JP2008537155A - 自動化タンパク質異常折り畳みの周期的増幅によるプリオンの超高感度検出 - Google Patents

自動化タンパク質異常折り畳みの周期的増幅によるプリオンの超高感度検出 Download PDF

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Abstract

サンプル中のプリオンを検出するための、高感度の方法が提供される。これらの方法は、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト-ヤコブ病、スクレイピーまたは慢性消耗病のようなプリオン媒介伝染性海綿状脳症を診断するために用いることができる。特に、プリオンの連続自動化周期的増幅の方法が開示される。本方法は、迅速かつ高感度であり、それにより高スループット試験に理想的である。

Description

I.発明の分野
本発明は、概して、病理学、生化学および細胞生物学に関する。特に、本発明は、プリオン関連疾患の診断を含む、サンプル中の感染性タンパク質またはプリオンの検出のための方法、組成物および装置を提供する。
本出願は、2005年4月20日付け出願の米国特許仮出願第60/673,302号の優先権を主張し、その開示内容全体を参照により組み入れる。
合衆国政府は、国立衛生研究所からの認可番号AG024642-01に従う本発明の特定の権利を有し得る。
II.先行技術の説明
所謂、伝染性海綿状脳症(TSE)とも呼ばれるプリオン病は、ヒトにおけるクロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)、クールー、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー症候群(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)および散発性致死性不眠症(sFI)、並びに動物におけるスクレイピー、ウシ海綿状脳症(BSE)および慢性消耗病(CWD)を含む一群の致死的感染性神経変性疾患を含む(Collinge,2001;Prusiner,2001)。これらの疾患は、中枢神経系における、脳空胞形成、大グリア細胞症、神経細胞アポトーシスおよび、異常折り畳みプリオンタンパク質(PrPSc)の蓄積により特徴付けられる(Prusiner,1998)。
プリオン病の顕著な事象は、PrPCと名付けられた、正常タンパク質の翻訳後修飾体である、PrPScと呼ばれる異常折り畳みタンパク質の形成である(Cohen and Prusiner,1998)。両PrPイソ型を識別するための化学的相違は検出されず(Stahl et al.,1993)、変換は、正常タンパク質のα-ヘリカル含量が減少しβ-シートの量が増加するコンホメーション変化を含むようである(Pan et al.,1993)。構造変化には生化学的特性の変化を伴い:PrPCは非変性界面活性剤に可溶性であり、PrPScは不溶性であり;PrPCはプロテアーゼにより容易に消化され、一方、PrPScは部分的に抵抗性であり、その結果、N末端が切断されたフラグメントが形成される(Baldwin et al.,1995; Cohen and Prusiner,1998)。PrPの異なる種に言及するために用いられる命名法について表1を参照されたい。
(表1)
Figure 2008537155
現時点では、TSEについての正確な死ぬ前の診断はない(Brown et al.,2001;Collins et al.,2000;Ingrosso et al.,2002;Soto,2004)。ヒトの疾患では、診断は主に臨床的実験に基づき、疾患は、臨床的症状が標準的ガイドラインに適合する程度に依存して可能であるまたはあり得ると考えられる。確定診断は、海綿状変性、大グリア細胞症およびアミロイド斑の死んだ後の脳組織学的診断(Ingrosso et al.,2002;Kordek,2000を参照)によってしか成されない(しかし、これらの斑は、全てのTSEにおいて一貫して見られるのではない)。確定診断を達成するために脳生検が用いられていたが、これは侵襲的であり費用がかかるので著しく推奨できない。さらに、脳生検は、脳の健常領域から組織サンプルが取られたら、偽陰性の結果を生じることがある。
BSE疫病の深刻な結果により、欧州共同体が動かされて、感染動物を迅速に検出することを目的とした生化学的試験を評価し確認するシステムが発動された(Bird,2003;Butler,1998)。病気ウシの脳の組織学的分析による死んだ後の同定は正確である(Heim and Wilesmith,2000)。しかしながら、この手順は時間を消費し、労働集約的であり、大規模に実施することはできない。複数サンプルをわずか数時間で処理することを可能にするために新しい試験が開発され、それにより、動物の商品化を、結果が入手されるまで差し控えることができる。BSE感染ウシおよび正常ウシからの盲検サンプルを用いる9つの異なる試験を評価するために2つの運動が成された(Editorial,2001;Bird,2003;Moynagh and Schimmel,1999)。判断基準として感度および特異度を用いる5つの試験が、BSE検出のために欧州共同体により認可された。5つの試験は全て、病原性PrPScイソ型の免疫検出に基づき、4つの試験が、異常折り畳みPrPからPrPCを区別するためにタンパク質分解を用いる。しかしながら、これらの試験の現時点の感度では、疾患の症候相における(または、それに近い)脳においてしかプリオンの検出が可能にならない。
注目すべきことに、最近の研究により、輸血により感染したvCJDの最初の可能性のあるケースが報告された(Llewelyn et al.,2004)。献血後3.5年でvCJDを発症した個人により献上された赤血球の輸血を受けた後6.5年で、69歳のヒトがvCJDを発症した。輸血によるvCJDの伝染性の可能性が、同様のケースの発見により支持される場合、臨床的症候が発症する数年前に血液が感染性を有することを示しているので、潜在的vCJD疫病の劇的な結果となり得る。この可能性のために、CJD用の高感度で発症前の血液試験の開発が最優先事項である。TSE伝染の可能な経路としての輸血のさらなる証拠は、ヒツジの輸血によりBSEの伝染が生じたHoustonおよびHunterの的確な実験による(Houston et al.,2000;Hunter et al.,2002を参照)。興味深いことに、これらの実験において、輸血用の血液は、インキュベーション期間の途中にヒツジから得た。vCJDのげっ歯類モデルにおいてインキュベーション期間および症候相中の血液においても感染性が示された(Brown et al.,1999)。これらの発見は、TSEの診断のみならず、血液バンク安全性および血漿生成物産業のような幾つかの他の用途にも重要な意味を有する。
PrPScの形成は、疾患を引き起こす可能性が最も高いのみならず、最適な既知のマーカーでもある。組織および細胞中でのPrPScの検出は、広範囲にわたって、疾患とおよびTSE感染性の存在と関連している。TSE感染性を不活性化または除去する処理は、PrPScも除去する(Prusiner,1991)。ヒトまたは動物組織上でのPrPScの同定は、TSE診断に重要であると考えられている(WHO Report,1998)。PrPScの量は疾患の晩期におけるCNSにおいてしか高く(従来法により検出するのに十分)ないので、この手法への重要な限定理由の一つは感度である。しかしながら、疾患の初期段階において、特にリンパ網内系において、PrPScが全体的に分布(少量)していることが示された(Aguzzi,1997)。実際、vCJDの患者から得られた口蓋扁桃組織および虫垂におけるPrPScの存在が報告されている(Hill et al.,1997)。疾患経過におけるどの程度の初期にvCJD診断に扁桃または虫垂生検を用いることができるか知られていないが、スクレイピーに遺伝的に感受性のあるヒツジにおいて、PrPScを、扁桃組織において発症前にかつインキュベーション期間の初期に検出し得ることが示された。しかしながら、散発性CJDまたはGSSの場合には、今まで、これらの組織においてPrPScが検出されていない(Kawashima et al.,1997)。正常タンパク質は、白血球および血小板において発現され、従って、患者において、一部の血球細胞がPrPScを含み得ることが可能である(Aguzzi,1997)。これにより、CJD用の血液試験の可能性が生じるが、現在利用されているものよりもかなり高い感度のアッセイが必要となる。
血液中のプリオンを一貫してかつ再現可能に検出することができる一つの方法は、感染性バイオアッセイである(Brown et al.,1998;Brown et al.,2001;Ingrosso et al.,2002)。しかしながら、バイオアッセイは、結果を得るための時間の長さ(数か月〜数年)および種のバリア効果のために、広範囲の使用に制限されるが、これらの実験は、軟膜内のPrPScの濃度が1×10-14M〜1×10-16M(すなわち、軟膜1ml当たりPrPSc分子60,000〜6,000,000個)であると推定することを可能にする(Brown et al.,2001;Soto,2004)。
近年、PrPCを含む細胞溶解物中でプリオンがインビトロで複製する性能に基づき、より迅速なプリオン検出法が開発された。タンパク質異常折り畳み周期的増幅(PMCA)と呼ばれるこの技術は、サンプルを「非病原性馴化動物」と混合し、混合物をインキュベーションし、タンパク質を分解し、次に、繰り返しインキュベーションおよびジセグリゲーション(desegregation)工程を行うことを含む(その全てを参照により本明細書に組み入れる、WO 0204954;Saborio et al.,2001;Castilla et al.,2004およびSaa et al.,2004を参照)。次に、インビトロで増幅されたプリオンを、典型的にウエスタンブロットまたはELISAアッセイにより達成される高感度で検出することができた。この技術は、迅速な結果の著しい利点を提供したが、依然として、感染性バイオアッセイと同程度に感度がよいとは考えられなかった。さらに、このアッセイを用いて血液からプリオンを増幅することができるが、特に診断の目的で、アッセイの感度のレベルを向上させるおよび/または再現性を増加させることが望ましい。他の研究者によるこのアッセイのその後の修飾により、プリオンを連続的に複製し得ることが示されたが、診断試験のためには、依然として、複製のレベルを向上させることが必要である(Bieschke et al.2004)。したがって、現在、低レベルプリオン汚染の検出に十分な感度を有する、プリオンを検出するための迅速な方法が、なお必要とされている。
発明の概要
本発明は、「連続自動化タンパク質異常折り畳み周期的増幅」(saPMCA)と呼ばれるサンプル中のプリオンを検出するための高感度な方法を提供する。本明細書において用いられる「プリオン」という用語は、先行技術におけるその用法に一致する感染性タンパク質として定義されている。特に、プリオンは、相同性タンパク質のコンホメーションを変化させ、相同性タンパク質が、その変化されたコンホメーションにおいて、最初のプリオンと実質的に同じ活性を有するようにさせる性能を有する。
本発明の一部の方法は、サンプル中のプリオンの高感度検出を可能にするsaPMCAにより、プリオンタンパク質を増幅させることを含む。特定の態様において、プリオンを検出する方法は、プリオンを増幅し、プリオンを連続増幅し、プリオンを検出し、および、残留感染性プリオンタンパク質を不活性化することを含む。これらの方法は、以下の工程(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の一つまたは複数を含み得る:
(a)サンプルを非病原性タンパク質と混合して反応混合物を作る工程;
(b)(i)反応混合物をインキュベーションする工程、
(ii)反応混合物を破壊させる工程、
(iii)工程(b)(i)および工程(b)(ii)を1回または複数回繰り返す工程
を含む、一次増幅工程;
(c)(i)反応混合物の一部を除去し、それをさらなる非病原性タンパク質と共にインキュベーションする工程、
(ii)増幅工程(b)を繰り返す工程、
(iii)工程(c)(i)および工程(c)(ii)を1回または複数回繰り返す工程
を含む、連続増幅を行う工程;
(d)連続増幅された反応混合物中のプリオンを検出する工程;
(e)残留プリオンを不活性化する工程。
各工程を以下にさらに説明する。
(a)サンプルを非病原性タンパク質と混合して反応混合物を作る。「サンプル」という用語は、プリオンで汚染され得る材料の任意の組成物を意味する。例えば、サンプルは、TSEを有する疑いのある動物からの組織サンプルを含むことができる。本明細書において用いられる「非病原性タンパク質」という用語は、アミノ酸配列がプリオンと相同性であり、プリオンに転化することができるタンパク質を意味する。したがって、「反応混合物」は、サンプルと非病原性タンパク質とを最小限含む組成物を意味する。一部の態様において、反応混合物は、さらに、プリオン複製に好ましい「変換緩衝液」を含む。例示的な変換緩衝液は、さらなる150mM NaCl、0.5%TritonX-100およびプロテアーゼ阻害剤カクテルを含む1×リン酸緩衝食塩水(PBS)を含むことができる。
(b)一次増幅工程は、プリオン複製に好ましい条件下に反応混合物をインキュベーションすること(b)(i)、続いて、反応混合物を破壊してタンパク質塊を引き離すこと(b)(ii)を含む。本明細書において用いられる「破壊」という用語は、タンパク質を破壊し得る任意の方法を意味する。例示的な破壊方法には、溶媒での処理、pH、温度およびイオン強度の変更、または、超音波処理もしくは均質化のような物理的方法が含まれる。これらの二つの工程は、1回または複数回繰り返され、それによりプリオンが増幅される(b)(iii)。
(c)一次増幅からの反応混合物を、連続増幅に供して、プリオン複製を著しく向上させる。この工程において、反応混合物の一部をさらなる非病原性タンパク質と共にインキュベーション(c)(i)して連続増幅された反応混合物を得る。本明細書において用いられる「さらなる非病原性タンパク質」は、一次増幅(a)において用いられた非病原性タンパク質と同じ供給源からのものであってもよい、または異なる供給源からのものであってもよい。一部の態様において、連続増幅は、一次増幅の工程を1回または複数回繰り返す(c)(ii)ことを含む。さらなる態様において、連続増幅(c)(i)および(c)(ii)の工程を1回または複数回繰り返して、サンプルからのプリオンをさらに増幅させる(c)(iii)。このサンプルを逐次連続増幅に供することにより、感度の程度を著しく高め、それにより、105、104、103またはそれらから導き出される範囲、またはさらに少量のプリオンの検出が可能になる。特定の態様において、この高感度により、プリオンの存在についての最適な標準的試験であった感染バイオアッセイより高い感度でプリオンを検出することが可能になる。
(d)当業者に公知の直接的および間接的アッセイの両方により連続増幅された反応混合物中のプリオンを検出することができる。連続増幅された反応混合物中のプリオンを検出するための例示的な方法を以下に概説する。
(e)濃塩基での処理または高温での処理、例えば、2N NaOHで1時間の処理および/または134℃で18分間の高圧蒸気殺菌法のような、当業者に公知の種々の方法により残留プリオンを不活性化することができる。これにより、生体有害廃棄物としてのプリオンの危険性が除かれ、複数のサンプルを試験する際に起こり得る汚染を最少化するのにも役立つ。あるいは、saPMCAによる変換後に、例えばタンパク質分解性切断部位を加えることにより容易に不活性化することができるように、非病原性PrP基質を修飾することができる。
本発明は、前述の工程(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の一つまたは複数を含む方法のような、動物からのサンプル中のプリオンの存在を検出することにより、動物中の疾患を診断する方法も提供する。本明細書において用いられる「動物」は、プリオン病に感受性のある任意の動物を意味する。例えば、動物としては、ヒト、ウシ、ヒツジ、シカおよび(elk)のような種々の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。反応混合物中のプリオンの検出は、プリオン病のための陽性診断を示すものである。本明細書において定義される「プリオン病」は、CJD(sCJD、fCJD、iCJDおよびvCJD)、GSS、クールー、FFI、sFI、スクレイピー、BSEおよびCWDを含む疾患のような、プリオンベクターを介して伝染し得る任意の疾患である。
検出されたプリオンは、典型的にPrPScと呼ばれる異常折り畳みPrPタンパク質を含み得ると企図される。例えば、プリオンタンパク質は、哺乳動物PrPScであり得る。PrPScは、ヒツジPrPSc、ウシPrPSc、マウスPrPSc、ヒトPrPSc、シカPrPSc、または、他の動物からのPrPScを含み得る。他の態様において、プリオンは、酵母プリオン、例えば、Ure2またはSup35タンパクの異常コンホメーションを含み得る。
種々のサンプル中のプリオンを検出するために本発明の方法を用いることができると企図される。一部の態様において、サンプルは、動物からの組織サンプルである。組織サンプルは、脳または末梢器官からのサンプルを含み得る。例えば、脾臓、扁桃または他のリンパ器官からのサンプルが、プリオン感染動物中に比較的多量のプリオンを含むことが示されたので、好ましい。脳脊髄液、血液、尿、乳、涙、唾液のような他の生物学的液体を用いることができる。特定の態様において、サンプルは、血液から得ることができる。血液サンプル中のプリオンの検出は、生きている生体から迅速に得ることができる採取容易組織であるので、非常に関心対象である。したがって、本発明は、臨床前疾患の検出に十分な感度で、血液サンプルからプリオン病を検出することを可能にし、これは当技術分野において重要な進歩である。
