JP2009017875A - 新規カタラーゼ及びこれをコードする遺伝子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】以下のa又はbのアミノ酸配列を有するタンパク質。a特定なアミノ酸配列からなるカタラーゼ、b特定なアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつカタラーゼ活性を有するタンパク質、該タンパク質をコードする遺伝子、及び以下のc又はdのDNAからなる遺伝子。c特定な塩基配列を含有するDNA、d特定な塩基配列において1若しくは複数の核酸が欠失、置換若しくは付加された核酸配列からなり、かつカタラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【選択図】なし
Description
エスピー 2−1(Rhizobium sp. 2-1)株(以下、単に「2−1株」と記載することがある)を単離し、この株の生産するカタラーゼは、既に工業利用されているミクロコッカス・ルテウス由来のカタラーゼよりも遙かに強いカタラーゼ活性を示すと共に、2−1株が生産するカタラーゼは、収量のみならず、比活性においても優れていることを見出している(特許文献2)。
エスピー 2−1(Rhizobium sp. 2-1)株の生産するカタラーゼのアミノ酸配列、及びこれをコードする遺伝子の塩基配列を解明し、これらを基に、優れた安定性及び高い比活性を有する新規カタラーゼを、高効率かつ高純度で提供することを目的とする。
(1)以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列を有するタンパク質
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるカタラーゼ
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつカタラーゼ活性を有するタンパク質
(2)以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるカタラーゼ
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつカタラーゼ活性を有するタンパク質
(3)以下の(c)又は(d)のDNAからなる遺伝子。
(c)配列番号2に示される塩基配列を含有するDNA
(d)配列番号2に示される塩基配列において1若しくは複数の核酸が欠失、置換若しくは付加された核酸配列からなり、かつカタラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
2-1)株の遺伝子であって、配列番号2に示される塩基配列を有するカタラーゼ遺伝子を提供する。また本発明は、前記遺伝子の発現産物であって、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するカタラーゼを提供する。以下、これらの発明の実施形態について詳しく説明する。
(1)至適作用温度:pH7の50mMリン酸緩衝液で調整された30mM過酸化水素水溶液に対する、各温度下での酵素の活性測定にて、本カタラーゼは4〜70℃の範囲で活性を示し、至適温度は4〜35℃である。
(2)至適作用pH:30mM過酸化水素を含む各種pHの緩衝液を用いて、30℃で活性を測定した場合、本カタラーゼは作用pH範囲が4〜12で、至適pH範囲が6〜9の広範囲の至適領域を有している。
(3)熱安定性:pH7の50mMリン酸緩衝液に溶解してなる約15,000U/mlの酵素溶液を、各温度で15分保持した後急冷し、30℃において残存活性を測定した場合、本カタラーゼは60℃まで極めて安定で65℃でも40%以上の残存活性を示す。
(4)pH安定性:各種pHの緩衝液に750U/mlとなるように酵素を溶解し30℃で30分間処理した後、残存活性を測定した場合、本カタラーゼはpH6〜11の範囲で極めて安定であり、pH12のアルカリ側においても60%以上の残存活性を示す。
(5)分子量:約55,100
(6)比活性:約162,200U/mg−タンパク質
このような理化学的性質を有するカタラーゼは、安定性や比活性の高さにより、過酸化水素の分解に好適に用いることができる。
まず、リゾビウム エスピー 2−1株をフラスコで30ml培養した。30℃にて24時間通気・攪拌培養を(OD660が3.5〜4.5に到達するまで)実施する。次いで、この前培養液を滅菌した本培養液3Lに植菌した。 植菌後、30℃で24時間通気・攪拌培養し、遠心分離により菌体を回収した。このときの菌体収量は20g(湿重量)であった。回収された菌体は50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁し、以後の精製に供した。なお、種培養液と本培養液の培地組成については下記に示した。
精製酵素約50pmolをSDS−PAGEに供した後、PVDF膜にブロッティングし、クマシーブリリアントブルーR250にて染色した後、カタラーゼのバンドを切り出し、アミノ酸シーケンサーに供した。N末端アミノ酸の配列決定は東レリサーチセンターによって行われた。詳しくは、試料をメタノールで洗浄後、蒸留水中で10分間超音波照射し、再度メタノールで洗浄後、乾燥させた。これをプロテインシーケンサー G1000A(Hewlett Packard製)、PTHアナライザー1090型(Hewlett
