定義
便宜を図るため、請求の範囲、明細書および実施例において使用した用語を本項にまとめておく。
「求核剤」とは、当該分野において既知であり、本明細書においては、反応性電子対を有する化学部位を意味する。求核剤の例としては、水、アミン、メルカプタンおよびアルコールなどの非電荷化合物、ならびに、アルコキシド、チオラート、カーバニオン、さらに、多様な有機および無機陰イオンなどの電荷部位などが挙げられる。代表的な陰イオン性求核剤としては、ヒドロキシド、アジド、シアニド、チオシアナート、アセタート、ホルメートもしくはクロロホルメートならびにビスルファイトなどの単純陰イオンが挙げられる。有機銅、有機亜鉛、有機リチウム、グリニャール試薬、エノラート、アセチリドなどの有機金属反応試薬は、適切な反応条件下においては、求核剤として適している。基質の還元を所望する場合には、水素化物も適切な求核剤である。
「求電子剤」とは、当該分野において既知であり、上に定義した求核剤から電子対を受け取ることができる化学部位をさす。本発明に従う方法において有用な求電子剤としては、エポキシド、アジリジン、エピスルフィド、環状スルフェート、カルボナート、ラクトン、ラクタムなどの環状化合物が挙げられる。非環式求電子剤としては、スルフェート、スルホナート(例えば、トシラートなど)、塩化物、臭化物、ヨウ化物などが挙げられる。
本明細書において使用している「求電子原子」、「求電子中心」および「反応中心」とは、求核剤から攻撃され、新規な結合を形成する基質の原子をさす。ほとんどの場合(全てではない)、脱離基が解離する原子でもある。
「電子吸引基」は当該分野において既知であり、本明細書においては、同一位置にある水素原子よりも電子を引き寄せる力が強い官能基を意味する。電子吸引基の例としては、ニトロ、ケトン、アルデヒド、スルホニル、トリフルオロメチル、−CN、塩化物などが挙げられる。本明細書において使用されている「電子供与基」とは、同一位置にある水素原子よりも電子を引き寄せる力が弱い官能基を意味する。電子供与基の例としては、アミノ、メトキシなどが挙げられる。
「ブレンステッド塩基」は、当該分野において既知であり、水素受容体であるような非電荷もしくは電荷原子または分子をさし、例えば、酸化物、アミン、アルコキシドまたはカルボナートなどが挙げられる。
「ルイス塩基」および「ルイス塩基性」は、当該分野において既知であり、特定の反応条件下において、電子対を供与することができる化学的部位をさす。ルイス塩基性部位の例としては、アルコール、チオール、オレフィンおよびアミンなどの非電荷化合物、ならびに、アルコキシド、チオラート、カーバニオンおよびその他の多様な有機陰イオン類などのような電荷部位が挙げられる。
「ルイス酸」および「ルイス酸性」は、当該分野において既知であり、ルイス塩基から電子対を受け取ることができる化学的部位をさす。
「メソ化合物」は、当該分野において既知であり、少なくとも2つのキラル中心を有するが、対照の内部平面もしくは点を有するためにアキラルであるような化合物である。
「キラル」という語は、鏡像体の対と重ね合わせることができないという特性を有する分子をさし、「アキラル」とは、鏡像体の対と重ね合わせることができる分子をさす。「プロキラル分子」とは、特定の過程を経て、キラル分子に転換することができるアキラル分子である。
「立体異性体」とは、化学組成は同一であるが、空間における原子または基の配置が異なっている化合物をさす。特に、「鏡像異性体」とは、鏡像体を互いに重ね合わせることができない化合物の2つの立体異性体をさす。一方、「ジアステレオ異性体」は、2つ以上の不斉中心を有し、互いに鏡像体ではない立体異性体対の間の関係をさす。
さらに、「立体選択的過程」は、反応生成物がとり得るある立体異性体よりも、特定の立体異性体を多く生成する反応である。「鏡像異性体選択的過程」は、反応生成物がとり得る2つの鏡像異性体のうちのひとつを多く生成する反応である。そのような方法は、キラル触媒なしで同じ反応を行った場合に得られる立体異性体の収量と比較して、生成物の特定の立体異性体のそれが統計的に顕著に大きい場合には、「立体選択性に富んだ」生成物(例えば、鏡像異性体選択性に富んだ、または、ジアステレオ選択性に富んだ、など)を産生すると表現される。例えば、あるキラル触媒によって触媒される鏡像異性体選択的反応では、特定の鏡像異性体のeeは、キラル触媒なしの反応におけるeeよりも大きい。
「位置異性体」とは、分子組成は同じであるが、原子の接続が異なる化合物をさす。従って、「位置選択的過程」は、特定の位置異性体を他方よりも多く産生する反応であり、例えば、そのような反応により、特定の位置異性体が統計的に顕著に多く産生される。
「反応生成物」とは、求核剤と基質との反応の結果として得られる化合物を意味する。一般的には、本明細書において使用されている「反応生成物」という語は、安定で単離可能な化合物をさし、不安定な中間体または遷移状態をさすものではない。
「基質」とは、本発明に従って求核剤または環拡張反応試薬と反応でき、ステレオジェン中心を有する少なくともひとつの生成物が得られる化合物を意味する。
「触媒量」とは、当該分野において既知であり、反応物と比較して、化学量論的量以下であることを意味する。本明細書において使用しているように、触媒量は、反応物に対して0.0001〜90モル%、より好ましくは0.001〜50モル%、さらに好ましくは0.01〜10モル%、さらにより好ましくは、反応物に対して0.1〜5モル%である。
以下にさらに詳述しているように、本発明において意図している反応とは、鏡像異性体選択的、ジアステレオ異性体選択的、および/もしくは位置選択的反応などが挙げられる。鏡像異性体選択的反応とは、アキラル反応物をひとつの鏡像異性体に富んだキラル生成物に転換する反応である。一般的に、鏡像異性体選択性は「鏡像異性体過剰率」(ee)して定量され、次のように定義される:
Aの鏡像異性体過剰率(ee)%=(鏡像異性体Aの%)−(鏡像異性体Bの%)
このとき、AおよびBは生成した鏡像異性体である。鏡像異性体選択性と共に使用されるその他の用語としては、「光学的に純粋」または「光学活性」などが挙げられる。鏡像異性体選択的反応では、eeが0以上の生成物が得られる。好ましい鏡像異性体選択的反応においては、eeが20%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上の生成物が得られる。
ジアステレオ選択的反応は、キラル反応物(ラセミまたは鏡像異性体として純粋なもの)をひとつのジアステレオ異性体に富んだ生成物に転換する。キラル反応物がラセミである場合には、キラル非ラセミ反応試薬もしくは触媒の存在下において、反応物のひとつの鏡像異性体が他方よりもゆっくりと反応する。このような反応様式は動力学的分割と称され、このとき、反応物の鏡像異性体は、反応速度の差によって分割され、鏡像異性体に富んだ生成物および鏡像異性体に富んだ未反応基質が得られる。通常、動力学的分割は、反応物のひとつの鏡像異性体のみと反応するのに十分な量の反応試薬(すなわち、ラセミ基質1モルにつき2分の1モルの反応試薬)を使用することによって達成される。ラセミ反応物の動力学的分割に使用される触媒反応の例としては、シャープレスエポキシ化およびノヨリ水素化などが挙げられる。
位置選択的反応とは、ある反応中心において、別の異なる反応中心よりも起こりやすい反応である。例えば、非対称置換エポキシド基質の位置選択的反応は、エポキシド環の2個の炭素のうちのひとつにおいて優先的に生じる。
キラル触媒に関して「非ラセミ」であるとは、特定の鏡像異性体を50%以上、より好ましくは少なくとも75%以上含む触媒調製物を意味する。「実質的に非ラセミ」であるとは、触媒の特定の鏡像異性体をee90%以上、より好ましくは、ee95%以上含む触媒調製物をさす。
「アルキル」とは、飽和脂肪族基のラジカルをさし、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基などが挙げられる。好ましい実施態様においては、直鎖または分岐鎖アルキル基は、骨格中の炭素原子数が30もしくはそれ以下(例えば、直鎖の場合はC1〜C30、分岐鎖の場合はC3〜C30など)であり、より好ましくは20もしくはそれ以下である。同様に、好ましいシクロアルキルは環構造中の炭素原子数が4〜10であり、より好ましくは、環構造中の炭素数が5、6もしくは7である。
炭素原子数を特定していない限り、本明細書において使用している「低級アルキル」とは、上に定義しているアルキル基を意味するが、骨格内の炭素原子数は1〜10、より好ましくは1〜6である。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」も類似した炭素鎖を有する。
「アルケニル」および「アルキニル」は、上に定義したアルキルと同様な長さおよび置換の可能性を有する不飽和脂肪族基をさすが、それぞれ少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または三重結合を有する。
本明細書において使用している「アミノ」は−NH2を意味し;「ニトロ」は−NO2を意味し;「ハロゲン」は−F、−Cl、−Brまたは−Iをさし;「チオール」は−SHを意味し;「水酸基」は−OHを意味し;「スルホニル」は−SO2−を意味し;「有機金属」とは、炭素原子に直接結合している金属原子(例えば、水銀、亜鉛、鉛、マグネシウムまたはリチウムなど)またはメタロイド(例えば、シリコン、ヒ素またはセレンなど)をさし、例えば、ジフェニルメチルシリル基などが挙げられる。
「アミン」および「アミノ」という語は当該分野において既知であり、未置換および置換アミン類をさし、例えば、次のような一般式で表される部位などであり:
ここで、R
9、R
10およびR'
10は、それぞれ別異に、原子価則に許容される基を表す。
「アシルアミノ」という語は当該分野において既知であり、次のような一般式で表される部位をさし:
ここで、R
9は上に定義したとおりであり、さらに、R'
11は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH
2)
m−R
8であり、このとき、mおよびR8は上に定義したとおりである。
「アミド」という語は、当該分野において、アミノ置換カルボニルと認識されており、次のような一般式で表される部位を含み:
ここで、R
9、R
10は上に定義したとおりである。アミドの好ましい実施態様には、不安定なイミドを含まない。
「アルキルチオ」という語は、上に定義したアルキル基に硫黄ラジカルが結合したものをさす。好ましい実施態様においては、「アルキルチオ」部位は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニルおよび−S−(CH2)m−R8のいずれかひとつで表され、このとき、mおよびR8は上に定義したとおりである。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
「カルボニル」という語は当該分野において既知であり、次のような一般式で表される部位などが挙げられ:
ここで、Xは、結合、または酸素もしくは硫黄を表し、R
11は、水素、アルキル、アルケニル、−(CH
2)
m−R
8もしくは薬剤学的に許容される塩を表し、R'
11は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH
2)
m−R
8を表し、このとき、mおよびR
8は上に定義したとおりである。Xが酸素であり、R
11またはR'
11が水素でない場合には、上の構造式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、R
11が上に定義したとおりである場合には、該部位はカルボキシル基と称され、特に、R
11が水素である場合には、上の構造式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R'
11が水素である場合には、上の構造式は「ホルメート」を表す。一般的に、上の構造式の酸素原子を硫黄に置き換えると、「チオカルボニル」基を表す。Xが硫黄であり、R
11またはR'
11が水素でない場合には、上の構造式は「チオエステル」を表す。Xが硫黄であり、R
11が水素である場合には、上の構造式は「チオカルボン酸」を表す。Xが硫黄であり、R'
11が水素である場合には、上の構造式は「チオホルメート」を表す。一方、Xが結合であり、R
11が水素でない場合には、上の構造式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R
11が水素である場合には、上の構造式は「アルデヒド」基を表す。
本明細書において使用している「アルコキシル」または「アルコキシ」という語は上に定義したアルキル基に酸素ラジカルが結合したものをさす。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」は、2個の炭化水素が酸素によって共有結合したものである。従って、アルキルをエーテルにするようなアルキルの置換がアルコキシルであり、例えば、−O−アルキル、−O−アルケニル、O−アルキニルおよび−O−(CH2)m−R8のいずれかひとつで表され、このとき、mおよびR8は上に定義したとおりである。
「スルホナート」という語は当該分野において既知であり、次のような一般式で表される部位を含み:
ここで、R
41は、電子対、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである。
「スルホニルアミノ」という語は当該分野において既知であり、次のような一般式で表される部位を含む:
「スルファモイル」という語は当該分野において既知であり、次のような一般式で表される部位を含む:
「スルホニル」という語は当該分野において既知であり、次のような一般式で表される部位を含み:
ここで、R
44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アリールまたはヘテロアリールを含む群から選択される。
「スルホキシド」という語は当該分野において既知であり、次のような一般式で表される部位を含み:
ここで、R
44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アラルキルまたはアリールを含む群から選択される。
本明細書において使用している「スルフェート」という語は、上に定義したスルホニル基に2個の水酸基またはアルコキシ基が結合したものをさす。従って、好ましい実施態様においては、スルフェートは次のような構造式を有し:
ここで、R
40およびR
41は、それぞれ別に、空位、水素、アルキルまたはアリールである。さらに、R
40およびR
41は、それらが結合していているスルホニル基および酸素原子と共に、5〜10員の環構造を形成する。
アルケニルおよびアルキニル基に同様の置換を行うことにより、例えば、アルケニルアミン、アルキニルアミン、アルケニルアミド、アルキニルアミド、アルケニルイミン、アルキニルイミン、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルもしくはアルキニル、アルケノキシル、アルキノキシル、メタロアルケニルおよびメタロアルキニルを生成することができる。
本明細書において使用している「アリール」という語は、4、5、6および7員の単環芳香族基などであり、0〜4個のヘテロ原子を含む場合がある。そのようなものの例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが挙げられる。環構造内にヘテロ原子を有するそれらのアリール基は、「ヘテロアリール」とも称される。芳香環は、環のひとつもしくはそれ以上の位置において、上に記載しているような置換基で置換することができ、そのような置換基としては、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、水酸基、アミノ、ニトロ、チオールアミン、イミン、アミド、ホスホナート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、または−(CH2)m−R7、−CF3、−CNなどが挙げられる。
本明細書において使用している「アラルキル」という語は、上に定義したようなアリール基で置換されたアルキル基をさす。例えば、ベンジル基(−CH2Ph)はアラルキル基である。
「複素環」または「複素環式基」とは、4〜10員の環構造、より好ましくは5〜7員の環構造であって、該環構造内に1〜4個のヘテロ原子を含むものをさす。複素環式基の例としては、ピロリジン、オキソラン、チオラン、イミダゾール、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどが挙げられる。複素環は、ひとつもしくはそれ以上の位置において、上に記載しているような置換基で置換することができ、そのような置換基としては、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、水酸基、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホナート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、または−(CH2)m−R7、−CF3、−CNなどが挙げられる。
「多環」または「多環式基」とは、2個もしくはそれ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/または複素環など)をさし、2つもしくはそれ以上の炭素が2個の隣接する環に共有されている(そのような環は「融合環」である)。非隣接原子を介して結合している環は、「架橋環」と称する。多環を構成する各環は、上に記載しているような置換基で置換することができ、そのような置換基としては、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、水酸基、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホナート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、または−(CH2)m−R7、−CF3、−CNなどが挙げられる。
本明細書において使用している「ヘテロ原子」とは、炭素または水素以外の任意の元素の原子である。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、リンおよびセレンである。
本発明を表現するために使用する化学元素は、元素の周期律表(CAS版)(Periodic Table of Elements)(「化学物理学ハンドブック(Handbook of Chemistry and Physics)第67版」(1986-1987)、内表紙)と同一である。
オルト、メタおよびパラという語は、それぞれ、1,2−、1,3−および1,4−置換ベンゼンに用いる。例えば、1,2−ジメチルベンゼンおよびオルト−ジメチルベンゼンは同義である。
トリフリル、トシル、メシルおよびノナフリルという語は当該分野において既知であり、それぞれ、トリフルオロメタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基およびノナフルオロブタンスルホニル基をさす。トリフラート、トシラート、メシラートおよびノナフラートという語は当該分野において既知であり、それぞれ、トリフルオロメタンスルホナートエステル、p−トルエンスルホナートエステル、メタンスルホナートエステルおよびノナフルオロブタンスルホナートエステル官能基、ならびにそのような基を含む分子をさす。
Me、Et、Ph、Tf、Nf、TsおよびMsという略語は、それぞれ、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルを表す。当該分野の標準的な知識を有する有機化学者によって使用される略号のより完全なリストについては、Journal of Organic Chemistryの各巻の第一号に掲載されている。このリストは、略号標準表(Standard List of Abbreviations)という表題の付いた表にまとめられている。該リストに含まれている略号および当該分野の標準的な知識を有する有機化学者によって使用される全ての略号を参照として本明細書中に取り入れておく。
本明細書において使用している「保護基」という語は、所望しない化学変換から反応性官能基を保護するための一時的な置換基を意味する。そのような保護基の例としては、カルボン酸のエステル類、アルコールのシリルエーテル類、アルデヒドおよびケトンのアセタール類およびケタール類などが挙げられる。保護基化学の分野については、総説が刊行されている(グリーン(Greene),T.W.、ヴッツ(Wuts),P.G.M.、「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)第2版」、ウィレー(Wiley)社(ニューヨーク)、1991年)。
本明細書において使用している「置換された」とは、有機化合物の許容される全ての置換基を含む。広義には、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香環式および非芳香環式の置換基が挙げられる。置換基の例としては例えば、上述したものなどが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に対してひとつもしくはそれ以上、また、同一もしくは別異のものを用いることができる。本発明の目的を達成するためには、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/もしくは、本発明に記載している有機化合物に許容される任意の置換基であって、該ヘテロ原子の原子価を満たすものを有する。本発明は、如何なる場合においても、有機化合物の許容される置換基によって制限されることはない。
「1−アダマンチル」は当該分野において既知であり、次の様な一般式で表される部位を含む:
「(−)−メンチル」は当該分野において既知であり、次の様な一般式で表される部位を含む:
「(+)−メンチル」は当該分野において既知であり、次の様な一般式で表される部位を含む:
「イソボルニル」は当該分野において既知であり、次の様な一般式で表される部位を含む:
「イソピノカンフィル」は当該分野において既知であり、次の様な一般式で表される部位を含む:
「(+)−フェンチル」は当該分野において既知であり、次の様な一般式で表される部位を含む:
「QD」という略語は、次の様な一般式で表される部位を表す:
本発明に使用する触媒
