JP2009000014A - 反応処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】遺伝子増殖(PCR法)等のために、温度制御を高精度で行なうことができる反応処理装置を提供する。
【解決手段】複数の反応領域A1と、該反応領域ごとに設けられた複数の加熱部12と、を備え、前記加熱部は、熱源と、前記反応領域が所定の目標温度となるための加熱量情報を前記熱源に伝達する加熱制御部121と、前記熱源又は該熱源の近傍の発熱量を検出し、前記発熱量に基いて前記熱源に伝達する前記加熱量情報を修正する加熱量修正部122と、を備える反応処理装置1。
【選択図】図1
【解決手段】複数の反応領域A1と、該反応領域ごとに設けられた複数の加熱部12と、を備え、前記加熱部は、熱源と、前記反応領域が所定の目標温度となるための加熱量情報を前記熱源に伝達する加熱制御部121と、前記熱源又は該熱源の近傍の発熱量を検出し、前記発熱量に基いて前記熱源に伝達する前記加熱量情報を修正する加熱量修正部122と、を備える反応処理装置1。
【選択図】図1
Description
本発明は、反応処理装置に関する。より詳しくは、高精度の温度制御が可能な反応処理装置に関する。
温度条件に基づいて反応を制御する必要がある場合には、前記温度条件をより高精度に制御できることが望まれる。液体、固体、気体に関わらず反応を行なう反応処理装置において高精度に温度制御可能であることが望まれる。例えば、遺伝子解析等の技術分野でもこのような要請はある。
一例として、遺伝子増幅を行なうPCR法(polymerase chain reaction;ポリメラーゼ連鎖反応)を用いる場合が挙げられる。PCR法は、微量核酸の定量分析の標準的手法ともいえる。
PCR法は、「熱変性→プライマーとのアニーリング→ポリメラーゼ伸長反応」という増幅サイクルを連続的に行うことで、DNA等を数十万倍にも増幅させることができる。このようにして得られるPCR増幅産物をリアルタイムでモニタリングして前記微量核酸の定量分析を行うこともできる。
しかし、PCR法では前記増幅サイクルを正確に制御することが必要である。そのためには高精度の温度制御が必要となる。温度制御が不十分である場合には、無関係なDNA配列を増幅してしまったり、増幅が全く見られなかったりする。
このように、前記した装置等については、いずれも反応処理装置として高精度の熱制御ができることが重要となる。これに関する技術として、特許文献1や特許文献2には前記反応処理装置の温度制御に関する技術が開示されている。また、微小領域の発熱制御として半導体素子等を用いることも行なわれている。
従来の反応処理装置において半導体素子等を用いて温度制御を行なう場合であっても、以下の問題等がある。
半導体素子は一般に製造上のばらつきがあるため、各反応領域で同じ温度制御を行なった場合であっても、基板ごとに、あるいは同一基板上であっても加熱部ごとに、発熱量のばらつきが生じてしまう。その結果、反応処理装置としての高精度の温度制御が困難となってしまう。
また、半導体素子は、一般に温度によって特性が変化する性質がある。例えば、単結晶シリコンを用いたMOSトランジスタは負の温度特性を持ち、同じ電圧値を印加しても、温度が高くなると流れる電流が減少する。従って、同じ電圧値であっても温度によって発熱量が変化する結果となり、高精度の温度制御が困難であった。
そこで、本発明は、温度制御を高精度で行なうことができる反応処理装置を提供することを主目的とする。
本願発明者は、加熱を高い精度で実施するだけでなく、加熱時に発生し得る反応領域ごとの微小な温度のばらつきまでをいかにすれば解消できるか等について検討した。そして、いわゆる各ヒータユニットの熱制御発生電流による発熱量と、設定する目標温度と、の相関をリアルタイムにフィードバックすることで任意の設定温度制御を高精度に行なうことができる着想を得て、以下に述べる本発明を完成させた。
まず、本発明は、複数の反応領域と、該反応領域ごとに設けられた複数の加熱部と、を備え、前記加熱部は、熱源と、前記反応領域が所定の目標温度となるための加熱量情報を前記熱源に伝達する加熱制御部と、前記熱源又は該熱源の近傍の発熱量を検出し、前記発熱量に基いて前記熱源に伝達する前記加熱量情報を修正する加熱量修正部と、を備える反応処理装置を提供する。
前記反応領域が所定の目標温度となるための加熱量情報を前記加熱制御部により熱源に伝達することで、熱源が発熱して熱加熱が実行される。そして、熱源の熱加熱実施により生じる発熱量を加熱量情報にフィードバックすることでより正確な加熱を行なうことができる。その結果、より高精度の温度制御が可能となる。なお、前記発熱量の検出とは、実際温度を直接測定することに限らず、温度と他の要素(例えば、電気的信号)との相関関係等に基いて検出してもよい。
次に、本発明は、前記加熱制御部は、前記複数の前記反応領域について全体制御し、前記加熱量修正部は、それぞれの前記反応領域を個別制御する反応処理装置を提供する。
前記加熱制御部によって前記反応領域全体について全体制御し、前記反応領域ごとに設けた加熱量修正部によって前記反応領域ごとの加熱量情報を修正することで個別制御できる。
続いて、本発明は、前記熱源は、電気的信号を与えられることで発熱する発熱抵抗体であり、前記加熱量修正部は、前記発熱抵抗体の電気的信号を測定し、あらかじめ取得した前記発熱抵抗体の電気的信号と発熱量との相関関係に基づいて、前記発熱抵抗体の発熱量を算出する反応処理装置を提供する。
発熱抵抗体は比抵抗温度特性を有するため、電気的信号を測定することで正確な発熱量を算出することができる。その結果、より精度の高い情報をフィードバックすることができる。
また、本発明は、前記加熱量修正部は、前記熱源の近傍の温度を検出して電気的信号に変換する温度検出手段を備え、前記検出した温度を前記発熱量情報として前記加熱量情報を修正する反応処理装置を提供する。
フィードバックさせる情報として、前記熱源の近傍の温度を検出することで、前記熱源の正確な発熱量を得ることができる。
更に、本発明は、前記加熱制御部は、制御素子としてペルチェ素子を用いて前記複数の前記反応領域を全体制御する反応処理装置を提供する。
反応領域の全体の温度制御をペルチェ素子を用いた前記加熱制御部で全体制御し、各反応領域ごとの温度のばらつき等を前記加熱量修正部により制御することができる。
