JP2009001845A - 貴金属の電気メッキ方法、貴金属担持導電性材料、固体高分子型燃料電池用電極及び固体高分子型燃料電池 - Google Patents

貴金属の電気メッキ方法、貴金属担持導電性材料、固体高分子型燃料電池用電極及び固体高分子型燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】貴金属を効率的に電気メッキすることが可能な方法を提供する。
【解決手段】水溶液系メッキ液を用いて電気メッキにて貴金属を導電性材料に担持させる貴金属の電気メッキ方法において、前記水溶液系メッキ液にアルコールを添加することを特徴とする貴金属の電気メッキ方法である。前記アルコールとしては、メタノール、エタノール及びそれらの混合液が好ましく、前記導電性材料としては、炭素材が好ましく、導電性ポリマーを焼成して得られた炭素材が更に好ましく、3次元連続構造を有する導電性材料が特に好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、貴金属の電気メッキ方法、該方法を利用して製造した貴金属担持導電性材料、該貴金属担持導電性材料を用いた固体高分子型燃料電池用電極及び固体高分子型燃料電池に関し、特に貴金属を効率的に電気メッキすることが可能な方法及び該方法を利用して製造され固体高分子型燃料電池の触媒層に好適な貴金属担持導電性材料に関するものである。
昨今、発電効率が高く、環境への負荷が小さい電池として、燃料電池が注目を集めており、広く研究開発が行われている。燃料電池の中でも、出力密度が高く作動温度が低い固体高分子型燃料電池は、小型化や低コスト化が他のタイプの燃料電池よりも容易なことから、電気自動車用電源、分散発電システム、家庭用のコージェネレーションシステムとして広く普及することが期待されている。
一般に、上記固体高分子型燃料電池においては、固体高分子電解質膜を挟んで一対の電極を配置すると共に、一方の電極の表面に水素等の燃料ガスを接触させ、もう一方の電極の表面に酸素を含有する酸素含有ガスを接触させ、この時起こる電気化学反応を利用して、電極間から電気エネルギーを取り出している(非特許文献1及び2参照)。また、上記電極の高分子電解質膜に接する側には触媒層が配設されており、高分子電解質膜と触媒層とガスとの三相界面で電気化学反応が起こる。そのため、固体高分子型燃料電池の発電効率を向上させるためには、上記電気化学反応の反応場を大きくする必要がある。
上記電気化学反応の反応場を大きくすることが可能な触媒層を形成するために、一般に、白金等の貴金属触媒をカーボンブラック等の粒状カーボン上に担持した触媒粉を含有するペースト又はスラリーを、カーボンペーパー等の導電性の多孔質支持体上に塗布する方法が採られている。しかしながら、この方法で形成された触媒層を備える固体高分子型燃料電池は、発電効率が低かった。
これに対して、本発明者らは、カーボンペーパー等の導電性の多孔質支持体上において芳香環を有する化合物を重合させてフィブリル状ポリマーを生成させた後、該フィブリル状ポリマーを焼成して炭素繊維を作製し、該炭素繊維上に電気メッキにより貴金属を担持して作製した電極を固体高分子型燃料電池に使用することで、固体高分子型燃料電池の発電効率が向上することを見出している(特許文献1参照)。
日本化学会編,「化学総説No.49,新型電池の材料化学」,学会出版センター,2001年,p.180−182 「固体高分子型燃料電池<2001年版>」,技術情報協会,2001年,p.14−15 国際公開第2004/063438号パンフレット
上述のように、国際公開第2004/063438号に開示の電極を固体高分子型燃料電池に使用することで、固体高分子型燃料電池の発電効率は確かに向上するものの、依然として改良の余地があり、更に高性能な電極が求められている。また、本発明者らが更に検討を進めたところ、国際公開第2004/063438号に開示の電気メッキ方法は、単位時間当たりの貴金属触媒の担持量が少なく、生産性の点で問題があることが分かった。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、貴金属を効率的に電気メッキすることが可能な方法と、該方法を利用して作製した固体高分子型燃料電池用電極の触媒層に好適な貴金属担持導電性材料を提供することにある。