JP2008530107A - 自己硬化活性化剤 - Google Patents

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Abstract

歯科用結合剤と自己硬化性もしくは二元硬化性歯科用セメントまたは修復剤との界面の化学的重合のための自己硬化性活性化剤は、アリールボレート化合物、重合性モノマー、任意の酸性化合物、触媒作用を示すアミン化合物、有機過酸化物含有材料、および有機過酸化物の分解を促進する金属化合物を含む。

Description

関連出願
本発明は、2005年2月8日出願の米国特許仮出願第60/651030号(LDC−983)の特権を主張する。
新規な自己硬化性活性化剤は、間接的セメント結合手順(インレー/アンレー/クラウン/ブリッジ/コアの形成およびベニア)のためのセメントを結合するために、個々の1成分可視光線硬化自己エッチング接着剤(IP−SEA)成分、Xeno IIIまたはP&B NTタイプ接着剤(Dentsply International Inc.、ペンシルバニア州ヨークから入手可能)と一緒に使用される。プロトタイプ自己硬化活性化剤の配合は表1に纏められている。この系は、接着剤の希釈化を防ぎ、アミンが接着剤の酸性によりプロトン化され得る過酸化物−アミン硬化修復剤またはセメントの重合における困難性を解消するために設計されている。
(メタ)アクリレート化合物の化学的重合のための幾つかの触媒は確認されている。これらの系は主に以下の材料を含むがこれらに限定されない:
1.トリアルキルボランまたはトリアルキルボランの部分酸化物、例えば、トリ−n−ブチルボラン。
2.有機過酸化物および金属塩の組合せを含む、レドックスに基づく自己硬化性開始剤。
3.有機過酸化物および第三級アミンの組合せを利用する系。
4.過酸化水素およびFe2+化合物の組合せ。
5.Cu2+化合物およびイオノゲンハロゲン化物種と組合せたバルビツール酸。
6.アリールボレート化合物および酸性化合物。
7.アリールボレート化合物、酸性化合物および遷移金属化合物。
特開2000−169535号公報は、重合性不飽和化合物とラジカル発生触媒との組合せの組成物、および重合開始剤とをブレンドすることにより得られる、周囲温度で硬化する自己硬化性樹脂組成物を開示している。開始剤は、酸性成分または酸性重合性不飽和化合物を有する有機ホウ素化合物から成る。
トリアルキルホウ素またはこの部分酸化物はレドックス重合にとって有効な開始剤であるが、これらの材料は一般的に自然発火性であり、化学的に非常に不安定である。この触媒は特殊な包装を必要とし、使用直前にモノマー成分と混合することが必要である。
バルビツール酸と一緒の有機過酸化物および金属塩または第三級アミン系は有用性および生体相溶性により種々の歯科用材料において主に使用されている。過酸化物アミン系は、アミン化合物の酸化により硬化生成物の色彩/濃淡の色合いに影響を及ぼし、過酸化物の酸素阻害および熱的不安定性により一般的に不安定である。バルビツール酸に基づく触媒は硬化時間の調節に伴う困難性を示すことが分かっており、酸化してこれらの活性を低減する傾向がある。
一般に、アリールボレートは取扱いが容易で、硬化生成物を着色せず、許容される安定性を示す。イバラギら(米国特許第6660784号)によれば、アリールボレートに伴う困難性は、これらの系が十分な触媒活性を示さない点である。
上記のように、周囲温度でラジカル重合メカニズムによるビニルまたはアクリレートに基づく樹脂の化学的重合は、従来、過酸化物および芳香族第三級アミンからなる二成分レドックス硬化系を使用して達成される。一方、光活性化重合は、光開始剤、通常はα−ジケトン、の活性化からその励起三重項状態へのフリーラジカルの発生により進行する。これは、その後に、アミン促進剤により活性化光開始剤が還元されて、解離によりフリーラジカルを放出する中間体励起錯体(エクシプレックス)を形成する。象牙質に対する樹脂コンポジットの結合強度は、接着剤系と樹脂コンポジットとの間の重合形式の適合性により影響されることを示唆する証拠が存在した[Swift EJ、May KN、Wilder AD.Journal of Prosthodontics 1998年:7:256〜60頁]。最近の報告は、更に、通常の光硬化自己エッチング接着剤系は、幾つかの系に関して有効な結合は達成されい程度まで化学的硬化コンポジットと相溶性が悪いことを明らかにした[Miller MBら、Realty 1999年;13:1〜182〜7]。しかしながら、化学的に硬化するコンポジットに弱く結合したこの系は、光硬化樹脂コンポジットの使用で高い剪断結合強度を示した。