JP2009007946A - 排気ガス浄化触媒装置 - Google Patents

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久也 川端
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雅彦 重津
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Abstract

【課題】未浄化排気ガスの排出を抑制しつつ、三元触媒32の早期活性化を図ることができるようにする。
【解決手段】三元触媒32にCO吸着材を設けるとともに、三元触媒32よりも排気ガス流れの上流側に、HC吸着材とNOx吸着材とを有する吸着部材31を配置し、排気ガス温度の上昇に伴って、吸着部材31からHC及びNOxが同時期に脱離ピークにならないように所定の順番で脱離されて三元触媒32に流入するようにする。
【選択図】図2

Description

本発明は、エンジンの排気ガス浄化触媒装置に関する。
エンジンの排気ガス浄化触媒装置に関しては、エンジン冷間始動時のような排気ガス温度が低いときの低温浄化性能の確保が求められるとともに、エンジンの加速運転時のような排気ガス温度が高いときの触媒の劣化を抑えることが求められる。低温浄化性能に関しては、触媒が十分に活性化していない排気ガス低温時に、未浄化排気ガスの排出を如何に抑えるか、また、触媒を如何に早く活性化させるかが課題となる。一方、触媒の熱劣化に関しては、触媒金属のシンタリングを抑制すること、触媒金属を担持する酸素吸蔵放出材、その他の金属酸化物系サポート材の結晶構造の変化による比表面積の低下を抑制することが課題となる。
これまでの触媒金属の高分散担持技術やサポート材の複合化技術の開発・進歩により、上記触媒の熱劣化の課題に関しては解決されつつある。しかし、低温時の未浄化排気ガスの排出問題に関しては、HCトラップ材の利用が図られている程度であり、また、触媒の早期活性化に関しても、触媒をエンジンに近付けて配置すること等により、触媒の早期昇温が図られている程度に過ぎない。
例えば、特許文献1には、エンジンの排気通路の上流側に配置した三元触媒と下流側に配置したHCトラップ触媒との間に二次エア管を接続し、HCトラップ触媒がHCを脱離する温度になったら、上記触媒間に二次エアを供給することが記載されている。これは、二次エアの供給によってHCトラップ触媒を酸素過剰雰囲気にし、脱離するHCの浄化を促進するというものである。
特許文献2には、エンジンの排気通路に、その上流側から順に、HC吸着材、NOx吸着材及びNOx触媒又は三元触媒を設けることが記載されている。これは、エンジンの冷間始動時などの触媒が活性温度域に達していない低温時には、HC吸着材及びNOx吸着材にて排気ガス中のHC及びNOxを吸着し、触媒が活性温度域に達した後に、HC吸着材及びNOx吸着材から脱離するHCやNOxを触媒にて浄化するというものである。
特許文献3には、白金成分と酸化第一銅とが無機担体に担持されてなるCO選択酸化触媒が記載されている。
特開2004−169583号公報 特開2000−345832号公報 特開2006−341206号公報
ところで、エンジンには、低燃費で高出力が得られることが要求される。この相反する要求のために、燃料噴射制御、空燃比制御、点火制御等のエンジン制御技術、動弁系部品の低摩擦化技術、エンジン本体の構造に関する技術の開発が進められている。例えば、燃料を気筒内燃焼室に直接噴射供給する直噴エンジンとし、エンジン本体の構造の面からは高圧縮比エンジンとすることが行なわれている。
しかし、直噴エンジンとした場合、エンジン冷間時には気筒内での燃料の気化が不十分になり易く、HCの排出量が増大する。また、高圧縮比とすると、燃料の気化が不十分になりやすく、また、燃料が気筒内の未燃焼領域(シリンダブロックの上面とシリンダヘッドの下面の間に画成されるクレビス等)に押し込まれ易くなり、HCの排出量が増大する。
また、エンジン出力には排気系の構造も関係する。すなわち、排気ガス浄化触媒は排気ガスの流れを妨げてエンジンの背圧を増大させる一因となる。また、各気筒毎に排出された排気ガスの圧力が他気筒の排気の邪魔をする排気干渉が排気マニホールドで生ずるという問題がある。従って、エンジン出力向上のために背圧(排気抵抗)を小さくすることが求められる。
そのためには、例えば4気筒エンジンであれば、排気マニホールドの4本の分岐管を2本にまとめ、さらにその2本を1本にまとめるというように、段階的に集合させていくことにより排気干渉を抑えるとともに、エンジン本体から排気マニホールドの集合部までの距離を長くし(例えば65cm以上)、その下流側に触媒を設けることが背圧増加を抑える上で有効になる。
しかし、エンジン本体から触媒までの距離が長くなると、触媒金属のシンタリング抑制及びサポート材の結晶構造の破壊抑制には有利になるものの、触媒に達するまでの排気ガス温度の低下が大きくなるため、低温浄化性能の向上(触媒の早期活性化及び未浄化排気ガスの排出抑制)の面からは極めて不利になる。
これに対し、従来は上述の如きHCトラップ触媒による未浄化HCの排出抑制、CO酸化触媒による三元触媒の早期活性化など、各課題に対して個別的に対応されているが、十分な対応がなされているとは言い難い。未浄化排気ガスの排出抑制に関しても、触媒材料技術の観点からの大きな進展はみらず、触媒の早期活性化に関しても、さらなる技術進歩が求められている。
