以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
(無線通信システム)
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る無線通信システムは複数(N)のOFDM送信機11,12,・・・,1Nと、各OFDM送信機11,12,・・・,1Nから異なるチャネル(伝搬路)を経て送信されてくるOFDM信号を受信するOFDM受信機20を含む。OFDM送信機11,12,・・・,1Nの各々は、OFDM信号を送信する。OFDM送信機11,12,・・・,1Nは、全て異なる場所に設置されている必要は必ずしもなく、幾つかが同じ場所に設置されてもよい。例えば、2つのOFDM送信機が一つの無線通信装置の中に含まれてもよい。それらの場合、OFDM送信機の構成要素の一部である後述するサブキャリア割り当て部やサブキャリアグループ設定部のような、送信機間で共通の要素については、複数のOFDM送信機で共用してもよい。
(送信機)
図2は、一つのOFDM送信機の構成を示している。図3は、図2中のサブキャリア割り当て部103によるサブキャリアの割り当て及びサブキャリアグループ設定部104によるサブキャリアグループの設定の様子を示している。図3においては、横の時間軸に沿ってOFDMシンボルが配置され、縦の周波数軸に沿って各OFDMシンボルを形成する複数のサブキャリアが配置される。周波数軸に沿って記載された1,2,・・・,Mはサブキャリア番号を表す。時間軸に沿って記載された1,2,・・・はOFDMシンボル番号を表す。
図2において、パイロット信号生成部101はパイロット信号の元となるビット列に対して、直交位相シフトキーイング(QPSK)のようなディジタル変調を施すことによって、パイロット信号を生成する。同様に、データ信号生成部102はデータ信号の元となるビット列にQPSKのようなディジタル変調を施すことによって、データ信号を生成する。パイロット信号及びデータ信号は、いずれも複素数値で表される。なお、パイロット信号は例えばチャネル推定(チャネル応答の推定)に用いられる。パイロット信号は、タイミング同期や周波数同期に用いてもよい。以下の実施形態では、パイロット信号をチャネル推定に用いた場合について説明をしている。
生成されたパイロット信号及びデータ信号は、サブキャリア割り当て部103によって対応するサブキャリア、すなわちパイロットサブキャリア及びデータサブキャリアにそれぞれ割り当てられる。「信号をサブキャリアに割り当てる」とは、複素数値で表される信号に対して、対応するサブキャリアの時間軸上及び周波数軸上の位置を表すサブキャリアインデックスを付加することを意味する。例えば、図3中のデータ信号300には(3,L−2)というサブキャリアインデックスが付加される。
サブキャリア割り当て部103によってパイロットサブキャリア及びデータサブキャリアにそれぞれ割り当てられたパイロット信号及びデータ信号は、サブキャリアグループ設定部104に入力される。サブキャリアグループ設定部104は、パイロット信号が割り当てられる少なくとも1つ以上のパイロットサブキャリアと、データ信号が割り当てられる1つ以上のデータサブキャリアを含む、少なくとも一つのサブキャリアグループを設定する。図3の例では、複数(M)のサブキャリアグループ301,302,・・・,30Mが設定される。「サブキャリアグループを設定する」とは、サブキャリアインデックスが付加されたパイロット信号及びデータ信号にインデックス(グループインデックスという)を付加することを意味している。いずれのサブキャリアグループにも属さない信号には、グループインデックスは付加されない。
ここで、図1中のOFDM送信機11,12,・・・,1Nは、サブキャリアグループ設定部104によって送信機間で同一の少なくとも一つのサブキャリアグループを設定する。すなわち、OFDM送信機11,12,・・・,1Nの各々のサブキャリア設定部104が設定するサブキャリアグループのうち、少なくとも一つは共通である。共通のサブキャリアグループでは、各OFDM送信機11,12,・・・,1Nに共通のパイロット信号及び共通のデータ信号がパイロットサブキャリア及びデータサブキャリアにそれぞれ割り当てられる。
サブキャリアグループ設定部104によってサブキャリアグループが設定された信号121、すなわちグループインデックスが付加されたパイロット信号(第1パイロット信号)及びデータ信号(第1データ信号)は、複素数値乗算部105を経てOFDM変調器である逆高速フーリエ変換(IFFT)ユニット106に入力される。サブキャリアグループが設定されない信号122、すなわちグループインデックスが付加されていないパイロット信号(第2パイロット信号)及びデータ信号(第2データ信号)は、直接IFFTユニット106に入力される。
複素数値乗算部105は、グループインデックスが付加されたパイロット信号及びデータ信号に対して、グループインデックスが等しいパイロット信号及びデータ信号毎に定められた複素数値系列を乗じる。図3の例では、サブキャリアグループ301,302,・・・,30Mに対して、それぞれ一つの複素数値R[1],R[2],・・・,R[M]が乗じられる。サブキャリアグループ毎に定められた複素数値系列の複素数値は、絶対値が全て同じでもよい。絶対値を同じにすることにより、サブキャリアグループ間で電力差が生じることを回避できる。ここで、複素数値は実数値を包含しており、例えば±1のような実数値であってもよい。複素数値系列が乗じられたパイロット信号及びデータ信号は、IFFTユニット106に入力される。
IFFTユニット106は、サブキャリアグループ設定部104及び複素数値乗算部105から入力された信号に対してOFDM変調を施すことにより、複数のOFDMシンボルの系列であるOFDM信号を生成する。すなわち、IFFTユニット106は周波数領域の信号を時間領域の信号に変換することによってOFDM信号を生成する。生成されたOFDM信号は、GI付加部107によってガードインターバル(GI)が付加された後、ディジタル−アナログ変換器、アップコンバータ及び電力増幅器などを含む無線送信部108によって無線(RF)信号に変換され、アンテナ109から送信される。GI付加部107において付加されるガードインターバルの長さは、後述するようにサブキャリアグループ設定部205からの指示に従って設定される。
(受信機)
次に、図4を用いて図1中のOFDM受信機20について説明する。図4は、OFDM受信機20のマクロダイバーシティ受信に関わる構成を示している。アンテナ201によって受信されたRF信号は、低雑音増幅器、ダウンコンバータ及びアナログ−ディジタル変換器などを含む無線受信部202によってベースバンドディジタル信号に変換される。ベースバンドディジタル信号は、GI除去部203によってガードインターバルが除去された後、高速フーリエ変換(FFT)ユニット204により時間領域の信号から周波数領域の信号、すなわちサブキャリア毎の信号に分割される。FFTユニット204からの出力信号は、信号分離部205に入力される。
信号分離部205は、サブキャリアグループ内のサブキャリアにそれぞれ割り当てられているパイロット信号221及びデータ信号222を分離する。分離されたパイロット信号221はチャネル推定部206に入力され、データ信号222はチャネル等化部207に入力される。チャネル推定部206は、サブキャリアグループ毎にパイロット信号221の平均化または補間を行うことによりチャネル推定を行い、チャネル応答を示すチャネル推定値を出力する。チャネル等化部207は、チャネル推定部206から出力されるチャネル推定値を用いてデータ信号222に対してチャネル等化を行う。チャネル等化後のデータ信号は復調部208によって復調され、データ信号の元となるビット列が再生される。
(チャネル推定)
次に、チャネル推定部206の動作をさらに詳細に説明する。説明の簡単のため、サブキャリアグループの時間方向及び周波数方向の幅は、チャネルの時間方向及び周波数方向の変動周期に比べてそれぞれ十分小さいと仮定する。この場合、サブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられた信号に対するチャネル応答は、ほぼ一定とみなすことができる。図2で説明したように、サブキャリアグループ設定部104によって設定されたサブキャリアグループ内のサブキャリアにそれぞれ割り当てられた全てのパイロット信号及びデータ信号には、複素数値乗算部105によってサブキャリアグループ毎に定められた複素数値が乗じられている。複素数値をRとし、チャネル応答をHとすると、同一のサブキャリアグループ内のサブキャリアにそれぞれ割り当てられたパイロット信号及びデータ信号は、H*Rで表される歪みを共通に受ける。これは結果として、OFDM送信機から送信されるOFDM信号がH*Rで表されるチャネル応答を受けることと等価であるとみなすことができる。
すなわち、OFDM受信機20では各OFDM送信機11,12,・・・,1Nから同一のサブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられた信号が、それぞれ異なる複素数値が乗じられた後に送信される場合においても、複素数値が乗じられずに送信される場合と同様に扱うことができる。従って、チャネル推定部206ではOFDM送信機11,12,・・・,1Nにおいて乗じられた複素数値によらず、受信したパイロット信号を元のパイロット信号で除することによりチャネル推定値を求めることができる。元のパイロット信号はOFDM受信機において既知の信号である。
