JP2008507970A - アラニン2,3アミノムターゼ - Google Patents

アラニン2,3アミノムターゼ Download PDF

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ホリー ジェー. ジェッセン
ラビ アール. ゴカーン
スティーブン ジェー. ゴート
オルガ ブイ. セリフォノバ
ハンス エイチ. リヤオ
ブレイン ジェー. ブラゾー
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カーギル インコーポレイテッド
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    • C12N9/90Isomerases (5.)

Abstract

アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞およびそのような細胞に向けた選別方法と同様に、アラニン2,3-アミノムターゼ配列が開示される。β-アラニン、パントテナート、3-ヒドロキシプロピオン酸、ならびにその他の有機化合物を産生する方法が開示される。

Description

分野
本開示は、アラニン2,3-アミノムターゼの核酸およびアミノ酸配列、α-アラニンをβ-アラニンに変換できるアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞、ならびにβ-アラニン、パントテン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、およびその他の有機化合物を作り出すためにこれらの細胞を使用する方法に関する。
背景
有機酸、エステル、および多価アルコールのような有機化合物は、プラスチック材料およびその他の製品を合成するために使用される。有機化合物に対して高まる要求に応じるため、炭化水素よりも炭水化物に基づく原材料を利用する、いっそう効率的かつ費用効率が高い製造方法の開発が進んでいる。例えば、ポリ乳酸の製造に使用される乳酸を大量に製造するのに、ある種の細菌が利用されている。
3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)は、有機酸である。3-HPを産出するための幾つかの化学合成ルートが報告されており、生体触媒ルートもまた開示されている(Suthersらの国際公開公報第01/16346号(特許文献1))。3-HPは特殊合成のための用途を有し、脱水によってアクリル酸、酸化によってマロン酸、アルコールとのエステル化反応によってエステル、および還元によって1,3-プロパンジオールなど、化学工業における公知技術によって工業的に重要な中間体に変換されうる。
国際公開公報第01/16346号
概要
化合物、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)は、鍵となるβ-アラニン中間体を介して、PEPまたはピルベートから生体触媒的に作り出すことができる(図1)。β-アラニンは、カルノシンより、β-アラニルアルギニンより、β-アラニルリジンより、5,6-ジヒドロウラシルおよびN-カルバモイル-β-アラニンを経由してウラシルより、N-アセチル-β-アラニンより、アンセリンより、またはアスパルテートより、細胞中で合成することができる(図1および2)。しかし、これらのルートでは、3-HPよりもさらに高価である、稀有な前駆物質または開始化合物が必要とされるため、相対的に効率が悪い。従って、α-アラニンをβ-アラニンに直接変換することができれば、生体触媒ルートを利用した3-HPの産生は、いっそう効率的であると思われる(図1)。
本明細書に開示されるのは、アラニン2,3-アミノムターゼの生物活性を有する新規の変異リジン2,3アミノムターゼの核酸およびタンパク質配列である。1つの例では、変異リジン2,3アミノムターゼは、以下の1つまたは複数の置換を含む: P/S11T; N19Y; L/K/R/T26I; E/R30K; L/V32A; K36E; S/T/C52R; L/T53P/H; Y63F; E/N/D71G; H/I/S85Q; Q/L/E86R; Q/L95M; K/M/Q125L; M128V; Y132H; Q/S141R; A/D/S/M144G; D179N; K/Q187R; I192V; L228M; D331G/H; M/Q342T; またはK/Q/T398E、ここで数字の前の文字はリジン2,3アミノムターゼで見られるアミノ酸に対する1文字アミノ酸表記を表し、数字はポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)のリジン2,3アミノムターゼ(SEQ ID NO:52)に対する付番に基づくアミノ酸の位置(図7を参照のこと)を表し、および数字の後の文字はアラニン2,3アミノムターゼで見られるアミノ酸に対する1文字アミノ酸表記を表している。当業者であれば、実際の最初のアミノ酸およびアミノ酸番号は、変異されるリジン2,3アミノムターゼ配列に応じて変わりうることを理解し、ならびに配列を並べることで相同配列中の位置を決定できることを理解するであろう。例えば、図7に示されるように、ポルフィロモナス・ジンジバリスのリジン2,3アミノムターゼの11位は、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)のリジン2,3アミノムターゼ(SEQ ID NO:10)の12位、クロストリジウム・スティクランジィ(Clostridium sticklandii)のリジン2,3アミノムターゼ(SEQ ID NO:33)の9位、および枯草菌(Bacillus subtilis)のリジン2,3アミノムターゼ(SEQ ID NO:59)の8位に対応する。図7に示される情報および他の公的に利用可能なリジン2,3アミノムターゼ配列(例としては、炭疽菌(Bacillus anthracis str. Sterne)の場合、GenBankアクセッション番号YP_028406; ビブリオ菌(Vibrio vulnificus) YJ016の場合には同BAC95867; 酢酸生産菌(Moorella thermoacetica)の場合には同ZP_00330962; インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の場合には同ZP_00322274; メタン菌(Methanosarcina barkeri str. Fusaro)の場合には同ZP_00298043;ミクロブルビファー・デグラダンス(Microbulbifer degradans)の場合には同ZP_00314982および破傷風菌(Clostridium tetani) E88の場合には同NP_781545が挙げられるが、これらに限定されることはない)に基づき、残る位置の各々について当技術分野において公知の方法を利用し、類似の解析を行うことができる。
任意のリジン2,3アミノムターゼを標準的な分子生物学法により突然変異させて、アラニン2,3-アミノムターゼを作出することができる。例えば、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、エシェリキア属(Escherichia)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、メタノサルシナ属(Methanosarcina)、ミクロヴァルビファー属(Microbulbifer)、モーレラ属(Moorella)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、サーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)またはビブリオ属(Vibrio)などの原核生物のリジン2,3アミノムターゼを以下の置換P/S11T; N19Y; L/K/R/T26I; E/R30K; L/V32A; K36E; S/T/C52R; L/T53P/H; Y63F; E/N/D71G; H/I/S85Q; Q/L/E86R; Q/L95M; K/M/Q125L; M128V; Y132H; Q/S141R; A/D/S/M144G; D179N; K/Q187R; I192V; L228M; D331G/H; M/Q342T; またはK/Q/T398Eの1つまたは複数、例えば、そのような置換の少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、または3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、8個以下、9個以下、10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、20個以下、21個以下、22個以下、もしくは23個以下を含むように突然変異させることができる。そのような置換の特定の組合せは、以下を含むが、それらに限定されることはない: (1) N19Y、L/T53P/H、H/I/S85Q、D331G/H、およびM/Q342T; (2) N19Y、E/R30K、L/T53P/H、H/I/S85Q、I192V、D331G/H、およびM/Q342T; (3) N19Y、L/K/R/T26I; E/R30K、L/T53P/H、H/I/S85Q、I192V、D331G/H、およびM/Q342T; (4) E/R30K、Y63F、Q/L/E86R、Q/L95M、M128V、A/D/S/M144G、L228M、D331G/H、およびK/Q/T398E; (5) E/R30K、K36E、Y63F、Q/L/E86R、Q/L95M、M128V、A/D/S/M144G、D179N、L228M、D331G/H、およびK/Q/T398E; (6) E/R30K、Q/L95M、M128V、およびD331G/H; (7) P/S11T、E/R30K、Q/L95M、M128V、Q/S141R、K/Q187R、およびD331G/H; (8) E/R30K、L/V32A、L/T53P/H、E/N/D71G、Q/L95M; K/M/Q125L、M128V、およびD331G/H; (9) E/R30K、C52R、Q/L95M; M128V、およびD331G/H; (10) Q/L95M、M128V、およびD331G/H; (11) Q/L95M、M128V; Y132H、およびD331G/H; ならびに(12) Q/L95M、M128V、およびD331G/H。
アラニン2,3-アミノムターゼ分子の特定の例は、SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、および50に示される核酸配列、ならびにSEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、および51に示されるその対応するアミノ酸配列のほか、α-アラニンをβ-アラニンに相互変換する能力を保持するこれらの配列の変異体、断片、融合体、および多型を含む。開示されるアラニン2,3-アミノムターゼ配列は、形質転換細胞が、α-アラニンからβ-アラニンを産生することを可能にする、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するように、細胞を形質転換するのに使用することができる。アラニン2,3-アミノムターゼに特異的に結合する結合物質は、本開示により包含される。
細胞がα-アラニンをβ-アラニンに変換することを可能にする、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞が開示される。そのような細胞は、酵母細胞、植物細胞、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、バチルス(Bacillus)、またはエシェリキア(Escherichia)細胞のような、真核細胞または原核細胞とすることができる。1つの例では、形質転換細胞にアラニン2,3-アミノムターゼ活性を与える、変異リジン2,3-アミノムターゼを細胞に形質転換する。別の例では、細胞をSEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、もしくは50(またはアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持するその断片、融合体、もしくは変異体)で形質転換する。開示される細胞は、核酸分子、ペプチド、および有機化合物を産生するのに使用することができる。ペプチドは、有機化合物の形成を触媒するのに使用することができ、または特異的結合物質を作製するための抗原では使用することができる。
アラニン2,3-アミノムターゼをコードする核酸などの、少なくとも1つの外因性核酸を有する産生細胞が開示される。1つの例では、核酸配列はSEQ ID NO:8、20、42、44、46、48、もしくは50(またはアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持するその断片、変異体、もしくは融合体)を含む。別の例では、核酸配列はSEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、もしくは51に示されるアミノ酸配列(またはアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持する配列からなる断片、変異体もしくは融合タンパク質)をコードする。産生細胞は3-オキソプロピオナートから3-ヒドロキシプロピオナートを産生できるピルベート/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ、β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ、および3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼなどの、酵素活性を有するポリペプチドを発現するのに使用することができる。前記の核酸配列によりコードされるポリペプチドを産生する方法が開示される。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞を同定する方法が開示される。1つの例では、この方法は、panDが機能的に欠失された細胞を、β-アラニンもパントテナートも含まない培地中で培養する段階を含む。例えば、細胞は炭素、酸素、水素、および窒素の培地源からα-アラニンを産生することができるが、β-アラニンを含まない。培地中で増殖できる細胞が同定され、その際に細胞の増殖は、細胞がα-アラニンからβ-アラニンを産生していることを示し、このことは細胞がアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有することを示す。対照的に、細胞が増殖しないのは、細胞がα-アラニンからβ-アラニンを産生していないことを示し、このことは、細胞がアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有していないことを示す。1つの例では、細胞を選別のために培養する前に、細胞を1つまたは複数の変異リジン2,3-アミノムターゼで形質転換する。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するペプチドを産生する方法が開示される。1つの例では、この方法は、α-アラニンからβ-アラニンを産生できるアラニン2,3-アミノムターゼをコードする、少なくとも1つの外因性核酸分子(SEQ ID NO:8、20、42、44、46、48、もしくは50、またはアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持するその断片、変異体、もしくは融合体など)を有する細胞を培養する段階を含む。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する開示の細胞を用いてβ-アラニンから3-HPを産生する方法が開示される。1つの例では、細胞に、β-アラニンから3-HPに変換するのに必要な酵素の1つまたは複数を形質移入する。別の例では、この方法は、細胞からβ-アラニンを精製する段階、次いでβ-アラニンを、β-アラニンから3-HPに変換するのに必要なポリペプチドと接触させる段階を含む。
本明細書に開示される、細胞、アラニン2,3-アミノムターゼの核酸およびアミノ酸配列(SEQ ID NO:8、20、42、44、46、48、もしくは50、またはアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持するその断片、変異体、もしくは融合体など)、ならびに方法は、パントテナート、3-HP; およびコエンザイムA(CoA)、およびその他の有機化合物、例えば1,3-プロパンジオール、アクリル酸、アクリレート重合体、アクリレートのエステル、3-HP重合体、3-HPとその他の化合物(例えばブチラート(butyrate)、バレラート(valerate)およびその他の化合物)の共重合体、3-HPのエステル、ならびにマロン酸およびそのエステルのようなその誘導体を産生するのに使用することができる。3-HPは、生物学的にも工業的にも重要である。例えば、栄養業界では、3-HPを食料、飼料添加剤または保存剤として使用することができる一方で、上述の誘導体を、3-HPから産生することができる。
アラニン2,3-アミノムターゼをコードする核酸分子(SEQ ID NO:8、20、42、44、46、48、もしくは50、またはアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持するその断片、変異体、もしくは融合体など)は、3-HPならびに上記のものなどのその他の有機化合物を産生する能力を有する宿主細胞を遺伝子工学で作り変えるのに使用することができる。アラニン2,3-アミノムターゼのペプチド(SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、および51、ならびにα-アラニンをβ-アラニンに相互変換する能力を保持するこれらの配列の変異体、断片、または融合体など)は、3-HPならびに上記のものなどのその他の有機化合物を作り出すための無細胞系で使用することができる。本明細書に記述されている細胞は、3-HPならびに上記のものなどのその他の有機化合物を大量に産生するための培養系で使用することができる。
開示の1つの局面により、アラニン2,3-アミノムターゼ活性に加えて、ピルベート/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性および3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性などの、その他の酵素活性を含む細胞が提供される。さらに、この細胞はポリヒドロキシ酸シンターゼ活性、またはリパーゼもしくはエステラーゼ活性を含むことができる。
別の例では、アラニン2,3-アミノムターゼ活性、ピルベート/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、および3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性を含む細胞は産物、例えば、3-HPまたはメチル3-ヒドロキシプロピオナート、エチル3-ヒドロキシプロピオナート、プロピル3-ヒドロキシプロピオナート、もしくはブチル3-ヒドロキシプロピオナートなどの3-HPのエステルを産生する。従って、開示は同様に、これらの産物の1つまたは複数を産生する方法を提供する。いくつかの例では、この方法はアラニン2,3-アミノムターゼ活性、ピルベート/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、および3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性を含む細胞を、産物が産生されることを可能にする条件の下で培養する段階を含む。これらの細胞は同様に、リパーゼまたはエステラーゼ活性を含むことができる。
開示の別の局面により、アラニン2,3-アミノムターゼ活性に加えて、ピルベート/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性、およびポリヒドロキシ酸シンターゼ活性を有する細胞が提供される。この細胞は、例えば、3-HP重合体ならびに3-HPとその他の化合物、例えば、ブチラート、バレラートおよびその他の化合物の共重合体などの産物を産生するのに使用することができる。
1,3-プロパンジオールを産生する細胞、およびその使用の方法が開示される。1,3-プロパンジオールは、酵素活性を有するポリペプチドの使用を介して3-HPから作出することができる。3-HPから1,3-プロパンジオールを作製する場合、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(NAD(P)+) (酵素番号1.2.1-)およびアルコールデヒドロゲナーゼ(酵素番号1.1.1.1)のような、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性(1.2.1-分類由来の酵素など)を有するポリペプチドおよびアルコールデヒドロゲナーゼ活性(1.1.1-分類由来の酵素など)を有するポリペプチドの組合せを使用することができる。
いくつかの例では、産物はインビトロ(細胞外)で産生される。その他の例では、産物はインビトロおよびインビボの(細胞内の)方法の組合せを用いて産生される。その他の例では、産物はインビボで産生される。インビボ段階を含む方法の場合、細胞は、単離された培養細胞または生物全体、例えば、形質転換植物、ヒト以外の哺乳動物、もしくは酵母および細菌(ラクトバチルス、ラクトコッカス、バチルス、およびエシェリキア細胞など)のような単細胞生物とすることができる。以下、そのような細胞を産生細胞という。これらの産生細胞により産生される産物は、有機産物、例えばβ-アラニン、3-HP、パントテナート、および有機酸、多価アルコール(1,3-プロパンジオールなど)、コエンザイムA(CoA)のようなその誘導体のほか、本明細書に記述されるアラニン2,3-アミノムターゼとすることができる。
多くの動物にとって成長および健康に不可欠なビタミンである、パントテナートは、脂肪酸の合成および分解に関与している。ビタミンの欠乏により、臨床的には全身倦怠感が引き起こされる。従って、本明細書に開示される方法を用いて産生されるパントテナートを、治療的に有効な用量で、パントテナート欠乏症を有する被験体に投与することができる。パントテナートを産生する細胞、および開示の細胞を用いてβ-アラニンからパントテナートを産生する方法が開示される。パントテナートおよび/またはCoAを産生するのに使われる産生細胞は、α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(酵素番号2.1.2.11)、α-ケトパントイン酸レダクターゼ(酵素番号1.1.1.169)、およびパントテナートシンターゼ(酵素番号6.3.2.1)を発現させてパントテナートを産生するように、またはそのほかにパントテナートキナーゼ(酵素番号2.7.1.33)、4'-ホスホパンテテノイル-1-システインシンテターゼ(酵素番号6.3.2.5)、4'-ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ(酵素番号4.1.1.36)、ATP:4'-ホスホパンテテインアデニルトランスフェラーゼ(酵素番号2.7.7.3)、およびデホスホ-CoAキナーゼ(酵素番号2.7.1.24)を発現させてコエンザイムAを産生するように使用することができる。
いくつかの態様の詳細な説明
用語および方法の以下の説明は、本開示をよりよく説明するために、および本開示を実践するうえで当業者を教え導くために提供される。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈により他に明記されていなければ1つまたは2つ以上のことをいう。例えば、「核酸分子(a nucleic acid molecule)を含む 」という用語は、単一のまたは複数の核酸分子を含み、「少なくとも1つの核酸分子を含む」という語句に等しいと考えられる。「または」という用語は、文脈により他に明記されていなければ、述べられている代替的要素のうちの単一の要素または2つもしくはそれ以上の要素の組合せのことをいう。本明細書で用いられる場合、「含む(comprises)」は「含む(includes)」を意味する。従って、「AまたはBを含む(comprising A or B)」は、さらなる要素を除外することはなく、「A、B、またはAおよびBを含む(including A, B, or A and B)」を意味する。
他に説明がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示に関係する当業者によって共通して理解されるのと同じ意味を有する。本開示を実践および試験するうえで、本明細書に記述されるものと類似であるかまたは等価である方法および材料を使用することができるが、適当な方法および材料を以下に記述する。材料、方法、および例は、単なる例示に過ぎず限定を意図するものではない。開示のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
アラニン2,3-アミノムターゼ: 例えば細胞中でα-アラニンをβ-アラニンにおよびその逆に変換できる酵素である。原核生物のような、任意の生物由来の任意のアラニン2,3-アミノムターゼの遺伝子、cDNA、RNA、またはタンパク質が含まれる。1つの例では、アラニン2,3-アミノムターゼは、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する、変異リジン2,3-アミノムターゼである。リジン2,3-アミノムターゼ(または遺伝子データベース中でリジン2,3-アミノムターゼとして注釈が付けられている遺伝子)は原核生物、例えば、枯草菌、ポルフィロモナス・ジンジバリス、フソバクテリウム・ヌクレアタム、クロストリジウム・スティクランジィ、または大腸菌(Escherichia coli)のような、任意の生物から得ることができ、当技術分野において公知の任意の方法を利用して突然変異させることができる。
特定の例では、アラニン2,3-アミノムターゼ核酸配列は、SEQ ID NO:1、3、5、18、20、42、44、46、48、または50に示される配列、およびアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するペプチドまたはタンパク質をコードする能力を保持するその断片、変異体、または融合体を含む。別の例では、アラニン2,3-アミノムターゼタンパク質は、SEQ ID NO:2、4、6、19、21、43、45、47、49、または51に示されるアミノ酸配列、およびアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持するその断片、融合体、または変異体を含む。
別の例では、アラニン2,3-アミノムターゼ配列は、SEQ ID NO:2、4、6、19、21、43、45、47、49、または51などの、完全長の野生型配列、およびSEQ ID NO:2、4、6、19、21、43、45、47、49、または51の少なくとも9個の連続アミノ酸(例えば、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも350個、少なくとも400個、少なくとも410個、または少なくとも450個の連続アミノ酸)などの、α-アラニンをβ-アラニンに変換する能力を保持するさらに短い配列を含む。アラニン2,3-アミノムターゼ配列の特定の断片は、SEQ ID NO:2または4のアミノ酸番号50〜390、SEQ ID NO:2または4のアミノ酸番号101〜339、SEQ ID NO:2または4のアミノ酸番号15〜390、およびSEQ ID NO:2または4のアミノ酸番号15〜340を含むが、これらに限定されることはない(SEQ ID NO:6、19、21、43、45、47、49、および51中の対応する断片(SEQ ID NO:6、49または51のアミノ酸番号42〜342など)は本開示により包含されており、図7を利用することにより決定することができる)。そのような断片(または完全長のペプチド)は、結果的に得られるペプチドがアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する限り、その他のペプチド配列に融合させることができる。本記述はアラニン2,3-アミノムターゼの対立遺伝子変異体、およびα-アラニンをβ-アラニンに変換する能力を保持する任意の変異体、断片、または融合体の配列を含む。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性: α-アラニンをβ-アラニンにおよびその逆に変換するアラニン2,3-アミノムターゼの能力である。1つの例では、そのような活性は細胞中で起こる。別の例では、そのような活性はインビトロで起こる。そのような活性は、当技術分野において公知の任意のアッセイ、例えば、以下の実施例に記述されるスクリーニングアッセイおよび酵素アッセイにより測定することができる。さらに、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する酵素は、α-アラニンまたはβ-アラニンのいずれかと酵素をインキュベートし、高速液体クロマトグラフィーにより(例えば、Abe et al. J. Chromatography B, 712:43-9, 1998の方法を利用して)反応産物を決定することで同定することができる。1つの例では、panD遺伝子が機能的に欠失された大腸菌変異体中でα-アラニンをβ-アラニンに変換することは、アラニン2,3-アミノムターゼの能力である。
1つの例では、変異リジン2,3アミノムターゼは、SEQ ID NO:51に示されるペプチド配列のようなアラニン2,3アミノムターゼ活性の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または場合により少なくとも100%を有する。
抗体: 抗原を特異的に結合する(抗原と免疫反応する)、抗原結合部位を含む分子である。例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、またはその免疫学的に有効な部分が挙げられる。
免疫グロブリン分子およびその免疫学的に活性な部分が含まれる。天然に存在する抗体(IgGなど)には、四本のポリペプチド鎖、つまりジスルフィド結合により相互に連結された二本の重(H)鎖と二本の軽(L)鎖が含まれる。しかし、抗体の抗原結合機能は、天然に存在する抗体の断片により行うことができる。モノクローナル抗体の免疫学的に有効な部分は、以下に限定されることはないが: Fab、Fab'、F(ab')2、FabcおよびFv部分を含む(総説としてはBetter and Horowitz, Methods. Enzymol. 1989, 178:476-96を参照のこと)。抗原結合断片のその他の例には、以下に限定されることはないが: (i) VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFab断片; (ii) VHおよびCH1ドメインからなるFd断片; (iii) 抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片; (iv) VHドメインからなるdAb断片; (v) 単離された相補性決定領域(CDR); および(vi) F(ab')2断片、つまりヒンジ(蝶番)部でジスルフィド架橋により連結された2個のFab断片を含む二価断片が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインは別々の遺伝子によりコードされるが、組換え法により、2つのドメインが一本のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる)として構成されるのを可能にする、合成リンカーを作製することができる。そのような一本鎖抗体も含まれる。
