本発明は、HMG1に特異的に結合する抗体(本明細書では、「HMGB1」とも呼ぶ)、ならびにある種の生化学的な、結合の、および機能上の特性を表すその抗原性フラグメントの発見に、一部基づくものである。HMG1に特異的に結合する抗体は、本明細書では「本発明の高親和性抗体」、「高親和性抗体」と特に呼ばれ、「本発明の抗体」、「抗HMG1抗体」、および単に「HMG抗体」および同様の語より拡張的な語によっても包含される。本発明は、また、HMG1およびHMG2の両方に結合する抗体の発見に一部基づくものである。
本発明の抗体の生化学的特性には、限定するものではないが、等電点(pI)および融点(Tm)が含まれる。本発明の抗体の結合の特性には、限定するものではないが、結合特異性、解離定数(Kd)、エピトープ、HMG1の様々な形態および/または調製物(例えば、組換え、天然、アセチル化)の間を区別する能力、ならびに可溶性の抗原および/または固定化した抗原に結合する能力が含まれる。本発明の抗体の機能上の特性には、限定するものではないが、HMG1誘発性サイトカインの放出の阻害、1つまたは複数の受容体へのHMG1の結合の阻害、細胞表面へのHMG1の結合の阻害、ならびに1つまたは複数の炎症性疾患(例えば、敗血症、関節炎、急性肺傷害、腹膜炎)のモデルにおける保護が含まれる。
本発明の抗体およびそれを含む組成物は、多くの目的で、例えば、限定するものではないが、敗血症、関節リウマチ、腹膜炎、クローン病、再潅流傷害、敗血症(septicemia)、内毒素性ショック、嚢胞性繊維症、心内膜炎、乾癬、関節炎(例えば、乾癬性関節炎)、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再潅流傷害、脊髄損傷、および同種移植片拒絶を含む、広範囲の慢性および急性の炎症性疾患および障害に対する治療として有用である。
さらに、本発明の高親和性抗体は、診断の適用に有用である。本発明の抗体を、例えば、限定するものではないが、本発明のHMG1および/またはHMG2ポリペプチドを、in vitroおよびin vivo両方の診断および治療の方法を含めて、精製し、検出し、および標的にするために用いることができる。例えば、抗体を、生物学的サンプルにおける本発明のHMG1および/またはHMG2ポリペプチドのレベルの定性的および定量的な測定のための免疫アッセイで使用する。例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988年)を参照されたい。
5.1 本発明の抗体
本明細書で用いる「HMG1およびその抗原性フラグメントに特異的に結合する」高親和性抗体またはそのフラグメントは、例えば、HMG1ポリペプチド、またはHMG1ポリペプチドのフラグメント(例えば、HMG1AボックスおよびHMG1Bボックス)、またはHMG1ポリペプチドのエピトープに特異的に結合し(特定の抗体−抗原結合をアッセイするために当技術分野でよく知られている免疫アッセイにより決定して)、他のポリペプチドに特異的に結合しない高親和性抗体、またはそのフラグメントを意味する。一実施形態では、HMG1ポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する高親和性抗体またはフラグメントは、他の抗原と非特異的に交差反応をしない(例えば、結合は、BSAなどの非−HMG1タンパク質と競合して除かれることができない)。本発明は、HMG2ポリペプチドまたはHMG2ポリペプチドのフラグメント(例えば、HMG2AボックスおよびHMG2Bボックス)、またはHMG2ポリペプチドの抗原性フラグメントと特異的に結合する高親和性抗体またはそのフラグメントも包含する。
HMG1およびHMG2は別々のタンパク質でありながら、相同性の領域を有することを、当業者であれば理解されよう(図1を参照されたい)。したがって、高親和性抗体またはそのフラグメントは、HMG1およびその抗原性フラグメントに特異的に結合することができ、HMG2またはその抗原性フラグメントには結合することができないことが企図される。高親和性抗体またはそのフラグメントは、HMG2およびその抗原性フラグメントに特異的に結合することができ、HMG1またはその抗原性フラグメントには結合することができないことがさらに企図される。本発明の高親和性抗体は、HMG1およびHMG2の両方に共通であるエピトープに特異的に結合することができることがさらに企図される。共通のエピトープは、HMG1およびHMG2の両方に同一であってよく、そのような場合はエピトープを含むアミノ酸配列はHMG1およびHMG2に同一である。したがって、本発明の高親和性抗体は、HMG1およびHMG2の両方に特異的に結合することができる(例えば、HMG1およびHMG2の両方に存在する同一のエピトープを特異的に認識した抗体)。あるいは、共通のエピトープは、HMG1およびHMG2の両方に類似であってよい。例えば、類似のエピトープは、かなりの相同性(例えば、60%〜99%の同一性)を有することができ、かつ/または本発明の高親和性抗体が共有されたエピトープと交差反応するようにHMG1とHMG2との間に類似の3次元の立体配座を適用することができる。したがって、本発明の高親和性抗体は、HMG1またはHMG2のいずれかと特異的に結合し、それぞれHMG2またはHMG1と交差反応することができる。本発明の高親和性抗体は、HMG1およびHMG2上に存在する類似のエピトープに対して異なる親和性を有することができる。したがって、本発明の高親和性抗体は、同一の、または異なる結合親和性のいずれかで、HMG1およびHMG2に結合することがさらに企図される。特定の一実施形態では、高親和性抗体またはそのフラグメントは、他の抗原よりもHMG1および/またはHMG2に特異的に結合する。
一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、HMG1のAボックスおよび/またはHMG2(例えば、それぞれ配列番号3、および22)を含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。
別の一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、HMG1のBボックスおよび/またはHMG2(例えば、それぞれ配列番号4、および23)を含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。
HMG1のAボックスおよびBボックスの両方、ならびに/またはHMG2に由来するアミノ酸残基を含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)エピトープに特異的に結合する抗体も本発明に包含される。AボックスBボックスの両方に由来するアミノ酸残基に由来するエピトープは、AボックスとBボックスの連結部に由来する直線状ポリペプチドであってもよく、またはAボックスおよびBボックスの両方からのアミノ酸残基を含む3次元立体配座のポリペプチドに由来してもよい。
本発明には、複数の特異性を有する抗体も、特に包含される(例えば、2つまたはそれを超える別々の抗原に対する特異性を有する抗体(Caoら、2003年、Adv Drug Deliv Rev、55巻、171頁;Hudsonら、2003年、Nat Med、1巻、129頁に総説がある))。例えば、二重特異性抗体は、融合した2つの異なる結合特異性を含んでいる。最も単純な場合では、二重特異性抗体は、単一の標的の抗原上の2つの隣接するエピトープに結合し、そのような抗体は他の抗原と交差反応しない(上記に記載した通り)。あるいは、二重特異性抗体は、2つの異なる抗原に結合することができ、そのような抗体は、2つの異なる分子(例えば、HMG1とHMG2と)に特異的に結合するが、他の非関連の分子(例えば、BSA)に結合しない。さらに、HMG1および/またはHMG2に特異的に結合する抗体は、関連するHMGタンパク質と交差反応してもよい。
本明細書に記載するHMG1および/またはHMG2の「フラグメント」という用語は、HMG1および/またはHMG2ポリペプチド(例えば、ヒトHMG1および/またはHMG2)のアミノ酸配列の、少なくとも5個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも10個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも15個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも20個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも25個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも40個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも50個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも60個の近接するアミノ残基の、少なくとも70個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも近接する80個のアミノ酸残基の、少なくとも近接する90個のアミノ酸残基の、少なくとも近接する100個のアミノ酸残基の、少なくとも近接する125個のアミノ酸残基の、少なくとも近接する150個のアミノ酸残基の、少なくとも近接する175個のアミノ酸残基の、少なくとも近接する200個のアミノ酸残基の、または少なくとも近接する250個のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含み、あるいはそれらから成る(または、それらから本質的に成る)HMG1および/またはHMG2のペプチド、またはポリペプチドを含む。
本明細書に記載されるHMG1および/またはHMG2の「フラグメント」という用語は、また、HMGA(例えば、ヒトHMG1および/またはHMG2Aボックス)ボックス、あるいはHMGB(例えば、ヒトHMG1および/またはHMG2Bボックス)ボックスの、少なくとも5個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも10個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも15個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも20個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも25個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも40個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも50個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも60個の近接するアミノ酸残基の、少なくとも70個の近接するアミノ酸残基の、または少なくとも近接する80個のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含み、あるいはそれらから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドを特に含む。
本発明の「高親和性抗体」(本明細書では、「本発明の高親和性抗体」「高親和性抗体」とも呼ばれ、より拡張された語である「本発明の抗体」および単に「HMG抗体」も包含する)には、限定するものではないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換えで生成された抗体、細胞内抗体、多特異性の抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、単鎖Fvs(scFv)、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合したFvs(sdFv)(二重特異性のsdFvsを含む)、および抗イディオタイプの(抗Id)抗体、および上記の任意のもののエピトープ結合性フラグメントが含まれる。本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはそれを超えた多特異性であってもよい。多特異性の抗体は、本発明のポリペプチドの様々なエピトープに特異的であってもよく、または本発明のポリペプチドに対しても、異種性のポリペプチドまたは固体の支持材料などの異種性のエピトープに対しても特異的であってもよい。例えば、PCT出願WO93/17715、WO92/08802、WO91/00360、WO92/05793;Tuttら、J.Immunol.、147巻、60〜69頁(1991年);米国特許第4,474,893号、第4,714,681号、第4,925,648号、第5,573,920号、第5,601,819号;Kostelnyら、J.Immunol.、148巻、1547〜1553頁(1992年)を参照されたい。
多特異性の抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有する。そのような分子は、通常2つの抗原に結合するにすぎないが(即ち、二重特異性抗体、BsAbs)、三重特異性抗体などのさらなる特異性を有する抗体が本発明に包含される。BsAbsの例には、制限なく、一方のウデがHMG1および/またはHMG2エピトープに対して向けられており、他方のウデが任意の他の抗原に対して向けられているものが含まれる。二重特異性抗原を作成する方法は、当技術分野では知られている。全長の二重特異性抗体の伝統的な生成は、2つの免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の対の同時発現に基づくもので、この場合2本の鎖の特異性は異なる(Millsteinら、1983年、Nature、305巻、537〜539頁)。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の分類はランダムであるため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、異なる抗体分子の可能性のある混合物を生成し、その中でたった1つだけが正しい二重特異的構造を有する。正しい分子の精製は、通常アフィニティークロマトグラフィーの段階により行われるが、少々面倒であり、生成物の収量は低い。類似の手順が、WO93/08829、およびTrauneckerら、1991年、EMBO J.、10巻、3655〜3659頁に公開されている。より方向性のある取組みは、4価の二重特異性抗体であるジ−ディアボディの産生である。ジ−ディアボディを生成するための方法は、当技術分野では知られている(例えば、Luら、2003年、J Immunol Methods、279巻、219〜32頁、Marvinら、2005年、Acta Pharmacolical Sinica、26巻、649頁を参照されたい)。
様々な取組みにより、望ましい結合特異性を有する抗体の可変領域(抗体−抗原結合部位)を、免疫グロブリンの定常領域の配列に融合させる。この融合は、好ましくは、少なくともヒンジの部分、CH2、およびCH3領域を含む、免疫グロブリンの重鎖の定常領域との融合である。少なくとも1つの融合物に存在する軽鎖の結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリンの重鎖の融合物、および、所望により免疫グロブリンの軽鎖の融合物をコードするDNAを別々の発現ベクター内に挿入し、適切な宿主生物体中に同時形質移入する。これにより、構築物に用いられている3つのポリペプチド鎖が同じ割合でないとき最適の収量がもたらされる場合に、実施形態における3つのポリペプチドフラグメント相互の割合調節における柔軟性は大きくなる。しかし、同じ割合の少なくとも2本のポリペプチド鎖の発現が高収量をもたらす場合、または割合が特に重要ではない場合は、2つまたは3つすべてのポリペプチド鎖に対するコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
本取組みの一実施形態では、二重特異性抗体は、一方のウデに第1の結合特異性があるハイブリッドの免疫グロブリン重鎖(例えば、A−ボックス、B−ボックスなどのHMG1および/またはHMG2エピトープ)、ならびに他方のウデにハイブリッドの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)から構成される。二重特異性分子の半分だけに免疫グロブリン軽鎖が存在することで容易な分離方法がもたらされるので、この非対称性の構造により望ましい二重特異性の化合物の、不要な免疫グロブリン鎖の組合せからの分離が促進されることが見出された。この取組みは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体を産生するさらなる詳細については、例えば、Sureshら、1986年、Methods in Enzymology、121巻、210頁を参照されたい。WO96/27011に開示されている別の一取組みによると、1対の抗体分子を操作して、組換えの細胞培養物から回収したヘテロ2量体のパーセント値を最大にすることができる。好ましい接合点は、抗体の定常領域のCH3ドメインの少なくとも一部分を含む。この方法では、第1の抗体分子の接合点からの小型アミノ酸側鎖の1つまたは複数を、より大型の側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換える。大型のアミノ酸側鎖をより小型の側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることにより、大型の側鎖に同一のまたは類似の大きさの代償的な「空洞」が、第2の抗体分子の接合点上に作られる。これにより、ホモ2量体などの他の不要な最終産物よりもヘテロ2量体の収量を増大するためのメカニズムがわかる。
二重特異性抗体には、架橋結合した、または「ヘテロ接合」の抗体が含まれる。例えば、ヘテロ接合における抗体の一方はアビジンと、他方はビオチンと連結することができる。例えば、このような抗体は、HIV感染の処置のために(WO91/00360、WO92/200373、およびEP03089)免疫系細胞を望ましくない細胞を標的としてそこに送り込む(米国特許第4,676,980号)ことが提案されている。あらゆる便利な架橋結合の方法を用いて、ヘテロ接合抗体を作成することができる。適切な架橋結合物質は当技術分野ではよく知られており、米国特許第4,676,980号に、数々の架橋結合の技術とともに開示されている。
少なくとも1個の本発明のヒンジ修飾を組み入れている2価を超える抗体が企図される。例えば、三重特異的抗体を調製することができる。例えば、Tuttら、J.Immunol.、147巻、60頁(1991年)を参照されたい。
特に企図される他の抗体は、「オリゴクローナル」抗体である。本明細書で用いる「オリゴクローナル抗体」という用語は、別々のモノクローナル抗体の予め決定された混合物を意味する。オリゴクローナル抗体を産生するための方法は、当技術分野では知られている。例えば、PCT公開WO95/20401「実施例セクション」の実施例1、米国特許第5,789,208号および第6,335,163号を参照されたい。ある実施形態では、1つまたは複数のエピトープに対する抗体の予め決定された混合物から成るオリゴクローナル抗体は、単一の細胞で産生される。他の実施形態では、オリゴクローナル抗体は、通常の軽鎖と対を成して複数の特異性を有する抗体を産生することができる複数の重鎖を含む(例えば、PCT公開、WO04/009618)。オリゴクローナル抗体は、単一の標的分子(例えば、HMG1)上の複数のエピトープを標的にすることが望ましい場合に、特に有用である。当業者であれば、意図された目的および望まれた必要性に、どのような型の抗体または抗体の混合物が適用可能であるかを知っており、または決定することができる。特に、本発明の抗体は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち、HMG1抗原に特異的に結合する抗原結合性部位(例えば、抗HMG1抗体の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR))を含む分子を含んでいる。本発明の抗体は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち、HMG2抗原に特異的に結合する抗原結合性部位を含む分子(例えば、抗HMG2抗体の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR))を含んでいることも特に企図される。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のあらゆるタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスであってもよい。免疫グロブリンは重鎖および軽鎖の両方を有することができる。一並びのIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgYの重鎖は、カッパまたはラムダ型の軽鎖と対になることができる。
本発明の抗体は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性なフラグメント、即ち抗原結合性部位を含む分子も包含し、これらのフラグメントは、限定するものではないが、Fc領域またはそのフラグメントを含む別の免疫グロブリンドメインに融合してもよく、またはしなくてもよい。本明細書で強調するように、「抗体」および「抗体類」という用語は、本明細書に記載するHMG1および/またはHMG2、全長の抗体、ならびに、免疫グロブリンの免疫学的に活性なフラグメントもしくは本明細書に記載する他のタンパク質に融合している、本明細書に記載する少なくとも1個の新規なアミノ酸残基を含む、Fc領域またはそのフラグメントを含む、そのFc変異体に特異的に結合する抗体を含む。このような変異体のFc融合物には、限定するものではないが、scFv−Fv融合物、可変領域(例えば、VLおよびVH)−Fc融合物、scFv−scFv融合物が含まれる。免疫グロブリン分子は、あらゆるタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスであってもよい。
本発明の抗体は、また、哺乳動物(例えば、ヒト)において、半減期(例えば、血清半減期)が、5日を超える、10日を超える、15日を超える、20日を超える、25日を超える、30日を超える、35日を超える、40日を超える、45日を超える、2カ月を超える、3カ月を超える、4カ月を超える、または5カ月を超える抗体を包含する。哺乳動物(例えば、ヒト)における本発明の抗体の半減期が増大することで、哺乳動物における前記抗体または抗体フラグメントの血清の力価の上昇がもたらされ、したがって、前記抗体または抗体フラグメントの投与頻度は減少し、かつ/または投与する前記抗体または抗体フラグメントの濃度は低下する。in vivoの半減期が増大した抗体は、当業者には周知の技術により産生することができる。例えば、in vivoの半減期の増大した抗体を、FcドメインとFcRn受容体との間の相互作用に関与すると確認されたアミノ酸残基を修飾(例えば、置換、欠失、または付加)することにより産生することができる(例えば、国際公開WO97/34631、WO04/029207、US6,737,056、および米国特許公開第2003/0190311号、ならびに以下により詳しく論じるものを参照されたい)。
一実施形態では、本発明の抗体は、例えば、Ghetieら、1997年、Nat Biotech.、15巻、637〜40頁;Duncanら、1988年、Nature、332巻、563〜564頁;Lundら、1991年、J.Immunol、147巻、2657〜2662頁;Lundら、1992年、Mol Immunol、29巻、53〜59頁;Alegreら、1994年、Transplantation、57巻、1537〜1543頁;Hutchinsら、1995年、Proc Natl.Acad Sci U S A、92巻、11980〜11984頁;Jefferisら、1995年、Immunol Lett.、44巻、111〜117頁;Lundら、1995年、Faseb J、9巻、115〜119頁;Jefferisら、1996年、Immunol Lett、54巻、101〜104頁;Lundら、1996年、J Immunol、157巻、4963〜4969頁;Armourら、1999年、Eur J Immunol、29巻、2613〜2624頁;Idusogieら、2000年、J Immunol、164巻、4178〜4184頁;Reddyら、2000年、J Immunol、164巻、1925〜1933頁;Xuら、2000年、Cell Immunol、200巻、16〜26頁;Idusogieら、2001年、J Immunol、166巻、2571〜2575頁;Shieldsら、2001年、J Biol Chem、276巻、6591〜6604頁;Jefferisら、2002年、Immunol Lett、82巻、57〜65頁;Prestaら、2002年、Biochem Soc Trans、30巻、487〜490頁;米国特許第5,624,821号、第5,885,573号、第5,677,425号、第6,165,745号、第6,277,375号、第5,869,046号、第6,121,022号、第5,624,821号、第5,648,260号、第6,194,551号、第6,737,056号、第6,821,505号、第6,277,375号、米国特許出願第10/370,749号、およびPCT出願WO94/2935、WO99/58572、WO00/42072、WO02/060919、WO04/029207に公開されたものなど、それらのFcドメイン内に、修飾/置換、および/または新規なアミノ酸を含むことができる。Fcドメインの他の修飾/置換は、当業者であれば直ちに明白となるであろう。
それらのFc領域に、修飾/置換、および/または新規なアミノ酸残基を含む本発明の抗体は、当業者であればよく知っている数々の方法により産生することができる。非制限的な例として、抗体コード領域(例えば、ハイブリドーマからの)の単離、および単離された抗体コード領域のFc領域における1つまたは複数の望ましい置換の作成が含まれる。あるいは、本発明の抗体の可変領域を、1つまたは複数の修飾/置換、および/または新規なアミノ酸残基を含むFc領域をコードするベクター中にサブクローニングすることができる。
本発明の抗体を修飾してグリコシル化を変化させ、さらに抗体の1つまたは複数の機能上の特性を変化させることもできる。
一実施形態では、本発明の抗体のグリコシル化を修飾する。例えば、アグリコシル化の抗体(即ち、グリコシル化を欠く抗体)を作成することができる。グリコシル化を変化させて、例えば、標的の抗原に対する抗体の親和性を増大させることができる。このような炭水化物の修飾は、例えば、抗体配列内の1つまたは複数のグリコシル化の部位を変更することにより行うことができる。例えば、1つまたは複数の可変領域のフレームワークのグリコシル化部位の除去をもたらす1つまたは複数のアミノ酸置換を行うことができ、したがってその部位におけるグリコシル化を除去することができる。このようなアグリコシル化により、抗原に対する抗体の親和性を増大することができる。このような取組みは、米国特許第5,714,350号および第6,350,861号にさらに詳しく記載されている。
さらに、または、あるいは、フコシル化された残基の量が減少した低フコシル化の抗体、または2分するGlcNAc構造が増大した抗体などの、変更されたタイプのグリコシル化を有する、本発明の抗体を作成することができる。このような変更されたグリコシル化のパターンは、抗体のADCC能力を増大することが実証されている。このような炭水化物の修飾は、例えば、グリコシル化の機構の変更された宿主細胞において抗体を発現させることにより行うことができる。グリコシル化の機構の変更された細胞は当技術分野において記載されており、本発明の組換えの抗体を発現してそれによりグリコシル化の変更した抗体を生成する宿主細胞として用いることができる。例えば、Shields,R.L.ら、(2002年)J.Biol.Chem.、277巻、26733〜26740頁、Umanaら、(1999年)Nat.Biotech.、17巻、176〜1頁、および欧州特許EP1,176,195、PCT公開WO03/035835、WO99/54342を参照されたい。
以下でより詳しく論じるように、本発明の抗体は、単独で、または他の組成物と組み合わせて用いることができる。抗体をN−もしくはC−末端で異種性のポリペプチドにさらに組換えで融合して、またはポリペプチドもしくは他の組成物に化学的に結合(共有結合および非共有結合を含む)することができる。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイにおける標識、および異種性のポリペプチド、薬物、放射性核種、もしくは毒素などのエフェクター分子として有用な分子に、組換えで融合し、または結合することができる。例えば、PCT公開WO92/08495、WO91/14438、WO89/12624、米国特許第5,314,995号、およびEP396,387を参照されたい。
本発明の抗体には、即ち、抗体が、HMG1および/もしくはHMG2ポリペプチド、またはそれらのフラグメントへ結合するのを妨げないように、かつ/あるいは望ましい反応を産生するのを妨げないように、あらゆるタイプの分子の抗体への共有結合性の付着により修飾されている誘導体が含まれる。例えば、制限しようとするものではないが、抗原の誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、周知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解性の切断、細胞のリガンドもしくは他のタンパク質への連結などにより修飾されている抗体が含まれる。多くの化学的修飾の任意のものを、限定するものではないが、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝性の合成などを含む周知の技術により行うことができる。さらに、誘導体は、1つまたは複数の非古典的なアミノ酸を含むことができる。以下の、「抗体の誘導体および複合体」というタイトルのセクション5.5を参照されたい。
本発明の抗体は、その交差反応性に関して記載し、または特定することもできる。本発明のポリペプチドの、あらゆる他の類似体、オーソログ、またはホモログに結合しない抗体が含まれる。本発明のヒトHMG1ポリペプチド(例えば、ヒトHMG1AボックスまたはBボックス)に少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、および少なくとも50%の同一性(当技術分野では周知の方法、および本明細書に記載した方法を用いて計算して)でポリペプチド(および、ポリペプチドのフラグメント)に結合する抗体も本発明に含まれる。特定の実施形態では、本発明の抗体は、ネズミ科動物、ラット、および/またはウサギのヒトHMG1タンパク質のホモログ、ならびにその対応するエピトープと交差反応する。ヒトHMG2ポリペプチド(例えば、ヒトHMG2AボックスまたはBボックス)に少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、および少なくとも50%の同一性(当技術分野では周知の方法、および本明細書に記載した方法を用いて計算して)でポリペプチド(およびポリペプチドフラグメント)に結合する抗体も、本発明に包含される。ヒトHMG2ポリペプチドまたはそのフラグメントに結合する抗体は、ネズミ科動物、ラット、および/またはウサギのヒトHMG1タンパク質のホモログ、ならびにその対応するエピトープと交差反応することができることがさらに企図される。
本発明のHMG1および/またはHMG2ポリペプチドに95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、および50%未満の同一性(当技術分野では周知の方法、および本明細書に記載した方法を用いて計算して)で、ポリペプチドに結合しない抗体も、本発明に含まれる。
一実施形態では、HMG1ポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する抗体またはそのフラグメントは、以下の1つまたは複数を妨げる/拮抗する/阻害する:RAGEに対するHMGB1の結合、1つまたは複数のトール様受容体(例えば、TLR2およびTLR4)へのHMGB1の結合、細胞表面(例えば、THP−1細胞)へのHMGB1の結合、炎症促進性サイトカインのHMG1が媒介する放出、HMG1が媒介する炎症、HMG1が媒介する敗血症、HMG1が媒介する炎症(例えば、関節の)、ならびにHMG1が媒介する関節炎。これらの活性は、当技術分野では周知の1つまたは多くの方法によりアッセイすることができる。例えば、US20040005316、第6,468,533号、および第6,448,223号、ならびに下記「実施例」というタイトルのセクション6を参照されたい。
「50%阻害濃度」(「IC50」と略される)という用語は、阻害物質が標的にする分子(例えば、HMG1)の所与の活性を50%阻害するのに必要とされる阻害物質(例えば、本発明の抗体)の濃度を表す。当業者であれば、IC50値が低いほど、より有力な阻害物質に相当することを理解するであろう。一実施形態では、本発明の抗体は、5000ng/ml未満の、または4000ng/ml未満の、または3000ng/ml未満の、または2000ng/ml未満の、または1000ng/ml未満の、または500ng/ml未満の、または250ng/ml未満の、または100ng/ml未満の、または50ng/ml未満の、または10ng/ml未満の、または5ng/ml未満のIC50で、HMG1が媒介する炎症促進性サイトカインの放出を阻害する。別の一実施形態では、本発明の抗体は、1000nM未満の、または500nM未満の、または250nM未満の、または100nM未満の、または50nM未満の、または25M未満の、または10nM未満の、または5nM未満の、0.25nM未満の、または0.1nM未満の、または0.01nM未満のIC50で、HMG1が媒介する炎症促進性サイトカインの放出を阻害する。
一実施形態では、本発明の抗体は、RAGEに対するHMG1の結合を妨げる/拮抗する/阻害するが、1つまたは複数のトール様受容体(例えば、TLR2およびTLR4)に対するHMGB1の結合には、本質的に影響を及ぼさない。別の一実施形態では、本発明の抗体は、1つまたは複数のトール様受容体(例えば、TLR2およびTLR4)に対するHMG1の結合を妨げる/拮抗する/阻害するが、RAGEに対するHMG1の結合には本質的に影響を及ぼさない。なお別の一実施形態では、本発明の抗体は、RAGEに対するHMG1の結合を妨げ/拮抗し/阻害し、かつ、1つまたは複数のトール様受容体(例えば、TLR2およびTLR4)に対するHMG1の結合を阻害する。これらの活性は、当技術分野では周知の1つまたは多くの方法によりアッセイすることができる。例えば、US20040005316、第6,468,533号、および第6,448,223号、ならびに以下「実施例」というタイトルのセクション6を参照されたい。
特定の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または約100%、RAGEに対するHMG1の結合を阻害する。別の特定の一実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または100%、1つまたは複数のトール様受容体(例えば、TLR2およびTLR4)に対するHMG1の結合を阻害する。別の特定の一実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または100%、RAGEに対するHMG1の結合を阻害する。別の特定の一実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または100%、1つまたは複数のトール様受容体(例えば、TLR2またはTLR4)に対するHMG1の結合を阻害する。
