JP2006302785A - 多価イオン照射装置及びそれを用いた微細構造の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 低速の多価イオンを用いて空間的に正確で、かつ、イオン注入量などを精密に制御できる多価イオン照射装置及びそれを用いた微細構造の製造方法を提供する。
【解決手段】 多価イオン照射装置30は、多価イオン発生源1と、多価イオンを試料に導くための多価イオンガイド33と、試料35を搭載する可動の試料台36と、二次電子検出器38と、を含み、多価イオン34を可動の試料台36の制御により試料35の所定位置に照射する。多価イオンガイド33の他端部はキャピラリー部からなっている。多価イオンガイド33で収束した多価イオン34を、試料35に空間分解能が高く、かつ、正確なドーズ量で照射することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、多価イオン照射装置及びそれを用いた微細構造の製造方法に関するものである。
原子から電子を取り除くと正のイオンができるが、例えばXe44+ イオンのように、電子を2個以上取り去ったものを正の多価イオンという。多価イオンは極めて大きな内部エネルギーを持っており、多価イオンが固体表面と衝突すると、多数の二次電子が放出されたり(非特許文献1参照)、多価イオンの入射点まわりにナノメートルの大きさの構造変化が誘起される(非特許文献2参照)など、数多くの特徴的な現象が起こる。
この多価イオンと物質の特異な相互作用は、単一イオンインプランテーションや量子ドット作製などのナノメートル領域のプロセス技術に応用できる可能性があり、注目を集めている(非特許文献3参照。)。
このような多価イオンを生成するイオン源としては、電子サイクロトロン共鳴(ECR)型イオン源(ECRIS)と、電子ビーム型イオン源(EBIS)とが知られている。後者は得られるイオンの電離度が高いという特徴がある。
EBISとしては、原子物理学の研究用に開発された核融合研究所の装置が公知である(例えば、非特許文献4参照)。この装置は、電子源(カソード)、ドリフトチューブ、コレクタ、ソレノイド磁石、イオン引き出し用レンズなどから構成されている。カソードから出射した電子は、磁場中に配置されたドリフトチューブを通り、コレクタに捕集される。電子は、ドリフトチューブに形成される強磁場で圧縮され大電流密度の電子ビームとなっている。一方、カソード付近から導入された気体は、イオンに対して障壁となる、ドリフトチューブ内に形成される井戸型ポテンシャルによって電子による衝突電離が進み、多価イオンとなる。
さらに、1988年には、EBISを改良したEBIT(電子ビームイオントラップ)が開発された(非特許文献5参照。)。このEBITの多価イオン発生原理はEBISと同じであるが、超伝導ヘルムホルツ型コイルを用い、ドリフトチューブを従来よりも短くして、ドリフトチューブ内のプラズマの不安定性を回避することにより、イオンの閉じ込め時間を改善し、高価数の多価イオンを安定に保持できる。このため、EBITでは、ドリフトチューブでの電子ビームの絞込みを究極まで行い、高電離イオンを生成することを可能にした。
また、EBITとして、ウラン(U)まで完全電離できるように、電子の加速電圧を最大300kVとした装置が本発明者らにより開発されている(非特許文献6参照。)。このEBITは、原子物理学の研究のために開発されたもので、生成可能な多価イオンの内部エネルギーとしては世界最高の性能を持っている。
ところで、単一のイオン注入を行い、そのときに注入される注入イオン数を精密に制御しようとする試みがなされているが、1価又は2価イオンを用いているため基板に照射された際に放出される二次電子が1イオン当たり1個程度であるため、イオン照射の事象を判断するのが困難であった。半導体素子の微細化に伴い不純物注入の統計的揺らぎが素子特性のばらつきに影響を与えることが問題となる。
上記問題を解決するため1個1個の不純物原子を計測して、精密に打ち込み量を制御しようとする試みが報告されている(非特許文献7参照)。
J. W. McDonald, D. Schneider, M. W. Clark and D. DeWitt, Phys. Rev. Lett., Vol.68, (1992), p.2297 T.Meguro et al., Appl. Phys. Lett., Vol.79 (2001), p.3866 T. Schenkel et al., Appl.Phys., Vol.94,(2003), p.7017 小林 信夫、大谷 俊介 他7名、名古屋大学プラズマ研究所資料・技術報告、IPPJ−DT−84、1981年 M. A. Levin他7名, Physica Scr., T22,(1988), p.157 大谷俊介、桜井誠、プラズマ・核融合学会誌、73、(1997 ), p.1063 T. Shinada et al., Jpn. J. Appl. Phys., Vol.38, (1999),p.3419
上記の単一イオン照射の事象を確認するためには、イオンが基板に衝突した時に発生する二次電子を検出する必要がある。非特許文献7では1価又は2価のイオンを用いているため二次電子放出効率が低く、正確なイオン数の把握ができないという課題がある。
このためイオンの運動エネルギーを高めて二次電子放出効率を上げるようにしているが、60keVの運動エネルギーでも1イオン当たり数個の二次電子数である。この場合、イオンの運動エネルギーを高くすると散乱のため入射点から広がってしまい、空間分解能が低下するという課題がある。具体的には、1.5keVでは数nmの広がりであるが、60keV〜100keVでは数十nm〜100nmの広がりとなり、素子の微細加工には広がり過ぎるという課題がある。