「特異的に結合する」とは、特定の物質(「特異的結合物質」)が、特定の被分析物質と特異的に反応する、例えば、抗体と特異的に免疫反応する、または特定のペプチド配列に特異的に結合する能力のことをいう。この結合は、例えば、抗体分子と抗原決定基との間の偶発的ではない結合反応である。抗体の結合特異性は通常、抗体が特異抗原と、関連性のない抗原とを区別して結合する能力、故に、特に2つの抗原が特異なエピトープを有する場合、2つの異なる抗原を区別する能力の基準点から決定される。特定のエピトープに特異的に結合する抗体は、「特異抗体」と呼ばれる。
アラニン2,3-アミノムターゼポリペプチド(SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、または51など)、アラニン2,3-アミノムターゼポリペプチドの断片(SEQ ID NO:2もしくは4のアミノ酸番号50〜390、例えば、SEQ ID NO:2もしくは4のアミノ酸番号101〜339、またはSEQ ID NO:2もしくは4のアミノ酸番号15〜390、例えば、SEQ ID NO:2もしくは4のアミノ酸番号15〜331、あるいは図7を利用することにより決定できるSEQ ID NO:6、19、21、43、45、47、49、および51中の対応する断片(SEQ ID NO:6、49または51のアミノ酸番号42〜342など))、またはその変異体、もしくは融合体に対して産生されうるモノクローナルまたはポリクローナル抗体は、本開示により包含される。好ましくは、ポリペプチド抗原上の1つまたは複数のエピトープに対して産生された抗体は、そのポリペプチドを特異的に検出するはずである。すなわち、ある特定のポリペプチドに対して産生された抗体は、その特定のポリペプチドを認識して結合するはずであり、実質的にその他のポリペプチドを認識して結合することがないはずである。抗体が特定のポリペプチドに特異的に結合することは、いくつかの標準的な免疫アッセイ法のいずれか1つの方法; 例えば、ウエスタンブロッティング法(例えば、Sambrook et al. (編), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989を参照のこと)により決定される。
抗体調製物(アラニン2,3-アミノムターゼポリペプチド、例えば、SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、または51に対してマウスで産生された調製物など)が、適切なポリペプチド(アラニン2,3-アミノムターゼポリペプチドなど)を特異的に検出することをウエスタンブロッティング法により決定するため、細胞全タンパク質を、細胞から抽出し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により分離することができる。分離された細胞全タンパク質を次に、膜(ニトロセルロースなど)に転写し、抗体調製物をその膜とインキュベートすることができる。非特異的に結合した抗体を取り除くために膜を洗浄した後、特異的に結合した抗体の存在を、アルカリホスファターゼなどの酵素を結合させた、適切な二次抗体(抗マウス抗体など)を用いて検出することができる。5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウムの適用により、免疫局在化したアルカリホスファターゼによる濃青色の化合物の産生が引き起こされるためである。
免疫原として用いるのに適した実質的に純粋なポリペプチドは、形質移入細胞、形質転換細胞、または野生型細胞から得ることができる。最終調製物中のポリペプチド濃度は、例えば、Amiconろ過装置での濃縮により、1 ml当たり数μg程度まで調整することができる。さらに、大きさが、完全長のポリペプチドから僅か9アミノ酸残基のポリペプチドまでに及ぶポリペプチドを、免疫原として利用することができる。そのようなポリペプチドは細胞培養で産生することができ、標準的な方法を用いて化学的に合成することができ、または大きいポリペプチドを精製可能なさらに小さいポリペプチドに切断することにより得ることができる。長さが僅か9アミノ酸残基しかないポリペプチドは、MHCクラスIまたはMHCクラスII分子のような主要組織適合複合体(MHC)分子とともに免疫系に提示される場合、免疫原となりうる。従って、アラニン2,3-アミノムターゼポリペプチドのうちの少なくとも9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、410個、450個、500個、またはそれ以上の連続アミノ酸残基を有するペプチドを、抗体を産生させるための免疫原として使用することができる。
本明細書に開示されるポリペプチドのいずれかに対するモノクローナル抗体は、Kohler & Milsteinの典型的な方法(Nature 256: 495, 1975)またはその派生的な方法に従って、マウスハイブリドーマから調製することができる。
本明細書に開示されるいずれかのポリペプチドの不均質的なエピトープに対する抗体を含有するポリクローナル抗血清は、未改変型または免疫原を増強させるため改変型とできるポリペプチド(またはその断片、融合体、もしくは変異体)で適当な動物を免疫することにより調製することができる。ウサギに対する効果的な免疫手順はVaitukaitisら(J. Clin. Endocrinol. Metab. 33:988-91, 1971)の中で見出すことができる。
抗体断片を完全な抗体の代わりに使用することができ、原核宿主細胞中で容易に発現させることができる。モノクローナル抗体の免疫学的に有効な部分(「抗体断片」とも呼ばれる)を作製するおよび使用する方法は周知であり、Better & Horowitz (Methods Enzymol. 178:476-96, 1989)、Glockshuberら(Biochemistry 29:1362-7, 1990)、米国特許第5,648,237号(「Expression of Functional Antibody Fragments」)、米国特許第4,946,778号(「Single Polypeptide Chain Binding Molecules」)、米国特許第5,455,030号(「Immunotherapy Using Single Chain Polypeptide Binding Molecules」)、およびその中で引用されている文献に記述されているものを含む。
抗原: 動物に、注入されるまたは吸収されるような、投与される組成物を含め、動物において抗体の産生またはT細胞応答を刺激できる化合物、組成物、または物質である。抗原は、異種免疫原によって誘導されるものを含め、特異的な体液性または細胞性免疫の産物と反応する。「抗原」という用語には、関連する抗原エピトープの全てが含まれる。
cDNA(相補的DNA): 内部の、非コードセグメント(イントロン)および転写を決定する調節配列がないDNAの部分である。cDNAは、細胞から抽出された伝令RNAから逆転写により、実験室で合成することができる。
保存的置換: 類似の生化学的特性を有するアミノ酸残基への1個または複数個(例えば、1、2、5または10残基)のアミノ酸置換である。通常、保存的置換は、結果的に得られるポリペプチドの活性にほとんどないし全く影響を及ぼさない。例えば、保存的置換は、α-アラニンをβ-アラニンに変換するペプチドの能力に実質的に影響を及ぼさないアラニン2,3-アミノムターゼペプチドにおけるアミノ酸置換である。
特定の例では、保存的置換はα-アラニンをβ-アラニンに変換するタンパク質の能力を実質的に変化させない、SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、または51における保存的置換などの、アラニン2,3-アミノムターゼペプチドにおけるアミノ酸置換である。アラニン2,3-アミノムターゼ活性を測定するのに使用できる方法は、以下の実施例に開示される。アラニン2,3-アミノムターゼのペプチド中のどのアミノ酸残基がアミノ酸置換を許容できるかを同定するのに、アラニンスキャン法を使用することができる。1つの例では、1個または複数個の固有アミノ酸がアラニン、保存的アミノ酸(以下に記載されているものなど)、または非保存的アミノ酸に置換される場合、アラニン2,3-アミノムターゼ活性は25%を超えて低下しない、例えば20%を超えて低下しない、例えば10%を超えて低下しない。
1つの例では、SEQ ID NO:2、4、6、19、21、43、45、47、49、または51のいずれかにおける保存的置換などの、1個の保存的置換がペプチド中に含まれる。別の例では、5個またはそれ以下などの、10個またはそれ以下の保存的置換がペプチド中に含まれる。ポリペプチドは、例えば、部位特異的突然変異誘発法またはPCR法などの標準的な方法を用いて、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を操作することにより、1個または複数個の保存的置換を含むように産生することができる。あるいは、ポリペプチドは、標準的なペプチド合成法を用いることにより、1個または複数個の保存的置換を含むように産生することができる。
置換変異体は、アミノ酸配列中の少なくとも1つの残基が取り除かれ且つその場所に異なる残基が挿入されているものである。タンパク質中の本来のアミノ酸と置換することができ、且つ保存的置換とされるアミノ酸の例には、以下が含まれる: Alaに対してSer; Argに対してLys; Asnに対してGlnまたはHis; Aspに対してGlu; Cysに対してSer; Glnに対してAsn; Gluに対してAsp; Glyに対してPro; Hisに対してAsnまたはGln; Ileに対してLeuまたはVal; Leuに対してIleまたはVal; Lysに対してArgまたはGln; Metに対してLeuまたはIle; Pheに対してMet、LeuまたはTyr; Serに対してThr; Thrに対してSer; Trpに対してTyr; Tyrに対してTrpまたはPhe; およびValに対してIleまたはLeu。
保存的置換に関するさらなる情報は、とりわけ、Ben-Bassatら(J. Bacteriol. 169:751-7, 1987)、O'Reganら(Gene 77:237-51, 1989)、Sahin-Tothら(Protein Sci. 3:240-7, 1994)、Hochuliら(Bio/Technology 6:1321-5, 1988)、国際公開公報第00/67796号(Curd et al.)の中で、ならびに遺伝および分子生物学の標準的な教科書の中で見出すことができる。
欠失: 核酸、例えばDNAの配列が除去される結果、その両側の部位が相互に連結される。
検出可能: 実在または存在が確定されうること。例えば、β-アラニンから生成されるシグナルが測定できるくらい十分に強い場合、α-アラニンからのβ-アラニンの産生は検出可能である。
DNA: デオキシリボ核酸。DNAは、大部分の生物(ウイルスのなかには、リボ核酸RNAからなる遺伝子を有するものもある)の遺伝物質を含む長鎖高分子化合物である。DNA高分子化合物の繰り返し単位は、4種の異なるヌクレオチドであり、各ヌクレオチドは4種の塩基、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンのうちの1つにリン酸基の付いたデオキシリボース糖が結合されるようにして含む。DNA分子中の、コドンと呼ばれる、ヌクレオチドのトリプレットがポリペプチド中のアミノ酸をコードする。コドンという用語は、DNA配列が転写されるmRNA中の3つのヌクレオチドの対応(および相補的)配列に対しても使用される。
外因性: 核酸分子および特定の細胞に関連して本明細書で使用される「外因性」という用語は、自然界で見られるその特定の細胞を起源としない、任意の核酸分子のことをいう。従って、天然に存在しない核酸分子は、いったん細胞に導入されてしまえば、細胞にとって外因性であると考えられる。天然に存在する核酸分子も同様に、特定の細胞にとっては外因性となりうる。例えば、個体Xの細胞から単離された全染色体は、いったんその染色体が個体Yの細胞に導入されてしまえば、Yの細胞に対しては外因性核酸分子となる。
機能的欠失: 遺伝子配列に対してなされ、遺伝子産物の産生を減らしもしくは阻害し、または遺伝子産物を非機能的とする、突然変異、部分的もしくは完全な欠失、挿入、またはその他の変異。例えば、大腸菌のPanDの機能的欠失によって、PanD遺伝子がコードするアスパルテートデカルボキシラーゼによる、アスパルテートからのβ-アラニンの産生が抑制される。大腸菌のPanDの機能的欠失によりアスパルテートデカルボキシラーゼが不活化され、これにより増殖培地中にβ-アラニンまたはパントテナートがない場合には大腸菌の増殖阻害が引き起こされる。
機能的に等価: 等価な機能を持っていること。アラニン2,3-アミノムターゼ分子との関連では、機能的に等価な分子には、アラニン2,3-アミノムターゼの機能を保持する異なる分子が含まれる。例えば、機能的等価物は、アラニン2,3-アミノムターゼの配列改変により得られるが、この場合、1つまたは複数の配列の改変を有するそのペプチドは、α-アラニンをβ-アラニンに変換するその能力を保持するように、未改変のペプチドの機能を保持する。
配列改変の例は、置換(保存的および非保存的)、欠失、突然変異、フレームシフト、および挿入を含むが、これらに限定されることはない。1つの例では、あるポリペプチドが抗体と結合するとすれば、機能的等価物はその同じ抗体と結合するポリペプチドである。従って、機能的等価物は、ポリペプチドと同じ結合特異性を有するペプチドであって、ポリペプチドに代わる試薬(パントテン酸および3-HPの産生におけるなど)として使用できるペプチドを含む。1つの例では、機能的等価物は結合配列が不連続性であって、抗体が直鎖状エピトープと結合する、ポリペプチドを含む。従って、ペプチド配列がMNTVNTRKKF (SEQ ID NO:19のアミノ酸番号1〜10)であるならば、機能的等価物は以下のように表される不連続性のエピトープを含む(**=任意数の介在アミノ酸): NH2-**-M**N**T**V**N**T**R**K**K**F-COOH。この例では、ポリペプチドの三次元構造が、SEQ ID NO:19のアミノ酸番号1〜10と結合するモノクローナル抗体と結合できるような構造である場合に、ポリペプチドはSEQ ID NO:19のアミノ酸番号1〜10と機能的に等価である。
ハイブリダイゼーション: 相補的な一本鎖DNAまたはRNAが二本鎖分子を形成する能力。いくつかの例では、ハイブリダイゼーションは2つまたはそれ以上のヌクレオチド配列間の相補性を決定するために使われる。核酸ハイブリダイゼーション技術を利用して、開示の範囲内の単離核酸を得ることができる。簡単に言えば、アラニン2,3-アミノムターゼに対していくらかの相同性(SEQ ID NO:1、3、5、18、20、42、44、46、48、もしくは50またはその変異体もしくは断片に対する相同性など)がある任意の核酸分子をプローブとして利用して、適度のないし高度のストリンジェンシーの条件下でハイブリダイゼーションにより類似の核酸分子を同定することができる。同定されたら、核酸を次に精製し、配列決定し、および分析して、それがアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するアラニン2,3-アミノムターゼであるかどうかを決定することができる。
ハイブリダイゼーションは、サザンまたはノーザン解析により、プローブにハイブリダイズする、それぞれ、DNAまたはRNA配列を同定するために行うことができる。プローブは、例えば、ビオチン、蛍光物質、ジゴキシゲニン、酵素、または32Pのような放射性同位体で標識することができる。解析されるDNAまたはRNAをアガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲルにて電気泳動的に分離し、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、またはその他の適当な膜に転写し、Sambrook et al., (1989) Molecular Cloning, 第二版, Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview, NYの第7.39項〜第7.52項に記述されているものなどの当技術分野において周知の標準的な技術を用いてプローブとハイブリダイズさせることができる。通常、プローブは、長さが少なくとも約20ヌクレオチドである。例えば、アラニン2,3-アミノムターゼの20個の連続ヌクレオチド(SEQ ID NO:1、3、5、18、20、42、44、46、48、または50の20個の連続ヌクレオチドなど)を含むプローブを、同一のまたは類似の核酸を同定するのに使用することができる。さらに、20ヌクレオチドよりも長いまたは短いプローブを使用することができる。
開示により同様に、長さが少なくとも約12ヌクレオチド(長さが少なくとも約13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、100、250、500、750、1000、1400、2000、3000、4000、または5000ヌクレオチドなど)であって、ハイブリダイゼーション条件の下で、アラニン2,3-アミノムターゼ核酸配列(例えば、SEQ ID NO:1、3、5、18、20、42、44、46、48、または50)のセンス鎖またはアンチセンス鎖にハイブリダイズする、単離された核酸配列が提供される。ハイブリダイゼーション条件は、適度にまたは高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とすることができる。
適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションが、25 mM KPO4 (pH 7.4)、5×SSC、5×デンハート液、50 μg/mL変性、超音波処理済サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、および1〜15 ng/mLプローブ(約5×107 cpm/μg)を含有するハイブリダイゼーション溶液中、約42℃で行われ、その上、洗浄が、2×SSCおよび0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する洗浄液により約50℃で行われる場合である。
高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションが、25 mM KPO4 (pH 7.4)、5×SSC、5×デンハート液、50 μg/mL変性、超音波処理済サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、および1〜15 ng/mLプローブ(約5×107 cpm/μg)を含有するハイブリダイゼーション溶液中、約42℃で行われ、その上、洗浄が、0.2×SSCおよび0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する洗浄液により約65℃で行われる場合である。
単離された: 「単離された」生物学的成分(核酸分子またはタンパク質など)は、その成分がもともと存在している生物細胞中のその他の生物学的成分(その他の染色体のおよび染色体外のDNAおよびRNA、ならびにタンパク質など)から実質的に分離または精製除去されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質は、標準的な精製方法により精製された核酸分子およびタンパク質を含む。この用語は同様に、宿主細胞中で組換え発現により調製された核酸分子およびタンパク質ならびに化学的に合成された核酸、タンパク質およびペプチドも包含する。
1つの例では、単離されたとは、天然に存在する核酸分子であって、その起源生物の天然に存在するゲノム中では直接に接している両配列(一方は5'末端でおよび一方は3'末端で)と直接に接していない、天然に存在する核酸分子のことをいう。例えば、単離された核酸分子は、非限定的に、任意の長さの組換えDNA分子とすることができるが、ただし天然に存在するゲノム中で通常、その組換えDNA分子に直接隣接して見られる核酸配列のうちの1つが除去されているかまたは存在していないという条件である。従って、単離された核酸分子は、非限定的に、その他の配列から独立した別個の分子(PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理により産生されたcDNAまたはゲノムDNA断片など)として存在する組換えDNAおよびベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(レトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルスなど)に、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれる組換えDNAを含む。さらに、単離された核酸は、ハイブリッドまたは融合核酸配列の一部である組換えDNA分子を含むことができる。
1つの例では、「単離された」という用語が核酸分子に関して使用される場合には同様に、任意の天然に存在しない核酸配列が含まれるが、これは天然に存在しない核酸の配列が、自然界で見られることはなく、天然に存在するゲノム中において直接に隣接する配列を有していないためである。例えば、遺伝子操作された核酸分子などの天然に存在しない核酸分子は、単離された核酸であると考えられる。遺伝子操作された核酸分子は、一般的な分子クローニング技術または核酸の化学合成技術を用いて作製することができる。単離された天然に存在しない核酸分子は、その他の配列から独立させておいてもよく、またはベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(レトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルスなど)、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれていてもよい。さらに、天然に存在しない核酸分子は、ハイブリッドまたは融合核酸配列の一部である核酸分子を含むことができる。
リジン2,3-アミノムターゼ: α-リジンをβ-リジンに変換できる酵素である。原核生物、例えば、枯草菌、クロストリジウム・サブテルミナレ(Clostridium subterminale)、ポルフィロモナス・ジンジバリス、フソバクテリウム・ヌクレアタム、クロストリジウム・スティクランジィ、または大腸菌のような、任意の生物由来の任意のリジン2,3-アミノムターゼの遺伝子、cDNA、RNA、またはタンパク質が含まれる。本記述はリジン2,3-アミノムターゼの対立遺伝子変異体、およびα-リジンをβ-リジンに変換する能力を保持する任意の変異体、断片、または融合体の配列を含む。1つの例では、GenBankおよびEMBLのような、公共の配列データベースの中でリジン2,3-アミノムターゼとして注釈が付けられている遺伝子によりコードされるペプチドが含まれる。リジン2,3-アミノムターゼタンパク質(および対応する核酸配列)の特定の例は、以下の公的に利用可能な配列を含む: 炭疽菌の場合、GenBankアクセッション番号YP_028406; ビブリオ菌YJ016の場合には同BAC95867; 酢酸生産菌の場合には同ZP_00330962; インフルエンザ菌の場合には同ZP_00322274; メタン菌の場合には同ZP_00298043; ミクロブルビファー・デグラダンスの場合には同ZP_00314982; および破傷風菌E88の場合には同NP_781545。
変異リジン2,3アミノムターゼ: アラニン2,3アミノムターゼ活性を有するペプチドをもたらす1つまたは複数のアミノ酸置換を含むリジン2,3-アミノムターゼ分子である。そのような突然変異の例は、以下、P/S11T; N19Y; L/K/R/T26I; E/R30K; L/V32A; K36E; S/T/C52R; L/T53P/H; Y63F; E/N/D71G; H/I/S85Q; Q/L/E86R; Q/L95M; K/M/Q125L; M128V; Y132H; Q/S141R; A/D/S/M144G; D179N; K/Q187R; I192V; L228M; D331G/H; M/Q342T; またはK/Q/T398Eの1つまたは複数、例えば、そのような置換の少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、または3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、8個以下、9個以下、10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、20個以下、21個以下、22個以下、もしくは23個以下を含むが、これらに限定されることはない。そのような置換の特定の組合せは、以下を含むが、それらに限定されることはない: (1) N19Y、L/T53P/H、H/I/S85Q、D331G/H、およびM/Q342T; (2) N19Y、E/R30K、L/T53P/H、H/I/S85Q、I192V、D331G/H、およびM/Q342T; (3) N19Y、L/K/R/T26I; E/R30K、L/T53P/H、H/I/S85Q、I192V、D331G/H、およびM/Q342T; (4) E/R30K、Y63F、Q/L/E86R、Q/L95M、M128V、A/D/S/M144G、L228M、D331G/H、およびK/Q/T398E; (5) E/R30K、K36E、Y63F、Q/L/E86R、Q/L95M、M128V、A/D/S/M144G、D179N、L228M、D331G/H、およびK/Q/T398E; (6) E/R30K、Q/L95M、M128V、およびD331G/H; (7) P/S11T、E/R30K、Q/L95M、M128V、Q/S141R、K/Q187R、およびD331G/H; (8) E/R30K、L/V32A、L/T53P/H、E/N/D71G、Q/L95M; K/M/Q125L、M128V、およびD331G/H; (9) E/R30K、C52R、Q/L95M; M128V、およびD331G/H; (10) Q/L95M、M128V、およびD331G/H; (11) Q/L95M、M128V; Y132H、およびD331G/H; ならびに(12) Q/L95M、M128V、およびD331G/H。
核酸: cDNA、ゲノムDNA、および合成(例えば、化学合成された)DNAを含むが、これらに限定されない、RNAおよびDNAの双方が包含される。核酸は二本鎖または一本鎖とすることができる。一本鎖の場合、核酸はセンス鎖またはアンチセンス鎖とすることができる。さらに、核酸は環状または直鎖状とすることができる。
オリゴヌクレオチド: 少なくとも9個のヌクレオチド、例えば、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも18個、少なくとも20個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも27個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも100個または場合により少なくとも200個のヌクレオチド長の直鎖状ポリヌクレオチド(DNAまたはRNAなど)配列。特定の例では、オリゴヌクレオチドはSEQ ID NO:1、3、5、18、20、42、44、46、48、もしくは50 (またはその相補鎖)の少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも18個、少なくとも20個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも27個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも100個または場合により少なくとも200個の連続ヌクレオチドなどの、SEQ ID NO:1、3、5、18、20、42、44、46、48、もしくは50 (またはその相補鎖)の少なくとも9個の連続ヌクレオチドを含む。
機能的に連結される: 第1の核酸配列が第2の核酸配列との機能的な関連で配置される場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と機能的に連結される。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼすならば、プロモーターはコード配列と機能的に連結される。一般に、機能的に連結されたDNA配列は連続的であり、2つのタンパク質のコード領域をつなぐ必要がある場合、同じ読み枠で連続的である。
ORF (読み取り枠): 終止コドンのない、アミノ酸をコードするヌクレオチドトリプレット(コドン)の連続。これらの配列は通常、ペプチドに翻訳可能である。
パントテナートまたはパントテン酸: 化粧品、医薬品、および栄養物に使用される、商業的に重要なビタミンである。パントテン酸およびパントテナートという用語は、本明細書において同じ意味で使用され、遊離酸のことをいうだけでなく、カルシウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩またはカリウム塩などの、D-パントテン酸の塩のこともいう。パントテナートは化学合成により、または本明細書に開示される細胞および方法を用いてβ-アラニンから生物工学的に産生することができる。
パントテナートの量を測定するための方法が知られている(例えば、Riepingらの米国特許第6,184,006号およびEggelingらの米国特許第6,177,264号を参照のこと)。例えば、D-パントテナートの定量は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)パントテナートアッセイ法(試験菌株: ラクトバチルス・プランタルムATCC 8014, カタログ番号3211-30-3; 培地: バクト(Bacto)パントテナートアッセイ用培地(DIFCO Laboratories, Michigan, USA), カタログ番号0604-15-3)を用いて行うことができる。この指示菌株は、指定培地中にパントテナートが存在する場合にだけ増殖することができ、光学的に測定可能な、培地中のパントテナート濃度に対する増殖の直線的な相関関係を示す。キャリブレーションには、パントテナートのヘミカルシウム塩を使用することができる(Sigmaカタログ番号P 2250)。光学濃度は波長580 nmで測定することができる。
ペプチド修飾: 本開示はアラニン2,3-アミノムターゼペプチド、および合成の態様を含む。さらに、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する、類似体(非ペプチド性有機分子)、誘導体(開示のペプチド配列から始めて得られた化学的に機能化されたペプチド分子)および変異体(ホモログ)は本明細書に記述される方法のなかで利用することができる。本明細書に開示されるペプチドは、天然に存在するおよび天然に存在しない、L-またはD-アミノ酸のいずれかとできるアミノ酸の配列を含む。