また、本発明の他の目的は、該貴金属担持導電性材料を用いた固体高分子型燃料電池用電極及び固体高分子型燃料電池を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、水溶液系メッキ液を用いて電気メッキにて貴金属を導電性材料に担持させる貴金属の電気メッキ方法において、使用する水溶液系メッキ液にアルコールを添加しておくことで、単位時間当たりの貴金属の担持量が増加して、貴金属を導電性材料に効率的に電気メッキすることが可能となり、また、該方法を利用して作製した貴金属担持導電性材料を固体高分子型燃料電池の触媒層として用いることで、燃料電池の性能が大幅に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の貴金属の電気メッキ方法は、水溶液系メッキ液を用いて電気メッキにて貴金属を導電性材料に担持させる貴金属の電気メッキ方法において、前記水溶液系メッキ液にアルコールを添加することを特徴とする。
本発明の貴金属の電気メッキ方法の好適例においては、前記アルコールが、メタノール、エタノール又はそれらの混合液である。
本発明の貴金属の電気メッキ方法において、前記導電性材料としては、炭素材が好ましく、導電性ポリマーを焼成して得られた炭素材が更に好ましく、3次元連続構造を有する導電性材料が特に好ましい。
また、本発明の貴金属担持導電性材料は、上記の電気メッキ方法を用いて、貴金属を導電性材料に担持してなり、少なくともPtを含む貴金属を導電性材料に担持してなることが好ましい。
更に、本発明の固体高分子型燃料電池用電極は、上記の電気メッキ方法を用いて、少なくともPtを含む貴金属を担持した導電性材料を用いたことを特徴とし、本発明の固体高分子型燃料電池は、該固体高分子型燃料電池用電極を具えることを特徴とする。
本発明によれば、アルコールが添加された水系メッキ液を用いて電気メッキにて貴金属を導電性材料に担持することで、導電性材料に貴金属を効率的に電気メッキすることができる。また、該電気メッキ方法を利用して作製した貴金属担持導電性材料を固体高分子型燃料電池の触媒層として使用することで、燃料電池の性能を大幅に向上させることができる。
<貴金属の電気メッキ方法>
以下に、本発明の貴金属の電気メッキ方法を詳細に説明する。本発明の貴金属の電気メッキ方法は、水溶液系メッキ液を用いて電気メッキにて貴金属を導電性材料に担持させる貴金属の電気メッキ方法において、前記水溶液系メッキ液にアルコールを添加することを特徴とする。水溶液系メッキ液にアルコールを添加した場合、アルコールの還元性によってメッキ液中の貴金属イオンの還元効率が向上する。その結果、単位時間当たりの貴金属の担持量、更には単位通電量当たりの貴金属の担持量が増加して(即ち、電気メッキにおける電流効率が向上して)、貴金属を導電性材料に効率的に電気メッキすることが可能となる。
また、水溶液系メッキ液にアルコールを添加した場合、導電性材料とアルコールの親和性が高いため、メッキ液と導電性材料との親和性が向上する。その結果、導電性材料上に貴金属を緻密にメッキすることができると共に、導電性材料上に担持される貴金属を微粒子化することができる。そして、微粒子化した貴金属が担持された導電性材料を固体高分子型燃料電池の触媒層として使用することで、触媒層と高分子電解質膜とガスとの三相界面における電気化学反応の反応場が広くなり、燃料電池の性能を大幅に向上させることが可能となる。
本発明の電気メッキ方法に用いる水溶液系メッキ液は、担持させる貴金属に対応する貴金属イオンを含む水溶液に、アルコールを添加して調製される。ここで、水溶液系メッキ液中の貴金属イオンの濃度は、0.002〜0.2 mol/Lの範囲が好ましく、0.004〜0.1 mol/Lの範囲が更に好ましい。また、水溶液系メッキ液中のアルコールの含有量は、1〜50質量%の範囲が好ましく、2〜20質量%の範囲が更に好ましい。メッキ液中のアルコールの含有量が1質量%未満では、メッキ効率を向上させる効果及び貴金属を微粒子化する効果が不十分であり、一方、50質量%を超えると、水溶液中の貴金属イオンがアルコールにより還元され、安定したメッキが難しくなる。
上記貴金属イオンとしては、Ptイオン、Ruイオン等が挙げられ、Ptイオンが特に好ましい。該貴金属イオンは、貴金属イオンと陰イオンからなる塩を水に溶解させることで、発生させることができる。
また、上記アルコールとしては、メタノール、エタノール及びそれらの混合液が好ましい。使用するアルコールがメタノール及び/又はエタノールであれば、メッキ液の濃度上昇が抑えられ、電気メッキに悪影響を及ぼし難い。
