JP2009013118A - アルカン化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、電子吸引基で置換されたアルカン化合物の製造方法に関する。
電子吸引基で置換されたアルカン化合物の製造方法としては、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオライドの存在下に、β−ジカルボニル化合物とハロゲン化アルキル化合物とを反応させる方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、かかる方法では、回収の困難なテトラブチルアンモニウムフルオライドをβ−ジカルボニル化合物と等モル量以上用いる必要がある点において、工業的な製法として十分なものとはいえなかった。
J.Chem.Soc.Perkin I,1743(1977)
そこで本発明者は、電子吸引基で置換されたアルカン化合物の工業的により有利な製造方法を開発すべく、鋭意検討したところ、フルオライド塩として、回収の容易なフッ化物イオンを含有するアルキル置換イミダゾリウム塩の存在下に、電子吸引基で置換されたメタン化合物と脱離基で置換されたアルカン化合物との反応を実施することにより、電子吸引基で置換されたアルカン化合物が生成することを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、式(1)
(式中、R1およびR3は、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基を表し、R2、R4およびR5はそれぞれ同一または相異なって、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。Y−はフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。また、0<x≦1である。)
で示されるフッ化物イオンを含有するアルキル置換イミダゾリウム塩の存在下に、式(2)
(式中、E1〜E3は、それぞれ同一または相異なって、電子吸引基または水素原子を表す。ただし、E1〜E3のうち2つ以上が同時に水素原子であることはない。)
で示される電子吸引基で置換されたメタン化合物と、式(3)
(式中、R6は置換されていてもよいアルキル基を表し、Xは脱離基を表す。)
で示される脱離基で置換されたアルカン化合物とを反応させる式(4)
(式中、E1〜E3およびR6は、それぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される電子吸引基で置換されたアルカン化合物の製造方法を提供するものである。
(式中、R1およびR3は、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基を表し、R2、R4およびR5はそれぞれ同一または相異なって、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。Y−はフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。また、0<x≦1である。)
で示されるフッ化物イオンを含有するアルキル置換イミダゾリウム塩の存在下に、式(2)
(式中、E1〜E3は、それぞれ同一または相異なって、電子吸引基または水素原子を表す。ただし、E1〜E3のうち2つ以上が同時に水素原子であることはない。)
で示される電子吸引基で置換されたメタン化合物と、式(3)
(式中、R6は置換されていてもよいアルキル基を表し、Xは脱離基を表す。)
で示される脱離基で置換されたアルカン化合物とを反応させる式(4)
(式中、E1〜E3およびR6は、それぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される電子吸引基で置換されたアルカン化合物の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、フッ素イオンを含有するアルキル置換イミダゾリウム塩を用いて、電子吸引基で置換されたアルカン化合物を製造することができる。該フッ素イオンを含有するアルキル置換イミダゾリウム塩は、回収・再利用が容易であるため、工業的に有利である。
まず、上記式(1)で示されるフッ化物イオンを含有するアルキル置換イミダゾリウム塩(以下、イミダゾリウム塩(1)と略記する。)について説明する。
式中、R1およびR3は、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基を表し、R2、R4およびR5はそれぞれ同一または相異なって、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基上に有していてもよい置換基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の置換されていてもよいアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基、3−フェノキシベンジルオキシ基等の置換されていてもよいアルコキシ基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等の置換されていてもよいアリールオキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基等の置換されていてもよいアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等の置換されていてもよいアリールカルボニル基;カルボキシ基;フッ素原子;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基、フェノキシメチル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基、フェナシル基、2−カルボキシエチル基等が挙げられる。
Y−はフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表し、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のフッ化物イオンを除くハロゲン化物イオン類;テトラフルオロホウ酸アニオン等のホウ酸イオン類;ヘキサフルオロリン酸アニオン等のリン酸イオン類;ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン等のアンチモン酸イオン類;トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等のスルホン酸イオン類;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン等のアミドイオン類;などが挙げられる。