未修飾ペプチドと本質的に同じ活性を有する、およびその他の望ましい特性を選択的に有する誘導体を産生するために、ペプチドを種々の化学的技術により修飾することができる。例えば、タンパク質のカルボン酸基は、カルボキシル末端であろうと側鎖であろうと、薬学的に許容される陽イオンの塩の形で与えられてもまたはC1〜C16エステルを形成するようにエステル化されてもよく、あるいはR1およびR2がそれぞれ独立してHもしくはC1〜C16アルキルである式NR1R2のアミドに変換されてもよく、または5員環もしくは6員環のような、複素環を形成するように結合されてもよい。ペプチドのアミノ基は、アミノ末端であろうと側鎖であろうと、HCl、HBr、酢酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、マレイン酸、酒石酸およびその他の有機酸の塩などの、薬学的に許容される酸付加塩の形であってもよく、あるいはC1〜C16アルキルもしくはジアルキルアミノに修飾されてもまたはアミドにさらに変換されてもよい。
ペプチド側鎖の水酸基はよく知られた技術を用いて、C1〜C16アルコキシにまたはC1〜C16エステルに変換されてもよい。ペプチド側鎖のフェニルおよびフェノール環は、F、Cl、BrもしくはIのような、1個もしくは複数個のハロゲン原子で、またはC1〜C16アルキル、C1〜C16アルコキシ、カルボン酸およびそのエステル、もしくはそのようなカルボン酸のアミドで置換されてもよい。ペプチド側鎖のメチレン基は、相同のC2〜C4アルキレンにまで伸長することができる。チオールはアセトアミド基などの、いくつかのよく知られた保護基のうちのいずれか1つで保護することができる。当業者であれば同様に、安定性の向上をもたらす立体構造的な制約を選択し提供するための、本開示のペプチド中への環状構造の導入法を認識するであろう。例えば、C末端またはN末端システインをペプチドに付加することができ、酸化時に、ペプチドはジスルフィド結合を含むようになり、環状ペプチドを生成するはずである。その他のペプチド環化法には、チオエステルならびにカルボキシ末端およびアミノ末端のアミドおよびエステルの形成が含まれる。
ペプチド模倣体および有機模倣体の実施態様は同様に、本開示の範囲内であって、これによりそのペプチドおよび有機模倣体の化学成分の三次元配置が、検出可能なアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する本発明のタンパク質のそのペプチド模倣体および有機模倣体をもたらす、ペプチド骨格および構成成分のアミノ酸側鎖の三次元配置を模倣することが可能となる。コンピュータ・モデリング・アプリケーションの場合、薬理作用団が、生物活性に対する構造要件の理想的な、三次元定義である。ペプチド模倣体および有機模倣体は、現在のコンピュータ・モデリング・ソフトウェアを用いて(コンピュータ支援による薬物設計またはCADDを用いて)各薬理作用団に適合するように設計することができる。CADDで使用される技術の詳細については、Walters、「Computer-Assisted Modeling of Drugs」, Klegerman & Groves編, 1993中, Pharmaceutical Biotechnology, Interpharm Press: Buffalo Grove, IL, pp. 165-174およびPrinciples of Pharmacology Munson(編) 1995, Ch. 102を参照されたい。そのような技術を用いて調製される模倣体も同様に開示の範囲内に含まれる。1つの例では、模倣体は、アラニン2,3-アミノムターゼまたはその変異体、断片、もしくは融合体が生み出すアラニン2,3-アミノムターゼ活性を模倣する。
ポリヌクレオチド: 任意の長さの直鎖状の核酸配列である。従って、ポリヌクレオチドは少なくとも15個、少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも600個、少なくとも700個、少なくとも800個、少なくとも900個、少なくとも1000個、少なくとも1100個、または場合により少なくとも1200個のヌクレオチド長である分子を含む。特定の例では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1、3、5、18、20、42、44、46、48、もしくは50 (またはその相補鎖)の少なくとも25個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも600個、少なくとも700個、少なくとも800個、少なくとも900個、少なくとも1000個、少なくとも1100個、または場合により少なくとも1200個の連続ヌクレオチドなどの、SEQ ID NO:1、3、5、18、20、42、44、46、48、もしくは50 (またはその相補鎖)の少なくとも15個の連続ヌクレオチドを含む。
プローブおよびプライマー: 「プローブ」は検出可能な標識またはレポーター分子を含有する単離核酸分子を含む。例示的な標識は、放射性同位体、リガンド、化学発光物質、蛍光物質、および酵素を含む。標識化の方法および種々の目的に適した標識を選択する際の手引きは、例えば、Sambrook et al. (編), Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd ed., vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989、およびAusubel et al. (編), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York (定期的に更新されている), 1987に論じられている。
「プライマー」は通常、10個またはそれ以上のヌクレオチドを有する核酸分子(約10ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドを有する核酸分子など)である。プライマーを、プライマーと標的核酸鎖との間でハイブリッドを形成させる核酸ハイブリダイゼーションにより、相補的な標的核酸鎖にアニールさせた後に、例えば、DNAポリメラーゼ酵素により、標的核酸鎖に沿って伸長させることができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法またはその他の核酸増幅法による核酸配列の増幅の場合、プライマー対を使用することができる。
プローブおよびプライマーを調製するおよび使用するための方法は、例えば、Sambrook et al. (編), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989; Ausubel et al. (編), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York (定期的に更新されている), 1987; およびInnis et al., PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press: San Diego, 1990などの文献に記述されている。PCRプライマー対は、例えば、Primer (Version 0.5,(著作権) 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge, Mass.)のようなその目的に向けられたコンピュータプログラムを用いることにより、公知の配列から得ることができる。特定のプローブまたはプライマーの特異性は長さとともに増加すること、しかしプローブまたはプライマーはサイズが、完全長の配列から5個の連続ヌクレオチドほどの短い配列にまで及びうることを当業者なら理解するであろう。従って、例えば、20個の連続ヌクレオチドのプライマーは、対応する僅か15個のヌクレオチドのプライマーよりも高い特異性で標的にアニールすることができる。このように、より高い特異性を得るため、例えば、25個、30個、35個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、600個、650個、700個、750個、800個、850個、900個、950個、1000個、1050個、1100個、1150個、1200個、1250個、1300個、1350個、1400個、1450個、1500個、またはそれ以上の連続ヌクレオチドを含むプローブおよびプライマーを選択することができる。
プロモーター: 核酸の転写を命令する一連の核酸制御配列である。プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合にはTATAエレメントなどの、転写の開始部位近傍の必須の核酸配列を含む。プロモーターは同様に、転写の開始部位から数千塩基対もの位置にありうる、遠位のエンハンサーまたはリプレッサーエレメントを任意で含んでもよい。
精製された: 精製されたという用語は、絶対的な純度を必要とするのではなく、むしろ、相対的な用語として意図される。従って、例えば、精製されたペプチド調製物は、ペプチドがそれに付随しうる細胞成分(核酸、脂質、糖質、およびその他のポリペプチド)から実質的に分離されるように、ペプチドまたはタンパク質が細胞内のその環境にあるよりもそのペプチドまたはタンパク質が濃縮されているものである。別の例では、精製されたペプチド調製物は、ペプチドの化学合成後に存在しうるものなどの、混入物質をペプチドが実質的に含まないものである。
1つの例では、アラニン2,3-アミノムターゼペプチドは、重量でサンプルの少なくとも50%がペプチドからなる場合に、例えば、サンプルの少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、98%、もしくは99%またはそれ以上がペプチドからなる場合に精製されている。ペプチドを精製するのに使用できる方法の例としては、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989, Ch. 17)に開示されている方法が挙げられるが、これに限定されることはない。タンパク質純度は、例えば、タンパク質サンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動法に続いて、このポリアクリルアミドゲルを染色して単一のポリペプチドバンドを視覚化すること、高圧液体クロマトグラフィー法、配列決定法、またはその他の従来法により測定することができる。
組換え型: 組換え核酸分子は、天然には存在しない配列を有するものまたは2つの異なる分離配列セグメントの人為的な組合せにより作製される配列を有するものである。この人為的な組合せは、化学合成および単離された核酸分子セグメントの人為的操作などの、当技術分野において公知の方法を用いて、例えば遺伝子工学技術により達成することができる。組換え型は同様に、人為的に操作されているが、その核酸が単離された生物に見られるのと同じ調節配列およびコード領域を含む、核酸分子を記述するのに使用される。
配列同一性/類似性: 2つもしくはそれ以上の核酸配列間の、または2つもしくはそれ以上のアミノ酸配列間の同一性/類似性は、配列間の同一性または類似性として表される。配列同一性は、同一性の割合として測定することができ、その割合が高くなれば、それだけ配列の同一性も高くなる。配列類似性は、類似性の割合(保存的アミノ酸置換を考慮に入れる)として測定することができる; その割合が高くなれば、それだけ配列の類似性も高くなる。核酸またはアミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準的な方法を用いて一列に並べた場合、比較的高い配列の同一性/類似性を有する。この相同性は、オルソロガスなタンパク質またはcDNAが、より近縁関係にある種(ヒトおよびマウス配列のような)を起源とする場合、より遠縁関係にある種(ヒトおよび線虫(C. elegans)配列のような)と比較していっそう顕著である。
比較のための配列アライメントの方法は当技術分野において周知である。種々のプログラムおよびアライメント・アルゴリズムが、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981; Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970; Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444, 1988 ; Higgins & Sharp, Gene, 73:237-44, 1988; Higgins & Sharp, CABIOS 5: 151-3, 1989; Corpet et al., Nuc. Acids Res. 16:10881-90, 1988; Huang et al., Computer Appls. in the Biosciences 8, 155-65, 1992; およびPearson et al., Meth. Mol. Bio. 24:307-31, 1994に記述されている。Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990には、配列アライメント法および相同性の計算の詳細な考察が提示されている。
NCBI Basic Local Alignment Search Tool (BLAST) (Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxとの関連で使用する場合、米国立生物工学情報センター(National Center for Biological Information) (NCBI、米国立医学図書館(National Library of Medicine), Building 38A, Room 8N805, Bethesda, MD 20894)を含む、いくつかの情報源からおよびインターネット上で利用可能である。さらなる情報はNCBIのウェブサイトで見つけることができる。
BLASTNは核酸配列を比較するために使用され、その一方でBLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用される。2つの核酸配列を比較するため、オプションを以下のように設定することができる: -iを比較される第1の核酸配列を含むファイル(C:\seq1.txtなど)に設定する; -jを比較される第2の核酸配列を含むファイル(C:\seq2.txtなど)に設定する; -pをblastnに設定する; -oを任意の所望のファイル名(C:\output.txtなど)に設定する; -qを-1に設定する; -rを2に設定する; およびその他全てのオプションはデフォルトのままとする。例えば、2つの配列間の比較を含む出力ファイルを生成するのに、以下のコマンドを使用することができる: C:\B12seq -i c:\seq1.txt -j c:\seq2.txt -p blastn -o c:\output.txt -q -1 -r 2。
2つのアミノ酸配列を比較するため、B12seqのオプションを以下のように設定することができる: -iを比較される第1のアミノ酸配列を含むファイル(C:\seq1.txtなど)に設定する; -jを比較される第2のアミノ酸配列を含むファイル(C:\seq2.txtなど)に設定する; -pをblastpに設定する; -oを任意の所望のファイル名(C:\output.txtなど)に設定する; およびその他全てのオプションはデフォルトのままとする。例えば、2つのアミノ酸配列間の比較を含む出力ファイルを生成するのに、以下のコマンドを使用することができる: C:\B12seq -i c:\seq1.txt -j c:\seq2.txt -p blastp -o c:\output.txt。2つの比較配列が相同性を共有するならば、指定の出力ファイルにより、位置合わせされた配列としてその相同性領域が示される。2つの比較配列が相同性を共有しないならば、指定の出力ファイルにより、位置合わせされた配列が示されることはない。
位置合わせされたら、両配列で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が示されている位置の数を合計することにより、適合数が決定される。配列同一性の割合は、その適合数を、同定された配列に記載の配列の長さで、または連接の長さ(同定された配列に記載の配列由来の100個の連続的なヌクレオチドまたはアミノ酸残基など)で割り、続いて得られた値に100を乗じることにより決定される。例えば、1554ヌクレオチドを有する試験配列と位置合わせした際に1166が適合する核酸配列は、試験配列と75.0パーセント同一である(1166÷1554*100=75.0)。配列同一性の割合値は、小数点以下第一位に四捨五入される。例えば、75.11、75.12、75.13、および75.14は、75.1に切り下げられる、一方で75.15、75.16、75.17、75.18、および75.19は、75.2に切り上げられる。長さの値は、常に整数になる。別の例では、同定された配列由来の20個の連続ヌクレオチドと以下のように並んだ20ヌクレオチド領域を含有する標的配列は、その同定された配列に75パーセントの配列同一性を共有する領域を含む(すなわち、15÷20*100=75)。
Figure 2008507970
約30アミノ酸よりも大きなアミノ酸配列の比較の場合、デフォルトパラメータ(ギャップ開始コストが11、および残基当たりのギャップコストが1)に設定された、デフォルトのBLOSUM62マトリクス(行列)を用いた、Blast 2配列機能を利用する。ホモログは通常、nrまたはswissprotデータベースのようなデータベースとのgapped blastpであるNCBI Basic Blast 2.0を用いて、アミノ酸配列での完全長のアライメントで計算される配列同一性が少なくとも70%有ることを特徴とする。Blastnプログラムで検索されるクエリーは、DUSTでフィルタリングされる(Hancock and Armstrong, 1994, Comput. Appl. Biosci. 10:67-70)。その他のプログラムではSEGが使用される。さらに、手作業によるアライメントを行うことができる。さらに高い類似性を有するタンパク質では、この方法により評価した場合、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%の配列同一性のような、いっそう高い割合の同一性が示されるものと思われる。
短いペプチド(約30アミノ酸よりも少ない)を並べる場合には、アライメントは、デフォルトパラメータ(開始ギャップ 9、伸張ギャップ 1ペナルティー)に設定されたPAM30マトリクスを使い、Blast 2配列機能を用いて行われるべきである。参照配列に対してさらに高い類似性を有するタンパク質では、この方法により評価した場合、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%の配列同一性のような、いっそう高い割合の同一性が示されるものと思われる。配列同一性について比較されるのが、配列全体に満たないものである場合には、ホモログは通常、10〜20アミノ酸の短いウィンドウで少なくとも75%の配列同一性を有するものと思われ、参照配列に対するその同一性に応じて、少なくとも85%、90%、95%または98%の配列同一性を有することができる。そのような短いウィンドウに対し配列同一性を決定する方法は、NCBIのウェブサイトに記述されている。
2つの核酸分子が密接に関連しているという1つの目安は、その2つの分子がストリンジェントな条件の下で、相互にハイブリダイズすることである。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、環境的なパラメータが違えば異なるものでる。ストリンジェントな条件の下でアラニン2,3-アミノムターゼの遺伝子配列にハイブリダイズする核酸分子は通常、アラニン2,3-アミノムターゼの遺伝子全体またはその遺伝子の選択部分のいずれかに基づくプローブ、それぞれに、前述の条件の下でハイブリダイズする。
高い同一性を示さない核酸配列であっても、遺伝暗号の縮重により、同一のまたは類似(保存的)のアミノ酸配列をコードする可能性がある。全てが実質的に同一のタンパク質をコードする複数の核酸分子を産生するため、この縮重を用いて核酸配列を変化させることができる。そのような相同核酸配列は、例えば、本方法により決定される、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有することができる。
これらの配列同一性の範囲は、指針としてのみ与えられていること; 与えられている範囲には入らない非常に有効なホモログが得られる可能性があることを当業者なら理解するであろう。
2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の(および必ずしも累積的である必要はない)目安は、第1の核酸がコードするポリペプチドが第2の核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であるということである。
特異的結合物質: ペプチド標的のような、明確な標的にのみ実質的に結合する物質である。例えば、アラニン2,3-アミノムターゼ結合物質には、抗アラニン2,3-アミノムターゼ抗体およびアラニン2,3-アミノムターゼのみに実質的に結合するその他の物質(ペプチドまたは薬物のような)が含まれる。アラニン2,3-アミノムターゼタンパク質(またはその断片)に対する抗体は、このタンパク質を精製または同定するのに使用することができる。
形質転換された: 形質転換された細胞は、核酸分子が、例えば、分子生物学技術により導入されたものである。形質転換という用語は、ウイルスベクターによる形質移入、接合、プラスミドベクターによる形質転換、ならびにエレクトロポレーション、リポフェクション、およびパーティクルガン加速による裸のDNAの導入を含むが、これらに限定されない、核酸分子をそのような細胞に導入できる全ての技術を包含する。
変異体、断片または融合体: 開示されるアラニン2,3アミノムターゼ配列は、アラニン2,3アミノムターゼ活性を保持するその変異体、断片、および融合体を含む。アラニン2,3アミノムターゼタンパク質をコードするDNA配列(例えば、SEQ ID NO:1、3、5、18、20、42、44、46、48、または50)、融合アラニン2,3アミノムターゼタンパク質、またはアラニン2,3アミノムターゼタンパク質の断片もしくは変異体をコードするDNA配列を遺伝子操作して、タンパク質が真核細胞、細菌、昆虫、または植物中で発現されるのを可能にすることができる。発現を得るため、DNA配列を改変し、その他の調節配列に機能的に連結することができる。調節配列およびタンパク質を含む最終産物をベクターという。このベクターを真核細胞、細菌細胞、昆虫細胞、または植物細胞に導入することができる。いったん細胞内に入れば、ベクターによりタンパク質の産生が可能となる。
融合タンパク質はアラニン2,3-アミノムターゼ活性、例えば、α-アラニンをβ-アラニンに変換する能力を著しく減少させないその他のアミノ酸配列に連結されたアラニン2,3-アミノムターゼ(またはその変異体もしくは断片)、例えば、SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、または51を含む。1つの例では、その他のアミノ酸配列は、長さが約10、12、15、20、25、30、または50アミノ酸以下である。さらに、スペーサー配列をアラニン2,3-アミノムターゼ配列と付加的なアミノ酸配列との間に配置することができる。そのようなスペーサーは少なくとも4個、少なくとも6個、または少なくとも10個のアミノ酸とすることができる。
DNA配列は、コードされるタンパク質の生物活性に影響を及ぼすことなく、多数の方法で改変され得ることを当業者なら理解するであろう。例えば、アラニン2,3-アミノムターゼをコードするDNA配列に変異をもたらすために、PCR法を使用することができる。そのような変異体は、タンパク質を発現させるために使われる宿主細胞でのコドン選択に向けて最適化された変異体、または発現を促進させるその他の配列変化とすることができる。
ベクター: 細胞に導入されるような核酸分子であり、これにより形質転換細胞を産生する。ベクターは複製起点などの、細胞中でベクターが複製するのを可能にする核酸配列を含んでもよい。ベクターは同様に、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子および当技術分野において公知の他の遺伝要素を含んでもよい。
アラニン2,3-アミノムターゼ核酸およびポリペプチド
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するポリペプチドが本明細書に開示される。1つの例では、ポリペプチドは変異リジン2,3-アミノムターゼ配列である。1つの例では、変異リジン2,3アミノムターゼは、以下の置換の1つまたは複数を含む: P/S11T; N19Y; L/K/R/T26I; E/R30K; L/V32A; K36E; S/T/C52R; L/T53P/H; Y63F; E/N/D71G; H/I/S85Q; Q/L/E86R; Q/L95M; K/M/Q125L; M128V; Y132H; Q/S141R; A/D/S/M144G; D179N; K/Q187R; I192V; L228M; D331G/H; M/Q342T; またはK/Q/T398E、ここで数字の前の文字はリジン2,3アミノムターゼで見られるアミノ酸に対する1文字アミノ酸表記を表し、数字はポルフィロモナス・ジンジバリスのリジン2,3アミノムターゼ(SEQ ID NO:52)に対する付番に基づくアミノ酸の位置(図7を参照のこと)を表し、および数字の後の文字はアラニン2,3アミノムターゼで見られるアミノ酸に対する1文字アミノ酸表記を表している。実際の最初のアミノ酸およびアミノ酸番号は、変異されるリジン2,3アミノムターゼ配列に応じて変わることがある。しかしながら、当業者は配列を並べることで、相同配列中の位置を決定することができる。例えば、図7に示されるように、ポルフィロモナス・ジンジバリスのリジン2,3アミノムターゼの128位は、フソバクテリウム・ヌクレアタムのリジン2,3アミノムターゼ(SEQ ID NO:10)の129位、クロストリジウム・スティクランジィのリジン2,3アミノムターゼ(SEQ ID NO:33)の126位、および枯草菌のリジン2,3アミノムターゼ(SEQ ID NO:59)の136位に対応する。図7に示される情報およびその他の公的に利用可能なリジン2,3アミノムターゼ配列に基づき、残る24個の位置の各々について当技術分野において公知の方法を利用し、類似の解析を行うことができる。
任意のリジン2,3アミノムターゼを標準的な分子生物学法により突然変異させて、アラニン2,3-アミノムターゼを作出することができる。例えば、バチルス属、クロストリジウム属、エシェリキア属、フソバクテリウム属、ヘモフィルス属、メタノサルシナ属、ミクロヴァルビファー属、モーレラ属、ポルフィロモナス属、サーモアナエロバクター属またはビブリオ属などの原核生物由来のリジン2,3アミノムターゼを以下の置換P/S11T; N19Y; L/K/R/T26I; E/R30K; L/V32A; K36E; S/T/C52R; L/T53P/H; Y63F; E/N/D71G; H/I/S85Q; Q/L/E86R; Q/L95M; K/M/Q125L; M128V; Y132H; Q/S141R; A/D/S/M144G; D179N; K/Q187R; I192V; L228M; D331G/H; M/Q342T; またはK/Q/T398Eの1つまたは複数、例えば、そのような置換の少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、または3個以下、4個以下、5個以下、6個以下、8個以下、9個以下、10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、20個以下、21個以下、22個以下、もしくは23個以下を含むように突然変異させることができる。そのような置換の特定の組合せは、以下を含むが、それらに限定されることはない: (1) N19Y、L/T53P/H、H/I/S85Q、D331G/H、およびM/Q342T; (2) N19Y、E/R30K、L/T53P/H、H/I/S85Q、I192V、D331G/H、およびM/Q342T; (3) N19Y、L/K/R/T26I; E/R30K、L/T53P/H、H/I/S85Q、I192V、D331G/H、およびM/Q342T; (4) E/R30K、Y63F、Q/L/E86R、Q/L95M、M128V、A/D/S/M144G、L228M、D331G/H、およびK/Q/T398E; (5) E/R30K、K36E、Y63F、Q/L/E86R、Q/L95M、M128V、A/D/S/M144G、D179N、L228M、D331G/H、およびK/Q/T398E; (6) E/R30K、Q/L95M、M128V、およびD331G/H; (7) P/S11T、E/R30K、Q/L95M、M128V、Q/S141R、K/Q187R、およびD331G/H; (8) E/R30K、L/V32A、L/T53P/H、E/N/D71G、Q/L95M; K/M/Q125L、M128V、およびD331G/H; (9) E/R30K、C52R、Q/L95M; M128V、およびD331G/H; (10) Q/L95M、M128V、およびD331G/H; (11) Q/L95M、M128V; Y132H、およびD331G/H; ならびに(12) Q/L95M、M128V、およびD331G/H。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するペプチドの具体的な例は、SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、および51に示される。しかしながら、開示は同様に、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持するSEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、および51の変異体、融合体、および断片を包含する。特定の例では、SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、および51の変異体、融合体、および断片は、SEQ ID NO:41のアラニン2,3-アミノムターゼ活性の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または場合により少なくとも100%など、SEQ ID NO:41のアラニン2,3-アミノムターゼ活性の少なくとも50%を有する。その他の例では、SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、および51の変異体、融合体、および断片は、SEQ ID NO:51のアラニン2,3-アミノムターゼ活性の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または場合により少なくとも100%など、SEQ ID NO:51のアラニン2,3-アミノムターゼ活性の少なくとも50%を有する。
使用できる断片の例としては、SEQ ID NO:2または4のアミノ酸番号1〜390、15〜390、50〜390、50〜350、60〜350、15〜340、75〜340、19〜331、または100〜339を含むが、これらに限定されることはない(SEQ ID NO:6、19、21、43、45、47、49、および51中の対応する断片(SEQ ID NO:6、49または51のアミノ酸番号42〜342など)は本開示により包含されており、図7を利用することにより決定することができる)。開示は同様に、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持する、SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、または51の少なくとも15個の連続アミノ酸を含むアラニン2,3-アミノムターゼペプチドを提供する。アラニン2,3-アミノムターゼペプチドは同様に、SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、または5の少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個またはそれ以上の連続アミノ酸残基を含むことができる。