本発明では、上記貴金属の導電性材料上への担持を、電流をパルス状に印加した電気メッキ法により行うことが好ましい。ここで、パルスメッキにおける電流の印加時間(オンタイム)は、0.0005〜0.2秒の範囲が好ましく、0.001〜0.1秒の範囲が更に好ましく、一方、休止時間(オフタイム)は、0.005〜1秒の範囲が好ましく、0.01〜0.5秒の範囲が更に好ましい。
本発明の電気メッキ方法において、電流密度は、20〜800 mA/cm2の範囲が好ましく、40〜400 mA/cm2の範囲が更に好ましい。また、通電量は、0.02〜2 C/cm2の範囲が好ましく、0.04〜1 C/cm2の範囲が更に好ましい。また、貴金属担持量は、0.005〜2 mg/cm2の範囲が好ましく、0.01〜1 mg/cm2の範囲が更に好ましい。
本発明の電気メッキ方法により貴金属が担持される導電性材料は、導電性を有する限り特に制限されるものではないが、炭素材が好ましく、導電性ポリマーを焼成して得られた炭素材が更に好ましく、3次元連続構造を有する炭素材が特に好ましい。かかる炭素材は、例えば、芳香環を有する化合物を酸化重合してフィブリル状ポリマーを生成させ、該フィブリル状ポリマーを焼成炭化して作製することができる。該3次元連続状の炭素材(炭素繊維)は、表面積が広く、導電性に優れるため、電極用の触媒担持体として特に好適である。
上記フィブリル状ポリマーの原料となる芳香環を有する化合物としては、ベンゼン環を有する化合物、芳香族複素環を有する化合物を挙げることができる。ここで、ベンゼン環を有する化合物としては、アニリン及びアニリン誘導体が好ましく、芳香族複素環を有する化合物としては、ピロール、チオフェン及びこれらの誘導体が好ましい。これら芳香環を有する化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。
上記酸化重合法としては、電解酸化重合法及び化学的酸化重合法等の種々の方法が利用できるが、中でも電解酸化重合法が好ましい。また、該電解酸化重合においては、原料の芳香環を有する化合物と共に、酸を混在させることが好ましい。この場合、酸の負イオンがドーパントとして合成されるフィブリル状ポリマー中に取り込まれ、導電性に優れたフィブリル状ポリマーが得られ、このフィブリル状ポリマーを用いることにより最終的に3次元連続状炭素材の導電性を更に向上させることができる。ここで、電解酸化重合の際に混在させる酸としては、H2SO4、HBF4、HCl、HClO4等を例示することができる。また、該酸の濃度は、0.1〜3 mol/Lの範囲が好ましく、0.5〜2.5 mol/Lの範囲が更に好ましい。
電解酸化重合によりフィブリル状ポリマーを得る場合には、芳香環を有する化合物を含む溶液中に、作用極及び対極を浸漬し、両極間に芳香環を有する化合物の酸化電位以上の電圧を印加するか、または該芳香環を有する化合物が重合するのに充分な電圧が確保できるような条件の電流を通電すればよく、これにより作用極上にフィブリル状ポリマーが生成する。ここで、作用極及び対極としては、ステンレススチール、白金、カーボン等の良導電性物質からなる板や多孔質支持体等を用いることができる。この電解酸化重合法によるフィブリル状ポリマーの合成方法の一例を挙げると、H2SO4、HBF4等の酸及び芳香環を有する化合物を含む電解溶液中に作用極及び対極を浸漬し、両極間に0.1〜1000 mA/cm2、好ましくは0.2〜100 mA/cm2の電流を通電して、作用極側にフィブリル状ポリマーを重合析出させる方法等が例示される。ここで、芳香環を有する化合物の電解溶液中の濃度は、0.05〜3 mol/Lの範囲が好ましく、0.25〜1.5 mol/Lの範囲が更に好ましい。また、電解溶液には、上記成分に加え、pHを調製するために可溶性塩等を適宜添加してもよい。
上記芳香環を有する化合物を酸化重合して得られるフィブリル状ポリマーは、通常、3次元連続構造を有し、直径が30〜数百nmで、好ましくは40〜500 nmであり、長さが0.5μm〜100 mmで、好ましくは1μm〜10 mmである。
