JP2009006546A - 紙製装飾地 - Google Patents

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Abstract

【課題】天然パルプ抄造紙に成る紙糸を使用して耐水性に優れ、可撓性に富み、而も、天然パルプ抄造紙固有の感触・風合いを保持し、表装材等に適した紙製装飾地を得る。
【解決手段】坪量10〜40g/m2 の天然パルプ抄造紙を裁断して幅1.5〜15mmの紙テープとし、加撚した加撚紙糸11によって織編布帛を構成し、その織編布帛を水系接着剤によって裏打紙16に貼り合わせて紙製装飾地とする。加撚紙糸11の撚数を70〜400回/mとし、加撚紙糸11の内部に隙間14・19を生成する。加撚紙糸11には水系樹脂組成物13を付与し、内部の隙間14・19に含浸・固着させ、その水系樹脂組成物13によって加撚紙糸11に耐水性を付与する。水系樹脂組成物13が直接肌身に触れない加撚紙糸11の内部隙間14・19に吸着保持されるので、水系樹脂組成物によって天然パルプ抄造紙としての加撚紙糸固有の感触・風合いが損なわれることはない。
【選択図】図1

Description

本発明は、紙を裁断して成る紙テープを加撚した加撚紙糸によって構成される紙製織編布帛を裏打紙に貼り合わせて成る紙製装飾地に関するものである。
植物から採取される天然パルプ(植物短繊維)を原料とする天然パルプ抄造紙は、水に濡れて破れ易い。従って、天然パルプ抄造紙に成る紙糸を用いた紙布も水に弱いものと考えられている。そのため、ポリエステル繊維やアクリル繊維等の多種多様な合成繊維を安価に入手することが出来る現代においては、天然パルプ抄造紙を用いた織編布帛は殆ど実用されていない。
しかし、紙糸や紙製織編布帛に耐水性を付与するための研究は、今もなお続けられている。その紙糸や紙製織編布帛に耐水性を付与して強度アップを図る手段としては、天然パルプ抄造紙の抄造時の原料である天然パルプに耐水性バインダー、例えば、エポキシ化ポリアミド樹脂を添加する樹脂添加抄造法(例えば、特許文献1、2、3参照)、および、補強糸条を紙糸に捲撚被覆、或いは、紙糸を補強糸条に捲撚被覆する捲撚被覆法(例えば、特許文献4、5、6参照)が知られている。
特開平08−060473号公報(特許第2994209号) 特開平09−188928号公報(特許第3432689号) 特開2001−200441号公報 実公昭15−015406号公報 特開2002−194642号公報 特開2002−194667号公報
樹脂添加抄造法と捲撚被覆法の何れの方法においても、得られる紙糸は、プラスチック・モノフィラメント調であって吸湿性を欠き、天然パルプ抄造紙固有の感触・風合いを喪失している。
荷造りや梱包に使用される太い紙紐も知られている。しかし、太い紙紐を使用したのでは、カーテン地、壁装内装材、表装材等に適した可撓な紙製織編布帛は得られない。第一、荷造り紐は、太く剛直なので編機には適用することが出来ない。
そこで本発明は、天然パルプ抄造紙に成る紙糸を使用して構成された紙製織編布帛を裏打紙に貼り合わせて成り、その紙製織編布帛が耐水性に優れ、且つ、天然パルプ抄造紙固有の感触・風合いを保持しており、可撓性に富み、基材の曲折面や彎曲面に沿って貼り合わせ易い紙製装飾地を得ることを目的とする。
本発明に係る紙製装飾地は、坪量10〜40g/m2 の天然パルプ抄造紙を裁断して成る幅1.5〜15mmの紙テープを加撚した平均撚数が70〜400回/mの加撚紙糸11によって構成された紙製織編布帛を水系接着剤(15)によって裏打紙16に貼り合わせて構成されていることを第1の特徴とする。
本発明に係る紙製装飾地の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、水系樹脂組成物が浸入し得る隙間14・19を加撚紙糸11の内部に備えている点にある。