本発明の特定の態様において、反応中のタンパク質の破壊は超音波処理による。汚染を防止するために、超音波処理装置がサンプルと直接接触しないことが好ましい。したがって、市販されているミクロソシエーターで超音波処理することが好ましい。超音波処理装置は、自動化してもよく、プログラムされた操作をすることができ、それにより、高スループットのサンプル増幅が可能になる。例えば、超音波処理は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60秒以上の、またはそれらから導き出される任意の範囲のパルスで、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の、またはそれらから導き出される任意の範囲の有効性での、超音波処理を含み得る。反応混合物を、蒸発を防止するために、密閉環境中に維持することも好ましい。例えば、サンプルが密閉プレキシガラス筐体内に維持されているときに増幅を実施してもよい。
本発明の特定の態様において、超音波処理工程のパラメーターは、増幅中に変わり得る。例えば、超音波処理時間および/または超音波処理強度が、各周期後に増加または減少し得る。特定の態様において、超音波処理パラメーター(すなわち、時間および有効性)を、周期的増幅の各工程のために予めプログラムすることができる。
本発明の特定の態様において、反応混合物のインキュベーションが生理的温度またはそれに近い温度であり得ると企図される。例えば、インキュベーションは、約25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃〜約50℃、またはそれらから導き出される任意の範囲の温度で成される。本発明の特定の用途において、インキュベーションは約37℃の温度で成される。温度を変え得ることも考えられる。例えば、反応混合物をインキュベーションする度に、温度を上昇または低下させることができる。反応混合物を破壊する前に、反応混合物の温度を変更し得ることも企図される。特定の態様において、反応混合物の温度を、プログラム可能な温度自動調節器によりモニターおよび/または制御する。例えば、自動化サーモサイクラー中にサンプルを置いて、増幅工程中の反応混合物の温度をプログラムさせることができる。
反応混合物のインキュベーションを、所定の期間に渡って行い得ることも企図される。例えば、反応混合物を、約1分〜約10時間インキュベーションすることができる。特定の態様において、インキュベーション時間は、約または少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200分、またはそこから導き出される任意の範囲の時間である。さらなる態様において、反応混合物を約30分間インキュベーションする。増幅期間中にインキュベーション時間を変更し得ることも企図される。例えば、各増幅工程後に、インキュベーション時間を、時間単位で延長または短縮することができる。さらなる態様において、インキュベーション時間をプログラムできるように破壊装置を自動化する。
本発明の一部の態様において、インキュベーションおよび破壊(工程(b)(i)および(ii))を多数回繰り返し、これらは、少なくともまたは多くとも
Figure 2008537155
、またはそれらから導き出される任意の範囲内の回数繰り返し得ることが考えられる。本発明の一部の態様において、一次増幅(工程(b))を約3日間またはそれより短時間行うことが考えられる。このことは、一部の場合に非病原性タンパク質または他の共同因子が限られた安定性を有し延長されたインキュベーションにより結果として変換率が低下するので、好ましい。特に、約75時間のインキュベーション後に、PrPC変換率が低下することが示された。
本発明の特定の態様において、工程(c)(i)および工程(c)(ii)である連続増幅を複数回数繰り返すことができる。例えば、工程(c)(i)および工程(c)(ii)を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100回、またはそれらから導き出される任意の範囲内の回数繰り返すことができる。特定の態様において、反応混合物または連続反応混合物と混合する前に、さらなる非病原性タンパク質を凍結乾燥粉末または錠剤として貯蔵する、および/または凍結状態に保ち、タンパク質の劣化を防止する。さらなる態様において、多くの連続増幅工程を自動化増幅用にプログラムすることができる。
本発明の特定の態様において、反応混合物は、さらに、サンプル、非病原性タンパク質および変換緩衝剤を含むことができる。一部の態様において、変換緩衝剤は、塩溶液および界面活性剤を含む。変換緩衝剤は、さらに、金属キレート化剤を含むことができる。これは、PrPCからPrPScへの変換の場合、Cu2+および、ある程度Zn2+が、プリオンの増幅を妨害するので、特に有利である。好ましい態様において、金属キレート化剤は、EDTAである。反応混合物は、さらなる要素、例えば、一つまたは複数の緩衝剤、塩、界面活性剤、脂質、タンパク質混合物、核酸および/または膜製剤も含むことができる。
本発明の特定の態様において、非病原性タンパク質は細胞溶解物からのものであってもよい。細胞溶解物は、粗細胞溶解物または該非病原性タンパク質用の溶解物に富むように処理された細胞溶解物を含むことができる。細胞溶解物は、液体、半液体、または凍結乾燥されたタンパク質粉末もしくは錠剤であってもよい。一部の態様において、細胞溶解物は、脳ホモジネートを含む。一部の態様において、脳ホモジネートは、哺乳動物脳ホモジネートである。特定の態様において、細胞溶解物が、試験サンプルと同じ生物種に由来することが好ましい。細胞溶解物は、非病原性タンパク質を過剰発現している細胞からのものであってもよい。一部の態様において、細胞溶解物は、非病原性タンパク質を発現している核酸発現ベクターを用いて形質転換した細胞からのものである。例えば、非病原性タンパク質は、PrPCを過剰発現している神経芽腫細胞のようなPrPCを過剰発現している組織培養細胞の細胞溶解物からのものであってもよい。また、非病原性タンパク質を、細菌中で組み換え技術により発現させることもできる。
本発明の特定の態様において、非病原性タンパク質は、PrPCに相同性のアミノ酸配列を有するタンパク質を含むことができる。例えば、非病原性タンパク質は、それぞれGenBankアクセッション番号NP_035300、NP_898902、AAP84097、AAU02120、AAU02123およびAAU93884により与えられるマウス、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギおよび/またはエルクからのPrPタンパク質と同一または高度に相同性であり得、これら全てを参照により本明細書に組み入れる。一部の態様において、非病原性タンパク質は、変化したアミノ酸配列を有するPrPCを含んでもよい。例えば、非病原性タンパク質は、アミノ酸が置換、欠失または挿入されたPrPCを含んでもよい。一部の好ましい突然変異は、既知の哺乳動物PrP多型を含む(表2)。他の場合において、好ましい突然変異は、ヒトにおいてプリオン病のリスクを増加させることが示されたものであってもよい(表2)。本発明の方法の感度をさらに向上させるためにそのような突然変異タンパク質を用い得ることが想像される。他の態様において、本発明の方法を用いて、特定の突然変異PrPタンパク質の、PrPScによる変換への感受性を研究することができる。
本発明の一部の態様において、非病原性タンパク質は、非病原性タンパク質を融合タンパク質として発現している細胞からのものであってもよい。例えば、非病原性タンパク質のためのコード配列を、他のアミノ酸コード配列に融合させてもよい。例えば、融合されたアミノ酸コード配列は、リポータータンパク質、検出可能タグ、タンパク質精製用のタグ、または局在化シグナルのためのコード配列を含むことができる。さらに、非病原性タンパク質を、例えば、放射性アミノ酸の混入または蛍光プローブでの共有結合的修飾により、検出のために標識することができる。
非病原性タンパク質を、プリオンに変換する性能を増加させるように修飾し得ることも企図される。好ましい態様において、非病原性タンパク質を予備処理して糖鎖形成を変化させることができる。この工程は、以前に、PrPCの糖鎖形成の低い形態が、選択的にPrPScに変換することが示されているので、非病原性タンパク質のプリオンへの変換速度をさらに高めることができる(Kocisko et al.,1994)。例えば、PrPCを、サンプルと混合する前に、ホスホリパーゼCで処理してホスファチジルイノシトールを除去することができる。あるいは、組み換えタンパク質を、安定な単糖鎖形成または非糖鎖形成形が細胞内に合成されるように、糖鎖形成部分が付着しているアミノ酸を変化させるように修飾することができる。
本発明のさらなる態様において、サンプルを、saPMCAの前にサンプルのタンパク質を濃縮するように処理または分別することができる。例えば、タンパク質を、リンタングステン酸(PTA)沈降により、または、コンホメーション抗体、特定の核酸、プラスミノーゲンまたは種々の短いペプチドのような、PrPScに特異的に相互作用することが示されている、リガンドに結合することにより濃縮することができる(Soto et al.,2004)。サンプルを分別し得ることも考えられる。例えば、中性界面活性剤に不溶性である分画を取り出すことができ、これはサンプル中のプリオンの濃度を増加させる手順である(WO 0204954)。
反応混合物または連続増幅反応混合物中の増幅プリオンの検出は、当業者に周知の種々の方法によると企図される。一つの態様において、反応混合物または連続反応混合物を、プロテイナーゼKのようなプロテアーゼで処理し、次に、プリオンを、抗プリオン抗体を用いるウエスタンブロットまたはELISAにより検出する。好ましい態様において、抗-PrP抗体、例えば、3F4モノクローナル抗体を用いることができる。一部の態様において、ELISAアッセイは、2部位イムノメトリックサンドイッチELISAであり得る。他の態様において、プリオンを、コンホメーション依存性イムノアッセイ(CDI)により検出することができる。試験動物に反応混合物または連続反応混合物を接種し、臨床症候について評価する動物バイオアッセイにより、増幅プリオンを検出し得ることも企図される。増幅プリオンは、培養物中の特定の動物細胞に感染する性能によるなどの機能性アッセイにより、検出することもできる(Klohn et al.,2003)。最後に、増幅されたプリオンを、多重スペクトル紫外線蛍光透視、共焦点二色蛍光関連分光法、フーリエ変換赤外線分光法もしくはキャピラリー電気泳動、および蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を含む開発中の幾つかの分光的技術のような間接的方法により検出することができる(Soto et al.,2004)。
本発明は、プリオンタンパク質の増幅および検出のための装置も提供する。この装置は、プログラム可能なミクロプレート超音波処理装置を含む。ミクロプレート超音波処理装置を、複数周期、インキュベーション時間、超音波処理強度および超音波処理時間についてプログラムすることができる。装置は、さらに、異なるインキュベーション温度の範囲についてプログラムすることができるインキュベーターを含むことができる。特定の態様において、装置は、サンプルおよび反応混合物の操作のためのプログラム可能ロボットプローブも含み得る。非病原性タンパク質およびプリオンの分離、および反応混合物中のプリオンの検出を自動化し得ることも企図される。例えば、米国特許第6,562,209号に記載のような自動化ELISA法により、または米国特許第5,914,273号および第5,567,595号に記載のような自動化ウエスタンブロットにより、プリオンを本明細書において記載のように検出することができる。非病原性タンパク質を蛍光標識した場合、コンホメーション変化をFRETにより検出することができ、サンプルをsaPMCAに供したときに「リアルタイム」にモニターすることができる。
一部の態様において、本発明は、非病原性タンパク質を含むサンプル中のプリオンを検出するためのキットに関する。一部の態様において、キットは、マイクロタイタープレートまたはサンプルチューブのようなサンプル増幅用の筐体;増幅前にサンプルおよび非病原性タンパク質に添加される増幅緩衝剤;saPMCA用の陽性および陰性対照サンプル(陽性対照サンプルはプリオンを含み、陰性対照サンプルはプリオンを含まない);プリオンの不活性化のための汚染除去緩衝剤、例えば、2N水酸化ナトリウムを含むスプレー、溶液または拭き取るもの;非病原性タンパク質からプリオンを分離するための材料、例えば、プロテイナーゼK消化緩衝剤またはプリオン分別緩衝剤:プリオンタンパク質の検出のための材料、例えば、ウエスタンブロットまたはELISA試験用のPrP特異的抗体をさらに含むことができる。
本明細書において用いられる「感度」は、病原性プリオン馴化動物の存在を検出する(すなわち、高い割合の真の陽性反応および低い割合の偽陰性反応を与える)アッセイの性能を意味する。本明細書において用いられる特異度は、病原性馴化動物とPrPCとを信頼性良く識別する(すなわち、低い割合の偽陽性反応および高い割合の真の陰性反応を与える)アッセイの性能を意味する。本発明の局面は、サンプル10μl中の2、5、10、50、100、200、500アトグラム(ag)、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5フェムトグラム(fg)以下のプリオンを検出することができる方法を含む。さらなる局面において、これらの方法は、サンプル中(例えば、サンプル20μl当たり)の3×107、1×107、5×106、1×106、5×105、1×105、5×104、1×104、5×103、1×103、100、50、26分子以下のプリオンを検出することができ、これらの間の全ての数も含まれる。さらなる局面において、本発明の方法は、サンプル希釈液中に1×10-7、5×10-7、1×10-8、5×10-8、1×10-9、5×10-9、1×10-10、5×10-10、1×10-11、5×10-11、1×10-12、5×10-12以上の263Kスクレイピー脳のプリオンを検出することができ、これらの間の全ての値が含まれる。本発明の方法は、ウエスタンブロット分析と比較して、典型的に、4×lO5、1×106、5×106、1×107、1×108、1×109、3×109以上の倍率で感度を増加させることができ、これらの間の全ての値が含まれる。本発明の態様は、病原性と非病原性プリオンを識別することができるアッセイの90%を超え、92%、95%、98%、99%、100%までの検出の特異度を含む。
さらなる態様において、本発明の方法を用いて、プリオンで汚染される可能性のあるまたは汚染された生物学的サンプルを検出することができる。汚染の疑いのあるサンプルとしては、血液(血漿、赤血球、血小板等)、尿、脳脊髄液、およびそのようなサンプルから由来するかまたは単離された任意の産物があるが、これらに限定されるわけではない。特定の局面において、疑いのあるサンプルは、臓器移植、グラフト、またはそのようなサンプルからの産物の精製に用いられる動物またはヒトの臓器、組織または細胞であり得る。
本発明の方法および/または組成物について記載した態様を、本出願に記載の他の方法または組成物について用いることができる。したがって、一つの方法または組成物に関する態様を、本発明の他の方法および組成物に同様に適用することができる。
本明細書において用いられる「1つの(a)」または「1つの(an)」は、一つまたは複数を意味することができる。本明細書において特許請求の範囲で用いられるように、「含む(comprising)」という用語と組み合わせて用いられた場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語は、一つまたは複数を意味することができる。
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、択一的のみを言及するまたは選択肢が互いに排他的であると明言されない限り「および/または」と意味するが、開示は、選択肢および「および/または」のみに言及する定義を支持している。本明細書において用いられる「もう一つの」は、少なくとも2番目またはそれ以上を意味することができる。
本出願全体を通して、「約」という用語は、値が、装置の固有誤差変動、その値を決めるために用いられる方法、または、研究対象中に存在する変動を含むことを示すように用いられる。
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかしながら、詳細な説明および具体的実施例は、本発明の好ましい態様を示しており、説明のためにのみ提供されており、この詳細な説明から、本発明の精神および範囲内の種々の変化および修飾は当業者に明らかであると解すべきである。
発明の詳細な説明
サンプル中のプリオンを検出する方法が本明細書において開示され、この方法を用いて、動物中の種々の疾患を診断することができる。本発明のプリオンを検出する方法は、感度を向上させ、サンプル中のプリオンの高感度検出に必要な時間を短縮させる。本発明は、サンプルの高スループットで正確かつ高感度のスクリーニング、並びに臨床的疾患の診断を可能にする。例えば、ウシの場合、この方法を用いてウシ海綿状脳症(BSE)を診断することができる。ヒツジの場合、この方法を用いてスクレイピーを診断することもできる。シカおよびエルクの場合、この方法を用いてCWDを診断することができる。本発明の利点は、家畜の不必要な淘汰または食物連鎖へのプリオンの不注意な導入に対して保護するために、生きている動物を感染について試験することを含む。
記載された診断方法を、ヒトおよびヒト疾患に適用し得ることも企図される。ヒトにおいて診断することができるプリオン病としては、クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)、クールー、致死性家族性不眠症、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー病または散発性致死性不眠症が挙げられる。ここでも、本発明の方法は、これらの神経疾患の診断のための現在利用できる方法を超える、大きな利点を提供する。例えば、CJDの診断のために現在用いられている認知試験および臨床的徴候は、可能性診断を示すことしかできない。本発明は、陽性診断を出すことができ、偽陽性または陰性の結果の可能性が低い客観的方法を提供する。さらに、試験の感度により、血液のような末梢組織からの疾患の検出が可能になり、現在の脳生検手順よりも侵襲性が低く費用がかからない。本発明は、臨床的症候の発症前に疾患を検出および診断できるように十分に高い感度も提供する。