そして、本発明は、前記加熱修正部は、前記加熱量情報を修正する制御素子として薄膜トランジスタを用いて前記加熱量情報を前記反応領域ごとに個別制御する反応処理装置を提供する。
前記加熱修正部により行われる前記反応領域ごとの個別温度制御に薄膜トランジスタを用いることで、前記核反応領域を個別かつ高精度の温度制御できる。
そして、本発明は、前記反応領域は遺伝子増幅反応を行ない、前記加熱制御部は前記遺伝子増幅反応の加熱サイクルに基いて加熱制御を行なうPCR装置とすることができる。
PCR装置とすることで、遺伝子増幅反応の加熱サイクルを前記加熱制御部により制御するとともに、反応領域ごとの温度制御を前記加熱量修正部により行なうこともできる。特にPCR装置では、遺伝子増幅反応を行なうための加熱サイクル(例えば、熱変性→アニーリング→伸長反応)を所定回数繰り返す必要がある。その加熱サイクルを加熱制御部にて全体制御し、各反応領域の加熱量の補正フィードバックを加熱量修正部にて行なうことができる。その結果、前記反応領域を個別かつ高精度に温度制御することができる。
また、本発明は、前記反応領域に所定波長の励起光を照射する光学手段と、前記励起光照射により発生する蛍光を検出する蛍光検出部と、を備えるPCR装置とすることができる。
前記光学手段と蛍光検出部を備えることで、前記遺伝子増幅反応をリアルタイムに解析することができる。
まず、本発明は、複数の反応領域と、該反応領域ごとに設けられた複数の加熱部と、を備え、前記加熱部は、熱源と、前記反応領域が所定の目標温度となるための加熱量情報を前記熱源に伝達する加熱制御部と、前記熱源又は該熱源の近傍の発熱量を検出し、前記発熱量に基いて前記熱源に伝達する前記加熱量情報を修正する加熱量修正部と、を備える反応処理装置を提供する。
前記反応領域が所定の目標温度となるための加熱量情報を前記加熱制御部により熱源に伝達することで、熱源が発熱して熱加熱が実行される。そして、熱源の熱加熱実施により生じる発熱量を加熱量情報にフィードバックすることでより正確な加熱を行なうことができる。その結果、より高精度の温度制御が可能となる。なお、前記発熱量の検出とは、実際温度を直接測定することに限らず、温度と他の要素(例えば、電気的信号)との相関関係等に基いて検出してもよい。
次に、本発明は、前記加熱制御部は、前記複数の前記反応領域について全体制御し、前記加熱量修正部は、それぞれの前記反応領域を個別制御する反応処理装置を提供する。
前記加熱制御部によって前記反応領域全体について全体制御し、前記反応領域ごとに設けた加熱量修正部によって前記反応領域ごとの加熱量情報を修正することで個別制御できる。
続いて、本発明は、前記熱源は、電気的信号を与えられることで発熱する発熱抵抗体であり、前記加熱量修正部は、前記発熱抵抗体の電気的信号を測定し、あらかじめ取得した前記発熱抵抗体の電気的信号と発熱量との相関関係に基づいて、前記発熱抵抗体の発熱量を算出する反応処理装置を提供する。
発熱抵抗体は比抵抗温度特性を有するため、電気的信号を測定することで正確な発熱量を算出することができる。その結果、より精度の高い情報をフィードバックすることができる。
また、本発明は、前記加熱量修正部は、前記熱源の近傍の温度を検出して電気的信号に変換する温度検出手段を備え、前記検出した温度を前記発熱量情報として前記加熱量情報を修正する反応処理装置を提供する。
フィードバックさせる情報として、前記熱源の近傍の温度を検出することで、前記熱源の正確な発熱量を得ることができる。
更に、本発明は、前記加熱制御部は、制御素子としてペルチェ素子を用いて前記複数の前記反応領域を全体制御する反応処理装置を提供する。
反応領域の全体の温度制御をペルチェ素子を用いた前記加熱制御部で全体制御し、各反応領域ごとの温度のばらつき等を前記加熱量修正部により制御することができる。
そして、本発明は、前記加熱修正部は、前記加熱量情報を修正する制御素子として薄膜トランジスタを用いて前記加熱量情報を前記反応領域ごとに個別制御する反応処理装置を提供する。
前記加熱修正部により行われる前記反応領域ごとの個別温度制御に薄膜トランジスタを用いることで、前記核反応領域を個別かつ高精度の温度制御できる。
そして、本発明は、前記反応領域は遺伝子増幅反応を行ない、前記加熱制御部は前記遺伝子増幅反応の加熱サイクルに基いて加熱制御を行なうPCR装置とすることができる。
PCR装置とすることで、遺伝子増幅反応の加熱サイクルを前記加熱制御部により制御するとともに、反応領域ごとの温度制御を前記加熱量修正部により行なうこともできる。特にPCR装置では、遺伝子増幅反応を行なうための加熱サイクル(例えば、熱変性→アニーリング→伸長反応)を所定回数繰り返す必要がある。その加熱サイクルを加熱制御部にて全体制御し、各反応領域の加熱量の補正フィードバックを加熱量修正部にて行なうことができる。その結果、前記反応領域を個別かつ高精度に温度制御することができる。
また、本発明は、前記反応領域に所定波長の励起光を照射する光学手段と、前記励起光照射により発生する蛍光を検出する蛍光検出部と、を備えるPCR装置とすることができる。
前記光学手段と蛍光検出部を備えることで、前記遺伝子増幅反応をリアルタイムに解析することができる。
本発明に係る反応処理装置によれば、高精度かつ個別の温度制御を行うことができる。
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る反応処理装置の好適な実施形態について説明する。なお、添付図面に示された各実施形態は、本発明に係わる代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
図1は、本発明に係る反応処理装置の一実施形態を側面視した概念図である。以下に使用する図面では、説明の便宜上、装置の構成を簡素化して示している。
図1中の符号1は、本発明に係る反応処理装置を示している。この反応処理装置のサイズや層構造等は、目的に応じて適宜選択可能であり、反応処理装置1の形態構成についても本発明の目的に沿う範囲で設計又は変更可能である。
反応処理装置1は、複数の反応領域A1を有するウェル基板11と、前記反応領域A1を加熱する加熱部12と、を備えている。
