JP2009005741A - 超音波診断装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ビーム形成情報を高精度かつ迅速に算出することを可能とする超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波診断装置のビーム形成情報計算部は、各計算点xmにおいて誤差係数aを算出し、誤差係数aの点列と焦点位置x軸とで形成される領域の面積を等分して近似区間Kを作成する(S101〜S106)。ビーム形成情報計算部は、作成された近似区間K毎に超音波ビーム方向の焦点位置x軸に沿って計算点を設定し、当該計算点における近似誤差Δτ(x)を「0」あるいは対応する複数の計算点の近似誤差Δτ(x)の大きさ同一かつ正負逆であるとして、少なくとも(p+1)個の条件式(1次方程式)からなる連立方程式を作成し、この連立方程式の(p+1)個の解を求め、近似遅延量P(x)を示すp次の多項式の(p+1)個の近似係数を算出する。
【選択図】図5

Description

本発明は、超音波を用いて被検体組織を画像として表示する超音波診断装置に関する。詳細には、デジタルデータを用いて超音波ビームを形成して送受波するデジタル整相方式の超音波診断装置に関する。
一般に、超音波診断装置は、被検体に超音波を送波すると共に被検体からの反射信号を受波する振動子素子を複数個備えた超音波探触子と、超音波探触子を駆動して超音波を送信させると共に受信した反射エコー信号を処理する超音波送受信部と、超音波送受信部から入力された反射エコー信号をデジタル化して超音波画像を構成する超音波画像構成部と、画像データに基づいて超音波画像を表示する表示部と、各構成要素を制御する制御部とから構成される。
超音波送受信部は、送波信号に対して超音波探触子の各振動子から焦点までの到達時間差に相当する遅延量を付与して超音波ビームを形成し、超音波探触子の各振動子で受波した受波信号を遅延量に従って整相加算処理して超音波ビームを形成する。
超音波診断装置は、ビーム形成情報を用いて超音波ビームを形成する。ビーム形成情報は、遅延量や重み係数等の超音波ビームの形成に関する情報である。ビーム形成情報が遅延量を示す場合には、超音波ビーム方向の焦点位置を変数とした関数で表される。ビーム形成情報は、チャンネル毎に超音波探触子の種類や超音波ビームの種類や診断部位等に応じて用意される。尚、チャンネルは、超音波探触子の1つあるいは複数の振動子素子により構成される。超音波探触子や超音波ビームの種類(モード)や診断部位が切り換えられると、ビーム形成情報も切り換えられる。
また、遅延量が付与された受波信号の相関演算を行って遅延量の補正量を推定することにより、受波信号の歪低減を図る超音波診断装置が提案されている([特許文献1]参照。)。
また、超音波音速値を補正可能として焦点精度の向上を図る超音波診断装置が提案されている([特許文献2][特許文献3]参照。)。
特開2000−60848号公報 特開平8−317926号公報 特開平6−304172号公報
しかしながら、ビーム形成情報のサンプル点が少ない場合には、超音波画像の解像度が劣化するという問題点がある。一方、ビーム形成情報のサンプル点が多い場合には、処理時間や記憶容量が増大するという問題点がある。例えば、撮像時にビーム形成情報を算出する場合には、処理時間が増大してリアルタイム調整に適さない。事前にビーム形成情報を算出して保持する場合には、メモリ間のデータ転送時間が増大する。
また、ビーム形成情報を複数の区間に分けて各区間毎に多項式で近似することも考えられるが、処理時間や誤差が生じて超音波画像の画質に影響するという問題点がある。例えば、線形計画法を用いる場合には大きな行列を扱うので処理時間が増大する。スプライン近似や最小二乗法やニュートン法やチェビシェフ近似やパデ近似を用いる場合には、誤差が大きくなったり、収束しなかったり、処理時間を要する逆数演算が必要である。
