JP2008532658A - 自動フロー追跡装置および方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の第1の態様は、心臓の付近の血流を示す監視信号から血流特性を決定する方法を提供する。この方法は、(a)監視信号からフロー包絡線を抽出するステップと、(b)フロー包絡線から一連の時間マーカを抽出するステップと、(c)弁開(valve opening)フローおよび弁閉(valve closing)フローなどの無関係なフローをフロー包絡線から除去するステップと、(d)フロー包絡線および監視信号からピーク速度などの特徴を抽出するステップとを含む。
最大流量は存在する最大周波数信号レベルから実質的に得ることができる。長方形断面速度プロフィールでは、最大流量は心臓系内の血流に対応する。当業者に明らかなように、異なる基礎をなす断面フロー・プロフィールに一層適した他の方法を用いて血流を決定してよい。
好ましくは、ステップ(a2)は次のステップを含む。すなわち、(a2.1)FFTの大きさからパワー・スペクトルおよび積分パワー・スペクトルを決定するステップと、(a2.2)パワー・スペクトル内の雑音パワーを推定するステップと、(a2.3)ドップラ信号が表す実際のフローを見つけるのに用いる積分パワー・スペクトルの傾斜しきい値を決定するステップとである。更に、雑音への感度を高めずに不正確な量を基準化して値を訂正するバイアス訂正係数を含む。
処理手段は好ましくは、ドップラ信号からフロー包絡線を抽出する方法と、フロー包絡線から望まないフロー信号およびアーチファクトを除去するための伝達関数とを含んでよい。心臓パラメータは好ましくは実時間で抽出する。
この装置は固定小数点DSPプロセッサと計算の互換性があってよい。
好ましい実施の形態は、例えば米国特許第6,565,513号、「超音波心臓出力モニタ(Ultrasonic Cardiac Output Monitor)」に開示されている適当に修正された心臓監視装置を用いて動作するよう設計される。上記特許の内容を相互参照文献としてここに援用する。図27は上述の特許出願に関して用いられる装置の運転210を示す。処理装置212に取り付けられた超音波変換器211を用いて患者210の心臓出力を監視する。処理装置212は変換器からの戻り信号を処理して、図28に示す出力トレースを与える。
好ましい実施の形態の自動フロー追跡装置の目的は、ドップラ・フロー・プロフィールから受けた信号を追跡して、ドップラ・スペクトルから心臓パラメータを抽出することである。トレース・アルゴリズムはドップラ・フロー・プロフィールの視覚トレースも与えるが、有用な定量的出力を与えるのは追跡から抽出される心臓パラメータである。
好ましい実施の形態は上述のハードウエア構成のマイクロコントローラの適当なプログラミングから構築される。
この明細書を通して以下の用語を用いる。
ET 放出時間
FFT 高速フーリエ変換
HR 心拍
IPS 積分パワー・スペクトル
Pmn 平均圧力傾斜()
MTCM 修正しきい値交差法
Vpeak ピーク速度
PS パワー・スペクトル
SNR 信号対雑音比
SNSI 信号雑音傾斜交差法
スポーク 或る時点でのスペクトル推定値の集合
VTI 速度時間積分
・ 生のスペクトル・トレース101: 各時点でドップラ・スペクトル・データからフロー包絡線を抽出する。無関係なフローおよびアーチファクトをトレースから除くことは行わない。
・ 時間マーカの抽出103: 心拍および放出時間を推定するのに時間マーカを用いる。共通のタイミング・マーカを用いるので、この段階は弁除去段階に統合される。
・ 弁および非フローの除去102: アルゴリズムのこの段階では無関係なフローおよびアーチファクトを生のスペクトル・トレースから除去して、望むフローだけを残す。
・ トレースの平滑化104: トレースを平滑化して見やすいトレースを作る。
まず、FFTを用いてドップラ信号をスペクトル写真に変換する。血液の速度と周波数との関係は標準ドップラ方程式から決定する。
連続波ドップラ・システムでは、各時点でのスペクトルは周波数の広がりを含む。トランスバルブラ(Transvalvular)CWドップラに関する調査研究から、断面フロー・プロフィールが長方形のとき、周波数の広がりの中の各時点での最大周波数は真の血液速度の良い推定値である。
