JP2008524801A - 難燃性電線 - Google Patents

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Abstract

心線及び心線をおおって配設された被覆を含んでなる電線。被覆は熱可塑性樹脂組成物からなる。この熱可塑性樹脂組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリプロピレン、ブロックコポリマー及び有機リン酸エステルを含んでいる。ブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量と有機リン酸エステルの量との和は46.5以上である。
【選択図】 図1
TPO−4811に関する注釈
☆請求項8(訳文1頁36行目)には「第一のブロックコポリマーの総重量を基準にして 50重量%未満のアリールアルキレン含有量を有する第一のブロックコポリマー、及び 第二のコポリマーの総重量を基準にして50重量%を超えるアリールアルキレン含有量 を有する第二のブロックコポリマー」と記載されていますが、請求項27(訳文3頁1 4行目)には「第一のブロックコポリマーが第一のブロックコポリマーの総重量を基準 にして50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有し、第二のブロックコポリマー が第二のコポリマーの総重量を基準にして50重量%以下のアリールアルキレン含有量 を有する」と記載されていて、矛盾しています。明細書本文中にも同様な矛盾が存在す るように思います。例えば、訳文10頁36〜45行目をご参照下さい。
☆訳文4頁からの明細書の冒頭には、原文では下記の文章が記載されていますが、訳文で は省いてあります。
関連出願のクロスリファレンス
本願は、2004年12月17日に提出された米国仮特許出願第60/637,40 6号、同第60/637,419号及び第60/637,406号(その開示内容は援 用によって本明細書の内容の一部をなす)に対する優先権を主張する。」
☆訳文6頁39行目の「モルホロジー」は“morphology”の訳語です。以前には「形態」 と訳しましたが、特許文献でよく使用されているので採用しました。“form”の訳語と の混同を避けるためにも有用と考えました。
☆訳文8頁19〜21行目には、「((溶融混合後の最終固有粘度)−(溶融混合前の初 期固有粘度))/(溶融混合前の初期固有粘度)で計算できる。」と記載されています が、「×100」が抜けているように思います。
☆訳文12頁9〜8行目に記載された有機リン酸エステルの量には単位(重量%)が抜け ていますが、原文通りにしてあります(4箇所)。
☆訳文13頁16〜24行目の段落では、「ポリマー相溶化剤」との記載が見られますが 、これは「ブロックコポリマー」とすべきものです。また、「ポリオレフィン」も「ポ リプロピレン」とするのが正しいと思います。
☆訳文15頁24行目の「例1〜19」は、「例1〜18」の間違いと思います。15頁 42行目についても同様です。
☆訳文17頁8行目の【選択図】は、一応「図1」としてあります。

Description

本発明は難燃性電線に関する。
エンジン室内でフードの下方に配置される自動車用電線は、従来、未被覆銅心線をおおって配設された単一の耐熱絶縁材層で絶縁されていた。熱可塑性ポリエステル、架橋ポリエチレン及びハロゲン化樹脂(例えば、フルオロポリマーやポリ塩化ビニル)が、長い間、耐熱性ばかりでなく耐薬品性、難燃性及びたわみ性を要求するこのような苛酷な環境中で必要とされる耐熱絶縁材に対するニーズを満たしてきた。
ガス及び油に対して傑出した抵抗性を有する熱可塑性ポリエステル絶縁層は、機械的に強靱であると共に銅で触媒される劣化に対して抵抗性を有するが、加水分解のため早期に破損することがある。熱可塑性ポリエステル絶縁電線での絶縁層はまた、高温の塩水に暴露された場合に亀裂を生じると共に、湿潤温度サイクルに暴露された場合に破損することも判明している。
環境への悪影響があるので、絶縁層へのハロゲン化樹脂の使用を低減又は排除したいという要望が強くなりつつある。実際、多くの国では、ハロゲン化材料の使用の減少を命令し始めている。しかし、線被覆用押出装置の多くはポリ塩化ビニルのようなハロゲン化樹脂の規格に基づいて作られているので、いかなる代替材料もポリ塩化ビニルと同様に取り扱うことができなければならない。
架橋ポリエチレンは耐熱絶縁材を提供することに大きな成功を収めてきたが、この成功は自動車用電線に関する要件が進化するのに伴って維持するのが難しいことがある。自動車での電線の量は、最新の乗物でますます多くの電子装置が使用されつつあるのに伴って指数関数的に増加している。配線の劇的な増加のため、自動車製造業者は、減少した絶縁層厚さを規定すると共に、小さい心線サイズを規定することで、総合的な電線直径を減少させようとしている。例えば、ISO6722は、2.5mmの断面積を有する心線について、薄肉絶縁材の厚さは0.35mmであり、超薄肉絶縁材の厚さは0.25mmであると規定している。
絶縁材の肉厚の減少は、架橋ポリエチレンを使用する場合に困難をもたらす。架橋ポリエチレンに関しては、薄い絶縁層厚さは、150〜180℃のオーブン温度で老化させた場合に短い熱寿命をもたらす。これはそれの熱的定格を制限する。例えば、銅心線と共に肉厚0.75mmの隣接した架橋ポリエチレン絶縁層を有する電線はたわみ性を示し、150℃に3000時間暴露した後にマンドレルの周囲で曲げても絶縁層は亀裂を生じない。しかし、肉厚0.25mmの架橋ポリエチレン絶縁層を有する同様な電線は、150℃に3000時間暴露した後には脆くなる。これらの極めて薄い肉厚要件が生み出す有害な効果は銅で触媒される劣化に帰せられていて、これは当業界で問題として広く認められている。
銅が架橋ポリエチレンに接触するのを防止するために銅心線を(例えば)スズで被覆することが可能であるが、被覆材料及び被覆プロセスの追加コストは高い。加えて、多くの自動車規格は銅心線が未被覆であることを要求している。また、金属不活性化剤としても知られる安定剤を絶縁材に添加することも可能であるが、安定剤は薄い肉厚を有する電線に部分的な保護しかもたらさないことが認められている。
架橋ポリエチレンと銅心線との間に樹脂系の保護層を配設した二層又は三層絶縁材を使用することも提唱されてきた。しかし、二層及び三層絶縁材の製造は複雑で資本支出の増加を必要とすると共に、多層材料は新たな層間密着性の問題も提起する。
加えて、絶縁材の肉厚が減少するのに伴い、少なくとも部分的には絶縁層が大きい表面積/体積比を有する結果として難燃性はますます困難になる。
したがって、自動車環境で有用な電線に対するニーズが存在している。
米国特許第6627701号明細書 米国特許出願公開第2004/0177993号明細書 国際公開第89/00756号パンフレット 特開2003−226792号公報
上述のニーズは、心線及び心線をおおって配設された被覆を含んでなる電線であって、
被覆が熱可塑性樹脂組成物からなると共に、熱可塑性樹脂組成物が
(i)重量基準の量を有するポリ(アリーレンエーテル)、
(ii)重量基準の量を有するポリプロピレン、
(iii)加重平均アリールアルキレン含有量(B)を有するブロックコポリマー、並びに
(iv)ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとブロックコポリマーと有機リン酸エステルの合計重量を基準にした重量%で表される量(A)で存在する有機リン酸エステル
を含み、
有機リン酸エステルの量(A)及びブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量(B)が式A+B≧46.5を満足し、
熱可塑性樹脂組成物中のポリプロピレン及びポリ(アリーレンエーテル)の総量を基準にして、ポリプロピレンの重量基準の量がポリ(アリーレンエーテル)の重量基準の量より少ない電線によって満たされる。
