本発明は、車両に搭載される無線通信装置、及び、当該無線通信装置を用いた車車間通信システムに関する。
従来、車車間通信システムとしては、各車両で、自車の位置や速度を検出して、自車の位置や速度を表す車両データを生成し、生成した車両データを無線により他車に送信するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
車両データを受信した車両は、受信した車両データに基づいて、例えば、他車との衝突危険度を判定し、自車が他車と衝突しないように、車両制御を実行したり、車両乗員に向けて警報を出力する。この車車間通信システムによれば、車両間の衝突を未然に防止することができ、車両乗員の安全を確保することができる。
また、車車間通信システムの無線通信方式としては、従来、DSRC、UWB、BlueTooth(登録商標)、無線LAN、ミリ波通信などの通信範囲が限られた狭域の無線通信方式が知られている。
しかしながら、通信範囲が限られた無線通信方式では、高層建造物が電波障害物となって、交差する道路を走行する車両間で直接無線通信を行うことができず、車両データの授受を適切に行うことができない場合がある。
このため、従来では、各車両に、受信した車両データを外部空間に再送出する機能を設け、車両間で車両データをリレーすることにより、電波障害物の影響を極力抑え、直接受信することができない車両間で適切に車両データを授受することができるようにしている。
特開2005−227978号公報
しかしながら、従来の車車間通信システムでは、次のような問題があった。即ち、従来の車車間通信システムでは、各車両に、受信した車両データを外部空間に再送出する機能を設ける程度であるので、交差点付近の車両密度が高い場合には、電波障害物の影響を十分に抑えて、車両間で欠落なく車両データを授受できるものの、車両密度が低い場合には、車両データをリレーする車両が少ない又はいないために、電波障害物を挟んで位置する車両間で、適切に車両データを授受することができないといった問題があった。
従って、従来システムでは、車両密度の低い交差点付近で、車両周囲の状況を正確に把握することができず、各車両で、衝突危険度の判定等を精度よく実行することができないといった問題があった。
また、電波障害を原因として車両間で車両データの授受を行うことができない場合でも、車両同士が近づけば、電波障害の程度が弱まり、車両間で車両データの授受を行うことができるようになるが、従来システムでは、電波障害で受信することができなかった車両データが車両の接近と共に受信することができるようになっても、この車両データを特別に取り扱うことなく、受信順に処理するため、衝突回避のために必要な処理の実行が遅れる可能性があった。
即ち、従来システムでは、車両データを受信順に処理するため、衝突の危険が迫っていることを示す車両データを受信しても、受信後の処理が滞っている場合、この車両データに基づいて、衝突の危険が迫っていることを、迅速に車両乗員に通知したり、迅速に衝突回避のための車両制御を実行することができないといった問題があった。また、このような問題は、電波障害が生じている場合に限らず、高速に車両が移動している場合等にも発生する可能性があった。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、従来よりも、受信した車両データを適切に処理して、車両間の衝突を回避することが可能な技術を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するためになされた本発明(請求項1記載)の無線通信装置は、車両間でデータの授受を行う車車間通信システムにおいて、各車両に搭載される無線通信装置であって、自車の車両状態を検出する検出手段と、データ送出手段と、データ受信手段と、処理実行手段と、優先度設定手段と、を備えるものである。
この無線通信装置において、データ送出手段は、検出手段の検出結果に基づき、自車の車両データとして、自車の車両状態を表す車両データを、無線にて外部空間に送出する。また、データ受信手段は、他車の無線通信装置から無線にて送出された車両データを受信し、処理実行手段は、データ受信手段が受信した車両データ毎に、当該車両データを用いた所定の処理を実行する。
一方、優先度設定手段は、データ受信手段が受信した車両データに対し、車両データ毎に、優先度を設定する。即ち、上記処理実行手段は、優先度設定手段により設定された優先度の高い車両データから順に、車両データを用いた上記所定の処理を実行する。
尚、所定の処理としては、車両データに基づいて車両を制御する処理や、車両データに基づいて警報を出力する処理、車両データを車内の電子制御装置(ECU)に送信する処理等を挙げることができる。
この無線通信装置によれば、各車両データに対し優先度を設定し、受信順に車両データを処理するのではなく、優先度順に、車両データを処理する。従って、受信した車両データを、その重要度に応じて、適切な順序で処理することができる。例えば、衝突危険度の高い車両の車両データから順に処理して、衝突回避に必要な処理を実行することができる。従って、本発明の無線通信装置を用いて、車車間通信システムを構築すれば、車両同士の衝突回避に大変役立つ。
具体的に、車車間通信システムを構築するに際しては、上記無線通信装置を各車両に搭載し、各車両においては、これら無線通信装置を通じ、車両間で車両データの授受を行うように、車車間通信システムを構築すればよい(請求項12)。このように車車間通信システムを構築すれば、従来よりも、車両同士の衝突を高い確率で回避することができる。
また、検出手段は、自車の車両状態として、自車の位置及び自車の速度及び自車の速度ベクトル、の少なくとも一つを、検出する構成にすることができる(請求項2)。
この他、車車間通信システムは、各車両から無線にて外部空間に送出された車両データを受信し、受信した車両データを、無線にて外部空間に再送出する中継装置を備える構成にされるとよい(請求項13)。この中継装置を、見通しの悪い交差点等に設置すれば、
中継装置の機能により、電波的な死角を取り除くことができ、車両間で授受する車両データに欠落が生じるのを、極力抑えることができる。
特に、中継装置を交差点等に固定設置すれば、交差点を通過する車両がいなくとも、中継装置から四方に、車両データを再送出することができ、車両間で車両データをリレーするシステムと比べて、車両密度により電波的な死角が変化することがなく、安定的に、車両間で車両データを授受することができる。
また、中継装置を用いて車車間通信システムを構築する場合、無線通信装置は、次のように構成されるとよい。即ち、無線通信装置は、受信した車両データが、中継装置から再送出されたデータであるか否かを判定する中継判定手段を備え、中継判定手段の判定結果に基づき、各車両データの優先度を設定する構成にされるとよい(請求項3)。
高層建造物等で電波障害が生じている車両間では、中継装置経由でしか車両データを受信することができない可能性があるが、電波的な死角は、基本的に、運転者の視覚的な死角に一致する。換言すると、車両間で直接受信することのできる車両データの送出元車両は、受信先車両の乗員からも視覚的に確認することができる可能性が高いが、直接受信することのできない車両データの送出元車両は、受信先車両の乗員から視覚的にも確認することができない可能性が高い。
従って、上述のように無線通信装置を構成し、中継装置経由で受信した車両データを優先的に処理すれば、視覚的にも確認することのできない車両についての衝突回避動作を優先的に実行することができ、衝突回避のために必要な処理を、適切な順序で実行することができる。
尚、具体的に、優先度設定手段は、データ受信手段が受信した車両データの内、中継判定手段により中継装置から再送出されたデータであると判定された車両データの優先度を、中継判定手段により中継装置から再送出されたデータではないと判定された車両データの優先度よりも高く設定する構成にされるとよい(請求項4)。
このように優先度設定手段を構成し、送出元車両から直接受信することのできた車両データの優先度を低くして、中継装置経由で受信した車両データの優先度を高くすれば、衝突危険度の高い車両の車両データから優先的に処理することができ、衝突を回避するために必要な処理を、適切な順序で実行することができる。
また、無線通信装置は、次のように構成されると、一層好ましい。即ち、無線通信装置は、データ受信手段が受信した車両データが、送出元車両の無線通信装置から中継装置を経由せずに直接受信することのできない車両データであるか否かを判定する直接受信可否判定手段を備え、データ受信手段が受信した車両データの内、直接受信可否判定手段により直接受信することのできない車両データであると判定された車両データの優先度を、上記データではないと判定された車両データの優先度よりも高く設定する構成にされると好ましい(請求項5)。
このように無線通信装置を構成すれば、送出元車両から直接受信することができない車両データを優先的に処理することができ、一層適切な順序で、衝突回避に必要な処理を、実行することができる。即ち、この無線通信装置によれば、高層建造物等により、車両乗員から認知されにくい衝突危険度の高い車両についての車両データから優先的に処理することができ、車両同士の衝突を適切に防ぐことができる。
また、無線通信装置は、データ受信手段が車両データを受信すると、この車両データと