本明細書で実証するように、抗体は、様々な供給源から単離された同じポリペプチドの間を識別することができる。いかなる特定の理論に拘泥しようとするものではないが、異なる供給源から単離されたアミノ酸配列が類似の、または同一のポリペプチドは、限定するものではないが、翻訳後修飾(例えば、リン酸化、アセチル化、メチル化、グリコシル化など)、全体の構造の変更(例えば、ジスルフィド結合および/またはフォールディングにおける変更)、ならびにポリペプチドが結合することができるあらゆる他の分子(例えば、塩、ポリヌクレオチドおよび/または他のポリペプチドなどのさらなるサブユニット)における相違を含む、数々の相違により区別することができる。一実施形態では、本発明の抗体は、天然のHMG1(例えば、哺乳動物の細胞または組織から単離されたもの)と同じ、またはそれより高い親和性で、大腸菌(E.coli)で組換えで生成されたHMG1に特異的に結合する。別の一実施形態では、本発明の抗体は、大腸菌で生成された組換えのHMG1と同じ、またはそれより高い親和性で、天然のHMG1(例えば、哺乳動物の細胞または組織から単離されたもの)に結合する。なお別の一実施形態では、本発明の抗体は、限定するものではないが、核のHMG1(例えば、凍結解凍により細胞から単離されたもの)、放出されたHMG1(例えば、壊死細胞の上清から単離されたもの)、および活性化されたHMG1(例えば、LPS刺激した細胞など、刺激した細胞から単離されたもの)を含む、1つまたは複数の形態の天然のHMG1に結合する。さらに別の一実施形態では、本発明の抗体は、限定するものではないが、核のHMG1(例えば、凍結解凍により細胞から単離されたもの)、放出されたHMG1(例えば、壊死細胞の上清から単離されたもの)、および活性化されたHMG1(例えば、LPS刺激した細胞など、刺激した細胞から単離されたもの)を含む1つまたは複数の形態の天然のHMG1に結合しない。天然の、および組換えのHMG1を得るための特定の方法は、本明細書に開示してある(以下、実施例2を参照されたい)。
一実施形態では、本発明の抗体は、可溶性のHMG1および/またはHMG2に特異的に結合する。別の一実施形態では、本発明の抗体は、固定化したHMG1および/またはHMG2に特異的に結合する。なお別の一実施形態では、本発明の抗体は、可溶性の、および不溶性両方のHMG1および/またはHMG2に特異的に結合する。
上記に記載したように、HMG1およびHMG2は、既知のポリヌクレオチド(即ち、DNAおよびRNA)結合性タンパク質である。一実施形態では、本発明の抗体は、HMG1および/またはHMG2がポリヌクレオチド分子に結合している前記HMG1および/またはHMG2に結合する。別の一実施形態では、本発明の抗体は、以下の1つまたは複数を妨げる/拮抗する/阻害する:RAGEへのHMGB1の結合、1つまたは複数のトール様受容体(例えば、TLR2およびTLR4)へのHMGB1の結合、細胞表面(例えば、THP−1細胞)へのHMGB1の結合、炎症促進性サイトカインのHMG1が媒介する放出、HMG1が媒介する炎症、HMG1が媒介する敗血症、HMG1が媒介する炎症(例えば、関節の)、およびHMG1が媒介する関節炎であって、これらの場合、前記HMG1はポリヌクレオチドに結合している。特定の実施形態では、ポリヌクレオチド分子は、炎症反応を促進するものである(例えば、微生物または壊死細胞に由来するポリヌクレオチド)。
特定の一実施形態では、本発明の抗体はアセチル化されたHMG1に、非アセチル化のHMG1よりも高い親和性で結合する。別の特定の一実施形態では、本発明の抗体は、非アセチル化のHMG1にアセチル化されたHMG1よりも高い親和性で結合する。なお別の一実施形態では、本発明の抗体は、アセチル化されたHMG1および非アセチル化のHMG1の両方に、本質的に同じ親和性で結合するのを妨げる。
別の一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトまたは他の動物の、例えば、哺乳動物および無脊椎動物の、HMG1ポリペプチドまたはその抗原性フラグメントを含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。特定の一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトHMG1ポリペプチド(配列番号1または2)を含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。ヒトおよび他の動物のHMG1ポリペプチドは、当技術分野ではよく知られている(例えば、US20040005316、第6,468,533号、および第6,448,223号を参照されたい)。
一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号1または2のヒトHMG1ポリペプチドに、少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、または少なくとも少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するHMG1ポリペプチドを含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。
別の一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号3のヒトHMG1Aボックスポリペプチドに、少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、または少なくとも85%の同一性、または少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性、または少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するポリペプチドを含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。
さらに別の一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号4、および/または配列番号28、および/または配列番号29のヒトHMG1Bボックスポリペプチドに、少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、または少なくとも85%の同一性、または少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性、または少なくとも少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するポリペプチドを含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。
別の一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトまたは他の動物の、例えば、哺乳動物および無脊椎動物の、HMG2ポリペプチドまたはその抗原性フラグメントを含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。特定の一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、ヒトHMG2ポリペプチド(配列番号21)を含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。ヒトおよび他の動物のHMG2ポリペプチドは、当技術分野ではよく知られている(例えば、Jantzenら、1990年、Nature、344巻、830〜6頁;Kolodrubetz、1990年、Nucleic Acids Res.、18巻、5565頁;Laudetら、1993年、Nucleic Acids Res.、21巻、2493〜501頁、およびThomasら、2001年、Trends Biochem Sci.、26巻、167〜74頁を参照されたい)。
一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号21のヒトHMG2ポリペプチドに、少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、または少なくとも少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するHMG2ポリペプチドを含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。
別の一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号22のヒトHMG2Aボックスポリペプチドに、少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、または少なくとも85%の同一性、または少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性、または少なくとも少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するポリペプチドを含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。
さらに別の一実施形態では、本発明の高親和性抗体は、配列番号23のヒトHMG2Bボックスポリペプチドに、少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、または少なくとも85%の同一性、または少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性、または少なくとも少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するポリペプチドを含み、あるいはそれから成る(または、それから本質的に成る)ポリペプチドに特異的に結合する。
2つのアミノ酸配列(または2つの核酸配列)の同一性パーセントは、例えば、最適の比較の目的で配列をアラインすることにより決定することができる(例えば、第1の配列の配列にギャップを導入することができる)。次いで、対応する位置のアミノ酸またはヌクレオチドを比較し、2配列間の同一性パーセントは、配列が共有する同一の位置の数の関数である(即ち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数×100)。2つの配列の実際の比較は、よく知られた方法により、例えば、数学のアルゴリズムを用いて実行することができる。このような数学のアルゴリズムの、特定の、非限定的な例は、Karlinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻、5873〜5877頁(1993年)に記載されている。このようなアルゴリズムは、Schafferら、Nucleic Acids Res.、29巻、2994〜3005頁(2001年)に記載されているように、BLASTNおよびBLASTXプログラム(バージョン2.2)中に組み入れられている。BLASTおよびGappedBLASTプログラムを利用する場合は、それぞれのプログラム(例えば、BLASTN)のデフォルトパラメータを使用することができる。2002年4月10日に入手可能なものとして、http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。一実施形態では、検索されたデータベースは非重複性の(NR)データベースであり、配列を比較するためのパラメータは、フィルターなし、期待値10、ワードサイズ3、MatrixはBLOSUM62、およびGap Costは11のExistenceを有しExtensionは1に設定することができる。
配列の比較に利用される数学アルゴリズムの、別の非限定的な例には、MyersおよびMillerのアルゴリズムである、CABIOS(1989年)がある。このようなアルゴリズムは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み入れられており、ALIGNプログラムは、GCG(Accelrys)配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部分である。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合には、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティ、および4のギャップペナルティを用いることができる。配列を分析するためのさらなるアルゴリズムが、当技術分野では知られており、TorellisおよびRobotti、Comput.Appl.Biosci.、10巻、3〜5頁(1994年)に記載されているADVANCEおよびADAM、ならびにPearsonおよびLipman、Proc.Natl.Acad.Sci USA、85巻、2444〜8頁(1988年)に記載されているFASTAが含まれる。
別の一実施形態では、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラム(2001年8月31日、http://www.accelrys.comで入手可能)を用いて、Blossom 63マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、12、10、8、6、または4というギャップ重量、および2、3、または4という長さ重量を用いて実行することができる。さらに別の一実施形態では、2つの核酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケ−ジにおけるGAPプログラム(http://www.cgc.comで入手可能)を用いて、50というギャップ重量、および3という長さ重量を用いて実行することができる。
本発明の別の一実施形態は、10−5M未満の、または10−6M未満の、または10−7M未満の、または10−8M未満の、または10−9M未満の、または10−10M未満の、または10−11M未満の、または10−12M未満の、または10−13M未満の、または5×10−13M未満の、または10−14M未満の、または5×10−14M未満の、または10−15M未満の、または5×10−15M未満の解離定数、即ちKd(Koff/Kon)で、HMG1およびその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体である。なお別の一実施形態では、HMG1およびその抗原性フラグメントに特異的に結合する本発明の抗体は、約10−7Mと約10−8Mの間の、約10−8Mと約10−9Mの間の、約10−9Mと約10−10Mの間の、約10−10Mと約10−11Mの間の、約10−11Mと約10−12Mの間の、約10−12Mと約10−13Mの間の、約10−13Mと約10−14Mの間の解離定数、即ちKd(Koff/Kon)を有する。なお別の一実施形態では、HMG1およびその抗原性フラグメントに特異的に結合する本発明の抗体は、10−7Mと10−8Mの間の、10−8Mと10−9Mの間の、10−9Mと10−10Mの間の、10−10Mと10−11Mの間の、10−11Mと10−12Mの間の、10−12Mと10−13Mの間の、10−13Mと10−14Mの間の解離定数、即ちKd(Koff/Kon)を有する。
本発明の別の一実施形態は、10−5M未満の、または10−6M未満の、または10−7M未満の、または10−8M未満の、または10−9M未満の、または10−10M未満の、または10−11M未満の、または10−12M未満の、または10−13M未満の、または5×10−13M未満の、または10−14M未満の、5×10−14M未満の、または10−15M未満の、または5×10−15M未満の解離定数、即ちKd(Koff/Kon)で、HMG2およびその抗原性フラグメントに特異的に結合する抗体である。なお別の一実施形態では、HMG2およびその抗原性フラグメントに特異的に結合する本発明の抗体は、約10−7Mと約10−8Mの間の、約10−8Mと約10−9Mの間の、約10−9Mと約10−10Mの間の、約10−10Mと約10−11Mの間の、約10−11Mと約10−12Mの間の、約10−12Mと約10−13Mの間の、約10−13Mと約10−14Mの間の解離定数、即ちKd(Koff/Kon)を有する。なお別の一実施形態では、HMG2およびその抗原性フラグメントに特異的に結合する本発明の抗体は、10−7Mと10−8Mの間の、10−8Mと10−9Mの間の、10−9Mと10−10Mの間の、10−10Mと10−11Mの間の、10−11Mと10−12Mの間の、10−12Mと10−13Mの間の、10−13Mと10−14Mの間の解離定数、即ちKd(Koff/Kon)を有する。
平衡解離定数(Kd)がKoff/Konと定義されることは、当技術分野ではよく知られている。Kdが低い(即ち、高親和性の)結合性分子(例えば、および抗体)は、Kdが高い(即ち、低親和性の)結合性分子(例えば、および抗体)よりも好ましいことは、一般的に理解されている。しかし、いくつかの場合では、KonまたはKoffの値は、Kd値よりも妥当であることがある。所与の抗体を適用するにはどの動態学的パラメータが最も重要であるかは、当業者であれば決定することができる。ある実施形態では、本発明の抗体は、他の抗原に対するよりある抗原に対してより低いKdを有する。
別の一実施形態では、抗体はHMG1およびその抗原性フラグメントに、1×10−3s−1未満の、または3×10−3s−1未満のKoffで結合する。他の実施形態では、抗体はHMG1およびその抗原性フラグメントに、10−3s−1未満の、5×10−3s−1未満の、10−4s−1未満の、5×10−4s−1未満の、10−5s−1未満の、5×10−5s−1未満の、10−6s−1未満の、5×10−6s−1未満の、10−7s−1未満の、5×10−7s−1未満の、10−8s−1未満の、5×10−8s−1未満の、10−9s−1未満の、5×10−9s−1未満の、または10−10s−1未満のKoffで結合する。
別の一実施形態では、抗体はHMG2およびその抗原性フラグメントに、1×10−3s−1未満の、または3×10−3s−1未満のKoffで結合する。他の実施形態では、抗体はHMG2およびその抗原性フラグメントに、10−3s−1未満の、5×10−3s−1未満の、10−4s−1未満の、5×10−4s−1未満の、10−5s−1未満の、5×10−5s−1未満の、10−6s−1未満の、5×10−6s−1未満の、10−7s−1未満の、5×10−7s−1未満の、10−8s−1未満の、5×10−8s−1未満の、10−9s−1未満の、5×10−9s−1未満の、または10−10s−1未満のKoffで結合する。
別の一実施形態では、本発明の抗体は、HMG1および/またはその抗原性フラグメントに、少なくとも105M−1s−1、少なくとも5×105M−1s−1、少なくとも106M−1s−1、少なくとも5×106M−1s−1、少なくとも107M−1s−1、少なくとも5×107M−1s−1、または少なくとも108M−1s−1、または少なくとも109M−1s−1の解離速度定数、即ちKon速度で結合する。
別の一実施形態では、本発明の抗体は、HMG2および/またはその抗原性フラグメントに、少なくとも105M−1s−1、少なくとも5×105M−1s−1、少なくとも106M−1s−1、少なくとも5×106M−1s−1、少なくとも107M−1s−1、少なくとも5×107M−1s−1、または少なくとも108M−1s−1、または少なくとも109M−1s−1の解離速度定数、即ちKon速度で結合する。
すべてのポリペプチドのような抗体は等電点(pI)を有し、等電点はポリペプチドが実効電荷をもたないpHと一般的に定義される。溶液のpHがタンパク質の等電点(pI)に等しいときにタンパク質の溶解性が通常最も低くなることは、当技術分野では知られている。本明細書で用いられるpI値は、優勢な荷電形態のpIと定義される。タンパク質のpIは、限定するものではないが、等電点電気泳動、および様々なコンピュータアルゴリズムを含む様々な方法により決定することができる(例えば、Bjellqvistら、1993年、Electrophoresis、14巻、1023頁を参照されたい)。さらに、抗体のFabドメインの熱融点(Tm)は、抗体の熱安定性の優れた指標であってもよく、有効期間の指標をさらに提供することができる。Tmが低いほど凝集する/安定性が劣ることを示し、一方ではTmが高いほど凝集が少ない/安定性がよいことを示す。したがって、ある実施形態では、Tmのより高い抗体が好ましい。タンパク質ドメイン(例えば、Fabドメイン)のTmは、当技術分野では周知のあらゆる標準の方法を用いて、例えば、示差走査熱量測定により測定することができる(例えば、Vermeerら、2000年、Biophys.J.、78巻、394〜404頁;Vermeerら、2000年、Biophys.J.、79巻、2150〜2154頁を参照されたい)。
したがって、本発明のさらなる非排他的な実施形態は、特定の等電点(pI)または融解温度(Tm)などのある種の好ましい生化学的特徴を有する、本発明の高親和性抗体を含む。
より詳しくは、一実施形態では、本発明の高親和性抗体のpIは5.5から9.5の範囲である。なお別の特定の一実施形態では、本発明の高親和性抗体のpIは、約5.5から約6.0、または約6.0から約6.5、または約6.5から約7.0、または約7.0から約7.5、または約7.5から約8.0、または約8.0から約8.5、または約8.5から約9.0、または約9.0から約9.5の範囲である。他の詳しい実施形態では、本発明の高親和性抗体のpIは、5.5〜6.0、または6.0から6.5、または6.5から7.0、または7.0〜7.5、または7.5〜8.0、または8.0〜8.5、または8.5〜9.0、または9.0〜9.5の範囲である。さらにより詳しくは、本発明の高親和性抗体のpIは、少なくとも5.5、または少なくとも6.0、または少なくとも6.3、または少なくとも6.5、または少なくとも6.7、または少なくとも6.9、または少なくとも7.1、または少なくとも7.3、または少なくとも7.5、または少なくとも7.7、または少なくとも7.9、または少なくとも8.1、または少なくとも8.3、または少なくとも8.5、または少なくとも8.7、または少なくとも8.9、または少なくとも9.1、または少なくとも9.3、または少なくとも9.5である。他の特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体のpIは、少なくとも約5.5、または少なくとも約6.0、または少なくとも約6.3、または少なくとも約6.5、または少なくとも約6.7、または少なくとも約6.9、または少なくとも約7.1、または少なくとも約7.3、または少なくとも約7.5、または少なくとも約7.7、または少なくとも約7.9、または少なくとも約8.1、または少なくとも約8.3、または少なくとも約8.5、または少なくとも約8.7、または少なくとも約8.9、または少なくとも約9.1、または少なくとも約9.3、または少なくとも約9.5である。
抗体におけるイオン化可能な残基の数および位置を変更することにより、溶解性を最適化して、pIを調節することが可能である。例えば、ポリペプチドのpIは、好適なアミノ酸置換を行うことにより(例えば、リジンなどの電荷を帯びたアミノ酸を、アラニンなどの非電荷の残基に置換することにより)操作することができる。いかなる特定の理論によって拘泥しようとするものではないが、前記抗体のpIの変化をもたらす抗体のアミノ酸の置換により、抗体の溶解性および/または安定性が改善することがある。当業者であれば、望ましいpIを達成するために、どのアミノ酸置換が特定の抗体に最も好適であるかわかるであろう。一実施形態では、pIを変更するために、本発明の抗体に置換を導入する。FcγRに対する結合の変更をもたらすFc領域の置換(上記に記載)も、pIにおける変化をもたらすことができることが、特に企図される。別の一実施形態では、FcγR結合における望ましい変更、およびpIにおけるあらゆる望ましい変化の両方をもたらすために、Fc領域の置換が特に選択される。
一実施形態では、本発明の高親和性抗体のTmは65℃から120℃の範囲である。特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体のTmは、約75℃から約120℃、または約75℃から約85℃、または約85℃から約95℃、または約95℃から約105℃、または約105℃から約115℃、または約115℃から約120℃の範囲である。他の特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体のTmは、75℃から120℃、または75℃から85℃、または85℃から95℃、または95℃から105℃、または105℃から115℃、または115℃から120℃の範囲である。さらに他の特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体のTmは、少なくとも約65℃、または少なくとも約70℃、または少なくとも約75℃、または少なくとも約80℃、または少なくとも約85℃、または少なくとも約90℃、または少なくとも約95℃、または少なくとも約100℃、または少なくとも約105℃、または少なくとも約110℃、または少なくとも約115℃、または少なくとも約120℃である。さらに他の特定の実施形態では、本発明の高親和性抗体のTmは、少なくとも65℃、または少なくとも70℃、または少なくとも75℃、または少なくとも80℃、または少なくとも85℃、または少なくとも90℃、または少なくとも95℃、または少なくとも100℃、または少なくとも105℃、または少なくとも110℃、または少なくとも115℃、または少なくとも120℃である。
特定の一実施形態では、本発明の高親和性抗体またはそのフラグメントは、ヒト抗体またはヒト化抗体である。
一実施形態では、本発明は、HMG1に高親和性で特異的に結合する特定の抗体(およびそのフラグメント)も含む。特に、American Type Culture Collection(ATCC、10801 University Boulevard、Manassas、Va 20110−2209)に寄託され、それぞれATCC寄託番号PTA−6142、PTA−6143、PTA−6259、およびPTA−6258が割り当てられている、本明細書で「S2」、「S4」、「S16」、および「G4」と呼ぶ抗HMG1抗体である。これらの寄託は、Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Puoposes of Patent Procedureの条項に従って維持される。言及する株は、Budapest Treatyの条項に従って維持されるので、特許局のBudapest Treatyへの調印で入手可能になるであろう。
別の一実施形態では、本発明は、本明細書に開示されている1つまたは複数の可変領域を含むHMG1および/またはHMG2に特異的に結合する抗体を含む(図2A〜J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)。
本発明は、軽鎖可変(VL)領域、および/または重鎖可変(VH)領域における1つまたは複数のアミノ酸残基の置換を含む、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11の変異体も包含する(図2A〜J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)。本発明は、1つもしくは複数のVLCDR、および/または1つまたは複数のVHCDRにおいて1つまたは複数のさらなるアミノ酸残基が置換した、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11の変異体も包含する(図2A〜J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)。G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)のVHドメイン、VHCDR、VLドメイン、および/またはVLCDRに、置換が導入されたことにより生成された抗体を、例えば、HMG1および/またはHMG2に対して結合するその能力について(例えば、限定するものではないが、ELISAおよびBIAcoreを含む免疫アッセイにより)、あるいはHMG1誘発性サイトカインの放出を阻害し、炎症性疾患または1つもしくは複数のその症状を予防し、処置し、管理し、または改善するその能力について、in vitroおよびin vivoで試験することができる。
本明細書で言及する相補性決定領域(CDR)の残基の数は、Kabatらのものであることが理解されよう(1991年、NIH Publication91-3242、National Technical Information Serviece、Springfield、VA)特に、軽鎖可変ドメインにおける残基24〜34(CDR1)、50〜56(CDR2)、および89〜97(CDR3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける31〜35(CDR1)、50〜65(CDR2)、および95〜102(CDR3)である。CDRは抗体によって大きく変化することに留意されたい(および、定義上Kabatのコンセンサス配列に相同性を示さない)。フレームワーク残基の最大アラインメントでは、Fv領域に使用するために、番号方式における「スペーサー」残基の挿入を必要とすることが多い。本明細書で言及するCDRは、上記のKabatらのものであることが理解されよう。さらに、あらゆる所与のKabat部位の番号におけるある個々の残基の同一性は、種間、または対立遺伝子の相違のため抗体の鎖ごとに異なることがある。
他の実施形態では、本発明は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの本明細書に開示したCDRを有する抗体を含む(例えば、図2A〜J、下線で示したCDRを参照されたい)。なお他の実施形態では、本発明は、表3に列挙するあらゆるVHCDRのアミノ酸配列を有するVHCDR、および/または表3に列挙するあらゆる抗体の重鎖可変領域の重鎖可変領域に由来するVHCDRを含む、HMG1および/またはHMG2に特異的に結合する抗体を包含する。別の特定の一実施形態では、本発明は、表3に列挙したあらゆるVLCDRのアミノ酸配列を有するVLCDR、および/または表3に列挙するあらゆる抗体の軽鎖可変領域の軽鎖可変領域に由来するVLCDRを含む、HMG1および/またはHMG2に特異的に結合する抗体を包含する。
本発明は、HMG1および/またはHMG2に特異的に結合する、本明細書に記載したVHドメイン、VHCDR、VLドメイン、またはVLCDRの誘導体を含む、HMG1および/またはHMG2に特異的に結合する抗体を包含する。当業者には周知の標準の技術を用いて、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列に変異(例えば、付加、欠失、および/または置換)を導入することができ、例えば、アミノ酸置換を産生するのに日常的に用いられている、部位特異的変異誘発、およびPCRが媒介する変異誘発が含まれる。一実施形態では、VHおよび/またはVLのCDR誘導体は、もとのVHおよび/またはVLのCDRに比べて、25個より少ないアミノ酸の置換、20個より少ないアミノ酸の置換、15個より少ないアミノ酸の置換、10個より少ないアミノ酸の置換、5個より少ないアミノ酸の置換、4個より少ないアミノ酸の置換、3個より少ないアミノ酸の置換、または2個より少ないアミノ酸の置換を含む。別の一実施形態では、VHおよび/またはVLのCDR誘導体は、1つまたは複数の予想された非必須アミノ酸残基(即ち、抗体がHMG1および/またはHMG2に特異的に結合するのに決定的に重要ではないアミノ酸残基)でなされた保存的アミノ酸置換(例えば、上記)を有する。あるいは、変異を、飽和突然変異誘発などによって、VHおよび/またはVLのCDRコード配列のすべてまたは部分に沿ってランダムに導入することができ、得られた変異体を生物学的活性に関してスクリーニングして活性を保持する変異体を同定することができる。突然変異誘発後、コードした抗体を発現させることができ、抗体の活性を決定することができる。
本発明は、HMG1および/もしくはHMG2、またはそれらのフラグメントに特異的に結合する抗体も包含し、前記抗体は、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)の可変の重鎖および/または軽鎖のアミノ酸配列に、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%同一である、可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列を含む。本発明は、HMG1および/またはHMG2、あるいはそれらのフラグメントに特異的に結合する抗体も包含し、前記抗体は、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)の可変の重鎖および/または軽鎖のアミノ酸配列に、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%同一である、可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列を含む。
本発明は、HMG1および/またはHMG2、あるいはそれらのフラグメントに特異的に結合する抗体をさらに包含し、前記抗体または抗体フラグメントは、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)の1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列に、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%同一である、1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列を含む。本発明は、HMG1および/またはHMG2、あるいはそれらのフラグメントに特異的に結合する抗体をさらに包含し、前記抗体または抗体フラグメントは、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)の1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列に、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%同一である、1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列を含む。2つのアミノ酸配列の同一性パーセントの決定は、BLASTタンパク質検索を含む、当業者には周知のあらゆる方法により決定することができる。
本発明は、HMG1および/またはHMG2、あるいはそれらのフラグメントに特異的に結合する抗体も包含し、前記抗体は、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされている。別の一実施形態では、本発明は、HMG1および/またはHMG2、あるいはそれらのフラグメントに特異的に結合する抗体を包含し、前記抗体は、G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11(図2A〜J、配列番号5〜20、24〜27、および30〜73を参照されたい)の1つまたは複数のCDRのヌクレオチド配列に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされている1つまたは複数のCDRを含む。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、限定するものではないが、約45℃で、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)においてフィルターに結合したDNAにハイブリダイズさせ、その後約50〜65℃で0.2×SSC/0.1%SDSで1または複数回洗浄することが含まれ、約45℃で、6×SSCにおいてフィルターに結合したDNAにハイブリダイズさせ、その後約60℃で0.1×SSC/0.2%SDSで1または複数回洗浄するような高度にストリンジェントな条件、またはあらゆる他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、当業者には知られている(例えば、Ausubel,F.M.ら編集、1989年、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、Green Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley and Sons,Inc.、NY、6.3.1から6.3.6頁、および2.10.3頁を参照されたい)。
