JP2004344564A - 超音波診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】超音波ビームの繰り返し走査により、複数の時相の断層画像を生成・記憶する超音波処理装置において、断層画像を容易にズーム処理できるようにする。
【解決手段】超音波処理装置は、超音波ビームの走査面内において、計測箇所(224a,224b)を指定する指定手段を備えている。そして、この超音波ビームの受信信号に基づいて、前記計測箇所での各時相でのドプラ情報からなるドプラ波形を生成する。そこで、本超音波処理装置においては、前記断層画像セットに含まれるいずれかの断層画像に対して、前記計測箇所をズーム基準としてズーム処理を行い、ズーム断層画像を生成するズーム処理手段を設けた。
【選択図】 図9
【解決手段】超音波処理装置は、超音波ビームの走査面内において、計測箇所(224a,224b)を指定する指定手段を備えている。そして、この超音波ビームの受信信号に基づいて、前記計測箇所での各時相でのドプラ情報からなるドプラ波形を生成する。そこで、本超音波処理装置においては、前記断層画像セットに含まれるいずれかの断層画像に対して、前記計測箇所をズーム基準としてズーム処理を行い、ズーム断層画像を生成するズーム処理手段を設けた。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波診断装置、特に、超音波画像のズーム処理に関する。
【従来の技術】
超音波診断装置は、診断対象である生体等に対し超音波ビームを走査し、それにより得られた受信信号に基づいて、診断対象の内部情報を出力する装置である。この装置を用いることにより、走査面での断層画像やカラードプラ画像、特定箇所に対するドプラ波形など、様々な画像情報(データ)を取得することができる。
【0002】
一例として、心臓の左室から大動脈へ流れる駆出血流量の測定に係る従来技術を説明する。駆出血流量を求めるためには、大動脈弁の開口径、及び、開口した大動脈弁を流れる血液流速を測定すればよい。そこで、放射線ビームの放射面を大動脈弁を含む面に設定して断層画像を形成し、この断層画像の大動脈弁の位置にドプラ情報の取得対象となるサンプルボリューム(サンプルゲート)を設定する。そして、心臓の収縮周期に比べ十分短い測定間隔で、各時相におけるドプラ情報を取得し、時間軸上で波形表現したドプラ波形を得る。このドプラ波形を自動あるいは手動でトレースし、例えば拍動の1周期にわたって時間積分すれば、1周期あたりの流速の積分値(単位面積あたりの駆出血流量とみなせる)が求められる。
【0003】
一方、開口径は、開口時にはほぼ一定の大きさであるとみなせる。そこで、同様に短い測定間隔で取得した断層画像に対し、ユーザはマニュアル操作を行ってズーム及びサーチを実施し、大動脈弁が安定して開口する心臓の収縮中期の時相を探し出す。そして、ユーザが画面上で開口部の両端をマークすると、実際の距離が計算される。大動脈弁付近は、開口時に円形とみなすことができるので、これにより流路の断面積が求められる。この断面積と先に説明した1周期あたりの流速の積分値を掛け合わせれば、1周期あたりの流出量を得ることができる。
【0004】
なお、下記の特許文献1には、ドプラ波形上に操作者が所望の時相を指定する手段と、記憶されている複数枚の断層画像(Bモード画像)の中から前記指定された時相に対応する断層画像をタイムコードに従って特定し、ドプラ波形と同時に表示する手段が記載されている。ただし、ズーム処理に関する記載はない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−46372号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の駆動血流量を求める例のように、超音波画像の診断においては、ズームした断層画像が必要となることがしばしばある。そのため、煩雑なズーム条件設定を行うことなく、所望のズーム断層画像を得ることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、超音波診断装置において、所望の断層画像のズーム表示に必要となるユーザの負担を軽減し、操作性を向上させることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の超音波診断装置は、超音波ビームの繰り返し走査により得られた受信信号に基づいて、複数の時相の断層画像からなる断層画像セットを生成する断層画像セット生成手段と、超音波ビームの走査面内において、計測箇所を指定する指定手段と、前記受信信号に基づいて、前記計測箇所での各時相のドプラ情報からなるドプラ波形を生成するドプラ波形生成手段と、前記断層画像セットに含まれるいずれかの断層画像に対して、前記計測箇所をズーム基準としてズーム処理を行い、ズーム断層画像を生成するズーム処理手段と、を備える。
【0009】
計測箇所をズーム基準としたズーム処理を行うことで、ユーザはズーム処理のために行う操作を軽減あるいは省略することができるので、効率的な診断が実現可能となる。
【0010】
なお、断層画像とは、ディスプレイ等の表示部で表示される輝度データだけを意味するのではなく、座標変換や輝度データ化などのデータ処理を行う前の原始的なデータをも意味している。そして、この断層画像の時系列からなるデータを断層画像セットと呼んでいる。また、ドプラ情報とは、受信信号のドプラシフトに関する情報であり、周波数情報あるいは周波数から換算した速度情報等のかたちで表現することができる。そして、このドプラ情報の時系列データがドプラ波形である。ドプラ波形は、時間軸上に折れ線グラフとして表現することもできるが、ここではグラフ表現を行っていない時系列データを含めてドプラ波形と呼んでいる。
【0011】
超音波ビームの走査面における計測箇所としては、一般にサンプルゲートあるいはサンプルボリュームと呼ばれている設定箇所を採用することができる。計測箇所は、複数設定されていてもよく、その場合のズーム基準としては複数箇所を採用しても良いし、特定の一箇所を採用してもよい。複数箇所を採用する場合には、平均操作などにより、仮想的な一点を算出することも可能である。
【0012】
なお、前記ズーム処理手段は、前記ズーム基準としての計測箇所を前記ズーム断層画像の中央に配置するズーム処理を行うのが望ましい。計測箇所は、診断を行うユーザが注目している箇所である。したがって、この計測箇所がズーム断層画像の中央に配置されると、診断において好ましいことが多い。なお、中央とは、非周辺部分、すなわち、ズーム画像の表示範囲のうち、周辺に近い部分を除いた範囲を言うものとする。
【0013】
望ましくは、本発明の超音波診断装置は、前記断層画像セットの各時相の断層画像と前記ドプラ波形の各時相のドプラ情報とを、対応づけて管理する管理テーブルと、前記ドプラ波形中の時相を特定する時相特定手段と、前記管理テーブルを参照し、前記特定手段に特定された時相に対応する断層画像を、前記断層画像セットの中から抽出する抽出手段と、を含み、前記ズーム処理手段は、前記抽出手段によって抽出された断層画像に対しズーム処理を行う。
【0014】
この構成によれば、管理テーブルのもとで、断層画像セットの各時相の断層画像とドプラ波形の各時相のドプラ情報とが、管理される。管理テーブルとは、この管理を行うために、各時相を対応づけて把握する機構を指している。したがって、必ずしも、ユーザが認識可能な1つのファイルとして構成されていなくても構わない。この管理テーブルを用いれば、ドプラ波形中で特定した時相に対応する断層画像を、断層画像セットの中から正しく抽出することができる。そして、ズーム処理も行われるので、ユーザは診断に必要となるズーム断層画像を容易に取得できるようになる。
【0015】
なお、前記時相特定手段は、前記ドプラ波形上におけるユーザ指定に基づいて時相を特定することができる。また、本発明の超音波診断装置において、前記時相特定手段は、前記ドプラ波形の形状に基づいて時相を特定するものであってもよい。さらに、本発明の超音波診断装置において、各時相での生体信号情報からなる生体信号波形を生成する生体信号波形生成手段、を備えることができ、前記時相特定手段は、前記生体信号波形の形状に基づいて時相を特定するものであってもよい。
【0016】
