JP2008506666A - アルツハイマー病の予防および治療方法 - Google Patents

アルツハイマー病の予防および治療方法 Download PDF

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Abstract

本発明はアミノ酸配列X(式中、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、Xは存在しないかまたは任意のアミノ酸、Xは存在しないかまたは任意のアミノ酸であって、XはDAEFRHではない。)を含んでなる化合物の、アルツハイマー病ワクチンの作製における使用に関するもので、該化合物は天然のAβ42N末端配列DAEFRHに特異的な抗体と結合する能力があり、さらにその五量体は天然のAβ42N末端配列DAEFRHに特異的な抗体と結合する能力がある。

Description

本発明は、アルツハイマー病の予防および治療方法に関する。
アミロイドβペプチド(Aβ)はアルツハイマー病(AD)の神経病理学上中心的な役割を担っている〔ロアー等(Roher et al.)、1993年、「β-アミロイド(1-42)は、脳血管アミロイド沈着物の主たる成分;アルツハイマー病の病変への影響」PNAS.,90:10836〕。この病気の家族型はアミロイド前駆体タンパク(APP)およびプレセニリン遺伝子における突然変異と関連している。これら遺伝子における病気関連突然変異は、該ペプチド(Aβ42)の42アミノ酸型の産生を増大させるが、これはアルツハイマー病のアミロイド斑中で見られる主たる形態である。この病気の動物モデルは市販品から入手できる。PDAPP遺伝子組み換えマウスでは突然変異したヒトのAPP(717位のアミノ酸がVに代わってFである)が過剰発現されており、アルツハイマー病における神経病理学上の顕著な特徴が年齢および脳に依存しつつ次第に発達してくる〔ゲームズ等(Games et al.) 1995:「V717Fβアミロイド前駆体タンパクを過剰発現した遺伝子組み換えマウスにおけるアルツハイマー型神経病理学」Nature,373:523〕。
ミモトープに依存しない通常のワクチンを用いたワクチン接種の研究がすでになされている。AD型神経病変の発現(6週)前または高齢化の時点(11ヶ月)において遺伝子組み換え動物を凝集Aβ42で免疫した:若い動物の免疫化は斑の形成、神経突起のジストロフィー、星状神経膠症の発達を抑制した。高齢化動物の治療は明らかにAD様神経病変を減少させた。この実験的なワクチン化の研究は血液脳関門を通過してアミロイド斑を攻撃可能なAβ42抗体の発展を導いた〔シェンク等(Schenk et al.) 1999:「βアミロイドによる免疫化はPD-APPマウスにおけるアルツハイマー様病変を減少させる。」Nature 400: 173〕。続いて、該アミロイド斑はFc受容体が関与する食作用を含むいくつかのメカニズムにより除去される〔バード等(Bard et al.)、2000:「末梢的に投与されたアミロイドβペプチドに対する抗体は中枢神経系に入ってアルツハイマー病モデルマウスの病変を減少させる」Nature Med, 6: 916〕。このワクチンはまた記憶不足の進行を妨げる〔ヤヌス等(Janus et al.) 2000:「Aβペプチド免疫化はアルツハイマー病モデルにおいて行動上の障害およびアミロイド斑を減少させる」Nature 408:979〕。
ADに対する非常に有望な免疫療法が1999年遅くから臨床治験されている。正しいメカニズムはより詳細に特徴づけられる必要があるが、免疫化によって免疫系の引き金が引かれ、該免疫系がアミロイド斑を攻撃しこれらの沈着物を感染したヒト脳より一掃するものと推測される。
これら臨床治験は製薬会社エラン(Elan)とそのパートナーであるアメリカンホームプロダクツ(American Home Products)により実施された〔治療用ワクチンAN-1792、アジュバントはQS21〕。第一相試験は2000年成功裡に終了した。軽度から中程度のAD患者被治験者において効果を試験するため、第二相試験が2001年末より開始された。
しかしこの第二相試験は幾人かの患者で神経性炎症が見られたため永久的に中止されている〔論説2002「未解決問題?」Nature Med 8: 191〕。その徴候には無菌性髄膜脳炎が含まれ、全世界での治験は直ちに中止となった。最悪の場合は、感染した患者は多くの免疫療法に内在する危険である、自己免疫応答の開始を示す。自己免疫の混乱はAPPの偏在性を与えると予想され、これはタンパク分解性生物と共通して抗原決定基を当然に有する。最近、凝集Aβ42免疫化誘導抗体(ヒトおよびマウス)についての研究が集中的になされ、多くの抗体がAβ42の4位-10位のアミノ酸(Aβ4-10)の小さな領域を認識していることが明らかになった。マウス抗体はAβ原線維生成を阻止し、先在するAβ線維を分解することができた〔マクローリン等(McLaurin et al.) 2002:「アミロイド-βペプチドに対する治療上有効な抗体は、アミロイド-β残基4-10を標的とし、細胞毒性と原線維生成を阻害する」Nature Med 8: 1263〕。注目すべきことに、ヒト抗体は細胞表面に露出したAPPとは反応せず、また他のいずれの非凝集体(該前駆体の分解生成物)とも反応しない〔ホック等(Hock et al.) 2002:「アルツハイマー患者のワクチン化によるβアミロイド特異的抗体の生成」 Nature Med 8: 1270〕。ヒトおよびマウス血清の間には明らかな違いが観察される;ヒト抗体とは対照的にマウス抗体は単量体、オリゴマーおよび線維化Aβを検出できる。これは非常に重要であって、治療効力のための必須要件と考えられ、ヒト抗Aβでは認識できない小さなAβオリゴマーがこの疾患における主たる毒性発現体であるとの証拠が蓄積されている〔ウォルシュ等(Walsh et al.) 2002:「自然に分泌されるアミロイドβタンパクのオリゴマーはin vivoで海馬における長期増強現象(LTP)を強力に阻害する」Nature 416: 535〕。こうして、β-アミロイドアミノ酸4-10(Aβ42凝集体に代わり)を含むワクチンによる免疫化が可能性のある新しい戦略となった。効力が未知にもかかわらず、患者は(リニアーB細胞)「自己」エピトープで直接的に免疫されるので、この戦略はまた自己免疫の問題に直面するかもしれない、
最近のADワクチン化戦略のこれら失望的な発展にもかかわらず、Aβワクチンは依然としてADとの戦いにおいて最も有望な方法と見なされている。しかし、ADワクチン化には改良と新しい戦略が急ぎ必要である。特に自己反応性T細胞/B細胞を誘導しないようなワクチンが必要である。抗体との結合能力があり、天然のN末端Aβ42配列DAEFRHに特異的であるミモトープペプチド、および当該抗体に結合能力があり天然のN末端Aβ42配列DAEFRHに特異的である5量体でアルツハイマー病のワクチン製造用のものがPCT/EP04/00162に記載されている(参考のために援用する)。その出願における好ましいミモトープは以下のアミノ酸配列を含み、