本発明の特定の実施形態は、寄託した抗体のCDRの、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つすべてを有する抗体である。本発明の特定の実施形態は、また、これらの抗体(および、それらのフラグメント)をコードする単離されたポリヌクレオチドである。「S2」、「S4」、「S16」、および「G4」、ならびにいくつかの他の特異的な本発明の抗HMG1抗体に対する、結合の、および機能上の特性を、表1に列挙する。
本発明の別の一実施形態には、上記に記載した対象の抗HMG1抗体のあらゆる部分における保存的アミノ酸置換の導入が含まれる(表1を参照されたい)。「保存的アミノ酸置換」は、機能上同等のアミノ酸を置換するアミノ酸置換を意味することは、当技術分野ではよく知られている。保存的アミノ酸変化は、得られたペプチドのアミノ酸配列におけるサイレントな変化をもたらす。例えば、極性の類似する1つまたは複数のアミノ酸は、機能上同等物として働き、ペプチドのアミノ酸配列内でサイレントな変更をもたらす。電荷が中性である置換、および、残基をより小型の残基と置き換える置換も、残基が異なる群にあっても(例えば、フェニルアラニンの、より小型のイソロイシンとの置換)「保存的置換」とみなされる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーも、当技術分野では規定されている。保存的アミノ酸置換のいくつかのファミリーを、表2に示す。
「保存的アミノ酸置換」という用語は、アミノ酸の類似体または誘導体の使用も意味する。表現型がサイレントであるアミノ酸置換を行う方法についてのガイダンスは、Bowieら、「Deciphering the Message in Protein Sequences:Tolerance to Amino Acid Substitutions」(1990年、Science、247巻、1306〜1310頁)に提供されている。
5.2 本発明の抗体を産生し、スクリーニングする方法
HMG1ポリペプチドに特異的に結合する高親和性抗体またはフラグメントは、例えば、免疫アッセイ、BIAcore、または当業者には周知の他の技術により同定することができる。
本発明の抗体は、当技術分野では周知のあらゆる適切な方法により産生することができる。対象の抗原に対するポリクローナル抗体を、当技術分野ではよく知られている様々な手順により作成することができる。例えば、本発明のHMG1ポリペプチドを、限定するものではないが、ウサギ、マウス、ラットなどを含む様々な宿主動物に投与して、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の生成を誘発することができる。宿主の種に応じて、免疫反応を増大させるために様々なアジュバントを使用することができ、様々なアジュバントには、限定するものではないが、フロイントの(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどの鉱物性のゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメットゲラン桿菌)およびコリネバクテリウムパルブム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒトのアジュバントが含まれる。このようなアジュバントは、当技術分野では、やはりよく知られている。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組合せの使用を含む、当技術分野では周知の広範囲の技術を用いて調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野では周知のものを含むハイブリドーマ技術を用いて生成することができ、例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988年)に、Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas、563〜681頁(Elsevier、N.Y.、1981年)に教示されている。本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により生成される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、あらゆる真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む単一のクローンに由来する抗体を意味するものであり、それによりそれが生成される方法を意味するものではない。
「モノクローナル抗体」は、2つのタンパク質、即ち重鎖および軽鎖を含み、あるいはそれらから成ることができる。
ハイブリドーマ技術を用いて特定の抗体を生成し、スクリーニングするための方法は、日常的であり、当技術分野ではよく知られている。非限定的な例では、マウスを、本発明のポリペプチド、またはそのようなペプチドを発現する細胞で免疫化することができる。免疫反応が検出されたら、例えば、抗原に特異的な抗体がマウスの血清で検出されたら、マウスの脾臓を収集し、脾細胞を単離する。次いで、脾細胞を、よく知られた技術により、あらゆる適切なミエローマ細胞、例えば、ATCCから入手可能である細胞系SP20からの細胞に融合させる。ハイブリドーマを選択し、限界希釈法によりクローン化する。次いで、ハイブリドーマのクローンを、当技術分野では周知の方法により、本発明のポリペプチドに結合することができる抗体を分泌する細胞に対してアッセイする。一般に高レベルの抗体を含んでいる腹水を、ポジティブのハイブリドーマクローンでマウスを免疫化することにより産生することができる。
したがって、本発明は、モノクローナル抗体を産生する方法を、ならびに本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することを含む方法により生成される抗体を提供し、この場合、本発明の抗原で免疫化したマウスから単離された脾細胞をミエローマ細胞と融合し、次いで、本発明のポリペプチドに結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンに対する融合物から得られたハイブリドーマをスクリーニングすることにより、ハイブリドーマを産生するのが好ましい。
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントを、周知の技術により産生することができる。例えば、本発明のFabおよびF(ab’)2フラグメントを、パパイン(Fabフラグメントを生成するために)、またはペプシン(F(ab’)2フラグメントを生成するために)などの酵素を用いて、免疫グロブリン分子を、タンパク質分解性の切断をすることにより生成することができる。F(ab’)2フラグメントは可変領域、軽鎖定常領域、および重鎖のCH1ドメインを含む。
本発明の抗体は、当技術分野では知られている様々なファージディスプレイ方法を用いて産生することもできる。ファージディスプレイ方法では、機能上の抗体のドメインが、それらをコードするポリヌクレオチド配列を運ぶファージ粒子の表面上にディスプレイされる。特定の一実施形態では、そのようなファージを利用して、レパートリーまたはコンビナトリアルの抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはネズミ科動物)から発現された抗原結合性ドメインにディスプレイすることができる。対象の抗原に結合する抗原結合性ドメインを発現するファージを選択し、あるいは、例えば、標識した抗原、または固体表面もしくはビーズに結合し、もしくは捕獲された抗原を用いて、抗原と同定することができる。これらの方法で用いられるファージは、典型的には、Fabを有するファージから発現されたfdおよびM13結合性ドメイン、Fv、または、ファージ遺伝子IIIもしくは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えで融合しているジスルフィド安定化したFv抗体ドメインを含むフィラメント状のファージである。本発明の抗体を作成するのに用いることができるファージディスプレイ方法の例には、Brinkmanら、J.Immunol.Methods、182巻、41〜50頁(1995年);Amesら、J.Immunol.Methods、184巻、177〜186頁(1995年);Kettleboroughら、Eur.J.Immunol.、24巻、952〜958頁(1994年);Persicら、Gene、187巻、9〜18頁(1997年);Burtonら、Advances in Immunology、57巻、191〜280頁(1994年);PCT出願PCT/GB91/01134、PCT公開WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401、ならびに米国特許第5,698,426号、第5,223,409号、第5,403,484号、第5,580,717号、第5,427,908号、第5,750,753号、第5,821,047号、第5,571,698号、第5,427,908号、第5,516,637号、第5,780,225号、第5,658,727号、第5,733,743号、および第5,969,108号に開示されているものが含まれる。
上記の参考文献に記載されているように、ファージ選択後、ファージからの抗体コード領域を単離し、ヒト抗体、またはあらゆる他の望ましい抗原結合性フラグメントを含む抗体全体を産生するために使用することができ、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母菌、および細菌、例えば、以下に詳しく記載するものを含むあらゆる望ましい宿主で発現することができる。例えば、Fab、Fab’、およびF(ab’)2フラグメントを組換えで生成するための技術は、PCT公開WO92/22324、Mullinaxら、BioTechniques、12巻(6)、864〜869頁(1992年)、およびSawaiら、AJRI、34巻、26〜34頁(1995年)、およびBetterら、Science、240巻、1041〜1043頁(1988年)に開示されているものなどの、当技術分野では周知の方法を用いて使用することもできる。
単鎖Fvsおよび抗体を生成するのに用いることができる技術の例には、米国特許第4,946,778号、および第5,258,498号;Hustonら、Methods in Enzymology、203巻、46〜88頁(1991年);Shuら、PNAS、90巻、7995〜7999頁(1993年)、およびSkerraら、Science、240巻、1038〜1040頁(1988年)に記載されているものが含まれる。
ヒトにおける抗体のin vivoの使用、およびin vitroの検出アッセイを含むいくつかの使用に対しては、キメラ、ヒト化の、またはヒトの抗体を使用することが好ましいことがある。キメラ抗体は、ネズミ科動物のモノクローナル抗体とヒト免疫グロブリンの定常領域に由来する可変領域とを有する抗体など、抗体の様々な部分が様々な動物種に由来する分子である。キメラ抗体を生成するための方法は当技術分野では知られている。例えば、Morrison、Science、229巻、1202頁(1985年);Oiら、BioTechniques、4巻、214頁(1986年);Gilliesら、(1989年)J.Immunol.Methods、125巻191〜202頁;米国特許第5,807,715号、第4,816,567号、および第4,816,397号を参照されたい。ヒト化抗体は、ヒト以外の種からの相補性決定領域(CDR)を1つまたは複数を有する望ましい抗原とヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域とを結合している、ヒト以外の種の抗体からの抗体分子である。しばしば、ヒトのフレームワーク領域におけるフレームワーク残基を、CDRドナーの抗体からの対応する残基で置換して、抗原の結合性を変更し、好ましくは改善する。これらのフレームワーク置換は、当技術分野ではよく知られている方法により同定され、例えば、CDRとフレームワーク残基との相互作用をモデリングして、抗原の結合に、および特定の位置における異常なフレームワーク残基を同定するための配列の比較に重要なフレームワーク残基を同定する。(例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号;Riechmannら、Nature、332巻、323頁(1988年)を参照されたい)。抗体は、例えば、CDR移植(EP239,400、PCT公開WO91/09967、米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、および第5,585,089号)ベニアリング(veneering)またはリサーフェシング(resurfacing)(EP592,106、EP519,596;Padlan、Molecular Immunology、28巻(4/5)、489〜498頁(1991年);Studnickaら、Protein Engineering、7巻(6)、805〜814頁(1994年);Roguskaら、PNAS、91巻、969〜973頁(1994年))、およびチェーンシャフリング(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号)を含む、当技術分野では周知の様々な技術を用いてヒト化することができる。
ヒト患者の治療的処置には、完全なヒト抗体が特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いて、上記に記載したファージディスプレイ法を含む、当技術分野では周知の様々な方法により作成することができる。米国特許第4,444,887号、および第4,716,111号、ならびにPCT公開WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、およびWO91/10741を参照されたい。
機能性の内因性免疫グロブリンを発現することができないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて、ヒト抗体を生成することもできる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体をマウス胎児性幹細胞中に、ランダムに、または相同的組換えにより導入することができる。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域を、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、マウス胎児性幹細胞中に導入することができる。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、別々に、または相同的組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と同時に非機能性になされ得る。特に、JH領域のホモ接合型の欠失により、内因性の抗体生成が妨げられる。修飾された胎児性幹細胞を増大させ、胚盤胞中に微量注入してキメラマウスを生成する。次いで、キメラマウスを繁殖させて、ヒト抗体を発現するホモ接合型の子孫を生成する。トランスジェニックマウスを、選択された抗原、例えば、本発明のポリペプチドのすべてまたは一部分で、通常の様式で免疫化する。抗原に対するモノクローナル抗体を、従来のハイブリドーマ技術を用いて、免疫化したトランスジェニックマウスから得ることができる。トランスジェニックマウスが内部に持っていたヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞の分化の間に再編成し、引き続きクラススイッチおよび体細胞突然変異を受ける。したがって、このような技術を用いると、治療上有用なIgG、IgA、IgM、およびIgE抗体を生成するのが可能である。ヒト抗体を生成するためのこれらの技術の概要については、LonbergおよびHuszar、Int.Rev.Immunol、13巻、65〜93頁(1995年)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技術の詳しい考察、ならびにこのような抗体を生成するためのプロトコールについては、例えば、PCT公開WO98/24893、WO92/01047、WO96/34096、WO96/33735、欧州特許第0598877号、米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、第5,885,793号、第5,916,771号、および第5,939,598号を参照されたい。さらに、Abgenix,Inc.(Freemont、カリフォルニア州)およびGenpharm(San Jose、カリフォルニア州)などの企業が、上記に記載したのと同様の技術を用いて、選択された抗原に対するヒト抗体を提供するよう従事することができる。
選択されたエピトープを認識する、完全なヒト抗体は、「誘導された選択」と呼ばれる技術を用いて産生することができる。この取組みでは、選択された非ヒトのモノクローナル抗体、例えば、マウスの抗体を用いて、同じエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択を誘導する(Jespersら、Bio/technology、12巻、899〜903頁(1988年))。
さらに、本発明のポリペプチドに対する抗体を次に利用して、当業者にはよく知られている技術を用いて本発明のポリペプチドを「模擬する」抗イディオタイプの抗体を産生することができる(例えば、GreenspanおよびBona、FASEB J.、7巻(5)、437〜444頁(1989年)、およびNissinoff、J.Immunol.、147巻(8)、2429〜2438頁(1991年)を参照されたい)。例えば、結合し、ポリペプチドの多量体形成、および/またはリガンドに対する本発明のポリペプチドの結合を競合的に阻害する抗体を使用して、ポリペプチドの多量体化、および/または結合性領域を「模擬し」、結果としてポリペプチドおよび/またはそのリガンドに結合し、中和する抗イディオタイプを産生することができる。このような中和性の抗イディオタイプ、またはこのような抗イディオタイプのFabフラグメントを、ポリペプチドリガンドを中和するための治療レジメンで用いることができる。例えば、このような抗イディオタイプの抗体を用いて、本発明のポリペプチドを結合し、かつ/またはそのリガンド/受容体を結合することができ、したがってその生物学的活性を阻止することができる。
抗体をin vivoの適用で治療的に使用する場合は、個体における免疫原性を低下させるために抗体を修飾することが好ましい。例えば、個体がヒトの場合、抗体は「ヒト化」されていることが好ましく、この場合、抗体の相補性決定領域がヒト抗体中に移植されている(例えば、Jonesら、Nature、321巻、522〜525頁、1986年、およびTempestら、Biotechnology、9巻、266〜273頁、(1991年)に記載されている通り)。
ファージディスプレイ技術も、また、抗Bボックス抗体を所有することに対してスクリーニングしたヒトからのリンパ球のv−遺伝子をPCR増幅したレパートリー、または未処理のライブラリーのいずれかからのポリペプチドに対する結合活性のある抗体遺伝子を選択するのに利用することができる(McCaffertyら、Nature、348巻、552〜554頁、1990年、およびMarksら、Biotechnology、10巻、779〜783頁、1992年)。これらの抗体の親和性は、チェーンシャフリングによっても改善することができる(Clacksonら、Nature、352巻624〜628頁、1991年)。
産生のために用いるポリペプチドの選択は、当業者であれば容易に決定することができる。産生された抗体が、HMGタンパク質ファミリーの別のメンバーと著しく交差反応せず、または特異的に結合しないように、ポリペプチドを選択することができる。あるいは、HMGタンパク質ファミリーの2つまたはそれを超えるメンバー間の相同性を大きな程度で共有するポリペプチドを、HMGタンパク質ファミリーの多数のメンバー(例えば、HMG1およびHMG2)と特異的に結合(即ち、交差反応)することができる抗体を産生するために使用することができる。
5.3 抗体をコードするポリヌクレオチド
本発明は、本発明の高親和性抗体およびそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドをさらに提供する。本発明は、例えば下記に定義するような、ストリンジェントな、またはストリンジェンシーのより低いハイブリダイゼーション条件下で、本発明のHMG1および/またはHMG2ポリペプチド(例えば、配列番号1もしくは2、またはそれらのフラグメント)に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドも包含する。特定の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1または2のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する抗体をコードしている。別の一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードしている。別の好ましい一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードしている。別の一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号21のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する抗体をコードしている。なお別の一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号22のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する抗体をコードしている。さらに別の一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号23のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する抗体をコードしている。なお他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号28および/または29のアミノ酸配列を有するポリペプチドに結合する抗体をコードしている。
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、50%ホルムアミド、5倍SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5倍デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20.mu.g/mlの変性し、せん断したサケ精子DNAを含む溶液で42℃で一晩インキュベートし、その後、約65℃でフィルターを0.1倍SSCで洗浄することとされている。
当技術分野では周知のあらゆる方法により、ポリヌクレオチドを得ることができ、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定することができる。例えば、抗体のヌクレオチド配列が既知の場合、抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成したオリゴヌクレオチドから組み立てることができるが(例えば、Kutmeierら、BioTechniques、17巻242頁(1994年)に記載されているように)、これは、簡潔にに述べると、抗体をコードする配列の部分を含む重複するオリゴヌクレオチドを合成し、これらのオリゴヌクレオチドをアニールし、連結し、次いで連結したオリゴヌクレオチドをPCRにより増幅することを含んでいる。
あるいは、抗体をコードするポリヌクレオチドを、適切な供給源由来の核酸から産生することができる。特定の抗体をコードしている核酸を含むクローンが入手できないが、抗体分子の配列が既知である場合、免疫グロブリンをコードする核酸を、化学的に合成し、あるいは適切な供給源(例えば、抗体のcDNAライブラリー、もしくは、本発明の抗体を発現するように選択されたハイブリドーマ細胞など、抗体を発現するあらゆる組織もしくは細胞から産生されたcDNAライブラリー、またはそれから単離された核酸、好ましくはポリA+RNA)から、配列の3’および5’末端にハイブリダイズ可能な合成のプライマーを用いてPCR増幅により、または、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからcDNAクローンを区別する、特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いたクローニングにより得ることができる。PCRにより産生された増幅した核酸を、次いで、当技術分野ではよく知られているあらゆる方法を用いて、複製可能なクローニングベクター中にクローニングすることができる。
抗体のヌクレオチド配列、および対応するアミノ酸配列が決定したら、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなど、ヌクレオチド配列を操作するために当技術分野ではよく知られている方法を用いて、抗体のヌクレオチド配列を操作して(例えば、Sambrookら、1990年、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、およびAusubelら編集、1998年、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク州に記載されている技術を参照されたい)、例えば、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入をつくりだすために、異なるアミノ酸配列を有する抗体を産生することができる。
特定の一実施形態では、本発明の抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を検査して、例えば、他の重鎖および軽鎖の可変領域の既知のアミノ酸配列と比較して配列の超可変性の領域を決定するなど、当技術分野ではよく知られている方法により、相補性決定領域(CDR)の配列を同定することができる。日常の組換えDNA技術を用いて、上記に記載したように、1つまたは複数のCDRをフレームワーク領域内に、例えば、非ヒト抗体をヒト化するためのヒトフレームワーク領域内に挿入することができる。フレームワーク領域は、天然に存在していてもよく、またはコンセンサスフレームワーク領域でもよく、好ましくはヒトフレームワーク領域であってよい(ヒトフレームワーク領域の列挙については、例えば、Chothiaら、J.Mol.Biol.、278巻、457〜479頁(1998年)を参照されたい)。フレームワーク領域およびCDRの組合せにより産生されたポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードしていることが好ましい。
好ましくは、上記で論じたように、フレームワーク領域内に1つまたは複数のアミノ酸置換がなされることがあり、好ましくはアミノ酸置換は、その抗原に対する抗体の結合性を改善する。さらに、このような方法を用いて、鎖内ジスルフィド結合に関与している可変領域の1つまたは複数のシステイン残基のアミノ酸置換または欠失を作成して、1つまたは複数の鎖内ジスルフィド結合を欠く抗体分子を産生することができる。ポリヌクレオチドに対する他の変更は、本発明に包含され、当技術分野の範囲内である。
さらに、好適な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子を、好適な生物学的活性のヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にスプライスすることにより、「キメラ抗体」を生成するために開発された技術(Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.、81巻851〜855頁、(1984年)、Neubergerら、Nature、312巻、604〜608頁(1984年)、Takedaら、Nature、314巻、452〜454頁(1985年)を用いることができる。上記に記載したように、キメラ抗体は、ネズミ科動物mAbに由来する可変領域、およびヒト免疫グロブリン定常領域、例えば、ヒト化抗体を有するもののような、様々な部分が様々な動物種に由来する分子である。
あるいは、単鎖抗体を生成するために記載されている技術(米国特許第4,946,778号、Bird、Science、242巻、423〜42頁(1988年);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85巻、5879〜5883頁(1988年)、およびWardら、Nature、334巻、544〜54頁(1989年))を適応させて、単鎖抗体を生成することができる。単鎖抗体は、アミノ酸架橋によりFv領域の重鎖および軽鎖のフラグメントを連結することによって形成され、単鎖ポリペプチドが生じる。大腸菌で機能上のFvフラグメントを組み立てるための技術も、用いることができる(Skerraら、Science、242巻、1038〜1041頁(1988年))。
5.4 抗体を生成する方法
本発明の抗体は、抗体を合成するための当技術分野では周知のあらゆる方法により、特に化学合成により、または好ましくは組換え体の発現技術により生成することができる。
本発明の抗体、またはそのフラグメント、誘導体、もしくは類似体(例えば、本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖、または本発明の単鎖抗体)の組換え体の発現には、抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築が必要とされる。本発明の抗体分子、または抗体の重鎖もしくは軽鎖、またはその部分(重鎖もしくは軽鎖の可変領域を含むのが好ましい)をコードするポリヌクレオチドを得たら、抗体分子を生成するためのベクターを、当技術分野ではよく知られている技術を用いて組換えDNA技術により生成することができる。このようにヌクレオチド配列をコードする抗体を含むポリヌクレオチドを発現することによりタンパク質を調製するための方法を、本明細書に記載する。当業者にはよく知られている方法を使用して、抗体をコードする配列、ならびに好適な転写および翻訳の制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、in vitroの組換えDNA技術、合成技術、およびin vivoの遺伝子組換えが含まれる。したがって、本発明は、本発明の抗体分子、またはその重鎖もしくは軽鎖、またはプロモーターに操作可能に連結している重鎖もしくは軽鎖可変領域をコードしているヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供するものである。このようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むことができ(例えば、PCT公開WO86/05807、PCT公開WO89/01036、および米国特許第5,122,464号を参照されたい)、抗体の可変領域を、重鎖または軽鎖全体を発現させるためにそのようなベクター内にクローニングすることができる。
発現ベクターを従来の技術により宿主細胞中に移し、次いで、形質移入された細胞を従来の技術により培養して本発明の抗体を生成させる。したがって、本発明は、異種性のプロモーターに操作可能に連結している本発明の抗体、またはその重鎖もしくは軽鎖、または本発明の単鎖抗体をコードしているポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。2本鎖の抗体を発現させるための好ましい実施形態では、下記に詳しく述べるように、免疫グロブリン分子全体を発現させるために、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターを宿主細胞で同時発現させることができる。
様々な宿主発現のベクターシステムを利用して、本発明の抗体分子を発現させることができる。このような宿主発現のシステムは、それによって対象のコード配列が生成され引き続き精製され得るビヒクルを表すが、好適なヌクレオチドコード配列で形質転換され、または形質移入された場合にin situで本発明の抗体分子を発現することができる細胞も表す。これらには、限定するものではないが、抗体をコードする配列を含む組換え体のバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAの発現ベクターで形質転換した細菌(例えば、大腸菌、枯草菌(B.subtilis));抗体をコードする配列を含む組換え体の酵母菌発現ベクターで形質転換した酵母菌(yeast)(例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア(Pichia))などの微生物;抗体をコードする配列を含む組換えのウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス(baculovirus))で感染させた昆虫の細胞系;組換えのウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染させた、または抗体をコードする配列を含む組換えのプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)、または哺乳動物のウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルスの7.5Kプロモーター)を含む組換えの発現構築物を内部に持つ哺乳動物の細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、NS0、3T3、PerC6細胞)が含まれる。好ましくは大腸菌などの細菌の細胞、より好ましくは特に組換えの抗体分子全体を発現させるための真核生物の細胞を、組換えの抗体分子を発現させるために用いる。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物の細胞は、ヒトサイトメガロウイルスからの主要な中間体の初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと組み合わせて、抗体に対する効果的な発現システムとなっている(Foeckingら、Gene、45巻101頁(1986年)、Cockettら、Bio/Technology、8巻、2頁(1990年))。また、例えば、米国特許第5,827,739号、第5,879,936号、第5,981,216号、および第5,658,759号も参照されたい。
細菌系では、発現される抗体分子に意図される使用に応じて、数々の発現ベクターを選択するのが有利であり得る。例えば、大量のこのようなタンパク質を生成しようとする場合、抗体分子の薬剤組成物を産生するために、精製の容易な融合タンパク質生成物を高レベルで発現することを目的としたベクターが、望ましいことがある。このようなベクターには、限定するものではないが、大腸菌の発現ベクターpUR278(Rutherら、EMBO J.、2巻、1791頁(1983年))(このベクターでは、抗体をコードする配列がlacZコード領域のあるフレームにおけるベクター内に個々に連結することがあり、その結果融合タンパク質が生成する)、pINベクター(InouyeおよびInouye、Nucleic Acids Res.、13巻、3101〜3109頁(1985年);Van HeekeおよびSchuster、J.Biol.Chem.、24巻、5503〜5509頁(1989年))などが含まれる。グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来のポリペプチドを発現させるのに、pGEXベクターも用いることができる。一般的に、このような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスのグルタチオン−アガロースビーズへ吸着させ、結合させ、その後、遊離のグルタチオンの存在下で溶出することにより、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビンまたはファクターXaのプロテアーゼ切断部位を含むようにデザインされており、その結果クローニングされた標的の遺伝子生成物をGST部分から放出することができる。