望ましくは、本発明の超音波診断装置は、前記ズーム断層画像上で心臓内の大動脈弁について開口部の大きさを計測する計測手段と、前記計測箇所を大動脈弁付近に設定して生成した前記ドプラ波形に基づいて、血液流速の時間積分値を算出する算出手段と、前記開口部の大きさ及び前記血液流速の時間積分値に基づいて駆出血流量を演算する演算手段と、を備える。これにより、心臓左室の診断において、駆出血流量の診断を迅速に行うことが可能となる。
【0017】
望ましくは、本発明の超音波診断装置においては、前記抽出手段により抽出された断層画像の前方あるいは後方の時相の画像サーチを実行するサーチ実行手段、を含み、前記ズーム処理手段は、前記サーチ実行手段によりサーチされる断層画像に対して、前記ズーム基準を維持してズーム処理を行う。なお、前記ズーム処理手段は、さらにズーム倍率を維持してズーム処理を行うのが望ましい。これにより、当初抽出した時相の前方あるいは後方の時相の断層画像を、当初抽出した断層画像と同じズーム基準を用いて表示した結果に基づきサーチすることができる。また、同じズーム倍率を用いて表示した結果に基づきサーチを行うことにより、比較が容易となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を、図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る超音波診断装置10の概略的構成を示すブロック図である。超音波診断装置10は、探触子12を備えている。この探触子12は、診断対象である生体の表面に接触され、あるいは、体腔内に挿入されて用いられ、超音波ビームの走査を行うものである。送信する超音波ビームの生成処理と、受信した反射波を受信信号として取得する処理は、送受信部14によって行われる。送受信部は、超音波ビームを、機械的あるいは電子的制御により繰り返し送信し、各時相に対する受信信号を取得する。走査においては、例えば、特定の断面に対するビーム走査と、特定の方向のビーム走査とを規則的に繰り返す時分割走査を行うことも可能である。得られた受信信号は、送受信部14から画像形成部16に伝送される。画像形成部16は、後述するように、受信信号に対して演算処理を行い、断層画像やドプラ情報を生成する機能などを備えている。
【0020】
形成された断層画像やドプラ情報などは、表示処理部18を経由して、表示部20上に表示される。表示処理部18は、表示部20に表示されるウインドウ画面の管理などを行う部位であり、表示部20は、ディスプレイ等により構成されている。典型的には、断層画像はある時間のものが表示され、ドプラ情報は時間軸上に表示して波形が描画される。
【0021】
断層画像やドプラ情報を、シネメモリ22に記憶し、時系列データセットとしての断層画像セットやドプラ波形として記憶することもできる。データセットの記憶は、データ種別(例えば、断層画像、ドプラ情報)やデータ取得時刻情報としてのタイマ値などの属性情報と、実体データからなるストリームを、各時刻について格納することで行われる。これにより、データセットに含まれる各時相の情報、すなわち、断層画像セットに含まれる各断層画像や、ドプラ波形に含まれる各ドプラ情報は、タイマ値を利用して対応づける。すなわち、各データとタイマ値の対応関係は管理テーブルを形成しており、これによりデータセットの中から随時必要な時相の情報を検索し、取得することが可能となっている。なお、シネメモリ22に出力される断層画像セットやドプラ波形は、必ずしも表示部20で描画可能な状態にまでデータ加工されている必要はない。すなわち、送受信部14から送られる受信信号のデータ形式のまま断層画像やドプラ情報をシネメモリ22に格納し、再度利用する際に適宜データ処理を行うようにしてもよい。
【0022】
超音波診断装置10は、診断対象の発する生体信号情報としての心電信号を、心電計24を用いて収集することができる。画像形成部16は、心電計24から各時相の心電信号を入力し、心電波形を生成する。生成の過程で各時相に対しタイマ値が与えられる点は、前述のドプラ波形の場合と同様である。
【0023】
また、超音波診断装置10は、操作パネルやマウスなどで構成される入力部26を備えている。ユーザは、入力部26から、超音波診断装置10の動作を制御信号を入力することができる。制御信号には、ドプラ情報を取得するための計測箇所の指定を行う指示信号も含むことができる。入力された制御信号は、制御部28に送られる。制御部28は、受信した制御信号と予めプログラミングされた処理とに基づいて、送受信部14、画像形成部16、表示処理部18、及び、計測演算部30の制御を行う。計測演算部30は、ドプラ波形の波形トレース処理機能、ドプラ波形に基づき速度を時間積分する算出機能、画像上の任意の地点の実距離を計測する計測機能、そして、計測機能と算出機能の結果に基づいて駆出血流量を演算する演算機能など、診断を行う上で必要となる各種の計測演算機能を備えている。
【0024】
図2は、画像形成部16の構成を説明するための概略的ブロック図である。画像形成部16には断層画像形成部50、ドプラ情報形成部52、心電信号情報形成部54の各信号処理部が含まれている。また、書込制御部56、時相特定部58及び読込制御部60が含まれており、読込制御部60はズーム処理部62とサーチ実行部64を含んでいる。
【0025】
断層画像形成部50は、送受信部14から入力される受信信号66に基づいて断層画像を形成する。すなわち、ビーム走査を反映した座標系から、表示部20での表示に合わせた解像度の直交座標系へと座標変換を行い、さらに受信信号強度を輝度に変換するなどの処理を行う。ドプラ情報形成部52は、同様に、受信信号66に基づいてドプラ情報を形成する。すなわち、計測箇所部分の受信信号に周波数解析を施してドプラシフト量を求め、速度と対応付け、さらに表示に適したデータ形式への変換等を行う。また、心電信号情報形成部54は、心電信号68に基づいて心電信号情報を形成する。すなわち、各時相に対する心電信号を基に表示に適したデータ形式への変換等を行う。
【0026】
こうして得られた断層画像、ドプラ情報及び心電信号情報の各データは、出力経路70から表示処理部18へ出力され、表示部20に表示される。一方、これらの各データは書込制御部56によって処理し、入出力経路72を通じてシネメモリ22に伝送・記憶させることも可能である。書込制御部56は、後述するようにタイマを有しており、各データに取得時刻情報としてのタイマ値を付与する。こうして、シネメモリ22には、断層画像セット、ドプラ波形、心電信号波形の各時系列データが形成される。
【0027】
時相特定部58は、シネメモリ22に記憶した時系列データに対し、診断計測に用いる時相を特定する手段である。予め設定された手順に従って、ドプラ波形に対し波形の形状に基づく処理を行うことで、又は、心電信号波形入力に対し波形の形状に基づく処理を行うことで、時相を特定することができる。あるいは、表示部20に表示されたドプラ波形や心電信号波形に対してユーザ指定された位置情報を、表示処理部18と制御部28が協働して解析し、時相特定部58に伝えることで時相を特定してもよい。時相の決定には、書込制御部56において与えられたタイマ値が用いられる。
【0028】
読込制御部60は、シネメモリ22から各時系列データを読み込む機能を有している。読み込んだ内容は表示処理部18に送って表示部20に表示させることができる。読込制御部60に含まれるズーム処理部62は、画像データに対してズーム処理を行う部位である。対象となる画像データとしては、シネメモリ22内に含まれるものはもちろん、シネメモリ22に記憶していないものであってもよい。特徴的な点は、時相特定部58が特定した時相に対応する断層画像に対し、あらかじめ設定されたズーム基準に基づいて自動的に実施することができる点である。ズーム基準は、ズーム処理する範囲、あるいは、表示される範囲を定めるものである。ズーム基準の定め方はさまざまに考えられ、例えば、適当な点を定めてこれを含む所定の矩形領域をズーム処理の範囲とすることができる。このようなズーム基準としては、ドプラ情報の取得に使う計測箇所、すなわち、サンプルゲートあるいはサンプルボリュームと呼ばれる箇所をズーム基準として採用することができる。ズーム処理における倍率は所定の倍率としてもよいし、その都度適宜決定する機構を設けてもよい。なお、もちろん、この点を中心以外の場所に配置してもよい。