送出元車両が同一の車両データを、過去の所定期間内に受信したことがあるか否かを判定する送出元判定手段、を備える構成にされるとよい。また、優先度設定手段は、データ受信手段が受信した車両データの内、送出元判定手段により過去の所定期間内に受信したことがないと判定された車両データの優先度を、送出元判定手段により過去の所定期間内に受信したことがあると判定された車両データの優先度よりも高く設定する構成にされるとよい(請求項6)。
同一車両から過去の所定期間内に車両データを受信したことがある場合には、当該過去における車両データの受信時点で、受信した車両データを用いて、衝突回避のための処理を実行しておくことができる。例えば、当該車両データに基づき、危険車両の存在を車両乗員に知らしめることができる。一方、初めて、車両データを受信した時点では、それ以前に、衝突回避のための処理を実行することができない。このため、当該車両データの処理を後回しにすると、衝突の危険度が上昇する。
上記理由から、この無線通信装置では、過去の所定期間内に受信したことがないと判定された車両データの優先度を高くするようにしている。このように優先度を設定する無線通信装置によれば、衝突回避に重要な車両データから順に処理することができ、衝突事故が発生する前に、車両データを迅速に処理して、事故の発生を未然に防止することができる。
また、優先度設定手段は、データ受信手段が受信した車両データの内、中継判定手段により中継装置から再送出されたデータであると判定され、且つ、送出元判定手段により過去の所定期間内に受信したことがないと判定された車両データを、中継判定手段により中継装置から再送出されたデータではないと判定された車両データ、及び、送出元判定手段により過去の所定期間内に受信したことがあると判定された車両データの優先度よりも高く設定する構成にされると、一層好ましい(請求項7)。
過去の所定期間内に同一車両から車両データを受信したことがない状態で、中継装置経由の車両データを受信した場合には、車両乗員からは見えない位置に送出元車両がいる可能性が高く、更に、車両乗員が当該送出元車両を認知していない可能性が高い。また、同一車両から過去に車両データを受信していない場合には、当然のことながら、受信時点までに、車両データを用いて、衝突回避のために必要な処理を実行することもできない。
従って、この種の車両データを優先的に処理するようにすれば、衝突事故の発生を、一層確実に防止することができる。
この他、無線通信装置は、次のように構成されてもよい。即ち、無線通信装置は、データ受信手段により所定期間内に受信された車両データであって中継判定手段により中継装置から再送出されたデータであると判定された車両データの数C1、及び、データ受信手段により所定期間内に受信された車両データであって中継判定手段により中継装置から再送出されたデータではないと判定された車両データの数C2を、車両データの送出元車両毎に算出する受信回数算出手段を備え、各車両データの優先度を、車両データの送出元車両について求められた値C1,C2に基づき、設定する構成にされてもよい(請求項8)。
このように無線通信装置を構成すれば、C1,C2の大小により、電波障害の程度を評価することができ、電波障害の影響を大きく受けている車両の車両データから優先的に処理して、衝突回避のための処理を実行することができる。換言すると、この無線通信装置によれば、高層建造物に妨害されて、車両乗員に認知されにくい危険度の高い車両についての車両データから優先的に、衝突回避のための処理を実行することができる。
また、無線通信装置は、次のように構成されてもよい。即ち、無線通信装置は、自車の車両データとして、自車の位置及び速度ベクトルを表す車両データを、無線にて外部空間に送出する構成にされ、車両データを受信すると、この車両データが示す当該車両データの送出元車両の位置及び速度ベクトルと、自車の位置及び速度ベクトルと、に基づき、送出元車両と自車との衝突危険度を、危険度判定手段によって判定する構成にされるとよい。また、優先度設定手段は、各車両データの優先度を、危険度判定手段が該当する車両データに基づき判定した衝突危険度の高さに応じたレベルに設定する構成にされるとよい(請求項9)。
この無線通信装置によれば、自車の位置及び速度ベクトルと、他車の位置及び速度ベクトルとに基づき、他車との衝突危険度を判定して、衝突危険度に応じた優先度で、他車から受信した車両データを処理するので、危険度の高い車両の車両データを優先的に処理し、衝突事故の発生を高確率で未然に防止することができる。
また、無線通信装置は、自車の車両データとして、自車の位置を表す車両データを、無線にて外部空間に送出する構成にされ、車両データを受信すると、この車両データが示す当該車両データの送出元車両の位置と、自車の位置と、に基づき、送出元車両が自車から所定距離以内に存在するか否かを、距離判定手段にて判定する構成にされてもよい。また、併せて、優先度設定手段は、データ受信手段が受信した車両データの内、距離判定手段により所定距離以内に存在すると判定された車両データの優先度を、距離判定手段により所定距離以内に存在しないと判定された車両データの優先度よりも高く設定する構成にされるとよい(請求項10)。
近接する車両については、遠くに位置する車両よりも当然のことながら、危険度が高い。従って、近接する車両から送出された車両データを優先的に処理するようにすれば、衝突回避のために必要な処理を適切な順序で実行することができ、車両の安全性を高めることができる。
また、無線通信装置は、自車の車両データとして、自車の速度を表す車両データを、無線にて外部空間に送出する構成にされ、車両データを受信すると、この車両データが示す当該車両データの送出元車両の速度が、所定速度以上であるか否かを、速度判定手段にて判定する構成にされてもよい。また、このように無線通信装置を構成する場合には、速度判定手段により所定速度以上であると判定された車両データの優先度を、速度判定手段により所定速度以上ではないと判定された車両データの優先度よりも高く設定するように、優先度設定手段を構成するとよい(請求項11)。
高速で走行する車両については、低速で走行する車両に比べて、単位時間当たりの移動距離が長いので、この車両との衝突を回避するには、車両データの受信後、短い時間で、衝突回避のための処理を実行する必要がある。換言すると、本発明のように、高速走行する車両についての車両データを優先的に処理するようにすれば、短い時間で、衝突回避のための処理を実行することができ、当該処理が遅れて、車両に危険が及ぶのを防止することができる。
以下、本発明の実施例について、図面と共に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
図1は、本実施例の車車間通信システム1の構成を表す説明図である。本実施例の車車
間通信システム1は、各車両3に搭載された無線通信装置50を通じて、車両3間で、車両情報を含むパケットの送受信を行うものである。この車車間通信システム1においては、電波障害物(高層建造物H等)により、車両間で直接パケットの授受を行うことができない地域に、中継装置10が設けられている。中継装置10は、各車両3から無線にて外部空間に送出されたパケットを受信し、受信したパケットを外部空間に再送出する。これにより、中継装置10は、送出元車両3から直接パケットを受信することができない車両3に対し、パケットを転送する。
尚、中継装置10は、例えば、路側に立てられたポールPを通じ、交差点の中心に張り出すように設置される。また、別例として、中継装置10は、信号機等に取り付けられる。
図2は、車両3に搭載された無線通信装置50から送出されるパケットの構成を表す説明図である。図2に示すように、本実施例の車車間通信システム1では、パケット番号、送出元ID情報、車両位置情報、車両速度情報、速度ベクトル情報、転送経路情報、及び、転送回数情報からなる車両情報が格納されたパケットが、無線通信装置50から、無線により外部空間に送出される。
具体的に、パケット番号は、送出されるパケットに対して連番で付与されるものである。また、送出元ID情報は、パケット送出元車両の車両IDを表すものである。本実施例では、各車両3に、固有の車両IDが付与されており、パケットには、上記送出元ID情報として、この車両IDが記述される。
また、車両位置情報は、パケット送出元車両の位置(緯度・経度)を表すものであり、車両速度情報は、パケット送出元車両の速度(スカラー値)を表すものである。この他、速度ベクトル情報は、パケット送出元車両の進行方向がベクトルの向きで表され、車両速度が長さで表されたベクトル(速度ベクトル)を表すものである。
また、転送経路情報は、パケット送出元の車両IDと中継装置の装置IDとが記述されてなるものである。但し、中継装置の装置IDは、パケットが中継装置10にて中継される時点で付与される。尚、本実施例では、各中継装置10に対し、固有の装置IDが付与されているものとする。
この他、転送回数情報は、初期値として値「1」を採り、中継装置10で中継されると、値「2」に書き換えられるものである。本実施例では、このような車両情報を含むパケットが、無線通信装置50を通じ、車両間で送受信される。
続いて、中継装置10及び無線通信装置50の詳細構成について説明する。図3は、中継装置10の構成を表すブロック図である。図3に示すように、中継装置10は、無線通信部11と、送信バッファ13と、受信バッファ15と、中継処理部17と、を備える。
無線通信部11は、送信処理部11a及び受信処理部11b及びアンテナ11cを備え、予め定められたプロトコルに従って無線通信を実行し、送信対象のパケットを、無線信号の形態で、アンテナ11cから出力すると共に、車両3から外部空間に送出された無線信号を、アンテナ11cを通じて受信し、当該信号から、パケットを抽出する。
