JP2008514119A - Wdmネットワーク用のデュアルゲートqkdシステム - Google Patents

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Abstract

WDMネットワーク(2)にQKDシステム(Q)を組み込むシステムおよび方法が開示される。その方法は、単一光子検出器(SPD)(30、30’)を電子的にゲーティングすることと、光ゲート(28、28’)でSPDを光学的にゲーティングすることとを含む。電子ゲート幅(TSPD)と光ゲート幅(TOG)は、散乱光子からのノイズを大幅に低減するように選択される。SPDの光学的ゲーティングと電子的ゲーティングの組み合わせによって、電子SPDゲーティングのみを採用するWDM−QKDシステムでは不可能であった量子信号(SQ)のフーリエ変換限定検出が可能になる。

Description

本発明は、量子暗号化に関しかつ量子暗号化に関連する産業的有用性を有し、具体的には、量子鍵配送(QKD)を波長分割多重(WDM)ネットワークと組み合わせて安全なデータ伝送のための高速伝送速度を提供するシステムと方法とに関する。
量子鍵配送は、「量子チャネル」上で伝送される弱い(例えば、平均0.1光子)光信号を使用して、送信者(「アリス」)と受信者(「ボブ」)との間において、鍵を確証することを含む。鍵配送のセキュリティは、未知の状態の量子システムのいかなる観測によってもその量子状態を変化させてしまう、という量子力学の原理に基づいている。その結果、量子信号を傍受しようとする、または他に観測しようとする盗聴者(「イブ」)は、伝送される信号にエラーを生じさせるため、これにより存在が暴かれる。
量子暗号化の基本原理は、BennettとBrassardの論文(非特許文献1)において最初に記述された。具体的なQKDシステムは、以下の刊行物、Bennettの特許文献1(本明細書での言及によりこの特許を組み込む)と、CH.Bennett著の論文(非特許文献2)に記述されている。
QKDを実行する一般的なプロセスは、Bouwmeesterらの著書(非特許文献3)に記述されている。QKDプロセスの間、アリスは、キュービット(例えば、偏光または位相コード化を使用)を形成するために、基底用のランダムなビット(「基底ビット」)、鍵用のランダムなビット(「鍵ビット」)を生成するために乱数発生器(RNG)を使用し、このキュービットをボブに送る。
QKDシステムの性能は、以下の3つの異なる機構、1)周波数シフトされた光子が生成され、量子信号光子と共に伝播する前方ラマン散乱、2)周波数シフトされた光子が生成され、量子信号光子と逆方向に伝播する後方ラマン散乱、3)量子信号からの光子が弾性散乱されて量子信号光子と逆方向に戻るレイリー散乱、によって生成される光子の形状のノイズによって低下する。
仮に、上述の光子ノイズ源を完全に除去できたとしても、単一波長(すなわち、単一チャネル)QKDシステムのデータ伝送速度は、単一光子検出器(SPD)に内在する応答時間とノイズのために限定される。
上述した制限の観点から、QKDデータ伝送速度を高めるアプローチは多数提案されている。あるアプローチでは、Proc.SPIE,v.5260,pp.149―153,2003においてG.Brassard,F.Bussieres,N.Godbout,S.Lacroix共著論文である非特許文献4(以下、「Brassard引例」と称する。)で著者らに示唆されるように、QKDと波長分割多重(WDM)とを組み合わせている。このようなシステムは、同じ光ファイバ上であるが、異なる波長で動作する複数の量子チャネルを有すると思われる。
しかし、Brassard引例は、商用WDM−QKDシステムを実現するために対応する必要があるWDMを用いてSPDを使用する際の実際的な制限に対処していない。具体的には、QKDシステム内のSPDは、光信号のパルス幅よりもずっと大きなゲートウィンドウで電子的に時間ゲート制御される。この構成は、単一波長QKDシステムに対してはとても有効に働くが、多重波長QKDシステムのSPDによる散乱光(特に、ラマン散乱光)の検出には問題がある。
