JP2008512945A - Qkdチャネル多重化のシステム及び方法 - Google Patents

Qkdチャネル多重化のシステム及び方法 Download PDF

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Abstract

【課題】量子鍵配送(QKD)システムの2つ以上のチャネルを多重化するためのシステムと方法を開示する。
【解決手段】本方法は、1つのQKD局(アリス)における送信機(T)にゼロ復帰(RZ)フォーマットの公開チャネル光信号(SP1)を置くことと、この信号が他のQKD局(ボブ)における受信機(R)内の検出器(30)で検出される直前に、この信号を増幅する(よって、SP1*を形成する)こと、を含む。本方法はさらに、ゲーティング・エレメント(40)及び検出される(電気的)公開チャネル信号(SP2)内のパルスの予測される到達時刻に一致するパルスを有する同時信号(PN1’)を介して、検出器を正確にゲートすることを含む。これにより、公開チャネル信号は遙かに少ない電力を有することが見込まれ、他のQKD信号との多重化がさらにしやすいものになる。

Description

本発明は、量子暗号化に関しかつ量子暗号化に関連する産業的有用性を有し、具体的には、QKDシステムの異なるチャネルを単一の光ファイバに多重化することに関し、かつ上記多重化に関連する産業的有用性を有する。
量子鍵配送は、「量子チャネル」越しに送信された弱い(例えば、平均で0.1フォトン)の光パルス信号を用いて、送信者(「アリス」)と受信者(「ボブ」)との間で鍵を確立することに関係する。鍵配送の安全性は、不確定状態にある量子系はどれでも測定するとその状態を変えるという、量子力学の原則に基づいている。結果として、量子信号を妨害あるいは測定しようとする盗聴者(「イブ」)は、送信信号にエラーを引き起こしてしまうため、その存在が明らかになる。
量子暗号の一般的な原則は、BennettとBrassardの論文(非特許文献1参照)の中で初めて発表された。具体的なQKDシステムは、Bennettの米国特許文献(特許文献1参照)およびC.H.Bennettの論文(非特許文献2参照)に述べられている。QKDを実行する一般的なプロセスは、Bouwmeesterらの著作(非特許文献3参照)に述べられている。
QKDシステムの性能は、3つの異なるメカニズムにより生成された光子の形態のノイズによって低下する。第1のメカニズムは、周波数シフトされた光子が生成され、量子信号光子と共に伝播する、前方ラマン散乱である。光ファイバにおけるラマン散乱は、高パワー信号から単一光子波長へのエネルギーの移動のために、単一ファイバに入力され得る電力を制限する。
第2のメカニズムは、周波数シフトされた光子が生成され、量子信号光子とは反対方向に伝播する、後方ラマン散乱である。
第3のメカニズムは、光子が量子信号光子の反対方向に弾性的に散乱されて戻る、レイリー散乱である。
光ファイバにおける光の散乱、及び特定の前方ラマン散乱は、検出プロセスにおいて雑音を発生させることから、QKDシステムの異なるチャネルの多重化においては問題がある。
異なるチャネルを単一の光ファイバに結合させることにおける光の散乱の影響を克服するに当たっては、2つの単純なソリューションが提案されている。第1のソリューションは、1つのファイバを公開ディスカッションチャネルに、おそらくは同期チャネルにも、使用し、第2のファイバを量子チャネルに使用するものである。第2のソリューションは、入力電力を低減することができ、よって距離が短いほど散乱電力伝達比が小さくなるように、ファイバの長さを制限するものである。これらのソリューションは共に、単純ではあるが、特にロバスト性もなく、商業的に実行可能なQKDシステムには不向きであるために魅力のあるものではない。
QKDに関連づけられる異なるチャネルの多重化に関連する先行技術には、米国特許文献2(「‘234号特許」)が含まれる。‘234号特許では、同期信号が量子チャネルによって時分割される。先行技術には、米国特許文献3(「‘648号特許」)も含まれる。‘648号特許は、量子チャネル及び公開チャネルのための「共通の伝送媒体」(すなわち、光ファイバ)を有し、公開チャネルも較正信号を伝送する、という考案を提案している。
しかしながら、先行技術は、比較的強力な公衆及び同期チャネルと極めて弱い量子チャネルとを組み合わせるという手強い問題を採り上げていない。特に、‘648号特許は、量子チャネルに関連づけられる単一光子の検出を妨害しないように、公開チャネルが「共通の伝送媒体」における量子チャネルといかにして多重化可能かを採り上げていない。また、‘234号特許では、単一光子に対して作用しながら同期タイミングを保持するためにサンプルホールド型のフェーズロック・ループを実装する必要がある。しかしながら、同期及び量子チャネルの多重化における困難さは、公衆(データ)チャネルと量子チャネルとを多重化するタスクに勝るものではない。‘234号特許は、公開チャネル及び量子チャネルを同じ光ファイバ上で伝送する問題を採り上げていない。