時間的心臓パラメータとしては次のものがある。
・ 心拍(HR): 心臓が血液を送り出す速度
ただし、HRは毎分の脈拍(bpm)で、サイクル時間は秒で与えられる。
・ 放出時間(ET): 血液が出力管を通して放出される時間
・ 動いている組織からの戻りで、低周波スペクトルとして示される。これらの大部分はウォール・フィルタにより図1から除かれている。これは低周波帯域がないことから明らかである。
・ 心房と心室との間の血流からの戻り。
・ 動いている弁尖からの戻り。これらは、フロー・プロフィールの前縁(弁開)および後縁(弁閉)のそれぞれスパイク1および2として現われる。
・ 速度時間積分4(VTI): 単一心臓サイクル中に血液が流れる距離を表す。
・ 平均圧力勾配5(Pmn): 放出中の弁にかかる平均圧力差を表す。
注意: 上の4という係数は血液密度とmmHgへの変換とを結合したものである。
・ ピーク速度6(Vpk): 放出期間中のピーク流速で、
特に超音波スペクトル写真向けの最大周波数検出器のためのいくつかの確立されたアルゴリズムが存在する。これらのアルゴリズムの精度は信号対雑音に大きく依存する。これらのアルゴリズムはどれも完全な方法とは考えられないので、将来新しいアルゴリズムを開発する必要がある。基本的なアルゴリズムはフロー・アーチファクトを除去しない。
・ 実時間動作。
・ 心臓機能の心拍毎のパラメータの抽出。
・ 実時間の事象から特徴の識別までの遅れが最小。
・ 既存の固定小数点DSPプロセッサ装置と計算の互換性がある。
(背景)
以下の説明では、量およびFFTビン(bin)はフローの選択された方向に対応すると仮定する。従来の方法では、パワー・スペクトルを積分して積分パワー・スペクトル(IPS)を形成する。すなわち、
ただし、klはウォール・フィルタ・カットオフ(必要な場合)に対応するFFTビン・インデクス、P(k)はFFTビン・パワーである。定義により、IPS(k)はP(k)の寄与を含む。
m(k)=IPS(k)−IPS(k−1)
この定義は、k番目の傾斜がk番目の離散的パワー値に等しいことを示す。すなわち、m(k)=P(k)である。
最大周波数検出アルゴリズムの多くはIPS内の膝(図3の13)を見つけることにより最大周波数を決定する。各アルゴリズムの間の差はこれを行う方法にある。いろいろの技術の概要が上記の参考文献に述べられているが、第1の実施の形態に用いられる技術に従って説明する。
この装置で種々の周知の方法を用いるとき、ドップラ・フロー・プロフィールを追跡することに関して多くの問題がある。すなわち、
・ 適当な傾斜しきい値の定義。
・ スペクトルの平滑化。
・ 信号レベルの推定。
・ 雑音レベルの推定。
・ その他の問題。
これらの問題およびそれぞれの解決策について以下に説明する。
アルゴリズムへの入力はFFTの大きさfft(k)である。トレース・アルゴリズムは一度にスペクトルの片側だけで働く。アルゴリズム・パラメータは次のものを含む。
・ fh スペクトルおよびIPS分析のための周波数上限:ビン・インデクス単位。
・ fl スペクトルおよびIPS分析のための周波数下限(これは一般に0に設定するが、ウォール・フィルタ領域を横切る探索を防ぐのに用いてもよい):ビン・インデクス単位。
・ fNl 1/f領域より上の平らな雑音領域の始まり:ビン・インデクス単位。
・ Nspan パワー・スペクトルの長方形濾波を行う点の数(一般に17)。
・ Nsig 局所の信号レベルを計算するのに用いる点のスパン(一般に25)。
・ kN 傾斜しきい値の雑音係数。
・ ks 傾斜しきい値の信号係数。
ただし、fftmaxはパワー・スペクトル値(一般に32から255)を固定するアルゴリズム・パラメータである。
積分パワー・スペクトル(IPS)は次式で与えられる。
傾斜しきい値の一般的な形式を用いた。
mthresh=ksms+kNmN
ただし、ksは信号重み係数、kNは雑音重み係数、mNは雑音パワー推定値、msは信号パワー推定値である。このしきい値は雑音強さと信号強さの両方に依存するが、重み係数は独立に支配する。係数kNは雑音領域での偽の検出が多くなるのを抑える。
