JP2010041958A - 核酸増殖装置及び温度制御方法 - Google Patents

核酸増殖装置及び温度制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】増殖反応の検出精度を向上し得る核酸増殖装置及び温度制御方法を提案する。
【解決手段】核酸の増殖反応の場として基板に形成される複数の容器が収容される反応室に対して外部であって、大気に触れる位置に設けられる外部感温素子を用いて外気温を検出し、温度と、熱源素子での発熱に要する信号量とを示す一次関数の切片を、外気温に応じて決定し、該決定した切片でなる一次関数を用いて、熱源素子に与えるべき信号量を決定する。
【選択図】図7

Description

本発明は核酸増殖装置及び温度制御方法に関し、PCR (Polymerase Chain reaction) 装置に好適なものである。
従来、核酸の増殖反応の場となる複数の微小容器に対する熱源として、薄膜トランジスタを用いるようにしたリアルタイムPCR装置が本出願人により提案されている(例えば特許文献1)。
このリアルタイムPCR装置における増殖反応の検出系として、微小容器に入れられる蛍光物質の励起光を照射する光源と、該励起光によって励起される蛍光物質の蛍光を受光する受光素子とが、微小容器ごとに設けられている。
特開2003−298068公報
しかしながら、各光源には一般に製造上のばらつきがあるため、当該光源に対する制御を同一としても、このばらつきに起因して各微小容器に対する励起光量が相違する。この相違は、受光素子から微小容器での増殖反応結果として出力される信号に反映されるため、該信号に示される核酸量の信頼性が乏しいものとなってしまう。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、増殖反応の検出精度を向上し得る核酸増殖装置及び温度制御方法を提案しようとするものである。
かかる課題を解決するため本発明は、核酸増殖装置であって、核酸の増殖反応の場として基板に形成される複数の容器にそれぞれ対応付けられる熱源素子と、複数の容器が収容される反応室に対して外部の大気に触れる位置に設けられる外部感温素子と、温度と、熱源素子での発熱に要する信号量とを示す一次関数の切片を、外部感温素子から得られる外気温に応じて決定し、該切片でなる一次関数を用いて、熱源素子に与えるべき信号量を決定する決定部とをもつ。
また本発明は、温度制御方法であって、核酸の増殖反応の場として基板に形成される複数の容器が収容される反応室に対して外部であって、大気に触れる位置に設けられる外部感温素子を用いて外気温を検出する検出ステップと、温度と、熱源素子とでの発熱に要する信号量とを示す一次関数の切片を、外気温に応じて決定する外気温決定ステップと、決定ステップで決定される切片でなる一次関数を用いて、熱源素子に与えるべき信号量を決定する信号量決定ステップとを経る。
本発明では、外気温に応じた切片でなる一次関数を用いて熱源素子に与えるべき信号量を決定することにより、該外気温を基準として、使用環境に依存させずに増殖反応の場の発熱を制御することが可能となる。したがって、使用環境にかかわらず増殖反応の検出精度を維持できるので、その分だけ検出精度を向上することができる。
以下図面について、本発明を適用した一実施の形態を詳述する。
(1)リアルタイムPCR装置の構造
図1において、本実施の形態によるリアルタイムPCR装置1の構造を示す。このリアルタイムPCR装置1は、反応室11に対して、複数の基板11〜17を所定間隔で層状に配置した構造を有する。
反応基板12は、基準層となる基板であり、該基板には、核酸の増殖反応の場とされる容器(以下、これをウェルとも呼ぶ)ULが高密度に形成される。これらウェルULには、増殖対象の標的核酸及びその標的核酸の増殖に要する各種物質(プライマー、緩衝液、酵素、dNTP、蛍光色素等)が与えられる。
例えば6[cm]四方の反応基板12を用いた場合、1[μL]以下の容量でなる4万個程度のウェルULを形成することが可能となる。したがってこのリアルタイムPCR装置1は、反応室11を小型化した場合であっても、同種又は異種でなる多くの標的核酸を取り扱うことが可能となる。
発熱基板13は、反応基板12に対して下側の層として配される基板であり、該基板のうち、反応基板12と対向する面には、各ウェルULにそれぞれ対応付けて熱源素子HDが配され、これら熱源素子HDの周囲には複数の感温素子TDが配される。この熱源素子HDには例えばTFT(Thin Film Transistor)等が用いられ、感温素子TDには例えばピンダイオード等が用いられる。