したがって、上記のような半導体装置の微細化に伴うイオン注入において、注入位置および注入イオン数の統計的なばらつきが、素子特性のばらつきの原因となり、nmオーダーの領域に正確にイオン注入が行なうことができないという課題がある。
本発明は、上記課題に鑑み、低速の多価イオンを用いて空間的に正確で、かつ、イオン注入量などを精密に制御できる多価イオン照射装置及びそれを用いた微細構造の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、低速な多価イオンを、先端にキャピラリー部を備えた多価イオンガイドにより収束させることにより、試料の所定箇所に多価イオンを照射することができる、多価イオン照射装置及びそれを用いた微細構造の製造方法装置を完成させるに至った。
上記の課題を解決するため、本発明の多価イオン照射装置は、多価イオン発生源と、多価イオンを試料に導くための多価イオンガイドと、試料を搭載する可動の試料台と、二次電子検出器と、を含み、多価イオンを可動の試料台の制御により試料の所定位置に照射することを特徴とする。
また、本発明の多価イオン照射装置は、多価イオン発生源と、多価イオンを試料に導くための多価イオンガイドと、試料を搭載する可動の試料台と、複数の二次電子検出器及び二次電子信号処理部と、を含み、多価イオンガイドに導かれた多価イオンを、可動の試料台の位置制御により試料表面の所望の位置に照射し、多価イオンが試料面に衝突した際に放出される二次電子を複数の二次電子検出器で検出して、多価イオンの試料への照射個数を二次電子信号処理部で計測することを特徴とする。
上記構成において、多価イオンガイドは、好ましくは、その一端に多価イオン発生源からの多価イオンを入射し、その他端から多価イオンを出射する構造を有し、多価イオンガイドの他端部がキャピラリー部からなる。
好ましくは、キャピラリー部をトンネル探針とし、さらに、トンネル探針及び試料との間に生じるトンネル電流を制御する制御部を有し、制御部が可動の試料台を制御して、トンネル探針の走査をすることにより試料に設けられた位置情報を検出する。
二次電子検出器は、好ましくは電気的に独立した複数の二次電子検出器を有する。この二次電子検出器は、複数のチャンネルトロン又は複数のアノード電極を持つマイクロチャンネルプレートからなっていてよい。さらに、二次電子信号処理部は前記複数の二次電子検出器からの信号判定回路を備え、信号判定回路が、試料への多価イオンの照射個数を計測するようにしてもよい。
上記構成によれば、多価イオンの使用により所定の位置へ高精度で、不純物イオンを1個づつ計測して注入できる。したがって、高精度な多価イオン照射が可能となり、ナノプロセスへ応用することができる。
好ましくは、多価イオン発生源は、試料の不純物源となる。この構成によれば、多価イオンを不純物源としたイオン注入を高精度で行なうことができる。
好ましくは、多価イオン発生源は、試料のスパッター源となる。この構成によれば、多価イオンをスパッター源としたスパッターによる加工を高精度で行なうことができる。
本発明の多価イオン照射装置は、好ましくは、さらに質量分析装置を有する。この場合は、試料の表面に多価イオンを照射することで、他手法では分析が困難である所謂質量の小さいH+ やC+ を、高感度で測定することができる。
また、本発明の多価イオン照射装置を用いた微細構造の製造方法は、上記の多価イオン照射装置により放出された多価イオンを、可動の試料台により試料の所定位置にイオン注入又はスパッターを施して、試料表面の微細加工を行なうことを特徴とする。この構成によれば、多価イオンを照射して、試料へのイオン注入やスパッターを行なうことにより、nmオーダーの微細加工を行なうことができる。例えば、試料へ周期的な配列をしたイオン打ち込みにより、ナノ構造を製作したり、Si基板へのErイオン打ち込みにより発光素子などを製作することができる。
本発明によれば、試料の高精度の位置決めを行ない、所定量の多価イオンをnmオーダーの広がりで照射することができる。また、この多価イオンにより試料から発生する二次電子を高精度で検出することができるので、多価イオンを1個ずつ所定の位置へ正確に照射することが可能になる。従って、これを利用すれば、試料の各種微細加工をnmオーダーで行なうことができる。
以下、図面に示した実施形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明による多価イオン照射装置30の構成を模式的に示す断面図である。図1において、本発明の多価イオン照射装置30は、多価イオン発生源1に真空容器31が接続され、真空容器31内には、減速レンズ32と、多価イオンガイド33と、多価イオン34が照射される試料35を載置する試料台36と、を含み構成されている。さらに、試料35に多価イオン34が照射されたときに発生する二次電子37を検出する二次電子検出器38を備えている。
ここで、真空容器31は、真空排気装置40により、後述する多価イオン発生源1の真空排気装置とは独立に真空排気されてもよい。
減速レンズ32は、多価イオン発生源1から入射する多価イオン24の加速電圧を制御するために設けている。この多価イオン24が種々の多価イオンを含む場合には、所望の多価イオンを選択するために、さらに、イオン分離器を設けてもよい。イオン分離器としては、分析磁石(偏向磁石)や磁場及び電場によるウィーンフィルターなどを用いることができる。