Figure 2008506666
(式中、XはGであり、またはヒドロキシ基若しくは負電荷を有するアミノ酸であって、好ましくはE、Y、S、またはDであり;
は疎水性アミノ酸または正電荷を有するアミノ酸であって、好ましくはI、L、V、K、W、R、Y、F、またはAであり;
は負電荷を有するアミノ酸であって、好ましくはDまたはEであり;
は芳香族アミノ酸であって、好ましくはY、F、またはLであり;
はH、K、Y、F、またはRであって、好ましくはH、FまたはRであり;
はS、T、N、Q、D、E、R、I、K、Y、またはGであって、好ましくはT、N、D、R、I、またはGであり;
特にEIDYHR、ELDYHR、EVDYHR、DIDYHR、DLDYHR、DVDYHR、DIDYRR、DLDYRR、DVDYRR、DKELRI、DWELRI、YREFRI、YAEFRG、EAEFRG、DYEFRG、ELEFRG、DRELRI、DKELKI、DRELKI、GREFRN、EYEFRG、DWEFRDA、SWEFRT、DKELRまたはSFEFRGである。
さらには天然のL-またはD-アミノ酸は非天然のL-またはD-アミノ酸で置き換ることができる。例えば、L、IまたはVはNle、Nva、Chaまたはその他直鎖若しくは環状脂肪族側鎖を有するαアミノ酸で、WまたはFは芳香族アミノ酸で、RおよびKはオルニチンやホモアルギニンで置き換ることができる。セリンおよびトレオニンは末端OH基を有する芳香族若しくは脂肪族側鎖を有するアミノ酸で置き換ることができる。
本発明はADのワクチン化に使用されるさらなるミモトープペプチド(DAEFRHの模倣)を提供する。
また、天然のN末端Aβ42配列DAEFRHに特異的な抗体でペプチドライブラリーをスクリーニングすることにより、本発明に従う化合物が提供される。好ましくは、そのライブラリー中のペプチドは下記のアミノ酸配列を有するか若しくは含み;
Figure 2008506666
(式中、Xはアミノ酸であってCを除外し、
はアミノ酸であってCを除外し、
はアミノ酸であってCを除外し、
はアミノ酸であってCを除外し、
はアミノ酸であってCを除外し、
は存在しないかまたは任意のアミノ酸であって、好ましくはCを除外し、
は存在しないかまたは任意のアミノ酸であって、好ましくはCを除外し、
また、XはDAEFRHではなく、該ペプチドは天然のN末端Aβ42配列DAEFRHに特異的な抗体との結合能力を有し、そしてその5量体は天然のN末端Aβ42配列DAEFRHに特異的な当該抗体との結合能力を有する。)
アルツハイマー病ワクチンの製造用である。
本発明に従えば、Aβ42ミモトープがADに対するワクチン化に使用される;該ミモトープはAβ42に対する抗体を誘導するが、天然のAPPに対しては誘導しない。このミモトープは(モノクローナル)抗体および(市販品として入手可能な)ペプチドライブラリーにより同定される〔例えば、ライナク等(Reineke et al.) 2002:「無作為に生成させた配列5520のペプチド配列からの特徴的な抗体エピトープおよびミモトープの同定」 J Immunol Methods 267: 37〕。APPは認識しないがアミノ末端Aspが異なるAβ種のみを検出する(モノクローナル)抗体が使用される〔そのような抗体の例を記載;ジョンソン-ウッド等(Johnson-Wood et al.) 1997: 「アルツハイマー病の遺伝子組み換えマウスモデルにおけるアミロイド前駆体タンパクのプロセシングとAβ沈着」 PNAS 94: 1550〕。そのような抗体はワクチンに適したミモトープを同定するための理想的な道具であることが本発明の過程で示された。このようなモノクローナル抗体はADマウスモデルにおいて直接投与した場合有益な効果があることが示された〔バード等(Bard et al.) 2000:「末梢投与されたアミロイドβペプチド抗体が中枢神経系に入ってアルツハイマー病マウスモデルの病変を減少させる」 Nature Med 6: 916〕が、ADワクチン化合物単離のためのミモトープ探索道具としての使用がこれら抗体について提案されたことはない。
先行技術においては、あらゆる努力は天然に存在するAβペプチドに集中的に注がれた。既に述べたが、Aβペプチドワクチンの臨床治験は神経性炎症のために中止された。実際、T細胞エピトープ予測プログラム(クラスI制限エピトープにはBIMAS、クラスII制限エピトープにはTEPTITOPE)が配列内に高スコアーの「自己」エピトープを提案している。神経性炎症の現象が該ワクチンの一般的な適用を不適にする自己免疫反応のためであることを意味する。
先行技術で提案されたそのようなAβワクチンとは対照的に、本発明のミモトープを含むワクチンで治療する間そのような自己免疫反応は生じないと理解される。何故なら、本発明に従ってミモトープ同定に使用されるモノクローナル抗体はAPPを認識せず、該ミモトープ配列はAβ42由来の自己配列であってこれまでの治験で使用されまたは将来の治験で使用されるものとは異なるからである。
本発明に従ってミモトープ同定に使用される抗体はAβ由来のアミノ酸配列であってアミノ末端がフリーのアスパラギン酸であるDAEFRH(オリジナルのエピトープ)を検出するが、天然のAPPは認識しない。該抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体またはそのいずれの抗体の一部若しくは誘導体であってもよく、唯一の必要条件はその抗体分子がDAEFRHエピトープを特異的に認識すること、即ち、アミロイド前駆体タンパクの天然のアミノ末端延長型とは結合しないことである。このことは、DAEFRHエピトープの結合能力がAPP分子に比して少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、更に好ましくは少なくとも10倍高いことを示している。該抗体は、DAEFRH配列に対する結合能力がジョンソン-ウッド等(Johnson-Wood et al.)、1997に記載された抗体と同等またはそれ以上に高い抗体である。当然ながら、より高い結合容量が好ましいけれども、低い結合容量を有する抗体もまた使用され得る(ジョンソン-ウッド等(Johnson-Wood et al.)の抗体の結合容量の10%以上、50%以上または80%以上)。
本発明に従う化合物はDAEFRH配列と同程度の特異性でこれら抗体と結合する。
好ましくは、本発明に従って使用される化合物はペプチドを包含しまたはペプチドより構成され、ここで
はGまたは水酸基を有する若しくは負電荷を負ったアミノ酸であって、好ましくはE、Y、S、またはDであり;
は疎水性のアミノ酸または正電荷を負ったアミノ酸であって、好ましくはI、L、V、K、W、R、Y、F、またはAであり;
は負電荷を負ったアミノ酸であって、好ましくはDまたはEであり;
は芳香族アミノ酸または疎水性アミノ酸であって、好ましくはY、F、またはLであり;
はH、K、Y、F、またはRであって、好ましくはH、F、またはRであり;
は任意のアミノ酸であって、P、またはXが存在する場合はCを除外し、好ましくはS、T、N、Q、D、E、R、I、K、Y、またはGであって、特に好ましくはT、N、D、R、I、またはGである。