サブキャリアグループ内に複数のパイロットサブキャリアが存在する場合には、それぞれのパイロットサブキャリアに割り当てられているパイロット信号を元のパイロット信号で除した値を平均化することにより、精度の高いチャネル推定値を求めることができる。さらに、サブキャリアグループ内に複数のパイロットサブキャリアが離れて配置されている場合には、それぞれのパイロットサブキャリアに割り当てられているパイロット信号を元のパイロット信号で除して得られる値を用いて補間を行うことにより、精度の高いチャネル推定値を得ることができる。
サブキャリアグループ内のあるデータサブキャリアに対するチャネル推定及びチャネル等化のプロセスについて、数式を用いて説明する。以下の説明では、あるデータ信号をD、サブキャリアグループ内のパイロットサブキャリアに割り当てられるパイロット信号をP、n番目のOFDM送信機1nにおいて当該サブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられたパイロット信号及びデータ信号に乗じられている複素数値をRnとする。
また、説明の簡単のためサブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられているパイロット信号及びデータ信号が受けるチャネル歪みは一定とみなすことができるとし、OFDM送信機1nからOFDM受信機20までのチャネルのチャネル歪みをHnと表すことにする。
この場合、OFDM送信機1nから送信されるパイロット信号及びデータ信号は、それぞれP・R
n及びD・R
nで与えられる。P・R
n及びD・R
nは、チャネル歪みを受けた後OFDM受信機20のアンテナ201によって合成されるので、受信されるパイロット信号P
rxは次式で表される。
ただし、NはOFDM送信機の数を表す。
一方、受信されるデータ信号D
rxは次式で表される。
この場合、次式に示されるように、受信したパイロット信号P
rxの逆数及び既知である元のパイロット信号Pをデータ信号D
rxに乗じることにより、データ信号Dを復元することができる。
一方、非特許文献1に示される方法によれば、送信機においてデータ信号に対しては複素数値が乗じられない。そのため、受信されるパイロット信号P
rxは
となる。この場合、次式に示されるように、受信したパイロット信号の逆数とPをデータ信号に乗じても、元のデータ信号Dは復元されないことは明らかである。
元のデータ信号Dを復元するためには、H
nをそれぞれ個別に推定した上で
を算出するプロセスが必要になる。前述の通り、Hnをそれぞれ個別に推定する処理においては干渉が重畳される場合があり、チャネル推定値の精度が劣化してしまう。
以上では受信したパイロット信号の逆数とPを受信したデータ信号に乗じることで、元のデータ信号を復元する方法について説明したが、これ以外にも次のような方法がある。H
combを
と置くと、H
combの複素共役とH
combの絶対値の逆数を受信したデータ信号に乗じることで、次式のようにデータ信号を復元することができる。
ただし、この場合は振幅が|Hcomb|だけずれるので、復調する際に比較を行う変調点についても|Hcomb|だけずらす必要がある。
以上述べたように、本実施形態によればOFDM送信機11,12,・・・,1Nから送信される信号に対してOFDM受信機20においてマクロダイバーシティ受信を行う場合、各OFDM送信機11,12,・・・,1NからOFDM受信機20までの各チャネル応答を個別に推定する必要がないために計算量が減少する。すなわち、数式(3)に示されるように、受信したパイロット信号Drxに対して受信したパイロット信号Pの逆数及び元のパイロット信号Pを乗じるだけで元のデータ信号Dを復元することができる。また、各チャネル応答を個別に推定する際には生じる干渉の問題も回避することができる。さらに、各チャネル応答を個別に推定するためのスクランブリングパターンの管理を制御する必要がなくなる。
(サブキャリアグループ以外の処理)
次に、OFDM送信機及びOFDM受信機の他の例について説明する。図5に示されるOFDM送信機では、図2に示したOFDM送信機に対してスクランブル部110が追加されている。スクランブル部110は、サブキャリアグループ設定部104により設定されるサブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられる信号122、すなわちグループインデックスが付加されていないパイロット信号及びデータ信号に対して、OFDM送信機毎に異なるスクランブリングパターンによりスクランブルを施す。スクランブルが施された信号は、IFFTユニット106に入力される。
図6は、図5に対応するOFDM受信機であり、図4に示したOFDM受信機に対してデスクランブル部210と第2のチャネル推定部211及び第2のチャネル等化部212が追加されている。サブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられた信号は、図4に示したOFDM受信機と同様に処理される。すなわち、信号分離部205から出力される、サブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられたパイロット信号221及びパイロット信号222は、それぞれチャネル推定部206及びチャネル等化部207に入力される。チャネル推定部206から出力されるチャネル推定値を用いて、チャネル等化部207によりデータ信号222に対してチャネル等化が行われる。チャネル等化部207によるチャネル等化後のデータ信号は復調部213によって復調され、これによってデータ信号の元となるビット列が再生される。
一方、信号分離部205から出力される、サブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられたパイロット信号及びデータ信号は、デスクランブル部210によりデスクランブルされる。デスクランブル部210は、OFDM受信機が受信しようとする信号を送信するOFDM送信機において用いられるスクランブルパターンと逆のデスクランブリングパターンによってデスクランブルを行う。デスクランブル部210によりデスクランブルされたパイロット信号223はチャネル推定部211に入力され、デスクランブルされたデータ信号224はチャネル等化部212に入力される。
チャネル推定部211は、近接するパイロット信号の平均化及び補間によりチャネル推定を行い、チャネル応答を示すチャネル推定値を算出する。チャネル等化部212は、チャネル推定部211から出力されるチャネル推定値を用いて、デスクランブルされたデータ信号に対してチャネル等化を行う。チャネル等化部212からのチャネル等化後のデータ信号は復調部213に入力され、データ信号の元となるビット列が再生される。
チャネル推定部211において行われる平均化の処理によって、スクランブリングパターンが異なるOFDM送信機から送信されたパイロット信号については電力を小さくすることができ、所望のチャネル推定値の精度を向上させることができる。
このようにサブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられる信号、すなわちOFDM受信機においてマクロダイバーシティ受信を行わない信号に対しては、OFDM送信機間で異なるスクランブリングパターンを用いてスクランブリングをかけている。これによりマクロダイバーシティ受信でない通常受信を行う際のチャネル推定値の精度を高くすることができる。なお、スクランブリングパターンは送受信機間で予め決めておいてもよい。或いは、OFDM受信機20がOFDM送信機(例えばOFDM送信機11)と通信を開始する際に、OFDM送信機11からスクランブリングパターンの通知を受けてもよい。マクロダイバーシティ受信を行わない信号についてスクランブルをかけているので、OFDM受信機20は、全てのOFDM送信機のスクランブリングパターンを知る必要はない。
上述の理由説明から分かるように、サブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられている信号のうち、データ信号については必ずしもスクランブルする必要はない。従って、図5中のスクランブル部110においてはパイロット信号のみをスクランブルしてもよい。この場合、図6中のデスクランブル部210においてはパイロット信号のみをデスクランブルする。
(サブキャリアグループの設定方法)
次に、図7〜図16及び図17(a)(b)を用いてサブキャリアグループのより具体的な設定方法について説明する。
前述したように、サブキャリアグループは少なくとも一つのパイロットサブキャリアと少なくとも一つのデータサブキャリアを含むように設定される。以下では、パイロットサブキャリアが周波数軸上で4サブキャリア当たり1つ、時間軸上で7サブキャリア当たり1つの周期で挿入されている場合を例にして、サブキャリアグループの設定方法の具体例を示す。以下の説明において、OFDMシンボルとは1回のIFFTにより生成される単位を表している。1つのOFDMシンボルには、複数のサブキャリアが含まれる。図7〜図16及び図17(a)(b)における周波数軸は、1つのOFDMシンボル内のサブキャリアの番号を表しており、時間軸はOFDMシンボルの番号を表している。
第1のサブキャリアグループ設定方法によると、時間軸及び周波数軸によって方形に区切られた特定領域内のサブキャリアによって一つのサブキャリアグループを設定する。言い換えれば、連続する複数のOFDMシンボルに含まれるサブキャリア(パイロットサブキャリア及びデータサブキャリア)により一つのサブキャリアグループを設定する。例えば、図7の例は式を用いて次のように表される。図7において周波数軸上の位置をi、時間軸上の位置をjとし、サブキャリア401の位置を(i,j)=(1,1)とし、位置(i,j)のサブキャリアに割り当てられる信号をS