xは、イミダゾリウム塩(1)に含まれる全アニオンに対するフッ化物イオンの比率を表し、0<x≦1の範囲で任意に選択できる。xが0に近くなれば、交差アルドール縮合の活性化剤としての効率が低下するため、0.4<x≦1程度の範囲が好ましい。
かかるイミダゾリウム塩(1)としては、x=1の場合はフッ化物イオンと、例えば1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4,5−ペンタメチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−2−プロピルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−2−ブチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−2−メチル−3−ドデシルイミダゾリウムカチオン、1−エトシキシメチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−トリフルオロメチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムカチオン等のアルキル置換イミダゾリウムカチオンとからなる、フッ化物イオンを含有するアルキル置換イミダゾリウム塩が挙げられ、0<x<1の場合は、例えば上記フッ化物イオンを含有するアルキル置換イミダゾリウム塩のフッ化物イオンの一部が、それぞれ塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン等で置き換えられた混合アルキル置換イミダゾリウム塩などが挙げられる。これらは、例えば水や極性溶媒等と錯体を形成していてもよい。
かかるイミダゾリウム塩(1)は、例えばフッ化銀やフッ化カリウム等のフッ化物と式(1)において0≦x<1であるアルキル置換イミダゾリウム塩との塩交換反応などの方法を用いて製造することができる。また、式(1)において0≦x<1であるアルキル置換イミダゾリウム塩とx=1であるアルキル置換イミダゾリウムフルオライドとを混合することにより調製してもよい。
次に、イミダゾリウム塩(1)の存在下における、上記式(2)で示される電子吸引基で置換されたメタン化合物(以下、置換メタン化合物(2)と略記する。)と、上記式(3)で示される脱離基で置換されたアルカン化合物(以下、置換アルカン化合物(3)と略記する。)との反応について説明する。
上記式(2)において、E1〜E3で示される電子吸引基としては、例えば、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が挙げられる。これらのアルコキシカルボニル基上に置換していてもよい基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基等のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等のアリールオキシ基;等が挙げられる。かかる基で置換されたアルコキシカルボニル基の具体例としては、例えばフェニルメトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基等が挙げられる。
アルキルカルボニル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロヘキサンカルボニル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数2〜20のアルキルカルボニル基が挙げられる。これらのアルキルカルボニル基上に置換していてもよい基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基等のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;フェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等のアリールオキシ基;等が挙げられる。かかる基で置換されたアルキルカルボニル基の具体例としては、例えばフェニルアセチル基、トリフルオロアセチル基等が挙げられる。
アリールカルボニル基としては、例えばベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数7〜11のアリールカルボニル基が挙げられる。これらのアリールカルボニル基上に置換していてもよい基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、3−オキソブチル基、メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、ベンジル基等の置換されていてもよいアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基等のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;シアノ基;ニトロ基;等が挙げられる。かかる基で置換されたアリールカルボニル基の具体例としては、4−メトキシベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基等が挙げられる。
置換メタン化合物(2)としては、例えばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジシクロヘキシル、マロノニトリル、アセチルアセトン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、4,6−ノナジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、1−フェニル−1,3−プロパンジオン、2−シアノアセトフェノン、アセチルアセトニトリル、3−オキソブタン酸メチル、3−オキソ−3−フェニルプロピオン酸エチル、ジニトロメタン等が挙げられる。