Journal of Modern Optics,2001,vol.48,no.13,pp.1957−1966において発表された、P.A.Hiskett,G.Bonfrate,G.S.Buller,P.D.Townsend共著刊行物である非特許文献4は、同期チャネルと量子チャネルとを組み合わせる手法を提案している。送信機レーザからの光は、量子信号と同期信号とに分割される。同期信号は、別個のファイバ上で送信され、受信機に入った時点でエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)により増幅される。増幅された光信号が電気信号に変換された後、電気信号は受信機の検出器をゲートするために使用される。
10MHzのイーサネット(登録商標)公開ディスカッショントラフィック(すなわち、公開チャネル)を、同期及び量子チャネルと同じファイバ上へ波長多重化することが望ましいであろう。しかしながら、イーサネットの公開チャネル信号の光強度は、散乱及びチャネルを検出する能力を低下させるこのような他の干渉を防止するために、大幅に低減されなければならない。残念ながら、十分な距離またはスパンを有する任意のQKDシステムの場合、公開チャネル電力の低減は、公開チャネルにとって受け入れ難く低い信号対雑音比をもたらす。一方で、光ファイバ増幅器(例えば、エルビウム添加ファイバ増幅器またはEDFA)を使用すると、光信号の振幅を増大して狭帯域光フィルタの必要性を廃することができ、その出力は引き続き極めて低い信号対雑音比を有することになる。
米国特許第5,307,410号公報 米国特許第6,438,234号公報 米国特許第5,675,648号公報 "Quantum Cryptography:Public key distribution and coin tossing,"Proceedings of the International Conference on Computers、Systems and Signal Processing,Bangalore,India,1984,pp.175−179(IEEE,New York、1984) "Quantum Cryptography Using Any Two Non−Orthogonal States,"Phys.Rev.Lett.68 3121(1992) "The Physics of Quantum Information,"Springer−Verlag 2001,in Section2.3,pages27−33 "Eighty kilometer transmission experiment using an InGaAs/InP SPAD−based quantum cryptography receiver operating at 1.55 urn,"Journal of Modern Optics,2001,vol.48,no.13,pp.1957−1966
本発明は、量子鍵配送(QKD)システムの2つ以上のチャネルを多重化するためのシステムと方法を包含する。本システム及び方法は、公開チャネルにとって低減された検出雑音をもたらし、これにより、より弱い公開チャネル信号の使用を可能にする。より弱い公開チャネル信号の使用は、商業的に実現可能なQKDシステムのための同じ光ファイバ上での量子チャネル及び/または同期チャネルによる公開チャネルの多重化を可能にする。本発明の1つの態様は、公開チャネル光信号をゼロ復帰(RZ)フォーマットに置くことと、かつこの信号を、この信号が検出される直前に増幅することを含む方法である。本方法はさらに、検出雑音を減らすために、検出器を、検出される(電気的な)公開チャネル信号におけるパルスの予測される着信時間に一致するように正確にゲートすることを含む。本方法はまた、公開チャネル電気信号で周波数ロックされるパルス列を含む第1の信号を形成し、次いでこの第1の信号が公開チャネル電気信号に(時間的に)一致するように、上記第1の信号に選択的遅延を与えることを含む。次に、第1の信号は、検出器をゲートすることに使用される。
この方法は、公開チャネルの検出に関連づけられる雑音を劇的に低減する働きをし、これにより、より弱い公開チャネル信号の使用が見込まれるようになる。より弱い公開チャネル信号の使用は、同じ光ファイバ上での量子チャネル及び/または同期チャネルによる公開チャネルの多重化を可能にする。
本方法は、概して、他の方法では検出が困難であると思われる弱まったイーサネット(登録商標)信号の検出に適用可能である。