図2は、図1の多価イオンガイドの先端部の構成を模式的に示す断面図である。多価イオンガイド33においては、その一端33Aに多価イオン34を入射し、他端33Bから多価イオン34を出射する。つまり、多価イオン34を試料35を載置する試料台35に導くためのガイドとなっている。そして、多価イオンガイドの他端側33Bの先端部33Cが、直径がおおよそ100nm以下程度の開口部を有する、所謂、キャピラリー構造となっている。この多価イオンガイド33は、好ましくは絶縁体からなり、例えばセラミックや石英ガラスを用いることができる。このようなキャピラリーは、例えば石英の細管を加熱溶融し、溶融状態にて引き伸ばし加工を行なうことで製作することができる。
多価イオン34が多価イオンガイド33に入射すると、多価イオンガイド33の内壁が帯電する。このために、多価イオン34は多価イオンガイドの内壁から反発されて、多価イオンガイド33の中心部を通過し、キャピラリー構造となっている先端部33Cから試料35に入射する。これにより、多価イオン34は、多価イオンガイドの先端部33Cでそのビーム径が絞られ、即ち収束して試料35に入射する。
試料台36は、その位置が制御できるように可動な試料台とすればよい。例えば、試料台36は、XYZステージなどを用いることができる。このXYZステージは、電歪素子やステップモーターを用いることができる。図示の場合には、Z軸方向は電歪素子を用いている。
二次電子検出器38は、試料35に多価イオン34が照射したときに発生する二次電子37を検出するために設けている。この場合、1個の多価イオンの照射により数10個から数100個の二次電子が発生するので、照射イオン数を正確に計測できる。この二次電子検出器38は、試料に1個の多価イオンが照射したときに発生する二次電子を高感度で検出できる二次電子検出器を用いることが好ましい。
なお、二次電子検出器38の左側に設けているシールド部45は、二次電子増倍のために二次電子検出器38に印加する電圧を外部に漏らさないために設けている。このシールド部45は金属からなり、二次電子検出器38を取り囲む形状となっている。
二次電子信号処理部39は、二次電子検出器38からの出力が入力され、その測定データの処理を行なう。一般に、二次電子信号は雑音が多いため誤計測をする可能性がある。上記二次電子検出器38は、生じる雑音による計測誤差を無くすために、電気的に独立した複数の二次電子検出器を備えて構成することができる。
複数の二次電子検出器38を備えた場合には、二次電子信号処理部39には、試料35から発生する複数の二次電子37の計測データが一致するか否かを判定する判定回路を設けることが好ましい。そして、複数の二次電子検出器の計測データが一致した場合に、正しい計測データであると判定すればよい。このように、多価イオン照射では多数の二次電子が放出されるため、少なくとも2個の検出器から得られた信号が一致したときのみ真の信号と見なすことで、正確なイオン数の計測が可能になる。
図3は、(a)が2つの二次電子検出器出力が入力する二次電子信号処理部39の構成を示す模式図であり、(b)がAND回路の真理値表を示す図である。
図3(a)に示すように、二次電子信号処理部39は、判定回路として論理積演算をするAND回路42を備えている。その入力42A,42Bには、2つの二次電子検出器38A,38Bの出力が接続されている。二次電子検出器38A,38Bの出力は図示しない増幅器によりAND回路42のハイ及びローのレベルの信号を出力するように信号処理がされている。上記の二次電子検出器38としては、二次電子も検出できる所謂光電子増倍管を使用できる。このような電子増倍効果を有する二次電子検出器としては、複数のチャンネルトロンや複数のアノード電極を持つマイクロチャンネルプレートを用いることができる。
図3に示す二次電子検出器38A,38Bにおいては、多価イオン1個による二次電子を検出したときには、ハイレベル、即ち1の信号をAND回路42に送出する。逆に、検出しない場合にはローレベル即ち0の信号をAND回路42に送出する。したがって、図3(b)のAND回路の真理値表に示すように、AND回路42においては、その2入力42A,42Bが共に1の場合に出力42Cが1となる。これ以外の入力の場合の出力42Cは何れも0である。つまり、2つの二次電子検出器38A,38Bが共に、多価イオン1個による二次電子を検出したときには、AND回路42が多価イオン1個が発生したと判断する。
なお、2入力AND回路42を用いた判定回路について説明したが、精度を上げるために2入力以上の複数の二次電子検出器38を用いる場合には、二次電子検出器38の数だけの入力を備えたAND回路で行なえばよい。これにより、複数の二次電子検出器38の計測データが一致した場合に、多価イオン34が照射されたという判定をすることができるので、雑音を除去して精度を高めることができる。
次に、多価イオン発生源について説明する。本発明に用いる多価イオン発生源は、多価イオンを発生できればその発生方法を問わない。
図4は多価イオン発生源の一例の構成を模式的に示す断面図である。図4に示す多価イオン発生源1においては、第1の真空容器2及び第2の真空容器10は、それぞれ、真空排気装置15,16により独立に排気されるようになっている。第1の真空容器2内は、多価イオン発生のためには、1×10-5Pa(パスカル)以下、特に1×10-9Pa以下の極高真空とする。例えば、U92+ の生成には10-10 Pa(10-12 Torr)の真空が必要である。このため、第1の真空容器2は脱ガスのために、図示しないベーキング用ヒータなどを用いたベーキング手段を備えている。このベーキング手段を用いることで、第1の真空容器2は250〜300℃程度にまでベーキングすることができる。