Packard製)、分析プログラムRoutine3.1PVDFに供してN末端より20サイクルまでを測定した。このようにして得られたアミノ酸解析の結果を以下に示す。
N末端アミノ酸配列:T-D-M-N-K-K-Q-G-G-T-G-S-T-T-G-T-G-A-P-A
相同性解析による保存領域の特定
N末端アミノ酸配列を基に米NCBIのホームページから遺伝子の相同性検索を行った。解析オプションとしてSearch
for short、nearly exact matchesを選択して解析を行ったところ、ニトロバクター・ハンバージェンシス(Nitrobacter hamburgensis) X14株由来のカタラーゼと68%の相同性が認められた。次に、ニトロバクター・ハンバージェンシス(Nitrobacter
hamburgensis) X14株由来のカタラーゼのアミノ酸配列を元にBLASTプログラムによる相同性解析を行った結果、多くのカタラーゼ遺伝子との相同性が認められた。そこで、これらのうち、リゾビウム属及びその近縁菌由来のカタラーゼを選出し、アミノ酸配列のアライメント解析を行った結果、配列が高度に保存された領域を2箇所発見した。このアミノ酸配列共通領域を以下に示す。
上流側:VGNNTPVF 下流側:NPFDLTKVWPH
5’側のプライマーとして、リゾビウム
エスピー 2−1株より精製したカタラーゼのN末端アミノ酸配列情報を元に、配列番号3に示されるプライマー(CatFプライマー)を合成した。また、3’側のプライマーとして、2ヶ所のアミノ酸配列共通領域を元に、配列番号4に示されるプライマー(CatR1プライマー)、及び配列番号5に示されるプライマー(CatR2プライマー)を合成した。
上記の記載にしたがい合成したプライマー(フォワード1種、リバース2種)を用いてタッチダウンPCRによる2−1株染色体DNAからのカタラーゼ遺伝子の直接取得を以下の通り実施した。DNA抽出キットISOPLANT
II(ニッポンジーン社製)を用いて前染色体DNAを抽出し、これをテンプレートとした。
下記の組成にてPCR反応液を調製した。
template DNA 1μl
(100ng)
2.5mM dNTPs 2μl
YS-Fプライマー 2μl (20pmol)
YS-Rプライマー 2μl (20pmol)
Taq DNA polymerase 0.5μl (2.5U)
(タカラバイオ製 EX-Taq)
10×buffer 2μl
D.W. 10.5μl
Total volume 20μl
また、PCRの反応サイクル条件は以下のとおりである。95℃で4分間変性処理を行った後、95℃,20秒→60℃,20秒→72℃,1分のサイクルを1サイクル毎に0.5℃下げながら19回実施し、さらに95℃,20秒→50℃,20秒→72℃,40秒のサイクルを10回実施し、最後に72℃,4分間の加温処理を行い終了した。アガロースゲル電気泳動により、このPCR産物の断片の長さを確認したところ、CatFとCatR1の組み合わせでは約400bp、CatFとCatR1の組み合わせでは約850bpであった。これは相同性検索の結果より推定される鎖長と概ね一致しており、2−1株のカタラーゼ遺伝子であると同定した。
CatFとCatR1、CatFとCatR1のそれぞれの組み合わせで得られたPCR産物についてBig Dye Terminator Cycle Sequence kit Ver.3.1、及びABI310シーケンサー(PEバイオシステム社製)を用いて塩基配列を決定した。その結果、CatF−CatR1の塩基配列はCatF−CatR2の塩基配列の前半部分と完全に一致した。また、CatF−CatRの下流の配列は精製カタラーゼのN末端アミノ酸配列と完全に一致した。
PCR産物の塩基配列を基にインバースPCRによる完全長カタラーゼ遺伝子のクローニングを以下の通り実施した。2−1株の全染色体DNAを各種制限酵素で切断し、T4 DNAリガーゼ(タカラ社製)によってセルフライゲーションを行い、環状化DNAを得た。プライマーには、配列表・配列番号6記載のプライマー(invFプライマー)、配列番号7に示されるプライマー(invRプライマー)を合成した。
下記の組成にてPCR反応液を調製した。
template DNA 15μl
(150ng)
2.5mM dNTPs 8μl
YS-Fプライマー 1.25μl (125pmol)
YS-Rプライマー 1.25μl (125pmol)
Taq DNA polymerase 1μl(5U)
(タカラバイオ製 EX-Taq)
10×buffer 5μl
D.W. 18.5μl
Total volume 50μl
