装置における高いコントラストを示す領域700cよりも広い。よって、図10(b)に示すように、第2実施形態に係る液晶装置によれば、例えば図10(c)に示す第1比較例に係る液晶装置よりも、視野角を拡大することができる。
更に、図10(b)に示す第2実施形態に係る液晶装置における高いコントラストを示す領域700bは、図10(a)に示す第1実施形態に係る液晶装置における高いコントラストを示す領域700aよりも広い。よって、図10(b)に示すように、第2実施形態に係る液晶装置によれば、視野角をより一層拡大することができる。
<電子機器>
次に、上述した液晶装置を用いた電子機器の一例について、図11を参照して説明する。本実施形態に係る電子機器は、上述した液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタである。ここに図11は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。
図11に示すように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gに入射される。
液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等の構成を有しており、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、RおよびBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。したがって、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
ここで、各液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像は、液晶パネル1110Gによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
尚、液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
このようなプロジェクタは、上述した液晶装置を具備してなるので、液晶層を通過する光に生じる位相差が補償され、高コントラストな画像を表示可能であり、更に、小型化が可能である。
尚、図11を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置及び該液晶装置を備えてなる電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…TFTアレイ基板、10r…チルト方向、16…配向膜、20…対向基板、20r…チルト方向、22…配向膜、50…液晶層、100…液晶パネル、210…第1光学補償素子、220…第2光学補償素子、230…第3光学補償素子、211、221、231…光軸、212、222、232…想定屈折率楕円体、213…遅相軸、310、320…偏光板、311、321…透過軸、400…マイクロレンズアレイ