JP2008520654A - ヒトβig−h3により誘導される遺伝子H−3に対する単クローン抗体およびその用途 - Google Patents

ヒトβig−h3により誘導される遺伝子H−3に対する単クローン抗体およびその用途 Download PDF

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Abstract

本発明はヒトβig−h3に対する単クローン抗体及びその用途に関する。具体的に、本発明はエピトープがヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメインのH1領域であるヒトβig−h3蛋白質を特異的に認識する単クローン抗体に関する。本発明の単クローン抗体は組織内でヒトβig−h3蛋白質を特異的に認識し得るので、βig−h3蛋白質の増加又は減少に関連した疾患の診断に有用である。加えて、この単クローン抗体はβig−h3蛋白質の細胞付着活性を抑制する効果を有する。

Description

本出願は2004年11月19日付で出願された大韓民国特許出願第2004−0095292号の優先権を主張している。
本発明はヒトβig−h3に対する単クローン抗体およびその用途に関する。
βig−h3は、種々の細胞においてTGF−βにより発現が誘導される細胞外基質蛋白質である(Skonier et al.,DNA Cell Biol.11,511−522,1992)。βig−h3蛋白質は、TGF−1により処理されたヒト肺腺癌細胞A549から構成されたcDNAライブラリーからの分別スクリーニングにより、スコニア(Skonier)ら(Skonier J.et al.,DNA Cell Biol.,11:511−522,1992)により最初に分離された。βig−h3蛋白質は、683個のアミノ酸から構成され、アミノ末端に分泌配列およびカルポキシル末端に種々のインテグリン受容体のリガンド認識部位を提供できるRGD(Arg−Gly−Asp)モチーフを有する(Skonier,J.et al.,DNA Cell Biol.,11:511,1992)。また、βig−h3蛋白質は、ショウジョウバエのファシクリン(fasciclin)−Iに存在する類似のモチーフと同質性を有する、‘fas−1ドメイン’と称される4個の同質性内部繰返しドメインを含む。fas−1ドメインは、哺乳類、昆虫、ウニ、植物、酵母および細菌を含む多くの生物の分泌または膜蛋白質において見出される高度に保存された配列を有する(Kawamoto T.,et al.,Biochim.Biophys.Acta.,288−292,1998)。fas−1ドメインは、約110から140個のアミノ酸を有し、特に、それぞれ約10個のアミノ酸から構成された2個の高度に保存された領域(H1およびH2)を有している。
βig−h3蛋白質は、繊維状構造を有し、フィブロネクチンおよびコラーゲンなどの幾つかの細胞外マトリックス蛋白質と相互作用するものとして知られている(Kim J.−E.,et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,43:656−661,2002)。また、βig−h3蛋白質は細胞の成長および分化、創傷治癒および形態形成に関与していると報告されている(Skonier J.,et al.,DNA Cell Biol.,13:571−584,1994;Dieudonne S.C.,et al.,J.Cell.Biochem.,76:231−243,1999;Kim J.−E.,et al.,J.Cell.Biochem.,77:169−178,2000;Rawe I.M.,et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,38:893−900,1997;LeBaron R.G.,et al.,J.Invest.Dermatol.,104:844−849,1995)。加えて、βig−h3は角膜上皮細胞、軟骨細胞および繊維芽細胞などの細胞の付着を媒介することが知られている(LeBaron R.G.,et al.,J.Invest.Dermatol.,104:844−849,1995; Ohno S.,et al.,Biochim.Biophys.Acta,1451:196−205,1999;Kim J.−E.,et al.,J.Biol.Chem.,275:30907−30915,2000)。
本発明者等は、ヒトβig−h3蛋白質に対する単クローン抗体を開発し、この単クローン抗体は交叉反応することなくヒトβig−h3蛋白質だけを特異的に認識することを見出した。
従って、ヒトβig−h3蛋白質のみを特異的に認識する単クローン抗体およびその用途を提供することが、この発明の目的である。
上記の目的を達成するために、本発明は、抗体のエピトープがヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメインのH1領域である、ヒトβig−h3蛋白質を特異的に認識する単クローン抗体を提供する。
本発明の他の目的は、前記単クローン抗体を生産するハイブリドーマを提供することである。
本発明の他の目的は、前記単クローン抗体を調製する方法を提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、βig−h3の発現の増加または減少に関連する疾患の診断のためのキットを提供することである。このキットは前記単クローン抗体を含む
さらに、本発明のさらに他の目的は、前記単クローン抗体を使用するβig−h3の発現の増加または減少に関連する疾患の診断方法を提供することである。
さらに、本発明のさらに他の目的は、βig−h3の細胞付着活性を抑制する方法を提供することである。この方法は、本発明の単クローン抗体の有効量を、投与を必要とする個体に投与することを含む。
さらに、本発明のさらに他の目的は、癌の転移を抑制する方法を提供することである。この方法は、本発明の単クローン抗体の有効量を、投与を必要とする個体に投与することを含む。
定義
他に定義されない限り、ここに使用されているすべての技術的および科学的用語は、本発明が関与する当業者等により通常理解されるものと同一の意味を有する。下記の参考文献は、本発明において使用された多くの用語等の一般的な定義を有する技術の一つを提供する。Singleton et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY (2nd ed.1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY (Walker ed.,1988);およびHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY。
さらに、次の定義が、本発明の実施において読者の助けのために提供される。
本発明において、抗体は、一般に、抗原を生物体内に注入して体液性免疫反応を誘導し、前記抗原に対する抗体生成を誘導して血液を採取することにより収得される。この方法で得られた抗体を多クローン抗体と称す。この多クローン抗体は、異なる抗体遺伝子を有するプラズマ細胞より分泌された種々の抗体の集合である。一方、一つの抗原決定基にのみと反応し、同じ分子構造を有する、単一のプラズマ細胞プラズマ細胞において調製された抗体の単一のタイプを、単クローン抗体と称す。多クローン抗体は複数種類の抗体の混合物であり、他の抗原と望ましくない交叉反応性を示すことがあり得る。しかしながら、抗体の単一タイプは単一の特定のエピトープのみを認識し、従って、極めて特異的なおよび精密な結果が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の単クローン抗体は、ヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメインのH1領域に対応するエピトープを有し、ヒトβig−h3蛋白質を特異的に認識することを特徴とする。好ましくは、本発明の単クローン抗体のエピトープは配列番号3で表示されるアミノ酸配列を含む。
