JP2009001664A - 高絶縁性フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シンジオタクチック構造のスチレン系重合体に、平均粒径が0.5μm以上3.0μm以下、粒径比が1.0以上1.3以下の球状架橋高分子樹脂粒子Aを0.01重量%以上1.5重量%以下含有する延伸フィルムであって、厚み方向の屈折率が1.6050以上1.6550以下であることを特徴とする高絶縁性フィルム。
【選択図】なし
Description
本発明におけるスチレン系重合体は、シンジオタクチック構造のスチレン系重合体であり、すなわち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものである。一般にタクティシティーは、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量され、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッド等によって示すことができる。本発明におけるシンジオタクチック構造のスチレン系重合体とは、ラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、あるいはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、あるいはこれらのベンゼン環の一部が水素化された重合体やこれらの混合物、またはこれらの構造単位を含む共重合体を指称する。なお、ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(プロピルスチレン)、ポリ(ブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)、ポリ(アセナフチレン)等があり、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フロオロスチレン)等がある。また、ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等がある。これらのうち特に好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、またスチレンとp−メチルスチレンとの共重合体を挙げることができる。
このようなシンジオタクチック構造のスチレン系重合体は、従来のアタクチック構造のスチレン系重合体に比べて耐熱性が格段に優れている。
本発明の高絶縁性フィルムは、平均粒径が0.5μm以上3.0μm以下、粒径比が1.0以上1.3以下である球状架橋高分子樹脂粒子Aを0.01重量%以上1.5重量%以下含有している。
本発明の高絶縁性フィルムは、球状架橋高分子樹脂粒子Aに加えて、さらに不活性微粒子Bを含有している態様が好ましい。不活性微粒子Bを含有することによって、滑り性を保持したまま絶縁破壊電圧をより高くすることができる。
本発明の高絶縁性フィルムは、基本的には前記のシンジオタクチック構造のスチレン系重合体に各種粒子等を所定割合で配合したものであるが、さらに成形性、力学物性、表面性等を改良するために他の樹脂成分を含有することができる。
さらに、本発明の目的を阻害しない範囲で、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、耐候剤等の添加剤を加えることができる。
本発明の高絶縁性フィルムは、厚み方向の屈折率が1.6050以上1.6550以下であることが必要である。厚み方向の屈折率は、好ましくは1.6100以上1.6450以下、さらに好ましくは1.6150以上1.6350以下、特に好ましくは1.6200以上1.6250以下である。厚み方向の屈折率が1.6050未満だと、絶縁破壊電圧が低くなり好ましくない。また、コンデンサーの製造工程においてフィルムが破断しやすい等取り扱い性に劣る、フィルムの厚み斑が悪く品質の安定したコンデンサーを得ることができないため好ましくない。他方、厚み方向の屈折率が1.6550を超えるようなフィルムを製造する場合は、フィルムの製造工程においてフィルム破断が多発してしまい、フィルムを得ることが非常に困難である。
本発明の高絶縁性フィルムは、一部の特別な製造方法を除けば、基本的には従来から知られている、あるいは当業界に蓄積されている方法で得ることができる。以下、本発明の高絶縁性フィルムを得るための製造方法について詳記する。
(1−1)粉体の平均粒径および粒径比
試料台上に、粉体を個々の粒子ができるだけ重ならないようにうに散在させ、金スパッター装置によりこの表面に金薄膜蒸着層を厚み200〜300Åで形成し、走査型電子顕微鏡を用いて1万〜3万倍で観察し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも100個の粒子についてその面積相当粒径(Di)、長径(Dli)および短径(Dsi)を求めた。
試料フィルム小片を走査型電子顕微鏡用試料台に固定し、日本電子(株)製スパッタリング装置(JIS−1100型イオンスパッタリング装置)を用いてフィルム表面に、0.13Paの真空下で0.25kV、1.25mAの条件でイオンエッチング処理を10分間施した。さらに、同じ装置で金スパッターを施し、走査型電子顕微鏡を用いて1万〜3万倍で観測し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも100個の粒子についてその面積相当粒径(Di)、長径(Dli)および短径(Dsi)を求めた。