そこで、本発明は、未浄化排気ガスの排出を抑制しつつ、触媒の早期活性化を図ることができるようにする、すなわち、触媒の低温浄化性能の問題を統轄的に解決することを課題とする。
本発明は、このような課題に対して、未浄化排気ガスの排出を抑制する排気ガス成分吸着材を利用して、三元触媒の早期活性化を図るようにした。
請求項1に係る発明は、エンジンから排出されるHC、CO及びNOxを含む排気ガスが流れる排気通路に三元触媒が設けられている排気ガス浄化触媒装置において、
上記三元触媒よりも排気ガス流れの上流側に、上記排気ガスが接触したときにHCを優先的に吸着するHC吸着材と、上記排気ガスが接触したときにNOxを優先的に吸着するNOx吸着材とを有し、上記排気ガスが接触したときにCOを優先的に吸着するCO吸着材を有しない排気ガス成分吸着部材が配置され、
上記三元触媒が上記CO吸着材を含有することを特徴とする。
従って、エンジンの冷間始動時など三元触媒がライトオフしていないような低温時には、排気ガス中のHC及びNOxは三元触媒よりも上流側に設けられたHC吸着材及びNOx吸着材によって吸着され、また、排気ガス中のCOは三元触媒のCO吸着材によって吸着され、HC、CO及びNOxが未浄化のまま排出されることが防止される。
そうして、本発明によれば、三元触媒が活性ピークになる前の活性が比較的低い段階にあるときでも、HC、CO及びNOxを効率良く浄化することができ、三元触媒の早期活性化に有利になる。
すなわち、三元触媒の活性が未だ低いときは、触媒活性点に排気ガス成分が吸着し、触媒反応(吸着→表面反応→生成物の脱離)は円滑には進まない。そのため、三元触媒に流入する排気ガス成分の量が多い場合には、該排気ガス成分の吸着によって活性点が少なくなり、未浄化のまま排出される量が多くなる。特にHC、CO及びNOxの3成分が同時に多量に流入すると、これら3成分間で触媒の活性点の奪い合いになり、それらの浄化を期待することができない。
これに対して、本発明の場合は、排気ガス中のHC及びNOxの各排気ガス成分の殆どが上記2種の吸着材によって吸着され、三元触媒の活性が低い段階(従って、排気ガス温度が低く吸着材温度も低い)では、該三元触媒に流入するHC及びNOxの量は少なくなる。このため、HC、CO及びNOx間では三元触媒の活性点の奪い合いにならず、HC及びNOxを三元触媒において比較的効率良く浄化することができ、未浄化のまま排出されてしまう量は少なくなる。
そうして、三元触媒において上記HC及びNOxの浄化が効率良く進むことにより、その触媒反応熱によって該三元触媒の温度が上昇してその活性が高くなっていく。よって、その後に上記2種の吸着材からHC及びNOxが比較的多量に脱離してきても、それらは三元触媒で浄化され、この浄化によって三元触媒の温度がさらに上昇してその活性が高くなっていく。
しかも、排気ガスの熱を受けやすい上流側の吸着部材に比べて、下流側の三元触媒のCO吸着材は昇温が遅れるから、上流側の吸着部材からHC、NOxが脱離すると同時に、三元触媒のCO吸着材からCOが脱離するという事態が避けられる。従って、三元触媒では、CO吸着材のCOによって妨げられることなく、上流側の吸着部材から脱離するHCやNOxを効率良く浄化することができる。
次いで、上記吸着部材から脱離するHCやNOxを三元触媒が浄化するによって三元触媒の温度が上昇すると、該三元触媒のCO吸着材に吸着されたCOが脱離してくる。しかし、そのときには上流側の吸着部材のHC及びNOxの脱離量は少なくなっているから、CO吸着材から脱離するCOは三元触媒によって効率良く浄化される。
上記HC吸着材としては、ゼオライトが好ましく、特にβゼオライトが好ましい。上記NOx吸着材としては、セリア、ゼオライト、アルカリ金属、アルカリ土類金属、或いはMn系複合酸化物(特にMn−Ce複合酸化物)、シリカにMnを担持させたMn/SiO、ジルコニアにMnを担持させたMn/ZrO、BaCuOにPdを担持させたPd/BaCuO等が好ましい。
上記CO吸着材としては、SrTiOのようなペロブスカイト型酸化物にPdを担持させたもの、アルミナやセリア等にCuを担持させたCu担持材、或いはアルミナにFe、CO、Ni、W及びMoのうちの少なくとも一種を担持させたものが好ましい。CO吸着材にはPt、Pd等の触媒金属を担持させること(例えば、上記アルミナやセリアにCuと共にPtやPd担持させること)が好ましい。これにより、CO吸着材から脱離するCOの酸化を当該触媒金属によって促進することができる。
なお、本明細書、特許請求の範囲等においては、温度が低いときに排気ガス成分を化学的又は物理的に吸着ないしは捕捉し、温度が上昇すると、吸着ないしは捕捉していた当該排気ガス成分を脱離する材を「吸着材」と称しているが、当業者間では「吸蔵材」又は「トラップ材」と称されることもある。
請求項2に係る発明は、請求項1において、
上記三元触媒と排気ガス成分吸着部材とは1つのコンバータに収容されていることを特徴とする。
従って、HC吸着材及びNOx吸着材から脱離するHC及びNOxは温度の大きな低下を招くことなく三元触媒に流入することになり、該三元触媒によるそれら排気ガス成分の浄化に有利になる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2において、
