JP2009016103A - 多価イオンビーム照射方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 多価イオンを発生させる多価イオン源と、その多価イオン源から導出された多価イオンビームを試料に向けて誘導するビームガイドと、試料を保持する試料保持部とを少なくとも備える多価イオンビーム照射装置において、試料に対向するビームガイド端部と試料保持部とを、支持すると共に並進移動させて位置調整する基盤ステージと、試料保持部に対してビームガイド端部を相対的に、2次元で並進移動させて位置調整するXYステージと、試料保持部のみを独立に、XYステージの移動方向と略垂直なZ方向へ並進移動させて位置調整するZ並進移動機構とを有する照射位置制御部を設ける。
【選択図】 図3
Description
1)入射点近傍にナノメートルサイズの構造変化が起きる(非特許文献1〜2)。
T. Meguro et al.:Appl. Phys. Lett.79 (2001) 3866-3868. Y. Baba, K. Nagata, S. Takahashi, N. Nakamura, N. Yoshiyasu,M. Sakurai, C.Yamada, S. Ohtaniand M. Tona: Surface Sci. 599(2005)248-254.
J.W. McDonald, D. Schneider, M.W.Clark and D.DeWitt: Phys. Rev. Lett. 68(1992)2297.
M. Tona, S. Takahashi, K. Nagata, N. Yoshiyasu, C. Yamada, N. Nakamura, S.Ohtaniand M. Sakurai: Appl. Phys. Lett.87 (2005) 224102. M. Tona, H. Watanabe, S. Takahashi, N. Nakamura,N. Yoshiyasu, M. Sakurai,T. Terui, S. Mashiko, C. Yamada, and S. Ohtani: Surface Sci. (accepted)
EBISは、カソード、ドリフトチューブ、コレクター、ソレノイド磁石、イオン引き出し用レンズなどから構成されている。カソードから出射した電子は、磁場中に配置されたドリフトチューブを通り、コレクターに回収される。電子は、ドリフトチューブに形成される強磁場で圧縮され大電流密度の電子ビームとなる。一方、カソード付近から導入された気体は、イオンに対して障壁となるドリフトチューブ内に形成される井戸型ポテンシャルによって、電子による衝突電離が進み多価イオンとなる。
従来のEBISによる典型的なビーム強度は、105〜106/mm2/s であり、この場合、100ナノメートル四方に入射するイオンは100秒間に1個以下に過ぎない。
それらに関する従来技術には、次のようなものがある(非特許文献6、特許文献1〜4)。
A. Persaud, F. I. Allen, F. Gicquel,S.J.Park, J. A. Liddle, T. Schenkel Tzv. Ivanov,K. Ivanova, I. W.Rangelow,J. Bokor: "Single ion implantation with scanningprobe alignment", J. Vac. Sci. Technol. B, Vol.22, No. 6, 2004.
電子銃、ドリフトチューブ、コレクターの各電極の中心軸と、超伝導磁石の磁場軸とを略一致させて、安定した電子ビームの発生に寄与させてもよい。
また、十分なビーム強度が得られる多価イオン源が得られ、高価数の多価イオンビームを、有効に試料に照射することも可能になった。
本発明者らは、ビーム強度が高いことに加えて、運転及び保守が容易であり、製作コストも安価な汎用EBIS型多価イオン源を開発している(非特許文献7〜9)。
M. Sakurai, F. Nakajima, T. Fukumoto, N.Nakamura, S. Ohtani and S.Mashiko:J. Phys. Conf. Ser. 2 (2004)52-56. M. Sakurai, F. Nakajima, T. Fukumoto, N.Nakamura, S. Ohtani , S. Mashiko, H. Sakaue:Nucl. Instr. Meth.B235 (2005) 519-523. 櫻井 誠,中嶌史晴,福本卓典,中村信行,大谷俊介,益子信郎:真空48(2005) 317-320.