FFTから捕らえた生のスペクトルは非常に粗くて、スペクトル全体にわたって多くの頂点と谷を含んでよい。ドップラ装置の信号対雑音は非常に低いので、検出しきい値は雑音レベルに近づける必要がある。粗いスペクトルでは雑音領域内の大きなピークが低い検出しきい値を超えるために、最大周波数検出器がスペクトルの縁の検出を間違えることがある。
パワー・スペクトル推定値の変動を減らすための確立された多くの方法が存在する。これらの方法の多くは追加の記憶および計算を必要とする。平滑化の1つの方法は、時間と共に多数のFFTをとってその結果を平均することである。
計算を最小にする1つの方法は、多数のビンにわたるIPS値からIPS傾斜を計算することである。これは、パワー・スペクトルを長方形フィルタで平滑化した後、1つのビンのスパンにわたって単一点のIPS傾斜を計算することに等しい。
これをシフトして次のようにkでの傾斜を得る。
対応するIPSは、
したがって、1ビン・スパンにわたる傾斜は
m’(k)=IPS’(k)−IPS’(k−1)=P’(k)
ここでn=2N+1を選ぶと、
したがって、nが奇数のとき2つの傾斜m(k)とm’(k)とは等しい。
スペクトル平滑化の副作用は、鋭い移行縁が不鮮明になることである。理想的な移行では、しきい値が移行縁のサイズの50%でないとき長方形フィルタは選択された点をゆがめる。
信号レベルを推定する方法によりアルゴリズムの行動が変ることがある。
例えば、SNSI法はピーク・パワーのまわりの信号レベルを推定する。時々非常に強い信号があると信号に依存するしきい値が上昇し、そのために、検出された最大周波数が非常に低くなることがある。これはトレース包絡線内の「吸取り(sucked out)」領域として現われる。
信号の大きさを制限する1つの手段はレベルを固定することである。一般的なフロー・レベルはピークよりはるかに低く、固定することによりフロー信号強さの良い推定値が得られる。
パワー・スペクトルを平滑化するのに用いるフィルタを平均する効果は尖端が不鮮明な場合に助けになる。雑音スペックルの上にある弱い信号は信号から雑音へのスムーズな移行に変わる。
用いた装置からの雑音スペクトルは周波数と共に一定ではなく、雑音は「1/f」タイプの特性に従うことが分かった。雑音は1/f曲線に正確に従うのではなく、周波数が或る特定の周波数より低くなると雑音が増え、その周波数より上では雑音は平らになってほぼ一定のレベルになることが分かった。図9は変換器で記録した装置の代表的な雑音レベルを示す。
雑音パワー基準はパワー・スペクトルの比較的平らな末尾から推定する。雑音パワーは、雑音領域の始まりfNlから雑音領域の終わりfhまでのIPSの傾斜である。
平滑化されたパワー・スペクトルを調べて最大パワーを探す。対応する周波数インデクスはfps maxである。IPSは平滑化窓を用いて平滑化する。
最大信号パワーが最後の雑音推定値より係数kNuだけ大きい場合は境界を決定するのに十分な信号があるが、そうでない場合は信号レベルは雑音より低く、識別可能な境界はない。
fNl’=fps max+(fh+fps max)/3
ただし、fps maxは最大パワー点の位置であり、その後で固定する。すなわち、
fNl’<fNl なら fNl’←fNl
fNl’=fNl
雑音フロアの低周波限界fNl’が決まると、ビン(bins)をfNl’からfhまで平均して雑音パワーmNを推定する。精度を高くしまた雑音推定値の小数値を避けるために、雑音パワーをfNl’からfhまでのビンの和として表す。次にこの和を基準化して、Nspanビンの場合の平均を表す。
雑音推定値が前の(スポーク:spoke)雑音推定値の2倍を超える場合は、雑音を前の(スポーク)雑音推定値の2倍に制限する。これにより、小さな傷および異常値が雑音領域内に延びて雑音推定値に影響を与えるのを防ぐ。
調整された雑音推定値は周波数に従う1/fタイプの雑音の変動を説明する。考え方として、領域の末尾は周波数と共に平らであってほとんど信号に影響されないので、末尾領域を雑音レベルの1つの測度として用いることができる。雑音プロフィールは主として処理の連鎖によるので、雑音をモデル化することができる。雑音末尾を用いて全体のレベルを調整することができる。
mN’=kNfmN
を用いて雑音パワー基準を基準化する。ただし、mNは雑音末尾内で推定した雑音、kNfは周波数インデクスiの関数である。kNfは表または関数形で表してよい。1つの形は次の区分線形近似である。