本発明に係る紙製装飾地の第3の特徴は、上記第2の特徴に加えて、加撚紙糸11に水系樹脂組成物13が付与されており、その水系樹脂組成物13が加撚紙糸11の内部の隙間14・19に浸入して固着している点にある。
本発明に係る紙製装飾地の第4の特徴は、上記第2と第3の何れかの特徴に加えて、水系接着剤(15)が裏打紙16の表面に塗膜15を形成しており、その塗膜15と紙製織編布帛の加撚紙糸11の間の隙間17と、紙製織編布帛の織編目12において交絡する加撚紙糸11と加撚紙糸11の間と、加撚紙糸11の内部隙間14に水系樹脂組成物13が含浸している点にある。
本発明に係る紙製装飾地の第5の特徴は、上記第3と第4の何れかの特徴に加えて、水系樹脂組成物13が着色成分を含有している点にある。
本発明に係る紙製装飾地の第6の特徴は、上記第3と第4と第5の何れかの特徴に加えて、水系樹脂組成物13が水溶性難燃剤を含有している点にある。
本発明に係る紙製装飾地の第7の特徴は、上記第6の特徴に加えて、水溶性難燃剤がリン酸グアニジンである点にある。
本発明に係る紙製装飾地の第8の特徴は、上記第1と第2と第3と第4と第5と第6と第7の何れかの特徴に加えて、裏打紙16の表面に布目模様18が描出されており、その布目模様18が紙製織編布帛の織編目12の隙間に露顕している点にある。
坪量40g/m2 の天然パルプ抄造紙の厚みは概して50μm以下であり、幅が1.5mmの紙テープでは、その断面の扁平率は30となる。従って、本発明において使用する坪量10〜40g/m2 の天然パルプ抄造紙を裁断して成る幅1.5〜15mmの紙テープの断面の扁平率は30以上となる。
そのように薄く扁平な紙テープを加撚し始めると、その撚数に応じた数箇所で紙テープが捩じれ、その捩じれた箇所では紙テープが幅方向に2つ折りになって重なり、その重なり合う表裏の紙面間に隙間14が発生する。
加撚し続けると、紙テープの全長に亙って略均等に捩じれが発生し、紙テープ全体が2重折りになり、表裏の紙面間に内部隙間14が紙テープの全長に亙って発生する。
更に加撚し続けると、所々に撚目20が細かく発生し、幅方向に紙テープが絞り込まれ、扁平断面の紙テープから円形断面の紙糸に変形する。
そのように絞り込まれて幅を縮めると、紙糸の長さ方向に続く縦皺が発生し、その縦皺の数に応じて紙糸の内部隙間14が細かく分かれ、同時に、縦皺に沿って外部に溝(19)が発生し、その外部溝隙間19が撚目20となって紙糸の周面に細かく現われる。
こうして発生する内部隙間14や外部溝隙間19は、撚数が増えるにつれて狭まり、隙間14・19において向き合う紙面と紙面が強固に密着し、遂には閉鎖されてしまう。その閉鎖された状態では、水系樹脂組成物や染液等の流動性組成物や液体が、紙糸内部に滲み込まず、紙糸の周面にだけ付着し、紙糸の周面だけが濡れて膨潤する。そして、膨潤した紙糸の周面は止水層となり、水系樹脂組成物や染液等は益々紙糸内部に滲み込み難くなる。
この点、加撚前の紙テープには内部隙間14や外部溝隙間19がないので、粘性のない液体は、紙テープを構成している天然パルプ繊維間の微細な隙間や繊維内部に吸収されるとしても、樹脂粒子が細かく分散して粘性を帯びた水系樹脂組成物では、その樹脂粒子が紙テープに吸収されることはなく、濾紙に濾し分けられるように紙テープの外面に付着するだけとなる。
本発明の加撚紙糸11は、坪量10〜40g/m2 の天然パルプ抄造紙を裁断して成る幅1.5〜15mmの紙テープを加撚したものであり、その内外に内部隙間14や外部溝隙間19が形成されており、その撚数が70〜400回/mと比較的少ないので内部隙間14や外部溝隙間19は閉鎖されることなく介在し、その紙面と紙面に挟まれた内部隙間14や外部溝隙間19に毛細管現象が起きる。