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、ビーム形成情報を高精度かつ迅速に算出することを可能とする超音波診断装置を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するために本発明は、被検体に超音波を送受信する超音波探触子と、前記送受信される超音波のビーム形成情報に関する計算を行うビーム形成情報計算部と、前記超音波探触子から受信される超音波画像データに基づいて超音波画像を構成する超音波画像構成部と、前記超音波画像を表示する表示部と、を備えた超音波診断装置において、前記ビーム形成情報計算部は、前記超音波のビーム方向に複数の第1計算点を設定する第1計算点設定手段と、前記設定された複数の第1計算点毎に前記ビーム形成情報に関する誤差情報を算出する誤差情報算出手段と、前記算出された誤差情報に基づいて、前記超音波のビーム方向に複数の近似区間を作成する近似区間作成手段と、前記作成された複数の近似区間毎に前記ビーム形成情報の近似情報を算出する近似情報算出手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
ビーム形成情報は、遅延量や重み係数等の超音波ビームの形成に関する情報である。ビーム形成情報は、例えば、チャンネル毎の遅延量や重み係数に関する情報である。ビーム形成情報が遅延量を示す場合には、超音波ビーム方向の焦点位置を変数とした関数で表される。ビーム形成情報は、チャンネル毎に超音波探触子の種類や超音波ビームの種類や診断部位等に応じて用意される。
本発明の超音波診断装置は、超音波のビーム方向に複数の第1計算点を設定し、複数の第1計算点毎にビーム形成情報に関する誤差情報を算出し、これらの誤差情報に基づいて、超音波のビーム方向に複数の近似区間を作成し、これらの近似区間毎にビーム形成情報の近似情報を算出する。
第1計算点は、等間隔に設定してもよいし、誤差の度合いに応じて間隔を設定してもよい。誤差情報は、第1計算点におけるビーム形成情報に関する誤差の度合いを示す情報である。誤差情報は、例えば、1つの第1計算点について、複数のチャンネル毎に算出されるビーム形成情報の(p+1)階微分係数絶対値(p+1)乗根の中の最大値である。この誤差情報を用いて近似情報としてp次多項式が算出される。
また、超音波診断装置は、誤差情報の値を超音波のビーム方向に積和した面積を等分して、複数の近似区間を作成することが望ましい。これにより、ビーム形成情報に関する誤差情報に応じた近似区間を作成することができる。
また、超音波診断装置は、複数種類の誤差情報の値をそれぞれ超音波のビーム方向に積和して複数種類の面積を算出し、これらの複数種類の面積の比率を変更した上で足し合わせた面積を等分して、複数の近似区間を作成してもよい。これにより、多項式近似以外の複数の誤差要因が存在する場合であっても、ビーム形成情報に関する誤差情報に応じた近似区間を作成することができる。
また、超音波診断装置は、近似区間毎に、超音波のビーム方向に複数の第2計算点を設定し、これらの第2計算点において、近似情報と理想的なビーム形成情報との差である近似誤差情報を算出し、近似誤差情報に関する条件を設定し、この条件を満たす近似情報を算出する。
具体的には、超音波診断装置は、近似区間の端点または(p+1)次多項式の極値点または節点の少なくともいずれかを複数の第2計算点として設定し、これらの複数の第2計算点における近似誤差情報を用いて少なくとも(p+1)個の条件式からなる連立方程式を作成し、この連立一次方程式の解を求めて、近似情報を示すp次多項式の(p+1)個の近似係数を算出する。
条件設定に関しては、第2計算点における近似誤差情報の値が「0」、あるいは、対応する複数の第2計算点における近似誤差情報の値の和が「0」として、条件式の少なくとも1つが設定される。
近似区間の端点で近似情報が連続である場合には、近似区間の端点における近似誤差情報の値を「0」として条件式が設定される。
近似区間の端点で近似情報が不連続である場合には、近似区間の端点における近似誤差情報の値と近似区間内の隣の極値点における近似誤差情報の値との和が「0」であるとして条件式が設定される。