【0029】
サーチ実行部64は、制御部28を介して伝えられるユーザ指令に基づいて、断層画像のサーチを実行する。例えば、時相特定部58が特定した時相に対応する断層画像が抽出され表示された場合に、この断層画像の前方あるいは後方の時相の画像サーチを実行する。サーチにおいては、タイマ値を参照して前方あるいは後方の時相の画像データを取得すればよい。また、サーチの実行にあたっては、ズーム処理部62と協働して、対象となる断層画像等を、常に同条件でズーム処理して表示部20に表示させることもできる。
【0030】
なお、前に述べたとおり、シネメモリ22に格納する時系列データは、断層画像形成部50、ドプラ情報形成部52又は心電信号情報形成部における処理を、完全にまたは部分的に受けていなくてもよい。このような場合には、シネメモリ22から呼び出された際に、適宜必要な処理をこれらの構成部において受ければ、いつでも表示等が可能なデータが得られる。その意味で、両者を区別する必要はなく、未処理の場合を含め、シネメモリ22には、断層画像セット、ドプラ波形、心電信号波形等が形成されると言うことができる。
【0031】
また、画像形成部16は、入出力経路74,76を通じて、それぞれ制御部及び計測演算部と送受信可能であり、必要な信号の送受信が行われている。
【0032】
図3は、画像形成部16の書込制御部56において、各時相データにタイマ値を付与するための構成例を説明する概略図である。ここでは説明の便宜上、断層画像と心電信号情報の2つに対するタイマ値の付与についてのみ説明するが、ドプラ情報などについても同様に実施可能である。
【0033】
タイマ部78は、タイマ値を生成する部位であり、クロックから送られる100μs毎の基準信号80に基づいて1,2,3,...のようにタイマ値のカウントアップを行う。このタイマ値は、制御部28から超音波診断を再開する信号(フリーズ解除の信号)82が送られると、0にリセットされ、その時点からカウントアップを開始する。超音波診断を中断するフリーズは、例えば、表示部20における表示データのリアルタイム更新を中断する際や、シネメモリ22内のデータを表示部20に表示させる際などに行われる。この場合には、一般に、超音波ビームの走査自体が中断され、新たなデータ取得が行われないため、再開にあたってはタイマ値をリセットして、新しいデータセットを作成するのである。
【0034】
ラッチ部A84は、送受信部14から超音波ビームの送信タイミング信号を受け取ると、その時点でのタイマ値をラッチして保持するとともに、タイマ値付与部A88に伝達する。タイマ値付与部A88は、対応する断層画像の受信信号又はさらに処理された断層画像の入力90があると、このタイマ値を付与した上で、出力信号92をシネメモリ22に送るのである。
【0035】
同様の信号処理は、心電信号に対しても行われる。すなわち、ラッチ部B94は、心電計24から心電信号の収集タイミング信号を取得すると、タイマ部78から送られるタイマ値を保持する。そして、タイマ値付与部B98は、対応する心電信号情報の入力信号100に対し、このタイマ値を付与する。こうして収集時刻情報としてのタイマ値を付与された心電信号情報は、シネメモリ22に対し出力信号102として送信されるのである。
【0036】
このように、同じタイマ部78により生成されるタイマ値を付与することで、複数のデータセットにおける各時相のデータをその取得タイミングに基づいて管理できるようになる。つまり、タイマ値を付与した各データセットは、共通のラベル付けをされた管理テーブルを形成しており、これにより、容易に所望の時相の検索が可能となるのである。
【0037】
図4は、各時相の断層画像データあるいはドプラ情報データを収納したデータストリーム110の構成を示している。データストリーム110には、モード情報112(断層画像、ドプラ波形などの種別)、タイマ値114、その他の情報116からなる属性情報118が、データ本体120の前に付与されている。これにより、取得時刻情報に基づくデータ管理が可能となることは前に述べた通りである。
【0038】
次に、図5のフローチャート及び、図6乃至図9の表示例の概略図を用いて、心臓の左室から大動脈へと送られる駆出血流量を測定する処理の流れを説明する。超音波診断の処理が開始されると(S10)、探触子12によって時分割走査が行われ、表示部20には、心臓部の断層画像(Bモード画像)と、この断層画像上における適当な部位に対するドップラ速度の時間変化を示すドプラ波形(Dモード画像)とが並んで表示される(S12)。この断層画像とドプラ波形が同時表示された状態をB/Dモードと呼ぶことにする。
【0039】
図6は、B/Dモードの表示例であり、表示部20には左側の断層画像表示領域200と、右側のドプラ波形表示領域202とが配置されている。断層画像表示領域200に表示された断層画像においては、扇形をなす超音波ビームの走査面204に心臓付近の断層画像が表示されている。具体的には、心筋206及び、この心筋206で囲まれた左室208、左房210、右室212、大動脈214の各構造が表示されており、左室208と大動脈214との間の大動脈弁216の構造も映し出されている。また、ドプラ波形においては、時間軸218上に、ドプラ波形220が表示されている。図示されたドプラ波形220は、周波数解析により得られた周波数をドプラ速度に対応させたものであり、時間軸より下側に位置している場合は、探触子12から遠ざかる方向の速度を表している。ドプラ波形上には、さらに、心電計24から取得した心電波形222が重ねて表示されている。心電波形に対しては、超音波画像のデータと同様に取得時刻情報としてのタイマ値を与えてシネメモリ22に格納する処理を行っており、これにより、ドプラ波形と同じ時間軸上での波形表示が可能となっている。
【0040】
診断を行うユーザは、断層画像を見ながら、探触子12の位置及び角度を設定していく(S14)。すなわち、超音波ビームの走査面が、心臓の左室と大動脈とを含み、大動脈弁の中心を切る断面となるように探触子12の位置とビーム方向を調整する。そして、調整が終わると、大動脈弁のドプラ情報を取得するために、この走査面内において、ドプラ情報の計測箇所として図6のマーク224a,224bに挟まれたサンプルボリューム(サンプルゲート)を設定する。具体的には、ユーザが、表示部20に表示された断層画像を見ながら、入力部26の操作を行い、大動脈弁付近をマークして設定する。探触子12から発せられる超音波ビームは、断層画像を得るための走査面204の走査中に、設定に従って、ドプラ波形を得るための直線226の走査を行う。そして、得られた反射波のうち、サンプルボリュームからの反射波を取り出し、画像形成部16において周波数解析などのドプラ処理をおこなう。これにより、大動脈弁部分でのビーム伝播方向のドプラ速度を算出することが可能になる。ただし、診断において必要となるのは、大動脈を流れる血液流速である。そこで、補正角度としてビーム伝播方向と大動脈方向とのなす角度が設定され(S16)、大動脈方向の血液流速を算出し、ドプラ波形として改めて表示する処理がなされる。
【0041】
通常、B/Dモードにおいては、最新の時刻の断層画像と、最新の時刻から所定時間前の時刻までの波形を描いたドプラ波形と、が表示され、時々刻々最新の画像に更新される。この更新は指令により停止することができ、この結果、超音波画像の取得が中断され、表示画像はある時刻のものに固定(フリーズ)される(S18)。そして、このうちのドプラ波形に対して、波形の輪郭をたどるトレース処理が、計測演算部30によって行われる(S20,S22)。処理においては、まず、トレースを行う区間が設定される。説明している例においては、トレースの目的は、心臓の拍動一周期分の駆出血流量を算出することにあるので、心電波形の特徴部分を参照しながら、ドプラ波形上で、一周期分の駆出血流量の算出に相応しい2時刻が設定される(S20)。そして、計測演算部30は、設定された区間において、ドプラ波形の自動トレースを行う(S22)。トレースの手法は特に限定されるものではなく、波形の包絡線をたどる手法や、高周波成分のフィルタアウトなどの手法などが適宜用いられる。
【0042】