ここで、第1及び第2の真空容器2,10は、少なくともそれらの対向面が、超伝導磁石11からの磁場がドリフトチューブ5に印加されるように、非磁性材料から形成されている。非磁性材料としては、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS−304,SUS−316)やアルミニウムを用いることができる。
第2の真空容器10には、外部と熱的に遮断するために超伝導磁石11が収容され、この超伝導磁石11は、例えば10K(−263℃)の極低温に冷却される。また、第2の真空容器10の真空度は、10-4Pa程度の高真空にされる。このような高真空を得るためのベーキング手段は不要である。そして、第2の真空容器10の第1真空容器2側の外周部には、磁気シールド18が設けられている。この磁気シールド18は、超伝導磁石11からの磁場が、イオン源電極3の電子源4及びコレクタ6側のドリフトチューブ5に漏れないようにするために配設するものである。この磁気シールド18には、軟鉄などの強磁性材料を用いればよい。
図5は図4に示す電子源4の構成を模式的に示す拡大断面図である。図示するように、電子源4は、第1の真空容器2の左側面の超高真空用フランジ2aに支持部2bを介して、第1の真空容器2の水平方向の中心軸上に配設されている。第2の真空容器10内に収容した超伝導磁石11の空隙(ボア)の直径はDで示している。そして、図中の矢印は、排気経路を示している。電子源4は、左から右方向に、フィラメント(カソード)電極4a、フォーカス電極4b、アノード電極4c、スノート電極4dの順に配置され、それぞれが、絶縁碍子4e,4eにより絶縁されている。さらに、電子源4は、カソード近傍の磁場を0(零)とするためのバッキングコイル(Bucking coil)7を備え、磁気シールド部8に収容されている。
ここで、電子源4から発生される電子ビームを、ドリフトチューブ5に当てることなくコレクタ6に導く必要がある。このため、上記のカソード電極4a、アノード電極4c、及びスノート電極4dの各電極と絶縁碍子4e,4eとは、嵌め合いにより組み立てることで、相互の軸を高い精度で一致させている。
一例として、300mAの電流をカソード電極4aから引き出す際は、フィラメント電位を基準にして、アノード電極4cには+10kV、スノート電極4dには+15kVの電位を与える。このように、各電極とバッキングコイル7及び磁気シールド部8には最大+15kVの高電圧がかかるが、各部品を小型化することで相互の絶縁を確保しながら、磁気シールド部8の直径を100mmに抑えることができる。この場合には、外径が162mmで内径が102mmの超高真空フランジ2aに電子源4を収容することができ、第2の真空容器10の電子源4側の直径を152mmに抑えることができる。このため、超高真空フランジ2aの内径は、磁気シールド部8及びドリフトチューブ5の直径よりも十分大きいので、電子源4領域からの放出ガスを効率良く排気できる。このように、電子源4の寸法を小さくすることで、超伝導磁石11を収容する第2の真空容器10の環状の空隙、即ち超伝導磁石のボア径を小さくすることができる。
ドリフトチューブ5は、幾つかに分割された円筒形電極から構成されていて、その両端が、イオンに対して、障壁(井戸型ポテンシャル)を形成するような電場配置となっている。
イオンとなる気体は、気体イオン導入手段20によりドリフトチューブ5側面からその内部に導入される。気体イオン導入手段20は、気体源20a,流量調整部20b,第1の真空容器2内への配管部20cなどから構成されている。
一方、固体をイオンとする場合には、ソースとして固体イオン源を用いればよい。図6は、固体のイオン源を有する多価イオン発生源の構成を模式的に示す断面図である。図6に示す多価イオン発生源が、図4に示す多価イオン発生源と異なるのは、気体イオン導入手段20の代わりに、コレクタ6の右側に、固体イオン導入手段22を備えていることである。このような固体イオン導入手段22は、所望のイオンを発生させる針状の固体材料を真空アーク放電させ、イオン化(1価)させる真空アーク型イオン源などを用いることができる。固体イオン導入手段22から発生したイオンは、第1の真空容器2中で、コレクタ6を通過して、ドリフトチューブ5に注入される。
上記の気体イオン導入手段20又は固体イオン導入手段22からなるイオン導入手段によりドリフトチューブ5に注入されるイオンは、一定時間、井戸型ポテンシャルに閉じ込められ、電子による衝突電離が進み、多価イオンとなる。この多価イオンのうち、電子の衝突により運動エネルギーが増加して障壁を越えたものが、多価イオン発生源1の外部に取り出される。この際、イオンの電離度が究極、即ち、これ以上電子を当て続けても電離が進まない状態に達したときに、電場配置を変えて多価イオンが外に飛び出すようにして、多価イオンビーム24を生成させる。
コレクタ6は、ドリフトチューブ5を通過する電子を捕集するための電極であり、例えば、サプレッサ電極、コレクタ電極、エクストラクター電極などの電極から構成されている。カソード及びコレクタ6には、アースに対して最大−数十kVから−300kV程度の電圧が印加されている。この加速電圧は、所望の多価イオンが得られるための電圧であればよい。電子は、ドリフトチューブ5の入射直前に最大加速電圧が印加され、ドリフトチューブ5を通過した電子は、コレクタ6の手前で2〜3kV程度に減速されてコレクタ6に捕集される。このため、コレクタ6には、この電圧と電子ビーム電流との積の電力が捕集される。この電力は、上記コレクタ6手前の電圧が3kVで電子ビーム電流が300mAの場合には900Wとなり、絞られた状態でコレクタ6に当ると、当った場所が溶ける。したがって、コレクタ6は、冷媒で冷却した電極構造として電子ビームを広げながら電子を捕集する。
次に、超伝導磁石について説明する。