このリアルタイムPCR装置1では、各ウェルULに対応する熱源素子HDが、該熱源素子HDを囲む複数の感温素子TDからセンシングされる温度に応じて個別に制御される。
これによりこのリアルタイムPCR装置1は、例えば各ウェルULに与えられる標的核酸の種が異なる等に起因して温度条件が異なる場合であっても、高密度に配される各ウェルULの温度を、増殖サイクルとして規定される変性ステージ、アニーリングステージ、伸長ステージの各ステージに要する温度を基準として高精度で調整することができる。この結果、リアルタイムPCR装置1は、温度に起因する増殖反応結果の誤り率を低減して検出精度を向上し得るようになされている。
発熱補助基板14は、発熱基板13に対して下側の層として配される基板である。この発熱補助基板14は、反応室11全体における熱を吸収又は発散することで、該反応室11を設定温度に維持する。
したがってこのリアルタイムPCR装置1は、現ステージで設定される温度から次ステージで設定すべき温度にウェルULの温度を移行させるまでの時間(温度勾配の時間)を高速化できるようになされている。ちなみに、発熱補助基板14には例えばペルチェ素子等が用いられる。
発光基板15は、反応基板12に対して上側の層として配される基板であり、該基板のうち、反応基板12と対向する面には、各ウェルULにそれぞれ対応させて、インターカレータ等の蛍光物に対する励起光を照射する光源素子LSが配される。この光源素子LSには例えばLED(Light Emitting Diode)が用いられる。
励起光透過基板16は、反応基板12と発光基板15との中間層として配される基板であり、光源素子LSから照射される励起光を透過し、該励起光以外の光を反射する。この励起光透過基板16には例えばダイクロイックミラーが用いられる。
この励起光透過基板16のうち発光基板15と対向する面には、該発光基板15の各光源素子LSの光軸に対応する位置を基準とする周囲に対して、当該光源素子LSから照射される励起光の散乱光を受光する受光素子LDBが配される。
このリアルタイムPCR装置1では、1回の増殖サイクルが終了した時点で直ちに次の増殖サイクルを開始するのではなく、図2に示すように、各回の増殖サイクルの終了時点から、光源素子LSの光量を調整するための期間(以下、これをキャリブレーション期間とも呼ぶ)CFが設けられている。そしてこのキャリブレーション期間CFごとに、各受光素子LDBで受光される散乱光量が一定となるように、各ウェルULに対応する光源素子LSの光量が個別に制御される。
これによりこのリアルタイムPCR装置1は、各光源素子LSにおける製造上のばらつきのみならず、当該光源素子LSの経時的変動があっても、各ウェルULに到達される励起光量を一定とすることができる。この結果、リアルタイムPCR装置1は、励起光によって励起される蛍光量を、各ウェルULでの核酸量自体を反映したものとして検出精度を向上し得るようになされている。
蛍光透過基板17は、発熱基板13と発熱補助基板14との中間層として配される基板であり、励起光によって励起される蛍光物の蛍光を透過し、該蛍光以外の光を反射する。また発熱補助基板14と対向する面には、各ウェルULにそれぞれ対応させて、当該ウェルで励起される蛍光を受光する受光素子LDAが配される。リアルタイムPCR装置1では、これら受光素子LDAで受光される蛍光量に応じた標的核酸量が、増殖サイクル単位で算出される。
またこのリアルタイムPCR装置1では、現在と前回のキャリブレーション期間で得られた散乱光量に差がある場合、その差を有する散乱光量を照射する光源素子LSに対応付けられるウェルULでの標的核酸量が、該差に応じて調整される。
これによりこのリアルタイムPCR装置1は、光源素子LSに経時的変動があったとしても標的核酸量を、励起光量を基準として均一化できるようになされている。
(2)温度制御ユニットの構成
次に、このリアルタイムPCR装置1における温度制御ユニットの構成について説明する。温度制御ユニットは、図3に示すように、ウェル数に対応する複数対の発熱回路20及び温度センシング回路30……発熱回路20及び温度センシング回路30と、環境温度センシング回路40と、温度制御部50とを含む構成とされる。
(2−1)発熱回路及び温度センシング回路の構成
発熱回路20〜20及び温度センシング回路30〜30は、励起光が透過可能な例えばガラス等でなる発熱基板13(図1)に設けられる。