図7は、トレース処理の様子を示したものである。フリーズされたドプラ波形上において、マーク228a,228bが設定され、この間に対し、ドプラ波形220がトレースされ、トレース曲線230が表示されている。なお、このトレース処理は、ユーザがマニュアルで行うこともできる(S24)。マニュアルトレースにおいては、トレースの区間設定だけをユーザが行ってもよいし、波形のトレースについてもユーザが入力部26を通じて実施してもよい。また、別のトレース処理の形態として、ドプラ波形データの取得時に、計測演算部30がリアルタイムでトレース処理を自動実施する方式を挙げることができる。自動処理された結果は、ドプラ波形の取得時刻情報と対応づけてシネメモリ22に格納しておくことで、随時、利用可能となる。
【0043】
続いて、時相特定部58によりドプラ波形上で時相決定が行われる(S26)。時相決定は、自動的に行うこともできるし、ユーザが入力部26を用いて対話的に指定することもできる。図8は、自動的に時相が決定される例を示している。ここでは、心電波形のうちのR波と呼ばれる急峻なピーク232を検出し、この時相から所定時間Δt経過した時相をラインカーソル234で表示している。
なお、心電波形の代わりに、ドプラ波形に基づいて時相を自動決定することも可能であり、例えば、ドプラ波計の極小値位置236に基づいて時相を決定する方法が挙げられる。また、ユーザ指定をする場合には、例えばユーザがラインカーソル234の移動を行って時相を指定し、これを表示処理部18が解析して時相を決定すればよい。
【0044】
時相が決定されると、シネメモリ22の保持され断層画像セットに対し、決定された時相に対応する断層画像の検索と抽出が読込制御部60によって行われる(S28)。具体的な検索手順については後述する。検索により求められた断層画像は、ズーム処理部62によって予め設定された倍率にズーム処理され(S30)、サンプルゲートが表示部20の所定の位置に配置したズーム断層画像として表示される(S32)。図9は、倍率2倍のズーム画像を表示部20の中央部にサンプルゲートを配置して表示した様子を示している。表示部20には、ドプラ波形は表示せず、ズーム断層画像だけが表示されている(1Bモード)。ユーザは、この拡大された画像をもとに診断・計測処理を行うことができるので、詳細な構造を容易に把握できる他、計測誤差の小さい計測を実施できる。
【0045】
抽出されたズーム断層画像に対しては、その前方あるいは後方の時相の断層画像をサーチすることができる(S34)。サーチを実施する場合には、ユーザの指示を受けたサーチ実行部64は、前方あるいは後方の時相の断層画像を順次シネメモリ22から取り出す。そして、ズーム処理部62は、当初のズーム処理と同じ条件で断層画像処理し、表示部20にズーム断層画像を順次切替表示させる。これにより、ユーザは、当初決定した時相が、計測処理を行う上で十分適切かどうかを確認することができる。そして、他に適切な時相が見つかった場合には、そのズーム断層画像を表示した状態にしておけば、自動的に再抽出したものとして扱われる。また、サーチの結果、当初抽出したズーム断層画像を採用することも可能である。
【0046】
拡大画像に対しては、ユーザの指令のもと計測演算部30の計測機能を用いて、大動脈弁の開口部の大きさ、すなわち流出経路の大きさが測定される(S38)。具体的には、大動脈弁216の開口部の両端にマーク238a,238bをつける。そして、計測演算部30によって、マーク238a,238b間の実距離LVOTが算出され、さらに、大動脈弁216の開口部を真円とみなして、流出経路断面積CSA=π(LVOT/2)2 が算出される。
【0047】
次に、やはり計測演算部30の算出機能及び演算機能を用いて、駆出血流量の演算が行われる(S40)。演算においては、まず、トレース曲線230に基づいて各時相に対する血液流速Vが算出される。流速Vは、サンプルゲートの血液流速を代表するものであり、各時刻における流出経路の平均的な流速とみなすことができる。そこで、これを数値積分することで、1心拍あたりの時間積分値VTI=∫Vdtが求められる。また、流出経路断面積CSAは、大動脈弁216の開口時においては時間的に一定とみなすことができる。したがって、VTIとの積を取って1心拍あたりの駆出血流量SV=VTI*CSAが算出される。さらに、心電計24からの心電信号から得た1分間あたりの心拍数HRを掛け合わせることで、1分間あたりの駆出血流量(心拍出量)CO=SV*HRが得られる。
【0048】
これらの計測値・演算値の結果は、表示部20内に開かれる小ウインドウに表示される。図10は、この小ウインドウの例である。上に述べた各項目の他、最大流速pV=max(V)、圧較差PG、平均流速MnVも表示されている。図においては、各項目の値について@で示しているが、実際には測定値が表示されることになる。
【0049】
図11は、シネメモリ22に格納されたデータが検索及び抽出される過程、すなわち図5のステップS28を詳細に説明するフローチャートである。ここでは、B/Dモード表示されフリーズされた画像を基に、S26の処理によってドプラ波形上で時相決定がなされている。そこで、読込制御部60は、まず、シネメモリ22内のドプラ波形を検索し(S300)、指定された時相に相当するタイマ値を取得する(S302)。続いて、このタイマ値に最も近いタイマ値を持つ時相の断層画像を、断層画像セットから検索する(S304)。また、必要であれば、心電信号情報も心電波形のデータセットから検索する。そして、見つけられた断層画像データをシネメモリ22から抽出し(S306)、ズーム処理(S30)過程に送る。
【0050】
【発明の効果】
本発明の超音波処理装置を用いることで、ユーザは、診断時にズーム処理した所望の断層画像を容易に取得できるようになる。これにより、診断の前処理過程に係るユーザの操作負担を軽減し、診断環境を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の構成を示す概略図である。
【図2】画像形成部の構成を示す概略図である。
【図3】書込制御部の一部の構成例を示す概略図である。
【図4】各時相のデータ構成の概略を示す図である。
【図5】本実施の形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】断層画像、ドプラ波形及び心電波形の表示例を示す図である。
【図7】トレースの概要を示す図である。
【図8】時相決定の概略を示す図である。
【図9】ズーム断層画像の表示例を示す図である。
【図10】計測値の表示例を示す図である。
【図11】検索・抽出過程の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 超音波診断装置、12 探触子、14 送受信部、16 画像形成部、18 表示処理部、20 表示部、22 シネメモリ、24 心電計、26 入力部、28 制御部、30 計測演算部、50 断層画像形成部、52 ドプラ情報形成部、54 心電信号情報形成部、56 書込制御部、58 時相特定部、60 読込制御部、62 ズーム処理部、64 サーチ実行部、78 タイマ部、84 ラッチ部A、88 タイマ値付与部A、94 ラッチ部B、98 タイマ値付与部B、200 断層画像表示領域、202 ドプラ波形表示領域、204 走査面、206 心筋、208 左室、214 大動脈、216 大動脈弁、218 時間軸、220 ドプラ波形、222 心電波形、230 トレース曲線、234 ラインカーソル。
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波診断装置、特に、超音波画像のズーム処理に関する。
【従来の技術】
超音波診断装置は、診断対象である生体等に対し超音波ビームを走査し、それにより得られた受信信号に基づいて、診断対象の内部情報を出力する装置である。この装置を用いることにより、走査面での断層画像やカラードプラ画像、特定箇所に対するドプラ波形など、様々な画像情報(データ)を取得することができる。
【0002】