本発明の超音波診断装置によれば、理想的なビーム形成情報に対して、誤差の度合いに応じて近似区間を作成し、当該近似区間において級数展開による所定次数までの近似計算を行うので、ビーム形成情報について高速かつ高精度に近似計算を行うことができる。また、この近似計算により処理データ量が減少するので、ビーム形成情報の転送時間を減少させて迅速に多様なビーム形成情報を切り換えることができる。
本発明によれば、ビーム形成情報を高精度かつ迅速に算出することを可能とする超音波診断装置を提供することができる。
以下添付図面を参照しながら、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、以下の説明及び添付図面において、略同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
(1.超音波診断装置の構成)
最初に、図1及び図2を参照しながら、超音波診断装置1の構成について説明する。
(1−1.超音波診断装置1の全体構成)
図1は、超音波診断装置1の構成図である。
超音波診断装置1は、被検体2に超音波を送受波する複数の振動子素子を備える超音波探触子3と、超音波信号を送受信する超音波送受信部4と、受信信号に基づいて2次元超音波画像(Bモード画像)や3次元超音波画像を構成する超音波画像構成部5と、超音波画像を表示する表示部6と、各構成要素を制御する制御部7と、制御部7に指示を与える操作部8とを備える。
超音波探触子3は、振動子素子が長軸方向に複数チャンネル分配列される。長軸方向と共に短軸方向にも複数チャンネル分配列してもよい。各チャンネル毎に送波信号あるいは受波信号(反射エコー信号)に付与する遅延量(遅延時間)に差を設けることにより、焦点制御が行われる。また、短軸方向の各振動子素子に与える送波信号の振幅を変えることにより送波重み付けが行われる。また、短軸方向の各振動子素子からの超音波受信信号の増幅度又は減衰度を変えることにより受波重み付けが行われる。また、短軸方向の各振動子素子をオン・オフすることにより口径制御が行われる。
振動素子としては、例えば、cMUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)を用いることができる。cMUTは、超音波送受信部4から供給される駆動信号に重畳して印加されるバイアス電圧の大きさに応じて超音波送受信感度つまり電気機械結合係数が変化する振動子素子である。
超音波送受信部4は、超音波探触子3に送波信号を供給すると共に受信した受波信号を処理する。超音波送受信部4は、送波回路及び受波回路及びこれらを制御する制御回路を有する。超音波送受信部4の詳細については、図2を用いて後述する。
超音波画像構成部5は、超音波送受信部4によって処理された受波信号に基づいて超音波画像を構成する。超音波画像構成部5は、座標変換処理等の画像処理を行うデジタルスキャンコンバータ、超音波画像を記憶する記憶装置を有する。超音波画像構成部5は、2次元超音波画像(Bモード画像)や3次元超音波画像やドプラ画像等の超音波画像を作成する。
表示部6は、超音波画像構成部5で作成された超音波画像を表示する装置であり、例えば、CRTモニタや液晶モニタである。
制御部7は、上記の各構成要素の動作や各構成要素間のデータ伝送を制御する装置である。制御部7は、例えば、CPU(中央処理装置)を有する制御用コンピュータである。
(1−2.超音波送受信部4の詳細)
図2は、超音波送受信部4の詳細図である。
超音波送受信部4は、ビーム形成情報計算部9、送受信制御部10、送波メモリ11及び受波メモリ12、送波ビーム生成部13及び受波ビーム生成部19、D/Aコンバータ14及びA/Dコンバータ18、送波アンプ15及び受波アンプ17、送受信切換部16を備える。ビーム形成情報計算部9及び送受信制御部10は、図1の制御部7に接続される。送受信切換部16は、図1の超音波探触子3に接続される。受波ビーム生成部19は、図1の超音波画像構成部5に接続される。