本発明に従う方法において使用する触媒は、非ラセミキラルアミンであり、不斉環境を提供し、アルケンの2つのステレオジェン面間、あるいは、2つもしくはそれ以上のプロキラル部位(例えば、プロキラルまたはメソ分子(すなわち、少なくとも2つのキラル中心を有する分子)内の対称に関連し、両者は、内部対称面または対称点のいずれかもしくは両方を有する)間の立体化学的識別を起こす。一般的に、本発明において意図される触媒は、いくつかの特性によって特徴付けられる。例えば、本発明において使用される各触媒の優れた側面から、三級アミン部位を有する不斉二環もしくは多環骨格の使用が考えられ、そのようなアミン部位は、アミン窒素の近傍に強固またはやや強固な環境をつくり出している。この特徴は、骨格内に存在するひとつもしくはそれ以上の不斉中心近傍のアミン窒素を構造的に固めることを介し、変換全体にわたり、対応する立体異性体遷移状態のエネルギーに有意味な差異をもたらすことに関与している。さらに、置換基の選択も触媒の反応性に影響を及ぼす。
上述したように、触媒置換基の選択も触媒の電気的特性に影響を及ぼす。電子に富んだ(電子供与性)部位(例えば、アルコキシまたはアミノ基)で触媒を置換することにより、三級アミン窒素における触媒の電子密度が上昇し、より強力な求核剤および/またはブレンステッド塩基および/またはルイス塩基になる。逆に、電子に乏しい部位(例えば、クロロまたはトリフルオロメチル基)で触媒を置換すると、三級アミン窒素における触媒の電子密度が低下し、弱い求核剤および/またはブレンステッド塩基および/またはルイス塩基になる。この考えをまとめると、三級アミン窒素の電子密度が窒素のルイス塩基性およびその求核性に影響を与えることから、触媒の電子密度は重要である。従って、適切な置換基を選択することにより、反応速度および反応の立体選択性を「調節する」ことができる。
ひとつの側面から見ると、本発明は次の構造式Iで表される化合物に関し:
ここで、それぞれ別異に、
Rは、置換または未置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、複素環もしくはヘテロシクロアルキルを表し;
R
1は、置換または未置換のアルキルもしくはアルケニルを表し;
R
2およびR
3は、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホナート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
nは、0〜5までの整数であり;
mは、0〜8までの整数であり;さらに、
R
4は、−OH、−OTf、−ONf、−SH、−NH
2、−NHR
2、−NH(C=O)NR
2R
3、−NH(SO
2)R
2、−NH(C=O)OR
2または−NH(C=O)R
2を表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、R4は−OHを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rは、アリールまたはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアリールを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、nは0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、mは0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアリールであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアリールであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式Iおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
ひとつの側面から見ると、本発明は次の構造式IIで表される化合物に関し:
ここで、それぞれ別異に、
Rは、置換または未置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、複素環もしくはヘテロシクロアルキルを表し;
R
1は、アルキルもしくはアルケニルを表し;
R
2およびR
3は、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホナート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
nは、0〜5までの整数であり;
mは、0〜8までの整数であり;さらに、
R
4は、−OH、−OTf、−ONf、−SH、−NH
2、−NHR
2、−NH(C=O)NR
2R
3、−NH(SO
2)R
2、−NH(C=O)OR
2または−NH(C=O)R
2を表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、R4は−OHを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rは、アリールまたはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアリールを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルを表す。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、nは0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、mは0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアリールであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアリールであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明に従う化合物は構造式IIおよび付随する定義のうちの任意のもので表され、ここで、Rはベンジルであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
本発明に従う方法−二官能不斉触媒の調製
本発明のひとつの側面は、スキーム1で図示されるような、二官能触媒の調製法に関し:
ここで、それぞれ別異に、
Xは、Cl、Br、I、OSO
2CH
3またはOSO
2CF
3を表し;
Rは、置換または未置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、複素環もしくはヘテロシクロアルキルを表し;
R
1は、置換または未置換のアルキルもしくはアルケニルを表し;
R
2およびR
3は、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホナート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
nは、0〜5までの整数であり;
mは、0〜8までの整数であり;さらに、
塩基はブレンステッド塩基である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Xは、ClまたはIである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、該塩基は、金属水素化物、アルコキシド、アミドまたはカルボアニオンである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、該塩基は、NaH、CaH2、KHまたはNaである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、アリールまたはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、mは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
本発明のひとつの側面は、スキーム2で図示されるような、二官能触媒の調製法に関し:
ここで、それぞれ別異に、
Xは、Cl、Br、I、OSO
2CH
3またはOSO
2CF
3を表し;
Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、複素環もしくはヘテロシクロアルキルを表し;
R
1は、置換または未置換のアルキルもしくはアルケニルを表し;
R
2およびR
3は、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホナート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
nは、0〜5までの整数であり;
mは、0〜8までの整数であり;さらに、
塩基はブレンステッド塩基である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Xは、ClまたはIである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、該塩基は、金属水素化物、アルコキシド、アミドまたはカルボアニオンである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、該塩基は、NaH、CaH2、KHまたはNaである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、アリールまたはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、mは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
本発明に従う方法−触媒反応
本発明のひとつの側面においては、プロキラルまたはラセミ出発材料から、少なくともひとつのステレオジェン中心を有する化合物を立体選択的に産生する過程を提供する。本発明の利点は、プロキラルまたはラセミ反応物から、鏡像異性体に富んだ生成物を合成できることである。もうひとつの利点は、所望しない鏡像異性体が生成することに伴う収率のロスを実質的に低下させることができる、または全く排除できることである。
一般的に述べると、本発明は、求核反応物、プロキラルもしくはキラル基質、ならびに以下に記載しているような特別な性質を有する非ラセミキラル触媒の触媒量以上を混合することを含む、立体選択的共役付加過程を特徴とする。反応基質は、求核剤による攻撃を受けやすいアルケンを含む。組み合わせは、キラル触媒が求核反応物とアルケン基質との間の共役付加を触媒するのに適した条件下で維持する。この反応は、鏡像異性体選択的過程およびジアステレオ選択的過程に適用できる。この反応は、位置選択的反応にも適用できる。本発明に従って触媒される鏡像異性体選択的反応、動力学的分割および位置選択的反応の例を以下に示す。
本発明に従う方法により、非常に高い立体選択性(例えば、鏡像異性体選択性またはジアステレオ選択性など)または位置選択性で光学活性生成物が得られる。脱対称化反応の好ましい実施態様においては、鏡像異性体過剰率が約50%以上、約70%以上、約90%以上、最も好ましくは約95%以上の生成物が得られる。本発明に従う過程は、商業利用に適した反応条件下で実施することもでき、一般的には、大量操作に適した反応速度で進行させることができる。
上の議論から明らかなように、本発明に従う不斉合成過程によって産生されたキラル生成物をさらに反応に供し、所望するそれらの誘導体を得ることができる。許容されるそのような誘導体化反応は、当該分野において既知の従来から行われている手順に従って行うことができる。実施可能な誘導体化反応の例としては、ネフ反応、求核置換、アミノ基への還元、マイヤー反応、ニトリルオキシドへの転換などが挙げられる(スキーム3)。
特に、本発明は、最終生成物の調製、ならびに治療化合物の調製もしくは開発またはそれらの両方に有用な合成中間体の調製に関する。
ひとつの側面から見ると、本発明は、プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンからキラル非ラセミ化合物を調製する方法に関し、次のような段階を含み:
触媒の存在下、プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンを求核剤と反応させ;それによってキラル非ラセミ化合物を生成し;ここで、該触媒は次の構造式Iで表され:
ここで、それぞれ別異に、
Rは、H、あるいは、置換または未置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、複素環もしくはヘテロシクロアルキルを表し;
R
1は、置換または未置換のアルキルもしくはアルケニルを表し;
R
2およびR
3は、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホナート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
nは、0〜5までの整数であり;
mは、0〜8までの整数であり;さらに、
R
4は、−OH、−OTf、−ONf、−SH、−NH
2、−NHR
2、−NH(C=O)NR
2R
3、−NH(SO
2)R
2、−NH(C=O)OR
2または−NH(C=O)R
2を表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R4は−OHを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、H、アリールまたはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、mは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、二級または三級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は二級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は三級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、マロネート(マロン酸塩)またはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、ジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アルキルアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アリールアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンは、ニトロアルケンである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンは、ジアルキルアゾジカルボキシラートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンは、アルケニルスルホンである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンは、アルケニルケトンである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記触媒の量は、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンに対して約70モル%以下である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記触媒の量は、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンに対して約40モル%以下である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記触媒の量は、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンに対して約10モル%以下である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記触媒の量は、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンに対して約5モル%以下である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記キラル非ラセミ化合物の鏡像異性体過剰率は、約50%以上である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記キラル非ラセミ化合物の鏡像異性体過剰率は、約70%以上である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記キラル非ラセミ化合物の鏡像異性体過剰率は、約90%以上である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記キラル非ラセミ化合物の鏡像異性体過剰率は、約95%以上である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、H、アリールまたはアラルキルであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、Hであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤は、マロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アルキルアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アリールアセタートである。
別の側面から見ると、本発明は、プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンからキラル非ラセミ化合物を調製する方法に関し、次のような段階を含み:
触媒の存在下、プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンを求核剤と反応させ;それによってキラル非ラセミ化合物を生成し;ここで、該触媒は次の構造式IIで表され:
ここで、それぞれ別異に、
Rは、H、あるいは、置換または未置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、複素環もしくはヘテロシクロアルキルを表し;
R
1は、アルキルもしくはアルケニルを表し;
R
2およびR
3は、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホナート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
nは、0〜5までの整数であり;
mは、0〜8までの整数であり;さらに、
R
4は、−OH、−OTf、−ONf、−SH、−NH
2、−NHR
2、−NH(C=O)NR
2R
3、−NH(SO
2)R
2、−NH(C=O)OR
2または−NH(C=O)R
2を表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R4は−OHを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、H、アリールまたはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、mは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、二級または三級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は二級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は三級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、マロネート(マロン酸塩)またはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、ジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アルキルアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アリールアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンは、ニトロアルケンである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンは、ジアルキルアゾジカルボキシレートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンは、アルケニルスルホンである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンは、アルケニルケトンである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記触媒の量は、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンに対して約70モル%以下である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記触媒の量は、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンに対して約40モル%以下である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記触媒の量は、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンに対して約10モル%以下である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記触媒の量は、前記プロキラル電子欠損アルケンもしくはアゾ化合物、あるいはプロキラルアルデヒドまたはプロキラルケトンに対して約5モル%以下である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記キラル非ラセミ化合物の鏡像異性体過剰率は、約50%以上である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記キラル非ラセミ化合物の鏡像異性体過剰率は、約70%以上である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記キラル非ラセミ化合物の鏡像異性体過剰率は、約90%以上である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記キラル非ラセミ化合物の鏡像異性体過剰率は、約95%以上である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、H、アリールまたはアラルキルであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、Hであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤は、マロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アルキルアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アリールアセタートである。