その中で、天然に存在する20個のアミノ酸はその化学的類縁体またはD-アミノ酸で置き換えてもよい;例えば、LはNle、NvaまたはChaで置き換えてもよい。そのような交換の実行可能性は本願試験例に記載の実験モデルにより容易に試験できる。抗体とペプチドとの結合に関しても立体的な考察もコンピュータモデルにより計算ができる。
具体的には次の配列を含むペプチドが好ましい;DAEFRWP、DNEFRSP、GSEFRDY、GAEFRFT、SAEFRTQ、SAEFRAT、SWEFRNP、SWEFRLY、SWELRQA、SVEFRYH、SYEFRHH、SQEFRTP、SSEFRVS、DWEFRD、DAELRY、DWELRQ、SLEFRF、GPEFRW、GKEFRT、AYEFRH、DKE(NIe)R、DKE(NVa)R若しくはDKE(Cha)R、特にDAEFRWP、DNEFRSP、SAEFRTQ、SAEFRAT、SWEFRNP、SWEFRLY、SWELRQA、SVEFRYH、SYEFRHH、SQEFRTP、SSEFRVS、DWEFRD、DAELRY、DWELRQ、SLEFRF、GPEFRW若しくはGKEFRT。
本発明の化合物(ミモトープ)は好ましい長さがあり、5から15アミノ酸である。この化合物はワクチンとしてまたは単離型(ペプチド)として提供され、或いは他の分子、例えば薬学上の担体分子またはポリペプチド、脂質、若しくは炭水化物構造と結合若しくは複合体形成することもできる。好ましくは、本発明のミモトープは、5から15アミノ酸、6から12アミノ酸、特に9から11アミノ酸の(最小の)長さを有する。しかしながら、このミモトープは非特異的なリンカーまたは担体、特にペプチドリンカーまたはタンパク質担体と結合(共有または非共有結合)させることができる。更には、そのペプチドリンカーまたはタンパク質担体は、ヘルパーT細胞エピトープから構成されまたはこれを包含してもよい。
好ましくは、薬学的に許容される担体はKLH、破傷風トキソイド、アルブミン結合タンパク、ウシ血清アルブミン、デンドリマー(MAP;Biol.Chem.358, 581)の他、シン等(Singh et al.)、Nat. Biotech. 17(1999),1075-1081(特に同文献表1に記載のもの)や、オアガン等(O'Hagan et al.)、Nature Reviews, Drug Discovery 2(9),(2003),727-735(特に、ここで記載された本質的な免疫活性化合物および輸送系)に記載のアジュバント物質またはその混合物である。加えて、ワクチン組成物は水酸化アルミニウムを含んでもよい。
本発明化合物(ミモトープ)および薬学的に許容される担体を含むワクチンは例えばi.v.、i.p.、i.m.、経鼻、経口、経皮等いずれの投与経路によっても投与され、いずれの適切な投与手段(オアガン等(O'Hagan et al.)、Nature Reviews, Drug Discovery 2(9),(2003),727-735)を用いてもよい。一般的には、ワクチンには本発明化合物が0.1ngから10mg、好ましくは10ngから1mg、特別には100ngから100μgが含まれ、或いは、例えば100fmoleから10μmole、好ましくは10pmoleから1μmole、特別には100pmoleから100nmoleが含まれる。該ワクチンはまた通常の補助的物質、例えば緩衝剤、安定化剤等を含んでもよい。
本発明に従う適切な5量体の単離は、上記の方法において五アミノ酸変化体ライブラリーを適用し、好ましくはここで記載するXからXのアミノ酸変化体を有するライブラリーをスクリーニングするか、または6量体ライブラリー(上記参照)中でスクリーニングされた陽性の構成物中から適切な5量体を同定することにより達成される。同様にして、7量体、8量体、9量体、10量体、・・・の各ライブラリーもまた目下の抗体タイプに結合する適切な配列をスクリーニングするのに適用される。そのような長い配列の適切な抗体結合フラグメントは、例えば5、6、7、8、9、・・・アミノ酸残基の長さのこれらフラグメントと目下の抗体との結合を試験することによって見出し得る。
そのような方法が、本発明に従ってAβミモトープを成功裏に提供できることが証明された。
好ましくは、該ペプチドは該ライブラリー中個別の形態で、例えばMULTIPIN(商標)ペプチド化学で可能なように、特に固体表面上に固定化して提供される。該ライブラリーはまたペプチド混合物としても提供され、抗体:ペプチド複合体が抗体結合の後に単離される。或いは、抗体を固定化してからペプチドライブラリーを(懸濁液または溶液で)その固体化抗体と接触させてもよい。
また好ましくは、スクリーニング抗体(またはペプチドライブラリー構成物)に適当なマーカーを含ませ、ライブラリーのペプチドと結合した抗体若しくは抗体:ペプチド複合体の単離若しくは検出を可能とする。適当なマーカー系(ビオチン化、蛍光、放射線活性、磁気マーカー、発色マーカー、二次抗体)は当業者により容易に利用できる。
該ライブラリーは天然に存在するAβ配列(例えば、DAEFRH)を除くように構成しなければならない。このような配列のワクチン化は明らかに本発明より除外される。
本発明に従ってエピトープを単離するためのさらに適切な技術はファージ-ペプチドライブラリーのスクリーニングであり例えばWO03/020750に記載がある。
本発明はまたここで定義される抗N端Aβ42抗体結合ペプチド〔または、ある好ましい場合にはそのようなペプチド(例えば、担体若しくは運搬分子と結合したペプチド)を包含する大きな分子〕を含む組成物に関する(任意で、単一有効成分として)。そして、好ましくはそのような抗原を含むアルツハイマー病に対するワクチンに関する。適切な抗原は、DAEFRWP、DNEFRSP、GSEFRDY、GAEFRFT、SAEFRTQ、SAEFRAT、SWEFRNP、SWEFRLY、SWELRQA、SVEFRYH、SYEFRHH、SQEFRTP、SSEFRVS、DWEFRD、DAELRY、DWELRQ、SLEFRF、GPEFRW、GKEFRT、AYEFRH、DKE(NIe)R、DKE(Nva)RまたはDKE(Cha)Rよりなる群から選択される少なくとも一つのペプチドを含む。本発明で提供される他のペプチドの他に、これらのペプチドは、薬学的組成物、特にADワクチンの調製に用いるのに特に適している。これらの配列は純粋に人工的なAβミモトープである。該ペプチドはワクチン化の目的で適切な担体と結合(共有結合でまたは非共有結合で)させることができ、ペプチド化合物として若しくは他の化合物、部分、例えば、アジュバント、ペプチド若しくはタンパク質担体等との複合体として提供することができて、適切な方法により投与することができる〔例えば、オアガン等(O'Hagan et al.)、Nature Reviews, Drug Discovery 2(9),(2003),727-735に記載〕。
1.N末端がフリーのAβ42由来ペプチド(N末端がフリーのアスパラギン酸)を検出するためのモノクローナル抗体(mAb)の創出