注意: i<flのとき、更によい値は(8*50−5*fl)/50である。
ドップラ装置は非常に低いレベルの信号を処理するが、これは妨害を起こしがちである。妨害は水平線として現われることが多く、水平線は強い妨害スペクトルに対応する。線のスペクトル幅は変ることがあり、また周波数と共にふらつくこともある。スペクトル線はトレース・アルゴリズムに影響を与えることがある。スペクトルの平滑化は細い雑音線を平均化するのに役に立つが、広いスペクトル線では効果が小さい。
偽の検出は2つのチェックを用いて行う。第1のチェックは粗チェックで、不十分な雑音および信号による偽の検出を防ぐ。各周波数で現在の点の回りの「一般的な」信号対雑音が或る値より大きいかどうかチェックする。mN’より広いビンのスパンを用いて信号レベルmsを計算するが、この値は同じビンの数に戻して基準化する。
前に説明したように、スペクトルを平滑化すると移行の縁がぼやける。これは、高い信号対雑音を持つ明確な縁で特に明らかである。縁の改善段階では、傾斜しきい値を超えたところの近くの縁を探す。
縁の改善ステップは平滑化スパンにわたる信号パワーの重心に基づく。この方法はバイアスを有するので、これを訂正する必要がある。信号が強くて傾斜しきい値が低いときは、バイアスは非常に小さい。
検出された生のトレース点は信号対雑音の関数として変動する。これはこのアルゴリズムの性質である。バイアス訂正係数を与えて、位置を検出した縁点を訂正する。バイアス訂正係数は信号対雑音の関数として与える。
好ましい実施の形態では、訂正係数は表で実現する。これは種々の範囲の信号対雑音について1%刻みで訂正できるので、隣の訂正にスムーズに移行する。
信号パワーは、ビンの短いスパンにわたって最初の生のトレース点より低いFFTビン・パワーの平均をとることにより推定する。雑音パワーは雑音モデルからNspanにわたって平均して推定する。雑音は最初の縁点で推定する。
トレース・アルゴリズムを点毎に適用して生のトレースを生成する。前に述べたように、ドップラ・スペクトルは多数の無関係な非フローのソースにより汚染される。アーチファクトを除去することにより非フロー・ソースを除去して、基礎をなすフローを表すトレースを生成する。ここでは、アーチファクトはスペクトル表示上に望まないフローを生じる可能性のあるもの全てを意味する。
基礎をなすフロー・プロフィールおよびアーチファクトの性質はターゲットを得るのに用いる音響窓に依存する。一般に、アーチファクト・フローを除去するにはターゲットのタイプ毎に異なる方式を必要とする。肺動脈弁(PV)ターゲットは前縁および後縁に弁スパイクを示す。大動脈弁(AV)ターゲットは末尾領域を示す。CWドップラを用いるときは、両ターゲットは他方のフローおよび音響フィールド内の動いている組織からのアーチファクトを示す。
プロフィールは種々の方法で修正してよい。例えば、曲線の当てはめ、区分近似、および線などである。実際的には、修正されたプロフィールの精度は、装置または測定方法の誤差と同程度かまたは小さければよい。したがって、プロフィールに強制的に線を用いれば許容できる精度が得られる。
アーチファクトを実時間で除去するために分析に利用できるのは、最も新しい速度プロフィールの短い部分だけである。
心臓のタイミング・マーカ34および35を図11に示す。
(心拍)
心拍は弁開の始まり(34)から次の弁開の始まりまでの時間と定義する。この定義はECG機が用いるR対R波の定義に近い。なぜなら、弁開の始まりはR波とほとんど同期するからである。
(放出時間)
放出時間はフローの継続時間である。心拍に用いるタイミング点と一致させるため、放出時間は弁開の始まり(34)から弁閉領域の終わり(35)までの時間である。
(AVアルゴリズム1)
AVアルゴリズムは速度および速度傾斜しきい値により働く。これは弁スパイクを能動的には除去しない。なぜなら、通常、弁スパイクはAVトレース上に存在しないからである。弁閉に用いる速度しきい値は重要である。AVでは、弁閉は長い末尾を有して非常に平らになることがある。通常、弁閉点は末尾内に際立った特徴を有しない。
弁開の近似マーカは、速度しきい値、強い(robust)傾斜しきい値、および異常除去検出器を用いて見つける。