本発明に従う方法−動力学的分割
本発明を別の側面から見ると、鏡像異性体の動力学的分割は、キラル触媒を用い、ラセミ基質を変換させる触媒作用によって行う。ラセミ基質を動力学的に分割する過程においては、ひとつの鏡像異性体を未反応基質として回収し、他方を所望する生成物に変換する。勿論、求核剤を用いた反応によって所望しない鏡像異性体を除去し、所望する鏡像異性体は、変化させずに反応混合物から回収することによって動力学的分割を行うこともできる。本方法のひとつの大きな利点は、高価で鏡像異性体として純粋な出発材料ではなく、安価なラセミ出発材料を使用できることである。ある実施態様においては、二重結合を有するラセミ基質の動力学的分割に触媒を使用できる。
ひとつの側面から見ると、本発明は、次のような段階を含む動力学的分割法に関し:
次の構造式Iで表される触媒の存在下、二重結合を有するラセミ基質に求核剤を反応させ:
ここで、それぞれ別異に、
Rは、H、あるいは、置換または未置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、複素環もしくはヘテロシクロアルキルを表し;
R
1は、置換または未置換のアルキルもしくはアルケニルを表し;
R
2およびR
3は、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホナート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
nは、0〜5までの整数であり;
mは、0〜8までの整数であり;さらに、
R
4は、−OH、−OTf、−ONf、−SH、−NH
2、−NHR
2、−NH(C=O)NR
2R
3、−NH(SO
2)R
2、−NH(C=O)OR
2または−NH(C=O)R
2を表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R4は−OHを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、H、アリールまたはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、mは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、二級または三級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は二級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は三級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、マロネート(マロン酸塩)またはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、ジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤はβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アルキルアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アリールアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、H、アリールまたはアラルキルであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤は、マロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アルキルアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アリールアセタートである。
ひとつの側面から見ると、本発明は、次のような段階を含む動力学的分割法に関し:
次の構造式IIで表される触媒の存在下、二重結合を有するラセミ基質に求核剤を反応させ:
ここで、それぞれ別異に、
Rは、H、あるいは、置換または未置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、複素環もしくはヘテロシクロアルキルを表し;
R
1は、置換または未置換のアルキルもしくはアルケニルを表し;
R
2およびR
3は、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホナート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
nは、0〜5までの整数であり;
mは、0〜8までの整数であり;さらに、
R
4は、−OH、−OTf、−ONf、−SH、−NH
2、−NHR
2、−NH(C=O)NR
2R
3、−NH(SO
2)R
2、−NH(C=O)OR
2または−NH(C=O)R
2を表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R4は−OHを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、H、アリールまたはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルを表す。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、mは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、さらに、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、n は0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルキルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はエチルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルケニルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1は−CH=CH2である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルキルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はエチルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1はアルケニルであり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり、R1は−CH=CH2であり、mは0であり、さらに、nは0である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、二級または三級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は二級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は三級求核剤である。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、マロネート(マロン酸塩)またはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、ジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤はβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アルキルアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アリールアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rは、H、アリールまたはアラルキルであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、RはHであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアリールであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤は、マロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはアラルキルであり;R1は、アルキルまたはアルケニルであり;さらに、前記求核剤はマロネートまたはβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはベンジルであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はジメチルマロネートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤はβ−ケトエステルである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アルキルアセタートである。
ある実施態様においては、本発明は、上述の方法および付随する定義のうちの任意のものに関し、ここで、Rはフェナンスレンであり;R1は−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤は、アルキルもしくはアリールもしくはアラルキル2−シアノ−2−アリールアセタートである。
求核剤
本発明において有用な求核剤は、当業者であれば、いくつかの分類に従って確認できる。一般的には、適切な求核剤は、次に挙げる特徴のうちのひとつもしくはそれ以上を有する:1)所望する求電子部位において基質と反応できる;2)基質との反応によって有用生成物が得られる;3)所望する求電子部位以外の官能基においては、基質と反応しない;4)少なくとも部分的には、キラル触媒による触媒機構を介して基質と反応する;5)所望する様式で基質と反応した後は、所望しない反応は実質的に進行しない;6)実質的に触媒とは反応せず、または、触媒を分解しない。所望しない副反応(例えば、触媒の分解など)が生じたとしても、そのような反応の反応速度は、反応物および条件を選択することにより、所望する反応の反応速度と比較して遅くすることができる。
上述の分類を満たす求核剤は、基質に応じて選択することができ、基質および所望する生成物によって異なる。与えられた変換反応に対する好ましい求核剤を決定するためには、日常的な実験を要する。例えば、含窒素求核剤を所望する場合には、アンモニア、フタルイミド、ヒドラジン、アミンなどから選択することができる。同様に、水、水酸基、アルコール、アルコキシド、シロキサン、カルボキシラートまたは過酸化物などの酸素求核剤を用いて酸素を導入することができ、ならびに、メルカプタン、チオラート、ルビスルファイト、チオシアナートなどを用いて硫黄含有部位を導入することができる。さらなる求核剤も、通常の知識を有する当業者には明らかである。陰イオンとして存在する求核剤には、アルカリおよびアルカリ土類金属陽イオンならびにアンモニウム陽イオンを含む、従来から使用されている多様な陽イオンのうちの任意のものをカウンターイオンとして用いることができる。ある実施態様においては、求核剤は基質の一部であり、従って、分子内反応が生じる。求核剤は、以下のスキームに示すように、一級(式1)、二級(式2)または三級(式3)求核剤である。
基質
上述したように、本発明に従う方法においては、多様な基質が有用である。基質の選択は、使用する求核剤および所望する生成物などの因子にゆだねられ、適切な基質は、当業者には自明である。好ましくは、基質は、如何なる干渉官能基も含まないことは了解できるであろう。一般的に、適切な基質は、離れたステレオジェン面に、少なくともひとつの反応性求電子中心もしくは部位;あるいは、内部平面もしくは対称点によって関連付けられる少なくとも2つの求電子部位を有し、そのような部位に対して、触媒の補助の下に求核剤が攻撃する。求電子中心における触媒作用を介した立体選択的な求核剤の攻撃により、キラル非ラセミ生成物が生成する。本発明に従う方法において使用が考えられる基質の大多数は、少なくともひとつの二重結合を有する。いくつかの実施態様においては、アルケンは、電子吸引基を有し、それによって二重結合が求核剤による攻撃をより受けやすくなっている。本発明の方法による求核剤の攻撃を受けやすい適切なアルケン基質の例としては、ニトロアルケン、ジアルキルアゾジカルボキシラート、アルケニルスルホン、アルケニルケトンなどが挙げられる。
好ましい実施態様においては、アルケンは、プロキラルまたはメソ化合物である。別の実施態様においては、アルケンはキラル化合物である。ある実施態様においては、基質はラセミ混合物である。ある実施態様においては、基質は、ジアステレオ異性体の混合物である。ある実施態様においては、本発明に従う方法は、動力学的分割を可能にする。ある実施態様においては、本発明に従う方法は、動的動力学的分割(dynamic kinetic resolution)を可能にする。ある実施態様においては、電子吸引基は、ニトロ基、スルホニル、ケトンまたはカルボキシラートである。
反応条件
本発明に従う不斉反応は、広範な反応条件下で行うことができ、本明細書に引用している溶媒および温度範囲は、限定的なものではなく、本発明の過程の好ましい様式を示すためものである。
一般的に、反応は、基質、触媒または生成物に悪影響を及ぼさないような緩和な条件を用いて行うことが望ましい。例えば、反応温度は、反応速度、ならびに、反応物、生成物および触媒の安定性に影響を与える。通常、反応は、−78℃〜100℃の範囲の温度、より好ましくは −20℃〜50℃、さらにより好ましくは−20℃〜25℃の範囲で行う。
一般的に、本発明に従う不斉合成反応は、液体反応媒体中で行う。反応は、溶媒を添加せずに行うことができる。別の方法としては、反応は、不活性溶媒、好ましくは、触媒を含む反応材料が実質的に可溶性であるものの中で行うことができる。適切な溶媒としては次のようなものが挙げられる:ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化溶媒;ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ペンタンなどの脂肪族または芳香族炭化水素溶媒;酢酸エチル、アセトンおよび2−ブタノンなどのエステル類ならびにケトン類;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒;ならびに2種もしくはそれ以上の溶媒の組み合わせなど。さらに、ある実施態様においては、使用する条件下においては、基質に対して活性な溶媒を採用することが有利な場合があり、例えば、エタノールが所望する求核剤である場合に、溶媒としてエタノールを使用する。水または水酸基が求核剤として好ましくない実施態様においては、反応を無水条件下で行うことができる。ある実施態様においては、エーテル様溶媒が好ましい。水または水酸基が求核剤として好ましい実施態様においては、反応は、適量の水および/もしくは水酸基を含む溶媒混合物中で行う。
本発明は、溶媒の二層性混合物中、エマルションまたは懸濁液中、あるいは、脂質小胞もしくは二重層中での反応も包含する。ある実施態様においては、固相中で触媒反応を行うことが好ましい。
いくつかの好ましい実施態様においては、反応は、反応性気体雰囲気下において行うことができる。例えば、求核剤としてシアニドを用いた脱対称化は、HCN気体の雰囲気下で行うことができる。反応性気体の分圧は、0.1〜1000気圧、より好ましくは0.5〜100気圧、最も好ましくは約1〜約10気圧である。
ある実施態様においては、窒素またはアルゴンなどの不活性気体雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
本発明に従う不斉合成反応過程は、連続、半連続、またはバッチ様式で行うことができ、所望に応じて、液体リサイクルおよび/もしくは気体リサイクル操作を含む。本発明に従う反応過程は、バッチ様式で行うことが好ましい。同様に、反応材料、触媒および溶媒の添加法または次数はそれほど重要ではなく、従来から行われている任意の方法に従って行うことができる。
反応は、単一の反応帯中または複数の反応帯中、連続もしくは平行して行うことができ、あるいは、バッチ様式、または長い管状帯もしくはそのような一連の帯の中で連続的に行うことができる。使用する構築材料は、反応中に出発材料に対して不活性でなければならず、装置の構造は、反応温度および圧力に耐え得るものでなければならない。バッチまたは反応の進行中に反応帯に連続的に導入する出発材料または原料の導入法ならびに/または量の調整法については、出発材料の所望するモル比を維持することを特に重要視した過程において適宜用いることができる。反応段階は、ひとつの出発材料を他の出発材料に対して増量添加していくことによって遂行される。また、反応段階は、出発材料を光学活性金属リガンドコンプレックス触媒と合わせて添加することによって統合することができる。完全な転換を所望しない、または得られない場合には、生成物から出発材料を分離し、反応帯に戻すことができる。
反応過程は、ガラス内張、ステンレススチールまたは同様な様式の反応装置内で実施できる。反応帯は、過度の温度変動を制御すること、または、反応温度の「急上昇」を防ぐことを目的として、ひとつもしくはそれ以上の内部および/または外部熱交換器を配備する場合がある。
さらに、キラル触媒は、ポリマーまたはその他の不溶性マトリックスに固定化する、または組み込むことができ、例えば、触媒のひとつもしくはそれ以上の置換基を介してポリマーまたは固体支持体に共有結合させる。固定化した触媒は、例えば、ろ過または遠心分離などのような方法により、反応後に容易に回収できる。
鏡像異性体選択的共役付加
複雑な天然物においては、隣接する四級および三級立体中心は一般的な構造的モチーフである。原則的に、キラル触媒を用いたプロキラル三置換もしくは二置換炭素求核剤のプロキラルβ−置換マイケル受容体への立体性制御共役付加により、構造が単純な前駆体から非常にこみ入ったモチーフが一段階で構築できる(スキーム4の式1および2を参照)。しかしながら、このような反応は、同時に四級および三級立体中心を創出するような、立体的に制約が多い分子内C−C結合形成において、触媒が高い鏡像異性体選択性およびジアステレオ異性体選択性を付与することを必要とする。このことは、難しい挑戦であることがわかっている。多数の文献例の中には、触媒を用いた不斉共役付加として、キラルsalen−Alコンプレックスを介した置換シアノアセタートのα,β−不飽和イミドへの付加のみが表されており、そのような付加反応によって隣接する四級および三級立体中心を含む1,4−付加物が、三置換炭素マイケル供与体の実数に関して、優れた鏡像異性体過剰率、および10/1以上のジアステレオ異性体比(dr)で得られている。総説としては次のようなものを参照のこと:(a)シビ(Sibi),M.、マンィエム(Manyem),S.、Tetrahedron,2000,56:8033;(b)クラウス(Kraus),N.、ホフマン−ロダー(Hoffmann-Roder),A.、Synthesis,2001,171;(c)バーナー(Berner),O.M.、テデシ(Tedeschi),L.、エンダース(Enders),D.、Eur.J.Org.Chem.,2002,1877;(d)クリストファーズ(Christoffers),J.、バロ(Baro),A.、Angew.Chem.Int.Ed.,2003,42,1688;(e)ヤマグチ(Yamaguchi),M.、「不斉触媒(Comprehensive Asymmetric Catalysis)」(ヤコブセン(Jacobsen),E.N.、プファルツ(Pfaltz),A.、ヤマモト(Yamamoto),H.編)、スプリンガー(Springer)社、第1巻31.2章151ページ;タイラー(Taylor),M.S.、ヤコブセン(Jacobsen),E.N.、J.Am.Chem.Soc.,2003,125,11204。近傍に四級−三級立体中心を創出するための分子内ジアステレオ選択的および鏡像異性体選択的触媒共役付加に関するその他の注目すべき研究としては、(a)ハマシマ(Hamashima),Y.、ホッタ(Hotta),D.、ソデオカ(Sodeoka),M.、J.Am.Chem.Soc.,2002,124,11240;(b)マセ(Mase),M.、タユマナヴァン(Thayumanavan),R.、タナカ(Tanaka),F.、バーバス(Barbas),C.F.、Org.Lett.,2004,2527-2530などを参照。
シンコナアルカロイド触媒
C8−C9結合の回転を阻止するかご型構造を有する触媒2は、構造的に強固であり、このことは、効率的なキラル触媒またはリガンドの大多数に共通する特徴である(図2を参照)。しかしながら、C9−OH修飾シンコナアルカロイドを含む不斉有機触媒に関する近年の莫大な研究において、C8−C9およびC4'−C9結合周辺に回転の自由度を有するシンコナアルカロイドが、広い範囲で効果的な有機触媒であることが示されている(図1、化合物QD-1、Q-1、QD-3およびQ-3)。効率的な二官能キラル有機触媒を開発するという関心を持ってこの見識をたどることにより、発明者らは、一般構造4(図2)として表されるシンコナアルカロイドの不斉触媒作用について興味を抱きはじめた。シンコナアルカロイド4は、これまで、如何なる不斉反応に対しても効果的な触媒であることは示されていなかったが、化合物4(QD-4およびQ-4)は、キニンおよびキニジンから容易に得られる。故に、それらは、二官能キラル触媒として作用し、与えられたキラル生成物のいずれかの鏡像異性体への直接到達経路を提供する。さらに、化合物4は、調節が容易なC9−OR基を有することから、触媒の活性および選択性の最適化に対する変形に関して化合物1または2よりも制御しやすい。
本発明は、天然もしくは市販の修飾シンコナアルカロイドから、高収率で、かつ実験的に単純な1もしくは2段階プロトコールに従い、触媒QD-4a〜cを調製することから始まっている。次に、これらの触媒、ならびに入手が容易なその他の天然および修飾シンコナアルカロイドについて、マロネートのニトロアルケンへの鏡像異性体選択的1,4−付加反応に対する媒介能を調べたが、そのような付加反応は、入手が容易な出発材料を用いることによる、合成的に重要なC−C結合形成反応である。キラルMg−ビス(オキサゾリン)コンプレックスおよびキラル1,2−ジアミノシクロヘキサン由来の二官能有機触媒を用いることにより、1,4−付加に関して高い鏡像異性体選択性が得られたが、鏡像異性体選択性および基質という観点においてまだ改善の余地がある。