具体的に、送信処理部11aは、送信バッファ13に格納された送信対象のパケットを、送信バッファ13に格納された順に処理して、当該パケットを、アンテナ11cを通じ、無線信号の形態で外部空間に出力する。
一方、受信処理部11bは、アンテナ11cを通じて受信した無線信号から、当該無線信号に重畳されたパケットを抽出し、これを順に、受信バッファ15に格納する。尚、送信バッファ13及び受信バッファ15は、FIFO方式のバッファとして構成されている。
この他、中継処理部17は、図4に示す中継処理を繰返し実行することにより、無線通信部11を通じて車両3から受信したパケットに含まれる車両情報を更新すると共に、更新後の車両情報を格納したパケットを、無線通信部11を通じて外部空間に再送出する。尚、図4は、中継処理部17が繰返し実行する中継処理を表すフローチャートである。
中継処理を開始すると、中継処理部17は、受信バッファ15に格納されたパケットを当該受信バッファ15から一つ取り出し(S110)、取り出したパケットから車両情報を抽出して、当該車両情報を更新する(S120)。
具体的に、中継処理部17は、転送経路情報を、自装置の装置IDを追加した情報に、更新すると共に、転送回数情報が示す値を、1カウントアップした値に更新する。具体的には、値「1」から値「2」に更新する。
このようにして車両情報を更新すると、中継処理部17は、当該更新後の車両情報を格納したパケットを生成し(S130)、生成したパケットを、送信バッファ13に入力すする(S140)。これにより、上記生成したパケットを、無線通信部11に、アンテナ11cを通じて外部空間へ再送出させる。
また、S140での処理を終えると、中継処理部17は、当該中継処理を一旦終了する。そして、再度、S110から中継処理を開始し、受信バッファ15に、次パケットがある場合には、当該パケットについて、S120以降の処理を実行する。一方、受信バッファ15に次パケットがない場合には、新たに受信バッファ15にパケットが格納されるまで待機し、受信バッファ15にパケットが格納された時点で、当該パケットについて、S120以降の処理を実行する。以上が、中継装置10の動作内容である。
続いて、各車両3に搭載される無線通信装置50の構成について説明する。図5は、無線通信装置50の構成を表すブロック図である。図5に示すように、本実施例の無線通信装置50は、無線通信部51と、送信バッファ53と、受信バッファ55と、位置検出器57と、速度検出器58と、方位検出器59と、制御部60と、CAN通信部61と、高優先送信バッファ63と、低優先送信バッファ64と、受信バッファ65と、を備える。
無線通信部51は、中継装置10の無線通信部11と同様の構成にされており、送信処理部51a及び受信処理部51b及びアンテナ51cを備える。そして、上記プロトコルに従って無線通信を実行し、送信対象のパケットを、無線信号の形態で、アンテナ51cから出力すると共に、他車両の無線通信装置50や中継装置10から外部空間に送出された無線信号を、アンテナ51cを通じて受信し、当該信号から、パケットを抽出する。
具体的に、送信処理部51aは、送信バッファ53に格納された送信対象のパケットを、送信バッファ53に格納された順に処理して、当該パケットを、アンテナ51cを通じ、無線信号の形態で外部空間に出力する。一方、受信処理部51bは、アンテナ51cを通じて受信した無線信号から、当該無線信号に重畳されたパケットを抽出し、これを順に、受信バッファ55に格納する。
この他、位置検出器57は、当該無線通信装置50が搭載された自車両の位置を検出し、この検出結果に従い、自車両の位置情報を、制御部60に入力するものである。この位
置検出器57は、例えば、GPS受信機で構成される。
また、速度検出器58は、自車両の速度を検出して、この検出結果に従い、自車両の速度情報を、制御部60に入力するものであり、方位検出器59は、自車両の向きを、絶対方位で検出して、この検出結果に従い、自車両の方位情報を、制御部60に入力するものである。
また、制御部60は、当該無線通信装置50を統括制御する。この制御部60は、位置検出器57、速度検出器58、及び、方位検出器59から取得した自車両の位置情報、速度情報、及び、方位情報に基づいて、自車両の車両情報を格納したパケットを生成し、これを、送信バッファ53に入力して、当該パケットを、無線通信部51に、無線信号として外部空間に送出させる。
この他、制御部60は、無線通信部51が受信したパケットを、受信バッファ55を通じて取得し、これを、CAN通信部61を通じて、車内LANに接続されたECUに転送する。また、制御部60は、CAN通信部61を通じて、車内LANに接続されたECUと通信し、通信先のECUから入力された指令に対応する処理を実行する。
また、この制御部60は、ナビゲーション装置80に、シリアルインタフェース(図示せず)を通じて接続されており、ナビゲーション装置80と連携動作して、ナビゲーション装置80が有するモニタ81に、各種情報を表示する。
例えば、制御部60は、無線通信部51から受信したパケットに含まれる車両情報に基づき、ナビゲーション装置80が有するモニタ81に、自車両周囲に位置する他車両の位置情報を表示する(詳細後述)。
この他、CAN通信部61は、送信処理部61a及び受信処理部61bを備え、CANプロトコルに従って車内LANに接続されたECUと通信する。具体的に、受信処理部61bは、車内LANに送出された自装置宛てのパケットを受信し、受信したパケットを、受信バッファ65に格納する。
また、送信処理部61aは、高優先送信バッファ63及び低優先送信バッファ64に格納された送信対象のパケットを、高優先送信バッファ63に格納されたパケットから順に、車内LANに送出する。尚、高優先送信バッファ63及び低優先バッファ64及び受信バッファ65は、FIFO方式のバッファとして構成されている。
図6は、送信処理部61aが繰返し実行する送信制御処理を表すフローチャートである。高優先送信バッファ63及び低優先送信バッファ64に格納された送信対象のパケットは、図6に示す送信制御処理に供されて、車内LANに送出される。
送信制御処理を開始すると、送信処理部61aは、高優先送信バッファ63が空の状態(即ち、高優先送信バッファ63に送信対象のパケットが登録されていない状態)であるか否かを判断し(S210)、高優先送信バッファ63が空ではないと判断すると(S210でNo)、高優先送信バッファ63からパケットを一つ取り出し、これを車内LANに送出する(S220)。また、この処理を終えると、S210に移行する。
このようにして、送信処理部61aは、高優先送信バッファ63が空になるまで、高優先送信バッファ63からパケットを一つ取り出して、これを車内LANに送出する動作を、繰返し実行する。
一方、高優先送信バッファ63が空であると判断すると(S210でYes)、送信処理部61aは、S230に移行して、低優先送信バッファ64が空であるか否かを判断し、低優先送信バッファ64が空ではないと判断すると(S230でNo)、低優先送信バッファ64からパケットを一つ取り出し、これを車内LANに送出する(S240)。また、この処理を終えると、S210に移行する。
このようにして、送信処理部61aは、高優先送信バッファ63が空でない場合、高優先送信バッファ63に登録されたパケットを優先的に送信し、高優先送信バッファ63が空のときに限って、低優先送信バッファ64に登録されたパケットを順に送信する。そして、高優先送信バッファ63及び低優先送信バッファ64の両者が空になると(S230でYes)、当該送信制御処理を一旦終了する。その後、再び、当該送信制御処理を、S210から開始する。
続いて、制御部60が実行する車両情報送信処理について説明する。図7は、制御部60が繰返し実行する車両情報送信処理を表すフローチャートである。
車両情報送信処理を開始すると、制御部60は、位置検出器57から自車両の位置情報を取得すると共に(S310)、速度検出器58から自車両の速度情報を取得し(S320)、更に、方位検出器59から、自車両の方位情報を取得する(S330)。また、速度検出器58から取得した速度情報及び方位検出器59から取得した方位情報に基づき、自車両の速度ベクトルを算出する(S340)。
そして、これらの情報から、上記構成の車両情報を格納したパケット(図2参照)を生成する(S350)。具体的には、パケット番号を記すと共に、送出元ID情報として、自車両の車両IDを記し、車両位置情報として、位置検出器57から取得した位置情報を記し、車両速度情報として、速度検出器58から取得した速度情報を記し、速度ベクトル情報として、S340で算出した自車両の速度ベクトルを記し、転送経路情報として、自車両の車両IDを記し、転送回数情報として、値「1」を記して、上記車両情報を格納したパケットを生成する。
また、この処理を終えると、制御部60は、生成したパケットを、送信バッファ53に入力し(S360)、無線通信部51に、当該パケットを、無線により外部空間に送出させる。その後、当該車両情報送信処理を一旦終了する。制御部60は、このようにして、車両情報送信処理を繰返し実行することにより、自車両の車両情報を格納したパケットを、逐次、外部空間に送出する。
この他、制御部60は、無線通信部51が他車両3又は中継装置10から受信したパケットを、図8に示す車両情報転送処理に供する。図8は、制御部60が繰返し実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。