昆虫のシステムでは、外来の遺伝子を発現するためのベクターとして、オートグラファカリフォルニア(Autographa californica)核多角体ウイルス(AcNPV)を用いる。このウイルスは、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)の細胞内で成長する。抗体をコードする配列を、ウイルスの非必須の領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)内に個々にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下におくことができる
哺乳動物の宿主細胞では、数々のウイルスベースの発現システムを利用することができる。アデノウイルス(adenovirus)を発現ベクターとして用いる場合は、抗体をコードする対象の配列を、アデノウイルスの転写/翻訳の制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび3分裂のリーダー配列に連結することができる。このキメラ遺伝子を、次いで、in vitroまたはin vivoの組換えによりアデノウイルスのゲノムに挿入することができる。ウイルスのゲノムの必須ではない領域(例えば、E1またはE3領域)における挿入により、生存可能で、感染した宿主に抗体分子を発現することができる組換えウイルスがもたらされる(例えば、LoganおよびShenk、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81巻、355〜359頁(1984年)を参照されたい)。挿入された抗体をコードする配列を効果的に翻訳するために、特定の開始シグナルも必要とされることがある。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接の配列が含まれる。さらに、挿入物全体の翻訳を確実にするために、開始コドンは、望ましいコード配列の読み枠と相が合ってなければならない。これらの外因性の翻訳制御シグナルおよび開始コドンの起源は、天然および合成両方の様々であり得る。発現の有効性は、好適な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含むことにより増強され得る(Bittnerら、Methods in Enzymol.、153巻、51〜544頁(1987年)を参照されたい)。
さらに、挿入された配列の発現をモデュレートし、または望ましい特定の様式で遺伝子生成物を修飾し、加工する宿主細胞の系統を選択することができる。このような、タンパク質生成物の修飾(例えば、グリコシル化)および加工(例えば、切断)は、タンパク質の機能に重要であり得る。タンパク質および遺伝子生成物の翻訳後の加工および修飾に関して、様々な宿主細胞が、特徴的かつ特異的な機序を有している。発現された外来のタンパク質の正確な修飾および加工を確実にするために、好適な細胞系または宿主のシステムを選択することができる。この目的のために、主要な転写物の適切な加工、グリコシル化、および遺伝子生成物のリン酸化のための細胞の機構を有する真核生物の宿主細胞を用いることができる。このような哺乳動物の宿主細胞には、限定するものではないが、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、NS0、Per.C6、ならびに、特に、乳癌細胞系(例えば、BT483、Hs578T、HTB2、BT20、およびT47D)、および正常の乳腺細胞系(例えば、CRL7030およびHs578Bst)が含まれる。
組換え体のタンパク質を、長期間、高収率で生成するために、安定した発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定して発現する細胞系を設計することができる。ウイルス起源の複製を含む発現ベクターを用いるよりも、むしろ、宿主細胞を、好適な発現制御因子(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)、および選択可能なマーカーにより制御されているDNAで形質転換することができる。外来のDNAを導入した後、設計した細胞を、増殖培地で1〜2日間増殖させてもよく、次いで、選択培地に切り替える。組換え体のプラスミドにおける選択可能なマーカーは、選択に対する抵抗性を与え、細胞に安定にプラスミドをその染色体内に組み込ませ、増殖して病巣を形成させ、今度はその病巣をクローニングして細胞系内に拡張することができる。この方法を用いて、抗体分子を発現する細胞系を設計すると有利であり得る。このように設計された細胞系は、抗体分子と直接的にまたは間接的に相互作用する化合物をスクリーニングし、評価するのに、特に有用であり得る。
限定するものではないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell、11巻、223頁(1977年))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska およびSzybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、48巻、202頁(1992年)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell、22巻、817頁(1980年)を含む数々の選択システムを使用することができ、遺伝子を、tk−、hgprt−、またはaprt−細胞でそれぞれ使用することができる。また、以下の遺伝子を選択する基準として、代謝拮抗物質耐性を用いることができる:メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wiglerら、Proc Natl.Acad.Sci.USA、77巻、357頁(1980年)、O'Hareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78巻、1527頁(1981年))、ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(MulliganおよびBerg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78巻、2072頁(1981年))、アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo(Clinical Pharmacy、12巻、488〜505頁;WuおよびWu、Biotherapy、3巻、87〜95頁(1991年);Tolstoshev、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.、32巻、573〜596頁(1993年);Mulligan、Science、260巻、926〜932頁(1993年)、ならびにMorganおよびAnderson、Ann.Rev.Biochem.、62巻、191〜217頁(1993年)1993年5月、TIB TECH、11巻(5)、155〜215頁)、ならびにハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerreら、Gene、30巻、147頁(1984年))。組換えDNAの技術分野では一般的に知られている方法を日常的に適用して、望ましい組換えのクローンを選択することができ、そのような技術は、例えば、Ausubelら(編集)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク州(1993年);Kriegler、Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual、Stockton Press、ニューヨーク州(1990年);および第12章および第13章、Dracopoliら(編集)、Current Protocols in Human Genetics、John Wiley & Sons、 ニューヨーク州(1994年)、Colberre-Garapinら、J.Mol.Biol.、150巻、1頁(1981年)に記載されている。
ベクターの増幅により、抗体分子の発現レベルを増大することができる(再考には、BebbingtonおよびHentschel、「The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning」、第3巻(Academic Press、ニューヨーク、1987年を参照されたい)。抗体を発現するベクター系におけるマーカーが増幅可能な場合には、宿主細胞の培養物に存在する阻害物質のレベルが増大すると、マーカー遺伝子のコピー数が増大する。増幅した領域は抗体遺伝子と関連しているので、抗体の生成も増大する(Crouseら、Mol.Cell.Biol.、3巻、257頁(1983年))。
宿主細胞を、第1のベクターが重鎖由来のポリペプチドをコードし、第2のベクターが軽鎖由来のポリペプチドをコードする、本発明の2つの発現ベクターと同時形質移入することができる。2つのベクターは、重鎖および軽鎖のポリペプチドの同等の発現を可能にする同一の選択可能なマーカーを含むことができる。あるいは、重鎖および軽鎖両方のポリペプチドをコードし、発現することができる単一のベクターを使用することができる。そのような場合には、毒性の遊離の重鎖が過剰になるのを防ぐために、軽鎖を重鎖の前に配置すべきである(Proudfoot、Nature、322巻、562頁、(1986年)、Kohler、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77巻、2197頁(1980年))。重鎖および軽鎖に対するコード配列は、cDNAまたはゲノムのDNAを含むことができる。
本発明の抗体分子が動物によって生成され、化学的に合成され、または組換えで発現されたら、免疫グロブリン分子の精製の技術分野で周知のあらゆる方法により、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特にタンパク質Aの後の特異的な抗原に対するアフィニティーにより、およびサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解性の差、またはタンパク質を精製するためのあらゆる他の標準の技術により精製することができる。さらに、本発明の抗体、またはそのフラグメントを、本明細書に記載され、またはさもなければ当技術分野では知られている異種性のポリペプチド配列に融合して、精製を促進することができる。
さらに、本発明の抗体またはそのフラグメントは、精製を促進するために、ペプチドなどのマーカー配列に融合することができる。ある実施形態では、マーカーのアミノ酸配列は、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif.、91311)で提供されるタグなどの、ヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、数ある中でその多くが市販されている。例えば、Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86巻、821〜824頁(1989年)に記載されているように、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の便利な精製をもたらす。精製に有用な他のペプチドタグには、限定するものではないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する「HA」タグ(Wilsonら、Cell、37巻、767頁(1984年))、および「flag」タグが含まれる。
5.5 抗体複合体および誘導体
本発明の抗体には、修飾された(例えば、あらゆるタイプの分子の抗体への共有結合により)誘導体が含まれる。例えば、限定的なものではないが、抗体の誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、周知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解性の切断、細胞のリガンドまたは他のタンパク質への連結などにより修飾されている抗体が含まれる。限定するものではないが、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含む周知の技術により、あらゆる数々の化学的修飾が行われ得る。さらに、誘導体は、1つまたは複数の非古典的なアミノ酸を含むことができる。
前記抗体または抗体フラグメントを、高分子量のポリエチレングリコール(PEG)などのポリマー分子に付着させることにより、in vivoの半減期の長い抗体またはそのフラグメントを産生することができる。PEGは、前記抗体または抗体フラグメントのN−またはC−末端へのPEGの部位特異的な複合により、あるいはリジン残基上に存在するε−アミノ基により、多機能性のリンカーで、またはそれなしで、前記抗体または抗体フラグメントに付着することができる。生物学的活性の最小の損失をもたらす直鎖または分枝ポリマー誘導体化が使用される。複合の程度を、SDS−PAGEおよび質量分析により厳密にモニターして、確実にPEG分子が抗体へ適切に複合するようにする。非反応のPEGを、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーにより、抗体−PEG複合体から分離することができる。
さらに、抗体または抗体フラグメントを、in vivoでより安定にするために、またはin vivoの半減期を長くするために、抗体をアルブミンに複合させることができる。その技術は、当技術分野ではよく知られており、例えば、国際公開WO93/15199、WO93/15200、およびWO01/77137、ならびに欧州特許EP413,622を参照されたい。本発明は、限定するものではないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、小分子、擬似物質、合成の薬物、無機分子、および有機分子を含む、1つまたは複数の部分に複合し、または融合している抗体またはそのフラグメントの使用を包含する。
一実施形態では、本発明は、融合タンパク質を産生するために異種性のタンパク質またはポリペプチド(またはそれらのフラグメント、特に、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、または少なくとも100個のアミノ酸のポリペプチド)に、組換えで融合し、または化学的に複合している(共有結合および非共有結合の両方を含む)抗体またはそのフラグメントの使用を包含する。別の一実施形態では、本発明は、融合タンパク質を産生するために異種性のタンパク質またはポリペプチド(またはそれらのフラグメント、特に、少なくとも約10個、少なくとも約20個、少なくとも約30個、少なくとも約40個、少なくとも約50個、少なくとも約60個、少なくとも約70個、少なくとも約80個、少なくとも約90個、または少なくとも約100個のアミノ酸のポリペプチド)に、組換えで融合し、または化学的に複合している(共有結合および非共有結合の両方を含む)抗体またはそのフラグメントの使用を包含する。融合は、必ずしも直接である必要はないが、リンカー配列を介して生じることができる。例えば、抗体は、in vitroまたはin vivoのいずれかで、抗体を特定の細胞表面受容体に特異的な抗体に融合し、または複合することにより、異種性のポリペプチドを特定の細胞型に標的にするのに用いられることがある。異種性のポリペプチドに融合し、または複合した抗体は、当技術分野では周知の方法を用いて、in vitroの免疫アッセイおよび精製方法で使用することもできる。例えば、国際公開WO93/21232、欧州特許EP439,095;Naramuraら、1994年、Immunol.Lett.、39巻、91〜99頁;米国特許第5,474,981号;Gilliesら、1992年、PNAS、89巻、1428〜1432頁、およびFellら、1991年、J.Immunol.、146巻、2446〜2452頁を参照されたい。
本発明は、抗体フラグメントに融合し、または複合している異種性のタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドを含む製剤をさらに含む。例えば、異種性のポリペプチドは、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、F(ab)2フラグメント、VHドメイン、VLドメイン、VHCDR、VLCDR、またはそれらのフラグメントに融合し、または複合することができる。ポリペプチドを抗体の部分に融合し、または複合するための方法は、当技術分野ではよく知られている。例えば、米国特許第5,336,603号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号、および第5,112,946号、欧州特許EP307,434、および367,166、国際公開WO96/04388、およびWO91/06570;Ashkenaziら、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88巻、10535〜10539頁、Zhengら、1995年、J.Immunol.、154巻、5590〜5600頁、およびVilら、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89巻、11337〜11341頁を参照されたい。
さらなる融合タンパク質、例えば、HMG1および/またはHMG2、あるいはそれらのフラグメント(例えば、上述)に特異的に結合する抗体を、遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エキソンシャフリング、および/またはコドンシャフリング(集合的に「DNAシャフリング」と呼ばれる)の技術により産生することができる。DNAシャフリングを使用して、本発明の抗体またはそのフラグメントの活性を変更することができる(例えば、親和性がより高く、解離速度のより低い抗体またはそのフラグメント)。一般的には、米国特許第5,605,793号、第5,811,238号、第5,830,721号、第5,834,252号、および第5,837,458号、ならびにPattenら、1997年、Curr.Opinion Biotechnol.、8巻、724〜33頁;Harayama、1998年、Trends Biotechnol.、16巻(2)、76〜82頁;Hanssonら、1999年、J.Mol.Biol.、287巻、265〜76頁、ならびにLorenzoおよびBlasco、1998年、Biotechniques、24巻(2)、308〜313頁を参照されたい。抗体もしくはそのフラグメント、またはコードされた抗体もしくはそのフラグメントは、組換えの前に、誤りがちなPCRによるランダム突然変異誘発、ランダムヌクレオチド挿入、またはその他の方法を受けさせることにより、変更することができる。抗体または抗体フラグメントをコードするポリヌクレオチドの1つまたは複数の部分を、C/CLPに特異的に結合し、1つまたは複数の異種性の分子の、1つまたは複数の成分、モチーフ、切片、部分、ドメイン、フラグメントなどと組換えてもよい。
さらに、本発明の抗体またはそのフラグメントを、精製を促進するために、ペプチドなどのマーカー配列に融合することができる。ある実施形態では、マーカーのアミノ酸配列は、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、CA.、91311)で提供されるタグなどの、ヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、数ある中でその多くが市販されている。例えば、Gentzら、1989年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86巻、821〜824頁に記載されているように、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の便利な精製をもたらす。精製に有用な他のペプチドタグには、限定するものではないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する赤血球凝集素「HA」タグ(Wilsonら、1984年、Cell、37巻、767頁)、および「flag」タグが含まれる。
本発明は、診断用の、または治療用の物質と複合している抗体またはそのフラグメントをさらに包含する。例えば、所与の処置レジメンの有効性を決定するために、臨床試験手順の一部分として、例えば、腫瘍の発症または進行をモニターするために、抗体を診断的に使用することができる。検出は、抗体を検出可能な物質に連結することにより促進され得る。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、様々なポジトロン放出断層撮影法を用いたポジトロン放出性金属、および非放射性の常磁性の金属イオンが含まれる。検出可能な物質は、抗体(もしくはそのフラグメント)に直接、または間接的に、中間体(例えば、当技術分野では周知のリンカーなど)を介して当技術分野では周知の技術を用いて連結し、または複合することができる。例えば、本発明による診断として使用するための抗体に複合することができる金属イオンについての、米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素の例には、西洋わさびのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが含まれ、適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチン、およびアビジン/ビオチンが含まれ、適切な蛍光材料の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライド、またはフィコエリトリンが含まれ、蛍光材料の例にはルミノールが含まれ、生物発光材料の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが含まれ、適切な放射性材料の例には、限定するものではないが、125I、131I、111In、または99Tcが含まれ、さらに様々なポジトロン放出断層撮影法を用いたポジトロン放出性金属、非放射性の常磁性の金属イオン、および放射標識された、または特定の放射性同位元素と複合した分子を、本発明の抗体と複合することができる。
さらに、本発明の抗体またはそのフラグメントは、細胞毒、例えば、細胞分裂停止の、もしくは細胞破壊的な物質;治療用物質;または放射活性の金属イオン、例えば、213Biなどのα放射体などの治療用部分と複合することができる。細胞毒、または細胞毒性物質には、細胞に有害であるあらゆる物質が含まれる。例として、パクリタキソール(paclitaxol)、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracindione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体またはホモログが含まれる。治療用物質には、限定するものではないが、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれる。治療用部分のより広範な列挙は、PCT公開WO03/075957に見ることができる。
本発明の複合体を、所与の生物学的反応を修飾するために用いることができ、治療用物質または薬物部分は、古典的な化学療法物質に限定されると解釈してはならない。例えば、薬物部分は、望ましい生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。そのようなタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナスの外毒素、またはジフテリア毒素などの毒;腫瘍壊死因子、αインターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来の成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アポトーシス物質、例えば、TNF−α、TNF−β、AIMI(国際公開WO97/33899を参照されたい)、AIMII(国際公開WO97/34911を参照されたい)、Fasリガンド(Takahashiら、Int.Immunol.、6巻1567〜1574頁(1994年))、VEGI(国際公開WO99/23105を参照されたい)、CD40リガンド、血栓性の物質、または抗血管形成物質、例えば、アンジオスタチン、またはエンドスタチンなどのタンパク質、あるいは、生物学的応答調節物質、例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の成長因子が含まれ得る。
抗体は、また、固体の支持体に付着していてもよく、これは、免疫アッセイ、または標的の抗原の精製に特に有用である。このような固体の支持体には、限定するものではないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンが含まれる。
このような治療用部分を抗体に複合させるための技術はよく知られており、例えば、Amonら、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapyの、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Reisfeldら(編集)、243〜56頁(Alan R.Liss,Inc.、1985年);Hellstromら、Controlled Drug Delivery(第2版)の「Antibodies For Drug Delivery」Robinsonら(編集)、623〜53頁(Marcel Dekker,Inc.、1987年);Thorpe、Monoclonal Antibodies'84:Biological And Clinical Applicationsの、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Pincheraら(編集)、475〜506頁(1985年);Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapyの、「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」、Baldwinら(編集)、303〜16頁(Academic Press、1985年)、ならびにThorpe ら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.、62巻、119〜58頁(1982年)を参照されたい。
本発明の抗体は、他のポリペプチドと複合することができる。抗体をポリペプチド部分に融合し、または複合するための方法は当技術分野では知られている。例えば、米国特許第5,336,603号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号、および第5,112,946号、欧州特許EP307,434、EP367,166、PCT公開WO96/04388、およびWO91/06570;Ashkenaziら、1991年、PNAS USA、88巻10535頁;Zhengら、1995年、J Immunol 154巻、5590頁、ならびにVilら、1992年、PNAS USA、89巻、11337頁を参照されたい。抗体の部分への融合は、必ずしも直接である必要はないが、リンカー配列を介して生じることができる。このようなリンカー分子は、当技術分野では一般的に知られており、Denardoら、1998年、Clin Cancer Res、4巻、2483頁;Petersonら、1999年、Bioconjug Chem、10巻、553頁;Zimmermanら、1999年、Nucl Med Biol、26巻、943頁;Garnett、2002年、Adv Drug Deliv Rev、53巻171頁に記載されている。
あるいは、抗体は、Segalにより米国特許第4,676,980号に記載されているように、第2の抗体と複合して抗体のヘテロ複合体を形成することができる。
抗体は、それに複合している治療用部分があってもなくても、単独で投与し、あるいは細胞毒性因子および/またはサイトカインと組み合わせて治療用として用いることができる。
5.6 抗体結合性および活性に対するアッセイ
本発明の抗体は、当技術分野では周知のあらゆる方法により、特異的な(即ち、免疫特異的な)結合に対してアッセイすることができる。用いることができる免疫アッセイには、いくつかを挙げると、限定するものではないが、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光免疫アッセイ、タンパク質A免疫アッセイなどの技術を用いた競合的および非競合的のアッセイ系が含まれる。これらのアッセイは日常的であり、当技術分野ではよく知られている(例えば、Ausubelら編集、1994年、Current Protocols in Molecular Biology第1巻、John Wiley & Sons,Inc、ニューヨークを参照されたい)。例示の免疫アッセイを、以下に簡潔に記載する(が、限定的なものを意図するものではない)。
免疫沈降法のプロトコールは、細胞の集団を、タンパク質のホスファターゼおよび/またはプロテアーゼ阻害物質(例えば、EDTA、PMSF、アプロチニン、バナジン酸ナトリウム)を補ったRIPAバッファー(1%NP−40またはTritonX−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、0.15M NaCl、0.01Mリン酸ナトリウム、pH7.2、1%Trasylol)などの溶解バッファーに溶解し、対象の抗体を細胞可溶化物に加え、ある期間(例えば、1〜4時間)4℃でインキュベートし、細胞可溶化物にタンパク質Aおよび/またはタンパク質Gセファロースビーズを加え、4℃で約1時間またはそれを超えてインキュベートし、溶解バッファー中でビーズを洗浄し、ビーズをSDS/サンプルバッファーに再懸濁することを一般的に含む。対象の抗体が特定の抗原を免疫沈降させる能力は、例えば、ウェスタンブロット分析により評価することができる。当業者であれば、抗体の抗原に対する結合を増大するように修飾し、バックグラウンドを低減する(例えば、セファロースビーズで細胞可溶化物を予洗浄する)ために修飾することができるパラメータに関して知っている。免疫沈降法のプロトコールに関するさらなる検討については、例えば、Ausubelら編集、1994年、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons,Inc.ニューヨークの、10.16.1を参照されたい。
ウェスタンブロット分析は、タンパク質サンプルを調製し、ポリアクリルアミドゲル(例えば、抗原の分子量に応じて、8%〜20%SDS−PAGE)でタンパク質サンプルを電気泳動し、タンパク質サンプルをポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース、PVDF、またはナイロンなどの膜に移し、ブロッキング溶液(例えば、3%BSAまたは無脂肪ミルクを含むPBS)で膜をブロックし、洗浄バッファー(例えば、PBS−Tween20)で膜を洗浄し、ブロッキングバッファーで希釈した1次抗体(対象の抗体)で膜をブロックし、洗浄バッファーで膜を洗浄し、ブロッキングバッファーで希釈した酵素基質(例えば、西洋わさびのペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ)または放射性分子(例えば、32Pまたは125I)に複合させた2次抗体(1次抗体、例えば、抗ヒト抗体を認識する)で膜をブロックし、膜を洗浄バッファーで洗浄し、抗原の存在を検出することを一般的に含む。当業者であれば、検出されたシグナルを増大し、バックグラウンドのノイズを低減するように修飾することができるパラメータに関して知っている。ウェスタンブロットプロトコールに関するさらなる考察については、Ausubelら編集、1994年、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨークの、10.8.1を参照されたい。
ELISAは、抗原を調製し、抗原で96ウェルのマイクロタイタープレートのウェルをコーティングし、酵素基質などの検出可能な化合物(例えば、西洋わさびのペルオキシダーゼ、またはアルカリホスファターゼ)に複合している対象の抗体をウェルに加え、ある期間インキュベートし、抗原の存在を検出することを含む。ELISAでは、対象の抗体は、検出可能な化合物に複合している必要はなく、その代わりに検出可能な化合物に複合している第2の抗体(対象の抗体を認識する)をウェルに加えることができる。さらに、ウェルを抗原でコーティングする代わりに、抗体でウェルをコーティングしてもよい。この場合には、検出可能な化合物に複合している第2の抗体を、コーティングしたウェルに対象の抗原を加えた後に加えることができる。当業者であれば、当技術分野で周知のELISAの他の変形同様、検出されたシグナルを増大するために修飾することができるパラメータに関して知っている。ELISAに関するさらなる考察については、例えば、Ausubelら編集、1994年、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨークの、11.2.1を参照されたい。
抗体の抗原に対する結合親和性および他の結合の特性(例えば、抗体−抗原相互作用の解離速度)を、例えば、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA;もしくはラジオイムノアッセイ(RIA))、または動態学(例えば、BIACORE(登録商標)分析)、およびその他の方法、例えば、間接結合アッセイ、競合的結合アッセイ蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、ゲル電気泳動、およびクロマトグラフィー(例えば、ゲルろ過)を含めた、当技術分野ではよく知られている様々なin vitroのアッセイ方法により決定することができる。これらの、および他の方法は、試験される成分の1つまたは複数の上の標識を利用することができ、かつ/または限定するものではないが、色素生産性、蛍光、発光、または同位体の標識を含む様々な検出方法を使用することができる。結合親和性および動態学の詳しい記載は、抗体−免疫原相互作用に焦点を当てたPaul,W.E.編集、Fundamental Immunology第4版、Lippincott-Raven、Philadelphia(1999年)に見ることができる。競合的結合アッセイの一例に、増大する量の非標識の抗原の存在下で標識した抗原を対象の抗体とインキュベートし、標識した抗原に結合した抗体を検出することを含むラジオイムノアッセイがある。対象の抗体の特定の抗原に対する親和性、および結合の解離速度は、スキャッチャードプロット分析によるデータから決定することができる。第2の抗体との競合は、また、ラジオイムノアッセイを用いて決定することができる。この場合は、量の増大する非標識の第2の抗体の存在下で、標識した化合物と複合した対象の抗体と抗原をインキュベートする。他の特定の方法が本明細書に開示してあり、下記実施例2〜4を参照されたい。
本発明の抗体は、当技術分野では周知のあらゆる方法により生物学的活性をアッセイすることができる。