他の病状を媒介する異常折り畳みタンパク質も、本発明の方法により検出することができる。例えば、アルツハイマー病と関連することが公知の、ベータアミロイドとして公知の異常折り畳みAβを検出することができる。この方法は、さらに、アルツハイマー病用の診断試験として用いることができる。CJDと同様に、アルツハイマー病の診断は現時点では主に認知試験に基づいており、生化学的試験手順はかなり有益であると思われる。
本発明のもう一つの用途は、非病原性タンパク質のプリオンへの変換を向上または抑制する化合物をスクリーニングする高スループット法である。この点において、反応混合物がさらに試験化合物を含み得ることが考えられる。対照反応混合物および、試験化合物を含む反応混合物を、増幅後のプリオンのレベルについて調べることができる。試験反応混合物と対照反応混合物との間にプリオンのレベルの相違が検出されると、化合物が、非病原性タンパク質のプリオンへの変換を向上させるか抑制させるか確認することができる。この方法のさらなる態様において、対照および試験反応混合物からのサンプルを、2、3、4以上の増幅工程の後に採取して、プリオン複製の速度を決めることができる。対照プリオン複製の速度と、試験化合物の存在下における増殖の速度とを比較することにより、候補修飾物質を、プリオン複製へのそれらの効果について定量的に調べることができる。
I.伝染性海綿状脳症(TSE)
動物において、最も一般的なTSEはスクレイピーであるが、最も有名で危険な疾患は最近発見されたBSEであり、これはウシに影響を与え、一般用語「狂牛病」により世界中に公知である。ヒトにおいて、最も一般的なTSEはCJDであり、これは毎年100万人当たり0.5〜1.5の新規ケースの発生率で世界的に生じている(Johnson and Gibbs,Jr.,1998を参照)。3つの異なるCJDの型が伝統的に認識されてきた(Collinge,2001):すなわち、散発性(sCJD;85%の場合)、家族性(fCJD;10%)および医原性(iCJD;〜5%)。しかしながら、1996年に、UKにおいてCJDの新規変異種型(vCJD)が現れ(Will et al.,1996)、これは、BSEに感染した肉の消費に関係していた(Bruce,2000;Collinge,1999;Scott et al.,1999)。sCJDの典型的ケースと対照的に、vCJDは、平均年齢27歳の若い患者に影響を与え、比較的長期間の疾患である(sCJDの4.5か月に比べて14か月)。インキュベーション時間および、汚染ウシ食品への曝露レベルについて得られる情報が不十分であるので、vCJDの潜在的将来発生率について根拠の確かな予測を設けることは不可能である(Balter, 2001)。動物においては、疾患の遺伝型についてエビデンスが無く、大部分のケースは、水平または垂直感染により感染したと考えられる。
sCJDの臨床的診断は、迅速進行性多発性認知症と、錐体路および錐体外路徴候、ミオクローヌス、および、特徴的周期的脳波図(EEG)を伴う視覚または小脳徴候との組み合わせに基づく(Collins et al.,2000;Ingrosso et al.,2002;Kordek,2000;Weber et al.,1997)。sCJDを診断し、それをアルツハイマー病および他の認知症から識別するための重要な特徴は、臨床的症候の迅速進行と、しばしば2年未満である疾患の短い持続時間である。fCJDの臨床的発現は、sCJDにおけるよりも僅かに早期に疾患が発症することを除いて非常に似ている。遺伝されたCJDの家族歴またはPrP遺伝子における突然変異の遺伝子スクリーニングを用いてfCJDの診断が達成されるが、家族歴が無いことが、遺伝された起源を排除するわけではない(Kordek,2000)。
変異CJDは、最初は、不安、抑鬱、無気力、引きこもりおよび妄想の症候を特徴とする進行性神経精神病のように見える(Henry and Knight,2002)。これに、持続的疼痛性感覚症候が組み合わされ、運動失調、ミオクローヌスおよび認知症が続く。変異CJDは、疾患の持続時間(通常、6か月より長い)およびEEG分析(vCJDは、sCJDで観察される不規則パターンを示さない)によりsCJDから区別される。vCJDの診断を助けるために、通常、MRI中に見られる高度の両側視床枕徴候が用いられる(Coulthard et al.,1999)。さらに、リンパ組織(例えば、扁桃および虫垂)を汚染しているPrPScについて検査結果が陽性であると示された多くのvCJDのケースに基づき、扁桃生検を、vCJDの診断を助けるために用いることができる。しかしながら、この試験の侵襲的性質により、脳のMRIが特徴的視床枕徴候を示さないというvCJDの臨床的基準を満たす患者においてのみ実施すべきである(Hill et al.,1999)。
GSSは、主に、認知症、パーキンソン症候および比較的長い持続時間(典型的に、5〜8年)を特徴とする優性遺伝疾患である(Boellaard et al.,1999;Ghetti et al.,1995)。臨床的には、GSSは、運動失調および発作をしばしば伴うことを除いてアルツハイマー病に類似している。診断は、臨床実験および、PrP突然変異について遺伝子スクリーニングすることにより達成される(Ghetti et al.,1995)。FFIも主に遺伝され、PrP突然変異と関連する。しかしながら、FFIに関連する主な臨床的発見は不眠症であり、晩期には、ミオクローヌス、幻覚、運動失調および認知症を伴う(Cortelli et al.,1999)。
II.タンパク質供給源
A.非病原性タンパク質の供給源
前述のように、種々の供給源を用いて、本発明の方法で用いるための非病原性タンパク質を得ることができる。例えば、タンパク質を細胞内で内因的に発現させ、これらの細胞を用いて、非病原性タンパク質を提供する溶解物を作ることができる。溶解物は、組織培養細胞からのものであっても、生物そのもの、器官または組織から抽出されてもよい。例えば、非病原性タンパク質がPrPの場合、脳ホモジネートを用いることができる。これらの脳ホモジネートは、哺乳動物脳ホモジネートであってもよく、試験すべき特定のサンプルと同じ種からのものである、または試験すべき種からのPrPを発現するように加工されたトランスジェニックマウスからのものであることが好ましい。
粗細胞溶解物の使用に加えて、部分的に精製されたタンパク質を用いることもできると考えられる。例えば、PrPの場合、「脂質ラフト」として公知の構造中の膜に、大部分のタンパク質が局在化することが示された。したがって、脂質ラフト用の溶解物を増やすことにより、PrPCの部分的精製を達成することができる。この増加の方法は、典型的に、氷冷Triton X-100のような中性界面活性剤への脂質ラフト構造の抵抗性に依存し、当業者に周知である。
前述のように、非病原性タンパク質が脱糖鎖形成されることが好ましい場合がある。例えば、非病原性タンパク質を、製造者の指示に従ってペプチドN-グリコシダーゼF(New England Biolabs,Beverly,MA)で処理することができる。この場合、37℃で約2時間インキュベーションすると、著しい脱糖鎖形成の結果となる。
通常、「精製されている」は、種々の他のタンパク質またはペプチド成分を除去するために分別または単離に付された非病原性タンパク質組成物に言及し、この組成物は、例えば、非病原性タンパク質を検出するためのウエスタンブロットにより調べることができるような非病原性タンパク質を実質的に含む。
天然または組み換え組成物から非病原性タンパク質を精製するために、この組成物は、組成物から種々の他の成分を除去するための分別に付される。タンパク質精製において用いるのに適した種々の技術は、当業者に周知である。これらとしては、例えば、硫酸アンモニウム、PTA、PEG、抗体等を用いる、または熱変性およびその後の遠心分離による沈降;イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト、レクチン親和性および他の親和性クロマトグラフィー工程;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;およびそのような技術および他の技術の組み合わせがある。
本発明の一部の態様において、非病原性タンパク質の供給源は、タンパク質を過剰発現するようにされたまたは操作された細胞からのものであってもよい。例えば、非病原性タンパク質、例えば、PrPCを発現する核酸ベクターで、細胞を形質転換することができる。これらの細胞には、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、生物そのもの、例えばトランスジェニックマウス、または、非病原性タンパク質の有用な供給源となり得る他の細胞が含まれる。未加工の細胞溶解物または、発現細胞からの精製非病原性タンパク質を、非病原性タンパク質の供給源として用いることができる。
一部の場合に、組み換えタンパク質がさらなるアミノ酸配列と融合していることが好ましい。例えば、過剰発現しているタンパク質を、精製のために、またはサンプル中のタンパク質の検出を容易にするためにタグを付けることができる。生成可能ないくつかの可能な融合タンパク質としては、ヒスタジンタグ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、Flagおよびmycタグ付PrPがある。これらのさらなる配列を用いて、組み換えタンパク質の精製および/または検出を助けることができ、一部の場合には、次に、プロテアーゼ切断により除去することができる。例えば、特定のプロテアーゼ切断部位についてのコード配列を、非病原性タンパク質コード配列と、精製タグコード配列との間に挿入することができる。そのような配列の一例は、トロンビン用の切断部位である。したがって、融合タンパク質をプロテアーゼを用いて切断して、精製タグから非病原性タンパク質を取り除くことができる。
非病原性タンパク質が高度に精製された場合、反応混合物は、さらに、更なる細胞溶解物を含んで、変換に重要な二次因子を提供することができる。例えば、PrPCの場合、PrPが存在しないマウスからの脳ホモジネートが理想的である。非病原性タンパク質の病原性変換において重要な共同因子を同定するために、本発明の方法を用い得ることが企図される。
当業者に公知の種々のベクターのいずれかを用いて非病原性タンパク質を過剰発現することができる。例えば、プラスミドまたはウイルスベクターを用いることができる。限定はされないがトランスフェクション(例えば、リポソーム、リン酸カルシウム、電気穿孔、粒子衝突等による)、形質転換およびウイルス転写を含む種々の方法により、これらのベクターを細胞内に導入し得ることを、当業者は十分に理解している。
非病原性タンパク質は、さらに、野生型配列と比較して置換、挿入、欠失および終止コドンを含むアミノ配列を有するタンパク質を含み得る。本発明の特定の態様において、プリオン型に変換した後にタンパク質を不活性化させるためにプロテアーゼ切断配列を加えることができる。例えば、トロンビン、タバコEtchウイルス(Life Technologies,Gaithersburg,MD)または第Xa因子(New England Biolabs,Beverley,MA)プロテアーゼにより認識される切断配列を、配列に挿入することができる。
特定の態様において、PrPコード配列において、例えば、それぞれGenBankアクセッション番号NM_011170、NM_183079、AY335912、AY723289、AY723292およびAY748455により与えられるマウス、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギおよび/またはエルクのPrPのためのコード配列において変化を設けることができ、これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。例えば、種々の哺乳動物PrP遺伝子について公知の種々の突然変異および多型に適合するように突然変異を設けることができる(表2)。これらの変化したPrP遺伝子を発現している細胞を、非病原性タンパク質の供給源として用いることができると考えられる。これらの細胞は、突然変異PrP遺伝子を内因的に発現する細胞、または、発現ベクターの導入により突然変異PrPタンパク質を発現するようにされた細胞を含み得る。突然変異した非病原性タンパク質の使用は、これらのタンパク質をより容易にプリオンに変換し、それにより本発明の方法の感度をさらに高めることが可能であるので、特に有利である。
非病原性タンパク質の変換速度への突然変異の効果を試験するために本発明の方法を用いることができると企図される。例えば、PrPの場合、突然変異PrPおよび野生型PrPを等量のプリオンと混合し、saPMCAを行うことができる。突然変異PrPを用いた場合と野生型PrPを用いた場合のサンプル中のプリオン複製の速度を比較することにより、プリオンが複製する性能を調節する突然変異を同定することができる。そのような研究からのさらなる結果を用いて、特定のPrP多型を有する動物がTSEに感受性が高いか低いかを決めることができる。
(表2)
Figure 2008537155
B.saPMCAアッセイのためのサンプルの供給源
前述のように、本発明の方法で用いられるサンプルは、プリオンで汚染され得る組成物を本質的に含み得ると企図される。そのような組成物は、限定はされないが血液、リンパ節、脳、脊髄、扁桃、脾臓、皮膚、筋肉、虫垂、嗅上皮、脳脊髄液、尿、乳、腸、涙および/または唾液を含む組織からの組織サンプルを含むことができる。そこから分析のためにサンプルを取り出すことができる他の組成物としては、食料品、飲料水、法医学証拠、手術用具、および/または機械類がある。
C.saPMCA反応混合物中のプリオンを検出する方法
反応混合物または連続反応混合物中のプリオンタンパク質を検出するために直接的および間接的方法を用いることができる。プリオンを直接検出する方法では、残っている非病原性タンパク質から新しく形成されたプリオンを分離することが通常必要である。これは、典型的には、非病原性タンパク質に対して異なるプリオンの性質に基づいて達成され、例えば、プリオンは、典型的には、高度に不溶性でありプロテアーゼ処理に抵抗性である。従って、PrPScおよびPrPCの場合、分離は、プロテアーゼ処理、または界面活性剤中での分画遠心法、あるいは2つの技術の組み合わせにより行うことができる。
プリオンと非病原性タンパク質をプロテアーゼ処理により分離する場合、反応混合物を、例えばプロテイナーゼK(PK)と共にインキュベーションする。例示的なプロテイナーゼ処理は、50μg/mlのプロテイナーゼK(PK)を含む反応混合物中で、タンパク質、例えばPrPCを45℃で約1時間消化することを含む。PMSFまたは電気泳動サンプル緩衝剤を加えることによりプリオンレベルを調べる前にPKとの反応を停止することができる。非病原性タンパク質を除去するために、50μg/mlのPKを用いて45℃でインキュベーションすることが十分である。
一部の場合には、非病原性タンパク質を、分別によりプリオンから分離することができる。PrPCおよびPrPScの場合、溶解性の相違を用いることができる。例示的な手順としては;10%サルコシル(sarkosyl)の存在下に反応混合物を4℃で30分間インキュベーションすることがある。その後、サンプルをBiosafe Optima MAX超遠心分離機(Beckman Coulter,Fullerton,CA)中で100,000×gで1時間遠心分離し、PrPScを含むペレットを再懸濁し、次に、プリオンについて分析する。一部の場合には、サルコシルを添加する前に、反応混合物を、異なる濃度のグアニジン塩酸塩と共に室温で振とう下に2時間インキュベーションする。その後、サルコシルを加え、遠心分離を用いて可溶性タンパク質と不溶性タンパク質を分離する。
プリオンを、コンホメーション抗体、特定の核酸、プラスミノーゲン、PTAおよび/または種々のペプチドフラグメントを含む特異的に結合するリガンドを用いることにより非病原性タンパク質から分離し、タンパク質の異常折り畳み形を沈積させることもできる(Soto et al.,2004)。
1.ウエスタンブロット
分別またはプロテアーゼで処理してPrPCを除去した反応混合物を、PrPScの検出のためにウエスタンブロットに供することができる。典型的ウエスタンブロット手順は、還元条件下にドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によりタンパク質を分別することで始まる。次に、タンパク質をニトロセルロースまたはPVDFのような膜上に電気ブロットし、抗プリオン抗体と免疫複合体(抗原/抗体)を形成させるのに有効な条件下において調べる。PrPを検出するための例示的な抗体は、3F4モノクローナル抗体である(Kascsak et al.,1987)。複合体形成に続いて、膜を洗浄して複合していない材料を除去する。好ましい洗浄手順として、PBS/Tweenまたはホウ酸塩緩衝液のような溶液で洗うことが挙げられる。免疫反応性バンドは、当業者に公知の種々のアッセイにより視覚化される。例えば、高感度化学発光アッセイ(ECL)(Amersham,Piscataway,NJ)がある。
プリオン濃度は、ウエスタンブロット、続いて、濃度分析、およびプリオンの濃度が公知のサンプルのウエスタンブロットと比較することにより推定することができる。例えば、これは、コンピューター中のデータをスキャンニングし、続いて、定量化ソフトウェアで分析することにより達成することができる。信頼性があり確実な定量のために、サンプルの幾つかの異なる希釈液を、同じゲル中で分析する。
2.ELISAおよびコンホメーション依存免疫アッセイ(CDI)