より少ない散乱光が一見して検出されるようにSPDのゲートウィンドウの寸法を低減する試みは、散乱光の問題を軽減するための明らかな方法であると思われる。しかし結果的には、検出される弱い光パルスの幅に近づくにつれてSPDのゲートウィンドウが縮小されるため、実際にはSPDの量子効率(QE)は悪化する。これは、SPD、例えば、アバランシェ発光ダイオード検出器(APD)において発生するジッタが原因である。SPDの電子ノイズを低減するためには、SPDゲートウィンドウはジッタを捕らえるほど十分大きくなくてはならず、典型的には500ps以下である。これは、QKDシステムでのフーリエ変換限定検出を用いることで、WDMネットワークに存在する散乱光の検出を緩和するオプションが除外する。
米国特許第5,307,410号公報 "Quantum Cryptography:Public key distribution and coin tossing,"Proceedings of the International Conference on Computers、Systems and Signal Processing,Bangalore,India,1984,pp.175−179(IEEE,New York,1984) "Quantum Cryptography Using Any Two Non−Orthogonal States,"Phys.Rev.Lett.68 3121(1992) "The Physics of Quantum Information,"Springer−Verlag 2001,in Section2.3,pages27−33 "Multi−user quantum key distribution using wavelength division multiplexing,"Proc.SPIE,v.5260,pp.149−153,2003
本発明は、WDMネットワークにQKDシステムを組み込むシステムおよび方法を含む。その方法は、散乱光子からノイズを大幅に低減する方法を用いて、システム内の単一光子検出器(SPD)を光学的かつ電子的にゲーティングすることを含む。特に、その方法は、各SPDに隣接する光ゲートを設けることと、内在するSPDジッタを収容して、内在する検出器ノイズの量を最小限にするのに十分な広さのSPDウィンドウを用いてSPDを電子的にゲーティングすることとを含む。さらにその方法は、SPDウィンドウよりも狭く、量子信号の幅の寸法に近いゲートウィンドウを有する光ゲートを用いて検出器を光学的にゲーティングすることを含む。例示的な実施形態では、これにより、電子SPDゲーティングのみを採用したシステムでは不可能な量子信号のフーリエ変換限定検出を提供することができる。その結果、散乱光子によってノイズが大幅に低減された。この光子は、その他の点では、商業的に実行可能なQKDシステムが標準的WDMネットワーク上で動作するのを阻害する。
したがって、本発明の第1の態様は、量子信号幅を有する量子信号を検出するように構成される1または複数の単一光子検出器(SPD)を有するQKDシステムにおける検出ノイズの量を低減する方法である。その方法は、量子信号の予想到着時間を中心とする第1の幅を持つゲートウィンドウを各SPDに提供する電子ゲート信号で、各SPDを電子的にゲーティングすることを含む。さらにその方法は、量子信号の予想到着時間を中心とする第2の幅を持つゲートウィンドウを光ゲートに提供する電気的なゲート信号を受け取るように構成される光ゲートで、各SPDを光学的にゲーティングすることを含む。該方法において、第1の幅は第2の幅より大きい。
本発明の第2の態様は、選択的にランダム変調される第1の波長を有する量子信号を生成し、異なる波長の非量子光信号を伝送するように構成されるWDMネットワーク上において、第2のQKD局に量子信号を送出するように構成される第1のQKD局を備えるQKDシステムである。第2のQKD局は、暗号化量子信号を形成するために、変調量子信号を受信し、変調量子信号を選択的にランダム変調するように構成される。第2のQKD局は、暗号化量子信号を検出するように構成され、暗号化量子信号を検出する際に電子ノイズを制限するために電子的にゲーティングされる1または複数の単一光子検出器(SPD)を含む。さらにそのシステムは、第2のQKD局において、それぞれの光検出器に光学的に結合される1または複数の光ゲートを含み、各光ゲートが暗号化量子信号の予想到着時間に対応するようにゲーティングされ、1または複数のSPDに届かないように散乱光の量を制限するために、ゲートウィンドウの寸法が設定される。この第2の態様の例示的な実施形態では、システムは、光ゲートのゲーティングを量子信号の寸法に近づけて対応させることによってフーリエ変換制限検出を実現するように構成される。