上記排気ガス成分吸着部材のHC吸着材とNOx吸着材とは、一つのハニカム担体のセル壁にコーティングされており、且つ当該2種の吸着材のうちの一方が排気ガス流れの上流部に、他方が排気ガス流れの下流部に配置されていることを特徴とする。
すなわち、エンジンの排気通路に設けられた吸着部材のハニカム担体は、排気ガスの熱により、その上流側から時間の経過と共に下流側へ向かって漸次温度が高くなっていく。従って、HC吸着材及びNOx吸着材のうち、ハニカム担体上流部の吸着材に吸着された排気ガス成分が先に脱離し、後からハニカム担体下流部の吸着材に吸着された排気ガス成分が脱離する。換言すれば、HC及びNOxは、互いの脱離量がピークになる時期がずれ、上流部→下流部の順番で脱離して三元触媒に流入する。
よって、上記2種の吸着材からHC及びNOxが同時に脱離して三元触媒に流入することが避けられ、つまり、HC及びNOx間で触媒の活性点の奪い合い状態になることが避けられる。
例えば、HC→NOxの順で脱離が進む場合、HCが脱離するとき、三元触媒に流入するHC量は多くなるが、NOxは吸着材に吸着されるから、三元触媒に流入する量はエンジンから排出される量よりも少なくなる。このため、三元触媒によるHCの浄化がNOxによって妨げられることが避けられる。続いてNOxが脱離するときは、HCの浄化によって触媒温度が上昇しており、NOxの浄化が促進される。NOx→HCの順で脱離が進む場合も同じである。
従って、HC吸着材及びNOx吸着材から脱離するHC及びNOxを三元触媒によって効率良く浄化することができ、三元触媒は自身の触媒反応熱によって活性が高くなっていく。
請求項4に係る発明は、請求項3において、
上記HC吸着材のHC脱離量がピークになる温度と、上記NOx吸着材のNOx脱離量がピークになる温度との差は、20℃以下であることを特徴とする。
上記2種の吸着材の脱離ピーク温度差が20℃以下であるということは、両吸着材は略同程度の脱離ピーク温度特性をもつということである。従って、ハニカム担体の上流部の吸着材から下流側の吸着材へと順に、且つ脱離量がピークになる時期が確実にずれて、各排気ガス成分が脱離していくことになり、各吸着材から脱離する排気ガス成分を三元触媒によって効率良く浄化することができる。
脱離ピーク温度差が20℃以下となる当該2種の吸着材の好ましい組み合わせは次の通りである。
HC吸着材として脱離ピーク温度180℃〜220℃のβゼオライトを採用する場合、NOx吸着材としてMn−Ce複合酸化物(脱離ピーク温度200℃付近)を採用する。
HC吸着材として脱離ピーク温度200℃〜240℃のβゼオライトを採用する場合、NOx吸着材としてシリカにMnを担持させたMn/SiO(脱離ピーク温度220℃付近)、ジルコニアにMnを担持させたMn/ZrO(脱離ピーク温度220℃付近)を採用する。
要するに、βゼオライトはその組成によってHC脱離温度が異なることが知られており(特開2007−76989号公報参照)、使用するHC吸着材の脱離ピーク温度に応じて、脱離ピーク温度差が最大でも20℃となるようにNOx吸着材を選択すればよい。
CO吸着材としては、例えば、CeOにCuを担持させたCu/CeO(脱離ピーク温度200℃付近)又はアルミナにFe、CO、Ni、W及びMoのうちの少なくとも一種を担持させたもの(脱離ピーク温度180℃付近)を採用すればよい。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
エンジンの冷間始動時に上記三元触媒に流入する排気ガスが、該排気ガス中の還元性成分を酸化するのに必要な化学量論比を超える酸素過剰状態とされることを特徴とする。
これにより、エンジン冷間始動時における三元触媒でのHC及びCOの酸化浄化に有利になる。ここに、上記排気ガスは、エンジンをリーン空燃比で始動させることにより、或いは理論空燃比又はリッチ空燃比で始動させる場合には上記三元触媒よりも上流側の排気通路に二次エアを供給することにより、上記酸素過剰状態とすることができる。後者の二次エアを供給するケースでは、上記三元触媒の温度が所定値以上に上昇したときに、特にライトオフ温度以上に上昇したときに、その二次エアの供給を実行することが排気ガス温度の低下を抑える点から好ましい。ライトオフ温度以下のときに二次エアを供給してもよいが、この場合には、例えばエンジン点火時期をリタードさせることにより、エンジンから出る排気ガスの温度を高める等の手段を講ずることが好ましい。
また、二次エアを吸着材の配設位置よりも排気ガス流れの上流側に供給する場合は、全ての吸着材から排気ガス成分が脱離した後に二次エアの供給を行なうことが好ましい。脱離前に二次エアを供給すると、それによって吸着材が冷却され、排気ガス成分が脱離し難くなるためである。
以上のように、請求項1に係る発明によれば、三元触媒よりも排気ガス流れの上流側に、HC吸着材とNOx吸着材とを含有しCO吸着材を含有しない吸着部材が配置され、三元触媒にCO吸着材が設けられているから、排気ガス中のHC、CO及びNOxが未浄化のまま排出されることを防止しながら、これら吸着材から脱離する排気ガス成分を利用して三元触媒の活性を早期に高めることができる。