先に詳細に述べたように、免疫アッセイはその最も単純で直接的な意味において、結合アッセイである。特定の好ましい免疫アッセイは、当技術分野において公知の種々のタイプの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)および特にコンホメーション依存免疫アッセイ(CDI)である。
一つの例示的なELISAにおいて、抗プリオン抗体が、ポリスチレンマイクロタイタプレート中のウエルのようなタンパク質親和性を示す選択された表面上に固定される。次に、プリオンタンパク質抗原を含む疑いのある反応混合物を、ウエルに添加する。結合および、洗浄による非特異的結合免疫複合体の除去後、結合したプリオンタンパク質を検出することができる。検出は、一般的に、検出可能なレベルに結合されたもう一つの抗プリオン抗体を加えることにより達成される。このタイプのELISAは、単純な「サンドイッチELISA」である。検出は、第2の抗プリオン抗体を添加し、続いて、第2の抗体に結合親和性を有すると共に検出可能なレベルに結合している第3の抗体を添加することによっても達成することができる。
もう一つの例示的なELISAにおいて、プリオンタンパク質抗原を含む疑いのある反応混合物を、ウエル表面上に固定化し、次に、抗プリオン抗体に接触させる。結合および、洗浄による非特異的結合免疫複合体の除去後、結合した抗プリオン抗体を検出する。最初の抗プリオン抗体が検出可能なレベルに結合すると、免疫複合体を直接検出することができる。ここでも、第1の抗プリオン抗体に結合親和性を有すると共に検出可能なレベルに結合している第2の抗体を用いて免疫複合体を検出することができる。
反応混合物のタンパク質を固定化するもう一つのELISAは、検出において抗体競合を用いることを含む。このELISAにおいて、プリオンタンパク質に対する標識抗体をウエルに添加し、結合させ、それらの標識により検出する。次に、所定の反応混合物中のプリオンタンパク質抗原の量を、コーティングウエルと共にインキュベーションする前またはインキュベーション中に、プリオンに対する標識抗体と混合することにより決める。サンプル中のプリオンタンパク質の存在は、ウエルに結合するのに利用できるプリオンに対する抗体の量を減少させるように作用し、これにより、最終シグナルを低下させる。したがって、サンプル中のプリオンの量を定量することができる。
用いられるフォーマットに関わらず、ELISAは、コーティング、インキュベーションまたは結合、非特異的結合種を除去するための洗浄、および結合免疫複合体の検出のような共通の特定の特徴を有している。これらを以下に記載する。
プレートを抗原または抗体でコーティングする際、通常、プレートのウエルを抗原または抗体の溶液と共に一晩または特定の時間の間インキュベーションする。次に、プレートのウエルを洗浄して不完全に吸着した材料を除去する。ウエルの残っている利用可能な表面を、次に、試験抗血清に対して抗原的に中性の非特異的タンパク質で「コーティング」する。これらは、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、および粉乳の溶液を含む。コーティングは、固定化表面上の非特異的吸着部位のブロッキングを可能にし、それにより、表面への抗血清の非特異的結合により生じるバックグラウンドを減少させる。
ELISAにおいて、直接的手順よりも、2次的または3次的検出手段を用いることが一般的である。したがって、タンパク質または抗体をウエルに結合し、非反応性材料でコーティングしてバックグラウンドを減少させ、洗浄して非結合材料を除去した後、固定化表面を、免疫複合体(抗原/抗体)を形成させるのに効果的な条件下で、試験すべき生物学的サンプルと接触させる。免疫複合体の検出は、標識された2次結合性リガンドもしくは抗体、または、標識された3次抗体もしくは3次結合性リガンドと組み合わされた2次結合性リガンドもしくは抗体を必要とする。
「免疫複合体(抗原/抗体)を形成させるのに効果的な条件下」は、条件が、好ましくは、BSA、ウシガンマグロブリン(BGG)およびリン酸緩衝食塩水(PBS)/Tweenのような溶液で抗原および抗体を希釈することを含むことを意味する。これらの添加された薬剤は、非特異的バックグラウンドの減少を補助する傾向もある。
「適当な」条件は、効果的に結合させるのに十分な温度および時間でインキュベーションを行うことも意味する。インキュベーション工程は、典型的には、好ましくは約25℃〜27℃の温度で約1〜2〜4時間、または約4℃で一晩であってもよい。
ELISAにおける全てのインキュベーション工程に続いて、接触された表面を、複合されていない材料を除去するように洗う。好ましい洗浄手順は、PBS/Tweenまたはホウ酸塩緩衝液のような溶液で洗うことを含む。試験サンプルと最初の結合材料との間で特異的免疫複合体を形成し続いて洗浄した後、微量の免疫複合体の存在でさえも決めることができる。
検出手段を提供するために、第2または第3の抗体は、検出させるための結合標識を有する。好ましくは、これは、適当な発色性物質と共にインキュベーションしたときに発色を生じさせる酵素である。したがって、例えば、第1または第2の免疫複合体を、さらなる免疫複合体形成の進行に好ましい時間および条件下において、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファラーゼまたは水素ペルオキシダーゼ共役抗体と接触させ共にインキュベーションすることが望ましい(例えば、PBS-TweenのようなPBS含有溶液中で室温で2時間インキュベーションする)。
標識された抗体と共にインキュベーションした後、および洗浄して非結合材料を除去した後、酵素標識としてのペルオキシダーゼの場合、標識の量を、例えば、尿素およびブロモクレゾールパープルまたは2,2'-アジノ-ジ-(3-エチル-ベンズチアゾリン-6-スルホン酸[ABTS]およびH2O2のような発色性物質と共にインキュベーションすることにより定量する。定量は、次に、色生成の程度を例えば可視スペクトル分光光度計を用いて測定することにより達成される。
3.動物バイオアッセイ
反応混合物中のプリオンの存在は、さらに、当業者に周知の動物バイオアッセイにより間接的に検出することができる。PrPScの場合、例示的な手順は以下の手順を含み得る。
4〜6週齢の動物(シリアンゴールデンハムスター)に麻酔をかけ、反応混合物約1μlを右側海馬に定位的に注射する。これは、サンプルを所定の速度、例えば、0.1μl/分で脳内に送達するコンピューター制御潅流機を用いて達成することができる。臨床的疾患の発症は、以下のスケールを用いて1週間に2回、動物を記録することにより測定される。
1.正常動物;
2.活動亢進およびノイズへの過敏症を含む軽度の挙動異常;
3.頭部振戦、運動失調、動揺歩行、頭部上下運動、興奮性および攻撃性を含む中等度挙動問題;
4.前述の問題の全てに頭部および身体の攣縮および自発性バックロールを加えたものを含む重度挙動異常;
5.動物がケージ内で横たわり、もはや立ち上がることができない疾患の末期。
2連続週の間にレベル4を記録する動物は、病気と考え、屠殺する。屠殺は、過剰な痛みを避けるために二酸化炭素に曝露することにより行うことができる。脳および他の組織を抽出し、当技術分野において周知の方法により組織学的に分析する。例えば、一方の脳半球を、10%ホルムアルデヒド溶液中で固定し、切片に切断し、パラフィンに包埋する。各ブロックからの連続切片(厚さ6μmまで)を、標準的プロトコールを用いてヘマトキシリン-エオシンで染色、またはPrPを認識する抗体と共にインキュベーションし、一部の場合には、対照として、グリア線維性酸性タンパク質に対する抗体と共にインキュベーションする。免疫反応は、例えば、ペルオキシダーゼ-抗ペルオキシダーゼ法を用いて行う。この場合には、抗体特異性を吸収により証明する。一部の場合には、ウエスタンブロット分析を用いるPrPSc用の生化学的試験を用いることもできる。一部の場合には、それぞれ一方の脳半球を用いて、組織学的および生化学的分析の両方を行うことができる。
4.細胞アッセイ
低濃度のプリオンを検出するためのもう一つの手法は、細胞感染性アッセイ(Klohn et al.,2003)の使用である。マウス神経芽細胞腫N2aサブラインは、PrPresの蓄積および伝染力により証明されるように、特定のプリオンに高度に感染し易い。このアッセイにおいて、感受性N2a細胞をプリオン含有サンプルに3日間曝露し、コンフルエンスまで成長させ、3回分割する。PrPres含有細胞の割合を、自動化係数装置を用いて決める。特定の用途において、プリオン含有細胞の数を、フローサイトメトリーにより決めることもできる。感染への用量反応は、プリオン濃度の対数2乗に対して線形である。細胞アッセイは、マウスバイオアッセイと同等に高感度であり、10倍速く、2桁安く、ロボットの使用による自動化に適していると主張されていた。
D.PrPC標識
本発明の特定の用途において、プリオンに変換されるタンパク質の高感度な検出を可能にするように非病原性タンパク質を標識することができる。例えば、非病原性タンパク質を放射性標識し、エピトープのタグを付け、または蛍光標識することができる。標識は、直接的または間接的に検出することができる。放射性式としては、125I、32P、33Pおよび35Sが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
標識されたタンパク質を含む混合物をsaPMCAに供し、生成物を、続いて、非変換タンパク質を例えばタンパク質分解により除去した後に標識タンパク質を変換させることにより高感度で検出する。あるいは、変換中に誘発される構造変化の際にシグナルを検出することができるようにタンパク質を標識することができる。この例は、再び折り畳まれたときに蛍光エネルギーを交換するのに十分な程度に近づく2つの適当な傾向プローブによりタンパク質を標識するFRET技術の使用である(例えば、米国特許第6,855,503号を参照されたい)。
1.蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)
蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)機構に基づいて大規模かつ異なるストークスシフトを与えるように開発されたと共に、混合物中の異なって標識されたサンプルを同時に検出することに用いられる一種類の染料は、ET(エネルギー転移)染料である。これらのET染料としては、ドナー蛍光プローブおよびアクセプター蛍光プローブ、並びに目的の生体分子にそれらを結合させる標識機能からなる複合分子構造体がある。ドナー蛍光プローブの励起時に、ドナーにより吸収されたエネルギーがFRET機構によりアクセプター蛍光プローブに転移され、蛍光を発生される。単一のドナーと共に異なるアクセプターを用いて一組のET染料を形成することができ、それにより、その組が単一ドナーで励起した時に、アクセプターの選択に依存して種々の発光が観察され得る。これらの異なる発光の定量時に、標識されたタンパク質の折り畳みの変化を迅速に決定することができる。用いることができる例示的な染料としては、BODIPY FL、フルオレセイン、テトメチルローダミン、IAEDANS、EDANSまたはDABCYLがある。他の染料、例えば、米国特許第5,688,648号、第6,150,107号、第6,008,373号および第5,863,727号並びにPCT公報WO 00/13026およびWO 01/19841に開示の染料もFRETのために用いられており、これら全てを参照により本明細書に組み入れる。
III.抗体生成
特定の態様において、本発明は抗体を含む。例えば、プリオンを検出するための多くの方法(例えば、ウエスタンブロットおよびELISA)において抗体が用いられる。完全長タンパク質に対して生成された抗体に加えて、野生型および突然変異エピトープを含むエピトープコア領域を含む小さな構造体に対して抗体を生成することもできる。
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEのような免疫学的結合剤に広く言及することを意図する。通常、IgGおよび/またはIgMが、生理学的状態において最も一般的な抗体であると共に、実験室の設定において最も容易に作ることができるので、好ましい。
モノクローナル抗体(mAb)は特定の利点、例えば、再現性および大規模生成を呈すると認識されており、それらの使用は通常好ましい。したがって、本発明は、ヒト、ネズミ、サル、ラット、ハムスター、ウサギおよびニワトリ起源のモノクローナル抗体を提供する。
「抗体」という用語は、抗体結合領域を有すると共にFab’、Fab、F(ab’)2、単一領域抗体(DAB)、Fv、scFv(単鎖Fv)等のような抗体フラグメントを含む抗体様分子に言及するために用いられる。種々の抗体系構造体およびフラグメントを調製および使用する技術が当技術分野において周知である。抗体を調製および特徴付ける手段も当技術分野において周知である(例えば、Harlow and Lane, 「Antibodies:A Laboratory Manual,」Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい。参照により本明細書に組み入れられる)。
モノクローナル抗体(mAb)を生成する方法は、通常、ポリクローナル抗体を調製するための系と同じ系に沿って開始される。簡単に言えば、本発明に従う免疫原性ポリペプチド組成物で動物を免疫し、免疫された動物から抗血清を収集することによりポリクローナル抗体を調製することができる。あるいは、本発明の一部の態様において、特定の抗原に曝露されたかも知れないヒトから血清を収集する。特定の抗原への曝露は、これらのヒトが特定の抗原に業務的に曝露されると共にペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に対するポリクローナル抗体を発生させるのような作業環境において起こり得る。本発明の一部の態様において、業務的に曝露されたヒトからのポリクローナル血清を、免疫検出法の使用によりプリオン中の抗原性領域を同定するために用いる。
高範囲の動物種を、抗血清の生成のために用いることができる。典型的には、抗血清の生成に用いられる動物は、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモットまたはヤギである。ウサギの比較的大量の血液量故に、ウサギは、ポリクローナル抗体の生成への好ましい選択肢である。
当技術分野において周知のように、所定の組成物はその免疫原性において異なり得る。従って、ペプチドまたはポリペプチド免疫原をキャリアに結合させることにより達成されるように、しばしば、宿主免疫系を強化することが必要である。例示的なかつ好ましいキャリアは、キーホールリムペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)である。オバルブミン、マウス血清アルブミンまたはウサギ血清アルブミンのような他のアルブミンも、キャリアとして用いることができる。ポリペプチドをキャリアに結合させる手段は、当技術分野において周知であり、グルタルアルデヒド、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミドおよびビス-ビアゾ化ベンジジンが挙げられる。
当技術分野において同様に周知のように、特定の免疫原組成物の免疫原性を、アジュバントとして公知の、免疫反応の非特異的刺激剤の使用により向上させることができる。適当な分子アジュバントとしては、サイトカイン、トキシンまたは合成組成物のような全ての許容される免疫刺激性化合物が挙げられる。
用いることができるアジュバントとしては、IL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、γ-インターフェロン、GMCSP、BCG、水酸化アルミニウム、thur-MDPおよびnor-MDPのようなムラミルジペプチドMDP化合物、CGP(MTP-PE)、脂質A、およびモノホスホリル脂質A(MPL)が挙げられる。細菌から抽出された3つの成分であるMPL、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)を2%スクワレン/Tween80エマルジョン中に含むRIBIも企図される。MHC抗原も使用することができる。例示的であり、好ましいことが多いアジュバントとしては、完全フロインドアジュバント(不活化マイコバクテリウム結核菌を含む免疫反応の非特異的刺激剤)、不完全フロインドアジュバントおよび水酸化アルミニウムアジュバントが挙げられる。
アジュバントに加え、T細胞免疫を上方制御またはサプセッサー細胞活性を下方制御することが示されている生物反応修飾物質(BRM)を共投与することが望ましい。そのようなBRMとしては、シメチジン(CIM;1200 mg/d)(Smith/Kline,PA);低用量シクロホスファミド(CYP;300mg/m2)(Johnson/Mead,NJ);γ-インターフェロン、IL-2またはIL-12のようなサイトカイン;またはB-7のような免疫ヘルパー機能に含まれるタンパク質をコードしている遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
ポリクローナル抗体の産生において用いられる免疫原組成物の量は、免疫原の性質、および免疫化に用いられる動物に依り変化する。免疫原を投与するために種々の経路を用いることができる(皮下、筋肉内、皮内、静脈内および腹腔内)。ポリクローナル抗体の生成は、免疫化の後の種々の時点において、免疫した動物の血液をサンプリングすることによりモニターすることができる。
第2の追加免疫注射を与えることもできる。追加注射およびタイターのプロセスを、適当なタイターが達成されるまで繰り返す。所望のレベルの免疫原性が得られると、免疫した動物を採血し血清を単離および貯蔵する、および/または動物を用いてmAbを生成させることができる。
mAbは、参照により本明細書に組み入れる米国特許第4,196,265号に例示されているような周知の技術を用いることにより容易に調製することができる。典型的には、この技術は、野生型でも突然変異組成物であってもよい選択された免疫原組成物、例えば、精製されたまたは部分的に精製されたポリペプチド、ペプチドまたはドメインで適当な動物を免疫することを含む。免疫化組成物は、抗体産生細胞を刺激するのに効果的な方法で投与する。