本発明の別の態様は、第1の波長の公開チャネル信号(SP1)と、第2の波長の量子チャネル信号(SQ)とを、第1及び第2の量子鍵配送(QKD)局(アリスとボブ)を接続する光ファイバ上で組み合わせる方法である。本方法は、信号SP1をゼロ復帰(RZ)フォーマットで供給し、信号SP1及びSQを多重化してアリスからボブへ伝送することを含む。本方法はまた、ボブにおいて信号SP1及びSQを波長逆多重化し、信号SP1を光増幅して光増幅信号SP1*を形成することも含む。本方法はまた、信号SP1*を検出して公開チャネル電気信号SP2を生成し、この信号から、信号SP2に周波数同期されかつ(時間的に)一致する電気パルスを含む信号PN1’を形成することも含む。最後に、本方法は、信号PN1’を使用して信号SP1*の検出をゲートすることを含む。
本発明は量子暗号化に関し、具体的には、公開ディスカッションチャネル、同期チャネル及び/または量子チャネル等のQKDシステムの選択チャネルが単一の光ファイバ上に多重化されることを見込むシステムと方法に関する。本明細書の論考において、量子チャネルは、単一光子の光パルスである量子信号を伝送する。「単一光子」という用語は、平均して1つまたはそれ以下の光子を有する光パルスを包含することが意図されている。
本明細書で述べる同期チャネルは、同期データ(信号)を伝送し、かつ任意選択として、典型的にボブとアリスとして示される2つのQKD局間の調整されたオペレーションを見込む較正データ(信号)を伝送する。
同じく下記の論考では、「信号」及び「パルス」という用語は、当業者には明白となるような方法で互換的に使用される。また、「公開チャネル信号」及び「量子信号」という用語は各々、例えばパルス列のような一つ以上のパルスを含むものとして理解される。
商業用のQKDシステムでは、QKD局間で、既存の光ファイバを使用して2つまたはそれ以上のQKDチャネルを伝送したいという強い要望がある。本発明は、上述の3チャネルを全て、通常は商業的に実現可能なQKDシステムに関連づけられる比較的長い光ファイバ(例えば、50kmから100km)上で伝送できるようにする。典型的なQKDシステムでは、2つのQKD局を「アリス」及び「ボブ」と呼び、伝送はQKDチャネル上で一方向、すなわちアリスからボブへと発生することに留意されたい。但し、イーサネット(登録商標)の公開ディスカッションチャネルに関しては、アリスとボブは同一のピアである。すなわち、イーサネット関連のプロトコル(例えば、TCP/IP)を公開チャネル上でサポートするためには、双方向通信が必要とされる。ひいてはこれは、後に述べるように、アリスとボブが各々受信機Rと送信機Tとを含むことを意味する。
(QKDシステム)
図1は、本発明による送受信機(T−R)システム2の例示的な実施形態を示す概略図である。T−Rシステム2は、光ファイバ・リンクFLによってQKD局受信機Rへ結合されるQKD局送信機Tを含む。図2は、後に詳述するように、T−Rシステムが、双方向性の公開チャネル通信を達成するために2つのシステムT1−R1及びT2−R2としてどのようにQKDシステムに組み込まれるかを示す。
送信機Tは、個々の波長λ1、λ2及びλ3で動作する3つの光源システムL1、L2及びL3を含む。光源システムL1、L2及びL3は各々、対応する量子信号SQ、同期信号SS及び公開チャネル信号SP1を生成するように適合化される。例えば、光源システムL3は、公開チャネル信号SP1を、ゼロ復帰(RZ)フォーマットを含む様々なフォーマットで供給するように適合化される。光源システムL1、L2及びL3は、波長分割マルチプレクサ5を介してファイバ・リンクFLと光結合され、かつファイバ・リンクFL上へ波長分割多重化される。
ある例示的な実施形態では、送信機Tは、イーサネット・ポートEP1から業界標準10MHzイーサネット・マンチェスタ符号化信号SEを受け入れるRZエンコーダ6を含む。RZエンコーダ6は、信号SEを狭い低デューティサイクル・パルスS6に変換する。信号S6は、次に、10MHzのイーサネットRZフォーマットを有する相対的に低電力の公開チャネル光信号SP1を生成するために光源システムL3を駆動すべく使用される。
引き続き図1を参照すると、受信機Rは、光ファイバ・リンクFLへ光結合される波長分割デマルチプレクサ8を含む。デマルチプレクサ8は、波長λ1、λ2及びλ3を有する光信号SQ、SS及びSP1を、例えば別々の光ファイバ・セクションである別々の光路に分離させるように適合化される。波長A1における量子信号SQ及び波長λ2における同期信号SSに関連づけられる2つの光路は、9で示されている。公開チャネル信号SP1及び波長λ3に関連づけられる第3の光路は、10で示されている。
図1には、送信機Tおよび受信機R内に量子チャネル及び同期チャネル装置の詳細が示されていないが、これは、これらが本発明を理解する上で不可欠なものではなく、また周知技術に基づくものでもあることによる点に留意されたい。