EBIS型多価イオン源は、カソード、ドリフトチューブ、コレクター(11)、ソレノイド磁石、イオン引き出し用レンズなどから構成される。カソードから出射した電子は、磁場中に配置されたドリフトチューブを通り、コレクター(11)に吸収される。カソード付近から導入された気体が、ドリフトチューブ内で圧縮された大電流密度の電子ビームと衝突し、電離が進むことで多価イオンとなる。
電子ビームの殆どは衝突せずに多価イオン生成領域を通過し、コレクター(11)に回収される。カソードから出射した電子の全てが、コレクター(11)に回収される必要があるが、電磁場の分布が悪いと電子が理想的な軌道をとらないためコレクター領域から電子銃側に逆戻りし、電子銃の各電極に衝突する。これによる加熱効果等で、安定に電子ビームを発生させることができなくなることがある。
この条件を実現するために、次の改良を施した。すなわち、1)電子銃を従来より約90mm超伝導磁石から遠ざけ、2)磁場の立ち上がりを十分急峻にするために電子銃磁気シールドの磁性体の口径を約6mmに絞り、3)コレクター(11)の磁気シールド(12)の厚さを増加させ、4)その磁気シールド(13)の内部に電磁石としてコレクターコイルを設け、5)電子のコレクター(11)から電子銃側への戻りを抑えるためのサプレッサー電極(14)を2個に増設し、6)サプレッサーとエキストラクター(15)の口径を絞った。
コレクター(11)の磁気シールド(12)を厚くしたことにより、コレクター部の重量が増し、また超伝導磁石の励磁中に磁気シールド(12)が磁石に引き寄せられる力も増すので、コレクター(11)を支持するセラミック棒(16)太くして強化した。
この条件を実現するために、各電極の中心軸は、コレクター(11)側に覗き窓を設置し、予めドリフトチューブの軸に合わせておいたトランシットで観測しながら、電子銃とコレクターの位置調整をすることにより誤差0.1mm以内に収めた。
この電極軸と磁場軸との位置関係は、超伝導磁石容器のボアと、それに挿入されているドリフトチューブ配管との隙間を均一にするという方法で調整した。
最終的には、実際に電子ビームとイオンビームを発生させ、電子ビームの回収率が高く、イオンの価数と強度が高くなる最も優れた性能を示すように微調整した。
イオン源の下流側に、電子レンズ(21)や分析磁石(22)、各種検出器などを設けた配管(ビームライン)を接続し、前述のイオン源立ち上げの各段階で、イオン源から直流的に流出する多価イオンの質量スペクトルを測定した。ビーム強度の測定には、分析磁石(22)の出口スリット(23)直後に設けたファラデーカップ(24)を用いた。
その結果、イオンビーム強度や価数分布が、磁場軸と電極軸のわずかなずれによって著しく変化することや、全圧約5×10−8Paの残留ガスによっても高価数イオンの生成が阻害されることがわかった。ただし、この圧力はコレクター部に取り付けた真空計による測定値であり、ドリフトチューブ内部の圧力はこの値よりも高いと考えられる。
多価イオンのポテンシャルエネルギーの効果をナノプロセスに応用するためには、試料に照射する際のイオンの運動エネルギーは低い方が望ましく、また、イオン源から高速で引き出されたイオンを減速して照射すると、ビームを発散させる結果となり高密度で照射することができなくなってしまう。
従って、イオン源からなるべく低エネルギーで引き出すことが望ましい。本装置では、ドリフトチューブ電位が1.5〜3kVの範囲おいて同程度のイオン電流が得られることがわかった。
図3は、マスクの正面図と、その一部を拡大した側面断面図である。
略円盤形のマスク(31)には、数十nmから100nmの径の孔部(32)が周期的に配列される。例えば、径100nmの円形の孔を正方格子状に300nm間隔で配列させたものが利用できる。
マスク(31)は、その孔部(32)に多価イオンビームを通過させられればよく、用途に応じてその形状や孔部(32)の形状や配列を適宜変えられるように着脱自在に構成することが好ましい。
マスク(31)によって多価イオンビームは、孔部(32)の径程度のナノビームに絞られるが、マスク(31)と試料(100)の間隔Dが離れていると、ビームの発散の影響で試料(100)上のビームサイズが広がってしまう。
角度広がりθの多価イオンビームが、径dの孔部(32)を通過して、試料(100)に達するまでに距離Dを要するとすると、試料(100)に達したときの角度広がりはDθとなる。この角度広がりDθを孔部(32)の径dより小さくするためには、θ=0.01rad、d=10nmとすると、D<1μmであることが必要になる。