要すれば濾過、遠心分離および、HPLCまたは親和性クロマトグラフィーのような種々のクロマトグラフィー法を用いてmAbをさらに精製することができる。ペプシンまたはパパインのような酵素での消化を含む方法により、および/または化学的還元によるジスルフィド結合の切断により生成されたモノクローナル抗体から、本発明のモノクローナル抗体のフラグメントを得ることができる。あるいは、本発明に包含されるモノクローナル抗体フラグメントを、自動化ペプチド合成器を用いて合成することができる。
分子クローニング手法を用いてmAbを生成させ得ることも企図される。このために、免疫化動物の脾臓から単離されたRNAから、組み合わせ免疫グロブリンファージミドライブラリーが調製され、適当な抗体を発現しているファージミドが、抗原を発現している細胞および対照細胞を用いるパンニングにより選択される。従来のハイブリドーマ技術を超えるこの手法の利点は、単一回に約104倍多い抗体を製造しスクリーニングすることができること、HおよびL鎖の組み合わせにより新しい特異性が発生し、それにより適当な抗体を見つけるチャンスが増加することである。
IV.プリオン機能の修飾物質についてのスクリーニング
前述のように、プリオンが複製する性能を修飾する化合物を同定するために本発明を用いることができ、そのような化合物は、プリオン媒介疾患の治療のための候補物質である。化合物をスクリーニングする方法は、対照反応混合物についてsaPMCAを実施することを含むことができ、試験化合物を含む反応混合物を用いて、増幅後のプリオンのレベルを調べることができる。試験反応混合物と対照反応混合物との間のプリオンのレベルの相違が検出されると、非病原性タンパク質からプリオンへの変換を向上させるまたは抑制する化合物を同定することができる。これらのアッセイは、候補物質の大きなライブラリーをランダムスクリーニングすることを含む;あるいは、アッセイを用いて、プリオンの機能を調節する可能性を高めると考えられる構造的性状を考慮して選択される特定のクラスの化合物に、集中することができる。
機能という用語は、既知の量のプリオンにより、標準量の非病原性タンパク質のプリオンへの変換を調べることにより、変換の効率を決めることができることを意味する。これは、例えば、特定数のsaPMCAの周期の後に反応混合物中のプリオンの量を定量することにより決めることができる。このことを、プリオン複製のエンハンサーおよびプリオン複製の阻害剤の両方を同定する以下の実施例2において、より具体的に示す。具体的には、Cu2+を反応混合物に添加するとプリオン複製が抑制され、EDTAを反応混合物に添加するとプリオン変換が向上することが示されている。本明細書において開示されているsaPMCAアッセイの迅速で高スループットの性質故に、潜在的プリオン複製修飾物質の集団をスクリーニングすることができると考えられる。
もちろん、効果的候補物質を発見または同定できないかもしれない事実にも関わらず、本発明の全てのスクリーニング方法がそれら自体有用であると理解される。本発明は、そのような候補物質を見つける方法のみならず、そのような候補物質をスクリーニングする方法を提供する。
A.修飾物質
本明細書において用いられる「候補物質」という用語は、プリオン機能活性を抑制または向上させ得る可能性のある分子を意味する。候補物質は、タンパク質またはそのフラグメント、小さな分子であって良く、核酸分子でも良い。最も有用な薬理学的化合物は、PrPまたは他の銅結合性分子に構造的に関連している化合物であることがわかる。改良された化合物の開発を補助するために鉛化合物を使用することは「合理的薬物設計」として知られており、既知の阻害剤および活性化剤と比較するのみならず、標的分子の構造に関する予想も含む。
合理的薬物設計の目的は、生物学的活性ポリペプチドまたは標的化合物の構造的類似体を生成することである。そのような類似体を作ることにより、天然分子より活性または安定であり、異なる変化感受性がある、または種々の他の分子の機能に影響を与えることができる薬物を作ることができる。一つの手法において、標的分子またはそのフラグメントのための三次元構造を作る。これは、x線結晶学、コンピューターモデリング、または両方の手段の組み合わせにより達成することができる。
標的化合物活性化剤または阻害剤の構造を確認するために抗体を用いることもできる。理論的には、この手法は、その後の薬物設計の基礎とすることができるファーマコア(pharmacore)を生成する。機能性薬理学的活性抗体に対する抗イディオタイプ抗体を発生させることにより、タンパク質結晶学を全く回避することができる。鏡像の鏡像として、抗イディオタイプの結合部位が、最初の抗原の類似体であると予想される。次に、抗イディオタイプを用いて、化学的または生物学的に生成されたペプチドのバンクからペプチドを同定および単離することができる。選択されたペプチドは、次に、ファーマコアとして作用する。抗原として抗体を用いて、抗体を生成するための本明細書において記載された方法を用いて、抗イディオタイプを発生させることができる。
一方、有用化合物同定の「力業」により、有用薬物の基本的基準を満たすと考えられる小分子ライブラリーを種々の商業的供給源から簡単に得ることができる。組み合わせにより得られたライブラリー(例えば、ペプチドライブラリー)を含むそのようなライブラリーのスクリーニングは、多数の関連(および非関連)化合物の活性をスクリーニングする迅速かつ効果的方法である。組み合わせ手段は、活性であるがそれ以外は望ましくない化合物をモデルとする第2、3および4世代化合物を作ることにより、潜在的な薬物の迅速な進化に役立つ。
候補化合物は、天然産化合物のフラグメントまたは部分を含み得る、または、さもなければ不活性である既知の化合物の活性組み合わせとして見つけることができる。動物、細菌、真菌、葉および樹皮を含む植物源、および海洋サンプルのような天然供給源から単離された化合物を、潜在的に有用な医用薬剤用の候補としてアッセイし得ることが提案されている。スクリーニングすべき医用薬剤は、化学的組成物または人工化合物から由来または合成することもできると解される。したがって、本発明により同定される候補物質は、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子阻害剤または、公知の阻害剤もしくは刺激物質から出発して合理的薬物設計により設計され得る他の化合物であってもよい。
他の適当な修飾物質としては、その各々が標的分子に特異的である抗体(単鎖抗体を含む)が挙げられる。そのような化合物は、本文書の他の場所に詳細に記載されている。
最初に同定された修飾化合物に加えて、本発明者らは、その修飾物質の構造の重要な部分を模倣するように他の立体的に類似している化合物を構成し得ることも想定する。そのような化合物は、ペプチド修飾物質のペプチド模倣剤を含み、最初の修飾物質と同じ方法で用いることができる。プリオン複製の好ましい修飾物質は、多数のプリオンが中枢神経系においてそれら自体を発現していることから、血液脳障壁を通過する性能を有すると思われる。
本発明による阻害剤は、プリオンに、非病原性タンパク質に、または、非病原性タンパク質のプリオンへの変換に必要な因子に、その活性を直接発揮するものである。本発明のスクリーニング方法により同定される阻害剤または活性化剤の型に関わらず、そのような化合物による阻害剤または活性化剤の効果は、候補物質を加えずに観察されるものと比べて変化したプリオン増殖または複製の結果になる。
V.キット
本明細書において記載のどの化合物もキット中に含まれ得る。非限定的例において、非病原性タンパク質、プリオン変換因子、汚染除去溶液、および/または、金属キレート化剤を含む変換緩衝剤がキット中に提供される。キットは、さらに、非病原性タンパク質を発現または精製するための試薬を含んでもよい。キットは、非病原性タンパク質を標識するために用いられる試薬、例えば、放射性同位体または蛍光プローブも含んでもよい。
本明細書において記載の本発明の方法を実施するためのキットが具体的に企図される。一部の態様において、サンプル中のプリオンを増幅および検出するためのキットがある。これらの態様において、キットは、適当な容器手段内に、以下の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12種またはそれ以上を含むことができる:1)変換緩衝剤;2)非病原性タンパク質;3)汚染除去溶液;4)陽性対照、すなわちプリオン含有タンパク質;5)プリオンを含まない陰性対照サンプル;または6)プリオンの検出のための試薬。
プリオンの検出のための試薬は、以下の一つまたは複数を含むことができる:プリオンのELISAおよび/またはCDI検出のための事前コーティングマイクロタイタープレート;プリオンがその中で複製し得る組織培養細胞;またはELSA、CDIもしくはウエスタンブロット検出法において用いるための抗体。
さらに、本発明のキットは、以下の一つまたは複数を含むことができる:プロテアーゼ非含有水;プリオン複製を抑制するための銅塩;プリオン複製を向上させるためにEDTA溶液;非病原性タンパク質からプリオンを分離するためのプロテイナーゼK;非病原性、修飾または標識されたタンパク質からプリオンを分離するための分別緩衝剤(検出の感度を増加させる);または変換因子(増幅の効率を向上させる)。
特定の態様において、変換緩衝剤が「準備済み増幅フォーマット」中に供給され、そこでマイクロタイタープレート中に配分されて、サンプルと非病原性タンパク質が第1のウエルに添加され、一次増幅に付される。そこで、反応混合物の一部が隣接ウエルに運ばれた後、されなる非病原性タンパク質が連続増幅のために添加される。これらの工程を、マイクロタイタープレートにおいて複数回連続増幅させるために繰り返すことができる。
キットの成分は、水性媒体中にまたは凍結乾燥状態で包装することができる。キットの容器手段は、通常、少なくとも一つのバイアル、試験管、プレート、フラスコ、瓶、注射器または、その中に成分を配することができると共に好ましくは適当に分別される他の容器手段を含む。キット中に複数の成分がある場合(標識化試薬と標識を一緒に包装する)、キットは、通常、その中にさらなる成分を別々に配することができる第2、3または他のさらなる容器も含む。しかしながら、バイアル中に種々の組み合わせの成分を含むことができる。本発明のキットは、典型的に、タンパク質を含ませるための手段、および、商業的販売用の密封された他の試薬容器も含む。そのような容器は、その中に所望のバイアルを保持する射出またはブロー成型プラスチック容器を含み得る。
キットの成分が、一および/または複数の液状溶液中に提供される場合、液状溶液は典型的には、無菌でありプロテイナーゼを含まない水溶液である。一部の場合に、劣化防止のためにプロテイナーゼ組成物を凍結乾燥、および/または、そのキットまたは成分を低温(すなわち、約4℃未満)で貯蔵することができる。試薬および/または成分が乾燥粉末および/または錠剤として提供される場合、粉末を適当な溶媒の添加により再構成することができる。溶媒をもう一つの容器手段中に提供し得ることも考えられる。
実施例
本発明の種々の局面をさらに説明するために以下の実施例が含まれる。当業者は、以下の実施例に開示された技術は、本発明者により発明の実施においてよく機能すると発見された技術および/または組成物を表す、すなわち、実施のための好ましい態様を構成すると考えることができると理解するはずである。しかしながら、当業者は、本発明の開示を考慮して、開示された特定の態様において種々の変化を設けることができ、さらに、本発明の精神および範囲から離れることなく同様または類似の結果が得られると評価する。
実施例1
脳からのPrPScの精製
脳組織1gを、プロテアーゼ阻害剤を含む冷たいPBS5ml中で均質化した。PMCA発生PrPresについては、最後の増幅後に、基質として用いられる正常脳ホモジネートを含むサンプル全体を、脳ホモジネートと同じ方法において加工した。サンプルを、1体積の20%サルコシルと混合し、混合物を均質化し、透明性剤が得られるまで超音波処理した。サンプルを、5000rpmで4℃で15分間遠心分離した。ペレットを廃棄し、上澄みを、0.1%SB-314を含む1/3体積のPBSと混合し、サンプルを、Biosafe Optima MAX超遠心分離機(Beckman Coulter,Fullerton,CA)において100,000×gで4℃で3時間遠心分離した。上澄みを廃棄し、ペレットを、0.1%SB-314と10%NaClを含むPBS600μl中に再懸濁し、超音波処理した。再懸濁されたペレットを、20%サッカロース、10%NaClおよび0.1%SB3-14を含むPBS600ul上に層状に配し、4℃で3時間遠心分離した。上澄みを廃棄し、ペレットを、0.1%SB3-14を含むPBS300μl中に再懸濁し、再び超音波処理した。超音波処理後、サンプルをPK(100μg/ml)と共に振とうしつつ37℃で2時間インキュベーションした。消化されたサンプルを、20%サルコシル、0.1%SB3-14および10%NaClを含むPBS100μl上に層状に配し、100,000×gで1時間30分間遠心分離した。最終的ペレットを、PBS100μl中に再懸濁し、超音波処理した。サンプルを、-80℃で貯蔵した。銀染色、およびアミノ酸組成物分析により純度を分析した。
実施例2
自動化:増幅のスループットを高め時間を短縮する
単一プローブの従来の超音波処理装置は、診断試験が必要とする、多くのサンプルの同時処理に対して実用的問題を呈する。本発明者らは、全てのウエルに同時に超音波処理を提供すると共に自動化運転のプログラムすることができる96ウエルフォーマットマイクロプレート超音波処理装置(the Misonix(商標)Model 3000(Farmingdale,N.Y.))に、周期増幅システムを適合させた。この改良は、加工時間を短縮させ、スループットを増加させ、単一プローブ超音波処理装置よりも多くの通常の周期を実施することができるのみならず、材料の損失も防止する。サンプル中にプローブが直接入り込むことがないので、交差汚染が除去される。後者は、感染性サンプルの取扱いに、および偽陽性結果の最少化に必須である。1時間のインキュベーションおよびその後の30秒間の超音波振動の10周期により、従来の超音波処理装置を用いて観察されたものに類似の、PrPScシグナルの著しい増幅が得られた。
通常の診断における実用的適用のために、試験を行うためにかかる時間を短縮させることが望ましい。時間を短縮し得るかどうか評価するために、本発明者らは、超音波処理間の種々のインキュベーション時間を用いて増幅の効率を研究した。自動化PMCAにおける増幅の効率は、サンプルを30分間インキュベーションしたときに最高であった。従って、以下の研究の全てにおいて、各周期は、30分間のインキュベーションとその後の超音波振動からなっていた。この改良により、従来のPMCA手順と比較して、時間が50%短縮された。
実施例3
金属キレート化による増幅効率の増加
PMCA手順を最適化する努力の一部として、本発明者らは、以前に観察されていた増幅の比較的低いレベルは、サンプル中の金属カチオンの存在が一部の理由であることを発見した。広範囲金属キレート化剤であるEDTAの存在下にPMCA反応を行った場合、増幅の効率は劇的に高かった。
PrPは高い親和性で銅に結合し(および、より低い程度に亜鉛に結合)、実際、正常プリオンタンパク質の可能な生物学的機能は、細胞膜を通過するCu2+輸送に関与することである(Brown and Sassoon,2002)。これらの結果は、Cu2+を反応に加えたときに、PMCA効率を増強させるEDTAの陽性効果が失われたことを示している。この効果は非常に明確であり、濃度依存的である。Ca2+およびMg2+のような他の2価カチオンを用いて著しい効果は観察されず、Zn2+もプリオン変換の効率を低下させたが、Cu2+よりはその程度が小さかった。これらの発見は、Cu2+(またはZn2+)のPrPCへの結合は、プリオン複製プロセスを阻害することを示し、プリオン病のための可能な新規治療手段を示している。このデータは、反応に金属キレート化剤(例えばEDTA)を添加することによりPMCA効率を劇的に増加させることを補助した。
実施例4
saPMCAによるプリオンの超高感度検出
増幅の前と後とのウエスタンブロットのシグナル強度を比較することにより、自動化PMCAの後の検出の感度を分析した。140回のPMCA周期により、263Kスクレイピー脳の6,600,000倍という薄い希釈液におけるPrPScの検出が可能になったと決められた。同じ材料の1,000倍希釈液においてPMCAを用いることなく等量のPrPScを検出したが、これは、これらの条件下における感度の増加が約6,600倍であることを示している。
これらの研究の間に、150周期(インキュベーション75時間)の後に、増幅の効率が増加し始めたことが分かった。本発明者らは、この問題の理由が、37℃での連続インキュベーションにより材料が不活性化することであると発見した。PrPC基質の、または変換を触媒するのに必須である他の脳共同因子の安定性に対して、インキュベーションが陰性効果を有するようである。この結果は、PMCA増幅の開始前の72時間中に10%正常脳ホモジネートを予備インキュベーション(超音波処理を用いてまたは用いずに)すると、増幅効果が著しく低下した実験に基づく。この結果がきっかけとなって、検出の感度をさらに増加させるために、連続自動化PMCA(saPMCA)と呼ばれる新しい技術が開発された。この技術は、各々144回までのPMCA周期を実施することからなる。144PMCA周期の第1回の終了後に、サンプルを新鮮な10%正常脳ホモジネートに10倍希釈し、さらなる144(またはそれより少ない)PMCA周期を実施する。saPMCAが、基質の消耗の問題を解決し、PrPの変換の急上昇を維持することを可能にする。新鮮な10%正常脳ホモジネートに増幅サンプルを10倍希釈することにより分けられる2つの連続回のPMCA周期により、感度が劇的に増加する。この実験は、スクレイピー脳の3.1×106倍希釈までにおいてPrPScシグナルが検出された最初の回の96PMCA周期を実施することからなっていた。その後、このおよびPrPScシグナルが検出されない全ての連続的希釈液を、正常脳ホモジネート中に10倍希釈し、新しい回の118PMCA周期に供した。この第2回のPMCAにより、スクレイピー感染ハムスター脳の5×1010倍希釈までにおけるPrPScの検出が可能となった。PMCAを行うまたは行わないPrPScのシグナル強度を比較すると、感度の増加は約1千万倍である。この感度は、さらなる回のsaPMCAを実施することによりさらに増加させることができる。