各発熱回路20〜20はそれぞれ1つのTFT20Xを有し、これらTFT20Xは、図4に示すように、発熱基板13の一面に対して、反応基板12(図1)に形成される各ウェルにそれぞれ対応させてマトリクス状に配される。
一方、各温度センシング回路30はそれぞれ複数のピンダイオード(以下、これをピンダイオード群とも呼ぶ)30Xを有し、これらピンダイオード群30Xは、図4に示したように、各発熱回路20〜20がもつTFT20Xの周囲に一定の距離をもって所定間隔ごとに配される。
ここで、発熱回路20及び温度センシング回路30における具体的な回路構成例を挙げる。ただし、各対の発熱回路20及び温度センシング回路30……発熱回路20及び温度センシング回路30はそれぞれ同一の構成であるため、1対の発熱回路20及び温度センシング回路30に着目して説明する。
図5に示すように、発熱回路20は、熱源素子HD(図1)として機能するTFT20Xと、スイッチング素子として機能するトランジスタT1,T2,T3と、発熱制御素子として機能するコンデンサC1とを有する。
一方、温度センシング回路30は、感温素子TD(図1)として機能するピンダイオード群30Xと、スイッチング素子として機能するトランジスタT4,T5と、電圧計VPとを有する。
発熱回路20におけるトランジスタT1,T2,T3のゲートには、パルス信号PS1が温度制御部50における走査駆動部51(図3)から与えられ、温度センシング回路30におけるトランジスタT3,T4のゲートには、パルス信号PS1とは反転した関係にあるパルス信号PS2が走査駆動部51から与えられる。
例えば、パルス信号PS1が「High」状態にある場合(発熱回路20が駆動状態にある場合)、パルス信号PS2が「Low」状態にある(温度センシング回路30が非駆動状態にある)。この状態では、発熱回路20におけるトランジスタT1,T2はオン状態にあり、発熱回路20におけるトランジスタT3と、温度センシング回路30におけるトランジスタT4,T5はオフ状態にある。
この状態の場合、発熱回路20には、発熱に要する信号(以下、これを発熱制御信号とも呼ぶ)Isigが温度制御部50における制御信号送出部53(図3)から与えられる。発熱回路20では、TFT20XにおけるドレインとゲートがトランジスタT2により短絡されているため、発熱制御信号IsigはトランジスタT1を介してTFT20Xに流れる。
この結果、TFT20Xには、発熱制御信号Isigに応じたゲート・ソース間電圧が発生し、この電圧が、TFT20Xに発生させるべき熱源要素として、コンデンサC1に保持されることとなる。
TFT20Xがエンハンスメント型トランジスタ(すなわち閾値Vth>0)である場合、該TFT20Xは飽和領域で動作することになるので、TFT20Xにおけるゲート・ソース間電圧をVgsとすると、該電圧Vgsと発熱制御信号Isigとの間には、次式
Figure 2010041958
の関係が成立する。ちなみにこの(1)式における「μ」はキャリアの移動度を、「Cox」は単位面積当たりのゲート容量を、「W」はチャネルの幅を、「L」はチャネルの長さを示す記号である。
これに対して、パルス信号PS1が「Low」状態にある場合(発熱回路20が非駆動状態にある場合)、パルス信号PS2が「High」状態にある(温度センシング回路30が非駆動状態にある)。この状態における発熱回路20では、トランジスタT1,T2はオフ状態にあり、トランジスタT3がオン状態にあるため、電源電圧VDDからTFT20Xにおけるソース端のグランドに向かって電流が流れる。
電源電圧VDDからTFT20Xに与えられる電圧は、該TFT20Xが飽和領域で動作する電圧よりも高く設定される。つまり、TFT20Xが飽和領域で動作するように、該TFT20Xに対する電源電圧VDDは十分に高く、トランジスタT3のオン抵抗は十分に低く設定される。
したがって、TFT20Xに流れる電流Idrvはドレイン・ソース間電圧Vdsには依存せず、次式
Figure 2010041958
によって与えられる。
一般に、TFTでは(1)式及び(2)式の右辺に現れる各パラメータがばらつくものであるが、この発熱回路20では、TFT20Xが飽和領域で動作するので、該パラメータの値に関係なく、電流Idrvと発熱制御信号Isigとは一致することとなる。
したがって、TFT20Xでの発熱量は、該TFT20Xの特性ばらつきによらず、温度制御部50(図3)から与えられる発熱制御信号Isigの電流値と、電源電圧VDDとの積で決まる正確なものとなる。
