JP2008310620A - 移動端末に対する広告情報配信システムおよび配信方法 - Google Patents

移動端末に対する広告情報配信システムおよび配信方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ユーザに負担をかけず、プライバシーを保護しつつ、個々のユーザに対して効果的な広告配信を行う。
【解決手段】 場所データベース100内に、各場所(店舗)の位置コードと特徴情報を用意する。位置情報収集蓄積部120が収集した各端末装置の時系列位置情報に基づき、場所遷移テーブル作成部130が、各端末ごとに、どの場所からどの場所へと移動したかを示す場所遷移テーブルを作成する。傾向分析部140は、この場所遷移テーブルと場所データベース100を参照して、各場所の直前に訪問した場所(先訪場所)の特徴を示す先訪場所特徴情報を求め、分析結果格納部150に格納する。配信先決定部160は、特定の場所に関する先訪場所特徴情報に合致する場所特徴情報をもった場所を、当該特定の場所に関する広告情報の配信場所と決定し、広告配信部110は、当該配信場所の近傍に位置する端末装置に広告情報の配信を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、携帯電話などの移動端末に対して広告情報を配信する技術に関し、特に、移動端末の過去の移動経路に関する統計に基づいて、特定の店舗に来訪する可能性が高い移動端末に対して効果的な広告情報の配信を行う技術に関する。
従来、TV,雑誌,新聞などのマスメディアを通じて不特定多数の者に一斉に広告情報を伝達するという広告手法が一般的であったが、近年、インターネットの普及や、ユーザニーズの多様化に伴い、個々のユーザの特性や嗜好を考慮し、それぞれのユーザごとに最適な広告情報を吟味して配信する広告手法が採用されるようになっている。
たとえば、下記の特許文献1には、ユーザに予め自分の嗜好情報をデータベースに登録してもらい、各ユーザの嗜好情報に基づいて、配信対象となる広告情報をフィルタリングする技術が開示されている。また、下記の特許文献2には、ユーザの過去の購買履歴等に基づいてユーザの嗜好を認識し、これをデータベースに自動登録した上で、配信対象となる広告情報をフィルタリングする技術が開示されている。一方、ユーザの位置を把握した上で、選択的な広告配信を行う技術も提案されている。たとえば、下記の特許文献3,4には、GPSを利用して、ユーザが所持する携帯電話の位置を認識し、当該位置に適した広告情報を選択的に配信する技術が開示されている。
特開2002−132822号公報 特開2004−94383号公報 特開2001−359166号公報 特開2002−218555号公報
上述したように、個々のユーザの嗜好情報を予め収集しておくと、各ユーザごとに最適な広告情報を吟味して配信する上では有用である。しかしながら、上記特許文献1に開示された方法のように、予めユーザに嗜好情報の登録操作を強いる方法は、ユーザ側の負担が大きく、実用上、ユーザの協力がほとんど得られないのが実情である。一方、上記特許文献2に開示された方法のように、ユーザの購買履歴等をモニタしながら、ユーザの嗜好情報を自動収集する方法は、ユーザ側に操作上の負担はかからないが、収集可能な嗜好情報は、ユーザの過去の購買履歴に限定されてしまう。このため、過去の購買履歴には現れていない、ユーザの潜在的ニーズを掘り起こすことは困難である。また、ユーザの嗜好情報を自動収集して保存する、という行為自体が、ユーザのプライバシー保護の観点から好ましくない、との指摘もある。
これに対して、上記特許文献3,4に開示された方法のように、ユーザが所持する移動端末の位置を認識し、当該位置に応じて配信対象となる広告情報を選択する手法は、個々のユーザの嗜好情報等を収集する必要がないため、プライバシー保護の観点からの問題は生じない。しかしながら、ユーザの位置を考慮した判断しか行うことができないため、ユーザの嗜好情報を考慮した判断に比べると、効果的な広告配信を行うことが困難である。
そこで本発明は、ユーザに負担をかけることなく、ユーザのプライバシーを保護しつつ、個々のユーザに対して効果的な広告配信を行うことが可能な移動端末に対する広告情報配信システムおよび広告情報配信方法を提供することを目的とする。
(1) 本発明の第1の態様は、移動可能な端末装置に対して広告情報を配信するシステムにおいて、
端末装置の移動範囲内に位置する複数の場所のそれぞれについて、当該場所を特定するための場所識別コードと、当該場所の位置座標を示す場所位置コードと、当該場所の特徴を示す場所特徴情報と、を互いに対応づけて登録した場所データベースと、
場所データベースに登録されている複数の場所のうちの広告対象となる場所に関する広告情報と、当該広告対象となる場所の場所識別コードと、をそれぞれ場所ごとに対応づけて格納する広告情報格納部と、
個々の端末装置の各時点の位置座標を示す位置情報を時系列データとして収集し、これを蓄積する位置情報収集蓄積部と、
位置情報収集蓄積部に蓄積されている、個々の端末装置の所定時間枠内の位置情報に基づいて、個々の端末装置が所定時間枠内に場所データベースに登録されている場所間をどのように遷移したかを推測し、その推測結果に基づいて、場所データベースに登録されている複数の場所を時系列で掲載した場所遷移テーブルを作成する場所遷移テーブル作成部と、
場所遷移テーブル作成部が作成した多数の場所遷移テーブルに基づいて、ある着目場所について、当該着目場所への来訪前に来訪していた別な場所を先訪場所として認識し、場所データベースに登録されている場所特徴情報を参照して、当該着目場所について、先訪場所の特徴を示す先訪場所特徴情報を求める傾向分析部と、
広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所について傾向分析部によって求められた先訪場所特徴情報と、を対応づけた分析結果を格納する分析結果格納部と、
広告情報格納部に格納されている広告情報の配信先を決定するために、当該広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、分析結果格納部に格納されている分析結果により対応づけられている先訪場所特徴情報を抽出し、場所データベースを参照することにより、抽出した先訪場所特徴情報に対する合致度の高い場所特徴情報が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定し、位置情報収集蓄積部に蓄積されている個々の端末装置の現時点もしくはその直近の位置情報に基づいて、配信場所の近傍領域に位置すると判定された端末装置を当該広告情報の配信先端末装置と決定する配信先決定部と、
広告情報格納部に格納されている広告情報を、配信先決定部で決定された配信先端末装置に対して配信する広告配信部と、
を設けるようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
場所データベース内に登録する個々の場所として商業用店舗の場所を用い、当該店舗を特定するための店舗識別コードを場所識別コードとして用い、当該店舗の位置座標を示すコードを場所位置コードとして用い、当該店舗の特徴を示す情報を場所特徴情報として用い、
広告情報格納部内に格納する広告情報として、各店舗に関する商業広告の情報を用いるようにしたものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
緯度経度を示すデータを場所位置コードとして用い、位置情報収集蓄積部が、GPSを利用して各端末装置の緯度経度を示すデータを位置情報として収集するようにしたものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1〜第3の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
位置情報収集蓄積部が、位置情報とともに、その取得日時を蓄積するようにし、
場所遷移テーブル作成部が、場所データベースに登録されている特定の場所に関して、その場所位置コードによって示される位置座標の近傍領域内に、所定の滞在時間だけ留まっていたことを条件として、当該特定の場所を場所遷移テーブルに掲載するようにしたものである。
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第4の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
1つの端末装置についての所定時間枠内の位置情報を示すN個の時系列データに基づいて、1つの場所遷移テーブルを作成するために、場所遷移テーブル作成部内に、
第n番目のデータが示す位置座標と第(n+1)番目のデータが示す位置座標との距離d(n,n+1)が、しきい値dthよりも小さいか否かを判定する第1の手段と、
第n番目のデータが示す位置座標と第(n+i)番目のデータが示す位置座標との距離d(n,n+i)が、しきい値dthよりも小さいか否かを判定する第2の手段と、
nを初期値1から1ずつ増加させて更新しながら、各更新時点のnの値を用いて第1の手段に判定を実行させる処理を、nがN−1に到達する直前まで繰り返し行う第3の手段と、
第1の手段が肯定的な判定を行った場合に、iを初期値2から1ずつ増加させて更新しながら、各更新時点のnおよびiの値を用いて第2の手段に判定を実行させる処理を、第2の手段が否定的な判定を行うまで繰り返し行い、(n+i)がNに到達しても肯定的な判定がなされたときには、iを更に1だけ増加させる処理を行う第4の手段と、
第2の手段が否定的な判定を行ったとき、もしくは(n+i)がNに到達したときに、そのときのnおよびiの値を用いて示される第n番目のデータの取得日時と第(n+i−1)番目のデータの取得日時との時間差ξが、しきい値ξthよりも大きいか否かを判定する第5の手段と、
第5の手段が肯定的な判定を行った場合に、そのときのnおよびiの値を用いて示される第n番目のデータ乃至第(n+i−1)番目のデータが示す位置座標の平均座標を求める第6の手段と、
場所データベースに登録されている場所の中から平均座標に対する最近接場所を抽出し、当該最近接場所の位置座標と平均座標との距離εが、しきい値εthよりも小さいか否かを判定する第7の手段と、
第7の手段が肯定的な判定を行った場合に、最近接場所を場所遷移テーブルに掲載する第8の手段と、
を設けるようにし、
第3の手段が、第8の手段が場所遷移テーブルへの掲載を行ったときは、nの値をn+iに更新して処理を続行するようにしたものである。
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
位置情報収集蓄積部が、位置情報とともに、その取得日時を蓄積するようにし、
配信先決定部が、現在に至るまで所定の滞在時間以上にわたって、特定の端末装置が配信場所の近傍領域内に留まっていることを条件として、当該特定の端末装置を配信先端末装置と決定するようにしたものである。
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第6の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
判定対象となる端末装置を、特定の配信場所についての配信先端末装置とすべきか否かを判定するために、配信先決定部内に、
判定対象となる端末装置についての現在までの位置情報を示す時系列データを読み込む第1の手段と、
読み込んだ時系列データの第N番目にある最新データが示す位置座標と特定の配信場所の位置座標との距離Dが、しきい値Dthよりも小さいか否かを判定する第2の手段と、
読み込んだ時系列データの第(N−i)番目のデータが示す位置座標と特定の配信場所の位置座標との距離Dが、しきい値Dthよりも小さいか否かを判定する第3の手段と、
第2の手段が肯定的な判定を行った場合に、iを初期値1から1ずつ増加させて更新しながら、各更新時点のiの値を用いて第3の手段に判定を実行させる処理を、第3の手段が否定的な判定を行うまで、もしくはiがNに到達するまで、繰り返し行う第4の手段と、
第3の手段が否定的な判定を行ったとき、もしくはiがNに到達したときに、そのときのiの値を用いて示される第(N−i+1)番目のデータの取得日時と第N番目のデータの取得日時との時間差ξが、しきい値ξthよりも大きいか否かを判定する第5の手段と、
第5の手段が肯定的な判定を行った場合に、判定対象となる端末装置を配信先端末装置と決定する第6の手段と、
を設けるようにしたものである。
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第1〜第7の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
場所データベースに登録された各場所についての場所特徴情報が、それぞれ当該場所の代表的な特徴を示す単一の特徴コードによって構成されており、
傾向分析部が、ある着目場所についての先訪場所特徴情報を求める際に、各場所遷移テーブルに掲載されている当該着目場所の1つ1つについて、それぞれ先訪場所を調べ、これら各先訪場所についての場所特徴情報として登録されている特徴コードの出現頻度を調べ、最も出現頻度の高い特徴コードを、当該着目場所についての先訪場所特徴情報とする処理を行い、
分析結果格納部が、個々の広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所についての先訪場所特徴情報として求められた特徴コードと、を対応づけた分析結果を格納し、
配信先決定部が、配信先を決定する対象となる広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、分析結果格納部内で対応づけられている特徴コードを抽出し、場所データベースを参照することにより、抽出した特徴コードに一致する場所特徴情報が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定するようにしたものである。
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第8の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
個々の場所の代表的な特徴を示す単一の特徴コードとして、当該場所の名称を示す文字列もしくは当該場所の場所識別コードを用いるようにしたものである。
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第7の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
場所データベースに登録された各場所についての場所特徴情報が、それぞれ当該場所の特徴を示す複数の特徴コードの組み合わせによって構成されており、
傾向分析部が、ある着目場所についての先訪場所特徴情報を求める際に、各場所遷移テーブルに掲載されている当該着目場所の1つ1つについて、それぞれ先訪場所を調べ、これら各先訪場所についての場所特徴情報として登録されている各特徴コードの出現頻度を調べ、出現頻度の高い複数の特徴コードの組み合わせを、当該着目場所についての先訪場所特徴情報とする処理を行い、
分析結果格納部が、個々の広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所についての先訪場所特徴情報として求められた複数の特徴コードの組み合わせと、を対応づけた分析結果を格納し、
配信先決定部が、配信先を決定する対象となる広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、分析結果格納部内で対応づけられている複数の特徴コードの組み合わせを抽出し、場所データベースを参照することにより、「抽出した特徴コードの組み合わせ」に対して選抜基準以上の合致度を示す「特徴コードの組み合わせ」が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定するようにしたものである。
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第1〜第7の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
場所データベースに登録された各場所についての場所特徴情報が、それぞれ当該場所の特徴を示す複数H個の特徴コードとその重みづけを示す重み値とによって構成されており、
傾向分析部が、ある着目場所についての先訪場所特徴情報を求める際に、各場所遷移テーブルに掲載されている当該着目場所の1つ1つについて、それぞれ先訪場所を調べ、これら各先訪場所についての場所特徴情報として登録されている各特徴コードの重み値の合計値を求め、この合計値が高い順に複数H個の特徴コードを選択し、選択された各特徴コードについて合計値に応じた新しい重み値を決定し、選択された複数H個の特徴コードとその新しい重み値とを、当該着目場所についての先訪場所特徴情報とする処理を行い、
分析結果格納部が、個々の広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所についての先訪場所特徴情報として求められた複数H個の特徴コードおよびその重み値と、を対応づけた分析結果を格納し、
配信先決定部が、配信先を決定する対象となる広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、分析結果格納部内で対応づけられている複数H個の特徴コードおよび重み値からなる先訪場所特徴情報を抽出し、場所データベースを参照することにより、抽出した「先訪場所特徴情報」に対して選抜基準以上の合致度を示す「場所特徴情報」が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定するようにしたものである。
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第11の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
場所データベースに登録された1つの場所についての場所特徴情報を構成する複数H個の特徴コードの重み値の合計が所定の規格値となるような規格化が行われており、
分析結果格納部に格納された1つの場所についての先訪場所特徴情報を構成する複数H個の特徴コードの新しい重み値の合計が上記規格値となるような規格化を経て、傾向分析部による新しい重み値の決定が行われるようにしたものである。
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第11または第12の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
配信先決定部が、「選抜基準以上の合致度を示す」と判定するための条件として、「複数H個の特徴コードを、重み値の大きい順に並べた場合に、上位h個(1≦h≦H)の特徴コードが一致する」という条件を設定するようにしたものである。
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第13の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
配信先決定部内に、配信場所の総数の上限値Mが設定されており、
配信先決定部が、「h=1なる最も緩い条件」から「h=Hなる最も厳しい条件」に至るまで、hの値を1ずつ増加させることにより条件設定を徐々に厳しくしながら、配信場所の総数が上限値M以下となるまで、配信場所の決定をやり直す処理を実行するようにしたものである。
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第12の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
配信先決定部が、「選抜基準以上の合致度を示す」と判定するための条件として、「複数H個の特徴コードがすべて一致し、かつ、これら各特徴コードをそれぞれ0〜規格値までの座標をもつ座標軸に対応させることにより、複数H本の座標軸からなるH次元座標空間を形成し、このH次元座標空間内に、各特徴コードの重み値を座標値として、両特徴情報をそれぞれ点としてプロットしたときに、両点間のユークリッド距離Lが所定値Lth以下になる」という条件を設定するようにしたものである。
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第15の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
配信先決定部内に、配信場所の総数の上限値Mが設定されており、
配信先決定部が、所定値Lthを初期値から徐々に減少させながら、配信場所の総数が上限値M以下となるまで、配信場所の決定をやり直す処理を実行するようにしたものである。