実施例5
saPMCAによるインビトロでの無限プリオン複製
saPMCAの原理は、連続希釈および連続回の増幅により、プリオンをインビトロで限定されずに複製し得ることを予想する。この仮説を評価するために、263Kスクレイピーに感染したハムスター脳を、均質化し、10%正常ハムスター脳ホモジネート中で104倍希釈した。サンプルを、直ちに凍結するか、20PMCA周期に供した。この第1回のPMCAの後、増幅され凍結された少量のサンプルを取り出し、より正常の脳ホモジネート中に10倍希釈した。これらのサンプルを、再び、直ちに凍結する、または20PMCA周期により増幅した。この手順を数回繰り返し、残っているPrPCを除去するためにプロテイナーゼK(PK)で消化した後にウエスタンブロットによりPrPSc増幅を決定した。さらなる研究において、17回のPMCAを行った。最終PMCAにおいて、スクレイピー脳ホモジネートの量は、10-20倍希釈に相当する。存在するPrPSc接種体の量の推定により、この希釈後に、1分子より少ない脳由来タンパク質が存在しており、新しく生成されたPrPScの量は、スクレイピー脳の100倍希釈液中に存在するPrPScの濃度に相当する約1×1012分子に相当することが示される。10-20希釈用の増幅されたサンプルをさらに希釈し、10-40に相当するスクレイピー脳ホモジネートの最終的希釈を得るように100倍希釈により分けられた複数回のPMCAに供した。一連の1000倍希釈およびその後の48周期のPMCAを実施することにより、PrPScの連続複製をさらに10-55希釈まで続けた。本発明は、これらの結果から、PMCAが、PrPScのインビトロでの無限複製を可能にすると結論付けた。興味深いことに、サンプルの1000倍希釈の後でさえ、シグナルが十分に回復され、これは、増幅率が少なくとも1000であることを示している。さらに、PrP複製の割合は希釈時に変化せず、これは、新しく変換されたタンパク質が、脳由来PrPScと同様の効率で、PrPSc形成を誘発することができることを示している。健常脳ホモジネートを連続的にそれ自体希釈し、PrPSc接種体の不存在以外は前述したような同数のPMCA周期に供した対照実験は、どんな条件下にもプロテアーゼ抵抗性PrPを示さなかった。
実施例6
saPMCAによるプリオン検出の再現性
異なる実験条件下においてPMCA周期の前および後に得られたPrPScシグナルをモニターすることにより、増幅の再現性を測定した。10%健常ハムスター脳ホモジネート中にスクレイピー脳を10,000倍希釈で含む同等のサンプルを、マイクロプレート超音波処理装置の異なる位置に配し、48PMCA周期に供した。同じサンプルの3種の異なるウエスタンブロットにおいて得られたPrPScシグナルの濃度計分析は、小さな多様性は観察されるが、相違が統計的に著しくなく、位置効果に起因し得ない(むしろ、単に、実験の変動に起因する)ことを示している。さらに、手順の再現性を分析するために、10%健常ハムスター脳ホモジネート中にスクレイピー脳ホモジネートを10,000倍希釈で含む同等のサンプルを、異なる日に行った実験において48PMCA周期に供した。異なる7日において、増幅効率は実質的に同じであった。ここでも、濃度計分析は、異なる実験においてシグナルが統計的に異ならなかったことを示した。同じ基質中で5匹の異なるハムスターから得られた10,000倍希釈スクリーニング脳ホモジネートの製剤を増幅することにより、異なるが同等の接種体の、変換効率への影響を研究した。48PMCA周期後に、PrPCからPrPScへの大規模かつ類似の変換が観察された。5匹の異なるハムスターからの正常脳ホモジネートを、独自のPrPSc接種体の増幅のための基質として用いると、類似の結果が得られた。しかしながら、実験の濃度計分析は、両方の場合において、1つのサンプルが、他の4つのサンプルよりも、統計的に有意な異なるレベルの増幅を与えることを示した。これらの結果は、おそらく、PrPの発現または変換因子における個体の変動が、インビトロでのプリオン変換の程度における変化につながり得ることを示している。前述の研究の各々において、同じ材料を含むが増幅することなく凍結を維持したサンプルにおいてPrPScは検出されなかった。
実施例7
saPMCAによるプリオン検出の特異度
検出の特異度は、診断アッセイに非常に重要である。スクレイピー感染ハムスターの10種の脳サンプルと健常動物の11種のサンプルを48PMCA周期に供すると共に、プロテイナーゼK(PK)消化の後のウエスタンブロット分析によりPrPScを検出した盲検試検において、周期的増幅の特異度を評価した。結果は、病気の動物から由来したサンプルの100%がPMCA後に陽性であったが、正常動物からのサンプルでPrPScシグナルを示したものはなかったことを示した。10種の陽性対照サンプルのうち、7種が脳の10,000倍希釈に相当し、2種が50,000倍希釈に相当し、1種が100,000倍希釈に相当する。これらの10種のサンプルで、PMCA増幅を行うことなくウエスタンブロットにおいてPrPScシグナルを示したものは無かった(データ示さず)。このデータの解釈は、用いられた条件下における、PMCAが、PrPSc検出の100%特異度をもたらすということである。
先に示したように、PMCAを用いる増幅率は、実施されたインキュベーション/超音波処理周期の数に依存する(Saborio et al.,2001)。したがって、本発明者は、多数のPMCA周期の後に、PrPSc様シグナルが陰性サンプル上に現れるかどうか評価することを決めた。この目的で、50,000倍希釈スクレイピー脳の不存在下(陰性対照)または存在下(陽性対照)における10%健常ハムスター脳ホモジネートを、24、48、96または144PMCA周期に供し、PrPScシグナルをウエスタンブロット分析により検出した。結果は、陽性対照サンプルにおいて、実施した周期の数に依存した強度で、PMCAの後にしかPrPSc反応性が検出されなかったことを明らかに示している。これに対して、陰性対照サンプルでは、実施したPMCA周期の数に関わらず、PrPScは全く検出されなかった。PrPSc形成の程度とPMCA周期の数との間の関係を評価するために、本発明者らは、データを数学的式に適合させようとした。利用できる全ての点を考慮すると(ここでも、3回繰り返し)、シグモイド曲線(式:シグナル強度=1882/(1+e-(周期の数-53.6)/21.8)を示す最高適合が得られ、これは、変換の程度と周期の数との間の指数的関係の後、新しいPrPScの形成がプラトーに達することを示している。このプラトーは、PrPScに変換することにより全てのPrPC基質が消耗されることにより、または基質の不活性化による変換効率もしくは長時間のインキュベーション/超音波処理の後の推定変換係数の損失により発生し得る。この目的はsaPMCAにより解決される。最後の時間を除いてデータを適合させると、指数曲線を示す最高適合が得られる(式:シグナル強度=67.4/e0.98(周期の数))。これらの発見は、変換条件が制限されない場合(100周期未満)、PMCA周期の数への指数的依存の観念を支持する。
基質をリフレッシュするために材料を希釈した後に数回のPMCAを行った、より困難な条件下においても特異度をさらに研究した。健常ハムスターからおよび263Kスクレイピーに感染した動物からの脳を、10%正常ハムスター脳ホモジネート中に104倍希釈した。サンプルを48PMCA周期に供した。PMCAのこの第1回の後に、少量の増幅サンプルを採取し、より正常な脳ホモジネート中に10倍希釈した。これらのサンプルを、再び48PMCA周期により増幅した。この手順を数回繰り返し、PrPScの発生を、PK消化後のウエスタンブロットにより決めた。この研究において、10-13に相当する最初の脳の最終的希釈を達成するための10回のPMCAにより、初期接種体がスクレイピー感染動物から由来した場合にのみ、PrPScが連続的に形成された。PrPSc接種体の不存在下にPrPScは検出されず、これは、480PMCA周期の後でも、系が高い特異度を維持し、偽陽性サンプルは観察されなかった。
実施例8
saPMCAにより、単分子のPrPScが検出できる
所定のサンプルにおいて本発明によるsaPMCAが検出し得るPrPScの分子の最低数を推定するために、スクレイピー脳ホモジネートを変換緩衝剤中に1×10-12倍に希釈し、この材料をsaPMCAに供した。本発明者の推定によれば、これらの研究のために用いられたスクレイピー感染脳におけるPrPSc濃度は約67ng/μlであった。この結果は、1×10-12倍の希釈が、6.7×10-20g/μlまであるいは1μl当たりPrPScモノマー1.3分子を含むことを示している。この研究において、20μlの体積を用いたので、試験したサンプルは、PrPScモノマー約26分子を含む。驚くべきことに、saPMCAの5回後、使用された4種の複製体の1種においてシグナルが検出され、増幅7回後、本発明者らは、4種の複製体の3種においてシグナルを検出した(図4)。重要なことに、脳の10-14倍希釈液を用いた場合(サンプルは、PrPScの分子を含まないはず)、またはPrPScが存在しない対照サンプルにおいて、増幅された産物が検出されなかった(図4)。10-13倍希釈液においてシグナルは検出されなかった(データを示さず)。
最近のデータは、感染性を維持しPrPCからPrPScへの細胞非含有変換を誘発することができる最少寸法の粒子は、PrPモノマー14〜28分子を含むことを示した。これは、saPMCAが、オリゴマー感染性PrPScの単一粒子を増幅させることができることを示している。この以前には無かった増幅効率は、DNAのPCR増幅の効率にのみ匹敵する。さらに、これらのレベルの増幅において、PCRはしばしば人工的増幅産物を提供し、本発明者はPMCAを用いて偽陽性を見ることは滅多に無かった。
実施例9
saPMCAとBSEの迅速検出に用いられる標準的試験との間のプリオン検出の感度の比較
前述のように、BSE疾患の重症結果と、vCJDの医原性伝染への関心の増加は、PrPScを検出するための複数の生化学的方法の開発の契機となった。欧州共同体により5つの試験が認可され、幾つかの国においてBSE調査のために広く用いられている(Moynagh and Schimmel,1999;Soto,2004)。全てのこれらの試験は、ウエスタンブロット、ELISAまたはCDIによるPrPScの免疫学的検出に相当する(参考に、(Soto,2004)を参照されたい)。これらの原理を用いる試験(ハムスターPrPScの検出用に適合)の感度とPMCA検出とを比較するために、本発明者らは、比較を容易にするために全て10%正常脳ホモジネート中で調製した同じサンプルを用いる異なる方法と並行して研究を行った(表3)。ウエスタンブロットは最も標準的であるがこれらの試験において最も感度が低く、誤って折り畳まれたタンパク質8×1010分子に相当する、サンプル20μl中の最低4.0ngの量のPrPScの検出が可能となる。我々によれば、単純ELISAは、ウエスタンブロットより8倍感度が高かった。しかしながら、2部位イムノメトリックサンドイッチELISA(Deslys et al.,2001)のような、より高感度のELISA試験が報告されている。文献の推定によれば、CDIは、2×105に相当するスクレイピー脳ホモジネートの最高希釈までPrPScを検出し、これは、ウエスタンブロットより27倍感度が高いことを示している(表3)。PrPSc検出を高めるために用いられてきた一つの手段は、リンタングステン酸(PTA)を用いるタンパク質の特異的沈澱および濃縮である(Safar et al.,1998;Wadsworth et al.,2001)。我々によれば、スクレイピー脳からのPrPScのPTA沈澱は、標準的ウエスタンブロットと比較して検出を50倍増加させた(表3)。これに比べて、1回の100PMCA周期は、ウエスタンブロットと比較して平均して2500倍大きなPrPScの検出を得た。この感度閾値は、1回のPMCAが、PrPScの3.2×107個という少なく分子を検出することができることを示す。驚くべきことに、2回のPMCAは、2×1010に相当するスクレイピー脳の最大希釈までPrPScを系統的に検出することができ、これは、標準的ウエスタンブロットより6,500,000倍高い感度を示している(表3)。換言すれば、2回の100PMCA周期は、PrPScの12,300個という少ない分子を検出することができる。
PMCA周期の7連続回により、出発材料が病気の脳ホモジネートの1×10-12倍希釈であっても、増幅後にシグナルを発生する。この増幅により、標準的ウエスタンブロットに対して感度が30億倍増加する(表3)。現在まで、感染性の動物バイオアッセイは、プリオンの検出に利用できる最も高感度のアッセイであった。動物バイオアッセイにおいて、最も少量の感染剤で動物を感染することができると共に疾患症候が摂取後に最も短い時間で観察されるので、263Kスクレイピー系統に感染したハムスターが最も迅速で感度が高い。実際、動物の50%において疾患を発生(平均致死量またはLD50)させることができる最少量は病気脳の1×10-9希釈である。我々の実験において、全ての動物において疾患を発生させる最少希釈は4×10-9であり、これは、ウエスタンブロットより725,000倍高い感度を表す、誤って折り畳まれたタンパク質の107,000個という少ない数の分子をバイオアッセイにより検出することができることを示している(表3)。注目すべきことに、感染性研究において同じサンプルを用いたsaPMCAによる我々の発見は、2回または7回のsaPMCAが、最も効果的な動物バイオアッセイよりも、それぞれ、>8倍および>4000倍感度が高いことを示している(表3)。
(表3)
Figure 2008537155
a:検出された最大希釈は、PrPScが検出可能な263Kスクレイピー脳の最低希釈に相当する。
b:体積20μlの脳サンプル中に検出可能なPrPScの最少量。
c:体積20mlのサンプル中に検出されるprP分子の数を、組み換えPrPと比較することにより推定した。
d:感度の増加は、3F4抗体を用いる標準的ウエスタンブロットに対して表現する。
e:立体構造依存的免疫アッセイのデータは文献から得たが、全ての他のデータは実験的に計算した。
f:PCMAのデータは、各回において100PCMA周期を用いる3回の異なる実験において得られた平均に相当する。
実施例10
saPMCAによる末梢組織のプリオン検出
プリオン診断アッセイの実用的用途は、末梢組織および生体液におけるPrPScを検出する可能性に依存する。一貫して感染性であると共にプリオンの神経侵襲に役割を果たすことが示されてきた末梢組織としてはリンパ器官、特に脾臓がある(Aguzzi,2003)。従って、末梢においてPrPScを検出するためにPMCAを用いる可能性を評価するために、一群のスクレイピー病および正常動物を屠殺し、それらの脾臓を均質化し、正常ハムスター脳ホモジネートと混合し、PMCAに供した。これらの動物に、263Kハムスタースクレイピーを脳内に摂取し、疾患の臨床症候が明らかとなった後に屠殺した。増幅前に、PrPScに相当する検出可能なシグナルは、どの動物においても観察されなかった。しかしながら、96PMCA周期後に、病気動物の脾臓からの10種のサンプルの全てが、PrPScに相当する明確なシグナルを発生し、13種の対照サンプルのどれにおいてもシグナルは検出されなかった。PrPScシグナルの程度は、異なるサンプル中で異なっており、おそらく、異なる個体中の脾臓中に存在するPrPScの可変量を反映している。
実施例11
血液中のプリオン検出
方法
血液サンプル
これらの研究に用いられるサンプルは、263Kスクレイピー系統(またはビヒクルと共に)により感染された動物からの10%脳ホモジネート100μlを腹腔内に摂取したシリアンゴールデンハムスターから得た(Castilla et al.,2005a)。示された時間(表4)に、一群当たり複数の動物を屠殺し、EDTAを含む注射器を用いて心臓から血液を直接採取した。クエン酸ナトリウムを含む試験管中に血液を入れ、1mlずつに分けた。サンプルを加工してバッフィーコートフラクションを分離した(Castilla et al.,2005b)。
PMCA手順
バッフィーコートを凍結-融解に3回供し、100,000×gで4℃で1時間遠心分離した。ペレットを10%正常脳ホモジネート100μl中に再懸濁した。必要な変換係数を有するPrPC基質を含む正常脳ホモジネートの調製は、増幅の優れた効率を得るためである。健常動物に、組織を採取する前に、リン酸緩衝食塩水(PBS)と5mM EDTAを潅流した。変換緩衝剤(NaCl 150mM、1.0%Triton X-100および、Roche Switzerland)からの完全プロテアーゼインヒビターカクテル(EDTA含有)を含むPBS)中の10%脳ホモジネート(w/v)を調製し、サンプルを、短時間低速度遠心分離(1500rpmで30秒間)により清澄化した。増幅すべきサンプルを含む試験管を、マイクロ超音波処理装置(Misonix Model 3000,Farmingdale,NY)のプレートホルダー上に置かれたアダプターの上に配置し、37℃で30分間のインキュベーションを実施し、続いて効能60〜80%に設定された超音波の20秒間の振動を与えた(Castilla et al.,2005a)。全プロセスを通して37℃に設定されたインキュベーター中にマイクロプレートホーンを保持し、振とうすることなくインキュベーションを実施した。故障解決部分を含む自動化PMCA用のより詳細な技術プロトコールが記載されている(Castilla et al.,2004;Saa et al.,2004)。
PrPSc検出