請求項2に係る発明によれば、上記三元触媒と排気ガス成分吸着部材とは1つのコンバータに収容されているから、HC吸着材及びNOx吸着材から脱離するHC及びNOxは温度の大きな低下を招くことなく三元触媒に流入し、該三元触媒によるそれら排気ガス成分の浄化に有利になる。
請求項3に係る発明によれば、HC吸着材とNOx吸着材とは一つのハニカム担体のセル壁にコーティングされており、且つその両吸着材が排気ガス流れの上流部と下流部とに配置されているから、両吸着材からHC及びNOxが同時に脱離して三元触媒に流入することが避けられ、つまり、HC及びNOx間で触媒の活性点の奪い合い状態になることが避けられ、HC及びNOxを三元触媒によって効率良く浄化することができるとともに、三元触媒のさらなる活性化に有利になる。
請求項4に係る発明によれば、上記HC吸着材のHC脱離量がピークになる温度と、上記NOx吸着材のNOx脱離量がピークになる温度との差が20℃以下であるから、ハニカム担体の上流部の吸着材から下流側の吸着材へと順に、且つ脱離量がピークになる時期が確実にずれて、HC、NOxが脱離していくことになり、それらを三元触媒によって効率良く浄化することができる。
請求項5に係る発明によれば、エンジンの冷間始動時に上記三元触媒に流入する排気ガスが酸素過剰状態とされるから、三元触媒でのHC及びCOの酸化浄化に有利になる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は自動車のエンジン及び排気系を示す。同図において、1はエンジンルーム2と車室とを仕切るダッシュパネル(車室前板)、3はエンジンルーム2のフード、4は車室のフロアパネル中央を車体前後方向に延びるフロアトンネル部である。エンジンルーム2において、5は横置き型の多気筒エンジン本体、6はラジエータ、7は吸気マニホールド、8は排気マニホールドである。
エンジン本体5において、11は気筒、12はピストン、13は点火プラグであり、当該エンジンは低燃費で高出力を得るべくサイドインジェクタ14を有する高圧縮比の直噴ガソリンエンジンとされている。排気マニホールド8は、エンジン本体5より後方へ延び、その集合部15に触媒コンバータ16が結合されている。触媒コンバータ16より排気管17が後方へ延びている。
<排気マニホールド構造>
本実施形態では、排気マニホールド8の集合部15はエンジン本体5から後方へ遠く(例えば、最短管長部分で60cm以上100cm以下)離されて、ダッシュパネル1の下方位置に配置されている。従って、触媒コンバータ16は、排気マニホールド8に直結されているものの、エンジン本体5から遠く離れてダッシュパネル1の下方ないしは該ダッシュパネル1よりも後方に配置されている。また、触媒コンバータ16及び排気管17はフロアトンネル部4の中に配設され、排気管17はフロアトンネル部4を通して後方へ延びている。
上述の如く、エンジン本体5からマニホールド集合部15までの距離を長くとっているのは、エンジンの気筒間の排気干渉を抑えるためである。すなわち、図2に4気筒エンジンの例で示すように、排気マニホールド8は、各気筒(図2では図示省略)から延びる4本の分岐管21〜24のうちの両端2本の分岐管21,24を途中で1本の集合管25に集合させる一方、中央2本の分岐管22,23を途中で1本の集合管26に集合させ、その2本の集合管25,26を集合させて上記集合部15としている。
このような排気マニホールド構造であれば、分岐管21→分岐管23→分岐管24→分岐管22の順で排気が行なわれるように、4気筒の点火順を定めることにより、点火順が相隣る気筒間で生ずる排気干渉を小さく抑えることができる。
また、上記排気マニホールド構造を採用することにより、エンジン本体5から触媒コンバータ16に至るまでの排気通路が長く(例えば65cm以上に)なるので、該コンバータ16に収容されている後述の触媒等が排気流れの抵抗になることが軽減され、エンジンの低燃費高出力化に有利になる。本実施形態では、触媒コンバータ16は、運転者が当該自動車の運転のために操作するアクセル、ブレーキ等のペダルの下方位置に配置されている。
<触媒及び吸着材>
触媒コンバータ16には、排気ガス成分の吸着部材31と三元触媒32とが、前者が排気ガス流れの上流側に、後者がその下流側に位置するように収容されている。また、排気マニホールド8の集合部15には二次エア供給管34が接続されている。
吸着部材31は、ハニカム担体のセル壁に吸着材層を形成してなるハニカム吸着体であり、三元触媒32が不活性ないしは低活性であるときに排気ガス成分を吸着し、三元触媒32の活性が高くなると、吸着していた排気ガス成分を脱離し始める2種の吸着材を備えている。すなわち、吸着材温度が低いときに排気ガス中のHCを優先的に吸着し、吸着材温度が高くなると吸着していたHCを脱離し始めるHC吸着材、並びに吸着材温度が低いときに排気ガス中のNOxを優先的に吸着し、吸着材温度が高くなると吸着していたNOxを脱離し始めるCO吸着材の2種類である。吸着部材31には、CO吸着材(吸着材温度が低いときに排気ガス中のCOを優先的に吸着し、吸着材温度が高くなると吸着していたCOを脱離する吸着材)は設けられていない。