6量体ペプチドDAEFRH(天然のN端Aβ42配列)をウシ血清アルブミンBSA(ハプテン担体効果を利用)と結合させ、CFA(初回の注射)およびIFA(ブースター注射)中に乳化してマウスをワクチン化する。DAEFRHペプチド特異的、抗体産生ハイブリドーマをELISA(DAEFRHペプチド被膜化ELISAプレート)で検出する。ペプチドSEVKMDAEFRH(天然N端延長配列、APP由来、Aβ42由来配列DAEFRHを含む)を陰性対照ペプチドとして使用する。N端にフリーのアスパラギン酸を有するAβ42由来ペプチドと、フリーのアスパラギン酸を持たないAPP由来ペプチドを区別しないので、延長したペプチドDAEFRHを認識するハイブリドーマは除外する。
2.ペプチドライブラリーの構築
Reinke 等、2000の方法を適用し、N端にフリーのアスパラギン酸を有しAβ種に特異的な抗体(好ましくはモノクローナル抗体)に結合するペプチドライブラリーをスクリーニングすることにより、本発明のミモトープを見出した。他の方法は市販品として入手できるMULTIPIN(商標)ペプチド技術である。
MULTIPIN(商標)ペプチド技術は、特別に調製されたポチエチレンのピン上における合成ペプチドを含む。当該ピンはブロック上に装着されフォーマットは多くの生物学的試験で使用される標準的な8x12のミクロチタープレートと互換性がある。ピン結合ペプチド(共有結合によりそのピンに結合したままの非切断ペプチド)および液相ペプチド(ピン表面から切断されたもの)の両ペプチドがこの方法で製造できる。マルチピン合成系に基づくペプセットは、多くのペプチドの合成と同時にスクリーニングすることを可能とする。
ペプセットは、個別に合成された96のペプチドのブロックより構成され、その内の二つは注意して選ばれた対照の配列である。切断された対照は逆層HPLCにより純度を評価され、ペプチドの中身はアミノ酸分析により定量される。陽性および陰性の非切断対照は標準的なELISA技術により評価される。
ペプセットペプチドは種々の化学修飾されたものが利用可能であり、アセチル化、ビオチン化、ホスホリル化、環状化等されたものを含む。液層(切断)のペプチドは凍結乾燥粉末として市場に出される。
液層におけるペプチドの生産については、C末端の終了の選択があり、意図されたペプチドの用途に依存して、酸またはアミドが含まれる。切断可能な結合が、事前に調製されたC末端アミノ酸のエステル誘導体として、またはアミドリンカーの「RINK」上においてピン表面上に導入される。ピン結合ペプチドを強酸で処理すると、酸若しくはアミド末端基を有するペプチドが遊離する。合成スケールの選択肢としては、名目上1μmoleから5μmoleである。疎水性や切断効率のような因子がペプチド回収率に影響し、予想されるペプチドの収率は名目上1μmoleスケールでペプチドを合成した場合、0.5から1μmole(15量体の場合およそ1mg)であり、名目上5μmoleスケールでペプチドを合成した場合は2.5から5μmoleである。
非切断ペプチドはピンに共有結合で結合したままであり、ELISA技術を利用して興味あるペプチドの迅速なスクリーニングに使用できる。そのようなペプチドは抗体エピトープの選別や構造活性相関の研究に有用である。結合した抗体や他の蛋白質を除去するとペプチドを再生することができ更なる試験に再度利用することができる。ペプセットは種々の適用に利用することができ、蛋白質配列の走査から生物学的興味のあるペプチド先端の同定、ペプチド先端の最適化、および新しい世代の同族体の発展等が含まれる。スクリーニング工程での全体的な戦略の観点からすると、種々の合成デザインの使用は柔軟性を大きく向上させ、先導的候補物を完全に特徴づける系統的方法を提供する。
系統的なペプチドのセットから得られる包括的な結果は、興味対象のペプチドを同定するのみならず、決定的な残基、置換可能性、および最適のペプチド長を示す。その結果として、関連するペプチドの範囲はそのような発見の結果として位置づけられる。L-アミノ酸をD-アミノ酸若しくは他の特殊アミノ酸で置換することはペプチドの構造と立体構造を操る強力な手法である。この方法はまた異なる薬理学的活性を有する同族体、例えば、拮抗剤や安定性の増大したペプチドを発見する素早い方法でもある。
公知のタンパク質配列から出発して、マルチピン手法を用いるとすべての系列的抗体エピトープをマップ化できる。系列的B細胞エピトープのマップ化について、現在これに代わるいくつかの方法が可能である。ピン結合ペプチド、ミクロチタープレート上にコートされた液相ペプチド、および事前にアビジン若しくはストレプトアビジンでコートされミクロチタープレート上に捕捉されたビオチン化ペプチドがこれに含まれる。
本実施例では、実施例1に記載の抗体はペプチドライブラリーのスクリーニングに使用される。しかし、いずれの抗体もDAEFRH配列を特異的に認識するが、Aβ分子の天然N末端延長配列(例えば、MDAEFRH、KMDAEFRH、SEVKMDAEFRHまたは完全なアミロイド(前駆体)タンパク、APP)は認識せず、ジョンソン-ウッド等(Johnson-Wood et al.)、1997に記載のとおりである。
この目的のため、4つのライブラリーを構築した。
2.1:ライブラリー1
この6量体ライブラリーは以下の配列のペプチドを含む(アミノ酸1位−6位):
1位:D、KおよびCを除くすべての天然aa(17の可能性)
2位:A、KおよびCを除くすべての天然aa(17の可能性)
3位:E、KおよびCを除くすべての天然aa(17の可能性)
4位:F、KおよびCを除くすべての天然aa(17の可能性)
5位:R、KおよびCを除くすべての天然aa(17の可能性)
6位:H、K、CおよびPを除くすべての天然aa(16の可能性)
ライブラリー1はヘキサペプチドの混合物である。理論的には、17の異なるアミノ酸(下記参照)を含むすべての可能なペプチドが包含される。該混合物はリシンおよびシステイン残基は含まない。さらに該混合物は以下のものを含まない;
特異的な1位がアスパラギン酸、
特異的な2位がアラニン、
特異的な3位がグルタミン酸、
特異的な4位がフェニルアラニン、
特異的な5位がアルギニン、かつ
特異的な6位がヒスチジン
合成は、FastMocプロトコールに従ってアプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)431A-シンセサイザーにより、0.25mmoleの合成スケールにて実施される。
合成はすべての所望のアミノ酸(アミノ基および側鎖は保護済)1mmoleを秤量することから始まる。その後、Asn、Gln、Gly、Ile、Leu、Met、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびValの混合物が作製された。それぞれの位置に特異的に、以下のアミノ酸が添加される;
Ala、Glu、Phe、Arg、His(位置/混合物 1)
Asp、Glu、Phe、Arg、His(位置/混合物 2)
Asp、Ala、Phe、Arg、His(位置/混合物 3)
Asp、Ala、Glu、Arg、His(位置/混合物 4)