ビーム形成情報計算部9は、超音波探触子の種類や超音波ビームの種類(モード)や診断部位等の切換時に、ビーム形成情報を計算して送波メモリ11や受波メモリ12に送る。ビーム形成情報は、遅延量や重み係数等の超音波ビームの形成に関する情報である。ビーム形成情報が遅延量を示す場合には、超音波ビーム方向の焦点位置を変数とした関数で表される。
ビーム形成情報計算部9は、チャンネル毎及び近似区間毎に、多項式の近似係数を近似情報として計算し、計算結果を送波メモリ11及び受波メモリ12に出力する。尚、近似区間は、ビーム形成情報が遅延量を示す場合には、超音波ビーム方向の焦点位置の定義域を分割した区間である。
送受信制御部10は、送波ビーム生成部13に送波メモリ11からビーム形成情報を読み込ませる。送波ビーム生成部13は、ビーム形成情報に基づいてチャンネル毎及び所定時間間隔で遅延量や重み係数を算出する。送波ビーム生成部13は、波形情報(中心周波数など)に、算出した遅延量や重み係数を付与して送波信号を決定してデジタル送波信号を生成する。
D/Aコンバータ14は、デジタル送波信号をアナログ送波信号に変換する。アナログ送波信号は、送波アンプ15によって増幅された後に、送受信切換部16を介して超音波探触子3に送られ、超音波探触子3から被検体2の診断部位に超音波ビームが送波される。
被検体2の診断部位で反射されて超音波探触子3が受波したアナログ受波信号は、送受信切換部16を通って受波アンプ17によって増幅された後に、A/Dコンバータ18によってデジタル受波信号に変換される。
送受信制御部10は、受波ビーム生成部19に受波メモリ12からビーム形成情報を読み込ませる。受波ビーム生成部19は、ビーム形成情報に基づいてチャンネル毎及び所定時間間隔で遅延量や重み係数を算出する。受波ビーム生成部19は、算出した遅延量や重み係数をデジタル受波信号に付与し、複数のチャンネルに渡って加算処理する。これにより、受波信号の超音波ビームデータが超音波ビーム方向の焦点位置の関数として得られる。尚、加算処理は、フィルタ処理や対数演算等の非線形変換や相関関数計算等を含む検波処理である。
(2.ビーム形成情報)
次に、図3及び図4を参照しながら、ビーム形成情報について説明する。
図3は、遅延量に関するビーム形成情報を示す図である。横軸は、超音波ビーム方向の焦点位置xを示す。縦軸は、遅延量τを示す。
理想遅延量τ(x)は、超音波ビーム方向の焦点位置xの関数である。理想遅延量τ(x)は、焦点位置xに応じた理想的な遅延量τを示す。理想遅延量τ(x)は、チャンネルj(j=1,2,…)毎に異なる関数である。
図4は、遅延量に関するビーム形成情報を示す図である。横軸は、チャンネルjを示す。縦軸は、遅延量τを示す。
理想遅延量τ(j)は、チャンネルjの関数である。理想遅延量τ(j)は、チャンネルjに応じた理想的な遅延量τを示す。理想遅延量τ(j)は、焦点位置x毎に異なる関数である。尚、チャンネルjは、実際には離散的なインデックス値をとるが、図4では連続的にグラフ表示した。
図3及び図4に示すように、理想遅延量τは、焦点位置xだけでなく、チャンネルjにも依存する。詳細は後述するが、近似遅延量Pは、近似区間K毎、チャンネルj毎に独立に決められる。一方、近似区間Kに関しては、チャンネルjの全値域に渡る最大誤差を小さくすることにより近似精度が向上するので、チャンネルjに依存しないものとして説明する。
また、図3及び図4では、チャンネルj毎に定義される理想遅延量τ(x)を挙げたがこれに限られない。チャンネルjだけでなく、超音波探触子の種類や超音波ビームの種類や診断部位に応じて、理想遅延量τ(x)を定義することができる。また、ビーム形成情報として遅延量を挙げたが、遅延量以外、例えば、重み係数をビーム形成情報として用いることができる。
(3.ビーム形成情報計算部9の動作)
次に、図5から図10を参照しながら、ビーム形成情報計算部9の動作について説明する。尚、ビーム形成情報として遅延量を挙げて説明する。
(3−1.近似区間作成処理)
図5は、ビーム形成情報計算部9が実行する近似区間作成処理のフローチャートである。