上記HC吸着材及びNOx吸着材各々の排気ガス成分の脱離量がピークとなる温度が略同じである場合(最大でも20℃しかピーク温度に差がない場合)、当該両吸着材は、図3に示すように、排気ガス流れの上流部41及び下流部42に分かれて配置することが好ましい。吸着部材31は、排気ガスの熱を受けて、上流部41→下流部42の順で温度が高くなっていくから、当該順序で各吸着材の排気ガス成分が脱離していくことになり、HC及びNOxが同時にそれぞれの吸着材から脱離して三元触媒32に多量の排気ガス成分が流入することを避けることができる。
ハニカム担体の上流部41及び下流部42への上記両吸着材の担持は、例えば、次のようにして行なうことができる。すなわち、上流部41を両吸着材のうちの一方のスラリーに浸漬して該上流部41に当該吸着材を付着させる。次に下流部42を他方の吸着材のスラリーに浸漬して該下流部42に当該吸着材を付着させ、しかる後、乾燥・焼成を行なう。
上記両吸着材各々の上記脱離ピーク温度が相異なり、且つそのピーク温度差が20℃以上であれば、両吸着材を混合して用いることができる。その場合も、各吸着材から脱離するHC及びNOxが三元触媒32に同時に多量に流入することがない。
三元触媒32は、排気ガス中のHC、CO及びNOxを同時に浄化する浄化率が理論空燃比付近で高い触媒であって、ハニカム担体のセル壁に触媒層が形成され、その触媒層はPd、Rh等の触媒金属と、該触媒金属を担持するアルミナ及び酸素吸蔵放出材(OSC)と、上記CO吸着材とを少なくとも含有する。
好ましいのは、HCの酸化浄化に関する活性が高いPd/アルミナ(アルミナ粒子にPdを担持させてなる触媒粉)と、COの酸化浄化に関する活性が高いRh/ZrLaO−アルミナ(アルミナ粒子表面にZrとLaとを含む複合酸化物が担持されている複合材にRhを担持させてなる触媒粉)と、NOxの還元浄化に関する活性が高いRh/OSC(酸素吸蔵放出材粒子にRhを担持させてなる触媒粉)と、三元触媒32が不活性ないしは低活性であるときに排気ガス中のCOを優先的に吸着し、三元触媒32の活性が高くなると、吸着していたCOを脱離し始めるCO吸着材とを三元触媒32の触媒層が含有することである。さらに好ましいのは、アルカンの酸化浄化に関する活性が高いPt/アルミナ(アルミナ粒子にPtを担持させてなる触媒粉)を上記触媒層に含有させることである。
三元触媒32は、上記Pd/アルミナ、Rh/ZrLaO−アルミナ及びRh/OSCの各触媒粉を混合してハニカム担体のセル壁に単一の触媒層を形成するように担持させた混合型としても、3種の触媒粉のうちの2種類を含有する触媒層と、残り1種類の触媒粉を含有する触媒層とがハニカム担体のセル壁に積層されてなる二層積層型としてもよい。
二層積層型とする場合は、上流部41から脱離する排気ガス成分の浄化に活性が高い触媒粉を上層に配置し、下流部42から脱離する排気ガス成分の浄化に活性が高い触媒粉を下層に配置することが好ましい。
すなわち、吸着部材31は、排気ガス温度が上昇することに伴って上流部41→下流部42の順で暖まり、この順序で各吸着材から排気ガス成分が脱離する。従って、上流部41から脱離を生ずるときは、下流部42から脱離を生ずるときに比べて排気ガス温度が低く、それだけ三元触媒32での排気ガス浄化に不利になる。そこで、上流部41から脱離する排気ガス成分のための触媒粉は、上下二層のうち排気ガスによって加熱され易い上層に配置してその浄化効率を高め、下流部42から脱離する排気ガス成分のための触媒粉は、先の両成分に比べて浄化に有利な条件になっていることから、下層に配置するものである。
二層積層型とする場合、上下の各層にOSC成分(OSC単体又はOSCに貴金属を担持させたもの)を配置することが好ましい。CO吸着材は上層及び下層のいずれに配置しても、或いは上層及び下層の両方に配置してもよい。
二次エア供給管34から排気マニホールド集合部15への二次エアの供給は、下流部42の吸着材から排気ガス成分が脱離した後に行なう。脱離前に二次エアを供給すると、それによって吸着材が冷却され、排気ガス成分が脱離し難くなるためである。そうして、上記二次エアの供給により、三元触媒32に流入する排気ガスが酸素過剰状態となり、三元触媒32でのHC及びCOの酸化浄化に有利になる。また、この二次エアの供給は、三元触媒32の温度が所定値以上に上昇したときに、特にライトオフ温度以上に上昇したときに実行する。ライトオフ温度以下のときに二次エアを供給する場合には、エンジン点火時期をリタードさせることにより、エンジンから出る排気ガスの温度を高める。
<昇温シミュレーションの予備実験>
後述する昇温シミュレーションのために、三元触媒のライトオフ温度が模擬排気ガスの組成によってどのように異なるかを調べる予備実験を行なった。
−三元触媒の構成−
ハニカム担体として、セル壁厚さ3.5mil(88.9×10−3mm)、1平方インチ(635.16mm)当たりのセル数600のものを採用した。そのセル壁に二層積層型の触媒層を形成した。上層は、Pt/アルミナ(アルミナ量;25g/L)、Rh/OSC(OSC量;56g/L)及びZrバインダ(9g/L)よりなる構成とし、下層は、Pd/アルミナ(アルミナ量;60g/L)、OSC(6g/L)及びZrバインダ(7g/L)よりなる構成とした。触媒貴金属の比率はPd:Pt:Rh=30:1:2(質量比)とし、その総量が7.0g/Lとなるようにした。
−模擬排気ガスの組成−