Asp、Ala、Glu、Phe、His(位置/混合物 5)
Asp、Ala、Glu、Phe、Arg(位置/混合物 6、Proなし)
混合物6を用いて樹脂(2-クロロ-トリチルクロリド樹脂、1.49 mmole/g、Alexis Germany)を装着した。
アミノ酸残基混合物6 1 mmole
樹脂(反応基0.91mmole) 611 mmole
ジクロロメタン 15 ml
ジイソプロピルエチルアミン 5.5当量=5 mmole(871μl)
混合物をフラスコ中で1時間振盪する。その後、メタノール1mlを加えて更に10分間振盪する。グラスフィルターで反応樹脂を取り出して、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、イソプロパノール、メタノールおよびエーテル(各30ml)で2回洗浄する。高真空下で終夜乾燥し、737mgを得る。
密度を定量するため、樹脂の一部5.66 mgを20%ピペリジン/DMF 1mlで30分間処理する。混合物を遠心分離し、上澄中の遊離したFmoc基を光度的に定量する(301nm、減衰係数7800 M(e-1))。樹脂の密度は0.49 mmol/gである。
他の混合物(5の異なるカートリッジに入れる)、および装着済み樹脂515 mg(0.25 mmole相当;アミノ酸混合物は4倍量過剰に使用)を用い、以下の工程はすべてシンセサイザーで行った。N端Fmoc保護基は合成後に切断する。エタノールで洗浄し終夜乾燥した後、ペプチドの樹脂からの切断はTFA/H2O(95:5、v:v)により行う。TFA溶液をSpeed Vacで1/5の体積にまで濃縮し沈殿させ、ジエチルエーテルで洗浄して凍結乾燥する。
6量体ペプチドEIDYHR、ELDYHR、およびEVDYHRは上記実施例1で作製したモノクローナル抗体により検出されるミモトープの例である。
2.2:ライブラリー2
この6量体ライブラリーは以下の配列のペプチドを含む(アミノ酸1位−6位):
1位:D(固定)
2位:A、KおよびCを除くすべての天然aa(17の可能性)
3位:E、KおよびCを除くすべての天然aa(17の可能性)
4位:F、KおよびCを除くすべての天然aa(17の可能性)
5位:R、KおよびCを除くすべての天然aa(17の可能性)
6位:H、K、CおよびPを除くすべての天然aa(16の可能性)
ペプチドライブラリー2は上記ライブラリー1について記載した方法(2.1)に従って構築した。
6量体ペプチドDIDYHR、DLDYHR、およびDVDYHRは上記実施例1で作製したモノクローナル抗体により検出されるミモトープの例である。
2.3:ライブラリー3
第三のペプチドライブラリーがミモトープ配列の解明のための追加的な手段として使用される。このライブラリーはオリジナルの配列を含み、原エピトープとより密接に関連したミモトープの検出を可能とする。
この6量体ライブラリーは以下の配列のペプチドを含む(アミノ酸1位−6位):
1位:KおよびCを除くすべての天然aa(18の可能性)
2位:KおよびCを除くすべての天然aa(18の可能性)
3位:KおよびCを除くすべての天然aa(18の可能性)
4位:KおよびCを除くすべての天然aa(18の可能性)
5位:KおよびCを除くすべての天然aa(18の可能性)
6位:K、CおよびPを除くすべての天然aa(17の可能性)
ペプチドライブラリー3は上記ライブラリー1について記載した方法(2.1)に従って構築した。
6量体ペプチドDIDYRR、DLDYRR、およびDVDYRRは上記実施例1で作製したモノクローナル抗体により検出されるミモトープの例である(1位のDおよび5位のRは原エピトープと同じである。)。
2.4:ライブラリー4
このペプチドライブラリー4は5 x 18 = 90ペプチドからなり、Mimotopes Ltd.(フランス国パリ;製造者のガイドライン参照)より市販品として購入でき、天然N末端Aβ42配列DAEFRHに従ってデザインされている。
1位:D(固定)
2位:KおよびCを除くすべての天然アミノ酸(18の可能性)
3位:KおよびCを除くすべての天然アミノ酸(18の可能性)
4位:KおよびCを除くすべての天然アミノ酸(18の可能性)
5位:KおよびCを除くすべての天然アミノ酸(18の可能性)
6位:KおよびCを除くすべての天然アミノ酸(18の可能性)
ライブラリー4の個別のペプチド構成物をFig1に示す。ペプチド番号1、24、48、56、および80はAβ42N末端配列の原配列である。他のすべてのペプチドは、DAEFRH結合抗体に対する結合能について試験する候補ペプチドである。
2.5:ペプチドライブラリーのELISA
上記の通り、ペプチドライブラリー1、2および3をアプライドバイオシステムズ431Aペプチドシンセサイザーを用いて古典的Fmoc化学に従い作製する。市販品として入手できるペプチドライブラリー4は製造者の記述に従って作製する(上記並びにホームページwww.mimotopes.com参照)。90ペプチドのC末端はピンに結合している。
以下の標準的なプロトコールに従い、各ペプチドライブラリーについてELISAを実施する:
該ペプチドライブラリーを100%DMSOに溶解する(最終濃度10mg/ml)。
該ペプチド溶液をPBSでさらに希釈する。
ペプチド混合物をELISAプレート(Nunc Maxisorp、Germany)上に終夜(4℃)で被膜化し、500μg/ウェルから出発して滴定により100ng/ウェルとする。
該プレートをPBS/ツイーン20(0.1%v/v)で3回洗浄する。
該プレートをPBS/BSAでブロックする(室温で2時間)。
該プレートをPBS/ツイーンで3回洗浄する。
該プレートにビオチン化DAEFRH特異的mAb(PBS中10μg/ml)を加えて室温で4時間インキュベートする。
該プレートをPBS/ツイーンで3回洗浄する。
該プレートにストレプトアビジン-ホースラディシュ・ペルオキシダーゼを添加してインキュベートする(室温で30分間)。
該プレートをPBS/ツイーンで5回洗浄する。
該プレートをABTS+H2O2(0.1%w/v;10分間から45分間)とともにインキュベートし、クエン酸を添加して反応を停止させ、光学分析的な評価を実施する(波長405nm)。
3.阻害試験によるミモトープの確認
3.1追加的ライブラリー
上記の4ライブラリー(2.1、2.2、2.3、および2.4参照)に加えて、ミモトープ配列を明らかにするため、第五のライブラリーを使用する。この6量体ライブラリーはEMCミクロコレクションズ(Tubingen Germany)より市販品として入手できるが、114の異なるヘキサペプチド混合物を包含し、混合物について一つの位置がCを除くすべての天然aaのひとつで定義され(19の可能性)、他の5つの位置は変数である。
混合物01-06(ひとつの位置がアラニンAで固定され残りの5つの位置は変数X)
混合物01:AXXXXX
混合物02:XAXXXX
混合物03:XXAXXX
混合物04:XXXAXX
混合物05:XXXXAX
混合物06:XXXXXA
混合物07-12(ひとつの位置がアルギニンRで固定され残りの5つの位置は変数X)