粉体の相対標準偏差については前記(1−1)項、フィルム中の粒子の相対標準偏差については前記(1−2)項で求められた各々の粒子の面積相当粒径(Di)および平均粒径(D)から、下記式により求めた。
(3−1)中心線平均表面粗さ(Ra)
非接触式三次元粗さ計(小坂研究所製、ET−30HK)を用いて波長780nmの半導体レーザー、ビーム径1.6μmの光触針で測定長(Lx)1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、厚み方向拡大倍率1万倍、横方向拡大倍率200倍、走査線数100本(従って、Y方向の測定長Ly=0.2mm)の条件にてフィルム表面の突起プロファイルを測定する。その粗さ曲面をZ=f(x,y)で表わしたとき、次の式で得られる値をフィルムの中心線平均表面粗さ(Ra、単位nm)として定義する。
ピーク(Hp)の高い方から5点と谷(Hv)の低い方から5点をとり、次の式によりその平均粗さをRz(単位nm)とした。
無張力の状態で150℃の雰囲気中30分におけるフィルムの収縮率(単位%)を求めた。
ナトリウムD線(589nm)を光源としたアッベ屈折計を用いて23℃65%RHにて測定し、厚み方向の屈折率をnZとした。
JIS C 2151に示される方法に従って測定した。23℃相対湿度50%の雰囲気にて、直流耐電圧試験機を用い、上部電極は直径25mmの真鍮製円柱、下部電極は直径75mmのアルミ製円柱を使用し、100V/秒の昇圧速度で昇圧し、フィルムが破壊し短絡した時の電圧を読み取った。測定は41回実施し、大きい方の10個、小さい方の10個を除き、21個の中央値を絶縁破壊電圧(BDV)の測定値とした。
100℃、120℃での測定は熱風オーブンに電極、サンプルをセットし、耐熱コードで電源に接続し、オーブン投入後1分で昇圧を開始して測定した。
二軸延伸フィルムを100万m製膜する間に破断の発生する回数により、以下の如く判断した。
延伸性◎ : 10万mの製膜当り 破断が1回未満
延伸性○ : 10万mの製膜当り 破断が1回〜2回未満
延伸性△ : 10万mの製膜当り 破断が2回〜4回未満
延伸性× : 10万mの製膜当り 破断が4回〜8回未満
延伸性××: 10万mの製膜当り 破断が8回以上
フィルムの製造工程において、フィルムを550mm幅で6000mのロール状に100m/分の速度で巻き上げ、その巻上げ状況、ロールの外観により次のように格付けする。
A: ロールの巻き姿良好
B: ロールの表面に1個以上5個未満のピンプル(突起状盛り上がり)が見られるがほぼ良好
C: ロールの表面に5個以上のピンプル(突起状盛り上がり)が見られ、外観不良
D: ロールのフィルム端面ズレが起き、巻き姿不良
撹拌翼付きの10リットルのガラス容器に0.06重量%の水酸化ナトリウムを含む水溶液7000gを張込み、上層へポリオキシエチレンラウリルエーテル0.01重量%を含む1000gのメチルトリメトキシシランを静かに注入し、2層を形成したのち、10〜15℃でわずかに回転させながら2時間界面反応させ、球状粒子を生成させた。その後、系内の温度を70℃として約1時間熟成させ、冷却後、減圧濾過機で濾過し、水分率約40%のシリコーン樹脂粒子のケーク状物を得た。次に別のガラス容器に、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを2重量%分散させた水溶液4000gを張込み、そこへ先の反応で得られたケーク状物を全量加えスラリー化し、内温70℃、撹拌下3時間かけて表面処理を行い、冷却後、減圧濾過機で濾過処理し、ケーク状物を得た。続いて、このケーク状物を純水600gに全量加えて再度スラリー化し、常温で1時間撹拌し、その後再度減圧濾過機にて濾過処理することにより、余分の乳化剤およびシランカップリング剤が除去された水分率約40%のケーク状物を得た。最後に、このケーク状物を、100℃で15torrにて10時間減圧処理し、凝集粒子の少ない、シランカップリング剤で表面処理されたシリコーン樹脂粒子の粉末約400gを得た。
得られたシリコーン樹脂粒子の粉末は、平均粒径1.3μm、相対標準偏差0.14、粒径比1.1であった。
重量平均分子量3.0×105であり、13C−NMR測定でほぼ完全なシンジオタクチック構造であることが観察されるポリスチレンに、球状架橋高分子樹脂粒子Aとして粒径1.3μm、相対標準偏差0.14、粒径比1.1のシリコーン樹脂粒子を0.3重量%と、不活性微粒子Bとして平均粒径0.3μm、相対標準偏差0.17、粒径比1.1の球状シリカ粒子((株)日本触媒製:商品名シーホスターKE)を0.2重量%とを含有するスチレン系重合体を得た。なお、球状架橋高分子樹脂粒子Aとしては、上記で得られたシランカップリング剤で表面処理されたシリコーン樹脂粒子を用いた。
このポリマーを120℃で4時間乾燥し、押出機に供給し、290℃で溶融し、ダイスリットから押出し後キャスティングドラム上で冷却固化し、未延伸シートを作成した。