ヒトβig−h3蛋白質は、683個のアミノ酸から構成され、リガンド認識部位を提供するRGDモチーフ(Arg−Gly−Asp)と4個の内部繰返しドメインからなるfas−1ドメインを含んでいる。ヒトβig−h3の全アミノ酸配列が配列番号1に示してある。このfas−1ドメインは110個乃至140個のアミノ酸からなる。より具体的に、βig−h3蛋白質の4個のfas−1ドメインは、βig−h3蛋白質のアミノ酸133番から236番までに対応する1番目のfas−1ドメインD−I、この蛋白質のアミノ酸242番から372番までに対応する2番目のfas−1ドメインD−II、この蛋白質のアミノ酸373番から501番までに対応する3番目のfas−1ドメインD−IIIおよびアミノ酸502番から632番までに対応する4番目のfas−1ドメインD−IV(配列番号2)からなる(図5参照)。ヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメイン(D−IV)は、2つの、高度に保存されたそれぞれ約10個のアミノ酸からなる領域(H1およびH2)を有する。本発明の単クローン抗体の抗原決定基であるβig−h3 D−IV領域のH1領域は、配列番号3に示すアミノ酸配列を有する。
本発明の一つの態様において、本発明の単クローン抗体のエピトープを決定するために、βig−h3 D−IVのH1またはH2領域において欠失を有する一連の欠失変異体を調製し、本発明の単クローン抗体を使用してウェスタンブロット分析を行った。その結果、H1が欠失された変異体の場合にのみ、抗原−抗体反応が起らなかった(図8参照)。これらの結果は、本発明の単クローン抗体のエピトープがβig−h3 D−IVのH1領域であることを示唆している。
一方、本発明の単クローン抗体は、ヒトβig−h3のみを特異的に認識することを特徴とする。
本発明の一つの態様において、本発明の単クローン抗体が、それぞれ1個のfas−1ドメインを有する、ミコバクテリウム・ツバキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)により生産されたMpt70およびMpt83蛋白質と抗原−抗体反応を示すかを調査した。その結果、βig−h3 D−IVを認識した本発明の単クローン抗体は、Mpt70およびMpt83蛋白質を認識しなかった(図4参照)。
さらに、本発明の単クローン抗体は、ヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメインのみを特異的に認識し、ヒトβig−h3蛋白質の他のfas−1ドメインは認識しない。
本発明の一つの態様において、ヒトβig−h3蛋白質の1番目のfas−1ドメイン(D−I)、2番目のfas−1ドメイン(D−II)および3番目のfas−1ドメイン(D−III)を本発明の単クローン抗体が認識するかをウェスタンブロット分析で調査した。その結果、本発明の単クローン抗体はヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメイン(D−IV)のみを特異的に認識することが観察された(図6参照)。
さらに、本発明の単クローン抗体はヒトβig−h3蛋白質のみを特異的に認識し、マウスまたはラットのβig−h3蛋白質とは交叉反応性を示さないことにおいて特徴的である。
本発明の一つの態様において、マウスのβig−h3蛋白質が誘導されたマウス軟骨細胞培養液、ラットのβig−h3蛋白質が誘導されたラットの腎臓細胞培養液およびヒトβig−h3蛋白質が誘導されたヒト肺臓腺癌腫細胞培養液が本発明の単クローン抗体を用いてウェスタンブロット法で分析された。その結果、本発明の単クローン抗体はヒト肺臓腺癌腫細胞により発現されたβig−h3蛋白質のみを認識できることが示された(図11参照)。
また、本発明において、組織および細胞中に発現されたヒトβig−h3蛋白質が実際に本発明の抗体により認識されるか否かをヒト腎臓組織および肺組織を用いて免疫組織染色により試験した(図12参照)。その結果、本発明の単クローン抗体は組織および細胞より発現されたヒトβig−h3蛋白質を極めて特異的に認識することが見出された。
本発明の単クローン抗体は、
(a)βig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメインを免疫源として使用して動物を免疫する段階;
(b)免疫された動物の脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを作製する段階;
(c)ヒトβig−h3を特異的に認識する単クローン抗体を生産する陽性クローンを選別する段階;および
(d)選別されたハイブリドーマを培養し、ハイブリドーマの培養液から抗体を分離する段階
を含む方法により製造できる。
また、本発明の単クローン抗体は、前記ハイブリドーマを動物の腹腔に注入すること、注入後の一定期間経過後腹水を回収することおよび得られた腹水から抗体を分離すること、により調製できる。
本発明において免疫源として使用されるヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1 ドメインは、遺伝子組換え方法により製造されたものが使用できる。例えば、前記ヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメインは、知られている塩基配列を使用して当分野で知られている通常の方法によりcDNAを作製し、このcDNAを発現ベクターに挿入し、このcDNAを宿主細胞において発現させ、このcDNAを精製することにより獲得できる。
上述のように発現された蛋白質は、当分野において知られている通常の方法、例えば、HPLC、FPLC等を使用する順相または逆相液体クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー;サイズ排除クロマトグラフィー、固定化金属キレートクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を利用して、発酵培養培地または細胞培養培地から分離および精製できる。当業者は本発明の範囲を逸脱しない範囲内で最も適合した分離および精製技術を容易に選定できる。しかしながら、親和性クロマトグラフィーが好ましく使用できる。
好ましくは、本発明における免疫源として、ヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメインの4回重複物からなる組換え蛋白質が使用できる。したがって、この組換え蛋白質は、元のβig−h3蛋白質に似た大きさを有する。
本発明の一つの態様において、単クローン抗体の調製のための抗原としてβig−h3 D−IVのcDNAをPCR増幅により収得し、このcDNAをベクターに挿入して組換えベクターを調製した。この組換え蛋白質の精製のために、この蛋白質のC−末端域にヒスチジン残基を連結させ、ヒスチジン−タグを作った。この組換えベクターを用いてD−IV蛋白質の発現を誘導し、発現した蛋白質をNi−NTAを用いて精製し、次いで純粋なβig−h3 D−IVを多クローン抗体を用いた親和性クロマトグラフィーにより精製した。この精製したβig−h3 D−IVを本発明の単クローン抗体を調製するための免疫源として使用した(実施例1参照)。
本発明の単クローン抗体を調製するために、前記にて調製した免疫源を抗原として用いて動物を免疫する。より好ましくは、マウスおよびラットを使用する。前記抗原は通常の免疫方法により腹腔内、筋肉内、眼内または皮下注射して投与する。必要ならば、種々の技術が、前記蛋白質によりもたらされる免疫反応を増加させて、増加した抗体反応性を展開させるために、使用し得る。例えば、発明の抗原蛋白質にフロイント完全または不完全アジュバントが前記蛋白質の免疫性を増加させるために使用できる。免疫性付与期間は、特に制限はしないものの、抗原は2回乃至10回、好ましくは2回乃至5回投与されて、好ましくは数日間のまたは数週間の間隔、より好ましくは1から3週間の間隔が好ましい。最終の免疫後、1から10日、好ましくは2から5日、動物から抗体産生細胞が獲得できる。抗体産生細胞は、脾臓細胞、リンパ細胞、胸腺細胞および末梢血細胞を含む。好ましくは脾臓細胞が使用される。マウスが使用される場合、マウス1匹当り1から100μg、好ましくは25から50μgの抗原を投与する。