図面に示される各種素子は単に例示であり、必ずしも正しいスケールで描かれているとは限らない。誇張されている部分もあれば、最小化されている部分もある。図面は、当業者が理解し適切に実行できる本発明の様々な実施形態を示すことを目的とする。
以下ではまず、ネットワーク上で動作するQKDシステムを含むWDMネットワークについて説明する。この構成は、本明細書では以下WDM−QKDシステムと称される。本発明に係るWDMネットワークとともに使用するのに適したQKDシステムの実施形態を以下で説明する。
[QKDとWDMネットワーク]
図1は、WDMネットワーク2の概略図である。ネットワーク2は、それぞれの波長(チャネル)λ1、λ2、...λNで動作し、それぞれの光信号S1、S2、...SNを送出する多数(N個)の光源システムL(例えば、L1、L2、...LN)を含む。例示的な実施形態では、光信号S1、S2、...SNは相対的に強い(すなわち、非量子)光信号である。
ネットワーク2は、波長(量子チャネル)λQで動作し、量子信号SQを送出するQKDシステムQも含む。本明細書では、量子信号SQは単一光子、またはパルスごとに平均1未満の光子を有する弱い光パルスを含むものと理解される。
QKDシステムQは、2つのQKD局QAおよびQBを含む。双方向QKDシステムでは、「量子信号」という用語がQKD局間における理想的で確実な鍵の交換を供給する弱い光パルスとして機能するように、最初は相対的に強く後に減衰される光パルスを含む。
光源システムLは、それぞれの光ファイバセクションFL1、FL2、...FLNを介して、WDMマルチプレクサ6Mに光学的に結合される。同様に、QKDシステムQのQKD局QAは、光ファイバセクションFAを介して、WDMマルチプレクサ6Mに光学的に結合される。WDMマルチプレクサ6Mは、複数の波長λ1、λ2、...λNおよびλQを支持可能な光ファイバリンクFLによって、WDMデマルチプレクサ6Dに光学的に結合される。
ネットワーク2は、それぞれの波長(チャネル)λ1、λ2、...λNで動作し、それぞれの信号S1、S2、...SNを受信するように構成される多数(N個)の受信機システムR(例えば、R1、R2、...RN)も含む。受信機システムRは、それぞれの光ファイバセクションFR1、FR2、...FRNを介して、WDMデマルチプレクサ6Dに光学的に結合される。同様に、QKD局QBは、光ファイバセクションFBを介して、WDMデマルチプレクサ6Dに光学的に結合され、波長λQで量子信号SQを受信して処理するように構成される。
好適な実施形態では、WDMマルチプレクサ6MおよびWDMデマルチプレクサ6Dは、例えば、高絶縁薄膜フィルタなどの高絶縁フィルタを使用して、隣接する波長(チャネル)間に高度な絶縁を提供するように構成される。具体的には、WDMマルチプレクサおよびデマルチプレクサは、QKD波長KQでのサイドモードおよび増幅自然発光(ASE)を受け入れない絶縁を有する。
[WDMネットワークを用いて使用されるQKDシステム]
本発明は、単方向QKDシステムおよび双方向QKDシステムの両方に適用される。説明の便宜上、本発明は単方向QKDシステムを用いて説明する。本発明の双方向システムへの適用は、本明細書の説明から容易に理解される。
図2は、本発明に従って使用されるように構成された、図1のWDMネットワーク10の一部をなすQKDシステムQの実施形態の概略図である。QKD局QAは、レーザ光源LS1と、長さが異なるアーム14,16を有する第1の干渉計ループ12とを含む。レーザ光LS1と干渉計ループ12とは、単一の光パルスから2つのコヒーレント光パルスを生成するように構成された光学システムの一例を構成する。
干渉計アームのうち1つ(すなわち、14)は、変調器M1(偏光または位相)を含む。干渉計ループ12は、光ファイバセクションFAを介して、WDMマルチプレクサ6Mに結合され、上述したように光ファイバリンクFLを介して、WDMデマルチプレクサ6Dに結合される。