図4及び図6に示すように、超伝導磁石11は第1のコイル11a及び第2のコイル11bからなる、所謂ヘルムホルツ型コイルを用いている。第1のコイル11a及び第2のコイル11bの半径をaとし、これらのコイルの間隔を半径aと同じaとしたときに、対向するコイルの中央部分の磁場を一様にすることができる。ここで、超伝導磁石11は、図示しないHeを冷媒とするクライオスタットや閉サイクル冷凍機により冷却されて、超伝導状態に保持される。
上記多価イオン発生源1の特徴は、第2の真空容器10内にイオン閉じ込めのための超伝導磁石11が配置され、第2の真空容器10の環状の空隙に第1の真空容器2が挿入されていることである。つまり、超伝導磁石11の空隙(ボア)内に、第1の真空容器2が挿入されていることである。上記のように、この第1の真空容器2内には、電子源4、ドリフトチューブ5及びコレクタ6からなるイオン源3が配置されている。
また、超伝導磁石11を収容する第2の真空容器10は、第1の真空容器2から、両者の真空を破らずに脱着が可能である。このため、イオン源電極3を第1の真空容器2に収納したものを作ればよく、超伝導磁石11は市販品を用いることができるので、製作が容易である。したがって、本発明に用いる多価イオン発生源1においては、従来の多価イオン発生源のように、超伝導磁石11とイオン源電極3とを一体化した構造を精度良く製作する必要がない。
本発明に用いることができる多価イオン発生源は以上のように構成されており、次にその動作について説明する。
図7は、多価イオン発生源1に印加される電源を説明するための模式的なブロック図である。電子の加速電圧が40kVの一例を示している。図示するように、電子源4のフィラメントには15V,2A、フォーカス電極には50V,1mA、アノード電極には10kV、スノート電極には15kV,1mAの電源が−30kVの電源に上乗せされて供給されている。また、ドリフトチューブ5の各電極には、10kVの電源上に、第1電極500V、第2電極500V、第3電極500Vがそれぞれ上乗せされて供給されている。さらに、コレクタ6のサプレッサ電極、コレクタ電極、エクストラクター電極には、それぞれ、2kV、3kV,500mA、−3kVの電源が、−30kVの電源に上乗せされて供給されている。
電子源4から発生された電子は、超伝導磁石11の磁場中に配置されたドリフトチューブ5を通る。図7に示す電源を用いた場合には、電子銃4とドリフトチューブ5の間で、電子が最大40kVまで加速される。この加速されてドリフトチューブ5に入射した電子は、超伝導磁石11によりドリフトチューブ5に形成される強磁場で圧縮され、大電流密度(〜1000A/cm2 )の電子ビームとなり、コレクタ6に捕集される。図7に示す電源を用いた場合には、コレクタ6には2〜3kV位ま減速されて捕集される。この際、電子は、ドリフトチューブ5の直前で最大加速電圧が印加されるようになっている。原子を電離するためには、束縛電子の電離エネルギー以上のエネルギーを持った電子と衝突させなければならないので、重元素(例えば、キセノン(Xe)など)を完全に電離させるには1s軌道の電離エネルギー(Xeでは35keV)より高いエネルギーが必要で、加速電圧35kV以上が必要である。
一方、気体イオン導入手段20から導入されるイオンとなる気体は、ドリフトチューブ5内でイオン化される。ドリフトチューブ5の電極は幾つかに分割されており、両端がイオンに対して障壁(井戸型ポテンシャル)が形成されるように電位が与えられている。イオンは一定時間、この井戸型ポテンシャルに閉じ込められ、気体の原子は、電子ビームに繰り返し衝突させることにより電離が進む。電子による衝突電離が進み、多価イオンとなる。この多価イオンのうち、電子の衝突により運動エネルギーが増加し障壁を越えたものがイオン源外部に取り出される。このように、イオンの電離度が究極、即ち、これ以上電子を当て続けても電離が進まない状態に達したときに、電場配置を変えて多価イオンが外に飛び出すようにして、多価イオンビーム24を生成させる。
このドリフトチューブ5で生成した多価イオンが、ドリフトチューブ5から引き出される際には、図7のドリフトチューブ5とコレクタ6間で40kVで一且加速され、第1の真空容器2を出る際は、この真空容器2はアース電位であるので、10kVまで減速されて出射する。
得られる多価イオンビーム24の強度は、イオンがトラップされているドリフトチューブ5の長さL1(図4参照)及びエミッション電流に比例し、電離度が究極に至るまでの時間は電子の電流密度に比例する。なお、ドリフトチューブ5の長さが長すぎる場合にはプラズマの不安定性が出現し、高電離の多価イオンができなくなる。
また、電子ビーム電流密度は、超伝導磁石11によりドリフトチューブ5に印加される磁場強度が高いほど高くなる(但し、比例ではない)。このため、単位時間当たりに得られる多価イオンビーム24の強度は、電子ビーム電流密度が高くトラップ領域が長いほど高くすることができる。
上記の多価イオン発生機構は、従来の多価イオン発生源と同様である。
本発明に用いる多価イオン発生源の特徴は、イオン源電極3を収納する第1の真空容器2のための真空排気装置15と、超伝導磁石11を収容する第2の真空容器10のための真空排気装置16とを着脱して、分離することができる点にある。このため、超伝導磁石11を収容する第2の真空容器10を、第1の真空容器2から分離した状態で、第1の真空容器2及び収容されているイオン源電極3を十分に加熱して、脱ガスをすることができる。したがって、多価イオン発生のための第1の真空容器2を、短時間で極高真空とすることができる。例えば、誤って電子ビームをドリフトチューブ5に当てたときには、多価イオン発生源1では、イオン源電極3を収納した第1の真空容器2のみ修理すればよい。これにより、本発明に用いる多価イオン発生源1においては、イオン源電極3の真空立ち上げが短時間で済むので、操作性、保守性に優れた、多価イオン発生源1となる。