本発明のプロトコールおよび製剤は、ヒトで使用する前に、望ましい治療上のまたは予防上の活性について、in vitroで、次いでin vivoで試験するのが好ましい。例えば、特定の治療用のプロトコールの製剤の投与、または本発明の組合せ治療のどちらを指摘するかを決定するのに用いることができるin vitroのアッセイには、患者の組織サンプルを培養液中で増殖させ、本発明の製剤に曝露し、またはさもなければ接触させ、そのような製剤の組織サンプルに対する効果を観察するin vitroの細胞培養アッセイが含まれる。組織サンプルは、患者から生検により得ることができる。この試験により、各個人の患者に治療上最も有効な予防用または治療用の物質を同定することが可能になる。様々な特定の実施形態では、in vitroのアッセイを、自己免疫障害、炎症性障害、HMG1および/またはHMG2の異常な発現、および/または活性に付随する障害に関与する細胞型の代表的な細胞で行って、本発明の製剤が、そのような細胞型に対して望ましい効果を有するか否かを決定することができる。例えば、HMG1および/もしくはHMG2、ならびに/または接触した細胞が生成する炎症促進性サイトカインのレベルが低いほど、本発明の組成物が、患者における状態を処置するのに有効であり得ることを示している。あるいは、患者からの細胞を培養する代わりに、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)、THP−1細胞、またはマクロファージ(Mφ)などの、HMG1および/またはHMG2により刺激され得る細胞を用いて本発明の製剤をスクリーニングすることができる。ELISAアッセイ、リアルタイムPCR、および当技術分野ではよく知られている他の方法を含む、当技術分野では標準の多くのアッセイを用いて、サイトカインの生成を評価することができる。特定の方法を、また、本明細書に開示する(下記実施例2および6を参照されたい)。
予防用または治療用の物質を、ヒトで試験する前に、限定するものではないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、ハムスターなどを含む適切な動物モデルシステムで試験することができる。
当技術分野で知られており、広く使われている主要な動物モデルは、上記に記載したように当技術分野では周知であり、記載されている。さらに、敗血症(実施例5を参照されたい)、腹膜炎(実施例10を参照されたい)、および関節炎(実施例7〜9を参照されたい)に対する特定の動物モデルを、本明細書に開示する。
さらに、当業者には周知のあらゆるアッセイを用いて、炎症性疾患の処置または予防のために本明細書に開示する組合せ療法の予防的および/または治療的有用性を評価することができる。
5.7 本発明の抗体、抗体組成物、ならびにその治療的および/または予防的投与
本発明は、本明細書に記載する抗HMG1抗体を包含し、本明細書で「本発明の抗体組成物」、「本発明の組成物」、または、より簡単に「組成物」と呼ぶ抗体組成物も目的としている。ある実施形態では、本発明の組成物は、本発明の抗体を、薬学的に許容できる賦形剤中に含む。本明細書で用いる「薬学的に許容できる担体」という用語は、本発明の抗体をそれと組み合わせることができ、組み合わせた後、対象に本発明の抗体を投与するのに用いることができる化学組成物を意味する。これらの抗体組成物は、本明細書では、「薬剤組成物」とも呼ぶ。他の実施形態では、本発明の組成物である。
本発明は、本発明の抗体または薬剤組成物の治療上有効な量を投与することを含む、急性および慢性両方の炎症状態を含む、炎症性サイトカインカスケードの活性化を特徴とする状態を処置するための方法をさらに含む。慢性の炎症状態は、しばしば永久である組織の損傷をもたらす、長期間の、即ち、数週間、数カ月、または無期限の炎症反応を特徴とする。慢性の炎症状態には、限定するものではないが、関節炎(例えば、関節リウマチ)、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、およびクローン病)、胆嚢炎が含まれる。急性の炎症状態は、通常、血管透過性の増大、浮腫、しばしば組織の壊死をもたらし、死をもたらすことがある全身性の熱を含む症状の急激な発症を特徴とする。急性の炎症状態には、限定するものではないが、敗血症(例えば、微生物の感染による)、過敏性反応、組織壊死、および虫垂炎が含まれる。この状態は、炎症性サイトカインカスケードが、内毒素性ショックなどとともに全身性の反応を引き起こすものであり得る。あるいは、この状態は、関節リウマチにおけるように、局在性の炎症性サイトカインカスケードが媒介することがある。
一実施形態では、本発明の組成物は、HMG1のAボックス(例えば、配列番号4、28、29内のエピトープ)に特異的に結合する高親和性抗体を含む。別の一実施形態では、組成物は、HMG1のBボックス(例えば、配列番号4内のエピトープ)に特異的に結合する本発明の高親和性抗体を含む。なお別の一実施形態では、本発明の組成物は、HMG2のAボックス(例えば、配列番号22内のエピトープ)に特異的に結合する高親和性抗体を含む。別の一実施形態では、組成物は、HMG2のBボックス(例えば、配列番号23内のエピトープ)に特異的に結合する本発明の高親和性抗体を含む。
上記に記載したように、HMG1シグナリングは、RAGEにより、およびTLRファミリーのタンパク質のメンバーにより、少なくとも部分的に媒介される。AボックスおよびBボックスの両方とも、受容体の結合およびシグナリングで役割を果たしている様子である。あらゆる特定の理論によって拘泥しようとするものではないが、したがって、Aボックスに特異的に結合する抗体(または他の拮抗物質)と、Bボックスに特異的に結合する抗体(または他の拮抗物質)との組合せは、HMG1がRAGEおよび/またはTLRタンパク質に結合するのを効果的に阻止することが企図される。したがって、本発明の組成物は、本発明の高親和性抗体(または他のHMGB1抗体もしくは拮抗物質)の組合せ、例えば、限定するものではないが、HMG1Aボックスに特異的に結合する抗体と、HMG1Bボックスに特異的に結合する抗体との組合せ、またはHMG2Aボックスに特異的に結合する抗体と、HMG2Bボックスに特異的に結合する抗体との組合せを含むことができる。特定の一実施形態では、組成物は、HMG1のAボックスおよびBボックスの両方に由来するエピトープ(例えば、AボックスとBボックスとの間の接合にまたがるエピトープ)に特異的に結合する本発明の高親和性抗体を含む。
本発明の組成物は、本発明の高親和性抗体を単独で、あるいは他の活性の治療用分子、および/またはステロイド、他の抗炎症性分子、もしくは他の抗体の治療法などの補助薬と組み合わせて含むことができる。より詳しくは、本発明の組成物は、初期敗血症メディエータの拮抗物質を含むことができる。初期敗血症メディエータの拮抗物質は、一実施形態では、TNF、IL−1α、IL−1β、MIF、およびIL−6から成る群から選択されるサイトカインの拮抗物質である。特定の一実施形態では、初期敗血症メディエータの拮抗物質は、TNFもしくはMIFに対する抗体、またはIL−1受容体拮抗物質である。
一実施形態では、本発明の薬剤組成物は、本質的に内毒素および/または関連する発熱性物質のないパイロジェンフリーの製剤である。内毒素は、微生物の内側に閉じ込められている毒素を含み、微生物が分解しまたは死滅した場合にのみ放出される。発熱性物質は、また、細菌および他の微生物の外膜からの、発熱を誘発する、熱安定性の物質(糖タンパク質)を含む。これらの物質は両方とも、ヒトに投与した場合に、発熱、血圧低下、およびショックを引き起こし得る。潜在的に有害な効果があるので、少量の内毒素でも、静脈内投与する薬剤の薬物溶液から取り除かなければならない。食品医薬品局(「FDA」)は、静脈内への薬物適用に対して、1回1時間に1キログラム体重あたり1投与量につき、5内毒素単位(EU)の上限を設定している(The United States Pharmacopeial Convention,Pharmacopeial Forum、26巻(1)、223頁(2000年))。1キログラム体重あたり数百または数千ミリグラムの量の治療用タンパク質を投与する場合、モノクローナル抗体の場合と同じであり得るように、痕跡量であっても有害かつ危険な内毒素は除去しなければならない。ある特定の実施形態では、組成物における内毒素および発熱性物質のレベルは、10EU/mg未満、または5EU/mg未満、または1EU/mg未満、または0.1EU/mg未満、または0.01EU/mg未満、または0.001EU/mg未満である。
in vivoで投与するために用いる場合は、本明細書に記載した組成物は滅菌でなければならない。これは、例えば、滅菌のろ過膜を通したろ過により、または当技術分野ではよく知られている他の手段により、容易に遂行することができる。注射用の滅菌組成物は、Remington's Pharmaceutical Sciences(180' ed、Mack Publishing Company、Easton、ペンシルベニア州、1990年)に記載されている慣例の製薬上の実践に従って調合することができる。本明細書に開示されているものなどの抗体を含む組成物は、通常、凍結乾燥した形態で、または溶液で貯蔵される。本発明の抗体を含む滅菌の組成物は、滅菌のアクセスポート(access port)、例えば、皮下注射針により貫通することができるストッパーなど、製剤の回収を可能にするアダプターを有する静脈内の溶液バッグまたはバイアルを有する容器中に配置されることが企図される。
本発明の一実施形態では、本明細書に記載する組成物は、急性および慢性両方の炎症状態を含めた、炎症性サイトカインカスケードの活性化により媒介され、またはそれを特徴とする状態を阻害することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載する組成物は、急性の炎症状態(例えば、敗血症)の処置に有用である。別の特定の一実施形態では、本明細書に記載する組成物は、慢性の炎症状態(例えば、関節リウマチ)の処置に有用である。さらに別の一実施形態では、本明細書に記載する組成物は、急性および慢性両方の炎症状態の処置に有用である。
本発明の組成物は、炎症性サイトカインカスケードの活性化により媒介され、またはそれを特徴とする炎症状態を有する対象に投与した場合に保護的であることが企図される。本発明の組成物により付与される保護は、当技術分野でよく知られている方法により測定することができる。本発明の組成物がどのくらい保護的であるかを決定するために用いる方法は、処置され、かつ/または予防される状態、ならびに試験される測定に応じて様々である。例えば、齧歯動物の関節炎モデルにおいて、本発明の組成物で処置した動物の、好適なコントロールの組成物で処置した動物との足の炎症スコア比較を用いて、本発明の組成物がどのくらい保護的であるかを決定することができる。敗血症のCLPモデルでは、本発明の組成物で処置した動物と、好適なコントロールの組成物で処置した動物との生存の比較を用いて、抗体処置により付与された保護を決定することができる。一般的に、本発明の組成物での処置を、あるコントロールの処置と比較する。例えば、コントロールの処置は、コントロールの抗体を含むこともあり、賦形剤だけを含むこともある。いくつかの場合では、コントロールは、例えば、関節炎の処置に対するメトトレキセートまたは抗TNF(例えば、Enbrel、Humira)のように、疾患の処置の標準の手当て(または好適な代用分子)であってもよい。いくつかの場合では、コントロールは陰性コントロール(例えば、PBS)であってもよい。コントロールが標準の手当てを意味する場合、本発明の組成物を、単独で、または標準の手当ての処置、および比較される各群に対する保護のレベルと組み合わせて投与することができる。コントロールの選択は、処置および/または予防される状態、ならびに試験される測定を含む要因に依存し、当業者であれば容易に決定することができる。本発明の組成物が付与する保護を決定するための方法の特定の例を、本明細書に提供する(下記、実施例7〜11を参照されたい)。
本発明の別の一実施形態では、本明細書に記載した組成物は、動物のCLP敗血症モデルにおいて、コントロールの組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)保護的である。特定の一実施形態では、本明細書に記載した組成物は、マウスCLPモデル、および仔ブタCLPモデルを含む群から選択される動物CLP敗血症モデルにおいて、コントロールの組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)保護的である。別の特定の一実施形態では、動物CLPモデルはマウスCLPモデルである。
本発明のなお別の一実施形態では、本明細書に記載した組成物は、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデルにおいて、コントロールの組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)保護的である。特定の一実施形態では、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデルは、受動的コラーゲン誘発性関節炎モデルである。別の特定の一実施形態では、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデルは、能動的コラーゲン誘発性関節炎モデルである。
本発明のさらに別の一実施形態では、本明細書に記載した組成物は、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデルにおいて、Renbrel(登録商標)(メトトレキセートを含むものまたは含まないもの)よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)保護的である。特定の一実施形態では、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデルは、受動的コラーゲン誘発性関節炎モデルである。別の特定の一実施形態では、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデルは、能動的コラーゲン誘発性関節炎モデルである。
本発明のなお別の一実施形態では、本明細書に記載する組成物は、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデルにおいて、コントロールの組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)骨の損失および/または軟骨の損傷を減少させる。特定の一実施形態では、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデルは、受動的コラーゲン誘発性関節炎モデルである。別の特定の一実施形態では、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデルは、能動的コラーゲン誘発性関節炎モデルである。
他の実施形態では、本明細書に記載した組成物は、ラットアジュバント誘発性関節炎モデルにおいて、コントロールの組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)保護的である。
本発明のなお他の実施形態では、本明細書に記載した組成物は、ラットアジュバント誘発性関節炎モデルにおいて、Renbrel(登録商標)(メトトレキセートを含むものまたは含まないもの)よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)保護的である。
本発明のさらに他の実施形態では、本明細書に記載した組成物は、ラットアジュバント誘発性関節炎モデルにおいて、コントロールの組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)骨の損失および/または軟骨の損傷を減少させる。
本発明の別の一実施形態では、本明細書に記載した組成物は、ヒトにおいてEnbrel(登録商標)(メトトレキセートを含むものまたは含まないもの)よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)保護的である。
本発明のさらに別の一実施形態では、本明細書に記載した組成物は、マウス腹膜炎モデルにおいて、コントロールの組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)保護的である。
本発明のなお別の一実施形態では、本明細書に記載した組成物は、ヒトにおいて、または齧歯動物SCIモデルにおいて、コントロールの組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)脊髄損傷(SCI)の重症度を改善する。
本発明のなお別の一実施形態では、本明細書に記載した組成物は、ヒトにおいて、または齧歯動物ALIモデルにおいて、コントロールの組成物よりも、(少なくとも10%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)急性肺傷害(ALI)の重症度を改善する。
本発明は、また、哺乳動物の細胞からの炎症促進性サイトカインの放出を阻害する方法を目的とする。この方法は、細胞から炎症促進性サイトカインの放出を阻害するのに十分な量の、本発明の抗体または抗体組成物で細胞を処置することを含む。これらの実施形態では、細胞はマクロファージであるのが好ましい。ある実施形態では、炎症促進性サイトカインは、TNF、IL−1α、IL−1β、MIF、およびIL−6から成る群から選択される。他の実施形態では、細胞はマクロファージであり、炎症促進性サイトカインは、TNF、IL−1α、IL−1β、MIF、およびIL−6から成る群から選択される。なお他の実施形態では、細胞はPBMCであり、炎症促進性サイトカインは、TNF、IL−1α、IL−1β、MIF、およびIL−6から成る群から選択される。一実施形態では、この方法は、炎症性サイトカインカスケードの活性化を特徴とする状態に罹患し、またはその危険性のある患者における細胞を処置するものである。特定の状態は、本明細書に列挙してある。
本発明は、また、哺乳動物の細胞からHMG1および/またはHMG2の放出を阻害する方法を目的とする。この方法は、細胞からHMG1および/またはHMG2の放出を阻害するのに十分な量の本発明の抗体または抗体組成物で、細胞を処置することを含む。この方法は、炎症性サイトカインカスケードの活性化を特徴とする状態に罹患し、またはその危険性のある患者における細胞を処置することが好ましい。好ましい状態は、本明細書に列挙してある。
サイトカイン、HMG1、および/またはHMG2の放出の阻害を決定する方法は、上記に記載し、本明細書に開示してあるものなど、当技術分野ではよく知られている多くの方法により決定することができる(下記、実施例2〜11を参照されたい)。
本明細書で用いられる「治療上有効な量」、「十分な量」などの語は、HMG1および/またはHMG2が媒介する疾患または障害を処置し、または管理するのに十分な、本発明のHMG1抗体組成物などの治療用物質の量を意味する。治療上有効な量は、疾患の発症を遅らせ、または最小化するのに、例えば、疾患の重症度を遅らせ、または最小化するのに十分な治療用物質の量を意味することができる。治療上有効な量は、炎症性疾患の処置または管理において治療上の利点を提供する治療用物質の量も意味することができる。さらに、本発明の薬剤組成物に関して治療上有効な量は、炎症性疾患などの疾患の処置または管理において治療上の利点を提供する、単独の、または他の治療と組み合わせた治療用物質の量を意味する。
本発明は、炎症性疾患、または1つもしくは複数のその症状を予防し、管理し、処置し、または改善する方法をさらに提供し、前記方法は、本発明の抗体組成物および/または1つもしくは複数の治療を、それを必要とする患者に投与することを含む。有用であることが知られているあらゆる物質または治療法、あるいは炎症性疾患、または1つもしくは複数のその症状を予防し、管理し、処置し、または改善するために用いられていた、または現在用いられているあらゆる物質または治療法を、本発明の抗体組成物と組み合わせて用いることができる。そのような物質の例には、限定するものではないが、免疫調節性の物質、血管新生阻害剤、抗炎症物質、およびTNF−α拮抗物質が含まれる。
抗体組成物、即ち本発明の薬剤組成物を用いて有用に処置することができる状態の非限定的な例には、本明細書の背景のセクションおよび以下に列挙するこれらの状態が含まれる。好ましくは、状態は、虫垂炎、消化性、胃、もしくは十二指腸の潰瘍、腹膜炎、膵臓炎、潰瘍性、偽膜性、急性もしくは虚血性の腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ホイップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再潅流傷害、臓器壊死、枯草熱、敗血症、敗血症(septicemia)、内毒素性ショック、悪液質、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、感染流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、COPD、鼻炎、嚢胞性繊維症、肺炎、肺限外顕微鏡的間質性肺炎、アルベアリティス(alvealitis)、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、散在性細菌、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日焼け、蕁麻疹、いぼ、膨疹、ヴァスリティス(vasulitis)、脈管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化、再狭窄、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、脳梗塞、脳塞栓症、ギランバレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ぶどう膜炎、関節炎症、関節痛、骨膜炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、スリオイディティス(thryoiditis)、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植片拒絶反応、移植片対宿主病、I型糖尿病、強直性脊椎炎、ベルガー(Berger’s)病、I型糖尿病、強直性脊椎炎、ライター症候群、またはホジキン病である。より好ましい実施形態では、状態は、虫垂炎、消化性、胃、もしくは十二指腸の潰瘍、腹膜炎、膵臓炎、潰瘍性、偽膜性、急性もしくは虚血性の腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再潅流傷害、臓器壊死、枯草熱、敗血症、敗血症(septicemia)、内毒素性ショック、悪液質、感染流産、散在性細菌、熱傷、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓症、脊髄損傷、麻痺、同種移植片拒絶反応、または移植片対宿主病である。
好ましい一実施形態では、本発明は、虫垂炎、消化性、胃、および十二指腸の潰瘍、腹膜炎、膵臓炎、潰瘍性、偽膜性、急性および虚血性の腸炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、関節リウマチ、臓器虚血、再潅流傷害、臓器壊死、枯草熱、敗血症、敗血症(septicemia)、内毒素性ショック、悪液質、感染流産、散在性細菌、熱傷、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳塞栓症、脊髄損傷、麻痺、同種移植片拒絶反応、または移植片対宿主病から成る群から選択される状態を処置および/または予防するための、本発明の組成物および抗体を投与し、用いる方法を目的とする。最も好ましい実施形態では、状態は内毒素性ショック、または同種移植片拒絶反応である。状態が同種移植片拒絶反応である場合は、組成物には、シクロスポリンなど、同種移植片拒絶反応を阻害するのに用いられる免疫抑制薬も含まれると有利であり得る。
本発明の特定の好ましい一実施形態は、敗血症および関節炎(例えば、RA、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ)を処置および/または予防するために、本発明の組成物および抗体を投与し、用いる方法を目的とする。さらに、本発明の特定の好ましい一実施形態は、乾癬および強直性脊椎炎を処置および予防するために、本発明の組成物および抗体を投与し、用いる方法を目的とする。
本発明の別の特定の好ましい一実施形態は、再狭窄、血管疾患、および心臓血管疾患を処置および予防するために、本発明の組成物および抗体を投与し、用いる方法を目的とする。
本発明のさらに別の特定の好ましい一実施形態は、組織の損傷を処置および予防するために、かつ組織の修復および再生を促進するために、本発明の組成物および抗体を投与し、用いる方法を目的とする。
上記で論じたように、炎症性疾患、または1つもしくは複数のその症状を予防し、管理し、処置し、または改善するのに有用であることが知られている、または用いられていた、もしくは現在用いられているあらゆる物質または治療を、本発明の抗体組成物と組み合わせて用いることができる。炎症性障害を有する対象に本発明の抗体組成物と組み合わせて投与することができる免疫調節物質の詳しい例には、限定するものではないが、メトトレキセート、レフルノミド、シクロホスファミド、サイトキサン、イムラン、シクロスポリンA、ミノサイクリン、アザチオプリン、抗生物質(例えば、FK506(タクロリムス))、メチルプレドニゾロン(MP)、コルチコステロイド、ステロイド、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナール(brequinar)、マロノニトリロアミンデス(malononitriloamindes)(例えば、レフルナミド(leflunamide))、抗T細胞受容体抗体(例えば、抗CD4抗体(例えば、cM−T412(Boeringer)、IDEC−CE9.1.RTM(IDECおよびSKB)、mAB4162W94、Orthoclone、およびOKTcdr4a(Janssen−Cilag))、抗CD3抗体(例えば、Nuvion(Product Design Labs)、OKT3(Johnson & Johnson)抗CD20抗体(例えば、Rituxan(IDEC & Genentech、米国および国際特許公開US2004/0202658、WO00/67796)ならびにそれらの誘導体、HuMax−CD20(GenMabおよびMedarex、米国特許公開第2004/0167319号)、抗CD19抗体(例えば、米国および国際特許公開US20020041847、US20030133930、およびWO05/012493を参照されたい)、抗CD5抗体(例えば、抗CD5リシン連結免疫複合体)、抗CD7抗体(例えば、CHH−380(Novartis))、抗CD8抗体、抗CD40リガンドモノクローナル抗体(例えば、IDEC−131(IDEC))、抗CD52抗体(例えば、CAMPATH1H(Ilex))、抗CD2抗体(例えば、MEDI−507(MEdImmune,Inc.、国際公開WO02/098370、およびWO02/069904)、抗CD11a抗体(例えば、Xanelim(Genentech))、ならびに抗B7抗体(例えば、IDEC−114)(IDEC));抗サイトカイン受容体抗体(例えば、抗IFN受容体抗体、抗IL−2受容体抗体(例えば、Zenapax(Protein Design Labs))、抗IL−4受容体抗体、抗IL−6受容体抗体、抗IL−10受容体抗体、および抗IL−12受容体抗体)、抗サイトカイン抗体(例えば、抗IFN抗体、抗TNF−α抗体、抗IL−β抗体、抗IL−6抗体、抗IL−8抗体(例えば、ABX−IL−8(Abgenix))、および抗IL−12抗体));抗CD22抗体(例えば、Epratuzumab(Immunomedics)などの非リガンドの阻止抗体、およびリガンドの阻止抗体(例えば、米国特許公開第2004/0001828号、および第2003/0202975号));CTLA4−免疫グロブリン;LFA−3TIP(Biogen、国際公開WO93/08656、および米国特許第6,162,432号);可溶性サイトカイン受容体(例えば、TNF−α受容体の細胞外ドメインまたはそのフラグメント、IL−1β受容体の細胞外ドメインまたはそのフラグメント、およびIL−6受容体の細胞外ドメインまたはそのフラグメント);サイトカインまたはそのフラグメント(例えば、インターロイキン(IL)−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15、TNF−α、TNF−β、インターフェロン(IFN)−α、IFN−β、IFN−γ、およびGM−CSF);ならびに抗サイトカイン抗体(例えば、抗IL−2抗体、抗IL−4抗体、抗IL−6抗体、抗IL−10抗体、抗IL−12抗体、抗IL−15抗体、抗TNF−α抗体、および抗IFN−γ抗体)が含まれる。
炎症性障害を有する対象に本発明の抗体組成物と組み合わせて投与することができる、血管新生阻害剤の非制限的な例には、Vitaxin(登録商標)(Med Immune)または他の抗αvβ3抗体(例えば、CNT095(Centocor))、エンドスタチン、アンジオスタチン、アポミグレン(apomigren)、血管新生阻害の抗トロンビンIII、フィブロネクチンの29kDaのN−末端および40kDaのC−末端のタンパク質分解性フラグメント、uPA受容体拮抗物質、プロラクチンの16kDaのタンパク質分解性フラグメント、血小板第4因子の7.8kDaのタンパク質分解性フラグメント、血小板第4因子の血管新生阻害のアミノ酸24個のフラグメント、13.40と呼ばれる血管新生阻害因子、トロンボスポンジンIの血管新生阻害のアミノ酸22個のペプチドフラグメント、SPARCの血管新生阻害のアミノ酸20個のペプチドフラグメント、RGDおよびNGR含有ペプチド、ラミニンの小型血管新生阻害ペプチド、フィブロネクチン、プロコラーゲンおよびEGF、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)拮抗物質、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)拮抗物質、血管内皮増殖因子(VEGF)拮抗物質、VEGF受容体(VEGFR)拮抗物質(例えば、抗VEGFR抗体)、ならびにAvastin(登録商標)が含まれる。
炎症性障害を有する対象に、本発明の抗体組成物と組み合わせて投与することができるTNF−α拮抗薬の非制限的な例には、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、TNF−αに免疫特異的に結合する抗体などの抗体(例えば、ヒト、ヒト化、キメラ、モノクローナル、ポリクローナル、Fvs、ScFvs、Fabフラグメント、F(ab)2フラグメント、およびそれらの抗原結合性フラグメント)、核酸分子(例えば、アンチセンス分子、または三重らせん)、有機分子、無機分子、ならびにTNF−αの機能、活性、および/または発現を阻止し、低減し、阻害し、または中和する小分子が含まれる。様々な実施形態では、TNF−α拮抗物質は、TNF−αの機能、活性および/または発現を、リン酸緩衝食塩水(PBS)などのコントロールに比べて、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%低減させる。TNF−αに免疫特異的に結合する抗体の例には、限定するものではないが、インフリキシマブ(REMICADE(商標)、Centacor)、D2E7(Abbott Laboratories/Knoll Pharmaceuticals Co.、Mt.Olive、ニュージャージー州)、HUMICADE(商標)としても知られているCDP571、およびCDP−870(両方ともCelltech/Pharmacia、Slough、英国)、ならびにTN3−19.12(Williamsら、1994年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91巻、2762〜2766頁;Thorbeckeら、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89巻、7375〜7379頁)が含まれる。本発明は、本発明の組成物および方法における、以下の米国特許に開示されているTNF−αに免疫特異的に結合する抗体の使用も包含する:米国特許第5,136,021号、第5,147,638号、第5,223,395号、第5,231,024号、第5,334,380号、第5,360,716号、第5,426,181号、第5,436,154号、第5,610,279号、第5,644,034号、第5,656,272号、第5,658,746号、第5,698,195号、第5,736,138号、第5,741,488号、第5,808,029号、第5,919,452号、第5,958,412号、第5,959,087号、第5,968,741号、第5,994,510号、第6,036,978号、第6,114,517号、および第6,171,787号。可溶性のTNF−α受容体の例には、限定するものではないが、sTNF−R1(Amgen)、エタネルセプト(ENBREL(商標);Immunex)、およびそのラット類似体であるRENBREL(商標)、TNFrI、TNFrIIに由来するTNF−αの可溶性の阻害物質(Kohnoら、1990年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87巻、8331〜8335頁)、ならびにTNF−αInh(Seckingerら、1990年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87巻、5188〜5192頁)が含まれる。
本発明が包含する他のTNF−α拮抗物質には、限定するものではないが、インターフェロンγが活性化するマクロファージによりTNF−αの生成を阻止することが知られているIL−10(Oswaldら、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89巻、8676〜8680頁)、TNFR−IgG(Ashkenaziら、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88巻、10535〜10539頁)、ネズミ科動物生成物TBP−1(Serono/Yeda)、ワクチンCytoTAb(Protherics)、アンチセンス分子104838(ISIS)、ペプチドRDP−58(SangStat)、サリドマイド(Celgene)、CDC−801(Celgene)、DPC−333(Dupont)、VX−745(Vertex)、AGIX−4207(AtheroGenics)、ITF−2357(Italfarmaco)、NPI−13021−31(Nereus)、SCIO−469(Scios)、TACEtargeter(Immunix/AHP)、CLX−120500(Calyx)、Thiazolopyrim(Dynavax)、オーラノフィン(Ridaura)(SmithKline Beecham Pharmaceuticals)、キナクリン(メパクリンジクロロヒドレート)、テニダップ(Enablex)、Melanin(Large Scale Biological)、およびUriachによる抗p38MAPK物質が含まれる。