上記式(3)において、R6で示されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基上に置換していてもよい基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の置換されていてもよいアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基等の置換されていてもよいアルコキシ基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等の置換されていてもよいアリールオキシ基;フッ素原子;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基、フェノキシメチル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基、フェナシル基、2−カルボキシエチル基等が挙げられる。
Xで示される脱離基としては、求核置換反応を受けて脱離しうる基であれば、特に限定されず、例えば、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アリールスルホニルオキシ基としては、例えばベンゼンスルホニルオキシ基、ナフタレンスルホニルオキシ基等の炭素数6〜10のアリールスルホニルオキシ基が挙げられる。これらのアリールスルホニルオキシ基上に置換していてもよい基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等の置換されていてもよいアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアルキルカルボニル基等が挙げられる。かかる基で置換されたアリールスルホニルオキシ基の具体例としては、パラトルエンスルホニルオキシ基、2−クロロベンゼンスルホニルオキシ基等が挙げられる。
アルキルスルホニルオキシ基としては、例えばメタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基等の炭素数1〜6のアルキルスルホニルオキシ基が挙げられる。これらのアリールスルホニルオキシ基上に置換していてもよい基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等の置換されていてもよいアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアルキルカルボニル基;等が挙げられる。かかる基で置換されたアルキルスルホニルオキシ基の具体例としては、ベンジルスルホニルオキシ基、クロロメタンスルホニルオキシ基等が挙げられる。
置換アルカン化合物(3)としては、例えばメタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸イソプロピル、メタンスルホン酸n−ブチル、メタンスルホン酸n−ペンチル、メタンスルホン酸n−オクチル、エタンスルホン酸メチル、n−プロパンスルホン酸エチル、n−ブタンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸n−プロピル、パラトルエンスルホン酸イソプロピル、パラトルエンスルホン酸n−ブチル、パラトルエンスルホン酸シクロヘキシル、パラトルエンスルホン酸n−ペンチル、パラトルエンスルホン酸n−ヘキシル、パラトルエンスルホン酸n−オクチル等が挙げられる。
置換アルカン化合物(3)の使用量は、置換メタン化合物(2)1モルに対し、1モル以上であれば特に上限はないが、経済面から、通常10モル倍以下である。好ましくは1〜5モルである。
イミダゾリウム塩(1)の使用量は通常、置換メタン化合物(2)1モルに対し、通常1モル倍以上のフッ化物イオンが含まれる範囲の量であれば、その上限は特に限定されない。経済面からは3モル倍以下である。
本反応は、溶媒の存在下において実施することもできるし、溶媒を用いることなくで実施することもできる。溶媒としては、例えば、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含イオウ溶媒;水;などが挙げられる。
溶媒を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、イミダゾリウム塩(1)に対して、通常100重量倍以下である。
反応温度は、通常−20〜200℃の範囲である。
反応試剤の混合順は、反応温度以下で混合する場合は、特に制限されず、例えば、イミダゾリウム塩(1)と置換メタン化合物(2)と置換ビニル化合物(3)とを、必要により溶媒の存在下で混合した後に、反応温度に調整することにより反応を実施すればよい。反応温度条件で混合する場合は、必要に応じて溶媒を共存させた置換メタン化合物(2)とイミダゾリウム塩(1)の混合物に、置換アルカン化合物(3)を加えていくことが好ましい。
本反応は、常圧条件下で実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。また、反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
反応終了後の混合物には、上記式(4)で示される電子吸引基で置換されたアルカン化合物(以下、置換アルカン化合物(4)と略記する。)が含まれている。該反応混合物に、晶析処理や蒸留処理等を施したり、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理したりすることにより、置換アルカン化合物(4)を取り出すことができる。取り出された置換アルカン化合物(4)は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の手段によりさらに精製されてもよい。
ここで、水に不溶の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;などが挙げられる。
置換アルカン化合物(4)としては、例えばメチルマロン酸ジメチル、エチルマロン酸ジメチル、n−プロピルマロン酸ジメチル、n−ブチルマロン酸ジメチル、メチルマロン酸ジエチル、オクチルマロン酸ジメチル、ベンジルマロン酸ジメチル、オクチルマロン酸ジエチル、メチルマロン酸ジn−プロピル、イソプロピルマロン酸ジメチル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、n−プロピルマロノニトリル、3−メチルアセチルアセトン、3−エチルアセチルアセトン、4−メチル−3,5−ヘプタンジオン、3−メチル−2,4−ヘプタンジオン、4−エチル−3,5−オクタンジオン、3−メチル−2,4−ヘキサンジオン、5−エチル−4,6−ノナジオン、2−メチル−1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、2−エチル−1−フェニル−1,3−プロパンジオン、2−ベンゾイルプロピオニトリル、2−アセチルプロピオニトリル、2−メチル−3−オキソブタン酸メチル、2−n−プロピル−3−オキソ−3−フェニルプロピオン酸エチル、ジニトロエタン等が挙げられる。