このため、本発明の加撚紙糸11では、水系樹脂組成物13が粘性を帯びていても、内部隙間14や外部溝隙間19に浸入して固着し、その固着した水系樹脂組成物13によって加撚紙糸11に耐水性が付与される。その水系樹脂組成物13が着色成分を含有していれば、天然パルプ抄造紙の坪量が10〜40g/m2 なので内部隙間14や外部溝隙間19に固着した着色成分の色彩が滲み出て加撚紙糸11が着色され、又、難燃剤や消臭剤、芳香剤、抗菌剤、害虫忌避剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の機能性物質を含有していれば、それらの物質の機能性が加撚紙糸11に付与される。
その着色成分や機能性物質は、外部からは擦り取ることの出来ない内部隙間14や外部溝隙間19に固着するので、耐水性を有し、耐久性が高く、変褪色することなく、機能性に優れた紙製装飾地が得られる。
加撚紙糸11の周面、即ち、隣り合う撚目20と撚目20の間は、水系樹脂組成物13が垂れ落ち易い平坦な平面になっている。このため、加撚紙糸11の周面には、その周面が湿潤する程度の水系樹脂組成物13しか固着せず、その垂れ落ちることなく僅かに固着した水系樹脂組成物13によって極薄皮膜が形成される。そして、内部隙間14や外部溝隙間19に水系樹脂組成物13が固着しているのであれば、その固着した水系樹脂組成物13によって所要の物性や機能性が加撚紙糸11に付与されることになるので、水系樹脂組成物13を増粘して加撚紙糸11の周面に厚く固着させる必要はなく、却って水系樹脂組成物13を増粘すれば、毛細管現象による内部隙間14や外部溝隙間19への浸入効果は薄れる。
そのように、水系樹脂組成物13を増粘する必要がないので、水系樹脂組成物13は、加撚紙糸11の周面に極薄皮膜を形成することになる。
そのように水系樹脂組成物13を付与し易く、その付与する水系樹脂組成物13が肌身に直接触れることのない内部隙間14や外部溝隙間19に吸着保持されるので、水系樹脂組成物13によって天然パルプ抄造紙固有の感触・風合いが損なわれることがなく、耐水性や難燃性等の所要の物性や機能性を付与することの出来る紙製装飾地が得られる。
本発明において、撚数を70回/m以上とするのは、加撚する紙テープの全長にわたって撚目20が発生して内部隙間14を生成するためである。
撚数を400回/m以下とするのは、内部隙間14が閉鎖されることなく介在し、紙テープの全長にわたって毛細管現象が起きるようにするためである。
それと共に、坪量が10〜40g/m2 であり、幅が1.5mmであり、断面の扁平率が30以下の紙テープを、撚数が70〜200回/m、特に100回/m以下となる範囲において加撚するとき、紙テープの全長に亙って撚目20が均等には発生せず、紙テープが捩じれて2つ折りになって撚目20のピッチの長い撚数の粗い平坦なテープ状の太い甘撚部22と、紙テープが絞り込まれて実撚紡績糸の如く円形断面形状に変形した撚目20のピッチの長い撚数の緻密な細い強撚部21とがランダムに発生し、加撚紙糸は、スラブヤーンやネップヤーン等の意匠撚糸や絣糸の如き観を呈する。
従って、本発明に係る織編布帛は、そのように甘撚部22と強撚部21の外観上の相違によって絣調地模様を有し、デザイン的にも付加価値が高く、又、扁平断面形状を維持していて太く見える甘撚部22が、円形断面形状に変形していて細く見える強撚部21と繊度が同じであり、而も、甘撚部22が、2つ折りなった扁平断面形状を成すので、強撚部21に比して曲折し易く、織編布帛全体として可撓性に富み、且つ又、加撚紙糸は、木綿繊維や麻繊維等の植物繊維糸条と同様に植物繊維である天然パルプを素材原料としていても、その植物繊維(天然パルプ)の長さ方向が一定方向に揃えられていないので、吸湿膨潤するとしても伸縮変化することがなく、寸法安定性に優れ、装飾地の表面材に好適なものとなる。
そして、本発明に係る織編布帛は、扁平断面形状を維持していて太く見える甘撚部22が、円形断面形状に変形していて細く見える強撚部21に比して裏打紙16との接触面積が広く、裏打紙16に接着し易い点でも装飾地の表面材に好適なものとなる。