一般的に、自己エッチング接着剤と化学的硬化樹脂との非相溶性は、接着剤系の酸性成分により促進されるアミンの反応によるものである。より具体的には、結合剤のこれらの酸成分は、自己硬化性樹脂コンポジットにおいて有機レドックス触媒の第三級芳香族アミンをプロトン化する。その後、プロトン化されたアミン(第四級芳香族アミン)は、過酸化物と反応せずに、周囲条件下で重合を開始することのできるラジカルに分解する錯体を形成する。全体的に、触媒は能力を失い、官能基転換の速度および程度は、歯科用接着剤の性能を犠牲にして顕著に弱められる。このアミンプロトン化反応に基づいて、組合せにおいて使用される歯科用修復剤は光硬化性タイプのものだけに限定される。
光硬化樹脂コンポジットは審美歯科用途において大部分、化学的硬化コンポジットの使用に取って代わったが、化学的に活性化されるコンポジットは、現代の修復歯科学においてなお重要な用途を有する。化学的に硬化するコンポジットの長い作業時間は、次の樹脂コンポジット修復のための「直接収縮技術」に採用された。この技術においては、ゆっくり固まり、化学的に硬化するコンポジットは、バルクで、または部分的に重合された材料の流入によって修復において発生するストレスを軽減するための基底層として使用された。化学的に硬化する樹脂は、光では容易に貫通できない領域における修復材料として、および歯内ポストと一緒にクラウンおよびブリッジ、インレーおよびアンレーのルーティングのための自動または二元硬化樹脂セメントとしてしばしば使用される。二元硬化性または化学硬化性コンポジットを有する光硬化性自己エッチング結合剤の使用を容易にするためには、自己硬化性活性化剤は、化学的に硬化する系のレドックス触媒におけるアミンと酸含有接着剤との非相溶性を解消することを要求される。Prime&Bond NT二元硬化結合系においては、通常の光硬化結合剤、Prime&Bond NTは使用前に自己硬化活性化剤と混合される。Prime&Bond NT Dual−Cureは、二元硬化セメント、例えば、Calibraを化学的硬化形式で結合する場合に優れた結合強度を示す。自己硬化活性化剤における活性成分は、貯蔵中にメタクリレート樹脂とゆっくりと反応するp−トルエンスルフィネートであるので、Prime&Bond NTのための自己硬化活性化剤は、どの重合性樹脂も存在しないp−トルエンスルフィネートの希釈溶液である。Prime&Bond NTと自己硬化活性化剤とを一緒に添加すると、接着剤は活性化剤で希釈される。その結果、過剰な(大気の)酸素を接着剤へ浸透させて、ラジカル重合を阻害知る。他の自己硬化性活性化剤は、分解を阻止するために冷却を必要とする熱的に不安定な過酸化物を含む。この希釈効果を最小限にし、熱的に安定な系を提供するために、重合性樹脂を含む新たな自己硬化性活性化剤系が求められている。
幾つかの論文は、テトラフェニルボレート(TPB)塩および有機酸との二成分系がビニル化合物のラジカル重合を効果的に開始することができることを示している[T.Satoら、Die Makromolekulare Chemie 162(1972年) 9〜18]。全体的に、著者はTPBイオンと酸のプロトンとの間の反応が、開始ラジカル生成において重要であると結論付けている。ジメチルベンジルアニリニウムTPBおよびトリクロロ酢酸(TCA)を使用すると、メチルメタクリレート(MMA)の重合速度は、TPB塩およびTCAの両方の濃度の平方根に比例することが分かり、この系がラジカル重合を誘発したことが確認された。この系とスチレンとの共重合は、通常のラジカル共重合で得られたものと一致する組成物曲線を生じた。
2001年に、サトーら[T.Satoら、Journal of Polymer Science、Part A:Polymer Chemistry(2001年)4206〜4213頁]は溶剤におけるアリールボレートおよびアリールジアゾニウム化合物の利用を検討している。幾つかの重合性モノマー系が異なる溶剤タイプと共に検討された。この研究はフェニル基が発生することを推定して、動的研究およびEPR研究を基にした開始のメカニズムを提案している。
1984年には、マンら[Y.Munら、Journal of Macromolecular Science、Chemistry(1984年)A21.(5)645〜660頁]は、ナトリウムテトラフェニルボレートとビス(エチルアセトアセタト)銅(II)との二成分系を使用してメチルメタクリレートおよびメチルアクリレートの重合を検討している。この研究は、アセトンにおける活性化エネルギーを計算して、開始過程におけるモノマーの関与を示唆した。