一例として、心臓の左室から大動脈へ流れる駆出血流量の測定に係る従来技術を説明する。駆出血流量を求めるためには、大動脈弁の開口径、及び、開口した大動脈弁を流れる血液流速を測定すればよい。そこで、放射線ビームの放射面を大動脈弁を含む面に設定して断層画像を形成し、この断層画像の大動脈弁の位置にドプラ情報の取得対象となるサンプルボリューム(サンプルゲート)を設定する。そして、心臓の収縮周期に比べ十分短い測定間隔で、各時相におけるドプラ情報を取得し、時間軸上で波形表現したドプラ波形を得る。このドプラ波形を自動あるいは手動でトレースし、例えば拍動の1周期にわたって時間積分すれば、1周期あたりの流速の積分値(単位面積あたりの駆出血流量とみなせる)が求められる。
【0003】
一方、開口径は、開口時にはほぼ一定の大きさであるとみなせる。そこで、同様に短い測定間隔で取得した断層画像に対し、ユーザはマニュアル操作を行ってズーム及びサーチを実施し、大動脈弁が安定して開口する心臓の収縮中期の時相を探し出す。そして、ユーザが画面上で開口部の両端をマークすると、実際の距離が計算される。大動脈弁付近は、開口時に円形とみなすことができるので、これにより流路の断面積が求められる。この断面積と先に説明した1周期あたりの流速の積分値を掛け合わせれば、1周期あたりの流出量を得ることができる。
【0004】
なお、下記の特許文献1には、ドプラ波形上に操作者が所望の時相を指定する手段と、記憶されている複数枚の断層画像(Bモード画像)の中から前記指定された時相に対応する断層画像をタイムコードに従って特定し、ドプラ波形と同時に表示する手段が記載されている。ただし、ズーム処理に関する記載はない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−46372号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の駆動血流量を求める例のように、超音波画像の診断においては、ズームした断層画像が必要となることがしばしばある。そのため、煩雑なズーム条件設定を行うことなく、所望のズーム断層画像を得ることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、超音波診断装置において、所望の断層画像のズーム表示に必要となるユーザの負担を軽減し、操作性を向上させることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の超音波診断装置は、超音波ビームの繰り返し走査により得られた受信信号に基づいて、複数の時相の断層画像からなる断層画像セットを生成する断層画像セット生成手段と、超音波ビームの走査面内において、計測箇所を指定する指定手段と、前記受信信号に基づいて、前記計測箇所での各時相のドプラ情報からなるドプラ波形を生成するドプラ波形生成手段と、前記断層画像セットに含まれるいずれかの断層画像に対して、前記計測箇所をズーム基準としてズーム処理を行い、ズーム断層画像を生成するズーム処理手段と、を備える。
【0009】
計測箇所をズーム基準としたズーム処理を行うことで、ユーザはズーム処理のために行う操作を軽減あるいは省略することができるので、効率的な診断が実現可能となる。
【0010】
なお、断層画像とは、ディスプレイ等の表示部で表示される輝度データだけを意味するのではなく、座標変換や輝度データ化などのデータ処理を行う前の原始的なデータをも意味している。そして、この断層画像の時系列からなるデータを断層画像セットと呼んでいる。また、ドプラ情報とは、受信信号のドプラシフトに関する情報であり、周波数情報あるいは周波数から換算した速度情報等のかたちで表現することができる。そして、このドプラ情報の時系列データがドプラ波形である。ドプラ波形は、時間軸上に折れ線グラフとして表現することもできるが、ここではグラフ表現を行っていない時系列データを含めてドプラ波形と呼んでいる。
【0011】
超音波ビームの走査面における計測箇所としては、一般にサンプルゲートあるいはサンプルボリュームと呼ばれている設定箇所を採用することができる。計測箇所は、複数設定されていてもよく、その場合のズーム基準としては複数箇所を採用しても良いし、特定の一箇所を採用してもよい。複数箇所を採用する場合には、平均操作などにより、仮想的な一点を算出することも可能である。
【0012】
なお、前記ズーム処理手段は、前記ズーム基準としての計測箇所を前記ズーム断層画像の中央に配置するズーム処理を行うのが望ましい。計測箇所は、診断を行うユーザが注目している箇所である。したがって、この計測箇所がズーム断層画像の中央に配置されると、診断において好ましいことが多い。なお、中央とは、非周辺部分、すなわち、ズーム画像の表示範囲のうち、周辺に近い部分を除いた範囲を言うものとする。
【0013】
望ましくは、本発明の超音波診断装置は、前記断層画像セットの各時相の断層画像と前記ドプラ波形の各時相のドプラ情報とを、対応づけて管理する管理テーブルと、前記ドプラ波形中の時相を特定する時相特定手段と、前記管理テーブルを参照し、前記特定手段に特定された時相に対応する断層画像を、前記断層画像セットの中から抽出する抽出手段と、を含み、前記ズーム処理手段は、前記抽出手段によって抽出された断層画像に対しズーム処理を行う。
【0014】
この構成によれば、管理テーブルのもとで、断層画像セットの各時相の断層画像とドプラ波形の各時相のドプラ情報とが、管理される。管理テーブルとは、この管理を行うために、各時相を対応づけて把握する機構を指している。したがって、必ずしも、ユーザが認識可能な1つのファイルとして構成されていなくても構わない。この管理テーブルを用いれば、ドプラ波形中で特定した時相に対応する断層画像を、断層画像セットの中から正しく抽出することができる。そして、ズーム処理も行われるので、ユーザは診断に必要となるズーム断層画像を容易に取得できるようになる。
【0015】
なお、前記時相特定手段は、前記ドプラ波形上におけるユーザ指定に基づいて時相を特定することができる。また、本発明の超音波診断装置において、前記時相特定手段は、前記ドプラ波形の形状に基づいて時相を特定するものであってもよい。さらに、本発明の超音波診断装置において、各時相での生体信号情報からなる生体信号波形を生成する生体信号波形生成手段、を備えることができ、前記時相特定手段は、前記生体信号波形の形状に基づいて時相を特定するものであってもよい。
【0016】
望ましくは、本発明の超音波診断装置は、前記ズーム断層画像上で心臓内の大動脈弁について開口部の大きさを計測する計測手段と、前記計測箇所を大動脈弁付近に設定して生成した前記ドプラ波形に基づいて、血液流速の時間積分値を算出する算出手段と、前記開口部の大きさ及び前記血液流速の時間積分値に基づいて駆出血流量を演算する演算手段と、を備える。これにより、心臓左室の診断において、駆出血流量の診断を迅速に行うことが可能となる。
【0017】
望ましくは、本発明の超音波診断装置においては、前記抽出手段により抽出された断層画像の前方あるいは後方の時相の画像サーチを実行するサーチ実行手段、を含み、前記ズーム処理手段は、前記サーチ実行手段によりサーチされる断層画像に対して、前記ズーム基準を維持してズーム処理を行う。なお、前記ズーム処理手段は、さらにズーム倍率を維持してズーム処理を行うのが望ましい。これにより、当初抽出した時相の前方あるいは後方の時相の断層画像を、当初抽出した断層画像と同じズーム基準を用いて表示した結果に基づきサーチすることができる。また、同じズーム倍率を用いて表示した結果に基づきサーチを行うことにより、比較が容易となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を、図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る超音波診断装置10の概略的構成を示すブロック図である。超音波診断装置10は、探触子12を備えている。この探触子12は、診断対象である生体の表面に接触され、あるいは、体腔内に挿入されて用いられ、超音波ビームの走査を行うものである。送信する超音波ビームの生成処理と、受信した反射波を受信信号として取得する処理は、送受信部14によって行われる。送受信部は、超音波ビームを、機械的あるいは電子的制御により繰り返し送信し、各時相に対する受信信号を取得する。走査においては、例えば、特定の断面に対するビーム走査と、特定の方向のビーム走査とを規則的に繰り返す時分割走査を行うことも可能である。得られた受信信号は、送受信部14から画像形成部16に伝送される。画像形成部16は、後述するように、受信信号に対して演算処理を行い、断層画像やドプラ情報を生成する機能などを備えている。