特に、本発明に係る装飾地を壁面下地等の基材に貼り合わせるために裏面に水系接着剤を塗工しても、織編布帛と裏打紙が共に吸湿して膨潤し易い天然パルプを素材原料としているので、それらの湿潤膨潤差に起因する伸縮差は発生せず、従って、その伸縮差に起因する端縁での反り上がり(カール)が発生せず、平坦に拡布された状態を維持するので、壁面下地等の基材に貼り合わせ易い。
又、加撚紙糸は、木綿繊維や麻繊維等の植物繊維糸条に比して着色剤、難燃剤や消臭剤、芳香剤、抗菌剤、害虫忌避剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の機能性物質が吸着し易く、特に、難燃剤を付与したものでは、火炎に接して紙糸が炭化し、炭素繊維と同様の不燃物に変化するので、本発明に係る装飾地は、不燃壁装内装材として使用する上で頗る好都合である。
紙製装飾地を壁装内装材として壁面下地に貼り合わせて使用する場合、水系樹脂組成物13は、その壁面下地に接着施工する前に予め紙製装飾地に塗布乾燥させておいてもよいし、又、壁面下地に接着施工した後に紙製装飾地に塗布してもよい。
しかし、壁面下地に接着施工した後に紙製装飾地に水系樹脂組成物13を塗布する場合、その水系樹脂組成物13に着色剤、難燃剤や消臭剤、芳香剤、抗菌剤、害虫忌避剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の機能性物質を配合することによって、紙製装飾地に所要の彩色を施したり、所要の機能性を付与することが出来、その壁面下地への接着施工時に紙製装飾地の表面が汚損されても、その汚れを水系樹脂組成物13の塗膜によって隠蔽することが出来、又、接着施工して隣り合う紙製装飾地と紙製装飾地の間の継ぎ目(目地)を水系樹脂組成物13の塗膜によって隠蔽することも出来る。
特に、紙製装飾地を高い防炎性能の求められる自動車、列車、航空機等の壁装内装材として使用する場合には、その接着施工現場において、その求められる防炎性能に応じて難燃剤の水系樹脂組成物13への配合量を加減し、その要求に即応することが出来る。
従って、壁装内装材としての使用においては、壁面下地に接着施工した後に紙製装飾地に水系樹脂組成物13を塗布すること、つまり、ペンキ下地として紙製装飾地を使用し、その塗布するペンキ(水系樹脂組成物)に着色剤、難燃剤や消臭剤、芳香剤、抗菌剤、害虫忌避剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の機能性物質を配合することが推奨される。
その場合、ペンキ(水系樹脂組成物)の塗布前の加撚紙糸11の内部には水系樹脂組成物が浸入し得る無数の隙間14・19が介在しており、且つ又、加撚紙糸11それ自体も吸湿性を有するので、ペンキ(水系樹脂組成物)の垂れ落ちがなく綺麗に塗装することが出来る点においても、本発明の紙製装飾地は、ペンキ下地として頗る好都合である。
このように、本発明によると、天然パルプ抄造紙固有の感触・風合いを保持し、甘撚部22と強撚部21の外観上の相違による絣調地模様が描出されてデザイン的にも付加価値が高く、不燃壁装内装材やペンキ下地として接着施工現場において求められる彩色や機能性を付加して使用することの出来る紙製装飾地を得ることが出来る。
本発明において「織編布帛」とは、織布と編布の総称であり、その編布には緯編布と経編布が含まれる。加撚紙糸は、織編布帛を構成する全ての糸条に適用することが望ましいが、織布では、通常の繊維糸条を経糸に用い、緯糸にだけ紙糸を用い、又、経編布では、ニードルループを形成しない挿入糸にだけ紙糸を用いることが出来る。
そのように加撚紙糸を通常の紡績糸やマルチフィラメント糸等の繊維糸条と併用する場合、加撚紙糸の繊度を繊維糸条よりも太くし、天然パルプ抄造紙固有の感触・風合いが繊維糸条によって損なわれないようにする。