車両情報転送処理を開始すると、制御部60は、受信バッファ55から、無線通信部51が受信したパケットを一つ取り出し(S410)、このパケットを解析して、当該パケットを、中継装置10経由で受信したか否かを判断する(S420)。即ち、受信したパケットが、中継装置10から再送出されたパケットであるか否かを判断する。
尚、S420では、パケットに含まれる転送経路情報に、中継装置の装置IDが付加されているか否かを判断することによって、中継装置10経由でパケットを受信したか否か判断することができる。その他、パケットに含まれる転送回数情報が値「2」であるか否かを判断することによって、中継装置10経由でパケットを受信したか否か判断してもよい。
ここで、パケットを中継装置10経由で受信したと判断すると(S420でYes)、制御部60は、S430に移行し、図9(a)に示す高優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。
一方、パケットを中継装置10経由で受信しておらず送出元車両から直接受信したと判断すると(S420でNo)、制御部60は、S440に移行し、図9(b)に示す低優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。制御部60は、このようにして、車両情報転送処理を繰返し実行することにより、無線通信部51が他車両3又は中継装置10から受信したパケットを、転送及び表示処理に供する。
続いて、制御部60が実行する高優先処理について説明する。図9(a)は、制御部60が実行する高優先処理を表すフローチャートである。
高優先処理を開始すると、制御部60は、受信バッファ55から取り出したパケットに記された車両情報に基づき、当該車両情報に、「高優先」との値を表す優先度情報を付して、転送車両情報を生成する。そして、当該転送車両情報をパケットに格納して、車内LANに接続された特定ECU宛てのパケットを生成する(S510)。具体的には、衝突回避ECU90宛てのパケットを生成する。
尚、衝突回避ECU90は、車内LANを通じて無線通信装置50から、転送車両情報が格納されたパケットを受信すると、この転送車両情報に基づいて、衝突回避に必要な車両制御を、車内LANに接続された他のECU(エンジンECUやブレーキECU等)と協働して実行するものである。
具体的に、衝突回避ECU90は、優先度情報として「高優先」との値が記された転送車両情報を、「低優先」との値が記された転送車両情報に優先して処理して、車両制御が必要である場合には、衝突回避に必要な車両制御を実行する。
また、S510での処理を終えると、制御部60は、ここで生成したパケットを、高優先送信バッファ63に入力し(S520)、CAN通信部61に、当該パケットを、衝突回避ECU90に向けて送出させる。この他、制御部60は、上記受信バッファ55から取り出したパケットに記された車両情報についての表示ジョブ(詳細後述)を、高優先キューに登録する(S530)。その後、当該高優先処理を終了する。
この他、図9(b)は、制御部60が実行する低優先処理を表すフローチャートである。制御部60は、低優先処理を開始すると、受信バッファ55から取り出したパケットに記された車両情報に基づき、当該車両情報に、「低優先」との値を表す優先度情報を付して、転送車両情報を生成する。そして、当該転送車両情報を格納したパケットであって、車内LANに接続された特定ECU(衝突回避ECU90)宛てのパケットを生成する(S610)。
また、S610での処理を終えると、制御部60は、上記生成したパケットを、低優先送信バッファ64に入力し(S620)、CAN通信部61に、当該パケットを、衝突回避ECU90に向けて送出させる。また、この処理を終えると、制御部60は、上記車両情報についての表示ジョブを、低優先キューに登録する(S630)。その後、当該低優先処理を終了する。
制御部60は、このような内容の高優先処理及び低優先処理を、S430,S440で実行することにより、中継装置10経由で受信したパケットを優先的に、車内LANに送
出すると共に、中継装置10経由で受信したパケット(車両情報)についての表示ジョブを優先的に処理する。
具体的に、制御部60は、図10(a)に示す情報表示処理を実行することにより、表示ジョブを処理する。図10(a)は、制御部60が繰返し実行する情報表示処理を表すフローチャートである。
情報表示処理を開始すると、制御部60は、高優先キューに表示ジョブが登録されているか否かを判断し(S710)、高優先キューに表示ジョブが登録されていると判断すると(S710でYes)、高優先キューに登録された表示ジョブを、一つ処理対象ジョブに設定し、処理対象ジョブの車両情報に基づき、当該車両情報の送出元車両のシンボル(アイコン)を、ナビゲーション装置80のモニタ81上に表示する(S720)。
具体的には、車両情報が示す送出元車両の位置に基づき、ナビゲーション装置80がモニタ81に表示する現在地周辺の地図画面上であって、送出元車両の実位置に対応する画面上の特定エリアに、送出元車両のシンボル(アイコン)を表示する。特に、ここでは、シンボルの表示色を赤色に設定し、車両乗員に、当該車両が、衝突危険度の高い車両であることを、色を通じて通知する。
尚、図10(b)は、送出元車両のシンボルSY2aがマッピングされた地図画面の構成を表す説明図である。図10(b)に示すように、本実施例では、自車両のシンボルSY1が表示された地図画面上に、他車両のシンボルSY2を色付きで表示することで、自車両周囲の車両の配置を、衝突危険度の情報と共に、車両乗員に通知する。
但し、過去にパケット送出元車両から受信した車両情報に基づいた処理により、当該車両のシンボルが、既に地図画面上に表示されている場合、S720では、新たにシンボルを追加表示するのではなく、既に表示されているシンボルの位置を、更新する処理を行う。
また、本実施例では、既に表示されているシンボルが、衝突危険度が低い車両であることを示す青色で表示されている場合、次の条件で、シンボルを青色から赤色に更新する。具体的には、現在より遡って所定時間T1内に、該当するシンボルが、S740の処理で更新されていない場合に、シンボルを青色から赤色に更新する。一方、所定時間T1内に、S740の処理でシンボルが更新されている場合には、シンボルを赤色に変更せず、青色のまま表示する。
このようにして、S720での処理を終えると、制御部60は、S710に移行し、高優先キューに、次の表示ジョブが登録されているか否かを判断する。そして、高優先キューに表示ジョブが登録されていると判断すると(S710でYes)、S720の処理を実行する。一方、高優先キューが空である場合には(S710でNo)、S730に移行する。
そして、S730では、低優先キューに表示ジョブが登録されているか否かを判断し、低優先キューに表示ジョブが登録されていると判断すると(S730でYes)、低優先キューに登録された表示ジョブを、一つ処理対象ジョブに設定し、処理対象ジョブの車両情報に基づき、当該車両情報の送出元車両のシンボル(アイコン)を、ナビゲーション装置80のモニタ81上に表示する(S740)。
即ち、車両情報が示す送出元車両の位置に基づき、ナビゲーション装置80がモニタ81に表示する現在地周辺の地図画面上であって、送出元車両の実位置に対応する画面上の
特定エリアに、送出元車両のシンボル(アイコン)を表示する。特に、ここでは、シンボルの表示色を青色に設定し、車両乗員に、当該車両が、衝突危険度の低い車両であることを、色を通じて通知する。
但し、S740では、処理対象ジョブに対応する車両情報の送出元車両のシンボルが既に地図画面上に表示されている場合、新たにシンボルを追加表示するのではなく、既に表示されているシンボルの位置を、更新する処理を行う。また、既に表示されているシンボルが、衝突危険度が高い車両であることを示す赤色で表示されている場合には、シンボルの表示色を赤色から青色に更新する。
このようにして、S740での処理を終えると、制御部60は、S710に移行する。そして、高優先キューに次の表示ジョブが登録されていると判断すると(S710でYes)、S720に移行する。一方、高優先キューに次の表示ジョブが登録されておらず、低優先キューに次の表示ジョブが登録されていると判断すると(S730でYes)、S740に移行する。そして、高優先キュー及び低優先キューの両者が空となると(S730でNo)、当該情報表示処理を一旦終了する。その後、再び、当該情報表示処理をS710から開始する。
以上、第一実施例の車車間通信システム1について説明したが、本実施例の無線通信装置50では、無線通信部51が受信したパケットに優先度を設定し、受信順にパケットを処理するのではなく、優先度順にパケットを処理するようにした(送信制御処理(図6)及び情報表示処理(図10))。特に、本実施例では、車両3が高層建造物H等に阻害されて他の車両乗員から認知されない可能性があるので、中継装置10経由で受信したパケットを、優先的に処理するようにした。
従って、本実施例の無線通信装置50によれば、衝突回避の点から、受信パケットを、適切な順序で処理することができ、この無線通信装置50は、車両同士の衝突回避に大変役立つ。
また、この車車間通信システム1では、中継装置10を見通しの悪い地域に設置することにより、車両間で直接パケットを授受できない場合でも、中継装置10経由でパケットを授受できるようにした。従って、本実施例の車車間通信システム1によれば、中継装置10により、電波的な死角を取り除くことができ、車両間で送受信するパケットに欠落が生じるのを、極力抑えることができる。