別の実施形態では、心線及び心線をおおって配設された被覆を含んでなる電線であって、
被覆が熱可塑性樹脂組成物からなると共に、熱可塑性樹脂組成物が
(i)重量基準の量を有するポリ(アリーレンエーテル)、
(ii)重量基準の量を有するポリプロピレン、
(iii)加重平均アリールアルキレン含有量(B)を有するブロックコポリマー、並びに
(iv)ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとブロックコポリマーと有機リン酸エステルの合計重量を基準にした重量%で表される量(C)のリンを含む有機リン酸エステル
を含み、
リンの量(C)及びブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量(B)が式C+B≧31.7を満足し、
熱可塑性樹脂組成物中のポリプロピレン及びポリ(アリーレンエーテル)の総量を基準にして、ポリプロピレンの重量基準の量がポリ(アリーレンエーテル)の重量基準の量より少ない電線が提供される。
図面の簡単な説明
図1は、電線の横断面の略図である。
図2及び3は、複数の層を有する電線の斜視図である。
本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、これらは以下の意味をもつものと定義される。
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
「任意」又は「任意には」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。
同じ特性を記載しているすべての範囲の端点は、独立に結合可能であると共に、記載された端点を含んでいる。「約…より大きい」又は「約…より小さい」として示された値は、記載された端点を含んでいる。例えば、「約3.5より大きい」は3.5の値を包含する。
心線サイズとは心線の断面積をいう。本明細書中で言及されるISO6722は、この規格の2002年12月15日版である。
前記に略述した通り、電線はその所期最終用途に応じて広範囲の要件を満たさなければならない。自動車用電線に関する要件は、特にハロゲン化材料が存在しない場合、達成するのが困難である。一実施形態では、断面積が0.2mmの心線及び0.2mmの被覆厚さを有する電線は、2.5mm以下の心線サイズ(断面積)のケーブルに関するISO6722に含まれる火炎伝搬法に準拠して試験したときに、10枚の試料に基づいて5秒以下の平均消炎時間を有する。若干の実施形態では、10枚の試料の消炎時間のいずれもが70秒を超えない。
被覆がポリプロピレン、ポリ(アリーレンエーテル)、ブロックコポリマー及び有機リン酸エステル難燃剤を含む熱可塑性樹脂組成物からなる場合、電線に関する強力な難燃性(耐火性としても知られる)を達成するのは意外にも困難である。通例、同様な組成物及び用途で難燃性を達成するためには、難燃性を達成するのに十分な難燃剤が添加される。しかし、難燃剤の量の増加だけでは十分でないことがある。特に曲げ弾性率で表される十分なたわみ性を有する組成物では、ブロックコポリマーのアリールアルキレン含有量も重要である。
電線は被覆に亀裂を生じることなく曲げたり操作したりすることが可能でなければならないので、たわみ性は被覆に関する重要な特性である。被覆の亀裂は電圧漏れを生じることがある。加えて、道路車両での60V及び600V単心ケーブルに関する国際標準規格であるISO6722中に含まれるいくつかの試験では、規定された1組の条件に電線を暴露し、次いでマンドレルの回りに巻き付けることが要求されている。マンドレルの回りに巻き付けた後、電線の被覆を亀裂及び欠陥の有無について検査する。熱老化又は耐薬品性試験のような条件に暴露される前に最小限のたわみ性しかもたない熱可塑性樹脂組成物を用いた電線は、試験条件に暴露された後、被覆に亀裂を生じることなくマンドレルの回りに巻き付けるのに十分なたわみ性をもたないことが多い。
本明細書中に記載される熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも2つの相、即ちポリオレフィン相及びポリ(アリーレンエーテル)相を含んでいる。ポリオレフィン相は連続相である。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)相はポリオレフィン相中に分散している。両相間の良好な相溶化は、低温及び室温での高い衝撃強さ、良好な熱老化性、良好な難燃性、並びに大きい引張伸びをはじめとする向上した物理的性質をもたらし得る。一般に、組成物のモルホロジーは相溶化の程度又は品質を表すことが認められている。小さくて比較的一様な粒度のポリ(アリーレンエーテル)粒子が組成物の領域全体にわたって均等に分布していることは、良好な相溶化を表している。
本明細書中に記載される熱可塑性樹脂組成物は、ポリスチレン又はゴム改質ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン又はHIPSとしても知られる)のようなアルケニル芳香族樹脂を実質的に含まない。実質的に含まないとは、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン及びブロックコポリマーの合計重量を基準にして10重量%(wt%)未満、さらに詳しくは7wt%未満、さらに詳しくは5wt%未満、さらに一段と詳しくは3wt%未満のアルケニル芳香族樹脂を含むこととして定義される。一実施形態では、本組成物はアルケニル芳香族樹脂を完全に含まない。意外にも、アルケニル芳香族樹脂の存在はポリ(アリーレンエーテル)相とポリオレフィン相との相溶化にマイナスの影響を及ぼすことがある。
一実施形態では、熱可塑性樹脂組成物は8000kg/cmから18000kg/cm未満まで(800MPaから1800MPa未満まで)の曲げ弾性率を有する。この範囲内では、曲げ弾性率は10000kg/cm(1000MPa)以上、さらに詳しくは12000kg/cm(1200MPa)以上であり得る。やはりこの範囲内では、曲げ弾性率は17000kg/cm(1700MPa)以下、さらに詳しくは16000kg/cm(1600MPa)以下であり得る。異なる成形条件を使用すれば、試験試料の曲げ弾性率値は顕著に変化し得ることが経験からわかっている。本明細書中に記載されるすべての曲げ弾性率値は、後記実施例に記載されるようにして成形された試料を用いると共に、1.27mm/分の速度でASTM D790−03に準拠して試験することで求めた。
本明細書中で使用する「ポリ(アリーレンエーテル)」は、下記の式(I)を有する構造単位を複数含んでいる。
Figure 2008524801
式中、各構造単位について、Q及びQは各々独立に水素、ハロゲン、第一若しくは第二低級アルキル(例えば、1〜7の炭素原子を含むアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、炭化水素オキシ、アリール、又はハロゲン原子と酸素原子とを2以上の炭素原子が隔てているハロ炭化水素オキシである。若干の実施形態では、各Qは独立にアルキル又はフェニル(例えば、C1−4アルキル)であり、各Qは独立に水素又はメチルである。ポリ(アリーレンエーテル)は、通例はヒドロキシ基に対してオルト位に位置するアミノアルキル含有末端基を有する分子を含み得る。また、通例はテトラメチルジフェニルキノン副生物が存在する反応混合物から得られるテトラメチルジフェニルキノン(TMDQ)末端基が存在することも多い。
ポリ(アリーレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、イオノマー又はブロックコポリマー、並びに上述のものの1種以上を含む組合せの形態を有し得る。ポリ(アリーレンエーテル)には、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を任意には2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と共に含むポリフェニレンエーテルがある。
ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−キシレノール、2,3,6−トリメチルフェノール、及び2,6−キシレノールと2,3,6−トリメチルフェノールの組合せのようなモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングで製造できる。かかるカップリングには一般に触媒系を使用する。触媒系は、銅、マンガン又はコバルトの化合物のような重金属化合物を、通常は他の各種物質(例えば、第二アミン、第三アミン、ハロゲン化物、又は上述のものの2種以上の組合せ)と共に含み得る。
一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は封鎖ポリ(アリーレンエーテル)からなる。末端ヒドロキシ基は、例えばアシル化反応により封鎖剤で封鎖できる。選択される封鎖剤は、好ましくは、反応性の低いポリ(アリーレンエーテル)を生じることで、高温での加工中におけるポリマー鎖の架橋及びゲル又は黒斑点の形成を低減又は防止するものである。好適な封鎖剤には、例えば、サリチル酸、アントラニル酸又はこれらの置換誘導体のエステルなどがあり、サリチル酸のエステル、特にサリチルカーボネート及び線状ポリサリチレートが好ましい。本明細書中で使用する「サリチル酸のエステル」という用語は、カルボキシ基、ヒドロキシ基又はその両方がエステル化された化合物を包含する。好適なサリチレートには、例えば、フェニルサリチレートのようなアリールサリチレート、アセチルサリチル酸、サリチルカーボネート及びポリサリチレート(線状ポリサリチレート及びジサリチリドやトリサリチリドのような環状化合物の両方を含む)がある。一実施形態では、封鎖剤はサリチルカーボネート及びポリサリチレート(特に線状ポリサリチレート)、並びに上述のものの1種以上を含む組合せから選択される。例示的な封鎖ポリ(アリーレンエーテル)及びその製法は、米国特許第4760118号(Whiteら)及び同第6306978号(Braatら)に記載されている。
ポリサリチレートによるポリ(アリーレンエーテル)の封鎖は、ポリ(アリーレンエーテル)鎖中に存在するアミノアルキル末端基の量を低減させるとも考えられる。アミノアルキル基は、ポリ(アリーレンエーテル)の製造プロセス中にアミンを使用する酸化カップリング反応の結果である。ポリ(アリーレンエーテル)の末端ヒドロキシ基に対してオルト位にあるアミノアルキル基は、高温で分解しやすい。かかる分解は、第一又は第二アミンの再生及びキノンメチド末端基の生成をもたらすと考えられ、これは2,6−ジアルキル−1−ヒドロキシフェニル末端基を生成することがある。アミノアルキル基を含むポリ(アリーレンエーテル)をポリサリチレートで封鎖すれば、かかるアミノ基を除去してポリマー鎖の封鎖末端ヒドロキシ基を生じ、2−ヒドロキシ−N,N−アルキルベンズアミン(サリチルアミド)の生成をもたらすと考えられる。アミノ基の除去及び封鎖は、高温に対して一層安定なポリ(アリーレンエーテル)を与え、それによってポリ(アリーレンエーテル)の加工中に生じる分解生成物を減少させる。
ポリ(アリーレンエーテル)は、単分散ポリスチレン標準(40℃のスチレン−ジビニルベンゼンゲル)及びクロロホルム1ml当たり1mgの濃度を有する試料を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して3000〜40000g/molの数平均分子量及び5000〜80000g/molの重量平均分子量を有し得る。ポリ(アリーレンエーテル)又はポリ(アリーレンエーテル)の組合せは、25℃のクロロホルム中で測定して0.35dl/g以上の初期固有粘度を有する。初期固有粘度は、組成物の他の成分と溶融混合する前のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度と定義される。当業者には理解される通り、ポリ(アリーレンエーテル)の粘度は溶融混合後には最大30%まで高くなることがある。増加パーセントは、((溶融混合後の最終固有粘度)−(溶融混合前の初期固有粘度))/(溶融混合前の初期固有粘度)で計算できる。2通りの固有粘度を使用する場合、正確な比率の決定は使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望の最終的な物理的性質に多少依存する。
熱可塑性樹脂組成物を製造するために使用するポリ(アリーレンエーテル)は、可視微粒子不純物を実質的に含まないものであり得る。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は直径が15μmを超える微粒子不純物を実質的に含まない。本明細書中で使用する「可視微粒子不純物を実質的に含まない」という用語は、ポリ(アリーレンエーテル)に適用される場合、50mlのクロロホルム(CHCl)中に溶解した10gのポリ(アリーレンエーテル)試料がライトボックス内で肉眼で観察して5未満の可視斑点を示すことを意味する。肉眼で見える粒子は、通例は直径が40μmを超えるものである。本明細書中で使用する「15μmを超える微粒子不純物を実質的に含まない」という用語は、400mlのCHCl中に溶解した40gのポリ(アリーレンエーテル)試料についてPacific Instruments社のABS2アナライザーで測定した場合、15μmの粒度を有する微粒子の1g当たりの数が、溶解ポリマー材料20mlずつからなる5つの試料を1ml/分(±5%)の流量でアナライザーに流した場合の平均に基づいて50未満であることを意味する。
熱可塑性樹脂組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリプロピレン、有機リン酸エステル及びブロックコポリマーの合計重量を基準にして35〜65重量%(wt%)の量でポリ(アリーレンエーテル)を含み得る。この範囲内では、ポリ(アリーレンエーテル)の量は40wt%以上、さらに詳しくは45wt%以上であり得る。やはりこの範囲内では、ポリ(アリーレンエーテル)の量は55wt%以下であり得る。
ポリプロピレンはホモポリプロピレン又はポリプロピレンコポリマーであり得る。ポリプロピレンとゴム又はブロックコポリマーとのコポリマーは、時には耐衝撃性改良ポリプロピレンといわれる。かかるコポリマーは通例は異相性であり、非晶質相及び結晶相の両方を有するのに十分な長さの各成分セクションを有している。さらに、ポリプロピレンはホモポリマーとコポリマーの組合せ、異なる融解温度を有するホモポリマーの組合せ、又は異なるメルトフローレートを有するホモポリマーの組合せからなり得る。
一実施形態では、ポリプロピレンはイソタクチックポリプロピレンのような結晶性ポリプロピレンからなっている。結晶性ポリプロピレンは、20%以上、さらに詳しくは25%以上、さらに一段と詳しくは30%以上の結晶化度を有するポリプロピレンと定義される。結晶化度は示差走査熱量測定法(DSC)で測定できる。
若干の実施形態では、ポリプロピレンは134℃以上、さらに詳しくは140℃以上、さらに一段と詳しくは145℃以上の融解温度を有する。
ポリプロピレンは、0.4g/10分を超えて15g/10分以下のメルトフローレート(MFR)を有する。この範囲内では、メルトフローレートは0.6g/10分以上であり得る。やはりこの範囲内では、メルトフローレートは10g/10分以下、さらに詳しくは6g/10分以下、さらに一段と詳しくは5g/10分以下であり得る。メルトフローレートは、粉末化又はペレット化ポリプロピレン、2.16kgの荷重、及び230℃の温度を使用してASTM D1238に準拠して測定できる。
本組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリプロピレン、有機リン酸エステル及びブロックコポリマーの合計重量を基準にして15〜35重量%(wt%)の量でポリプロピレンを含み得る。この範囲内では、ポリプロピレンの量は17wt%以上、さらに詳しくは20wt%以上であり得る。やはりこの範囲内では、ポリプロピレンの量は33wt%以下、さらに詳しくは30wt%以下であり得る。