生のトレースはまず予め決められた弁開速度しきい値を超えるはずである。この位置のどちらかの側の多数の点を用いて、トレースの傾斜を強く計算する。この傾斜が予め決められた速度傾斜しきい値を超えた場合は、この位置は弁開縁の先導する傾斜の可能性がある。しかし、この特徴は心房フローまたは異常かも知れない。前縁検出を一層強くするため、アルゴリズムは前方の多数の点を見て、速度が弁開速度しきい値より継続的に高いことを確認する。そうでない場合は非フローと見なして、現在の点を弁開とすることを拒絶する。次に、フローの縁で見つけた点を近似マーカ位置として用いる。
弁閉アルゴリズムは弁開アルゴリズムと同じであるが、異なるのは、傾斜しきい値の方向が逆であることと、異なる速度しきい値および速度変化しきい値を用いることである。更に、弁閉点の終わりを曲線上の更に高い点に移して、末尾の平らな領域内の点で外挿しないようにする改善ステップがある。
PVの場合はフローの始まりと終わりの弁スパイクを特徴とする。弁スパイクは基礎をなすフロー・プロフィールの上に突き出てもよいし突き出なくてもよい。
フローの始まりは弁開スパイクの始まりで起こる。弁スパイクが突き出ない場合は、弁の縁はフローと重なることもあるし重ならないこともある。突き出ない場合は、フロー・プロフィールから弁開の終わりを検出することができない。弁パワーを用いて、他の隠れた時間的情報を回復する。
フローの終わりは弁閉スパイクの中央で起こる。
マーカ識別の第1段階は、正確ではないが比較的信頼できる近似マーカ位置を見つけることである。このアルゴリズムは最初の探索点としてこれらの近似マーカを用いる。
速度トレースを低域濾波して、微粒子隆起および異常を全て除去する。低域フィルタはフロー・プロフィールを実質的に積分して、正弦波に近い波形を生成する。これは弁開点にくぼみを有し、弁閉点にピークを有する。PVでは、弁閉スパイクは正弦波形を修正するのに十分な大きさを有する。フローの縁またはスパイクの立下り縁の方に曲がる単一のピークがあってよい。または、これらの各事例に対応するピークと、フローと弁閉ピークとの間のフローの中にノッチに対応するくぼみがその間にあってよい。
次に濾波した波形をピーク検出器に通してピークを抽出し、図13に示す近似マーカ位置を識別する。立上り縁のすぐ前の負方向のピーク40と立下り縁のすぐ後の正方向のピーク41とがある。
弁の活動の信号レベルは一般に強い。したがって、信号パワーを用いて弁の活動を識別することができる。
弁の活動はフローと同時に起こる。全信号パワーは3つの成分で構成する。すなわち、強い弁成分、より弱いフロー成分、およびより弱い静止雑音成分である。考え方は、FFTビン・レベルに基づいてこれらの3つのパワー測度を推定することである。弁パワーしきい値より高い非常に強い信号は弁パワーとして分類し、雑音しきい値より低い非常に小さな信号は雑音と見なし、残りはフローと見なす。
理想的には、フロー信号と弁とを区別するには適応しきい値が必要である。しかし、弁レベルが信号より低い場合が必ずあるので、適応しきい値は全ての問題を解決するものではない。
弁パワーは2点移動平均フィルタにより濾波する。これはゼロ・パワー探索に影響を与える弁パワー内の単一サンプル・ホールを防ぐ。
低速度領域のフロー・プロフィールは多くのピークおよび谷を含む。生のトレースを用いると多数のピークが更に誇張される。この領域は無関係な情報を含むことが知られている。アルゴリズムはこれらの特徴を除去し、偽のピークを見つける可能性を最小にする。分析の目的では、トレースを強制的にウォール・フィルタ周波数にし、ゼロ・フローにしないことが大切である。フローを強制的にゼロにすると見かけの高い傾斜領域を生じるため、アルゴリズム内に偽の検出が起こる。
速度プロフィールを強制的に、弁開の始まりでゼロ速度で弁開の終わりで速度フロー・プロフィール上の点までの線にすることによりフロー・プロフィールを修正する。弁開の期間は、しきい値を決めた弁パワーが非ゼロである領域として識別する。近似弁開マーカ位置を、しきい値を決めたパワー探索の始点として用いる。
弁の始点を間違えるのは、通常は弁開パワー・プロフィールが先導する小さなスカートを有するからである。このため、強制された弁開プロフィール線が基礎をなすトレースより高くなることがある。点を間違えたために起こる誤差を最小にするため、強制されたプロフィールが基礎をなすトレースより高くなるのを防ぐ。