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第1〜第16の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
配信先決定部が、広告対象となる場所に対する地理的位置関係を考慮して、当該広告対象となる場所に関する広告情報についての配信場所を決定するようにしたものである。
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第1〜第17の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
広告情報格納部内に、個々の広告情報についての有効期限を格納するようにし、
広告配信部が、有効期限経過前の広告情報についてのみ配信を行うようにしたものである。
(19) 本発明の第19の態様は、上述した第1〜第18の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
傾向分析部が、特定の場所についての先訪場所特徴情報を求める際に、当該特定の場所について設定された特定の時間枠内の位置情報に基づいて作成された場所遷移テーブルのみを用いた先訪場所の認定を行うようにしたものである。
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第1〜第19の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
傾向分析部が、ある着目場所の直前に来訪した場所を、当該着目場所についての先訪場所として認識するようにしたものである。
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第1〜第19の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
傾向分析部が、ある着目場所のj番目前(j≧2)までに来訪した場所すべてを、当該着目場所についての先訪場所として認識し、より直前に近い来訪場所の場所特徴情報に対して、より大きな重みづけをして、当該着目場所についての先訪場所特徴情報を求めるようにしたものである。
(22) 本発明の第22の態様は、上述した第1〜第21の態様に係る移動端末に対する広告情報配信システムにおいて、
場所データベースが、場所識別コードと場所位置コードは登録されているが、場所特徴情報は登録されていない不完全なデータを格納しており、端末装置を携帯するユーザからの指示入力に基づいて、不完全なデータにおける場所特徴情報を登録する機能を有するようにしたものである。
(23) 本発明の第23の態様は、移動可能な端末装置に対して広告情報を配信する方法において、
端末装置の移動範囲内に位置する複数の場所のそれぞれについて、当該場所を特定するための場所識別コードと、当該場所の位置座標を示す場所位置コードと、当該場所の特徴を示す場所特徴情報と、を互いに対応づけて登録した場所データベースを用意する段階と、
場所データベースに登録されている複数の場所のうちの広告対象となる場所に関する広告情報と、当該広告対象となる場所の場所識別コードと、をそれぞれ場所ごとに対応づけて用意する段階と、
個々の端末装置の各時点の位置座標を示す位置情報を時系列データとして収集し、これを蓄積する段階と、
蓄積されている個々の端末装置の所定時間枠内の位置情報に基づいて、個々の端末装置が所定時間枠内に場所データベースに登録されている場所間をどのように遷移したかを推測し、その推測結果に基づいて、場所データベースに登録されている複数の場所を時系列で掲載した場所遷移テーブルを作成する段階と、
作成した多数の場所遷移テーブルに基づいて、ある着目場所について、当該着目場所への来訪前に来訪していた別な場所を先訪場所として認識し、場所データベースに登録されている場所特徴情報を参照して、当該着目場所について、先訪場所の特徴を示す先訪場所特徴情報を求める段階と、
広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所について求められた先訪場所特徴情報と、を対応づけた分析結果を用意する段階と、
広告情報の配信先を決定するために、当該広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、分析結果として対応づけられている先訪場所特徴情報を抽出し、場所データベースを参照することにより、抽出した先訪場所特徴情報に対する合致度の高い場所特徴情報が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定し、蓄積されている個々の端末装置の現時点もしくはその直近の位置情報に基づいて、配信場所の近傍領域に位置すると判定された端末装置を当該広告情報の配信先端末装置と決定する段階と、
用意した広告情報を、当該広告情報の配信先として決定された配信先端末装置に対して配信する段階と、
を行うようにしたものである。
(24) 本発明の第24の態様は、上述した第23の態様に係る移動端末に対する広告情報配信方法において、
場所データベースを用意する際に、個々の場所の様々な特徴を示すキーワード群を用意し、これらキーワード群から選択した1つもしくは複数のキーワードを、1つの場所についての場所特徴情報とするようにしたものである。
(25) 本発明の第25の態様は、移動可能な端末装置に対して店舗に関する広告情報を配信する方法において、
端末装置の移動範囲内に位置する複数の店舗のそれぞれについて、位置座標と当該店舗の特徴を示す店舗特徴情報とを対応づけたデータベースを用意する段階と、
広告対象となる特定の店舗に関する広告情報を用意する段階と、
個々の端末装置の各時点の位置座標を時系列データとして収集する段階と、
収集した時系列データに基づいて、個々の端末装置が訪問した店舗を推測し、個々の端末装置ごとに、訪問した店舗を訪問順に掲載した遷移テーブルを作成する段階と、
作成した多数の遷移テーブルに基づいて、特定の店舗への来訪前に来訪していた別な店舗を先訪店舗として認識し、上記データベースを参照することにより、先訪店舗の特徴を示す先訪店舗特徴情報を求める段階と、
上記データベースを参照することにより、先訪店舗特徴情報に類似した店舗特徴情報が対応づけられている1つもしくは複数の場所を配信場所と決定する段階と、
収集した時系列データに基づいて、上記配信場所の近傍領域に位置すると判定された端末装置を配信先端末装置と決定する段階と、
用意した広告情報を、上記配信先端末装置に対して配信する段階と、
を行うようにしたものである。
本発明の実施にあたって、ユーザが所持する移動端末の位置は、時系列データとして自動収集されるため、ユーザには何らかの積極的な操作を強いる必要は全くない。また、自動収集された時系列データや場所遷移テーブルは、どの移動端末(どのユーザ)についての情報であるかを特定する必要はなく、匿名性をもった情報として処理することができる。このため、本発明の実施により、ユーザに負担がかかることはなく、また、ユーザのプライバシーも維持される。しかも、本発明では、個々の場所にそれぞれ特徴を定義し、「ある着目場所に来訪するユーザが、その前にどのような特徴をもった先訪場所に居た可能性が高いか」を統計的に把握しておき、当該着目場所に関する広告情報を、当該着目場所の先訪場所に居るユーザに対して配信する、という手法を採るため、個々のユーザに対して効果的な広告配信を行うことが可能になる。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.基本的実施例の構成および動作 >>>
図1は、本発明の基本的実施例に係る広告情報配信システムの構成を示すブロック図である。このシステムは、携帯電話などの移動可能な端末装置に対して広告情報を配信するためのシステムである。図に示す端末装置T0000〜T9999(ここでは、説明の便宜上、合計1万台のGPS機能付きの端末装置が用いられているものとする)は、それぞれユーザが所持する携帯電話などの移動端末である。もちろん、端末装置は、必ずしも携帯電話である必要はなく、携帯型パソコンやPDA装置など、携帯が可能な通信装置としての機能を有する装置であればよい。
図示のとおり、この広告情報配信システムは、場所データベース100,広告配信部110,位置情報収集蓄積部120,場所遷移テーブル作成部130,傾向分析部140,分析結果格納部150,配信先決定部160,広告情報格納部170によって構成されている。これらの構成要素からなるシステムは、実際には、通信機能を有するコンピュータによって構成されるものであり、実用上は、サーバ用コンピュータに専用のプログラムを組み込むことにより構築される。たとえば、広告配信部110や位置情報収集蓄積部120は、外部と交信するインターフェイス機能をもったコンピュータ機器によって構成され、場所遷移テーブル作成部130,傾向分析部140,配信先決定部160は、後述するような所定の演算処理を実行するためのプログラムを組み込んだコンピュータによって構成される。また、場所データベース100,分析結果格納部150,広告情報格納部170は、いずれも所定のデータを格納する機能を有する構成要素であるから、実際には、コンピュータ用のハードディスク装置などの記憶装置によって構成されることになる。
このシステムを運用するにあたっては、まず、端末装置の移動範囲内に位置する複数の場所を設定する必要がある。ここでは、このような場所として、商業用店舗の場所を設定した例を述べる。設定した場所に関する情報は、場所データベース100内に格納される。図示の例では、個々の場所について、当該場所を特定するための場所識別コード、当該場所の位置座標を示す場所位置コード、当該場所の特徴を示す場所特徴情報、を互いに対応づけて登録した例が示されている。いわば、何という場所が、どこに存在し、その場所はどのような特徴をもった場所であるか、という情報が、個々の場所ごとに場所データベース100内に登録されていることになる。
このシステムを実際に運用する際には、多数の場所(たとえば、数百〜数千件単位の場所)についての情報を場所データベース100内に用意することになるが、ここでは、説明の便宜上、5つの場所に関する情報が、場所データベース100に登録されている非常に単純な例を示すことにする。具体的には、図示のとおり、「テアトルA」,「リストランテB」,「カフェC」,「雑貨ストアD」,「フードコートE」なる5つの商業用店舗の場所が登録されている。ここで、「テアトルA」は映画館の館名,「リストランテB」はイタリア料理店の店名,「カフェC」は喫茶店の店名,「雑貨ストアD」は雑貨小売店の店名,「フードコートE」は軽食店の店名である。
場所識別コードは、個々の場所を特定することが可能なコードであれば、どのようなコードを用いてもかまわない。図示の例では、館名や店名など、店舗自身の名称をそのまま場所識別コードとして用いているが、実際には、数百〜数千件単位の店舗の登録が行われることになるので、重複することがないように、数桁の符号からなるユニークなコードを場所識別コードとして用いるのが好ましい。
一方、場所位置コードは、個々の場所の代表点の位置座標を示すデータであり、ここでは、(X,Y)の形式の二次元座標値を場所位置コードとして用いた例を示すことにする。もっとも、実用上は、後述するように、緯度経度データを場所位置コードとして用いるのが好ましい。たとえば、図示の例の場合、「テアトルA」についての場所位置コード(Xa,Ya)は、「テアトルA」という映画館の代表点位置座標(たとえば、建物の中心の位置座標)を示すデータであり、「リストランテB」についての場所位置コード(Xb,Yb)は、「リストランテB」というイタリア料理店の代表点位置座標(たとえば、正面入り口の位置座標)を示すデータである。なお、映画館のような大規模な店舗の場合、施設内の複数の地点を場所位置コードとして登録しておいてもよい。
場所特徴情報は、個々の場所の特徴を示す情報である。一概に「特徴」と言っても、様々な観点から見た特徴があるが、どのような特徴を「場所特徴情報」として用いるかという点については、後の具体例を挙げて説明する。ここでは、当該場所の利用目的を示す漢字2文字からなる特徴コード、すなわち、「映画」,「食事」,「喫茶」,「買物」,「軽食」なるコードを、場所特徴情報として用いた単純な例を示す。たとえば、「映画」なる場所特徴情報は、「テアトルA」なる場所の利用目的が「映画」であり、「テアトルA」なる場所が「映画を観る場所」という特徴を有していることを示し、「食事」なる場所特徴情報は、「リストランテB」なる場所の利用目的が「食事」であり、「リストランテB」なる場所が「食事をする場所」という特徴を有していることを示している。
なお、この基本的実施例では、場所データベース100内に登録する個々の場所として、商業用店舗の場所が用いられており、当該店舗を特定するための店舗識別コードが場所識別コードとして用いられており、当該店舗の位置座標を示すコードが場所位置コードとして用いられており、当該店舗の特徴を示す情報が場所特徴情報として用いられているが、場所データベース100内に登録する個々の場所は、必ずしも商業用店舗の場所である必要はない。店舗以外の場所を登録する例については、後に変形例として述べることにする。
広告情報格納部170は、配信対象となる広告情報を格納するための構成要素である。ここで重要な点は、本発明に係るシステムで配信対象となる広告情報は、場所データベース100に登録されているいずれかの場所に関する広告情報である点である。したがって、全国ネットで放映されているTV番組のCMなどで流す商品広告(全国的に販売されているグローバルな商品に関する広告)は、基本的には、本発明に係るシステムの配信対象としては相応しくない。本発明で配信対象としている広告情報は、特定の場所に密接に結びついた情報であり、ここで述べる基本的実施例の場合、個々の店舗に関する商業広告の情報である。したがって、図示の広告情報格納部170には、場所データベース100に登録されている5つの場所(店舗)のそれぞれに関する広告情報が、当該場所の場所識別コードに対応づけて格納されている。
たとえば、「テアトルA」なる場所識別コードに対応づけて格納されている「FileAAA」なる広告情報は、「テアトルA」なる店舗(映画館)に関する広告情報のファイルであるから、具体的には「当館テアトルAでは、本日、一律1000円でオールナイト上映中」のような内容になるであろうし、「リストランテB」なる場所識別コードに対応づけて格納されている「FileBBB」なる広告情報のファイルは、「リストランテB」なる店舗(イタリア料理店)に関する広告情報であるから、具体的には「リストランテBの本日のディナーコース:○○○○」のような内容になるであろう。もちろん、広告情報は、上例のようなテキストデータに限定されるものではなく、画像データを含んでいてもよいし、音声や動画データを含んでいてもかまわない。
なお、図示の例では、場所データベース100に登録されている5つの場所(店舗)のすべてに関して、広告情報格納部170内に広告情報が用意されているが、実用上は、必ずしも場所データベース100に登録されているすべての場所に関する広告情報が用意されるとは限らない。場所データベース100に登録する各場所は、後述するように、端末装置を所持するユーザの移動パターンや行動パターンを解析する上での指標となるべきものであり、実用上は、少しでも多くの場所を登録しておくのが好ましい(運用上は、場所データベース100への登録は無償にするのが好ましい)。これに対して、広告情報格納部170内の広告情報は、各店舗からの要望に応じて格納されるべきものである(広告情報格納部170内への広告情報の格納は、通常、有償になるであろう)。たとえば、図示の例の場合、「リストランテB」の経営者のみから広告配信の要望があった場合、広告対象となる場所(店舗)は、「リストランテB」のみであるから、広告情報格納部170内には、場所識別コード「リストランテB」,広告情報「FileBBB」という情報のみが格納されることになる。このように、広告情報格納部170には、場所データベース100に登録されている複数の場所のうち、広告対象となる場所に関する広告情報が格納されることになる。
さて、このシステムの目的は、広告情報格納部170内に格納されている配信対象となる広告情報を、配信先となる所定の端末装置に対して配信することにある。実際の配信処理は、広告配信部110によって行われるが、その配信先は、配信先決定部160によって決定される。すなわち、広告配信部110は、広告情報格納部170に格納されている個々の広告情報を、配信先決定部160で決定された特定の配信先端末装置に対して配信する処理を行う。端末装置に対する具体的な配信方法としては、たとえば、電子メールなどの手段を用いればよい。
位置情報収集蓄積部120は、個々の端末装置の各時点の位置座標を示す位置情報を時系列データとして収集し、これを蓄積する構成要素である。図示の実施例の場合、T0000〜T9999までの合計1万台のGPS機能付きの携帯電話を端末装置として用いており、位置情報収集蓄積部120は、この1万台の端末装置それぞれについての位置座標(X,Y)をリアルタイムで(たとえば、5〜10秒おき程度の周期で)収集し、逐次蓄積してゆく機能を有している。
配信先決定部160は、位置情報収集蓄積部120から、任意の端末装置の位置情報を随時読み出すことができるので、個々の端末装置の現在位置を把握することが可能である。したがって、たとえば「FileAAA」なる広告情報を、「テアトルA」の近くに居る端末装置に配信する、という方針が定まれば、配信先決定部160は、この方針に従って、配信先端末装置を決定することができる。すなわち、1万台の端末装置T0000〜T9999について、それぞれ現在位置を位置情報収集蓄積部120から順次読み出し、その中から「テアトルA」の位置座標(Xa,Ya)の近傍位置を示す端末装置を、配信先端末装置と決定すればよい。
このように、「ある特定の店舗に関する広告情報を、当該店舗の近傍領域に位置する端末装置に対して配信する」という方針に基づいた広告配信手法は、前掲の特許文献3にも開示されている公知の手法である。たしかに、この手法は、近くに居る顧客を呼び込むことができる、という点では、メリットがある。たとえば、「当館テアトルAでは、本日、一律1000円でオールナイト上映中」のような「テアトルA」という映画館に関する広告情報を、当該映画館の近くに居るユーザの端末装置に配信するようにすれば、ある程度の呼び込み効果は期待できよう。しかしながら、「近くに居る」というだけでは、十分効果的な広告配信を行うことはできない。たまたま映画館の近くに居たとしても、食事を意図しているユーザや、買物を行う予定のユーザに対しては、映画館の広告情報を配信したとしても、映画館に呼び込む効果は期待できない。結局、前掲の特許文献3に開示されている手法には、ユーザの位置を考慮した判断しか行うことができないため、ユーザの嗜好や行動を考慮した判断に比べると、効果的な広告配信ができない、という問題が生じることになる。
図1に示すシステムは、「ある特定の店舗(たとえば、「テアトルA」)に関する広告情報を、ある特定の場所に居るユーザに配信する」という観点では、前掲の特許文献3に開示されているような従来の手法と共通のアプローチを採る。しかしながら、配信先となる「ある特定の場所」として、「広告対象となる店舗(テアトルA)の近傍領域」ではなく、たとえば「軽食という特徴情報をもった店舗」を採用することになる。この点が、本発明の非常にユニークな点である。
これを、具体例に即して、説明してみよう。たとえば、準備段階として、各端末装置を所持した1万人のユーザの移動履歴を収集した結果、「テアトルA」に来訪したユーザは、その直前に、軽食をとっていることが多いことが統計的に確認できたとしよう。そうすると、軽食をとったユーザの次の行動として、「テアトルAで映画を観る」という行動は、非常に期待度の高い行動ということができる。そこで、「テアトルA」に関する広告情報の配信先として、「軽食」なる特徴情報をもった店舗(図1に示す例の場合は、「フードコートE」)が選抜される。したがって、配信先決定部160は、「フードコートE」という軽食店に居る端末装置(位置座標(Xe,Ye)の近傍に居る端末装置)を、「FileAAA」なる広告情報の配信先端末装置と決定する処理を行うことになる。なお、図1に示す例では、「軽食」なる特徴情報をもった店舗は「フードコートE」のみであるが、実用上は、同じ特徴情報をもった店舗が複数存在するのが一般的であり、これら複数の店舗に居る端末装置すべてが配信先端末装置になる。
前述したとおり、各端末装置の位置情報は、位置情報収集蓄積部120に逐次収集蓄積されているので、この位置情報の時系列データを利用すれば、個々のユーザの1日の移動経路を把握することができる。場所遷移テーブル作成部130は、この移動経路に基づいて、個々のユーザが、場所データベース100に登録されている場所のうち、どの場所からどの場所へ遷移したかを示す場所遷移テーブルを作成する処理を行う。傾向分析部140は、この場所遷移テーブルに基づいて、「どのような特徴をもった店舗に居たユーザが、次にどの店舗を来訪する可能性が高いか」という傾向を分析し、その結果を分析結果格納部150に格納する処理を行う。配信先決定部160は、この分析結果を利用して、配信先の決定を行うことになる。