1983年には、マンら[Y.Munら、Memoirs of the Faculty of Engineering、Osaka University(1983年)24 149〜159頁]は、ナトリウムテトラフェニルボレートと種々の金属塩との利用を検討している。この研究は、コバルトおよび銅塩と一緒のナトリウムテトラフェニルボレートがメチルメタクリレート重合を促進したと結論付けている。マンガン、チタンおよびニッケル塩は重合には殆どまたは全く効果を示さなかった。更に、水、クラウンエーテルおよびベンゾキノンは重合プロセスを阻害した。
1970年には、サトーら[T.Satoら、Chemistry & Industry、(英国ロンドン)(1970年)4(125)]は、テトラフェニルボレートのN−アシロキシトリアルキルアンモニウム塩の調製方法を提示している。この研究論文は、生成されたテトラフェニルボレートが、熱分解して、メタクリレート重合を60℃で開始したと判断している。
米国特許第6660784B2号[K.Ibaragi、H.KazamaおよびM.Oguri(Tokuyama Co.、日本)、2003年12月9日発行]は、酸性化合物、クメンヒドロペルオキシド等の有機過酸化物、およびナトリウムテトラフェニルボレート等のアリールボレート化合物を含むがアミン化合物を実質的に含まない化学的重合のための歯科用触媒を開示している。この触媒は化学的に高度に安定で、取扱いが容易で、高度に活性で、重合により特性が損なわれる可能性が少なく、硬化生成物の着色または脱色の原因とはならず、歯科用修復剤として極めて有用であった。
特許請求されているものは、アリールボレート化合物、酸性化合物、有機過酸化物を含み、有機過酸化物がアリールボレートの1モル当たり0.1〜10モルの量を含み、触媒作用を示したアミン化合物および有機過酸化物の分解を促進する金属化合物を実質的に含まない、化学的重合のための歯科用触媒である。
米国特許第5866631号[H.NakagawaおよびH.Ohno(Tokuyama Co.、日本)、1999年2月2日発行]は、化学的に重合性の接着剤のための前処理材料として、象牙質およびエナメル質の両方に対して高い接着強度を得ることのできる歯科用プライマー組成物を開示している。この組成物は、酸性基、水、アリールボレートおよび遷移金属化合物からなる重合性モノマーを含む歯科用プライマー組成物であった。
日本特許第0930981号[M.Oguri、H.KazamaおよびT.Sato Tokuyama Soda Co.LTD.、日本 1997年12月2日]は、酸性モノマーおよび象牙質に対する良好な接着性を有する充填剤を含む歯科用接着剤を開示している。好ましい組成物は、その他の重合性モノマーと一緒に、酸基含有アリールボレートモノマーおよび充填剤を含む。
日本特許出願WO2003027153号[M.Oguri、H.Kazama、K.Ibaragi、K.FujinamiおよびT.Sato Tokuyama Corp.、日本、2003年4月3日]は、歯科用接着剤における使用のためのアリールボレートおよびバナジウム化合物を含む重合触媒を開示している。好ましい組成物は、酸基含有アリールボレートモノマーおよびバナジウムが4+または5+の酸化状態にあるバナジウム化合物を含む。
特開2000−169535号(公報) 米国特許第6660784号 Swift EJ、May KN、Wilder AD.Journal of Prosthodontics 1998年:7:256〜60頁 Miller MBら、Realty 1999年;13:1〜182〜7 T.Satoら、Die Makromolekulare Chemie 162(1972年) 9〜18 T.Satoら、Journal of Polymer Science、Part A:Polymer Chemistry(2001年)4206〜4213頁 Y.Munら、Journal of Macromolecular Science、Chemistry(1984年)A21.(5)645〜660頁 Y.Munら、Memoirs of the Faculty of Engineering、Osaka University(1983年)24 149〜159頁 T.Satoら、Chemistry & Industry、(英国ロンドン)(1970年)4(125) 米国特許第5866631号 日本特許第0930981号 日本特許出願WO2003027153号
直接および間接結合用途のための、IP−SEA(Xeno IV)、Xeno IIIまたはPrime&Bond NTと一緒に使用される万能触媒系。
結合剤/新規なSCAの結合強度は、Prime&Bond NT/SCA二元硬化接着剤と比肩し得る、またはそれよりも良好なものである。