上記のようにして作用極上に得られたフィブリル状ポリマーを、水や有機溶剤等の溶媒で洗浄し、乾燥させた後、焼成、好ましくは非酸化性雰囲気中で焼成して炭化することで、3次元連続状の炭素材(炭素繊維)が得られる。ここで、乾燥方法としては、特に制限されるものではないが、風乾、真空乾燥の他、流動床乾燥装置、気流乾燥機、スプレードライヤー等を使用した方法を例示することができる。また、焼成条件としては、特に限定されるものではないが、温度500〜3000℃、好ましくは600〜2800℃で、0.5〜6時間とすることが好ましい。なお、非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気等を挙げることができ、場合によっては水素雰囲気とすることもできる。
上記フィブリル状ポリマーを焼成炭化して得られる炭素材は、3次元連続構造を有し、直径が30〜数百nm、好ましくは40〜500 nmであり、長さが0.5μm〜100 mm、好ましくは1μm〜10 mmであり、表面抵抗が106〜10-2Ω、好ましくは104〜10-2Ωであり、残炭率が90〜20%、好ましくは80〜25%である。該炭素材は、カーボン全体が3次元に連続した構造を有するため、粒状カーボンよりも導電性が高い。
上記のようにして焼成・炭化して得られた炭素材は、更に1800℃以上で高温処理されることが好ましく、2100〜3000℃で高温処理されることが更に好ましい。高温処理により結晶化された炭素材を、Pt等の貴金属の担体として使用した電極を備える固体高分子型燃料電池は、高温処理を施していない炭素材を用いた電極を備える固体高分子型燃料電池よりも、幅広い電流領域で電池電圧が高く且つ内部抵抗が小さく、良好な発電特性を示す。ここで、上記高温処理は、非酸化性雰囲気中で実施することが好ましく、非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、ヘリウム雰囲気等を挙げることができ、場合によっては水素雰囲気とすることもできる。
<貴金属担持導電性材料>
次に、本発明の貴金属担持導電性材料を詳細に説明する。本発明の貴金属担持導電性材料は、上述の電気メッキ方法を用いて貴金属を導電性材料に担持してなり、種々の化学反応の触媒として有効であるが、特に固体高分子型燃料電池用電極の触媒層に好適に用いることができる。なお、本発明の貴金属担持導電性材料における貴金属担持量は、上述の通りであり、該貴金属は、上記貴金属イオンから誘導される。本発明の貴金属担持導電性材料を後述の固体高分子型燃料電池用電極の触媒層として使用する場合、貴金属としては、Pt、Ru等が好ましく、Ptが特に好ましい。なお、本発明の貴金属担持導電性材料においては、貴金属としてPtを単独で用いてもよいし、Ru等の他の金属との合金として用いてもよい。貴金属としてPtを用いることで、100℃以下の低温でも水素を高効率で酸化することができる。また、PtとRu等の合金を用いることで、COによるPtの被毒を防止して、触媒の活性低下を防止することができる。
<固体高分子型燃料電池用電極>
次に、本発明の固体高分子型燃料電池用電極を詳細に説明する。本発明の固体高分子型燃料電池用電極は、上述の貴金属担持導電性材料を具えることを特徴とし、燃料極としても、空気極(酸素極)としても使用できる。なお、本発明の固体高分子型燃料電池用電極において、貴金属担持導電性材料は触媒層として機能する。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極は、更に多孔質支持体を具えることが好ましく、該多孔質支持体は、貴金属担持導電性材料(触媒層)へ水素ガス等の燃料、或いは、酸素や空気等の酸素含有ガスを供給するガス拡散層としての機能と、発生した電子の授受を行う集電体としての機能を担う。該多孔質支持体に用いる材質としては、多孔質で且つ電子伝導性を有するものであればよく、具体的には、カーボンペーパー、多孔質のカーボン布等が挙げられ、カーボンペーパーが好ましい。なお、上記導電性材料として好適な3次元連続構造を有する炭素材の製造において、カーボンペーパー等の多孔質支持体を作用極として用い、該多孔質支持体上に3次元連続構造を有する炭素材を形成し、該炭素材上に貴金属を電気メッキすることで、本発明の固体高分子型燃料電池用電極を容易に作製することができる。