一実施形態では、本組成物はポリプロピレンに加えて高密度ポリエチレン(HDPE)を含む。存在する場合、HDPEの重量基準の量はポリプロピレンの重量基準の量より少ない。ポリプロピレン及びHDPEの合計量は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリプロピレン、HDPE、有機リン酸エステル及びブロックコポリマーの合計重量を基準にして15〜35重量%(wt%)である。この範囲内では、ポリプロピレン及びHDPEの合計量は17wt%以上、さらに詳しくは20wt%以上であり得る。やはりこの範囲内では、ポリプロピレン及びHDPEの合計量は33wt%以下、さらに詳しくは30wt%以下であり得る。本組成物がポリプロピレン及びHDPEの両方を含む場合、ポリプロピレン及びHDPEの合計量はポリ(アリーレンエーテル)の量より少ない。
本明細書中で使用する「ブロックコポリマー」とは、1種のブロックコポリマー又は複数のブロックコポリマーの組合せをいう。ブロックコポリマーは、繰返しアリールアルキレン単位からなる1以上のブロック(A)と、繰返しアルキレン単位からなる1以上のブロック(B)とを含んでいる。ブロック(A)及び(B)の配列は、線状構造又は枝分れ鎖を有するいわゆるラジアルテレブロック構造であり得る。A−B−Aトリブロックコポリマーは、繰返しアリールアルキレン単位からなるブロックAを2つ含んでいる。アリールアルキレン単位のペンダントアリール部分は、単環式又は多環式であり得ると共に、環状部分上の任意の利用可能な位置に置換基を有し得る。好適な置換基には、炭素原子数1〜4のアルキル基がある。例示的なアリールアルキレン単位は、下記の式IIに示すフェニルエチレンである。
Figure 2008524801
ブロックAはさらに、アリールアルキレン単位の量がアルキレン単位の量を超える限り、炭素原子数2〜15のアルキレン単位を含み得る。
ブロックBは、エチレン、プロピレン、ブチレン、又は上述のものの2以上の組合せのような炭素原子数2〜15の繰返しアルキレン単位からなっている。ブロックBはさらに、アルキレン単位の量がアリールアルキレン単位の量を超える限り、アリールアルキレン単位を含み得る。
各々のブロックAは、他のブロックAと同一の又は異なる分子量を有し得る。同様に、各々のブロックBは他のブロックBと同一の又は異なる分子量を有し得る。ブロックコポリマーは、α,β−不飽和カルボン酸との反応で官能化できる。
一実施形態では、Bブロックはアリールアルキレン単位と炭素原子数2〜15のアルキレン単位(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、又は上述のものの2以上の組合せ)とのコポリマーからなる。Bブロックはさらに、若干の不飽和非芳香族炭素−炭素結合を含み得る。
本発明で使用するブロックコポリマーは、Bブロックが制御分布コポリマーからなるブロックコポリマーを含まない。本明細書中で使用する「制御分布」とは、いずれかのモノマーの明確なブロックが欠如している分子構造をいうものと定義される。即ち、各々のホモポリマーのTgの中間にただ1つのガラス転移温度(Tg)が存在することで示されるように、或いは陽子核磁気共鳴法で示されるように、所定の単一モノマーの「つながり」が20単位の平均最大数を有するものである。
繰返しアリールアルキレン単位は、スチレンのようなアリールアルキレンモノマーの重合で得られる。繰返しアルキレン単位は、ブタジエンのようなジエンから導かれた繰返し不飽和単位の水素化で得られる。ブタジエンは1,4−ブタジエン及び/又は1,2−ブタジエンからなり得る。Bブロックはさらに、若干の不飽和非芳香族炭素−炭素結合を含み得る。
例示的なブロックコポリマーには、ポリフェニルエチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリフェニルエチレン(時にはポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンともいう)及びポリフェニルエチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリフェニルエチレン(時にはポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンともいう)がある。
ブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量は、2種以上のブロックコポリマーが使用される場合の各ブロックコポリマーの量及び単一又は複数のブロックコポリマーのアリールアルキレン含有量に基づいて計算される。例えば、単一のブロックコポリマーを使用するならば、加重平均アリールアルキレン含有量は単一のブロックコポリマーのアリールアルキレン含有量である。2種のブロックコポリマーを使用するならば、加重平均アリールアルキレン含有量は下記の式で求められる。
Figure 2008524801
式中、A1=ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとブロックコポリマーと有機リン酸エステルの合計重量を基準にした重量%で表される第一のブロックコポリマーの量、C1=第一のブロックコポリマーの総重量を基準にした第一のブロックコポリマー中のアリールアルキレン量、A2=ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとブロックコポリマーと有機リン酸エステルの合計重量を基準にした重量%で表される第二のブロックコポリマーの量、C2=第二のブロックコポリマーの総重量を基準にした第二のブロックコポリマー中のアリールアルキレン量である。3種以上のブロックコポリマーを使用するならば、加重平均アリールアルキレン含有量は各ブロックコポリマーに関する項を用いて同様に計算される。
一実施形態では、加重平均アリールアルキレン含有量は35〜70である。この範囲内では、加重平均アリールアルキレン含有量は38以上、さらに詳しくは40以上であり得る。やはりこの範囲内では、加重平均アリールアルキレン含有量は67以下、さらに詳しくは65以下であり得る。
一実施形態では、熱可塑性樹脂組成物は2種のブロックコポリマーを含んでいる。第一のブロックコポリマーは、第一のブロックコポリマーの総重量を基準にして50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有している。第二のブロックコポリマーは、第二のブロックコポリマーの総重量を基準にして50重量%以下のアリールアルキレン含有量を有している。例示的な組合せのブロックコポリマーとしては、第一のブロックコポリマーの総重量を基準にして15〜40重量%のフェニルエチレン含有量を有する第一のポリフェニルエチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリフェニルエチレン、及び第二のブロックコポリマーの総重量を基準にして55〜70重量%のフェニルエチレン含有量を有する第二のポリフェニルエチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリフェニルエチレンが使用できる。50重量%を超えるアリールアルキレン含有量を有する例示的なブロックコポリマーには、旭化成(株)からTUFTECの商品名で商業的に入手できる、H1043のようなグレード名を有するもの、並びに(株)クラレからSEPTONの商品名で入手できる若干のグレードがある。50重量%未満のアリールアルキレン含有量を有する例示的なブロックコポリマーには、Kraton Polymers社からKRATONの商標で商業的に入手できる、G−1650、G−1651、G−1652及びG−1657のようなグレード名を有するものがある。