ここでは、説明の便宜上、「ある着目場所を来訪したユーザが、当該着目場所への来訪前に来訪していた別な場所」のことを、当該着目場所についての「先訪場所」と呼ぶことにする。たとえば、あるユーザが、「雑貨ストアD」→「フードコートE」→「テアトルA」という順番で、これらの各場所(店舗)を来訪した場合、「雑貨ストアD」は「フードコートE」についての先訪場所であり、「フードコートE」は「テアトルA」についての先訪場所である。分析結果格納部150に格納されている分析結果は、個々の着目場所について、その先訪場所の特徴情報を示すものである。
たとえば、分析結果格納部150に格納されている1行目の分析結果は、「テアトルA」についての先方場所特徴情報が「軽食」であることを示しているが、これは、場所遷移テーブルを統計的に分析した結果、「テアトルA」に来訪したユーザの多くは、その前に、「軽食」なる特徴情報をもった別な場所を訪問していた、という事実が確認できたことを意味している。逆に言えば、「軽食」なる特徴情報をもった場所に現在居るユーザは、次に「テアトルA」に来訪する可能性が高いことを示している。同様に、分析結果格納部150に格納されている2行目の分析結果は、「リストランテB」についての先方場所特徴情報が「映画」であることを示しているが、これは、場所遷移テーブルを統計的に分析した結果、「リストランテB」に来訪したユーザの多くは、その前に、「映画」なる特徴情報をもった別な場所を訪問していた、という事実が確認できたことを意味している。逆に言えば、「映画」なる特徴情報をもった場所に現在居るユーザは、次に「リストランテB」に来訪する可能性が高いことを示している。図示の分析結果格納部150には、更に、「カフェC」についての先方場所特徴情報が「食事」、「雑貨ストアD」についての先方場所特徴情報が「喫茶」、「フードコートE」についての先方場所特徴情報が「買物」であることが示されている。
本発明に係る広告配信システムを実際に運用する際には、分析結果格納部150内に、このような分析結果を格納しておく必要がある。そのためには、予め所定の準備期間(たとえば、1ヶ月間)を設け、位置情報収集蓄積部120内に、1万人のユーザの移動情報を蓄積させ、これらの蓄積情報に基づいて、場所遷移テーブル作成部130に多数の場所遷移テーブルを作成させ、これを傾向分析部140に分析させる処理を行えばよい。
こうして、分析結果格納部150内に、図示のような分析結果が用意できれば、配信先決定部160は、場所データベース100内の情報と、分析結果格納部150内の情報とを参照することにより、広告情報格納部170内に格納されている個々の広告情報についての配信先を決定することができる。たとえば、「FileAAA」なる広告情報についての配信先は、次のようなプロセスで決定することができる。まず、「FileAAA」は、「テアトルA」に関する広告情報であるので、分析結果格納部150を参照して、「テアトルA」についての先訪場所特徴情報が「軽食」であることを認識する。続いて、場所データベース100を参照して、「軽食」に合致する場所特徴情報を有する場所を検索する。すると、「フードコートE」という場所がヒットするので、この「フードコートE」を配信場所と決定し、現在、「フードコートE」に居る端末装置を配信先端末装置と決定する処理を行う。かくして、「フードコートE」に居る端末装置に対して、「テアトルA」に関する広告情報が配信されることになる。
もちろん、この広告配信システムを実際に運用開始した後も、位置情報収集蓄積部120には、各端末装置の位置情報が逐次収集されるので、場所遷移テーブル作成部130は引き続き場所遷移テーブルを作成することができ、傾向分析部140は、これを引き続き分析することができ、分析結果格納部150内の分析結果を随時更新してゆくことができる。したがって、ユーザの行動傾向が時代とともに変化するようなことがあっても、分析結果格納部150に格納される分析結果は、常に時代に即したものに更新されることになる。
このように、図1に示すシステムにおける広告配信の基本方針は、ある着目場所について、その先訪場所の特徴情報を予め統計的な手法で求めておき、求めた先訪場所特徴情報に合致する場所特徴情報を有する場所を、当該着目場所に関する広告情報の配信先とする、というものであり、従来の広告配信方法とは全く異なるアプローチを採るものである。
本発明に係る広告配信システムを運用する上では、個々のユーザごとの嗜好情報を収集する必要はないので、ユーザに負担をかけることなく、また、ユーザのプライバシーを保護することができる。もちろん、位置情報収集蓄積部120内には、個々の端末装置の移動経路を示す情報が蓄積され、場所遷移テーブル作成部130が作成する場所遷移テーブルは、特定のユーザについての店舗の利用履歴を示すものになるが、これらの情報は、あくまでも統計処理の対象となる情報であるから、各情報がどのユーザ(どの端末装置)についての情報であるかを特定する必要はなく、いわば匿名性をもった情報と言うことができる。したがって、ユーザのプライバシーは十分に保護される。しかも、広告情報の配信先は、過去のユーザの行動を統計的に分析した結果に基づいて決定されるため、特定の場所に居るユーザに対して効果的な広告配信を行うことが可能になる。
なお、図1に示す例では、場所データベース100に登録された各場所についての場所特徴情報として、「映画」,「食事」,「喫茶」,「買物」,「軽食」といった当該場所の利用目的を表現する文字列からなる特徴コードを用いているが、場所特徴情報としては、個々の場所の代表的な特徴を示す特徴コードであれば、この他の特徴コードを用いてもかまわない。たとえば、「テアトルA」なる場所についての場所特徴情報として、「テアトルA」なる文字列それ自身からなる特徴コードを用い、「リストランテB」なる場所についての場所特徴情報として、「リストランテB」なる文字列それ自身からなる特徴コードを用いる、というように、当該場所の名称を示す文字列をそのまま場所特徴情報として用いるようなことも可能である。
また、図1に示す例では、各場所の場所識別コードとして、「テアトルA」,「リストランテB」,「カフェC」といった当該場所の名称を示す文字列をそのまま用いているが、実用上は、「XYZ000001」,「XYZ000002」,「XYZ000003」といった記号からなる場所識別コードを用いるケースも少なくない。このようなケースでは、これら記号からなる場所識別コードをそのまま場所特徴情報として用いることもできる。
<<< §2.基本的実施例における傾向分析処理 >>>
ここでは、§1で述べた基本的実施例における傾向分析処理の方法、すなわち、過去のユーザの行動を統計的に分析するための手順を、図示する単純な具体例に即して説明する。
まず、図1に示すシステムにおける場所遷移テーブル作成部130の処理機能をより具体的に説明しよう。この場所遷移テーブル作成部130は、位置情報収集蓄積部120に蓄積されている、個々の端末装置T0000〜T9999の所定時間枠内の位置情報に基づいて、個々の端末装置T0000〜T9999が当該所定時間枠内に場所データベース100に登録されている場所間をどのように遷移したかを推測し、その推測結果に基づいて、場所データベース100に登録されている複数の場所を時系列で掲載した場所遷移テーブルを作成する処理を実行する。
たとえば、所定時間枠として、2007年3月8日午前5時〜翌3月9日午前5時までの24時間枠を設定した場合を考えてみよう。場所遷移テーブル作成部130が、特定の端末装置T0000についての当該時間枠内の位置情報に基づいて場所遷移テーブルを作成するには、位置情報収集蓄積部120に蓄積されている端末装置T0000についての当該時間枠内の位置情報を読み出し、場所データベース100に登録されている各場所の場所位置コードを参照しながら、どの場所をどの順番に来訪したかを推測すればよい。位置情報収集蓄積部120に蓄積されている位置情報は、座標値(X,Y)の時系列データであるのに対して、場所遷移テーブルは、場所をその訪問順に羅列したテーブルである。この場所遷移テーブルを作成するための具体的な処理手順の一例は、§4において後述する。
図2は、図1に示すシステムにおける場所遷移テーブル作成部130によって作成された場所遷移テーブルの例を示す図である。図には、3つの端末装置T0000,T0001,T0002について、上述した24時間枠の位置情報に基づいて作成された場所遷移テーブルが例示されている。いずれも図の上から下に向かって来訪順序が示されている。すなわち、端末装置T0000についての場所遷移テーブルには、「雑貨ストアD」→「フードコートE」→「テアトルA」→「リストランテB」→「カフェC」なる場所が順に列挙されているが、これは、端末装置T0000を所持しているユーザが、2007年3月8日午前5時〜翌3月9日午前5時の時間枠内に、これらの場所をこの順番で来訪したことを示している。同様に、端末装置T0001を所持しているユーザの同日の行動は、「雑貨ストアD」→「リストランテB」→「カフェC」→「テアトルA」→「フードコートE」→「テアトルA」であることが示され、端末装置T0002を所持しているユーザの同日の行動は、「テアトルA」→「リストランテB」→「カフェC」→「雑貨ストアD」→「フードコートE」→「カフェC」であることが示されている。
ここで述べる実施例の場合、2007年3月8日午前5時〜翌3月9日午前5時までの24時間枠という設定だけで、1万台の端末装置T0000〜T9999についての場所遷移テーブルが作成されることになる。したがって、もし準備期間である30日間について、それぞれ同様の24時間枠を設定すれば、合計、30万組もの場所遷移テーブルが作成される。なお、図2には、説明の便宜上、各場所遷移テーブルに、T0000,T0001,T0002といった特定の端末装置を示す表題を付して示したが、これらの場所遷移テーブルは、後述するような統計処理の材料に供されるので、どの場所遷移テーブルがどの端末装置(どのユーザ)から得られたかを特定する情報は必要ない。したがって、各場所遷移テーブルの情報は、匿名性をもった情報として取り扱うことができ、ユーザのプライバシーは十分に保護される。
続いて、傾向分析部140の処理機能を説明する。傾向分析部140は、場所遷移テーブル作成部130が作成した多数の場所遷移テーブルに基づいて、ある着目場所について、当該着目場所への来訪前に来訪していた別な場所を先訪場所として認識し、場所データベース100に登録されている場所特徴情報を参照して、当該着目場所について、先訪場所の特徴を示す先訪場所特徴情報を求める統計処理を行う。以下、このような統計処理の具体的な一例を述べる。
前述したとおり、傾向分析部140による統計処理の対象となる場所遷移テーブルは、実用上は、たとえば30万組といった統計処理に十分な数を用意するのが好ましい。ただ、ここでは、説明の便宜上、図2に示すような3組の場所遷移テーブルのみを用いて、このような統計処理の手順とその結果を示すことにする。
図3は、図1に示すシステムにおける傾向分析部140による処理過程で作成された先訪場所集計リストの一例を示す図である。このリストは、図2に示す3組の場所遷移テーブルに基づいて作成されたものであり、5つの場所のそれぞれについての先訪場所およびその頻度を示すものである。
たとえば、図2に示す3組の場所遷移テーブル上の「テアトルA」に着目し、その直前に来訪した先訪場所を調べてみる。すると、T0000の場所遷移テーブルの場合、「テアトルA」の直前には「フードコートE」に来訪していたことが示されているので、「テアトルA」の先訪場所は「フードコートE」ということになる。ところが、T0001の場所遷移テーブルの場合、「テアトルA」には2回来訪したことになっており、1回目の「テアトルA」の直前には「カフェC」に来訪し、2回目の「テアトルA」の直前には「フードコートE」に来訪していたことが示されているので、「テアトルA」の先訪場所は「カフェC」および「フードコートE」ということになる。また、T0002の場所遷移テーブルの場合、「テアトルA」は最初の訪問場所となっているので、「テアトルA」の先訪場所はなし、ということになる。
結局、図2に示す3組の場所遷移テーブルを用いて、「テアトルA」の先訪場所を調べると、「フードコートE」が2回、「カフェC」が1回、という頻度で先訪場所になっていることがわかる。図3の1行目の「テアトルA」についての先訪場所欄には、このような調査結果が示されている。同様に、「リストランテB」についての先訪場所を調べると、図3の2行目の「リストランテB」についての先訪場所欄に記載されているとおり、「テアトルA」が2回、「雑貨ストアD」が1回という結果が得られる。同様に、「カフェC」,「雑貨ストアD」,「フードコートE」の先訪場所の調査結果は、図3の3〜5行目に示されているとおりである。
続いて、図1に示す場所データベース100を参照して、図3の右側欄の場所識別コードを、場所特徴情報(特徴コード)に書き替えてみる。図4は、このようにして得られた先訪場所の特徴コードリストである。たとえば、図4の1行目の「テアトルA」については、その右側の欄に「軽食(2),喫茶(1)」という特徴コードおよび出現頻度が記載されているが、これは、図3の「フードコートE(2),カフェC(1)」なる場所識別コードを、図1に示す場所データベース100で対応づけられている場所特徴情報(特徴コード)に書き替えたものである。すなわち、「フードコートE」は「軽食」なる特徴コードに書き替えられ、「カフェC」は「喫茶」なる特徴コードに書き替えられることになる。
このように、先訪場所を示す場所識別コードをそのまま用いずに、先訪場所の特徴を示す特徴コードに書き替えるのは、先訪場所そのものに基づいて配信先を決定する代わりに、先訪場所の特徴に基づいて配信先を決定するようにするためである。図示の基本的実施例の場合、図1の場所データベース100内に示されているように、場所とその特徴とが1対1の対応関係にある非常に単純な例であるため、先訪場所そのものに基づいて配信先を決定しても、先訪場所の特徴に基づいて配信先を決定しても、結果は同じになる。しかしながら、実際には、たとえば「食事」という特徴をもった場所は、通常、「リストランテB」のみではなく、他にも沢山存在することになる。したがって、本発明では、先訪場所の特徴に基づいて配信先を決定するようにし、より柔軟な対応がとれるようにしている。
こうして得られた図4に示す先訪場所の特徴コードリストを、そのまま傾向分析部140による分析結果として、分析結果格納部150に格納することも可能であるが、この図4に示すリストでは、1つの場所に対して複数の特徴コードが対応することになるので、配信先決定部160における配信先決定処理が若干複雑になる。そこで、ここで述べる基本的実施例では、出現頻度の最も多い特徴コードのみを残す処理を行っている。図5は、このような処理により最終的に得られた分析結果であり、図1の分析結果格納部150内に示されていた分析結果と同一のものである。先訪場所特徴情報として、単一の特徴コードのみが示されているので、配信先決定部160は、§1で述べた手順により、配信先を決定することができる。たとえば、「テアトルA」に関する広告情報については、先訪場所特徴情報が「軽食」となっているので、図1の場所データベース100を参照することにより、「フードコートE」を配信先と決定することができる。
もちろん、図4に示す特徴コードリストを、そのまま分析結果として分析結果格納部150に格納した場合でも、配信先決定部160は、上例と類似した手順で配信先を決定することができる。たとえば、「テアトルA」に関する広告情報については、先訪場所特徴情報が「軽食(2),喫茶(1)」となっているので、図1の場所データベース100を参照することにより、「フードコートE」および「カフェC」の双方を配信先と決定することができる。ただ、軽食の出現頻度が2回であるのに、喫茶の出現頻度が1回であることから、理想的には、これら出現頻度まで考慮した配信先決定を行うのが好ましい。このような複数の特徴コードを取り扱う実施例は、§6,§7で述べることにする。
結局、図1に示す分析結果格納部150には、広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所について傾向分析部140によって求められた先訪場所特徴情報と、を対応づけた分析結果が格納されることになる。
このように、傾向分析部140は、ある着目場所についての先訪場所特徴情報を求めるために、各場所遷移テーブルに掲載されている当該着目場所の1つ1つについて、それぞれ先訪場所を調べ(たとえば、図3の先訪場所集計リスト参照)、これら各先訪場所についての場所特徴情報として登録されている特徴コードの出現頻度を調べ(たとえば、図4の先訪場所の特徴コードリスト参照)、最も出現頻度の高い特徴コードを、当該着目場所についての先訪場所特徴情報とする処理を行うことになる。
また、分析結果格納部150は、個々の広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所についての先訪場所特徴情報として求められた特徴コードと、を対応づけた分析結果(たとえば、図5の分析結果参照)を格納し、配信先決定部160は、配信先を決定する対象となる広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、分析結果格納部150内で対応づけられている特徴コードを抽出し、場所データベース100を参照することにより、抽出した特徴コードに一致する場所特徴情報が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定することになる。
具体的には、配信先決定部160は、次のような手順で、広告情報格納部170に格納されている広告情報の配信先を決定する。すなわち、広告情報格納部170内において、配信対象となる広告情報(たとえば、「FileAAA」)に対応づけられた場所識別コード(「テアトルA」)について、分析結果格納部150に格納されている分析結果により対応づけられている先訪場所特徴情報(「軽食」)を抽出し、場所データベース100を参照することにより、抽出した先訪場所特徴情報(「軽食」)に合致する場所特徴情報(「軽食」)が対応づけられている場所識別コード(「フードコートE」)で特定される場所を配信場所と決定し、位置情報収集蓄積部120に蓄積されている個々の端末装置の現時点もしくはその直近の位置情報に基づいて、配信場所(「フードコートE」)の近傍領域に位置すると判定された端末装置を当該広告情報(「FileAAA」)の配信先端末装置と決定する処理を行う。
<<< §3.GPSを利用した位置情報の収集 >>>
ここでは、図1に示すシステムにおける位置情報収集蓄積部120が、各端末装置の位置情報を収集する具体的な方法を説明する。本発明を実施する上で、各端末装置の位置情報を収集するのに最も適した方法は、GPS(Global Positioning System)を利用して各端末装置の緯度経度を示すデータを位置情報として収集する方法である。
図6は、図1に示すシステムにおける位置情報収集蓄積部120の具体的な位置情報収集経路の一例を示す図である。ここに示すシステムでは、GPS機能付き携帯電話を端末装置として用いており、各端末装置T0000〜T9999は、衛星121からの電波を利用して、自己の現在位置の緯度経度を認識することができる。各端末装置T0000〜T9999が認識した自己の位置情報(緯度データと経度データ)は、基地局122およびインターネット123を経由して、位置情報収集蓄積部120へと伝達される。
このように、GPSを利用して得られる位置情報は、緯度データおよび経度データの組み合わせからなる位置座標になるので、場所データベース100内に登録されている個々の場所の位置を示す場所位置コードも、緯度データおよび経度データの組み合わせからなる位置座標として用意しておくのが好ましい。図7は、図1に示すシステムにおける場所データベース100において、場所位置コードとして緯度経度データを用いた一例を示す図である。このシステムでは、個々の場所は、映画館,レストランといった個別の店舗の場所であるから、場所位置コードとして与えられる緯度データと経度データの精度は、各店舗の建物や敷地を相互に区別するために十分な精度になるようにする。
また、一般に、GPSを利用すると、位置情報を取得した時点の日時の情報も併せて取得することが可能である。したがって、位置情報収集蓄積部120は、位置情報とともに、その取得日時を収集することが可能であり、「日付、時刻、緯度、経度」という情報をもった単位データの集合からなるGPSログファイルとして、位置情報を蓄積することができる。図8は、このようなGPSログファイル125の一例を示す図であり、2007年3月8日10時08分25秒以降の端末装置T0000の位置情報を示している。