前記反応領域A1では、所定の反応をそれぞれの反応領域ごとに行なうことができる。前記反応領域A1は、複数の反応を行なうことができるため、例えば、反応条件を変化させて網羅的に解析することもできる。コンビナトリアルケミストリー等にも応用できる。
前記加熱部12は、それぞれの反応領域A1ごとに設けられているため、個別に温度制御することができる。そして、前記加熱部12は、加熱制御部121と加熱量修正部122とを備えている。前記加熱制御部121では、各反応領域A1の指標とする目標温度となるように制御することができる。
なお、前記加熱制御部121は、必ずしも前記反応領域A1に対して1ずつ設ける必要はない。即ち、加熱制御部121については、反応処理装置1に対して1つを設けておき、前記反応領域A1全体を全体制御してもよい。例えば、前記複数の反応領域A1全体を同じ加熱スケジュールで行なう場合等では、前記加熱制御部121で全体制御し、各反応領域A1の個々の温度のばらつきを前記加熱修正部122によって修正することもできる。
また、複数の反応領域A1全体の基本目標温度を設定し、加熱制御部121によって前記基本目標温度となるように全体制御し、反応領域A1ごとに設けられた加熱量修正部122によって各反応領域A1の個別目標温度となるように加熱量情報を修正させることもできる。勿論、前記基本目標温度と前記目標温度が同じ温度となるように設定することも可能である。
そして、前記加熱量修正部122では、前記反応領域A1ごとに設けられた熱源又はこの熱源近傍の発熱量を検出して、前記発熱量に基いて前記熱源に伝達する前記加熱量情報を修正することもできる。その結果、各反応領域A1ごとの温度のばらつきを考慮して熱加熱を行なうことができる。この実際の温度とは、前記熱源の実際温度でもよいし、前記熱源の近傍の実際温度でもよい。
従来では、反応処理装置の温度を制御する目的で、例えば、半導体素子等を用いている。しかし、半導体素子は製造上のばらつき等が生じることが多い。従って、複数の反応領域を備えた反応処理装置では、基板ごとに、あるいは同一基板上であっても加熱部(ヒータユニット)ごとに発熱量のばらつきが生じてしまう。
これに対して、本発明では、前記加熱制御部121だけでなく前記加熱量修正部122も設けることで、各反応領域A1について個別かつ高精度に温度制御することができる。
図2は、本発明における温度制御の一例を説明するための概念図である。以下、温度制御について図2を参照しながら説明する。
図2では、反応前の初期温度T0(例えば、室温)の状態から、第1の目標温度T1で一定時間反応させ、その後、反応領域A1の1つは第2の個別目標温度T2で、反応領域A1の別の1つは第2の個別目標温度T3でそれぞれ反応させる場合を例示している。
まず加熱制御部121では、初期温度T0から第1の目標温度T1まで昇温させるように目標温度T1を設定して、熱源に発熱量情報を伝達し加熱させる。しかし、これだけであれば、反応領域A1が正確な目標温度T1を維持することができず、温度のばらつき等が生じる場合もある。この場合、各反応領域ごとの熱源又はこの熱源の近傍の実際温度t1を発熱量として検出する。そして、第1の目標温度T1と実際温度t1との温度のずれを修正すべく、前記発熱量情報に基いて加熱すべき加熱量を修正する。これにより、各反応領域A1を第1の目標温度T1に定温させることができる。
続いて、反応領域A1のうちの1つを個別目標温度T2とし、別の1つを個別目標温度T3とする。この場合、加熱制御部121の基本目標温度をT1´とし、前記基本目標温度T1´から各反応領域A1の個別目標温度T2,T3となるように加熱量を修正できる。
この場合、各反応領域A1に設けられた前記加熱量修正部122により、各熱源又はそれぞれの熱源の近傍の実際温度t2,t3の発熱量を検出し、これに基いて加熱すべき加熱量情報を修正する。その結果、それぞれの個別目標温度T2,T3となるように定温させることができる。このように、本発明では、前記反応領域A1ごとに目標温度を変えて設定することもできる。
特に、前記加熱量修正部122では、発熱量情報をリアルタイムに検出し、かつリアルタイムに加熱量情報として修正を行なうことで、熱加熱についての高精度のフィードバック補正を行なうことができる。
本発明では、前記複数の反応領域A1について全体制御を行なう制御素子を反応処理装置1に対して1つ設けた加熱制御部121とし、前記反応領域A1ごとに制御素子を設けた加熱量修正部122とする構成とできる。例えば、加熱制御部121の制御素子としてペルチェ素子等を用いて全体制御を行ない、加熱量修正部の制御素子として薄膜トランジスタ等を用いて個別制御を行なうことで、加熱系の電流制御を高精度に実現することができる。
このように、本発明によれば、個別かつ高精度に熱制御できる反応処理装置1とすることができる。この反応処理装置は、精密な熱制御を要する反応に用いる装置として、幅広い用途に用いることができる。そのなかでも、例えば、遺伝子増幅反応等を行なうPCR装置として好適に使用することができる。
従来のPCR装置では、サーマルサイクラー等の温度制御が確かに行なわれているが、グラディエント機構であるため、各サンプルごとの個別の温度制御は困難である。また、遺伝子増幅反応の温度制御も個別に行なうことができない。その結果、各サンプルの遺伝子増幅量を一定に増幅させることができない等といった問題が顕著であった。
図3は、本発明に係る反応処理装置をPCR装置とした第1実施形態を側面視した概念図である。以下に使用する図面では、説明の便宜上、装置の構成等については簡素化して示している。
図3中の符号2は、本発明に係るPCR装置を示している。このPCR装置2のサイズや層構造は、目的に応じて適宜選定可能であり、PCR装置2の形態構成についても本発明の目的に沿う範囲で設計又は変更可能である。
PCR装置2は、複数の反応領域A2を有するウェル基板21と、光源22と、該光源22より発せられた励起光L1,L2を導く励起光走査板23とを備えている。そして、フィルター24と、蛍光L3を検出する蛍光検出部25と、前記反応領域A2を加熱する加熱部26と、が測定基板27に設けられている。
PCR装置2では、光源22より発せられた励起光L1が、励起光走査板23を経て、励起光L2として各反応領域A2に照射される。そして、反応領域A2内から発せられた蛍光L3は蛍光検出部25により検出・測定される。