本発明の多価イオン照射装置30は以上のように構成されており、次にその動作について説明する。
多価イオン発生源1から発生した多価イオン24は、減速レンズ32で所定の速度にされた後で、多価イオンガイド33の一端に入射し、その内部を通過した後で、他端に設けられたキャピラリー33Cの先端部から出射し、試料35に照射する。この場合、試料35への多価イオンの照射位置は、可動な試料台36により位置制御がされている。
さらに、本発明の多価イオン照射装置30は、二次電子検出器38を備えているので試料35に打ち込んだ多価イオン34の量を正確に測定することができる。また、電気的に独立した複数の二次電子検出器38を備え、二次電子信号処理部39において、試料35から発生する複数の二次電子37の計測データが一致するか否かを判定する場合には、雑音に影響されないで、さらに正確な多価イオン量を測定することができる。このように、多価イオン34の照射により試料35から発生する二次電子37による信号データを解析することで1個のイオン照射の事象を正確に判断することができる。この結果、イオン照射数を正確に計測できるので、イオン注入量を精密に制御することが可能となる。
これにより、本発明の多価イオン照射装置30においては、多価イオンの使用により所定の位置へ高精度で、不純物イオンを1個づつ計測して注入できる。しかも、多価イオンを用いるので、減速させることで、照射したときの空間的広がりをnm〜10nm程度にできるので、空間分解能を高めることができる。このため、高精度な注入が可能となり、ナノプロセスへ応用することができる。したがって、試料を搭載する可動な試料台36の位置制御により、試料35への周期的配列のイオン打ち込みにより、ナノ構造特有の機能を発現させることができ、例えば、Si基板へのErイオン打ち込みにより発光素子などを製作することができる。
また、試料35が絶縁物からなる材料において、照射した多価イオン34が、試料35の表面をスパッター作用により除去したり改質できる場合には、本発明の多価イオン照射装置30は、スパッター装置として動作させることができる。この改質とは試料の形状を変化させることであり、例えば突起などの形成も含むものである。
本発明の多価イオン照射装置によれば、多価イオンが照射される試料をスパッターして、ナノメータサイズの細線の切断、超微細構造の加工を行うことが可能になる。
次に、本発明の多価イオン照射装置の変形例について説明する。
図8は、本発明の多価イオン照射装置の変形例50の構成を模式的に示す図である。本発明の多価イオン照射装置の変形例50が、図1に示した多価イオン照射装置30と異なるのは、多価イオンガイドの先端部33Cと試料35とを走査トンネル顕微鏡(STM)51を兼ねる構成にした点である。図8においては、図1と異なる部位のみを図示している。
走査トンネル顕微鏡51は、多価イオンガイドの先端部33C、即ちキャピラリーをトンネル探針とし、試料35に印加される電源52によりキャピラリー33Cと試料35との間隔tの間に流れるトンネル電流53を用いており、その制御部54により制御されるように構成されている。
制御部54は、トンネル電流53が一定になるように、キャピラリー33Cと試料35との距離を、フィードバック制御している。この距離tは、試料35を搭載する可動XYZステージ36により制御される。この可動XYZステージ36は、XYZのそれぞれを電歪素子で制御すれば、nmオーダーの位置制御を行なうことができる。また、制御部54は、試料を可動XYZステージ36で走査したときのトンネル電流によりその走査トンネル顕微鏡像が表示される機能を備えている。このため、試料35に設けた位置情報(以下、ターゲットと呼ぶ)を検出できる。
さらに、制御部54には、上記試料に多価イオン34が照射されたときに発生する二次電子信号処理部39からの出力信号が入力される。この二次電子信号処理部39は、図3で説明したように、キャピラリー33C近傍に設けられた2つの二次電子検出器38A,38Bからの二次電子を判定するAND回路42を含んでいる。
次に、本発明の多価イオン照射装置の変形例50の動作について説明する。
多価イオン発生源から放出された多価イオン24を多価イオンガイド33の一端より内部に導き、予めキャピラリー33Cをトンネル探針として用い、試料34の表面上に設けられた位置合わせのためのターゲットを検出することができる。この位置合わせ用のターゲットにより、多価イオン34の照射位置を決定し、キャピラリー33Cの先端より多価イオン34を放出する。
本発明の多価イオン照射装置の変形例50によれば、STMにより精密な位置合わせを行い、試料35の所望の位置に多価イオンを照射することができる。
次に、本発明の多価イオン照射装置の別の変形例について説明する。
図9は本発明の多価イオン照射装置の別の変形例60の構成を模式的に示す図である。この変形例による多価イオン照射装置60が、図1及び図8に示した多価イオン照射装置30,50と異なるのは、さらに、試料35に入射した多価イオン34により試料35の表面から発生するイオン63、即ち二次イオンを検出するための質量分析装置61と質量分析制御部62を備えている点にある。他の構成は、図1及び8に示した多価イオン照射装置30,50と同じである部位は適宜省略し、異なる主要部位のみを図示している。
ここで、質量分析装置61は各種方式を用いることができ、例えば、図示の場合には、TOF(飛行時間:Time of Flight)型質量分析装置を用いている。