特に、本実施例によれば、中継装置10を交差点等に固定設置するようにしているので、交差点を通過する車両がいなくとも、中継装置10から四方に、パケットを再送出することができ、車両間で車両情報をリレーする従来システムと比べて、車両密度により電波的な死角が変化することがなく、安定的に、車両間で車両情報を授受することができる。
尚、本実施例においては、位置検出器57、速度検出器58及び方位検出器59と、制御部60が実行するS310〜S340の処理と、により、本発明の検出手段としての機能が実現されている。また、データ送出手段は、無線通信部51(送信処理部51a)と、送信バッファ53と、制御部60が実行するS350,S360の処理と、により実現され、データ受信手段は、無線通信部51(受信処理部51b)と、受信バッファ55と、制御部60が実行するS410の処理と、により実現されている。
この他、処理実行手段は、CAN通信部61が実行する送信制御処理(図6参照)と、制御部60が実行する情報表示処理(図10参照)と、により実現され、中継判定手段は、制御部60が実行するS420の処理により実現されている。また、優先度設定手段は
、制御部60が実行するS430,S440の処理により実現されている。
ところで、本実施例では、中継装置10経由で受信したパケットを全て「高優先」に設定するようにしたので、送出元車両から直接パケットを受信することができないパケットのみを、特に、優先的に処理することができない。従って、車車間通信システム1は、次のように構成されてもよい(第二実施例)。
図11は、第二実施例において、中継装置10の中継処理部17が実行する中継処理を表すフローチャートである。また、図12は、第二実施例において、無線通信装置50の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートであり、図13は、当該制御部60が実行する高優先処理を表すフローチャートである。
第二実施例の車車間通信システム1は、中継処理部17が実行する中継処理の内容、及び、制御部60が実行する車両情報転送処理及び高優先処理の内容が異なることを除けば、基本的に、第一実施例の車車間通信システム1と同一構成である。従って、以下では、第二実施例の説明として、中継処理部17が実行する処理の内容、及び、制御部60が実行する処理の内容を説明するに留める。
第二実施例において、中継装置10の中継処理部17は、図4に示す中継処理に代えて、図11に示す中継処理を実行する。但し、第二実施例の中継処理部17は、内蔵のRAMに、後述の中継装置受信リストを備えた構成にされているものとする。
図11に示す中継処理を開始すると、中継処理部17は、RAMに記憶された中継装置受信リストを初期化する(S800)。即ち、中継装置受信リストに登録されたレコードを全て消去する。また、この処理を終えると、受信バッファ15に格納されたパケットを当該受信バッファ15から一つ取り出し(S810)、取り出したパケットから車両情報を抽出して、S120の処理と同様の手法で、抽出した車両情報を更新する(S820)。
また、車両情報を更新すると、更新後の車両情報を、新規レコードとして、中継装置受信リストに追加登録する(S830)。その後、S840に移行する。
この他、S840に移行すると、中継処理部17は、中継装置受信リストの送信時刻が到来したか否かを判断し、送信時刻が到来していると判断すると(S840でYes)、S850に移行し、送信時刻が到来していないと判断すると(S840でNo)、S810に移行する。そして、受信バッファ15に格納された次パケットの車両情報を更新し、この車両情報を表すレコードを中継装置受信リストに追加登録する(S810〜S830)。
尚、S840での判断は、例えば、前回中継装置受信リストを送信してから所定時間が経過したか否かを判断することにより実現することができる。即ち、中継装置受信リストを送信してから所定時間が経過している場合には、送信時刻が到来したと判断し(S840でYes)、中継装置受信リストを送信してから所定時間が経過していない場合には、送信時刻が到来していないと判断する(S840でNo)。
そして、送信時刻が到来したと判断し、S850に移行すると、中継処理部17は、RAMに記憶された中継装置受信リストを格納したパケットを生成し、生成したパケットを、送信バッファ13に入力することにより(S860)、無線通信部11に、当該パケットを外部空間に送出させる。この後、当該中継処理を一旦終了する。そして、再度、S8
00から中継処理を開始する。
続いて、無線通信装置50の制御部60が実行する車両情報転送処理の内容について説明する。第二実施例において、制御部60は、図8に示す車両情報転送処理に代えて、図12に示す車両情報転送処理を実行する。
図12に示す車両情報転送処理を開始すると、制御部60は、受信バッファ55から、無線通信部51が受信したパケットを、一つ取り出し(S910)、当該パケットが、中継装置受信リストを含むパケットであるか否かを判断する(S920)。そして、上記取り出したパケットが中継装置受信リストを含むパケットであると判断すると(S920でYes)、S930に移行する。一方、上記取り出したパケットが中継装置受信リストを含まない通常の車両情報を含むパケットであると判断すると(S920でNo)、S950に移行する。
また、S950に移行すると、制御部60は、受信したパケットに含まれる車両情報を、新規レコードとして、自装置受信リストに追加登録する。尚、本実施例の制御部60は、内蔵のRAMに、中継装置受信リストと同一フォーマットの自装置受信リストを有するものとする。また、自装置受信リストに登録されたレコードは、制御部60の動作により、当該自装置受信リストに登録されたレコードの総数が、所定数を超えた時点で、登録時期の古いものから順に消去されるものとする。
また、S950での処理を終えると、制御部60は、S960に移行し、図9(b)に示す低優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。そして、再度、S910から当該車両情報転送処理を開始する。
一方、中継装置受信リストを含むパケットを受信して、S930に移行すると、制御部60は、受信した中継装置受信リストに登録された各レコードを、自装置受信リストに登録された各レコードと比較し、中継装置受信リストにあって、自装置受信リストにないレコードを全て抽出する。尚、ここでは、パケット番号と送出元ID情報とが一致するレコードを、同一のレコードであるとみなし、中継装置受信リストにあって、自装置受信リストにないレコードを全て抽出する。
そして、該当するレコードの抽出が終了すると、制御部60は、S940に移行し、図13に示す高優先処理を実行する。
図13に示す高優先処理を開始すると、制御部60は、まず、S930で抽出したレコードの中に、S1030以降の処理に供されていない未処理のレコードがあるか否かを判断する(S1010)。そして、未処理のレコードがあると判断すると(S1010でYes)、S1020に移行する。
一方、未処理のレコードがないと判断すると(S1010でNo)、制御部60は、当該高優先処理を終了する。尚、S930で該当するレコードを抽出することが出来なかった場合、制御部60は、S1010で、未処理のレコードがないと判断して、当該高優先処理を終了する。
また、S1020に移行すると、制御部60は、未処理のレコードの内、受信時刻の最も古いレコードを、処理対象レコードに設定する。そして、この処理対象レコードが示す車両情報に「高優先」との値を表す優先度情報を付して、転送車両情報を生成し、当該転送車両情報を格納したパケットであって、車内LANに接続された衝突回避ECU90宛てのパケットを生成する(S1030)。
また、この処理を終えると、制御部60は、上記生成したパケットを、高優先送信バッファ63に入力し(S1040)、CAN通信部61に、当該パケットを、衝突回避ECU90に向けて送出させる。また、S1040での処理を終えると、制御部60は、処理対象レコードが示す車両情報の表示ジョブを、高優先キューに登録する(S1050)。その後、S1010に移行する。
そして、全てのレコードについて、S1030〜S1050の処理を実行すると、S1010でNoと判断して、当該高優先処理を終了する。
また、このようにして、S940における高優先処理を終了すると、制御部60は、車両情報転送処理を一旦終了する。第二実施例の制御部60は、このような内容の車両情報転送処理を繰返し実行することにより、無線通信部51が他車両3又は中継装置10から受信したパケットを処理する。
以上、第二実施例の車車間通信システム1について説明したが、この車車間通信システム1では、無線通信装置50が、中継装置受信リストと自装置受信リストとの比較により、送出元車両の無線通信装置50から直接受信することができなかった車両情報を選択的に抽出し、抽出した車両情報を優先的に処理するので、衝突回避の点から、一層適切な順序で、車両情報を処理することができる。
即ち、本実施例によれば、高層建造物H等の電波障害物により車両乗員からは視認することのできない他車両の車両情報を優先的に処理し、これを衝突回避ECU90に送信することができるので、衝突回避ECU90に、衝突回避に必要な車両制御を、衝突危険度の高いものから優先的に実行させることができる。また、本実施例によれば、衝突危険度の高い車両についてのシンボルを、優先的に更新することができるので、衝突の危険性を、迅速且つ正確に、車両乗員に、伝えることができる。