PCR装置2では、加熱部26を反応領域A2ごとに設けている。前記加熱部26によって前記反応領域A2を加熱することができるが、前記反応領域A2が所定の目標温度となるための加熱量情報を前記熱源に伝達する加熱制御部と、熱源の温度又は熱源近傍の温度を発熱量として検出し、前記発熱量に基いて前記加熱量情報を修正する加熱量制御部を備えている。加熱量制御部で加熱量について補正フィードバックを行なうことで、各々の反応領域A2を個別に、かつ高精度に温度制御することができる。その結果、遺伝子発現量を高精度に解析することができる。
そして、本発明のPCR装置2でも、前記加熱制御部として、目標温度を制御するための制御素子としてペルチェ素子28を用いて各反応領域A2の加熱サイクルを全体制御することができる。更に、前記加熱量修正部では、前記加熱量情報を修正する制御素子として薄膜トランジスタを用いることが望ましい。これにより、遺伝子増幅反応における加熱サイクルをペルチェ素子を用いて全体制御し、薄膜トランジスタを用いて個別制御できる。より具体的な回路構成等は後述する。
例えば、前記加熱制御部の制御素子としてペルチェ素子28をPCR装置2全体に対して1つ設け、前記反応領域A2ごとに前記加熱量修正部を設け、その制御素子として薄膜トランジスタを反応領域A2の設置数だけ設ける構成が可能である。このような構成とすることで、デバイスの小型化に資することができ、より多数の反応領域A1をウェル基板21に形成することができる。
更に、例えば、反応領域A2の1つを42℃に、別の1つを41℃に制御すること等も可能である。前記加熱制御部によって反応領域A2全体を40℃となるように基本目標温度を設定して加熱を実施する。そして、40℃から+2℃、あるいは+1℃となるように加熱量修正部によって制御する。このように、前記反応領域A2ごとに異なる個別目標温度となるように制御することもできる。
複数の反応領域A2全体の基本目標温度(前記の場合であれば、例えば40℃)を設定し、加熱制御部によって前記基本目標温度となるように反応領域A1全体を制御し、反応領域A2ごとに設けられた加熱量修正部によって各反応領域A2の個別目標温度(前記の場合であれば、例えば41℃、42℃)となるように加熱量情報を個別に修正できる。勿論、前記基本目標温度と前記個別目標温度が同じ温度となるように設定することも可能である(前記の場合であれば、例えば41℃や42℃に設定した反応領域A2ごとの温度を、40℃とすることもできる。)。
従って、PCR反応であれば、「熱変性→アニーリング→伸長反応」からなる加熱サイクルを行なう場合、前記加熱制御部によって加熱サイクルの目標温度となるように全体制御し、反応領域A2ごとの温度のばらつきを加熱量修正部によって個別制御することも可能である。例えば、アニーリング温度55℃となるように各反応領域A1を制御したい場合、加熱制御部の目標温度を55℃としておき、各反応領域A1の加熱量修正部によって55℃からの温度のずれを個別に修正することができる。
ウェル基板21は、複数の反応領域(ウェル)A2を備えている。この反応領域A2で所定の遺伝子増幅反応等を行う。例えば、このウェル基板21は、低蛍光発光プラスチック材料やガラスで形成し、人の遺伝子数に匹敵する数の反応領域A2をマトリクス状に配置することができる。
本発明では、PCR反応のための反応領域(ウェル)A2はマイクロ空間であることが望ましい。例えば、ウェルを300μm×300μm×300μm(約30nL容量)とし、約4万個のウェルを並べるとすると、約6cm角の面積を有するデバイスとなる。この場合、反応領域A2の設置数が多くなるが、反応領域A2の全体制御をPCR装置2に対して1つの加熱制御部(例えば、制御素子としてペルチェ素子28を用いる場合)で行なう場合は、回路構成等も簡便ですむため好適である。
ここで、個々の反応領域A2の形状は特に限定されず、反応溶液を保持できる形状であれば、どのような形状でもよい。励起光L1,L2を照射・導入する光路や、蛍光L3を検出する光路等を考慮して適宜好適な形状を選択することができる。PCR装置2では、反応領域A2内で前記蛍光L3を反射させるため、反応領域A2は曲面部分を有している。
光散乱や外光の影響による検出感度の低下を抑制するために、反応領域A2は、遮光する材質(例えば、ダイヤモンドライクカーボン等)にてコーティングされていることが望ましい。
本発明では、前記複数の反応領域A2全てに特定波長の励起光を照射可能な光学手段として、光源22や、励起光L1を各反応領域A2に導入するための励起光走査板23を用いることができる。
光源22は、特定波長の光を発光するものであればよく、その種類は特に限定されないが、好適には、白色もしくは単色の発光ダイオード(LED)を用いることが望ましい。発光ダイオードを用いることで、不要な紫外線や赤外線を含まない光を簡便に得ることができる。
本発明では、光源22の設置場所や光源数については特に限定されない。図示はしないが、各反応領域A2に対応するように光源22を複数設け、各光源22が対応する各反応領域A2に向かって励起光L1,L2を直接照射する構造としてもよい。これにより各反応領域A2を光源22で直接照射できるため、励起光量をより多く採取でき、かつ励起光L1,L2の光量を個別に制御することができ、各反応領域A2に均一に励起光L1,L2を照射できる。
励起光走査板23は、光源22から発せられる励起光L1をウェル基板21内の各反応領域A2に導くものである。前記励起光走査板23内部のスペーサ231に光源22から発せられる励起光L1が導入される。そして、前記励起光走査板23の底部には反射膜232が設けられており、ウェル基板21へ励起光L2を導入することができる。これにより、各反応領域A2内の反応液中の蛍光物質を均一な光量で励起させることができる。前記反射膜232の材料等については特に限定されないが、好適には、ダイクロックミラーを用いることが望ましい。
また、本発明では、励起光走査板23の上部に、前記励起光L1,L2の波長光のみを透過するフィルター233を設けることが望ましい。これにより、光源22から発せられる光から励起光L2を効率よく取り出し、反応領域A2へ導くことができる。このフィルター233としては、例えば偏光フィルター等を用いることができる。