プロテアーゼ抵抗性型のPrPを、攪拌下にプロテイナーゼK(50μg/ml)で45℃で60分間消化した後にウエスタンブロットにより検出した。電気泳動サンプル緩衝剤を加えることにより消化を停止した。タンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分別し、ニトロセルロース膜に電気ブロットし、0.05%Tween-20を含むPBSに1:5,000の割合で希釈された3F4抗体(Signet,Dedham,MA)で調べた。免疫反応性バンドを、高感度化学蛍光アッセイ(Amersham,Piscataway,NJ)により視覚化した。ウエスタンブロットシグナルを、UVP Bioimaging system EC3 apparatus(Upland,CA)を用いて濃度測定により分析した。
結果
感染性疾患の通常の診断のための最良の供給源は、尿および血液のような生体液である。有力な証拠は、感染性物質が血液中に、少量であって生化学的に検出できない量であるが存在することを示している。血液中のプリオンの検出のためのsaPMCAの適用を評価するために、スクレイピーの臨床的徴候を有する18匹のハムスターおよび12匹の正常健常対照からサンプルを得た。バッフィーコートを、方法に記載のように抽出し、10%正常ハムスター脳ホモジネートに加えた。144PMCA周期後、18種のスクレイピーサンプルのうちの1種は、増幅PrPScに相当するシグナルを示した。第2回の144PMCA周期後、9種のサンプルにおいてPrPScが観察されたが、対照サンプルにおいては観察されなかった。合計で6回のPMCA後、18種のスクレイピーサンプルのうち16種が、明らかな陽性シグナルを呈し、12種の対照サンプルのいずれも、検出可能なシグナルを示さなかった。これらの結果は、PMCAが、血液中のプリオンを感度89%および特異度100%(偽陽性は無し)で検出可能にすることを示している。今まで、血液中のプリオンを検出することができる唯一のアッセイは、結論が出るまでほとんど2年かかる動物バイオアッセイである。血液中のプリオン検出のためのバイオアッセイの感度は約31%であり、これは、種々の研究者により報告された異なる実験の平均に相当する(Brown et al.,2001)。従って、saPMCAは、最も高感度のバイオアッセイよりも劇的に感度が高い。さらに、他の方法は血液中のプリオンを検出することができないので、全ての病気動物がそれらの血液中にプリオンを含むと予想されるかどうかまだ明らかでない。
実施例12
発症前動物の血液中のプリオン検出
発症前相中に血液中のプリオンを検出するためのPMCAの適用を評価するために、一群のハムスターに、ビヒクル(リン酸緩衝食塩水またはPBS)または、263Kスクレイピー系統の10%脳ホモジネートを腹腔内(i.p.)投与した。インキュベーション期間中の異なる時間に、一群の動物を屠殺し、採血し、バッフィーコートフラクションを前述のように分離した(Castilla et al.,2005b)。サンプルを、健常ハムスター脳ホモジネート中に再懸濁し、144PMCA周期に供した。基質をリフレッシュするために、1回のPMCA周期の後に、サンプルを正常脳ホモジネート中に10倍希釈し、もう1回の144PMCA周期を行った。我々の結果によれば、7回の144PMCA周期が、近年のデータ(Silverira et al.,2005)に照らして感染性オリゴマーPrPScの単一ユニットに相当するモノマーハムスターPrPの10〜30分子の検出を可能にする(非公開観察)ので、この手順を7回繰り返した。
第1の群のハムスターを腹腔内接種の2週間後に屠殺した。5匹の感染または対照動物のいずれも、血液中に検出可能な量のPrPScを示さなかった(図2、表4)。この結果は、摂取体中に存在するPrPScが、摂取後の最初の数日中に、検出不可能なレベルまで消滅することを示している。興味深いことに、摂取20日後の1週間後に、感染された動物の50%において、PrPScが血液中に容易に検出することができたが、対照中では検出されなかった(図2、表4)。腹腔内接種の40日後に、発症前相中の陽性動物の最高割合が観察され、PrPSc検出の感度は60%であった。驚くべきことに、接種の60日後には、血液中のPrPScの検出が困難になった。実際、5匹の動物のうちの1匹しか、70日後において陽性を示さず、5匹の感染ハムスターのいずれも、接種の80日後に血液中に検出可能なPrPScを有していなかった(表4)。この実験においては114.2±5.6日である症候段階において、動物の80%が血液中にPrPScを有しており(図2)、これは、263Kプリオンを脳内に感染させたハムスターにおける初期の報告を確認した(Castilla et al.,2005b)。重要なことに、分析した38種の対照サンプルのいずれにおいても偽陽性結果は検出されなかった(表4)。
インキュベーション期間の異なった時間におけるPrPSc検出の分布は、興味深い傾向を示した(図3)。PrPSc検出の第1のピークが、接種後の20〜60日の発症前相中の初期に観察された。プリオンの末梢投与により、感染性材料が脳に到達する前に、リンパ組織および脾臓において複製の初期相が生じることが報告されている(Kimberlin and Walker,1979;Glatzel and Aguzzi,2000)。実際、インキュベーション期間の前半において末梢接種された動物の脳において感染はほどんどまたは全く検出することができない。よって、初期発症前相における血液中のPrPScの供給源は、脾臓および他のリンパ器官であると思われる。驚くべきことに、血液中のPrPScの量は、この初期相の後に低下し、実際、接種の80日後に消滅する(図3)。PrPScの検出不能期間は、感染性が末梢から脳に移動している期間に相当するようである。症候期間において、本発明者らは、大部分の動物においてPrPScを検出することができた(図3)。公開された研究およびこのモデルを用いる発明者の経験によれば、臨床徴候の発症の数週間前にしか、多量のPrPScが脳内に出現しない(Kimberlin and Walker,1986;Soto et al.,2005)。したがって、症候段階における血液サンプル中のPrPScは、脳漏出によるようである。
疾患の症候段階および発症前段階の両方において血液がプリオンを含むことが、動物の感染性アッセイにおいて十分に確立されている(Brown et al.,2001;Brown,2005;Hunter,2002)。ヒツジの実験的BSE感染において、無症候性感染動物(Hunter, 2003)からの輸血により感染性が伝達され、これは、インキュベーション期間中に、感染性物質が血液中に存在することを示す。ヒトにおいて、最近まで、輸血によるヒトTSEの伝染の証拠は無かった。しかしながら、vCJDの最近の3つのケースは、vCJD7でその後に死んだ無症候性ドナーからの輸血に関係していた(Peden et al.,2004)。輸血により伝染された場合が注目されるほど高い割合であるのは、無症状でvCJDをインキュベーションしている個体の血液中に比較的多量にプリオンが存在していることを示している。今まではヒトプリオンタンパク質遺伝子のコドン129おけるメチオニン同型接合体のおいてのみ臨床ケースが発生していたが、動物モデルを用いる研究に基づくと、全ての集団がvCJD感染に感受性があると考えられる。インキュベーション期間は数十年であるので、現在のところ、どれだけの人々がvCJD感染の無症候相にあるか知られていない。さらに、一部の感染患者は決して臨床症候を示さないが、他の個人に疾患を伝染する可能性のある無症候性キャリアのままである。スクリーニング試験およびこの病気を治療するための効果的療法が存在しないと、さらなる感染を防止し、感染率を調べ、感染患者を治療する前に、恐るべき世界的健康被害が生じる。本発明者の発見は、感染されているが無症候性実験動物の血液中にPrPSc(感染性プリオンの主要成分)が生化学的に検出された最初の時点を表している。ヒト紀元のプリオンの増幅のためにも、PMCA技術が適用された(Soto et al.,2005;非公開結果)。vCJDの症候前段階においてPrPScを正確に検出する性能は、この致命的かつ恐ろしい疾患で多くの人々が二次感染するリスクを低下させるための、多くの用途を有する主要な解決手段である。
(表4)血液中のPrPScの発症前検出において用いた動物の数および得られた結果
Figure 2008537155
実施例13
細胞基質を用いるプリオン増幅
PrPCの供給源と同じ種からの脳ホモジネート、および変換因子を用いて、伝統的PMCA増幅を行った。しかしながら、脳の利用は、特にヒトサンプルの場合に実用上かつ倫理的問題を引き起こす。この問題を克服するために、変換用の基質として正常プリオンタンパク質を過剰発現している神経芽腫細胞を利用した。saPMCAによる増幅の効率は、脳ホモジネートまたは神経芽腫細胞溶解物を用いた場合同様であると分かった。
実施例14
saPMCAによりインビトロで発生したPrPScは、脳由来PrPScに生化学的かつ構造的に同一である
saPMCAは、脳由来PrPScを含まないPrPScサンプルの発生を可能にする。この材料は、インビトロで生成したタンパク質の生化学的および構造的特性を分析すること、およびそれらをインビボ生成PrPScの特性と比較することに理想的である。ウエスタンブロットプロフィールを用いる最初の比較は、インビトロ複製が、疾患に関連する誤って折り畳まれたタンパク質と電気泳動移動性およびグリコシル化パターンが同じであるタンパク質を発生させることを示している。実際、異なるウエスタンブロットプロフィールを有する異なる種/系統からのPrPSc接種体を用いる実験は、新しく生成したPrPScが、常に、テンプレートとして用いられる誤って折り畳まれたタンパク質のパターンに従うことを示した(Soto et al.,2004)。さらに、インビトロで生成された高度精製PrPScのアミノ酸組成分析は、脳由来PrPScを用いて発見されたものに非常に類似する結果を示し、このことは、プロテイナーゼK(PK)消化の後の切断部位が両方のタンパク質において同じであることを示している。このことは、異なる系統からのPrPScが、タンパク質の異なる折り畳みまたは凝集故に異なるPK切断部位を有することが示されたので、重要である(Chen et al.,2000;Collinge et al.,1996)。タンパク質をエンドグリコシダーゼで処理した実験において、新しく発生されたおよび脳由来のPrPScの類似のグリコシル化パターンがさらに確認された。結果は、グリコシル化鎖の酵素的除去が両方のタンパク質において類似の効率で起こること、および非グリコシル化バンドが同じ分子量を有することを示した。
正常タンパク質イソ形から区別するために広く使用されてきた誤って折り畳まれたPrPの典型的特徴は、病原性タンパク質のプロテアーゼ分解に対する高い抵抗性である。プロテアーゼ抵抗性プロフィールを比較するために、類似量のPMCA発生PrPSc(スクレイピー脳ホモジネートの10-20希釈後に生成)および脳由来PrPScを、50、100、150、200および250、1000、2500、5000および10000μg/mlのPKで60分間処理した。両タンパク質は、これらの大きなPK濃度に高度に抵抗性であり、驚くべきことに、抵抗性のパターンは実質的に同一である。この結果は、プロテアーゼ抵抗性は疾患関連PrPの品質特性の一つであると共に、その量が感染性に密に関連するので、非常に重要である(McKinley et al.,1983)。PrPのプロテアーゼ抵抗性形を生成するために幾つかの手順が報告されたが、これらのケースの大部分において、プロテアーゼ抵抗性は、酵素の低濃度においてしか検出されず、真正PrPScにおいて見られるタンパク質抵抗性の程度に匹敵しない(Jackson et al.,1999;Lee and Eisenberg,2003;Lehmann and Harris,1996)。
誤って折り畳まれたPrPのもう一つの典型的特性は、非イオン性界面活性剤への高度の不溶性である。脳およびPMCAの両方から由来するPrPScの95%以上が、10%サルコシルの存在下におけるインキュベーションおよび遠心分離の後にペレット中で検出され、これは、2つのタンパク質は高度にかつ同程度に不溶性であることを示している。PrPScの不溶性は、>2Mグアニジニウム塩酸塩でタンパク質を処理した際に失われ、これは、両起源のPrPScが、カオトロピック剤による変性に等しく感受性であることを示している。
他の生化学的相違の原因となるPrPCとPrPresとの間の主な相違は、2つのタンパク質の二次構造である;すなわちPrPCは主にα-ヘリカルであり、PrPScはβシート構造に富む(Cohen and Prusiner,1998;Pan et al.,1993)。二次構造の研究のために、スクレイピー病ハムスターから、または10-20希釈後のサンプルからPrPScを高度に精製した。界面活性剤およびプロテアーゼ分解における分別沈澱に基づく標準的精製手順を使用し、電気泳動後の銀染色によりおよびアミノ酸組成分析により純度を>90%と推定した。インビトロ発生PrPScのフーリエ変換赤外線分光法を用いて行った構造研究は、精製された脳由来PrPScについて得られるスペクトルに非常に類似している高レベルのβシート含量からなるスペクトルを示した。スペクトルの構造解析および適合性分析は、両タンパク質について実質的に同一の二次構造プロフィールを示し、これらは、ハムスターPrPScについて以前に報告されたものに一致する(Caughey et al.,1998;Pan et al.,1993)。重要なことに、スペクトルは、疾患に関連する誤って折り畳まれたプリオンタンパク質について予想されるように、比較的少ないα-ヘリカル構造の含量が示された(May et al.,2004)。α-ヘリカル構造の欠乏は、PrPres様形がほとんど完全に凝集したβ-シート構造として組織されるインビトロPrP再折り畳みアッセイの殆どにとって欠点であると考えられる(May et al.,2004)。β-シート構造の高レベル並びに、PMCA生成PrPScについてランダムコイルおよびα-ヘリックスが存在することも、循環二色性研究により確認された。細菌中で生成された組み換え完全長ハムスターPrPCのFTIRスペクトルは、予想されたα-ヘリックスおよびランダムコイルの高い割合、および<10%のβ-シート構造を示した。
PrPScのβ-シート構造の高含量により、インビトロおよびインビボにおいてかなりの程度の凝集塊を形成する傾向が高くなる(Ghetti et al.,1996;Prusiner et al.,1983)。凝集塊の超構造的特徴を研究するために、高度に精製された脳由来およびPMCA発生PrPScからのサンプルを、陰性染色後に電子顕微鏡で分析した。両タンパク質が、先に記載されているように、直径が10〜20nmであり長さが50〜100nmである典型的プリオン棒状構造を形成する(Prusiner et al.,1983;Wille et al.,2000)。
プリオンの際だった特性は、インビボでの自動触媒的複製を維持する性能である(Prusiner,1998)。PrPScを含む脳抽出物を動物に注射すると、正常PrPCの変換をさらに導くことができ、誤って折り畳まれたタンパク質は、このように、動物における複製および発生を維持することができる(Prusiner,1998)。結果は、新しく形成されたPrPScが、脳由来PrPresの非存在下においてもインビトロでの複製を維持することができることを示している。しかしながら、変換の効率が同じであるかどうか分析するために、本発明者らは、脳由来およびPMCA生成PrPresにより誘発されるPrPC変換率を比較した。これらの実験のために、スクレイピー脳ホモジネートの100倍希釈に相当する同様の量のPrPScを含む両方のサンプルを、さらに正常脳ホモジネート中に希釈し、20増幅周期に供した。両方のサンプルが、高レベルのPrPCを変換して同様の量のPrPresを生成することができた。サンプルを160倍(合計16,000倍)以上に希釈すると、これらの条件下に効率的変換が失われた。この結果は、脳およびPMCA PrPScの両方について20増幅周期を用いて約300倍の増幅率が得られたことを示している。前述したように、増幅率は実施される周期の数に依存する(例えば、サンプルを140周期に供すると、>6500倍の増幅が得られた)が、ここでも、この割合は、PrPScがインビボ脳サンプルからのものかインビトロ生成タンパク質からのものであるかによらず、同様である。
最後に、本発明者らは、インビトロ生成PrPScの変換活性が、脳PrPresについて報告されているように変性に抵抗性であるかどうか研究した。脳由来およびインビトロ発生PrPScのサンプルを、100、110、120および140℃で1時間インキュベーションすることにより熱変性に供した。その後、これらのサンプルを用いて、正常脳ホモジネート中に希釈すること、および20PMCA周期を実施することにより、PrPSc形成を引き起こした。新しいPrPScの生成は、サンプルを100℃または110℃で予め加熱することにより変わらないが、この活性は、120℃でPrPScをインキュベーションすることにより劇的に低下し、140℃で加熱した後、完全に廃棄された。驚くべきことに、脳由来およびPMCA生成PrPScの両方の熱抵抗プロフィールが非常に類似しており、さらに、2つの形が互いに類似しているという仮説を支持する。
実施例15
saPMCAによりインビトロ生成されたPrPScは感染性である