炎症性障害を有する対象に、本発明の抗体組成物と組み合わせて投与することができる抗炎症物質の非制限的な例には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド性抗炎症薬、β−作用薬、抗コリン薬、およびメチルキサンチンが含まれる。NSAIDの例には、限定するものではないが、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ(CELEBREX(商標))、ジクロフェナク(VOLTAEREN(商標))、エトドラク(LODINE(商標))、フェノプロフェン(NALFON(商標))、インドメタシン(INDOCIN(商標))、ケトララック(ketoralac)(TORADOL(商標))、オキサプロジン(DAYPRO(商標))、ナブメントン(nabumentone)(RELAFEN(商標))、スリンダク(CLINORIL(商標))、トルメンチン(tolmentin)(TOLECTIN(商標))、ロフェコキシブ(VIOXX(商標))、ナプロキセン(ALEVE(商標)、NAPROSYN(商標))、ケトプロフェン(ACTRON(商標))、およびナブメトン(RELAFEN(商標))が含まれる。このようなNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素(例えば、COX−1および/またはCOX−2)を阻害することにより機能する。ステロイド性抗炎症薬の例には、限定するものではないが、グルココルチコイド、デキサメタゾン(DECADRON(商標))、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン(DELTASONE(商標))、プレドニゾロン、トリアムシノロン、アズルフィジン、ならびに、プロスタグランジン、トロンボキサン、およびロイコトリエンなどのエイコサノイドが含まれる。
特定の実施形態では、骨関節炎の患者には、本発明の抗体組成物の予防上または治療上有効な量を、限定するものではないが、鎮痛薬(非限定的な例として、4000mg/dまでの投与量のアセトアミノフェン;フェナセチン;および200から300mgの範囲の毎日投与量のトラマドール)、NSAID(非限定的な例として、限定するものではないが、アスピリン、ジフルニサル、ジクロフェナク、エトドラク、フェナメート、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸メチル、ネブメトン(nebumetone)、ナプロキシン(naproxin)、オキサプラジン(oxaprazin)、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、およびトルメチンを含む)を含む、骨関節炎の予防、処置、管理、または改善に有用な他の物質または治療法と組み合わせて投与する。低投与量のNSAID、例えば、1200mg/dのイブプロフェン、500mg/dのナプロキセンが好ましい。胃保護薬、例えば、ミソプロストール、ファモチジン、またはオメプラゾールが、NSAIDと同時に使用するのに好ましい;限定するものではないがサルサレートを含む非アセチル化のサリチル酸;限定するものではないが、セレコキシブおよびロフェコキシブを含むシクロオキシゲナーゼ(Cox)−2−特異的阻害薬(CSI);持効性のグルココルチコイド調製物の関節内または関節周囲の注射、ヒアルロン酸の関節内注射、カプサイシンクリーム、フィブリン、軟骨破片、および他の細片を流し去るための骨関節炎の膝の大量の潅注、ならびに関節置換の外科手術。本発明の抗体組成物を、限定するものではないが、関節の負荷の低減(非限定的な例として、悪い姿勢の矯正、腰椎の過剰な負荷の支持、関連する関節の過剰な負荷の回避、長時間の起立、ひざまずく姿勢、およびしゃがんだ姿勢の回避)、冒されている関節への温熱の適用、エアロビクス運動、ならびにその他の理学療法を含む骨関節炎の予防、処置、管理、および改善における他の非薬理学的手段と組み合わせて用いることもできる。
特定の実施形態では、関節リウマチの患者には、本発明の抗体組成物の予防上または治療上有効な量を、限定するものではないが、NSAID(非限定的な例には、限定するものではないが、アスピリン、ジフルニサル、ジクロフェナク、エトドラク、フェナメート、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸メチル、ネブメトン(nebumetone)、ナプロキシン(naproxin)、オキサプラジン(oxaprazin)、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、およびトルメチンが含まれる)、鎮痛薬(非限定的な例として、アセトアミノフェン、フェナセチン、およびトラマドールがある);限定するものではないが、セレコキシブおよびロフェコキシブを含むCSI;グルココルチコイド(好ましくは低投与量の経口グルココルチコイド、例えば、<7.5mg/dのプレドニゾン、または高投与量のグルココルチコイドの1カ月毎のパルス投与、または関節内のグルココルチコイド);限定するものではないが、メトトレキセート(好ましくは断続的に低投与量を投与、例えば1週間に1回7.5〜30mg)、金化合物(例えば、金塩)、D−ペニシラミン、抗マラリア薬(例えば、クロロキン)およびスルファサラジンを含む疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD);限定するものではないがエタネルセプトおよびインフリキシマブを含むTNF−α中和薬;免疫抑制薬および細胞毒性物質(例として、限定するものではないが、アザチオプリン、レフルノミド、シクロスポリン、およびシクロホスファミドが含まれる)、ならびに外科手術(例として、限定するものではないが、関節形成術、全関節置換、手の再建手術、オープンの、もしくは関節鏡検査の滑膜切除術、および手首の初期の腱鞘切除術)を含む、関節リウマチを予防し、処置し、管理し、および改善するのに有用な他の物質または治療と組み合わせて投与する。本発明の抗体組成物は、また、限定するものではないが、安静、炎症を起こした関節の不必要な動きを低減するための副木、運動、様々な矯正器具および補助器具の使用、ならびに他の理学療法を含む、関節リウマチを予防し、処置し、管理し、および改善する他の手段と組み合わせて用いることもできる。本発明の抗体組成物は、また、限定するものではないが、食事(例えば、ある種の魚油に見られるエイコサペンタエン酸などのω−3脂肪酸を、肉に見られる食事のω−6必須脂肪酸の代用にする)、ワクチン、ホルモン、および局所用調製物を含む関節リウマチを予防し、処置し、管理し、および改善するいくつかの非伝統的な取組みと組み合わせて用いることもできる。
特定の実施形態では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に、予防上または治療上有効な量の本発明の抗体組成物を、単独で、または、限定するものではないが;限定するものではないが、短時間および長時間作用性のβ2−アドレナリン作用薬(短時間作用性β2−作用薬の例には、限定するものではないが、アルブテロール、ピルブテロール、テルブタリン、およびメタプロテレノールが含まれる;長時間作用性β2−作用薬の例には、限定するものではないが、経口の徐放性アルブテロール、および吸入のサルメテロールが含まれる))、抗コリン薬(例として、限定するものではないが、臭化イプラトロピウムが含まれる)、ならびにテオフィリンおよびその誘導体(テオフィリンの治療範囲は、好ましくは10〜20μg/mLである)を含む、気管支拡張薬;グルココルチコイド;外来性のα1AT(例えば、1週間に60mg/kgの投与量で静脈内に投与した、プールしたヒト血漿に由来するα1AT)、酸素;肺移植;肺容積を低減する外科手術;気管内挿管、補助換気、毎年のインフルエンザワクチンおよび23価肺炎球菌多糖類のワクチン接種;運動;ならびに喫煙の中止を含む、COPDを予防し、処置し、管理し、および改善するのに有用な他の物質または治療法と組み合わせて投与することができる。
特定の実施形態では、肺線維症の患者に、本発明の抗体組成物の予防上または治療上有効な量を、単独で、または、限定するものではないが、酸素、コルチコステロイド(非限定的な例として、プレドニゾンを1〜1.5mg/kg/d(最高100mg/d)で始めて6週間毎日投与し、3〜6カ月かけて徐々に、最小維持投与量の0.25mg/kg/dに漸減する)、細胞毒性薬物(非限定的な例として、1日1回100〜120mgのシクロホスファミドを経口投与、および1日1回3mg/kgから最高200mgのアザチオプリンを経口投与)、気管支拡張薬(非限定的な例として、短時間および長時間作用性のβ2−アドレナリン作用薬、抗コリン薬、ならびにテオフィリンおよびその誘導体)、ならびに抗ヒスタミン薬(非限定的な例としてジフェンヒドラミンおよびドキシラミン)を含む肺線維症の治療に有用な1つまたは複数の他の物質の有効量と組み合わせて投与する。
特定の実施形態では、SCIの患者に、本発明の抗体組成物の予防上または治療上有効な量を、単独で、または、限定するものではないが、グルココルチコイドステロイド(非限定的な例として、メチルプレドニゾロン30mg/kgのボーラスを15分かけて投与し、5.4mg/kg/hのメチルプレドニゾロンの23時間注入をボーラスの45分後に開始する)、神経保護薬(例えば、ミノサイクリン)、再生療法(例えば、幹細胞処置、ヒドロゲル)、弱い電場(例えば、脊髄外振動磁場刺激装置埋め込み可能の医療機器)を含む、SCIの治療に有用な1つまたは複数の他の物質の有効量と組み合わせて投与する。
特定の実施形態では、喘息の患者に、本発明の抗体組成物の予防上または治療上有効な量を、単独で、あるいは、限定するものではないが、アドレナリン作動性刺激薬(例として、限定するものではないが、カテコールアミン(例えば、エピネフリン、イソプロテレノール、およびイソエタリン)、レゾルシノール(例えば、メタプロテレノール、テルブタリン、およびフェノテロール);ならびにサリゲニン、例えばサルブタモールを含む。アドレナリン作動性刺激薬を投与するには、吸入が好ましい経路である。;限定するものではないがテオフィリンおよびその様々な塩を含むメチルキサンチン;限定するものではないが硫酸アトロピン、硝酸メチルアトロピン、および臭化イプラトロピウムを含む抗コリン作用薬;グルココルチコイド(例として、限定するものではないが、全身性または経口ステロイド、および吸入のグルココルチコイドを含む)、肥満細胞安定化薬(例として、限定するものではないが、クロモグリク酸ナトリウム、およびネドクロミルナトリウムを含む)、ロイコトリエン修飾物質(例として、限定するものではないが、ジロートン、ザフィルルカスト、およびモンテルカストを含む);免疫抑制薬(例として、限定するものではないが、メトトレキセートおよび金塩を含む)、ならびに粘液溶解薬(例として、限定するものではないが、アセチルシステインを含む)を含む、喘息の治療に有用な1つまたは複数の他の物質の有効量と組み合わせて投与する。
本発明は、本発明の化合物または薬剤組成物、好ましくは本発明の抗体の有効量を対象に投与することにより、処置、阻害、および予防する方法をもたらすものである。好ましい一実施形態では、化合物は本質的に精製されている(例えば、その効力を制限し、または望ましくない副作用を生成する物質が本質的にない)。対象は、好ましくは、限定するものではないが、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物を含む動物であり、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
化合物が核酸または免疫グロブリンを含む場合に使用することができる投与の製剤および方法は、上記に記載してある。さらなる好適な製剤および投与経路は、本明細書の以下に記載したものの中から選択することができる。
様々な送達システムが知られており、本発明の化合物を投与するのに用いることができ、例えば、リポソームにおけるカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現することができる組換え体の細胞、受容体が媒介するエンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、J.Biol.Chem.、262巻、4429〜4432頁(1987年)を参照されたい)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築などがある。導入の方法には、限定するものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口の経路が含まれる。化合物または組成物は、あらゆる便利な経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚の内層(例えば、経口粘膜、直腸および腸の粘膜など)を通した吸収により投与することができ、他の生物学的に活性な物質と一緒に投与することができる。投与は、全身的でも局所的でもよい。さらに、本発明の薬剤化合物または組成物を、脳室内およびくも膜下腔内注射を含めた、あらゆる適切な経路により中枢神経系中に導入することが望ましいことがあり、脳室内注射は、例えば、Ommaya貯留槽などの貯留槽に付着している脳室内カテーテルにより促進され得る。肺投与も、例えば、吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル化物質との製剤を用いることにより、使用することができる。
特定の実施形態では、本発明の薬剤化合物または組成物を、処置を必要とする領域に局所的に投与するのが望ましいことがあり、これは、例えば、限定的なものではないが、外科手術中の局所注入、局所適用、例えば、外科手術後に傷の包帯と組み合わせて、注射により、カテーテルにより、座剤により、埋め込みにより実現することができ、前記埋め込みは、シラスチックの膜、または線維などの膜を含む、多孔性の、非多孔性の、またはゼラチン状の材料である。好ましくは、本発明の抗体を含めたタンパク質を投与する場合には、それにタンパク質が吸収されない材料を使用するように注意を払わなければならない。
別の一実施形態では、化合物または組成物を、ビヒクルで、特にリポソームで送達することができる(Langer、Science、249巻、1527〜1533頁(1990年);Treatら、「Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer」、Lopez-BeresteinおよびFidler(編集)、Liss、ニューヨーク、353〜365頁(1989年);Lopez-Berestein、同書、317〜327頁を参照されたい;一般的には同書を参照されたい)。
さらに別の一実施形態では、化合物または組成物を、徐放システムで送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer、上述;Sefton、1987年、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.、14巻、201頁;Buchwaldら、1980年、Surgery、88巻、507頁;Saudekら、1989年、N.Engl.J.Med.、321巻、574頁を参照されたい)。別の一実施形態では、ポリマー材料を用いることができる(Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編集)、CRC Press、Boca Raton、フロリダ州(1974年);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance、SmolenおよびBall(編集)、Wiley、ニューヨーク(1984年);RangerおよびPeppas,J.、1983年、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.、23巻、61頁を参照されたい; Levyら、1985年、Science、228巻、190頁;Duringら、1989年、Ann.Neurol.、25巻、351頁;Howardら、1989年、J.Neurosurg.、71巻105頁も参照されたい)。さらに別の一実施形態では、徐放システムを治療の標的の近く、即ち脳に配置することができ、したがって全身の投与量のほんの小部分しか必要としない(例えば、Goodson、「Medical Applications of Controlled Release」、上述、第2巻、115〜138頁(1984年)を参照されたい)。他の徐放システムは、Langer(1990年、Science、249巻、1527〜1533頁)らによる再考で論じられている。
本発明の化合物がタンパク質をコードしている核酸である特定の一実施形態では、それを好適な核酸発現ベクターの部分として構築し、それが細胞内になるように投与することにより、例えば、レトロウイルスのベクターを使用することにより(米国特許第4,980,286号を参照されたい)、または直接注射することにより、または微粒子銃(例えば、遺伝子銃、Biolistic、Dupont)を使用することにより、または脂質、もしくは細胞表面受容体、もしくは形質移入する物質でコーティングすることにより、または核に入ることが知られているホメオボックス様ペプチドと連結してそれを投与することによる(例えば、Joliotら、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88巻、1864〜1868頁を参照されたい)など、核酸をin vivoで投与して、そのコードされたタンパク質の発現を促進することができる。あるいは、相同の組換えにより、核酸を細胞内に導入し、発現させるために、宿主細胞のDNA内に組み入れることができる。
本発明は、薬剤組成物も提供する。このような組成物は、治療上有効な量の化合物、および薬学的に許容できる担体を含む。特定の一実施形態では、「薬学的に許容できる」という用語は、連邦または州政府の監督機関により認可されており、あるいは米国薬局方またはその他の一般に認められている薬局方に、動物、より詳しくはヒトで使用するために列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはそれとともに治療物質を投与するビヒクルを意味する。このような製剤上の担体は、水および油などの滅菌の液体であってよく、石油の、動物性の、植物性の、または合成の起源のもの、例えば、落花生油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などが含まれる。薬剤組成物を静脈内に投与する場合には、水が好ましい担体である。食塩水、およびデキストロースおよびグリセロール水溶液も、また、特に注射可能な溶液に対して、液体の担体として使用することができる。適切な製剤上の賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物は、所望により、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含むことができる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、徐放製剤などの形態をとることができる。組成物を、トリグリセリドなどの伝統的な結合剤および担体とともに、座剤として調合することができる。経口の製剤は、製剤用グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準の担体を含むことができる。適切な薬剤上の担体の例は、E.W.Martinの「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、患者に適切に投与するための形態を提供するために、治療上有効な量の化合物を、好ましくは精製された形態で、適切な量の担体とともに含む。製剤は、投与の様式に適合しなければならない。
好ましい一実施形態では、組成物を、ヒトに静脈内投与するために適合した薬剤組成物として日常の手順に従って調合する。典型的には、静脈内投与するための組成物は、滅菌の等張の緩衝水溶液である。必要な場合には、組成物は、可溶化剤、および注射部位の痛みを緩和するためのリグノカインなどの局所麻酔薬を含むこともできる。一般的には、成分を、別々に、または単位投与量形態に一緒に混合して、例えば、有効物質の量を示すアンプルまたはサシェなどの気密容器入りの、乾燥した凍結乾燥粉末もしくは水分のない濃縮物として供給する。組成物を注入により投与しようとする場合には、滅菌の製剤用グレードの水または食塩水を含む注入ボトルで調剤することができる。組成物を注射により投与する場合には、投与の前に成分が混合され得るように、注射用滅菌水または食塩水のアンプルを提供することができる。
本発明の化合物を、中性の、または塩の形態で調合することができる。薬学的に許容できる塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなど、陰イオンで形成されたもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、三価鉄水酸化物、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなど、陽イオンで形成されたものが含まれる。
本発明のポリペプチドの異常な発現、および/または活性化に関連する疾患または障害の処置、阻害、および予防に有効な本発明の化合物の量は、標準の臨床技術により決定することができる。さらに、in vitroのアッセイを任意選択で使用して、最適の投与量範囲を同定するのを助けることができる。製剤で使用するべき正確な投与量は、また、投与経路、および疾患または障害の重症度に依存し、医師の判断および各患者の状況に従って決定すべきである。有効な投与量は、in vitroまたは動物モデルの試験システムから導かれる用量反応曲線から推定することができる。
抗体に関して、患者に投与する投与量は、典型的には患者の体重1kgあたり、0.1mgから100mgである。好ましくは、患者に投与する投与量は、患者の体重1kgあたり0.1mgと20mgとの間であり、より好ましくは、患者の体重1kgあたり1mgから10mgである。一般的に、外来のポリペプチドに対する免疫反応のため、ヒト抗体は、他の種からの抗体よりもヒトの体内での半減期が長い。したがって、ヒト抗体では、より低い投与量、およびあまり頻繁でない投与が、しばしば可能である。さらに、本発明の抗体の投与の投与量および頻度は、例えば脂質化などの修飾により、抗体の取り込みおよび組織浸透性(例えば、脳内への)を増強することにより、低減することができる。
本発明は、本発明の薬剤組成物の1つまたは複数の成分で満たした1つまたは複数の容器を含む、薬剤の包装またはキットも提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用、または販売を統括する政府機関により処方された形態の通知が、このような容器と場合により関連づけられることがあるが、この通知はヒトに投与するために、製造、使用、または販売の機関による認可を反映するものである。
これらの組成物にポリペプチドとともに含まれる賦形剤は、治療の適用において、期待される組成物の投与経路に基づいて選択される。組成物の投与経路は、処置する状態に依存する。例えば、内毒素性ショックなどの全身性障害の処置には静脈内注射が好ましいことがあり、胃潰瘍などの胃腸障害を処置するには経口投与が好ましいことがある。投与経路、および投与する組成物の投与量は、当業者であれば、過度の実験を行わずに、標準の用量反応試験と組み合わせて決定することができる。これらの決定を行う上で考慮される関連する状況には、処置する状態または状態(複数形)、投与する組成物の選択、個々の患者の年齢、体重、および反応、ならびに患者の症状の重症度が含まれる。したがって、状態に応じて、患者に抗体組成物を経口で、非経口で、鼻腔内に、膣に、直腸に、舌側に、舌下に、頬側に、頬内に、および経皮に投与することができる。
したがって、経口、舌側、舌下、頬側、および頬内に投与するためにデザインされた組成物を、過度の実験を行わずに、当技術分野ではよく知られている手段により、例えば、不活性の希釈剤とともに、または食用可能な担体とともに作成することができる。組成物を、ゼラチンカプセル中に封入し、または錠剤に圧縮することができる。経口投与治療の目的では、本発明の薬剤組成物を、賦形剤とともに組み入れ、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシール剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー、チューイングガムなどの形態で用いることができる。
錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、また、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、および香味料を含むことができる。結合剤のいくつかの例として、微結晶性セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンが含まれる。賦形剤の例として、デンプンまたはラクトースが含まれる。崩壊剤のいくつかの例として、アルギン酸、コーンスターチなどが含まれる。滑沢剤の例として、ステアリン酸マグネシウム、またはステアリン酸カリウムが含まれる。流動促進剤の例は、コロイド性の二酸化ケイ素である。甘味剤のいくつかの例として、ショ糖、サッカリンなどが含まれる。香味料の例として、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香料などが含まれる。これらの様々な組成物を調製するのに用いる材料は、製薬上純粋であり、用いる量において非毒性でなければならない。
本発明の組成物は、例えば、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、または皮下の注射により、容易に非経口投与することができる。非経口投与は、本発明の抗体組成物を溶液または懸濁液中に組み入れることにより遂行することができる。このような溶液または懸濁液は、また、注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶剤などの滅菌の希釈液も含むことができる。非経口の製剤は、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗細菌剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、EDTAなどのキレート化剤も含むことができる。酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなど張性を調節するための物質も、加えることができる。非経口の調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチック製の複数投与量バイアルに封入することができる。
直腸投与は、薬剤組成物を直腸または大腸内に投与することを含む。これは、座剤または浣腸を用いて遂行することができる。座剤の製剤は、当技術分野では知られている方法により容易に作成することができる。例えば、座剤の製剤は、グリセリンを約120Cに加熱し、抗体組成物をグリセリンに溶解し、加熱したグリセリンを混合し、その後精製水を加えてもよく、熱い混合物を座剤型中に注ぐことにより調製することができる。
経皮投与には、皮膚を通した組成物の経皮の吸収が含まれる。経皮の製剤には、パッチ剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、膏薬などが含まれる。
本明細書に記載されている抗体組成物には、また、初期敗血症メディエータの拮抗物質が含まれていてもよい。本明細書で用いられる初期敗血症メディエータは、炎症性サイトカインカスケードの誘発(例えば、LPSへの曝露)後すぐに(即ち、30〜60分以内に)細胞から放出される炎症促進性サイトカインである。これらのサイトカインの非限定的な例として、TNF、IL−1α、IL−1β、IL−6、PAF、およびMIFがある。初期敗血症メディエータとして、これらのサイトカインに対する受容体(例えば、腫瘍壊死因子受容体タイプ1)、およびこれらのサイトカインを生成するのに必要とされる酵素、例えばインターロイキン−1β転換酵素も含まれる。現在知られており、または後になって発見された、あらゆる初期敗血症メディエータの拮抗物質は、炎症性サイトカインカスケードをさらに阻害することにより、これらの実施形態に有用であり得る。
初期敗血症メディエータの拮抗物質の非限定的な例として、初期敗血症メディエータのmRNAに結合しその発現を妨げるアンチセンスの化合物(例えば、Ojwangら、1997年、Biochemistry、36巻、6033〜6045頁;Pampferら、1995年、Biol.Reprod.、52巻、1316〜1326頁;米国特許第6,228,642号;Yahataら、1996年、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.、6巻、55〜61頁、ならびにTaylorら、1998年、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.、8巻、199〜205頁を参照されたい)、初期敗血症メディエータのmRNAを特異的に切断するリボザイム(例えば、Leavittら、2000年、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.、10巻、409〜414頁;Kisichら、1999年、およびHendrixら、1996年、Biochem.J.、314巻、655〜661頁を参照されたい)、ならびに初期敗血症メディエータに結合しその活性を阻害する抗体(例えば、KamおよびTargan、2000年、Expert Opin.Pharmacother.、1巻、615〜622頁;Nagahiraら、1999年、J.Immunol.Methods、222巻、83〜92頁;Lavineら、1998年、J.Cereb.Blood Flow Metab.、18巻、52〜58頁、ならびにHolmesら、2000年、Hybridoma、19巻、363〜367頁を参照されたい)がある。現在知られている、または後に発見された、初期敗血症メディエータのあらゆる拮抗物質は、本発明の範囲内であることが想定される。当業者であれば、過度の実験を行わずに日常の用量反応試験であらゆる特定の炎症性サイトカインカスケードを阻害するためのこれらの組成物において使用する初期敗血症メディエータの量を決定することができる。
5.8 診断および画像化
対象のポリペプチドに特異的に結合する、標識した抗体、ならびにその誘導体および類似体を、本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連する疾患および/または障害を検出し、診断し、またはモニターする診断の目的に用いることができる。本発明は、(a)対象のポリペプチドに特異的な1つまたは複数の抗体を用いて、個体の細胞または体液における対象のポリペプチドの発現をアッセイすること、および(b)遺伝子発現のレベルを標準の遺伝子発現レベルと比較することを含む、対象のポリペプチドの異常な発現の検出を提供するものであり、それによって標準の発現レベルと比較して、アッセイしたポリペプチドの遺伝子発現レベルの増大または低減は異常な発現を示している。
本発明は、(a)対象のポリペプチドに特異的な1つまたは複数の抗体を用いて、個体の細胞または体液における対象のポリペプチドの発現をアッセイすること、および(b)遺伝子発現のレベルを、標準の遺伝子発現レベルと比較することを含む、障害を診断するための診断用のアッセイを提供するものであり、それによって標準の発現レベルと比較して、アッセイしたポリペプチドの遺伝子発現レベルの増大または低減は特定の障害を示している。
当業者には知られている古典的な免疫組織学的方法を用いて、生物学的サンプルにおけるタンパク質のレベルをアッセイするために、本発明の抗体を用いることができる(例えば、Jalkanenら、1985年、J.Cell.Biol.、101巻、976〜985頁;Jalkanenら、1987年、J.Cell.Biol.、105巻、3087〜3096頁を参照されたい)。タンパク質の遺伝子発現を検出するのに有用な、他の抗体ベースの方法には、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)などの免疫アッセイが含まれる。
当技術分野で知られている技術を、本発明の抗体を標識するのに適用することができる。このような技術には、限定するものではないが、2官能性の複合性物質の使用が含まれる(例えば、米国特許第5,756,065号、第5,714,631号、第5,696,239号、第5,652,361号、第5,505,931号、第5,489,425号、第5,435,990号、第5,428,139号、第5,342,604号、第5,274,119号、第4,994,560号、および第5,808,003号を参照されたい)。
本発明の一実施形態は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおける対象のポリペプチドの異常な発現に関連する疾患または障害の検出および診断である。一実施形態では、診断は、(a)対象のポリペプチドに特異的に結合する有効量の標識した分子を対象に投与(例えば、非経口的に、皮下に、または腹腔内に)すること、(b)ポリペプチドが発現される対象における部位で、標識した分子を優先的に濃縮させるために(かつ、非結合の標識した分子がバックグラウンドレベルまで除去されるために)、投与後ある時間間隔の間待機すること、(c)バックグラウンドレベルを決定すること、および(d)対象において標識した分子を検出することを含み、したがって、バックグラウンドレベルを超えて標識した分子が検出されることは、対象が、対象のポリペプチドの異常な発現に関連する特定の疾患または障害を有することを示している。バックグラウンドレベルは、検出された標識した分子の量を、特定のシステムに対して以前に決定したスタンダード値と比較することを含む、様々な方法により決定することができる。
また、本明細書に記載するように、本発明の抗体は、敗血症、関節リウマチ、腹膜炎、クローン病、再潅流傷害、敗血症(septicemia)、内毒素性ショック、嚢胞性線維症、心内膜炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節炎、アナフィラキシーショック、臓器虚血、再潅流傷害、および同種移植片拒絶反応を有する個体を処置し、診断し、または予知するのに用いることができる。
当技術分野では、対象のサイズ、および用いる画像システムが、診断用の画像を生成するのに必要とされる画像部分の量を決定することが理解されよう。放射性同位元素部分の場合、ヒト対象に対して、注射する放射能の量は、通常、約5から20ミリキュリーの99Tcである。次いで、標識した抗体または抗体フラグメントは、特定のタンパク質を含む細胞の位置に優先的に蓄積する。in vivoの腫瘍画像については、S.W.Burchielら、「Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments」(第13章、「Tumor Imaging:The Radiochemical Detection of Cancer」、S.W.BurchielおよびB.A.Rhodes編集、Masson Publishing Inc.(1982)に記載されている。
用いられる標識のタイプおよび投与様式を含むいくつかの変数に応じて、標識した分子を対象における部位に優先的に濃縮させ、非結合の標識した分子をバックグラウンドレベルまで除去する、投与後の時間間隔は、6から48時間、または6から24時間、または6から12時間である。別の一実施形態では、投与後の時間間隔は、5から20日、または5から10日である。
一実施形態では、疾患または障害のモニターは、疾患または障害を診断するための方法を、例えば、最初の診断の1カ月後に、最初の診断の6ヵ月後に、最初の診断の1年後などに、繰り返すことにより実行される。
標識した分子の存在を、in vivoのスキャニングについて当技術分野では周知の方法を用いて、患者において検出することができる。これらの方法は、用いられる標識のタイプに依存する。当業者であれば、特定のレベルを検出するための好適な方法を決定することができる。本発明の診断方法で用いることができる方法および装置には、限定するものではないが、コンピュータ断層撮影法(CT)、ポジトロン放出断層撮影(PET)、磁気共鳴画像法、(MRI)、および超音波検査などの身体全体のスキャンが含まれる。
特定の一実施形態では、分子を放射性同位体で標識し、放射線反応性外科用器具を用いて患者において検出する(Thurstonら、米国特許第5,441,050号)。別の一実施形態では、分子を蛍光化合物で標識し、蛍光反応性のスキャン装置を用いて患者において検出する。別の一実施形態では、分子をポジトロン放出性の金属で標識し、ポジトロン放出断層撮影を用いて患者において検出する。さらに別の一実施形態では、分子を常磁性の標識で標識し、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて患者において検出する。
6.実施例