図6は、誤差係数aの点列を示す図である。横軸は、焦点位置xを示す。縦軸は、誤差係数aを示す。図6は、S101〜S104の処理を示す。
ビーム形成情報計算部9は、超音波ビーム方向の焦点位置xの区間[xmin,xmax]において、間隔Δxm(Δxm,Δxm,…,Δxm)で(M+1)個の計算点xm(xm,xm,…,xm)を設定する(S101)。間隔Δxmに関しては、例えば、等間隔(Δxm=Δxm=,…,=Δxm)としてもよい。ビーム形成情報計算部9は、近似遅延量P(x)を示す多項式の次数pを設定する(S102)。ビーム形成情報計算部9は、各計算点xm(xm,xm,…,xm)において、理想遅延量τ(x)の(p+1)階微分係数絶対値を全チャンネルjについて求め、その最大値の(p+1)乗根を誤差係数a(a,a,…,a)として算出する(S103)。
誤差係数aは、計算点xmにおける遅延量に関する誤差の度合いを示す誤差情報である。理想遅延量τ(x)を級数展開によってp次の多項式で近似する際、(p+1)次の残余項が支配的な場合には、(p+2)次以上の高次項を無視することができる。この場合、誤差係数aは、計算点xmにおける理想遅延量τ(x)の(p+1)階微分係数の(p+1)乗根を用いて[数1]のように表される。
Figure 2009005741
尚、S101の処理では、計算点xmを等間隔に設定してもよいし、計算点xmを等間隔に設定しなくてもよい。例えば、誤差係数aの変化量が大きい部分では計算点xmの間隔を密にしてもよい。
ビーム形成情報計算部9は、誤差係数aの点列及び焦点位置x軸によって形成される領域の面積Aを算出する(S104)。面積Aは、誤差係数aの値を焦点位置x軸方向にxminからxmaxまで積和した値(積分値)に相当する。面積Aは、誤差係数aを用いて[数2]のように表される。尚、単純和に代えて、Simpson法等を用いてもよい。
Figure 2009005741
図7は、近似区間Kを示す図である。横軸は、焦点位置xを示す。縦軸は、誤差係数aを示す。図7は、S106の処理を示す。
ビーム形成情報計算部9は、誤差要因が多項式近似以外に存在しない場合には(S105のNO)、面積AをN等分してN個の近似区間K(K,K,…,K)を作成する(S106)。尚、S106の処理では、逐次比較法や二分法等を用いることができる。
面積S(S,S,…,S)は、近似区間K(K,K,…,K)における誤差係数aを焦点位置x軸方向に積和した値である。面積S及び面積Aとの関係式は、[数3]のように表される。尚、近似区間K=[xn,xn],近似区間K=[xn,xn],…,近似区間K=[xnN−1,xn]である。
Figure 2009005741
以上の過程を経て、ビーム形成情報計算部9は、各計算点xmにおいて誤差係数aを算出し、誤差係数aの点列と焦点位置x軸とで形成される領域の面積を等分して近似区間Kを作成する。
これにより、ビーム形成情報に関する誤差情報に応じた近似区間を作成することができる。
図8は、誤差係数a及び誤差係数bの規格化を示す図である。図8は、S107〜S110の処理を示す。
ビーム形成情報計算部9は、誤差要因が多項式近似以外に存在する場合には(S105のYES)、各計算点xm(xm,xm,…,xm)において、他の誤差係数b(b,b,…,b)を算出する(S107)。
尚、誤差係数bの対象となる誤差は、例えば、正負や大きさがランダムな誤差のうち解析的な関数で標準的な誤差の大きさが見積もられている誤差や、区間長が長くなるほど影響が大きくなる近似係数の量子化誤差である。
誤差係数bは、計算点xmの間隔Δxmに比例する形式で算出される。ビーム形成情報計算部9は、誤差係数bの点列及び焦点位置x軸によって形成される領域の面積Bを算出する(S108)。面積Bは、誤差係数bの値を焦点位置x軸方向にxminからxmaxまで積和した値(積分値)に相当する。面積Bは、誤差係数bを用いて[数4]のように表される。
Figure 2009005741