二級求核剤を用いたシンコナアルカロイド触媒の反応
表1には、THF中、多様なシンコナアルカロイドを媒介とし、メチルおよびエチルマロネートのニトロアルケン5aへの付加反応によって得られた結果を示している。
C6'−OHを有するシンコナアルカロイド(化合物2および4)は、C6−OMeを有するものよりも顕著に鏡像異性体選択性が高く、反応速度が速いことがわかった(実験番号7〜10対1〜6)。触媒QD-4a〜cは、立体配座的に固定されてはいないが、2よりも高い鏡像異性体を提供した。興味深いことに、C6'−OHを有するシンコナアルカロイドのうちで構造的に最も単純で事実上最も入手しやすいQD-4aは、2つの水素結合供与体を有するにもかかわらず、最も効率的な触媒であることがわかった。−20℃において、触媒4aまたは4cを用いたエチルマロネートの反応において優れた鏡像異性体選択性が得られたが、同条件下、4aを用いたメチルマロネートの付加反応では、さらに速い反応速度で、高い鏡像異性体選択性が得られた(実験番号13〜15)。重要な点は、Q-4aは、不斉誘導の反対向きに関して鏡像異性体選択性が非常に高く(実験番号16)、−55℃においては、Q-4aを用いることにより、eeが99%にまで達した。(実験番号18)。
DQ-4aおよびQ-4aの存在下、−20℃においてTHF中、アリール、ヘテロアリールおよびアルキル基を有する多様なニトロアルケン(5)をメチルマロネートで処理した。結果を表2に示す。
アリールおよびヘテロアリールニトロアルケン類(5a〜o)は、ee92〜98%、および収率90〜98%で対応する1,4−付加物にきれいに転換することがわかった。多様な立体的特性を伴うアルキル基を有するニトロアルケン類(5p〜r)でも高い鏡像異性体選択性および収率が得られた。ヘテロアリールおよびアルキルニトロアルケン(5m〜r)において一貫して非常に良好な結果が得られたことは注目すべきことであり、なぜならば、そのような基質は、キラルMg−ビス(オキサゾリン)コンプレックスおよび有機触媒を用いた従前の研究においては、比較的困難な基質だったからである。5rを用いて得られた結果は、立体的に障害のあるγ−分岐ニトロアルケンにマロネートが高い鏡像異性体選択性を以て付加した最初の例である。
QD-4a〜cを用いて得られた鏡像異性体選択性および反応速度がキニジン(QD-1)を用いて得られたそれらよりも顕著に勝っていることから、鏡像異性体選択的1,4−付加の遷移状態の安定化および構成において、C6'−OHが重要な役割を果たしていることが示唆される。発明者らは、QD-4aまたはQ-4aの代わりにフェノールを用い、メチルマロネートのニトロアルケン5aへの付加を促進しようと試みたところ、24時間後に1,4−付加物は全く生成していなかったことを確認した。これらの結果から、シンコナアルカロイド4の非常に効率的な鏡像異性体選択的触媒作用には、C6'−OHおよびアミン官能基の存在が必須であることが示唆される。図3〜7は、本発明に従うさらなる反応の結果を図示している。
三級求核剤を用いたシンコナアルカロイド触媒の反応
二級求核剤から得られた結果により、特に、入手が容易なラセミカルボニル化合物からイン・サイチュー( in situ )で簡便に生成できる三置換炭素求核剤を含む、共役付加実験の実施が促された。室温下、THF中において、環状ケトエステル3Aのニトロアルケン2aへの付加に関して触媒4のスクリーニングを行ったところ、Q-2bが1,4−付加物の両方のジアステレオ異性体に関して非常に良好なee(94および95%)を示したものの、それらの生成比はわずかに4.5/1であった(スキーム5)。興味深いことに、反応温度がジアステレオ選択性に劇的な影響を与えることがわかった。−60℃における共役付加では、主要ジアステレオ異性体に対するeeは99%でジアステレオ異性対比は18/1であった。
この有望な結果に続き、Q-4を触媒とするニトロアルケン5への共役付加に関して、広範な種類の三置換炭素マイケル供与体を調べた:
多様な環式および非環式β−ケトエステル類(3A〜D)に関して、顕著なジアステレオ選択性および鏡像異性体選択性が得られた。同様に、2−置換−1,3−ジケトン3Eにおいても高い鏡像異性体選択性が観察され、この反応では、ジアステレオ選択性は大きく低下したが、合成法としては有用である。重要な点は、1,3−ジカルボニル化合物ではない三置換炭素マイケル供与体(3F〜H)(ヘテロ原子置換基を有する化合物(3F〜G)も含む)を用いた場合でも高いジアステレオ選択性および鏡像異性体選択性が得られることである。触媒Q-4が、三置換炭素マイケル供与体という前例のない範囲の化合物群を受け入れ、さらに、多様な電気的および立体的特性を伴うアリール、ヘテロアリールおよびアルキル基を有する広範なニトロアルケン類(5a〜f)を許容することは注目に値する。
この反応の遷移状態集団についての見識を得ることを目的として、機構の研究を行った。Q−4bを用いて生成した6Ddの絶対配置および6Deの相対配置は、X線結晶解析によって決定した。発明者らは、不斉マイケル付加は、触媒、供与体および受容体に一次依存していることを確立した。また、反応は、触媒または基質のいずれかと水素結合を形成し得るプロトン性溶媒(MeOH、EtOH)中よりも非プロトン性溶媒(THF、エーテルおよびトルエン)中において、顕著に高い立体選択性を以て反応が進行することを見出した。遷移状態において柔軟性のある触媒4に対する活性立体配座を図示することを目的として、立体配置的に強固な触媒である7の立体選択性との比較を行った。ここで、7は、供与体および受容体の多様な組み合わせを用いたマイケル付加において使用される触媒である(触媒6は、ハタケヤマ(Hatakeyama)によって最初に報告された。次の文献を参照のこと:(a)イワブチ(Iwabuchi),Y.、ナカタニ(Nakatani),M.、ヨコヤマ(Yokoyama),N.、ハタケヤマ(Hatakeyama),S.、J.Am.Chem.Soc.,1999(121)10219;(b)カワハラ(Kawahara),S.、ナカノ(Nakano),A.、エスミ(Esumi),T.、イワブチ(Iwabuchi),Y.、ハタケヤマ(Hatakeyama),S.、Org.Lett.,2003(5)3103)。QD−4および6によって極めて類似したdrおよびeeプロファイルが得られたことにより、遷移状態における触媒4がゴーシュオープン活性立体配座をとっていることを支持する強力な事実が示された(表4)。立体配座的に強固なシンコナアルカロイドを使用し、Os−触媒シャープレス不斉ジヒドロキシ化のためのリガンドとしてのシンコナアルカロイドの活性立体配座を証明することに関しては、次の文献を参照のこと:(a)コレイ(Corey),E.J.、ノエ(Noe),M.C.、J.Am.Chem.Soc.,1993(115)12579;(b)コレイ(Corey),E.J.、ノエ(Noe),M.C.、J.Am.Chem.Soc.,1996(118)11038。有機触媒としてのシンコナアルカロイドの活性配座の研究については、コレッツ(Coretz),G.S.、
オー(Oh),S.H.、ロモ(Romo),D.,Synthesis,2001,1731を参照。
これらの結果は、不斉マイケル付加に対する効果的な触媒としてQD−4および6を確立するために合成上も注目に値する。
触媒4の活性立体配座に関するこのような重要な見識があるならば、速度論的結果は、酸−塩基二官能触媒様式、および触媒と基質との間の水素結合相互作用によって演じられている重要な役割を示唆している観察された溶媒効果と一致し、不斉マイケル付加の立体化学的結果を合理的に説明するための遷移状態モデル(8)が提案される(スキーム6)。
このモデルにおいては、シンコナアルカロイド4または7は、ゴーシュオープン立体配座をとり、水素結合相互作用のネットワークを介してマイケル供与体および受容体を同時に活性化し、かつ配向させる。結合を形成する2個の炭素の置換基は、重なり配座ではなくねじれ型配座をとっている。他の立体異性体を形成する別の遷移状態は、どちらかといえば好ましくないが、その理由は、キラル触媒と基質(10)との間の水素結合相互作用が消失する、あるいは、結合を形成する炭素(11)の置換基間における好ましくない重なり相互作用が関与するからである。このモデル(9)は、付加物6Baが、スキーム6に示す相対配置をとるべきであることを予測している。喜ばしいことに、このことは、X線分析によって確認された。
三級求核剤のニトロアルケンへの立体選択的マイケル付加(図3〜5、7、10、11および12も参照)に加えて、ニトロアルケン以外の基質を用いた反応も行った(アルドール付加およびマイケル付加については、図8および9を参照。これらの反応では、NO
2基がAcまたはCO
2Meに置き換えられている)。得られたeeは、ニトロアルケン類によって得られた数値ほどインパクトはなかったが、表5に示すように、基質がアゾジカルボキシラートの場合のみ例外的に優れた結果が得られた。
表6は、触媒添加量を10(モル%)から20(モル%)へと2倍にしたところ、eeが低下したことを示す。
炭素求核剤のアルケニルスルホンへの共役付加は、炭素求核剤のニトロアルケンへのそれと同様に、合成的に有用なC−C結合形成反応の部類である。多様なシンコナアルカロイド誘導体について、エチル2−シアノ−2−フェニルアセタートが市販のフェニルビニルスルホンへ立体選択的に付加する反応を促進する能力に関してスクリーニングを行った。(a)タイラー(Taylor),M.S.、ヤコブセン(Jacobsen),E.N.、J.Am.Chem.Soc.,2003,125,11204;(b)タイラー(Taylor),M.S.、ザラタン(Zalatan),D.N.、レークナー(Lerchner),A.M.、ヤコブセン(Jacobsen),E.N.、J.Am.Chem.Soc.,2005,127,1313。表7にまとめているように、多様な天然もしくは修飾シンコナアルカロイドの存在下、室温、トルエン中において、共役付加は円滑に進行した。しかしながら、反応の鏡像異性体選択性は、シンコナアルカロイド誘導体の構造に決定的に依存していることがわかった。キニジンおよびキニンなどのような天然のシンコナアルカロイドを用いた反応では、1,4−付加物がほぼラセミ混合物として生成した(実験番号1〜2)。一般的に、鏡像異性体選択性は、C9−置換基を有するシンコナアルカロイド(実験番号3〜7、9〜12)を用いることによって向上し、中でも、C6'−OHを有するものは、C6'−OMeを有するものよりもより効果的であることがわかった。C6'−OHシンコナアルカロイドの鏡像異性体選択性にに対するC9−置換基の明白な効果も特筆に値する。C9−OHを有するC6'−OHシンコナアルカロイド(実験番号8)または強固なC6'−OH誘導体(実験番号7)により、緩和な鏡像異性体選択性が得られたが、C9位にアリールまたはアルキルエーテルを有するC6'−OHシンコナアルカロイド(実験番号9〜12)では、顕著に高い鏡像異性体選択性に到達することができた。従って、シンコナアルカロイドが調節可能な性質を有することから、触媒による鏡像異性体選択性の最適化に対する決定的な機会が提供された。さらなる最適化は、トルエン中、−25℃において、QD−4cまたはQ−4cを用いて実行できた(実験番号13〜14)。表7の実験番号11に記しているものと同一の条件下、多様な溶媒をスクリーニングした:触媒としてQ−4c(20モル%)を使用、反応温度−25℃、反応時間17時間、TBME(転換率9%、ee58%)、CHCl
3(転換率17%、ee79%)、CH
2Cl
2(転換率17%、ee74%)、DCE(転換率22%、ee81%)、トルエン(転換率46%、ee95%)。
基質範囲に関する研究から、多様な電気的および立体的特性を伴うアリール基類を有するエチル−2−シアノ−2−アリールアセタート12がフェニルビニルスルホンに効率的に鏡像異性体選択的付加を起こし、優れた鏡像異性体選択性かつ優れた収率で、全ての炭素が四級立体中心を有する1,4−付加物14が得られた(表8)。特記すべきことは、エチル2−シアノ−2−ヘテロアリールアセタートを用いることによっても高い鏡像異性体選択性および収率が得られたことである(表8の実験番号9)。
エチル2−シアノ−2−アリールアセタートに関する一般的な範囲が確立されたことから、エチル2−シアノ−2−アルキルアセタートを用いた共役付加を行った。アリール同族体と比較した場合に、エチル2−シアノ−2−アルキルアセタートは、シンコナアルカロイドを触媒とするアルキルスルホンへの共役付加に対するマイケル供与体としては、非常に活性が低かった。Q−4cを用いてフェニルビニルスルホンにエチル2−シアノ−2−フェニルアセタート12Aを付加させる反応は、室温、17時間で完結したが(表9の実験番号12)、エチル2−シアノ−2−アリルアセタート12Jの付加反応では、同一時間中にわずか17%しか転換しなかった(表9の実験番号1)。
シンコナアルカロイドを触媒とし、エチル2−シアノ−2−アルキルアセタートを用いた共役付加は、アルケニルスルホン13の求電子性を増強することによってかなり加速することができるが、そのような求電子性の増強は、13の芳香環上に電子吸引置換基を導入することによって可能になる。このことを念頭に置き、Q−4cを触媒とする、12Jの3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルビニルルスルホン13bへの共役付加は、室温で行った。反応は実際に加速され、17時間後には88%の転換が生じており、1,4−付加物がee86%で得られた(表9の実験番号2)。従って、6'−OHシンコナアルカロイド触媒が、アルケニルスルホン受容体の構造変化を許容する能力を有することから、アルケニルスルホン受容体の電気的特性を調節することにより、エチル2−シアノ−2−アルキルアセタートの共役付加速度を顕著に上昇させることができた。マイケル供与体および受容体を、実際的に興味の対象となる1:1化学量論で用いた場合、完全転換および優れた鏡像異性体選択性を伴う12Jの13Bへの共役付加は、0℃でようやく達成された(表9の実験番号3)。重要な点は、エチル2−シアノ−2−メチルアセタート12Kの13bへの共役付加に対しても高い鏡像異性体選択性がすぐに得られたたことである(表9の実験番号4)。
光学活性キラルスルホン類14の合成上の用途は、α,α−ジ置換アミノ酸に関し、触媒を用いた可転性鏡像異性体選択的合成法の開発において示されている(スキーム6)。
アルキルスルホン類を用いた鏡像異性体選択的付加反応は、生物学的に重要なα,α−ジ置換アミノ酸の不斉合成に応用された。これまでは、不斉触媒を介して到達できなかったアミノ酸である16の合成において示されているように、本方法は、既存の酵素法を補完し、それによって、酵素不斉合成によって到達可能なα,α−ジ置換アミノ酸の範囲を拡大するものである。総説として、カティヴィエラ(Cativiela),C.、ディアズ−デ−ヴィレガス(Diaz-de-Villegas)M.D.、Tetrahedron:Asymmetry,1998(9)3517を参照。最近の報告としては、(b)オオイ(Ooi),T.、タケウチ(Takeuchi),M.、カメダ(Kameda),M.、マルオカ(Maruoka),K.、J.Am.Chem.Soc.,2000(122)5228;(c)マルオカ(Maruoka),K.、オオイ(Ooi),T.、Chem.Rev.,2003(103)3013;(d)ヴァチャル(Vachal),P.、ヤコブセン(Jacobsen),E.N.、Org.Lett.,2000(2)867;(e)ヴァチャル(Vachal),P.、ヤコブセン(Jacobsen),E.N.,J.Am.Chem.Soc.,2002(124)10012、;(f)キャヴァロール(Chavarol),M.、ビルン(Byrne),J.J.、キャヴァン(Chavant),P.Y.、ヴァレー(Vallee),Y.、Tetrahedron:Asymmetry,2001(12)1147;(g)マスモト(Masumoto),S.、ウスダ(Usuda),H.、スズキ(Suzuki),M.、カナイ(Kanai),M.、シバサキ(Shibasaki),M.、J.Am.Chem.Soc.,2003(125)5634などを参照。
同様に、β−ケトエステルのアルケニルケトンへの共役付加は、全ての炭素に四級立体中心を創出するための有力な方法を提供するが、これは、マイケル供与体および受容体の受入れ範囲が広いこと、ならびに、1,4−付加物の用途の広さが証明されたことによる。6'−OHシンコナアルカロイドであるQ−4およびQD−4は、多様な炭素求核剤をニトロアルケンに共役付加させるための効率的な二官能キラル有機触媒であることが示されているが、Q−4およびQD−4を用いてα−置換−β−ケトエステル22のメチルビニルケトン(MVK)への鏡像異性体選択的付加を促進させようという初期の試みは失敗に終わった。トルエン中、Q−4を用いて行ったケトエステル22AおよびMVKの反応は、室温下、0.5〜2時間で完結した。残念なことに、1,4−付加物24Aaは、中程度のeeでしか生成
しなかった(表10の実験番号1〜3)。鏡像異性体選択性は、塩化メチレンもしくはエーテル(酢酸エチル、THF、DMF、クロロホルム、TBME、ジエチルエーテル、メタノール、トルエンについてスクリーニングを行った)中で反応を行う、ならびに、反応温度を下げることによって向上させることができた。しかしながら、−78℃においても、合成的に有用なレベルには到達しなかった(表10の実験番号6)。ケトエステル22のエステル基の修飾が鏡像異性体選択性に与える影響を調べた。QD−4bまたはQ−4bを用いたt−ブチルケトエステル22BのMVKへの共役付加は、わずか30分で完結に至り、さらに目立った点としては、室温でも高い鏡像異性体選択性を以て進行したことである(表10の実験番号7〜8)。鏡像異性体選択性は、触媒Q−4cを用いることによってさらに向上し、最高ee97%で1,4−付加物24Baが生成した(表10の実験番号10)。特筆すべきことは、触媒添加量がわずか1.0モル%であっても、完全かつ鏡像異性体選択性が高い共役付加物が3時間以内に得られたことである(表10の実験番号11)。
これらの有望な結果を鑑み、反応の範囲を調べた(表11)。環状芳香環式β−ケトエステル22B〜Dをメチル、エチルおよびアリールアルケニルケトン(23a〜d)に付加する反応は、迅速に進行し、優れた鏡像異性体選択性および高収率で完結した(表11の実験番号1〜5)。22Bの23aへの付加と比較して、22E(脂環式ケトエステル)の23aへ付加においては、反応速度が極端に低下した(表11の実験番号6対実験番号1)。22Eのα−プロトンの酸性度が22Bのそれと比較して大きく低下していることが、22F(強力な電子吸引性ヘキサフルオロイソプロピルエステル基を有する脂肪族ケトエステル)のMVK23への付加速度を強力に低下させているという仮説により、さらなる調査を行った。喜ばしいことに、10モル%のQ−4cおよびQD−4cを用いた反応は、30分以内に完結し、1,4−付加物24Daが、ee96%およびee95%で、それぞれ良好な収率で得られた。この場合も、触媒添加量を1.0モル%に低下させた場合でも、鏡像異性体選択性および収率は高いままであった(表11の実験番号8)。QD−4cを用いた6員環ケトエステル22Gおよび非環式ケトエステル22HのMVK(23a)への付加速度も鏡像異性体選択性が高いことがわかった(表11の実験番号9〜10)。これらの付加反応では、24時間以内に反応を確実に完結させるために10モル%のQD−4cを用いたが、QD−4cは、ほぼ定量的に容易にリサイクルできたことを特記しておく。
表11にまとめた基質範囲に関する研究から、供与体として環式および非環式β−ケトエステルを、受容体としてアルキルもしくはアリール置換基を有するアルケニルケトンを用いることによって可能な、迅速、きれい、かつ鏡像異性体選択性が高い共役付加反応が明らかになった。QD−4cが多様なアルケニルケトン類に対して一貫して高い鏡像異性体選択性を提供する能力は特に注目に値し、発明者らの知る限りでは、鏡像異性体選択性の高さ(>ee90%)については、α−置換ケトエステルの酵素触媒共役付加は、MVK(23a)以外のアルケニルケトンに対しては達成されていない。
本発明を一般的に記してきたが、以下の実施態様を参照にすることにより、よりよく理解できるはずである。以下の実施態様は、本発明の特定の側面および実施態様について例示することのみを目的とするためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
一般情報:1Hおよび13C−NMRスペクトルは、Varian社の装置(それぞれ、400MHzおよび100MHz)で記録し、テトラメチルシランシグナルまたは残留プロトン溶媒シグナルを内部標準とした。1H−NMRデータは次のように記録した:化学シフト(δ、ppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、m=マルチプレット)、積算、カップリング定数(Hz)。13C−NMRデータは、化学シフト(δ、ppm)について記録した。赤外線スペクトルは、Perkin Elmer FT-IR Spectrometerで記録し、吸収頻度を記載した。全ての新規化合物に対する低解析質量スペクトルは、20eV、CH4/CIまたはNH3/CIのいずれかで行い、Hewlett-Packard 5989A GC/MSで記録し、正確な質量スペクトルは、VG7070高解析質量スペクトルメーターで記録した。特異的回転は、Jasco Digital Polarimeterで測定した。
高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析は、四次元ポンプ(quaternary pump)を備えたHewlett-Packard 1100シリーズ装置上、Daicel Chiralpak OD Column(250×4.6mm)またはRegis (R,R)Whelk-O1 Reversible Columun(250×4.6mm)を用いて行った。UV検出は、220nmまたは254nmでモニターした。
ニトロアルケン類5a、5d、5k、5mは、アルドリッヒ(Aldrich)社から購入し、5oは、TCIアメリカ(TCI America)社から購入した。それらはさらに精製を行うことなく使用した。その他のニトロアルケン類は、文献記載の方法に従って調製した。(a)デンマーク(Denmark),S.E.、マーチン(Marcin),L.R.、J.Org.Chem.,1993(58)3850-3856;(b)バルブール(Bulbule),V.J.、ナネシュワラ(Jnaneshwara),G.K.、デシュムクー(Deshmukh),R.R.、ボラーテ(Borate),H.B.、デシュパンド(Deshpande),V.H.、Synthetic Comm.2001(31)3623-3626。