前記のように獲得した抗体生産細胞と骨随腫細胞とを、知られている方法により、例えばケーラー(Koehler)とミルステイン(Milstein)の方法により、融合させる。使用し得る骨随腫細胞の例としては、p3/x63−Ag8、p3−U1、NS−1、MPC−11、SP−2/0、F0、P3x63Ag8.V653およびS194などのマウス由来のものである。加えて、ラット由来の細胞系、例えばR−210株が利用できる。
上記のように調製したハイブリドーマから、ヒトβig−h3の4番目のfas−1ドメインを選択的に認識する陽性クローンを選択する。ヒトβig−h3の4番目のfas−1ドメインを選択的に認識する単一クローンの選別は、当分野において知られている免疫化学的方法のいずれかを用いて行い得る。免疫化学的方法の例は、放射能免疫分析法(RIA)、酵素免疫分析法(ELISA)、免疫蛍光法、ウェスタンブロット法およびフローサイトメトリー(FACS)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは酵素免疫分析法(ELISA)が用いられる。
本発明の一つの態様において、本発明のヒトβig−h3 D−IV組換え蛋白質を抗原としてマウスを免疫し(実施例2参照)、免疫されたマウスの脾臓細胞を摘出し、および摘出された脾臓細胞を骨随腫細胞と融合させることにより、ハイブリドーマを調製した(実施例3参照)。このハイブリドーマから、ヒトβig−h3 D−IVを選択的に認識する4個の陽性クローンをELISAにより選別することができた(実施例4参照)。
本発明者は、前記選別された4個の陽性クローンから、ヒスチジン−タグに対して抗原−抗体反応性を示さず、細胞の生命力が優れ、βig−h3 D−IVに対する抗原−抗体反応性が最も優れた7A6aを選択した。
本発明の一つの態様により調製したヒトβig−h3蛋白質に対する単クローン抗体を生産するハイブリドーマ7A6aは、ブタペスト条約下の国際寄託機関であるKorean Collection for Type Cultures(KCTC)、Korean Research Institute of Bioscience and Biotechnology(大韓民国大田市儒城区魚殷洞52番地)に2004年10月11日付で、寄託番号KCTC−10705BPとして寄託した。前記寄託物は、特許の全期間を通じて、KCTCに生きている状態で保持され、寄託を管理する法律の規定に基づいて、非商業的用途のためならば、制限なくいかなる個人または法人も入手可能である。前記ハイブリドーマは通常の培養方法により植え次ぎ培養が可能であり、必要に応じて凍結保存できる。前記ハイブリドーマは通常の方法により培養でき、培養培地を得ることができまたは培養培地を哺乳動物の腹腔内に移植して腹水を得ることができる。この培養培地中または腹水中の抗体は、塩析、イオン交換およびゲル濾過クロマトグラフィー、親和性コラムクロマトグラフィー等の通常使用される方法により精製できる。
本発明の他の態様において、前記にて収得されたハイブリドーマは、マウスの腹腔に注射されて腹水が調製され(実施例9参照)、マウス腹水の抗体を認識する能力が試験された(実施例10参照)。その結果、本発明によるマウス腹水は5ngまでの濃度のヒトβig−h3 D−IVを認識できることが分かった(図10参照)。
さら別の観点において、本発明は、本発明の単クローン抗体を用いる、個体におけるβig−h3の発現における増加または減少に関連する疾患の診断方法を提供する。この方法は、
(a)試験サンプルを本発明の単クローン抗体と接触させる段階、
(b)前記試験サンプルと前記単クローン抗体との免疫反応産物を検出してβig−h3の発現レベルを測定する段階、
(c)段階(b)で測定されたβig−h3の発現レベルを対照群サンプルにおけるβig−h3の発現レベルと比較する段階
を含み得る。
ここに使用される用語「試験サンプル」は、前記疾患を有していることが疑われる個体から得られた生物学的サンプルを指す。この用語は、例えば、細胞、組織、血液および生物学的起源のその他の液状サンプル、生検標本、組織培養のような固形組織サンプルまたはこれより由来した細胞およびその子孫が含まれるが、これらに限定されない。また、サンプルは、試薬により処理されたサンプルおよび可溶化されたサンプルまたは培養細胞、細胞上澄液および細胞溶解物等を指す。用語「対照サンプル」は、正常な個体から得られた生物学的サンプルをいう。
段階(a)において、本発明の抗体は好ましくは固体基質上に固定される。この抗体は文献(Antibodies:A Labotory Manual,Harlow & Lane;Cold SpringHarbor,1988)に記載されているような多様な方法を用いて固定できる。適切な固体基質には、棒、合成ガラス、寒天ビーズ、コップ、平板パック、他の固体支持体により支持されている物、他の支持体に付いている膜または他の支持体を被覆している物が含まれる。他の固体基材には細胞培養プレート、ELISAプレート、チューブおよびポリマー膜等が挙げられる。固体基質上に固定された本発明の抗体は試験サンプルにより処理されて、相互に接触させられ得る。
段階(b)における「免疫反応産物」とは、試験サンプル中のβig−h3蛋白質と本発明の抗体との抗原−抗体反応により生成されたものを指す。前記免疫反応産物の検出は、当分野に知られている免疫学的分析を使用して行うことができる。免疫学的分析の例として、本発明の抗体への抗原の結合を測定する全てのアッセイ方法が含まれ得る。これらのアッセイ方法は、この分野において知られていて、例えば、免疫細胞化学および免疫組織化学、放射線免疫分析法、酵素結合免疫法(ELISA)、免疫沈澱法、免疫ブロッティング、ファル(Farr)分析法、沈降素反応法、比濁計法、免疫拡散法、カウンター電流電気泳動法、単一ラジカル免疫拡散法、蛋白質チップ、ラピットアッセイ、マイクロアレイ法、免疫蛍光法および免疫吸着法等がある。
免疫学的分析方法は、抗原−抗体結合を原理に基づく、知られている全ての定量分析に用いられる適切な担体、検出可能な信号を生成することができる標識、溶解剤、洗浄剤を用いて行うことができる。適切な担体として、可溶性担体、例えば当分野に知られている生理学的に許容される緩衝液のいずれか(例えば、PBS)または不溶性担体、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、弗素樹脂、架橋テキストラン、ポリサッカライド、ガラス、金属、寒天およびこれらの組合せを含むが、これらに限定はされない。
試験サンプルにおけるβig−h3の発現レベルは、検出可能な信号を生成することができる標識を用いて測定できる。検出可能な信号を生成することができる標識は、酵素、蛍光物質、発光性物質および放射性物質等がある。前記酵素は、過酸化酵素、アルカリホスファターゼ、β−D−カラクトシターゼ、グルコースオキシターゼ、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、インベルターゼ等を含む。蛍光物質は、フルオレシンイソチオキシアナート、フィコビリン蛋白質、ロダミン、フィコエリスリン、フイコシアニンおよびオルトフタル酸アルデヒド等を含む。発光物質は、イソルミノ(isolumino)、ルシゲーニン(lucigenin)等を含む。放射性物質には131I、14C、H等を含む。しかしながら、上に例示された物質に加えて、免疫学的分析法に使用できるものであれば、いずれの物でも使用することができる。前記標識は本発明の抗体または本発明の抗体と結合し得る2次抗体に連結することができる。前記2次抗体は当分野に知られているものであればいずれの物でも制限なく使用することができる。
段階(c)において、段階(b)において測定されたβig−h3の発現レベルは対照群サンプルにおけるβig−h3の発現レベルと比較され、βig−h3の発現レベルが変化したか否かが調べられ、かくして、βig−h3の発現レベルの増加または減少に関連する疾患が診断される。