i,j、サブキャリアグループ301内のサブキャリアに割り当てられる信号に乗ずる複素数値をR[1]、サブキャリアグループ302に乗ずる複素数値をR[2]とする。サブキャリアグループ毎に1つの複素数値を乗じる処理は、以下の式で表される。
第1のサブキャリアグループ設定方法によれば、周波数軸及び時間軸上で一定のサブキャリア間隔で境界(例えば、フレームの境界)が定められていた場合に、サブキャリアグループが当該境界をまたがないようなサブキャリア配置をしやすいという利点がある。例えば、7OFDMシンボルで1フレームを形成する場合には、図7、図8及び図9に示すように周波数方向に4サブキャリア、時間方向に7サブキャリアの大きさの方形のサブキャリアグループ301及び302、あるいはサブキャリア301,302及び303を設定する。これによりフレームの境界をまたがないようにサブキャリアグループを生成できると共に、いずれのサブキャリアグループにも1つのパイロットサブキャリアが含まれるようにすることができる。
図7及び図8は、それぞれフレームの境界がパイロットサブキャリアのあるOFDMシンボルから数えて7番目及び6番目にある場合の例を示している。図9は、ある時間区間においてはサブキャリアグループ301,302及び303を周波数方向に敷き詰めて、すなわちOFDMシンボルの全長にわたり連続して配置した例を示している。図9の例によると、当該時間区間においては全てのサブキャリアがサブキャリアグループ301,302及び303のいずれかに属する。従って、当該時間区間の間はOFDM受信機においていずれのサブキャリアもマクロダイバーシティ受信できる。図10は、サブキャリアグループ301及び302内のパイロットサブキャリアの密度をサブキャリアグループ外のパイロットサブキャリアの密度より高くした例を示している。図10の例によると、サブキャリアグループ内のデータサブキャリアの受信性能を向上させることができる。
第2のサブキャリアグループ設定方法では、時間軸及び周波数軸によって区切られた方形領域内のサブキャリア(パイロットサブキャリア及びデータサブキャリア)と、これら方形領域内の少なくとも一つのパイロットサブキャリアまたはデータサブキャリアと周波数方向の位置が同一で、かつ時間軸上の位置が異なるように方形領域外に配置された少なくとも一つのパイロットサブキャリアを組み合わせて1つのサブキャリアグループを設定する。言い換えれば、連続する複数のOFDMシンボルに含まれるサブキャリア(パイロットサブキャリア及びデータサブキャリア)と、当該連続する複数のOFDMシンボル内の少なくとも一つのパイロットサブキャリアまたはデータサブキャリアと同一周波数を有し、かつ当該連続する複数のOFDMシンボルに近接する少なくとも一つのOFDMシンボルに含まれるパイロットサブキャリアとによりサブキャリアグループを設定する。
例えば、図11は図7に示したサブキャリアグループ(方形領域)内のパイロットサブキャリアと周波数方向の位置が同じで、かつ方形領域の右側に接する一つのパイロットサブキャリアを加えたサブキャリアグループ301及び302を示している。同様に図12は、図8に示したサブキャリアグループ(方形領域)内のパイロットサブキャリアと周波数方向の位置が同じで、かつ方形領域の右側に近接する一つのパイロットサブキャリアを加えたサブキャリアグループ301及び302を示している。さらに、図13は図11のサブキャリアグループの前後に位置する2つのパイロットサブキャリアを加えたサブキャリアグループ301及び302を示している。
第2のサブキャリアグループ設定方法によると、サブキャリアグループ毎に行われるチャネル推定においてチャネル応答の時間的な変動を推定しやすくなる。従って、この変動が大きい場合のチャネル推定精度が向上するという利点がある。
第2のサブキャリアグループ設定方法を図5に示したOFDM送信機に適用する場合には、サブキャリアグループの範囲について異なる解釈をすることも可能である。図5に示したOFDM送信機においては、サブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられた信号にスクランブリングが施される。図7のサブキャリアグループ301内のサブキャリアに割り当てられる信号に乗じる複素数値をパイロットサブキャリア402に割り当てられるパイロット信号をスクランブルするのに用いる複素数値と同一とした場合、図7のサブキャリアグループは実質的に図11に示したサブキャリアグループと同一であるとみなすことができる。
同様に、図8のサブキャリアグループ301内のサブキャリアに割り当てられる信号に乗じる複素数値をパイロットサブキャリア403に割り当てられるパイロット信号をスクランブルするのに用いる複素数値と同一とした場合、図8のサブキャリアグループは図12に示したサブキャリアグループと等価とみなすことができる。
このようにサブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられる信号に乗じられる複素数値をサブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられるパイロット信号をスクランブルするのに用いる複素数値と同一にすることにより、サブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられるパイロット信号をサブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられているパイロット信号と等価に扱うことができる。従って、サブキャリアグループに対応するチャネルのチャネル推定精度を向上させることができる。
サブキャリアグループの形状は、必ずしも完全な方形でなくともよい。例えば、サブキャリアグループ内の全サブキャリアのうちの半分よりも少ない一部を除いたサブキャリアが方形を成してもよい。こうすることにより、より自由度の高いサブキャリアグループの設計を行うことができる。サブキャリアグループの自由度をさらに高めたい場合には、サブキャリアグループ内のサブキャリアは、必ずしも方形に近い形状を成していなくともよい。その場合、例えば少なくともサブキャリアグループ内のデータサブキャリアは、周波数方向または時間方向に連続していてもよい。そうすることにより、サブキャリアグループ内のデータサブキャリア間でチャネル歪みの相関が高くなるため、チャネル等化を行いやすくなる。
(パイロットサブキャリアの配置方法)
次に、図14、図15及び図16を用いてサブキャリアグループ内のパイロットサブキャリアの配置方法の具体例を示す。図14に示す例では、サブキャリアグループ内のパイロットサブキャリアを時間方向及び周波数方向に一様に分散させて配置する。このようにパイロットサブキャリアをサブキャリアグループ内に分散して配置することで、チャネル応答の時間方向と周波数方向の両方の変動に追従したチャネル推定を行うことができる。
図15に示す例では、サブキャリアグループ内の周波数方向の両端に優先的にパイロットサブキャリアを配置する。チャネル応答の周波数方向の変動が大きい場合、サブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられるパイロット信号を用いてチャネル応答の変動を推定することになる。パイロット信号を用いてチャネル推定を行う場合、パイロット信号が割り当てられていないサブキャリア位置(周波数)においてもチャネル応答を知ることが正確にチャネル推定のために望まれる。このため、パイロット信号が割り当てられていないサブキャリア位置のパイロット信号を内挿(補間)または外挿により求めることが必要となる。ここで、パイロット信号の内挿を行うよりも、外挿を行う方がチャネル推定精度は低いことは知られている。図15のようにパイロットサブキャリアをサブキャリアグループ内の周波数方向の両端に優先して配置することにより、パイロット信号の外挿を行う必要性が減るので、チャネル推定精度が向上する。
図16に示す例では、サブキャリアグループ内の時間方向の両端に優先的にパイロットサブキャリアを配置する。チャネル応答の時間方向の変動が大きい場合、図15の例と同様の理由でパイロット信号の外挿を行う必要性が減ることにより、チャネル推定精度が向上する。
(複素数値系列の設定方法)
次に、図17(a)(b)を用いてサブキャリアグループ毎に異なる複素数値系列を用いる例について説明する。複素数値系列としては、OFDM送信機間で異なる系列が選択される場合もあるし、同じ系列が選択される場合もある。ここでは、OFDM送信機間で異なる複素数値系列が選択されている場合について具体的な例を示す。
図17(a)(b)は、OFDM送信機11及び12からそれぞれ送信されるOFDM信号のサブキャリア配置と複素数値系列をそれぞれ表している。図17(a)における複素数値系列はR1[1], R1[2],…,R1[N]であり、図17(b)における複素数値系列はR2[1],R2[2],…,,…,R2[N]である。図5に示したOFDM送信機では、サブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられる信号にスクランブリングを施すことによって、サブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられる信号については干渉を低減することができる。これはサブキャリアグループに属しているサブキャリアに割り当てられる信号とは異なり、他のOFDM送信機からの信号は干渉となってしまうためである。
そこで、この例では複素数値系列はR
1[1],R
1[2],…,R
1[N]とR
2[1],R