また発熱制御信号Isigは、発熱調整部52(図3)において、その電流値を正確に可変することができるものである。したがって、この発熱回路20は、温度制御部50(図3)での電流制御によって、TFT20Xを通じてウェルに対する温度を正確に可変することが可能となる。
一方、温度センシング回路30には、パルス信号PS1が「Low」状態(発熱回路20が非駆動状態)、かつ、パルス信号PS2が「High」状態(温度センシング回路30が駆動状態)にある場合、固定値の側温制御信号Idetが温度制御部50における制御信号送出部53(図3)から与えられる。
この場合、温度センシング回路30では、側温制御信号IdetはトランジスタT4を介して直列に接続された複数のピンダイオード群30Xに流れる。この結果、これらピンダイオード群30Xには電圧が加わり、該電圧が電圧計VPによって計測されることになる。
この電圧計32における計測値は、温度制御部50(図3)によってTFT20X周囲における平均的な温度を示すパラメータとして取り込まれ、該温度制御部50(図3)において、発熱制御信号Isigの電流値を決定するために用いられる。
このようにして各対の発熱回路20及び温度センシング回路30は、温度制御部50(図2)の制御のもとで動作するようになされている。
(2−2)環境温度センシング回路の構成
一方、環境温度センシング回路40(図2)は、図6に示すように、電源電圧VDDに接続されるブリッジ回路41と、該ブリッジ回路41の後段に接続される差動増幅器42とを有する。
このブリッジ回路41を構成する4つの抵抗41A〜41Dのうち1つの抵抗41Aは感温素子とされ、例えばこのリアルタイムPCR装置1における筐体等のように、反応室11の外部における大気に触れる位置に設けられる。したがって、抵抗41Aは外気温に応じて可変する。一方、抵抗41B〜41Dは固定抵抗とされる。
この環境温度センシング回路40では、感温素子として機能する抵抗41Aの抵抗値が外気温に応じて可変すると、この可変量に応じた電圧差Vmが差動増幅器42に生じる。この結果、この環境温度センシング回路40から出力される信号は、外気温に応じた値の信号として得られることとなる。
ちなみにこの図6における抵抗R42は差動増幅器42に対するゲインを調整するための抵抗である。例えば、AD8224の差動ハイインピーダンスアンプを用いた場合、抵抗R42を100[kΩ]とすると、差動増幅器42全体としてのゲインを1.5[Ω]とすることができる。
(2−3)温度制御部の構成
他方、温度制御部50は、図3に示したように、走査駆動部51、発熱調整部52、制御信号送出部53及びA/D(Analog/Digital)変換部54を含む構成とされる。
走査駆動部51は、各発熱回路20〜20に対して、所定間隔ごとに駆動期間をもつ同位相又は異位相のパルス信号(PS1(図5))を送出する一方、各温度センシング回路30〜30に対して、対とされる発熱回路20に送出されるパルス信号とは反転した関係にあるパルス信号(PS2(図5))を送出する。これにより走査駆動部51は、各発熱回路20及び温度センシング回路30……発熱回路20及び温度センシング回路30を対ごとに循環駆動させるようになされている。
発熱調整部52には、各温度センシング回路30から、TFT20X周囲における平均的な温度(以下、これを熱源周囲平均温とも呼ぶ)を示す信号が、A/D変換部55を介してデータとして与えられる。また発熱調整部52には、環境温度センシング回路40から、外気温を示す信号が、A/D変換部55を介してデータとして与えられる。
発熱調整部52は、CPU(Central Processing Unit)、発熱調整プログラムが格納されるROM(Read Only Memory) 、該CPUのワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)を含む構成とされる。
この発熱調整部52は、発熱調整プログラムと、熱源周囲平均温及び外気温とに基づいて、各発熱回路20〜20に対する発熱制御信号Isigの電流値を決定することによって、各発熱回路20〜20におけるTFT20Xでの発熱量を調整する。
制御信号送出部53は、発熱調整部52により決定される電流値の信号(発熱制御信号Isig(図5))を生成し、これを該当する発熱回路に対して、該発熱回路が駆動対象にあるときに送出する。
また制御信号送出部53は、固定値の信号(側温制御信号Idet(図5))を、各温度センシング回路30〜30に対して駆動状態となった際にそれぞれ送出する。
(3)温度制御処理の具体的な処理内容