図1のT−Rシステム2は、さらに、光路10(例えば、光ファイバ・セクション10)に沿って波長分割マルチプレクサ8の下流にエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)等の光増幅器20を含む。光増幅器20は、増幅された公開チャネル光信号SP1*を信号SP1が受信機Rへ入る直前または直後に形成するために、公開チャネル光信号SP1を光増幅するように適合化される。図1では、光増幅器20は、例示を目的として受信機内に示されている。
光増幅器20の下流には、光増幅器に機能的に結合される検出器30(例えば、PINフォトダイオード)があり、検出器30の下流には、検出器30に機能的に結合されるゲート・エレメント(「ゲート」)40(すなわち、高速オン−オフ・スイッチ)がある。ゲート40の出力は、本例では、10MHzの狭帯域通過フィルタであるフィルタ50へ結合される。
フィルタ50の出力は、高速比較器60の一方の入力へ機能的に結合される。比較器60の他方の入力には、限界信号STが供給される。比較器60の出力は、マルチバイブレータ65(例えば、ワンショット、または単安定マルチバイブレータ)へ結合される。マルチバイブレータ65の出力は可変遅延装置70へ結合され、可変遅延装置70は、本遅延装置へ機能的に結合されるプログラマブル・コントローラ80によって制御される。ある例示的な実施形態では、コントローラ80はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を含む。可変遅延装置70の出力は、回線72を介してゲート40へも結合される。
可変遅延装置70の出力の一方は、乗算器90の一方の入力ポートへ接続され、乗算器のもう一方のポートへは入力回線82が結合される。回線82は、後述するようにゲート40を通り抜ける公開チャネル信号(パルス)SP2を伝送する。乗算器90の出力は低域通過フィルタ100の入力へ送られ、低域通過フィルタ100の出力はコントローラ80の入力へ接続される。次に、コントローラ80は、ゲート40への出力を有する可変遅延装置70を制御する。
先に述べたように、本発明の一例では、公開チャネル信号SP1は、極めて狭いRZパルスを有するRZフォーマットに再符号化される10MHzのイーサネット・マンチェスタ符号化データ・ストリームである。これは、RZパルスが存在している可能性のある場合にのみ、光増幅器20の出力が可変遅延装置70を介してゲート(またはイネーブル)され、乗算器(90)へ至ることを許容する。狭パルスの存在はデータ・ビット「1」を表し、狭パルスの不在は「0」を表す。狭いRZパルスは、イーサネット10MHz方形波の縁上でのみ発生する。
光増幅器出力のゲートは、公開チャネル信号の検出プロセスにおける雑音を大幅に低減させる。しかしながら、このようなゲートは、狭いRZパルスが発生する時間スロットが既知であることを必要とする。幸い、公開チャネル信号の周波数は、IEEE802.3規格に一致する100PPM(パーツ・パー・ミリオン)内であることが知られている。この情報は、必要な検出器のゲート信号を後述する方法で生成するために使用される。
(動作方法)
本発明の例示的な実施形態は、非ゼロ復帰(NRZ)マンチェスタ符号化及び業界標準10MHzイーサネット信号を使用し、RZエンコーダ6によってこれをRZフォーマットに変換する。結果として生じるRZ公開チャネル信号SP1は、次に、先に述べたように公開チャネル上へ送られる。公開チャネル信号SP1は、マルチプレクサ5を介して量子及び同期チャネル信号SQ及びSCにより多重化され、光ファイバ・リンクFLを介して受信機Rへ送られる。公開チャネル信号S1は、次に、デマルチプレクサ8によって量子信号及び同期信号(図示されていない)から逆多重化され、光増幅器20により増幅されて増幅公開チャネル信号SP1*が形成される。次に、増幅信号SP1*は検出器30によって検出され、検出器30はこの信号を対応する電気的な公開信号SP2に変換する。
電気的な公開信号SP2はゲート40(この動作については後述する)を通過し、フィルタ50(例えば、10MHzの帯域通過フィルタ)まで進む。フィルタ50は、着信するイーサネットRZデータ(すなわち電気的な公開信号SP2)に周波数同期される(10MHzの)正弦波信号S3を生成する。
高速比較器60は、「+」入力で正弦波信号S3を受け取りかつ「−」入力で限界信号STを受け取り、比較器出力で信号S3を(10MHzの)方形波信号S4に変換する。方形波信号S4は、次にマルチバイブレータ65へ至り、マルチバイブレータ65は上記信号を狭い電気信号(パルス)PN1の列に変換する。マルチバイブレータ65のパルス幅は、好適には、ゲート40を通って進む信号SP2の幅と同じであるか、僅かに大きい。