次に、本発明を、以下の実施例を参考にして記載する。これらの実施例は、例示のみを目的として提供するものであり、本発明は、決してこれらの実施例に制限されるものと解釈してはならないが、むしろ本明細書に提供する教示の結果として明らかになる、あらゆる、かつすべての変形例を包含すると解釈すべきである。
6.1 実施例1
ヒト抗HMG1抗体の開発および物理的特徴付け
大パネルのヒト抗HMG1抗体を、ナイーブのヒトFabファージディスプレイライブラリーから、ヒトHMG1(配列番号1および2、図1も参照されたい)に対して数ラウンドパニングすることにより単離した。次いで、クローンを配列決定して重複のクローンを排除し、全長のIgGを生成するためにFabフラグメントを発現ベクター中にサブクローニングした。いくつかの抗体のクローン(G2、G4、G9、G12、G16、G20、G34、G35、S2、S6、S10、S12、S14、S16、S17、およびE11)の軽鎖および重鎖の可変領域のヌクレオチド、および対応するアミノ酸配列を、配列表(特定の配列番号に関して、表3を参照されたい)に提供する。図2は、American Type Culture Collection(寄託番号は、それぞれPTA−6142、PTA−6143、PTA−6259、およびPTA−6258)に寄託されているいくつかの抗体のクローン(S2、S6、S16、およびG4)の重鎖および軽鎖の可変領域を表す。また、図2には、抗HMG1抗体E11の重鎖および軽鎖の可変領域を示す。図2に示した各抗体のCDRに下線をつけ、配列表に提供する(特定の配列番号に関して、表3を参照されたい)。得られた全長の抗体を精製し、それらの物理的特徴を、以下に記載するように決定した。表1にまとめたように、これらの分析により、開発したヒト抗HMG1抗体は広範囲の特徴を表すことが示されている。
6.1.1 材料と方法
ヒト抗HMG1抗体の単離
ヒトFabファージディスプレイライブラリー(Dyax、Cambridge、マサチューセッツ州)を、以下のように3ラウンドのパニングによりスクリーニングした:1日目、I)イムノチューブを全長のHMGB−1の0.1M炭酸塩バッファー(pH9.6)溶液20μg/mlでコーティングする。それを4℃で一晩放置する。2日目、I)ライブラリーサイズとして100倍のファージを用いる。PEG6000の1/5容積を加える(20%)。氷上に1時間放置する。14000rpmで10分間回転させる。PBS(pH7.4)に再懸濁してファージライブラリーを沈殿させる。II)抗原でコーティングしたイムノチューブおよびファージの両方を、2%ミルク/PBSでブロックする。次いでイムノチューブを2×PBSですすぎ、ファージをイムノチューブへ移し、30分間回転させることにより混合し、次いでさらなる1.5時間静止してインキュベートする。III)イムノチューブをPBST(PBS+0.1%Tween20)で10〜20回、次いでPBSで10〜20回洗浄し、ファージを100mMトリエチルアミン1mlで溶出させる。溶出したファージを1M Tris−HCl(pH7.5)0.5mlで中和し、溶出した中和したファージの1容積を、5容積の対数期のTG1および4容積の2YTと混合する。37℃で30分間インキュベートする(水浴)。感染した細胞を遠心分離により回収し、2YTに再懸濁し、カルベニシリンおよび2%グルコースを含む2YT寒天培地上に塗抹する。
ヒト抗HMG1オリゴクローナル抗体およびモノクローナル抗体の発現
第3ラウンドのパニングの後、いくつかの細菌のプールからプラスミドを抽出した。次いで、Fab遺伝子のフラグメントをプラスミドから切り取り、CMVプロモーターの制御下でIgG発現ベクター内に挿入した。Fabフラグメントを有するIgG発現ベクターのプラスミドを、293H細胞内に一過性にトランスフェクトし、オリゴクローナル抗体を、タンパク質Aカラムを通過させることにより増殖培地から精製した。オリゴクローナル抗体の各プールを、HMG1に対する反応性について試験した。試験陽性のこれらのプールを、さらにスクリーニングして、個々の陽性のクローンを同定した。
等電点ゲル電気泳動
多重温度3冷却水浴再循環ユニットおよびEPS3501XL電源装置付きPharmacia Biotech Multiphor2電気泳動システムを用いて、等電点を決定した。成型前のアンフォラインゲル(Amersham Biosciences、pI範囲2.5〜10)に、タンパク質5μgを添加した。広範囲のpIマーカースタンダード(Amersham、pI範囲3〜10、8μL)を用いて、Mabに対する相対的なpIを決定した。電気泳動を1500V、50mAで105分間行った。精製水で1×に希釈したSigma固定溶液(5×)を用いて、ゲルを固定した。染色は、Simply Blue染色液(Invitrogen)を用いて室温で一晩行った。脱染は、25%エタノール、8%酢酸、および67%精製水から成る溶液で行った。等電点は、Bio−Rad Densitometerを用いて、スタンダードの検量線と比べて決定した。
示差走査熱量測定
VP−DSC(MicroCal、LLC)で、スキャン速度1.0℃/分、および温度範囲25〜120℃を用いて、熱融解温度(Tm)を測定した。8秒のフィルターピリオドを、5分のプレスキャンの恒温化とともに使用した。サンプルを、Pierce透析カップ(3.5kD)を用いて、25mMヒスチジン−HCl、pH6中に透析することにより調製した。Mabの平均濃度は、A280で判定して50μg/mLであった。融解温度を、システムとともに供給されたOriginソフトウェアを用いて、製造元の手順に従って決定した。簡潔に述べると、熱平衡を確立するために、サンプル、および基準の細胞の両方で、バッファーで複数のベースラインを作動させた。サンプルの温度記録からベースラインを差し引いた後、データを濃度規準化し逆重畳積分関数を用いて適合させた。
6.1.2 結果
単一のファージディスプレイライブラリーから35個を超える個々のFabクローンを単離し、その18個を全長のIgG1に変換し、一過性トランスフェクタントから精製した。これらのクローンを引き続き分析することで、これらが広範囲の特徴を有することを実証した。例えば、これらは、約330nMという高さから、まさに22nMという低さの間の解離定数(Kd)を表す(表1にまとめてある)。安定性の指標を与え得るTm値は、まさに約70℃という低さから約90℃という高さの範囲である(図3Bおよび3C)。抗体の溶解性の指標を与え得るpI値も広い範囲を示し、7.8〜9.0のpI値を有する抗体があった(図3Aおよび3C)。様々な特徴を有する抗体を、数々のin vitroおよびin vivoの試験(下記を参照されたい)でスクリーニングして、最も望ましい特徴の組合せを決定した。さらに、多数の他のクローンが、さらなるスクリーニングに利用可能である。
6.2 実施例2
ヒト抗HMG1抗体の動態学的分析
様々な技術を用いて、いくつかのヒト抗HMG1抗体の結合の動態学および特異性を試験した。さらに、エピトープマッピング試験では、いくつかのペプチドを使用した。表1にまとめたように、ヒト抗HMG1抗体は様々な結合の動態学および特異性を有することが、これらの分析は示している。さらに、抗HMG1抗体はHMG1B−ボックスおよびA−ボックスを含む様々なエピトープに結合することを、データは指摘している。
6.2.1 材料と方法
組換えのHMG1の生成/単離
組換えのHMG1を、カルモジュリン結合性タンパク質(CBP)融合タンパク質(CBPがHMGB1のN−末端終末に融合している)として、大腸菌から精製する。CBP−HMG1を発現する大腸菌を2〜3時間誘発すると、タンパク質は顕微溶液化により25mM Tris−HCl、150mM NaCl、2mM CaCl2、pH8.0に放出される。溶解した細胞を、125000×gで1時間遠心分離し、ろ過した上清をCaCl2の存在下でカルモジュリンカラムに適用する。カラムを2〜2.5カラム容積の溶解バッファーで洗浄し、次いで、リニアグラジエントで50mM Tris、400mM NaCl、2mM CaCl2、pH8.0の5カラム容積にし、100mM Tris、400mM NaCl、5mM EGTA、pH8.0でタンパク質を溶離する。TritonX114抽出を用いて内毒素を除去する。最終濃度2%のTX−114を用い、4℃で30分間インキュベートし、30分間37℃に移し、遠心分離して相を分離する。タンパク質を2回抽出する。
3つの形態の天然HMG1の調製
核のHMG1を、ATCCからのプロトコールに従って、10%FBSを含むDMEMで培養した293H(ATCC番号CRL−1573、ヒト腎臓、上皮)細胞から調製する。RTで1分未満Trypsin/EDTAを添加することにより、細胞を80%のコンフルエンスで収集した。穏やかにフラスコを流し、その後1100rpmで3分間遠心分離することにより、細胞を直ちにPBSに回収した。細胞をPBSで2回洗浄し、PBS中約2から5×107/mlの最終濃度で2mlエッペンドルフチューブに移し、次いで液体窒素で2分間凍結させ、その後RTで水浴中5〜10分解凍した。凍結解凍のプロセスを、さらに2回繰り返した。溶解した細胞を13000rpmで遠心分離し、上清を新しい滅菌管に移し、−70から−80℃で貯蔵した。用いた上清の量は、凍結解凍前の上清の細胞濃度に基づくものである。
放出されたHMG1を、壊死性の293H細胞の条件培地から調製する。293H細胞を、10%FBSを含むDMEM培地で、培地を交換しないで10日間増殖させた。培地をフラスコから収集し、3000rpmで10分間遠心分離し、次いで上清を0.2umフィルターを通過させ、透析バッグ中に配置し、濃縮溶液(PIERCE)に対して透析した。培地の体積が約10倍減少するまで、濃縮溶液を必要に応じ交換した。濃縮した培地を、次いで、PBS(pH7.2)に対して透析した。濃縮したサンプルに存在するHMGB1の濃度を、サンドイッチELISA(下記を参照されたい)により、スタンダードとして精製したHMGB1を用いて決定した。
活性化したHMG1を、ATCCからのプロトコールに従って、10%FBS、0.05mM 2−メルカプトエタノールを含むRPMI1640(カタログ#03−0078DJ)で増殖させたTHP−1(ATCC番号TIB−202、ヒト単球)細胞から調製する。細胞が約4×105細胞/mlに達したら、最終濃度0.5ug/mlのLPSで一晩(14から16時間)処置した。細胞を1100rpm×3分の遠心分離により採取し、PBSで3回洗浄してLPSを含む培地を完全に除去し、最終濃度約2から5×107/mlのPBS溶液で2mlエッペンドルフチューブに移し、次いで、液体窒素で2分間凍結し、その後RTで水浴中5〜10分解凍した。凍結解凍のプロセスを、あと2回繰り返した。溶解した細胞を13000rpmで遠心分離し、上清を新しい滅菌管に移し、−70から−80℃で貯蔵した。用いた上清の量は、凍結解凍前の上清の細胞濃度に基づくものである。
BIAcore分析によるHMG1結合親和性
実験はすべて、BIAcore3000装置上(BIAcore,Inc.、Piscataway、ニュージャージー州)で行った。簡潔に述べると、各mAbを、標準のアミンカップリング化学を用いて、CM5センサーチップに固定化した。別々に、基準の(コントロールの)フローセルも調製した。HMG1の機器用バッファー中の2倍の段階希釈を、個々のmAbおよび基準のフローセル表面上に、遅い流量で経時的に注射した。HMG1の結合および解離の後、mAbの表面を1M NaCl−50mM NaOHの短時間のパルス投与で再生した。各実験の終わりに、BIAcore,Inc.(Piscataway、ニュージャージー州)が供給するBIA評価用ソフトウェアにより入手可能な定常状態のモデルを用いて、結合曲線を評価した。これらの試験から決定したKd値を表1に列挙する。
直接ELISA(固定化したHMG1)
96ウェルのイムノプレート(EIA/RIAプレート、High binding、Costar)の個々のウェルを、HMGB−1の5μg/ml PBS溶液で、4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートを、PBSに溶解した4%ミルク粉末で37℃で1時間ブロックした。ブロッキング溶液を除去し、様々な濃度のヒト抗HMG1抗体で置換した(図4を参照されたい)。次いでプレートを洗浄し(ELX−405プレートウオッシャー、BIO−TEK)、最終濃度1:125000の2次抗体(抗ヒトIgG−HRP、PIERCE)を37℃で1時間加えた。HRP活性を、SureblueHRP基質(KPL)で検出した。プレートを、Kinetic Microplate Reader(Molecular Devices)を用いて450nmで読んだ。データを表1にまとめ、代表的な結合曲線を図4AおよびDに示す。
サンドイッチELISA(可溶性HMG1)
イムノプレート(EIA/RIAプレート、High binding、Costar)を、抗ヒトIgGFcの10μg/ml PBS(pH7.2)溶液でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。コーティング試薬を除去し、プレートをPBSで簡単にすすいだ。次いで、プレートを4%ミルクで37℃で1時間ブロックし、PBSですすいだ。抗HMG1抗体を、4%ミルクで希釈した。段階希釈するために、抗体を出発濃度20μg/mlで用いた。次いで、希釈した抗HMG1抗体をプレート中に加え、37℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートをPBST(PBS/0.1%tween20)で10回洗浄し、抗原(HMGB1、2μg/ml、または天然のHMGB1では0.7μg/ml)の4%ミルク溶液で37℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを10回洗浄し、マウス抗HMGB1の1μg/mlの4%ミルク溶液で、37℃で1時間インキュベートした。プレートを10回洗浄し、1:1000の抗マウスIgG−HRPで、37℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、展開した。SureblueHRP基質(KPL)でHRP活性を検出した。プレートを、Kinetic Microplate Reader(Molecular Devices)を用いて、450nmで読んだ。データを表1にまとめ、代表的な結合曲線を図4B〜Dに示す。
BIAcore分析による抗体HMG1結合の競合
実験はすべて、BIAcore3000装置(BIAcore,Inc.、Piscataway、ニュージャージー州)上で行った。HMGB−1タンパク質を、標準のアミンの連結化学プロトコールを用いて、BIAcore Handbook(BIAcore,Inc.、Piscataway、ニュージャージー州)に記載されている通りに、CM5センサー上に固定化した。簡潔に述べると、CM5表面に、NHS/EDC活性化を受けさせた。活性化後、HMGB−1を、100nMまたは200nMの濃度で(10mM NaOAc、pH4中)、1100および1200RUの間の表面密度に表面上に注射した。この後、センサーチップ上の非反応の部位を、1Mエタノールアミンの注射で「キャップ」した。参考の目的で、HMGB−1を固定化するのに用いたのと同じ手順を利用したが、いかなるリガンドも用いずにブランクのフローセルも調製した。
1uMおよび2uMのMab G2、G4、G9、S6、およびSynagisを調製した。mAb溶液はすべて、HBS−EPバッファーで(BIAcore,Inc.、Piscataway、ニュージャージー州)調製した。各サイクルは、1μMで注射した第1のmAbの100μLの注射で開始し、その後、混合物における各成分のmAbの最終濃度が第1の注射と等しくなるように、2つの2×濃度のmAbの1:1混合物の、第2の100μLの注射を行った。各注射サイクルの後、HMGB−1表面を、10mM HClの1分のパルス投与で再生した。
全セットを収集した後、注射の各サイクル後の各mAbに対する最大のRU反応を記録した。次いで、これらを用いて、各mAbの反応レベルの平均を計算した。次いで、この結合性の反応の平均を用いて、第1のmAbで飽和した後にHMGB−1表面に結合している各mAbのパーセントを計算した。まとめると、これらの結合/阻止のパターンを用いて、HMGB−1上の非関連の、または関連の部位にmAbが結合しているか否かを決定した。これらのデータを表1にまとめてある。
HMG1への結合対HMG2への結合
超高結合性ELISAプレート(ThermoLab systems、#3855)を、10mMリン酸緩衝食塩水(PBS)、pH7.2で希釈した5ug/mL仔ウシ胸腺HMGB1またはHMGB2のいずれかでコーティングし、4度で一晩インキュベートした。プレートを、CaおよびMgを含まないPBSで2回洗浄し、10mMPBS、pH7.2+1%ウシ血清アルブミン(BSA)で最終濃度10ug/mLに希釈した抗HMGB1抗体100μlを各ウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。ウェルを、100μlのPBS、pH7.2で3回洗浄した。HRP標識した、ヤギ抗ヒトIgGκ鎖(KPL、#14−10−10)および、ヤギ抗ヒトIgGλ鎖(KPL、#14−10−11)を、10mMPBS+1%BSA1:1000で希釈し、100μlを各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。次いで、ウェルをPBS100μl、pH7.2で3回洗浄した。OPD基質(Pierce chemical company、#34006)を製造元の指示に従って調製し、調製した基質100μlを各ウェルに加え、プレートを暗所、室温で20〜30分間インキュベートした。2M H2SO4100μlを加えて反応を停止させ、プレートリーダーで波長490nmでプレートを読んだ。数々の抗体に対するOD値を図4Eに示し、表1にまとめてある。
HMG1Bボックスペプチドのマッピング
96ウェルイムノプレート(EIA/RIAプレート、高結合性、Costar)の個々のウェルを、HMG1Bボックスペプチドのアミノ酸91〜169(図5A)またはアミノ酸150〜183(図5B)の10μg/ml PBS溶液で、4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートをPBSに溶解した4%ミルク粉末で、37℃で1時間ブロックした。ブロッキング溶液を除去し、様々な濃度のヒト抗HMG1抗体で置換した(図5A〜Bを参照されたい)。次いで、プレートを洗浄し(ELX−405プレートウオッシャー、BIO−TEK)、2次抗体(抗ヒトIgG−HRP、PIERCE)を最終濃度1:125000で、37℃で1時間加えた。SureblueHRP基質(KPL)で、HRP活性を検出した。Kinetic Microplate Reader(Molecular Devices)を用いて、450nmでプレートを読んだ。
6.2.2 結果
試験した抗体のほとんどは、固定化したrHMG1に結合することを、ELISA試験は実証した(図4A)。このアッセイでは、rHMG1、E11、G34、およびG20の固定化したもの、および可溶性のものの両方に結合したほとんどの抗体は、可溶性のrHMG1に対してより良好に結合することが分かり、S10、S12、S16、およびG16は固定化したrHMG1にわずかにより良好に結合することが分かった(図4D、およびデータは示さず)。試験した抗体の多くは、rHMG1、または1つもしくは複数の形態の天然のHMG1のいずれかに結合する、いくらかの優先性を示す(表1にまとめてあり、また、図4B〜Cを参照されたい)。例えば、S16は組換えのHMG1および天然のHMG1の両方に結合し、G4は天然の核のHMG1により良好に結合し、S2、S6、およびS10はすべて、rHMG1により良好な結合性を示す(図4B)。興味深いことに、S6はいかなる天然の形態のHMG1にも良好に結合しないが、その結合は放出されたHMG1にいくらかの結合性を示す(図4C、左上)。S16およびG4は、様々な天然型のHMG1に対する結合性において相違をほとんど示さない(図4C、右上および左下)。さらに、抗体を、高度に関連するHMG2タンパク質に対する交差反応性について試験した。E11、S12、およびS16はすべて、HMG2に対していくらかの結合性を示した。興味深いことに、E11は、ここで用いた条件である、抗原を固定化した場合に、HMG1に対するよりもHMG2に対してより良好に結合する様子である。
ほとんどすべての抗体のBIAcore分析を用いて、組換えのHMG1(rHMG1、表1を参照されたい)に対する各抗体のKdを決定した。BIAcore競合アッセイによるいくつかの抗体(G4、G9、S2、およびS6)の分析では、これらの抗HMGB1抗体は、同じ部位、またはおそらくは重なりに高度に関連している部位のいずれかに結合する様子であることが示された。
HMG1Bボックスに対する結合性を試験するために、いくつかの抗HMG1抗体(S2、S6、S10、G2、G4、G9、S12、およびS16)について、ペプチドマッピング試験を行った。図9A〜Bに示すように、G4、S12、およびS16はHMG1ペプチドの91〜169に結合し(図5A)、S12だけはHMG1ペプチドの150〜183に結合する(図5B)。さらに、E11はHMG1Aボックスを認識することが見出された(データは示さず)。
要約すると、単離されたヒト抗HMG1抗体は、広範囲の結合性の特徴を示し、いくつかの結合性の全形態のHMG1(例えば、S16)およびその他は、組換えの形態と、天然の形態(例えば、S10とS2)の間を識別する。これらは、AボックスおよびBボックスを含む数々の様々なエピトープにも結合する。いくつかのヒト抗HMG1抗体を、in vitroおよびin vivoの実験で数々の添加に使用するために選択した(以下を参照されたい)。
6.3 実施例3
抗HMGB1抗体はヒトPBMCからのサイトカインの放出を阻害する
ヒト抗HMG1抗体のパネルが、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)からHMG1誘発性サイトカインの放出を阻害する能力を決定した。以下のサイトカイン、即ち、IL−12、IL−1β、TNF−α、およびIL−6に対する効果を試験した。数々の抗HMG1抗体が、HMG1が誘発する1つまたは複数のこれらのサイトカインの放出を阻害することができる。さらに、HMG1は、NOの放出を刺激することができ、HMG1に対する抗体はこの放出を阻害することができると判定された。いくつかのヒト抗HMG1抗体が、マウスマクロファージにおいてHMG1誘発性サイトカイン遺伝子の発現を低減する能力も実証した。
6.3.1 材料と方法
サイトカインの放出の阻害
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、健常志願者の末梢血から、密度勾配遠心分離により単離した。採血してすぐの、ヘパリン処置した全血を、2容積のPBSと混合した。希釈した血液を、Histopaque−1077(Sigma−Aldrich)の表面上に穏やかに層積し、RTで30分間、400×gで遠心した。血漿と密度勾配溶液の間の界面から、PBMCを収集した。3×PBSで洗浄した後、精製したPBMCを、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および50μMβ−メルカプトエタノールを含むRPMI−1640培地(GIBCO BRL)に再懸濁した。96ウェル細胞培養プレートの各ウェルに、1×105個の細胞を加えた。
PBMCを37℃で2時間、5%CO2とともにインキュベートした。4μg/mlの組換えのHMG1、または2.4×105LPS刺激したTHP−1細胞からの天然の活性化したHMG1、および様々な濃度のヒト抗HMGB−1モノクローナル抗体、RAGE−Fc融合タンパク質、またはHMG1A−ボックス−Fc融合タンパク質を、各ウェル中に加えた。培地に8U/ml(1μg/ml)ポリミキシンB硫酸塩(Sigma−Aldrich)を補って、潜在する内毒素を阻害した。HMG1で刺激しなかった同じドナーからのPBMCを、コントロールとして用いた。無細胞の培地を14時間後に回収し、−20℃で貯蔵した。
培地を、UpstateからのBeadlyteヒトマルチサイトカインフレックスキットを用いて、Luminex100(Luminex Corp)により、炎症性サイトカインについて分析した。炎症促進性サイトカインであるTNF−α、IL−6、IL−1β、およびIL−12(p40)を、組換えのHMG1で刺激した細胞について測定した。さらに、TNF−α、IL−6、IL−1β、およびIL−8を、天然の活性化したHMG1で刺激した細胞について測定した。
サイトカイン放出データを、3回の平均値±標準偏差として表す。抗HMGB1モノクローナル抗体に対するIC50を、HMGB1が刺激したPBMCからのサイトカインの放出の最大の阻害の半分を生じるのに必要とされた抗体の濃度と定義する。これは、PRISMプログラムで計算した。
NO放出の阻害
NOアッセイに使用したマクロファージには、RAW細胞(マウスマクロファージ細胞系)、およびC57BL/6マウスから得た骨髄由来のマクロファージ(mBMMf)が含まれていた。mBMMfは、M−CSFの存在下で3日間培養下で成熟させた後、使用した(「新鮮mBMMf」))。細胞を、96ウェルプレート中に105細胞/ウェルで接種し、無血清a−培地100μlで一晩、HMG1で刺激した。HMGB−1(5μg/ml)およびLPS(1μg/ml)を陽性コントロールとして用いて様々な濃度でマクロファージによるNOの生成を刺激し、これらの刺激で用量依存性の反応が観察された。抗体を、HMG1に対するモル比4:1で試験した。翌日、プレートを1500rpmで5分間回転し、上清を回収する。別の96ウェルプレートに、以下の成分、即ち、刺激した上清およびスタンダード(a−培地で希釈したもの)50μl、NADH25μl、硝酸還元酵素25μl、Griess試薬I 50μlを混合し、プレートを37℃で30分間インキュベートする。次いで、50μlのGriess試薬IIを各ウェルに加え、プレートを室温で10分間インキュベートする。各ウェルの吸光度を540nmで読み、硝酸塩の値を検量線に対して計算する。
HMG1で刺激したマウスマクロファージ(mMφ)のTaqman分析
正常C57BL/6マウスの大腿骨をすすぐことにより、マウス骨髄を回収した。次いで、単離した骨髄細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)および50ng/ml M−CSFを補ったダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で24時間培養し、非接着性の細胞を採集し、T−75フラスコで、10%FBSおよび50ng/ml M−CSFを補った(1×107細胞/15ml/フラスコ)完全DMEMで6日間増殖させた。6日目に接着性の細胞を収集し、96ウェルプレート中、10%FBSを含む5ng/ml MCSFのα−MEM溶液に一晩再接種した(1×105細胞/200μl/ウェル)。
培地をα−MEMで置き換え、2時間インキュベートし、その後飢餓細胞を刺激した。HMGB1(10μg/mlの大腸菌から産生された組換えのCBP−HMGB1融合タンパク質)、マウス−RAGE−Fc、またはヒト−RAGE−Fc融合タンパク質を、RTで20分間、様々なブロッキング試薬の100μg/ml α−MEM溶液と予め混合し、次いで細胞に100μlの混合物を加え、37℃で2時間インキュベートした。次いで、上清を除去し、AmbionのMagMAX(商標)−96Total RNA Isolatio Kitを用いてRNAを抽出した。回収したRNAすべてを、SuperScript(商標)III、およびcDNAを合成するためのオリゴ(dT)プライマー(Invitrogen)との逆転写酵素(RT)反応で使用した。得られたcDNAの1μlまたは2μlを、ABI Prism7700または7000を用いてリアルタイム定量PCR分析(TaqMan)をするために用いた。
6.3.2 結果
いくつかの抗体に対する、代表的なHMG1誘発性のサイトカイン放出滴定曲線を図6A〜Bに示す。試験した各抗体について、IC50値を計算した(表1を参照されたい)。少数の抗体を、天然の活性化したHMG1(LPSが刺激するTHP−1細胞由来、上記を参照されたい)を阻止するその能力についても試験した。E11、S16、およびS17は、RAGE−Fc融合タンパク質とともに天然の活性化したHMG1誘発性IL−6の放出を阻止することができたが、S6、S13、G4、およびG9はそれほど効果的ではなかった(図6C)。これらの試験、および多くの他の試験の結果について、データは示していないが、表1にまとめてある。いくつかの抗体は、低い抗体濃度でサイトカインの放出を阻害することができることは明らかである。これまで試験した抗体の中では、S6が、IL−1β、TNF−α、IL−6、およびNO放出の最良の阻害物質であり、G4がIL−12の最良の阻害物質である。すべてのサイトカインの放出を阻害する能力について、抗体すべてを試験したわけではないことに留意されたい。少数の抗体を、また、単離したマウスのマクロファージ(mMφ)で、rHMG1誘発性のサイトカイン遺伝子発現を阻害するその能力について試験した。E11、G2、およびG4は、HMG1誘発性のIL−1b遺伝子の発現を大幅に低減することができた(図7左、および表1)。G2も、HMG1誘発性のTNF−α遺伝子の発現を大幅に低減することができた(図7右、および表1)。HMG1の細胞表面受容体への結合に及ぼすその効果を決定するためのさらなる分析に、いくつかの抗体を選択した。
6.4 実施例4
抗HMG1抗体は細胞表面受容体へのHMG1の結合を阻止する
RAGEおよびTLR4の両方が、HMG1に対する推定上の受容体として同定されている。ヒト抗HMG1抗体が、1つまたは複数のこれらの推定上の受容体とHMG1の相互作用を阻止することができることを実証するために、いくつかのヒト抗HMG1抗体を、RAGE−Fc融合物へのHMG1の結合を阻止するその能力についてELISAアッセイでアッセイし(図8)、かつ/または細胞レポーター系でTLR4のHMG1誘発性の活性化を阻止するその能力についてアッセイした(図9)。さらに、ヒト抗HMG1抗体が、THP−1細胞の細胞表面へのHMG1の結合を特異的に阻止する能力も実証した(図10)。
6.4.1 材料と方法
THP−1細胞に対するHMG1結合
組換えのラットHMGB−1を、PerkinElmerからのEu−labelling Kitを用いて標識した。HMGB−1対Euのモル比は、1:5である。THP−1を、ATCCからのプロトコール通りに培養した。細胞を収集し、1×DELFIAL*R結合バッファー(PerkinElmer)、50%のDELFIA安定化剤(PerkinElmer)、および0.05%のアジ化ナトリウムを含むアッセイバッファーに1×106/mlの濃度で懸濁した。96ウェル細胞培養プレートのウェル中に、細胞100μl(1×105個)を加えた。プレートを4℃で1時間、穏やかに振盪しながらインキュベートした。様々な濃度(333、166.5、83.25、41.6、20.8、10.4、および5.2nM)のヒト抗HMGB1抗体E11もしくはG2、または可溶性のヒトRAGE−Fcと混合したユーロピウムで標識したHMGB−1 2nMを含むアッセイバッファー100μlを、それぞれ、各ウェル中に加えた。4℃で1時間穏やかに振盪しながらインキュベートした後、細胞を1×L*R洗浄バッファー(PerkinElmer)で4回、1200rpm×5分間遠心分離することにより洗浄した。各ウェル中に増強溶液200μlを加えて解離させ、615nmでEuの蛍光を増強した。蛍光はWallac Victor Fluorometerで測定した。アッセイを3回行い、ヒト抗体R3−47を陰性のイソ型コントロールに用いた。
ELISAによるHMG1のRAGE−Igへの結合
RAGE−Fc融合タンパク質の5μg/ml PBS溶液を、50μl/ウェルでELISAプレートの各ウェルに加え、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートを、5%ミルク200μlで、37℃で1時間ブロックし、PBS/Tweenで3×洗浄した。希釈したHMGB1溶液50μl/ウェルであった。用量曲線では、HMGB1濃度は、4ug/ml PBS溶液で開始した。抗体を阻止するために、HMGB1を別のプレートで、ヒト抗HMG1抗体またはバッファーとともにプレインキュベートし、次いでRAGEでコーティングしたプレートに移した。次いで、プレートを室温で2時間インキュベートし、3×洗浄した。固定化したRAGE−Fcに結合しているあらゆるHMG1を検出するために、各1ug/mlのビオチン化マウス抗HMG1mAb(10D4、4H11、3E10、および5C12)全Ab:4ug/mlの混合物を各ウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、ストレプトアビジン−HPRを各ウェルに加え、15分間インキュベートした。次いで、プレートを3×洗浄し、吸収乾燥させた。TMB発色剤100μlを加え、プレートを650nmで読んだ。値を、0%阻害に等しいHMG1単独での阻害のパーセントとして計算した。図9におけるデータおよび表1にまとめたものは、2つの別々の実験の平均を表している。
TLR4活性化アッセイ
HuTLR4およびCD14を安定して発現した293細胞(Invitrogen)を、96ウェルプレートに、10%FCSを含むDMEM100μl中、1ウェルあたり2×104個を接種し、一晩置いた。次いで、細胞に、キットが示すように、NF−κB/Luc(Stratagene)ルシフェラーゼレポーター構築物をトランスフェクトし、24時間置いた。HMGB1と抗HMGB1の混合物を100μl/ウェルで、細胞に加え、一晩置いた。次いで、TLR4活性化を反映するためにルシフェラーゼ活性を測定した(Promega)。
6.4.2.結果
試験した抗体のいくつかは、HMG1のRAGEへの結合を少なくとも35%(例えば、G2、G4、S10、S16、S2、およびS6)阻害し、試験した抗体のうちG2およびG4の2つは試験した条件下でほぼ75%結合を阻害したことを、これらの試験は実証している(図8および表2)。いくつかの抗体は、RAGEの結合を阻害しなかった(例えば、G9、G12、G16、S14など、表1を参照されたい)。E11およびG20は、TLR4のHMG1活性化を阻害することができた(図9および表1)。さらに、E11およびG2ヒト抗HMG1抗体は両方とも、HMG1のTHP−1細胞への結合を阻止する(図10および表1)。両方のアッセイで今までに試験した抗体のうち、RAGEの結合性およびTLR4活性化の両方を阻止する能力を示したものはなかった。しかし、E11は、TLR4活性化、およびHMG1のTHP−1細胞への結合を阻止することができた。いくつかの抗体を、in vivoでの炎症反応に対するその効果を実証するためのさらなる分析に選択した(下記を参照されたい)。
実施例5
抗HMG1抗体は、盲腸結紮穿刺(CLP)モデルで敗血症を阻害する
ヒト抗HMG1抗体は、敗血症における死亡率を阻害することができることを実証するために、我々は、マウスに敗血症を確立し、いくつかの抗体処置プロトコールについて生存率をモニターした。マウスを、多微生物性の腹膜炎および敗血症をまねく、外科的に作られた盲腸の憩室症を穿孔することにより引き起こされた敗血症の特徴がはっきりしたモデルである、盲腸結紮穿刺(CLP)を受けさせた(FinkおよびHeard、上述;Wichmannら、上述;ならびにRemickら、上述)。いくつかのヒト抗HMG1抗体で処置したマウスに対する生存率を、イソ型のコントロール抗体で処置したマウスと比べた。G4、S6、およびS16を含む、いくつかのヒト抗HMG1抗体は、CLPモデルで著しい保護を実証した(図11A〜D、および表1)。
6.4.3 材料と方法
敗血症における抗HMGB1
生の腹腔内感染および敗血症を確立するために、以前に記載されているように、Balb/Cマウス(1群あたり9〜11匹)にCLP手順を受けさせた(FinkおよびHeard、1990年、J Surg Res、49巻、186〜196頁;Wichmannら、1996年、J Surg Res、65巻、109〜114頁)。ケタミン(75mg/kg、Fort Dodge Laboratories、Fort Dodge、アイオワ州)およびキシラジン(20mg/kg、Boehringer Ingelheim)の筋肉内注射で麻酔後、15mmの正中線切開術を行って盲腸を露出した。先端部から5.0mm結紮した後、盲腸基部を22ゲージの針で1回穿刺し、少量の糞便(長さ1mm)を押し出した。盲腸を、その正常の腹腔内位置内にもどし、2層の連続縫合で傷を閉じた。手術30分後に、すべての動物に、食塩水(0.9%s.c.、20ml/kg体重)の蘇生、および単回投与量の抗生物質を(マウス1匹あたりイミペネム0.5mgの200μl滅菌食塩水溶液をs.c.注射)(Primaxin、Merck)与えた。