若干の実施形態では、ブロックコポリマーはポリスチレン標準を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定して5000〜1000000g/molの数平均分子量を有する。この範囲内では、数平均分子量は10000g/mol以上、さらに詳しくは30000g/mol以上、さらに一段と詳しくは45000g/mol以上であり得る。やはりこの範囲内では、数平均分子量は好ましくは800000g/mol以下、さらに詳しくは700000g/mol以下、さらに一段と詳しくは650000g/mol以下であり得る。
ブロックコポリマーは、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリプロピレン、有機リン酸エステル及びブロックコポリマーの合計重量を基準にして2〜20重量%の量で存在している。この範囲内では、ブロックコポリマーはポリ(アリーレンエーテル)、ポリプロピレン、有機リン酸エステル及びブロックコポリマーの合計重量を基準にして4重量%以上、さらに詳しくは6重量%以上の量で存在し得る。やはりこの範囲内では、ブロックコポリマーはポリ(アリーレンエーテル)、ポリプロピレン、有機リン酸エステル及びブロックコポリマーの合計重量を基準にして18重量%以下、さらに詳しくは16重量%以下、さらに一段と詳しくは14重量%以下の量で存在し得る。
例示的な有機リン酸エステル難燃剤には、特に限定されないが、フェニル基、置換フェニル基、又はフェニル基と置換フェニル基の組合せを含むリン酸エステル、レゾルシノールに基づくビス−アリールリン酸エステル(例えば、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート)並びにビスフェノールに基づくもの(例えば、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート)がある。一実施形態では、有機リン酸エステルは、トリス(アルキルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS番号89492−23−9及び/又はCAS番号78−33−1)、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート(例えば、CAS番号57583−54−7)、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート(例えば、CAS番号181028−79−5)、トリフェニルホスフェート(例えば、CAS番号115−86−6)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS番号68937−41−7)及び上述の有機リン酸エステルの2種以上の混合物から選択される。
一実施形態では、有機リン酸エステルは下記の式IIIを有するビス−アリールホスフェートからなる。
Figure 2008524801
式中、R、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜5のアルキル基であり、R〜Rは独立に炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はアルキルアリール基であり、nは1〜25に等しい整数であり、s1及びs2は独立に0〜2に等しい整数である。若干の実施形態では、OR、OR、OR及びORは独立にフェノール、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール又はトリアルキルフェノールから導かれる。
当業者には容易に理解される通り、ビス−アリールホスフェートはビスフェノールから導かれる。例示的なビスフェノールには、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(いわゆるビスA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンから導かれる。一実施形態では、ビスフェノールはビスフェノールAからなる。
有機リン酸エステルは相異なる分子量を有し得るので、熱可塑性樹脂組成物中で使用する様々な有機リン酸エステルの量を決定するのは困難である。一実施形態では、有機リン酸エステルの結果としてのリンの量は、ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとブロックコポリマーと有機リン酸エステルの合計重量を基準にして0.8〜1.2重量%である。
一実施形態では、熱可塑性樹脂組成物中の有機リン酸エステルの量は、心線サイズが0.2mmの心線及び0.2mmの被覆厚さを有する電線を使用して2.5mm以下の心線サイズのケーブルに関するISO6722に含まれる火炎伝搬法に準拠して試験したときに、電線が10枚の試料に基づいて5秒以下の平均消炎時間を有するのに十分なものである。これらの10枚の試料のいずれもが70秒を超える消炎時間を有しない。
一実施形態では、有機リン酸エステルはポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとブロックコポリマーと有機リン酸エステルの合計重量を基準にして5〜18重量%の量で存在する。この範囲内では、有機リン酸エステルの量は7以上、さらに詳しくは9以上であり得る。やはりこの範囲内では、有機リン酸エステルの量は16以下、さらに詳しくは14以下であり得る。
さらに、本組成物は、酸化防止剤、10μm以下の平均粒度を有する充填材及び補強材(例えば、ケイ酸塩、TiO、繊維、ガラス繊維、ガラス球、炭酸カルシウム、タルク及び雲母)、離型剤、UV吸収剤、安定剤(例えば、光安定剤など)、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤、泡立て剤、金属不活性化剤、並びに上述の添加剤の1種以上を含む組合せのような各種添加剤を任意に含み得る。
意外にも、ブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量及び有機リン酸エステルの量が共に、心線をおおって配設された被覆の難燃性に関して重要な役割を果たす。心線をおおう被覆が熱可塑性樹脂組成物からなる場合、被覆の難燃性を得るのは困難なことがある。これは、心線上での熱可塑性樹脂組成物の火炎挙動の動力学が単独の熱可塑性樹脂組成物の動力学とは異なるからである。通例、心線は熱伝導性をも有していて燃焼中に加熱し、これが燃焼に対する熱可塑性樹脂組成物の応答の仕方に影響を及ぼすことがある。意外にも、熱可塑性樹脂組成物中の有機リン酸エステルの量(A)及び熱可塑性樹脂組成物中のブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量(B)が式A+B≧46.5を満足すれば、断面積が0.2mmの心線及び0.2mmの被覆厚さを有する電線は、2.5mm以下の心線サイズのケーブルに関するISO6722中に記載された火炎伝搬方法を用いて試験した場合、10枚の試料に基づいて5秒以下の平均消炎時間を有する。さらに、10枚の試料のすべてが70秒未満の消炎時間を有する。
同様に、ブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量及びリンの量が共に、心線をおおって配設された被覆における熱可塑性樹脂組成物の難燃性に関して重要な役割を果たす。熱可塑性樹脂組成物中のリンの量(C)及び熱可塑性樹脂組成物中のブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量(B)が式C+B≧31.7を満足すれば、断面積が0.2mmの心線及び0.2mmの被覆厚さを有する電線は、2.5mm以下の心線サイズのケーブルに関するISO6722中に記載された火炎伝搬方法を用いて試験した場合、10枚の試料に基づいて5秒以下の平均消炎時間を有する。さらに、10枚の試料のすべてが70秒未満の消炎時間を有する。