QKD局QAは、光源LS1と変調器M1に結合されるコントローラ18も含む。コントローラ18は、局QB(後述する)のコントローラ40と合わせて、これらの装置の動作を制御し協調させるように構成される。
引き続き図2を参照すると、光ファイバリンクFBは、ボブにおいて、WDMデマルチプレクサ6Dを第2の干渉計ループ22に光学的に結合する。ループ22は、異なる長さのアーム24および26を有し、アームのうちの1つ(すなわち、アーム24)に変調器M2(偏光または位相)を含む。説明の便宜上、ループ22は、2つの出力光ファイバセクションF4およびF4’を有する光カプラ23に結合されるように示されている。光カプラ23は、後述するように、カプラで結合される各種光パルスを示すために正しいスケールで描かれていない。光ファイバセクションF4およびF4’は、それぞれの光ゲート素子(「光ゲート」)28および28’を含み、それらの素子は順にそれぞれのSPD30および30’に光学的に結合される。光ゲート28および28’は、それぞれ、例えば、約10ピコ秒(ps)の速度で急速に切換可能なニオブ酸リチウム変調器のような、高速変調器等の高速スイッチから構成される、あるいはこのような高速スイッチを含むように構成される。図4の拡大図に示される実施形態では、各SPD用に2つの異なる光ゲートを採用するよりも、SPD30および30’に光学的に結合される単一の光ゲート28が使用される。
QKD局QBは、光ゲート28および28’、SPD30および30’、変調器M2に作動的に結合されるコントローラ40をさらに含む。コントローラ40は、後述するように、QKD局QAのコントローラ18とあわせてこれらの装置の動作を制御し協調させるように構成される。
[WDMネットワーク内でのQKDシステムの動作]
WDMネットワーク2内のQKDシステムQ(図1)では、それぞれのQKD局QA,QBにおけるコントローラ18,40は、レーザ光源L1、変調器M1,M2、光ゲート28,28’、およびSPD30,30’等の様々な装置の動作を協調させるため(例えば、ファイバリンクFL上で送出される図示されない同期信号を介して)、動作的に交信する。
よって、WDM−QKDシステムの動作では、コントローラ18は、与えられた時間で光パルスPOを生成するように、レーザ光源LS1に指示を出す時間制御信号S0を送出する。次に、光パルスP0は、第1の干渉計ループ12によって2つのパルスP1,P2に分割される。パルスのうちの1つ(すなわち、P1)は、時間変調器信号SM1を介して、コントローラ18の指示により変調器M1によってランダムに変調される。変調は、複数の所定の変調値から(例えば、乱数発生器を介して)ランダムに選択される。この種の変調は、本明細書では以下「選択ランダム変調」と称される。
干渉計アームの異なる光路長のため現在分離されている2つのパルスP1,P2は、必要な量子信号の弱さまで(例えば、図示しない可変光減衰器を介して)減衰される。次に、パルスP1,P2(本実施形態では量子信号SQを構成する)は、ファイバセクションFA上をWDMマルチプレクサ6Mまで移動する。次いで、WDMマルチプレクサ6Mが、光源システムL1、L2、...LN(図1)からの別の信号S1、S2、...SNとともにファイバリンクFL上にパルスP1,P2(すなわち、波長λQでの信号SQ)を多重化する。WDMデマルチプレクサ6Dは、信号S1、S2、...SNおよび信号SQを逆多重化し、信号SQをファイバセクションFBに向かわせ、そこで信号SQを第2の干渉計ループ22へ運ぶ。
干渉計22では、パルスP1,P2がそれぞれ2つのパルス(P1をP1aとP1bに、P2をP2aとP2bに)に分割される。2つのパルス(すなわち、P1aおよびP2a)はアーム24上を移動し、他の2つのパルス(すなわち、P1bおよびP2b)はアーム26上を移動する。アーム24上を移動するこれらのパルスのうち1つ(すなわち、P2a)は、コントローラ40からの時間変調信号SM2を介して、変調器M2により選択ランダム変調を受ける。
次に、第2の干渉計ループは光カプラ23でパルスを結合する。2つの干渉計ループ12および22が同じ路長である(例えば、アーム14および24の長さが同じで、アーム16および26の長さが同じ)場合、同じ光路長を移動する2つのパルス(すなわち、パルスP1bおよびP2a)が再結合されて(干渉されて)単一の干渉パルスを生成する。