変異体は1つもしくは複数の保存的アミノ酸置換、1つもしくは複数の非保存的アミノ酸置換またはそれらの組合せなどの、1つもしくは複数のアミノ酸置換を含む。変異体は同様に、1個もしくは複数個のアミノ酸の欠失もしくは挿入(またはそれらの組合せ、例えば、複数の挿入に合わせて単一の欠失)、例えば、50個以下のアミノ酸、20個以下のアミノ酸、10個以下のアミノ酸、5個以下のアミノ酸、もしくは2個以下のアミノ酸の付加もしくは欠失、例えば、1〜5個のアミノ酸、1〜10個のアミノ酸、もしくは2〜20個のアミノ酸の付加もしくは欠失を含む。1つの例では、変異体アラニン2,3アミノムターゼは5個以下、10個以下、20個以下、30個以下、40個以下、または50個以下の保存的置換を有する。非保存的置換は、アミノ酸が(a) 例えば、シートもしくはヘリックス高次構造のような、置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造; (b) 標的部位でのポリペプチドの電荷もしくは疎水性; または(c) 側鎖のかさ高さの維持に対するその影響のような、より実質的な相違を有するものである。ポリペプチド機能の最大の変化をもたらすことが一般に予想される置換は、(a) セリンもしくはスレオニンなどの、親水性残基がロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンもしくはアラニンなどの、疎水性残基と置き換わる(に置換される); (b) システインもしくはプロリンがその他任意の残基と置き換わる(に置換される); (c) リジン、アルギニン、もしくはヒスチジンなどの、電気的に陽性の側鎖を有する残基がグルタミン酸もしくはアスパラギン酸などの、電気的に陰性の側鎖と置き換わる(に置換される); または(d) フェニルアラニンなどの、かさ高い側鎖を有する残基がグリシンなどの、側鎖を有していない残基と置き換わる(に置換される)ものである。これらのアミノ酸置換(またはその他の欠失もしくは付加)の影響は、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するペプチドについて、β-アラニンへのα-アラニンの変換を触媒するペプチドの能力を本明細書に開示されるアッセイを用いて分析することにより評価することができる。
変異体アラニン2,3-アミノムターゼペプチド配列は、部位特異的突然変異誘発法またはPCR法などの標準的な手順を利用し、アラニン2,3-アミノムターゼペプチドをコードするヌクレオチド配列を操作することにより産生することができる。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を依然として残しながら、行うことができる置換の例としては、SEQ ID NO:21中のV108L、T240S、D295E、Y290Fまたはそれらの組合せ(SEQ ID NO:6、49または51の場合Y289W; SEQ ID NO:19の場合Y290W; SEQ ID NO:41、43、45、または47の場合Y287W; およびSEQ ID NO:2または4の場合Y297Wのような、開示されるその他の配列中の対応する置換は本開示により包含されており、図7を利用することにより決定することができる)、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されることはない。変異体アラニン2,3-アミノムターゼペプチドは、アミノ酸配列によりコードされるペプチドがアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持する限り、SEQ ID NO:2、4、6、19、21、43、45、47、49、または51のいずれかと少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を共有する。
融合タンパク質(および対応する核酸配列)は、開示されるアラニン2,3-アミノムターゼ配列を用いて作出することができる。融合配列は第2のアミノ酸配列に連結された、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する完全長のアラニン2,3-アミノムターゼタンパク質配列(SEQ ID NO:2、4、6、19、21、43、45、47、49、もしくは51など)、またはその変異体もしくは断片を含むことができる。いくつかの例では、第2のアミノ酸配列は少なくとも5個のアミノ酸、例えば、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも75個のアミノ酸、少なくとも100個のアミノ酸、少なくとも150個のアミノ酸、または場合により少なくとも200個のアミノ酸を含む。特定の例では、アラニン2,3-アミノムターゼ配列および第2のアミノ酸配列は、スペーサー配列を介して連結される。スペーサーの特定の例は、1つもしくは複数のアラニンもしくはグリシン残基、またはその他の非極性アミノ酸もしくは中性極性アミノ酸を含む。いくつかの例では、スペーサーは20個以下のアミノ酸、10個以下のアミノ酸、5個以下のアミノ酸などの、50個以下のアミノ酸、例えば、5〜50個のアミノ酸である。
同様に開示されるのは、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離核酸分子、例えば、SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、または50を含む配列である。しかしながら、開示は同様に、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するタンパク質をコードする能力を保持するSEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、および50の変異体、融合体、および断片を包含する。1つの例では、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するペプチドをコードする単離核酸分子をプロモーター配列に機能的に連結し、ベクターの一部とすることができる。核酸は、細胞を形質転換するためにおよび形質転換細胞またはトランスジェニック非ヒト哺乳動物(マウス、ラット、およびウサギなど)を作製するために使用できる組換え核酸とすることができる。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するペプチドをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子(SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、もしくは50またはアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持するその断片、融合体、もしくは変異体など)を含む形質転換細胞が開示される。1つの例では、そのような形質転換細胞はα-アラニンからβ-アラニンを産生する。別の例では、細胞は3-HP、パントテナート、CoA、または1,3-プロパンジオールなどの有機化合物を産生する。形質転換細胞は細菌細胞、植物細胞、または酵母細胞などの、真核細胞または原核細胞とすることができる。
アラニン2,3-アミノムターゼをコードする核酸配列は、この酵素をコードする核酸配列全体、および所望の酵素活性を保持するその一部分を含むことができる。例えば、アラニン2,3-アミノムターゼ核酸分子は、アラニン2,3-アミノムターゼ核酸配列(SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、または50のような)の少なくとも15個の連続ヌクレオチドを含むことができる。開示は同様に、SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、または50の少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1000個、少なくとも1200個またはそれ以上のヌクレオチド、例えば、少なくともこれだけの連続ヌクレオチドを含む単離核酸分子を提供することを理解されたい。いくつかの例では、SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、もしくは50 (または相補鎖)の断片は、アラニン2,3-アミノムターゼを有するタンパク質をコードしないが、プローブまたはプライマーとして使用できるいっそう短い断片である。
変異体アラニン2,3-アミノムターゼ核酸配列が本明細書に開示される。変異体は単一の挿入、単一の欠失、単一の置換、複数の挿入、複数の欠失、複数の置換、またはその任意の組合せ(複数の挿入に合わせて単一の欠失など)を、それによってコードされるペプチドがアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持する(またはプローブもしくはプライマーとして機能することができる)限りにおいて含むことができる。そのような単離核酸分子は、核酸によってコードされるペプチドがアラニン2,3-アミノムターゼ活性などの、所望の酵素活性を保持する限り、アラニン2,3-アミノムターゼ配列(SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、または50など)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を共有することができる。
例えば、以下の変異をアラニン2,3-アミノムターゼ核酸配列に作出することができる: SEQ ID NO:13、18、または20の場合、96または384位の「t」を「c」、「a」または「g」と置換することができる; 438または480位の「a」を「c」、「t」または「g」と置換することができる; 1056位の「t」を「g」、「a」または「c」と置換することができる; SEQ ID NO:42、44、または46の場合、144位の「a」を「g」と置換することができる; 672位の「a」を「c」、「t」または「g」と置換することができる; および1107位の「t」を「c」と置換することができる; SEQ ID NO:48および50の場合、576位の「a」を「g」、「t」または「c」と置換することができる; 864位の「c」を「t」と置換することができる; および1200位の「t」を「g」、「a」または「c」と置換することができる。配列表を利用して、類似の置換を本明細書に開示されるその他のアラニン2,3アミノ酸配列に作出することができる。
アラニン2,3-アミノムターゼ配列のコード領域は、遺伝暗号の縮重を活用することによって、核酸配列が実質的に改変されても、なお天然アミノ酸配列に同一のまたは実質的に類似のアミノ酸配列を有するペプチドをコードするようにコード配列を改変させることができる。例えば、特定の種に対するコドン選択およびコドン使用頻度表を利用して、その特定の種のコドン使用の選択性を活用した単離核酸分子を遺伝子工学で作出することができる。遺伝暗号の縮重により、アラニンは以下の4種のヌクレオチドトリプレットコドンによりコードされる: GCT、GCA、GCC、およびGCG。従って、読み取り枠の核酸配列をアラニンの位置で、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列またはポリペプチドの特性に影響を及ぼすことなく、これらのコドンのうちのいずれかに変化させることができる。遺伝暗号の縮重に基づいて、核酸変異体を核酸配列から、本明細書に記述されている標準的なDNA突然変異誘発技術を用いて、または核酸配列の合成により得ることができる。このように、本開示は同様に、同一のポリペプチドをコードするが遺伝暗号の縮重により核酸配列が異なる核酸分子を包含する。それ故、本明細書に開示されるアラニン2,3-アミノムターゼは、関心対象の特定の生物により選択的に使用されるコドンを有するように(例えば、以下の実施例に記述されているように)デザインすることができる。
アラニン2,3-アミノムターゼの変異体、融合体、および断片をコードする核酸(上述のものなど)が本開示により包含される。開示は同様に、アラニン2,3-アミノムターゼをコードする単離核酸配列であって、長さが少なくとも12ヌクレオチド(長さが少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも1200、または少なくとも1500ヌクレオチドなど)であり、ハイブリダイゼーション条件の下で、その酵素をコードする核酸分子のセンスまたはアンチセンス鎖にハイブリダイズする核酸を提供する。ハイブリダイゼーション条件は、適度にまたは高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とすることができる。
アラニン2,3-アミノムターゼペプチドおよびそのようなペプチドをコードする核酸分子は、標準的な突然変異誘発技術、例えば、M13プライマー突然変異誘発法により産生することができる。これらの技術の詳細はSambrook et al. (編), Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd ed., vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring, Harbor, N.Y., 1989, Ch. 15に示されている。核酸分子は分子が導入される特定生物のコドン使用頻度のバイアスに適合するようにコード領域の変化を含むことができる。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞が開示される。そのような細胞はα-アラニンからβ-アラニンを産生することができる。1つの例では、そのような細胞は、天然に存在する突然変異または、例えば、細胞を化学的突然変異誘発もしくはUV突然変異誘発にさらすことで細胞の染色体中に誘発される突然変異により、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する。アラニン2,3-アミノムターゼ活性を含む細胞は、真核細胞また原核細胞とすることができる。そのような細胞の例はラクトバチルス、ラクトコッカス、バチルス、エシェリキア、ジェオバシラス(Geobacillus)、コリネバクテリア(Corynebacterium)、クロストリジウム、真菌、植物、および酵母細胞を含むが、これらに限定されることはない。1つの例では、植物細胞はトランスジェニック植物のような、植物の一部分である。
1つの例では、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞は、形質転換細胞である。そのような細胞は、アラニン2,3-アミノムターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子、例えば、SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、もしくは50、またはアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するペプチドをコードする能力を保持するその変異体、断片、もしくは融合体を含んだ配列を含むことができる。1つの例では、外因性核酸分子は、原核生物由来変異リジン2,3-アミノムターゼなどの、変異リジン2,3-アミノムターゼである。具体的な例では、原核生物由来変異リジン2,3-アミノムターゼは、枯草菌、ポルフィロモナス・ジンジバリス、フソバクテリウム・ヌクレアタムまたはクロストリジウム・スティクランジィ由来変異リジン2,3-アミノムターゼである。その他のリジン2,3-アミノムターゼは、当技術分野において公知の方法を用いることにより、例えば、BLASTで類似配列を検索することによりまたはハイブリダイゼーション法を用いることにより同定することができる。具体的な例では、変異リジン2,3-アミノムターゼは、枯草菌、F.ヌクレアタム、P.ジンジバリス、またはC.スティクランジィ由来変異リジン2,3-アミノムターゼである。特定の例では、変異リジン2,3-アミノムターゼは、E30K; K36E; Y63F; Q86R; L95M; M128V; D144G; D179N; L228M; D331H; またはK398Eの位置に置換を有するF.ヌクレアタム由来変異リジン2,3-アミノムターゼである。別の例では、変異リジン2,3-アミノムターゼは、P/S11T; E30K; V32A; C52R; L53P/H; E71G; Q95M; Q125L; M128V; Q141R; K87R; またはD331G/Hの位置に置換を有するC.スティクランジィ由来変異リジン2,3-アミノムターゼである。別の例では、変異リジン2,3-アミノムターゼは、N19Y; L26I; E30K; L53P/H; H85Q; I192V; D331G/H; またはM342Tの位置に置換を有するP.ジンジバリス由来変異リジン2,3-アミノムターゼである。これら全ての例において、特定のリジン2,3-アミノムターゼ中の置換は、単独で、またはその任意の組合せで存在することができる。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性およびその他の酵素活性を含む細胞が開示される。そのような細胞は、β-アラニン、3-HP、パントテナート、CoA、および有機酸、1,3-プロパンジオールのような多価アルコール、3-HP重合体、3-HPとその他の化合物(例えばブチラート、バレラートおよびその他の化合物)の共重合体、ならびに3-HPのエステルを産生するのに使用することができる。
例えば、3-オキソプロピオナートから3-ヒドロキシプロピオナートを産生できるピルベート/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、および3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性に加えてアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞が開示される。これらの例では、細胞は3-HPを産生するために使用することができる。別の例では、そのような細胞はリパーゼまたはエステラーゼ活性をさらに含む。そのような細胞は、メチル3-ヒドロキシプロピオナート、エチル3-ヒドロキシプロピオナート、プロピル3-ヒドロキシプロピオナート、ブチル3-ヒドロキシプロピオナート、または2-エチルヘキシル3-ヒドロキシプロピオナートなどの、3-HPのエステルを産生するために使用することができる。
別の例では、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞は同様に、ピルベート/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、および3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性、ならびにポリヒドロキシ酸シンターゼ活性を含む。そのような細胞は3-HP重合体を産生するのに使用することができる。
または、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞は同様に、ピルベート/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性およびアルコールデヒドロゲナーゼ活性を含む。そのような細胞は1,3-プロパンジオールを産生するのに使用することができる。
1つの例では、アラニン2,3アミノムターゼ活性を有する細胞は同様に、α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(酵素番号2.1.2.11)、α-ケトパントイン酸レダクターゼ(酵素番号1.1.1.169)、およびパントテナートシンターゼ(酵素番号6.3.2.1)活性を有する。そのような細胞はパントテナートを産生するのに使用することができる。あるいはまたはさらに、細胞は同様に、パントテナートキナーゼ(酵素番号2.7.1.33)、4'-ホスホパンテテノイル-1-システインシンテターゼ(酵素番号6.3.2.5)、4'-ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ(酵素番号4.1.1.36)、ATP:4'-ホスホパンテテインアデニルトランスフェラーゼ(酵素番号2.7.7.3)、およびデホスホ-CoAキナーゼ(酵素番号2.7.1.24)活性を有する。そのような細胞はコエンザイムA (CoA)を産生するのに使用することができる。
酵素活性は、所望の活性を有する酵素をコードする核酸分子を発現させることにより、または酵素を直接的に供給することにより供与することができる。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞を同定する方法
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞の同定方法が開示される。この方法は、panDが機能的に欠失された、原核細胞のような細胞を、α-アラニンは含むがβ-アラニンもパントテナートも含んでいない培地中で、または細胞が炭素、酸素、水素、および窒素の培地源からα-アラニンを産生できるが、β-アラニンもパントテナートも含んでいない培地中で培養する段階、ならびにβ-アラニンまたはパントテナート欠損培地中で増殖できる細胞を同定する段階を含む。特定の例では、細胞は同様に、パントテナートを添加した培地から、細胞がパントテナートの濃縮取込みをできないようにpanFも機能的に欠失される。細胞の増殖により、細胞がα-アラニンからβ-アラニンを産生していることが示唆され、これにより、細胞がアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有することが示唆される。対照的に、細胞がβ-アラニンまたはパントテナート欠損培地で増殖しないかまたは生存しない場合、このことは細胞がα-アラニンからβ-アラニンを産生していないことを示唆し、これにより、細胞がアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有していないことが示唆される。
1つの例では、panDが機能的に欠失された細胞に、変異リジン2,3-アミノムターゼを含むライブラリーなどの、1つまたは複数の変異アミノムターゼを形質転換する。特定の例では、細胞を培養しスクリーニングする前に、細胞に変異リジン2,3-アミノムターゼのライブラリーを形質転換する。酵素リジン2,3-アミノムターゼは、クロストリジウム・サブテルミナレSB4 (Chirpich et al., J. Biol. Chem. 245:1778-89, 1970)および枯草菌(Chen et al., Biochem. J. 348:539-49, 2000)により以前に報告されており、リジンとβ-リジンの相互変換を触媒することが明らかにされている。変異リジン2,3-アミノムターゼなどの、変異アミノムターゼを、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を与えるその能力についてスクリーニングすることができる。さらに、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するポリペプチドは、これまでに報告されていないが、そのような酵素が天然に存在しているかもしれない。このように、panDが機能的に欠失された細胞にアラニン2,3-アミノムターゼをコードする遺伝子を含むライブラリーを形質転換し、α-アラニンを含有する、または細胞がα-アラニンを生成できるように炭素、酸素、水素、および窒素源を含有するが、β-アラニンもしくはパントテナートを含有しない培地中で、この細胞に増殖をもたらすその能力により、その遺伝子を単離することができる。
別の例では、この方法は、培地中で増殖する細胞を同定する段階に続いて、細胞にアラニン2,3-アミノムターゼ活性を与える、変異アミノムターゼ中の突然変異を同定する段階をさらに含む。突然変異を同定するため、アミノムターゼの核酸またはアミノ酸を配列決定し、非変異アミノムターゼの配列と比較して、細胞にアラニン2,3-アミノムターゼ活性を与える突然変異を同定することができる。図7に例示されるように、これらの突然変異を次にその他のリジン2,3-アミノムターゼに移入して、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するアミノムターゼ変異体を作出することができる。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するペプチドの産生方法
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するアラニン2,3-アミノムターゼペプチドを産生する方法が開示される。この方法は、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する開示の細胞を、アラニン2,3-アミノムターゼペプチドを細胞が産生するのを可能にする条件の下で培養する段階を含む。1つの例では、この方法は、アラニン2,3-アミノムターゼが産生されるように、アラニン2,3-アミノムターゼをコードする1つまたは複数の外因性核酸分子(SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、もしくは50、またはアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持するその変異体、融合体、もしくは断片を含む配列など)を有する細胞を培養する段階を含む。
α-アラニンからβ-アラニンを作製する方法が同様に開示される。1つの例では、この方法は、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する開示の細胞を、α-アラニンからβ-アラニンを細胞が産生するのを可能にする条件の下で培養する段階を含む。1つの例では、この方法は、アラニン2,3-アミノムターゼがα-アラニンからβ-アラニンを産生できるように、アラニン2,3-アミノムターゼをコードする1つまたは複数の外因性核酸分子を有する細胞を培養する段階を含む。1つの例では、外因性核酸は、SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、もしくは50またはアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持するその変異体、融合体、もしくは断片を含む配列である。
特定の例では、細胞はpanD、またはpanDおよびpanFが機能的に欠失されている。
3-HP、パントテナートおよびその誘導体を産生するための経路
開示のアラニン2,3-アミノムターゼ配列およびアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する開示の細胞の使用などの、アラニン2,3-アミノムターゼを介した、α-アラニンからのβ-アラニンの産生に関連する方法および材料が開示される。さらに、β-アラニンからのパントテナートおよび3-HPの産生のほか、CoAならびに1,3-プロパンジオールなどの有機化合物、3-HP重合体、3-HPとその他の化合物(例えばブチラート、バレラートおよびその他の化合物)の共重合体、および3-HPのエステルの産生に関する方法および材料が開示される。具体的には、開示により、β-アラニン、パントテナートおよび3-HPのほかに、CoAならびに1,3-プロパンジオールなどの有機化合物、3-HP重合体、および3-HPのエステルのようなその誘導体をいっそう効率的に作製するために使用できる、アラニン2,3-アミノムターゼ核酸分子(SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、または50など)、ペプチド(SEQ ID NO:2、4、6、19、21、43、45、47、49、または51など)、宿主細胞、ならびにα-アラニンからβ-アラニンを産生するための方法および材料が提供される。
いくつかの代謝経路を利用して、α-アラニンから産生されたβ-アラニンから有機化合物を産生することができる(図1および3)。
3-HPおよびその誘導体の経路
図1に示されるように、3-HPは、β-アラニンから3-オキソプロピオナートを生成するβ-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドの使用によりβ-アラニンから作製することができる。3-オキソプロピオナートは3-HPデヒドロゲナーゼ活性(酵素番号1.1.1.59または.31)を有するポリペプチドを用いて3-HPに変換することができる。
3-HPの誘導体は図1に示されるようにβ-アラニンから作製することができる。得られた3-HPは、ポリヒドロキシ酸シンターゼ活性(酵素番号2.3.1.-)を有するポリペプチドにより3-HP重合体に変換することができる。あるいはまたはさらに、3-HPは、オキシドレダクターゼ活性またはレダクターゼ活性を有するポリペプチドにより1,3-プロパンジオールに変換することができる。
得られた3-HPは、リパーゼまたはエステラーゼ活性(酵素番号3.1.1.-)を有するポリペプチドにより3-HPのエステルに変換することができる。あるいはまたはさらに、1,3-プロパンジオールは、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドとアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドとの組合せにより3-HPから作り出すことができる。
パントテナートおよびその誘導体の経路
図3に示されているように、パントテナートは、β-アラニンをパントテナートに変換する、α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(酵素番号2.1.2.11)、α-ケトパントイン酸レダクターゼ(酵素番号1.1.1.169)、およびパントテナートシンターゼ(酵素番号6.3.2.1)活性を有するペプチドによりβ-アラニンから作製することができる。
パントテナートの誘導体は以下のようにβ-アラニンから作製することができる。得られたパントテナートは、パントテナートキナーゼ(酵素番号2.7.1.33)、4'-ホスホパンテテノイル-1-システインシンテターゼ(酵素番号6.3.2.5)、4'-ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ(酵素番号4.1.1.36)、ATP:4'-ホスホパンテテインアデニルトランスフェラーゼ(酵素番号2.7.7.3)、およびデホスホ-CoAキナーゼ(酵素番号2.7.1.24)活性を有するポリペプチドによりCoAに変換することができる。
酵素
リジン2,3-アミノムターゼ活性を有するポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードする核酸は、C.サブテルミナレ、大腸菌、枯草菌、P.ジンジバリス、F.ヌクレアタム、およびC.スティクランジィを含むが、これらに限定されない、さまざまな種から得ることができる。例えば、リジン2,3-アミノムターゼ活性を有するアミノ酸配列は、P.ジンジバリスの場合SEQ ID NO:52に、C.スティクランジィの場合SEQ ID NO:33に、枯草菌の場合SEQ ID NO:59に、およびF.ヌクレアタムの場合SEQ ID NO:10に示されている。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するペプチドをコードする核酸分子が本明細書に開示される。例としては、P.ジンジバリスの場合SEQ ID NO:48および50 (対応するアミノ酸配列はSEQ ID NO:49および51に示される)、F.ヌクレアタムの場合SEQ ID NO:18および20 (対応するアミノ酸配列はSEQ ID NO:19および21に示される)、ならびにC.スティクランジィの場合SEQ ID NO:42、44、および46 (対応するアミノ酸配列はSEQ ID NO:43、45および47に示される)を含むが、これらに限定されることはない。さらに、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するその他のペプチドおよびそのようなペプチドをコードする核酸は、本明細書に記述される方法を用いて得ることができる。例えば、アラニン2,3-アミノムターゼ変異体は、上述のアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するペプチドをコードすることができる。