混合物07:RXXXXX
混合物08:XRXXXX
混合物09:XXRXXX
混合物10:XXXRXX
混合物11:XXXXRX
混合物12:XXXXXR
従って、混合物13から114はCを除くすべての天然aaを用いてデザインされる。
3.2阻害試験
Fig.2およびFig.3は、上記の五つのライブラリーに包含され、かつ得られたミモトープペプチドについての阻害試験の結果を示す。該ミモトープペプチドはモノクローナル抗体による認識に際し、原エピトープと競合する。原エピトープおよびミモトープペプチドはタンパク質担体とのカップリングのためにC末端に追加的なC残基を含む(望ましいならば)。
下記のペプチドを使用する;
ペプチド 1737 DAEFRH
ペプチド 3001 DKELRI
ペプチド 3002 DWELRI
ペプチド 3003 YREFFI
ペプチド 3004 YREFRI
ペプチド 3005 YAEFRG
ペプチド 3006 EAEFRG
ペプチド 3007 DYEFRG
ペプチド 3008 ELEFRG
ペプチド 3009 SFEFRG
ペプチド 3010 DISFRG
ペプチド 3011 DIGWRG
方法:
ELISAプレート(Nunc Maxisorp)を、原ペプチドエピトープDAEFRH(C末端をCで延長し、ウシ血清アルブミンBSAと結合させた)を用いて濃度0.1μg/ml ペプチド-BSA(100μl/ウェル、12h、4℃)で被膜化する。PBS/BSA 1%(200μl/ウェル、12h、4℃)でブロックした後、プレートをPBS/ツイーンで3回洗浄する。その後、ビオチン化モノクローナル抗体(1:2000、50μl/ウェル)およびペプチド(50μl/ウェル) 50、5、0.5、0.05、0.005、および0.0005μg/mlを37℃、20分間で加える。プレートをPBS/ツイーンで3回洗浄し、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン(100μl/ウェル、30分間、RT)でインキュベートする。プレートをPBS/ツイーンで5回洗浄し、ABTS+H2O2(0.1%w/v、10分間から45分間)とともにインキュベートする。クエン酸を添加して反応を停止させ、光学分析的な評価を実施する(波長405nm)。
Fig.2に示されまたは予想されるように、ペプチド1737 DAEFRHはBSA縮合、プレート結合ペプチドDAEFRHと競合してモノクローナル抗体による認識を阻害する。さらに、ペプチド3003はモノクローナル抗体と原エピトープとの結合を阻害することができないことが示された。反対に、ペプチド3001、3002、3004、3005、3006、および3007は(程度は異なるが)エピトープ認識をブロックする。一方、ペプチド3004は高濃度(50μg/ml)においてのみ阻害作用を示すが、ペプチド3001、3006および3007は、阻害作用が強力でIC50は0.5μg/mlより小さい。ペプチド3002および3005は「中間的な」阻害剤でIC50は0.5μg/mlより大きい。
Fig.3に示されまたは予想されるように、ペプチド1737 DAEFRHは追加的に行った独立の試験でモノクローナル抗体による認識においてBSA縮合、プレート結合ペプチドDAEFRHと成功裏に競合することができる。更に、ペプチド3010および3011は試験した濃度では阻害作用を示さず、他方、ペプチド3008および3009はIC50が5μg/mlより小さな、(比較的)弱い阻害剤であることが示された。
Table 1は上記ライブラリーに包含され、かつこれより得られるミモトープ(記載のとおり)の阻害能を簡潔にまとめる。
Figure 2008506666
4.本発明に従ってスクリーニングされた追加的ミモトープの阻害試験
阻害試験
Fig.4および5は、5つのライブラリー(記載のとおり)に含まれ、これらより得られたミモトープペプチドについての阻害試験結果を記載する。該ミモトープペプチドはモノクローナル抗体による認識について原エピトープと競合する。原エピトープおよびミモトープペプチドはC末端(7位)にタンパク質担体と結合(望むならば)するための追加的C残基を含む。
以下のペプチドが使用される:
ペプチド 1737 DAEFRH (原エピトープ+C)
ペプチド 1234 KKELRI
ペプチド 1235 DRELRI
ペプチド 1236 DKELKI
ペプチド 1237 DRELKI
ペプチド 1238 DKELR
ペプチド 1239 EYEFRG
ペプチド 1241 DWEFRDA
ペプチド 4002 SWEFRT
ペプチド 4003 GREFRN
ペプチド 4004 WHWSWR
方法:
ELISAプレート(Nunc Maxisorp)を原ペプチドエピトープDAEFRH(C末端をC残基で延長し、ウシ血清アルブミンBSAと結合させた)を用いて0.1μg/mlペプチド-BSAの濃度で被膜化する(100μl/ウェル、12H、4℃)。PBS/BSA 1%(200μl/ウェル、12h、4℃)でブロックした後、プレートをPBS/ツィーンで3回洗浄する。その後、ビオチン化モノクローナル抗体(1:2000、50μl/ウェル)と、異なる濃度のペプチド(50μl/ウェル)を20分間37℃で添加する。プレートをPBS/ツィーンで3回洗浄し、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン(100μl/ウェル、30分間、RT)でインキュベートする。プレートをPBS/ツイーンで5回洗浄し、ABTS+H2O2(0.1%w/v、10分間から45分間)とともにインキュベートする。クエン酸を添加して反応を停止させ、光学分析的な評価を実施する(波長405nm)。
Fig.4に示されまたは予測されるように、ペプチド1737DAEFRHはBSA-結合、プレート結合ペプチドDAEFRHと競合し、モノクローナル抗体による認識を阻害する。さらに、ペプチド4004はモノクローナル抗体と原エピトープとの結合を阻害することができないことが示された。反対に、ペプチド4002および4003はエピトープ認識をブロックする(異なる程度で)。ペプチド4003は比較的高濃度(10μg/ml)においてのみ阻害効果を示すが、ペプチド4002は強力な阻害効果を示しIC50は0.4μg/mlより小である。
Fig.5に示されまたは予測されるように、モノクローナル抗体の認識に関する、追加的になされた独立の実験において、ペプチド1737DAEFRHはBSA-結合、プレート結合ペプチドDAEFRHと成功裏に競合する。更に、ペプチド1234は試験濃度では殆ど阻害しないが、ペプチド1235、1236、1237、1238、1239、および1241はエピトープ認識をブロックする(異なる程度で)ことが示される。ペプチド1235、1238、および1241はIC50が0.5μg/mlより小さい強力な阻害剤であるが、ペプチド1236および1237は(比較的)弱い阻害剤でIC50が5μg/mlより大きい。ペプチド1239は中間的な阻害剤でIC50が0.5μg/mlより大きい。
Table 2は上記ライブラリーに包含され、かつこれより得られるミモトープ(記載のとおり)の阻害能を簡潔にまとめる。