【0020】
形成された断層画像やドプラ情報などは、表示処理部18を経由して、表示部20上に表示される。表示処理部18は、表示部20に表示されるウインドウ画面の管理などを行う部位であり、表示部20は、ディスプレイ等により構成されている。典型的には、断層画像はある時間のものが表示され、ドプラ情報は時間軸上に表示して波形が描画される。
【0021】
断層画像やドプラ情報を、シネメモリ22に記憶し、時系列データセットとしての断層画像セットやドプラ波形として記憶することもできる。データセットの記憶は、データ種別(例えば、断層画像、ドプラ情報)やデータ取得時刻情報としてのタイマ値などの属性情報と、実体データからなるストリームを、各時刻について格納することで行われる。これにより、データセットに含まれる各時相の情報、すなわち、断層画像セットに含まれる各断層画像や、ドプラ波形に含まれる各ドプラ情報は、タイマ値を利用して対応づける。すなわち、各データとタイマ値の対応関係は管理テーブルを形成しており、これによりデータセットの中から随時必要な時相の情報を検索し、取得することが可能となっている。なお、シネメモリ22に出力される断層画像セットやドプラ波形は、必ずしも表示部20で描画可能な状態にまでデータ加工されている必要はない。すなわち、送受信部14から送られる受信信号のデータ形式のまま断層画像やドプラ情報をシネメモリ22に格納し、再度利用する際に適宜データ処理を行うようにしてもよい。
【0022】
超音波診断装置10は、診断対象の発する生体信号情報としての心電信号を、心電計24を用いて収集することができる。画像形成部16は、心電計24から各時相の心電信号を入力し、心電波形を生成する。生成の過程で各時相に対しタイマ値が与えられる点は、前述のドプラ波形の場合と同様である。
【0023】
また、超音波診断装置10は、操作パネルやマウスなどで構成される入力部26を備えている。ユーザは、入力部26から、超音波診断装置10の動作を制御信号を入力することができる。制御信号には、ドプラ情報を取得するための計測箇所の指定を行う指示信号も含むことができる。入力された制御信号は、制御部28に送られる。制御部28は、受信した制御信号と予めプログラミングされた処理とに基づいて、送受信部14、画像形成部16、表示処理部18、及び、計測演算部30の制御を行う。計測演算部30は、ドプラ波形の波形トレース処理機能、ドプラ波形に基づき速度を時間積分する算出機能、画像上の任意の地点の実距離を計測する計測機能、そして、計測機能と算出機能の結果に基づいて駆出血流量を演算する演算機能など、診断を行う上で必要となる各種の計測演算機能を備えている。
【0024】
図2は、画像形成部16の構成を説明するための概略的ブロック図である。画像形成部16には断層画像形成部50、ドプラ情報形成部52、心電信号情報形成部54の各信号処理部が含まれている。また、書込制御部56、時相特定部58及び読込制御部60が含まれており、読込制御部60はズーム処理部62とサーチ実行部64を含んでいる。
【0025】
断層画像形成部50は、送受信部14から入力される受信信号66に基づいて断層画像を形成する。すなわち、ビーム走査を反映した座標系から、表示部20での表示に合わせた解像度の直交座標系へと座標変換を行い、さらに受信信号強度を輝度に変換するなどの処理を行う。ドプラ情報形成部52は、同様に、受信信号66に基づいてドプラ情報を形成する。すなわち、計測箇所部分の受信信号に周波数解析を施してドプラシフト量を求め、速度と対応付け、さらに表示に適したデータ形式への変換等を行う。また、心電信号情報形成部54は、心電信号68に基づいて心電信号情報を形成する。すなわち、各時相に対する心電信号を基に表示に適したデータ形式への変換等を行う。
【0026】
こうして得られた断層画像、ドプラ情報及び心電信号情報の各データは、出力経路70から表示処理部18へ出力され、表示部20に表示される。一方、これらの各データは書込制御部56によって処理し、入出力経路72を通じてシネメモリ22に伝送・記憶させることも可能である。書込制御部56は、後述するようにタイマを有しており、各データに取得時刻情報としてのタイマ値を付与する。こうして、シネメモリ22には、断層画像セット、ドプラ波形、心電信号波形の各時系列データが形成される。
【0027】
時相特定部58は、シネメモリ22に記憶した時系列データに対し、診断計測に用いる時相を特定する手段である。予め設定された手順に従って、ドプラ波形に対し波形の形状に基づく処理を行うことで、又は、心電信号波形入力に対し波形の形状に基づく処理を行うことで、時相を特定することができる。あるいは、表示部20に表示されたドプラ波形や心電信号波形に対してユーザ指定された位置情報を、表示処理部18と制御部28が協働して解析し、時相特定部58に伝えることで時相を特定してもよい。時相の決定には、書込制御部56において与えられたタイマ値が用いられる。
【0028】
読込制御部60は、シネメモリ22から各時系列データを読み込む機能を有している。読み込んだ内容は表示処理部18に送って表示部20に表示させることができる。読込制御部60に含まれるズーム処理部62は、画像データに対してズーム処理を行う部位である。対象となる画像データとしては、シネメモリ22内に含まれるものはもちろん、シネメモリ22に記憶していないものであってもよい。特徴的な点は、時相特定部58が特定した時相に対応する断層画像に対し、あらかじめ設定されたズーム基準に基づいて自動的に実施することができる点である。ズーム基準は、ズーム処理する範囲、あるいは、表示される範囲を定めるものである。ズーム基準の定め方はさまざまに考えられ、例えば、適当な点を定めてこれを含む所定の矩形領域をズーム処理の範囲とすることができる。このようなズーム基準としては、ドプラ情報の取得に使う計測箇所、すなわち、サンプルゲートあるいはサンプルボリュームと呼ばれる箇所をズーム基準として採用することができる。ズーム処理における倍率は所定の倍率としてもよいし、その都度適宜決定する機構を設けてもよい。なお、もちろん、この点を中心以外の場所に配置してもよい。
【0029】
サーチ実行部64は、制御部28を介して伝えられるユーザ指令に基づいて、断層画像のサーチを実行する。例えば、時相特定部58が特定した時相に対応する断層画像が抽出され表示された場合に、この断層画像の前方あるいは後方の時相の画像サーチを実行する。サーチにおいては、タイマ値を参照して前方あるいは後方の時相の画像データを取得すればよい。また、サーチの実行にあたっては、ズーム処理部62と協働して、対象となる断層画像等を、常に同条件でズーム処理して表示部20に表示させることもできる。
【0030】
なお、前に述べたとおり、シネメモリ22に格納する時系列データは、断層画像形成部50、ドプラ情報形成部52又は心電信号情報形成部における処理を、完全にまたは部分的に受けていなくてもよい。このような場合には、シネメモリ22から呼び出された際に、適宜必要な処理をこれらの構成部において受ければ、いつでも表示等が可能なデータが得られる。その意味で、両者を区別する必要はなく、未処理の場合を含め、シネメモリ22には、断層画像セット、ドプラ波形、心電信号波形等が形成されると言うことができる。
【0031】
また、画像形成部16は、入出力経路74,76を通じて、それぞれ制御部及び計測演算部と送受信可能であり、必要な信号の送受信が行われている。
【0032】
図3は、画像形成部16の書込制御部56において、各時相データにタイマ値を付与するための構成例を説明する概略図である。ここでは説明の便宜上、断層画像と心電信号情報の2つに対するタイマ値の付与についてのみ説明するが、ドプラ情報などについても同様に実施可能である。
【0033】
タイマ部78は、タイマ値を生成する部位であり、クロックから送られる100μs毎の基準信号80に基づいて1,2,3,...のようにタイマ値のカウントアップを行う。このタイマ値は、制御部28から超音波診断を再開する信号(フリーズ解除の信号)82が送られると、0にリセットされ、その時点からカウントアップを開始する。超音波診断を中断するフリーズは、例えば、表示部20における表示データのリアルタイム更新を中断する際や、シネメモリ22内のデータを表示部20に表示させる際などに行われる。この場合には、一般に、超音波ビームの走査自体が中断され、新たなデータ取得が行われないため、再開にあたってはタイマ値をリセットして、新しいデータセットを作成するのである。