2[2],…,R
2[N]とを互いに直交または擬似直交の関係とする。これにより、サブキャリアグループ内のパイロットサブキャリアに割り当てられるパイロット信号についても干渉を低減することができ、マクロダイバーシティでない受信のチャネル推定に用いることができる。ここで、前述したように「互いに直交」とは相関値が0になることをいい、「互いに擬似直交」とは相関値の絶対値が自己相関値と比べて小さい値になることをいう。ある系列x[k](k=1,・・・,K)の自己相関値、及び2つの系列x[k],y[k](k=1,・・・,K)の相関値は、それぞれ次式で表される。
系列長が4の場合、互いに直交の関係にある複素数値系列の例として、以下の4つの系列R
1,R
2,R
3及びR
4が挙げられる。
数式(13)の4つの複素数値系列R
1,R
2,R
3及びR
4は、6個の相関値が全て0であり、互いに直交している。一般に系列長を2
Kとすると、最大で2
K個の互いに直交関係にある複素数値系列を生成することができる。他の例として、例えば
のような4つの複素数値系列R1,R2,R3及びR4も、6個の相関値が全て0であり、互いに直交している。
一方、擬似直交関係にある複素数値系列の例としては、以下の6つの系列R
1,R
2,R
3,R
4,R
5及びR
6が挙げられる。
数式(15)の系列長が4である6つの複素数値系列R1,R2,R3,R4,R5及びR6は、自己相関値はいずれも4であるのに対して、相関値は0または2のいずれかになる。例えば、R1,R2,R3及びR4の間の6個の相関値及びR5及びR6の間の相関値は、いずれも0であるが、R1,R2,R3及びR4と、R5及びR6との間の4個の相関値は、いずれも2である。このように複素数値系列として互いに疑似直交の関係にある系列、すなわち相関値を0に限定しない系列を含ませることにより、互いに直交の関係にある系列、すなわち相関値を0に限定した系列よりも多くの系列を生成することができる。
図18は、複素数値系列が送信機間で直交化または擬似直交化されている場合に適したOFDM受信機を示している。図6のOFDM受信機との相違は信号分離部205から出力される、サブキャリアグループ内のパイロットサブキャリアに割り当てられたパイロット信号221が複素数値乗算部214にも入力される点と、複素数値乗算部214によって複素数値が乗じられたパイロット信号225がチャネル推定部211に入力される点と、チャネル推定部211がパイロット信号223とパイロット信号225をチャネル推定を行う点である。
サブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられた信号は、基本的に図6に示したOFDM受信機と同様に処理される。すなわち、信号分離部205から出力される、サブキャリアグループ毎のパイロット信号221及びパイロット信号222は、それぞれチャネル推定部206及びチャネル等化部207に入力される。チャネル推定部206から出力されるチャネル推定値を用いて、チャネル等化部207によりデータ信号222に対してチャネル等化が行われる。チャネル等化部207によるチャネル等化後のデータ信号は復調部213によって復調され、データ信号の元となるビット列が再生される。
一方、サブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられた信号も、図6に示したOFDM受信機と同様に処理される。すなわち、信号分離部205から出力される、サブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられたパイロット信号及びデータ信号は、デスクランブル部210によりデスクランブルされる。デスクランブル部210は、OFDM受信機が受信しようとする信号を送信するOFDM送信機において用いられるスクランブルパターンと逆のデスクランブリングパターンによってデスクランブルを行う。デスクランブル部210によりデスクランブルされたパイロット信号223はチャネル推定部211に入力され、デスクランブルされたデータ信号224はチャネル等化部212に入力される。
一方、信号分離部205から出力される、サブキャリアグループ内のパイロットサブキャリアに割り当てられたパイロット信号221は、さらに複素数値乗算部214によって複素数値が乗じられる。複素数値乗算部214は、OFDM受信機が受信しようとする信号を送信するOFDM送信機内の図5中に示した複素数値乗算部105において用いられた複素数値の複素共役に相当する複素数値をパイロット信号221に対して乗じる。複素数値乗算部214により複素数値が乗じられたパイロット信号225は、チャネル推定部211に入力される。
チャネル推定部211は、近接するパイロット信号の平均化及び補間によりチャネル推定を行い、チャネル応答を示すチャネル推定値を算出する。チャネル等化部212は、チャネル推定部211から出力されるチャネル推定値を用いて、デスクランブルされたデータ信号に対してチャネル等化を行う。チャネル等化部212からのチャネル等化後のデータ信号は復調部213に入力され、データ信号の元となるビット列が再生される。
チャネル推定部211において行われる平均化の処理によって、スクランブリングパターンが異なるOFDM送信機から送信されたパイロット信号については電力を小さくすることができ、所望のチャネル推定値の精度を向上させることができる。
さらに、チャネル推定部211では、デスクランブル部210によってデスクランブルされた、サブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられたパイロット信号223に加えて、複素数値乗算部214により複素数値が乗じられた、サブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられたパイロット信号225を用いてチャネル推定を行う。従って、チャネル推定部211では図6のOFDM受信機と比べてチャネル推定により多くのパイロット信号を用いることができるため、チャネル推定の精度がより一層向上する。
(ガードインターバルについて)
次に、図2または図5中に示したGI付加部107において付加されるガードインターバルの長さを設定する方法について説明する。ガードインターバルは、1OFDMシンボル毎に時間波形の一部をコピーすることで付加される。OFDMシンボルにガードインターバルを付加することによって、遅延波によるシンボル間干渉を低減することができる。一般に、ガードインターバル長が大きいほど、遅延広がり(遅延プロファイルともいう)の大きいマルチパス環境に耐えることができる。
前述したようにサブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられる信号については、OFDM受信機20においてマクロダイバーシティ受信を行うことができる。この場合、OFDM受信機20は複数のOFDM送信機11,12,・・・,1Nからの信号を同時に受信することになるため、一つの送信機からの信号を受信するときと比べて遅延広がりが相対的に大きくなる場合がある。
そこで、サブキャリアグループ内のサブキャリアを含むOFDMシンボルについては、それ以外のOFDMシンボルよりもガードインターバルを長く設定することにより、受信性能を改善する。具体的には、図2及び図5に示されるようにサブキャリアグループ設定部104からサブキャリアグループ内のサブキャリアの位置を示すサブキャリア位置情報がGI付加部107に与えられる。GI付加部107は、サブキャリア位置情報に基づいて、サブキャリアグループ内のサブキャリアを含むOFDMシンボルがIFFTユニット106から入力されるときは、サブキャリアグループ外のサブキャリアを含むOFDMシンボルが入力される場合に比較して長いガードインターバルをOFDM信号に付加する。
このようにガードインターバル長を設定することにより、OFDM受信機20がマクロダイバーシティ受信を行う際の大きな遅延広がりにも対処できることにより、受信性能が改善される。
次に、ガードインターバル長の具体的な設定例について述べる。例えば、図7に示したサブキャリアグループ設定例では、サブキャリアグループ内のサブキャリアを含む7つのOFDMシンボルに対するガードインターバル長を、サブキャリアグループ内のサブキャリアを含まないOFDMシンボルに対するガードインターバル長よりも大きく設定する。一方、図11に示したサブキャリアグループ設定例では、サブキャリアグループ内のデータサブキャリアを含む7つのOFDMシンボルに対するガードインターバル長をサブキャリアグループ内のデータサブキャリアを含まないOFDMシンボルに対するガードインターバル長よりも大きく設定する。また、図11に示したサブキャリアグループ設定例では、サブキャリアグループ内のデータサブキャリアまたはパイロットサブキャリアを含む8つのOFDMシンボルに対するガードインターバル長をサブキャリアグループ内のサブキャリアを含まないOFDMシンボルに対するガードインターバル長よりも大きく設定してもよい。
図19に示したサブキャリアグループ設定例では、サブキャリアグループ内のサブキャリアを含むOFDMシンボルのガードインターバル長をサブキャリアグループ内のサブキャリアを含まないOFDMシンボルよりも長くする。さらに、サブキャリアグループ内のサブキャリアを含むOFDMシンボルを間引いてもよい。
図20に示したサブキャリアグループ設定例では、サブキャリアグループ内のデータサブキャリア及びパイロットサブキャリアを含むOFDMシンボルのガードインターバルをサブキャリアグループ内のサブキャリアを含まないOFDMシンボルよりも長くする。さらに、サブキャリアグループ内のデータサブキャリア及びパイロットサブキャリアを含むOFDMシンボルを間引いてもよい。