実施例1から得られたフィルムは、延伸性および巻取り性が良好で、絶縁破壊電圧が高く、コンデンサーの絶縁体として好適なものであった。
球状架橋高分子樹脂粒子A、不活性微粒子B、製膜条件およびフィルム厚みを表1に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
実施例2、3から得られたフィルムは、延伸性および巻取り性が良好で、絶縁破壊電圧が高く、コンデンサーの絶縁体として好適なものであった。
実施例4〜6から得られたフィルムは、巻取り性が良好で、絶縁破壊電圧が高く、コンデンサーの絶縁体として好適なものであった。延伸性は、実用に耐え得るものであった。
実施例7から得られたフィルムは、延伸性に劣るものの、絶縁破壊電圧が高く、コンデンサーの絶縁体として好適なものであった。
比較例1から得られたフィルムは、厚み方向の屈折率が低いために絶縁破壊電圧が低く、コンデンサーの絶縁体として不適なものであった。
厚み方向の屈折率がおおよそ1.6600であるようなフィルムを得るべく、縦方向および横方向の延伸倍率等の製膜条件を表1に示す通りとしたところ、フィルム破断が多発し、フィルムを得ることができなかった。
球状架橋高分子樹脂粒子Aを添加せず、不活性微粒子B、製膜条件およびフィルム厚みを表1に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
比較例3から得られたフィルムは、球状架橋高分子樹脂粒子Aを含有していないため、巻取り性に劣り、実用には耐え得ないものであった。
球状架橋高分子樹脂粒子Aとして粒径1.4μm、相対標準偏差0.55、粒径比1.5の炭酸カルシウム粒子を0.3重量%添加し、不活性微粒子B、製膜条件およびフィルム厚みを表1に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。なお、用いた炭酸カルシウム粒子は、シランカップリング剤による表面処理がなされていないものである。
比較例4から得られたフィルムは、球状架橋高分子樹脂粒子Aの粒径比が高すぎるため、絶縁破壊電圧が低く、コンデンサーの絶縁体として不適なものであった。
13C−NMRから求められるアイソタクチック度が97%のポロプロピレンを、250℃で溶融し、ダイスリットから押出後80℃のロール上で冷却固化し、未延伸シートとした。次いで、135℃で縦方向に4.5倍延伸し、163℃で横方向に9倍延伸した後、163℃で9秒間熱固定をし、160℃で2%弛緩してフィルム厚み3.0μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
比較例5から得られたフィルムは耐熱性が低く、高温になると絶縁破壊電圧が著しく低下するものであった。また、熱収縮率が高く、高絶縁性フィルムとして不適なものであった。
まず、フィルムの片面にアルミニウムを500Åの厚みとなるように真空蒸着した。その際、8mm幅の蒸着部分と1mm幅の非蒸着部分との繰り返しからなる、縦方向のストライプ状に蒸着した。得られた蒸着フィルムを、蒸着部分と非蒸着部分のそれぞれ幅方向の中央部でスリットし、4mm幅の蒸着部分と0.5mm幅の非蒸着部分とからなる、4.5mm幅のテープ状に巻取りリールにした。次いで、2本のリールを、非蒸着部分がそれぞれ反対側の端面となるように重ね合わせ巻回し、巻回体を得た後、150℃、1MPaで5分間プレスした。プレス後の巻回体の両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型フィルムコンデンサーを作成した。
実施例1〜7から得られたフィルムコンデンサーは、耐熱性、耐電圧特性に優れ、コンデンサーとして優れる性能を示すものであった。
Claims (7)
- シンジオタクチック構造のスチレン系重合体に、平均粒径が0.5μm以上3.0μm以下、粒径比が1.0以上1.3以下の球状架橋高分子樹脂粒子Aを0.01重量%以上1.5重量%以下含有する延伸フィルムであって、厚み方向の屈折率が1.6050以上1.6550以下であることを特徴とする高絶縁性フィルム。
- 平均粒径が0.01μm以上2.6μm以下であり、該平均粒径が球状架橋高分子樹脂粒子Aの平均粒径より0.4μm以上小さい不活性微粒子Bを0.05重量%以上2.0重量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の高絶縁性フィルム。
- 球状架橋高分子樹脂粒子Aがシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高絶縁性フィルム。
- 球状架橋高分子樹脂粒子Aがシリコーン樹脂粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 不活性微粒子Bが、粒径比が1.0以上1.3以下の球状シリカ粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- フィルム厚みが0.4μm以上6.5μm未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルムを用いたコンデンサー。
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