説明の便宜上、干渉パルスは、量子信号SQとしても称される。この時点での量子信号SQは、変調器M1,M2により適用される2つの変調に関する情報を含むため、「暗号化された」とみなすことが可能である。異なる長さの光路をたどるため、他のパルスは互いに分離され、ファイバセクションF3に入る。
次いで、ファイバセクションF3上の(暗号化)量子信号SQは、(位相または偏光)変調器M1,M2によって量子信号に与えられる選択ランダム変調(例えば、位相または偏光)全体に応じて、光ファイバセクションF4,F4’のうち1つに移る。次に、量子信号SQは、コントローラ40からのそれぞれの時間電子ゲート信号S28,S28’によって始動される(例えば、開状態に切り替えられる)光ゲート28,28’のうち一方を通過する。次に、量子信号SQは、コントローラ40から時間ゲート信号S30,S30’によって電子的にゲーティングされるSPD30,30’のうち対応する一方によって検出される。
多数の量子信号に対してプロセスが繰り返され、量子信号は既知のQKD法に従って処理されて、QKD局QA,QB間において秘密鍵が確証される。
[SPDのデュアルゲーティング]
本発明の主要な態様は、検出ノイズを低減するために電子手段と光学手段の両方によるSPDのデュアルゲーティングを含む。本発明によると、コントローラ40は、電子ゲート信号S28,S28’を介して、光ゲート28,28’の動作を、電子SPDゲート信号S30,S30’を介して、SPD30,30’の動作を制御する。
図4は、光ゲート28,28’の電子ゲーティングと、対応するSPD30,30’の電子ゲーティングのタイミングと、を示すタイミング図である。光ゲート28,28’は、それぞれ関連付けされたウィンドウWOGを有する。ウィンドウWOGは、ゲート信号S28,S28’によって定義される幅TOGを有する。また、量子信号SQは、幅TSQを有する。
同様に、SPD30,30’は、それぞれSPDゲート信号S30,S30’によって定義される幅TSPDのウィンドウWSPDを有する。本発明において、TSPD>TOGである。また、実際には、ウィンドウWSPDの幅TSPDは、各SPDに対して同一であり、ウィンドウWOGの幅TOGは、各光ゲートに対して同一である。厳密に言うとそうである必要はないのだが、この種のゲートが下記の説明では推定される。
例示的な実施形態では、量子信号SQは、約20psの幅を有し、これはQKDで使用される典型的な量子信号の幅50psよりもかなり狭い。さらに、例示的な実施形態では、SPDのウィンドウ幅TSPDは、約1ナノ秒(ns)で、光ゲートウィンドウ幅TOGは約50psである。ニオブ酸リチウム変調器などの高速光学スイッチの使用によって明確な(すなわち、高い消光比)光ゲートウィンドウWOGが確保される。
ウィンドウWSPDおよびWOGは、図4に示されるように、量子信号SQを中心としてタイミングが取られる。SPDウィンドウWSPDの正確な幅TSPDは、ジッタのために500psも変動するが、光ゲートウィンドウWOGの幅TOGは、有意なジッタがない。したがって、TOGを有する光ゲートウィンドウは、量子信号の幅TSQともっと近い寸法にすることができる。
光ゲート28,28’(または単一の光ゲート28)を介して光ゲーティングを使用することにより、SPD30,30’は内在的な電子ノイズを制限する(例えば、最小限にする、あるいは大幅に低減する)ように電子的にゲーティングすることができる。これには、検出される可能性のある散乱光子の量を考慮せずに、量子信号の幅(例えば、TSPD〜1nsおよびTSQ〜10ps)と比べて相対的に広いSPDゲートウィンドウWSPDを使用することを含む。一方、光ゲート28,28’には、検出される(暗号化)量子信号SQの幅TSQに寸法が相対的に近い光ゲートウィンドウWOGが設けられる。例示的な実施形態では、光ゲートウィンドウWOGの幅TOGは、さもなければSPDにより検出される散乱光子の量を制限する(例えば、最小限にする、あるいは大幅に低減する)ように選択される。