反応領域A2に照射された励起光L2は、反応領域A2内の反応液中のプローブの蛍光物質等に照射されることで蛍光L3を発する。この蛍光L3は反応領域A2内の壁面で反射して、反応領域A2下方に設けられた蛍光検出部25で検出・測定される。
また、本発明では、特定波長の光を取り出すことができるように、反応領域A2と蛍光検出部25との間にもフィルター24を配置できる。前記フィルター24は特定波長の光(蛍光L3等)を取り出すことができればよく、その材料は限定されないが、例えば、ダイクロイックミラーを用いることができる。
蛍光検出部25は、反応領域A2に照射された励起光L2に応答して、インターカレートしたプローブ中の蛍光色素が励起することで発せられる蛍光を検出・測定する。
そして、前記蛍光検出部25は、検出した蛍光量を電気的信号(電流あるいは電圧)に変換し、その物理変動量がDNA増幅信号との相関関係に基づいて比較算出するように設計することもできる。このような対応テーブルを用いて検出することで、より高精度の光学検出系とすることができる。
更に、前記蛍光検出部25の検出媒体と、前記加熱部26の前記温度検出手段の検出媒体とを、加熱制御素子回路内、あるいは反応領域の周縁に配置することにもできる。このような構成とすることで、光学系・熱制御系等を一括制御できたり、デバイスの小型化に寄与することができる。
PCR装置2では、加熱部26を各反応領域A2にそれぞれ設けている。前記加熱部26は温度制御機構を備えており、これにより前記加熱部26の反応領域A2の温度制御を行う。これにより、例えば、PCRサイクルを行う場合、熱変性→アニーリング→伸長反応のステップについてより高精度の温度制御を行うことができる。
図4は、本発明に係る反応処理装置をPCR装置とした第2実施形態を側面視した概念図である。以下、図3に示す形態との相違点を中心に説明し、共通する部分についてはその説明を割愛する。
このPCR装置3は、反応領域(ウェル)A2ごとに蛍光検出部35や加熱部36を測定基板37上に備えている点では、第1の実施形態と共通する。しかし、励起光L2をウェル基板31の上方から照射して、反応領域A3内を透過した蛍光L3を検出する点等で相違する。
PCR装置3では、光源34から発せられる励起光L1が、励起光走査板33によって反応領域A3に導かれる。励起光走査板33では、スペーサ331を励起光L1が通過し、反射膜332とフィルター333によりウェル基板31に励起光L2が導入される。
そして、前記励起光L2は、反応領域A3内の反応液中のプローブの蛍光物質等に照射されることで蛍光L3を発する。この蛍光L3は、反応領域A3の下方に設けられた蛍光検出部35で検出・測定される。
また、反応領域A3下方に設けられた加熱部36に前記反応領域A1への加熱は行われ、ペルチェ素子38等によって前記反応領域A3の加熱サイクルについて全体制御することができる。
一般的なPCR装置では、「熱変性→アニーリング→伸長反応」からなるサイクルを30サイクル程度行なうために25〜30分の反応時間を要する。その際、約2℃/秒の温度制御を行っている。これに対して、本発明のPCR装置では、20℃以上/秒の温度制御が可能であるため、1サイクルあたり40秒程度の時間短縮が可能となり、30サイクル全体ではおよそ25分以下の反応時間が達成できる。
また、プライマーの設計に応じて、アニーリング時間、伸長反応時間をコントロールすることができるため、増幅率を一定倍率(例えば2倍等)に揃えることができるため、遺伝子発現量の検出精度を向上させることができる。
このように本発明では、前記熱源は、電気的信号を与えられることで発熱する発熱抵抗体を用いることが望ましい。更に、本発明は、加熱制御部は、予め得られた前記発熱抵抗体の電気的信号と発熱量との相関関係に基いて、前記実際温度を検出することができる。
以下、本発明に係る反応処理装置における熱加熱系について実現可能な具体例を中心に説明する。図5は、本発明に係る反応処理装置の加熱部の回路構成の一例を示す回路図である。
図5に示す回路は、各反応領域A1に温度検出手段とヒータ部とを設けた回路構成である。前記温度検出手段は、ダイオード特性を有する素子を用いている。前記ヒータ部は、発熱抵抗体を用いている。
各熱源の近傍に温度検出用ダイオードを配置することでリアルタイムに制御発生熱量を検出して、目標温度とするための必要熱量との関係を検証するし、各熱源の加熱量についてリアルタイムにフィードバック補正を行なう。
本発明では、前記温度検出手段において前記実際温度を検出する媒体は、熱源の加熱量を制御する回路内に配置する構成であることが望ましい。これによって、煩雑な製造工程を省略できるとともに、デバイスとしての小型化も可能となる。また、本発明では、前記温度検出手段に用いる検出媒体と、熱源の加熱量を制御する制御媒体とを保護層を介して複数層とする構成としてもよい。
図5では、温度検出手段により検出された温度情報はADC(アナログ−デジタル−コンバーター)に出力される。そして、この情報に基づいて、各反応領域A1に対応して設けられたCPUによって演算処理されることで、各反応領域A1の適切な加熱量が決定され、その加熱量情報が各熱源へと伝達される。なお、この温度検出手段は熱源やその近傍に設けることができる。
発熱抵抗体としては、例えば、白金(Pt)、モリブテン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、炭化珪素、モリブデンシリサイド、ニッケル−クロム合金、鉄−クロム−アルミニウム合金等を用いることができる。また、薄膜トランジスタ等によりスイッチング制御機能を付与してもよい。
前記温度検出手段の検出媒体としてダイオード特性を有する素子を用いることができるが、好適には、薄膜トランジスタ素子やEL素子等を用いることが望ましい。前記薄膜トランジスタの種類については、特に限定されず、例えば、ポリ珪素や、α−珪素等のタイプを適宜使用できる。
このようにダイオード特性を有する薄膜トランジスタやEL素子等は、温度に応じて一定電圧における通電電流値、又は一定電流における駆動電圧が変動する特性を有する。例えば、図6に示すような相関関係がある。一定電圧V1を印加した際に、実際の温度が30℃である場合には通電電流値I1を検出する。実際の温度が45℃の場合には通電電流値I2を検出する。実際の温度が60℃の場合には通電電流値I3を検出する。同様に、電流を一定値として駆動電圧を測定する場合には、実際に温度に応じて変動する電圧値を検出できる。