質量分析制御部62には、試料の分析をする所定位置に関する情報がXYZステージから信号として入力される。この試料の所定位置に関する情報は、多価イオンガイド33の先端がキャピラリー33C構造の場合には、その制御部54からの位置情報54Aでもよい。
そして、試料35の位置が決定された後、多価イオン34が試料35に照射されると、試料35の所定位置に存在する原子に応じた二次イオン63が発生する。この場合に発生する二次電子36が二次電子検出器38A,38Bにより検出され、その有無が二次電子信号処理部39により判定される。したがって、二次電子信号処理部39のAND回路42の出力がハイレベルの場合が、試料35に多価イオン34が照射された時間に対応する。質量分析装置61が、TOF型質量分析装置である場合には、この質量分析制御部62に入力されるAND回路の出力42Cがハイレベルとなった時刻が、測定開始の時間となる。この信号を質量分析測定の開始信号と呼ぶことにする。
これにより、開始信号以降に得られるTOF型質量分析装置の二次イオン検出器61Aからの信号が、試料から発生した二次イオンの信号である。二次イオンの信号検出が終了した時点で、二次イオン検出器61Aから質量分析制御部62へ、測定停止信号61Bが送出される。したがって、この開始信号から測定停止信号61Bまでの信号を解析することにより、試料35の所定位置に存在していた原子の質量分析を行なうことができる。
本発明の本発明の多価イオン照射装置の別の変形例60によれば、試料35の所望の位置に多価イオン34を照射し、試料35から生じる二次イオン63を、質量分析装置61で分析することができる。この多価イオン照射装置60によれば、試料35の表面に多価イオン34を照射することで、他手法では分析が困難である所謂質量の小さいH+ やC+ を高感度で測定することができる。また、位置決めを、nmオーダーの分解能を有するXYZステージ36を用いれば、空間分解能を著しく高めることができる。したがって、本多価イオン照射装置60によれば、空間分解能が高く、かつ、微量な元素を高感度で分析することができる。
上記の本発明の多価イオン照射装置30,50,60においては、さらに、試料35の表面の観察装置を備えていてもよい。このような観察装置としては、電子回折装置、走査型電子顕微鏡(SEM)などが挙げられる。
実施例の多価イオン照射装置30により多価イオン照射を行なった。多価イオン発生源1として非特許文献6のEBITを用い、Xe22+ ,Xe32+ ,Xe44+ ,Xe46+ を発生させた。加速電圧は3〜5keVである。
試料35としては、高配向熱分解カーボン(HOPG、Highly Oriented Pyrolytic Carbon)を用いた。二次電子検出器38としてはチャンネルトロンを用いた。さらに、試料35に照射される多価イオン34を計測するために、試料35の裏面側に別のチャンネルトロンを配置した。
試料となる高配向熱分解カーボン35に上記多価イオン34を照射した。試料台36を走査し、試料台36の位置を制御した。多価イオン34の照射後、試料35は真空容器31に設けた走査型トンネル顕微鏡(STM)を有する真空容器に超高真空を保った状態で移動し、その表面を観察した。
図10は、実施例のXe44+ を照射した試料表面のSTM像を示す図であり、(a)は1μm×1μmの領域を示し、(b)は(a)の拡大図で、500nm×500nmの領域を示す。Xe44+ の照射量、即ちドーズ量は、3×107 イオン/mm2 である。また、Xe44+ の試料への衝突速度は4×105 m/sである。
図10(a)から明らかなように、高配向熱分解カーボン35においてXe44+ の照射された領域は、発泡状の突起が生起していることが分かる。この突起の高配向熱分解カーボン35表面での直径は10nm程度であった。また、図10(b)から明らかなように、Xe44+ の照射により生起した突起の高さは1nm程度である。
さらに、高配向熱分解カーボン35にXe22+ を照射した場合にも、Xe44+ と同様な突起が生じ、突起の高配向熱分解カーボン35表面での直径は1nm程度であった。この直径は、Xe44+ の場合の1/10程度であるが、突起の高さは1nm程度でほぼ同じ高さであった。
次に、多価イオン照射時に発生した二次電子について説明する。
表1は、高配向熱分解カーボン35に照射されたイオン数、発生する二次電子数、突起数を調べた結果を示す表である。
表1から明らかように、高配向熱分解カーボン35に照射された入射イオン数が1.07×107 個に対して、高配向熱分解カーボン35から発生する二次電子数は1.03×107 個でありほぼ1:1になっている。また、10μm×10μmの面積範囲で観察した突起数が917個であることから、その密度は9.17×106 /mm2 であった。これから、入射するイオン1個でほぼ1つの突起が形成され、かつ、そのとき高配向熱分解カーボン35の表面から発生する二次電子数も入射イオンに対応して発生することが分かった。
上記実施例から、試料35である高配向熱分解カーボンへのXe44+ やXe22+ の多価イオン34の照射により、nmオーダーの突起の形成ができた。この場合、照射多価イオン1個で、ほぼ1個の突起が形成され、かつ、かつ、そのとき高配向熱分解カーボン35の表面から発生する二次電子数も入射イオンに対応して発生することが分かった。
本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。例えば、上記実施の形態において、多価イオンガイドの形状や多価イオン照射装置の真空容器の構造や付属させる観察機器の構成などは、試料に応じて適宜変更できる。