弁閉領域の終わりは速度プロフィール内の弁閉スパイクのピークとして識別される。弁閉領域の始まりは、速度フロー・プロフィールと弁閉スパイクとの間のノッチで識別される。弁閉の弁パワーは比較的弱く、多くの場合に(特にパワーのしきい値を決定した後には)存在しないので、速度スパイクは一層信頼できる指標と判断された。
アルゴリズムは近似弁閉終点を用いて弁閉領域の大体の位置を得る。次に、近似エンド・マーカに最も近い2つのピークを識別する。2つのピークが近似マーカから非常に離れている場合は、この近似マーカを終点として用いる。2つのピークが十分近い場合は、2つのサンプルの間のピーク点に先立つ最も大きく下降したピークを用いる。生のトレースは非常に粗くて、多くの偽の単一サンプル・ピークが存在することがある。2点スパンは信頼性がより高く、弁閉が狭い場合でもうまく働くようである。前の下降の中の最大のものは速度プロフィール内の弁閉ピークの良い指標であることが分かった。
弁閉領域の始点および終点が見つかると、フローを強制的に、ノッチ点で始まり弁閉領域の終わりのゼロ・フローで終わる線にする。
図11の線32および33は、これらの定義と基礎をなすフロー・プロフィールへの直線近似とに基づく基礎をなすフローを示す。ここでは、これらの線は手で引いた。選択された弁閉点50を図15に示す。
この第2のアルゴリズムはPVアルゴリズム1の考え方に従うが、多くの改善がなされている。
PVアルゴリズム1の問題の1つは弁を探すことである。近似マーカの位置は不正確である。近似マーカは実際の弁の前または後に起こってよい。心拍の広い範囲にわたって、トレース・フィルタは各弁に対する近似マーカの位置をゆがめる。これらの問題のために探索スパンを広くすることが必要になり、このために検出誤りの問題が起こる。この第2の方法は、より強くて生のトレースの未知の部分を探すことに余り依存しないので、分析ウォール・フィルタは必要でないことが分かった。第2の方法はしきい値を決めた弁パワーに余り大きく依存せず、可能なときにフロー・プロフィールの特徴を用いて弁の活動を識別する。
弁開の始まりの検出はAVアルゴリズム1と同じであるが、異なるのは、異なる速度および傾斜しきい値を用いることである。
PVアルゴリズム1の場合と同様に、しきい値を定めた弁パワー方式および固定のパワーしきい値を用いるとき、弁開の始まりは人によって大きな変動を示す。弁パワーが強いと、得られる弁領域の幅のために弁の始まりが早くなり、ひどいときには心房の動きがフローの始まりとして検出された。AVアルゴリズム1の場合と同様に、より信頼度の高い弁開の始まりは近似マーカの位置のまわりの領域内の前縁をゼロ速度点まで外挿することにより見つかった。
弁閉の探索はAVアルゴリズム1いくつかの態様を用い、また他を改善する。考え方は、弁開の縁の後に起こる波形の特徴を連続的に監視することである。波形は主として左から右に向かって処理し、波形を横にたどりながら決定を行う。主な場合は2つで、弁スパイクが存在する場合と弁スパイクが存在しない場合である。後者の場合は2次探索を行って、実際に弁スパイクがないことを確認する。
第1のステップは、ピークと、弁開スパイクを通り過ぎたこととを確認する。波形の高さがピークしきい値の終わりより低いときピークを通り過ぎたと判断する。これはまだ弁閉速度しきい値より高い。領域ピークを通り過ぎると、フローと弁閉スパイクとの間のノッチを見つけるためにアルゴリズムは最小速度を監視する。探索のこの段階は、速度プロフィール内に弁閉スパイクの始まりを示す大きな上昇が見つかったときに終わる。この点が最小速度として妥当である。
弁スパイクを検出した場合は、弁スパイクの速度プロフィールのピークが見つかる。ピークの位置は弁閉の終わりを表す。また一層低い速度を戻って探すことによりノッチの位置を改善する。ノッチの位置は弁閉の始まりになる。この場合は、ノッチの位置で始まる線を強制的に弁閉の位置の終わりでゼロ速度にすることにより速度プロフィールを修正する。
非フロー領域は、単に前の弁閉の終わりと現在の弁開の始まりとの間のドップラ・スペクトル51の一部である。非フローは、この領域内でフローを強制的にゼロにすることにより除去する。
(ピーク速度)
ピーク速度52は現在の心臓サイクルのフローの始まりと終わりとの間に見られる最大速度である。ピークは弁クリックを除去した後に見つける。