β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性、3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードする核酸は、さまざまな種から得ることができる。
ポリヒドロキシ酸シンターゼ活性を有するポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードする核酸は非限定的に、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、コマモナス・アシドボランス(Comamonas acidororans)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、およびシュードモナス・オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)を含む、さまざまな種から得ることができる。例えば、ポリヒドロキシ酸シンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、R.スフェロイデス(R. sphaeroides)から得ることができ、GenBankアクセッション番号X97200に記載の配列を有することができる。ポリヒドロキシ酸シンターゼに関するさらなる情報は、Songら(Biomacromolecules 1:433-9, 2000)の中で見出すことができる。
アルデヒド:NAD(+)オキシドレダクターゼ活性およびアルコール:NAD(+)オキシドレダクターゼ活性は、上述の2つの異なるポリペプチドにより行われることができ、または大腸菌由来の多機能アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(酵素番号1.2.1.10) (Goodlove et al. Gene 85:209-14, 1989; GenBankアクセッション番号M33504)のような、単一のポリペプチドにより行われることができる。
アルデヒドデヒドロゲナーゼ(NAD(P)+) (酵素番号1.2.1.-)活性を有するポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードする核酸は非限定的に、S.セレヴィシエ(S. cerevisiae)を含む、さまざまな種から得ることができる。例えば、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、S.セレヴィシエから得ることができ、GenBankアクセッション番号Z75282 (Tessier et al. FEMS Microbiol. Lett. 164:29-34, 1998)に記載の配列を有することができる。
アルコールデヒドロゲナーゼ活性(酵素番号1.1.1.1)を有するポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードする核酸は非限定的に、Z.モビリス(Z. mobilis)を含む、さまざまな種から得ることができる。例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、Z.モビリスから得ることができ、GenBankアクセッション番号M32100に記載の配列を有することができる。
リパーゼ活性を有するポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードする核酸は非限定的に、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)を含む、さまざまな種から得ることができる。例えば、リパーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、C.ルゴサから得ることができ、GenBankアクセッション番号A81171に記載の配列を有することができる。
α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼおよびパントテナートシンターゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は非限定的に、大腸菌を含むさまざまな種から得ることができる。例えば、α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼおよびパントテナートシンターゼ活性を有するペプチドをコードする核酸分子は、大腸菌から得ることができ、GenBankアクセッション番号L17086に記載の配列を有することができる。
α-ケトパントイン酸レダクターゼ、パントテナートキナーゼ、4'-ホスホパンテテノイル-1-システインシンテターゼ、4'-ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ、ATP:4'-ホスホパンテテインアデニルトランスフェラーゼ、およびデホスホ-CoAキナーゼ活性を有するポリペプチド、ならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は非限定的に、大腸菌を含む、さまざまな種から得ることができる。例えば、α-ケトパントイン酸レダクターゼ、パントテナートキナーゼ、4'-ホスホパンテテノイル-1-システインシンテターゼ、4'-ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ、ATP:4'-ホスホパンテテインアデニルトランスフェラーゼ、およびデホスホ-CoAキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、大腸菌から得ることができ、GenBankアクセッション番号NC000913に記載の配列を有することができる。
「酵素活性を有するポリペプチド」という用語は、それ自体は反応の完了と同時に破壊または改変されることなく、他の物質の化学反応を触媒する、任意のポリペプチドのことをいう。通常、酵素活性を有するポリペプチドは、1つまたは複数の基質からの1つまたは複数の産物の形成を触媒する。そのようなポリペプチドは非限定的に、アラニン2,3-アミノムターゼ、ポリヒドロキシ酸シンターゼ、β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ、3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、アセチル化アルデヒド:NAD(+)オキシドレダクターゼ、アルコール:NAD(+)オキシドレダクターゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、シンターゼ、シンテターゼ、デカルボキシラーゼ、α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、α-ケトパントイン酸レダクターゼ、パントテナートシンターゼ、パントテナートキナーゼ、4'-ホスホパンテテノイル-1-システインシンテターゼ、4'-ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ、ATP:4'-ホスホパンテテインアデニルトランスフェラーゼ、デホスホ-CoAキナーゼ、アセチル化アルデヒド:NAD(+)オキシドレダクターゼ、アルコール:NAD(+)オキシドレダクターゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(NAD(P)+)、およびアルコールデヒドロゲナーゼなどの酵素と関連した酵素活性または複数の酵素活性を含む、任意のタイプの酵素活性を有することができる。
3-HP、パントテナート、およびその誘導体の作製方法
図1および3に描かれた経路に示される各段階は、細胞内で(インビボで)または細胞外で(容器中またはカラム中などの、インビトロで)行うことができる。さらに、有機化合物の生成物は、インビボ合成およびインビトロ合成の組合せを通じて作出することができる。さらに、インビトロ合成の段階、または複数の段階は、化学反応または酵素反応を介してもよい。
例えば、本明細書において提供される細胞もしくは微生物を利用して、図1および3に示される段階を実行することができ、または指定の酵素活性を有するポリペプチドを含有する抽出物を利用して、図1および3に示される段階を実行することができる。さらに、化学的処理を利用して、図1および3に示される変換を実行することができる。例えば、3-オキソプロピオナートを化学的水素化により、3-HPに変換することができる。その他の化学的処理は、3-HPを3-HPのエステルに変換するトランスエステル化処理を含むが、これに限定されることはない。
ポリペプチドの発現
図1に挙げられている酵素のような、本明細書に記述されるペプチドは、宿主細胞中で個別に、または宿主細胞中で一緒に産生させることができる。さらに、特定の酵素活性を有するペプチドは、天然に存在するまたは天然に存在しないペプチドとすることができる。天然に存在するペプチドは、野生型および多型ポリペプチドを含めて、天然に見られるようなアミノ酸配列を有する任意のペプチドである。天然に存在するペプチドは、動物(哺乳動物など)、植物、真菌、および細菌種を含むがこれらに限定されない、任意の種から得ることができる。天然に存在しないポリペプチドは、天然には見られないアミノ酸配列を有する任意のポリペプチドである。従って、天然に存在しないポリペプチドは、天然に存在するポリペプチドの変異型、または遺伝子操作ポリペプチドとすることができる。例えば、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する天然に存在しないポリペプチドは、少なくともいくらかのアラニン2,3-アミノムターゼ活性(SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、または51など)の有る、リジン2,3-アミノムターゼ活性を有する天然に存在するポリペプチドの改変型とすることができる。ペプチドは当技術分野において公知の方法を用いて、例えば、配列の付加、欠失、置換、またはそれらの組合せにより変異させることができる。
遺伝子組換え細胞を利用して、本明細書に記述される経路中の段階の1つまたは複数の段階を実行することができ、または遺伝子組換え細胞を利用して、インビトロで後に用いるための開示のポリペプチドを産生することができる。例えば、個々の微生物は、図1および3に描かれる段階を実行するのに必要な各ペプチドをコードする外因性核酸を含むことができる。そのような細胞は、任意の数の外因性核酸分子を含むことができる。例えば、特定の細胞は1つ、2つ、3つ、もしくは4つの異なる外因性核酸分子を、それぞれが図1に示されるようにピルベートを3-HPに変換するのに必要なポリペプチドをコードするように含むことができ、または特定の細胞はピルベートをα-アラニンに変換するのに必要なポリペプチドを内在的に産生することができる一方で、α-アラニンを3-HPに変換するのに必要なポリペプチドをコードする外因性核酸を含むことができる。
さらに、単一の外因性核酸分子は、1つの、または2つ以上のポリペプチドをコードすることができる。例えば、単一の外因性核酸分子は、2つ、3つ、またはさらに4つの異なるポリペプチドをコードする配列を含むことができる。さらに、本明細書に記述される細胞は、特定の酵素のような、特定の外因性核酸分子の、単一コピー、または複数コピー(約5、10、20、35、50、75、100または150コピーなど)を含むことができる。本明細書に記述される細胞は2つ以上の特定の外因性核酸を含むことができる。例えば、特定の細胞は、外因性核酸分子Xの約50コピーのほかに外因性核酸分子Yの約75コピーを含むことができる。
別の例では、細胞は、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するポリペプチド、例えば、SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、または50をコードする外因性核酸分子を含むことができる。そのような細胞は、パントテナートのような、β-アラニンの代謝産物の産生により検出される活性を含め、任意の検出可能なレベルのアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有することができる。例えば、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を含有する細胞は、細胞の乾燥重量1 gにつき1時間当たりに形成されるβ-アラニンが約1μgを超える(細胞の乾燥重量1 gにつき1時間当たりに形成されるβ-アラニンが約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、200、250、300、350、400、500 μg、またはそれ以上を超えるような)特異活性で、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有することができる。あるいは、細胞は、総タンパク質1 mgにつき1分間当たりに形成されるβ-アラニンが約1 ngを超える(総タンパク質1 mgにつき1分間当たりに形成されるβ-アラニンが約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、200、250、300、350、400、500 ng、またはそれ以上を超えるような)特異活性を細胞抽出物が有するように、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有することができる。
酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子は、本明細書に記述されているものなどの任意の方法を用いて同定し、得ることができる。例えば、酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子は、PCR法を含めて、一般的な分子クローニングまたは化学的核酸合成の手順および技術を用いて同定し、得ることができる。さらに、標準的な核酸配列決定技術および遺伝暗号に基づいて核酸配列をアミノ酸配列に翻訳するソフトウェア・プログラムを利用して、特定の核酸が公知の酵素ポリペプチドと任意の配列相同性を有するか否かを決定することができる。MEGALIGN (DNASTAR, Madison, WI, 1997)などの配列アライメント・ソフトウェアを利用して、種々の配列を比較することができる。
さらに、公知の酵素ポリペプチドをコードする核酸分子を一般的な分子クローニング技術(部位特異的突然変異誘発法など)により突然変異させることができる。可能な突然変異は、欠失、挿入、および置換、ならびに欠失、挿入、およびヌクレオチド置換の組合せを含むが、これらに限定されることはない。さらに、核酸およびアミノ酸のデータベース(GenBankまたはEMBLなど)を利用して、酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を同定することができる。簡単に言えば、酵素活性を有するポリペプチドにいくらかの相同性がある任意のアミノ酸配列、または酵素活性を有するポリペプチドをコードする配列にいくらかの相同性がある任意の核酸配列を、GenBankを検索するためのクエリーとして使用することができる。同定されたポリペプチドを次に分析して、これらが酵素活性を示すか否かを決定することができる。
さらに、核酸ハイブリダイゼーション技術を利用して、酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を同定し、得ることができる。簡単に言えば、公知の酵素ポリペプチド、またはその断片をコードする任意の核酸分子をプローブとして利用して、適度のないし高度のストリンジェンシーの条件下でハイブリダイゼーションにより類似の核酸分子を同定することができる。そのような類似の核酸分子を次に単離し、配列決定し、および分析して、コードされるポリペプチドが酵素活性を持つかどうか決定することができる。
発現クローニング技術を利用して、酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を同定し、得ることもできる。例えば、特定の酵素ポリペプチドと相互作用することが知られている基質を利用して、その酵素ポリペプチドを含有するファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることができる。ファージディスプレイライブラリーは報告(Burritt et al., Anal. Biochem. 238:1-13, 1990)のように作製されてもよく、またはNovagen (Madison, WI)などの商業的供給業者から入手されてもよい。
さらに、ポリペプチド配列決定技術を利用して、酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を同定し、得ることができる。例えば、精製ポリペプチドをゲル電気泳動法により分離することができ、そのアミノ酸配列を、例えば、アミノ酸の微量配列決定技術により決定することができる。決定されたら、そのアミノ酸配列を利用して、縮重オリゴヌクレオチドプライマーをデザインすることができる。縮重オリゴヌクレオチドプライマーを利用して、PCR法により、ポリペプチドをコードする核酸を得ることができる。得られたら、核酸を配列決定し、適切な発現ベクターにクローニングし、微生物に導入することができる。
外因性核酸分子を細胞に導入するために、任意の方法を利用することができる。例えば、熱ショック、リポフェクション、エレクトロポレーション、接合、原形質融合、およびバイオリスティックによる輸送は、核酸を細菌および酵母細胞に導入するための一般的な方法である(例えば、Ito et al., J. Bacterol. 153:163-8, 1983; Durrens et al., Curr. Genet. 18:7-12, 1990; Sambrook et al., Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press, New York, USA, 第二版, 1989; およびBecker and Guarente, Methods in Enzymology 194:182-7, 1991を参照のこと)。外因性核酸分子からアミノ酸配列を発現させるその他の方法は、調節エレメントにより、ポリペプチドをコードする核酸配列の発現が促進されるように核酸を構築することを含むが、これに限定されることはない。通常、調節エレメントは、他のDNA配列の発現を転写レベルで調節するDNA配列である。このように、調節エレメントは、プロモーター、エンハンサーなどを含むが、これらに限定されることはない。任意のタイプのプロモーターを利用して、外因性核酸分子からアミノ酸配列を発現させることができる。プロモーターの例は、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、および特定の刺激(光、酸素、化学的濃度など)に応答性のまたは非応答性のプロモーターを含むが、これらに限定されることはない。ウイルスベクターの利用のような、核酸を哺乳動物細胞に移入する方法も知られている。
開示の特定の細胞内に含まれる外因性核酸分子は、任意の形態でその細胞内に維持することができる。例えば、外因性核酸分子は、細胞のゲノムに組み込まれるかまたはエピソームの状態で維持されることができる。すなわち、細胞は、安定的なまたは一過性の形質転換体とすることができる。微生物は、酵素をコードする核酸のような、特定の外因性核酸分子の単一または複数コピー(約5、10、20、35、50、75、100または150コピーなど)を含むことができる。
宿主細胞による有機酸および関連産物の産生
本明細書において提供される核酸およびアミノ酸配列を細胞とともに用いて、β-アラニン、パントテナートおよび3-HPのほか、CoA、ならびに1,3-プロパンジオールなどの有機化合物、3-HPのエステル、および3-HP重合体などのその誘導体を産生することができる。そのような細胞は、米国立衛生研究所の分類学のウェブページ内に掲載されているものなどの、任意の種由来とすることができる。細胞は、真核細胞または原核細胞とすることができる。例えば、遺伝子組換え細胞は、哺乳動物細胞(ヒト、マウス、およびウシ細胞など)、植物細胞(トウモロコシ、小麦、米、および大豆細胞など)、真菌細胞(アスペルギルス(Aspergillus)およびリゾープス(Rhizopus)細胞など)、酵母細胞、または細菌細胞(ラクトバチルス、ラクトコッカス、バチルス、エシェリキア、およびクロストリジウム細胞など)とすることができる。1つの例では、細胞は微生物である。「微生物」という用語は、細菌、藻類、真菌、および原虫を含むがこれらに限定されない、任意のミクロ生物のことをいう。従って、大腸菌、枯草菌、B.リケニフェルミス(B. licheniformis)、S.セレヴィシエ、クルベロマイセス・ラクティス(Kluveromyces lactis)、カンジダ・ブランキイ(Candida blankii)、カンジダ・ルゴサ、およびピチア・パストリス(Pichia pastoris)は例示的な微生物であり、本明細書に記述されるように使用することができる。別の例では、細胞はトランスジェニック植物のような、植物などの、より大きな生物の一部分である。β-アラニンから3-HP、パントテナート、またはその他の有機化合物を作製するのに使用できる植物の例は、トウモロコシ、米、小麦、および大豆のような遺伝子組み換え作物を含むが、これらに限定されることはない。
1つの例では、細胞は、特定の有機化合物が産生されるように遺伝子組換えされる。1つの態様では、細胞は図1および3に示される経路のように、β-アラニンから3-HPまたはパントテナートを作出する。別の例では、細胞はCoA、ならびに1,3-プロパンジオールなどの有機化合物、3-HPのエステル、および3-HP重合体などの、3-HPまたはパントテナートの誘導体を作出する。
特定の有機化合物を合成するように遺伝子組換えされた細胞は、特異的酵素活性を有するポリペプチドをコードする1つまたは複数の外因性核酸分子を含むことができる。例えば、微生物は、3-β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸を含むことができる。この場合、β-アラニンは、3-HPの産生をもたらすことができる2-オキソプロピオナートに変換されることができる。細胞には、その細胞によって通常産生されない化合物の産生を触媒する酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を与えることができる。または、細胞には、その細胞によって通常産生される化合物の産生を触媒する酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を与えることができる。この場合、遺伝子組換え細胞は、遺伝子組換えを持たない類似細胞よりも、化合物を多く産生することができ、または化合物を効果的に産生することができる。
別の例では、3-HP、パントテナート、またはその誘導体の形成をもたらす酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を含有する細胞が開示される。産生された産物は細胞から分泌されるので、細胞膜を破壊する必要なく有機化合物を回収することができる。1つの例では、細胞は3-HP、パントテナート、またはその誘導体を、産物の濃度が少なくとも約100 mg/L (少なくとも約1 g/L、5 g/L、10 g/L、25 g/L、50 g/L、75 g/L、80 g/L、90 g/L、100 g/L、または120 g/L)で産生する。特定の細胞に対し3-HP、パントテナート、および/またはその誘導体などの化合物の収率を決定する場合、任意の方法を使用することができる(例えば、Applied Environmental Microbiology 59 (12):4261-5, 1993を参照のこと)。開示の範囲内の細胞は種々の炭素源を利用することができる。
細胞は、3-HP、パントテナート、またはCoA、1,3-プロパンジオール、3-HPのエステル、ならびに3-HPを含有する重合体および共重合体のような、その誘導体の形成をもたらす酵素活性を有するポリペプチドをコードする1つまたは複数の外因性核酸分子を含むことができる。外因性核酸分子を含む細胞を同定する方法は周知である。そのような方法は非限定的に、PCR法ならびにノーザンおよびサザン解析などの核酸ハイブリダイゼーション技術(本明細書に記述されるハイブリダイゼーションを参照のこと)を含む。免疫組織化学的および生化学的技術を利用して、細胞が特定の核酸分子を含むかどうかを、その特定の核酸分子によりコードされるポリペプチドの発現を検出することで決定することもできる。例えば、ポリペプチドに対する特異性を有する抗体を利用して、特定の細胞がそのポリペプチドをコードする核酸を含むか否かを決定することができる。さらに、生化学的技術を利用して、酵素活性を有するポリペプチドをコードする特定の核酸分子を細胞が含むかどうかを、酵素活性を有するポリペプチドの発現の結果として産生される有機化合物を検出することで決定することができる。例えば、3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸を、そのようなポリペプチドを通常発現しない細胞に導入した後に3-HPが検出されれば、細胞が、導入された外因性核酸分子を含むだけでなく、その導入された外因性核酸分子から、コードされるポリペプチドを発現することを示すことができる。特異的な酵素活性または特定の有機生成物の存在を検出する方法は周知であり、例えば、3-HPなどの有機化合物の存在はSullivan and Clarke (J. Assoc. Offic. Agr. Chemists, 38:514-8, 1955)に記述されているように測定することができる。
ポリペプチド活性が低下した細胞
ポリペプチド活性が低下した遺伝子組換え細胞が開示される。細胞および特定のポリペプチドの活性に関して本明細書で用いられる「低下した」または「減少した」という用語は、同一種の対応細胞で測定されるものよりも低いレベルの活性のことをいう。例えば、酵素活性Xを欠く特定の微生物は、対応する微生物が少なくともある程度の酵素活性Xを有する場合、酵素活性Xが低下している。
細胞は、酵素、転写因子、輸送体、受容体、シグナル分子などを含むがこれらに限定されない、任意のタイプのポリペプチドの活性が低下されうる。例えば、細胞は、panD活性を有するポリペプチドの調節配列またはコード配列を破壊する外因性核酸分子を含むことができる。panDを破壊することで、細胞がβ-アラニンを作製するのを阻止することができる。
ポリペプチド活性の低下は、低いポリペプチド濃度、ポリペプチドの低い特異活性、またはそれらの組合せの結果でありうる。ポリペプチド活性が低下した細胞を作製するため、多くの異なる方法を利用することができる。例えば、一般的な突然変異誘発またはノックアウト技術を用いて、調節配列またはポリペプチド・コード配列が破壊されるように、細胞を遺伝子操作することができる。(Methods in Yeast Genetics (1997 edition), Adams、Gottschling、Kaiser, and Sterns, Cold Spring Harbor Press, 1998; Datsenko and Wanner, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 6640-5, 2000)。または、特定のポリペプチドの活性を低下させるのに、アンチセンス技術を利用することができる。例えば、ポリペプチドが翻訳されるのを阻止するアンチセンス分子をコードするcDNAを含むように、細胞を遺伝子操作することができる。「アンチセンス分子」という用語は、内在性ポリペプチドのコード鎖に対応する配列を含む任意の核酸分子または核酸類似体(ペプチド核酸など)を包含する。アンチセンス分子は同様に、フランキング配列(調節配列など)を有してもよい。このように、アンチセンス分子は、リボザイムまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドとすることができる。リボザイムは、この分子がRNAを切断するなら、ヘアピン、ハンマーヘッド、またはアクスヘッド構造を含むがこれらに限定されない、任意の一般的構造を有することができる。さらに、特定のポリペプチドの活性を低下させるのに、遺伝子サイレンシングを利用することができる。
ポリペプチドの活性が低下した細胞は、任意の方法を用いて同定することができる。例えば、本明細書に記述されるものなどの酵素活性アッセイを利用して、酵素活性が低下した細胞を同定することができる。
インビトロ技術による有機酸および関連産物の産生
酵素活性を有する精製ポリペプチドを単独でまたは細胞と組合せて利用して、パントテナート、3-HP、またはCoA、ならびに1,3-プロパンジオールなどの有機化合物、3-HPのエステル、および3-HP重合体のようなその誘導体を産生することができる。例えば、3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性を有する実質的に純粋なポリペプチドを含む調製物を利用して、3-HPの形成を触媒することができる。
さらに、酵素活性を有するポリペプチドを含有する無細胞抽出物を単独でまたは精製ポリペプチドもしくは細胞と組合せて利用して、パントテナート、3-HP、またはその誘導体を産生することができる。例えば、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するポリペプチドを含む無細胞抽出物を利用して、α-アラニンからβ-アラニンを形成させることができる一方で、β-アラニンから3-HPを形成させるのに必要な反応を触媒するのに必須の酵素活性を有するポリペプチドを含有する微生物を利用して、3-HPを産生させることができる。別の例では、α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(酵素番号2.1.2.11)、α-ケトパントイン酸レダクターゼ(酵素番号1.1.1.169)、およびパントテナートシンターゼ(酵素番号6.3.2.1)を含む無細胞抽出物を利用して、β-アラニンからパントテナートを形成させることができる。無細胞抽出物を産生するため、任意の方法を利用することができる。例えば、浸透圧衝撃、超音波、または繰返し凍結融解サイクルに続いてろ過および/もしくは遠心処理を利用して、無傷細胞から無細胞抽出物を産生することができる。
細胞、精製ポリペプチド、または無細胞抽出物を利用して3-HPを産生し、これを今度は化学的に処理して別の化合物を産生することができる。例えば、微生物を利用して3-HPを産生することができる一方で、化学的工程を利用して3-HPを3-HP重合体または3-HPのエステルなどの誘導体に修飾する。同様に、化学的工程を利用して特定の化合物を産生し、これを今度は本明細書に記述される細胞、実質的に純粋なポリペプチド、または無細胞抽出物を用いて3-HPまたはその他の有機化合物(1,3-プロパンジオール、アクリル酸、アクリレート重合体、アクリレートのエステル、3-HPのエステル、および3-HP重合体など)に変換することができる。例えば、化学的工程を利用してアクリリル-CoAを産生することができる一方で、微生物を利用してアクリリル-CoAを3-HPに変換することができる。