一実施形態では、電線は心線及び心線をおおって配設された被覆を含んでなり、被覆が熱可塑性樹脂組成物からなると共に、熱可塑性樹脂組成物が、25℃のクロロホルム中で測定して0.35dl/gを超える初期固有粘度を有するポリ(アリーレンエーテル)、145℃以上の融解温度及び0.4〜15g/10分のメルトフローレートを有するポリプロピレン、ビス−アリールホスフェート、並びに異なるアリールアルキレン含有量を有する2種のブロックコポリマーの組合せ(ここで、第一のブロックコポリマーは第一のブロックコポリマーの総重量を基準にして50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有し、第二のブロックコポリマーは第二のコポリマーの総重量を基準にして50重量%以下のアリールアルキレン含有量を有する。)から実質的になる。ポリ(アリーレンエーテル)はポリプロピレンの量より多い重量基準の量で存在し、ブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量は40重量%以下である。熱可塑性樹脂組成物中の有機リン酸エステルの量(A)及び熱可塑性樹脂組成物中のブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量(B)は式A+B≧46.5を満足する。熱可塑性樹脂組成物は1800MPa以下の曲げ弾性率を有すると共に、断面積が0.2mmの心線及び0.2mmの被覆厚さを有する電線は、2.5mm以下の心線サイズのケーブルに関するISO6722に含まれる火炎伝搬法に準拠して試験したときに、10枚の試料に基づいて5秒以下の平均消炎時間を有する。さらに、10枚の試料のすべてが70秒未満の消炎時間を有する。本明細書中で使用する「から実質的になる」とは、本明細書中に記載されるような添加剤の含有は許すが、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリシロキサンなどの追加ポリマー樹脂は除外する。
一実施形態では、電線は心線及び心線をおおって配設された被覆を含んでなる。被覆は熱可塑性樹脂組成物からなると共に、熱可塑性樹脂組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリプロピレン、30以上の加重平均アリールアルキレン含有量を有するブロックコポリマー、及び有機リン酸エステルを含んでいる。ポリ(アリーレンエーテル)の重量基準の量はポリプロピレンの重量基準の量より多い。断面積が0.2mmの心線及び0.2mmの被覆厚さを有する電線の10枚の試料は、2.5mm以下の心線サイズ(断面積)のケーブルに関するISO6722に含まれる火炎伝搬法に準拠して試験したときに70秒未満の消炎時間を有する。若干の実施形態では、平均消炎時間は20秒以下である。
熱可塑性樹脂組成物の成分は、通例は配合押出機又はバンバリーミキサーのような溶融混合装置内で溶融混合される。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリマー相溶化剤及びポリオレフィンが同時に溶融混合される。別の実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリマー相溶化剤及び任意にはポリオレフィンの一部を溶融混合することで第一の溶融混合物を形成する。次いで、ポリオレフィン又はポリオレフィンの残部を第一の溶融混合物とさらに溶融混合することで第二の溶融混合物を形成する。別法として、ポリ(アリーレンエーテル)及びポリマー相溶化剤の一部を溶融混合して第一の溶融混合物を形成し、次いでポリオレフィン及びポリマー相溶化剤の残部を第一の溶融混合物とさらに溶融混合して第二の溶融混合物を形成することもできる。
上述の溶融混合プロセスは、第一の溶融混合物を単離することなく実施でき、或いは第一の溶融混合物を単離することでも実施できる。これらのプロセスでは、1種以上の溶融混合装置を含む1以上の溶融混合装置を使用できる。一実施形態では、被覆を形成する熱可塑性樹脂組成物の若干の成分を、心線を被覆するために使用する押出機に導入して溶融混合できる。
ブロックコポリマーが2種のブロックコポリマー(即ち、50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有するもの及び50重量%未満のアリールアルキレン含有量を有する第二のもの)を含む場合には、ポリ(アリーレンエーテル)及び50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有するブロックコポリマーを溶融混合して第一の溶融混合物を形成し、次いでポリオレフィン及び50重量%以下のアリールアルキレン含有量を有するブロックコポリマーを第一の溶融混合物と溶融混合して第二の溶融混合物を形成することができる。
任意の難燃剤の添加方法及び添加位置は、通例、ポリマーアロイ及びその製造に関する一般技術分野でよく知られている通り、難燃剤の種類及び物理的性質(例えば、固体か液体か)によって決定される。一実施形態では、難燃剤を熱可塑性樹脂組成物の一成分(例えば、ポリオレフィンの一部)と合わせて濃縮物を形成し、次いでそれを残りの成分と溶融混合する。
ポリ(アリーレンエーテル)、ブロックコポリマー、ポリプロピレン及び難燃剤は、ポリ(アリーレンエーテル)のガラス転移温度以上であるがポリプロピレンの分解温度より低い温度で溶融混合される。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリマー相溶化剤、ポリプロピレン及び難燃剤は240〜320℃の押出機温度で溶融混合できるが、溶融混合中にこの範囲を超える短い期間が存在していてもよい。この範囲内では、温度は250℃以上、さらに詳しくは260℃以上であり得る。やはりこの範囲内では、温度は310℃以下、さらに詳しくは300℃以下であり得る。
一部又は全部の成分を溶融混合した後、20〜150μmの孔径を有する1以上のフィルターを通して溶融混合物を溶融濾過できる。この範囲内では、孔径は130μm以下、さらに詳しくは110μm以下であり得る。やはりこの範囲内では、孔径は30μm以上、さらに詳しくは40μm以上であり得る。一実施形態では、心線上の被覆の厚さの1/2以下の最大孔径を有する1以上のフィルターを通して溶融混合物が溶融濾過される。
熱可塑性樹脂組成物からは、ストランドペレット化又は水中ペレット化でペレットを形成し、冷却し、包装することができる。一実施形態では、ペレットは金属箔裏張りプラスチック袋(例えば、ポリプロピレン袋)又は金属箔裏張り紙袋中に包装される。ペレットを満たした袋からは、実質的にすべての空気を排気できる。
一実施形態では、熱可塑性樹脂組成物は可視微粒子不純物を実質的に含まない。本明細書中で使用する「可視微粒子不純物を実質的に含まない」という用語は、熱可塑性樹脂組成物に適用される場合、組成物を射出成形して75mm×50mmの寸法及び3mmの厚さを有する5つのプラークを形成し、黒斑点の有無についてプラークを肉眼で目視検査した時に、5つのプラークのすべてに関する黒斑点の総数が100以下、さらに詳しくは70以下、さらに一段と詳しくは50以下であることを意味する。
一実施形態では、ペレットを溶融し、組成物を押出被覆のような適当な方法で心線に適用することで電線が形成される。例えば、スクリュー、クロスヘッド、ブレーカープレート、分配器、ニップル及びダイを備えた被覆押出機が使用できる。溶融した熱可塑性樹脂組成物は、心線の周囲をおおって配設された被覆を形成する。押出被覆では、心線を中心に配置すると共にダイリップの蓄積を回避するため、単一テーパーダイ、二重テーパーダイ、他の適当なダイ又はダイの組合せを使用できる。