パルスPN1は、プログラマブル・コントローラ80によってその遅延が選択的に制御される遅延装置70へ入る。パルスPN1が着信する狭いイーサネットRZ信号SP2の真上に落ちる(すなわち、時間的に一致する)ように上記パルスPN1へ選択的遅延を与えるのは、コントローラ80の仕事である。明確を期して、遅延装置70によって生成される選択的に遅延されたパルスの列を信号PN1’と称する。
可変遅延装置70からの信号PN1’は、乗算器90において、入力回線82から到来するRZイーサネット・パルス(すなわち、公開チャネル電気信号SP2)により乗算される。乗算器90は、2つの乗算器入力信号から相互相間関数信号SCを生成する。信号SCは、低域通過フィルタ100を介してコントローラ80へ供給される。ある例示的な実施形態では、コントローラ80は、早急な変更は閉ループを不安定にさせる場合があるために、遅延値の変更をゆっくりと行うことが想定されている。コントローラは、入力パルス列(すなわち、信号SP2)を最初に捕捉し、次いで追跡するだけでよく、その何れも高速応答を必要としない。低域通過フィルタ100は、無価値であってシステムを不安定にする可能性のある高速情報を全て除去する。また、統計学的にRZ信号SP2(例えば、イーサネットRZパルス)の半分は(論理「0’」のために)なくなり、低域通過フィルタはこれらのギャップを「平滑にする」ために必要であることにも留意されたい。
ある例示的な実施形態では、コントローラ80がデジタル・デバイスである場合にアナログ信号SCからデジタル信号SCを生成するためのアナログ/デジタル(AD)変換器101が低域通過フィルタ100とコントローラ80との間に配置される。
信号SC内の情報を基礎として、コントローラ80は、同時信号PN1’を形成するために制御信号S5を介して可変遅延装置70を制御する。信号PN1’は、ゲート40の動作を制御するために回線72上へ送られる。言い換えれば、同時信号PN1’は、ゲート40の動作を制御するためのゲート信号として使用される。
可変遅延装置70からの出力信号(パルス)PN1’及びRZイーサネット・パルスSP2が同位相であれば、乗算器出力信号SCは最大となる。ある例示的な実施形態では、乗算器90の相互相関は、10MHzのクロック周期(100ナノ秒)より大きい時間周期に渡って平均される。
信号SCが最大化されるとき、遅延装置の出力信号PN1’におけるパルスはイーサネットRZパルスSP2に一致する。従って、コントローラ80はこれらの一致パルスを回線72上でゲート40へ送ることができ、光増幅された電気的公開チャネル信号SP2のゲート検出が有効化される。
回線72において信号PN1’をゲートする間に、ゲート40の出力(回線82)でパルスが発見されると、結果はイーサネット論理「1」になる。回線72において信号PN1’をゲートする間に、上記ゲートの出力でパルスが発見されなければ、結果はイーサネット論理「0」になる。次に、イーサネット論理「1’」及び「0’」の列は連続して結合され、市販の規格イーサネット集積回路による処理が可能なマンチェスタ符号化信号SP2が生成される。
狭いRZパルスから10MHzのイーサネット標準により要求される広いマンチェスタ符号化パルスへの変換は、ゲート40の出力へ結合されるデコーダ110によって実行される。これは、必要な受信機を記述する。デコーダ110は、イーサネット・ポートEP2または他の類似デバイスへ結合される。
(双方向性の公開チャネル通信)
図1は、マンチェスタ符号化方式の公開チャネル・データが信号SP1として送信機Tから受信機Rへ流れるT−Rシステム2の例を示している。しかしながら、公開チャネルの双方向オペレーションの場合、データを反対方向へ伝送する別の送信機/受信機セットが必要とされる。
従って、図2は、QKDシステムがQKD局であるアリスとボブを有し、その各々が図1に示すような送信機Tと受信機Rとを有することによってアリスとボブによる双方向の公開チャネル通信を有効化する、例示的な実装を示す略図である。具体的には、アリスは送信機T1と受信機R2とを有し、ボブは送信機T2と受信機R1とを有し、よってT1−R1及びT2−R2という2つのT−Rシステムが存在する。
アリスはイーサネット・ポートEP1へ結合され、ボブはイーサネット・ポートEP2へ結合される。図2に示すQKDシステムの例では、量子信号SQ及び同期信号SCは一方向へアリスからボブへ進み、公開チャネル信号SP1は双方向へアリスからボブへ、及びボブからアリスへ進む。
再度、図1を参照すると、ある例示的な実施形態では、受信機Rにおけるコントローラ80は、平均された相互相間関数信号SCのピーク(最大値)を決定するように適合化されるプログラマブル論理(例えば、論理プログラム式FPGA)を含む。ピークが発見されると、上記プログラマブル論理は、温度の変動等の変化する影響に直面した場合でも経時的にピークが維持されるように、到来するパルス列PN1に整合された遅延を保つ。