反応後は、イミダゾリウム塩(1)を回収できる。反応液からろ過処理、分液処理等により回収されたイミダゾリウム塩(1)は、そのまま、あるいは必要に応じて、濃縮処理したり、フッ化物イオンにイオン交換したりすることにより、置換メタン化合物(2)と置換ビニル化合物(3)との反応に再使用することができる。上記のイオン交換には、例えばフッ化銀やフッ化カリウム等の金属フッ化物を用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
参考例1(x=1のイミダゾリウム塩(1)の製造例)
3角フラスコに、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド22gと水200gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコに、フッ化銀(I)16.1gと水120gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、無色オイル24.5gを得た。このオイルは、室温で放置すると結晶化した。元素分析の結果、得られた結晶は1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムフルオライドの2水和物と同定された。収率:100%。
3角フラスコに、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド22gと水200gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコに、フッ化銀(I)16.1gと水120gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、無色オイル24.5gを得た。このオイルは、室温で放置すると結晶化した。元素分析の結果、得られた結晶は1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムフルオライドの2水和物と同定された。収率:100%。
元素分析値: C:49.5、H:9.9、N:14.5、F:9.2
計算値 : C:49.5、H:9.9、N:14.4、F:9.8
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):0.90(t、3H)、1.25(m、2H)、1.72(m、2H)、3.88(s、3H)、4.19(t、2H)、7.79(d、2H)、10.1(bs、1H)
計算値 : C:49.5、H:9.9、N:14.4、F:9.8
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):0.90(t、3H)、1.25(m、2H)、1.72(m、2H)、3.88(s、3H)、4.19(t、2H)、7.79(d、2H)、10.1(bs、1H)
参考例2(0<x<1のイミダゾリウム塩(1)の製造例)
3角フラスコに、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド5.0gと水50gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコに、フッ化銀(I)1.72gと水30gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、無色オイル5.8gを得た。このオイルは、0℃でも液体であった。元素分析の結果、得られたオイルはフッ化物イオン47.5モル%、塩化物イオン52.5モル%の混合アニオンと1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオンとからなる塩の2水和物と同定された。
収率:100%。
3角フラスコに、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド5.0gと水50gを仕込み、溶解させた。別の3角フラスコに、フッ化銀(I)1.72gと水30gを仕込み、溶解させた後、2つの水溶液を25℃で混合し、同温度で30分攪拌を続けた。反応後に析出した結晶を濾過し、結晶を水洗した。得られた濾液と洗液を合一して濃縮し、無色オイル5.8gを得た。このオイルは、0℃でも液体であった。元素分析の結果、得られたオイルはフッ化物イオン47.5モル%、塩化物イオン52.5モル%の混合アニオンと1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオンとからなる塩の2水和物と同定された。
収率:100%。
元素分析値: C:48.2、H:9.5、N:14.1、F:4.6、Cl:9.5
計算値 : C:47.4、H:9.5、N:13.8、F:4.5、Cl:9.2
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):0.88(t、3H)、1.25(m、2H)、1.78(m、2H)、3.90(s、3H)、4.19(t、2H)、7.85(d、2H)、10.0(bs、1H)
計算値 : C:47.4、H:9.5、N:13.8、F:4.5、Cl:9.2
1H−NMR(δppm、DMSO−d6、TMS基準):0.88(t、3H)、1.25(m、2H)、1.78(m、2H)、3.90(s、3H)、4.19(t、2H)、7.85(d、2H)、10.0(bs、1H)
実施例1
還流冷却管を付した50mLフラスコに、マロン酸ジメチル264mgと参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)400mgとヨウ化メチル430mgを仕込み、混合した後、25℃で3時間攪拌した。反応後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、マロン酸ジメチルの転化率は40%であり、メチルマロン酸ジメチルの選択率は100%であった。
還流冷却管を付した50mLフラスコに、マロン酸ジメチル264mgと参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)400mgとヨウ化メチル430mgを仕込み、混合した後、25℃で3時間攪拌した。反応後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、マロン酸ジメチルの転化率は40%であり、メチルマロン酸ジメチルの選択率は100%であった。
実施例2