ここに使用される語句「βig−h3の発現レベルの増加または減少に関連する疾患」は、βig−h3の発現レベルが正常のレベルに比べて増加または減少する特徴を示す疾患をいう。βig−h3の発現レベルが正常レベル(対照サンプルにおける発現レベル)に比べて増加する特徴を示す疾患の例は、腎臓疾患、肝臓疾患およびリウマチ疾患を含むが、これらに限定されない。βig−h3蛋白質は、その発現が腎臓疾患の病理メカニズムにおいて重要な役割をするTGF−βにより強力に誘導される特徴がある。より具体的に、糖尿病性腎臓疾患を有する患者、腎臓移植手術前の患者および腎不全症患者の尿中のβig−h3の濃度は、正常人に比べて高く表われる。また、肝炎を有する患者の組織においておよび退行性関節炎およびリウマチ性関節炎を有する患者の滑膜液において、βig−h3の濃度が、正常人に比べて高いことが示されている(大韓民国特許公開公報第2002−82421号)。従って、本発明の単クローン抗体は、βig−h3の濃度を測定することにより、前述の疾患の診断において極めて有用である。
本発明の一つの態様において、本発明の単クローン抗体を用いる酵素免疫分析法(EIA)が例示される。すなわち、βig−h3蛋白質を標準蛋白質としておよび本発明の単クローン抗体を用いて直接サンドイッチ分析を行った。その結果、本発明の単クローン抗体は標準蛋白質の濃度に比例して相関係数0.89以上を示し、極めて正確にβig−h3を検出できることが示された(図13参照)。従って、本発明の単クローン抗体は、前述の疾患の診断のために、例えばEIAにおいて、使用することができる。
加えて、本発明の単クローン抗体は細胞付着の抑制において使用することができる。
本発明の一つの態様において、ヒトβig−h3蛋白質とこの蛋白質の4個のfas−1ドメインをELISAプレートに付着させ、本発明の単クローン抗体とマウス繊維芽細胞を用いて処理し、本発明の単クローン抗体がヒトβig−h3蛋白質等と前記マウス繊維芽細胞との間の細胞付着を抑制するか否かを調べた。その結果、本発明の単クローン抗体は、ヒトβig−h3蛋白質およびこの蛋白質の4番目のfas−1ドメインの細胞付着活性を抑制することが示された(図14参照)。
本発明の他の態様において、ヒトβig−h3蛋白質の細胞付着活性の抑制を、本発明の単クローン抗体の種々の処理濃度において調べた。その結果、腹水から生成された単クローン抗体の1μlの濃度でヒトβig−h3蛋白質を処理した場合でさえも、ヒトβig−h3蛋白質の細胞付着活性が大きく抑制されることが示された(図15参照)。
従って、本発明は、本発明の単クローン抗体の有効量を投与を必要とする個体に投与することを含む、βig−h3の細胞付着活性を抑制する方法を提供する。
ここに使用される用語「細胞」は、その付着がβig−h3により媒介されることが知られている全ての細胞を含み得る。前記細胞の例として、角膜上皮細胞、軟骨細胞および繊維芽細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
用語「個体」は、動物、好ましくは哺乳動物であり得、哺乳動物はヒトを含む。この用語は、動物に由来する、細胞、組織、器官等も含み得る。
ここに使用される用語「有効量」は、個体に投与されたとき、予防効果または治療効果を示す単クローン抗体の量をいう。本発明の単クローン抗体の投与量は、投与経路、投与個体、年齢、性別、体重、個人差および疾病状態に基づいて適宜選択できる。
また、本発明の単クローン抗体は、単独で投与され得または薬学的に許容される担体と共に投与され得る。
ここに使用される用語「薬学的に許容される」は、ヒトに投与された際、通常的に胃腸障害、眩暈症等のようなアレルギー性反応またはこれと類似した反応を起さない生理学的に許容される組成物をいう。薬学的に許容される担体の例は、ラクトース、澱粉、セルロース誘導体、マグネシウムステアレートおよびステアリン酸等の経口投与用担体ならびに水、適切なオイル、食塩水、水性グルコースおよびグリコール等の非経口投与用担体等がある。本発明において。安定化剤および保存剤を追加して使用し得る。適切な安定化剤には、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適切な保存剤には、ベンゾアルコニウムクロライド、メチル−パラベンまたはプロピル−およびクロロブタノールがある。他の薬学的に許容される担体は、下記の文献に見出すことができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1995)。
本発明の単クローン抗体は、当分野において知られている方法により、上述の薬学的に許容される担体と共に、適切な形態に調合することができる。すなわち、本発明の薬学的組成物は、通常の方法により、多様な非経口投与形態または経口投与形態に調合できる。非経口投与用調合剤は、一般に、等張水溶液または懸濁液などの注射用調合剤が好ましい。注射用調合剤は、当分野において知られている方法により、適切な分散剤、湿潤剤または懸濁剤を用いて調製できる。例えば、注射用調合剤は、必要な成分を食塩水または緩衝液に溶解することにより調製できる。また、経口投与用調合剤は、粉末、顆粒、錠剤、丸剤およびカプセル等があるが、これらに限定されない。
前記のように調合された単クローン抗体は、有効量で経口、経皮、皮下、静脈または筋肉を含む多くの経路を通じて投与できる。
さらに、本発明の単クローン抗体は細胞の付着を抑制する機能があるので、実験動物における原発癌の転移過程で表われる癌細胞の浸透、吸着、移動等に影響を及ぼす。したがって、本発明の単クローン抗体は、細胞の転移能の探索、癌組織の転移抑制または癌組織形成をもたらす新生血管形成内皮細胞の付着の抑制等に使用できる。
従って、本発明は、本発明の単クローン抗体の有効量を、投与を必要とする個体に投与することを含む、癌の転移を抑制する方法を提供する。
図面の簡単な説明
図1は、ヒトβig−h3および組換え蛋白質FN115の構造を表す概要図である。
図2は、本発明の単クローン抗体がヒスチジン−タグを認識するか否かのウェスタンブロット分析の結果を示す。
図3は、ヒトβig−h3 D−IV、Mpt70およびMpt83のそれぞれのfas−1ドメイン構造を示す概要図である。黒色部分:fas−1ドメイン内の高度に保存された部分、灰色部分:fas−1ドメイン内の保存された部分。
図4は、本発明の単クローン抗体がMpt70およびMpt83を認識するか否かのウェスタンブロット分析の結果を示す。
図5は、ヒトβig−h3蛋白質のfas−1ドメインを示す概要図である。
図6は、本発明の単クローン抗体がヒトβig−h3蛋白質のD−I、D−II、D−IIIおよびD−IVを認識するか否かのウェスタンブロット分析の結果を示す。
図7は、ヒトβig−h3 D−IVの欠失変異体を示す概要図である。
図8は、本発明の単クローン抗体がヒトβig−h3 D−IVの欠失変異体を認識するか否かのウェスタンブロット分析の結果を示す。
図9は、本発明のハイブリドーマを用いてマウスにおいて腹水を形成させることにより本発明の単クローン抗体を誘導する段階を示す。
図10は、本発明のマウス腹水中に生成された抗体の認識感度についてのウェスタンブロット分析の結果を示す。
図11は、腹水中に生成された本発明の単クローン抗体の、マウスおよびラットのβig−h3蛋白質との交叉反応性についてのウェスタンブロット分析の結果を示す。
図12は、本発明の単クローン抗体を用いたヒト腎臓組織および肺組織における免疫組織染色の結果を示す写真である。矢印はβig−h3が検出された領域である。
図13は、本発明の単クローン抗体を用いた酵素免疫分析(EIA)の結果を示す。
図14は、本発明の単クローン抗体の、βig−h3蛋白質の細胞付着活性抑制効果を、多クローン抗体それと比較して示す。
図15は、本発明の単クローン抗体の種々の処理濃度における、βig−h3蛋白質およびドメインD−IVのそれぞれの細胞付着活性の抑制を示す。
発明の実施のための最良の形態
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示するためだけのものであり、本発明の範囲を限定していると解釈されるべきものでないことが理解されるべきである。
ヒトβig−h3 D−IV組換え蛋白質の調製
本発明の単クローン抗体を産生する抗原のために、組換えヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメイン(βig−h3 D−IV)を4個繰返して含む発現ベクターを、知られている方法(Kim J.−E.et al.,J.Biol.Chem.,275:30907−30915,2000;大韓民国登録特許第10−0382042号)により調製した。
<1−1>組換えベクターの調製
ヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメインD−IV(アミノ酸502―632(配列番号2))に対応するcDNAを次のように調製した。βig−H3 cDNAのアミノ末端領域における部分欠失を有するAsp718−Bg1II断片を発現ベクターpET−29βのEcoRV部位およびEcoRI部位に挿入して、pHis−β−bを調製した。この調製したpHis−β−bを鋳型として用いて、D−IVドメイン領域をPCRにより増幅させた。この増幅産物をベクターpET−29b(+)(Novagen,USA)のEcoRVおよびXhoI位置にクローニングしてpβig−h3 D−IV発現ベクターを調製した。D−IVドメインのフラグメントを制限酵素EcoRVおよびXhoIを使用してpβig−h3 D−IV発現ベクターに追加して挿入し、ドメインD−IV領域が4回重複して存在するpβig−h3 D−IV4Xを調製した。ここにおいて、ドメインD−IVの4回重複からなる組換え蛋白質を調製したのは、元々のβig−h3蛋白質に類似の性質を示すように、元々のβig−h3蛋白質に似た大きさにしたためである。一方、前記組換え蛋白質をNi−NTA樹脂を用いて精製するために、前記cDNA断片のC−末端に6個のヒスチジン残基を連結し、ヒスチジン−タグを作った。
<1−2>組換え蛋白質の発現および分離
大腸菌BS21(DE3)を前記組換えベクターβig−h3 D−IV4Xにより形質転換し、50μg/mlカナマイシンを含むLB培地(トリップトン10g/L,酵母抽出物5g/L,NaCl5g/L)に接種した。次いで、この培地を、37℃の培養器に600nmにおける吸光度が0.5から0.6になるまで置いた。次いで、前記培養液に1mM IPTG(イソプロピル−β−D−(−)−チオガラクトピラノシド、Sigma)を添加し、37℃で4時間培養してヒトβig−h3 D−IV組換え蛋白質が発現されるように誘導した。得られた培養培地を遠心分離して細菌細胞を回収した。得られた細胞を溶解緩衝液(50mMTris−HCl(pH 8.0),100mMNaCl,1mMEDTA,1%トリップトンX−100,1mMPMSF,0.5mMDTT)に懸濁し、超音波破砕機で菌体を破砕した。この過程を5回繰返した後、破砕された細胞を遠心分離して上澄液を収得した。
前記上澄液の中の、封入体形態で発現された蛋白質は、Ni−NTA樹脂(樹脂,Qiagen)に加えられ、2時間混合されて結合させた。この混合液をコラムに入れ、このカラムに樹脂の5倍の量の結合緩衝液(20mMトリス−C1、500mMNaCl、5mMイミダゾル)を加え、このカラムを同量の洗滌緩衝液(20mMトリス−C1、500mMNaCl、20mMイミダゾル)で洗滌した。コラムに結合している組換え蛋白質を300mMイミダゾルを含む溶出緩衝液で溶出させた。
<1−3>組換え蛋白質の確認および定量
実施例<1−2>において収得した精製蛋白質はブラッドフォード(Bradford)分析法(BioRad,Hercules,CA)によりその濃度を測定し、SDS−PAGEにより蛋白質の大きさを調べた。すなわち、実施例<1−2>において得られた溶出液を蛋白質定量システム(Bio−Rad)を用いて反応させ、自動ELISA読み取り器を用いて吸光度595nmにおける蛋白質の濃度を測定した。また、この溶出液をSDS−ポリアクリルアミドゲル12%に負荷し、80VでのSDS−PAGEにかけた。蛋白質の分子量を比較するための標準として、低分子量衡正キット(Pharmacia)を使用した。電気泳動後、クーマシブリリアントブルーR−250で染色して組換え蛋白質の分子量を確認した。
その結果、βig−h3 D−IV4Xは約68kDa分子量を有していた。
組換え蛋白質によるマウスの免疫誘導
実施例1において調製された組換え蛋白質βig−h3 D−IV30μgを同量のフロイント完全アジュバント(GIBCO BRL)と混合した。この懸濁液を0.2mlをBa1b/Cマウス(6週令、雌性)の腹腔内に注射した。1次接種の4週後、2次接種を行い、次いで、2週間隔で総計4回の抗原接種を行った。この時点で、前記蛋白質を
同量のフロイント不完全アジュバント(GIBCO BRL)と混合して懸濁液を製造し、この懸濁液を腹腔内にそれぞれの時間、0.2mlずつ注射した。第3次の腹腔内注射の後、マウスの尾の静脈から血液を採取して血清を採取し、抗体力価を測定した。抗体力価は、抗原として使用した組換え蛋白質βig−h3 D−IVを使用する酵素免疫吸着法(ELISA)により測定した。この目的のために、抗原としての前記組換え蛋白質0.5μg/mlを96ウェルプレートのそれぞれのウェルに100μlずつ添加し、これらウェルを常温で2時間被覆した。このプレートをPBSで1回洗滌し、このプレートに牛血清アルブミン(BSA)200μlを添加して濃度1mg/mlとし、このプレートを常温で2時間遮蔽した。このプレートをPBSで1回洗滌し、ELISAプレートを調製した。マウスから採取した前記血清をPBSにより1000倍に希釈し、常温で1時間培養し、次いでPBSで3回洗滌した。次に、アルカリホスファターゼで標識された、2次抗体である抗−マウスIgG羊抗体(Sigma)を1:5000に希釈し、この希釈液の100μlずつを前記プレートの各々のウェルに添加した。このプレートを常温で1時間培養してリン酸緩衝生理食塩水で3回洗滌した。アルカリホスファターゼの基質であるPNPPをこのプレートの各ウェルに100μlずつ添加して呈色反応を誘導した。呈色反応が表われたとき、405nmにおける吸光度を測定した。ここにおいて、正常的なマウス血清の吸光度より2倍(0.2以上)高い吸光度を示す血清サンプルの希釈率の逆数が30,000以上の時、免疫化が十分であると判断した。抗体力価が不十分な場合には再び組換え蛋白質をマウスの尾の静脈に注射した。
ハイブリドーマの調製
実施例2で免疫されたマウスの脾臓細胞を摘出し、この脾臓細胞を骨随腫細胞Sp210−Ag14(ATCC CRL−1581)と融合させ、ハイブリドーマを調製した。
免疫されたマウスの脾臓を無菌的に摘出した後、DMEM(Gibco BRL,Dulbecco’s Modified Eagle Medium)が補充された培地中に細胞成分のみを分離した。分離された純粋な脾臓細胞をSp210−Ag14細胞と10:1の比率で混合し、一方でPEG(ポリエチレングリコール)溶液を添加して融合を促進させた。融合された細胞をHAT培地(Gibco BRL)に添加して混合した。融合細胞100μlを、マウス支持細胞を前もって敷いてある96ウェルプレートに添加した。次に、このプレートを37℃で7日間保温器に置いた。培養が完了した後、HAT培地に生存していてハイブリドーマを形成したコロニーを有するウェルを選択した。
陽性クローンの選択
実施例3にて調製されたハイブリドーマを培養し、ELISAを用いて培養されたハイブリドーマから陽性クローンを選択した。実施例3のハイブリドーマを、培養皿のウェルに10細胞、5細胞、0.5細胞が入れるように、96ウェル培養皿に接種した。この時点で、接種された細胞をHAT培地中に培養した。この間、培地を、3日毎に新たな培地に交換した。顕微鏡により観察して単一コロニーの形成を有するウェルの培養上澄液を採取し、実施例2と同じ方法によりELISAを実施して、陽性クローンを選択した。
その結果、4個の陽性クローンを収得し、これらをそれぞれ7A6−a、9B2−a、9G12−bおよび10B2−bと命名した。
本発明の単クローン抗体がヒスチジン−タグを認識するか否かの試験
実施例4により得られた4個の陽性クローンがヒスチジン−タグと反応するか否かを否かを試験した。実施例1におけるヒトβig−h3 D−IV蛋白質の調製の間に、組換え蛋白質の精製を容易にするために、ヒスチジン−タグを付けた。従って、前記4個の陽性クローンがヒスジン−タグと反応するか否かを組換え蛋白質FN115を用いるウェスタンブロット分析法によりで分析した。組換え蛋白質FN115(33kD)を、フィブロネクチンタイプIIIの9番目および10番目のドメインを含むcDNAフラグメントをpET29b(+)ベクター(Novagen,USA)に挿入し、このベクターにより大腸菌(E.coli)を形質転換し、蛋白質の発現を誘導して精製することにより調製した。ヒスチジン−タグが付いており、βig−h3 D−IVと類似性のない組換え蛋白質である(図1)(Mardon,H.J.,and Grant,K.E.FEBS Lett.340,197−201,1994)。従って、前記4個の陽性クローンがFN115蛋白質を認識すれば、これらは、ヒスチジン−タグと反応するものと判定できる。