同様に、細胞、精製ポリペプチド、または無細胞抽出物を利用してパントテナートを産生し、これを今度は化学的に処理して別の化合物を産生することができる。例えば、微生物を利用してパントテナートを産生することができる一方で、化学的工程を利用してパントテナートをCoAなどの誘導体に修飾する。同様に、化学的工程を利用して特定の化合物を産生し、これを今度は本明細書に記述される細胞、実質的に純粋なポリペプチド、または無細胞抽出物を用いてパントテナートまたはその他の化合物(CoAなど)に変換することができる。例えば、化学的工程を利用してパントテナートを産生することができる一方で、微生物を利用してパントテン酸をCoAに変換することができる。
有機酸を産生するための細胞の発酵
パントテナート、3-HP、またはその誘導体が産生されるような培地中で、微生物などの、産生細胞を培養することにより、パントテナート、3-HP、またはその誘導体を産生する方法が開示される。一般に、培地または培養条件は、微生物が十分な密度にまで増殖し、産物を効果的に産生するようなものとすることができる。大規模な産生工程の場合、本明細書のほかに記述されているものなどの任意の方法を利用することができる(Manual of Industrial Microbiology and Biotechnology, 第二版, 編者: Demain and Davies, ASM Press; およびPrinciples of Fermentation Technology, Stanbury and Whitaker, Pergamon)。
簡単に言えば、適切な培地と、例えば、グルコース炭素源とを含有する大きなタンク(100ガロン、200ガロン、500ガロン、またはそれより大きなタンクのような)に特定の微生物を植菌する。植菌後、微生物をバイオマスの産出が可能となるようにインキュベートする。所望のバイオマスに達したら、微生物を含有する培養液を第2タンクに移し変えることができる。この第2タンクは任意のサイズとすることができる。例えば、第2タンクは、より大きなサイズ、より小さなサイズ、または第1タンクと同じサイズとすることができる。通常、第2タンクは、第1タンクからの培地にさらなる培地を添加できるよう、第1タンクよりも大きい。さらに、この第2タンク内の培地は、第1タンクで使用されるのと同じもの、または異なるものとすることができる。例えば、第1タンクはキシロース入りの培地を含むことができる一方で、第2タンクはグルコース入りの培地を含む。
移し変えたら、パントテナート、3-HP、またはその誘導体の産生を可能にするように微生物をインキュベートすることができる。産生されたら、形成された産物を単離するため、任意の方法を利用することができる。例えば、一般的な分離技術を利用して培養液からバイオマスを取り除くことができ、一般的な単離手順(抽出、蒸留、およびイオン交換手順など)を利用して、微生物を含まない培地からパントテナート、3-HP、またはその誘導体を得ることができる。あるいは、産物を、それが産生されるのと同時に単離することもできるし、または産物の産生段階が終了した後に、培養液から単離することもできる。
開示の生合成ルートから作製される産物
図1および3に示される段階のいずれかより産生された化合物を、他の有機化合物に化学的に変換することができる。例えば、3-HPを水素化して、有用なポリエステル単量体である1,3-プロパンジオールを形成させることができる。3-HPのような有機酸の水素化は、コハク酸または乳酸を水素化するために使われるものなどの、任意の方法を用いて行うことができる。例えば、金属触媒を用いて3-HPを水素化することができる。別の例では、3-HPを脱水化して、アクリル酸を形成させることができる。脱水化反応を行うため、任意の方法を利用することができる。例えば、3-HPを触媒(金属または無機酸触媒のような)の存在下で加熱して、アクリル酸を形成させることができる。1,3-プロパンジオールを同様に、オキシドレダクターゼ活性(酵素分類1.1.1.-の酵素など)を有するポリペプチドを用いて、インビトロでまたはインビボで作り出すことができる。
別の例では、パントテナートを利用して、コエンザイムAを形成させることができる。パントテナートキナーゼ(酵素番号2.7.1.33)、4'-ホスホパンテテノイル-1-システインシンテターゼ(酵素番号6.3.2.5)、4'-ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ(酵素番号4.1.1.36)、ATP:4'-ホスホパンテテインアデニルトランスフェラーゼ(酵素番号2.7.7.3)、およびデホスホ-CoAキナーゼ(酵素番号2.7.1.24)活性を有するポリペプチドを利用して、コエンザイムAを産生させることができる。
1,3-プロパンジオールの産生
1,3-プロパンジオールを産生する方法、およびその産生のための細胞が開示される。1,3-プロパンジオールは3-HP-CoAまたは3-HPから作出することができる。3-HP-CoAまたは3-HPを産生する細胞または微生物を遺伝子操作して、オキシドレダクターゼ/デヒドロゲナーゼタイプの活性を有する酵素をコードする遺伝子をクローニングすることにより1,3-プロパンジオールを作製することができる。
例えば、アセチル化アルデヒド:NAD(+)オキシドレダクターゼおよびアルコール:NAD(+)オキシドレダクターゼ活性を有する酵素の存在下で、3-HP-CoAを1,3-プロパンジオールに変換させることができる。そのような変換はインビボで、インビトロで、またはそれらの組合せで行うことができる。これらの活性は、単一のポリペプチドによりまたは2つの異なるポリペプチドにより達成することができる。単一の酵素は、大腸菌由来の多機能アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(酵素番号1.2.1.10) (Goodlove et al. Gene 85:209-14, 1989; GenBankアクセッション番号M33504)を含む。アセチル化アルデヒド:NAD(+)オキシドレダクターゼ(酵素番号1.2.1.10)またはアルコール:NAD(+)オキシドレダクターゼ(酵素番号1.1.1.1)の単一活性を有する酵素が報告されている。大腸菌由来のアセチル化アルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(GenBankアクセッション番号Y09555)およびZ.モビリス由来のアルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(GenBankアクセッション番号M32100)が単離され、配列決定されている。これらの酵素をコードする遺伝子を周知の分子生物学技術により、3-HP-CoAの産生生物または細胞にクローニングすることができる。3-HP-CoAを産生する生物または細胞でのこれらの酵素の発現により、3-HP-CoAを1,3-プロパンジオールに変換する能力が与えられるであろう。3-HP-CoAに対するこれらの酵素の基質特異性は、エラーを起こしやすいPCR法または大腸菌の突然変異誘発株のような周知の技術を用いて、変化させるかまたは改善することができる。
3-HPの1,3-プロパンジオールへの変換は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(NAD(P)+) (酵素番号1.2.1-)およびアルコールデヒドロゲナーゼ(酵素番号1.1.1.1)活性を有する酵素と3-HPを接触させることにより達成することができる。そのような変換はインビボで、インビトロで、またはそれらの組合せで行うことができる。例えば、これらの遺伝子を3-HPの産生微生物または細胞にクローニングし、発現させることにより、細胞または生物が3-HPを1,3-プロパンジオールに変換する能力が与えられるであろう。3-HPに対するこれらの酵素の基質特異性は、上述の周知の技術を用いて、変化させるかまたは改善することができる。
発酵の間のまたはインビトロアッセイ中の1,3-プロパンジオールの形成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析することができる。クロマトグラフ分離は、Bio-Rad 87Hイオン交換カラムを用いることにより達成することができる。移動相0.01 N硫酸を流速0.6 ml/分で通過させ、カラムを温度45〜65℃に維持する。サンプル中の1,3-プロパンジオールの存在は、屈折率検出器を用いて検出することができる(Skraly et al., Appl. Environ. Microbiol. 64:98-105, 1998)。
実施例1
フソバクテリウム・ヌクレアタム由来リジン2,3-アミノムターゼ(kam遺伝子)のクローニングおよびコドン改良
本実施例は、F.ヌクレアタム由来のリジン2,3-アミノムターゼ(酵素番号5.4.3.2)をクローニングし、次に大腸菌での遺伝子の発現のためにコドン使用頻度を最適化するのに使われた方法について記述する。類似の方法を利用して、任意の所望の生物由来のリジン2,3-アミノムターゼをクローニングできることを当業者は理解するであろう。
F.ヌクレアタム由来リジン2,3-アミノムターゼは、リジンに対し高い特異活性を有する(Barker et al. J. Bacteriol. 152(1):201-7, 1982)。F.ヌクレアタムは単一の炭素源および窒素源としてリジンを利用することができ、従ってリジン分解経路中の酵素が高い活性を有することを必要とする。リジン2,3-アミノムターゼをコードするF.ヌクレアタム由来kam遺伝子をクローニングするため、以下の方法を利用した。F.ヌクレアタム亜種のヌクレアタム(American Type Culture Collection, Manassas, VA, カタログ番号ATCC 25586)をATCC培地1053 (強化クロストリジウム培地)の中で増殖させた。Coy社製嫌気性チャンバ中で嫌気性ガスを培地に通し泡立てることにより(85%N2、5%CO2、10%H2)、培地を嫌気性にした。密閉された嫌気性試験管の中で培養物を37℃にてインキュベートした。培養物10 mLを回収し、Mekalanosのプロトコルを用いてゲノムDNAを単離した(Cell. 35(1):253-63, 1983)。
PCR法によりkam遺伝子を増幅するためのプライマーは、完全なF.ヌクレアタム由来ゲノム配列(GenBankアクセッション番号NC 003454)を基礎とし、プラスミドへのPCR産物のクローニングを可能にするように制限部位が付加された。PCRプライマー
Figure 2008507970
を利用して、ベクターpET11A (Novagen)中のNdeIおよびBamHI部位にクローニングした。クローニングされたF.ヌクレアタム由来kam遺伝子は、SEQ ID NO:9に示されている(対応するアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示されている)。
F.ヌクレアタム由来kam遺伝子は、大腸菌での発現の向上のため部分的にコドン最適化された。稀有なアルギニンコドンは、増幅反応の間にいっそう好ましいアルギニンコドンを含んだプライマーの取込みにより置き換えられた。2ラウンドのプライマー取込みにより、種々のコドンが置き換わったクローンが得られた。DNAの両鎖に対しデザインされたプライマーは、長さが23〜33ヌクレオチドであり、1つまたは2つのコドン置換がプライマーの中心にあった。アルギニンコドンAGG、AGA、およびCGAがCGTまたはCGCに変えられた。コドン最適化を最大限に生かすため、kam遺伝子の重複断片を3つの異なるクローン由来の鋳型とプルーフリーディングDNAポリメラーゼとを用い増幅して、増幅エラーを最小限に抑えた。断片をゲル精製し、遺伝子の始めと終わりに相同なプライマーとの第2ラウンドの増幅での鋳型として用いた。
第2ラウンドのアッセンブリでは、最も最適化されたクローンの3つの重複断片を増幅させて、増幅プライマーとして使われたプライマーの取込みを確実にした。断片をゲル精製し、遺伝子の始めと終わりに相同なプライマーとの第2ラウンドの増幅での鋳型として用いた。これらのプライマーの中にデザインされた制限部位を用いて、産物をpET11Aベクター(Novagen)およびpPRO-Ndeにクローニングした。プラスミドpPRO-NdeはpPROLar.A122 (Clontech Laboratories, Inc., Palo Alto, CA)の派生体であり、このプラスミドではStratagene社製QuikChange Site-Directed Mutagenesisキットを用いたオリゴヌクレオチド指定変異法によってNdeI部位が開始ATGコドンの位置に構築されている。稀有なアルギニンコドンは野生型遺伝子中の28個からアッセンブル済クローン中の8個にまで減らされた。部分的に最適化されたF.ヌクレアタム由来kam遺伝子は、SEQ ID NO:11に示されている(対応する不変のアミノ酸配列はSEQ ID NO:12に示されている)。
重複プライマーまたはMulti Site-Directed Mutagenesis (Stratagene)を用いた遺伝子アッセンブリなどの、その他のコドン最適化の方法を利用できることを当業者は理解するであろう。
実施例2
F.ヌクレアタム由来kam遺伝子のインビトロ突然変異誘発
本実施例は、実施例1に記述の部分的に最適化されたF.ヌクレアタム由来kam遺伝子(SEQ ID NO:11)を突然変異誘発し、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する突然変異体のリジン2,3-アミノムターゼ配列を同定するのに使われた方法について記述する。
枯草菌由来アミノムターゼで以前に得られた3つの突然変異(国際公開公報第03/062173号およびSEQ ID NO:1〜4を参照のこと)を定方向突然変異誘発によって、F.ヌクレアタム由来のコドン最適化済みkam遺伝子中のその相同位置に移入した。これらの突然変異の中にはSEQ ID NO:12中のL96M、M129V、およびD332H置換(SEQ ID NO:14に示される配列をもたらした)があり、ここで1番目のアミノ酸は野生型配列であり、数字はアミノ酸の位置であり、および2番目のアミノ酸はアラニン2,3-アミノムターゼに見られる残基である。突然変異はStratagene QuikChange (登録商標) Multi Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いて作製された。これらの突然変異を作製するために使われたプライマーは
Figure 2008507970
であった。3つの定方向突然変異(Fncodm)を有する部分的にコドン最適化されたF.ヌクレアタム由来kam遺伝子の配列は、SEQ ID NO.13に(および得られたタンパク質配列はSEQ ID NO:14に)示されている。
得られたFncodmクローンを液体中増殖試験で試験した。再懸濁されたコロニーを用いて2 mLガラス試験管中の、パントテナートあり(25 μM)およびなし両方のM9最少培地1.4 mLに植菌した。培地に0.4%グルコース、2 mg/mL L-アラニン、100 μM IPTG、50 μM Fe(NH4)2(SO4)2、微量元素、および25 μg/mLカナマイシンを補充した。パントテナート対照がOD600およそ0.7に到達した時点で培養物のODを測定した。パントテナートなしでの増殖をパントテナートありでの増殖と比較することにより性能を測定し、Fncodmがほとんどまたは全くアラニン2,3-アミノムターゼ活性を持たないことが分かった。
アラニン2,3アミノムターゼ活性を増大する突然変異を同定するため、エラーを起こしやすいPCR法を用いてインビトロでFncodm遺伝子(SEQ ID NO:13)に無作為な突然変異を導入した。類似の方法を利用して、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)由来のkam遺伝子(GenBankアクセッション番号RDR02336)、クロストリジウム・サブテルミナレ由来のkam遺伝子(GenBankアクセッション番号AF159146)、またはポルフィロモナス・ジンジバリス由来のkam遺伝子(不完全なゲノム, The Institute for Genomic Research)などの、リジン2,3-アミノムターゼをコードする任意のkam遺伝子に突然変異を導入することができる。
Cadwell and Joyce (PCR Methods Appl. 2:28-33, 1992)のプロトコルに基づいて、突然変異誘発PCRを行った。この方法では、21.2 mM MgCl2、2.0 mM MnCl2、3.2 mM dTTP、および3.2 mM dCTPを含有する突然変異誘発用緩衝液の各希釈液を用いる。1.5 mM MgCl2、0.25 μMのフォワードおよびリバースベクタープライマー、200 μMの各dNTP、pPRO-Fncodm鋳型DNA 5 ng、およびTaq DNAポリメラーゼ(Roche) 10単位の入った1×Taq PCR緩衝液に加えて、突然変異誘発用緩衝液6.25および9.38 μLを別々のPCR反応液に加えた(各々の最終容量100 μL)。PCRプログラムは94℃2分間の初回変性; 94℃30秒間、50℃1分間、および72℃2.25分間を30サイクル; ならびに72℃7分間の最終伸長からなった。
PCRの後、PCR産物を制限酵素NotIおよびNdeIで消化した。各処理由来の等量のDNAをベクターpPRO-Ndeにライゲーションし、大腸菌Electromax (商標) DH10B (商標)細胞に形質転換した。プラスミドDNAを単一コロニーから単離し、突然変異率の推定値を得るために配列決定した(0.57%)。複数の形質転換体を25 μg/mLカナマイシン含有LB培地(LBK25)で平板培養して、およそ53,000個のコロニーを得た。コロニーをプレートからこすり取り、Qiagen MiniSpin Plasmid手順を用いてプラスミドDNAを調製した。選択宿主への形質転換の前にプラスミドDNAを酢酸アンモニウムとエタノールにより沈殿させて、その濃度を増加させた。
実施例3
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するクローンの単離
本実施例は、アラニン2,3アミノムターゼ活性を有する変異リジン2,3アミノムターゼクローンを同定するのに使われた方法について記述する。
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞を同定する方法が以前に開示されている(国際公開公報第03/062173号を参照されたく、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。簡単に言えば、この方法は、panDが機能的に欠失された細胞を、β-アラニンまたはパントテナートを含まない培地中で培養する段階を含む。panD遺伝子は、アスパルテートからのβ-アラニンの産生を触媒するアスパルテートデカルボキシラーゼをコードする。大腸菌でのpanDのこの機能的欠失はアスパルテートデカルボキシラーゼを不活性化し、これによりコエンザイムA産生におけるβ-アラニンの必要性に起因して大腸菌の増殖阻害が起こる。β-アラニンおよびパントテナートを欠いた培地中で増殖できる細胞は、それがα-アラニンからβ-アラニンを産生していることを示唆し、このことは細胞がアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有することを示唆する。
上記の実施例2で作出された突然変異誘発Fncodmライブラリーを大腸菌のΔpanD::CAT菌株のエレクトロコンピテント細胞に形質転換した(国際公開公報第03/062173号および本明細書の実施例10を参照のこと)。形質転換体をSOC培地中で1時間回復させ、引き続いて100 μM IPTGと25 μg/mlカナマイシンの添加およびさらに3時間の増殖を行った。その後、細胞を遠心分離し、0.85% NaClで洗浄し、0.4%グルコース、100 μM IPTG、50 μM Fe(NH4)2(SO4)2、2 mg/mL α-L-アラニン、微量元素、および25 μg/mLカナマイシンを補充したM9最少培地(Sigma, St. Louis, MO) 500 μLに再懸濁した。再懸濁された細胞30 μLを用いて2 mLガラス試験管中のM9培地1.33 mLに植菌した。6日後、増殖された培養物を用いて液体LBK25培地に植菌した。5.5時間の増殖の後、プラスミドDNAを単離し、ΔpanD::CAT菌株の新たなコンピテント細胞を形質転換するのに用いた。増殖細胞の再形質転換により、宿主ゲノム中の突然変異を可能にすることによって増殖できた突然変異体を減らし、増殖はプラスミドが媒介する効果によるものであることが確実になる。
形質転換体をSOC培地中で1時間回復させ、0.85% NaClで洗浄し、NaCl 1 mLに再懸濁した。コロニーカウントをLBK25培地での平板培養から得、残りの再懸濁液(4℃で保存された)をLBK25培地で平板培養して、プレート当たりおよそ250個のコロニーを得た。個々のコロニーをLBK25とM9最少培地の両方に継ぎ当てた。
M9培地で優れた増殖を示したコロニーを2 mL試験管中のM9最少培地(上記の) 1.4 mLにより液体中増殖試験で試験した。再懸濁されたコロニーを用いて、パントテナートあり(25 μM)およびなし両方の培地に植菌した。パントテナート対照がOD600およそ0.7に到達した時点で培養物のODを測定した。パントテナートありでの増殖に対しパントテナートなしでの増殖の比率が高かったクローンを同定した。優れたクローンのプラスミドDNAを標準的な分子生物学法により配列決定した。全てのクローンが同じ配列(SEQ ID NO:18、およびSEQ ID NO:19中の対応するアミノ酸配列)を有することが認められた。
アラニン2,3-アミノムターゼ(Fnaam)をコードするF.ヌクレアタム由来変異kam遺伝子配列はSEQ ID NO:18に示されており、対応するアミノ酸配列はSEQ ID NO:19に示されている。実施例2で作出された3つの定方向突然変異のほかに、F.ヌクレアタム由来kam遺伝子配列に比べて、6つのアミノ酸変化が変異配列で認められた(図4)。これらのさらなる置換はE31K、Y64F、Q87R、D145G、L229M、およびK401Eである。しかしながら、これらの突然変異の全てがアラニン2,3-アミノムターゼ活性に必要ではないかもしれない。
Fnaam突然変異体のプラスミドDNAを鋳型として用い、第2ラウンドの突然変異誘発ライブラリーを上述のように作製した。その出発クローンはもうアラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するので、選択は固体培地で平板培養するよりもむしろ液体濃縮技術に依った。液体濃縮では、ΔpanD/ΔpanF選択宿主を利用することができる。panF遺伝子は、パントテナートの濃縮取込みを可能にするパントテナートパーミアーゼをコードする。panF欠失突然変異体の利用により、活性なアラニン2,3-アミノムターゼを有するクローンによって産生されたパントテナートを用いた不活性なクローンの栄養共生の可能性が阻止される。およそ48,000個のクローン由来のDNAからなる突然変異誘発ライブラリーをΔpanD/ΔpanF大腸菌BW25113菌株に形質転換した。回復株の半分を用いて、0.4%グルコース、100 μM IPTG、20 μMクエン酸酸化鉄、2 mg/mL α-L-アラニン、微量元素、および25 μg/mLカナマイシンを補充したM9最少培地30 mLに植菌した。培地を50 mL試験管に入れて、時々混合に供した。良好な増殖株は8日後に見られ、M9最少培地に画線された。
コロニーは上述のように液体中増殖試験で試験し、ΔpanD/ΔpanF菌株でのFnaam突然変異体よりもおよそ4倍良好に機能した。新しい突然変異体由来のプラスミドDNAを配列決定し、ΔpanD菌株を再形質転換するのに用いた。再形質転換体の液体中増殖試験により、増殖優位性がプラスミドにより与えられることが確認された。さらに2つのアミノ酸置換(K37EおよびD180N)がこのF.ヌクレアタム由来アラニン2,3-アミノムターゼ(Fnaam2, SEQ ID NO:21)に存在する。このDNA配列はSEQ ID NO:20に示されている。改良された突然変異体は0.5 mg/mLのα-L-アラニンを用いた液体中増殖試験でFnaam突然変異体よりもおよそ3倍良好に機能した。
実施例4
クロストリジウム・スティクランジィ由来リジン2,3-アミノムターゼのクローニングおよびコドン改良
本実施例は、C.スティクランジィ由来リジン2,3-アミノムターゼをクローニングし、大腸菌での発現のためにそのコドン使用頻度を最適化するのに使われた方法について記述する。リジン2,3-アミノムターゼおよびリジン5,6-アミノムターゼを伴うリジンの分解経路がC. スティクランジィで報告されているが、その遺伝子配列は知られていない。
C.スティクランジィ(ATCC 12662)をATCC培地1053の中で増殖させ、ゲノムDNAをF.ヌクレアタムで記述されているように単離した。3つの縮重フォワードプライマー
Figure 2008507970
ならびに3つの縮重リバースプライマー
Figure 2008507970
を公知のリジン2,3-アミノムターゼ遺伝子のタンパク質保存領域からデザインした。C.スティクランジィのコドン選択表を用いて、タンパク質配列からプライマーをデザインした。
Taqポリメラーゼおよび反応混合物1 μL当たりC.スティクランジィ・ゲノムDNA 1 ngを用いたPCRにおいて、プライマーを全ての論理的な組合せで使用した。PCRは56℃のアニーリング温度で4サイクル、54℃で4サイクル、52℃で4サイクル、および50℃で20サイクルのタッチダウンPCRプログラムを利用して行われた。各サイクルが94℃で45秒の初回変性段階および72℃で2分の伸長を使い、72℃で5分間の最終伸長が行われた。反応で使われたPCRプライマーの量はプライマーの3'末端における縮重のため、上記の典型的なPCR量の3倍に増やされた。さらに、各個別のプライマーを含む別個のPCR反応液を作製して、単一の縮重プライマーから生ずるPCR産物を同定した。
各PCR産物25 μLを1.5%アガロースゲルで泳動した。濃いバンドはプライマーの組合せF1-R1 (950 bp)、F1-R3 (900 bp)およびF3-R3 (730 bp)によって生じ、これらは他種の遺伝子に基づきおおよそ予想されたサイズであった。より薄いバンドはプライマーの組合せF3-R1 (800 bp)、F1-R2 (900 bp)、およびF3-R2 (750 bp)によって生じた。F2-R1、F2-R2、F2-R3プライマーの組合せまたは個々のプライマー対照の場合にはバンドは得られなかった。Qiagen Gel Extraction手順(Qiagen Inc., Valencia, CA)を利用して、F1-R1およびF1-R3断片を単離し精製した。TOPOクローニング手順(Invitrogen, Carlsbad, CA)を利用して、精製バンド4 μLをTOPO 4.0ベクターにライゲーションし、熱ショック法によりTOPO10大腸菌細胞に形質転換した。形質転換体を、100 μg/mlのアンピシリンおよび50 μg/mLのX-gal (5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド)を含有するLB培地で平板培養した。単一の白色コロニーを少量の緩衝液の中に入れ、一定分量を用いて、プラスミドDNAの単離を目的に5 mL培養を開始した。残りを95℃で10分間加熱し、2 μLをPCR反応に用いて、所望のインサートの存在を確認した。複数のコロニーから、QiaPrep Spin Miniprep Kitを用いて、プラスミドDNAを得ることで、所望のインサートが示された。F1-R1クローンのインサートをM13RおよびM13Fプライマーで配列決定した。配列解析により、この断片が公知のリジン2,3-アミノムターゼ遺伝子に相同であることが示された。
完全なコード配列を得るためのゲノムウォーキング
上述のF1-R1断片に対し得られた配列を用いて上流および下流の両方向でゲノムウォーキングを行うためのプライマーをデザインすることで、縮重プライマーに対応する領域を回避した。プライマー配列はGSP1Fの場合
Figure 2008507970
GSP2Fの場合
Figure 2008507970
GSP1Rの場合
Figure 2008507970
およびGSP2Rの場合
Figure 2008507970
であり、ここでGSP1FおよびGSP2Fは下流に対向するプライマーであり、GSP1RおよびGSP2Rは上流に対向するプライマーであり、ならびにGSP2FおよびGSP2Rはそれぞれ、GSP1FおよびGSP1Rの内側で入れ子になったプライマーである。ゲノムウォーキングは、使われた制限酵素がHinc II、Ssp I、EcoR V、Pvu IIおよびDra Iであったことを除き、ClontechのUniversal Genome Walkingキット(ClonTech Laboratories, Inc., Palo Alto, CA)の手引書に従って行われた。
第1ラウンドのPCRは94℃で15秒間の初回変性; 94℃で5秒および70℃で3分からなる7サイクル; ならびに94℃で5秒および65℃で3分からなる32サイクルと、65℃で4分間の最終伸長とを用いてPerkin Elmer 9700 Thermocyclerで行われた。第2ラウンドのPCRは94℃で15秒間の初回変性; 94℃で5秒および70℃で3分の5サイクル; 94℃で5秒および65℃で3分の26サイクル; ならびに65℃で4分間の最終伸長からなった。
各ラウンドのPCR産物20 μLを1.5%アガロースゲルで泳動した。増幅産物はフォワードプライマーの場合Ssp I、EcoR V、Pvu IIおよびDra Iライブラリーでならびにリバースプライマーの場合Ssp I、Hinc II、Pvu IIおよびDra Iライブラリーで得られた。第2ラウンドのDra Iフォワード反応産物(1.2 Kb)およびHinc IIリバース反応産物(1.3 Kb)を上述のようにゲル精製し、クローニングし、およびインサートサイズをスクリーニングした。所望のインサートサイズを有する複数クローンのプラスミドDNAをM13RおよびM13Fプライマーで配列決定した。この配列をオリジナルの遺伝子断片の配列と並べて、C.スティクランジィ由来リジン2,3-アミノムターゼホモログの完全な配列を確定した。その後、遺伝子全体をゲノムDNAからのPCR増幅を利用してベクターに再クローニングした。C.スティクランジィ由来kam遺伝子(SEQ ID NO:32、およびSEQ ID NO:33に示されるその対応するタンパク質配列)などの新規遺伝子を突然変異誘発のための開始の鋳型として利用して、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を得ることができる。
SEQ ID NO:32に示されるC.スティクランジィ由来kam遺伝子は、大腸菌での発現のため部分的にコドン最適化された。稀有なアルギニンコドンは実施例2に記述されるように、増幅反応の間にいっそう好ましいコドンを含んだプライマーの取込みによりいっそう好ましいアルギニンコドンと置き換えられた。2ラウンドのプライマー取込みの後、PCR産物をpPRO-Ndeベクターにクローニングした。配列決定により、最良のクローンは8個の稀有なアルギニンコドンを、野生型遺伝子中の22個に比べて、有することが明らかになった。部分的に最適化されたC.スティクランジィ由来kam遺伝子(Csco)は、SEQ ID NO:34に示されている(未改変のタンパク質配列はSEQ ID NO:35に示されている)。