抗HMG1抗体、またはイソ型のコントロール抗体(50μg/マウスを200μlの体積で)を、手術24および48時間後に腹腔内投与した。ある追跡実験では、抗HMG1抗体またはイソ型のコントロール抗体(8mg/kg)を、手術24時間後に腹腔内投与した(図11C〜D)。これらの実験は盲検法であり、医師はケージを無作為化し、他の研究者がコード化した抗体を投与した。マウスの生存を、全14日間、1日2回モニターした。24および48時間にマウス1匹あたり50μgの抗体を送達したいくつかの代表的な実験に対する生存曲線を、図11Aおよび11Bに示す。手術24時間後8mg/kgの抗体を送達したいくつかの代表的な実験を組み合わせることにより生成した生存曲線を、図11Cに示す。いくつかのさらなる抗体、およびオリゴクローナル抗体のプールを8mg/kgで、手術24時間後に投与して試験した(図11D)。
6.4.4 結果
これらの試験は、重篤な敗血症マウスをヒト抗HMG1抗体で受動免疫すると保護的であったことを実証している。特に、ヒト抗HMG1抗体S6、S16、E11、およびG4は、CLPモデルで保護的であった(図11A〜Dを参照されたい)。いくつかの試験では、9日目の生存率は、14日目における生存率よりも良好であった(図11B)。長期の生存率におけるこの違いは、マウスのシステムにおいてヒト抗体の半減期が低減することによるものと思われる。しかし、ヒト抗HMG1抗体で処置した動物の大多数は、単に死亡が遅れただけではなく、むしろ致死的である敗血症に対し完全な保護が付与されていた。抗HMG1抗体S6は、このモデルで最も広範に研究されており、多くの実験で少なくとも30%の保護が再現性よくもたらされていた(代表的な累積のデータを図11Cに示す)。
6.5 実施例6
HMG1はいくつかの炎症性状態の動物モデルで上方制御される
血清HMG1レベルは、ヒトでは、敗血症/敗血症ショックの間に上昇することが示されている。我々は、炎症性疾患の、いくつかの関節炎モデル、急性肺傷害、および腹膜炎を含む、数々の異なる炎症性疾患の動物モデルにおけるHMG1タンパク質および/または遺伝子発現のレベルを試験した。今までに試験したすべてモデルで、疾患の進行とともにHMG1レベルが上昇することを我々は見出した。さらに、いくつかのサイトカインレベルおよび/または推定上のHMG1受容体分子も上昇することを見出した。
6.5.1 材料と方法
炎症性疾患の誘発
各疾患モデルを誘発するために用いた方法について、以下の詳しい記載を参照されたい。HMG1および様々なサイトカインのレベルを、疾患を誘発した非処置の動物で試験し、正常動物と比較した。
受動的CIAマウスにおけるHMG1レベル
正常、または受動的CIAマウスの前足を10日目に採取し、液体窒素で瞬間凍結し、アッセイするまで−80℃で貯蔵した。関節のサンプルおよび溶解バッファーを、特定化した溶解マトリックスA粒子(Qbiogene)を予め満たした耐衝撃性の2mlチューブに加えた。関節をFastPrep(登録商標)ホモジナイザーでホモジナイズし、次いで遠心分離した。上清を採取し、HMG1レベルをELISAにより、メソスケール(MesoScale)技術(Meso Scale Discovery)を用いて判定した。図12Aに示したデータは、各群における5本の足の平均である。
能動的CIAマウスのTaqman分析
正常および能動的CIAマウスの前足および後ろ足を35日目に採取し、液体窒素で瞬間凍結し、アッセイするまで−80℃で貯蔵した。関節のサンプルおよび溶解バッファーを、特定化した溶解マトリックスA粒子(Qbiogene)を予め満たした耐衝撃性の2mlチューブに加えた。関節をFastPrep(登録商標)ホモジナイザーでホモジナイズし、RNAを、製造元の指示に従ってQiagenのRNAseミニキットまたはRNA STAT−60を用いてホモジネートから調製した。cDNAを合成するために、回収したRNAすべてをSuper Script(商標)IIIおよびオリゴ(dT)プライマー(Invitrogen)での逆酵素反応で使用した。cDNA1μlまたは2μlを、ABI Prism7700または7000を用いたリアルタイム定量PCR分析(TaqMan)に用いた。HMGB1、およびいくつかの推定上の受容体分子であるRAGE、TLR2、TLR4、およびTLR9の相対的な遺伝子の発現を、後ろ足および前足の両方で別々に試験した(図12B)。IL−1b、IL−6、およびTNF−aの、いくつかのサイトカインの相対的な遺伝子の発現も、後ろ足および前足の両方で別々に試験した(図12C)。正常なマウスにおける各分子の遺伝子の発現を1に設定し、各分子の相対的な遺伝子の発現をプロットしてある。各分子の下の番号が値を示している。
AIAラットにおけるHMG1レベル
AIAラットの後ろ足を、0、5、10、15、および20日目に収集し、液体窒素で瞬間凍結し、アッセイするまで−80℃で貯蔵した。AIAの関節を処理加工し、上記の受動的CIAマウスに用いたのと同じプロトコールを用いてアッセイした。関節ホモジネートに存在するHMG1のレベルを、図12Dで、経時的にプロットしてある(右上のグラフ)。疾患の進行の2つの主要な指標である、関節の炎症および体重の減少も、プロットしてある(それぞれ、上左および下左のグラフ)。
黄色ブドウ球菌曝露後のマウス血清におけるHMG1およびサイトカインのレベル
黄色ブドウ球菌に曝露したマウスからの血清を、曝露2、8、および12時間後に採取した。HMG1、IL−1b、およびTNF−aのレベルを、ELISAにより、メソスケール技術(Meso Scale Discovery)を用いて判定した。HMG1、IL−1b、およびTNF−aのレベルを、経時的にプロットする(図12E)。HMG1およびサイトカインに対して(それぞれ右および左の軸)、それぞれ異なるスケールを用いていることに留意されたい。ガラクトサミン単独に曝露したマウス、または曝露を受けないマウスは、HMG1またはサイトカインにおけるのと類似の上昇を示さなかった(データは示さず)。
ALIマウスのBAL液におけるHMG1レベル
PBS(コントロール)またはLPS(肺傷害)のどちらかに曝露したマウスからのBAL液を、曝露後の示された時間に収集し、HMG1のレベルをメソスケールELISAにより決定した。HMG1のレベルを、経時的にプロットしてある(図12F、左のプロット)。存在する全細胞の計数は、疾患の進行の指標であり、やはり経時的にプロットしてある(図12F、右のプロット)。
処置後のAIAラットにおけるHMG1レベル
AIAラットの後ろ足を、処置後(下記、実施例9を参照されたい)、上記のように処理加工し、HMG1、IL−6、およびTNF−aのレベルを、メソスケールELISAにより判定した。
MesoScaleELISA
簡潔に述べると、プレートをHMGB1またはサイトカイン(例えば、IL−1b、TNF−a、IL−6など)に対するキャプチャー抗体で予めコーティングし、MSDブロッカーバッファー(MSD、カタログ番号R93AA−1)で1時間ブロックした。スタンダード(好適なサンプルバッファーに希釈した、例えば、正常マウスBAL液、血清、または関節ホモジネート)、およびサンプルを、20ulの体積でプレートに加えた。1次抗体および検出抗体の混合物20ulを各ウェルに加え、4時間振盪しながら室温でインキュベートした。次いでプレートを洗浄し、リードバッファー(read buffer)(MSD、カタログ番号R92TD−2)を加え、Sector Imager6000上で読んだ。HMG1を検出するために、1次抗体はAffinity Rabbit抗HMGB1ポリクローナル抗体(Becton Dickinson Biosciences、カタログ番号556528)であり、検出抗体はヤギ抗ウサギMSD検出抗体(MSD、カタログ番号R32AB−1)であった。
6.5.2 結果
3つの関節炎モデルを試験した。各モデルで、関節におけるHMG1レベルは、疾患の進行と同時に上昇することが分かった。受動的CIAマウスでは、広範囲の関節の炎症が見られた場合(下記および図13Aを参照されたい)、HMG1のレベルは10日目までに約10倍上昇した(図12A)。能動的CIAマウスでは、炎症性疾患に関与することが知られているHMG1、いくつかのサイトカイン、およびいくつかの受容体のレベルは、やはり、疾患の進行と同時に上昇が見られた(図12B〜C、および15A)。RAGE受容体は、前足および後ろ足の両方で約2倍の上昇を示し、TLR2受容体およびTLR4受容体は、前足では中程度の、それぞれ2倍および3倍の上昇を、後ろ足では、それぞれ19倍および17倍の劇的な上昇を示した。TLR9のレベルは、後ろ足で上昇したにすぎなかった(7倍)。サイトカインIL−1b、IL−6、およびTNF−aの発現レベルは、前足では、それぞれ39倍、145倍、および7倍の、後ろ足では、それぞれより劇的な247倍、361倍、および76倍の同じ傾向の上昇を示した。AIAラットモデルでは、関節ホモジネートにおけるHMG1レベルは、関節の炎症が最も重症であった場合に、15日目までに検出不可能なレベルから200ng/mlを超えるレベルに上昇した(図12D、左と右のグラフを比較されたい)。約20日目に炎症が低減したとき、HMG1レベルにおける対応する低減も見られた。
2つの他の疾患モデルも試験した。図12Eは、黄色ブドウ球菌の腹膜炎モデルにおいて曝露約2時間後に始まった、経時のHMG1レベルにおける一貫した上昇を示している。TNF−aおよびIL−6のレベルは曝露後直ちに鋭く上昇し、TNF−aのレベルは2時間でピークに達し、低下し、次いで曝露約9時間後に再び上昇した。IL−6レベルは、約2時間でピークに達し、次いで一般に安定を保ち、その後わずかに上昇するにすぎない。急性肺傷害のマウスモデルでは、BAL液におけるHMG1レベルは、LPS曝露48時間後までに、検出不能のレベルから1500ng/mlを超えるレベルにその後上昇した(図12F、左のグラフ)。HMG1レベルにおけるこの上昇は、LPS曝露したマウスからのBAL液に存在する細胞浸潤物(全細胞数)における上昇と相関している(図12Fの左と右のグラフを比較されたい)。HMGレベルは、PBSバッファーに曝露したマウスからのBAL液では検出不可能であった(図12F、左のグラフ)。これらの試験は、HMG1のレベルは、3つの関節炎モデル、急性肺傷害モデル、および腹膜炎モデルを含む数々の炎症性疾患モデルにおける疾患の進行とともに上昇することを指摘している。抗HMG1抗体はHMG1レベルの上昇と関連する他の炎症性疾患に有用であることを実証するためのこれらのモデルにおけるさらなる試験に、いくつかのヒト抗HMG1抗体を選択した。
我々は、PBS、ヒトイソ型コントロール(HuIgG)、G4、A−ボックス−Fc融合物、およびメトトレキセート(MTX)を、HuIgGまたはRenbrelまたはG4のいずれかと組み合わせて処置した後の、AIAラットの関節におけるHMG1、IL−6、およびTNF−aレベルも試験した。図12Gは、各処置後のHMG1(左上)、およびIL−6(左下)のレベルを示している。HuIgGまたはA−ボックス−Fcでの処置は、HMG1またはIL−6のレベルは大幅に低下させなかった。しかし、G4単独、およびMTXをHuIgGまたはRenbrelのいずれかと組み合わせたものは、HMG1およびIL−6のレベルにおいて同様の低下を示し、MTXとG4の組合せはレベルを正常まで低下させた。G4は、やはりTNF−aのレベルを大幅に低下させたが、MTX+HuIgGは、このサイトカインに対してむしろ低下を示した(図12G、右上)。
6.6 実施例7
抗HMG1抗体は、受動的コラーゲン誘発性関節炎(CIA)マウスモデルにおける疾患の進行の重症度を阻害する
HMG1に対するヒト抗体は治療に有用であることを実証するために、我々はヒト抗HMG1抗体のパネルを試験して、受動的マウスモデルにおけるコラーゲン誘発性関節炎を処置した。この一連の実験では、我々は、臨床上の関節炎が発症する前に処置を始める、予防モデルを利用した。この試験では、我々は、抗HMG1抗体の有効性を、既知の処置プロトコールであるRenbrel(齧歯動物モデル系で使用するための、認可されているEnbrel(商標)の代用分子)単独、またはRenbrel(商標)とメチルトレキセート(methyltrexate)(MTX)の組合せのいずれかの有効性と直接比較した。
我々はここで初めて、HMG1に対する抗体が受動的CIAマウスRAモデルにおける予防に有効性を示したことを実証している。実際、足の炎症を低減する上で、ならびに骨の損失および軟骨の損傷を低減する上で、抗HMG1抗体G4はRenbrel単独よりも有効であることが示され、抗HMG1抗体S6はMTX/Renbrel治療よりも有効であった。
6.6.1 材料と方法
受動的コラーゲン誘発性関節炎(CIA)の誘発
関節炎モデルを確立するために、6〜8週齢のオスDBA/1Jマウス(Jackson Labs、Bar Harbor、メイン州)を用いた。一般に、1群あたり5〜8匹のマウスを用いる。0日目、マウスを、1匹あたり2mgの抗コラーゲンmAbカクテル(Chemicon#ECM1100、10mg/ml)で尾部静脈内i.v.で免疫化した。3日目に、引き続き、1匹あたり50μgのLPSをマウスにi.p.注射した。各実験には、以下のようないくつかの動物群があった:実験1では群A〜E、実験2では群G〜J、および群L〜N。さらなる群のマウス(群F、K、およびO)は正常コントロールとして非処置であった。表4に示すように、下記の処置を投与した。
疾患のモニタリング
0日目に始めて、すべての動物を毎日観察して、動物の足における疾患の状態を評価し、これはそれぞれの足の定性的な臨床スコアを評価することにより行った。毎日、各動物は、その臨床上の疾患の状態に従って4本の足にスコア付けをされる。スコア付けは、2人の観察者が行い、その少なくとも1人はブラインドである。さらに、各々のマウスの体重を測って体重の変化を追跡し、同時に足にスコア付けをする(図6Aおよび6Dを参照されたい)。
足首/手首/中足部/前足部に対する等級付けスケールは以下の通りである。
0=正常 2=重症の腫脹
1=明確な腫脹 3=最大限に重症の腫脹および体重増加なし
各々の足の4本の外側の指に対する等級付けスケールは、関与するか、または関与しないか、即ち、1または0で等級付ける。例えば、最大限に関与する左後ろ足は、足首=3、中足部=3、指=4(臨床スコア=10単位)とスコア付けられる。我々は、これをそれぞれの足に対して繰り返し、スコアを加算する。14日目、または総計の臨床スコアが40に達し関節の組織学的評価を行った場合にはそれより早く、マウスを安楽死させる。
組織学
各動物からの後肢の脛距関節を評価し、Badgerら、2001年、Arthritis & Rheumatism、44巻、128〜37頁に記載されているように組織学的変化について評価し、スコア付けをした。簡潔に述べると、32日目に動物を屠殺し、後ろ足をホルマリンで固定しCal−Rite(Richard−Allen Scientific、Kalamazoo、ミシガン州)で脱灰した。次いで、足を、遠位の脛骨の骨幹で脚から取り除いた。ルーチンの処理加工後、サンプルを包埋し、冠状切片を平面の中ほどで脛距関節および距骨関節を介して切断した。切片をサフラニンOで染色し、ファーストグリーン(fast Green)で対比染色した(データは示さず)。
骨、および関節の軟骨/関節周囲の軟部組織の組織学的特徴を、ブラインドの観察者が別々にスコア付けした(図13Bおよび13C)。骨を以下のように等級付けた:0=正常、1=骨膜の繊維性骨の形成を伴う骨膜下の線維症、2=髄の炎症、骨内膜の、および骨梁骨の再吸収、3=広範囲の炎症、4=肉芽組織による髄の置換、小さな骨梁骨の残存、皮質の輪郭の広範囲の閉塞。軟骨/滑膜を以下のように等級付けた:0=正常、1=滑膜および周囲の組織に軽症のリンパ球性の炎症、2=滑膜の線維化および浮腫、関節隙に部分的なリンパ球の浸潤、軽度の軟骨のパンヌスの侵食、3=関節隙の広範囲の浸潤、周辺性のおよび肋軟骨下の軟骨の侵食、局所的な壊死性の液化を伴う軟部組織の広範囲の線維化。
6.6.2 結果
HMG1抗体での処置が、受動的CIAマウスモデルにおいて疾患の重症度を予防し、または低減することができることを実証するためにいくつかの実験を行った。実験1では、マウスにLPSを注射した3日後に開始して、抗HMG1抗体S6またはG16(0.2mg/マウス)でマウスを処置した。13日間にわたって、マウスに全6投与量を与えた。同時にコントロールのマウスに、ヒトmAb(0.2mg/マウス)を与えた。最後の群には、MTX(0.2mg/マウス、12日間にわたって4投与量)およびRenbrel(0.2mg/マウス、10日間にわたって2投与量)の組合せ治療を与えた。関節炎の進行を、最初の処置後、毎日評価した。図13Aのグラフは、試験の経過にわたる、各処置群に対する足の炎症スコアを示している。図13Bは、CIAの予防モデルに対する、骨、軟骨、および炎症に対する全体の組織学的スコアを示している。このモデルでは、後ろ足は一定しないで冒されている可能性があるので、前足が疾患状態のより予測可能な指標であることに留意することが重要である。図13Cは、前足単独に対する、骨、軟骨、および炎症の組織学的スコアである。ヒトIgGを投与しても、関節炎の発症には効果を及ぼさなかった。しかし、抗HMG1 S6抗体処置した動物は、コントロールの動物に比べて、骨、軟骨、および全体の炎症スコアが大幅に低下していた。著しいことは、抗HMG1 S6抗体で処置した動物は、MTX/Renbrel組合せ治療で処置したものよりも、著しく良好であった(図13Bおよび13C)。
疾患の進行の別の臨床上の特徴は体重の減少である。コントロールの動物に対する相対的な体重スコアは、試験の経過の間、正味の低下を示している。抗HMG1 S6抗体で処置したマウスに対する臨床スコアは著しい保護を示していたが、この群の動物は体重において正味の減少も示していた。しかし、抗HMG1 S6抗体処置した動物は、コントロール群ほど大きく減少しなかった。MTX/Renbrel処置動物も、試験の初期には体重の正味の減少を示したが、最後には非処置の動物に追いついた(図13D)。これらの結果は、抗HMG1抗体は、疾患の発症前に投与した場合、関節の損傷および他の症状に対して効果的に保護することができることを実証している。特に、これらの結果は、抗HMG1 S6抗体処置はCIAマウスにおける疾患の重症度を低減するのに著明な効果があることを示している。この実験は、関節炎モデルにおけるS6の保護的効果を代表しないことがあることに留意すべきである。抗HMG1 S6抗体処置は、マウスCLP敗血症モデルにおいて優れた保護を繰り返し示していたが(上記実施例5を参照されたい)、関節炎モデルでは結果はより変動的であった。この変動は、抗体調製物、動物モデル、抗体の薬物動態学、および他の類似のパラメータにおける相違を反映している可能性がある。
実験2および3では、マウスにLPSを注射して3日後に開始して、マウスを抗HMG1抗体G4(10mg/kg)で処置した。実験2では、マウスに13日間にわたり全6投与量を与え、実験3では同期間にわたり全4投与量を与えた。同時に、コントロールのマウスに、ヒトmAb(10mg/kg)またはPBSのいずれかを与えた。実験2では、最後の群にRenbrel(投与量はG4と同じ)を与えた。関節炎の発症を、最初の処置後毎日評価した。図14A〜Bにおけるグラフは、試験の経過にわたる足の炎症スコアを示している。実験2より(図14A)、抗HMB1抗体G4はRenbrel単独よりも、足の炎症を低減する上で有効であることが明らかである(パネル右)。実験3からのデータは(図14B)、抗HMB1抗体G4は、足の炎症よりなお少ない頻度で投与することができることを示している。G4抗体は、これ、および他のいくつかの関節炎モデルで、著しい保護を繰り返しもたらした(下記、実施例8および9を参照されたい)。
6.7 実施例8
抗HMG1抗体は、能動的コラーゲン誘発性関節炎(CIA)マウスモデルにおいて疾患の進行の重症度を阻害する
HMG1に対するヒト抗体は有用な治療であることを実証するために、我々は、マウスモデルにおける能動的コラーゲン誘発性関節炎を処置するための抗HMG1抗体のパネルを試験した。この一連の実験では、我々は、臨床上の関節炎が発症する前に処置を開始する予防モデルを利用した。この試験では、我々は、抗HMG1抗体の有効性をRenbrelの有効性と比較した。
我々はここで初めて、HMG1に対する抗体が能動的CIAマウスRAモデルにおいて足の炎症および体重の減少を低減する上で有効性を示したことを実証している。実際、足の炎症を低減する上で、抗HMG1抗体G4はRenbrel単独よりも有効であることが示された。
6.7.1 材料と方法
能動的コラーゲン誘発性関節炎(CIA)の導入
6〜8週齢のオスDBA/1Jマウス(Jackson Labs、Bar Harbor、メイン州)を用いた。0日目に、イソフルランで麻酔した動物の尾部の基部に、0.1N酢酸50μlに溶解し、等容量の完全フロイントアジュバント(Chondrex、Redmond、ワシントン州)で乳化したウシTypeIIコラーゲン(CII)200μgを皮内注射した。3週間後、21日目に、0.1N酢酸25μlに溶解し等容量の不完全フロイントアジュバント(Difco、Detroit、ミシガン州)で乳化したCII 100μgの第2の類似の皮内注射を与えた。
疾患のモニタリング
14日目に開始して、すべての動物を毎日観察して、その足における疾患の状態を評価したが、これはそれぞれの足の定性的な臨床スコアを評価することにより行った。毎日、各動物は、その臨床上の疾患の状態に従って、4本の足にスコア付けをされる。スコア付けは、2人の観察者が行い、その少なくとも1人はブラインドである。さらに、各々のマウスの体重を測って体重の変化を追跡し、同時に足にスコア付けをする。
足首/手首/中足部/前足部に対する等級付けスケールは以下の通りである。
0=正常 2=重症の腫脹
1=明確な腫脹 3=最大限に重症の腫脹および体重増加なし
各々の足の4本の外側の指に対する等級付けスケールは、関与するか、または関与しないか、即ち、1または0で等級付ける。例えば、最大限に関与する左後ろ足は、足首=3、中足部=3、指=4(臨床スコア=10単位)とスコア付けられる。我々は、これをそれぞれの足に対して繰り返し、スコアを加算する。36日目、または総計の臨床スコアが40に達し関節の組織学的評価を行った場合にはそれより早く、マウスを安楽死させる。
6.7.2 結果
我々は、ヒト抗HMG1抗体での処置が、能動的CIAモデルにおいてCIAの疾患重症度を予防し、または低減することができるか否かを試験した。マウスを、抗HMG1抗体G4、イソ型のコントロール抗体、または10mg/kgのRenbrelのいずれかで、21日目に開始して3日毎に処置した。関節炎の発症を毎日評価した。図15Aのグラフは、試験の経過にわたる、各処置群の足の炎症スコアを示している。ヒトIgGを投与しても関節炎の発症には効果がなかった。しかし、抗HMG1 G4抗体で処置した動物は、コントロールの動物に比べて炎症スコアが大きく低下している。顕著なことに、抗HMG1G4抗体で処置した動物は、Renbrel治療で処置したものよりも、著しく良好であった(図15、左および右のパネルを比較されたい)。
このモデルにおける疾患の進行の臨床上の別の特徴は体重の減少である。コントロールの動物に対する相対的な体重スコアは、試験の経過の間、正味の減少を示している。抗HMG1 G4抗体処置したマウスに対する臨床スコアは著しい保護を示したが、この群の動物は体重において正味の減少も示していた。しかし、抗HMG1 G4抗体処置した動物は、コントロール群ほど大きく減少しなかった。これらの結果は、抗HMG1抗体は、疾患の発症前に投与した場合、関節の損傷および他の症状に対して効果的に保護することができることを実証している。特に、これらの結果は、抗HMG1 G4抗体処置は、CIAマウスモデルにおける疾患の重症度を低減するのに、著明な効果があったことを示している。
6.8 実施例9
抗HMG1抗体は、アジュバント誘発性関節炎(AIA)ラットモデルにおける疾患の進行の重症度を阻害する
我々は、アジュバント誘発性関節炎(AIA)ラットモデルで、ヒト抗HMG1抗体G4をさらに試験した。この一連の実験では、我々は、臨床上の関節炎が発症する前に処置を開始する予防モデルを利用した。この試験では、我々は、抗HMG1抗体の有効性を、Renbrelの有効性と比較した。
我々はここで初めて、HMG1に対する抗体(G4)が、AIAラットRAモデルにおける足の炎症を低減するのに有効性を示したことを実証している。実際、足の炎症を低減する上で、抗HMG1抗体G4はRenbrel単独よりも有効であることが示された。抗HMG1 G4動物では、臨床スコアに約34%の低下が見られたが、Renbrel処置動物では約11%の低下しか見られなかった。さらに、我々は、メトトレキセートとG4の組合せが、メトトレキセートとRenbrelの組合せよりも足の炎症スコアを低下させるのにより効果的であったことを実証している。
6.8.1 材料と方法
アジュバント誘発性関節炎(AIA)の誘発
6〜8週齢のメスDAラット(Harlen)を使用した。0日目に、イソフルランで麻酔した動物の尾部の基部に、不完全フロイントアジュバント(Difco、Detroit、ミシガン州)100μlと混合したミコバクテリウムブチリカム(mycobacterium butyricum)(Difco#0640−33−7)0.75mgを皮内注射した。表5に示すように、以下の処置を投与した。
ヒト抗HMG1抗体G4、A−ボックス−Fc融合物、およびhuIgGイソ型コントロールを10mg/kgで、0〜15日に3日毎に投与した。メトトレキセート0.8mg/kgを0〜15日に6日毎に投与し、Renbrelを、処置群5では2.5mg/kgを0〜15日に2日毎に、処置群6では4mg/kgを0〜15日に3日毎に投与した。
疾患のモニタリング
6日目に開始して、すべての動物を毎日観察して、その足における疾患の状態を評価したが、これはそれぞれの足の定性的な臨床スコアを評価することにより行った。毎日、各動物は、その臨床上の疾患の状態に従って4本の足にスコア付けをされる。スコア付けは、2人の観察者が行い、その少なくとも1人はブラインドである。さらに、各々のマウスの体重を測って体重の変化を追跡し、同時に足のスコア付けをする。
足首/手首/中足部/前足部に対する等級付けスケールは以下の通りである。
0=正常 1=かろうじて認められる腫脹
2=明確な腫脹であるが重症ではない 3=重症の腫脹
4=最大限に重症の腫脹および体重増加なし
各々の足の4本の外側の指の関節は、関与するか、または関与しないか、即ち、1または0で等級付ける。例えば、最大限に関与する左後ろ足は、足首=4、中足部=4、MTP=4、PIP=4、DIP=4(20単位)とスコア付けられる。我々は、これをそれぞれの足に対して繰り返し、スコアを加算する。21日目、または総計の臨床スコアが80に達し関節の組織学的評価を行った場合にはそれより早く、ラットを安楽死させる。
6.8.2 結果
我々は、ヒト抗HMG1抗体G4が、ラットにおけるAIAの重症度を予防し、または低減することができると判定した。AIAラットを、21日目に開始して、3日毎の、PBS、抗HMG1抗体G4、イソ型のコントロール抗体(HuIgG)10mg/kgで、または2日毎の2.5mg/kgのRenbrelのいずれかで処置した。さらに、AIAラットを、Renbrel、G4、またはHuIgGを含むいくつかの他の治療と組み合わせたメトトレキセートで処置した。AIAラットは、また、HMG1A−ボックス−Fc融合タンパク質でも処置した。関節炎の発症を毎日評価した。図16Aにおけるグラフは、試験の経過にわたる、抗体またはRenbrel単独の処置群、ならびにPBSおよび通常のコントロール群の各々に対する足の炎症スコアを示す。ヒトIgGを投与しても関節炎の発症には効果はなかった。しかし、抗HMG1 G4抗体で処置した動物は、コントロールの動物に比べて炎症スコアが大きく低下していた。顕著なことに、抗HMG1G4抗体で処置した動物は、Renbrel治療単独で処置したものよりも、著しく良好であった(図16A、左および右のパネルを比較されたい)。抗HMG1 G4動物では臨床スコアに約30%の低下が見られ、Renbrel処置動物では約25%の低下しか見られなかった。
図16Bにおけるグラフは、抗体単独と比べた、組合せ療法処置群に対する経時の足の炎症スコアを示しており、HMG1A−ボックス−Fc融合タンパク質処置群も含まれている。HMG1A−ボックス−Fc融合タンパク質単独で炎症スコアを低下させるが、G4単独ほど効果的ではない。Renbrelと組み合わせると、G4単独に比べて炎症スコアを低下させた。MTXは、MTXの組合せとして抗体の低下に最も貢献している様子であり、HuIgGコントロール抗体は、MTX/Renbrelの組合せと類似した炎症の低減を示した。しかし、MTXとG4の組合せは、MTX/Renbrelの組合せよりも効果的であり、炎症スコアをほぼ正常に低下させた。様々な処置群に対して見られた足の炎症スコアの低下は、AIAラットの関節に見られたHMG1、IL−6、およびTNF−aのレベルの低下と相関していた(図12Gを参照されたい)。
6.9 実施例10
抗HMG1抗体は、腹膜炎の黄色ブドウ球菌マウスモデルにおける生存を改善する
我々は、血清HMG1レベルの上昇が見られる重症マウス腹膜炎モデルで、いくつかのヒト抗HMG1抗体も試験した(上記を参照されたい)。ここでは、我々は、ヒト抗HMG1抗体での処置がコントロールよりもほぼ30%生存を向上させることを実証している。
6.9.1 材料と方法
腹膜炎の導入
4〜6週齢のメスBALB/cマウスを使用した。熱不活性化した黄色ブドウ球菌をガラクトサミンと予め混合したものをi.p.で曝露したマウスで行った最初の試験では、LD
100は1×10
7細胞と1×10
9細胞の間であったことが実証された(データは示さず)。HMG1のレベルを決定するために、0日目に、約10
9個の熱不活性化した黄色ブドウ球菌(8325−4系統)細胞をガラクトサミン20mgと予め混合したもの、またはガラクトサミン単独の、体積200μlのPBS溶液をi.p.投与した。第3群の動物は曝露しなかった。動物を曝露2、8、および12時間後に、CO
2吸入により安楽死させ、心臓穿刺により血液を採取した。抗体処置試験では、0日目に、ガラクトサミン20mgと予め混合した約10
9個の熱不活性化した黄色ブドウ球菌(8325−4系統)細胞を体積200μlでi.p.投与し、表6に示すように、曝露30分前に以下の処置を体積100μlでi.p.投与した。
疾患のモニタリング
1日目に開始して、14日間を通して継続して、毎日、病的状態の徴候(移動性の著しい低下、毛の逆立て、および/または最高体重の>20%の減少)、ならびに死亡率について動物を観察した。また、動物を週毎に2×体重測定した。著しい病的状態の徴候を示した動物は安楽死させた。15日目、生存している動物すべてを安楽死させた(著しい病的状態が観察された場合は、それより早く安楽死させた)。
6.9.2 結果
マウスを致死量の熱不活性化した黄色ブドウ球菌に曝した、グラム陽性細菌誘発性の重篤な敗血症モデルにおいて、ヒト抗HMG1抗体も試験した。このモデルでは、PBSまたは抗体のイソ型コントロール(R347)のいずれかで処置したマウスは、どれも生存しなかった。それとは対照的に、HMG1 G4に対するヒト抗体で処置したマウスの27%が生存し(図17)、E11で処置したマウスの8%が生存した(データは示さず)。致死率における相違は、処置24時間後という早さで見られ、試験の経過にわたって継続した。これらのデータはCLP試験(上記を参照されたい)を支持するものであり、ヒト抗HMG1抗体は、広範囲の病原性生物が誘発する敗血症の処置に有用であることを示している。
6.10 実施例11
抗HMG1抗体は、急性肺傷害に関連する細胞の浸潤を低減する
2つのヒト抗HMG1抗体を、リポ多糖(LPS)誘発性急性肺傷害(ALI)マウスモデルで試験した。ここでは、我々は初めて、ヒト抗HMG1抗体での処置が、コントロールに比べて約40%、全細胞の浸潤を低減することを実証している(図18)。
6.10.1 材料と方法
LPS誘発性ALIの誘発
1日目に、LPS(大腸菌0111:B4系統、Sigma、St.Louis、ミズーリ州)を、イソフルラン(Baxter Pharmaceuticals、Deerfield、イリノイ州)で麻酔した成年BALB/cマウスに、マウス1匹あたり5〜10ugの投与量の50〜100μl溶液を鼻腔内投与した。HMG1のレベルを決定するために、LPS投与4、8、24、32、および48時間後、CO2の窒息により動物を安楽死させ、タンパク質分析および組織病理学検査用に気管支肺胞洗浄(BAL)のサンプルおよび他のサンプルを採取した。処置プロトコールでは、LPS投与24時間後、抗HMGB1抗体、HMG1A−ボックス−Fc融合物、またはコントロールを、10mg/kgの投与量を100ul体積で腹腔内投与(i.p.)した。3日目(LPS投与48時間後)、CO2窒息により動物を安楽死させ、サンプル(BAL、血液、および肺)を分析用に採取した。
BALサンプル採取
肺を、カテーテル管付きシリンジを用いて、〜0.8mlリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.2、GIBCO、Rockville、メリーランド州)で3回洗い流した。採取したBALサンプルを、4℃、1200rpmで10分間遠心分離し、上清を採取し、タンパク質(例えば、HMGB1)定量用に−80℃で貯蔵し、ペレット状の細胞を再懸濁しサイトスライド(cytoslide)に移し、固定し、ギムザ染色し、顕微鏡の助けでBALの細胞性を肉眼的に判定した。
6.10.2 結果
ヒト抗HMG1抗体を、LPSの鼻腔内投与が誘発する急性肺傷害モデルで試験した。このモデルでは、HMGの炎症促進性作用の既知の競合的阻害物質であるHMG1A−ボックスは、コントロールに比べて約23%浸潤を低減したにすぎなかった。それとは対照的に、G4およびE11は、BAL液に存在する全細胞浸潤物をコントロールに比べて37%〜40%低減したことが分かり、抗HMG1抗体は、急性肺傷害の処置に有用であることが実証された。
6.11 実施例12
多発性硬化症(MS)プラークにおけるHMGB1染色パターン
HMGB染色パターンを、ヒト脳組織からのMSプラークで、G16ヒト抗HMGB抗体を用いて試験した。脱髄し多くの活性化したミクログリアを有するプラーク、および優勢に脱髄し、活性化したミクログリアはほとんどなく、リンパ球が多いプラークを試験した。図19Aは、イソ型のコントロール抗体を用いた、脱髄し多くの活性化したミクログリアを有するプラークにおける低レベルのバックグラウンド染色を示している。HMGB1は、MS患者からのヒト脳組織において、ヒトmAbG16によるミクログリアの細胞質で検出された。脱髄し多くの活性化したミクログリアを有するプラークは、ミクログリアの細胞質、および脱髄の間隙における広範囲の染色を示す(図19B)。それとは対照的に、優勢に脱髄しているプラークでは、活性化したミクログリアはほとんどなく、多くのリンパ球があることから、ヒトmAbG16で調査した場合、ほとんど、またはまったく染色されないことが示される(図19C)。これらの結果は、炎症の細胞外モジュレーターとしてのHMGB1の重要な役割を強調し、HMGB1はMSの炎症過程に関与している様子であることを指摘するものである。
前述の発明を明確さおよび理解を目的としていくらか詳しく記載してきたが、この開示を読めば、本発明の真の範囲から逸脱することなしに、形態および詳細における様々な変更を行うことができることは、当業者であれば明らかである。例えば、上記に記載した技術および装置はすべて、様々な組合せで用いることができる。この出願に引用した出版物、特許、特許出願、または他の文書はすべて、それぞれの個々の出版物、特許、特許出願、または他の文書がすべての目的のために参照として組み入れられることが個々に示されるように、同程度にすべての目的に対して、その全文が参照として組み入れられる。さらに、2004年10月22日に出願された米国仮特許出願第60/620,726号、2005年2月10日に出願された第60/651,512号、2005年3月7日に出願された第60/658,572号、2005年3月18日に出願された第60/662,944号、および2005年9月6日に出願された第60/713,712号は、すべての目的でその全文が参照として組み入れられる。