温度制御は、温度制御媒体(薄膜トランジスタ等)に印加する電圧をコントロールして、ドレイン(d)−ソース(s)間の電流値を可変としてもよいし、ドレイン(d)−ソース(s)間の電流を定電流電源としてコントロールさせてもよい。また、制御素子として薄膜トランジスタを用いた場合には、薄膜トランジスタのスイッチング機能をも利用して、各反応領域A1の温度制御を個別に行なうこともできる。
このように、温度検出媒体を用いて、各加熱部の熱制御発生電流による発熱量と目標温度との相関をリアルタイムに補正フィードバックしながら加熱することもできる。これにより高精度の温度制御をリアルタイムに行うことができる。
なお、図5は、温度検出手段を設けた場合の一例であるが、本発明では、温度検出手段を設けなくても良い。即ち、熱源又は熱源近傍の実際温度を直接測定せずに、前記発熱抵抗体の発熱量と電気的信号(例えば、電流値)との相関関係を用いたオープンループ制御とすることもできる。
図7は、前記ドレイン(d)−ソース(s)間の電流値Idsと、温度(発熱量)との相関関係を示す一例である。この相関関係を対応テーブル等として制御媒体に予め記憶させておくことで、この対応テーブルに基いて温度情報を検出することができる。
加熱部に関する回路構成としては、熱源と、前記加熱部を選択する走査線と、加熱量情報を前記熱源に伝達するデータ線と、前記データ線から伝達される前記加熱量情報を取得する書き込み部と、前記走査線が非選択となった後も加熱量情報を記憶しておく保持部と、前記加熱量情報に基いて前記熱源の発熱を制御する発熱制御部と、を備える構成とすることができる。以下、これに関する構成を中心に説明する。
図8は本発明に係る反応処理装置の一実施形態に含まれる加熱部の回路構成を示す回路図である。図9は、図8の回路動作の一状態を示す回路図である。図10は、図8の回路動作の別の一状態を示す回路図である。
図8のトランジスタT1は、Nチャネル絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(以下、単にトランジスタということがある)である。符号SWは、スイッチをそれぞれ示している。また、符号gはゲートを、符号dはドレインを、符号sはソースを示している。符号Csはコンデンサを示している。
駆動電流は、電源電位VDDと接地電位GND間を、トランジスタT1を介して流れる。そして、トランジスタT1とスイッチSW3の抵抗成分によって発生するジュール熱を熱源として使用することができる。トランジスタT1をNチャネルとしたのは一例であり、本発明ではPチャネルのトランジスタも適宜使用することができる。
そして、データ線から伝達される加熱量情報は信号電流であり、この信号電流を電圧レベルに変換する変換部を設け、この変換部によって変換された電圧レベルを前記保持部に一旦保持させる。そして、発熱制御部において前記保持された電圧レベルを電流レベル変換することで熱源の発熱を制御する構成であることが望ましい。図8の回路の動作について、図9、図10を参照しながら説明する。
図9は、加熱部回路に電流レベルの形の発熱量情報(即ち、信号電流)を書き込む動作を示している。この書き込み動作においては、スイッチSW1,SW2がオン状態であり、スイッチSW3がオフ状態である。
トランジスタT1には、ドレインdとゲートgがスイッチSW2によって短絡された状態であり信号電流Isigが流れる(図9参照)。その結果、信号電流Isigの値に応じたゲート・ソース間の信号電圧Vgsが発生する。
そして、トランジスタT1がエンハンスメント型トランジスタ(即ち、しきい値Vth>0)であれば、飽和領域で動作し、信号電流Isigと信号電圧Vgsとの間にはよく知られた下記の式(1)が成立する。
ここで、μはキャリアの移動度、COXは単位面積当たりのゲート容量、Wはチャネル幅、Lはチャネル長をそれぞれ示している。
回路が安定した時点でスイッチSW2をオフ状態とすると、ゲート・ソース間電圧VgsがコンデンサCsに保持されるので、スイッチSW1をオフ状態とすることで信号書き込み動作が完了する。
その後、任意のタイミングで、図10に示したようにスイッチSW3をオン状態とすると、電源電圧VDDから接地電位GNDに向かって電流が流れる。このとき、トランジスタT1が飽和領域で動作するように、電源電圧VDDを十分に高く、スイッチSW3のオン抵抗を十分に低く設定すれば、トランジスタT1に流れる駆動電流Idrvは、ドレイン・ソース間電圧Vdsには依存せず下記式(2)で与えられる。そして、この駆動電流Idrvは、前記信号電流Isigに一致する。
即ち、前記式(1)、(2)の右辺に表れる各パラメータは、一般に基板毎に、あるいは同一基板内であっても場所ごとにばらつくが、図9や図10に示した駆動を行なうことで、これらの各パラメータの値に関係なく、信号電流Isigと駆動電流Idrvとが一致する。
そして、前記信号電流Isigはヒータマトリクス外部の制御回路等によって、正確な値で生成させることが可能であるから、図8の加熱部回路から発生するジュール熱は、トランジスタの特性のばらつき等に影響を受けず、電源電圧VDDと信号電流Isigとの積(VDD×Isig)で決まる正確な値とすることができる。
図11は、図8に示す回路構成の変形例である回路図である。
図11に示す回路は、図8とスイッチの接続関係等が相違する。しかし、図11に示す回路は、図8に示す回路と同様に、信号書き込み時にはスイッチSW1とスイッチSW2をオン状態にし、スイッチSW3をオフ状態とする。そして、発熱動作時には、スイッチSW1とスイッチSW2をオフ状態にし、スイッチSW3をオン状態とする。従って、各動作状態における等価回路はそれぞれ図9、図10と同様であり、図11の回路も図8の回路と同様の機能を発揮することができる。
図12は、図8に示す回路構成の別の変形例である回路図である。
図12では、トランジスタT1としてPチャネルトランジスタを用いており、電流の向きが逆転している点等で図8の回路と相違する。しかし、原理的には図8の回路と共通するものであり、同様の機能を発揮することができる。
本発明において、低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(低温ポリシリコンTFT)ではP型金属酸化膜半導体(PMOS)を用いることが好適である。低温ポリシリコンTFTでは、PMOSの方が特性が安定している点で望ましい。