次に、発熱調整部52における温度制御処理の具体的な処理内容を、図7に示すフローチャートを用いて説明する。
すなわち発熱調整部52は、増殖反応を実行すべき命令が与えられた場合、この温度制御処理手順を開始し、第1のステップSP1として、外気温を検出する。具体的には、環境温度センシング回路40から、A/D変換部55を介して与えられるデータの値に比例する温度を外気温として演算により検出する。
発熱調整部52は、第2のステップSP2として、温度と、TFT20Xでの発熱に要する信号量(電流量)との比(傾き)を一定とする一次関数(以下、これを電流温度一次関数とも呼ぶ)に対する切片を、ステップSP1で検出した外気温との関係で決定する。具体的には、例えば、図8に示すように、電流温度一次関数(y=ax+b)の切片(b)が「0」となるときの外気温度を基準とし、ステップSP1で検出した外気温との差に比例する値とする。
発熱調整部52は、第3のステップSP3として、各ウェルが達すべき目標温度を、増殖サイクルのステージと、当該ウェルにおける標的核酸の種との関係でそれぞれ決定する。具体的には、各ステージに要する温度(変性ステージでは95[℃]、アニーリングステージでは55[℃]、伸長ステージでは72[℃])に対して、標的核酸の種に割り当てられる比率分を増減する。
発熱調整部52は、第4のステップSP4として、駆動対象の温度センシング回路30に対の発熱回路20での熱源周囲平均温を算出する。例えば、温度センシング回路30が駆動対象となる場合、該温度センシング回路30に対して100[μA]の側温制御信号Idet1と、10[μA]の側温制御信号Idet2とを与え、これらを与えたときの電圧計VP(図5)の計測値をΔVとすると、次式
Figure 2010041958
により発熱回路20での熱源周囲平均温を算出する。ちなみに、ΔVは、側温制御信号Idet1を与えたときの電圧値と、側温制御信号Idet2を与えたときの電圧値との差であり、また(3)式における「5.0072」はボルツマン定数である。
発熱調整部52は、第5のステップSP5として、第4のステップSP4で算出した熱源周囲平均温と、第3のステップSP3で決定した目標温度との温度差を求める。そして発熱調整部52は、この温度差に相当する電流値を、第2のステップSP2で決定した切片でなる電流温度一次関数を用いて算出する。
この結果、ステップSP3で算出対象とされた温度センシング回路30に対の発熱回路20に対して、該発熱回路20が駆動対象となったときに、その熱源周囲平均温と目標温度との温度差に応じた電流値の発熱制御信号Isig(図5)が、使用環境に依存することなく与えられることとなる。
このようにして発熱調整部52は、第4,第5のステップSP4,SP5において、発熱回路20に対の温度センシング回路30で測定した熱源周囲平均温と目標温度との温度差に応じて、発熱回路20に対する発熱量を個別に調整し得るようになされている。
発熱調整部52は、第6のステップSP6として、増殖サイクルにおける変性ステージ,アニーリングステージ又は伸長ステージへの移行タイミングであるか否かを判定する。ちなみに、移行タイミングの計測は、1回目の増殖サイクルにおける変性ステージの開始時点に同期して行われる。
ここで、移行タイミングであると判定した場合、発熱調整部52は、第7のステップSP7として、ウェルが達すべき目標温度を、その移行すべきステージに要する温度(95℃、55℃又は72℃)に対して、標的核酸の種に割り当てられる比率分を増減した温度に変更した後、次の第8のステップSP8に進む。
一方、移行タイミングではないと判定した場合、発熱調整部52は、第7のステップSP7を経ることなく、次の第8のステップSP8に進む。
発熱調整部52は、第8のステップSP8として、規定された回数分の増殖サイクルを終えたか否かを判定し、該増殖サイクルを終えたと判定するまで、上述の各ステップSP4〜SP7での処理を繰り返す。また発熱調整部52は、規定された回数分の増殖サイクルを終えたと判定した場合には、この温度制御処理手順を終了するようになされている。
(4)動作及び効果
以上の構成において、このリアルタイムPCR装置1では、反応室11(図1)の外部に対して、該リアルタイムPCR装置1が使用される大気中の温度を感温する外部感温素子(抵抗41A)が配される(図6)。
そしてこのリアルタイムPCR装置1は、温度と、TFT20X(図3)での発熱に要する信号量とを示す一次関数(電流温度一次関数)の切片を、外部感温素子(抵抗41A)から得られる外気温に応じて決定し、該切片でなる電流温度一次関数を用いて、TFT20Xに与えるべき信号量を決定する。