図8に示す例の場合、端末装置T0000が衛星121からの電波を利用して、自己の緯度経度データを取得した時点の日付および時刻が、GPSログファイル125内に記録されているが、緯度経度データが遅延なく位置情報収集蓄積部120に伝達されるのであれば、位置情報収集蓄積部120が緯度経度データを受信した時点の日付および時刻を、GPSログファイル125内に記録するようにしても支障はない。また、図示の例では、ほぼ6秒程度の間隔で、新たな位置情報の取得がなされているが、位置情報を取得する周期は、ユーザの行動を捕捉するのに十分な精度の位置情報が得られれば、任意の時間に設定してかまわない。
なお、GPSログファイル125内の日時の情報は、§4で述べる「場所遷移テーブルの作成手順」や、§5で述べる「配信先端末装置の決定手順」において、端末装置が特定の場所にある程度の時間だけ留まっていたか否かを判定するための材料として利用することができる。
もちろん、位置情報の取得が正確に6秒周期で休みなしに継続的に行われる、というような場合は、日付や時刻の情報がなくても、各位置情報が取得順に蓄積されていれば、計算により、個々の位置情報の取得日時を求めることができる。しかしながら、実際には、衛星121の電波が届かない領域に端末装置が入ってしまったり、ユーザが端末装置の電源を切ってしまったりすることがあり、位置情報の取得タイミングは必ずしも規則的なものにはならない。したがって、実用上は、位置情報収集蓄積部120内には、図8に示すGPSログファイル125の例のように、位置情報とともに、当該位置情報の取得日時の情報を蓄積しておくようにするのが好ましい。
以上、位置情報収集蓄積部120が、GPSを利用して各端末装置の位置情報を収集する例を述べたが、本発明を実施する上での位置情報の収集手法は、必ずしもGPSを利用した手法に限定されるものではない。たとえば、無線LANやRFIDなどの設備を利用して、端末装置がどのアクセスポイントと交信しているかを把握することにより、当該端末装置の位置情報を取得するようなことも可能である。
<<< §4.場所遷移テーブルの作成手順 >>>
続いて、図1に示すシステムにおける場所遷移テーブル作成部130の具体的な処理手順の一例を説明する。この場所遷移テーブル作成部130が実行する処理は、図8に示すようなGPSログファイル125に基づいて、図2に示すような場所遷移テーブルを作成する処理である。GPSログファイル125が、位置座標を示すデータの羅列であるのに対して、場所遷移テーブルは、場所データベース100に登録されている場所を示すデータの羅列である。したがって、場所遷移テーブル作成部130は、位置座標を示すデータの羅列から、特定の場所(場所データベース100に登録されている場所)を示すデータを認識する処理を行わねばならない。
図7に示す例のように、場所データベース100には、個々の場所についての場所位置コード(緯度データと経度データ)が登録されているので、GPSログファイル125内の緯度経度データを順番に参照してゆき、特定の場所について登録されている緯度経度と一致した場合に、ユーザが当該場所に来訪したと認識することができる。
もっとも、場所データベース100に登録されている個々の場所の緯度経度データは、個々の場所の代表点(たとえば、店舗の建屋の中心点だったり、正面入り口の中心点だったりする)であり、また、GPSログファイル125内の緯度経度データには誤差が含まれていると考えられるので、緯度経度を照合する際には、ある程度の余裕をみておく必要がある。たとえば、場所データベース100に登録されている個々の場所の緯度経度によって示される点から半径10m以内の領域を、当該場所の領域と定義し、GPSログファイル125内の緯度経度によって示される点が、特定の場所の領域内に入っていた場合に、ユーザが当該特定の場所を来訪したと認識するようにすればよい。
このような手法を採れば、図8に示すようなGPSログファイル125内の位置情報を上の行から下の行へと1行ずつ順番に調べてゆくことにより、ユーザが特定の場所に来訪した事実を認識することができ、来訪したと認識された場所を認識した順にテーブルに掲載してゆくことにより、図2に示すような場所遷移テーブルを作成することができる。
ただ、実用上は、上述したような単純な手法を採る代わりに、特定の場所を場所遷移テーブルに掲載するか否かを慎重に吟味するようにするのが好ましい。これは、「GPSログファイル125内の緯度経度によって示される点が、特定の場所の領域内に入った」という認定事項は、「ある瞬間に、ユーザが当該場所の領域内に存在した」という事実を示すだけであり、「ユーザが当該場所で何らかの行動を行った」という事実を示すことにはならないからである。
たとえば、図2の端末装置T0000の場所遷移テーブルには、「雑貨ストアD」→「フードコートE」→「テアトルA」→「リストランテB」→「カフェC」という場所の遷移が示されている。しかしながら、ユーザが「雑貨ストアD」に続いて「フードコートE」へ「来訪」したとしても、当該ユーザが、必ずしも「フードコートEで軽食をとった」かどうかは断定できない。たとえば、このユーザは、「雑貨ストアD」で買物を済ませた後、映画を観るために「テアトルA」へ向かって歩いてゆく途中で、たまたま「フードコートE」の前を通り過ぎただけかもしれない。
このように、ユーザがある場所に「来訪」したとしても、当該場所で何らかの行動を行った場合(たとえば、店舗の場合は、当該店舗を利用した場合)もあれば、たまたま通過地点として通り過ぎただけの場合もある。前者の場合、ユーザは当該場所で行われる行動(当該店舗を利用すること)に格別の興味を示していたと推測することができるが、後者の場合、そのような推測は成り立たない。場所遷移テーブルは、前述したとおり、傾向分析部140における「どのような特徴をもった店舗に居たユーザが、次にどの店舗を来訪する可能性が高いか」という傾向分析の材料として利用される情報である。したがって、この場所遷移テーブルに掲載する「場所(店舗)」は、本来は、個々のユーザにとって何らかの興味の対象となっている「場所(店舗)」であることが好ましい。
そのような観点からは、たまたま通過地点として通り過ぎただけの「場所(店舗)」は、場所遷移テーブルには掲載すべきではない。もっとも、GPSログファイル125内の位置情報からは、ユーザが「イタリア料理店で食事をしたのか」、「映画館で映画を観たのか」、「単に店の前を通り過ぎただけなのか」といった事実を直接的に把握することはできない。そこで、ここで述べる実施例では、GPSログファイル125内の位置情報から、ユーザが「来訪」した場所を特定するとともに、当該来訪場所における「滞在時間」を把握し、所定の滞在時間だけ留まっていた場合に限り、当該来訪場所を場所遷移テーブルに掲載する手法を採っている。
図8に示すGPSログファイル125には、位置情報とともに、その取得日時の情報が含まれている。そこで、場所遷移テーブル作成部130が、場所データベース100に登録されている特定の場所に関して、その場所位置コードによって示される位置座標の近傍領域内に、所定の滞在時間だけ留まっていたことを条件として、当該特定の場所を場所遷移テーブルに掲載する処理を行うようにすればよい。たとえば、所定の滞在時間として、10分間という値を設定しておけば、10分以上滞在した「来訪場所」は、場所遷移テーブルに掲載されるが、滞在時間が10分未満の「来訪場所」は、掲載されないことになる。
もちろん、ある店舗の前の路上で煙草を吸うために10分以上立ち止まっていたような場合、ユーザは当該店舗に何ら関心を示していないにもかかわらず、当該店舗は場所遷移テーブルに掲載されてしまうことになり、傾向分析の材料として利用されてしまう。このような弊害をできるだけ少なくするには、当該店舗のできるだけ奥の地点を、場所データベース100に場所位置コードとして登録するようにし、店舗前の路上地点では、当該店舗に「来訪」したとの認定がなされないようにするのが好ましい。
逆に、「雑貨ストアD」で買物をしたにもかかわらず、買物時間が10分に満たなかった場合は、「雑貨ストアD」は「単に通り過ぎただけの店舗」と同等の取り扱いとなり、場所遷移テーブルには掲載されなくなってしまう。このような弊害をできるだけ少なくするには、判定基準となる滞在時間を場所ごとに異ならせる設定を行えばよい。たとえば、「雑貨ストアD」については「3分」、「テアトルA」については「1時間」というように、店舗ごとに異なる判定基準を設定しておけば、より柔軟な対応をとることができる。
続いて、図8に示すGPSログファイル125に基づいて、場所遷移テーブルを作成する具体的な手順の一例を説明しよう。図9は、図8に示すGPSログファイルの構成を記号化して示した図である。図8に示すGPSログファイル125は、「日付、時刻、緯度、経度」という情報をもった単位データの集合から構成されるが、図9に示すGPSログファイル125では、各行ごとにそれぞれの単位データが示されており、任意の自然数nについて、第n番目の単位データを、「t(n),x(n),y(n)」なる記号列で表している。ここで、t(n)は、日時を示すデータであり、x(n)は緯度データ、y(n)は経度データである。また、右側欄外に記載されたP(n)は、x(n),y(n)で特定される点の位置を示している。ここでは、説明の便宜上、GPSログファイル125内には、全N組の単位データが含まれているものとする。
図10は、以下に述べる場所遷移テーブルの作成過程で用いる距離関数d(n,n+i)を説明する図である。図10の下段に示されているとおり、距離関数d(n,n+i)は、
d(n,n+i)
=√((x(n+i)−x(n))+(y(n+i)−y(n))
なる式で定義され、第n番目のデータが示す位置座標と第(n+i)番目のデータが示す位置座標との間の距離、すなわち、点P(n)と点P(n+i)との間のユークリッド距離を示す。
たとえば、図10の上段に示す例のように、位置座標が、P(n)→P(n+1)→P(n+2)→P(n+3)→......→P(n+i)と遷移した場合、d(n,n+1)は、点P(n)と点P(n+1)との間の距離を示し、d(n,n+2)は、点P(n)と点P(n+2)との間の距離を示し、d(n,n+i)は、点P(n)と点P(n+i)との間の距離を示す。
図11は、図1に示すシステムにおける場所遷移テーブル作成部130による場所遷移テーブル作成手順の一例を示す流れ図である。この流れ図に示す手順の特徴は、図9に示すようなGPSログファイル125内のデータを、上の行から1行ずつ順に読み込んで処理してゆくことにより、所定時間以上、滞在していた場所を抽出して、場所遷移テーブルに掲載してゆくことができる点である。ここでは、この流れ図に示す手順における「1つの場所への滞在を認識するプロセス」の概念を説明するために、図12に示すような移動が行われた場合を想定して、各手順を説明する。
図12には、P(1)→P(2)→P(3)→P(4)→......→P(9)という移動経路が示されている。ここで、P(1),P(2),......等の点は、図9のGPSログファイルの第1行目,第2行目,......等のデータで示される座標点である。また、図12に×印で示す点Qは、場所データベース100に登録されている特定の場所の場所位置コードで示される座標点であり、ここでは、便宜上、「テアトルA」の店舗位置を示す点(座標(Xa,Xb)で示される点)ということにする。この図12に示されている平面図を人間が観察すれば、P(3)〜P(7)は、点Qの近傍に密集して存在する点であるから、P(3)〜P(7)の位置情報が取得された期間内(t(3)〜t(7)の間)は、ユーザが「テアトルA」なる映画館に滞在していたことを認識できるであろう。すなわち、ユーザは、P(1)→P(2)→P(3)という経路を通って「テアトルA」に来訪し、そこにt(3)〜t(7)の期間だけ滞在し、P(7)→P(8)→P(9)という経路を通って、次の目的地へと去って行ったことになる。
この場合、t(3)〜t(7)の滞在時間が、予め定められた所定の滞在時間以上であれば、ユーザが「テアトルA」なる映画館を利用した(映画を観た)と判断し、「テアトルA」を場所遷移テーブルに掲載する処理が行われる。図11の流れ図の手順は、このような判断処理をコンピュータに実行させるためのアルゴリズムの一例を示すものである。以下、この手順を順に説明する。
まず、ステップS1において、パラメータnを初期値1に設定する。このパラメータnは、図9に示すGPSログファイルの何行目に着目しているかを示すパラメータである。図示の手順では、nの値を初期値1から1ずつ増加させながら、後述する探索処理が進行してゆくことになる。nの許容最大値は、データの総数Nである。
次に、ステップS2において、前述した距離関数d(n,n+1)の値と、所定のしきい値dthとの大小関係が比較される。たとえば、n=1の場合、d(1,2)の値とdthの値とが比較される。ここで、d(1,2)は、前述したとおり、P(1)とP(2)との距離である。図12に示すように、しきい値dthが図示の寸法に設定されていたとすると、d(1,2)>dthである。しきい値dthは、通常の移動速度で移動しているユーザが、位置情報の取得周期の時間だけ経過すれば、当然、進んでいるであろうと予測される距離よりも小さな値に設定される。たとえば、図8に示すGPSログファイル125の場合、ほぼ6秒の周期で位置情報が取得されている。そこで、位置情報の取得周期を6秒とし、ユーザが時速4km程度で進んでいるとすれば、1周期の間に、6m程度は進んでいるはずである。このような場合、しきい値dthをたとえば5mに設定しておけば、d(n,n+1)の値がしきい値dthより小さくなったときには、ユーザが移動を中断したと推測することができる。
ステップS2において、否定的な判定結果が得られた場合は、ステップS3へと進み、nの値が1だけ増加され、ステップS4を経て、再びステップS2の判定処理が実行される。ステップS4は、nの値がN−1に到達したか否かを判定する処理であり、nの値がN−1に到達した場合に、この流れ図の処理は終了する。nの値がNに到達するまで処理を続行せずに、N−1に到達した時点で処理を終了するのは、ステップS5以降の処理が、n<N−2なる条件を満たしていないと意味がないためである。
図12に示す実例の場合、P(1)とP(2)との距離や、P(2)とP(3)との距離は、しきい値dthよりも大きいので、n=1,n=2の場合、ステップS2で否定的な判定がなされる。ステップS2で肯定的な判定がなされるのは、n=3になったときである。図12に示すとおり、P(3)とP(4)との距離は、しきい値dthよりも小さいので、ステップS2では、d(3,4)<dthとの肯定的な判定がなされる。これは、ユーザがP(3)に到達した時点で移動を一時中断して滞在を開始した、との判定がなされたことを意味する。
続くステップS5では、パラメータiが初期値2に設定される。このパラメータiは、
ユーザがいつ移動を再開したかを判定するために用いられる。そのために、次のステップS6において、d(n,n+i)の値と、しきい値dthとの大小関係が比較される。上述の例の場合、この時点ではn=3であるから、d(3,5)の値とdthの値とが比較される。図12に示すとおり、P(3)とP(5)との距離は、しきい値dthよりも小さいので、この時点でのステップS6の処理では、肯定的な判定がなされる。そこで、ステップS7を経てステップS8へと進み、iの値が1だけ増加され、再びステップS6の判定処理が実行される。ステップS7は、n+iの値がNに到達したか否かを判定する処理であり、n+iの値がNに到達した場合には、ステップS9において、iの値が1だけ増加され、ステップS10へと進むことになる。
i=3に更新された後のステップS6の判定処理では、d(3,6)の値とdthの値とが比較される。図12に示すとおり、P(3)とP(6)との距離は、やはりしきい値dthよりも小さいので、この時点でのステップS6の処理では、やはり肯定的な判定がなされる。そこで、ステップS7を経てステップS8へと進み、iの値が1だけ増加され、再びステップS6の判定処理が実行される。i=4に更新された後のステップS6の判定処理では、d(3,7)の値とdthの値とが比較される。図12に示すとおり、P(3)とP(7)との距離は、やはりしきい値dthよりも小さいので、この時点でのステップS6の処理では、やはり肯定的な判定がなされる
図12に示す円Cは、点P(3)を中心とした半径dthの円であり、点P(3)の近傍領域を示している。ステップS6の判定処理は、結局、点P(n+i)が、この円C内の点であるか否かを判定する処理ということになる。図示のとおり、点P(4)〜P(7)は、いずれも円C内の点であるから、i=4までは、ステップS6において肯定的な判定がなされる。ところが、i=5に更新された後のステップS6の判定処理では、d(3,8)の値とdthの値とが比較されるが、図12に示すとおり、P(3)とP(8)との距離は、しきい値dthよりも大きくなるので、この時点でのステップS6の処理では、否定的な判定がなされ、ステップS10へと進むことになる。これは、i=5に更新されたときには、既にユーザが移動を再開していたことを意味する。結局、ユーザは、「n=3,i=0」なるパラメータで示される点P(3)から、「n=3,i=4」なるパラメータで示される点P(7)に至るまでの間、同じ場所に滞在していたと推測される。
ステップS10では、この点P(3)〜P(7)に至る間の滞在時間ξが、「ξ=t(n+i−1)−t(n)」なる式で算出される。この時点で、n=3,i=5であるから、「ξ=t(7)−t(3)」なる式で滞在時間ξが算出される。そして、ステップS11において、算出された滞在時間ξと所定のしきい値ξthとの大小関係が判定され、ξ>ξthであれば、「ユーザは当該場所に滞在していた」との判定がなされ、ステップS13以降の手順に進むことになる。これに対して、ξ≦ξthであれば、ステップS12へと進むことになり、ステップS13以降の手順は行われない。
したがって、しきい値ξthを、たとえば10分といった時間に設定しておけば、図12に示す例における円C内の滞在が、たとえば、信号待ちで、数十秒程度の間、路上で立ち止まったような一時的な滞在であった場合、たとえ図示の点Qが「テアトルA」の位置であったとしても、「テアトルA」が場所遷移テーブルに掲載されることはない。
一方、ξ>ξthであれば、「ユーザは当該場所に滞在していた」との判定がなされるので、当該場所を場所遷移テーブルに掲載する処理が行われる。但し、この時点では、「当該場所」が「テアトルA」という場所であることまでは特定されていない。ステップS13,S14は、「当該場所」が、場所データベース100に登録されているどの場所であるかを特定するための処理である。
まず、ステップS13において、円C内の各点P(3)〜P(7)の平均座標を求める処理が行われる。具体的には、各点の緯度の平均x(av)と経度の平均y(av)とをそれぞれ別個に計算し、平均座標(x(av),y(av))を求めるようにすればよい。上例の場合、x(av)=(x(3)+x(4)+x(5)+x(6)+x(7))/5なる計算で得られ、y(av)=(y(3)+y(4)+y(5)+y(6)+y(7))/5なる計算で得られる。これを、n,iを用いた一般式で示せば、
x(av)=(x(n)+x(n+1)+......+x(n+i−1))/i
y(av)=(y(n)+y(n+1)+......+y(n+i−1))/i
となる。
続くステップS14では、場所データベース100に登録されている場所の中から、平均座標(x(av),y(av))で示される点P(x(av),y(av))に最も近い最近接場所Qを抽出する処理が行われる。図1に示す場所データベース100内には、5つの場所についての位置座標(Xa,Ya),(Xb,Yb),(Xc,Yc),(Xd,Yd),(Xe,Ye)が登録されているので、これら5つの位置座標の中から、点P(x(av),y(av))に最も近い位置座標が抽出され、当該位置座標をもつ場所が、最近接場所Qとして抽出される。上例の場合、図12に示す点Qの位置が「テアトルA」の位置であるから、「テアトルA」が最近接場所として抽出されることになる。
このような処理により、円C内の各点P(3)〜P(7)としてユーザが滞在していた場所が、一応、「テアトルA」であろうという推測がなされたことになる。しかしながら、この推測は必ずしも正しいものではない。特に、ユーザが実際に滞在していた場所が、場所データベース100には登録されていない場所であった場合、ステップS14で抽出された最近接場所Qは、ユーザが実際に滞在していた場所とは全く別の場所ということになる。そこで、ステップS15において、点P(x(av),y(av))と抽出した最近接場所の位置Qとの距離εが、所定のしきい値εthより小さいか否かの判定が行われる。判定の結果、ε<εthであれば、抽出した最近接場所Qは、ユーザが実際に滞在していた場所に相違なかろう、との推測を行い、ステップS16において、抽出した最近接場所Qを場所遷移テーブルに掲載する処理を行う。逆に、判定の結果、ε≧εthであれば、抽出した最近接場所Qは、ユーザが実際に滞在していた場所とは全く異なる場所であろう、との推測を行い、場所遷移テーブルへの掲載を行うことなしに、ステップS12へと進むことになる。しきい値εthとしては、上記推測が合理的に行われるような適当な値(たとえば、10m)に設定しておけばよい。