また、マスク(31)と試料(100)は、多価イオンビームに対してそれぞれ位置合わせの機構が必要であり、更に、試料(100)はその表面の清浄化処理やLEED、STM観察などのために移送可能である必要もある。
これらの要請を満たすマスク(31)と試料(100)の位置調整機構を製作した。
なお、図9では、マスク(31)を試料(100)から数nm程度の近傍で、ピエゾモーターにより並進移動されるXYステージ(34)は図示されず、図10では、マスク(31)は図示されていない。
また、XYステージ(34)の支軸(36)は、並進用ベアリング(41)及びラック-ピニオン(44)、スプロケット-チェーン(45)等を介して、並進導入機構(52)及び回転導入機構(53)に接続されている。その並進導入機構(52)によっては、マスク(31)と試料(100)に、XY方向への並進移動が導入され、回転導入機構(53)によっては、試料(100)に、Z方向への回転が導入される。
この7軸の自由度をもつ照射位置制御装置はICF356規格のフランジにマウントされ、駆動のための並進移動及び回転導入機構(51)(52)(53)も同一のフランジに取り付けられる。
これにより、多価イオンの照射領域及び非照射領域をナノメートルレベルで区分することが可能となり、また試料(100)内での照射位置もナノメートルレベルで選定制御可能になった。
なお、並進移動及び回転を導入する駆動制御は、ピエゾモーターやステッピングモーターなどを用いた従来公知の技術を適宜援用できる。その駆動力の伝達手段も、ラック-ピニオンやスプロケット-チェーンなど従来公知の技術を適宜援用できる。
マスクには、SiO2の薄膜に100nmの孔を多数配列させたものを用いた。
図11で黒く表示されているクレーター部分は、試料の上層の剥離を示し、その面積は5.5nm2であり、深度は0.35nmに達した。
多価イオンビームの価数を30〜50の範囲で変化させて、同様の実験を行った。その結果、価数の増加に伴って、クレーター部分の体積が急増することが判明した。
図13に示されるように、照射によって、HOPGの表層に不規則に分散した数nmのドットが生じた。
図14に示されるように、Bis-MSBの被覆によって、そのドットは10nm程度まで大きくなった。これは、ドットにBis-MSBが集積したからであり、多価イオンビームの照射がナノスポットの活性化をもたらしたことを意味する。
12 磁気シールド
13 コレクターコイル
14 サプレッサー電極
15 エキストラクター
16 セラミック支持棒
21 電子レンズ
22 分析磁石
23 出口スリット
24 ファラデーカップ
25 入口スリット
26 ファラデーカップ
27 ゲートバルブ
28 2次電子検出部
31 マスク
32 孔部
33 マスクホルダー
34 XYステージ
35 レンズ電極
36 支軸
41、42 並進用ベアリング
43 平歯車列
44 ラック-ピニオン
45 スプロケット-チェーン
51 並進回転導入機構
52 並進導入機構
53 回転導入機構
100 試料
101 試料ホルダー
Claims (22)
- 多価イオンを発生させる多価イオン源と、その多価イオン源から導出された多価イオンビームを試料に向けて誘導するビームガイドと、試料を保持する試料保持部とを少なくとも備える多価イオンビーム照射装置において、
試料に対向するビームガイド端部と試料保持部とを、支持すると共に並進移動させて位置調整する基盤ステージと、
試料保持部に対してビームガイド端部を相対的に、2次元で並進移動させて位置調整するXYステージと、
試料保持部のみを独立に、XYステージの移動方向と略垂直なZ方向へ並進移動させて位置調整するZ並進移動機構とを有する照射位置制御部、を設けた
ことを特徴とする多価イオンビーム照射装置。 - 基盤ステージに、ある軸を中心に回動させて位置調整する回転機構を少なくとも一つ設けた
請求項1に記載の多価イオンビーム照射装置。 - XYステージに、約100nmのステップで並進移動させる駆動手段を設けた
請求項1または2に記載の多価イオンビーム照射装置。 - XYステージの支軸に、基盤ステージにZ方向の並進移動及び回転の駆動力を伝達するZ並進回転導入機構を接続した
請求項1ないし3に記載の多価イオンビーム照射装置。 - XYステージの支軸に、基盤ステージにXY方向の並進移動の駆動力を伝達するXY並進導入機構を接続した