若干の実施形態では、押出被覆前に熱可塑性樹脂組成物を乾燥することが有用であり得る。例示的な乾燥条件は、60〜90℃で2〜20時間である。さらに、一実施形態では、押出被覆に際して被覆の形成前に、20〜150μmの孔径を有する1以上のフィルターを通して熱可塑性樹脂組成物が溶融濾過される。この範囲内では、孔径は30μm以上、さらに詳しくは40μm以上であり得る。やはりこの範囲内では、孔径は130μm以下、さらに詳しくは110μm以下であり得る。別法として、1以上のフィルターは心線上の被覆の厚さの1/2以下の最大孔径を有する。
押出被覆中の押出機温度は、一般に320℃以下、さらに詳しくは310℃以下、さらに一段と詳しくは290℃以下であり得る。さらに、加工温度は、心線に被覆を施すのに十分な流動性の溶融組成物を与えるように調整される。例えば、加工温度は熱可塑性樹脂組成物の融点より高く、さらに詳しくは熱可塑性樹脂組成物の融点より10℃以上高い。
押出被覆後、電線は通常は水浴、水スプレー、エアジェット、又は上述の冷却方法の1以上を含む組合せを用いて冷却される。例示的な水浴温度は20〜85℃である。冷却後、通例は50〜1500m/分の速度で、電線はスプール又は類似の装置上に巻き取られる。
一実施形態では、心線に組成物を適用することで、心線をおおって配設された被覆が形成される。追加の層を被覆に適用することもできる。
一実施形態では、心線と被覆との間に1以上の介在層を有する心線に組成物を適用することで、心線をおおって配設された被覆が形成される。例えば、心線と被覆との間に任意の密着性向上剤を配設することができる。別の例では、被覆の適用に先立って心線を金属不活性化剤で被覆できる。別の例では、介在層は熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂組成物からなり、この組成物は場合によっては発泡している。
心線は単一のストランド又は複数のストランドからなり得る。場合によっては、複数のストランドを結束、撚り合わせ、編組又はこれらの方法の組合せで結合して心線を形成できる。さらに、心線は円形又は楕円形のような各種の形状を有し得る。好適な心線には、特に限定されないが、銅線、アルミニウム線、鉛線、及び上述の金属の1種以上を含む合金の線がある。心線はまた、例えばスズ又は銀で被覆されていてもよい。
心線の断面積及び被覆の厚さは変化し得るが、通例は電線の最終用途で決定される。電線は、例えば自動車用ハーネス電線、家庭電化製品用電線、電力用電線、計器用電線、情報通信用電線、電気自動車や船舶や飛行機用電線などを含め、特に限定せずに電線として使用できる。
例示的な電線の横断面を図1に示す。図1は、心線2をおおって配設された被覆4を示している。一実施形態では、被覆4は発泡熱可塑性樹脂組成物からなっている。例示的な電線の斜視図を図2及び3に示す。図2は、複数のストランドからなる心線2をおおって配設された被覆4と、被覆4及び心線2をおおって配設された任意の追加層6とを示している。一実施形態では、被覆4は発泡熱可塑性樹脂組成物からなっている。心線2は単一の心線からなっていてもよい。図3は、単一の心線2をおおって配設された被覆4と、介在層6とを示している。一実施形態では、介在層6は発泡組成物からなっている。心線2は複数のストランドからなっていてもよい。
押出被覆に先立ち、カラーコンセントレート又はマスターバッチを組成物に添加することができる。カラーコンセントレートを使用する場合、それは通例は組成物の総重量を基準にして3重量%以下の量で存在する。一実施形態では、カラーコンセントレート中に使用する染料及び/又は顔料は塩素、臭素及びフッ素を含まない。当業者には理解される通り、カラーコンセントレート添加前の組成物の色は得られる最終の色に影響を及ぼすことがあり、場合によっては漂白剤及び/又は色安定剤を使用するのが有利なこともある。漂白剤及び色安定剤は当技術分野で公知であり、商業的に入手できる。
本組成物及び電線を以下の非限定的な実施例でさらに例証する。
以下の例は、表1に示す材料を用いて製造した。
Figure 2008524801

例1〜18
例1〜19は、二軸押出機で成分を混合することで製造した。PPE及びブロックコポリマーは供給スロートで添加し、PPは下流で添加した。有機リン酸エステルは、押出機の第二半部において液体インゼクターで添加した。材料を押出機の端部でペレット化し、ペレット化材料から曲げ弾性率、加熱たわみ温度及びメルトフローレート試験用の試験片を射出成形した。
曲げ弾性率(FM)は、ASTM D790−03を用いて1.27mm/分の速度で測定し、kg/cm単位で表す。表記の値は3つの試料の平均である。曲げ弾性率用の試料は、東洋機械金属(株)から入手したPlastar Ti−80G上で、600〜700kg重/平方センチメートルの射出圧力及び15〜20秒の保圧時間を用いて射出成形した。残りの成形条件は表2に示す。
加熱たわみ温度(HDT)は、ASTM D648−04を用いて6.4mm当たり4.6kgで測定した。値は摂氏温度(℃)で表され、3つの試料の平均である。試料は、曲げ弾性率用試料と同じ条件を用いて成形した。
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238を用いて280℃及び5kgで測定した。値はg/10分単位で表され、2つの値の平均である。試料は、曲げ弾性率用試料と同じ条件を用いて成形した。
これらの例の組成及びデータを表3に示す。
例1〜19の組成物を用いて電線を製造した。心線は0.2mmの断面積を有していた。熱可塑性樹脂組成物を80℃で3〜4時間乾燥した後、心線と共に押し出して電線を形成した。押出しに際しては、メルトを濾過してから心線に適用した。被覆は0.2mmの厚さを有していた。電線を80センチメートル(cm)の長さに切断し、ISO6722に記載されているようにして火炎に暴露した。10本の試験電線に基づき、試料が消火するのに要した(秒単位の)平均時間(消炎時間)を表3に示す。
Figure 2008524801
Figure 2008524801

例1〜6は5秒を超える平均消炎時間を有し、加重平均アリールアルキレン含有量とBPADPの量との和は46.5未満である。それとは対照的に、加重平均アリールアルキレン含有量とBPADPの量との和が46.5を超える例7〜14は5秒未満の平均消炎時間を有する。特に例15〜18に関して見れば、加重平均アリールアルキレン含有量とBPADPの量との和が46.5を超える場合には十分な難燃性が得られることが明らかである。
例19〜26
例1〜18に関して上記に記載したようにして例19〜26を製造して試験した。組成及び結果を表4に示す。
Figure 2008524801

例1〜18と同様に例19〜26は、加重平均アリールアルキレン含有量と有機リン酸エステル含有量との和が46.5以上である組成物が5秒未満の平均消炎時間を有することを示している。加重平均アリールアルキレン含有量と有機リン酸エステル含有量との和が46.5未満である組成物は、5秒を超える平均消炎時間を有する。
以上、若干の実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更及び同等物による構成要素の置換を行い得ることが理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明はこの発明を実施するために想定される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を包含するものである。
すべての引用された特許、特許出願及び他の参考文献の開示内容は、援用によって本明細書の内容の一部をなす。
電線の横断面の略図である。 複数の層を有する電線の斜視図である。 複数の層を有する電線の斜視図である。
符号の説明
2 心線
4 被覆
6 介在層

Claims (27)

  1. 心線及び心線をおおって配設された被覆を含んでなる電線であって、
    被覆が熱可塑性樹脂組成物からなると共に、熱可塑性樹脂組成物が
    (i)重量基準の量を有するポリ(アリーレンエーテル)、
    (ii)重量基準の量を有するポリプロピレン、