ベースガス組成(ストイキ時のガス組成)を表1に示す7種類の模擬排気ガスについてライトオフ温度の測定を行なった。表中の「通常ガス」とは、HC、CO及びNOx(NO)の全てのガス成分を含むものである。
Figure 2009007946
各模擬排気ガスについては、そのA/Fを1.0Hzの周波数でリーン(A/F=15.6)とリッチ(A/F=13.8)に変動させるようにした。リーンにするときはOを上記ベースガスに導入し、リッチにするときはCO及びHを上記ベースガスに導入するようにした。例えば、表1の通常ガスの場合、リーン時及びリッチ時のガス組成は表2のようになる。
Figure 2009007946
−ライトオフ温度の測定−
各模擬排気ガスによるライトオフ温度の測定にあたっては、上記三元触媒に大気雰囲気で540℃の温度に1時間保持する熱エージングを施した。そして、その三元触媒を固定床流通式反応評価装置に取り付け、模擬排気ガスの触媒への流入量を25L/分としてそのガス温度を30℃/分の速度で漸次上昇させていった。なお、ライトオフ温度は、触媒下流で検出されるガスの各成分(HC、CO及びNOx)濃度が触媒に流入するガスの各成分(HC、CO及びNOx)濃度の半分になった時点(すなわち浄化率が50%になった時点)の触媒入口ガス温度である。
−結果−
各模擬排気ガスでのライトオフ温度を図4及び表3に示す。
Figure 2009007946
すなわち、HC浄化のライトオフ温度は、通常ガスからCOを除くと25℃低下し、NOを除くと12℃低下し、CO及びNOを除くと43℃低下している。CO浄化のライトオフ温度は、通常ガスからHCを除くと2℃低下し、NOを除くと8℃低下し、NO及びHCを除くと20℃低下している。NOx浄化のライトオフ温度は、通常ガスからCOを抜いた場合及びHCを抜いた場合のいずれも高くなっているものの、HC及びCOを除くと10℃低下している。
この結果は、通常ガスの場合、HCの浄化はCO及びNO各々によって妨げられ、COの浄化はHC及びNO各々によって妨げられ、NOxの浄化も、HC及びCOによって浄化が妨げられていることを意味する。換言すれば、HC、CO及びNOxが互いに触媒の活性点を奪い合い、そのために各々の浄化効率が低くなっているということである。
従って、以上から、HC、CO及びNOxの3成分は同時に浄化するのではなく、各々は単独で(他の成分が少ない状態で)三元触媒に流入させる方が浄化効率が高くなることがわかる。
<昇温シミュレーション>
吸着部材31の上流部41にHC吸着材を配置し下流部42にNOx吸着材を配置した実施形態1、上流部41にNOx吸着材を配置し下流部42にHC吸着材を配置した実施形態2、並びに比較例1〜4について、昇温シミュレーションを行なった。なお、実施形態1,2及び比較例1〜4の具体的な構成は後述する。
昇温シミュレーションは、触媒コンバータ16に流入する排気ガスの温度(図2に示す吸着部材31の前の温度A、以下「触媒前温度A」という。)が漸次上昇していくとき、触媒コンバータ16の出口温度(図2に示す三元触媒32の後の温度B、以下「触媒後温度B」という。)がどのように上昇していくかを調べるというものである。
いずれの実施形態に関しても、HC吸着材、CO吸着材及びNOx吸着材としては、各々の当該排気ガス成分の脱離量がピークになる温度の差が最大でも20℃であるものを組み合わせて用いた。すなわち、HC吸着材としてはβゼオライト(脱離ピーク温度180℃)を採用し、CO吸着材としてはCu/CeO(CeOにCuを担持させたもの,脱離ピーク温度200℃)を採用し、NOx吸着材としてはMn−Ce複合酸化物(脱離ピーク温度200℃)を採用した。
シミュレーションにあたっては、エンジンから排出される排気ガス中のHC濃度及びNOx濃度は同じとし、CO濃度はHC濃度等の10倍と仮定した。実施形態1,2の場合、HC及びNOxの脱離間隔は20℃とした。すなわち、上流部41の吸着材が脱離ピークになったときから、触媒前温度Aが20℃上昇すると、下流部42の吸着材が脱離ピークとなると仮定した。また、吸着材から脱離したガスの浄化反応も生ずるものとし、その脱離分を通常ガス濃度に加算して反応熱を求めた。
そうして、下記の熱化学方程式により、時間の経過と共に発生する熱量を計算し、後述する昇温特性を求めた。反応熱としては、三元触媒に流入して浄化される成分に関する反応式を使用した。また、式(1)及び(6)に関しては、上記CO濃度に関する仮定(CO濃度はHC濃度やNOx濃度の10倍)を基に反応熱を換算した。すなわち、式(1)には「−2835kJ/mol」の換算反応熱、式(6)には「−397kJ/mol」の換算反応熱を与えてシミュレーションした。
227℃−t=(ΔH227℃−ΔH)/C
t;温度,ΔH227℃;反応熱,C;熱容量
CO+1/2O=CO ΔH227℃=−283.5kJ/mol ……(1)
+9/2O=3CO+3HO ΔH227℃=−1924kJ/mol ……(2)
NO+CO=CO+1/2N ΔH227℃=−1924kJ/mol ……(3)
+6NO=3CO+3HO+3N ΔH227℃=−1615kJ/mol ……(4)
NO+H=1/2N+HO ΔH227℃=−334.1kJ/mol ……(5)
CO+HO=CO+H ΔH227℃=−39.7kJ/mol ……(6)
+6HO=3CO+9H ΔH227℃=+270kJ/mol ……(7)
+1/2O=HO ΔH227℃=−243.8kJ/mol ……(8)