公開チャネル信号を検出する一致ゲートは、公開チャネルの検出プロセスにおける雑音量を劇的に低減させる働きをする。これにより、公開チャネル光信号SP1の光電力レベルを、それが量子及び/または同期チャネルと同じ光ファイバ上に共存できるポイントまで減らすことができる。
以上、公開チャネル信号SP1の例示的な実施形態としての10MHzイーサネット信号に関連して本発明を説明した。しかしながら、本発明は、任意の大部分のデータレートにおける任意の大部分の種類のデータ伝送に適用可能である。例えば、ソネット、100MHzイーサネット、1Gイーサネット、などは全て適用するであろう。また、本明細書ではマンチェスタ符号化データに言及しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、8B/10Bコーディング及び他の任意の大部分のタイプのコーディングにも適用されるであろう。
さらに、本発明は、概してQKDシステム(一方向及び双方向のQKDシステムを含む)に適用可能であり、かつ概して電気通信アプリケーションに適用可能である。具体的には、本方法は弱い(単一光子)光信号を比較的強いイーサネット光信号で多重化することに際立って適するものであるが、イーサネット信号のみを包含するケースにも適用することができる。本発明は、規格イーサネット信号が予想より長い距離での伝送を余儀なくされ、結果的に比較的弱いイーサネット信号を検出せざるを得なくなるという状況に適用することができる。このように、本発明は、弱まったイーサネット信号の検出可能性を、増幅の必要なしに上げるために使用されてもよい。
以上、本出願は、2004年9月7日に提出された米国暫定特許出願第60/607,540号の特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張するものである。
同じ光ファイバ上で公開チャネルを量子チャネル及び/または同期チャネルと共に効果的に伝送するために、QKDシステムのQKD局によって使用される送受信機(T−R)システムを示す概略図である。 2つのQKD局、アリスとボブ、を有するQKDシステムの概略図であり、アリスが送信機T1及び受信機R2を有しかつボブが送信機T2及び受信機R1を有するQKDシステムにおいて、公開チャネル上での双方向通信がT1−R1及びT2−R2によって有効化されるように、T−Rシステムがいかに使用されるかを示す図である。
図面に描かれた様々な構成は単に代表的なものであり、必ずしも実寸通りに描かれていない。強調された部分もあれば、縮小された部分もあり得る。これら図面は、当業者にとって理解および適切な実施が可能な本発明の様々な実施形態を例示することを意図している。

Claims (19)

  1. 第1及び第2の量子鍵配送(QKD)局を接続する光ファイバ上で公開チャネル信号(SP1)と量子チャネル信号(SQ)とを送信する方法であって、
    a)前記第1のQKD局において、
    SQ信号を生成しかつSP1をゼロ復帰(RZ)フォーマットで生成することと、
    信号SP1及びSQを光ファイバ上で前記第2のQKD局へ伝送することと、
    b)前記第2のQKD局において、
    信号SP1及びSQを逆多重化することと、
    信号SP1を光増幅して増幅信号SP1*を形成することと、
    増幅信号SP1*を検出しかつ処理して周波数同期ゲート信号を生成することと、
    前記周波数同期ゲート信号を使用して、公開チャネル信号の検出雑音を低減するために信号SP1*の検出をさらにゲートすること、を含む、方法。
  2. 前記公開チャネル信号SP1は10MHzイーサネット信号から形成される、請求項1記載の方法。
  3. 信号SP1*を検出して公開チャネル電気信号SP2を生成することと、
    信号SP2から、周波数同期されかつ信号SP2に一致する電気パルスを含む信号PN1’を形成することと、
    前記信号PN1’を使用して信号SP1*の検出をゲートすること、をさらに含む、請求項1記載の方法。
  4. 信号PN1’を形成することは、
    狭帯域通過フィルタを介して信号SP2を送信し、信号SP2に周波数同期される正弦波信号S3を生成することと、
    信号S3を比較器を介して送り、方形波信号S4を生成することと、
    信号S4をマルチバイブレータを介して送ることにより、信号PN1を形成することと、
    信号PN1を、同時信号PN1’の形成に際して信号PN1に遅延を与えるように適合化されるコントローラによって制御されるディレイを介して送ること、を含む、請求項3記載の方法。
  5. 前記公開チャネル信号は10MHzのイーサネット信号であり、前記狭帯域通過フィルタは10MHzの帯域幅を有する、請求項4記載の方法。
  6. 信号PN1’を生成することは、
    信号PN1を可変遅延回線を介して送ることと、