光ゲートはジッタがさほどないため、量子信号SQの近接した光ゲーティングは、散乱光子からのSPD内の光ノイズの量を大幅に低減する。これにより、QKDシステムのQKD局がWDMネットワークに接続されるとき、量子信号SQを識別することができる。別の説明をすると、SPDの電子ゲーティングと光ゲーティングの組み合わせは、量子信号のフーリエ変換限定検出を可能とし、ひいてはWDMネットワークに相対的に強い光子ベースのノイズがある場合、相対的に弱い量子信号の検出を可能にする。
本発明の装置と方法を用いてSPDによって検出される散乱光の量の減少は、光ゲートウィンドウと電子ゲートウィンドウの幅の比によって概算される。よって、上述の例では、散乱光の減少は、TOG/TSPD=20ps/1ns〜17dBである。このレベルのノイズ低減によって、双方向QKDシステム内の量子信号の初期の強度を増大させることができる。よって、例えば、以前はわずか〜1GB/sであったQKDシステムで、今では〜50GB/sを得ることができる。
例示的な実施形態では、量子信号の幅を十分狭く維持するために、QKD局QA−QB間の光路(図2)には、分散能補償器DCが含まれる。
例示的な実施形態では、QKDシステムQは、「ロバストタイミングを有するQKDシステム」という名称のPCT特許出願第PCT/2004/003394号に記載されるような、コントローラ18,40における位相ロックループ(PLL)技術を含む。この特許出願は、ここで言及されることで本明細書に取り込まれる。このようなタイミング技術によって、ごくわずかな(例えば、〜1ps)のタイミングジッタを有するQKDシステムの協調動作が可能になる。
また、別の実施形態では、時間ゲーティングが単一のパルスを用いて達成される。単一パルス同期スキームは、対応する1つの光子カウントまたは1つのタイムスロットに対して1つの同期(「sync」)パルスを使用する。これは、両方の局が量子チャネル内で利用可能なタイムスロットよりも頻繁に互いに通信しあうPLLの設計の逆である。
[双方向QKDシステムの向上]
さらに本発明は、Electronics Letters v.34,n.22,pp.2116−2117,1998においてG.Ribordy,J.−D.Gautier,N.Gisin,O.Guinnard,H.Zbinden共著論文“Automated ‘plug & play’ quantum key distribution,”(以下、「Ribordy引例」と称する)に開示されるQKDシステムの設計および性能を向上させる。本明細書に記載されるQKDシステムは、量子信号および同期信号の両方に対して1つの強いレーザ信号を利用する。しかし、レイリー散乱を克服するには、ファイバスプールが、アリスとボブ間の伝送線の長さに一致するスプールの長さとともに必要とされる。このアプローチは、実際の鍵交換速度をかなり減速させる。本発明のゲーティングの方法と装置とは、SPDの光ゲーティングと電子ゲーティングの使用によって、本質的にレイリー散乱光子の検出を排除するため、ファイバスプールの排除が可能となる。
[双方向QKDシステムのセキュリティの向上]
本発明は、上述のRibordy引例に開示されるような双方向QKDシステムに適用された場合には、さらなる安全性を高めることができる。折り返しシステムでは、本発明は、レイリー散乱を17dB低減する。したがって、ボブから出るパルスの出力は、アリスで使用されて、増加してより高い減衰となりうる。これにより、盗聴者は17db超の光子でアリスを精査する必要があるため、盗聴者を検出するためのアリスにおける光ダイオードの使用が簡易化される。
QKDシステムを含むWDMネットワークの概略図。 図1のWDMネットワークの1部であり、本発明の検出器ゲートシステムおよび方法を採用するQKDシステムの実施形態の概略図。 単一の光ゲートが2個のSPDと光結合される、図2のQKDシステムの実施形態の拡大概略図。 検出される量子信号に対するSPDゲートウィンドウと光ゲートゲートウィンドウの寸法(幅)および位置を示すタイミング図。

Claims (14)

  1. 量子信号幅を持つ量子信号を検出するように構成される1または複数の単一光子検出器(SPD)を有するQKDシステムにおける検出ノイズ量の低減方法であって、
    前記量子信号の予想到着時間を中心とする第1の幅を有するゲートウィンドウを、各SPDに提供する第1のゲート信号を用いて、各SPDを電子的にゲーティングし、