本発明の固体高分子型燃料電池用電極は、多孔質支持体と、該多孔質支持体上に配置された貴金属担持導電性材料と、該貴金属担持導電性材料に含浸された高分子電解質とからなることが好ましい。該高分子電解質としては、イオン伝導性のポリマーを使用することができ、該イオン伝導性のポリマーとしては、スルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸等のイオン交換基を有するポリマーを挙げることができ、該ポリマーはフッ素を含んでも、含まなくてもよい。該イオン伝導性のポリマーとしては、ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー等が挙げられる。電極における高分子電解質の含浸量は、0.01 mg/cm2〜4.0 mg/cm2の範囲が好ましく、高分子電解質の含浸量が0.01 mg/cm2未満では、プロトンの伝導性が低下し、一方、4.0 mg/cm2を超えると、ガスの透過性が低下して、フラッディングが起こり易くなる。
<固体高分子型燃料電池>
次に、図1を参照しながら、本発明の固体高分子型燃料電池を詳細に説明する。図示例の固体高分子型燃料電池は、膜電極接合体(MEA)1とその両側に位置するセパレータ2とを具える。膜電極接合体(MEA)1は、固体高分子電解質膜3とその両側に位置する燃料極4A及び空気極4Bとからなり、燃料極4A及び空気極4Bの少なくとも一方には、上述の本発明の固体高分子型燃料電池用電極が用いられる。燃料極4Aでは、2H2→4H++4e-で表される反応が起こり、発生したH+は固体高分子電解質膜3を経て空気極4Bに至り、また、発生したe-は外部に取り出されて電流となる。一方、空気極4Bでは、O2+4H++4e-→2H2Oで表される反応が起こり、水が発生する。
燃料極4A及び空気極4Bは、触媒層5及び多孔質支持体(ガス拡散層)6からなり、触媒層5が固体高分子電解質膜3に接触するように配置されている。ここで、触媒層5は、上述の貴金属担持導電性材料からなり、微粒子状の貴金属が均一に担持されており、貴金属の表面積が非常に広いため、固体高分子電解質膜3と触媒層5とガスとの三相界面での電気化学反応の反応場が非常に広い。そのため、本発明の固体高分子型燃料電池は、発電効率が非常に高い。
なお、固体高分子電解質膜3としては、イオン伝導性のポリマーを使用することができ、該イオン伝導性のポリマーとしては、上記貴金属担持導電性材料に含浸させることが可能な高分子電解質として例示したものを用いることができる。また、セパレータ2としては、表面に燃料、空気及び生成した水等の流路(図示せず)が形成された通常のセパレータを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<前駆体ポリマーの作製>
硫酸 1.0 mol/Lとアニリン 0.5 mol/Lとを含む水溶液中に、作用極としてカーボンペーパー[東レ社製]を設置し、更にSUS316L製の対極を設置し、定電流法によって作用極上にポリアニリンを生成させた。なお、カーボンペーパーの大きさは、ポリアニリン生成有効寸法が5cm×5cmとなるように準備し、また、重合電流密度は、カーボンペーパーの投影面積に対し20 mA/cm2に設定し、通電量は、3.0C/cm2とした。また、重合は、室温で行った。重合終了後、得られたポリアニリンに対しカーボンペーパーごと充分に純水で洗浄を繰り返した。乾燥後に質量を測定し、ポリアニリンの生成量を求めたところ、1.0 mg/cm2であった。
<焼成炭化>
得られたポリアニリンをカーボンペーパーごと電気炉にて焼成炭化した。なお、雰囲気はアルゴンであり、昇温条件は、室温から1200℃まで3時間とし、1200℃で1時間保持して焼成炭化した。冷却後、電気炉から炭化物を取り出し質量を測定した結果、ポリアニリンの残炭率は34%であった。
<高温結晶化>
炭化したポリアニリンをカーボンペーパーごと高温電気炉にて結晶化処理を行った。なお、雰囲気はアルゴンであり、昇温条件は、室温から1200℃まで1時間、1200℃から2700℃まで2時間とし、2700℃で15分間保持して高温処理を行った。冷却後、高温電気炉から炭化物を取り出し質量を測定した結果、ポリアニリンを基準とする残炭率は27%であった。
<白金の担持>
塩化白金酸六水和物 10 gを純水 1000 mLに溶解させて得た水溶液にエタノール 100 gを加えてメッキ液を調製した。該メッキ液に、白金メッキチタン製の対極を設置し、更にカーボンペーパーと一体化した高温結晶化したポリアニリン炭化物を作用極として設置し、パルス法により電気メッキで白金を担持させた。パルス電流は作用極の投影面積に対し100 mA/cm2、オンタイム0.003秒、オフタイム0.006秒、通電量は0.3C/cm2とした。電気メッキによる白金担持終了後、得られたサンプルを純水にて充分洗浄し、乾燥後の質量を測定して白金担持量を求めたところ、0.13 mg/cm2であった。