次に、図21を用いて上述のようにOFDMシンボルを間引いた場合のガードインターバル長の設定例について説明する。通常のガードインターバル長では、図21のフレーム構成501に示されるように7つのOFDMシンボルで1つのフレームを構成しているとする。例えば、図19のようにガードインターバル長が他のOFDMシンボルよりも大きいOFDMシンボルが1つのフレーム内に収まっている場合は、フレーム構成502に示されるようにOFDMシンボルを1つ以上間引き、その分だけガードインターバル長を大きくすればよい。
図20の例でサブキャリアグループ内のデータサブキャリア及びパイロットサブキャリアを含むOFDMシンボルのガードインターバル長を他のOFDMシンボルよりも大きくした場合のように、ガードインターバル長が他よりも大きいOFDMシンボルが1つのフレーム内に収まっていない場合には、フレーム構成503に示されるようにフレームの一部を後続のフレームの最初に位置するOFDMシンボルのガードインターバルに当てる。これによって、後続のフレームについてはOFDMシンボルを間引くことなく、最初のOFDMシンボルだけガードインターバル長を大きく設定することができる。
(データの種類について)
次に、サブキャリアグループ内のデータサブキャリアに割り当てられるデータ信号の内容例について説明する。図2または図5に示されるOFDM送信機はセルラーシステム(携帯電話システム)における基地局であり、図4、図6または図18に示されるOFDM受信機が端末である場合を例にとって説明する。基地局は複数のセクタを形成してもよい。その場合、基地局はセクタ数分のOFDM送信機を含む。データ信号は、例えば以下のようにブロードキャスト通信、マルチキャスト通信、あるいはソフトハンドオーバに用いられる。
まず、ブロードキャスト通信及びマルチキャスト通信を実施する例について述べる。複数の基地局から、サブキャリアグループ内のデータサブキャリアに同じデータ信号を割り当てて送信を行う。この場合、当該基地局に接続している全ての端末は同じデータ信号を同時に受信することが可能である。従って、セルラーシステムはサブキャリアグループ内のサブキャリアを利用して、ブロードキャスト通信やマルチキャスト通信を行うことができる。ブロードキャスト通信とは、ユーザを特定せずにデータ信号を送信するサービスをいう。マルチキャスト通信とは、2以上の特定の端末宛に同じデータ信号を送信するサービスをいう。ブロードキャスト通信及びマルチキャスト通信は、Multimedia Broadcast and Multicast Service(MBMS)通信と総称される場合もある。一方、1の特定の端末宛にデータを送信するサービスは、ユニキャストと呼ばれる。
そこで、サブキャリアグループ内のサブキャリアについてはブロードキャスト通信やマルチキャスト通信に用い、サブキャリアグループ外のサブキャリアについてはユニキャスト通信に用いるという形態が考えられる。ブロードキャスト通信またはマルチキャスト通信によってデータ信号を送信する例としては、例えば動画データや音楽データのストリーミング、及び電子メールの一括送信などが挙げられる。
次に、ソフトハンドオーバを実施する例について説明する。複数の基地局から、サブキャリアグループ内のデータサブキャリアに同じデータ信号を割り当てて送信する。この場合、セル境界にいる端末は、境界に接する複数の基地局からの信号を同時に受信することが可能である。従って、セルラーシステムはサブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられたデータ信号を利用して、以下のようにソフトハンドオーバを実現することができる。
まず、端末は第1基地局のセルの中心付近に存在している間は、第1基地局において設定されるサブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられたデータ信号について、通常受信を行う。次に、当該端末は第1基地局のセルと第1基地局に隣接する第2基地局のセルとの境界付近に来たときには、第1基地局及び第2基地局においてそれぞれ設定されるサブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられたデータ信号について、マクロダイバーシティ受信を行う。この後、当該端末は第2基地局のセルの中心付近に移動すると、第2基地局において設定されるサブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられたデータ信号について通常受信を行う。このようにして、サブキャリアグループに割り当てられるデータ信号を用いてソフトハンドオーバを実施することができる。
[第2の実施形態]
(送信機)
図2、図4及び図22〜31を用いて、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態では、図2に示したOFDM送信機中のデータ信号生成部102が図22に示すようにビット列生成部1021、通信路通信路符号化器1022、インタリーバ1023及びディジタル変調器1024により構成される。図22のデータ信号生成部102では、以下のようにしてデータ信号が生成される。ビット列生成部1021によって生成されたビット列は、通信路符号化器1022に入力される。通信路符号化器1022では、入力されたビット列に対して例えばビタビ符号化、ターボ符号化、リードソロモン符号化あるいは低密度パリティチェック符号(low-density parity-check codes:LDPC)符号化といった通信路符号化(チャネル符号化)を施し、符号化率に相当する分だけ長くなったビット列を出力する。
通信路符号化器1022により符号化されたビット列は、インタリーバ1023によってインタリーブが施される。インタリーブが施されたビット列に、ディジタル変調器1024によりQPSKのようなディジタル変調が施されることによって変調信号(データ信号)が生成される。こうして生成されたデータ信号は、図2中のサブキャリア割り当て部103を経てサブキャリアグループ設定部104により複数のサブキャリアグループに割り当てられる。
ここで、複数のサブキャリアグループは複数のOFDM送信機でそれぞれ同一である。言い換えると、複数のサブキャリアグループは複数のOFDM送信機でそれぞれ共通である。「サブキャリアグループが同一である」とは、例えば図17(a)のサブキャリアグループ301と図17(b)のサブキャリアグループ301との関係のように、サブキャリアグループに含まれるサブキャリアのサブキャリアインデックスが同じであることを意味している。OFDM送信機間で同一のサブキャリアグループに含まれるサブキャリアには、OFDM送信機間で同一のデータ信号とパイロット信号が割り当てられる。
OFDM送信機間で同一のデータ信号は、例えば複数のOFDM送信機と通信可能な外部装置から各OFDM送信機において同一のビット列を取得し、このビット列から通信路符号化、インタリーブ及びディジタル変調を経て生成することもできる。他の例では、複数のOFDM送信機と通信可能な外部装置において、ビット列から通信路符号化、インタリーブ、ディジタル変調を経てデータ信号を生成し、これを複数のOFDM送信機に渡すことによっても得ることもできる。すなわち、データ信号生成部102の構成要素の一部または全部はOFDM送信機の外部に設けられていても構わない。
サブキャリアグループ毎に用いられる複素数値系列は、先の実施形態と同様にOFDM送信機間で異なる系列となるように設定される。
(受信機)
一方、本実施形態に従うOFDM受信機においては、図4中の復調部208が図23に示すようにディジタル復調器2081、デインタリーバ2082及び通信路復号化器2083によって構成される。すなわち、図4中のチャネル等化部207から出力された信号はディジタル復調器2081によって復調され、軟判定値が得られる。軟判定値の列は、デインタリーバ2082によってデインタリーブされる。デインタリーブ後の軟判定値の列は、通信路復号化器2083によりOFDM送信機における符号化方法(図22中の通信路符号化器1022の符号化方法)に対応する復号方法によって復号されることにより、元のビット列が再生される。
一般に通信路符号化を実施する場合、復号前の信号にバースト誤りが発生すると復号後のビット誤り率特性が劣化することが知られている。本実施形態によれば、各OFDM送信機で異なる複素数値系列をサブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられた信号に乗じなかった場合と比べて、復号前の信号にバースト誤りが発生する確率が低くなる。その結果として、復号後のビット誤り率特性を改善できるという効果がある。以下、本効果について詳細に説明する。
まず、バースト誤り率が発生する確率が低くなることは、次のように説明できる。数式(2)に示されるように、受信した信号の振幅は数式(2)の一部である数式(16)の値に応じて変わる。より詳細には数式(16)の値は、信号に乗じた複素数値とチャネル歪みとの積の位相がインデックスn毎に近い値を持っていた場合には大きくなり、位相がインデックスn毎に無相関な値を持っていた場合には、複素数値とチャネル歪みの積が打ち消しあって小さくなる。
サブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられた信号に、OFDM送信機で同じ複素数値が乗じられた場合、もしくは複素数が乗じられなかった場合、数式(16)の値はチャネル歪みの項によってのみ増減する。すなわち、周波数方向または時間方向あるいはその両方向においてチャネル歪みの相関が強い環境下においては、広いサブキャリア範囲にわたって同じように電力の増減が起こることになる。広い範囲にわたって電力の低下が起こると、バースト的な誤りを発生させる場合がある。