[実施形態1]
この実施形態は、吸着部材31からHC→NOxの順でそれら排気ガス成分を脱離させるケースである。
−実施例1−
吸着部材31については、上流部41にHC吸着材を配置し、下流部42にNOx吸着材を配置した。吸着部材31の容量は0.3Lであり、HC吸着材及びNOx吸着材各々のハニカム担体に対する担持量は同じにした。触媒金属となる成分は担持していない。この吸着部材31のハニカム担体はセル壁厚さ3.5mil、セル数600/平方インチのものである。
三元触媒32については、上層にRh/ZrLaO−アルミナ、Pd/アルミナ、OSC及びCO吸着材を配置し、下層にRh/OSCを配置した二層積層型とした。ハニカム担体はセル壁厚さ3.5mil、セル数600/平方インチであり、触媒貴金属の総量は7.0g/L(Pd:Pt:Rh=30:1:2)である。この三元触媒32の容量は0.7Lである。
−実施例2−
吸着部材31の構成は実施例1と同じである。三元触媒32については、Rh/ZrLaO−アルミナ、Rh/OSC、Pd/アルミナ、OSC及びCO吸着材を混合して単一触媒層を形成した混合型とした。他の構成は実施例1と同じである。
−比較例1−
吸着部材をなくし、容量1.0Lの三元触媒のみとした。その三元触媒は容量を除いて実施例2の三元触媒と同じ構成の混合型である。
−比較例2−
吸着部材として、容量0.3Lのハニカム担体全体にHC吸着材のみをコーティングしたものを採用する他は、実施例2と同じ構成とした。
−比較例3−
吸着部材として、容量0.3Lのハニカム担体全体にCO吸着材のみをコーティングしたものを採用する他は、実施例2と同じ構成とした。
−比較例4−
吸着部材として、容量0.3Lのハニカム担体全体にNOx吸着材のみをコーティングしたものを採用する他は、実施例2と同じ構成とした。
(昇温シミュレーション結果)
図5にシミュレーション結果を示す。比較例1(三元触媒のみ)をみると、触媒後温度Bは、当初は三元触媒及びコンバータ容器によって排気ガスの熱が奪われるため触媒前温度Aより低い。そして、三元触媒で排気ガスの浄化が始まり、その反応熱で排気ガスが加熱されていくことにより、当該温度Cは触媒前温度Aを超えて漸次上昇していく。
比較例2(HCのみ吸着)の場合は、HCが排気ガス中から少なくなることから、COの浄化開始が早くなり(浄化開始温度が下がり)、その反応熱により、比較例1(三元触媒のみ)よりも、触媒後温度Bが早めに立ち上がり、且つ昇温勾配も大きくなる。比較例3(COのみ吸着)及び比較例4(NOxのみ吸着)も、比較例2(HCのみ吸着)と同様に、比較例1(三元触媒のみ)よりも、触媒後温度Bが早めに立ち上がり、昇温勾配も大きい。
比較例4(NOxのみ吸着)の方が比較例2(HCのみ吸着)よりも触媒後温度Bの立上りが早いのは、NOxが無い場合のCOのライトオフ温度が、HCが無い場合のCOのライトオフ温度よりも低く、反応が早く始まるためである。すなわち、COの浄化反応熱により、触媒後温度Bの立上りが早くなる。また、比較例4よりも比較例3(COのみ吸着)の方がさらに立上りが早いのは、COが無い場合のHC、NOxのライトオフ温度がさらに低いためである。
上記比較例1〜4に対して、実施例1(吸着材+積層型三元触媒)では、触媒前温度Aが比較的低い時点ではNOxが吸着材に吸着され、NOxの三元触媒32への流入が殆どないため、HC及びCOのライトオフ温度が低くなり、また、脱離HC及び排気ガス中のHCが式(2)及び(7)の反応を生ずることにより、触媒後温度Bが比較例1〜4に比べて速やかに立ち上がる。すなわち、HCと他の排気ガス成分との間では三元触媒32の活性点の奪い合いは少なく、しかも、HCの酸化に活性が高いPd/アルミナが三元触媒32の上層に配置されているから、三元触媒32の温度が低い場合でも、HCの浄化が効率良く進む。
次いで下流部42からNOxが脱離すると、脱離NOx及び排気ガス中のNOxの浄化反応熱(式(3)、(4)及び(5))を生じ、触媒後温度Bがさらに上昇していく。また、NOxの酸化に活性が高いRh/OSCは三元触媒32の下層に配置されているものの、NOx脱離時には、HC脱離時よりも排気ガス温度が高くなっており、しかも、三元触媒32の温度が上記脱離HCの浄化反応によって高くなっているから、脱離NOxの浄化効率は高い。
NOx脱離時の触媒後温度Bの昇温勾配がHC脱離時よりも大きいのは、HC脱離時には式(7)の吸熱反応を生ずるものの、NOx脱離時にはそのような吸熱反応はなく、しかもHC脱離時に比べて排気ガス温度及び三元触媒温度が高くなっていて、三元触媒32でのNOxの浄化が効率良く進み、多量の反応熱が出るためである。
次に、実施例2(吸着材+混合型三元触媒)では、実施例1と同じく、順に脱離するHC及びNOxが三元触媒32で浄化されることにより、触媒後温度Bが比較例1〜4よりも早く立上って比較例1〜4よりも高い温度になる。しかし、排気ガス温度が未だ高くないHC脱離時においては、三元触媒32が混合型であって、HCの酸化に活性の高いPd/アルミナは混合型触媒層の全体に分散されているから、Pd/アルミナを上層に配置した実施例1よりも、昇温勾配が小さくなっている。