    前記量子信号の前記予想到着時間を中心とする第2の幅を持つゲートウィンドウを、光ゲートに提供する第2のゲート信号を受け取るように構成される光ゲートを用いて、各SPDを光学的にゲーティングし、
    前記第1の幅が前記第2の幅より大きい、方法。
  2. 前記SPDに内在する電子ノイズを制限するために、前記第1の幅を選択することを含む、
    請求項1の方法。
  3. 各SPDによって検出される量子信号の量を増大させている間、各SPDによって検出されないように散乱光子の量を制限するために、前記第2の幅を選択することを含む、
    請求項2の方法。
  4. 前記第2の幅は、前記量子信号幅とほぼ同じである、
    請求項1の方法。
  5. 各SPDを別個の光ゲートに光学的に結合することを含む、
    請求項1の方法。
  6. 前記第1の波長を含む複数の波長を伝送するように構成されたWDMネットワーク上において第1のQKD局と第2のQKD局との間で第1の波長の複数の量子信号を生成し送出し、
    各QKD局で各量子信号を選択的にランダムに変調し、
    1または複数の単一光子検出器(SPD)を用いて、時間の関数として、前記複数の変調量子信号のそれぞれの変調を記録することを含んでおり、
    前記記録は、1または複数のSPD内の電子ノイズの量を制限している間、1または複数のSPDにおいて光ノイズとして検出されないように、前記WDMネットワークで生成される散乱光子の量を制限するように、1または複数のSPDを光学的におよび電子的にゲーティングすることを含む、暗号鍵の生成方法。
  7. 前記変調は、位相変調を含む、
    請求項6の方法。
  8. 1または複数の単一光子検出器(SPD)を用いてQKDシステムにおいて暗号化された量子信号の検出方法であって、
    第1のゲート幅によって各SPDを電子的にゲーティングし、
    前記第1のゲート幅より小さい第2のゲート幅で各SPDを光学的にゲーティングする、
    ことを備えている方法。
  9. 第1の波長を有する選択的にランダムに変調される量子信号を生成し、前記第1の波長を含む異なる波長の光信号を伝送するように構成されるWDMネットワーク上で第2のQKD局に前記量子信号を送出するように構成される第1のQKD局と、
    暗号化量子信号を形成するために、前記変調された量子信号を受信し、選択的に前記変調量子信号をランダム変調するように構成される第2のQKD局と、
    前記暗号化量子信号を検出するように構成され、前記暗号化量子信号を検出する際に電子ノイズを制限するために第1のゲートウィンドウで電子的にゲーティングされる第2のQKD局内の1または複数の単一光子検出器(SPD)と、
    前記1または複数のSPDに光学的に結合される1または複数の光ゲートと、を備え、
    各光ゲートが前記暗号化量子信号の予想到着時間に対応するようにゲーティングされ、前記1または複数のSPDに届かないように、散乱光の量を制限するために第2のゲートウィンドウがサイジングされる、QKDシステム。
  10. 各光ゲートに関連づけされた前記第2のゲートウィンドウが、各SPDに関連付けされた前記第1のゲートウィンドウよりも幅が狭い、
    請求項9のシステム。
  11. 各光ゲートに関連付けされた前記第2のゲートウィンドウが、前記暗号化量子信号の幅とほぼ同じ幅を有している、
    請求項9のシステム。
  12. 前記1または複数のSPDのそれぞれと動作的に結合される単一の光ゲートを含む、
    請求項9のシステム。
  13. 1または複数の単一光子検出器(SPD)と、
    前記1または複数のSPDに光学的に結合される1または複数の光ゲートと、
    各SPDおよび各光ゲートに動作的に結合され、第1の幅の第1のゲート信号を各SPDに、第2の幅の第2のゲート信号を各光ゲートに提供するように構成されるコントローラと、
    を備え、
    前記第2の幅は、前記第1の幅より小さい、
    暗号化量子信号を検出するように構成されるQKD局。
  14. 1または複数のSPDのそれぞれと光学的に結合される単一の光ゲートを含む、
    請求項13のQKD局。
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