SCAは、接着剤と組合せた場合、セメントの寿命中における十分な色調安定性(修復を変色させない)、良好な結合性能[エナメル質≧20MPa、象牙質≧15MPa(直接)、象牙質≧10MPa(間接)]を提供する。
薄いフィルム厚さ≦15ミクロン。
Figure 2008530107
本発明の自己硬化活性化剤(SCA)は、既存の市販の自己硬化活性化剤に対する改善を実証する。新規な自己硬化活性化剤には、種々の光硬化結合剤を、自己硬化形式における自己硬化材料または二元硬化材料と相溶性にするために広範囲の有用性が見出される。
新規なSCAは、単独包装(ボトルまたは単回単位−分量)に含まれ、使用前に結合剤と混合される。新規なSCAは、重合性樹脂モノマーの存在しない市販のPrime&Bond NT SCAとは容易に区別される。新規なSCAは、組成物中に樹脂モノマーを導入することによりPrime&Bond NT SCAに関連した希釈の問題を克服するように設計されている。独特な化学および成分の慎重な選択は、溶液混合物の貯蔵安定性を与える。
新規なSCAをIP−SEAに入れて自己硬化Calibra(Dentsply International Inc.)を結合すると、非常に簡単な結合手順を使用して優れた結合強度性能を生じた。この手順は次の様に概要説明される:工程1:1〜2滴のIP−SEA接着剤を混合ウェル中に入れる。同じ滴数の自己硬化活性化剤を同じ混合ウェルに入れる。内容物を1〜2秒間混合する。工程2:この混合物を施与して全ての歯の表面を十分に湿らせる。これらの表面は十分に湿らせたまま20秒間置かれなければならない。工程3:過剰の溶剤を10秒間穏やかに乾燥して除去する。工程4:混合された接着剤/活性化剤を10秒間光硬化する。工程5:Calibraプレースメントを貼り付け、15分間自己硬化させる。
更に具体的に言えば、この接着剤系およびプロトコルは、象牙質において19.9±1.8MPa、エナメル質において18.8±2.8MPaの剪断結合強度(SBS)値を生じた。手順の工程3において、結合剤の光硬化は象牙質での高い結合強度を達成するために非常に重要である。自己硬化開始剤は接着剤を硬化させようとするものではない。既に論じた通り、自己硬化開始剤の目的は、種々の光硬化結合剤を、自己硬化または二元硬化材料と相溶性にすることである。光硬化結合剤が存在しない場合は、わずか1.4MPaのSBSが象牙質で達成されたにすぎない。更に、IP−SEAがCalibraを歯の固い組織上に直接結合させるために使用された場合は、測定可能な結合強度は達成されなかった。
新規なSCAをPrime&Bond NTまたはIP−SEAに導入すると、50℃で6週間の熟成後に剪断結合強度の減少は生じなかった。これは、ナトリウムテトラフェニルボレートに基づく樹脂含有SCAが安定で、貯蔵中に重合せずまたは能力を失わないことを示す。
SCAをPrime&Bond NTまたはIP−SEAと混合すると、結合混合物は、米国特許第6660784B2号および米国特許第5866631号に記載されている歯科用触媒の必須成分である何れの有機過酸化物または何れの遷移金属化合物も含まない。しかしながら、結合混合物は、米国特許第6660784B2号ではその使用が除外されている第三級アミン(EDABまたはDMABN)を含む。

Claims (6)

  1. アリールボレート化合物と、
    重合性モノマーと、
    酸性化合物、触媒作用を示すアミン化合物、有機過酸化物および金属化合物とを含み、前記金属化合物が前記有機過酸化物の分解を促進する、
    歯科用結合剤および自己硬化性または二元硬化性歯科用セメントまたは修復剤との界面の化学的重合のための自己硬化性活性化剤。
  2. 前記重合性モノマーが、該モノマー上に酸性基含有官能基を有する、請求項1に記載の化学的重合のための自己硬化性活性化剤。
  3. 前記アリールボレート化合物が4つのアリール基を有する、請求項1に記載の化学的重合のための自己硬化性活性化剤。
  4. 請求項1に記載の化学的重合のための、重合性モノマーおよびアリールボレートを含む自己硬化性活性化剤組成物。
  5. 光重合開始剤を更に含む、請求項4に記載の自己硬化性活性化剤組成物。
  6. 重合性モノマーを含む重合性モノマー100重量部と、
    アリールボレート化合物0.01〜10重量部と、
    光重合開始剤0.01〜10重量部と
    を含む、歯科用接着剤の希釈を阻害し、光硬化性歯科用接着剤と自己硬化性樹脂セメントとの間の界面の重合を促進するための自己硬化性活性化剤。
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