図13は、図8に示す回路構成の更に別の変形例である回路図である。
図13の回路では、各スイッチSW1,SW2,SW3の制御は図8の回路と共通するが、トランジスタT1のソース側から信号電流Isigを引き出す点等で相違する。しかし、ゲート・ドレイン間を短絡した状態で信号電流Isigを流し、それに応じて発生したゲート・ソース間電圧VgsをコンデンサCs4に保持させるという動作原理は、図8の回路と共通するものであり、同様の機能を発揮することができる。
そして、本発明において、前記変換部は、第1の電界効果トランジスタと、ゲートとドレインとを電気的に接続した第3の電界効果トランジスタとを備え、前記第1の電解効果トランジスタのソースと、前記第3の電解効果トランジスタのドレインとが、電気的に接続している構成であることが望ましい。この構成について、図14等を参照して説明する。
図14は、図8に示す回路構成の更に別の変形例である回路図である。図14の回路では、図8の回路構成に、トランジスタT2、スイッチSW4、コンデンサCs2を追加した点等で相違する。スイッチSW4は、スイッチSW2と同様に制御する。この回路の動作を以下に説明する。
図8の回路において、信号電流Isigは式(1)によって与えられ、駆動電流Idrvは式(2)によって与えられ、信号電流Isigと駆動電流Idrvが一致することは既に述べた。このことは、例えば、MOSトランジスタに流れる電流が、飽和領域動作においてはドレイン・ソース間電圧Vdsにはよらず、ゲート・ソース間電圧Vgsによってのみ決定されるという基本動作に沿うものである。
しかるに、現実のトランジスタでは、ドレイン・ソース間電圧Vdsが増加すると、ドレイン・ソース間電流Idsも多少増加するのが普通である。この現象は、ドレインの電位がチャネルの導電状態に影響を与えるバックゲート効果や、ドレイン端の空乏層(欠乏層)がソース側に伸びることで実効的なチャネル長Lが短くなるショートチャネル効果等が原因であると考えられる。
図8の回路を例にして説明すると、比較的小さな信号電流Isigを書き込む場合には、式(1)によって発生するゲート・ソース間電圧Vgsは比較的小さな値となり、ドレイン・ソース間電圧Vdsはゲート・ソース間電圧Vgsと等しい小さな値となる。
一方、駆動時には、駆動電流Idrvが小さいためにスイッチSW3での電圧降下が小さく、トランジスタT1のドレイン・ソース間電圧Vdsは書き込み時より大きな値となる。このように、書き込み時と駆動時でのトランジスタT1のドレイン・ソース間電圧Vdsは一般に一致しない。従って、信号電流Isigと駆動電流Idrvも厳密には一致しない。このことが、所望の発熱量が得られない原因となる場合がある。
これに対して、図14に示す回路構成を考える。例えば、トランジスタT1については、図8の回路と同様に、書き込み時と駆動時とでトランジスタT1のドレイン・ソース間電圧Vdsは一般に一致しない。しかし、例えば駆動時のドレイン・ソース間電圧Vdsが大きい場合、制御電流Isigよりも駆動電流Idrvの方が大きくはなるものの、トランジスタT2が飽和状態で動作していれば(言い換えれば、定電流源に近い動作をしていれば)、その微分抵抗は非常に大きい値となる。
これによって、駆動電流Idrvが僅かに増加しただけでもトランジスタT1のソース電位が大きく上昇する。これは、トランジスタT1のゲート・ソース間電圧Vgsを減少させ、駆動電流Idrvを減少させる方向に作用する。結果として、駆動電流Idrvは信号電流Isigに対してあまり増加することができず、信号電流Isigと駆動電流Idrvとの一致性は図8の例よりも良好になる。
図15は、図8の具体的な構成例を示す回路図である。
3個のスイッチはトランジスタT2,T3,T4で構成されている。このうちトランジスタT2がNチャネルトランジスタであり、トランジスタT3,T4がPチャネルトランジスタである。前記3個のトランジスタT2,T3,T4のゲートを共通接続して走査線とすることで、この走査線が低レベルのときに信号書き込み動作を行い、高レベルのときに駆動動作を行なうようにさせることができる。後述するように、本発明において、トランジスタT2,T3,T4の各ゲートを共通接続しない形態とすることもできるが、構造が簡易である点で図15の回路図とすることが好適である。
図16は、本発明に係る反応処理装置の一実施形態に含まれる加熱部のブロック回路図である。より詳しくは、前記加熱部(ヒータユニット)をヒータマトリクス構造とした形態である。このヒータマトリクス構造は、それぞれ複数の走査線1〜mとデータ線1〜nを有している。これらの交差部Uには、例えば、前記したヒータユニット回路が設けられている。
走査線駆動回路は、前記走査線を順次選択(即ち、低レベルに)する。これに同期してデータ線駆動回路が各データ線に信号電流を印加することで、各加熱部に対して行単位で発熱量情報を書き込むことができる。前記走査線は、前記加熱量情報を取得するタイミングを制御する。書き込み終了後は、走査線を非選択(即ち、高レベルに)することで、信号電流Isigと同じ電流値の駆動電流を各加熱部(ヒータユニット)に流し続けることができる。このようにして、前記各加熱部に所望の大きさの電流を流すことができ、その結果、所望の熱量を発生させることができる。
図17は、図15の回路構成の別の変形例である回路図である。
図17に示す回路構成はトランジスタT4a,T4bを有する点等が、図15に示す回路構成と相違する。
一般に薄膜トランジスタは製造過程等で欠陥が生じやすく、例えば、スイッチトランジスタがオフ状態において微小なリーク電流を流す不具合が確率的に発生する。図15の回路では、トランジスタT4にリーク電流が生じた場合、リーク電流によってコンデンサCsに保持された電圧が変化する。そのため、正しい発熱状態を維持することができない状況が発生する場合がある。
これに対して、図17に示す回路では、図15に用いるトランジスタT4を、直列に接続した2個のトランジスタT4a,T4bで構成しているため、一方に不具合が生じたとしても、全体としては、リーク電流を抑えることができる。同様に、3個以上のトランジスタを直列に接続することや、トランジスタT2,T3について複数のトランジスタを接続する構成とすることも可能である。