【0034】
ラッチ部A84は、送受信部14から超音波ビームの送信タイミング信号を受け取ると、その時点でのタイマ値をラッチして保持するとともに、タイマ値付与部A88に伝達する。タイマ値付与部A88は、対応する断層画像の受信信号又はさらに処理された断層画像の入力90があると、このタイマ値を付与した上で、出力信号92をシネメモリ22に送るのである。
【0035】
同様の信号処理は、心電信号に対しても行われる。すなわち、ラッチ部B94は、心電計24から心電信号の収集タイミング信号を取得すると、タイマ部78から送られるタイマ値を保持する。そして、タイマ値付与部B98は、対応する心電信号情報の入力信号100に対し、このタイマ値を付与する。こうして収集時刻情報としてのタイマ値を付与された心電信号情報は、シネメモリ22に対し出力信号102として送信されるのである。
【0036】
このように、同じタイマ部78により生成されるタイマ値を付与することで、複数のデータセットにおける各時相のデータをその取得タイミングに基づいて管理できるようになる。つまり、タイマ値を付与した各データセットは、共通のラベル付けをされた管理テーブルを形成しており、これにより、容易に所望の時相の検索が可能となるのである。
【0037】
図4は、各時相の断層画像データあるいはドプラ情報データを収納したデータストリーム110の構成を示している。データストリーム110には、モード情報112(断層画像、ドプラ波形などの種別)、タイマ値114、その他の情報116からなる属性情報118が、データ本体120の前に付与されている。これにより、取得時刻情報に基づくデータ管理が可能となることは前に述べた通りである。
【0038】
次に、図5のフローチャート及び、図6乃至図9の表示例の概略図を用いて、心臓の左室から大動脈へと送られる駆出血流量を測定する処理の流れを説明する。超音波診断の処理が開始されると(S10)、探触子12によって時分割走査が行われ、表示部20には、心臓部の断層画像(Bモード画像)と、この断層画像上における適当な部位に対するドップラ速度の時間変化を示すドプラ波形(Dモード画像)とが並んで表示される(S12)。この断層画像とドプラ波形が同時表示された状態をB/Dモードと呼ぶことにする。
【0039】
図6は、B/Dモードの表示例であり、表示部20には左側の断層画像表示領域200と、右側のドプラ波形表示領域202とが配置されている。断層画像表示領域200に表示された断層画像においては、扇形をなす超音波ビームの走査面204に心臓付近の断層画像が表示されている。具体的には、心筋206及び、この心筋206で囲まれた左室208、左房210、右室212、大動脈214の各構造が表示されており、左室208と大動脈214との間の大動脈弁216の構造も映し出されている。また、ドプラ波形においては、時間軸218上に、ドプラ波形220が表示されている。図示されたドプラ波形220は、周波数解析により得られた周波数をドプラ速度に対応させたものであり、時間軸より下側に位置している場合は、探触子12から遠ざかる方向の速度を表している。ドプラ波形上には、さらに、心電計24から取得した心電波形222が重ねて表示されている。心電波形に対しては、超音波画像のデータと同様に取得時刻情報としてのタイマ値を与えてシネメモリ22に格納する処理を行っており、これにより、ドプラ波形と同じ時間軸上での波形表示が可能となっている。
【0040】
診断を行うユーザは、断層画像を見ながら、探触子12の位置及び角度を設定していく(S14)。すなわち、超音波ビームの走査面が、心臓の左室と大動脈とを含み、大動脈弁の中心を切る断面となるように探触子12の位置とビーム方向を調整する。そして、調整が終わると、大動脈弁のドプラ情報を取得するために、この走査面内において、ドプラ情報の計測箇所として図6のマーク224a,224bに挟まれたサンプルボリューム(サンプルゲート)を設定する。具体的には、ユーザが、表示部20に表示された断層画像を見ながら、入力部26の操作を行い、大動脈弁付近をマークして設定する。探触子12から発せられる超音波ビームは、断層画像を得るための走査面204の走査中に、設定に従って、ドプラ波形を得るための直線226の走査を行う。そして、得られた反射波のうち、サンプルボリュームからの反射波を取り出し、画像形成部16において周波数解析などのドプラ処理をおこなう。これにより、大動脈弁部分でのビーム伝播方向のドプラ速度を算出することが可能になる。ただし、診断において必要となるのは、大動脈を流れる血液流速である。そこで、補正角度としてビーム伝播方向と大動脈方向とのなす角度が設定され(S16)、大動脈方向の血液流速を算出し、ドプラ波形として改めて表示する処理がなされる。
【0041】
通常、B/Dモードにおいては、最新の時刻の断層画像と、最新の時刻から所定時間前の時刻までの波形を描いたドプラ波形と、が表示され、時々刻々最新の画像に更新される。この更新は指令により停止することができ、この結果、超音波画像の取得が中断され、表示画像はある時刻のものに固定(フリーズ)される(S18)。そして、このうちのドプラ波形に対して、波形の輪郭をたどるトレース処理が、計測演算部30によって行われる(S20,S22)。処理においては、まず、トレースを行う区間が設定される。説明している例においては、トレースの目的は、心臓の拍動一周期分の駆出血流量を算出することにあるので、心電波形の特徴部分を参照しながら、ドプラ波形上で、一周期分の駆出血流量の算出に相応しい2時刻が設定される(S20)。そして、計測演算部30は、設定された区間において、ドプラ波形の自動トレースを行う(S22)。トレースの手法は特に限定されるものではなく、波形の包絡線をたどる手法や、高周波成分のフィルタアウトなどの手法などが適宜用いられる。
【0042】
図7は、トレース処理の様子を示したものである。フリーズされたドプラ波形上において、マーク228a,228bが設定され、この間に対し、ドプラ波形220がトレースされ、トレース曲線230が表示されている。なお、このトレース処理は、ユーザがマニュアルで行うこともできる(S24)。マニュアルトレースにおいては、トレースの区間設定だけをユーザが行ってもよいし、波形のトレースについてもユーザが入力部26を通じて実施してもよい。また、別のトレース処理の形態として、ドプラ波形データの取得時に、計測演算部30がリアルタイムでトレース処理を自動実施する方式を挙げることができる。自動処理された結果は、ドプラ波形の取得時刻情報と対応づけてシネメモリ22に格納しておくことで、随時、利用可能となる。
【0043】
続いて、時相特定部58によりドプラ波形上で時相決定が行われる(S26)。時相決定は、自動的に行うこともできるし、ユーザが入力部26を用いて対話的に指定することもできる。図8は、自動的に時相が決定される例を示している。ここでは、心電波形のうちのR波と呼ばれる急峻なピーク232を検出し、この時相から所定時間Δt経過した時相をラインカーソル234で表示している。
なお、心電波形の代わりに、ドプラ波形に基づいて時相を自動決定することも可能であり、例えば、ドプラ波計の極小値位置236に基づいて時相を決定する方法が挙げられる。また、ユーザ指定をする場合には、例えばユーザがラインカーソル234の移動を行って時相を指定し、これを表示処理部18が解析して時相を決定すればよい。
【0044】
時相が決定されると、シネメモリ22の保持され断層画像セットに対し、決定された時相に対応する断層画像の検索と抽出が読込制御部60によって行われる(S28)。具体的な検索手順については後述する。検索により求められた断層画像は、ズーム処理部62によって予め設定された倍率にズーム処理され(S30)、サンプルゲートが表示部20の所定の位置に配置したズーム断層画像として表示される(S32)。図9は、倍率2倍のズーム画像を表示部20の中央部にサンプルゲートを配置して表示した様子を示している。表示部20には、ドプラ波形は表示せず、ズーム断層画像だけが表示されている(1Bモード)。ユーザは、この拡大された画像をもとに診断・計測処理を行うことができるので、詳細な構造を容易に把握できる他、計測誤差の小さい計測を実施できる。