したがって、このリアルタイムPCR装置1は、外部感温素子(抵抗41A)から得られる外気温を基準として、使用環境に依存させずに各ウェルULの発熱を制御することが可能となる。
従来、リアルタイムPCR装置1は実験室等に据え置き型とされ、該実験室の温度を一定に管理していた。このリアルタイムPCR装置1のように、熱源素子にTFT20X等を適用すると、1[μL]以下の容量でなる4万個程度のウェルULを形成することが可能となり、この結果、リアルタイムPCR装置1全体の小型化も可能となる。そうすると、リアルタイムPCR装置1は実験室等に据え置きすることなく実験場所に搬送し、その場で使用されることが想定される。
したがって、その場の温度を検温して入力するといったこともなく、当該雰囲気中の外気温を基準として、使用環境に依存させずに各ウェルULの発熱を自動的に制御可能となるということは、使用環境にかかわらず検出精度を維持できる点で有用となる。
かかる構成に加えてこの実施の形態におけるリアルタイムPCR装置1では、各熱源素子(TFT20X)の周囲に設けられる感温素子TD(図1)を用いて、当該熱源素子での温度が温度センシング回路30(図3)でそれぞれ求められる。
そしてリアルタイムPCR装置1は、ウェルULが達すべき目標温度と、温度センシング回路30で求められた温度差と、外気温に応じた切片でなる一次関数(電流温度一次関数)とを用いて、熱源素子(TFT20X)ごとに、当該熱源素子に与えるべき信号量を決定する。
したがって、リアルタイムPCR装置1は、反応室11に対して外部での温度と、該反応室11に対して内部での温度との変動にかかわらず、各ウェルULに対する発熱量を適応的に制御することができる。この結果、このリアルタイムPCR装置1では、ウェル温度に至るまでそのウェル温度に応じた固定の電流値でなる発熱制御信号を与え続ける場合に比して、温度勾配を滑らかに(一定に)推移させることができ、急激な温度変化に起因する標的核酸等の劣化を回避することもできる。
以上の構成によれば、外部感温素子から得られる外気温を基準として、使用環境に依存させずに各ウェルULの発熱を制御できるようにしたことにより、該外部感温素子の変動による増殖反応での影響を回避することができ、この結果、増殖反応の検出精度を向上し得るリアルタイムPCR装置1を実現できる。
(5)他の実施の形態
上述の実施の形態では、発熱回路20として図3に示す回路構成が適用された。しかしながら、回路構成はこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、温度センシング回路30とは独立した回路として構成する、あるいは、電圧値の可変により加熱量を制御する回路構成とする等、種々の回路構成を適用することができる。
上述の実施の形態では、環境温度センシング回路40の構成として図6示す回路構成が適用された。しかしながら、回路構成はこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、温度センシング回路30と同じ回路構成とする等、種々の回路構成を適用することができる。
また上述の実施の形態PCR法を適用したがこれ以外の増殖反応法を適用することができる。例えば、dsDNAからRNAを得るIVT(In Vitro Transcription)法、逆転写酵素のRNase活性を用いてRNAをトリミングしてRNAを得るTRC(Transcription Reverse transcription Concerted amplification)法、RNAポリメラ−ゼを用いてRNAプロモーターが組み込まれたdsDNAからRNAを得るNASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)法、RNAとDNAのキメラ構造からなるプライマーを利用し、RNAからssDNAを得るSPIA法、DNAのループ形成を利用し、一定の温度でDNAをRNAからdsDNAを得るLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法、複数の酵素を組み合わせて一塩基多型(SNP(Single Nucleotide Polymorphism))を識別しながらdsDNAを得るSMAP(SMart Amplification Process)法、DNAとRNAが結合したキメラプライマーを用いてdsDNAを得るICAN法(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification)法などが挙げられる。