<MEAの作製>
5cm×5cm角にカットした上記の白金担持ポリアニリン炭化物/カーボンペーパー複合体を2枚準備し、各々の白金担持ポリアニリン炭化物側に、ナフィオン溶液[ナフィオン:水:イソプロピルアルコール=5:47.5:47.5(質量比)]を刷毛にて、乾燥後のナフィオン質量が0.3 mg/cm2になるように塗布した。次に、得られたナフィオン塗布白金担持ポリアニリン炭化物/カーボンペーパー2枚で、ナフィオン112膜を挟み、熱プレスにより圧着して、膜電極接合体(MEA)を作製した。
<燃料電池の性能評価>
得られた膜電極接合体と、グラファイト製のバイポーラプレート、シリコーン製のガスケット及び金メッキ銅板の集電極を使用して燃料電池を組み立て、燃料ガスとして水素、酸化ガスとして酸素を流して充分に慣らし運転した後の性能を記録した。なお、水素の流量は0.4 L/分、水素の加湿温度は70℃、酸素の流量は0.4 L/分、酸素の加湿温度は70℃、セル温度は80℃とした。結果を表1に示す。
[比較例1]
白金の担持において、エタノールを添加していないメッキ液を使用した以外は、実施例1と同様にして電気メッキにより白金を担持し、MEAを作製し、燃料電池を組み立て、性能を評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
白金の担持において、エタノールを添加していないメッキ液を使用し、白金担持量が実施例1と同じになるように通電量を0.46C/cm2とした以外は、実施例1と同様にして電気メッキにより白金を担持し、MEAを作製し、燃料電池を組み立て、性能を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2009001845
表1中の実施例1と比較例1との比較から、アルコールを添加した水系メッキ液を使用することで、白金担持量及びメッキにおける電流効率が向上し、更に、該方法で作製した白金担持ポリアニリン炭化物を燃料電池の触媒層に使用することで、電池性能が大幅に向上することが分かる。
また、実施例1と比較例2との比較から、白金担持量が同じでも、アルコールを添加した水系メッキ液を使用して作製した白金担持ポリアニリン炭化物を使用した方が、アルコール未添加の水系メッキ液を使用して作製した白金担持ポリアニリン炭化物を使用するよりも、燃料電池の電池性能が優れることが分かる。これは、実施例1でポリアニリン炭化物上に担持された白金の粒径が、比較例2でポリアニリン炭化物上に担持された白金の粒径よりも小さいことに起因するものと考えられる。
本発明の固体高分子型燃料電池の一例の断面図である。
符号の説明
1 膜電極接合体(MEA)
2 セパレータ
3 固体高分子電解質膜
4A 燃料極
4B 空気極
5 触媒層(貴金属担持導電性材料)
6 多孔質支持体(ガス拡散層)

Claims (9)

  1. 水溶液系メッキ液を用いて電気メッキにて貴金属を導電性材料に担持させる貴金属の電気メッキ方法において、
    前記水溶液系メッキ液にアルコールを添加することを特徴とする貴金属の電気メッキ方法。
  2. 前記アルコールが、メタノール、エタノール又はそれらの混合液であることを特徴とする請求項1に記載の貴金属の電気メッキ方法。
  3. 前記導電性材料が炭素材であることを特徴とする請求項1に記載の貴金属の電気メッキ方法。
  4. 前記導電性材料が導電性ポリマーを焼成して得られた炭素材であることを特徴とする請求項3に記載の貴金属の電気メッキ方法。
  5. 前記導電性材料が3次元連続構造を有することを特徴とする請求項4に記載の貴金属の電気メッキ方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の電気メッキ方法を用いて、貴金属を導電性材料に担持してなる貴金属担持導電性材料。
  7. 前記貴金属が少なくともPtを含むことを特徴とする請求項6に記載の貴金属担持導電性材料。
  8. 請求項7に記載の貴金属担持導電性材料を用いた固体高分子型燃料電池用電極。
  9. 請求項8に記載の固体高分子型燃料電池用電極を具える固体高分子型燃料電池。
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