ところで、第一実施例の情報表示処理では、S720において、所定条件が満足されたときに限り、青色表示されているシンボルを赤色に切り替えるようにしたが、第二実施例では、青色表示されているシンボルを、S720にて、無条件に赤色に切り替えるように、無線通信装置50を構成してもよい(後述する第三実施例〜第七実施例についても同様)。
このようにすれば、中継装置10経由でしか車両情報を受信することのできない車両のシンボルを迅速に赤色に切り替えることができ、衝突危険度の高い車両についての情報を、迅速に車両乗員に伝えることができる。
尚、本実施例においては、制御部60が実行するS930の処理により、本発明の直接受信可否判定手段としての機能が実現されている。また、優先度設定手段は、制御部60が実行するS940,S960の処理により実現されている。
また、無線通信装置50は、同一車両から過去所定時間内にパケットを受信していない場合、当該車両から受信したパケットを優先的に処理する構成にされてもよい(第三実施例)。
図14は、第三実施例において、無線通信装置50の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。第三実施例の車車間通信システム1は、制御部60が実行する車両情報転送処理の内容が、第一実施例の車車間通信システム1と異なる程度
であり、その他の構成は、第一実施例の車車間通信システム1と基本的に同一である。従って、以下では、第三実施例の説明として、制御部60が実行する車両情報転送処理の内容を選択的に説明する。
第三実施例において、無線通信装置50の制御部60は、図8に示す車両情報転送処理に代えて、図14に示す車両情報転送処理を実行する。この車両情報転送処理を開始すると、制御部60は、受信バッファ55から、無線通信部51が受信したパケットを一つ取り出し(S1110)、上記取り出したパケットに、送出元ID情報として記述された車両IDを、パケットの受信時刻と関連付けて、受信履歴データベースに登録する(S1120)。尚、本実施例の制御部60は、内蔵のRAMに、受信履歴データベースを有するものとする。
また、S1120での処理を終えると、制御部60は、上記受信履歴データベースに登録された内容に基づき、上記取り出したパケットに、送出元ID情報として記述された車両IDが、所定時間内に初めて、送出元ID情報として受信された車両IDであるか否かを判断する(S1130)。
そして、所定時間内に初めて受信された車両IDであると判断すると(S1130でYes)、制御部60は、S1140に移行する。一方、制御部60は、過去所定時間内に送出元ID情報として同一の車両IDを受信している場合、S1130でNoと判断して、S1160に移行する。そして、S1160では、図9(b)に示す低優先処理を実行し、その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。
S1140に移行すると、制御部60は、S420と同様の手法により、中継装置10経由でパケットを受信したか否かを判断する(S1140)。そして、パケットを中継装置10経由で受信したと判断すると(S1140でYes)、図9(a)に示す高優先処理を実行する(S1150)。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。
一方、パケットを中継装置10経由で受信しておらず送出元車両から直接受信したと判断すると(S1140でNo)、S1160に移行し、図9(b)に示す低優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。制御部60は、このようにして、車両情報転送処理を繰返し実行することにより、同一車両から過去所定時間内にパケットを受信していない場合、当該車両から受信したパケットを優先的に処理する。
以上、第三実施例の車車間通信システム1について説明したが、本実施例では、無線通信装置50において、同一車両から過去所定時間内にパケットを受信していない場合、この車両から受信したパケットを優先的に処理するようにした。従って、本実施例によれば、衝突回避の点から、適切な順序で、パケットを処理することができ、衝突事故の発生を未然に防止することができる。
即ち、同一車両から過去所定時間内に車両情報を受信したことがある場合には、当該過去における車両情報の受信時点で、受信した車両情報を用いて、送出元車両のシンボルをモニタ81に表示し、危険車両の存在を車両乗員に知らしめることができるが、初めて、車両情報を受信した時点では、それ以前に、モニタ81に車両のシンボルを表示することができない。
このような理由から、本実施例では、同一車両から過去所定時間内にパケットを受信していない場合、当該車両から受信したパケットの優先度を高くして、シンボルを表示するなど、衝突回避のための処理を迅速に実行するようにしているのである。
尚、過去所定時間で初めて受信したパケットについては、中継装置10を経由しているか否かに拘わらず、優先度を高くして、当該パケットを優先的に処理するようにしてもよいが、当該パケットが、中継装置10を経由せず直接受信することのできるパケットである場合には、当該パケットの送出元車両が、車両乗員から直接視認できている可能性が高く、この車両についての衝突危険度は、さほど高くない。
一方、過去所定時間内に同一車両からパケットを受信していないにも拘わらず、中継装置10経由で、この車両からパケットを受信した場合には、パケット送出元車両が、車両乗員から見えない位置にいる可能性が高く、車両乗員が当該車両を認知していない可能性が高い。
そこで、本実施例では、過去所定時間内に同一車両からパケットを受信していないにも拘わらず、中継装置10経由で受信したパケットを、特に優先的に処理するようにしているのである。従って、本実施例の車車間通信システム1によれば、衝突回避の点から、適切な順序でパケットを処理することができ、衝突回避を高い精度で実現することができる。
尚、本実施例においては、制御部60が実行するS1120,S1130の処理により、本発明の送出元判定手段としての機能が実現されている。また、中継判定手段は、制御部60が実行するS1140の処理にて実現され、優先度設定手段は、制御部60が実行するS1150,S1160の処理にて実現されている。
また、車車間通信システム1においては、中継装置10経由で受信したパケットの数C1、中継装置10を経由せずに直接受信したパケットの数C2に基づいて、パケットの優先度を切り替えるようにしてもよい(第四実施例)。
図15は、第四実施例において、無線通信装置50の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。第四実施例の車車間通信システム1は、制御部60が実行する車両情報転送処理の内容が、第一実施例の車車間通信システム1と異なる程度であり、その他の構成は、第一実施例の車車間通信システム1と基本的に同一である。従って、以下では、第四実施例の説明として、制御部60が実行する車両情報転送処理の内容を選択的に説明する。
第四実施例において、無線通信装置50の制御部60は、図8に示す車両情報転送処理に代えて、図15に示す車両情報転送処理を実行する。この車両情報転送処理を開始すると、制御部60は、受信バッファ55から、無線通信部51が受信したパケットを一つ取り出し(S1210)、上記取り出したパケットに送出元ID情報として記述された車両IDを、パケットの受信時刻と関連付けて、受信履歴データベースに登録する(S1220)。尚、本実施例において、制御部60は、内蔵のRAMに、受信履歴データベースを有するものとする。
また、S1220での処理を終えると、制御部60は、当該受信履歴データベースに登録された情報に基づき、上記取り出したパケットに送出元ID情報として記述された車両IDが、所定時間内に初めて、送出元ID情報として受信された車両IDであるか否かを判断する(S1230)。
そして、所定時間内に初めて受信された車両IDであると判断すると(S1230でYes)、制御部60は、S1240に移行し、当該車両IDについての受信パケット数C1,C2をゼロに設定(C1=0,C2=0)する。その後、S1250に移行する。一
方、所定時間内に初めて受信された車両IDではないと判断すると(S1230でNo)、制御部60は、S1240の処理を実行せずに、S1250に移行する。
また、S1250に移行すると、制御部60は、S420と同様の手法で、パケットを中継装置10経由で受信したか否かを判断する。そして、パケットを中継装置10経由で受信したと判断すると(S1250でYes)、パケット送出元車両の車両IDの受信パケット数C1を1カウントアップする(S1260)。その後、受信パケット数C1が、当該車両IDについての受信パケット数C2よりも大きいか否かを判断し(S1270)、C1>C2であると判断すると(S1270でYes)、S1280に移行して、図9(a)に示す高優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。
一方、C1≦C2であると判断すると(S1270でNo)、制御部60は、S1300に移行し、図9(b)に示す低優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。
この他、制御部60は、パケットを中継装置10経由で受信しておらず直接受信したと判断すると(S1250でNo)、パケット送出元車両の車両IDの受信パケット数C2を、1カウントアップする(S1290)。その後、S1300に移行して、図9(b)に示す低優先処理を実行し、当該車両情報転送処理を一旦終了する。