先ず、実施例4において得られた陽性クローンをそれぞれDMEM−低グルコース(Dulbeccos Modified Medium, Gibco BRL)、10%FBS(fetal bovine serum)、1%ペニシリンGおよび1%ストレプトマイシンが補充された培地に接種し、37℃にて、5%CO保温器中に培養した。
4種の陽性クローン培養液について、次のようにウェスタンブロット分析を行った。先ず、ブラッドフォード分析法で測定した蛋白質濃度としての、ヒトβig−h3蛋白質およびFN115蛋白質のそれぞれ50ngずつを12%SDS−ポリアクリルアミドゲルに電気泳動に付し、ゲルをNC膜に移した。この膜をTBS−T緩衝液(10mMトリス−Cl、150mM NaCl、0.05%Tween20、pH7.4)中の5%スキムミルクと共に1時間保温して、非特異的な結合を遮断した。次いで、このNC膜を、前記4個の陽性クローン培養液のそれぞれに90分間浸漬し、次に、抗マウス抗体が結合された西洋わさび過酸化酵素を1:10000の濃度で含む5%スキムミルクに60分間入れて免疫染色した。免疫染色程度は強化化学発光システム(Amersham Pharmacia Bio−tech)を用いて観察した。
この試験結果は、4個の陽性クローン7A6−a,9B2−a、9G12−bおよび10B2−b全てが68kDaのヒトβig−h3蛋白質を認識することを示した。しかしながら、前記陽性クローンの内7A6−a、9B2−aおよび9G12−bは、FN115を認識せず、陽性クローン10B2−bのみ33kDaFN115蛋白質を認識することを示した(図2)。
従って、陽性クローン10B2−bはヒスチジン−タグと抗原−抗体反応性があることが分かり、残りの陽性クローン7A6−a、9B2−aおよび9G12−bはヒスチジン−タグに対する抗原−抗体反応性が無く、ヒトβig−h3蛋白質のみを特異的に認識することが分かった。
本発明の単クローン抗体がMpt70およびMpt83を認識するか否かの試験
ミコバクテリウム・ツバキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)中に生成されたMpt70およびMpt83はfas−1(ファクシリン1相同性ドメイン)の巨大集合蛋白質群に属し、それぞれ1個のfas−1ドメインを有している(図3)。実施例4において収得した陽性クローンはβig−h3蛋白質のfas−1ドメインD−IVに対する抗原−抗体反応性を有している。これらの特性に基づいて、これらの陽性クローンがMpt70およびMpt83のfas−1ドメインも認識できるか否かに付いて、実施例5と同じようにしてウェスタンブロット分析法により試験した。
Mpt70(GenBank受託番号D37968)のfas−1ドメイン(配列番号4)およびMpt83(GenBank受託番号X94597)のfas−1ドメイン(配列番号5)に該当するそれぞれのDNAをPCR増幅してcDNA断片を得た。これらDNA断片のそれぞれをpET29aベクターのBamHIおよびHindIII制限酵素部位に挿入して発現ベクターを調製した。大腸菌をそれぞれの発現ベクターで形質転換した後、これら大腸菌における蛋白質の発現を誘導した。実施例1において調製されたヒトβig−h3 D−IV蛋白質および上において調製されたMpt70およびMpt83蛋白質をSDS−PAGE上に分離させ、分析のためにNC上に付着させた。
分析結果は、陽性クローン7A6−a、9B2−aおよび9G12−bはヒトβig−h3 D−IV蛋白質は認識するが、Mpt70およびMpt83は認識しないことを示した。一方、陽性クローン10B2−bはヒトβig−h3 D−IV蛋白質、Mpt70およびMpt83の全てを認識することを示した(図4)。これは、Mpt70およびMpt83蛋白質はヒスチジン−タグを有しているので、10B2−bとMpt70およびMpt83との抗原−抗体反応性はヒスチジン−タグによるものと思われる。
本発明の単クローン抗体がヒトβig−h3蛋白質のD−I、D−IIおよびD−IIIを認識するか否かの試験
実施例4において得られた陽性クローンがヒトβig−h3蛋白質のfas−1ドメインD−IVのみならずD−I、D−IIおよびD−IIIをも認識するか否かを試験した。
この目的のために、ヒトβig−h3のD−I、D−IIおよびD−IIIを実施例1と同じ様にして調製した。これらドメインを調製するために、ヒトβig−h3(配列番号1)の1番目のfas−1ドメインD−I(アミノ酸配列133番から236番まで)、2番目のfas−1ドメインD−II(アミノ酸配列242番から372番まで)および3番目のfas−1ドメインD−III(アミノ酸配列373番から501番まで)に該当するそれぞれのヒトβig−h3のfas−1ドメイン(図5)のcDNA切片をPCRで増幅させた。それぞれの増幅産物をベクターpET−29b(+)のEcoRVおよびXhoI位置にクローニングして発現ベクターpβig−h3 D−I、II、IIIを調製した。また、組換え蛋白質の精製を容易にするために、前記fas−1ドメインのそれぞれのC−末端にヒスチジン残基6個を連結させてヒスチジン−タグを作った。
実施例<1−2>と同じ方法により前記発現ベクターを用いて組換え蛋白質の発現を誘導し、発現蛋白質を精製し、かくしてヒトβig−h3 D−I、ヒトβig−h3 D−IIおよびヒトβig−h3 D−III蛋白質をそれぞれ得た。得られた蛋白質は、実施例1において調製されたヒトβig−h3 D−IV蛋白質と共に、実施例5と同じ方法によりウェスタンブロットによる分析を行った。
分析結果において、陽性クローン7A6−a、9B2−aおよび9G12−bは、D−IVを除いて、fas−1ドメインと抗原−抗体反応性を示さなかった。一方、10B2−bは、fas−1ドメインの全てと抗原−抗体反応性を示した(図6)。これは、10B2−bがヒスチジン−タグに対して抗原−抗体反応性を有しているためであると考えられる。
上記の試験結果から、陽性クローン7A6−a、9B2−aおよび9G12−bはヒトβig−h3 D−IVドメインに特異的であることが分かった。
従って、ヒスチジン−タグに対する反応性があることが示された10B2−bを除く上記4個の陽性クローンから、実施例5、6、7に示された結果を比較に基づいて、細胞の生命力が良好であり、D−IVドメインとの抗原−抗体反応性が最も優れた7A6−aを選択した。選択されたクローン7A6−aは、ブタペスト条約の国際寄託機関であるKorean Collection for Type Cultureに2004年10月11日付にて寄託番号KCTC 10705BPにて寄託された。
本発明の単クローン抗体のエピトープの特定
本発明のハイブリドーマ7A6−aにより生産された単クローン抗体のエピトープを特定するために、ヒトβig−h3 D−IVの欠失変異体を調製し、ウェスタンブロット法により分析を行った。ヒトβig−h3 D−IVの欠失変異体として、H1が欠失している△H1、H2が欠失している△H2、進化的に保存されてきたH2配列の中でもより高度に保存されている、細胞付着、拡散および脱着活性を示すペプチドが欠失されている△H2(6)およびH1とH2が全て欠失されている△H1H2を、それぞれ調製した。ヒトβig−h3(配列番号1)のアミノ酸548番から632番までに該当するDNA(△H1)、βig−h3のアミノ酸502番から620番までに該当するDNA(△H2)、βig−h3のアミノ酸502番から614番までに該当するDNA(△H2(6))およびβig−h3のアミノ酸548番から620番までに該当するDNA(△H1H2)を、実施例1−1において調製されたヒトβig−h3 D−IV cDNAを鋳型にしてPCR増幅により調製した(図7)。
上記のPCR増幅により得られた、ヒトβig−h3 D−IVの欠失変異体のDNA断片を実施例<1−1>におけると同じ方法によりベクターにクローニングして実施例<1−2>におけると同じ方法により発現させ、精製した。
