JP6758958B2 - 重イオンビーム生成装置及び方法 - Google Patents
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Description
後者の方法では、発生したイオンは電子と混合したプラズマの状態でイオン源から輸送され、その後加速されて重イオンビームを生成する。
そこで、目的外の不純物イオン種が含まれる重イオンビームが出力されないようにするために、イオン源に内部配置又外部接続させたイオン検出器でこの不純物イオン種が検出されたときは、重イオンビームの出力を遮断するインターロック機構を採用する技術が公知となっている。
つまり、重イオンビームの照射中にインターロック機構が動作しても、遮断が間に合わず、ビームが下流に侵入してしまうおそれがある。そのことによりビームラインが不純物イオン種に汚染されてしまうおそれがある。そして、インターロック機構の動作仕様が、イオン検出器の性能に左右されることが避けられない。さらに、インターロック機能の動作により照射中の重イオンビームが遮断されるとビームの利用効率が低下してしまう。
図1に示すように重イオンビーム生成装置10は、目的イオン種の他に不純物イオン種を含むイオンを発生させるイオン源11と、イオンを線形加速して重イオンビームを生成する線形加速器12と、重イオンビームの軌道15(15a,15b)を曲げる偏向磁石13(13a,13b)と、線形加速器12の内部又は線形加速器12と偏向磁石13aとの間に設けられ重イオンビームが通過する際に目的イオン種及び不純物イオン種に対しそれぞれ異なるエネルギー損失を付与する膜16と、を備えている。
なお図示を省略するが重イオンビーム生成装置10には、図示される構成要素の他に、ビーム整形用の永久磁石又は電磁石、ビーム検出器、ゲートバルブ、もしくはその他の機器等が配置される場合がある。
レーザを用いたイオン源11は、レーザ光を真空容器内のターゲットの表面に照射し、レーザ光のエネルギーによりターゲットの元素を蒸発・イオン化させてプラズマ(レーザアブレーションプラズマ)を生成する。
レーザを用いたイオン源11では、レーザ光のエネルギーおよび密度を調整することにより、多価イオンを発生させることができる。
そして、レーザアブレーションプラズマに含まれるイオンをイオン源11から引き出し、線形加速器12によりイオンを加速させて重イオンビームを生成する。さらには、この重イオンビームを円形加速器21(図2)によりさらに加速して高エネルギーの重イオンビームを生成する。
この重イオンビームの線形加速器12や円形加速器21における加速性は、イオンの質量電荷比(q/m)[q:価数、m:質量数]が大きい程、優れており、それに合わせて動作条件が設定されている。
なお炭素製のターゲットで構成されるイオン源11では、レーザ光のエネルギーおよび密度を調整することにより、6価の比率が高い、4価から6価が混在したイオンを発生させることができる。
この不純物イオン種は、例えばターゲットに水分が付着している場合、2価の水素イオン及び8価の酸素イオンが該当する。その他に、真空容器内に残留ガス(窒素等)が存在する場合、ターゲットに汚染物が付着している場合も、重イオンビームに不純物イオン種が混入する原因となる。
イオン源11で発生させるイオンとして、炭素(C)を例示したが、特に限定はなく、例えばヘリウム(He),アルゴン(Ar),カルシウム(Ca),キセノン(Xe),ウラン(U)等も挙げられる。
なお線形加速器12の動作条件は、目的イオン種の加速効率が最大となるように設定されているが、一定の割合の不純物イオン種も同時に加速されて重イオンビームに取り込まれる。
これら線形加速器12では、導体の壁に囲まれた空洞共振器を励振し、高周波磁場を用いてイオンを加速する。そして、炭素イオンでは、重イオンビームが4.0MeV/u以上のエネルギーで出射される。
重イオンビームが膜16を通過すると、目的イオン種及び不純物イオン種は、膜16の構成元素との親和性の差に起因して、それぞれ異なるエネルギー損失が付与される。
これにより、膜16を通過した目的イオン種及び不純物イオン種は、それぞれ別々の速度に減速する。
レーザイオン源11のターゲットが炭素から構成される場合は、膜16はグラファイト又はダイヤモンドで構成されることが望ましい。
ここで4.0MeV/u以上のエネルギーを持つ炭素イオンの重イオンビームに対し、膜16の通過領域が、0.5mg/cm2から2mg/cm2の範囲、さらに望ましくは1.1mg/cm2から1.5mg/cm2の範囲で構成されていることが望ましい。
なお、膜16は、単一で構成される場合に限定されず、複数を重ねたり間隔をあけて配置させたりすることにより構成される場合もある。
図3(A)のグラフは、膜16の厚みを変化させる条件の下、炭素イオンの膜通過後のエネルギーが、4.02MeV/uとなるよう、膜16通過前の炭素イオンのエネルギーを変え、同一エネルギーで窒素イオンを通過させた時、膜16通過後の窒素イオンのエネルギーの、膜16通過後の炭素イオンのエネルギーに対する差異を表す。
一方で例えば2mg/cm2以上の膜16の厚みではエネルギー損失が0.45MeV/uとなり同一出射エネルギーとなるようにするためには線形加速器12の出射エネルギーを0.45MeV/u上げる必要があり加速効率の低下を招くことが分かる。
従来より線形加速器の後段に接続される円形加速器の炭素重イオンビーム加速性を向上させるため、線形加速器と円形加速器との間に0.2mg/cm2程度の炭素の薄膜(ストリッパ)を介在させ、炭素イオンのフルストリップ率を向上させることが行われてきた。
しかし、このストリッパは、実施形態に示すような、通過した重イオンビームを目的イオン種及び不純物イオン種をそれぞれ別々に減速する効果を、持ち合わせていない。