制御部60は、このような内容の車両情報転送処理を繰返し実行することにより、パケット送出元車両毎に、受信パケット数C1,C2を算出し、中継装置10経由でパケットが送られてくることの多い車両から受信したパケットを、優先的に処理する。
以上、第四実施例の車車間通信システム1について説明したが、この車車間通信システム1では、中継装置10経由でパケットが送られてくることの多い車両から受信したパケットを、優先的に処理するので、車両乗員からは見えにくいであろう危険度の高い車両から受信したパケットを優先的に処理することができ、衝突回避の点から、受信パケットを、適切な順序で処理することができて、衝突事故が発生する可能性を小さくすることができる。
尚、本実施例においては、制御部60が実行するS1230,S1240,S1260,S1290の処理にて、本発明の受信回数算出手段としての機能が実現されている。また、中継判定手段は、制御部60が実行するS1250の処理にて実現され、優先度設定手段は、制御部60が実行するS1270,S1280,S1300の処理にて実現されている。
また、無線通信装置50は、パケット送出元車両と自車両との位置や進行方向の関係により、受信パケットの優先度を定める構成にされてもよい(第五実施例)。
図16は、第五実施例において、無線通信装置50の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。第五実施例の車車間通信システム1は、制御部60が実行する車両情報転送処理の内容が、第一実施例の車車間通信システム1と異なる程度であり、その他の構成は、第一実施例の車車間通信システム1と基本的に同一である。従って、以下では、第五実施例の説明として、制御部60が実行する車両情報転送処理の内容を選択的に説明する。
第五実施例において、無線通信装置50の制御部60は、図8に示す車両情報転送処理に代えて、図16に示す車両情報転送処理を実行する。この車両情報転送処理を開始する
と、制御部60は、受信バッファ55から、無線通信部51が受信したパケットを一つ取り出し(S1310)、このパケットを用いて図17に示す危険度判定処理を実行する(S1320)。尚、図17は、制御部60が実行する危険度判定処理を表すフローチャートである。
危険度判定処理を開始すると、制御部60は、まず、位置検出器57から自車両の位置情報を取得すると共に(S1410)、速度検出器58から自車両の速度情報を取得し(S1420)、更に、方位検出器59から、自車両の方位情報を取得する(S1430)。そして、上記取得した速度情報及び方位情報に基づき、自車両の速度ベクトルV1を算出する(S1440)。
また、この処理を終えると、制御部60は、上記取り出したパケットに速度ベクトル情報として記されたパケット送出元車両の速度ベクトルV2と、S1440で算出した自車両の速度ベクトルV1と、に基づき、速度ベクトルV1に対して速度ベクトルV2がなす角度θを算出する(S1450)。ここでは、図17に示すように、角度θを時計回りに計るものとする。
また、S1450での処理を終えると、制御部60は、S1460に移行し、自車両の位置及び速度ベクトルV1と、受信バッファ55から取り出した上記パケットに記されたパケット送出元車両の位置と、に基づき、パケット送出元車両の存在領域を判定する。具体的には、パケット送出元車両が、前方領域、左側領域、右側領域、後方領域のいずれに存在するかを判定する。
尚、図18は、存在領域の判定方法に関する説明図であり、前方領域、左側領域、右側領域、後方領域の区画を示した図である。本実施例では、自車両の位置を基点Psとして速度ベクトルV1を配置した状態で、基点Psを通り速度ベクトルV1に直交する直線LN1より、速度ベクトルV1の向きとは反対側の領域を、後方領域に定めている。
また、速度ベクトルV1に平行で、基点Psから左側に所定距離離れた位置を通る直線LN2を基準として、直線LN2より基点Psとは反対側の領域であって後方領域に属さない領域を、左側領域に定めている。また、同様に、速度ベクトルV1に平行で、基点Psから右側に所定距離離れた位置を通る直線LN3を基準として、直線LN3より基点Psとは反対側の領域であって後方領域に属さない領域を、右側領域に定めている。尚、ここでは、速度ベクトルV1の向きを基準として、左右を定めるものとする。
また、S1460での判定が終了すると、制御部60は、S1470に移行して、上記判定結果に従い、パケット送出元車両の存在領域が「前方領域」であるか否かを判断する。そして、パケット送出元車両の存在領域が「前方領域」であると判断すると(S1470でYes)、S1480に移行して、S1450で求めた角度θが、不等式π−α1≦θ≦π+α2を満足するか否かを判断する。
このようにして、S1480では、パケット送出元車両が、自車両の前方に位置し、しかも自車両に向かって走行している車両であるか否かを判断する。尚、定数α1,α2は、道路幅を考慮して定められる上記前方領域の横幅に対応する値に、設定段階で予め定められる。
そして、角度θが、不等式π−α1≦θ≦π+α2を満足すると判断すると(S1480でYes)、制御部60は、パケット送出元車両が自車両の前方から自車両に向かって走行している車両であるとして、S1550に移行し、危険度が「大」であると判定する。その後、当該危険度判定処理を終了する。
一方、角度θが、不等式π−α1≦θ≦π+α2を満足しないと判断すると(S1480でNo)、制御部60は、S1490に移行し、角度θが、不等式0≦θ≦β1又は2π−β2≦θ≦2πを満足するか否かを判断する。このようにして、S1490では、パケット送出元車両が、自車両の前方に位置し、自車両と同方向を走行している車両であるか否かを判断する。尚、定数β1,β2は、定数α1,α2と同様、上記前方領域の横幅に対応する値に、設定段階で予め定められる。
そして、角度θが、不等式0≦θ≦β1又は2π−β2≦θ≦2πを満足しないと判断すると(S1490でNo)、パケット送出元車両が自車両に向かって走行しているものでもなく自車両と同方向を走行しているものでもないとして、S1560に移行し、危険度が「小」であると判定する。その後、当該危険度判定処理を終了する。
この他、角度θが、不等式0≦θ≦β1又は2π−β2≦θ≦2πを満足すると判断すると(S1490でYes)、制御部60は、S1500に移行し、自車両の速度の絶対値(速度ベクトルV1の長さ)と、パケット送出元車両の速度の絶対値(速度ベクトルV2の長さ)と、を比較して、自車両のほうがパケット送出元車両より速く走行しているか否かを判断する。
そして、自車両のほうがパケット送出元車両より速く走行していると判断すると(S1500でYes)、自車両が前方に位置する送出元車両に対して後方から追突する可能性があるとして、危険度が「大」であると判定する(S1550)。その後、当該危険度判定処理を終了する。
これに対し、自車両のほうがパケット送出元車両より遅く走行していると判断すると(S1500でNo)、制御部60は、自車両が前方に位置する送出元車両に対して後方から追突する可能性はないとして、危険度が「小」であると判定する(S1560)。その後、当該危険度判定処理を終了する。
一方、パケット送出元車両の存在領域が「前方領域」ではないと判断すると(S1470でNo)、制御部60は、S1510に移行し、パケット送出元車両の存在領域が「左側領域」であるか否かを判断する。そして、パケット送出元車両の存在領域が「左側領域」であると判断すると(S1510でYes)、S1520に移行して、角度θが、不等式0<θ<πを満足するか否かを判断する。このようして、制御部60は、左側領域に位置するパケット送出元車両が、自車両に近づく方向に走行している車両であるか否かを判断する。
そして、角度θが、不等式0<θ<πを満足すると判断すると(S1520でYes)、パケット送出元車両が自車両に近づく方向に走行しているとして、危険度が「大」であると判定する(S1550)。一方、角度θが、不等式0<θ<πを満足しないと判断すると(S1520でNo)、制御部60は、パケット送出元車両が自車両から離れる方向に走行している車両であるとして、危険度が「小」であると判定する(S1560)。その後、当該危険度判定処理を終了する。
この他、パケット送出元車両の存在領域が「左側領域」ではないと判断すると(S1510でNo)、制御部60は、パケット送出元車両の存在領域が「右側領域」であるか否かを判断し(S1530)、パケット送出元車両の存在領域が「右側領域」であると判断すると(S1530でYes)、角度θが、不等式π<θ<2πを満足するか否かを判断する(S1540)。このようにして、制御部60は、右側領域に位置するパケット送出元車両が、自車両に近づく方向に走行しているか否かを判断する。
そして、角度θが、不等式π<θ<2πを満足すると判断すると(S1540でYes)、制御部60は、パケット送出元車両が自車両に近づく方向に走行している車両であるとして、危険度が「大」であると判定する(S1550)。一方、角度θが、不等式π<θ<2πを満足しないと判断すると(S1540でNo)、制御部60は、パケット送出元車両が自車両から離れる方向に走行している車両であるとして、危険度が「小」であると判定する(S1560)。その後、当該危険度判定処理を終了する。
また、制御部60は、パケット送出元車両の存在領域が「右側領域」でもないと判断すると(S1530でNo)、パケット送出元車両の存在領域が「後方領域」であるとして、危険度が「小」であると判定する(S1560)。その後、当該危険度判定処理を終了する。