    同時信号PN1’を形成するために、前記可変遅延回線を、前記回線に機能的に結合されかつ信号PN1に遅延を与えるように適合化されるプログラマブル・コントローラを介して制御すること、を含む、請求項3記載の方法。
  7. 前記コントローラに、前記可変遅延回線により供給されるべき遅延の量に関する情報を提供する相互相間信号SCを備えることを含む、請求項6記載の方法。
  8. 前記コントローラに、信号SCにおける最大値SCmaxを発見するように適合化される論理によってプログラムされるフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を備えることを含む、請求項7記載の方法。
  9. 第1のQKD局における送信機から第2のQKD局における受信機へ公開チャネル光信号SP1を送信する方法であって、
    前記送信機内に、信号SP1をゼロ復帰(RZ)フォーマットで供給することと、
    信号SP1を前記送信機から前記受信機へ送信することと、
    前記受信機において、信号SP1を光増幅して光増幅信号SP1*を形成し、かつ信号SP1*を検出して公開チャネル電気信号SP2を生成することと、
    前記公開チャネル電気信号SP2を処理して、公開チャネルの検出雑音を低減するように増幅信号SP1*の検出をゲートする周波数同期一致ゲート信号PN1’を形成すること、を含む、方法。
  10. 信号SP2から、信号SP2に周波数同期される狭い方形波電気パルス列を含む信号PN1を形成することと、
    信号SP2を信号PN1で相互相関させて相互相間信号SCを生成することと、
    信号SCの最大値をSCmaxとして発見することと、
    SCmaxを使用して、信号PN1が信号SP2に一致して信号PN1’が形成されるように保証すること、をさらに含む、請求項9記載の方法。
  11. 一致パルス(信号)PN1’を形成することは、
    狭帯域通過フィルタを介して信号SP2を送信し、信号SP2に周波数同期される正弦波信号S3を生成することと、
    信号S3を比較器を介して送り、方形波信号S4を生成することと、
    信号S4をマルチバイブレータを介して送ることにより、信号PN1を形成することと、
    信号PN1を、信号SP2に一致する信号PN1’を生成する遅延を信号PN1に供給するように適合化されるコントローラによって制御されるディレイを介して送ること、を含む、請求項10記載の方法。
  12. 第1及び第2のQKD局を有する量子鍵配送(QKD)システムの一部として、第2の波長の量子チャネル信号(SQ)で多重化される第1の波長を有する公開チャネル信号(SP1)における検出雑音を低減させる方法であって、
    前記第1のQKD局内の送信機において、信号SP1をゼロ復帰(RZ)フォーマットで供給することと、公開チャネル信号SP1を量子信号SQで多重化することと、前記多重化される信号を前記第2のQKD局内の受信機へ送信することと、
    前記受信機において、前記逆多重化された信号SP1を光増幅して光増幅信号SP1*を形成することと、
    信号SP1*を検出して公開チャネル電気信号SP2を生成することと、
    信号SP2から、周波数同期されかつ信号SP2に一致する電気パルスを含む信号PN1’を形成することと、
    信号PN1’を使用して信号SP1*の検出をゲートし、公開チャネル信号SP1に関連づけられる検出雑音を低減させること、を含む、方法。
  13. 公開チャネル信号SP1を光ファイバ上で第1のQKD局から第2のQKD局へ送信する方法であって、
    信号SP1をゼロ復帰(RZ)フォーマットに置き、前記RZ信号SP1を前記第2のQKD局へ送信することと、
    前記RZ信号SP1を前記第2のQKD局において増幅し、増幅公開チャネル信号SP1*を形成することと、
    信号SP1*を検出器で検出することと、
    公開チャネル信号の検出雑音を低減させるために、信号SP1*を処理して、信号SP1*の予測される着信時間に一致させるように前記検出器をゲートするゲート信号PN1’を確立すること、を含む、方法。
  14. ゲート信号PN1’を、信号SP1*の検出によって形成される公開チャネル電気信号SP2に周波数同期されるパルスの列として形成することと、前記ゲート信号PN1’が前記公開チャネル電気信号SP2と時間的に一致するように、前記パルスの列に選択的遅延を与えること、を含む、請求項13記載の方法。
  15. 第1及び第2の量子鍵配送局間で公開チャネル信号を送受信するための装置であって、
    非ゼロ復帰信号SEを受信しかつ前記非ゼロ復帰信号SEからRZフォーマット信号S6を形成するように適合化されるゼロ復帰(RZ)エンコーダと、
    前記RZエンコーダへ機能的に結合され、かつRZフォーマット信号S6に対応するRZ公開チャネル光信号(SP1)を発生させる光源システムと、