また上述の実施の形態では、リアルタイムPCR装置1として、いわゆる透過型のものが適用された。しかしながら、これに代えて、例えば、図1との対応部分に同一符号を付した図9に示すように、いわゆる反射型のリアルタイムPCR装置100を適用するようにしてもよい。
このリアルタイムPCR装置100における反応基板121には、側壁の底面がR状に形成された複数のウェルULが形成され、これらウェルULに対応させて受光素子LDAが一面に配される。各光源素子LSから照射される励起光は、励起光透過基板16を介して反応基板121に形成される対応するウェルULに導光される。各ウェルULでは、励起光によって励起される蛍光物の蛍光はウェルULの壁面で反射し、反応基板121の一面に受光素子LDAに入射する。
このような反射型のリアルタイムPCR装置100を適用した場合であっても、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、リアルタイムPCR装置1又は100の構成要素は図示した場合に限らず、適宜設計変更することができる。
本発明は、遺伝子解析、遺伝子診断又は医薬の創製などのバイオ産業上において利用可能である。
リアルタイムPCR装置の概略構造を示す断面図である。 キャリブレーション期間の説明に供する略線図である。 温度制御ユニットの構成を示す概略図である。 発熱回路及び温度センシング回路の配置状態を示す概略図である。 発熱回路及び温度センシング回路の構成を示す図である。 環境温度センシング回路の構成を示す図である。 温度制御処理手順を示すフローチャートである。 電流温度一次関数の切片の決定の説明に供する略線図である。 他の実施の形態によるリアルタイムPCR装置の概略構造を示す断面図である。
符号の説明
1,100……リアルタイムPCR装置、11……反応室、12,111……反応基板、13……発熱基板、14……発熱補助基板、15……発光基板、16……励起光透過基板、17……蛍光透過基板、20〜20……発熱回路、20X……TFT、C1……コンデンサ、30〜30……温度センシング回路、30X……ピンダイオード群、VP……電圧計、40……環境温度センシング回路、41……ブリッジ回路、41A……抵抗、42……差動増幅器、50……温度制御部、51……走査駆動部、52……発熱調整部、53……制御信号送出部、54……A/D変換部。

Claims (4)

  1. 核酸の増殖反応の場として基板に形成される複数の容器にそれぞれ対応付けられる熱源素子と、
    上記複数の容器が収容される反応室に対して外部の大気に触れる位置に設けられる外部感温素子と、
    温度と、上記熱源素子での発熱に要する信号量とを示す一次関数の切片を、上記外部感温素子から得られる外気温に応じて決定し、該切片でなる一次関数を用いて、上記熱源素子に与えるべき信号量を決定する決定部と
    を有する核酸増殖装置。
  2. 上記熱源素子ごとに、該熱源素子の周囲に設けられる感温素子と、
    各上記熱源素子での温度を、当該熱源素子の周囲に設けられる感温素子を用いて求める測温部と
    をさらに有し、
    上記決定部は、
    上記容器が達すべき目標温度と、上記測温部で求められる温度との温度差と、上記切片でなる一次関数とを用いて、上記熱源素子ごとに、当該熱源素子に与えるべき信号量を決定する、請求項1に記載の核酸増殖装置。
  3. 上記目標温度は、移行すべきフェーズに要する温度に対して標的核酸の種に割り当てられる比率分を増減した温度でなる、請求項2に記載の標的核酸装置。
  4. 核酸の増殖反応の場として基板に形成される複数の容器が収容される反応室に対して外部であって、大気に触れる位置に設けられる外部感温素子を用いて外気温を検出する検出ステップと、
    温度と、上記熱源素子での発熱に要する信号量とを示す一次関数の切片を、上記外気温に応じて決定する外気温決定ステップと、
    上記決定ステップで決定される切片でなる一次関数を用いて、上記熱源素子に与えるべき信号量を決定する信号量決定ステップと
    を有する温度制御方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109082373A (zh) * 2018-08-15 2018-12-25 湖南圣湘生物科技有限公司 生化反应加热装置及其制作方法

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