エチル2−シアノ−2−メチルアセタートは、TCIアメリカ(TCI America)社から購入し、エチル2−シアノ−2−フェニルアセタートおよび全てのジアルキルアゾジカルボキシラート類はランカスター(Lancaster)社から購入し、そのまま使用した。その他のエチル2−シアノ−2−アリールアセタート類は、文献記載の方法に従って調製した。(a)カイザー(Kaiser),E.M.、ソルター(Solter),L.E.、シュワルツ(Schwarz),R.A.、ビアード(Beard),R.D.、ハウザー(Hauser),C.R.、J.Am.Chem.Soc.,1971(93)4237;(b)アルバレラ(Albarella),J.M.、J.Org.Chem.,1977(42)2009。
無水トルエンおよびフェニルビニルスルホンは、アルドリッヒ(Aldrich)社から購入した。その他のアルケニルスルホン類は、文献記載の方法に従って調製した。アロノス(Alonos),D.A.、ヌエラ(Nujera),C.、ヴァレア(Varea),M.、Synthesis,2003,277。β−ケトエステルは、文献記載の方法に従って調製した。(a)ナカジマ(Nakajima),M.、ヤマモト(Yamamoto),S.、ヤマグチ(Yamaguchi),Y.、ナカムラ(Nakamura),S.、ハシモト(Hashimoto),S.、Tetrahedron,2003(59)7307-7313;(b)バブラー(Bubler),J.H.、サルッシ(Sarussi),S.J.、J.Org.Chem.,1987(52)3462-3464;(d)ヒンターマン(Hintermann),L.、トーニ(Togni),A.、Helvetiva Chimica Acta、2000(83),2425-2435。βケトエステル22Cおよび2dDは、文献記載の方法を変形して調製した。α,β−不飽和ケトン類23aおよび23hは、アルドリッヒ(Aldrich )社から購入し、23bは、アクロス(Acros)社から購入し、それらは全て、さらに精製することなく使用した。その他の触媒は、アルドリッヒ(Aldrich)社から購入し、さらに精製することなく使用した。溶媒は全て、使用直前にナトリウムまたはCaH2を用いて蒸留した。
実施例1:キニジン9−O−(9'−フェナンスリル)エーテル(QD-PHN)の調製
メカニカルスターラーを入れ、還流冷却器、ならびに、不活性ガスの入口および出口を取り付けた500mlの三ッ口丸底フラスコにキニジン(QD−1、12.8g、39.5mmol、1.2当量)を入れた。フラスコに30分間アルゴンを穏やかに流した。無水ジメチルスルホキシド(130ml、CaH
2の存在下、用時蒸留)を加え、全てのキニジンが溶解するまで、室温で反応混合物を撹拌した。無水水素化ナトリウム(60%の油中分散、2.0g、1.5当量)を少量ずつ加えたところ、対応するナトリウムアルコキシドの橙色でやや濁った溶液が得られた。反応混合物に室温でピリジン(6.4ml、2.4当量)およびヨウ化銅(I)(7.8g、1.2当量)を加えることにより、反応混合物の色が橙色から深緑色に変化した。30分後、全ての沈殿物が溶解し、透明な溶液が得られた。9−ヨードフェナンスレン(10.0g、32.9mmol)を加え、反応混合物を113℃(油浴を使用、120℃に設定)で70時間維持した。反応混合物を放置して室温まで冷却した。褐色の溶液に水(100ml)、塩化メチレン(100ml)およびジエチルエーテル(100ml)を順に加え、続いて、無水エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(20g)および濃アンモニア水溶液(20ml、29%、w/w)を加えた。アルゴン注入口をはずし、反応混合物を良く撹拌しながら約1時間空気を穏やかに流した。反応混合物を分液ろうとに移し、暗褐色の有機層から青緑色の水層を分離した。水層を塩化メチレン(100ml)で2回洗浄し、合わせた有機層は、アンモニア水溶液(200ml、5%、w/w)を用い、水層が無色になるまで3回抽出した。次に、有機層をHCl水溶液(1N、2×50ml)で2回洗浄し、H
2Oで3回洗浄し(3×50ml)、残っているQDを除去した。有機層はNH
4OHで洗浄して塩を中和し、Na
2SO
4で乾燥後、溶媒を減圧除去して粗生成物を得た。粗生成物をエチルエーテル(300ml)に溶解し、HCl(Et
2O中1N)を用いて沈殿がそれ以上生じなくなるまで処理した。沈殿を回収してCH
2Cl
2に溶解し、NH
4OHを用いて液性を塩基性にした後、Na
2SO
4で乾燥させ、溶媒を減圧蒸留することにより、黄色がかった泡状のQD-PHN(5.6g、収率66%)を得た。
実施例2:キニジン9−O−ベンジルエーテル(QD−OBn)の調製
QD(2.0g、6.2mmol)をDMF(20ml、DMFにCaH
2を懸濁させたものから用時蒸留)に溶解した溶液中にNaH(0.68g、鉱油中57%の懸濁液、2.5当量)を加え、室温で2時間撹拌した。次に、シリンジを用い、BnCl(0.78ml、1.1当量)を10分間かけて滴下し、一晩撹拌した。反応が終了した時点でブライン(20ml)を注意深く加え、得られた混合物を酢酸エチル(100ml)で抽出した。有機層をブライン(3×50ml)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(MeOH/酢酸エチル=1/40)で精製することにより、黄色がかった油状の物質を得た(2.3g、収率90%)。
実施例3:QD−4a、QD−4b、QD−4cおよびQ−4aの調製に関する一般的方法
N2雰囲気下、乾燥DMF(50ml、DMFにCaH2を懸濁させたものから用時蒸留)にQD(8.0mmol)を懸濁させたものについて、TLC分析によってQDが完全に消費されたことが確認されるまで、110℃で4〜6時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却させた後、飽和NH4Cl(40ml)およびH2O(50ml)を混合し、pH試験紙でpH=7になるまでモニターした。得られた混合物を酢酸エチル(2×200ml)で抽出し、有機層をブライン(4×50ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/MeOH/NEt3系)にかけ、所望する生成物を得た。
QD−4aは、黄色がかった固体として、キニジンから収率92%で得られた。
QD−4bは、黄色がかった粉末として、QD−Bnから収率87%で得られた。
QD−4cは、黄色がかった固体として、QD−PHNから収率91%で得られた。
Q−4aは、白色固体として、キニンから収率80%で得られた。
実施例4:ラセミ付加物(6a〜r)の調製
室温において、ニトロアルケン(0.1mmol)のTHF溶液(1.0M)にジメチルマロネートおよび塩基(アリール置換体5a〜5oに対してはDABCO(20モル%)を使用し、アルキル置換体5p〜rに対してはKOBut(5モル%)を使用した)を加えた。反応が完全に終わった後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、HCl(1.0N水溶液)およびブラインで洗浄した。有機層は、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。残渣はフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。
実施例5:ジメチルマロネートのニトロアルケンへの鏡像異性体選択的マイケル付加に関する一般的方法
−20℃において、ニトロアルケン(0.2mmol)のTHF(0.2ml)溶液にジメチルマロネート(68μl、3当量)およびキラル触媒(6.2mg、10モル%)を加えた。得られた混合物は、5が消費されてしまうまで、−20℃に維持した。次に、反応混合物をシリカゲル栓に通して触媒を除去した(溶媒はエーテルまたは酢酸エチル)。ろ液を減圧濃縮し、残渣はフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。
(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−フェニル−ブチラート((+)−6a)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率97%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel chiralpak OD、ヘキサン:IPA=70:30、流速0.9ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=11.6分、t(微量生成物)=13.7分)によって測定されたeeは96%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−フェニル−ブチラート((−)−6a)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率99%の無色油状物質として得られ、eeは93%であった。
実施例7:(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブチラート((+)−6b)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率97%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Chiralcel AD、ヘキサン:IPA=70:30、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=7.6分、t(微量生成物)=12.4分)によって測定されたeeは97%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−フルオロ−フェニル)ブチラート((−)−6b)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率97%の無色油状物質として得られ、eeは94%であった。
実施例8:(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−クロロ−フェニル)−ブチラート((+)−6c)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率97%の白色固体として得られ、HPLC分析(Daicel chiralpak OD、ヘキサン:IPA=70:30、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=10.5分、t(微量生成物)=15.6分)によって測定されたeeは97%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−クロロ−フェニル)ブチラート((−)−6c)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率97%の白色固体として得られ、eeは94%であった。
実施例9: (+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−ブロモ−フェニル)−ブチラート((+)−6d)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率99%の白色固体として得られ、HPLC分析(Daicel chiralpak OD、ヘキサン:IPA=60:40、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=9.6分、t(微量生成物)=12.9分)によって測定されたeeは96%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−ブロモ−フェニル)ブチラート((−)−6d)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率98%の白色固体として得られ、eeは94%であった。
実施例10:(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−メチルフェニル)ブチラート((+)−6e)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率97%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel chiralpak OD、ヘキサン:IPA=70:30、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=9.8分、t(微量生成物)=11.0分)によって測定されたeeは98%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−メチルフェニル)ブチラート((−)−6e)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、44時間反応させることにより、収率97%の無色油状物質として得られ、eeは94%であった。
実施例11:(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−イソプロパニルフェニル)ブチラート((+)−6f)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率95%の白色固体として得られ、HPLC分析(Daicel chiralpak OD、ヘキサン:IPA=70:30、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=10.1分、t(微量生成物)=13.4分)によって測定されたeeは97%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−イソプロパニルフェニル)ブチラート((−)−6f)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、39時間反応させることにより、収率96%の白色固体として得られ、eeは93%であった。
実施例12:(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−メトキシフェニル)ブチラート((+)−6g)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、44時間反応させることにより、収率90%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Chiralcel AD、ヘキサン:IPA=60:40、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=7.6分、t(微量生成物)=11.9分)によって測定されたeeは97%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(4−メトキシフェニル)ブチラート((−)−6g)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、47時間反応させることにより、収率94%の無色油状物質として得られ、eeは95%であった。
実施例13:(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(3−メチルフェニル)ブチラート((+)−6h)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率97%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel chiralpak OD、ヘキサン:IPA=92:8、流速0.9ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=19.8分、t(微量生成物)=22.2分)によって測定されたeeは97%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(3−メチルフェニル)ブチラート((−)−6h)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率99%の無色油状物質として得られ、eeは93%であった。
実施例14:(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(2−メチルフェニル)ブチラート((−)−6i)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率95%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Chiralcel AD、ヘキサン:IPA=80:20、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(微量生成物)=6.5分、t(主要生成物)=12.2分)によって測定されたeeは98%であった。
(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(2−メチルフェニル)ブチラート((+)−6i)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率97%の無色油状物質として得られ、eeは96%であった。
実施例15:(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(2−フルオロフェニル)ブチラート((+)−6j)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率97%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Chiralcel AD、ヘキサン:IPA=80:20、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(微量生成物)=8.2分、t(主要生成物)=10.1分)によって測定されたeeは97%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(2−フルオロフェニル)ブチラート((−)−6j)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率94%の無色油状物質として得られ、eeは95%であった。
実施例16:(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(2−ニトロフェニル)ブチラート((+)−6k)
本生成物は、−55℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、69時間反応させることにより、収率90%の黄色がかった油状物質として得られ、HPLC分析(Diacel chiralpak OD、ヘキサン:IPA=50:50、流速0.9ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=8.5分、t(微量生成物)=15.7分)によって測定されたeeは97%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(2−ニトロフェニル)ブチラート((−)−6k)
本生成物は、−55℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、72時間反応させることにより、収率88%の黄色がかった油状物質として得られ、eeは92%であった。
実施例17:(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(1−ナフチル)ブチラート((−)−6l)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率99%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Chiralcel AD、ヘキサン:IPA=80:20、流速1.0ml/分、λ=280nm、t(微量生成物)=9.5分、t(主要生成物)=13.7分)によって測定されたeeは98%であった。
(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(1−ナフチル)ブチラート((+)−6l)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率99%の無色油状物質として得られ、eeは92%であった。
実施例18:(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(2−チエニル)ブチラート((−)−6m)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率99%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Chiralcel AD、ヘキサン:IPA=80:20、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(微量生成物)=8.8分、t(主要生成物)=10.6分)によって測定されたeeは98%であった。
(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(2−チエニル)ブチラート((+)−6m)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒し、44時間反応させることにより、収率96%の無色油状物質として得られ、eeは95%であった。
実施例19:(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(2−フリル)ブチラート((−)−6n)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率97%の黄色がかった油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel chiralpak OD、ヘキサン:IPA=60:40、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=6.2分、t(微量生成物)=14.9分)によって測定されたeeは98%であった。
(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(2−フリル)ブチラート((+)−6n)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率99%の黄色がかった油状物質として得られ、eeは96%であった。