ステップS12は、ステップS11もしくはS15で否定的な判定がなされたために、ステップS16が実行されなかった場合に、nの値をn+1に更新して、ステップS2からの処理を継続する処理である。また、ステップS17は、ステップS16が実行された場合に、図12に示す例における点P(8)以降についての探索処理を継続するために、パラメータnの値をn+iに更新する処理である。上例の場合、ステップS16が完了した時点で、n=3,i=5となっているので、ステップS12における更新後のnの値は8ということになる。そして、ステップS4を経て、ステップS2からの処理が繰り返し実行されるため、図12に示す点P(8)以降についての探索がなされることになる。
このように、場所遷移テーブル作成部130に、図11の流れ図に示す手順を実行させるようにすれば、1つの端末装置についての所定時間枠内の位置情報を示すN個の時系列データに基づいて、1つの場所遷移テーブルを作成することが可能である。このような処理を実行させるためには、場所遷移テーブル作成部130に、次のような各手段を設けておけばよい。
(1) 図9に示すようなGPSログファイル内の第n番目のデータが示す位置座標と第(n+1)番目のデータが示す位置座標との距離d(n,n+1)が、しきい値dthよりも小さいか否かを判定する第1の手段(ステップS2を実行する手段)。
(2) 図9に示すようなGPSログファイル内の第n番目のデータが示す位置座標と第(n+i)番目のデータが示す位置座標との距離d(n,n+i)が、しきい値dthよりも小さいか否かを判定する第2の手段(ステップS6を実行する手段)。
(3) nを初期値1から1ずつ増加させて更新しながら、各更新時点のnの値を用いて第1の手段に判定を実行させる処理を、nがN−1に到達する直前まで繰り返し行い、第2の手段が否定的な判定を行った後は、nの値をn+iに更新して処理を続行する第3の手段(ステップS1,S3,S4,S12を実行する手段)。
(4) 第1の手段が肯定的な判定を行った場合に、iを初期値2から1ずつ増加させて更新しながら、各更新時点のnおよびiの値を用いて第2の手段に判定を実行させる処理を、第2の手段が否定的な判定を行うまで繰り返し行い、(n+i)がNに到達しても肯定的な判定がなされたときには、iを更に1だけ増加させる処理を行う第4の手段(ステップS5,S7,S8,S9を実行する手段)。
(5) 第2の手段が否定的な判定を行ったとき、もしくは(n+i)がNに到達したときに、そのときのnおよびiの値を用いて示される第n番目のデータの取得日時と第(n+i−1)番目のデータの取得日時との時間差ξが、しきい値ξthよりも大きいか否かを判定する第5の手段(ステップS10,S11を実行する手段)。
(6) 第5の手段が肯定的な判定を行った場合に、そのときのnおよびiの値を用いて示される第n番目のデータ乃至第(n+i−1)番目のデータが示す位置座標の平均座標を求める第6の手段(ステップS13を実行する手段)。
(7) 場所データベース100に登録されている場所の中から、上記平均座標に対する最近接場所Qを抽出し、当該最近接場所Qの位置座標と上記平均座標との距離εが、しきい値εthよりも小さいか否かを判定する第7の手段(ステップS14,S15を実行する手段)。
(8) 第7の手段が肯定的な判定を行った場合に、上記最近接場所Qを場所遷移テーブルに掲載する第8の手段(ステップS16を実行する手段)。
以上、図11の流れ図を参照しながら、場所遷移テーブル作成部130の具体的な処理手順の一例を説明したが、もちろん、場所遷移テーブルを作成するアルゴリズムは、図11に示すアルゴリズムに限定されるものではない。たとえば、滞在判定用のしきい値ξthとして、場所ごとに異なる値を設定するような場合は、最近接場所Qが定まった後でないと、しきい値ξthの値が決まらないので、ステップS11をステップS15の後に行うようにすればよい。また、図11に示すアルゴリズムは、実用上、必ずしもユーザの行動の正確な推測を行うことはできないかもしれないが、場所遷移テーブルは、傾向分析部140で行われる統計的な傾向分析の材料に供されるものなので、多少の推測ミスが生じたとしても、本発明を実施する上での大きな支障にはならない。
<<< §5.配信先の決定手順 >>>
続いて、図1に示すシステムにおける配信先決定部160による配信先の具体的な決定手順の一例を説明する。§1で述べたとおり、配信先決定部160は、場所データベース100内の情報と、分析結果格納部150内の情報とを参照することにより、広告情報格納部170内に格納されている個々の広告情報についての配信先を決定することができる。たとえば、前例の場合、「FileAAA」なる広告情報については、「フードコートE」なる場所が配信先として決定される。そこで、配信先決定部160は、「現在、『フードコートE』に居る端末装置」を配信先端末装置と決定する処理を行うことになる。
前述したとおり、位置情報収集蓄積部120には、図9に示すようなGPSログファイル125が、個々の端末装置ごとに収集されるので、このGPSログファイル125を参照すれば、「現在、『フードコートE』に居る端末装置」を認識することは困難なことではない。たとえば、「フードコードE」の登録座標が(Xe,Ye)であったとすると、図9に示すような特定の端末装置のGPSログファイル125の最新データ、すなわち、第N行目のデータ「x(N),y(N)」で示される位置P(N)が、位置座標(Xe,Ye)の近傍にあれば、当該端末装置は、「現在、『フードコートE』に居る端末装置」と認識することが可能であり、「FileAAA」なる広告情報を配信すべき配信先端末装置と決定することができる。
しかしながら、実用上は、「現在、『フードコートE』に居る端末装置」を無条件で配信先端末装置とせずに、「現在、『フードコートE』に居る端末装置」のうち、「『フードコートE』に所定の滞在時間だけ留まっていた端末装置」を配信先端末装置と決定するのが好ましい。これは、「現在、『フードコートE』に居る」という認定事項だけでは、「現在に至るまで、『フードコートE』で軽食をとっていた」のか、「現在、たまたま『フードコートE』の前を通りかかっただけ」なのか、を区別することができないためである。前者の場合、ユーザは、「フードコートE」で行われる行動(軽食をとること)に格別の興味を示していたと推測することができるが、後者の場合、そのような推測は成り立たない。
§4で述べた方法は、ユーザが所定の滞在時間だけ滞在していた場所を、当該ユーザが格別の興味を示していた場所と推測し、このような場所のみを場所遷移テーブルに掲載する、という基本概念に基づく方法である。したがって、この方法で作成された場所遷移テーブルを材料として、傾向分析部140による統計的な分析を行い、その分析結果に基づいて、配信先が「フードコートE」と決定されたとすれば、「現在、たまたま『フードコートE』の前を通りかかっただけ」のユーザに対してまで広告配信を行うことは、合理的根拠を欠くことになる。このような場合、「現在に至るまで、『フードコートE』で軽食をとっていた」ユーザに対してのみ広告配信を行うべきである。
そこで、実用上は、配信先決定部160が、現在に至るまで所定の滞在時間以上にわたって、特定の端末装置が配信場所の近傍領域内に留まっていることを条件として、当該特定の端末装置を配信先端末装置と決定する処理を行うようにするのが好ましい。
図13は、このような方針に基づいて、配信先決定部60が配信先を決定するために行う配信先決定手順の一例を示す流れ図である。ここでは、広告情報格納部170内に、合計M個の広告情報が格納されており、これらの広告情報を、それぞれ合計K個の端末装置の中から選ばれた特定の端末装置に配信する場合について説明する。
まず、ステップS21において、パラメータmを初期値1に設定する。このパラメータmは、広告情報格納部170内に格納されている合計M個の広告情報を順番に示すためのパラメータであり、ステップS22〜S38の手順は、第m番目の広告情報の配信先となる端末装置を決定するための処理手順ということになる。
ステップS22では、第m番目の広告情報の配信場所が決定される。たとえば、図1に示す例の場合、広告情報格納部170内に格納されている第1番目の広告情報「FileAAA」の配信場所は、§1で述べたように、次のようなプロセスで決定される。まず、「FileAAA」は、「テアトルA」に関する広告情報であるので、分析結果格納部150を参照して、「テアトルA」についての先訪場所特徴情報が「軽食」であることを認識する。続いて、場所データベース100を参照して、「軽食」に合致する場所特徴情報を有する場所を検索する。すると、「フードコートE」という場所がヒットするので、この「フードコートE」が配信場所として決定される。なお、ステップS23以下の手順では、説明の便宜上、このステップS22において単一の配信場所が決定された場合の例を示すが、複数の配信場所が決定された場合には、個々の配信場所ごとに同様の処理を施せばよい。
ステップS23では、場所データベース100を参照することにより、ステップS22で決定された配信場所の場所位置コード(X,Y)が取得される。たとえば、上例のように、「フードコートE」が配信場所として決定された場合には、その場所位置コード(Xe,Ye)が取得されることになる。
次に、ステップS24において、パラメータkを1に設定する。このパラメータkは、全K個の端末装置を順番に示すためのパラメータであり、ステップS25〜S36の手順は、第k番目の端末装置を配信先とするか否かを判定するための処理手順ということになる。
ステップS25では、位置情報収集蓄積部120内に蓄積されている各端末装置ごとのGPSログファイルの中から、第k番目の端末装置についての現在までのログファイルを、配信先決定部160内に読み込む処理が行われる(実用上は、数時間前〜現時点までの時系列データを読み込めば十分である)。そして、ステップS26では、読み込んだログファイルに基づいて、最新座標値(x(N),y(N))が取得される。この座標値は、図9に示すログファイルの場合、最下行に位置するデータである。そして、ステップS27において、位置(x(N),y(N))と位置(X,Y)との距離Dが求められる。上例の場合、位置(x(N),y(N))と「フードコートE」の位置(Xe,Ye)との距離Dが計算されることになる。
こうして求められた距離Dは、判定対象となる第k番目の端末装置の現在位置と、配信場所の座標位置と、の距離であり、判定対象となる端末装置が配信場所からどの程度離れているかを示す指標になる。そこで、ステップS28において、この距離Dが、所定のしきい値Dthよりも小さいか否かが判定される。このステップS28において、肯定的な判定がなされれば、判定対象となった第k番目の端末装置は、現在、配信場所の近傍に居ることになる。しきい値Dthは、配信場所の近傍として認識するのに適した値(たとえば、20m)に設定しておけばよい。
さて、ステップS28において肯定的な判定がなされた場合、判定対象となる第k番目の端末装置は、少なくとも現時点では、配信場所の近傍に居ることになる。すなわち、上例の場合、第k番目の端末装置は、少なくとも現在は、「フードコートE」に居ると認定することができる。しかしながら、これだけの情報では、前述したように、「現在に至るまで、『フードコートE』で軽食をとっていた」のか、「現在、たまたま『フードコートE』の前を通りかかっただけ」なのか、を区別することはできない。
そこで、ステップS29以下の判定手順が実行される。まず、ステップS29において、パラメータiを1に設定する。このパラメータiは、現在の位置情報から過去に遡る程度を示すパラメータであり、図9に示す例の場合、第N行目のデータから、上方へと遡る行数を示す値になる。
続いて、ステップS30において、位置(x(N−i),y(N−i))と位置(X,Y)との距離Dが求められる。上例の場合、位置(x(N−i),y(N−i))と「フードコートE」の位置(Xe,Ye)との距離Dが計算されることになる。この計算によって求まった距離Dは、現在より若干遡った時点における、判定対象となる端末装置と「フードコートE」の位置との距離ということになる。続くステップS31では、この距離Dが、しきい値Dthよりも小さいか否かが判定される。このステップS31において、肯定的な判定がなされれば、ステップS32でiが1だけ増加され、ステップS33を経て、再びステップS30からの処理が行われる。但し、N−iが0になってしまった場合には、ステップS33において否定的な判定がなされ、ステップS34へ進むことになる。ステップS31において否定的な判定がなされた場合も、同様に、ステップS34へ進むことになる。
ステップS34へ進んだということは、現時点からある程度遡った時点では、判定対象となる端末装置と「フードコートE」の位置との距離がしきい値Dth以上であることを意味する(但し、N−iが0になってしまった場合は、もうそれより遡るデータがないことを意味する)。より具体的には、「N−i」に対応するデータが収集された時点t(N−i)においては、判定対象となる端末装置は、まだ「フードコートE」には来訪していないことを意味する。別言すれば、判定対象となる端末装置が「フードコートE」に滞在している期間は、t(N−i+1)〜t(N)ということになる(t(N)は現時点)。
そこで、ステップS34において、この滞在時間ξを、「ξ=t(N)−t(N−i+1)」なる式で求め、ステップS35において、ξがしきい値ξthよりも大きいか否かを判定する。しきい値ξthは、ユーザが当該場所で何らかの行動を行った場合に必要とされる時間(たとえば10分)に設定しておけばよい。ステップS35において、肯定的な判定がなされた場合、判定対象となる第k番目の端末装置を所持するユーザは、現在「フードコートE」に居て、かつ、「フードコートE」において、当該場所に固有の行動(すなわち、軽食)を行っている、との認識が得られたことになる。そこで、ステップS36へ進み、判定対象となる第k番目の端末装置を第m番目の広告情報の配信先端末装置と決定した上で、ステップS37へ進むことになる。
一方、ステップS28で否定的な判定がなされた場合(現時点において、判定対象となる第k番目の端末装置が「フードコートE」に居ない場合)、あるいは、ステップS35で否定的な判定がなされた場合(現時点において、判定対象となる第k番目の端末装置が「フードコートE」に居るものの、現在までの滞在時間では、当該場所に固有の行動(すなわち、軽食)を行っているとは認定できない場合)は、当該端末装置は、第m番目の広告情報の配信先端末装置にはならず、ステップS37へ進むことになる。
ステップS37では、kの値が1だけ増加され、ステップS38を経て、ステップS25からの処理が繰り返し実行される。すなわち、次の端末装置を判定対象として、同様の処理が実行される。そして、パラメータkの値が、全端末装置の数Kに到達したら、第m番目の広告情報の配信先決定処理は完了するので、ステップS39へと進む。このステップS39では、mの値が1だけ増加され、ステップS40を経て、ステップS22からの処理が繰り返し実行される。すなわち、次の広告情報について、配信先を決定する処理が実行される。そして、パラメータmの値が、全広告情報の数Mに到達したら、すべての処理は終了である。
この図13の流れ図に示す手順に基づいて、判定対象となる端末装置を、特定の配信場所についての配信先端末装置とすべきか否かを判定できるようにするためには、配信先決定部160に、次のような各手段を設けておけばよい。
(1) 判定対象となる端末装置についての現在までの位置情報を示す時系列データを読み込む第1の手段(ステップS25を実行する手段)。
(2) 読み込んだ時系列データの第N番目にある最新データが示す位置座標と上記特定の配信場所の位置座標との距離Dが、しきい値Dthよりも小さいか否かを判定する第2の手段(ステップS26〜S28を実行する手段)。
(3) 読み込んだ時系列データの第(N−i)番目のデータが示す位置座標と上記特定の配信場所の位置座標との距離Dが、しきい値Dthよりも小さいか否かを判定する第3の手段(ステップS30,S31を実行する手段)。
(4) 第2の手段が肯定的な判定を行った場合に、iを初期値1から1ずつ増加させて更新しながら、各更新時点のiの値を用いて第3の手段に判定を実行させる処理を、第3の手段が否定的な判定を行うまで、もしくはiがNに到達するまで、繰り返し行う第4の手段(ステップSS29,S32,S33を実行する手段)。
(5) 第3の手段が否定的な判定を行ったとき、もしくはiがNに到達したときに、そのときのiの値を用いて示される第(N−i+1)番目のデータの取得日時と第N番目のデータの取得日時との時間差ξが、しきい値ξthよりも大きいか否かを判定する第5の手段(ステップS34,S35を実行する手段)。
(6) 第5の手段が肯定的な判定を行った場合に、判定対象となる端末装置を配信先端末装置と決定する第6の手段(ステップS36を実行する手段)。
なお、配信先決定部160は、所定周期(たとえば、5分間隔)で、図13の流れ図に示す手順を繰り返し実行するようにする。そうすれば、ある時点では滞在時間が短いために配信先端末装置にはならなかった場合でも、滞在時間が経過すれば、やがて配信先端末装置として選択されることになる。
以上、図13の流れ図を参照しながら、配信先端末装置を決定する具体的な処理手順の一例を説明したが、もちろん、配信先端末装置を決定するアルゴリズムは、図13に示すアルゴリズムに限定されるものではない。また、図13に示すアルゴリズムは、実用上、ユーザが配信場所で所定の行動を行っているとの正確な認識を行うことはできないかもしれないが、配信先決定プロセスにおいて多少ミスが生じたとしても、意図した配信先に広告情報の配信が行われないだけであるので、本発明を実施する上での大きな支障にはならない。
<<< §6.複数の特徴コードを用いる実施例 >>>
これまで述べてきた基本的実施例では、場所データベース100に登録された各場所についての場所特徴情報が、それぞれ当該場所の代表的な特徴を示す単一の特徴コードによって構成されていた。たとえば、図1に示す例の場合、「テアトルA」なる場所については、「映画」なる単一の特徴コードが登録されており、「リストランテB」なる場所については、「食事」なる単一の特徴コードが登録されている。
このように、場所特徴情報として、当該場所の代表的な特徴を示す単一の特徴コードを用いると、§1で述べたように、傾向分析部140による統計的な分析処理や、配信先決定部160による配信場所決定処理は比較的単純な処理になる。しかしながら、実用上は、個々の場所に関する場所特徴情報として、複数の特徴コードの組み合わせを用いるようにするのが好ましい。たとえば、「テアトルA」なる場所の特徴を示すために、「映画」なる単一の特徴コードしか用いることができないとすると、「シネマF」なる別な映画館についての特徴も「映画」なる同一の特徴コードでしか表現することができない。また、「リストランテB」なる場所の特徴を示すために、「食事」なる単一の特徴コードしか用いることができないとすると、「寿司処G」なる飲食店についての特徴も「食事」なる同一の特徴コードでしか表現することができない。したがって、ユーザの嗜好を分析結果に採り入れ、より効果的な配信先決定を行う上では、複数の特徴コードの組み合わせによって、個々の場所の特徴を表現するのが好ましい。
具体的には、場所データベース100を用意する際に、個々の場所の様々な特徴を示すキーワード群を用意し、これらキーワード群から選択した複数のキーワードを、1つの場所についての場所特徴情報として登録すればよい。
図14は、本発明における場所特徴情報(特徴コード)として利用可能なキーワード群の一例を示す図である。§1で述べた基本的実施例で用いた「映画」,「食事」といった特徴コードは、図14の左上の「利用目的」なる分類欄に記載されているキーワードである。その右の「国籍」なる分類欄には、「フレンチ」,「イタリアン」,「アメリカン」,「和風」,「エスニック」といったキーワードが列挙されており、更にその右の「デザイン」なる分類欄には、「カジュアル」,「クラシック」,「モダン」,「アバンギャルド」,「コンチネンタル」といったキーワードが列挙されている。
このように、本発明における場所特徴情報を構成する特徴コードは、ユーザに対して何らかの特徴を訴えるキーワードであれば、どのような文言であってもかまわない。たとえば、「雰囲気」なる分類欄には、「明るい」,「暗い」,「華やか」,「にぎやか」,「静か」といった曖昧な語句がキーワードとして示されているが、このような主観的な文言を特徴コードとして用いてもかまわない。また、「用途」なる分類欄には、「待ち合わせ」,「打ち合わせ」,「暇つぶし」,「仮眠」,「読書」といった語句がキーワードとして示されているが、このように、当該場所の利用形態を示すような文言を特徴コードとして用いることもできる。
もちろん、どの場所にどのような特徴コードを採用するかは全く自由であるから、当該場所の本来の利用形態とは遊離した特徴コードを採用してもかまわない。たとえば、「物品」なる分類欄に所属している「雑貨」というキーワードは、本来、雑貨店などの小売店舗の特徴を示すキーワードとして設定されたものであるが、レジの近くに小規模な雑貨販売コーナーを設けているような喫茶店があった場合、当該喫茶店の特徴コードとして採用することも可能である。