Figure 2008506666
Fig.4および5に示された結果は、上記の種々の6量体ペプチドに加えて、5量体ペプチド(即ち、ペプチド 1238 DKELR)および7量体ペプチド(即ち、ペプチド 1241 DWEFRDA)もミモトープに基づくアルツハイマーワクチンにエピトープとして使用することができる。
5.独立した新しいスクリーニング・ラウンド
ライブラリー
ミモトープはアミノ酸5から15の好ましい長さを有する。ミモトープ配列を定義するため二つの異なるライブラリーをELISA試験で使用する。
ライブラリー1:
この6量体ライブラリーは以下の配列のペプチドを含む(アミノ酸1位−6位):
1位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
2位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
3位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
4位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
5位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
6位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
ライブラリー2:
この6量体ライブラリーは以下の配列のペプチドを含む(アミノ酸1位−7位):
1位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
2位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
3位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
4位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
5位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
6位:Cを除くすべての天然aa(19の可能性)
阻害試験
Fig.6から8は、2つのライブラリー(上記のとおり)に含まれ、これらより得られたミモトープペプチドについての阻害試験結果を記載する。該ミモトープペプチドはモノクローナル抗体による認識について原エピトープと競合する。原エピトープおよびミモトープペプチドはC末端(それぞれ7位と8位)にタンパク質担体と結合(望むならば)するための追加的C残基を含む。
以下のペプチドが使用される:
ペプチド1737 DAEFRH 原エピトープ
ペプチド4011 DAEFRWP 7量体 S
ペプチド4012 DNEFRSP 7量体 S
ペプチド4013 GSEFRDY 7量体 m
ペプチド4014 GAEFRFT 7量体 m
ペプチド4015 SAEFRTQ 7量体 S
ペプチド4016 SAEFRAT 7量体 S
ペプチド4017 SWEFRNP 7量体 S
ペプチド4018 SWEFRLY 7量体 S
ペプチド4019 SWFRNP 6量体 −
ペプチド4020 SWELRQA 7量体 S
ペプチド4021 SVEFRYH 7量体 S
ペプチド4022 SYEFRHH 7量体 S
ペプチド4023 SQEFRTP 7量体 S
ペプチド4024 SSEFRVS 7量体 S
ペプチド4025 DWEFRD 6量体 S
ペプチド4031 DAELRY 6量体 S
ペプチド4032 DWELRQ 6量体 S
ペプチド4033 SLEFRF 6量体 S
ペプチド4034 GPEFRW 6量体 S
ペプチド4035 GKEFRT 6量体 S
ペプチド4036 AYEFRH 6量体 m
ペプチド4037 VPTSALA 7量体 −
ペプチド4038 ATYAYWN 7量体 −
さらに下記の5量体ペプチド(含非天然アミノ酸)が阻害試験に用いられる。
ペプチド4061 DKE(tBuGly)R 5量体 −
ペプチド4062 DKE(NIe)R 5量体 m
ペプチド4063 DKE(Nva)R 5量体 m
ペプチド4064 DKE(Cha)R 5量体 m
(S:強く阻害、m:中程度に阻害、−:阻害作用なし)
方法:
ELISAプレート(Nunc Maxisorp)を原ペプチドエピトープDAEFRH(C末端をC残基で延長し、ウシ血清アルブミンBSAと結合させた)を用いて0.1μg/mlペプチド-BSAの濃度で被膜化する(100μl/ウェル、12h、4℃)。PBS/BSA 1%(200μl/ウェル、12h、4℃)でブロックした後、プレートをPBS/ツィーンで3回洗浄する。その後、ビオチン化モノクローナル抗体(1:2000、50μl/ウェル)と、異なる濃度のペプチド(50μl/ウェル)を20分間37℃で添加する。プレートをPBS/ツィーンで3回洗浄し、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン(100μl/ウェル、30分間、RT)でインキュベートする。プレートをPBS/ツイーンで5回洗浄し、ABTS+H2O2(0.1%w/v、10分間から45分間)とともにインキュベートする。クエン酸を添加して反応を停止させ、光学分析的な評価を実施する(波長405nm)。
Fig.6(ペプチド4011-4018を示す)に示されまたは予測されるように、ペプチド1737DAEFRHはBSA-結合、プレート結合ペプチドDAEFRHと競合し、モノクローナル抗体による認識を阻害する。さらに、ペプチド4012 DNEFRSP、4013 GSEFRDY、および4014 GAEFRFTはモノクローナル抗体と原エピトープとの結合を中程度に阻害することが示される。反対に、ペプチド4011 DAEFRWP、4015 SAEFRTQ、4016 SAEFRAT、4017 SWEFRNP、および4018 SWEFRLYは(異なる程度で)エピトープ認識を強力に阻害する
Fig.7(ペプチド4019-4025を示す)に示されまたは予測されるように、モノクローナル抗体の認識に関する、追加的になされた独立の実験において、ペプチド1737DAEFRHはBSA-結合、プレート結合ペプチドDAEFRHと成功裏に競合する。更に、ペプチド4019 SWFRNPは試験濃度では殆ど阻害しないが、ペプチド4020 SWELRQA、4021 SVEFRYH、4022 SYEFRHH、4023 SQEFRTP、4024 SSERFVS、および4025 DWEFRDはエピトープ認識をブロックする(異なる程度で)ことが示される。ペプチド4021、4022、4023、4024、および4025は強力な阻害剤でIC50が0.5μg/mlより小さく、他方ペプチド4020は中程度の阻害剤でIC50は0.5μg/mlより大きい。