前記にて得られた△H1変異体、△H2変異体、△H2(6)変異体および△H1H2変異体のそれぞれの培養液を、陽性クローン7A6−aを用いて、実施例5におけると同じようにしてウェスタンブロット法により分析を行った。対照群として、実施例1で製造したヒトβig−h3 D−IVを使用した。
分析結果において、H1が欠失された変異体の場合にのみ、本発明の単クローン抗体との抗原−抗体反応性を示さなかった(図8)。このことは、本発明の7A6−aのエピトープがH1領域(配列番号3)であることを示している。
マウス腹水の形成誘導
実施例8において調製されたハイブリドーマ7A6−aをマウスの腹腔に注射し、マウス腹水中に高濃度の単クローン抗体を生成させた。この目的のために、BAL/Cマウス(雌)に2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(プリスタン、sigma T7640)0.5mlを腹腔に注射して腹水が形成できる環境を作った。7日後に5×10個のハイブリドーマ細胞を、1×リン酸緩衝生理食塩水と混合し、マウスの腹腔に注射した。注射後の10日目に、マウスを麻酔させ、この状態で、注射器で腹腔から腹水を採取し、3,000rpmで5分間遠心分離し、上清を採取した(図9)。採取した上清に0.02%ナトリウムアジドを添加して−20℃で保管した。
マウス腹水の抗体を認識する能力についての試験
前記実施例9において調製されたマウス腹水がヒトβig−h3 D−IVを認識するか否かを、前記実施例5おけると同じようにウェスタンブロット分析により試験した。この際、ヒトβig−h3 D−IVを100ng、50ng、10ng、5ngおよび1ngの濃度で使用した。
この試験結果は、腹水から生成された単クローン抗体はヒトβig−h3 D−IVを5ng濃度まで認識することを示した(図10)。
本発明の単クローン抗体のマウスおよびラットのβig−h3蛋白質との交叉反応性の試験
マウスβig−h3蛋白質を誘導するマウス軟骨細胞(ATDC5)と、ラットβig−h3蛋白質を誘導する正常ラット腎臓細胞(NRK,ATCC CRL−6509)をβig−h3蛋白質が誘導できる条件で培養した。すなわち、前記マウス軟骨細胞とラット腎臓細胞を、L−グルタミン4mM、炭酸水素ナトリウム1.5g/L、グルコース4.5g/LおよびFBS10%を含むDMEM培地において増殖させ、次いで、血清が含まれていない培地に移し、24時間、この血清が含まれていない培地中に培養した。次いで培養液を採取した。また、ヒトβig−h3蛋白質を誘導するヒト肺臓腺癌腫細胞(H460, ATCC HTB−177)をβig−h3蛋白質が誘導できる条件で培養した。すなわち、このヒト肺臓腺癌腫細胞をL−グルタミン2mM、炭酸水素ナトリウム1.5g/L、グルコース4.5g/L、HEPES10mM、ピルビン酸ナトリウム1.0mMおよびFBS10%を含むRPMI 1640培地中に増殖させ、これを血清が含まれていない培地に移し、24時間、この血清が含まれていない培地中に培養し、培養液を回収した。培養液を凍結乾燥した後、実施例1−3におけると同じブラッドフォード(Bradford、(BioRad,Hercules, CA)分析による牛の血清アルブミンを基準にして、蛋白質濃度を分析した。次いで、本発明の単クローン抗体が前記マウスおよびラットのβig−h3蛋白質を認識するか否かを実施例5におけると同じようにしてウェスタンブロット分析法により試験した。この分析において、前記培養液等のそれぞれは25μlを使用し、対照群としてマウスβig−h3に対する多クローン抗体を使用した。
この試験結果は、本発明のヒトβig−h3蛋白質に対する単クローン抗体は、ヒト肺臓腺癌腫中に発現されたβig−h3を認識することができたが、マウスおよびラットのβig−h3は認識しないことを示した。一方、マウスβig−h3蛋白質に対する多クローン抗体はマウスおよびラットのβig−h3蛋白質の全て認識できることが示された(図11)。
従って、本発明のヒトβig−h3蛋白質に対する単クローン抗体はマウスとラットのβig−h3蛋白質に対する交叉反応性がないことが分かった。
本発明の単クローン抗体を用いるヒト腎臓組織中および肺臓組織中のβig−h3蛋白質の検出
本発明の単クローン抗体が組織中および細胞中に発現されたβig−h3蛋白質を実際に認識するかを試験するために、ヒト腎臓組織および肺臓組織を本発明の単クローン抗体を用いる免疫組織化学に処した。
この目的のために、提供者から得た腎組織および肺組織を45%パラホルムアルデヒド中にて24時間固定した。固定された組織をTissue−TEK(Sakura Finetek Japan co.,Ltd)を用いて脱水し、パラフィン中に埋め込んだ。これら組織を回転ミクロトーム(Leica,Germany)を用いて3μmに切断してスライドに載せた。この組織切片のパラフィンをキシレンにより除去し、組織を生体状態に水和させるために、水分含量を漸次増やすエタノール溶液(99%,96%,70%)中で連続的に水和させた。間接的なDAB免疫染色のために、前記水和させた組織を100%メタノールで希釈した3%Hに30分間入れて置き、組織中の過酸化酵素を遮断した。組織中の抗原−抗体反応を活性化させるために、腎組織切片を電子レンジ中で10分間加熱した。この組織切片を、室温で長時間冷却させた後、抗体の非特異的な結合を防止するために50mMNHCl中に30分間置き、スライドを非特異的な結合を防止するための溶液(1%BSA,0.05%サポニン,0.2%ゼラチン)により処理した。次に、本発明のヒトβig−h3蛋白質に対する単クローン抗体を抗体希釈溶液(PBS中、0.1%BSA,0.3%TritonX−100)により1:500に希釈し、前記切片を前記希釈した抗体溶液により処理し、4℃で一晩反応させた。反応完了後、反応液を洗滌溶液(PBS中0.1%BSA,0.05%サポニン,0.2%ゼラチン)で3回それぞれ10分間洗滌した。次いで、抗体希釈溶液を用いて西洋ワサビ過酸化酵素が連結された羊抗−マウス免疫グロブリン抗体(Santa Cruze Biotechnology)を1:200に希釈し、組織切片を前記希釈された抗体溶液により処理した。得られた切片を上述の方法と同じ方法により洗滌した後、DABを組織切片上に振り撒き、約5分後褐色を呈する反応を観察した。反応の完了後、組織切片をPBSで速やかに洗滌し、ヘマトキシリン(Sigma)で染色した。最後に、組織切片をエタノールの濃度を漸次高めるタノール溶液(70%, 96%,99%)中で連続的に脱水させた。脱水させた組織をPermountSP15−500(Fisher Scientific)を用いて剥離させた。組織切片上に染色されたβig−h3の組織学的様相を光学顕微鏡(Zeiss light microscope,Carl Zeiss,Oberkochem,Germany)を用いて観察した。
この試験結果から、本発明の単クローン抗体は、ヒト腎臓組織中およびヒト肺臓組織中のβig−h3蛋白質を特異的に認識することが分かった(図12)。
本発明の単クローン抗体のEIA(酵素免疫アッセイ)
本発明の単クローン抗体は疾病の診断に使用できるか否かを、直接サンドイッチ法を用いて調べた。
濃度が分かっているβig−h3蛋白質を標準蛋白質として使用して、試験を、本発明の単クローン抗体をHRPと連結した場合と、連結せずに2次抗体と共にした場合について行った。また、組換えβig−h3蛋白質を兎に注射し、免疫を誘導して得られた多クローン抗体をこの試験に使用した。先ず、プレートを、連結していない本発明の単クローン抗体100μl(0.5μg/ml)により被覆し、遮断緩衝液により処理して非特異的反応を遮断した。次いで、濃度が分かっている組換えβig−h3蛋白質をこのプレートに加えて抗原−抗体反応を再び誘導し、所定の時間経過後、反応液を除去した。洗滌後、兎由来の多クローン抗体を用いて抗原−抗体反応を再び誘導し、βig−h3蛋白質と反応した兎抗体およびHRPに連結された2次抗体を用いてβig−h3蛋白質の量を測定した。前記と同じ方法により、プレートを兎の多クローン抗体により被覆して、HRPが連結された単クローン抗体を用いて、濃度が分っているβig−h3蛋白質の量を測定した。測定した結果をグラフに表わした。
この試験結果は、単クローン抗体により被覆した場合は、兎の多クローン抗体により被覆した場合に比べ、より広い測定範囲を有することを示し、非特異的な反応程度を表わすバックグラウンドも低くかった(図13)。しかしながら、2つの場合の両方とも、標準蛋白質の濃度に比例する相関係数が0.98以上を示し、本発明の単クローン抗体がEIAに使用できることを示唆した。