ビーム形成情報計算部9は、面積Aと面積Bとの面積比に基づいて誤差係数a及び誤差係数bを規格化し、誤差係数a’及び誤差係数b’を算出する(S109)。例えば、面積A’=面積B’=「1」、となるように誤差係数a及び誤差係数bの規格化が行われる。ビーム形成情報計算部9は、誤差係数a’及び誤差係数b’の点列及び焦点位置x軸によって形成される領域の面積A’及び面積B’の和を算出する(S110)。面積(A’+B’)は、誤差係数(a’+b’)の値を焦点位置x軸方向にxminからxmaxまで積和した値(積分値)に相当する。面積(A’+B’)は、誤差係数(a’+b’)を用いて[数5]のように表される。
Figure 2009005741
ビーム形成情報計算部9は、面積(A’+B’)をN等分してN個の近似区間K(K,K,…,K)を作成する(S106)。尚、多項式近似以外の誤差要因が複数存在する場合には、当該誤差要因毎にS107〜S109の処理を行い、S110の処理において規格化した誤差係数全てについて面積の和を求めればよい。
以上の過程を経て、ビーム形成情報計算部9は、各計算点xmにおいて複数の誤差要因の種類毎に、計算点xmの間隔Δxmに比例する形式で誤差係数a及び誤差係数bを算出する。ビーム形成情報計算部9は、誤差係数a及び誤差係数bの点列と焦点位置x軸とで形成される領域の面積に基づいて誤差係数の規格化を行い、規格化された誤差係数の面積の和を等分して近似区間Kを作成する。
これにより、多項式近似以外の複数の誤差要因が存在する場合であっても、ビーム形成情報に関する誤差情報に応じた近似区間を作成することができる。尚、各面積を1に規格化してから足し合わせるのではなく、注目する誤差要因の重要度によって各面積の比率を適宜変更してから足し合わせてもよい。
(3−2.近似係数算出処理)
図9は、ビーム形成情報計算部9が実行する近似係数算出処理のフローチャートである。
図10は、近似遅延量P(x)と理想遅延量τ(x)との間の近似誤差Δτ(x)を示すグラフである。横軸は、焦点位置xを示す。縦軸は、近似誤差Δτを示す。
近似誤差Δτ(x)=近似遅延量P(x)−理想遅延量τ(x)である。近似遅延量P(x)がp次関数であり、級数展開によって(p+2)次以上の高次項を無視して(p+1)次までの近似を行うと、近似誤差Δτ(x)を[数6]によって(p+1)次の多項式で表すことができる。尚、図10では、p=2、近似遅延量P(x)が近似区間Kの端点において連続である場合を示す。
Figure 2009005741
ビーム形成情報計算部9は、近似区間K(K,K,…,K)毎に以下のS201〜S204の処理を実行する。
ビーム形成情報計算部9は、近似誤差Δτ(x)の近似誤差の計算点を設定する(S201)。ビーム形成情報計算部9は、上記の計算点毎に、近似誤差Δτ(x)=近似遅延量P(x)−理想遅延量τ(x)を算出する(S202)。ビーム形成情報計算部9は、算出した近似誤差Δτ(x)を「0」あるいは対応する複数の計算点の近似誤差Δτ(x)の和が「0」(大きさ同一かつ正負逆)として、少なくとも(p+1)個の条件式(1次方程式)からなる連立方程式を作成する(S203)。
ビーム形成情報計算部9は、連立方程式の(p+1)個の解を求め、近似遅延量P(x)を示すp次の多項式の(p+1)個の近似係数を算出する(S204)。ビーム形成情報計算部9は、全ての近似区間K(K,K,…,K)について、S201〜S204の処理を行い(S205)、区間[xmin,xmax]について、近似遅延量P(x)を算出する。
図10に示すように、近似誤差Δτ(x)が3次の多項式である場合、近似区間Kの端点dmin及び端点dmax、極値点x及び極値点x,節点xの5個の近似誤差の計算点が設定される。近似区間Kの端点において近似遅延量P(x)を連続とする場合、ビーム形成情報計算部9は、端点dmin及び端点dmaxにおける近似誤差Δτ(x)を「0」とする。また、ビーム形成情報計算部9は、節点xにおける近似誤差Δτ(x)を「0」とする。あるいは、ビーム形成情報計算部9は、極値点x及び極値点xにおける近似誤差21(Δτ(x))及び近似誤差22(Δτ(x))の和を「0」(大きさ同一かつ正負逆)として条件式を作成する。すなわち、以下の少なくとも3個の条件式(1次方程式)からなる連立方程式が作成される。