Fig.8(ペプチド4031-4038)に示されまたは予測されるように、第3の独立した試験においてペプチド1737DAEFRHはBSA-結合、プレート結合ペプチドDAEFRHと競合し、モノクローナル抗体による認識を成功裏に阻害することができる。さらに、ペプチド4037 VPTSALA、および4038 ATYAYWNは試験濃度では阻害しないが、ペプチド4031 DAELRY、4032 DWELRQ、4033 SLEFRF、4034 GPEFRW、4035 GKEFRT、および4036 AYEFRHはエピトープ認識をブロックする(異なる程度で)ことが示される。ペプチド4031、4032、4033、4034および4035は比較的強い阻害剤でIC50が0.5μg/mlより小さく、他方ペプチド4036は(比較的)弱い阻害剤でIC50は0.5μg/mlより大きい。
6.定義した5量体ペプチド:非天然アミノ酸による阻害試験
前に5量体ペプチド1238 DKELRがミモトープに基づくアルツハイマー病ワクチンのエピトープとして使用できることを示した(PCT/EP04/00162参照)。下記では、原5量体エピトープのアミノ酸を非天然アミノ酸で置き換える:Lを非天然アミノ酸、tBuGly、NIe、NvaまたはChaで置き換える。
Fig.9(ペプチド4061-4064)に示されまたは予測されるように、第4の独立した試験においてペプチド1737DAEFRHはBSA-結合、プレート結合ペプチドDAEFRHと競合し、モノクローナル抗体による認識を成功裏に阻害することができる。さらに、ペプチド4061 DKE(tBuGly)Rは試験濃度では阻害しないことが示された。興味深いことにペプチド4062 DKE(Nle)R、4063 DKE(Nva)R、および4064 DKE(Cha)Rはエピトープ認識を(異なる程度で)ブロックする。ペプチド4062、4063および4064は比較的弱い阻害剤でIC50は0.5μg/mlより大きい。
本発明は以下の実施例および図面によりさらに説明されるが、当然これらに限定されるものではない。
図1は本スクリーニング工程で使用されるライブラリー4を構成する個々のペプチドを示す。 図2は、DAEFRHのミモトープを用いた阻害試験を示す。 図3は、DAEFRHの他のミモトープを用いた別の阻害試験を示す。 図4は、本発明によるミモトープペプチドを用いて行った阻害試験の結果を示す。 図5は、本発明によるミモトープペプチドを用いて行った阻害試験の結果を示す。 図6は、ミモトープペプチド、4011-4018、4019-4025、4031-4038および4061-4064をそれぞれ用いて行った阻害試験の結果を示す。 図7は、ミモトープペプチド、4011-4018、4019-4025、4031-4038および4061-4064をそれぞれ用いて行った阻害試験の結果を示す。 図8は、ミモトープペプチド、4011-4018、4019-4025、4031-4038および4061-4064をそれぞれ用いて行った阻害試験の結果を示す。 図8は、ミモトープペプチド、4011-4018、4019-4025、4031-4038および4061-4064をそれぞれ用いて行った阻害試験の結果を示す。

Claims (9)

  1. 下式アミノ酸配列
    Figure 2008506666
    〔式中、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、Xは存在しないか若しくは任意のアミノ酸、Xは存在しないか若しくは任意のアミノ酸であって、XはDAEFRHではない。〕
    を含んでなり、天然のN末端Aβ42配列DAEFRHに特異的な抗体に結合する能力を有し、またその5量体が天然のN末端Aβ42配列DAEFRHに特異的な抗体に結合する能力を有する化合物の、アルツハイマー病(AD)に対するワクチン作製のための使用。
  2. 該化合物が同ペプチドを含み、または同ペプチドより構成され、ここでXはG、ヒドロキシル基を有するアミノ酸または負に荷電したアミノ酸であって、好ましくはG、E、Y、S若しくはDであり;Xは疎水性アミノ酸または正に荷電したアミノ酸であって、好ましくはN、I、L、V、K、W、R、Y、F若しくはAであり;Xは負に荷電したアミノ酸であって、好ましくはD若しくはEであり;Xは芳香族アミノ酸または疎水性アミノ酸であって、好ましくはY、F若しくはLであり;XはH、K、Y、FまたはRであって、好ましくはH、F若しくはRであり;Xは任意のアミノ酸であって、Pを除くかまたはXが存在する場合はCを除き、好ましくはS、T、N、Q、D、E、R、I、K、YまたはGであって、特にT、N、D、R、I若しくはGであり;とりわけDAEFRWP、DNEFRSP、GSEFRDY、GAEFRFT、SAEFRTQ、SAEFRAT、SWEFRNP、SWEFRLY、SWELRQA、SVEFRYH、SYEFRHH、SQEFRTP、SSEFRVS、DWEFRD、DAELRY、DWELRQ、SLEFRF、GPEFRW、GKEFRT、AYEFRH、DKE(NIe)R、DKE(Nva)RまたはDKE(Cha)Rである、請求項1の使用。
  3. 該化合物が5から15アミノ酸残基を含んでなるポリペプチドであることを特徴とする請求項1または2の使用。
  4. 該化合物が薬学的に許容される担体、好ましくはKLH、および任意で水酸化アルミニウムと結合していることを特徴とする、請求項1−3のいずれかの使用。
  5. 該化合物を0.1ngから10mg、好ましくは10ngから1mg、特に100ngから100μgを含むことを特徴とする、請求項1−4のいずれかの使用。
  6. 天然のN末端Aβ42配列DAEFRHに特異的な抗体に結合する化合物を単離する方法であって;下式アミノ酸配列
    Figure 2008506666
    〔式中、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、XはC以外のアミノ酸、Xは存在しないかまたは任意のアミノ酸、Xは存在しないかまたは任意のアミノ酸であって、XはDAEFRHではない。〕
    を含むペプチドを包含するペプチド化合物ライブラリーを提供する工程;該ペプチドライブラリーを当該抗体と接触させる工程;および当該抗体と結合するペプチドライブラリー構成物を単離する工程を含む方法。
  7. 該ペプチドが当該ライブラリー中において個別の形態で、特に固体表面上に固定化されて提供されることを特徴とする、請求項6の方法。
  8. 当該抗体がライブラリーのペプチドと結合したときその単離または検出をさせるための適切な標識を含むことを特徴とする、請求項6または7の方法。
  9. DAEFRWP、DNEFRSP、GSEFRDY、GAEFRFT、SAEFRTQ、SAEFRAT、SWEFRNP、SWEFRLY、SWELRQA、SVEFRYH、SYEFRHH、SQEFRTP、SSEFRVS、DWEFRD、DAELRY、DWELRQ、SLEFRF、GPEFRW、GKEFRT、AYEFRH、DKE(NIe)R、DKE(Nva)RおよびDKE(Cha)Rから選択される少なくとも一つのペプチドを含む抗原を含んでなる、アルツハイマー病に対するワクチン。
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