AVアルゴリズム1およびPVアルゴリズム2は、特徴を検出するために多数のしきい値を用いる。しきい値は心拍と共に適応的に基準化してよい。これは、フロー・プロフィールから心拍を抽出する「粗」心拍検出器を用いて行う。ECGなどの他の入力を用いて心拍入力を形成してよいことは明らかである。かかる入力は近似マーカとして用いてよい。
粗心拍検出器はトレース・アルゴリズムとは全く独立に動作してよい。独立の検出器を用いる理由は、アルゴリズムが種々の値を自分自身に供給するのを防ぐためである。かかるフィードバック機構は不安定な挙動または状態を生み出して、アルゴリズムは自分自身を無期限に締め出すことになる。また、独立の情報は信号の状態が安定化したことを相互チェックするための良い方法である。
心拍検出器は多数の心拍間の推定値を平均して平均心拍を生成する。妥当な量の心拍履歴を保証するための最小の心拍数が得られたという条件が満たされないと、心拍検出器の値は無効になる。平均を計算するのに用いる全ての心拍は平均に基づく許容された心拍限界内にある。これは全ての推定値がチェック基準に一致することを保証する。
フロー・プロフィール内の弁スパイクを除去すると、7点FIR低域フィルタを用いてトレースを平滑化する。高周波のギザギザのある縁の拒絶率を高くするのに7点−60dBチェビシェフFIRフィルタ(7−point−60dB Chebycher FIR filter)を用いた。
最終の平滑化トレース51を図14に示す。
心臓を流れる血流速度の10msのスポーク速度でのドップラ・トレース関数を、生のドップラ・フロー信号にFFTを行った結果からのオフセット値から計算すると仮定する。FFTオフセットは、ゼロ速度を表すドップラ・プロフィール内のDC線(図1の7)を参照する。トレース関数内の次の式を用いてドップラ・プロフィールから必要な心臓パラメータを抽出する。
HR[bpm]=60/(始まりの間のスポークxtspoke)
ET%=100x(始まりと終わりの間のスポーク)/(始まりの間のスポーク)
VTI[cm/s]=kfνx(終わりと始まりの間のトレース高さの和)
Vpk[cm/s]=kfνx(ピークのトレース高さ)
Pmn[mmHg]=4xkfν 2x(終わりと始まりの間のトレース高さの2乗の和)/(始まりと終わりの間のサンプル)
速度プロフィールは離散点でだけ利用可能である。心臓パラメータVTIおよびPmnの積分を行うには、有限の点に基づいて積分近似を行わなければならない。強制されたプロフィールは速度プロフィールがゼロ速度で始まりまた終わることを保証する。この場合は、VTIおよびPmnの合計は台形積分法と等しい。台形法の数値的精度は十分であると考えられる。他の積分法を用いてもよい。
図16は抽出されたパラメータの代表的な集合を示す。
Claims (29)
- 心臓の付近の血流を示す監視信号から血流特性を決定する方法であって、
(a)前記監視信号からフロー包絡線を抽出するステップと、
(b)弁開フローおよび弁閉フローなどの無関係なフローを前記フロー包絡線から除去するステップと、
(c)前記フロー包絡線から一連の時間マーカを抽出するステップと、
(d)前記フロー包絡線および監視信号から特徴を抽出するステップと、
を含む血流特性を決定する方法。 - 前記特徴はピーク・フロー速度を含む、請求項1記載の血流特性を決定する方法。
- 前記フロー包絡線を平滑化するステップを更に含む、請求項1記載の血流特性を決定する方法。
- 前記監視信号は心臓の付近の血流を示す超音波信号を含む、請求項1記載の血流特性を決定する方法。
- 前記方法は患者の心臓の血流特性を実時間で監視する、請求項1記載の血流特性を決定する方法。
- 前記ステップ(a)は心臓内の流体の期待最大流量を抽出するステップを更に含む、請求項1記載の血流特性を決定する方法。
- 前記ステップ(a)は、
(a1)前記監視信号の周波数領域変換を形成するステップと、
(a2)前記監視信号のパワーの周波数領域特性を調べて最大流量を決定するステップと、
を含む、請求項1記載の血流特性を決定する方法。 - 前記ステップ(a2)は前記監視信号内の信号対雑音レベルに従って前記決定を調整するステップを含む、請求項7記載の血流特性を決定する方法。
- 心臓の読み取った心拍に従って前記特徴抽出プロセスのパラメータを調整することを更に含む、請求項1記載の血流特性を決定する方法。