本発明の単クローン抗体がβig−h3蛋白質の細胞付着活性を抑制するかの試験
本発明の単クローン抗体がβig−h3蛋白質の細胞付着活性を抑制するかを試験した。
96−ウェルELISAプレート(Costar)にpFN(精製されたヒトプラズマフィブロネクチン)(Sigmaカタログ番号F 2006)、βig−h3 D−I、βig−h3 D−II、βig−h3 D−III、βig−h3 D−IVおよびβig−h3蛋白質により処理して、4℃で一晩反応させ、前記蛋白質等をプレートに付着させた。対照群蛋白質としては牛の血清アルブミンを使用した。それぞれの蛋白質が付着したプレートを、リン酸緩衝整理食塩水(PBS)で2回洗滌し、次いで2%牛血清アルブミンにより処理して1時間反応させて、非特異的反応を遮断した。前記プレートをPBSで2回洗滌後、前記プレートに付着した前記蛋白質のそれぞれを、実施例9の腹水50μl(10μg/ml)により処理し、30℃で30分間反応させた。このとき、マウス腹水の代わりに、PBS、マウスIgG(Santa Cruz,USA)およびヒトβig−h3に対する多クローン抗体を添加し、マウス腹水を添加した場合と比べた。反応完了後、マウス繊維芽細胞(NIH3T3)2.5×10個を前記プレートに添加し、所定の時間繊維芽細胞の付着を誘導した。次に、このプレートを1×PBSを用いて2回洗滌し、このプレートに3.75mMp−ニトロフェニル−N−アセチルβ−D−グリコサミン(ヘキソサミニダーゼの基質)および25%トリプトンX−100を含む50mMクエン酸緩衝液(pH5.0)60μlを添加し、37℃で1時間反応させた。反応完了後、このプレートに5mMEDTAを含む50mMグリシン90μlを添加して酵素活性を停止させた。酵素活性程度はマイクロプレートリーダModel 550(Bio−Rad Laboratories,Inc.,USA)を使用して450nmにおいてで測定した。
上記の試験の結果において、本発明の単クローン抗体による細胞付着活性の抑制はヒトβig−h3蛋白質およびヒトβig−h3 D−IV蛋白質を使用した場合にのみ示された(図14)。従って、本発明の単クローン抗体は、βig−h3蛋白質を、特にその4番目のfas−1ドメインであるβig−h3 D−IV蛋白質を特異的に認識して前記蛋白質への細胞の付着活性を阻害することが見出された。
本発明の単クローン抗体の処理濃度による細胞付着活性の抑制
プレートに付着された蛋白質としてβig−h3およびβig−h3 D−IVのみを使用したことおよびマウス腹水の処理濃度をそれぞれ0、1、2、5、10、25および50μlとしたこと以外は実施例13におけると同じ方法により、細胞付着活性の抑制程度を測定した。この試験結果から、βig−h3蛋白質およびβig−h3 D−IV蛋白質を本発明の単クローン抗体の1μlの低濃度で処理した場合にも、これら蛋白質のマウス繊維芽細胞への付着活性が大きく減少することが見出された(図15)。
産業上の利用可能性
本発明の単クローン抗体は、組織においてヒトβig−h3蛋白質を特異的に認識でき、したがって、本発明の単クローン抗体はβig−h3蛋白質の増加または減少に伴う疾患の診断に有用である。加えて、前記単クローン抗体は、βig−h3蛋白質の細胞付着活性を抑制する効果を有する。
ヒトβig−h3および組換え蛋白質FN115の構造を示す概要図である。 本発明の単クローン抗体がヒスチジン−タグを認識するか否のをウェスタンブロット分析の結果を示す。 βig−h3 D−IV、Mpt70およびMpt83のそれぞれのfas−1ドメイン構造を示す概要図である(黒色部分:fas−1ドメイン中の高度に保存的な部分、灰色部分:fas−1ドメイン中の保存的な部分)。 本発明の単クローン抗体がMpt70およびMpt83を認識するか否のウェスタンブロット分析の結果を示す。 ヒトβig−h3蛋白質のfas−1ドメインを示す概要図である。 本発明の抗体がヒトβig−h3蛋白質のD−I、D−II、D−IIIおよびD−IVを認識するか否のウェスタンブロット分析の結果を示す。 βig−h3 D−IVの欠失変異体を示す概要図である。 本発明の単クローン抗体がヒトβig−h3 D−IVの欠失変異体を認識するか否のウェスタンブロット分析の結果を示す。 本発明のハイブリドーマを用いてマウスの腹水を形成することによる本発明の単クローン抗体を誘導する段階を示す。 本発明のマウス腹水中に生成された抗体の認識感度についてのウェスタンブロット分析の結果を示す。 腹水中に生成された本発明の単クローン抗体の、マウスおよびラットのβig−h3蛋白質との交叉反応についてのウェスタンブロット分析の結果を示す図である。 本発明の単クローン抗体を用いて行われた、ヒト腎臓組織および肺臓組織における免疫組織染色の結果を示す写真である。矢印はβig−h3が検出された領域である。 本発明の単クローン抗体を使用した酵素免疫分析(EIA)の結果を示す。 本発明の単クローン抗体の、βig−h3蛋白質の細胞付着活性の抑制効果を多クローン抗体のそれと比較した結果を示す。 本発明の単クローン抗体の種々の処理濃度におけるβig−h3蛋白質およびドメインD−IVのそれぞれの細胞付着活性の抑制を示す。

Claims (14)

  1. 単クローン抗体のエピトープがヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメインのH1領域である、ヒトβig−h3蛋白質を特異的に認識する単クローン抗体。
  2. 前記ヒトβig−h3蛋白質の4番目のfas−1ドメインのH1領域が、配列番号3で示されているアミノ酸配列を有する請求項1に記載の単クローン抗体。
  3. ラットまたはマウスのβig−h3蛋白質と交叉反応性を有しない、請求項1に記載の単クローン抗体。
  4. ハイブリドーマ7A6−a(寄託番号:KCTC 10705BP)により生産される、請求項1に記載の単クローン抗体。
  5. ヒトβig−h3蛋白質の細胞付着活性を抑制する、請求項1に記載の単クローン抗体。
  6. 請求項1に記載の単クローン抗体を生産するハイブリドーマ 7A6−a(寄託番号:KCTC 10705BP)。
  7. 請求項6に記載のハイブリドーマをマウスの腹腔内に注射する段階、
    腹腔より腹水を採取する段階、および
    得られた腹水より単クローン抗体を分離する段階
    を含む、ヒトβig−h3に対する単クローン抗体を調製する方法。
  8. 請求項1項から5のいずれか一項に記載の単クローン抗体を含む、βig−h3の増加または減少に関連する疾患の診断のためのキット。
  9. 前記疾患が、腎臓疾患、肝臓疾患およびリウマチ疾患からなる群より選ばれる、請求項8に記載のキット。
  10. (a)試験サンプルと請求項1に記載の単クローン抗体とを接触させる段階、
    (b)前記試験サンプルと前記単クローン抗体との免疫反応の産物を検出して、βig−h3の発現レベルを測定する段階、および
    (c)段階(b)において測定されたβig−h3の発現レベルと対照サンプルにおけるβig−h3の発現レベルとを比較する段階
    を含む、個体におけるβig−h3の発現レベルの増加または減少に関連する疾患の診断のための方法。
  11. 前記診断のための方法が、免疫細胞化学および免疫組織化学、放射線免疫分析法、酵素結合免疫測定法(ELISA)、免疫沈降法、免疫ブロット法、ファル(Farr)分析法、沈降素反応法、比濁計法、免疫拡散法、カウンター電流電気泳動法、単一ラジカル免疫拡散法、蛋白質チップ法、ラピットアッセイ法、マイクロアレイ法、免疫蛍光法および免疫吸着法からなる群より選ばれる、請求項10に記載の方法。
  12. 前記疾患が、腎臓疾患、肝臓疾患およびリウマチ疾患からなる群より選ばれる、請求項10に記載の方法。
  13. 請求項1に記載の単クローン抗体の有効量を、投与を必要とする個体に投与することを含む、βig−h3の細胞付着活性を抑制する方法。
  14. 請求項1に単クローン抗体の有効量を投与を必要とする個体に投与することを含む、癌転移を抑制する方法。
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