    (iii)加重平均アリールアルキレン含有量(B)を有するブロックコポリマー、並びに
    (iv)ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとブロックコポリマーと有機リン酸エステルの合計重量を基準にした重量%で表される量(A)で存在する有機リン酸エステル
    を含み、
    有機リン酸エステルの量(A)及びブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量(B)が式A+B≧46.5を満足し、
    熱可塑性樹脂組成物中のポリプロピレン及びポリ(アリーレンエーテル)の総量を基準にして、ポリプロピレンの重量基準の量がポリ(アリーレンエーテル)の重量基準の量より少ない、電線。
  2. 当該電線が、断面積が0.2mmの心線及び0.2mmの被覆厚さを有する電線を使用して、2.5mm以下の心線サイズのケーブルに関するISO6722に含まれる火炎伝搬法に準拠して試験したときに、10枚の試料に基づいて5秒以下の平均消炎時間を有する、請求項1記載の電線。
  3. 10枚の試料のすべてが70秒未満の消炎時間を有する、請求項2記載の電線。
  4. 熱可塑性樹脂組成物がアルケニル芳香族樹脂を実質的に含まない、請求項1記載の電線。
  5. 熱可塑性樹脂組成物がポリプロピレン連続相と分散ポリ(アリーレンエーテル)相とを含む、請求項1記載の電線。
  6. ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとブロックコポリマーと有機リン酸エステルの合計重量を基準にして、ポリ(アリーレンエーテル)が30〜65重量%の量で存在し、ポリプロピレンが15〜35重量%の量で存在し、ブロックコポリマー又はブロックコポリマーの組合せが2〜20重量%の量で存在する、請求項1記載の電線。
  7. ポリプロピレンがポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、又はポリプロピレンホモポリマーとポリプロピレンコポリマーの組合せからなる、請求項1記載の電線。
  8. ブロックコポリマーが、第一のブロックコポリマーの総重量を基準にして50重量%未満のアリールアルキレン含有量を有する第一のブロックコポリマー、及び第二のコポリマーの総重量を基準にして50重量%を超えるアリールアルキレン含有量を有する第二のブロックコポリマーからなる、請求項1記載の電線。
  9. 熱可塑性樹脂組成物がさらに、酸化防止剤、10μm以下の平均粒度を有する充填材、10μm以下の平均粒度を有する補強材、ケイ酸塩、TiO、繊維、ガラス繊維、ガラス球、炭酸カルシウム、タルク、雲母、離型剤、UV吸収剤、安定剤、光安定剤、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤、泡立て剤、金属不活性化剤、及び上述の添加剤の1種以上を含む組合せからなる群から選択される1種以上の添加剤を含む、請求項1記載の電線。
  10. ポリ(アリーレンエーテル)が封鎖ポリ(アリーレンエーテル)である、請求項1記載の電線。
  11. 熱可塑性樹脂組成物が可視微粒子不純物を実質的に含まない、請求項1記載の電線。
  12. 熱可塑性樹脂組成物が15μm超の微粒子不純物を実質的に含まない、請求項1記載の電線。
  13. ポリ(アリーレンエーテル)が、25℃のクロロホルム中で測定して0.35dl/g以上の初期固有粘度を有する、請求項1記載の電線。
  14. ポリプロピレンが、粉末化又はペレット化ポリプロピレン、2.16kgの荷重及び230℃の温度を用いてASTM D1238に準拠して測定したときに0.4g/10分超乃至15g/10分未満のメルトフローレートを有する、請求項1記載の電線。
  15. ポリプロピレンが、示差走査熱量測定法で測定して20%以上の結晶化度を有する、請求項1記載の電線。
  16. ポリプロピレンが134℃以上の融解温度を有する、請求項1記載の電線。
  17. 前記熱可塑性樹脂組成物がさらに高密度ポリエチレンを含む、請求項1記載の電線。
  18. 有機リン酸エステルが、トリス(アルキルフェニル)ホスフェート、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、及び上述の有機リン酸エステルの2種以上の混合物から選択される、請求項1記載の電線。
  19. 熱可塑性樹脂組成物が、ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとブロックコポリマーと有機リン酸エステルの合計重量を基準にして0.8〜1.2重量%のリンを含む、請求項1記載の電線。
  20. 心線が単一のストランド又は複数のストランドからなる、請求項1記載の電線。
  21. 複数のストランドが結束、撚り合わせ、編組又は上述の方法の組合せで結合される、請求項20記載の電線。
  22. 心線が、銅線、アルミニウム線、鉛線、又は上述の金属の1種以上を含む合金の線からなる、請求項1記載の電線。
  23. さらに、被覆上に配設された追加の層を含む、請求項1記載の電線。
  24. さらに、被覆と心線との間に配設された介在層を含む、請求項1記載の電線。
  25. 心線及び心線をおおって配設された被覆を含んでなる電線であって、
    被覆が熱可塑性樹脂組成物からなると共に、熱可塑性樹脂組成物が
    (i)重量基準の量を有するポリ(アリーレンエーテル)、
    (ii)重量基準の量を有するポリプロピレン、
    (iii)加重平均アリールアルキレン含有量(B)を有するブロックコポリマー、並びに
    (iv)ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとブロックコポリマーと有機リン酸エステルの合計重量を基準にした重量%で表される量(C)のリンを含む有機リン酸エステル
    を含み、
    リンの量(C)及びブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量(B)が式C+B≧31.7を満足し、
    熱可塑性樹脂組成物中のポリプロピレン及びポリ(アリーレンエーテル)の総量を基準にして、ポリプロピレンの重量基準の量がポリ(アリーレンエーテル)の重量基準の量より少ない、電線。
  26. 心線及び心線をおおって配設された被覆を含んでなる電線であって、
    被覆が熱可塑性樹脂組成物からなると共に、熱可塑性樹脂組成物が
    (i)重量基準の量を有するポリ(アリーレンエーテル)、
    (ii)重量基準の量を有するポリプロピレン、
    (iii)加重平均アリールアルキレン含有量(B)を有するブロックコポリマー、並びに
    (iv)ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとブロックコポリマーと有機リン酸エステルの合計重量を基準にした重量%で表される量(C)のリンを含む有機リン酸エステル
    から実質的になり、
    リンの量(C)及びブロックコポリマーの加重平均アリールアルキレン含有量(B)が式C+B≧31.7を満足し、
    熱可塑性樹脂組成物中のポリプロピレン及びポリ(アリーレンエーテル)の総量を基準にして、ポリプロピレンの重量基準の量がポリ(アリーレンエーテル)の重量基準の量より少ない、電線。
  27. ブロックコポリマーが異なるアリールアルキレン含有量を有する2種のブロックコポリマーの組合せからなり、第一のブロックコポリマーが第一のブロックコポリマーの総重量を基準にして50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有し、第二のブロックコポリマーが第二のコポリマーの総重量を基準にして50重量%以下のアリールアルキレン含有量を有する、請求項26記載の電線。
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