一方、サブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられた信号に、OFDM送信機で異なる複素数値が乗じられた場合、数式(16)の値は複素数値とチャネル歪みによって増減する。すなわち、周波数方向または時間方向あるいはその両方向においてチャネル歪みの相関が強い環境下においても、サブキャリアグループ毎にOFDM送信機で異なる複素数値系列が乗じられるために、サブキャリアグループの範囲を超えた広い範囲にわたって同じように電力の増減が起こる可能性が低くなる。言い換えると、あるサブキャリアグループの電力が小さくなった場合においても、その他のサブキャリアグループの電力が同様に小さくなってしまう可能性が小さくなる。これによりバースト誤りが発生する可能性を小さくすることができるという効果がある。バースト誤りの発生確率を低減できることにより、例えば以下のような利点がある。例えば送信しているデータが音声であった場合、音声通信の長期中断を防ぐことができる。例えば、OFDM送信機によって送信するデータ信号が動画であった場合、動画の長期欠損などを防ぐことができる。
次に、通信路符号化による復号後のビット誤り率特性を改善できる利点について詳細に説明する。前述したビタビ符号化、ターボ符号化、リードソロモン符号化あるいはLDPC符号化といった通信路符号化をビット列に施すと、通信路において信号の一部に誤りが生じた場合においても、受信側においてその誤りを訂正してもとの信号を復元することが可能である。
しかし、このような通信路符号化はバースト誤りに対しては誤り訂正能力が劣化することが知られている。ここで、サブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられた信号にOFDM送信機間で異なる複素数値系列を乗じた場合、サブキャリアグループの範囲を超えた広い範囲でバースト誤りが発生する確率が低くなる。このため、図22に示したデータ生成部102により通信路符号化によって得られるビット列を変調して生成されるデータ信号を複数のサブキャリアグループにわたって割り当てることにより、バースト誤りが発生する確率を低減できる。その結果として、復号後のビット誤り率を改善できるという効果が得られる。この場合、信号が割り当てられるサブキャリアグループの数が多いほど、バースト誤りが発生する確率を低減することができるため、復号後のビット誤り率特性の改善量も大きくなる傾向がある。
図24に、サブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられた信号に乗じる複素数値系列をOFDM送信機間で同一に設定した場合と異なるように設定した場合について、シミュレーションによる性能評価を行った例を示す。図24において横軸は信号対雑音比(SNR)、縦軸はブロックエラー率(block error rate:BLER)をそれぞれ表している。BLERとは、符号化されたビット列のうち1ビットでも誤った場合を誤りとし、全てのビットが正しかった場合に正しいとした場合の誤り率である。図24に示されるように、OFDM送信機間で異なる複素数値系列を設定することにより、特性を改善できることが分かる。
このように各OFDM送信機で異なる複素数値系列が選択されている場合においては、バースト誤りを低減する効果を得ることができる。本効果は、全てのサブキャリアがサブキャリアグループに割り当てられている場合においても発揮される。すなわち本効果を得るためには、図2のOFDM送信機においてサブキャリアグループ外のサブキャリアに割り当てられる信号122はなくてもよい。この場合、サブキャリアグループの設定は図25〜図28に示されるように、全てのサブキャリアがいずれかのサブキャリアグループに属するように割り当てられる。
(複素数値系列が送信機間で異なることについての説明)
次に、サブキャリアグループ毎に用いられる複素数値系列がOFDM送信機間で異なることについてより詳細に説明する。
N番目のOFDM送信機のM番目のサブキャリアグループに用いられる複素数値をR
N[M]と表すこととする。この場合、N番目のOFDM送信機における複素数値系列S
Nは
と表すことができる。複素数値系列S
AとS
Bが同じであるとは、ある複素数値定数Zの下で次式が成り立つことを意味する。
「複素数値系列がOFDM送信機間で異なる」とは、複素数値系列SNが全てのOFDM送信機間で同じではないということを表している。言い換えると、あるOFDM送信機で用いられている複素数値系列は、他のOFDM送信機で用いられている複素数値系列のうち少なくとも1つの系列とは異なっているということを意味している。このように少なくとも2つのOFDM送信機間で複素数値系列の一部でも値が違う部分があれば、バースト誤りを低減できる効果が得られるため、復号後のビット誤り率特性を改善することができる。
バースト誤りをより効果的に低減するためには、各OFDM送信機で用いられている系列SNがより多く異なっていることが望ましい。例えば図17を用いて説明したように、互いに擬似直交または直交の関係にある複素数値系列を用いることにより、それぞれ異なる複素数値系列を選択することができる。また、例えば乱数や擬似乱数を用いてOFDM送信機毎に独立に複素数値系列を生成してもよい。このようにすることで、OFDM送信機間で複素数値系列が同じになる確率を小さくすることができる。
(データ信号の割り当て)
次に、図29〜図33を用いてデータ信号を複数のサブキャリアグループに割り当てることについて詳細に説明する。
図29〜図33では、通信路符号化によって得られる1つ目のビット列を変調して生成されるデータ信号列をD1、2つ目のビット列から同様に生成されるデータ信号列をD2と表している。図29〜図33に示されるように、データ信号を複数のサブキャリアグループにわたって割り当てる。
図29及び図30は、連続する6個のサブキャリアグループにわたってそれぞれD1及びD2を割り当てる例を示している。図31は、連続しない6個のサブキャリアグループにわたってそれぞれD1及びD2を割り当てる例を示している。図32は、D1とD2をサブキャリアグループ内に混在させて、それぞれ12個のサブキャリアグループにわたって割り当てた場合の例を示している。図32の例では、図29及び図30の例と比べて1つのデータ列が配置されるサブキャリアグループの数が多いために、バースト誤りが発生する確率がより小さくなり、復号後の誤り率特性をより改善できる。
図29〜図31の例のようにサブキャリアグループの中にデータ信号列D1とD2が混在しないように割り当てた場合においても、例えば図33のようにサブキャリアグループのサイズを小さくすることによって1つのデータ列が配置されるサブキャリアグループの数を多くすることができる。ただしサブキャリアグループのサイズを小さくすると、サブキャリアグループ毎にパイロット信号が少なくとも1つ以上必要であるために、パイロットサブキャリアのオーバーヘッドが大きくなってしまう場合がある。オーバーヘッドを大きくしたくない場合には、サブキャリアグループのサイズをそのままにしてデータ信号列の長さを長くすることによっても、1つのデータ列が配置されるサブキャリアグループの数を多くすることができる。逆に言えば、1つのデータ列の長さが長い場合においては、サブキャリアグループのサイズを大きくすることによってパイロットサブキャリアのオーバーヘッドを小さくすることもできる。
次に、バースト誤りを効率よく低減するための複素数値系列の設定方法についてより詳細に説明する。
あるデータ信号のバースト誤り率を低減するためには、当該データ信号に乗じられる複素数値系列がOFDM送信機間で異なっている必要がある。例えば、図29においてN番目のOFDM送信機でサブキャリアグループ301〜312内のサブキャリアに割り当てられたデータ信号に対して、複素数値RN[M]を乗じるとする。
データ信号系列D1はサブキャリアグループ301,302,303,307,308及び309に割り当てられているので、複素数値系列{RN[1],RN[2],RN[3],RN[7],RN[8],RN[9]}をOFDM送信機間で異なる系列に設定することにより、D1のバースト誤りを低減することができる。同様に、データ信号系列D2はサブキャリアグループ304,305,306,310,311及び312に割り当てられているので、複素数値系列{RN[4],RN[5],RN[6],RN[10],RN[11],RN[12]}をOFDM送信機間で異なる系列に設定することにより、D2のバースト誤りを低減することができる。従って、データ信号系列D1及びD2の復号後の誤り率特性を改善できる。
本実施形態において、サブキャリアグループの設定方法及びサブキャリアグループ内のパイロットサブキャリアの配置方法は、先の実施形態と同様でよい。例えば、サブキャリアグループは図7〜図10のように設定され、サブキャリアグループ内のパイロットサブキャリアは図14〜図16のように配置される。
[第3の実施形態]
(送信機)
図34〜図43を用いて、本発明の他の実施形態について説明する。これまで述べた実施形態では、複数の送信機11,12,・・・,1NからOFDM信号を送信する際、通信路符号化により得られるビット列を変調したデータ信号とパイロット信号を送信機間で同一のサブキャリアに割り当て、サブキャリアグループ毎に定められた複素数値をパイロット信号及びデータ信号に乗じた後にOFDM変調を施す。これにより、サブキャリアグループの時間区間ではOFDM受信機20側で全チャネルのチャネル応答を個別に求めることなく、全チャネルのチャネル応答の和を求めることを可能とすると共に、バースト誤りの発生を低減して良好なビット誤り率特性を実現することができる。