請求項1ないし4に記載の多価イオンビーム照射装置。 - XYステージの支軸に、試料保持部にZ方向の回転の駆動力を伝達するZ回転導入機構を接続した
請求項1ないし5に記載の多価イオンビーム照射装置。 - ビームガイド端部に、10〜100nmの径の孔部を有するマスクを設けた
請求項1ないし6に記載の多価イオンビーム照射装置。 - マスクに、約100nmの径の孔部を、約300nmの間隔で格子状に設けた
請求項7に記載の多価イオンビーム照射装置。 - 孔部と試料との距離が1μm以下に調整可能である
請求項7または8に記載の多価イオンビーム照射装置。 - 多価イオン源に、
エミッション電流約100mA以上の電子ビームを電子銃より発生させ、約10keV以上の高エネルギーに加速し、約10−8Pa以下の超高真空を維持した状態で、強磁場中に誘導して電子ビームを絞り、原子・イオンとの衝突による電離を繰り返すことにより多価イオンを生成するEBIS型多価イオン源を設ける
請求項1ないし9に記載の多価イオンビーム照射装置。 - 多価イオンを発生させる多価イオン源と、その多価イオン源から導出された多価イオンビームを試料に向けて誘導するビームガイドと、試料を保持する試料保持部とを少なくとも備える多価イオンビーム照射装置において、
試料に対向するビームガイド端部と試料保持部とを、支持すると共に並進移動させて位置調整する基盤ステージによって、ビームガイド端部と試料保持部を並進移動させると共に、
試料保持部に対してビームガイド端部を相対的に、2次元で並進移動させて位置調整するXYステージによって、試料保持部とビームガイド端部との相対位置を2次元で並進移動させ、更に、
試料保持部のみを独立に、XYステージの移動方向と略垂直なZ方向へ並進移動させて位置調整するZ並進移動機構によって、試料保持部をXYステージの移動方向と略垂直なZ方向へ並進移動させて、
照射位置を調整した後に、試料への照射を行なう
ことを特徴とする多価イオンビーム照射ンビーム照射方法。 - 基盤ステージに、ある軸を中心に回動させて位置調整する回転機構を少なくとも一つ設け、その回転機構によって基盤ステージを回転させて、照射位置を調整する
請求項11に記載の多価イオンビーム照射方法。 - 多価イオン源に、EBIS型多価イオン源を設け、
その運転前に、イオン源全体を約200℃以上に数日間ベーキングし、ドリフトチューブに磁場及び電場を印加した状態で、ペニング放電による放電洗浄を数日間施す脱ガス処理によって、運転中の超高真空状態を維持する
請求項11または12に記載の多価イオンビーム照射方法。 - 排気系に、排気速度約300リットル/sのターボ分子ポンプとチタンゲッターポンプを用いる
請求項11ないし13に記載の多価イオンビーム照射方法。 - ドリフトチューブを約25K以下まで冷却して、ドリフトチューブ内の残留ガスを脱ガスする
請求項11ないし14に記載の多価イオンビーム照射方法。 - エミッション電流約100mA以上の電子ビームを発生させた状態で、約10−8Pa以下の超高真空を維持することによって、高価数の多価イオンを生成する
請求項11ないし15に記載の多価イオンビーム照射方法。 - 多価イオン源からビームガイドにおける電子ビームの行路の磁場を、
電子銃のカソード付近で磁場0にし、その後、略2次関数的に強度を増大させ、コレクターの電子回収領域で磁場0にする
請求項11ないし16に記載の多価イオンビーム照射方法。 - 多価イオン源からビームガイドにおける電子ビームの行路の位置調整を、
電子銃、ドリフトチューブ、コレクターの各電極の中心軸と、超伝導磁石の磁場軸とを、略一致させる
請求項11ないし17に記載の多価イオンビーム照射方法。 - コレクター側に覗き窓を設置し、予めドリフトチューブの軸に合わせておいたトランシットで観測しながら、電子銃とコレクターの位置調整を行って、各電極の中心軸を一致させる
請求項18に記載の多価イオンビーム照射方法。 - 超伝導磁石の容器のボアと、それに挿入されているドリフトチューブの配管との隙間を均一にすることで、各電極軸と磁場軸とを一致させる
請求項18に記載の多価イオンビーム照射方法。 - ドリフトチューブの電位を1.5〜3kVとして、多価イオン源から低エネルギーで引き出して、試料に照射する
請求項11ないし20に記載の多価イオンビーム照射方法。 - 多価イオンの価数を増減させることで、試料への照射作用を増減させる
請求項11ないし21に記載の多価イオンビーム照射方法。
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