加撚紙糸には、坪量10〜20g/m2 の極薄抄造紙、好ましくは和紙を用い、その紙テープの幅は2〜10mm、好ましくは2〜5mmにするとよい。
そのように紙テープの幅を細くすると、加撚紙糸に発生する内部隙間14や外部溝隙間19も細かくなって押し潰され難くなるので好都合である。
強撚部21の撚数(H)と甘撚部22の撚数(L)とは、それぞれ加撚紙糸の長さ2cmの部分での撚数を測定して比較し、強撚部21の撚数(H)が甘撚部22の撚数(L)の3倍以上、好ましくは5倍以上になるように、加撚紙糸11の平均撚数を設定する。
撚数が増えるにつれて、撚目20と撚目20の間のピッチが平均化され、紙テープが絞り込まれて実撚紡績糸の如く円形断面形状に変形し、強撚部21と甘撚部22との差異が少なくなる。
従って、強撚部21と甘撚部22との差異が明確な加撚紙糸11を得るためには、その平均撚数を100回/m以下に設定し、坪量15g/m2 前後の極薄抄造紙を使用し、その紙テープの幅を2〜5mmに設定することが推奨される。
強撚部21と甘撚部22との差異がなく、撚目20と撚目20の間のピッチが平均化された加撚紙糸11を使用する場合には、その平均撚数を150〜400回/mに、好ましくは200〜300回/mに設定する。
坪量15g/m2 前後の極薄抄造紙を使用した幅2mmの紙テープ、幅4mmの紙テープ、幅10mmの紙テープに成る加撚紙糸の繊度は、それぞれ概して300dtex、600dtex、1500dtexとなる。坪量40g/m2 前後の極薄抄造紙を使用した幅2mmの紙テープ、幅4mmの紙テープ、幅10mmの紙テープに成る加撚紙糸の繊度は、それぞれ概して800dtex、1600dtex、4000dtexとなる。
繊度が5000dtexを超える太手の加撚紙糸を使用すると、織編布帛の可撓性が損なわれ、壁装内装材や表装材等に好適な紙製装飾地は得難い。
しかし、紙製装飾地のデザイン構成の都合上、5000dtexを超える太手の紙糸を必要とする場合もある。そのような場合には、5000dtexを超える太手の加撚紙糸ではなく、2000dtex未満の加撚紙糸、好ましくは1000dtex未満の加撚紙糸、例えば坪量15g/m2 前後の極薄抄造紙を使用した幅4mmの紙テープに成る600dtex前後の加撚紙糸に成るリリーヤーン、例えば、600dtex前後の加撚紙糸を経編機によって鎖編に編成した経編リリーヤーン、或いは、600dtex前後の複数本の加撚紙糸を組み上げた組紐リリーヤーンを使用することが推奨される。
加撚紙糸に付与する水系樹脂組成物13には、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル三元共重合体エマルジョン、酢酸ビニル・アクリル酸共重合体エマルジョン等の酢酸ビニル系エマルジョン樹脂が使用されるが、耐水性の点では変性酢酸ビニル・アクリル共重合体エマルジョンかエチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル三元共重合体エマルジョンを用いることが望ましく、更に好ましくは、加撚紙糸に硬い紙質の感触を付与する上ではエチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル三元共重合体エマルジョンを用いる。
着色成分を含む水系樹脂組成物13としては、アマニ油と松ヤニを出発原料とするテルペン樹脂に顔料を配合したステイン塗料のように乾性塗膜を形成する水性塗料(ペンキ)を使用するとよい。
着色成分を含む水系樹脂組成物13としては柿渋を使用することが出来、その場合、着色成分は媒染剤によって発色処理される。
着色成分は、染料、顔料、柿渋等の樹液の何れであってもよい。
水系樹脂組成物13の加撚紙糸への付与量(乾燥質量)は、加撚紙糸の質量以下にする。即ち、目付が100g/m2 の織編布帛に対する水系樹脂組成物13の付与量(乾燥質量)は、100g/m2 以下、好ましくは70〜95g/m2 にする。