Δτ(dmin)=0
Δτ(dmax)=0
Δτ(x)=0、あるいは、Δτ(x)+Δτ(x)=0
ビーム形成情報計算部9は、上記の連立方程式の3個の解を求め、近似遅延量P(x)を示す2次の多項式の3個の近似係数を算出する。
以上の過程を経て、ビーム形成情報計算部9は、近似区間K毎に超音波ビーム方向の焦点位置x軸に沿って計算点を設定し、当該計算点における近似誤差Δτ(x)を「0」あるいは対応する複数の計算点の近似誤差Δτ(x)の和が「0」(大きさ同一かつ正負逆)であるとして、少なくとも(p+1)個の条件式(1次方程式)からなる連立方程式を作成し、この連立方程式の(p+1)個の解を求め、近似遅延量P(x)を示すp次の多項式の(p+1)個の近似係数を算出する。
尚、(p+1)個の条件式からなる連立方程式の解を求めることによって、(p+1)個の近似係数を算出することができるが、より多くの条件式を組み合わせることにより近似精度を向上させることができる。
(4.効果等)
図11は、ビーム形成情報計算部9が算出した近似遅延量P(x)を示す図である。横軸は焦点位置xを示す。縦軸は遅延量τを示す。
図12は、図11の近似遅延量P(x)の領域31の拡大図である。
図13は、従来の超音波診断装置が用いる遅延量Q(x)を示す図である。横軸は焦点位置xを示す。縦軸は遅延量τを示す。
図14は、図13の近似遅延量Q(x)の領域33の拡大図である。
図12の誤差32は、ビーム形成情報計算部9が算出した近似遅延量P(x)と理想遅延量τ(x)との近似誤差である。図14の誤差34は、遅延量Q(x)と理想遅延量τ(x)との誤差である。近似遅延量P(x)は、p次関数曲線であるのに対して遅延量Q(x)は離散的な値をとるので、誤差32は誤差34と比較して小さい。
以上詳細に説明したように、超音波診断装置1は、理想的なビーム形成情報に対して、誤差の度合いに応じて近似区間を作成し、当該近似区間において級数展開による所定次数までの近似計算を行うので、ビーム形成情報について高速かつ高精度に近似計算を行うことができる。また、この近似計算により処理データ量が減少するので、ビーム形成情報の転送時間を減少させて迅速に多様なビーム形成情報を切り換えることができる。
(5.その他)
上述の実施形態では、近似区間Kの端部において近似遅延量P(x)が連続であるものとして説明したが、不連続としてもよい。近似区間Kの端部において近似遅延量P(x)を不連続とする場合には、近似区間Kの端点dmin及び端点dmaxを極値点として近似誤差の計算点を設定することにより、誤差を小さくすることができる。この場合も、近似誤差の計算点において、近似遅延量P(x)と理想遅延量τ(x)とが一致する条件(近似誤差が「0」)や、近似誤差が交互に同一の大きさで正負逆となる条件を設定し、少なくとも(p+1)個の条件式からなる連立方程式を作成することができる。計算点として極値点や節点を適宜組み合わせることにより、(p+1)個以上の条件式を作成して近似精度を向上させることもできる。
また、上述の実施形態では、理想遅延量τ(x)を級数展開によってp次の多項式で近似する際、(p+1)次の残余項が支配的であり、(p+2)次以上の高次項を無視することができるものとして説明したが、(p+2)次以上の高次項が支配的となる場合がある。例えば、τ(x)の級数展開において、典型的な区間長半分(|x−(xの級数展開中心)|=(xmax−xmin)/(2N))で、(p+2)次以上の高次項の寄与が(p+1)次の残余項の寄与程度以上になる場合がある。
ここで、(p+3)次以上の高次項を無視可能な場合には、p次に代えて(p+1)次の多項式で近似し、誤差係数aとして、τ(x)の(p+1)階微分係数絶対値の(p+1)乗根に代えて、τ(x)の(p+2)階微分係数絶対値の(p+2)乗根を求めて、先述の実施形態と同様に近似区間の作成や近似係数の算出を行えばよい。
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