実施例20:(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(3−ピリジニル)ブチラート((+)−6o)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率98%の白色固体として得られ、HPLC分析(Chiralcel AD、ヘキサン:IPA=60:40、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(微量生成物)=6.6分、t(主要生成物)=9.2分)によって測定されたeeは96%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−(3−ピリジニル)ブチラート((−)−6o)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、36時間反応させることにより、収率99%の白色固体として得られ、eeは92%であった。
実施例21:(+)−メチル2−カルボメトキシ−3−ニトロメチルオクタノエート((+)−6p)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、72時間反応させることにより、収率81%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel chiralpak OD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.0ml/分、λ=215nm、t(主要生成物)=6.1分、t(微量生成物)=12.3分)によって測定されたeeは94%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−3−ニトロメチルオクタノエート((−)−6p)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、72時間反応させることにより、収率82%の無色油状物質として得られ、eeは91%であった。
実施例22:(+)−メチル2−カルボメトキシ−5−メチル−3−ニトロメチルヘキサノエート((+)−6q)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(10モル%)を触媒とし、72時間反応させることにより、収率86%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel chiralpak OD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.0ml/分、λ=215nm、t(主要生成物)=5.6分、t(微量生成物)=11.2分)によって測定されたeeは94%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−5−メチル−3−ニトロメチルヘキサノエート((−)−6q)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(10モル%)を触媒とし、72時間反応させることにより、収率84%の無色油状物質として得られ、eeは92%であった。
実施例23:(+)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−シクロヘキシルブチラート((+)−6r)
本生成物は、−20℃において、Q−4a(20モル%)を触媒とし、108時間反応させることにより、収率71%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel chiralpak OD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.0ml/分、λ=215nm、t(主要生成物)=6.0分、t(微量生成物)=14.8分)によって測定されたeeは94%であった。
(−)−メチル2−カルボメトキシ−4−ニトロ−3−シクロヘキシルブチラート((−)−6r)
本生成物は、−20℃において、QD−4a(20モル%)を触媒とし、108時間反応させることにより、収率80%の無色油状物質として得られ、eeは91%であった。
実施例24:3A〜Hのニトロアルケン類2a〜fへの不斉マイケル付加に関する一般的方法
6Aa、6Ba、6Bb、6Bc、6Eaを生成するための不斉共役付加については、0.4mmolの3A、3Bおよび3E(2.0当量)ならびに0.2mmolの5a〜cを使用し;6Caを生成するための反応については、0.8mmolの3C(4当量)および0.2mmolの5aを使用し;その他の反応については、0.2mmolの3および0.4mmolの5を使用した。収率は、制限反応試薬に基づいて計算した。制限反応試薬として供与体または受容体のいずれを使用するかの選択は、過量出発材料(3または5)から、生成物6がどの程度容易に分離できるかに基づいて行った。3および2の比率を変化させても、不斉共役付加のジアステレオ選択性および鏡像異性体選択性に影響はなかった。
触媒Q−4bを使用した場合には、はじめにTHFに懸濁させた。得られた懸濁液を10〜15分間超音波にかけたところ、乳状混合物になった。この溶液に、以下の手順に従って出発材料を加えた。
手順:表3および4に指定している温度において、制限反応試薬(3または5、0.2mmol)およびキラル触媒(Q−4、QD−4または7、10〜20モル%)のTHF(0.2ml)溶液中に、その他の反応試薬(5または3、2または4当量)を加えた。得られた混合物は、制限反応試薬が消費されてしまうまで、指定の温度に保った。次に、反応混合物をシリカゲル栓に通して触媒を除去した。シリカゲル栓にエーテルまたは酢酸エチル(2〜3ml)を流した。合わせたろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて精製した。
Q−4b(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−60℃で48時間かけて行い、粗生成物を得た(dr=95:5、1セットの
1H NMRシグナルの積算により判断(主要生成物のδ=5.16〜5.12ppm、微量生成物のδ=5.27〜5.21ppm))。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=12:1)で精製し、収率94%(dr=95:5)の無色油状の付加物6Aaを得、eeは99%であった(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:IPA=80:20、流速1.00ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=11.0分、t(微量生成物)=17.0分)
QD−4c(10モル%)を触媒とする反応は、−60℃で48時間かけて行い、粗生成物を得(dr=94:6)、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率97%(dr=94:6)の付加物6Aaを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)。
7(10モル%)を触媒とする反応は、−60℃で36時間かけて行い、粗生成物を得(dr=97:3)、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率97%(dr=97:3)の付加物6Aaを得、eeは98%であった(主要ジアステレオ異性体)。
Q−4b(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−60℃で96時間かけて行い、粗生成物を得た(dr>98:2、1セットの
1H NMRシグナルの積算により判断(主要生成物のδ=4.87〜4.82ppm、微量生成物のδ=4.55〜4.51ppm、微量生成物ピークは、
1H NMRで検出できなかった))。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で精製し、収率87%(dr>98:2)の無色油状の6Aeを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:IPA=95:5、流速0.8ml/分、λ=215nm、t(主要生成物)=11.0分、t(微量生成物)=16.6分)
Q−4a(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−20℃で72時間かけて行い、粗生成物を得た(dr>98:2、1セットの
1H NMRシグナルの積算により判断(主要生成物のδ=5.06〜5.02ppm、微量生成物のδ=5.17〜5.11ppm、微量生成物ピークは、
1H NMRで検出できなかった))。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、収率93%(dr>98:2)の白色固体の6Baを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=95:5、流速0.9ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=12.3分、t(微量生成物)=17.0分)
6Baの相対立体配置は、(−)−6BaのX線結晶解析によって決定した。
Q−4a(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−20℃で74時間かけて行い、粗生成物を得た(dr>98:2、1セットの
1H NMRシグナルの積算により判断(主要生成物のδ=4.88〜4.85ppm、微量生成物のδ=5.14〜5.08ppm、微量生成物ピークは、
1H NMRで検出できなかった))。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、収率91%(dr>98:2)の無色油状の6Baを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:IPA=95:5、流速0.9ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=14.9分、t(微量生成物)=24.6分)
Q−4a(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−20℃で74時間かけて行い、粗生成物を得た(dr>98:2、1セットの
1H NMRシグナルの積算により判断(主要生成物のδ=5.01〜4.97ppm、微量生成物のδ=5.16〜5.10ppm、微量生成物ピークは、
1H NMRで検出できなかった))。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=12:1)で精製し、収率95%(dr>98:2)の無色油状の6Bcを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=90:10、流速0.8ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=11.4分、t(微量生成物)=18.6分)
QD−4a(10モル%)を触媒とする反応は、−20℃で72時間かけて行い、粗生成物を得(dr>98:2)、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率96%(dr>98:2)の付加物6Bcを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)。
7(10モル%)を触媒とする反応は、−20℃で60時間かけて行い、粗生成物を得(dr>98:2)、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率97%(dr>98:2)の付加物6Bcを得、eeは98%であった(主要ジアステレオ異性体)。
Q−4c(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、23℃で96時間かけて行い、粗生成物を得た(dr>98:2、1セットの
1H NMRシグナルの積算により判断(主要生成物のδ=4.55〜4.50ppm、微量生成物のδ=4.62〜5.47ppm、微量生成物ピークは、
1H NMRで検出できなかった))。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製し、収率83%(dr>98:2)の無色油状の6Beを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=90:10、流速0.8ml/分、λ=215nm、t(主要生成物)=11.0分、t(微量生成物)=19.2分)
Q−4c(15モル%)を触媒とする反応は、THF中、−20℃で63時間かけて行い、粗生成物を得た(dr=91:9、1セットの
1H NMRシグナルの積算により判断(主要生成物のδ=2.17ppm、微量生成物のδ=2.12ppm))。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=13:1)で精製し、収率73%(純粋なジアステレオ異性体)の無色油状の付加物6Caを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=90:10、流速0.9ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=10.3分、t(微量生成物)=26.6分)
QD−4c(10モル%)を触媒とする反応は、−20℃で60時間かけて行い、粗生成物を得(dr=82:18)、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率70%(純粋なジアステレオ異性体)の付加物6Caを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)。
7(10モル%)を触媒とする反応は、−20℃で64時間かけて行い、粗生成物を得(dr=89:11)、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率75%(純粋なジアステレオ異性体)の付加物6Caを得、eeは96%であった(主要ジアステレオ異性体)。
Q−4b(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−60℃で44時間かけて行い、粗生成物を得た(dr=98:2、1セットの
1H NMRシグナルの積算により判断(主要生成物のδ=2.31ppm、微量生成物のδ=2.43ppm))。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1)で精製し、収率87%(dr=98:2)の白色固体の付加物(−)−6Ddを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=60:40、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=10.3分、t(微量生成物)=20.0分)
(−)−6Ddの絶対配置は、(−)−6DdのX線結晶解析によって決定した。
QD−4c(10モル%)を触媒とする反応は、−60℃で40時間かけて行い、粗生成物を得(dr=97:3)、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率92%(dr=97:3)の付加物(+)−6Ddを得、eeは98%であった(主要ジアステレオ異性体)。
7(10モル%)を触媒とする反応は、−60℃で36時間かけて行い、粗生成物を得(dr=97:3)、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率92%(dr=97:3)の付加物(+)−6Ddを得、eeは98%であった(主要ジアステレオ異性体)。
Q−4c(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−60℃で48時間かけて行い、粗生成物を得た(dr=42:1、1セットの
1H NMRシグナルの積算により判断(主要生成物のδ=2.37ppm、微量生成物のδ=2.40ppm))。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、収率82%(dr=98:2)の白色固体の付加物6Deを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=90:10、流速0.8ml/分、λ=215nm、t(主要生成物)=20.4分、t(微量生成物)=51.0分)
6Deの相対配置は、(+)−6DeのX線結晶解析によって決定した。
Q−4b(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−60℃で48時間かけて行い、粗生成物を得た(dr=86:14、1セットの
1H NMRシグナルの積算により判断(主要生成物のδ=4.39〜4.35ppm、微量生成物のδ=4.28〜4.24ppm))。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=12:1)で精製し、収率76%(純粋なジアステレオ異性体)の白色固体の付加物6Eaを得、eeは99%であった(主要ジアステレオ異性体)(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=80:20、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=12.6分、t(微量生成物)=53.3分)
QD−4c(10モル%)を触媒とする反応は、−60℃で48時間かけて行い、粗生成物を得(dr=88:12)、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率70%(純粋なジアステレオ異性体)の付加物6Eaを得、eeは98%であった(主要ジアステレオ異性体)。
7(10モル%)を触媒とする反応は、−60℃で48時間かけて行い、粗生成物を得(dr=90:10)、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率79%(純粋なジアステレオ異性体)の付加物6Eaを得、eeは96%であった(主要ジアステレオ異性体)。
Q−4a(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−20℃で2.5日間かけて行い、粗生成物を得た(dr=92:8、5.04〜5.17ppmおよび4.96〜5.00ppmにおける
1H NMRピークにより判断)。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=15:1〜10:1)で精製し、収率78%で白色固体の純粋なジアステレオ異性体(−)−6Faを得、eeは92%であった(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=80:20、流速1.00ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=7.9分、t(微量生成物)=18.8分)
QD−4a(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−20℃で2.5日間かけて行い、粗生成物を得た(dr=89:11)。これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率74%で白色固体の純粋なジアステレオ異性体(+)−6Faを得、eeは89%であった。
7(10モル%)を触媒とする反応は、−20℃で2.5日間かけて行い、粗生成物を得た(dr=95:5)。これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率74%で白色固体の純粋なジアステレオ異性体(+)−6Faを得、eeは88%であった。
Q−4a(20モル%)を触媒とする反応は、THF中、−50℃で6日間かけて行い、粗生成物を得た(dr=95:5、4.58〜4.62ppm(微量生成物)および5.17〜5.21ppm(主要生成物)の
1H NMRピークにより判断)。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1〜15:1)で精製し、収率77%で2つのジアステレオ異性体の混合物(dr=95:5)である白色固体を得、eeは96%であった(主要異性体)(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=80:20、流速1.00ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=27.3分、t(微量生成物)=31.5分。Et
2O中で再結晶してところ、収率50%で純粋なジアステレオ異性体(−)−6Gaが得られ、eeは99%以上であった。
Q−4b(20モル%)を触媒とする反応は、THF中、−50℃で6日間かけて行い、粗生成物を得た(dr>98:2、4.82〜4.86ppmおよび4.98〜5.04ppmにおける
1H NMRピークにより判断)。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜8:1)で精製し、収率78%で無色油状の純粋な主要ジアステレオ異性体(−)−6Haを得、eeは99%であった(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=80:20、流速1.00ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=32.5分、t(微量生成物)=21.5分)
QD−4a(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−20℃で2.5日間かけて行い、粗生成物を得た(dr=86:14)。これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率76%で無色油状の主要なジアステレオ異性体(+)−6Haを得、eeは95%であった。
7(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−20℃で2.5日間かけて行い、粗生成物を得た(dr=86:14)。これをフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製したところ、収率74%で無色油状の主要なジアステレオ異性体(+)−6Haを得、eeは88%であった。
Q−4a(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−20℃で3.5日間かけて行い、粗生成物を得た(dr=93:7、3.40ppm(微量生成物)および3.20〜3.25ppm(主要生成物)における