一方、NOx脱離時には、NOxの酸化に活性が高いRh/OSCが混合型触媒層の全体に分散されている実施例2の方が、Rh/OSCを下層に配置した実施例1よりもHCの酸化に有利になるはずであるが、昇温勾配は実施例1の方が少し大きい。これは、実施例1の場合は、NOx脱離時には三元触媒32の温度が実施例2よりも高くなっており、Rh/OSCが下層にあっても、触媒温度が高くなっている分、NOxの浄化に効率良く働くためである。
結局、実施例2は、HC脱離時における上記昇温勾配が小さいことが尾を引いて、NOxの脱離終了時での触媒後温度Bは実施例1よりも低くなっている。
[実施形態2]
この実施形態は、吸着部材31からNOx→HCの順でそれら排気ガス成分を脱離させるケースである。
−実施例1−
吸着部材31については、上流部41にNOx吸着材を配置し、下流部42にHC吸着材を配置した。吸着部材31の他の構成は実施形態1の実施例1と同じである。
三元触媒32については、上層にRh/ZrLaO−アルミナ、Rh/OSC及びCO吸着材を配置し、下層にPd/アルミナ及びOSCを配置した二層積層型とした。三元触媒32の他の構成は実施形態1の実施例1と同じである。
−実施例2−
吸着部材31の構成は実施例1と同じである。三元触媒32については、Rh/ZrLaO−アルミナ、Rh/OSC、Pd/アルミナ、OSC及びCO吸着材を混合して単一触媒層を形成した混合型とした。他の構成は実施例1と同じである。
(昇温シミュレーション結果)
図6に実施例1,2のシミュレーション結果を先の比較例1〜4と共に示す。実施例1(吸着材+積層型三元触媒)及び実施例2(吸着材+混合型三元触媒)に関し、上流部41からのNOxの脱離時においては、実施形態1のHC脱離時に比べて触媒後温度Bの昇温勾配が少し大きくなっている。これは、実施形態2の場合は、実施形態1のHC脱離時の式(7)のような吸熱反応がないこと、また、NOxに関連する反応熱が大きいことによると認められる。下流部42からのHC脱離時においては、実施形態1のNOx脱離時に比べて触媒後温度Bの昇温勾配が少し小さくなっている。これは、実施形態2の場合は、式(7)の吸熱反応の影響が出たためと認められ、この吸熱反応の影響により、実施形態2のHC脱離終了時の触媒後温度Bの方が、実施形態1のNOx脱離終了時の触媒後温度Bよりも低くなっている。
<その他>
なお、上記2種の吸着材は、吸着部材31の上流部41及び下流部42の各々に完全に区画された状態ではなく、吸着材同士が互いに一部オーバーラップした状態で担持されていてもよい。或いは、上流部41の上流端付近で第1の吸着材の濃度が最大となり、下流部42の下流端付近で第2の吸着材の濃度が最大となるように、各吸着材が排気ガス流れ方向に濃度勾配をもって担持されていてもよい。
また、各吸着材には触媒金属を担持するようにしてもよい。
自動車前部におけるエンジンの排気ガス浄化触媒装置のレイアウトを示す側面図である。 エンジンの排気ガス浄化触媒装置を示す斜視図である。 同触媒装置の吸着部材を示す側面図である。 模擬排気ガスの種類によって三元触媒のライトオフ温度を異なることを示すグラフ図である。 実施形態1の各吸着材の排気ガス成分脱離特性と触媒前温度A及び触媒後温度Bの昇温特性との関係を示すグラフ図である。 実施形態2における図5と同様のグラフ図である。
符号の説明
1 ダッシュパネル
4 フロアトンネル部
5 エンジン本体
8 排気マニホールド
15 集合部
16 触媒コンバータ
17 排気管
31 吸着部材
32 三元触媒
34 二次エア供給管
41 上流部
42 下流部

Claims (5)

  1. エンジンから排出されるHC、CO及びNOxを含む排気ガスが流れる排気通路に三元触媒が設けられている排気ガス浄化触媒装置において、
    上記三元触媒よりも排気ガス流れの上流側に、上記排気ガスが接触したときにHCを優先的に吸着するHC吸着材と、上記排気ガスが接触したときにNOxを優先的に吸着するNOx吸着材とを有し、上記排気ガスが接触したときにCOを優先的に吸着するCO吸着材を有しない排気ガス成分吸着部材が配置され、
    上記三元触媒が上記CO吸着材を含有することを特徴とする排気ガス浄化触媒装置。
  2. 請求項1において、
    上記三元触媒と排気ガス成分吸着部材とは1つのコンバータに収容されていることを特徴とする排気ガス浄化触媒装置。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    上記排気ガス成分吸着部材のHC吸着材とNOx吸着材とは、一つのハニカム担体のセル壁にコーティングされており、且つ当該2種の吸着材のうちの一方が排気ガス流れの上流部に、他方が排気ガス流れの下流部に配置されていることを特徴とする排気ガス浄化触媒装置。
  4. 請求項3において、
    上記HC吸着材のHC脱離量がピークになる温度と、上記NOx吸着材のNOx脱離量がピークになる温度との差は、20℃以下であることを特徴とする排気ガス浄化触媒装置。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
    エンジンの冷間始動時に上記三元触媒に流入する排気ガスが、該排気ガス中の還元性成分を酸化するのに必要な化学量論比を超える酸素過剰状態とされることを特徴とする排気ガス浄化触媒装置。
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