こうして、場所データベース100に登録された各場所についての場所特徴情報を、それぞれ当該場所の特徴を示す複数の特徴コードの組み合わせによって構成すると、個々の場所の場所特徴情報のバリエーションは極めて多彩になる。たとえば、「テアトルA」については、「映画,モダン,明るい」といった特徴コードの組み合わせからなる場所特徴情報を登録することができ、「テアトルA」なる映画館の特徴をよりきめ細かく表現することができる。同様に、「リストランテB」については、「食事,イタリアン,高級」といった特徴コードの組み合わせからなる場所特徴情報を登録することができ、「リストランテB」なるイタリア料理店の特徴をよりきめ細かく表現することができる。
このように、場所特徴情報が複数の特徴コードの組み合わせによって構成されている場合でも、傾向分析部140による統計的な分析処理の基本手順は、前述した手順とほぼ同じである。たとえば、図2に示すような場所遷移テーブルに基づいて、図3に示すような先訪場所集計リストを作成するところまでは、§2で述べた手順と全く同じである。すなわち、ある着目場所についての先訪場所特徴情報を求める際には、各場所遷移テーブルに掲載されている当該着目場所の1つ1つについて、それぞれ先訪場所を調べればよい。また、図3に示す先訪場所集計リストから、図4に示す先訪場所の特徴コードリストを作成する手順も、§2で述べた手順とほぼ同じである。基本的には、各先訪場所についての場所特徴情報として登録されている各特徴コードの出現頻度を調べればよい。ただ、1つの場所について複数の特徴コードが登録されているので、特徴コードの種類や出現頻度は、図4に示す例に比べて多くなる。
そして、最後に、この図4に示すような先訪場所の特徴コードリストに基づいて、出現頻度の高い複数の特徴コードの組み合わせを、当該着目場所についての先訪場所特徴情報とする処理を行えばよい。§2で述べた基本的実施例では、最も出現頻度の高い特徴コード1つだけを、当該着目場所についての先訪場所特徴情報とする処理を行い、図5に示すような分析結果を得ていたが、ここで述べる実施例の場合、たとえば、出現頻度が上位3位までに入る複数の特徴コードの組み合わせを、当該着目場所についての先訪場所特徴情報とすれば、それぞれ3つの特徴コードの組み合わせからなる先訪場所特徴情報をもった分析結果を得ることができる。したがって、分析結果格納部150内には、個々の広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所についての先訪場所特徴情報として求められた複数の特徴コードの組み合わせと、を対応づけた分析結果が格納されることになる。
このように、場所データベース100内の場所特徴情報や、分析結果格納部150内の先訪場所特徴情報が、複数の特徴コードの組み合わせによって構成されている場合、配信先決定部160による配信場所の決定処理も、若干工夫する必要がある。具体的には、配信先決定部160は、配信先を決定する対象となる広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、分析結果格納部150内で対応づけられている複数の特徴コードの組み合わせを抽出し、場所データベース100を参照することにより、「抽出した特徴コードの組み合わせ」に対して選抜基準以上の合致度を示す「特徴コードの組み合わせ」が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定するようにすればよい。
たとえば、選抜基準として、「複数の特徴コードの組み合わせの完全一致」という基準を定めた場合、分析結果格納部150内の先訪場所特徴情報が「映画,モダン,明るい」であったとすると場所データベース100内に「映画,モダン,明るい」という全く同一の組み合わせからなる場所特徴情報が登録されている場所だけが、配信場所として決定されることになる。もちろん、選抜基準は任意に設定することができるので、たとえば、「3つの特徴コードのうち2つが一致すること」という基準を定めた場合、分析結果格納部150内の先訪場所特徴情報が「映画,モダン,明るい」であったとすると、場所データベース100内に「映画,モダン,明るい」という全く同一の組み合わせからなる場所特徴情報が登録されている場所が配信場所として決定されるだけではなく、「映画,カジュアル,明るい」という組み合わせや、「映画,モダン,にぎやか」という組み合わせからなる場所特徴情報が登録されている場所も、同様に配信場所として決定されることになる。
<<< §7.複数の特徴コードに重み付けを行う実施例(傾向分析) >>>
前述の§6では、複数の特徴コードの組み合わせによって、個々の場所の特徴を表現する実施例を述べた。ここで述べる実施例は、より柔軟な特徴表現を可能にするために、複数の特徴コードに重み付けを行うものである。
図15は、図1に示すシステムにおける場所データベース100において、場所特徴情報として複数の特徴コードとその重み値を用いた例を示す図である。登録されている場所は、図1に示す実施例と同様に、「テアトルA」〜「フードコートE」の5店舗であり、それぞれの場所位置コードも、図1の実施例と同様に、(Xa,Ya)〜(Xe,Ye)という位置座標である。ただ、場所特徴情報は、複数の特徴コードとその重み値によって構成されている。この例の場合、1つの場所についての場所特徴情報は、それぞれ重み値が定義された3つの特徴コードの組み合わせによって構成されている。
図15において、個々の特徴コードの後ろに括弧書きで記述された数値が、各特徴コードの重み値である。たとえば、「テアトルA」なる場所の特徴は、「映画(0.5),モダン(0.3),明るい(0.2)」という場所特徴情報によって表現され、「リストランテB」なる場所の特徴は、「食事(0.4),イタリアン(0.3),高級(0.3)」という場所特徴情報によって表現されている。個々の特徴コードは、この場所データベース100を構築する担当者(たとえば、この広告情報配信システムを運営する事業体のデータ入力係)が、図14に示すキーワード群の中から自由に選択したものであり、その重み値も、当該担当者の裁量により決定されたものである。
もっとも、実用上は、多数の場所(店舗)についての場所特徴情報を決定するにあたって、ある程度の規則を定めておくのが好ましい。そこで、ここに示す実施例の場合、「1つの場所についての場所特徴情報は、図14に示すキーワード群の中から選択された3つの特徴コードの組み合わせによって構成し、各特徴コードには、それぞれ1未満の重み値を付与し、かつ、3つの特徴コードに付与した重み値の合計が1になるようにする」という規則を定めることにする。図15に示す例は、この規則に従ったものであり、いずれの場所に関する場所特徴情報も、3つの特徴コードを含んでおり、この3つの特徴コードに付与された重み値の合計は1になっている。
上述したように、各場所についての3つの特徴コードとして、どのキーワードを選択し、どのような重み付けを行うかは、この場所データベース100を構築する担当者の裁量に委ねられることになる。この担当者は、個々の場所の実体を、様々な資料から把握し、最も適切と思われる特徴コードを3つ選択し、妥当と思われる重み付けを行うことになる。たとえば、「テアトルA」についての場所特徴情報を決定するにあたって、当該担当者は、「テアトルA」のパンフレット、雑誌の紹介記事、利用者の声などの資料を検討し、「映画(0.5),モダン(0.3),明るい(0.2)」という内容を定めることになる。もちろん、当該担当者自身が、「テアトルA」を実際に訪問して、その特徴を自分の目で観察した上で、場所特徴情報を決定するようにしてもよい。
なお、場所特徴情報の決定は、必ずしもこの広告情報配信システムの運営母体に所属する担当者が行う必要はない。たとえば、個々の場所が何らかの店舗である場合、当該店舗の経営者や責任者の自己申告により、場所特徴情報を決定してもらうことも可能である。たとえば、「リストランテB」についての場所特徴情報を決定する場合、「リストランテB」の経営者やシェフに、図14に示すようなキーワード群を提示して、自分の店舗の特徴を端的に表現すると思われるキーワードを3つ選び、それぞれに重み値を付与してもらうように依頼してもよい。実用上は、自己申告用のWebページを開設し、個々の店舗の経営者や責任者にアクセスしてもらい、当該Webページ上に図14に示すキーワード群を表示して、所望のキーワード選択と重み値の付与を当該Webページ上で行ってもらうようにするのが好ましい。当該Webページを提供するWebサーバと、場所データベース100を格納するDBサーバとを連携させておけば、各店舗からの自己申告に基づいて、場所データベース100内への場所特徴情報の登録を自動的に行うことができる。
さて、個々の場所の特徴を、図15に示す例のように、3つの特徴コードとその重み値によって表現した場合、傾向分析部140による傾向分析手法(ある着目場所についての先訪場所特徴情報を求める手法)も、これに応じたものにする必要がある。以下に、そのような傾向分析手法の一例を示す。
まず、各場所遷移テーブルに掲載されている当該着目場所の1つ1つについて、それぞれ先訪場所を調べ、図16に示すような先訪場所の特徴コードリストを作成する。この図16に示すリストは、図15に示すような場所データベース100が用意されている場合に、図2に示す3つの場所遷移テーブルに基づく解析により作成されたものである。たとえば、図16に示すリストの「テアトルA」の欄には、先訪場所として、「フードコートE」,「カフェC」,「フードコートE」という3つの場所がリストアップされているが、これは、図2に示す3つの場所遷移テーブルに掲載されている「テアトルA」(この場合の着目場所)の1つ1つについての先訪場所(テーブル掲載順における直前の場所)を示すものである。
また、図16に示すリストにおける「先訪場所の特徴コードとその重み値」の欄には、個々の先訪場所について場所データベース100に登録されている「特徴コードとその重み値」がそのまま転記されている。たとえば、図16に示すリストの1行目には、「フードコートE」について「朝食(0.7),エスニック(0.2),読書(0.1)」なる情報が記載されているが、これは、図15に示す場所データベース100に登録されている「フードコートE」についての場所特徴情報をそのまま転記したものである。同様に、図16に示すリストの2行目の「カフェC」についての「クラシック(0.5),喫茶(0.4),雑貨(0.1)」なる情報は、場所データベース100に登録されている「カフェC」についての場所特徴情報をそのまま転記したものである。また、図16に示すリストの3行目の「フードコートE」についての「朝食(0.7),エスニック(0.2),読書(0.1)」なる情報は、図15に示す場所データベース100に登録されている「フードコートE」についての場所特徴情報を再び転記したものであり、1行目の情報と全く同一のものである。
この図16に示すリストを、その「先訪場所」の欄に注目して捉えると、1行目の情報の意味するところは、「テアトルAに来訪したユーザがその直前にフードコートEに来訪していたケースがあった」ということであり、2行目の情報の意味するところは、「テアトルAに来訪したユーザがその直前にカフェCに来訪していたケースがあった」ということであり、3行目の情報の意味するところは、「テアトルAに来訪したユーザがその直前にフードコートEに来訪していたケースがあった」ということである。しかし、この図16に示すリストを、その「先訪場所の特徴コードとその重み値」の欄に注目して捉えると、1行目の情報の意味するところは、「テアトルAに来訪したユーザがその直前に来訪していた店舗の特徴は、重み付けを含めて表現すると、朝食(0.7),エスニック(0.2),読書(0.1)になる」ということであり、2行目の情報の意味するところは、「テアトルAに来訪したユーザがその直前に来訪していた店舗の特徴は、重み付けを含めて表現すると、クラシック(0.5),喫茶(0.4),雑貨(0.1)になる」ということであり、3行目の情報の意味するところは、「テアトルAに来訪したユーザがその直前に来訪していた店舗の特徴は、重み付けを含めて表現すると、朝食(0.7),エスニック(0.2),読書(0.1)になる」ということである。
以下の分析手法は、後者の捉え方に基づくものであり、その目的は、「テアトルAに来訪した多くのユーザがその直前に来訪していた店舗の特徴は何か?」を統計的に探り出すことにある。そのために、各先訪場所についての場所特徴情報として登録されている各特徴コードの重み値の合計値を求める。
図17は、図16に示す先訪場所の特徴コードリストに対して重み値の集計処理を施し、新しい重み値を決定した状態を示す図である。たとえば、「テアトルA」については、先訪場所の特徴コードとして、「1.軽食、2.クラシック、3.エスニック、4.喫茶、5.読書、6.雑貨」という6種類の特徴コードが列挙されており、その右隣欄には、各特徴コードごとに、重み値の合計が記載されている。これは、図16に示すリストの1〜3行目の情報を集計した結果である。また、図17のリストでは、説明の便宜上、各特徴コードをその重み値の合計の大きい順に並べて示してある。
この図17のリストに示された「テアトルA」に関する情報の意味するところは、「テアトルAに来訪した多くのユーザがその直前に来訪していた店舗の特徴は、重み付けを含めて表現すると、軽食(1.4),クラシック(0.5),エスニック(0.4),喫茶(0.4),読書(0.2),雑貨(0.1)になる」ということである。別言すれば、統計的な分析の結果、「テアトルA」についての先訪場所(「テアトルA」に来訪する直前に来訪していた場所)の特徴は、「軽食(1.4),クラシック(0.5),エスニック(0.4),喫茶(0.4),読書(0.2),雑貨(0.1)」なる情報によって表現されることになる。したがって、分析結果格納部150内に分析結果として格納する「テアトルA」に関する先訪場所特徴情報は、「軽食(1.4),クラシック(0.5),エスニック(0.4),喫茶(0.4),読書(0.2),雑貨(0.1)」という情報をそのまま用いることもできる。
しかしながら、この分析結果は、図2に示すようなたかだか3つの場所遷移テーブルに基づく分析結果であるのに対して、実際には、非常に多数の場所遷移テーブルに基づく分析が行われることになるので、図17のリストに現れる先訪場所の特徴コードの数もかなり多くなる。そこで、ここで述べる実施例では、図17のリストに現れる先訪場所の特徴コードの中から、重み値の合計が上位3位までに入る特徴コードのみを選択して先訪場所特徴情報とする処理を行っている。たとえば、「テアトルA」についての先訪場所特徴情報は、「軽食,クラシック,エスニック」という上位3位までの特徴コードの組み合わせによって構成されることになる。
このとき、各特徴コードの重み値として、算出された重み値の合計をそのまま用いることにすると、「軽食(1.4),クラシック(0.5),エスニック(0.4)」のような結果となり、「重み値の合計が1になる」という規則から外れてしまう。そこで、ここで述べる実施例では、上位3位までの特徴コードのみについて、旧重み値の合計に応じた新重み値を、その合計が1になるような規格化を行って決定し、この新重み値を採用して先訪場所特徴情報を作成するようにしている。具体的には、上位3位までの特徴コードの旧重み値の合計に応じて、1を按分することによって、各特徴コードの新重み値を決定すればよい。
たとえば、図17に示す「テアトルA」については、上位3位までの特徴コードの旧重み値の合計は、それぞれ「1.4」,「0.5」,「0.4」であり、その総計は、2.3になる。そこで、各特徴コードの新重み値を小数第2桁までの精度で求めることにすれば、「1.4/2.3=0.61」,「0.5/2.3=0.22」、「0.4/2.3=0.17」なる計算結果が得られる。図17に示す新重み値「0.61」,「0.22」,「0.17」は、このような計算によって求められたものであり、その合計は規格値1に等しくなる。かくして、「テアトルA」についての先訪場所特徴情報として、「軽食(0.61),クラシック(0.22),エスニック(0.17)」なる情報が得られることになる。
以上、「テアトルA」を着目場所として、その先訪場所特徴情報を決定する具体的な方法を説明したが、全く同様の方法によって、「リストランテB」,「カフェC」,「雑貨ストアD」,「フードコートE」についての先訪場所特徴情報を決定することができる。図18は、こうして決定された各場所についての先訪場所特徴情報からなる分析結果の一例を示す図である。ここで述べる実施例の場合、分析結果格納部180内には、この図18に示すような分析結果が格納される。
結局、この図18に示す分析結果は、「ある店舗に来訪した多くのユーザがその直前に来訪していた店舗の特徴は何か?」を統計的に示すものになる。たとえば、「テアトルA」の先訪場所特徴情報は、「軽食(0.61),クラシック(0.22),エスニック(0.17)」となっており、統計的に「軽食をとってから、テアトルAで映画を観る客が多い」という傾向が見てとれる。一方、図示されていない「シネマF」なる別な映画館についての先訪場所特徴情報が、「軽食(0.41),モダン(0.35),イタリアン(0.24)」であったとすれば、やはり「軽食をとってから、シネマFで映画を観る客が多い」という傾向が見てとれるものの、両映画館の客層は若干異なることが見てとれる。すなわち、「テアトルA」に来訪する客が映画鑑賞の前に寄る軽食店は、「クラシックなデザインのエスニック料理を出す飲食店」である傾向が高いのに対して、「シネマF」に来訪する客が映画鑑賞の前に寄る軽食店は、「モダンなデザインのイタリア料理を出す飲食店」である傾向が高い、という分析結果が見てとれる。
このような場合、現在、「クラシックなデザインのエスニック料理を出す飲食店」に居るユーザに対して「テアトルA」に関する広告情報を配信すると、「テアトルA」に呼び寄せる効果が高く、現在、「モダンなデザインのイタリア料理を出す飲食店」に居るユーザに対して「シネマF」に関する広告情報を配信すると、「シネマF」に呼び寄せる効果が高いであろうと予測される。もちろん、「軽食(0.41),モダン(0.35),イタリアン(0.24)」という特徴をもった店舗は、必ずしも軽食店であるとは限らず、たとえば、「イタリアのキッチン用モダン家具」を取り扱う家具店も、当該特徴の範疇に入る店舗になるかもしれない。このような場合は、やはり当該家具店に居るユーザに対して「シネマF」に関する広告情報を配信すると効果的であろう。
また、特徴情報を構成する個々の特徴コードには、それぞれ重み値が付加されているため、全く同一の特徴コードの組み合わせであっても、互いに異なる特徴の表現がなされることになる。たとえば、「軽食(0.8),クラシック(0.1),エスニック(0.1)」なる特徴情報と、「軽食(0.1),クラシック(0.1),エスニック(0.8)」なる特徴情報とでは、同一の特徴コードの組み合わせであるにもかかわらず、表現される特徴のポイントは大きく異なっている。前者では、「軽食」という特徴が強調されているため、当該特徴に合致する店舗は、ほぼ軽食店ということになろう。したがって、前者のような先訪場所特徴情報に基づいて決定された配信先は、そのほとんどが軽食店であろう。また、エスニックという特徴はあまり重視されていないため、エスニック料理とは無関係な飲食店も配信先として入ってくる可能性がある。これに対して、後者では、「エスニック」という特徴が強調されているため、配信先となる店舗は、何らかの形で「エスニック」という特徴をもった店になるであろう。もちろん、「エスニック」という特徴をもった店舗は軽食店に限定されるわけではないから、「エスニック」な雑貨を取り扱う雑貨店、「エスニック」な内装の喫茶店など、様々な店舗が配信先となる可能性がある。
このように、複数の特徴コードと重み値とを用いると、ある程度、ユーザの嗜好を反映した情報を用いて、各店舗の特徴を捉えることが可能になる。前掲の特許文献1に開示されている技術のように、ユーザの嗜好情報を利用して配信対象となる広告情報をフィルタリングするためには、予め個々のユーザの嗜好情報を収集する必要があり、プライバシー保護の観点で問題があることは既に述べたとおりである。ここに述べる実施形態では、ユーザ個人個人の嗜好情報を収集する必要は全くない。それにもかかわらず、ある程度ユーザの嗜好を考慮して、配信対象となる広告情報をフィルタリングすることができるのは、ユーザの嗜好を、個々の場所(店舗)の特徴という要素を介して反映させた配信を行っているためである。
以上、複数の特徴コードと重み値とを用いた実施例における傾向分析部140による傾向分析のアルゴリズムを、図15〜図17に示す実例に基づいて説明した。この実例では、1つの場所についての場所特徴情報および先訪場所特徴情報を、3つの特徴コードの組み合わせとその重み値とによって構成しているが、もちろん、特徴コードは必ずしも3つに限定されるものではない。