1H NMRピークにより判断)。粗生成物はフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1〜20:1)で精製し、収率78%で無色油状の純粋な主要ジアステレオ異性体(+)−6Ffを得、eeは92%であった(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=99:1、流速1.00ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=31.6分、t(微量生成物)=53.2分)
Q−4a(10モル%)を触媒とする反応は、THF中、−20℃で3.5日間かけて行い、粗生成物を得た(dr=93:7、2.93〜2.96ppm(微量生成物)および2.82〜2.88ppm(主要生成物)における
1H NMRピークにより判断)
実施例39
純粋な生成物6Hfは、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1〜30:1)で精製することにより、収率76%、無色油状、2つのジアステレオ異性体の混合物として得られ、eeは98%(主要異性体)であった(HPLCによって測定、Chiralcel OD、ヘキサン:イソプロパノール=99:1、流速0.50ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=45.86分、t(微量生成物)=66.2分)
実施例40:動力学的データ
三級求核剤およびニトロアルケン類を含む反応の動力学的パラメーターは、ReactIR 1000装置を用い、1522cm-1においてニトロアルケン類の消費をイン・サイチュー( in situ )モニターすることによって求めた。ReactIR 1000装置は、5/8''Dicomp Probe、バージョン2.1aの駆動ソフトウェアが配備さている。無水THF(1.0ml)中、ニトロアルケン(5a)(1.0mmol)およびQ−4c(2.5〜12.5モル%)の混合物を−30℃で5分間撹拌し、次に、予め冷却したメチル2−オクソシクロペンタンカルボキシラート(3A、0.65ml、5当量)をシリンジを用いて一度に加えた。得られた反応混合物を2秒ごとに25分間モニターした。
ニトロアルケン(5a)の次数は、過量のメチル2−オクソシクロペンタンカルボキシラート(3A、5当量)および10モル%のQ−4cを用いて求めた。時間に対してln[5a]をプロットすることにより、直線(R2=0.9863、図13)が得られ、ニトロアルケン(5a)に依存する一次であることが確立された。
メチル2−オクソシクロペンタンカルボキシラート(3A)の次数は、過量のニトロアルケン(5a、5当量)および10モル%のQ−4cを用いて求めた。時間に対してln[3A]をプロットすることにより、直線(R2=0.9952、図14)が得られ、3Aに依存する一次であることが確立された。
触媒の次数は、多様な触媒濃度における速度定数を求めることによって確立された。触媒濃度に対して速度定数kobsをプロットすることにより、Q−4cに対して直線が得られた(R2=0.99、図15)。反応は、Q−4cに依存する一次であることが示された。
実施例41:エチルα−アリール−α−シアノアセタートとジアルキルアゾジカルボキシラートとの鏡像異性体選択的反応に関する一般的方法
QD−4bを触媒とする反応:−78℃において、エチルα−アリール−α−シアノアセタート(0.22mmol、1.1当量)およびQD−4b(4mgまたは8mg、5モル%または10モル%)をトルエン(2ml)に加えた溶液を撹拌し、この溶液に、ジ−tert−ブチルアゾジカルボキシラートまたはジベンジルアゾジカルボキシラートのトルエン溶液(0.4ml、0.5M、0.2mmol、1.0当量)を10分以内に滴下した。溶液の色が黄色から無色になるまで撹拌した(1〜10時間)。溶液を放置して室温に戻し、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することによって純粋な生成物を得た。
Q−4bを触媒とする反応:Q−4b(4mgまたは8mg、5モル%または10モル%)をトルエン(2ml)に懸濁させたものを塊状の固体が存在しなくなるまで超音波処理し(約15分)、溶液が透明になるまで120℃で加熱した(10〜15分)。溶液が熱いうちに綿栓に通して不溶性の微量残渣を除去し、室温まで冷却した。次に、エチルα−アリール−α−シアノアセタート(0.22mmol、1.1当量)を加えた。この混合物を撹拌し、−78℃に冷却した。ジ−tert−ブチルアゾジカルボキシラートまたはジベンジルアゾジカルボキシラートのトルエン溶液(0.4ml、0.5M、0.2mmol、1.0当量)を10分以内に滴下し、溶液の色が黄色から無色になるまで撹拌した(2〜12時間)。溶液を放置して室温に戻し、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することによって純粋な生成物を得た。
(+)−:本反応は、Q-4bを触媒とし、収率92%で白色泡状物質が得られ、HPLC分析(Chiralpak AD、ヘキサン:イソプロパノール=85:15、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(微量生成物)=10.7分、t(主要生成物)=32.3分)によって確認したeeは97%であった。[α]D 23=+64.0(c=0.175、CHCl3) ;1H NMR(400MHz、CD3CN)図19を参照;13C NMR(100mHz、CD3CN)図19を参照;IR(CHCl3)ν3347,2980,1744,1718,1453,1368,1242,1154,1052cm-1;HRMS(CI)m/z 計算値(+H+);測定値。
(−)−:本反応は、QD−4bを触媒とし、収率92%で白色泡状物質が得られ、eeは95%であった。
(+)−:本反応は、Q−4bを触媒とし、収率96%で白色泡状物質が得られ、HPLC分析(Chiralpak AD、ヘキサン:イソプロパノール=85:15、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(微量生成物)=10.9分、t(主要生成物)=34.4分)によって確認したeeは96%であった。[α]D 23=+59.7(c=1.14、CHCl3) ;1H NMR(400MHz、CD3CN)図20を参照;13C NMR(100mHz、CD3CN)図20を参照;IR(CHCl3)ν3348,2980,2929,1745,1719,1607,1510,1476,1369,1241,1157,1054,1016cm-1;HRMS(CI)m/z 計算値(+H+);測定値。
(−)−:本反応は、QD−4bを触媒とし、収率97%で白色泡状物質が得られ、eeは94%であった。
(+)−:本反応は、Q−4bを触媒とし、収率97%で白色泡状物質が得られ、HPLC分析(Chiralpak AD、ヘキサン:イソプロパノール=85:15、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(微量生成物)=12.4分、t(主要生成物)=35.3分)によって確認したeeは96%であった。[α]D 23=+54.4(c=0.54、CHCl3) ;1H NMR(400MHz、CD3CN)図21を参照;13C NMR(100mHz、CD3CN)図21を参照;IR(CHCl3)ν3422,2980,2932,1745,1718,1644,1488,1369,1243,1154,1012cm-1;HRMS(CI)m/z 計算値(+H+);測定値。
(−)−:本反応は、QD−4bを触媒とし、収率99%で白色泡状物質が得られ、eeは93%であった。
(+)−:本反応は、Q−4bを触媒とし、収率98%で白色泡状物質が得られ、HPLC分析(Chiralpak AD、ヘキサン:イソプロパノール=60:40、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(微量生成物)=9.6分、t(主要生成物)=39.6分)によって確認したeeは99%であった。[α]D 23=+63.9(c=0.49、CHCl3) ;1H NMR(400MHz、CD3CN)図22を参照;13C NMR(100mHz、CD3CN)図22を参照;IR(CHCl3)ν3440,2981,1721,1645,1476,1369,1244,1152,1015cm-1;HRMS(CI)m/z 計算値(+H+);測定値。
(−)−:本反応は、QD−4bを触媒とし、収率99%で白色泡状物質が得られ、eeは96%であった。
(+)−:本反応は、Q−4bを触媒とし、収率96%で白色泡状物質が得られ、HPLC分析(Chiralpak AD、ヘキサン:IPA=85:15、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(微量生成物)=11.5分、t(主要生成物)=31.6分)によって確認したeeは96%であった。[α]D 23=+70.8(c=0.665、CHCl3) ;1H NMR(400MHz、CD3CN)図23を参照;13C NMR(100mHz、CD3CN)図23を参照;IR(CHCl3)ν3428,2980,2933,1745,1719,1649,1511,1476,1458,1369,1242,1155,1055,1018cm1-1;HRMS(CI)m/z 計算値(+H+);測定値。
(−)−:本反応は、QD−4bを触媒とし、収率96%で白色泡状物質が得られ、eeは94%であった。
(+)−:本反応は、Q−4bを触媒とし、収率96%で白色泡状物質が得られ、HPLC分析(Chiralpak OD、ヘキサン:IPA=97:3、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(微量生成物)=10.3分、t(主要生成物)=12.7分)によって確認したeeは97%であった。[α]D 23=+70.0(c=0.67、CHCl3) ;1H NMR(400MHz、CD3CN)図24を参照;13C NMR(100mHz、CD3CN)図24を参照;IR(CHCl3)ν3355,2980,2935,1744,1718,1610,1512,1460,1369,1245,1155,1055,1031cm1-1;HRMS(CI)m/z 計算値(+H+);測定値。
(−)−:本反応は、QD−4bを触媒とし、収率96%で白色泡状物質が得られ、eeは94%であった。
(+)−:本反応は、Q−4bを触媒とし、収率72%で白色泡状物質が得られ、HPLC分析(Chiralpak OD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(微量生成物)=10.7分、t(主要生成物)=32.3分)によって確認したeeは87%であった。[α]D 23=+18.9(c=2.73、CHCl3) ;1H NMR(400MHz、CD3CN)図25を参照;13C NMR(100mHz、CD3CN)図25を参照;IR(CHCl3)ν3318,2924,1732,1495,1455,1391,1333,1227,1092,1023cm1-1;HRMS(CI)m/z 計算値(+H+);測定値。
(−)−:本反応は、QD−4bを触媒とし、収率71%で白色泡状物質が得られ、eeは82%であった。
実施例49:エチル2−シアノ−2−アリールもしくは2アルキルアセタート12のアルケニルスルホン類13への鏡像異性体選択的マイケル付加に関する一般的方法
−25℃または0℃において、エチル2−シアノ−2−アリールもしくは2−アルキルアセタート12(12A、12B、12Cについては0.6mmolを使用し、12D〜12Iについては0.5mmolを使用し、12J、12Kについては0.2mmolを使用した)のトルエン(0.4ml)溶液にキラル触媒(20モル%)およびビニルフェニルスルホン(0.2mmol)を加えた。得られた混合物は、スルホンが完全に消費されるまで、指示された温度に維持した。反応混合物は、以下に記載した溶出液を用い、直接シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけることにより、上にまとめているような収率および鏡像異性体過剰率で1,4−付加物を得た。最後に、カラムをMeOHで洗浄し、触媒を95%以上の回収率で回収した。回収した触媒は、NMR分析により、反応前のものと同一であることが示された。
(+)−14Aa:本生成物は、Q−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で72時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液濃度勾配:酢酸エチル/ヘキサン=1/8〜6/1)で精製後、収率89%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralcel OD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=16.48分、t(微量生成物)=14.93分)によって確認したeeは95%であった。
(−)−14Ab:本生成物は、QD−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で72時間反応させることにより、収率80%の無色油状物質として得られ、eeは91%であった。
(+)−14Ba:本生成物は、Q−4cを触媒(20モル%)とし、0℃で48時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/7)で精製後、収率96%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralpak AD、ヘキサン:IPA=85:15、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=13.33分、t(微量生成物)=22.06分)によって確認したeeは93%であった。
(+)−14Ca:本生成物は、Q−4cを触媒(20モル%)とし、0℃で70時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/6)で精製後、収率92%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralpak AD、ヘキサン:IPA=85:15、流速0.9ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=28.93分、t(微量生成物)=33.20分)によって確認したeeは93%であった。
(+)−14Da:本生成物は、Q−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で72時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/5)で精製後、収率90%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralcel OD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=21.42分、t(微量生成物)=17.98分)によって確認したeeは94%であった。
(+)−14Ea:本生成物は、Q−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で69時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/6)で精製後、収率95%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralcel OD、ヘキサン:IPA=85:15、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=16.75分、t(微量生成物)=13.57分)によって確認したeeは94%であった。
(−)−14Ea:本生成物は、QD−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で72時間反応させることにより、収率94%の無色油状物質として得られ、eeは89%であった。
(+)−14Fa:本生成物は、Q−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で66時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/6)で精製後、収率95%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralpak AD、ヘキサン:IPA=85:15、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=22.51分、t(微量生成物)=26.82分)によって確認したeeは94%であった。
(−)−14Fa:本生成物は、QD−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で72時間反応させることにより、収率95%の無色油状物質として得られ、eeは88%であった。
(+)−14Ga:本生成物は、Q−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で60時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/7)で精製後、収率96%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralpak AD、ヘキサン:IPA=85:15、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=15.00分、t(微量生成物)=12.58分)によって確認したeeは93%であった。
(+)−14Ha:本生成物は、Q−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で60時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/6)で精製後、収率96%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralcel OD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=23.90分、t(微量生成物)=27.21分)によって確認したeeは98%であった。
(−)−14Ha:本生成物は、QD−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で60時間反応させることにより、収率95%の無色油状物質として得られ、eeは90%であった。
(+)−14Ia:本生成物は、Q−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で48時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/6)で精製後、収率95%の褐色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralcel OD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=20.54分、t(微量生成物)=18.50分)によって確認したeeは93%であった。
(−)−14Ia:本生成物は、QD−4c(20モル%)を触媒とし、−25℃で48時間反応させることにより、収率91%の褐色油状物質として得られ、eeは88%であった。
(+)−14Jb:本生成物は、Q−4c(20モル%)を触媒とし、0℃で96時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/10)で精製後、収率76%の白色固体として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralcel OD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=9.78分、t(微量生成物)=13.73分)によって確認したeeは93%であった。
(−)−14Kb:本生成物は、Q−4c(20モル%)を触媒とし、0℃で96時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/5)で精製後、収率85%の白色固体として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralcel OD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=10.88分、t(微量生成物)=17.64分)によって確認したeeは92%であった。
(+)−14Kb:本生成物は、QD−4c(20モル%)を触媒とし、0℃で96時間反応させることにより、収率83%の白色固体として得られ、eeは88%であった。
実施例60:光学活性α,α−ジ置換アミノ酸16の合成
室温において、14Aa(357mg、1.0mmol)のDMSO(3.0ml)溶液にK
2CO
3・1.5H
2O(70mg、0.5当量)を加え、その後、H
2O
2(0.15ml、30%、4当量)を加えた。1時間後、さらに同量のH
2O
2を加え、その後、2時間毎に同量のH
2O
2を3回加えた。混合物をさらに1時間撹拌した後、反応混合物をブライン(20ml)で希釈し、得られた混合物を酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。合わせた有機層をブライン(2×20ml)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた後、減圧濃縮し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/EtOAc=4/1〜1/1)にかけたところ、アミド17が得られた(240mg、収率62%)。
CHCl
3(1.6ml)およびH
2O(0.8ml)に17(124mg、0.33mmol)を溶解させた溶液にPhI(OCOCF
3)
2(214mg、1.5当量)を加えた。得られた混合物を一晩撹拌し、エーテル(20ml)で希釈し、HCl(2.0N、3×4.0ml)で洗浄した後、Na
2CO
3(5%水溶液)を用いて合わせた水層のpHを12〜13に調整した。次に、混合物を酢酸エチル(2×30ml)で抽出し、合わせた有機層をブライン(2×20ml)で洗浄してNa
2SO
4で乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣を無水CH
2Cl