超音波診断装置1の構成図 超音波送受信部4の詳細図 遅延量に関するビーム形成情報を示す図(横軸:焦点位置) 遅延量に関するビーム形成情報を示す図(横軸:チャンネル) ビーム形成情報計算部9が実行する近似区間作成処理のフローチャート 誤差係数aの点列を示す図 近似区間Kを示す図 誤差係数a及び誤差係数bの規格化を示す図 ビーム形成情報計算部9が実行する近似係数算出処理のフローチャート 近似遅延量P(x)と理想遅延量τ(x)との間の近似誤差Δτを示すグラフ ビーム形成情報計算部9が算出した近似遅延量P(x)を示す図 図11の近似遅延量P(x)の領域31の拡大図 従来の超音波診断装置が用いる遅延量Q(x)を示す図 図13の近似遅延量Q(x)の領域33の拡大図
符号の説明
1………超音波診断装置
2………被検体
3………超音波探触子
4………超音波送受信部
5………超音波画像構成部
6………表示部
7………制御部
8………操作部
9………ビーム形成情報計算部
10………送受信制御部
11………送波メモリ
12………受波メモリ
13………送波ビーム生成部
16………送受信切換部
19………受波ビーム生成部
21、22、32………近似誤差

Claims (6)

  1. 被検体に超音波を送受信する超音波探触子と、前記送受信される超音波のビーム形成情報に関する計算を行うビーム形成情報計算部と、前記超音波探触子から受信される超音波画像データに基づいて超音波画像を構成する超音波画像構成部と、前記超音波画像を表示する表示部と、を備えた超音波診断装置において、
    前記ビーム形成情報計算部は、
    前記超音波のビーム方向に複数の第1計算点を設定する第1計算点設定手段と、
    前記設定された複数の第1計算点毎に前記ビーム形成情報に関する誤差情報を算出する誤差情報算出手段と、
    前記算出された誤差情報に基づいて、前記超音波のビーム方向に複数の近似区間を作成する近似区間作成手段と、
    前記作成された複数の近似区間毎に前記ビーム形成情報の近似情報を算出する近似情報算出手段と、
    を具備することを特徴とする超音波診断装置。
  2. 前記第1計算点設定手段は、前記複数の第1計算点を等間隔に設定することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
  3. 前記誤差情報算出手段は、1つの前記第1計算点について複数算出される前記ビーム形成情報の(p+1)階微分係数絶対値(p+1)乗根の中で最大値を前記誤差情報として算出し、
    前記近似情報算出手段は、前記近似情報としてp次多項式を算出することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
  4. 前記近似区間作成手段は、前記誤差情報の値を前記超音波のビーム方向に積和した面積を等分して、前記複数の近似区間を作成することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
  5. 前記近似情報算出手段は、
    前記作成された近似区間毎に、前記超音波のビーム方向に複数の第2計算点を設定する第2計算点設定手段と、
    前記設定された複数の第2計算点において、前記近似情報と理想的な前記ビーム形成情報との差である近似誤差情報を算出する近似誤差情報算出手段と、
    前記算出された近似誤差情報に関する条件を設定する条件設定手段と、
    前記設定された近似誤差情報に関する条件を満たす前記近似情報を算出する条件処理手段と、
    を具備することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
  6. 前記条件設定手段は、前記近似区間の端点における前記近似誤差情報の値と前記近似区間内の隣の極値点における前記近似誤差情報の値との和が「0」であるとして、前記条件式の少なくとも1つを設定することを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
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