- 前記最大流速は存在する最大周波数信号レベルから実質的に得る、請求項7記載の血流特性を決定する方法。
- 前記ステップ(a)は次の形の傾斜しきい値、
mthresh=ksms+kNmN
を用いることを更に含む、ただし、ksは信号重み係数、kNは雑音重み係数、msは信号強さ、mNは雑音レベルである、先行請求項のいずれか一項記載の血流特性を決定する方法。 - 前記ステップ(a)は前記監視信号のパワー・スペクトルからフロー包絡線を抽出することを更に含む、先行請求項のいずれか一項記載の血流特性を決定する方法。
- 前記方法はカイザ・フィルタを用いて前記パワー・スペクトルを濾波することを更に含む、請求項11記載の血流特性を決定する方法。
- 前記方法は修正ダニエル・フィルタを用いて前記パワー・スペクトルを濾波することを更に含む、請求項11記載の血流特性を決定する方法。
- 前記パワー・スペクトルを周波数に依存して濾波することを更に含む、請求項11記載の血流特性を決定する方法。
- 前記濾波は実質的に逆周波数に依存して前記パワー・スペクトルを濾波することを更に含む、請求項11記載の血流特性を決定する方法。
- 前記ステップ(a)は前記監視信号の最大値を固定することを更に含む、先行請求項のいずれか一項記載の血流特性を決定する方法。
- 前記監視信号を調べてアーチファクトを探し、これらのアーチファクトの原因となる前記監視信号を変えることを更に含む、先行請求項のいずれか一項記載の血流特性を決定する方法。
- ドップラ・スペクトル表示から心臓パラメータを抽出する方法であって、
(a) ドップラ・スペクトル信号を検出するステップと、
(b) 前記ドップラ信号からフロー包絡線を抽出するステップと、
(c) 前記フロー包絡線から望まないフロー信号およびアーチファクトを除去するステップと、
(d) 前記フロー包絡線上の特定の位置に時間マーカを置いて前記心臓パラメータを決定するステップと、
を含む、心臓パラメータを抽出する方法。 - 前記心臓パラメータを用いて別の心臓に関するパラメータを計算する、請求項19記載の心臓パラメータを抽出する方法。
- ステップ(a)は複数のFFTの大きさを生成する高速フーリエ変換(FFT)を含む、請求項17記載の血流特性を決定する方法。
- ステップ(b)は、
(b1) 前記FFTの大きさからパワー・スペクトルおよび積分パワー・スペクトルを決定するステップと、
(b2) 前記パワー・スペクトル内の雑音パワーを推定するステップと、
(b3) 前記ドップラ信号が表す実際のフローに対応する前記パワー・スペクトル内の傾斜しきい値を決定するステップと、
を更に含む、請求項21記載の血流特性を決定する方法。 - 雑音への感度を高めずに不正確な量を基準化して値を訂正するバイアス訂正係数を更に含む、請求項22記載の血流特性を決定する方法。
- 前記心臓パラメータは実時間で抽出する、請求項19記載の心臓パラメータを抽出する方法。
- 自動心臓監視装置であって、
(a) ドップラ・スペクトル信号を検出するためのドップラ検出ユニットと、
(b) 前記ドップラ検出ユニットに接続する処理ユニットであって、前記ドップラ・スペクトル信号を処理して複数の心臓パラメータを自動的に抽出し、前記処理されたドップラ信号内のタイミング・マーカを識別して前記必要な心臓パラメータを抽出する、処理ユニットと、
(c) 前記処理ユニットに相互接続して、前記処理されたドップラ信号および前記タイミング・マーカの視覚表示を同時に表示するディスプレイ・ユニットと、
を含む自動心臓監視装置。 - 前記処理ユニットは、
前記ドップラ信号からフロー包絡線を抽出するための伝達関数と、
前記フロー包絡線から望まないフロー信号およびアーチファクトを除去するための伝達関数と、
を含む、請求項25記載の自動心臓監視装置。 - 前記心臓パラメータは実時間で抽出する、請求項25記載の自動心臓監視装置。
- 前記装置は固定小数点DSPプロセッサと計算の互換性がある、請求項25記載の自動心臓監視装置。
- 添付の図面および/または例に示されている本発明の実施の形態のいずれか1つを参照して実質的にここに記述した、心臓の近くの血流を表す監視信号から血流特性を決定する方法。
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