2(2ml)に溶解した。得られた溶液にEt
3N(0.14ml、3当量)およびPhCOCl(0.046ml、1.2当量)を加えた。この溶液を室温で一晩撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(60ml)で希釈し、Na
2CO
3(5%水溶液、10ml)、ブライン(2×20ml)で洗浄してNa
2SO
4で乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/2)にかけたところ、アミノ酸15(120mg、収率79%)が得られ、HPLC分析(Daicel Chiralpak AD、ヘキサン:IPA=80:20、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=29.3分、t(微量生成物)=21.2分)によって確認したeeは95%であった。
アルゴン下、−65℃において、15(90mg、0.2mmol)の無水THF(1.5ml)溶液にLDA(ヘプタン/テトラヒドロフラン/エチルベンゼン中0.2M、0.3ml、3当量)を加えた。得られた混合物を30分以上かけてゆっくりと−40℃まで加温した後、PhCHO(0.024ml、1.2当量)を一度に加えた。この反応混合物を1時間以上かけてゆっくりと室温まで加温した。NH
4Cl(飽和水溶液)を加えて反応を停止し、酢酸エチル(30ml)で希釈した。有機層をブライン(2×10ml)で洗浄し、無水N
a2SO
4で乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をCH
2Cl
2(1.5ml)に溶解した。得られた溶液に、Et
3N(0.084ml、3当量)およびPhCOCl(0.028ml、1.2当量)を順に加えた。混合物を室温で3時間撹拌した後、酢酸エチル(40ml)で希釈し、Na
2CO
3(5%水溶液、10ml)、ブライン(2×10ml)で洗浄し、これを無水N
a2SO
4で乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣を無水EtOH(2.0ml)に溶解した。得られた溶液に、HgCl
2(11mg、0.2当量)およびMg(15mg、3当量、〜50メッシュ)を順に加えた。得られた反応混合物を2時間撹拌した後、NH
4Cl(飽和水溶液、5ml)に加えた。混合物を酢酸エチル(50ml)で抽出した。有機層をブライン(2×20ml)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/9)にかけたところ、オレフィン18が得られた(32mg、収率40%、E/Z=3/1)。E異性体に関するデータ:
18(13mg)の酢酸エチル(1.0ml)溶液にPd/C(10%、4mg)を加えてできた懸濁液をH
2(1気圧)下、2時間撹拌した。反応混合物をシリカゲル製の短いパッドに通してPd/Cを除去し(溶出液として酢酸エチルを使用)、減圧濃縮することによって16(13mg、収率99%)を得、HPLC分析(Daicel Chiralpak AD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.0ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=14.6分、t(微量生成物)=20.7分)によって確認したeeは92%であった。
実施例61:β−ケトエステル調製のための一般的方法
オーブンで乾燥させた三ッ口フラスコに、N
2下、NaHアッセイ(2.5mmol)および乾燥THF(5ml)を入れた。懸濁液を室温で5分間撹拌し、その後5分間放置した。上層をシリンジで除去し、残渣を減圧乾燥した。白色微細粉末をTHF(5ml)に懸濁し、この懸濁液に、ジメチルカルボナート(10mmol)をシリンジで加えた。混合物を還流させながら、滴下ろうとを用い、30分以上かけて6−メトキシ−1−インダノン(1.0mmol)のTHF(5ml)溶液を加えた。得れられた褐色の混合物をさらに15分間還流させた。得られた緑色混合物を0℃に冷却し、酢酸(2ml)をシリンジでゆっくり加えた。この混合物にHCl水溶液(1N、2ml)を加えてさらに酸性にした。混合物をEtOAc(3×10ml)で抽出した。合わせた抽出物を水、5%のNaHCO
3、ブラインで洗浄し、N
a2SO
4で乾燥させた後、濃縮した。残渣をシリカゲルで精製したところ(ヘキサン/酢酸エチル=20/1)、白色固体のβ−ケトメチルエステル(収率90〜95%)が得られた。メチル−5−クロロ−1−オクソ−2−インダンカルボキシラートに関するデータ:
メチル−6−メトキシ−1−オクソ−2−インダンカルボキシラートに関するデータ:
オーブンで乾燥させたフラスコにβ−ケトメチルエステル(1.0mmol)、Bu
2SnO(26mg、0.1mmol、0.1当量)、t−BuOH(5ml)およびトルエン(15ml)を入れた。フラスコにディーンスタートラップを取り付けたが、これは、還流中に生じるメタノールを連続的に除去するためである。アルコールとトルエンの混合物がディーンスタートラップを通って放出された後にt−BuOH(2ml)を加えた。混合物を4時間還流させた。得られた黄色の溶液は、エバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルカラムに直接入れて精製したところ(ヘキサン/酢酸エチル=20/1)、β−ケトt−ブチルエステル(収率80〜84%)(白色固体の6−メトキシインダノン、および紫色固体の5−クロロインダノン)が得られた。
5−クロロインダノンエステル(収率84%)22Dに関するデータ:
6−メトキシインダノンエステル(収率80%)22Cに関するデータ:
実施例61b:β−ケトエステル22F、22Gの調製
NaH(鉱油中60%、750mg)のTHF(10ml)懸濁液に、ジヘキサフルオロイソプロピルアジペート(3.9g)のTHF(10ml)溶液を加えた。反応混合物を50℃(油浴温度)に加温し、18時間維持した。0℃に冷却した後、溶液のpHが1になるまでHCl(2N水溶液)を滴下した。次に、混合物を酢酸エチル(100ml)で抽出し、有機層をブラインで洗浄した後、N
a2SO
4で乾燥させた。濃縮後、カラムで精製(シリカゲル、ヘキサン:EA=50:1)したところ、収率65%で無色油状の22Fが得られたが、その14%はエノール型、86%はケトン型であった。
22Gの合成にも同じ方法を用いた(転換率17%、収率15%、エノール型80%およびケトン型20%)。
実施例62:アルケニルアリールケトン23cおよび23dの調製
オーブンで乾燥させた三ッ口フラスコに滴下ろうとを取り付け、これに、0℃、N2下でベンズアルデヒド(3.13g、30mmol)および無水エーテル(100ml)を入れた。このアルデヒド溶液に、滴下ろうとを用いて臭化ビニルマグネシウム(THF中1.0M、45ml、45mmol、1.5当量)を30分以上かけて加えた。得られた白色懸濁液を0℃で1時間撹拌した後、室温でさらに30分間撹拌した。0℃でHCl水溶液をゆっくり加えることによって反応を停止した。有機層を回収し、水層をエーテルで抽出した。合わせた抽出物を水、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムで精製したところ(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)、淡黄色油状の所望するアリルアルコール(allylic alcohol)(3.5g、収率87%)が得られた。
フェニルアリルアルコールに関するデータ:
p−メトキシフェニルアリルアルコール(収率95%)に関するデータ:
実施例62a:フェニルビニルケトン23c
フェニルアリルアルコール(3.0g、22.4mmol)のCH
2Cl
2溶液にCrO
3(112mg、1.12mmol、5モル%)を加えた。シリンジを用い、0℃で1時間以上かけてt−BuOOH(70%、水中7.2M、10ml、mmol、3.2当量)を加えた。得られた褐色の混合物を室温で一晩撹拌した。得られた黄色の懸濁液に0℃で固体Na
2S
2O
3(20g)を加えた。混合物を室温で30分間激しく撹拌した。得られた褐色の混合物を濃縮し、エーテル(3×30ml)で抽出した。合わせた抽出物を水、ブラインで洗浄し、N
a2SO
4で乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルで精製したところ(ヘキサン/酢酸エチル=20/1)、淡黄色油状のビニルケトン(1.6g、収率55%)を得た。
実施例62b:p−メトキシフェニルビニルケトン23d
p−メトキシフェニルアリルアルコール(1.0g、6.1mmol)のEt
2O(20ml)溶液に、室温で1時間以上かけてMnO
2(活性化、3.5g、40.2mmol、6.6当量)を少しずつ加えた。反応混合物を室温で30分間激しく撹拌した。黒色の懸濁液を濃縮して約5mlにし、これを直接シリカゲルカラムに入れて精製したところ(ヘキサンのみから徐々にヘキサン/酢酸エチル=10/1へ移行)、無色油状物質のp−メトキシフェニルビニルケトン(0.40g、収率41%)および回収されたアリルアルコール(0.57g、収率57%)が得られた。
実施例63:ラセミ付加物調製のための一般的方法
室温において、β−ケトエステル22(0.1mmol)のCH2Cl2溶液(1.0M)にDABCOまたはEt3Nを加えた。次に、23(2.5当量)を滴下した。反応完了後、反応混合物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲルを使用、ヘキサン/酢酸エチル=10/1)または分取TLCで精製した。
実施例64:β−ケトエステル類のα,β−不飽和ケトンへの鏡像異性体選択的マイケル付加に関する一般的方法
実施例64a:10モル%の触媒を使用した場合の、β−ケトエステル類のα,β−不飽和ケトンへの鏡像異性体選択的マイケル付加
β−ケトエステル22(0.3mmol)のジクロロメタン(0.6ml)溶液に修飾シンコナアルカロイド触媒(10モル%)を加え、この溶液に、表11に示した温度でα,β−不飽和ケトン23(22に対して2.5当量)を滴下した。反応は、TLCまたは1H NMRでモニターした。22がほぼ消費された後、反応混合物を前処理なしに直接フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲルを使用、ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製した。触媒は、メタノールを用いてカラムから溶出させることによって回収し、回収率は95%以上であった(NMRによって純粋であることを確認)。
実施例64b:1モル%の触媒を使用した場合の、β−ケトエステル類のα,β−不飽和ケトンへの鏡像異性体選択的マイケル付加
バイアルにβ−ケトエステル22(0.2mmol)、Q−4cもしくはQD−4c(CH2Cl2中5mom、0.4ml、1.0モル%)のジクロロメタン溶液を入れた。混合物を室温で1分間振とうし、アルケニルケトン23をシリンジで加えた(22に対して2.5当量)。得られた混合物は、反応が完結するまで室温で時々振とうした。反応混合物を直接シリカゲルで精製することにより(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜7:1)、所望する生成物を得た。
実施例64c:ゆるやかな付加による、β−ケトエステル類のα,β−不飽和ケトンへの鏡像異性体選択的マイケル付加に関する一般的方法
β−ケトエステル22(0.2mmol)のジクロロメタン(0.4ml)溶液に修飾シンコナアルカロイド触媒(10モル%)を加え、この溶液に、表11に示した温度で、シリンジを使用し、α,β−不飽和ケトン23(22に対して2.5当量)のジクロロメタン(0.4ml)溶液を0.07ml/時の速度で加えた(添加速度はシリンジポンプで制御した)。添加終了後、TLCまたは1H NMRで反応をモニターした。22がほぼ消費された後、反応混合物を前処理なしに直接フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲルを使用、ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製した。表11に示している反応時間には添加時間を含む。触媒は、メタノールを用いてカラムから溶出させることによって回収し、回収率は95%以上であった(NMRによって純粋であることを確認)。
(
R)−(+)−tert−ブチル1−オクソ−2−(3−オクソブチル)2−インダンカルボキシラート24Ba
本生成物は、Q−4c(1モル%)を触媒とし、室温で3時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率96%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralcel OJ、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.00ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=17.4分、t(微量生成物)=9.2分)によって確認したeeは96%であった。
(+)−24Baの絶対配置は、ナカジマ(Nakajima),M.、ヤマモト(Yamamoto),S.、ヤマグチ(Yamaguchi),Y.、ナカムラ(Nakamura),S.ハシモト(Hashimoto),S.らによる文献値(Tetrahedron,2003(59)7307-7313)と特異的光学回転を比較することにより、R異性体であると判断した。[α]D 25=+43.2(c=2.50、ベンゼン)。eeは96%。
(S)−(−)−tert−ブチル1−オクソ−2−(3−オクソブチル)2−インダンカルボキシラート24Ba
本生成物は、QD−4c(1モル%)を触媒とし、室温で3時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率93%の無色油状物質として得られ、eeは95%であった。[α]D 25=−34.4(c=1.53、CHCl3)
実施例66:(+)−tert−ブチル1−オクソ−2−(3−オクソペンチル)2−インダンカルボキシラート24Bb
本生成物は、Q−4c(1モル%)を触媒とし、室温で5時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率94%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralcel OJ、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.00ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=9.5分、t(微量生成物)=7.2分)によって確認したeeは94%であった。
(+)−24Ca:本生成物は、Q−4c(1モル%)を触媒とし、室温で5時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率98%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralcel OJ、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.00ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=31.3分、t(微量生成物)=10.3分)によって確認したeeは96%であった。
(−)−24Ca: 本生成物は、QD−4c(1モル%)を触媒とし、室温で5時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで処理後、収率99%の無色油状物質として得られ、eeは96%であった。[α]D=−28.4°(c=0.57、CHCl3)
(+)−24Bc:本生成物は、Q−4c(10モル%)を触媒とし、−24℃で30分間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率94%の白色固体として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralpak AS、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.00ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=15.8分、t(微量生成物)=19.4分)によって確認したeeは96%であった。
(−)−24Bc:本生成物は、QD−4c(10モル%)を触媒とし、−24℃で30分間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率94%の無色油状物質として得られ、eeは93%であった。[α]D 25=−5.6(c=0.32、CHCl3)
(−)−24Dd:本生成物は、Q−4c(10モル%)を触媒とし、−24℃で8時間かけて23dをゆっくり付加反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率94%の白色固体として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralcel OD、ヘキサン:IPA=90:10、流速1.00ml/分、λ=220nm、t(主要生成物)=12.2分、t(微量生成物)=19.2分)によって確認したeeは96%であった。
(+)−24Dd:本生成物は、QD−4c(10モル%)を触媒とし、−24℃で8時間かけて23dをゆっくり付加反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率93%の無色油状物質として得られ、eeは93%であった。[α]D 25=+12.1(c=1.22、CHCl3)
実施例70:(S)−(−)−tert−ブチル2−オクソ−1−(3−オクソブチル)シクロペンタンカルボキシラート
24Ea:本生成物は、Q−4c(10モル%)を触媒とし、室温で84時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率95%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel Chiralpk AS、ヘキサン:IPA=99:1、流速0.44ml/分、λ=215nm、t(主要生成物)=47.6分、t(微量生成物)=40.4分)によって確認したeeは96%であった。
(−)−24Eaの絶対配置は、文献値と特異的光学回転を比較することにより、S異性体であると判断した。ハマシマ(Hamashima),Y.、ホッタ(Hotta),D.、ソデオカ(Sodeoka),M.、J.Am.Chem.Soc.,2002(124)11240-11241
実施例71:(+)ヘキサフルオロイソプロピル2−オクソ−1−(3−オクソブチル)シクロペンタンカルボキシラート
(+)24Fa:本生成物は、Q−4c(10モル%)を触媒とし、室温で30分間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率93%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(REGIS (R,R)Whelk-01、ヘキサン:IPA=99:1、流速1.00ml/分、λ=215nm、t(主要生成物)=11.5分、t(微量生成物)=13.6分)によって確認したeeは96%であった。
本生成物は、Q−4c(1モル%)を触媒とし、室温で24時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率92%の無色油状物質として得られ、eeは94%であった。[α]D 25=+0.10(c=1.00、CHCl3)
(−)ヘキサフルオロイソプロピル2−オクソ−1−(3−オクソブチル)シクロペンタンカルボキシラート
(−)−24Fa:本生成物は、QD−4c(10モル%)を触媒とし、室温で30分間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率90%の無色油状物質として得られ、eeは95%であった。[α]D 25=−0.83(c=2.05、CHCl3)
実施例72:(−)ヘキサフルオロイソプロピル2−オクソ−1−(3−オクソブチル)シクロペンタンカルボキシラート
(−)24Ga:本生成物は、Q−4c(10モル%)を触媒とし、室温で24時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率89%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(REGIS (R,R)Whelk-01、ヘキサン:IPA=99:1、流速0.90ml/分、λ=215nm、t(主要生成物)=15.6分、t(微量生成物)=14.3分)によって確認したeeは98%であった。
(+)ヘキサフルオロイソプロピル2−オクソ−1−(3−オクソブチル)シクロペンタンカルボキシラート
(+)−24Ga:本生成物は、QD−4c(10モル%)を触媒とし、室温で24時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後に、収率86%の無色油状物質として得られ、eeは96%であった。[α]D 25=+44.4(c=3.45、CHCl3)
実施例73:(+)ヘキサフルオロイソプロピル2−イソプロピオニル−2−メチル−5−オクソヘキサノエート
(+)24Ha:本生成物は、Q−4c(10モル%)を触媒とし、−24℃で20時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率82%の無色油状物質として得られ、HPLC分析(Daicel chiralcel OD、ヘキサン:IPA=99:1、流速1.00ml/分、λ=215nm、t(主要生成物)=15.8分、t(微量生成物)=8.5分)によって確認したeeは90%であった。
(−)ヘキサフルオロイソプロピル2−イソプロピオニル−2−メチル−5−オクソヘキサノエート
(−)−24Ha:本生成物は、QD−4c(10モル%)を触媒とし、−24℃で40時間反応させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製後、収率85%の無色油状物質として得られ、eeは90%であった。[α]D 25=−4.3(c=0.99、CHCl3)
参考文献の取込み
本明細書に引用している全ての米国特許および公開された米国特許出願を参考として本明細書中に取り入れておく。
等価性
当業者であれば、通常の実験の範囲内で、本明細書に記載している特定の実施態様と同等の多数の実施態様に気付くはずである。そのような等価な態様も請求項に包含される。