    前記RZ公開チャネル信号SP1を受信しかつ前記RZ公開チャネル信号SP1から公開チャネル増幅信号SP1*を形成するように配置される光増幅器と、
    前記公開チャネル増幅信号SP1*を検出しかつ前記公開チャネル増幅信号SP1*から公開チャネル電気信号SP2を発生させるように配置される検出器と、
    前記公開チャネル電気信号SP2を受信し、かつ前記公開チャネル電気信号SP2から、信号SP2に時間同期しかつ公開チャネルの検出雑音を低減させる目的で前記検出器をゲートするために使用される周波数同期ゲート信号PN1’を形成するように適合化される信号処理電子機器と、を備える、装置。
  16. 前記検出器へ機能的に結合され、かつ前記検出器によって発生される公開チャネル電気信号SP2をゲートすべくゲート信号PN1’を受信するように適合化されるゲート・エレメントをさらに備える、請求項15記載の装置。
  17. 量子鍵配送(QKD)局のための公開チャネル受信機であって、
    ゼロ復帰(RZ)公開チャネル光信号を受信して増幅するように適合化される光増幅器と、
    前記公開チャネル増幅信号の検出に応答して、検出器出力において検出器電気信号を発生させるように適合化される検出器と、
    前記検出器出力へ機能的に結合され、かつゲート信号を基礎として前記検出器出力をゲートするように適合化されるゲート・エレメントと、
    前記ゲート・エレメントの出力へ結合され、かつ前記検出器電気信号から前記検出器電気信号に周波数同期される正弦波信号を形成するように適合化される狭帯域通過フィルタと、
    第1の比較器入力で前記狭帯域フィルタの出力へ結合されかつ第2の比較器入力で限界信号へ結合される比較器と、を備え、前記比較器は、比較器出力において、前記入力される正弦波信号及び限界信号から方形波信号を形成するように適合化され、
    前記比較器出力へ結合され、かつマルチバイブレータ出力において前記方形波信号からパルスの列を形成するように適合化されるマルチバイブレータと、
    前記マルチバイブレータ出力へ結合され、かつ前記パルスの列に選択遅延を与えるように適合化される可変遅延回線と、
    前記選択的に遅延されるパルスの列及び前記検出器電気信号を受信し、かつこれらから相互相間信号を形成するように適合化される乗算器と、を備え、
    前記相互相間信号は、前記パルスの列を前記検出器電気パルスに一致させる選択遅延を画定するために使用され、前記一致するパルス列は前記検出器をゲートするために前記ゲート・エレメントに供給される、公開チャネル受信機。
  18. 第1のQKD局を第2のQKD局へ接続する光ファイバ上でのゼロ復帰(RZ)公開チャネル光信号及び量子チャネル光信号の送信を可能にする第1の量子鍵配送(QKD)局のための受信機装置であって、
    RZフォーマットで供給される前記公開チャネル光信号を光増幅するように適合化される光増幅器と、
    前記光増幅公開チャネル信号から検出器電気信号を発生させるように適合化される検出器と、
    前記検出器電気信号から前記検出器電気信号に周波数同期される正弦波信号を形成するように適合化される狭帯域フィルタと、
    第2の出力において、前記正弦波信号から方形波信号を形成するように適合化される比較器と、
    第3の出力において、前記方形波信号からパルスの列を形成するように適合化されるマルチバイブレータと、
    前記マルチバイブレータの出力へ接続され、かつ第4の出力において、前記パルスの列に選択遅延を与えるように適合化される可変遅延回線と、
    前記選択的に遅延されるパルスの列及び前記検出器電気信号を受信し、かつこれらから相互相間信号を生成するように適合化される乗算器と、を備え、
    前記相互相間信号は、前記パルスの列を前記検出器電気パルスに一致させる選択的遅延を決定するために使用され、
    前記選択的に遅延されるパルスの列は、前記検出器と前記狭帯域フィルタとの間に配置されるゲートを制御するために使用される、受信機装置。
  19. 単一の光ファイバ上で公開チャネル信号SP1及び量子信号SQを送信するための装置であって、
    ゼロ復帰(RZ)信号SP1を発生させるための手段と、
    前記光ファイバ上へ信号SP1及びSQを多重化するための手段と、
    信号SP1及びSQを逆多重化するための手段と、
    信号SP1を増幅するための手段と、
    光増幅信号SP1を検出し、かつ前記光増幅信号SP1から電気信号(SP2)を発生させるための手段と、
    信号SP2を受信し、前記信号SP2から信号SP2に一致するゲート信号を形成するための信号処理手段と、
    前記ゲート信号を使用して前記検出器をゲートするためのゲート手段と、を備える、装置。
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