【0045】
抽出されたズーム断層画像に対しては、その前方あるいは後方の時相の断層画像をサーチすることができる(S34)。サーチを実施する場合には、ユーザの指示を受けたサーチ実行部64は、前方あるいは後方の時相の断層画像を順次シネメモリ22から取り出す。そして、ズーム処理部62は、当初のズーム処理と同じ条件で断層画像処理し、表示部20にズーム断層画像を順次切替表示させる。これにより、ユーザは、当初決定した時相が、計測処理を行う上で十分適切かどうかを確認することができる。そして、他に適切な時相が見つかった場合には、そのズーム断層画像を表示した状態にしておけば、自動的に再抽出したものとして扱われる。また、サーチの結果、当初抽出したズーム断層画像を採用することも可能である。
【0046】
拡大画像に対しては、ユーザの指令のもと計測演算部30の計測機能を用いて、大動脈弁の開口部の大きさ、すなわち流出経路の大きさが測定される(S38)。具体的には、大動脈弁216の開口部の両端にマーク238a,238bをつける。そして、計測演算部30によって、マーク238a,238b間の実距離LVOTが算出され、さらに、大動脈弁216の開口部を真円とみなして、流出経路断面積CSA=π(LVOT/2)2 が算出される。
【0047】
次に、やはり計測演算部30の算出機能及び演算機能を用いて、駆出血流量の演算が行われる(S40)。演算においては、まず、トレース曲線230に基づいて各時相に対する血液流速Vが算出される。流速Vは、サンプルゲートの血液流速を代表するものであり、各時刻における流出経路の平均的な流速とみなすことができる。そこで、これを数値積分することで、1心拍あたりの時間積分値VTI=∫Vdtが求められる。また、流出経路断面積CSAは、大動脈弁216の開口時においては時間的に一定とみなすことができる。したがって、VTIとの積を取って1心拍あたりの駆出血流量SV=VTI*CSAが算出される。さらに、心電計24からの心電信号から得た1分間あたりの心拍数HRを掛け合わせることで、1分間あたりの駆出血流量(心拍出量)CO=SV*HRが得られる。
【0048】
これらの計測値・演算値の結果は、表示部20内に開かれる小ウインドウに表示される。図10は、この小ウインドウの例である。上に述べた各項目の他、最大流速pV=max(V)、圧較差PG、平均流速MnVも表示されている。図においては、各項目の値について@で示しているが、実際には測定値が表示されることになる。
【0049】
図11は、シネメモリ22に格納されたデータが検索及び抽出される過程、すなわち図5のステップS28を詳細に説明するフローチャートである。ここでは、B/Dモード表示されフリーズされた画像を基に、S26の処理によってドプラ波形上で時相決定がなされている。そこで、読込制御部60は、まず、シネメモリ22内のドプラ波形を検索し(S300)、指定された時相に相当するタイマ値を取得する(S302)。続いて、このタイマ値に最も近いタイマ値を持つ時相の断層画像を、断層画像セットから検索する(S304)。また、必要であれば、心電信号情報も心電波形のデータセットから検索する。そして、見つけられた断層画像データをシネメモリ22から抽出し(S306)、ズーム処理(S30)過程に送る。
【0050】
【発明の効果】
本発明の超音波処理装置を用いることで、ユーザは、診断時にズーム処理した所望の断層画像を容易に取得できるようになる。これにより、診断の前処理過程に係るユーザの操作負担を軽減し、診断環境を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の構成を示す概略図である。
【図2】画像形成部の構成を示す概略図である。
【図3】書込制御部の一部の構成例を示す概略図である。
【図4】各時相のデータ構成の概略を示す図である。
【図5】本実施の形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】断層画像、ドプラ波形及び心電波形の表示例を示す図である。
【図7】トレースの概要を示す図である。
【図8】時相決定の概略を示す図である。
【図9】ズーム断層画像の表示例を示す図である。
【図10】計測値の表示例を示す図である。
【図11】検索・抽出過程の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 超音波診断装置、12 探触子、14 送受信部、16 画像形成部、18 表示処理部、20 表示部、22 シネメモリ、24 心電計、26 入力部、28 制御部、30 計測演算部、50 断層画像形成部、52 ドプラ情報形成部、54 心電信号情報形成部、56 書込制御部、58 時相特定部、60 読込制御部、62 ズーム処理部、64 サーチ実行部、78 タイマ部、84 ラッチ部A、88 タイマ値付与部A、94 ラッチ部B、98 タイマ値付与部B、200 断層画像表示領域、202 ドプラ波形表示領域、204 走査面、206 心筋、208 左室、214 大動脈、216 大動脈弁、218 時間軸、220 ドプラ波形、222 心電波形、230 トレース曲線、234 ラインカーソル。
Claims (6)
- 超音波ビームの繰り返し走査により得られた受信信号に基づいて、複数の時相の断層画像からなる断層画像セットを生成する断層画像セット生成手段と、
超音波ビームの走査面内において、計測箇所を指定する指定手段と、
前記受信信号に基づいて、前記計測箇所での各時相のドプラ情報からなるドプラ波形を生成するドプラ波形生成手段と、
前記断層画像セットに含まれるいずれかの断層画像に対して、前記計測箇所をズーム基準としてズーム処理を行い、ズーム断層画像を生成するズーム処理手段と、を備える、ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記断層画像セットの各時相の断層画像と前記ドプラ波形の各時相のドプラ情報とを、対応づけて管理する管理テーブルと、
前記ドプラ波形中の時相を特定する時相特定手段と、
前記管理テーブルを参照し、前記特定手段に特定された時相に対応する断層画像を、前記断層画像セットの中から抽出する抽出手段と、を含み、
前記ズーム処理手段は、前記抽出手段によって抽出された断層画像に対しズーム処理を行う、ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記時相特定手段は、前記ドプラ波形の形状に基づいて時相を特定する、ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項2に記載の超音波診断装置において、
各時相での生体信号情報からなる生体信号波形を生成する生体信号波形生成手段、を備え、
前記時相特定手段は、前記生体信号波形の形状に基づいて時相を特定する、ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記ズーム断層画像上で心臓内の大動脈弁について開口部の大きさを計測する計測手段と、
前記計測箇所を大動脈弁付近に設定して生成した前記ドプラ波形に基づいて、血液流速の時間積分値を算出する算出手段と、
前記開口部の大きさ及び前記血液流速の時間積分値に基づいて駆出血流量を演算する演算手段と、を備える、ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記断層画像セットの各時相の断層画像と前記ドプラ波形の各時相のドプラ情報とを、対応づけて管理する管理テーブルと、
前記ドプラ波形中の時相を特定する時相特定手段と、
前記管理テーブルを参照し、前記特定手段に特定された時相に対応する断層画像を、前記断層画像セットの中から抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された断層画像の前方あるいは後方の時相の画像サーチを実行するサーチ実行手段、を含み、
前記ズーム処理手段は、前記抽出手段によって抽出された断層画像に対してズーム処理を行い、さらに、この時のズーム基準を維持して前記サーチ実行手段によりサーチされる断層画像に対してズーム処理を行う、ことを特徴とする超音波診断装置。
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