一般論に拡張して説明すれば、場所データベース100に登録された各場所についての場所特徴情報は、それぞれ当該場所の特徴を示す複数H個の特徴コードとその重みづけを示す重み値とによって構成されていればよい。この場合、傾向分析部140は、ある着目場所についての先訪場所特徴情報を求めるために、各場所遷移テーブルに掲載されている当該着目場所の1つ1つについて、それぞれ先訪場所を調べ、これら各先訪場所についての場所特徴情報として場所データベース100に登録されている各特徴コードの重み値の合計値を求め、当該合計値が高い順に複数H個の特徴コードを選択し、選択された各特徴コードについて上記合計値に応じた新しい重み値を決定し、選択された複数H個の特徴コードとその新しい重み値とを、当該着目場所についての先訪場所特徴情報とする処理を行うようにすればよい。分析結果格納部150には、たとえば、図18に示す例のように、個々の広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所についての先訪場所特徴情報として求められた複数H個の特徴コードおよびその重み値と、を対応づけた分析結果が格納される。
なお、実用上は、場所データベース100に登録された1つの場所についての場所特徴情報を構成する複数H個の特徴コードの重み値の合計が所定の規格値(上例の場合は1)となるような規格化を行うようにするのが好ましい。この場合、分析結果格納部150に格納された1つの場所についての先訪場所特徴情報を構成する複数H個の特徴コードの新しい重み値の合計が、当該規格値となるような規格化を経て、傾向分析部140による新しい重み値の決定が行われるようにする。そうすれば、場所データベース100内の特徴情報についても、分析結果格納部150内の特徴情報についても、常に、1つの場所についての特徴が、複数H個の特徴コードの組み合わせによって表現され、かつ、その重み値の合計が常に所定の規格値になるので、後述する§8における配信先決定の処理が容易になる。
<<< §8.複数の特徴コードに重み付けを行う実施例(配信先決定) >>>
さて、§7では、複数の特徴コードに重み付けを行う実施例における、傾向分析部140による傾向分析処理の具体的な方法を述べた。当該方法によれば、たとえば、図18に示すような分析結果が得られ、分析結果格納部150内に格納される。
ここでは、上記実施例における、配信先決定部160による配信先決定処理の具体的な方法を述べる。配信先決定部160が、広告情報格納部170内に格納されている広告情報についての配信先を決定するには、まず、当該広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、分析結果格納部150内で対応づけられている複数H個の特徴コードおよび重み値からなる先訪場所特徴情報を抽出する。たとえば、図1に示す広告情報格納部170内の広告情報「FileAAA」についての配信先を決定する場合は、「FileAAA」に対応づけられた場所識別コード「テアトルA」を読み出し、分析結果格納部150内の分析結果に対して、場所識別コード「テアトルA」を用いた検索を行う。ここで、分析結果格納部150内に、図18に示すような分析結果が格納されていたとすると、場所識別コード「テアトルA」に対応づけられている先訪場所特徴情報として、「軽食(0.61),クラシック(0.22),エスニック(0.17)」なる情報、すなわち、複数3個の特徴コードおよび重み値が抽出される。
続いて、配信先決定部160が行う仕事は、図15に示すような場所データベース100を参照することにより、抽出した「先訪場所特徴情報」に対して選抜基準以上の合致度を示す「場所特徴情報」が対応づけられている場所識別コード(1つでも複数でもよい)を決定し、当該場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定することである。上例の場合、「軽食(0.61),クラシック(0.22),エスニック(0.17)」なる情報が抽出されているので、図15に示す場所データベース100の「場所特徴情報」欄の各行について、「軽食(0.61),クラシック(0.22),エスニック(0.17)」に合致するか否かの判定を行うことになる。
§1で述べた基本的実施例の場合は、1つの場所の特徴情報として「映画」,「軽食」といった単一の特徴コードが用いられていたため、当該特徴コードが一致するか否かという単純な判定により、配信場所を決定することができた。ところが、ここで述べる実施例の場合、1つの場所の特徴情報は、3つの特徴コードの組み合わせからなり、しかも個々の特徴コードに重み値が付与されている。したがって、配信場所と決定するか否かの判定は、総合的な観点からの合致度、類似度を考慮する必要がある。そこで、配信先決定部160は、予め、客観的な選抜基準を定めておき、場所データベース100に登録されている各場所の「場所特徴情報」の中に、抽出した「先訪場所特徴情報」に対して当該選抜基準以上の合致度を示す「場所特徴情報」があるかどうかを調べる処理を行うことになる。
配信場所を決定するための選抜基準は、複数H個の特徴コードおよび重み値からなる2つの特徴情報を比較して、合致度が高いか否か、別言すれば、両者がある程度の類似性を有しているか否かを判定することができる客観的な基準であれば、どのような基準を設定してもよいが、以下に、いくつかの具体例を列挙しておく。
(1) 上位h個の特徴コードの一致
配信先決定部160が、「選抜基準以上の合致度を示す」と判定するための条件としては、「複数H個の特徴コードを、重み値の大きい順に並べた場合に、上位h個(1≦h≦H)の特徴コードが一致する」という条件を設定することができる。たとえば、上例の場合は、H=3であり、比較対照となる2つの特徴情報は、いずれも3つの特徴コードを有している。
この場合、h=1に設定して、「上位1個の特徴コードが一致する」という条件を設定した場合は、重み値が最も大きな特徴コードが一致した場合に、「選抜基準以上の合致度を示す」と判定されることになる。上例の場合、「テアトルA」に関する広告情報「FileAAA」の配信先は、図18の分析結果によると、「軽食(0.61),クラシック(0.22),エスニック(0.17)」なる特徴情報に対して「選抜基準以上の合致度を示す」特徴情報をもった場所であるから、図15の場所データベース100の中から当該条件、すなわち、「上位1個の特徴コードが一致する」という条件を満たす場所を探すと、「軽食」なる特徴コードが先頭に記載されている「フードコートE」が条件を満たす場所としてヒットする。よって、この場合、「フードコートE」が配信場所と決定されるので、§5で述べた方法で、現時点で「フードコートE」に居て、かつ、所定時間だけそこに滞在していると判断される配信先端末装置に対して、広告情報「FileAAA」を配信すればよい。
一方、h=2に設定した場合は、「上位2個の特徴コードが一致する」という条件設定がなされることになり、条件が若干厳しくなる。上例の場合、「軽食(0.61),クラシック(0.22),エスニック(0.17)」なる特徴情報に対して合致条件を満たすためには、「上位2個の特徴コード」が、「軽食」および「クラシック」でなければならない。図15の場所データベース100の中には、「上位2個の特徴コード」が、「軽食」および「クラシック」に該当するものはないので、この場合、いずれの場所も配信場所にはならない。もちろん、実際には、より多数の店舗が場所データベース100に登録されているので、この程度の条件であれば、多数の店舗が合致条件を満たすことになろう。また、「上位2個の特徴コードが一致する」という条件に、「同じ順序で」という付加条件を課すことにより、条件を更に厳しくすることができる。この場合、重み値の大きい順に並べた場合に「軽食,クラシック」の順で上位2個の特徴コードが並んでいれば合致するが、「クラシック,軽食」の順で並んでいる場合は合致しないことになる。
h=3に設定した場合は、「3個の特徴コードがすべて一致する」という条件設定がなされることになるので、条件は更に厳しくなる。上例の場合、「軽食(0.61),クラシック(0.22),エスニック(0.17)」なる特徴情報に対して合致条件を満たすためには、「軽食,クラシック,エスニック」という3つの特徴コードを有している必要がある。もちろん、「同じ順序で」という付加条件を課せば、条件は一層厳しくなる。
この他にも、たとえば、「一方の特徴情報の上位2個の特徴コードが、他方の特徴情報の3つの特徴コードのいずれかに含まれていれば合致する」というような変則的な条件設定を行うことも可能である。このような条件設定を行うと、図15の場所データベース100内の「フードコートE」の特徴情報である「軽食(0.7),エスニック(0.2),読書(0.1)」の上位2個の特徴コード「軽食,エスニック」は、「テアトルA」についての先訪場所特徴情報である「軽食(0.61),クラシック(0.22),エスニック(0.17)」なる特徴情報に含まれているので、合致条件が満足されることになり、「フードコートE」は配信場所と判定されることになる。
(2) 値hによる絞り込み
前述したように、「複数H個の特徴コードを、重み値の大きい順に並べた場合に、上位h個(1≦h≦H)の特徴コードが一致する」という条件を選抜基準の条件として設定した場合、hの値を増やせば増やすほど条件は厳しくなり、合致する配信場所は絞られてくる。このような性質を利用すれば、配信場所の総数を所定の上限値M以下に制限する処理が可能になる。
具体的には、配信先決定部160内に、予め配信場所の総数の上限値Mを設定しておくようにして、「h=1なる最も緩い条件」から「h=Hなる最も厳しい条件」に至るまで、hの値を1ずつ増加させることにより条件設定を徐々に厳しくしながら、配信場所の総数が上限値M以下となるまで、配信場所の決定をやり直す処理を実行すればよい。
たとえば、場所データベース100内に1万件の店舗が登録されており、h=1で配信場所を決定する処理を行ったところ419件の店舗がヒットし、h=2で処理を行ったところ89件の店舗がヒットし、h=3で処理を行ったところ7件の店舗がヒットしたとしよう。この場合、上限値Mが100に設定されていれば、h=2でヒットした89件の店舗が配信場所として決定され、これら89件の店舗に居る端末装置に対して配信が行われるが、上限値Mが10に設定されていれば、h=3でヒットした7件の店舗のみが配信場所として決定され、これら7件の店舗に居る端末装置に対して配信が行われることになる。
本発明に係る広告配信システムを商業規模で運営する場合、運営母体は、個々の広告主(広告情報の配信元)に対して所定の広告料を課するのが一般的であろう。この広告料を従量制にした場合、広告主からは、広告料負担をある程度の範囲内に抑えたいという要望が出てくるであろう。このような要望に対処するためには、配信場所の総数の上限値Mを設定する運用は有用である。
(3) 座標空間内でのユークリッド距離
これまで述べた選抜基準の条件は、各特徴コードの重み値を、相互の順位づけに利用し、個々の特徴コードの順位に着目して、相互の類似度を判定するというものであった。ここで述べる例は、個々の特徴コードの重み値を座標空間内での座標値に置き換えることにより、1つの場所についての特徴情報を座標空間内での1点として捉え、座標空間内でのユークリッド距離に基づいて相互の類似度を判定する方法をとるものである。
すなわち、この方法では、「選抜基準以上の合致度を示す」と判定するための条件として、「複数H個の特徴コードがすべて一致し、かつ、これら各特徴コードをそれぞれ0〜規格値までの座標をもつ座標軸に対応させることにより、複数H本の座標軸からなるH次元座標空間を形成し、このH次元座標空間内に、各特徴コードの重み値を座標値として、両特徴情報をそれぞれ点としてプロットしたときに、両点間のユークリッド距離Lが所定値Lth以下になる」という条件が設定されることになる。
たとえば、図18に示す分析結果に基づいて、「カフェC」に関する広告情報の配信先を決定する処理を考えてみよう。この場合、配信先決定部160は、「カフェC」の先訪場所特徴情報である「食事(0.40),イタリアン(0.30),高級(0.30)」なる特徴情報に類似する特徴情報を、場所データベース100から探索する処理を行うことになる。ところが、一般に、「食事,イタリアン,高級」という3つの特徴コードを含む特徴情報をもつ店舗は、かなりの数に上ると考えられるが、「食事(0.1),イタリアン(0.8),高級(0.1)」なる特徴情報では、「イタリアン」が強調されているのに対して、「食事(0.1),イタリアン(0.1),高級(0.8)」なる特徴情報では、「高級」が強調されており、両者の特徴は異なっている。
このような場合、図19に示すような座標空間を定義し、この座標空間内の点として個々の特徴情報をプロットし、両点間のユークリッド距離Lにより、両者の類似度を判定する手法は有用である。図には、「食事」なる特徴コードを第1の座標軸、「イタリアン」なる特徴コードを第2の座標軸、「高級」なる特徴コードを第3の座標軸にとった三次元座標空間が定義されており、2点α,βがプロットされた例が示されている。ここで、α,βは、比較対照となる2つの特徴情報に対応し、2点α,β間のユークリッド距離Lは、この2つの特徴情報の類似度を示す尺度になる。もちろん、ユークリッド距離Lが小さければ小さいほど、2つの特徴情報の類似度は高いことになる。このような方法の利点は、3つの特徴コードの各重み値のバランスを考慮した類似判定を行うことができる点である。
たとえば、「食事(0.80),イタリアン(0.11),高級(0.09)」なる特徴情報と、「食事(0.35),イタリアン(0.33),高級(0.32)」なる特徴情報とを比較する場合を考える。この場合、重み値の大きい順に特徴コードを並べると、いずれも「食事,イタリアン,高級」の順になるので、前述したような「順位のみに着目した類似度判定」を行うと、「両者の類似度は非常に高い」との判定がなされるであろう。しかしながら、図19に示すような座標空間上に、それぞれを点としてプロットすると、2つの点のユークリッド距離Lは、比較的大きな値になるであろう。これは、上記2つの特徴情報は、重み値のバランスという観点からは、類似度が非常に低いためである。
特定の場所を配信場所として選抜するか否かは、2つの点のユークリッド距離Lが、所定値Lth以下か否かという判定基準に基づいて決定される。したがって、所定値Lthの設定を変えることにより、判定基準を緩めたり、厳しくしたりする調整を行うことができる。
なお、ここでは、場所特徴情報が3つの特徴コードから構成される具体例に即した説明を行ったため、図19に示す座標空間は3次元の座標空間になっているが、もちろん、一般論に拡張して、場所特徴情報が複数H個の特徴コードから構成されている場合には、H次元の座標空間上にプロットした2点のユークリッド距離Lを計算すればよい。
(4) 所定値Lthによる絞り込み
前述した座標空間内でのユークリッド距離に基づく判定手法を採る場合にも、所定値Lthによる絞り込みを行い、配信場所の総数を所定の上限値M以下に制限する処理が可能である。すなわち、所定値Lthの値を大きな値に設定すれば、配信場所と決定するための判定基準は緩くなり、配信場所の総数は多くなる。逆に、所定値Lthの値を小さな値に設定すれば、配信場所と決定するための判定基準は厳しくなり、配信場所の総数は少なくなる。そこで、配信先決定部160内に、予め配信場所の総数の上限値Mを設定しておき、所定値Lthを初期値から徐々に減少させながら、配信場所の総数が上限値M以下となるまで、配信場所の決定をやり直す処理を実行すれば、配信場所の総数を上限値M以下に抑えた配信先決定処理が可能になる。
<<< §9.本発明に係る広告配信方法 >>>
これまで、本発明に係る広告配信システムをいくつかの実施例に基づいて説明したが、本発明を移動可能な端末装置に対して広告情報を配信する方法の発明として捉えると、当該方法は、次の各段階から構成されることになる。
(1) 端末装置の移動範囲内に位置する複数の場所のそれぞれについて、当該場所を特定するための場所識別コードと、当該場所の位置座標を示す場所位置コードと、当該場所の特徴を示す場所特徴情報と、を互いに対応づけて登録した場所データベース100を用意する段階。
(2) 場所データベース100に登録されている複数の場所のうちの広告対象となる場所に関する広告情報と、当該広告対象となる場所の場所識別コードと、をそれぞれ場所ごとに対応づけて、広告情報格納部170などに用意する段階。
(3) 個々の端末装置の各時点の位置座標を示す位置情報を時系列データとして収集し、これを位置情報収集蓄積部120などに蓄積する段階。
(4) 蓄積されている個々の端末装置の所定時間枠内の位置情報に基づいて、個々の端末装置が所定時間枠内に場所データベース100に登録されている場所間をどのように遷移したかを推測し、その推測結果に基づいて、場所データベース100に登録されている複数の場所を時系列で掲載した場所遷移テーブルを作成する段階。
(5) 作成した多数の場所遷移テーブルに基づいて、ある着目場所について、当該着目場所への来訪前に来訪していた別な場所を先訪場所として認識し、場所データベース100に登録されている場所特徴情報を参照して、当該着目場所について、先訪場所の特徴を示す先訪場所特徴情報を求める段階。
(6) 広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所について求められた先訪場所特徴情報と、を対応づけた分析結果を用意する段階。
(7) 広告情報の配信先を決定するために、当該広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、分析結果として対応づけられている先訪場所特徴情報を抽出し、場所データベース100を参照することにより、抽出した先訪場所特徴情報に対する合致度の高い場所特徴情報が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定し、蓄積されている個々の端末装置の現時点もしくはその直近の位置情報に基づいて、配信場所の近傍領域に位置すると判定された端末装置を当該広告情報の配信先端末装置と決定する段階。
(8) 広告情報を、その配信先として決定された配信先端末装置に対して配信する段階。
本発明に係る方法は、特に、移動可能な端末装置に対して店舗に関する広告情報を配信するのに適しており、この場合、当該方法は、
端末装置の移動範囲内に位置する複数の店舗のそれぞれについて、位置座標と当該店舗の特徴を示す店舗特徴情報とを対応づけたデータベースを用意する段階と、
広告対象となる特定の店舗に関する広告情報を用意する段階と、
個々の端末装置の各時点の位置座標を時系列データとして収集する段階と、
収集した時系列データに基づいて、個々の端末装置が訪問した店舗を推測し、個々の端末装置ごとに、訪問した店舗を訪問順に掲載した遷移テーブルを作成する段階と、
作成した多数の遷移テーブルに基づいて、特定の店舗への来訪前に来訪していた別な店舗を先訪店舗として認識し、上記データベースを参照することにより、先訪店舗の特徴を示す先訪店舗特徴情報を求める段階と、
上記データベースを参照することにより、先訪店舗特徴情報に類似した店舗特徴情報が対応づけられている1つもしくは複数の場所を配信場所と決定する段階と、
収集した時系列データに基づいて、上記配信場所の近傍領域に位置すると判定された端末装置を配信先端末装置と決定する段階と、
用意した広告情報を、上記配信先端末装置に対して配信する段階と、
を有することになる。
<<< §10.その他の変形例 >>>
最後に、本発明のいくつかの変形例を述べる。
(1) 地理的位置関係を考慮した配信場所の決定
これまで述べた実施例では、配信先決定部160は、分析結果格納部150内の先訪場所特徴情報と場所データベース100内の場所特徴情報との合致度(類似度)に基づいて、特定の場所を配信場所と決定する処理を行っていた。もちろん、場所データベース100に登録される場所が、たとえば、東京23区内といった限定された地区内の場所であれば、これまでの実施例で述べた配信場所の決定処理をそのまま適用しても支障はない。しかしながら、本発明に係るシステムを全国規模に広げて利用する場合、場所データベース100内には、全国の場所が登録されることになるので、その場合は、配信先決定部160が、広告対象となる場所に対する地理的位置関係を考慮して、当該広告対象となる場所に関する広告情報についての配信場所を決定するようにするのが好ましい。
たとえば、「テアトルA」が東京の映画館であるのに対して、「フードコードE」が大阪の軽食店であるような場合、「テアトルA」に関する広告情報の配信場所として、「フードコートE」を選抜するのは合理的ではない。このように、本発明に係るシステムを広範囲の地域に適用する際には、たとえば、場所データベース100内の場所位置コードを利用し、広告対象となる場所に対する地理的位置関係を考慮して、配信場所を決定するようにするのが好ましい。具体的には、広告対象となる場所から所定距離内の場所のみを配信場所とする等の条件を課せばよい。
(2) 広告情報に対する有効期限の設定
一般に、店舗に関する広告情報には鮮度が必要であり、ある特定の時期や時間帯に配信しなければ、意味がなくなるケースが少なくない。そこで、実用上は、広告情報格納部170内に、個々の広告情報についての有効期限を格納しておくようにし、広告配信部110は、有効期限経過前の広告情報についてのみ配信を行うようにするのが好ましい。