長い間追跡されてきた一つの目的は、PrPの誤った折り畳みを誘発することによりプリオン感染性材料をインビトロ生成することである。この実験の成功裏の終結は、プリオン増殖についての異議のあるタンパク質単独仮説の最終的証拠として広く認められている(Soto and Castilla,2004)。PMCAによるインビトロでのPrPScの連続的複製は、PrPSc接種体の連続的希釈に続いて多数回の増幅を行った後、本発明者らは、生化学的および構造的に脳由来PrPScと同じであるが最初のスクレイピー感染接種体の分子は欠く誤って折り畳まれたタンパク質の製剤を生成することができるので、この目的を達成するための完全なシステムである。インビトロ発生PrPresの感染性能を決めるために、一群の野生型シリアンハムスターに、10倍希釈により分けられる6または16回の連続PMCAにより発生するサンプルを脳内(i.c.)接種した。最初のPMCAにおいて、スクレイピー脳ホモジネートの希釈は10-4であるので、これらの群におけるスクレイピー材料の最終希釈は、それぞれ、10-9および10-19に相当する。接種前に、全てのサンプルにおいて、リン酸緩衝食塩水中へのさらなる10倍希釈を行った。大規模希釈にも関わらず、増幅後にPrPScの量を一定に維持した。定量的ウエスタンブロット分析の詳細な推定は、これらのサンプル中のPrPScの量が、誤って折り畳まれたタンパク質の約1010個の分子を含む、263Kハムスター脳の10-4希釈液中に存在するPK抵抗性タンパク質の量に類似していることを示した。10-10希釈液で感染させた動物(表5中の6群)の量から、材料の99.99999%が新しく発生したPrPSc(0.99999×1010分子)に相当し、脳由来PrPScには0.000001%しか相当しない(1×104分子)。10-20希釈(群7)においては、PrPScの100%が新しく発生したタンパク質である(1×1010分子)。驚くべきことに、これらの2セット(群6および7)における全ての動物が、スクレイピーの典型的徴候を示し、摂取後約170日で病気で死んだ(表5)。
(表5)
Figure 2008537155
a:PrPresの分子の数を、標準として既知濃度の組み換えハムスターPrPを用いて定量的ウエスタンブロットに基づいて推定した。
b:生存時間の予想は、先のデータおよび公開された観察に基づく。
c:観察された生存時間は、平均+/-標準誤差として表す。
は、PrPを含まない脳ホモジネート中で増幅を行ったことを示している。
263K実験モデルを用いた経験および文献報告に基づいて、スクレイピー脳ホモジネートの10-9希釈は、(一部の動物のみにおいて)感染性が観察される最低の希釈である。従って、本発明者らは、10-10および10-20に相当する希釈が、検出可能な疾患を発生させなかったと推定した(表5)。この推定を、我々の対照群において得られた結果により確認した(表5、群1、2、3および4)。2つの異なる陰性対照群を行った;すなわち、第1の群は、PMCA用のサンプルと平衡して、しかし増幅することなく凍結維持される連続的10倍希釈液において、正常ハムスター脳ホモジネート中にスクレイピー脳ホモジネートを10-10および10-20倍希釈で含んでいた(群1および2)。第2の対照は、PrPノックアウトマウス脳ホモジネート中に10-10および10-20倍希釈で連続的に希釈され、研究サンプルと同じ方法でPMCA周期(群3および4)に付されたスクレイピー脳ホモジネートからなっていた。陰性対照サンプルのこれらの4つの群における6匹の動物のいずれも、感染後300日まで病気の徴候を示さなかった(表3)。この結果は、明らかに、PMCA増幅サンプル中で見られる感染性が、新しくインビトロで発生したPrPresに関連していることを示している。
PMCA生成PrPScの感染性能を脳由来感染性と比べるために、6回および16回の連続PMCAの後に生成されたものと同様の量のPrPScを含むサンプルを一群の動物に接種した。前述のように、ウエスタンブロット分析を用いる注意深い推定は、連続PMCAアッセイの後のPrPScの量がスクレイピー脳ホモジネートの10-3希釈(さらなる10倍希釈事前接種を考慮すると10-4)に相当することを示した。スクレイピー脳のこの希釈液を注射した動物の陽性対照群(群5)は、平均生存時間が106日である病気を発症した(表5)。この実験のための材料および用いた希釈は、PMCA増幅を始めるために利用されたサンプルに正確に相当していたので、希釈および増幅前のサンプル中に存在する感染性の二重対照として、および、この量のPrPresに関連する感染性の対照として作用する。生存時間は、等量のPMCA生成PrPresを用いて得られるより短く、これは、インビトロで生成した誤って折り畳まれたタンパク質が著しく感染性が低いことを示している。感染性滴定研究を、本発明者らがどれだけ低い感染性をサンプル中に有するかを正確に見出すために実施することができるが、生存時間に基づけば、インビトロ生成PrPScが、同じ量の脳由来PrPresよりも10倍〜100倍感染性が低いように思われる。本発明者らは感染性物質の第2の検討も行っており、予備的結果は、最初にPMCAから由来する材料で感染された動物が、脳感染性材料を注射した動物と同様に病気で弱っていることを示している。これらの結果は、インビトロで発生した感染性物質が、長期に安定であることを示している。
増幅したサンプルにより生じた疾患において観察される臨床的徴候は、感染性脳材料を接種した動物の徴候と同じであり、多動性、運動不全、頭部揺動、筋衰弱および体重減少を含んでいた。疾患の生化学的および神経病理的特徴も同じであるかどうか評価するために、本発明者らは、脳由来PrPSc(5群)およびPMCA生成PrPSc(群6および7)により誘発された疾患により影響を受けている動物の脳の比較研究を行った。これらの4つの群の全ての動物からの脳サンプルは大量かつ同様の量のPrPresを含んでおり、同じグリコシル化プリフィールであった。逆に、陰性対照動物の脳において、プロテアーゼ抵抗性タンパク質は検出されなかった。PMCA生成感染性が新しい系統を表すかどうかさらに評価するために、本発明者らは、PK処理後の電気泳動可動性およびPrPScの糖形パターンを、ハムスターにおける2つの他の標準的スクレイピー系統、すなわち、263Kおよびドラウジー系統と比較した。PMCA発生PrPScのウエスタンブロットパターンは263K(PMCAにより新しいPrPScを生成するために用いられる系統)と同じであるが、263Kと生化学的に異なると公知の系統であるドラウジーとは本質的に異なる。
組織学的分析は脳の典型的海綿状変性を示し、インビトロ生成PrPScに感染した動物からのサンプルは、感染性脳材料を接種したハムスターの脳から得られるものと区別不可能である空胞形成のパターンおよび程度を示した。PrPの蓄積および星細胞形成のために組織サンプルを染色したときも、同じ類似性が見られた。したがって、動物の全ての生化学的、組織学的および臨床的分析に基づいて、本発明者らは、インビトロ生成PrPScが、脳由来PrPresと類似の神経学的疾患のきっかけになると結論付けた。
実施例13および14のデータは、saPMCAによりインビトロで生成されたPrPScが、疾患の経過中に脳において生成される誤って折り畳まれたタンパク質と同じであることを示している。これは、TSE診断のためにsaPMCAを実用的に適用することに必要とされないが、疾患プロセスの再現におけるアッセイの関連性を示している。技術の自動化、感度、再現性および高スループットと組み合わされたこれらの発見は、saPMCAが、TSE療法用の化合物を同定するための非常に有用なアッセイであることを示している。
本明細書において開示され主張されている全ての組成物および方法を、本発明の開示に照らして過度の実験を行うことなく、作成および実施することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様にて記載したが、当業者には、その組成物および方法に、および本明細書において記載の方法の工程および一連の工程において、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく変更を適用し得ることが明らかである。一つの態様の局面を他の態様に適用することができ、逆も同じである。より具体的には、化学的および生理学的に関連している特定の薬剤を、同じまたは同様の結果が達成される本明細書において記載の薬剤に置き換えてもよいと解される。当業者に明らかな全てのそのような同様の代替手段および変更が、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の精神、範囲および概念に含まれると見なされる。
参考文献
以下の参考文献を、本明細書において提示されたものの補助となるように例示的な手順または他の詳細を提供する程度に、本明細書に参照により具体的に組み入れる。
米国特許第4,196,265号
米国特許第5,567,595号
米国特許第5,688,648号
米国特許第5,863,727号
米国特許第5,914,273号
米国特許第6,008,373号
米国特許第6,150,107号
米国特許第6,562,209号
米国特許第6,855,503号
WO 00/13026
WO 01/19841
WO 02/04954
GenBankアクセッション番号:
AAP84097
AAU02120
AAU02123
AAU93884
AY335912
AY723289
AY723292
AY748455
NM_183079
NM_011170
NP_035300
NP_898902
非特許文献:
Figure 2008537155
Figure 2008537155
Figure 2008537155
以下の図面は、本明細書の一部であり、本発明の特定の局面をさらに説明するために含まれる。本発明は、本明細書において提供された具体的態様の詳細な説明と組み合わせて図面を参照することにより、より良く理解することができる。
例示的なsaPMCA手順を示す流れ図である。ブロック矢印は、複数増幅または連続増幅周期を発生させるために繰り返される工程を示す。 PMCAによる、スクレイピー感染ハムスターの血液中のPrPSc検出を示す。スクレイピー接種動物および対照動物の群からの血液サンプルを、インキュベーション期間中の異なる時間に採取した。記載されているように(Castilla et al.,2005)、1mlの血液を用いてバッフィーコートを調製した。サンプルを144周期のPMCAに供した。第1回目の増幅からのサンプル10μlを、正常脳ホモジネート90μl中に希釈し、144周期PMCAの新しい回を実施した。このプロセスを、合計7回繰り返した。各パネルは、各群の動物のサンプルを用いてPMCAの7回目に得られた結果を示す。Ix:263Kスクレイピーに感染したハムスターからのサンプル;Cx:PBSを注射した対照動物からのサンプル。-PKが示される正常脳ホモジネート(NBH)を除いて、全てのサンプルを電気泳動前にPKで処理した。 インキュベーション期間の異なる時間における、PrPSc血液陽性動物の割合を示す。血液中にPrPScの陽性を示すサンプルの割合を、サンプルを得た接種後の時間に対して示す。PrPSc検出について2相が観察された:すなわち、リンパ組織中の末梢プリオン複製が起こっている時間におそらく相当するインキュベーション期間中の初期段階と、脳が多量のPrPScを含む症候段階における第2の相。 saPMCAにより検出されたPrPScの最少量を示す。スクレイピーハムスター脳ホモジネートを、1×10-12および1×10-14の希釈度に達するように変換緩衝剤中に連続的に希釈した。4つの各希釈液20μlを、4つの別々の試験管中で、正常脳ホモジネート80μlと混合し、144周期PMCAに供した。その後、20μlをPK消化後のウエスタンブロットに使用し、10μlを正常脳ホモジネート90μl中に希釈し、サンプルを144周期PMCAの第2回目に供した。この手順を、7連続回のPMCAに達するように複数回繰り返した。Sl、S2、S3およびS4は、各希釈における4つの複製試験管に相当する。陰性対照として、変換緩衝剤中に10-12に希釈した正常脳ホモジネートを使用し、saPMCAの同じスキームに供した。この実験も、4つの複製試験管中で行い、Cl、C2、C3およびC4は各結果を示す。

Claims (49)

  1. (a)サンプルを非病原性タンパク質と混合して反応混合物を作る工程、
    (b)(i)反応混合物をインキュベーションする工程、
    (ii)反応混合物を破壊させる工程、
    (iii)工程(i)および(ii)を1回または複数回繰り返す工程
    を含む、一次増幅を行う工程、
    (c)(i)反応混合物の一部を除去し、それをさらなる非病原性タンパク質と共にインキュベーションする工程
    を含む、連続増幅を行う工程、
    (d)アッセイを用いて、反応混合物中のプリオンを検出する工程
    を含む、サンプル中のプリオンを検出する方法。
  2. プリオンが哺乳動物PrPを含む、請求項1記載の方法。
  3. 非病原性タンパク質が検出可能な標識を含む、請求項1記載の方法。
  4. サンプルを約25〜50℃でインキュベーションする工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
  5. サンプルを約1分間〜約10時間インキュベーションする工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
  6. サンプルの破壊が超音波処理による、請求項1記載の方法。
  7. 超音波処理装置が自動操作のプログラム可能である、請求項6記載の方法。
  8. サンプルが超音波処理装置に直接接触しない、請求項6記載の方法。
  9. サンプルが蒸発を防止するために密封される、請求項1記載の方法。
  10. 工程(b)(i)および工程(b)(ii)を1〜200回繰り返す、請求項1記載の方法。
  11. 反応混合物が金属キレート化剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
  12. 金属キレート化剤がEDTAである、請求項11記載の方法。
  13. 非病原性タンパク質が細胞溶解物からのものである、請求項1記載の方法。
  14. 細胞溶解物がPrPを過剰発現している細胞からのものである、請求項13記載の方法。
  15. 細胞溶解物が、突然変異体または標識されたPrPを発現している細胞からのものである、請求項13記載の方法。
  16. 細胞溶解物が脳ホモジネートである、請求項13記載の方法。
  17. 脳ホモジネートが哺乳動物脳ホモジネートである、請求項13記載の方法。
  18. 脳ホモジネートの供給源がサンプルの供給源と同じ種である、請求項13記載の方法。
  19. 工程(b)が約3日間行われる、請求項1記載の方法。
  20. サンプルが動物からの組織サンプルである、請求項1記載の方法。
  21. 組織サンプルが脳からのものである、請求項20記載の方法。
  22. サンプルが末梢器官からのものである、請求項20記載の方法。
  23. 末梢器官が血液、扁桃、脾臓または他のリンパ器官である、請求項22記載の方法。
  24. プリオンを検出するためのアッセイがウエスタンブロット、動物バイオアッセイ、ELISAもしくはCDI、細胞感染性アッセイまたは分光学的アッセイである、請求項1記載の方法。
  25. ELISAアッセイが2部位イムノメトリックサンドイッチELISAである、請求項24記載の方法。
  26. (a)サンプルを非病原性タンパク質と混合して反応混合物を作る工程、
    (b)(i)反応混合物をインキュベーションする工程、
    (ii)反応混合物を破壊させる工程、
    (iii)工程(i)および(ii)を1回または複数回繰り返す工程
    を含む、一次増幅を行う工程、
    (c)(i)反応混合物の一部を除去し、それをさらなる非病原性タンパク質と共にインキュベーションする工程、
    (ii)工程(b)を繰り返す工程
    を含む、連続増幅を行う工程、
    (d)アッセイを用いて、反応混合物中のプリオンを検出する工程
    を含む、サンプル中のプリオンを検出する方法。
  27. 工程(c)を1回または複数回繰り返す工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
  28. 2×105個以下のプリオン分子を含むサンプル中でプリオンを検出することができる、請求項27記載の方法。
  29. 残留プリオンを不活性化する工程をさらに含む、請求項27記載の方法。
  30. 請求項1記載の方法により、動物からのサンプル中のプリオンの存在を検出する工程を含む、動物中の疾患を診断する方法。
  31. 動物が死んでいる、請求項30記載の方法。
  32. 動物が生きている、請求項30記載の方法。
  33. 動物が雌ウシである、請求項30記載の方法。
  34. 疾患がウシ海綿状脳症である、請求項33記載の方法。
  35. 動物がヒトである、請求項30記載の方法。
  36. 疾患が、クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)、クールー、致死性家族性不眠症(FFI)、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー病(GSS)または散発性致死性不眠症(sFI)である、請求項35記載の方法。
  37. CJDがiCJD、vCJD、fCJDまたはsCJDである、請求項36記載の方法。
  38. CJDが、他の種からのプリオンの感染から生じる、請求項36記載の方法。
  39. CJDが、ウシプリオンの感染から生じる、請求項38記載の方法。
  40. 動物がヒツジまたはヤギである、請求項30記載の方法。
  41. 疾患がスクレイピーである、請求項40記載の方法。
  42. 動物がシカまたはエルク(elk)である、請求項30記載の方法。
  43. 疾患がCWDである、請求項42記載の方法。
  44. (a)非病原性タンパク質と、
    (i)金属キレート化剤を含む変換緩衝液、または
    (ii)プリオン変換因子
    のうちの少なくとも一つとを含む、
    サンプル中のプリオンを検出するためのキット。
  45. 非病原性タンパク質が凍結乾燥される、請求項44記載のキット。
  46. (a)変換緩衝液、
    (b)汚染除去溶液、
    (c)陽性対照、
    (d)陰性対照、または
    (e)プリオンの検出用の試薬
    のうちの一つまたは複数をさらに含む、請求項44記載のキット。
  47. 非病原性タンパク質が検出可能な標識を含む、請求項44記載のキット。
  48. 非病原性タンパク質を標識するための試薬をさらに含む、請求項44記載のキット。
  49. プリオンを検出するための試薬が抗体をさらに含む、請求項46記載のキット。
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