また、S1320での危険度判定処理を終了すると、制御部60は、S1330に移行して、当該危険度判定処理での判定結果が危険度「大」との判定結果であるか否かを判断し、判定結果が危険度「大」との判定結果であると判断すると(S1330でYes)、S1340に移行して、図9(a)に示す高優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。
一方、危険度判定処理での判定結果が危険度「小」との判定結果であると判断すると(S1330でNo)、制御部60は、S1350に移行して、図9(b)に示す低優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。本実施例の制御部60は、このようにして、パケット送出元車両の危険度を判定し、危険度が「大」であると判定されたパケットを、優先的に処理する。
以上、第五実施例について説明したが、本実施例によれば、無線通信装置50において、自車両の位置及び速度ベクトルと、受信パケットが示すパケット送出元車両の位置及び速度ベクトルとに基づき、自車両とパケット送出元車両との衝突危険度を判定し、衝突危険度に応じた優先度で、パケットを処理するので、危険度の高い車両の情報を地図画面を通じて優先的に更新表示して、最新情報を車両乗員に報知することができる。また、当該パケットを衝突回避ECU90に優先的に処理させて、衝突回避のための車両制御を迅速に実行させることができる。
尚、本実施例においては、制御部60が実行する危険度判定処理(図17参照)により、本発明の危険度判定手段としての機能が実現されている。また、優先度設定手段は、制御部60が実行するS1330〜S1350の処理にて実現されている。
また、車車間通信システム1は、車両間の相対距離に基づき、優先的に処理するパケットを決定する構成にされてもよい(第六実施例)。
図19は、第六実施例において、無線通信装置50の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。第六実施例の車車間通信システム1は、制御部60が実行する車両情報転送処理の内容が、第一実施例の車車間通信システム1と異なる程度であり、その他の構成は、第一実施例の車車間通信システム1と基本的に同一である。従って、以下では、第六実施例の説明として、制御部60が実行する車両情報転送処理の内容を選択的に説明する。
第六実施例において、無線通信装置50の制御部60は、図8に示す車両情報転送処理に代えて、図19に示す車両情報転送処理を実行する。
この車両情報転送処理を開始すると、制御部60は、受信バッファ55から、無線通信部51が受信したパケットを一つ取り出すと共に(S1610)、位置検出器57から自車両の位置情報を取得する(S1620)。そして、取得した自車両の位置情報と、上記取り出したパケットが示す送出元車両の位置情報とに基づき、送出元車両と自車両との相対距離を算出する(S1630)。
また、この処理を終えると、制御部60は、相対距離が閾値(例えば、100m)未満であるか否かを判断し(S1640)、相対距離が閾値未満であると判断すると(S1640でYes)、S1650に移行して、図9(a)に示す高優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。
一方、制御部60は、相対距離が閾値以上であると判断すると(S1640でNo)、S1660に移行して、図9(b)に示す低優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。制御部60は、このような内容の車両情報転送処理を繰返し実行することにより、パケット送出元車両が自車両から所定距離内に存在する場合、この車両から受信したパケットを優先的に処理する。
以上、第六実施例の車車間通信システム1について説明したが、本実施例では、無線通信装置50において、自車両から所定距離内に存在する車両から受信したパケットを、優先的に処理するようにした。
近接する車両については、遠くに位置する車両よりも当然のことながら、危険度が高い。従って、近接する車両から送出されたパケットを優先的に処理するようにすれば、衝突危険度の高い車両のパケットを優先的に処理することができ、衝突回避のために必要な処理を迅速に実行することができる。従って、本実施例によれば、衝突事故の発生を、極力、未然に防止することができる。
尚、本実施例においては、制御部60が実行するS1620〜S1640の処理により、本発明の距離判定手段としての機能が実現されている。また、優先度設定手段は、制御部60が実行するS1650,S1660の処理にて実現されている。
この他、車車間通信システム1は、無線通信装置50において、高速で移動する車両から受信したパケットを優先的に処理する構成にされてもよい(第七実施例)。
図20は、第七実施例において、無線通信装置50の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。第七実施例の車車間通信システム1は、制御部60が実行する車両情報転送処理の内容が、第一実施例の車車間通信システム1と異なる程度であり、その他の構成は、第一実施例の車車間通信システム1と基本的に同一である。従って、以下では、第七実施例の説明として、制御部60が実行する車両情報転送処理の内容を選択的に説明する。
第七実施例において、無線通信装置50の制御部60は、図8に示す車両情報転送処理に代えて、図20に示す車両情報転送処理を実行する。
この車両情報転送処理を開始すると、制御部60は、受信バッファ55から、無線通信部51が受信したパケットを一つ取り出し(S1710)、取り出したパケットが示す送出元車両の速度が、閾値(例えば、時速60km)を越えているか否かを判断する(S1720)。
そして、送出元車両の速度が閾値を越えていると判断すると(S1720でYes)、S1730に移行し、図9(a)に示す高優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。
一方、制御部60は、送出元車両の速度が閾値以下であると判断すると(S1720でNo)、S1740に移行し、図9(b)に示す低優先処理を実行する。その後、当該車両情報転送処理を一旦終了する。第七実施例において、制御部60は、このような内容の車両情報転送処理を繰返し実行して、他車両3からの受信パケットを処理する。
以上、第七実施例の車車間通信システム1について説明したが、本実施例では、閾値を超える速度で走行している車両から受信したパケットを、優先的に処理するようにした。高速で走行する車両については、低速で走行する車両に比べて、単位時間当たりの移動距離が長いので、この車両との衝突を回避するには、パケットの受信後、短い時間で、衝突回避のための処理を実行する必要がある。
従って、本実施例のように、高速走行する車両から受信したパケットを優先的に処理するようにすれば、危険車両から順に衝突回避のための処理を実行することができ、処理が遅れて、車両に危険が及ぶのを防止することができる。
尚、本実施例においては、制御部60が実行するS1720の処理により、本発明の速度判定手段としての機能が実現されている。また、優先度設定手段は、制御部60が実行するS1730,S1740の処理にて実現されている。
車車間通信システム1の構成を表す説明図である。
車両情報が格納されたパケットの構成を表す説明図である。
中継装置10の構成を表すブロック図である。
中継処理部17が実行する中継処理を表すフローチャートである。
無線通信装置50の構成を表すブロック図である。
送信処理部61aが実行する送信制御処理を表すフローチャートである。
制御部60が実行する車両情報送信処理を表すフローチャートである
制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。
制御部60が実行する高優先処理(a)及び低優先処理(b)を表すフローチャートである。
制御部60が実行する情報表示処理を表すフローチャート(a)及びこの処理で更新される画面の構成を表す説明図(b)である。
第二実施例の中継処理部17が実行する中継処理を表すフローチャートである。
第二実施例の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。
第二実施例の制御部60が実行する高優先処理を表すフローチャートである。
第三実施例の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。
第四実施例の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。
第五実施例の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。
第五実施例の制御部60が実行する危険度判定処理を表すフローチャートである。
存在領域の判定方法に関する説明図である。
第六実施例の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。
第七実施例の制御部60が実行する車両情報転送処理を表すフローチャートである。
符号の説明
1…車車間通信システム、3…車両、10…中継装置、11,51…無線通信部、11a,51a,61a…送信処理部、11b,51b,61b…受信処理部、11c,51c…アンテナ、13,53…送信バッファ、15,55,65…受信バッファ、17…中継処理部、50…無線通信装置、57…位置検出器、58…速度検出器、59…方位検出器、60…制御部、61…CAN通信部、63…高優先送信バッファ、64…低優先送信バッファ、80…ナビゲーション装置、81…モニタ、90…衝突回避ECU