還流冷却管を付した50mLフラスコに、マロン酸ジメチル132mgと参考例2で合成したイミダゾリウム塩(1)400mgとパラトルエンスルホン酸n−オクチル284mgを仕込み、混合した後、60℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、マロン酸ジメチルの転化率は100%であり、オクチルマロン酸ジメチルの選択率は30%であった。
還流冷却管を付した50mLフラスコに、マロン酸ジメチル132mgと参考例2で合成したイミダゾリウム塩(1)400mgとパラトルエンスルホン酸n−オクチル284mgを仕込み、混合した後、60℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、マロン酸ジメチルの転化率は100%であり、オクチルマロン酸ジメチルの選択率は30%であった。
実施例3
還流冷却管を付した50mLフラスコに、マロノニトリル130mgと参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)400mgとヨウ化メチル840mgを仕込み、混合した後、25℃で3時間攪拌した。反応後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、マロノニトリルの転化率は56%であり、メチルマロノニトリルの選択率は86%であった。
還流冷却管を付した50mLフラスコに、マロノニトリル130mgと参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)400mgとヨウ化メチル840mgを仕込み、混合した後、25℃で3時間攪拌した。反応後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、マロノニトリルの転化率は56%であり、メチルマロノニトリルの選択率は86%であった。
実施例4
還流冷却管を付した50mLフラスコに、マロノニトリル67mgと参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)250mgとパラトルエンスルホン酸n−オクチル284mgを仕込み、混合した後、60℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、マロノニトリルの転化率は80%であり、オクチルマロノニトリルの選択率は50%であった。
還流冷却管を付した50mLフラスコに、マロノニトリル67mgと参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)250mgとパラトルエンスルホン酸n−オクチル284mgを仕込み、混合した後、60℃で3時間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、マロノニトリルの転化率は80%であり、オクチルマロノニトリルの選択率は50%であった。
実施例5
還流冷却管を付した50mLフラスコに、アセチルアセトン200mgと参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)400mgとヨウ化メチル840mgを仕込み、混合した後、25℃で3時間攪拌した。反応後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、アセチルアセトンの転化率は60%であり、3−メチルアセチルアセトンの選択率は73%であった。
還流冷却管を付した50mLフラスコに、アセチルアセトン200mgと参考例1で合成したイミダゾリウム塩(1)400mgとヨウ化メチル840mgを仕込み、混合した後、25℃で3時間攪拌した。反応後、酢酸エチル10gと水5gを加えて攪拌・静置すると2層に分離した。その上層を、ガスクロマトグラフィ(内部標準法)にて分析したところ、アセチルアセトンの転化率は60%であり、3−メチルアセチルアセトンの選択率は73%であった。
医農薬や香料をはじめとする各種化学製品およびそれらの合成中間体等として重要な化合物である電子吸引基で置換されたアルカン化合物を、工業的に有利に製造することができる。
Claims (5)
- 式(1)
(式中、R1およびR3は、それぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基を表し、R2、R4およびR5はそれぞれ同一または相異なって、水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。Y−はフッ化物イオンを除く1価のアニオンを表す。また、0<x≦1である。)
で示されるフッ化物イオンを含有するアルキル置換イミダゾリウム塩の存在下に、式(2)
(式中、E1〜E3は、それぞれ同一または相異なって、電子吸引基または水素原子を表す。ただし、E1〜E3のうち2つ以上が同時に水素原子であることはない。)
で示される電子吸引基で置換されたメタン化合物と、式(3)
(式中、R6は置換されていてもよいアルキル基を表し、Xは脱離基を表す。)
で示される脱離基で置換されたアルカン化合物とを反応させる式(4)
(式中、E1〜E3およびR6は、それぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される電子吸引基で置換されたアルカン化合物の製造方法。 - 式(1)において、x=1である請求項1に記載の製造方法。
- 式(1)において、Y−で示される1価のアニオンが、フッ化物イオンを除くハロゲン化物イオン類、ホウ酸イオン類、リン酸イオン類、アンチモン酸イオン類、スルホン酸イオン類またはアミドイオン類である請求項1に記載の製造方法。
- 式(2)において、E1〜E3で示される電子吸引基が、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、シアノ基またはニトロ基である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 式(3)においてXで示される脱離基が、臭素原子、ヨウ素原子、アリールスルホニルオキシ基またはアルキルスルホニルオキシ基である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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JP2007177071A JP2009013118A (ja) | 2007-07-05 | 2007-07-05 | アルカン化合物の製造方法 |
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