一方、以下の実施形態のようにデータ信号の生成過程に変調信号に対する符号乗算が入った場合、符号を乗じた変調信号間ではチャネル応答が変わらないことが望ましい。そこで、以下の実施形態では変調信号に符号を乗じて生成されたデータ信号の信号セットは共通のサブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられるようにして、同じ複素数値が乗じられるようにする。これにより、符号を乗じて生成されるデータ信号の信号セット間でチャネルが変わらなくなるようにする。
本実施形態における図2に示したOFDM送信機中のデータ信号生成部102は、図34に示すように図22に示したビット列生成部1021、通信路符号化器1022、インタリーバ1023及びディジタル変調器1024に、符号乗算器1025が追加される。
図34のデータ信号生成部102では、図22と同様にビット列生成部1021によって生成されたビット列は、通信路符号化器1022に入力される。通信路符号化器1022では、入力されたビット列に対して通信路符号化を施し、符号化率に相当する分だけ長くなったビット列を出力する。通信路符号化器1022により符号化されたビット列は、インタリーバ1023によってインタリーブが施される。インタリーブが施されたビット列に、ディジタル変調器1024によりディジタル変調が施されることによって変調信号が生成される。
ディジタル変調器1024により生成された変調信号は、符号乗算器1025に入力される。符号乗算器1025では、入力された変調信号に系列長L(Lは正の整数)の符号が乗じられることにより、該符号に対応するL個の信号セットを含むデータ信号が生成される。符号乗算器1025で用いる符号としては、例えば後述するウォルシュ符号が挙げられる。
次に、符号乗算器1025について詳しく説明する。変調信号に系列長Lの符号を乗じるとは、L個の変調信号毎に符号の各要素を各変調信号に乗じることを表している。例えば、変調信号を長さ32の系列S[1],S[2],...,S[32]とし、系列長L=4の符号をC[0],C[1],C[2],C[3]とした場合、変調信号に符号を乗じてデータ信号の信号セットD[1],D[2],...,D[32]を得る処理は、以下のように表すことができる。
ただし、k=1,2,...,32
こうして生成されたデータ信号は、図2中のサブキャリア割り当て部103を経てサブキャリアグループ設定部104により複数のサブキャリアグループに割り当てられる。サブキャリアグループ設定部104では、パイロット信号が割り当てられる少なくとも一つのパイロットサブキャリアと、データ信号が割り当てられる少なくとも一つのデータサブキャリアを含む、少なくとも一つのサブキャリアグループを設定する。
さらに、サブキャリアグループ設定部104では、符号乗算器1025により一つの符号が乗じられて生成されたデータ信号の信号セットが共通のサブキャリアグループ内のサブキャリアに割り当てられるようにサブキャリアグループが設定される。言い換えると、データ信号を符号の系列長L単位に分けたそれぞれの信号セットが同じサブキャリアグループに割り当てられるようにする。上述の例では系列長Lが4であるので、データ信号の信号セットは、D[1],D[2],D[3]及びD[4]、D[5],D[6],D[7]及びD[8]、・・・D[29],D[30],D[31]及びD[32]となる。従って、例えばD[1],D[2],D[3]及びD[4]は、同じサブキャリアグループに割り当てるようにする。
一般に、変調信号に符号を乗じる場合、符号の系列長Lの範囲に渡ってチャネル歪みが変化していないことが望ましい。なぜならばチャネル歪みが系列長Lの範囲内で変化した場合、その変化によって符号が本来持つ性質が失われてしまうためである。符号の性質が失われるということについては、あとで具体的に例を挙げて説明する。
式(16)を用いて説明したように、サブキャリアグループが異なるサブキャリアにおけるチャネル歪みは、互いに異なるものになる。一方、サブキャリアグループが同じサブキャリアにおけるチャネル歪みはほぼ等しい。従って、本実施形態のように系列長Lの符号が乗じられて生成されたデータ信号の信号セットを共通のサブキャリアグループに割り当てることにより、符号の系列長Lの範囲におけるチャネル歪みの変化を小さくすることができ、その結果として符号が元々持っている性質を維持できるという効果が得られる。
図35、図36及び図37は、変調信号に符号を乗じて得られるデータ信号の信号セットのサブキャリアへの割り当て例を示す。図35、図36及び図37において、サブキャリアグループは太線により示される。例えば、図35においては信号セットD[1],D[2],D[3]及びD[4]、D[5],D[6],D[7]及びD[8]、D[9],D[10],D[11]及びD[12]、及びD[13],D[14],D[15]及びD[16]はそれぞれ上側のサブキャリアグループに割り当てられ、信号セットD[17],D[18],D[19]及びD[20]、D[21],D[22],D[23]及びD[24]、D[25],D[26],D[27]及びD[28]、及びD[29],D[30],D[31]及びD[32]はそれぞれ下側のサブキャリアグループに割り当てられている。さらに、図35の例では各信号セットのデータ信号は、時間方向に並ぶサブキャリアに割り当てられる。
前述のように、符号の性質を維持するためには符号の系列長の範囲でチャネル歪みが変化しないことが望ましい。そのためチャネル歪みの周波数方向の変動よりも時間方向の変動の方が小さい場合には、図35のように各信号セットのデータ信号を時間方向に並ぶ(時間方向に隣接する)サブキャリアに割り当てることが有効である。
一方、チャネル歪みの時間方向の変動よりも周波数方向の変動の方が小さい場合には、図36のように各信号セットのデータ信号を周波数方向に並ぶ(周波数方向に隣接する)サブキャリアに割り当てることが有効である。
さらに、チャネル歪みの時間方向の変動と周波数方向の変動の方が同程度である場合には、図37のように各信号セットのデータ信号を時間方向と周波数方向の両方に隣接するサブキャリアに割り当てることが有効である。
(受信機)
一方、本実施形態に従うOFDM受信機においては、図4中の復調部208が図38に示すように図23に示したディジタル復調器2081、デインタリーバ2082及び通信路復号化器2083に、符号乗算器2084及び累積器2085が追加される。
図38の復調部208では、図4中のチャネル等化部207から出力されたチャネル等化後のデータ信号は、符号乗算器2084により系列長Lの符号が乗じられた後、累積器2085により系列長Lに渡って累積される。この後の処理は、図23と同様である。すなわち、累積器2085から出力されるデータ信号はディジタル復調器2081によって復調され、軟判定値が得られる。軟判定値の列は、デインタリーバ2082によってデインタリーブされ、デインタリーブ後の軟判定値の列は、通信路復号化器2083によりOFDM送信機における符号化方法(図22中の通信路符号化器1022の符号化方法)に対応する復号方法によって復号される。
(ウォルシュ符号)
次に、変調信号に乗じる符号としてウォルシュ符号を使った場合について具体的に説明する。良く知られているようにウォルシュ符号とは、長さが2のべき乗であって、+1と−1の値を持つ、互いに直交する符号をいう。一般に、系列長Lのウォルシュ符号はL個存在する。例えばL=4の場合、ウォルシュ符号として以下の4つの互いに直交する符号を作ることができる。
これらのウォルシュ符号のうちのC1とC2を2つの変調信号S1[1],S1[2],...,S1[32]とS2[1],S2[2],...,S2[32]に乗じる場合を例にあげて説明する。変調信号にウォルシュ符号を乗じてデータ信号を生成する場合、ウォルシュ符号の系列長Lに渡って変調信号が同じ値を持つようにする。この例ではL=4であるので、変調信号は4つずつ同じ値となるようにする。これは変調信号を必要な系列長の1/4だけ生成しておいて、変調信号をそれぞれ4回ずつ繰り返すことにより生成することができる。この例では、3つの変調信号としてそれぞれ系列長8の変調信号S1[1],S1[2],...,S1[8]とS2[1],S2[2],...,S2[8]を用意し、それぞれを4回ずつ繰り返すことで系列長32の2つの変調信号を生成することができる。
このようにして生成される変調信号にウォルシュ符号を乗じることにより生成されるデータ信号の信号セットD1[1],D1[2],...,D1[32]及びD2[1],D2[2],...,D2[32]は、以下のように表すことができる。
ただし、k=1,2,...,32
図39(a)(b)、図40(a)(b)及び図41(a)(b)は、信号セットD1[k]及びD2[k]をサブキャリアに割り当てる例を示しており、信号セットD1[k]とD2[k]はそれぞれ同じサブキャリアに割り当てられる。図39(a)(b)、図40(a)(b)及び図41(a)(b)において、サブキャリアグループは太線により示される。
この際、前述のように各信号セットのデータ信号は、周波数方向と時間方向のうちチャネル変動が少ない方向に並ぶサブキャリアに割り当てられることが望ましい。すなわち、チャネル歪みの周波数方向の変動よりも時間方向の変動の方が小さい場合には、図39(a)(b)のように各信号セットのデータ信号を時間方向に並ぶ(時間方向に隣接する)サブキャリアに割り当てることが有効である。
一方、チャネル歪みの時間方向の変動よりも周波数方向の変動の方が小さい場合には、図40(a)(b)のように各信号セットのデータ信号を周波数方向に並ぶ(周波数方向に隣接する)サブキャリアに割り当てることが有効である。