図18は、図8の回路構成の更に別の変形例である回路図である。
図18に示す回路図は、トランジスタT2の制御をトランジスタT3,T4の制御と独立させた構成例である。信号書き込み時は、書き込み走査線と駆動走査線とをともに低レベルとする。書き込み終了後(即ち、書き込み走査線を高レベルとした後)は、任意のタイミングで駆動走査線を高レベルとすることで、発熱動作させることができる。
逆に、駆動走査線を低レベルにすれば、発熱動作を簡便に停止することができるので、速やかに温度を低下させた場合等に好適である。また、発熱動作時間を調節することも可能であるので、例えば、信号電流源が小さな電流を正確に生成することが困難である場合であっても、正確な微小発熱動作をさせることができる。
図19は、図8の回路構成の更に別の変形例である回路図である。
図19では、電源電圧VDDは走査線と平行に配置されており、図8のスイッチSW3をダイオードD1で形成していること等が特徴である。信号書き込み時は前記電源電圧VDDを低レベルにすればダイオードD1がオフ状態となり、駆動時は前記電源電圧VDDを高レベルにすればダイオードD1がオン状態となるので、ダイオードD1はスイッチとして動作させることができる。従って、図19に示す回路構成は、図18に示す回路構成等とも同様の機能を有することができる。
図20は、図8の回路構成の更に別の変形例である回路図である。
図20に示す回路では、信号電流Isigを電圧の形に変換するトランジスタT1と、発熱のための電流を流すトランジスタT2とが別に設けられている点等で図8に示す回路構成と異なる。
信号書き込み時は、スイッチSW1,SW2がオン状態となり信号電流IsigをトランジスタT1に流す。このとき、下記式(3)が成立する。
また、式(3)において、各パラメータの意味は、前記式(1)に準ずるが、トランジスタT1のチャネル幅をW1とした。駆動時は、2つのスイッチSW1,SW2はオフ状態となる。一方、コンデンサCsには、書き込み動作で生じたゲート・ソース間電圧Vgsが保持されているので、トランジスタT2に流れる駆動電流Idrvについては下記式(4)が成立する。
ここで、トランジスタT2のチャネル幅はW2であり、トランジスタT1,T2は、微小な加熱部内に形成されるため、パラメータμ、COX、VthはトランジスタT1,T2について事実上等しいものと考える。また、チャネル長Lは等しい値に設計することができる。その結果、式(3),(4)により下記式(5)を導出することができる。
式(3),(4)の右辺に現れる各パラメータは一般に基板ごとに、あるいは同一基板内であっても場所ごとにばらつく場合があるが、これらのパラメータの値に関係なく、信号電流Isigと駆動電流Idrvの比は、トランジスタT2とトランジスタT1のチャネル幅の比に一致することがわかる。
この回路の特徴は、図8の回路等とは異なり、信号電流Isigと駆動電流Idrvの比を任意に調節できることにある。例えば、微小な発熱をさせたい場合、外部回路が微小な電流を発生させることが困難であれば、式(5)の右辺が小さくなるようにチャネル幅を設計すればよい。逆に、微小な信号電流Isigによって、大きな駆動電流Idrvを制御できるよう設計することも容易である。
1 反応処理装置
2,3 PCR装置
2,3 PCR装置
Claims (8)
- 複数の反応領域と、該反応領域ごとに設けられた複数の加熱部と、を備え、
前記加熱部は、
熱源と、
前記反応領域が所定の目標温度となるための加熱量情報を前記熱源に伝達する加熱制御部と、
前記熱源又は該熱源の近傍の発熱量を検出し、前記発熱量に基いて前記熱源に伝達する前記加熱量情報を修正する加熱量修正部と、
を備える反応処理装置。 - 前記加熱制御部は、前記複数の前記反応領域について全体制御し、
前記加熱量修正部は、それぞれの前記反応領域を個別制御することを特徴とする請求項1に記載の反応処理装置。 - 前記熱源は、電気的信号を与えられることで発熱する発熱抵抗体であり、
前記加熱量修正部は、前記発熱抵抗体の電気的信号を測定し、あらかじめ取得した前記発熱抵抗体の電気的信号と発熱量との相関関係に基づいて、前記発熱抵抗体の発熱量を算出することを特徴とする請求項1に記載の反応処理装置。 - 前記加熱量修正部は、前記熱源の近傍の温度を検出して電気的信号に変換する温度検出手段を備え、前記検出した温度を前記発熱量情報として前記加熱量情報を修正することを特徴とする請求項1に記載の反応処理装置。
- 前記加熱制御部は、制御素子としてペルチェ素子を用いて前記複数の前記反応領域を全体制御することを特徴とする請求項2に記載の反応処理装置。
- 前記加熱修正部は、制御素子として薄膜トランジスタを用いて前記反応領域ごとに個別制御することを特徴とする請求項2に記載の反応処理装置。
- 前記反応領域で遺伝子増幅反応を行ない、前記目標温度は前記遺伝子増幅反応の加熱サイクルに基いて決定されるPCR装置であることを特徴とする請求項1に記載の反応処理装置。
- 前記反応領域に所定波長の励起光を照射する光学手段と、
前記励起光照射により発生する蛍光を検出する蛍光検出部と、を備えることを特徴とする請求項7に記載の反応処理装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007161876A JP2009000014A (ja) | 2007-06-19 | 2007-06-19 | 反応処理装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR20150146261A (ko) * | 2014-06-23 | 2015-12-31 | 대한민국(농촌진흥청장) | 노밀린 또는 이의 약학적으로 허용 가능한 염을 포함하는 주름 개선 또는 피부 탄력 증진용 화장료 조성물 |
CN109082373A (zh) * | 2018-08-15 | 2018-12-25 | 湖南圣湘生物科技有限公司 | 生化反应加热装置及其制作方法 |
-
2007
- 2007-06-19 JP JP2007161876A patent/JP2009000014A/ja active Pending
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