水系樹脂組成物13は、加撚紙糸の原料である天然パルプ抄造紙や紙テープにではなく、加撚された加撚紙糸それ自体に直接付与される。何故なら、加撚前の天然パルプ抄造紙や紙テープに付与したのでは、水系樹脂組成物13を吸着保持するための内部隙間14や外部溝隙間19を加撚紙糸に設ける意味がなくなるからである。
水系樹脂組成物13は、織編布帛を構成する前の加撚紙糸に付与してもよく、又、織編布帛を構成している加撚紙糸、つまり織編布帛に付与してもよい。
しかし、織編布帛に付与するときは、織編目において交絡する加撚紙糸と加撚紙糸の間が水系樹脂組成物13によって接着固定され、織編布帛の寸法・形状安定性が高まる。
加撚紙糸を不燃化するために水系樹脂組成物13に配合する難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸グアニジンが好適に使用される。
特に、水系樹脂組成物13にエチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル三元共重合体エマルジョンを使用する場合には、リン酸グアニジンを難燃剤として配合することが望ましい。
織編布帛の不燃化のためには、織密度や編密度を粗くして織編布帛の目付を120g/m2 以下に、好ましくは90〜100g/m2 にし、織編布帛に対するリン酸グアニジンの付着量が20〜30g/m2 になるようにすることが望ましい。
本発明では、難燃剤が直接火炎に触れない内部隙間14や外部溝隙間19に水系樹脂組成物13と共に介在するので、火炎に接して直ちに分解して不燃性ガスを放出することはなく、徐々に放出する。その不燃性ガスを徐々に放出する過程において、加撚紙糸は、高温加熱されて炭化し、炭素繊維と同様の不燃性炭化物となり、完全に灰燼となって消失することがなく、その不燃性炭化物として生じる残渣分だけ可燃分解ガスの発生が抑えられる。即ち、火炎にあって紙製織編布帛が灰燼となって消失することがなく、炭素繊維に成る不燃性織編布帛としての形骸を留めることになる。
そのように防炎性能の高い織編布帛が得られるので、高い防炎性能の求められる自動車、列車、航空機等の壁装内装材に、本発明の紙製装飾地は特に好適である。
紙製織編布帛にはエンボス加工を施すことが出来る。そのエンボスは、紙製織編布帛の片面の一部が他の片面に押し出されるように施す必要はなく、紙糸11の内部隙間14や外部溝隙間19が押し潰されて変形する程度の所謂ペーパーエンボスでよい。
何故なら、加撚紙糸は、繊維糸条と異なって粘弾性を有せず、略完全に塑性変形し、経時的に原形を弾性回復することはない。そして、エンボス付形された押圧箇所では、撚目(撚山)が押し潰されて平滑面となり、撚目(撚山)による細かい起伏や凹凸のある非押圧箇所との表面光沢の差によって鮮明に看取されることになるからである。
従って、ジャカードやドビー等の柄出し装置によって図柄模様を描出することなく、エンボス加工によって簡便且つ効率的に図柄模様を描出することが出来、デザイン的にも付加価値の高い紙製装飾地が得られる。
裏打紙16には、天然植物パルプと共に水酸化アルミニウムを漉き込んだ難燃裏打紙を用いる。
裏打紙16と織編布帛との貼り合わせには、変性酢酸ビニル・アクリル共重合体エマルジョンを水系接着剤15に用いる。
水系接着剤15には、増粘剤としてのデンプンやカルボキシルメチルセルロースソーダ塩等の水溶性樹脂、ポリリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸グアニジン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の難燃剤、その他、消臭剤、芳香剤、抗菌剤、害虫忌避剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の機能性物質が適宜配合される。