本発明による多価イオン照射装置の構成を模式的に示す断面図である。 図1の多価イオンガイドの先端部の構成を模式的に示す断面図である。 (a)は2つの二次電子検出器出力が入力する二次電子信号処理部の構成を示す模式図、(b)はAND回路の真理値表を示す図である。 多価イオン発生源の一例の構成を模式的に示す断面図である。 図4に示す電子源の構成を模式的に示す拡大断面図である。 固体のイオン源を有する多価イオン発生源の構成を模式的に示す断面図である。 多価イオン発生源に印加される電源を説明するための模式的なブロック図である。 本発明の多価イオン照射装置の変形例の構成を模式図である。 本発明の多価イオン照射装置の別の変形例の構成を模式図である。 実施例のXe44+ を照射した試料表面のSTM像を示す図で、(a)は1μm×1μmの領域を示し、(b)は(a)の拡大図であり500nm×500nmの領域を示す。
符号の説明
1:多価イオン発生源
2:第1の真空容器
2a:超高真空用フランジ
2b:支持部
3:イオン源電極
4:電子源
4a:フィラメント(カソード電極)
4b:フォーカス電極
4c:アノード電極
4d:スノート電極
4e:絶縁碍子
5:ドリフトチューブ
6:コレクタ
7:バッキングコイル
8:磁気シールド部
10:第2の真空容器
11:超伝導磁石
11a:第1のコイル
11b:第2のコイル
12:イオン用気体導入手段
15:第1の真空容器の真空排気装置
16:第2の真空容器の真空排気装置
18:磁気シールド
20:気体イオン導入手段
20a:気体源
20b:流量調整部
20c:配管部
22:固体イオン導入手段
24:多価イオンビーム
30,50,60:多価イオン照射装置
31:真空容器
32:減速レンズ
33:多価イオンガイド
33C:先端部(キャピラリー)
34:多価イオン
35:試料
36:試料台(XYZステージ)
37:二次電子
38:二次電子検出器
39:二次電子信号処理部
40:真空排気装置
42:AND回路
42A,42B:入力
42C:出力
45:シールド部
51:走査トンネル顕微鏡
52:電源
53:トンネル電流
54:制御部
54A:位置情報
61:質量分析装置
61A:二次イオン検出器
61B:測定停止信号
62:質量分析制御部
63:二次イオン

Claims (12)

  1. 多価イオン発生源と、
    上記多価イオンを試料に導くための多価イオンガイドと、
    上記試料を搭載する可動の試料台と、
    二次電子検出器と、を含み、
    上記多価イオンを上記可動の試料台の制御により上記試料の所定位置に照射することを特徴とする、多価イオン照射装置。
  2. 多価イオン発生源と、
    上記多価イオンを試料に導くための多価イオンガイドと、
    上記試料を搭載する可動の試料台と、
    複数の二次電子検出器及び二次電子信号処理部と、を含み、
    上記多価イオンガイドに導かれた多価イオンを、上記可動の試料台の位置制御により上記試料表面の所望の位置に照射し、
    上記多価イオンが上記試料面に衝突した際に放出される二次電子を上記複数の二次電子検出器で検出して、上記多価イオンの上記試料への照射個数を上記二次電子信号処理部で計測することを特徴とする、多価イオン照射装置。
  3. 前記多価イオンガイドは、その一端に前記多価イオン発生源からの多価イオンを入射しその他端から前記多価イオンを出射する構造を有し、該多価イオンガイドの他端部がキャピラリー部からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多価イオン照射装置。
  4. 前記キャピラリー部をトンネル探針とし、さらに、該トンネル探針及び前記試料との間に生じるトンネル電流を制御する制御部を有し、該制御部が前記可動の試料台を制御して、上記トンネル探針の走査をすることにより前記試料に設けられた位置情報を検出することを特徴とする、請求項3に記載の多価イオン照射装置。
  5. 前記二次電子検出器は、電気的に独立した複数の二次電子検出器を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多価イオン照射装置。
  6. 前記二次電子検出器は、複数のチャンネルトロン又は複数のアノード電極を持つマイクロチャンネルプレートからなることを特徴とする、請求項5に記載の多価イオン照射装置。
  7. さらに、前記二次電子信号処理部が前記複数の二次電子検出器からの信号判定回路を備え、該信号判定回路が、上記試料への上記多価イオンの照射個数を計測することを特徴とする、請求項2に記載の多価イオン照射装置。
  8. 前記多価イオン発生源が、前記試料の不純物源となることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多価イオン照射装置。
  9. 前記多価イオン発生源が、前記試料のスパッター源となることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多価イオン照射装置。
  10. さらに、質量分析装置を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の多価イオン照射装置。
  11. 前記質量分析装置により、前記試料の所望の位置に照射された前記多価イオンにより該試料表面から放出された元素を測定することを特徴とする、請求項10に記載の多価イオン照射装置。
  12. 請求項1又は2の多価イオン照射装置により放出された多価イオンを、前記可動の試料台により前記試料の所定位置にイオン注入又はスパッターを施して、前記試料表面の微細加工を行なうことを特徴とする、多価イオン照射装置を用いた微細構造の製造方法。
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