さらに、チャネル歪みの時間方向の変動と周波数方向の変動の方が同程度である場合には、図41(a)(b)のように各信号セットのデータ信号を時間方向と周波数方向の両方に隣接するサブキャリアに割り当てることが有効である。
一方、パイロット信号が割り当てられたサブキャリアは、もう一方の割り当てではいずれの信号も割り当てられないようにする。この点について、図39(a)(b)の割り当てを使った場合を例にあげて説明する。
図39(a)ではサブキャリア411にパイロット信号Pを割り当てているので、図39(b)では同じサブキャリア413には信号を割り当てていない。同様にして図39(b)ではサブキャリア414にパイロット信号Pを割り当てているので、図39(a)ではサブキャリア412には信号を割り当てていない。このようにすることで、OFDM受信機においてデータ信号の信号セットD1[k]とD2[k]のそれぞれをチャネル等化するためのチャネル推定値を別々に算出することができる。OFDM送信機11,12,・・・,1Nは、このようにして生成された信号のいずれかを送信する。例えば図39(a)(b)の場合、OFDM送信機11,12,・・・,1Nの少なくとも一つは図39(a)に従って送信を行い、他の少なくとも一つは図39(b)に従って送信を行う。
これら2つの信号はそれぞれ異なるチャネル歪みを受けた後、OFDM受信機の受信アンテナ201で合成されて受信される。図39(a)の信号を送信したOFDM送信機からOFDM受信機までのチャネル歪みが合成されたものをH1、図39(b)の信号を送信したOFDM送信機からOFDM受信機までのチャネル歪みの合成されたものをH2とする。さらに、データ信号の信号セットD1[k]及びD2[k]が割り当てられているサブキャリアにおけるチャネル歪みをH1[k]及びH2[k]と表すこととする。この場合、受信されたデータ信号は以下のように表すことができる。
式(22)のデータ信号に符号C1を乗じてk=1からk=4まで累積すると、以下のようになる。
前述したように、ウォルシュ符号において式(23)中のC1とC2は直交している。従って、H2[k]がk=1〜4の範囲で一定である場合に、式(23)の第2項は0となる。また、H1[k]がk=1〜4の範囲で一定である場合に、式(23)の第1項はS1[1]となる。すなわち、H1[k]とH2[k]がk=1〜4の範囲で一定である場合に、受信信号からS1[1]を分離することができる。同様にして、受信信号に符号C2を乗じてk=1から4まで累積すると、S2[1]だけを分離することができる。
このようにデータ信号に乗じるウォルシュ符号の系列長Lの範囲でチャネル歪みの変化がない場合には、ウォルシュ符号の性質を使って2つのデータ信号を分離して受信することが可能である。しかしながらウォルシュ符号の系列長Lの範囲でチャネル歪みが変化した場合、式(23)からもわかるように、S1を分離しようとしてC1を乗じても、S2が完全にはキャンセルされずに残ってしまう。このことから、ウォルシュ符号の系列長Lの範囲ではチャネル歪みは変化しないことが望ましい。
すなわち、本実施形態のように一つのウォルシュ符号が乗じられた生成された、データ信号の信号セットを同一のサブキャリアグループに割り当てることによって、ウォルシュ符号の系列長Lの範囲でのチャネル歪みの変化を小さくすることができ、その結果としてウォルシュ符号がもつ性質である複数の信号を分離することができるという性質を維持することができる、という効果を得ることができる。
[第4の実施形態]
次に、第3の実施形態におけるウォルシュ符号に代えて時空間符号(Space Time Block Code:STBC)を使った実施形態について説明する。
本実施形態における図2に示したOFDM送信機中のデータ信号生成部102は、図42に示すように図34中に示した符号乗算器1025が時空間符号化器1026に置き換えられる。時空間符号化器1026では、ディジタル変調器1024により生成された変調信号に系列長L(Lは正の整数)の時空間符号が乗じる処理を含む時空間符号化が行われることにより、該符号に対応するL個の信号セットを含むデータ信号が生成される。
一方、図4に示したOFDM受信機中の復調部208は、図43に示すように図38に示した符号乗算器2084及び累積器2085が時空間復号化器2086に置き換えられる。
時空間符号は、一般に複数の送信機から同じ信号を送信する際に、送信機間でダイバーシチゲインを得るために使用される。符号を乗じた信号を時間的に並べて配置することから、時空間符号と呼ばれている。ただしOFDMにおいては、符号を乗じた信号を周波数方向に並べて配置することも可能であり、この場合には周波数空間符号(Space Frequency Block Code:SFBC)と呼ばれることもある。時空間符号と周波数空間符号との違いは、符号を乗じた信号を配置する方法だけであり、乗じる符号や符号を乗じる方法においては、本質的に同一である。そこで、以下では符号を乗じた信号を並べる方向を区別することなく、時空間符号と呼ぶこととする。
以下、系列長Lが2の時空間符号を例にあげて説明する。系列長2の時空間符号としては、例えば
がある。これらの時空間符号を変調信号S[1],S[2],...,S[32]に乗じてデータ信号を生成して送信する場合を例にあげて説明する。時空間符号化器1026において、変調信号に対し時空間符号のうちのC1を乗じるときとC2を乗じるときとでは、以下のように異なる処理を行う。すなわち、時空間符号化器1026は変調信号にC1を乗じる場合には、系列長毎の変調信号セットにC1をそのまま乗じるのに対して、C2を乗じる場合には系列長毎の変調信号セットの順番を入れ替え、それぞれの複素共役をとってからC2を乗じる。変調信号S[k]にC1を乗じて得られるデータ信号の信号セットD1[k]は、以下のように表される。
一方、変調信号S[k]にC2を乗じて得られるデータ信号の信号セットD2[k]は、kが偶数の場合と奇数の場合とで以下のように表される。
このようにして生成される、データ信号の信号セットD1[k]及びD2[k]は、ウォルシュ符号を使った場合と同様の方法でサブキャリアに割り当てられる。すなわち、図39(a)(b)、図40(a)(b)及び図41(a)(b)に示したように、信号セットD1[k]とD2[k]はそれぞれ同じサブキャリアに割り当てられる。
さらに、時空間符号を用いた場合においても、ウォルシュ符号を使った場合と同様に、パイロット信号が割り当てられたサブキャリアは、もう一方の割り当てではいずれの信号も割り当てられないようにする。このようにすることで、OFDM受信機20においてデータ信号の信号セットD1[k]とD2[k]のそれぞれをチャネル等化するためのチャネル推定値を別々に算出することができる。
OFDM送信機11,12,・・・,1Nは、このようにして生成された信号のいずれかを送信する。例えば図39(a)(b)のように割り当てられた場合には、図39(a)または図39(b)を送信する。このようにすることで、データ信号の信号セットD1[k]とD2[k]のそれぞれをチャネル等化するためのチャネル推定値を別々に算出することができる。OFDM送信機11,12,・・・,1Nは、このようにして生成された信号のいずれかを送信する。例えば図39(a)(b)の場合、OFDM送信機11,12,・・・,1Nの少なくとも一つは図39(a)に従って送信を行い、他の少なくとも一つは図39(b)に従って送信を行う。
これら2つの信号はウォルシュ符号を使った場合と同様に、それぞれH1とH2のチャネル歪みを受け、OFDM受信機20の受信アンテナで合成されて受信される。こうして受信されたデータ信号は、以下のように表すことができる。
次に、時空間復号化器2086について説明する。説明を分かりやすくするため、式(27)のデータ信号のうち最初の2つ分に注目して説明する。受信される1つ目のデータ信号をr[1]、2つ目のデータ信号をr[2]とすると、それぞれ以下のように表すことができる。
D1[1],D1[2],D2[1]及びD2[2]をそれぞれ展開すると、R[1]及びR[2]はそれぞれ以下のように変形される。
ここで、チャネル歪みは時空間符号の系列長の範囲に渡って変化していないと仮定する。すなわちH1[1]=H1[2]、かつH2[1]=H2[2]であると仮定する。この場合、以下のような計算式によりS[2]をキャンセルしてS[1]だけを算出することができる。
同様にして、以下のような計算式によりS[1]をキャンセルしてS[2]だけを算出することができる。
時空間復号化器2086において上記のような処理を行うことにより、S[1]及びS[2]を分離することができるとともに、それぞれ2つのチャネルの電力の和が乗算された形で算出される。このことは、2つのチャネルの電力を合成して受信していることを意味し、これによって2つのチャネルの間のダイバーシチゲインを得ることができる。
一方、時空間符号の系列長の範囲でチャネル歪みが変化している場合、すなわちH1[1]=H1[2]とH2[1]=H2[2]のいずれかが成り立たない場合、式(30)の計算でS[2]が完全にはキャンセルされずに残ってしまう。そのためS[1]を精度よく分離できなくなってしまう。このことから時空間符号を使用する際においても、符号の系列長の範囲ではチャネル歪みが変化しないことが望ましいことがわかる。本実施形態に従う送信方法をとった場合、時分割符号の系列長の範囲でのチャネル歪みの変化を小さくすることができるため、時空間符号が持つ性質を維持することができるという効果が得られる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。