水系接着剤15の裏打紙16への塗布量(乾燥質量)は15〜25g/m2 、好ましくは20g/m2 にする。そのように水系接着剤15の塗布量を少なくすると、織編布帛と裏打紙16との接着状態は点接着となり、紙糸11と接着剤塗膜15との間に隙間17が生じ、その隙間17に難燃剤が水系樹脂組成物13と共に浸入して固着するので、難燃性能の高い紙製装飾地が得られる。
裏打紙16の含有する水酸化アルミニウムによる防炎作用が織編布帛にも及ぶようにするために、織編布帛の目付よりも坪量が多い難燃裏打紙16を使用する。言い換えれば、織編布帛の目付を難燃裏打紙16の坪量よりも軽くする。例えば、織編布帛の目付が100g/m2 であれば、難燃裏打紙16の坪量を120g/m2 以上に、即ち、織編布帛の目付を概して難燃裏打紙16の坪量の80重量%以下にする。
そのように織編布帛を、目付が100g/m2 以下で網目隙間の多いメッシュ地にする場合には、難燃裏打紙16の表面に布目模様18を描出しておくとよい。そうすると、織編布帛の網目隙間に裏打紙の布目模様18が露顕し、織編布帛が緻密な高級布帛の観を呈し、紙製装飾地の商品価値が高まる。その布目模様18は、プリントによるものであっても、エンボス加工によるものであってもよい。
本発明に係る紙製装飾地の斜視図であり、一部を円で囲んで拡大して図示している。 本発明に係る加撚紙糸の斜視図である。
符号の説明
11:紙糸
12:織編目
13:水系樹脂組成物
14:内部隙間
15:水系接着剤(塗膜)
16:裏打紙
17:紙糸と塗膜の間の隙間
18:布目模様
19:外部溝隙間
20:撚目
21:強撚部
22:甘撚部

Claims (8)

  1. 坪量10〜40g/m2 の天然パルプ抄造紙を裁断して成る幅1.5〜15mmの紙テープを加撚した平均撚数が70〜400回/mの加撚紙糸(11)によって構成された紙製織編布帛を水系接着剤(15)によって裏打紙(16)に貼り合わせて構成された紙製装飾地。
  2. 水系樹脂組成物が浸入し得る隙間(14・19)を加撚紙糸(11)の内部に備えている前掲請求項1に記載の紙製装飾地。
  3. 加撚紙糸(11)に水系樹脂組成物(13)が付与されており、その水系樹脂組成物(13)が加撚紙糸(11)の内部の隙間(14・19)に浸入して固着している前掲請求項2に記載の紙製装飾地。
  4. 水系接着剤(15)が裏打紙(16)の表面に塗膜(15)を形成しており、その塗膜(15)と紙製織編布帛の加撚紙糸(11)の間の隙間(17)と、紙製織編布帛の織編目(12)において交絡する加撚紙糸(11)と加撚紙糸(11)の間と、加撚紙糸(11)の内部隙間(14)に水系樹脂組成物(13)が含浸している前掲請求項2と3の何れかに記載の紙製装飾地。
  5. 水系樹脂組成物(13)が着色成分を含有している前掲請求項3と4の何れかに記載の紙製装飾地。
  6. 水系樹脂組成物(13)が水溶性難燃剤を含有している前掲請求項3と4と5の何れかに記載の紙製装飾地。
  7. 水溶性難燃剤がリン酸グアニジンである前掲請求項6に記載の紙製装飾地。
  8. 裏打紙(16)の表面に布目模様(18)が描出されており、その布目模様(18)が紙製織編布帛の織編目(12)の隙間に露顕している前掲請求項1と2と3と4と5と6と7の何れかに記載の紙製装飾地。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013136862A (ja) * 2011-11-29 2013-07-11 Hayashi Yarn Twisting Co Ltd 撚糸とその製造方法及びこれを用いた繊維製品
CN110614872A (zh) * 2019-10-30 2019-12-27 福州弘博工艺有限公司 一种环保纸浆网格工艺品及其制作工艺

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