偏向磁石13(13a,13b)は、発生する直流磁場の作用により、直進する重イオンビームに、速度に比例した向心力を付与し、その軌道15(15a,15b)を円弧状に曲げるものである。採用される偏向磁石13としては、電磁石、永久磁石、静電デフレクター等が挙げられる。
このため、目的イオン種を含む重イオンビームは、中心軌道15aを進行してスリット17を通過し後段に導かれ、不純物イオン種を含む重イオンビームは、中心軌道15aを外れた軌道15bを進行してスリット17にトラップされる。
なお図1において、スリット17は、二つの偏向磁石13(13a,13b)に挟まれる真空容器18cに配置される実施形態を示している。
なおスリット17の配置位置は、特に限定はなく、膜16を通過した目的イオン種及び不純物イオン種が、それぞれ減速された速度に応じた曲率半径の軌道15(15a,15b)を進行する位置にあればよい。またスリット17の開口の形状も、特に限定はなく、円形、多角形及びその他の形状を取り得る。
ところでスリット17は、重イオンビームから不純物イオン種を除去させるうえで必須の構成要素という訳でないが、中心軌道15aを外れて進行する不純物イオン種が後段の真空容器18の内壁を汚染することの防止にも貢献する。
そのような円形加速器としては、シンクロトロンが挙げられるが、サイクロトロンやその他の加速器とすることもできる、
シンクロトロンとは、イオンの加速にあわせて、磁場と加速電場の周波数をコントロールすることにより、加速イオンの軌道半径を一定に保ちながら加速を行うものである。
重イオンビームは、患者の体内を通過する際に運動エネルギーを失って速度を低下させるとともに、速度の二乗にほぼ反比例する抵抗を受けてある一定の速度まで低下すると急激に停止する。そして、粒子線ビームの停止点近傍では、ブラッグピークと呼ばれる高エネルギーが放出される。
実施形態に係る重イオンビーム生成装置10を適用することにより、不純物となる水素分子イオン・酸素イオン・窒素イオンを排除して、腫瘍の治療に必要な炭素イオンのみを含む重イオンビームを患者に照射することができ、治療計画通りに腫瘍細胞を破壊することができる。
イオン源11において、炭素製のターゲットに対しレーザを照射して、目的イオン種(炭素イオン)を発生させる(S11)。なおこのイオン源11で発生したイオンには、不純物イオン種(水素分子イオン・酸素イオン・窒素イオン等)が含まれる場合がある。
不純物イオン種は、中心軌道15aから外れた軌道15bを進行してスリット17でトラップされるが(S15)、目的イオン種(炭素イオン)はスリット17の開口を通過して中心軌道15aを進行して円形加速器21に入射する(S16)。
Claims (7)
- イオンを発生させるイオン源と、
前記イオンを線形加速して重イオンビームを生成する線形加速器と、
前記重イオンビームの軌道を曲げる偏向磁石と、
前記線形加速器の内部又は前記線形加速器と前記偏向磁石との間に設けられ、前記重イオンビームが通過する際にエネルギー損失を付与する膜と、を備え、
前記イオンは、目的イオン種の他に不純物イオン種を含むものであって、
前記膜は、前記重イオンビームが通過する際に前記目的イオン種及び前記不純物イオン種に対しそれぞれ異なるエネルギー損失を付与すものであり、
前記膜は、前記目的イオン種と同一元素により構成される、ことを特徴とする重イオンビーム生成装置。 - イオンを発生させるイオン源と、
前記イオンを線形加速して重イオンビームを生成する線形加速器と、
前記重イオンビームの軌道を曲げる偏向磁石と、
前記線形加速器の内部又は前記線形加速器と前記偏向磁石との間に設けられ、前記重イオンビームが通過する際にエネルギー損失を付与する膜と、を備え、
前記イオン源は、レーザ照射によりイオンを発生させるレーザイオン源であり、
前記レーザイオン源のターゲットは炭素から構成され、前記膜はグラファイト又はダイヤモンドで構成される、ことを特徴とする重イオンビーム生成装置。 - イオンを発生させるイオン源と、
前記イオンを線形加速して重イオンビームを生成する線形加速器と、
前記重イオンビームの軌道を曲げる偏向磁石と、
前記線形加速器の内部又は前記線形加速器と前記偏向磁石との間に設けられ、前記重イオンビームが通過する際にエネルギー損失を付与する膜と、を備え、
前記重イオンビームをさらに加速する加速器に入射させるための入射器として適用されることを特徴とする重イオンビーム生成装置。 - 前記軌道の曲率半径の違いを利用して、前記目的イオン種を含む前記重イオンビームを選択的に透過させるスリットを、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の重イオンビーム生成装置。
- 前記線形加速器は、前記炭素を目的イオン種とする前記重イオンビームを4.0MeV/u以上のエネルギーで出射し、
前記膜は、0.5mg/cm2から2mg/cm2の範囲で構成されるグラファイト膜であることを特徴とする請求項2に記載の重イオンビーム生成装置。 - 前記加速器で加速された前記重イオンビームを腫瘍部に照射して治療する重粒子線治療装置の入射器として適用されることを特徴とする請求項3に記載の重イオンビーム生成装置。
- イオン源において、イオンを発生させるステップと、
線形加速器において、前記イオンを線形加速して重イオンビームを生成するステップと、
偏向磁石において、前記重イオンビームの軌道を曲げるステップと、
前記軌道を曲げるステップよりも前に、前記線形加速器の内部又は前記線形加速器と前記偏向磁石との間に設けられた膜において、前記重イオンビームが通過する際にエネルギー損失を付与するステップと、
前記重イオンビームをさらに加速する加速器に入射させるステップと、を含むことを特徴とする重イオンビーム生成方法。
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