実施例5
クロストリジウム・スティクランジィ由来リジン2,3-アミノムターゼ(kam遺伝子)のインビトロ突然変異誘発
本実施例は、実施例4で作出された部分的に最適化されたC.スティクランジィ由来kam遺伝子(SEQ ID NO:34)を突然変異誘発させて、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する突然変異体を同定するのに使われた方法について記述する。
枯草菌、P.ジンジバリス、またはF.ヌクレアタム由来アラニン2,3-アミノムターゼで以前に得られた4つの突然変異(例えば、SEQ ID NO:1〜6および18〜21ならびに国際公開公報第03/062173号を参照のこと)を定方向突然変異誘発によりC.スティクランジィ由来Csco遺伝子(SEQ ID NO:35)に移入した。これらの突然変異の中にはE28K、L93M、M126V、およびD329H置換があった。突然変異はStratagene QuikChange (登録商標) Multi Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いて作製された。これらの突然変異を作製するために使われたプライマーは
Figure 2008507970
であった。
Csco遺伝子(SEQ ID NO:41)中の4つ全ての定方向突然変異を有する4クローンについての実施例2に記述される液体中増殖試験により、低レベルのアラニン2,3-アミノムターゼ活性が実証された。増殖試験培養物を継代培養した後に、Cscodm菌株がCsco親菌株よりもおよそ3倍高い増殖を示したことから、弱いレベルのアラニンアミノムターゼ活性が示唆された。
インビトロでCscodm遺伝子(SEQ ID NO:40)にさらなる突然変異を導入するため、94℃2分間の初回変性; 94℃30秒間、55℃45秒間、および72℃2.25分間を30サイクル; ならびに72℃7分間の最終伸長からなるPCRプログラムを除き、エラーを起こしやすいPCR法を実施例2で上述されているように利用した。
PCRの後、PCR産物を制限酵素NotIおよびNdeIで消化した。各処理由来の等量のDNAをベクターpPRO-Ndeにライゲーションし、大腸菌Electromax (商標) DH10B (商標)細胞に形質転換した。複数の形質転換体をLBK25培地で平板培養して、およそ54,000個のコロニーを得た。コロニーをプレートからこすり取り、Qiagen MiniSpin Plasmid手順を用いてプラスミドDNAを調製した。選択宿主への形質転換の前にプラスミドDNAを酢酸アンモニウムとエタノールにより沈殿させて、その濃度を増加させた。
実施例6
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するクローンの同定
本実施例は、アラニン2,3アミノムターゼ活性を有する変異リジン2,3アミノムターゼクローンを同定するのに使われた方法について記述する。
上記の実施例5で作出された突然変異誘発Cscodmプラスミドライブラリーを大腸菌BW25113のΔpanD/ΔgabT/ΔyeiA菌株のエレクトロコンピテント細胞に形質転換した。gabTおよびyeiA突然変異は、細胞経路によるβ-アラニンの形成またはプロセッシングを排除するために作製された。形質転換体をSOC培地中で1時間回復させ、遠心分離し、0.85% NaClで洗浄し、NaCl 1 mLに再懸濁した。回復株の半分を用いて、0.4%グルコース、100 μM IPTG、20 μMクエン酸酸化鉄、2 mg/mL α-L-アラニン、微量元素、および25 μg/mLカナマイシンを補充したM9最少培地(Sigma, St. Louis, MO) 25 mLに植菌した。
3日後、増殖培養物をLBK培地に画線した。個々のコロニーをLBKとM9最少培地の両方に継ぎ当てた。M9培地で優れた嫌気性増殖を示したコロニーを2 mL試験管中のM9最少培地(上記の) 1.6 mLにより液体中増殖試験で試験した。再懸濁されたコロニーを用いて、パントテナートあり(25 μM)およびなし両方の培地に植菌した。パントテナート対照がOD600およそ0.6に到達した時点で培養物のODを測定した。表1に示されるように、3つのクローンはパントテナートありでの増殖に対しパントテナートなしでの増殖の比率が高かった。これらの3つのクローンのプラスミドDNAを配列決定し、ΔpanD大腸菌株を再形質転換するのに用いた。増殖試験を再形質転換菌株で繰り返して、増殖優位性が宿主の影響によるよりもむしろプラスミドにより与えられることを確実にした。
(表1) C.スティクランジィ由来アラニン2,3-アミノムターゼ遺伝子の存在下での増殖
Figure 2008507970
アラニン2,3-アミノムターゼをコードする、3つの突然変異体のC.スティクランジィ由来kam遺伝子配列はSEQ ID NO:42、44、および45に示されており、対応するアミノ酸配列はSEQ ID NO:43、45、および47に示されている。4つの定方向突然変異(SEQ ID NO:41に存在する)のほかに、C.スティクランジィ由来kam遺伝子配列に比べて、1〜4つのアミノ酸変化が変異配列で認められた(図5)。これらの突然変異にはS9T、V30A、C50R、L51H、E69G、Q123L、Q139R、およびK185Rが含まれる。しかしながら、これらの突然変異の全てがアラニン2,3-アミノムターゼ活性を実現するのに必要ではないかもしれない。
実施例7
ポルフィロモナス・ジンジバリス由来アラニン2,3-アミノムターゼのインビトロ突然変異誘発
突然変異誘発PCRは、PCRプログラムが94℃2分間の初回変性; 94℃30秒間、55℃1分間、および72℃2.25分間を30サイクル; ならびに72℃7分間の最終伸長からなったことを除き、実施例2に記述される方法を利用して既報(国際公開公報第03/062173号)のP.ジンジバリス由来アラニン2,3-アミノムターゼ(対応するタンパク質配列がSEQ ID NO:6に示されているSEQ ID NO:5)に対し行われた。
PCRの後、PCR産物を制限酵素Not IおよびNde Iで消化した。各処理由来の等量のDNAをベクターpPRO-Ndeにライゲーションし、大腸菌Electromax (商標) DH10B (商標)細胞に形質転換した。プラスミドDNAを単一コロニーから単離し、突然変異率の推定値を得るために配列決定した。平均突然変異率は0.3%であった。複数の形質転換体をLBK25培地で平板培養して、およそ80,000個のコロニーを得た。コロニーをプレートからこすり取り、Qiagen MiniSpin Plasmid手順を用いてプラスミドDNAを調製した。選択宿主への形質転換の前にプラスミドDNAを酢酸アンモニウムとエタノールにより沈殿させて、その濃度を増加させた。
実施例8
改良アラニン2,3-アミノムターゼを有するクローンの選択および同定
上記の実施例7で作出された突然変異誘発Pgaamプラスミドライブラリーを大腸菌BW25113のΔpanD菌株のエレクトロコンピテント細胞に形質転換した。形質転換体をSOC培地中で1時間回復させ、遠心分離し、0.85% NaClで洗浄し、NaCl 1 mLに再懸濁した。10 μLを用いて、1.8 mLガラス試験管中の0.4%グルコース、100 μM IPTG、50 μM Fe(NH4)2(SO4)2、2 mg/mL α-L-アラニン、微量元素、および25 μg/mLカナマイシンを補充したM9最少培地(Sigma, St. Louis, MO) 1.33 mLに植菌した。3日後、増殖培養物100 μLを用いて同じ培地の新しい試験管に植菌した。終夜増殖の後、培養物をM9最少培地に画線し、嫌気性チャンバの中に入れた。増殖した6つのコロニーをLBKに継ぎ当て、2 mL試験管中のM9最少培地(上記の) 1.4 mLにより液体中増殖試験で試験した。再懸濁されたコロニーを用いて、パントテナートあり(25 μM)およびなし両方の培地に植菌した。パントテナート対照がOD600およそ0.7に到達した時点で培養物のODを測定した。パントテナートありでの増殖に対しパントテナートなしでの増殖の比率が高かったクローンを同定した。
表2に示されるように、Pgaam2クローンはパントテナートありでの増殖に対しパントテナートなしでの増殖の比率が高かった。このクローンのプラスミドDNAを配列決定し、ΔpanD大腸菌株を再形質転換するのに用いた。増殖試験を再形質転換菌株で繰り返して、増殖優位性が宿主の影響によるよりもむしろプラスミドにより与えられることを確実にした(表3、「再形質転換」)。
(表2) P.ジンジバリス由来の野生型および変異リジン2,3-アミノムターゼの存在下での増殖
Figure 2008507970
アミノ酸置換E30KおよびI192VがP.ジンジバリス由来改良アラニンアミノムターゼ(Pgaam2, SEQ ID NO:49)に存在する。このDNA配列はSEQ ID NO:48に示されている。
Pgaam2 (SEQ ID NO:49)のアラニン2,3-アミノムターゼ活性を増大させるため、いくつかの負電荷アミノ酸を突然変異誘発させた。負電荷アミノ酸は正電荷の天然基質リジンと相互作用する可能性があるので、一部のまたは全ての負電荷の除去により、基質としてアラニンを用いる活性を高めることができよう。これはアラニンがいっそう小さく、荷電されていないからである。定方向突然変異誘発は以下の変更を加えてStratagene QuikChange (登録商標) Multi Site-Directed Mutagenesis Kitを用いて行われた: 50 μL反応液を作製し、Dpn I処理の後にNH4OAcとエタノールで沈殿させた。水10 μLに再懸濁後、2.5 μLをΔpanD大腸菌株に形質転換した。形質転換回復株の3分の1を用いて、14 mL試験管中のM9最少培地8 mLに植菌した。培地に0.4%グルコース、100 μM IPTG、100 mM MOPS pH7.0、50 μMクエン酸酸化鉄、1 mg/mL α-L-アラニン、微量元素、および25 μg/mLカナマイシンを補充した。5日の増殖後、平板培養をM9最少培地で行って、個々のコロニーを得た。個々のコロニーをLBK25培地に継ぎ当て、2 mL試験管中のM9最少培地(上記、1 mg/mL α-L-アラニン) 1.4 mLにより液体中増殖試験で試験した。再懸濁されたコロニーを用いて、パントテナートあり(25 μM)およびなし両方の培地に植菌した。パントテナート対照がOD600およそ0.7に到達した時点で培養物のODを測定した。陽性コロニー由来のプラスミドDNA (Pgaam2 L26I)をΔpanD菌株に再形質転換し、再形質転換菌株を液体中増殖試験で再試験した(表3)。
(表3) P.ジンジバリス由来アラニン2,3-アミノムターゼ遺伝子の存在下での増殖
Figure 2008507970
配列結果から、突然変異が突然変異プライマーの一方の3'末端のすぐ下流のヌクレオチドの位置であることが示された。従って、その変異は増幅エラーまたはプライマー合成でのエラーによって引き起こされた可能性がある。P.ジンジバリス由来改良アラニンアミノムターゼ(Pgaam2 L26I)のDNA配列はSEQ ID NO:50に示されており、対応するアミノ酸配列はSEQ ID NO:51に示されている。
実施例9
アラニン2,3-アミノムターゼ活性のインビトロアッセイ
本実施例は、SEQ ID NO:49に対するアラニン2,3-アミノムターゼ活性を測定するために使われた方法について記述する。類似の方法を利用してSEQ ID NO:19、21、43、45、47、または51、およびアラニン2,3-アミノムターゼ活性を保持するその変異体、断片、または融合体などの、本明細書に開示される任意のアラニン2,3-アミノムターゼタンパク質に対するアラニン2,3-アミノムターゼ活性を測定できることを当業者は認識するであろう。
製造業者によって記述された手順を利用し、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有するタンパク質をpASK-IBA3ベクター(IBA, St. Louis, MO)を用いてC末端strepタグとともに大腸菌BL21 (DE3)で発現させた。strepタグアミノムターゼのクローンを保有する細胞を100 μg/mLアンピシリンおよび40 μg/mLクエン酸第二鉄アンモニウム入りのTerrific Brothの中で増殖し、0.2 μg/mLアンヒドロテトラサイクリンを用いOD600 = 1〜2で発現を誘導した。インキュベーション温度を25℃にまで低下させて、終夜増殖の後に細胞を遠心分離により収集した。
細胞ペレットを細胞ペースト1 g当たり緩衝液2 mLの比率で緩衝液(50 mM HEPPS pH 8、25 μMピリドキサルリン酸、0.1 mM α-L-アラニン)に再懸濁し、細胞懸濁液を9〜15 Wで2×1.5分超音波処理した。ホモジナイズされた細胞懸濁液を遠心分離し、可溶性の無細胞抽出液(CFE)を注意深くデカントし貯蔵した。
アッセイの中にリジンに代えてα-L-アラニンが含まれたことを除き、アラニン2,3-アミノムターゼ活性をリジン2,3-アミノムターゼについてChenら(Biochem. J. 348:539-549, 2000)が報告している手順に基づいてアッセイした。CFE 0.1 mLを還元性のインキュベーション緩衝液(H2O 4.6 mL、1 M HEPPS pH 8 0.25 mL、100 mM Fe(NH4)2(SO4)2 0.05 mL、50 mMピリドキサルリン酸0.05 mL、100 mMジチオスレイトール0.05 mL; 全ての溶液は嫌気的に調製された) 0.4 mLを用いた処理によって予め還元し、プレインキュベーションを37℃で4時間進行させた。嫌気的に調製された以下の成分を、順番に、プレインキュベートされた酵素に加えた: H2O 0.21 mL、1 M HEPPS pH 8 0.05 mL、5〜10 mM S-アデノシルメチオニン0.02 mL、100 mM亜ジチオン酸Na 0.02 mL、500 mM α-L-アラニン0.2 mL。等量の90%ギ酸と混合することにより反応をさまざまな時点でクエンチし、β-アラニンの形成をInteraction Chromatography AA511カラムを利用したHPLCおよびO-フタルアルデヒドによるポストカラム誘導体化によりモニターした。Pickering Laboratories緩衝液Na 328およびNa 740を用いてクロマトグラムを展開し、流量0.5 ml/分、60℃のカラム温度で稼動し、反応のクロマトグラムを定量化のため標準的な量のβ-アラニンのものと比較した。
このアッセイを利用し、Pgaam2アラニン2,3-アミノムターゼ(SEQ ID NO:49)の特異活性が0.03±0.01単位/mgタンパク質(1単位 = 1分当たりの1 μmol β-アラニンの産生)であることが測定された。
実施例10
大腸菌ΔpanD::CAT菌株の構築
アラニン2,3-アミノムターゼ反応を遂行できるポリペプチドをコードする遺伝子を同定するため、所望の活性に対する効率的なスクリーニングまたは選択が必要とされる。それ故、大腸菌がコエンザイムA (CoA)の成分およびアシルキャリアタンパ質(ACP)の成分であるパントテン酸の合成のためにβ-アラニンを利用することが分かったことで、選択方法が開発された。CoAおよびACPは生物において主なアシル基キャリアであり、増殖に必要不可欠である。大腸菌では、β-アラニンへの主要なルートは、panD遺伝子によりコードされるアスパルテートデカルボキシラーゼ(酵素番号4.1.1.11)によって触媒される反応におけるアスパルテートによるものである(図3)。panDの機能的欠失突然変異体はβ-アラニン栄養要求性および増殖阻害を引き起こし、これは外部からのパントテナートもしくはβ-アラニンの添加により、または別の供給源からのβ-アラニンの産生により軽減されることができる。
どちらもβ-アラニン合成が不十分な大腸菌2菌株をスクリーニングに用いた。菌株DV1 (#6865, E. coli Genetic Stock Center, New Haven CT; Vallari and Rock, J. Bacteriol. 164:136-42, 1985)は、化学的突然変異誘発により作製された大腸菌突然変異体であり、これはpanFおよびpanD両遺伝子の宿主(染色体)突然変異を有しており、これが両遺伝子を非機能的にしている。panF遺伝子は培地からのパントテナートの取込みをコードし、すなわちpanDおよびpanFの組合せは、増殖にとっていっそうストリンジェントなβ-アラニン要求性をもたらす。それ故、DV1菌株は知られていたが、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞を選択するためのその用途は以前には知られていなかった。
その他の選択菌株BW25113 ΔpanD::CATは、外因性β-アラニンなしで増殖することができると思われるpanD突然変異の復帰突然変異体を防ぐため、panD遺伝子座の欠失を含む。CAT遺伝子により与えられるクロラムフェニコール耐性マーカーのpanD遺伝子座への挿入を有するこの菌株は、E. Coli Genetic Stock Centerの大腸菌株BW25113/pKD46およびBW 25141/pKD3を用い、DatsenkoおよびWanner (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 6640-5, 2000)の遺伝子不活性化法によって構築された。
pKD3のCAT遺伝子はプライマー
Figure 2008507970
を用いて増幅された。PCR反応液には最終容量300 μlの中に10×濃縮PCR緩衝液(Roche Molecular Biochemicals) 30 μl、プラスミドpKD3、0.2 mM各dNTP、0.2 μM各プライマー、およびTaqポリメラーゼ(Roche Molecular Biochemicals) 15単位が含まれた。PCR反応液を95℃30秒間、引き続いて95℃30秒間、45℃30秒間、72℃1分間を30サイクル、その後72℃10分間でインキュベートした。PCR産物をエタノールで沈殿し、DpnIで消化し、QIAquick PCR Purification Kit (Qiagen)により精製し、組換え機能を発現するBW25113/pKD46に形質添加した。形質転換体を25 μg/mlクロラムフェニコールおよび5 μM β-アラニン含有LBプレートで平板培養した。
クロラムフェニコール耐性形質転換体を43℃にて5 μM β-アラニン入りの非選択LB培地で単一コロニー精製し、単一コロニーをクロラムフェニコール耐性の保有、アンピシリン耐性の喪失(pKD46の除去を示唆する)、およびM9グルコース最少培地での増殖に対するβ-アラニン要求性について試験した。CAT遺伝子のpanD遺伝子座への正しい挿入の確認は、得られたΔpanD::CAT菌株のコロニーPCRにより、挿入遺伝子座に隣接するプライマー
Figure 2008507970
を用いて行われた。野生型panD遺伝子座では713塩基対のPCR産物を生じると予想されるが、ΔpanD::CAT構築体では1215塩基対の産物が生じた。挿入されたCAT遺伝子がプラスミドpCP20によりコードされるFLPリコンビナーゼの活性により除去される、ΔpanD::CAT菌株の派生体は、以前に報告されている(Datsenko and Wanner, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 6640-5, 2000)ように構築された。この菌株はΔpanDと呼ばれる。
ウラシル異化の還元経路に基づく、β-アラニンへの二次ルートが大腸菌には存在している(West, Can. J. Microbiol. 44: 1106-9, 1998, 図2)。この経路では、ウラシルは酵素ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(酵素番号1.3.1.2)によりジヒドロウラシルに還元される。その後、ジヒドロウラシルはジヒドロピリミジナーゼ(酵素番号3.5.2.2)によりN-カルバモイル-β-アラニンに変換され、これが今度はN-カルバモイル-β-アラニンアミドヒドロラーゼ(酵素番号3.5.1.6)によりβ-アラニン、CO2、およびNH3に加水分解される。この経路によるβ-アラニンの形成を防ぐため、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子yeiA (GenBankアクセッション番号AAC75208)を上述のようにDatsenkoおよびWannerの方法により挿入的に欠失させた。pKD3のCAT遺伝子はプライマー
Figure 2008507970
を用いて増幅された。
クロラムフェニコール耐性の挿入突然変異体を上述のように単離し、耐性マーカーをΔpanD菌株に形質導入して、二重突然変異体ΔpanD/ΔyeiA::CATを作出した。上記の実施例で記述されているように、大腸菌BW 25115 ΔpanD::CAT、ΔpanD、またはΔpanD/ΔyeiA::CATのエレクトロコンピテント細胞を作出し、変異体リジン2,3-アミノムターゼDNAライブラリーの形質転換に向けた宿主として用いた。
実施例11
突然変異誘発リジン2,3-アミノムターゼを利用しないアラニン2,3-アミノムターゼ活性の選択
アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞の同定のための別法は、実施例10に記述されるDV1またはΔpanD::CAT細胞などの細胞を、それらに突然変異誘発リジン2,3-アミノムターゼライブラリーを形質移入せずに、上述の培地で平板培養することである。そのような細胞は上述のように選択され、実施例3、5、6、8および9に記述されるようにアラニン2,3-アミノムターゼ活性の存在について検証される。
細胞は平板培養の前に、例えば、細胞をUV照射または化学物質(EMSなど)に曝露することで突然変異誘発させることができる。これにより、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する細胞をもたらす、1つまたは複数の他の遺伝子中の突然変異を有する突然変異体の単離が可能になる。
または、細胞は平板培養の前に(形質転換されない、突然変異誘発されないなど)不変とすることができる。この方法により、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を有する天然に存在する菌株の単離が可能になる。
実施例12
β-アラニンからのパントテナートの産生
パントテナートは、α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(酵素番号2.1.2.11)、α-ケトパントイン酸レダクターゼ(酵素番号1.1.1.169)、およびパントテナートシンターゼ(酵素番号6.3.2.1)活性を有するポリペプチドにより、β-アラニンから産生することができる(図3)。
本明細書に記述されるクローニング法を用いて、α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(酵素番号2.1.2.11)、α-ケトパントイン酸レダクターゼ(酵素番号1.1.1.169)、およびパントテナートシンターゼ(酵素番号6.3.2.1)のポリペプチドを単離し、配列決定し、発現させ、試験することができる。類似の方法を利用して、任意の生物から任意のそのようなポリペプチドの配列を得られることを当業者は理解するであろう。
実施例13
組換え発現
公的に利用可能な酵素のcDNAおよびアミノ酸配列、ならびに本明細書に開示されるアラニン2,3-アミノムターゼのほか、その変異体、断片および融合体を用いて、標準的な実験手技により、アラニン2,3-アミノムターゼなどの任意のタンパク質の発現および精製が可能とされる。酵素およびその断片を関心対象の任意の細胞または生物で組換え的に産生することができ、使用の前に、例えば3-HP、パントテナートおよびその誘導体の産生の前に精製できることを当業者は理解するであろう。
組換えタンパク質を産生するための方法は、当技術分野において周知である。従って、本開示の範囲には、アラニン2,3-アミノムターゼなどの、任意のタンパク質またはその断片の組換え発現が含まれる。例えば、Johnsonらの米国特許第5,342,764号; Pauschらの米国特許第5,846,819号; Fleerらの米国特許第5,876,969号およびSambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989, Ch. 17)を参照されたい。
簡単に言えば、タンパク質をコードする、一部の、完全長の、または変異体のcDNA配列を細菌性発現ベクターなどの、発現ベクターにライゲーションすることができる。タンパク質はcDNA配列の上流のプロモーターを配置することで産生させることができる。プロモーターの例としては、lac、trp、tac、trc、ラムダファージの主なオペレーターおよびプロモーター領域、fd外被タンパク質の制御領域、SV40の初期および後期プロモーター、ポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルス、バキュロウイルスおよびシミアンウイルス由来のプロモーター、3-ホスホグリセリン酸キナーゼに対するプロモーター、酵母酸性ホスファターゼのプロモーター、酵母α-接合因子のプロモーターならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されることはない。
無傷の天然タンパク質の産生に適したベクターは、pKC30 (Shimatake and Rosenberg, 1981, Nature 292:128)、pKK177-3 (Amann and Brosius, 1985, Gene 40:183)およびpET-3 (Studier and Moffatt, 1986, J. Mol. Biol. 189:113)を含む。DNA配列をその他のプラスミド、バクテリオファージ、コスミド、動物性ウイルスおよび酵母人工染色体(YAC) (Burke et al., 1987, Science 236:806-12)などの、その他のクローニング媒体に移入することができる。これらのベクターを体細胞、ならびに異種cDNAの導入によってトランスジェニックにされる細菌、真菌(Timberlake and Marshall, 1989, Science 244:1313-7)、無脊椎動物、植物(Gasser and Fraley, 1989, Science 244:1293)、および哺乳動物(Pursel et al., 1989, Science 244:1281-8)などの、単純生物または複合生物を含むさまざまな宿主に導入することができる。
哺乳動物細胞での発現の場合、cDNA配列をシミアンウイルスSV40などの異種プロモーター、pSV2ベクター中のプロモーター(Mulligan and Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072-6)にライゲーションし、サルCOS-1細胞(Gluzman, 1981, Cell 23:175-82)などの細胞に導入して、一過性のまたは持続性の発現を達成することができる。キメラ遺伝子構築体の安定的な組込みは、ネオマイシン(Southern and Berg, 1982, J . Mol. Appl. Genet. 1:327-41)およびマイコフェノール酸(Mulligan and Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072-6)などの、生化学的選択により哺乳動物細胞中で維持されてもよい。
ヒトまたはその他の哺乳動物細胞などの、真核細胞へのDNAの移入は、従来の技術である。ベクターは、例えば、リン酸カルシウムを用いた沈殿法(Graham and vander Eb, 1973, Virology 52:466)、リン酸ストロンチウムを用いた沈殿法(Brash et al., 1987, Mol. Cell Biol. 7:2013)、エレクトロポレーション法(Neumann et al., 1982, EMBO J. 1:841)、リポフェクション法(Felgner et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci USA 84:7413)、DEAEデキストラン法(McCuthan et al., 1968, J. Natl. Cancer Inst. 41:351)、マイクロインジェクション法(Mueller et al., 1978, Cell 15:579)、プロトプラスト融合法(Schafner, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2163-7)、または空気銃法(Klein et al., 1987, Nature 327:70)により、純粋なDNAとして受容細胞に導入(形質移入)される。または、cDNAをウイルスベクター、例えば、アデノウイルス(Ahmad et al., 1986, J. Virol. 57:267)などのレトロウイルス(Bernstein et al., 1985, Gen. Engrg. 7:235)またはヘルペス(Spaete et al., 1982, Cell 30:295)を用いた感染により導入することができる。
実施例14
ペプチド合成および精製
本明細書に開示される酵素、例えば、アラニン2,3-アミノムターゼならびにその変異体、融合体、および断片は、当技術分野において公知のいくつかの手動のまたは自動の合成方法のいずれかにより化学的に合成することができる。例えば、固相ペプチド合成(SPPS)はApplied Biosystems Model 431A Peptide Synthesizerを利用し、および9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)アミノ末端保護、ジシクロヘキシルカルボジイミド/ヒドロキシベンゾトリアゾールまたは2-(1H-ベンゾ-トリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート/ヒドロキシベンゾトリアゾール(HBTU/HOBT)を用いたカップリングを利用し、およびカルボキシル末端が酸の場合にはp-ヒドロキシメチルフェノキシメチルポリスチレン(HMP)もしくはSasrin樹脂またはカルボキシル末端がアミドの場合にはRinkアミド樹脂を利用して0.25ミリモル(mmole)スケールで行われる。
Fmoc-誘導アミノ酸はAthertonら(Solid Phase Peptide Synthesis, IRL Press: Oxford, 1989)により報告されているように、適切な前駆アミノ酸から、トリチル化およびトリフルオロ酢酸中のトリフェニルメタノール処理の後、Fmoc誘導体化により調製される。
Sasrin樹脂に結合したペプチドは1% TFAのジクロロメタン溶液を用い切断して、保護ペプチドを得る。必要に応じて、保護ペプチド前駆体は、アミノ酸側鎖が保護された新生ペプチドにおけるジフェニルホスホリルアジドを用いたアミノ末端遊離アミンとカルボキシル末端遊離酸の反応により、アミノ末端とカルボキシル末端との間で環化される。
HMPまたはRinkアミド樹脂に結合した生成物は、室温で0.5〜3時間、トリフルオロ酢酸(TFA)からなる溶液、選択的にまた水、チオアニソール、およびエタンジチオールを100 対 5 対 5 対 2.5の比率で含む溶液を用いて通常切断され、保護側鎖を含む環化ペプチドは脱保護される。
未精製のペプチドは、例えば、Waters Delta-Pak C18カラムおよびアセトニトリルを変化させた0.1% TFA水溶液による勾配溶出を利用して、分取高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製される。カラム溶出の後、アセトニトリルを溶出分画から蒸発させ、次にこれを凍結乾燥する。そのように生成され精製された各生成物の同一性は高速原子衝撃質量分析法(FABMS)またはエレクトロスプレイ質量分析法(ESMS)により確認することができる。