また、インバースPCRの反応サイクル条件は以下のとおりである。94℃で3分間変性処理を行った後、98℃,10秒→70℃,5分30秒→70℃,10分のサイクルを25回実施した。このPCR産物について制限酵素Sal IとPst Iで切断したところ、1,854bpの断片を取得し、これを塩基配列解析に供した。その結果、上流側には、開始コドン及びリボソーム結合部位(SD配列)、下流側には終始コドン、転写終結点と推定されるヘアピンループ構造が見られた。さらに、アミノ酸配列に翻訳したところ、ORF中のN末端アミノ酸配列は精製酵素のN末端アミノ酸配列(20アミノ酸)と完全に一致した。また、決定した塩基配列より求められるタンパク質の分子量は約55,100であり、精製酵素の分子量(約60,000)とほぼ一致した。以上の結果より、リゾビウム
エスピー 2−1(Rhizobium sp. 2-1)株が生産するカタラーゼの全遺伝子配列が決定された。
前述の参考例1によって精製されたリゾビウム エスピー 2−1株由来カタラーゼの理化学的性質について測定結果を示す。
酵素液を15000U/mlになるように50mMリン酸緩衝液(pH7)に溶解し、各温度で15分間加温した後の残存活性を前記カタラーゼ活性測定法に従って測定し、その結果を図1に示した。これより、本カタラーゼは、60℃までは安定で、65℃でも40%の活性を保持していることが分かった。
酵素液を750U/mlになるように50mMの各緩衝液に溶解し、30℃で30分間処理した後の残存活性を前記カタラーゼ活性測定法に従って測定し、その結果を図2に示した。pH3〜6は50mMのクエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液(図中◆印)、pH6〜7は50mMのリン酸緩衝液(図中■印)、pH8〜9は50mMのTris−塩酸緩衝液(図中▲印)、pH9〜10は50mMのグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(図中●印)、pH11〜12は50mMのリン酸水素二ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液(図中◆印)を使用した。図2より、本カタラーゼはpH6〜11の範囲で極めて安定であり、pH12のアルカリ側においても60%以上の残存活性を示すことが分かった。
30mM過酸化水素を含む50mMリン酸緩衝液1mlを試験管中で各温度に予備加温した後、適当に希釈した酵素液0.008mlを添加して酵素反応を開始し、反応開始2分後に10%硫酸を150μl添加して反応を停止させた。このときの240nmにおける吸光度を測定した。また、酵素液を添加する前に硫酸を添加したものを盲検とし、同様に240nmにおける吸光度を測定した。この酵素反応後の吸光度と盲検の吸光度の吸光度差より酵素活性を求め、30℃の時の活性を100%とした相対活性を図3に示した。これより、本カタラーゼの至適作用温度は4〜35℃であることが分かった。
30mM過酸化水素を含む各緩衝液1mlを試験管中で30℃に予備加温した後、適当に希釈した酵素液0.008mlを添加して酵素反応を開始し、反応開始2分後に10%硫酸を150μl添加して反応を停止させた。このときの240nmにおける吸光度を測定した。また、酵素液を添加する前に硫酸を添加したものを盲検とし、同様に240nmにおける吸光度を測定した。この酵素反応後の吸光度と盲検の吸光度の吸光度差より酵素活性を求め、その結果を図4に示した。pH3〜6は50mMのクエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液(図中◆印)、pH6〜7は50mMのリン酸緩衝液(図中■印)、pH8〜9は50mMのTris−塩酸緩衝液(図中▲印)、pH9〜10は50mMのグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(図中●印)、pH11〜12は50mMのリン酸水素二ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液(図中◆印)を使用した。図4は、pH7の時の活性を100%とした相対活性を示すもので、これより本カタラーゼは至適pH範囲が6〜9の広範囲の至適領域を有していることが分かった。
Claims (3)
- 以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列を有するタンパク質。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるカタラーゼ
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつカタラーゼ活性を有するタンパク質 - 以下の(a)又は(b)のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるカタラーゼ
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつカタラーゼ活性を有するタンパク質 - 以下の(c)又は(d)のDNAからなる遺伝子。
(c)配列番号2に示される塩基配列を含有するDNA
(d)配列番号2に示される塩基配列において1若しくは複数の核酸が欠失、置換若しくは付加された核酸配列からなり、かつカタラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
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