本発明者らの開示の原理を適用できると考えられる多くの態様を考慮すれば、説明されている態様は、開示の特定の例に過ぎないと見なされるべきであり、開示の範囲に関する限定と見なされるべきではない。むしろ、開示の範囲は、特許請求の範囲と一致する。従って、本発明者らは、これらの特許請求の範囲および趣旨に入るものは全て本発明者らの発明として主張するものである。
配列表
添付の配列表に記載の核酸およびアミノ酸配列は、標準的な、ヌクレオチド塩基に対する文字記号、およびアミノ酸に対する3文字表記により示されている。各核酸配列の片側鎖しか示されていないが、その相補鎖は、表示鎖を参照することにより包含されるものとして理解される。
(SEQ ID NO:1)枯草菌由来アラニン2,3-アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:2)SEQ ID NO:1によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:3)枯草菌由来アラニン2,3-アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:4)SEQ ID NO:3によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:5)P.ジンジバリス由来アラニン2,3-アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:6)SEQ ID NO:5によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:7および8)F.ヌクレアタム由来リジン2,3-アミノムターゼをクローニングするために使われた核酸PCRプライマーである。
(SEQ ID NO:9)F.ヌクレアタム由来リジン2,3-アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:10)SEQ ID NO:9によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:11)部分的にコドン最適化されたF.ヌクレアタム由来リジン2,3-アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:12)SEQ ID NO:11によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:13)部分的にコドン最適化されたF.ヌクレアタム由来変異リジン2,3-アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:14)SEQ ID NO:13によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:15〜17)コドン最適化されたF.ヌクレアタム由来リジン2,3-アミノムターゼ核酸配列を突然変異させるために使われた核酸プライマーである。
(SEQ ID NO:18)F.ヌクレアタム由来アラニン2,3アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:19)SEQ ID NO:18によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:20)F.ヌクレアタム由来アラニン2,3アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:21)SEQ ID NO:20によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:22〜27)C.スティクランジィ由来リジン2,3-アミノムターゼ核酸配列をクローニングするために使われた核酸PCRプライマーである。
(SEQ ID NO:28〜31)C.スティクランジィ由来リジン2,3-アミノムターゼ核酸配列をクローニングするためにゲノムウォーキングで使われた核酸プライマーである。
(SEQ ID NO:32)C.スティクランジィ由来リジン2,3-アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:33)SEQ ID NO:32によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:34)部分的にコドン最適化されたC.スティクランジィ由来リジン2,3-アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:35)SEQ ID NO:34によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:36〜39)部分的にコドン最適化されたC.スティクランジィ由来リジン2,3-アミノムターゼ核酸配列を突然変異させるために使われた核酸プライマーである。
(SEQ ID NO:40)コドン最適化されたC.スティクランジィ由来変異リジン2,3-アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:41)SEQ ID NO:40によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:42)C.スティクランジィ由来アラニン2,3アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:43)SEQ ID NO:42によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:44)C.スティクランジィ由来アラニン2,3アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:45)SEQ ID NO:44によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:46)C.スティクランジィ由来アラニン2,3アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:47)SEQ ID NO:46によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:48)P.ジンジバリス由来アラニン2,3-アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:49)SEQ ID NO:48によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:50)P.ジンジバリス由来アラニン2,3-アミノムターゼ核酸配列である。
(SEQ ID NO:51)SEQ ID NO:50によりコードされるタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:52)P.ジンジバリス由来リジン2,3-アミノムターゼタンパク質配列である。
(SEQ ID NO:53および54)pKD3のCAT遺伝子を増幅するために使われたPCRプライマーである。
(SEQ ID NO:55および56)panD遺伝子座へのCAT遺伝子の正しい挿入を確認するために使われたPCRプライマーである。
(SEQ ID NO:57および58)pKD3のCAT遺伝子を増幅するために使われたプライマーの核酸配列である。
(SEQ ID NO:59)枯草菌由来リジン2,3-アミノムターゼタンパク質配列である。
β-アラニン中間体を経由して3-HPおよびその誘導体を作出するための、およびα-アラニンからβ-アラニンを作製するための経路図である。 β-アラニンが産生され消費される公知の代謝ルート図である。 アスパルテートデカルボキシラーゼ(panD)を介してまたはアラニン2,3-アミノムターゼを介してβ-アラニンからコエンザイムAおよびパントテナートを作出するための別経路を示す図である。 F.ヌクレアタム由来リジン2,3-アミノムターゼタンパク質配列(Fnkam; SEQ ID NO:10)およびアラニン2,3アミノムターゼ活性を有するタンパク質をもたらす2つの変異体配列(Fnaam, SEQ ID NO:19; およびFnaam2, SEQ ID NO:21)を示すアライメントである。リジン2,3-アミノムターゼタンパク質配列中の置換が太字で示されている。 C.スティクランジィ由来リジン2,3-アミノムターゼタンパク質配列(Cskam; SEQ ID NO:33)、E28K、L93M、M126V、およびD329H置換を有するC.スティクランジィ由来リジン2,3-アミノムターゼタンパク質配列(Cscodm; SEQ ID NO:41)、ならびにアラニン2,3アミノムターゼ活性を有するタンパク質をもたらす3つの変異体配列(Cscodm mut8, SEQ ID NO:43; Cscodm mut12, SEQ ID NO:45; およびCscodm mut15, SEQ ID NO:47)を示すアライメントである。リジン2,3-アミノムターゼタンパク質配列中の置換が太字で示されている。 P.ジンジバリス由来リジン2,3-アミノムターゼタンパク質配列(Pgkam; SEQ ID NO:52)、およびアラニン2,3アミノムターゼ活性を有するタンパク質をもたらす3つの変異体配列(Pgaam SEQ ID NO:6; Pgaam2, SEQ ID NO:49; およびPgaam2 L26I, SEQ ID NO:51)を示すアライメントである。リジン2,3-アミノムターゼタンパク質配列中の置換が太字で示されている。 A〜Dは、リジン2,3-アミノムターゼ(P.ジンジバリス由来(Pgkam, SEQ ID NO:52); F.ヌクレアタム由来(Fnkam; SEQ ID NO:10); C.スティクランジィ由来(Cskam; SEQ ID NO:33)および枯草菌由来(Bskam; SEQ ID NO:59))およびアラニン2,3-アミノムターゼ(P.ジンジバリス由来(Pgaam SEQ ID NO:6; Pgaam2, SEQ ID NO:49; およびPgaam2 L26I, SEQ ID NO:51); F.ヌクレアタム由来(Fnaam, SEQ ID NO:19; およびFnaam2, SEQ ID NO:21); C.スティクランジィ由来(Cscodm mut8, SEQ ID NO:43; Cscodm mut12, SEQ ID NO:45; およびCscodm mut15, SEQ ID NO:47)および枯草菌由来(Bsaam, SEQ ID NO:2およびBsaam2co, SEQ ID NO:4))ならびにF.ヌクレアタム由来の中間体配列(Fncodm, SEQ ID NO:14)およびC.スティクランジィ由来の中間体配列(Cscodm, SEQ ID NO:41)のアライメントである。太字の残基は、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を保有するリジン2,3-アミノムターゼの変異体中の突然変異を表す。

Claims (73)

  1. アラニン2,3-アミノムターゼ活性を含む単離ポリペプチドであって、ポリペプチドが、P/S11T; N19Y; L/K/R/T26I; E/R30K; L/V32A; K36E; S/T/C52R; L/T53P/H; Y63F; E/N/D71G; H/I/S85Q; Q/L/E86R; Q/L95M; K/M/Q125L; M128V; Y132H; Q/S141R; A/D/S/M144G; D179N; K/Q187R; I192V; L228M; D331G/H; M/Q342T; もしくはK/Q/T398E置換、またはそれらの組合せを含む変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列を含み、付番がポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)のリジン2,3アミノムターゼに基づく、単離ポリペプチド。
  2. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、枯草菌(Bacillus subtilis)、クロストリジウム・スティクランジィ(Clostridium sticklandii)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、またはポルフィロモナス・ジンジバリスの変異リジン2,3-アミノムターゼである、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  3. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、N19Y、L/T53P/H、H/I/S85Q、D331G/H、およびM/Q342T置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  4. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、N19Y、E/R30K、L/T53P/H、H/I/S85Q、I192V、D331G/H、およびM/Q342T置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  5. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、N19Y、L/K/R/T26I、E/R30K、L/T53P/H、H/I/S85Q、I192V、D331G/H、およびM/Q342T置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  6. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、E/R30K、Y63F、Q/L/E86R、Q/L95M、M128V、A/D/S/M144G、L228M、D331G/H、およびK/Q/T398E置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  7. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、E/R30K、C52R、Q/L95M、M128V、およびD331G/H置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  8. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、E/R30K、K36E、Y63F、Q/L/E86R、Q/L95M、M128V、A/D/S/M144G、D179N、L228M、D331G/H、およびK/Q/T398E置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  9. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、E/R30K、Q/L95M、M128V、およびD331G/H置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  10. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、P/S11T、E/R30K、Q/L95M、M128V、Q/S141R、K/Q187R、およびD331G/H置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  11. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、E/R30K、L/V32A、L/T53P/H、E/N/D71G、Q/L95M、K/M/Q125L、M128V、およびD331G/H置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  12. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、Q/L95M、M128V、およびD331G/H置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  13. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が、Q/L95M、M128V、Y132H、およびD331G/H置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  14. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が少なくとも3個の置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  15. 変異リジン2,3-アミノムターゼアミノ酸配列が3〜11個の置換を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  16. SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、または51と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  17. SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、または51と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  18. SEQ ID NO:19、21、43、45、47、49、または51を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
  19. 1〜10個の保存的アミノ酸置換を含む、請求項17記載のポリペプチド。
  20. 請求項1記載の単離ポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離核酸。
  21. プロモーター配列に機能的に連結された請求項20記載の単離核酸。
  22. SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、または50と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項20記載の単離核酸。
  23. SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、または50と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む、請求項20記載の単離核酸。
  24. 核酸配列が1〜10個の保存的アミノ酸置換をもたらす1つまたは複数の置換を含む、請求項22記載の単離核酸。
  25. SEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、または50を含む、請求項20記載の単離核酸。
  26. 請求項20記載の単離核酸を含むベクター。
  27. 請求項20記載の単離核酸を含む組換え核酸。
  28. 請求項27記載の組換え核酸で形質転換された細胞。
  29. 原核細胞である、請求項28記載の細胞。
  30. 原核細胞がラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、バチルス(Bacillus)、またはエシェリキア(Escherichia)細胞である、請求項29記載の細胞。
  31. 植物細胞、細菌細胞、酵母細胞、または真菌細胞である、請求項28記載の細胞。
  32. 請求項31記載の細胞を含む植物。
  33. 請求項27記載の組換え核酸を含むトランスジェニック植物。
  34. アラニン2,3-アミノムターゼ活性を含み、α-アラニンからβ-アラニンを産生する、請求項28記載の細胞。
  35. 単離核酸配列がSEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、または50と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項28記載の細胞。
  36. 単離核酸配列がSEQ ID NO:18、20、42、44、46、48、または50を含む、請求項28記載の細胞。
  37. 3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)を産生する、請求項28記載の細胞。
  38. 以下の活性をさらに含む、請求項37記載の細胞:
    ピルベート/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性;
    β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性; および
    3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性。
  39. リパーゼまたはエステラーゼ活性をさらに含む、請求項38記載の細胞。
  40. 3-HPのエステルを産生する、請求項39記載の細胞。
  41. 3-HPのエステルが、メチル3-ヒドロキシプロピオナート、エチル3-ヒドロキシプロピオナート、プロピル3-ヒドロキシプロピオナート、ブチル3-ヒドロキシプロピオナート、または2-エチルヘキシル3-ヒドロキシプロピオナートである、請求項40記載の細胞。
  42. ポリヒドロキシ酸シンターゼ活性をさらに含む、請求項38記載の細胞。
  43. 3-HP重合体を産生する、請求項42記載の細胞。
  44. アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するペプチドをコードする核酸分子、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するペプチドをコードする核酸分子、またはその両方をさらに含む、請求項38記載の細胞。
  45. 1,3-プロパンジオールを産生する、請求項44記載の細胞。
  46. 以下の活性をさらに含む、請求項28記載の細胞:
    α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性;
    α-ケトパントイン酸レダクターゼ活性; および
    パントテナートシンターゼ活性。
  47. パントテナートを産生する、請求項46記載の細胞。
  48. 以下の活性をさらに含む、請求項46記載の細胞:
    パントテナートキナーゼ活性;
    4'-ホスホパンテテノイル-1-システインシンテターゼ活性;
    4'-ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ活性;
    ATP:4'-ホスホパンテテインアデニルトランスフェラーゼ活性; および
    デホスホ-CoAキナーゼ活性。
  49. コエンザイムA (CoA)を産生する、請求項48記載の細胞。
  50. 少なくとも1つの外因性核酸分子を含む形質転換細胞であって、少なくとも1つの外因性核酸分子が請求項1記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含む形質転換細胞。
  51. α-アラニンからβ-アラニンを産生する、請求項50記載の形質転換細胞。
  52. 3-HP、1,3-プロパンジオール、パントテナート、CoA、またはそれらの組合せを産生する、請求項51記載の細胞。
  53. 細胞がアラニン2,3-アミノムターゼ活性を含むポリペプチドを産生することを可能にする条件の下で請求項28記載の細胞を培養する段階を含む、アラニン2,3-アミノムターゼ活性を含むポリペプチドを産生する方法。
  54. 細胞がα-アラニンからβ-アラニンを作製することを可能にする条件の下で請求項28記載の細胞を培養する段階を含む、α-アラニンからβ-アラニンを作製するための方法。
  55. 細胞が、α-アラニンからβ-アラニンを産生することができるアラニン2,3-アミノムターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を含む、請求項54記載の方法。
  56. 細胞が原核細胞である、請求項54記載の方法。
  57. 細胞がpanDの機能的欠失を含む、請求項56記載の方法。
  58. 細胞が3-HPを産生する条件の下で請求項38記載の細胞を培養する段階を含む、3-HPを作製するための方法。
  59. 細胞が、3-HPがβ-アラニンから産生されるようにアラニン2,3-アミノムターゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸を含み、アラニン2,3-アミノムターゼがα-アラニンからβ-アラニンを産生する、請求項58記載の方法。
  60. 細胞が3-HPのエステルを産生する条件の下で請求項39記載の細胞を培養する段階を含む、3-HPのエステルを作製するための方法。
  61. 細胞が3-HP重合体を産生する条件の下で請求項42記載の細胞を培養する段階を含む、3-HP重合体を作製するための方法。
  62. 細胞が1,3-プロパンジオールを産生する条件の下で請求項44記載の細胞を培養する段階を含む、1,3-プロパンジオールを作製するための方法。
  63. 細胞がパントテナートを産生する条件の下で請求項46記載の細胞を培養する段階を含む、パントテナートを作製するための方法。
  64. 細胞がCoAを産生する条件の下で請求項48記載の細胞を培養する段階を含む、CoAを作製するための方法。
  65. 以下の段階を含む、3-HPを作製するための方法:
    請求項28記載の細胞からβ-アラニンを精製する段階;
    β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性を含むポリペプチドとβ-アラニンを接触させて、3-オキソプロピオナートを形成させる段階; および
    3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性を含むポリペプチドと3-オキソプロピオナートを接触させて、3-HPを作製する段階。
  66. 以下の段階を含む、3-HPを作製するための方法:
    請求項28記載の細胞に、ピルベート/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、および3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子を形質移入する段階; ならびに
    形質移入された細胞を培養して、形質移入された細胞が3-HPを作製することを可能にする段階。
  67. 以下の段階を含む、3-HPから1,3-プロパンジオールを作製するための方法:
    請求項65記載の方法を用いて3-HPを作製する段階;
    アルコールデヒドロゲナーゼ活性を含むポリペプチドおよびアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を含むポリペプチドと3-HPを接触させて1,3-プロパンジオールを作製する段階。
  68. 以下の段階を含む、1,3-プロパンジオールを作製するための方法:
    請求項28記載の細胞に、ピルベート/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、β-アラニン/2-オキソグルタラートアミノトランスフェラーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、3-ヒドロキシプロピオナートデヒドロゲナーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸、およびアルコールデヒドロゲナーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸を形質移入する段階; ならびに
    形質移入された細胞を培養して、形質移入された細胞が1,3-プロパンジオールを作製することを可能にする段階。
  69. 以下の段階を含む、パントテナートを作製するための方法:
    請求項28記載の細胞からβ-アラニンを精製する段階; ならびに
    α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、α-ケトパントイン酸レダクターゼ、およびパントテナートシンターゼとβ-アラニンを接触させて、パントテナートを作製する段階。
  70. 以下の段階を含む、パントテナートを作製するための方法:
    請求項28記載の細胞に、α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、α-ケトパントイン酸レダクターゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、およびパントテナートシンターゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子を形質移入する段階; ならびに
    形質移入された細胞を培養して、形質移入された細胞がパントテナートを作製することを可能にする段階。
  71. 以下の段階を含む、CoAを作製するための方法:
    請求項28記載の細胞からβ-アラニンを精製する段階; ならびに
    α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、α-ケトパントイン酸レダクターゼ、およびパントテナートシンターゼとβ-アラニンを接触させて、パントテナートを作製する段階; ならびに
    パントテナートキナーゼ、4'-ホスホパンテテノイル-1-システインシンテターゼ、4'-ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ、ATP:4'-ホスホパンテテインアデニルトランスフェラーゼ、およびデホスホ-CoAキナーゼとパントテナートを接触させて、CoAを作製する段階。
  72. 以下の段階を含む、CoAを作製するための方法:
    請求項28記載の細胞に、α-ケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、α-ケトパントイン酸レダクターゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、パントテナートシンターゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、パントテナートキナーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、4'-ホスホパンテテノイル-1-システインシンテターゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、4'-ホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、ATP:4'-ホスホパンテテインアデニルトランスフェラーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子、およびデホスホ-CoAキナーゼ活性を含むポリペプチドをコードする核酸分子を形質移入する段階; ならびに
    形質移入された細胞を培養して、形質移入された細胞がパントテナートを作製することを可能にする段階。
  73. 請求項1記載のポリペプチドに特異的に結合する特異的結合物質。
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