もちろん、広告情報格納部170内には、新たな広告情報が逐次追加されることになるので、有効期限が満了した広告情報については、逐次消去するようにして、広告情報格納部170の格納スペースを十分に確保するようにするのが好ましい。また、同一の場所に長期滞在している端末装置に対しては、同一の広告情報が重複して配信されることになるが、そのような重複配信を避けるには、広告配信部110に配信履歴を格納しておくようにし、過去の配信履歴をチェックして、重複配信となるような場合には、当該配信を中止するような措置をとればよい。
(3) 固有の時間枠を設定した傾向分析
§2で述べた実施例では、位置情報収集蓄積部120に蓄積された時系列の位置データについて、2007年3月8日午前5時〜翌3月9日午前5時までの24時間枠を設定して場所遷移テーブルを作成する例を述べた。通常、人間の行動は、朝から夜までの1日単位で行われるので、一般的な傾向分析を行う上では、午前5時〜翌日の午前5時というような24時間枠で切り出した時系列データを分析対象とすれば十分である。しかしながら、ある特定の店舗がある特定の広告情報を配信する場合に、特別に設定された固有の時間枠で切り出した時系列データを分析対象とした方が好ましい場合がある。
たとえば、あるレストランが、ランチメニューに関する広告情報を配信する場合を考えてみよう。この場合、ユーザのアフターファイブの行動を分析対象とするのは的外れであり、ランチの時間帯である正午前後のユーザの行動のみに限定した傾向分析を行った方が好ましい。このような事情がある場合には、午前5時〜翌日の午前5時という24時間枠で切り出した時系列データを用いずに、たとえば、午前10時〜午後2時という4時間枠で切り出した時系列データを用いた傾向分析を行うようにすればよい。
この場合、傾向分析部140は、特定の場所についての先訪場所特徴情報を求める際に、当該特定の場所について設定された特定の時間枠(もしくは、特定の広告情報について設定された特定の時間枠でもよい)内の位置情報に基づいて作成された場所遷移テーブルのみを用いた先訪場所の認定を行うようにすればよい。こうして認定された先訪場所の特徴情報を用いて作成された分析結果は、正午前後のユーザの行動傾向を示すものになるので、ランチメニューに関する広告情報の配信先をより適確に決定することが可能になる。
(4) 先訪場所の範囲拡大
これまで述べた実施例では、ある着目場所について、その直前に来訪した場所を「先訪場所」と認識して、傾向分析部140による分析処理を行っていた。たとえば、図2の左端に示す端末装置T0000についての場所遷移テーブルにおいて、「テアトルA」に着目した「先訪場所」を、1行上に掲載されている「フードコートE」と定義する取り扱いを行っていた。
しかしながら、本発明を実施する上での「先訪場所」とは、必ずしも「着目場所の直前に来訪した場所」と定義する必要はない。たとえば、「着目場所の直前に来訪した場所」および「着目場所の2番目前(直前の1つ前)に来訪した場所」を「先訪場所」と定義することにすれば、図2の左端に示す端末装置T0000についての場所遷移テーブルにおいて、「テアトルA」に着目した「先訪場所」には、1行上に掲載されている「フードコートE」だけでなく、更にその1行上に掲載されている「雑貨ストアD」も含まれることになる。
もっとも、このように「先訪場所」の範囲を拡大した場合、直前に来訪した「先訪場所」と、2番目前に来訪した「先訪場所」とについて、重みづけを変えた処理を行うようにするのが好ましい。すなわち、ある着目場所のj番目前(j≧2)までに来訪した場所すべてを、当該着目場所についての先訪場所として認識する運用を採る場合には、より直前に近い来訪場所の場所特徴情報に対して、より大きな重みづけをして、当該着目場所についての先訪場所特徴情報を求めるようにすればよい。
たとえば、図3に示す先訪場所集計リストでは、「先訪場所」としてカウントされた頻度を記録しているが、この頻度のカウントを行う際に、直前に来訪した「先訪場所」の場合はカウント値を1とするなら、2番目前に来訪した「先訪場所」の場合はカウント値を0.5とする、というような運用を行えばよい。あるいは、図16に示す先訪場所の特徴コードリストでは、各先訪場所の特徴コードの重み値がリストアップされているが、直前に来訪した「先訪場所」の特徴コードについては、そのままの重み値を用い、2番目前に来訪した「先訪場所」の特徴コードについては、0.5を乗じた重み値を用いるようにし、重み値の集計を行うような運用を行えばよい。
(5) ユーザによる場所および場所特徴情報の登録
これまで、場所データベース100内への各種情報の登録は、この広告情報配信システムを運営する事業体の担当者によるデータ入力操作や、個々の店舗の経営者や責任者の自己申告による入力操作による、との説明を行ったが、この登録作業を、端末装置を所持する一般ユーザに公開することも可能である。
たとえば、この広告情報配信システムの担当者によって、場所データベース100内に、特定の場所の場所識別コードと場所位置コードのみを登録しておいたとしよう。この場所に関するデータは、場所識別コードと場所位置コードは登録されているが、場所特徴情報は登録されていない不完全なデータということになる。この場合、場所データベース100に、端末装置を携帯する個々のユーザからの指示入力に基づいて、この不完全なデータにおける場所特徴情報を登録する機能を付加しておけば、ユーザからの指示入力の助けを借りて、完全なデータを用意することが可能になる。
具体的には、Webページ上で、特定の店舗についての場所特徴情報を公募する形式を採るようにし、個々のユーザに対して、たとえば、図14に示すようなキーワード群を提示し、当該店舗の特徴を表現するのに最も相応しいと思われるキーワードを投票してもらうようにすればよい。この場合、投票された個々のキーワードを特徴コードとして採用し、各特徴コードには、その投票総数に応じた重み値を与えるようにすればよい。
(6) 場所データベース100への登録対象となる場所
これまで述べた実施例では、場所データベース100への登録対象となる「場所」は、いずれも商業店舗の場所であったが、この場所データベース100への登録対象となる「場所」は、必ずしも商業店舗に限定されるものではない。たとえば、「○○駅前」、「○○公園」、「○○広場」といった公共の場所を、場所データベース100へ登録することも可能である。このような公共の場所それ自身は、通常、商業広告の対象にはならないが、本願にいう「広告情報」とは、文字どおり「広く告げるための情報」を意味するものであり、必ずしも商業的な宣伝に限定されるものではない。たとえば、「○○駅前での選挙演説のおしらせ」、「○○公園のゴミ拾いのおさそい」、「○○広場での献血のおしらせ」といった情報も、本願にいう「広告情報」である。もちろん、傾向分析部140による傾向分析のプロセスにおいて、これらの公共の場所が、「先訪場所」となるケースは十分にあり得る。たとえば、「○○公園」で待ち合わせをしたアベックが、「テアトルA」で映画を観る傾向がある場合、傾向分析のプロセスでは、「○○公園」は「テアトルA」についての「先訪場所」として認識されることになる。このような意味において、場所データベース100に、公共の場所を登録することは商業的にも有用である。
本発明の基本的実施例に係る広告情報配信システムの構成を示すブロック図である。 図1に示すシステムにおける場所遷移テーブル作成部130によって作成された場所遷移テーブルの例を示す図である。 図1に示すシステムにおける傾向分析部140による処理過程で作成された先訪場所集計リストの一例を示す図である。 図1に示すシステムにおける傾向分析部140による処理過程で作成された先訪場所の特徴コードリストの一例を示す図である。 図1に示すシステムにおける傾向分析部140によって作成された分析結果の一例を示す図である。 図1に示すシステムにおける位置情報収集蓄積部120の具体的な位置情報収集経路の一例を示す図である。 図1に示すシステムにおける場所データベース100において、場所位置コードとして緯度経度データを用いた例を示す図である。 図1に示すシステムにおける位置情報収集蓄積部120が位置情報として収集したGPSログファイルの一例を示す図である。 図8に示すGPSログファイルの構成を記号化して示した図である。 図1に示すシステムにおける場所遷移テーブルの作成過程で用いる距離関数d(n,n+i)を説明する図である。 図1に示すシステムにおける場所遷移テーブル作成部130による場所遷移テーブル作成手順の一例を示す流れ図である。 図11の流れ図に示す手順において、1つの場所への滞在を認識するプロセスの概念を説明する平面図である。 図1に示すシステムにおける配信先決定部160による配信先決定手順の一例を示す流れ図である。 本発明における場所特徴情報(特徴コード)として利用可能なキーワード群の一例を示す図である。 図1に示すシステムにおける場所データベース100において、場所特徴情報として複数の特徴コードとその重み値を用いた例を示す図である。 図15に示す場所データベース100を採用した実施例において、傾向分析部140による処理過程で作成された先訪場所の特徴コードリストの一例を示す図である。 図16に示す先訪場所の特徴コードリストに対して重み値の集計処理を施し、新しい重み値を決定した状態を示す図である。 図17に示す特徴コードリストに基づいて作成された分析結果の一例を示す図である。 図18に示す先訪場所特徴情報と、図15に示す場所特徴情報との合致度の判定を行う手法の一例を示す図である。
符号の説明
100:場所データベース
110:広告配信部
120:位置情報収集蓄積部
121:衛星
122:基地局
123:インターネット
125:GPSログファイル
130:場所遷移テーブル作成部
140:傾向分析部
150:分析結果格納部
160:配信先決定部
170:広告情報格納部
C:P(3)の近傍領域を示す円
d(n,n+i):距離関数
L:2点間のユークリッド距離
P(1)〜P(N):GPSデータが示す位置
Q:最近接場所の位置
S1〜S40:流れ図の各ステップ
T0000〜T9999:端末装置
t(1)〜t(N):GPSデータの取得日時
x(1)〜x(N):GPSデータに含まれる座標値
y(1)〜y(N):GPSデータに含まれる座標値
α,β:座標系上の点

Claims (25)

  1. 移動可能な端末装置に対して広告情報を配信するシステムであって、
    端末装置の移動範囲内に位置する複数の場所のそれぞれについて、当該場所を特定するための場所識別コードと、当該場所の位置座標を示す場所位置コードと、当該場所の特徴を示す場所特徴情報と、を互いに対応づけて登録した場所データベースと、
    前記場所データベースに登録されている複数の場所のうちの広告対象となる場所に関する広告情報と、当該広告対象となる場所の場所識別コードと、をそれぞれ場所ごとに対応づけて格納する広告情報格納部と、
    個々の端末装置の各時点の位置座標を示す位置情報を時系列データとして収集し、これを蓄積する位置情報収集蓄積部と、
    前記位置情報収集蓄積部に蓄積されている、個々の端末装置の所定時間枠内の位置情報に基づいて、個々の端末装置が前記所定時間枠内に前記場所データベースに登録されている場所間をどのように遷移したかを推測し、その推測結果に基づいて、前記場所データベースに登録されている複数の場所を時系列で掲載した場所遷移テーブルを作成する場所遷移テーブル作成部と、
    前記場所遷移テーブル作成部が作成した多数の場所遷移テーブルに基づいて、ある着目場所について、当該着目場所への来訪前に来訪していた別な場所を先訪場所として認識し、前記場所データベースに登録されている場所特徴情報を参照して、当該着目場所について、前記先訪場所の特徴を示す先訪場所特徴情報を求める傾向分析部と、
    前記広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所について前記傾向分析部によって求められた先訪場所特徴情報と、を対応づけた分析結果を格納する分析結果格納部と、
    前記広告情報格納部に格納されている広告情報の配信先を決定するために、当該広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、前記分析結果格納部に格納されている分析結果により対応づけられている先訪場所特徴情報を抽出し、前記場所データベースを参照することにより、抽出した先訪場所特徴情報に対する合致度の高い場所特徴情報が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定し、前記位置情報収集蓄積部に蓄積されている個々の端末装置の現時点もしくはその直近の位置情報に基づいて、前記配信場所の近傍領域に位置すると判定された端末装置を当該広告情報の配信先端末装置と決定する配信先決定部と、
    前記広告情報格納部に格納されている広告情報を、前記配信先決定部で決定された配信先端末装置に対して配信する広告配信部と、
    を備えることを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  2. 請求項1に記載のシステムにおいて、
    場所データベース内に登録する個々の場所として商業用店舗の場所が用いられており、当該店舗を特定するための店舗識別コードが場所識別コードとして用いられており、当該店舗の位置座標を示すコードが場所位置コードとして用いられており、当該店舗の特徴を示す情報が場所特徴情報として用いられており、
    広告情報格納部内に格納する広告情報として、各店舗に関する商業広告の情報が用いられていることを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  3. 請求項1または2に記載のシステムにおいて、
    緯度経度を示すデータが場所位置コードとして用いられており、位置情報収集蓄積部が、GPSを利用して各端末装置の緯度経度を示すデータを位置情報として収集することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のシステムにおいて、
    位置情報収集蓄積部が、位置情報とともに、その取得日時を蓄積し、
    場所遷移テーブル作成部が、場所データベースに登録されている特定の場所に関して、その場所位置コードによって示される位置座標の近傍領域内に、所定の滞在時間だけ留まっていたことを条件として、当該特定の場所を場所遷移テーブルに掲載することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  5. 請求項4に記載のシステムにおいて、
    場所遷移テーブル作成部が、1つの端末装置についての所定時間枠内の位置情報を示すN個の時系列データに基づいて、1つの場所遷移テーブルを作成するために、
    第n番目のデータが示す位置座標と第(n+1)番目のデータが示す位置座標との距離d(n,n+1)が、しきい値dthよりも小さいか否かを判定する第1の手段と、
    第n番目のデータが示す位置座標と第(n+i)番目のデータが示す位置座標との距離d(n,n+i)が、しきい値dthよりも小さいか否かを判定する第2の手段と、
    nを初期値1から1ずつ増加させて更新しながら、各更新時点のnの値を用いて前記第1の手段に判定を実行させる処理を、nがN−1に到達する直前まで繰り返し行う第3の手段と、
    前記第1の手段が肯定的な判定を行った場合に、iを初期値2から1ずつ増加させて更新しながら、各更新時点のnおよびiの値を用いて前記第2の手段に判定を実行させる処理を、前記第2の手段が否定的な判定を行うまで繰り返し行い、(n+i)がNに到達しても肯定的な判定がなされたときには、iを更に1だけ増加させる処理を行う第4の手段と、
    前記第2の手段が否定的な判定を行ったとき、もしくは(n+i)がNに到達したときに、そのときのnおよびiの値を用いて示される第n番目のデータの取得日時と第(n+i−1)番目のデータの取得日時との時間差ξが、しきい値ξthよりも大きいか否かを判定する第5の手段と、
    前記第5の手段が肯定的な判定を行った場合に、そのときのnおよびiの値を用いて示される第n番目のデータ乃至第(n+i−1)番目のデータが示す位置座標の平均座標を求める第6の手段と、
    場所データベースに登録されている場所の中から前記平均座標に対する最近接場所を抽出し、当該最近接場所の位置座標と前記平均座標との距離εが、しきい値εthよりも小さいか否かを判定する第7の手段と、
    前記第7の手段が肯定的な判定を行った場合に、前記最近接場所を場所遷移テーブルに掲載する第8の手段と、
    を有し、
    前記第3の手段は、前記第8の手段が場所遷移テーブルへの掲載を行ったときは、nの値をn+iに更新して処理を続行することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のシステムにおいて、
    位置情報収集蓄積部が、位置情報とともに、その取得日時を蓄積し、
    配信先決定部が、現在に至るまで所定の滞在時間以上にわたって、特定の端末装置が配信場所の近傍領域内に留まっていることを条件として、当該特定の端末装置を配信先端末装置と決定することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  7. 請求項6に記載のシステムにおいて、
    配信先決定部が、判定対象となる端末装置を、特定の配信場所についての配信先端末装置とすべきか否かを判定するために、
    判定対象となる端末装置についての現在までの位置情報を示す時系列データを読み込む第1の手段と、
    読み込んだ時系列データの第N番目にある最新データが示す位置座標と前記特定の配信場所の位置座標との距離Dが、しきい値Dthよりも小さいか否かを判定する第2の手段と、
    読み込んだ時系列データの第(N−i)番目のデータが示す位置座標と前記特定の配信場所の位置座標との距離Dが、しきい値Dthよりも小さいか否かを判定する第3の手段と、
    前記第2の手段が肯定的な判定を行った場合に、iを初期値1から1ずつ増加させて更新しながら、各更新時点のiの値を用いて前記第3の手段に判定を実行させる処理を、前記第3の手段が否定的な判定を行うまで、もしくはiがNに到達するまで、繰り返し行う第4の手段と、
    前記第3の手段が否定的な判定を行ったとき、もしくはiがNに到達したときに、そのときのiの値を用いて示される第(N−i+1)番目のデータの取得日時と第N番目のデータの取得日時との時間差ξが、しきい値ξthよりも大きいか否かを判定する第5の手段と、
    前記第5の手段が肯定的な判定を行った場合に、前記判定対象となる端末装置を配信先端末装置と決定する第6の手段と、
    を有することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のシステムにおいて、
    場所データベースに登録された各場所についての場所特徴情報が、それぞれ当該場所の代表的な特徴を示す単一の特徴コードによって構成されており、
    傾向分析部が、ある着目場所についての先訪場所特徴情報を求める際に、各場所遷移テーブルに掲載されている当該着目場所の1つ1つについて、それぞれ先訪場所を調べ、これら各先訪場所についての場所特徴情報として登録されている特徴コードの出現頻度を調べ、最も出現頻度の高い特徴コードを、当該着目場所についての先訪場所特徴情報とする処理を行い、
    分析結果格納部が、個々の広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所についての先訪場所特徴情報として求められた特徴コードと、を対応づけた分析結果を格納し、
    配信先決定部が、配信先を決定する対象となる広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、前記分析結果格納部内で対応づけられている特徴コードを抽出し、前記場所データベースを参照することにより、抽出した特徴コードに一致する場所特徴情報が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  9. 請求項8に記載のシステムにおいて、
    個々の場所の代表的な特徴を示す単一の特徴コードとして、当該場所の名称を示す文字列もしくは当該場所の場所識別コードが用いられていることを特徴とする広告情報配信システム。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載のシステムにおいて、
    場所データベースに登録された各場所についての場所特徴情報が、それぞれ当該場所の特徴を示す複数の特徴コードの組み合わせによって構成されており、
    傾向分析部が、ある着目場所についての先訪場所特徴情報を求める際に、各場所遷移テーブルに掲載されている当該着目場所の1つ1つについて、それぞれ先訪場所を調べ、これら各先訪場所についての場所特徴情報として登録されている各特徴コードの出現頻度を調べ、出現頻度の高い複数の特徴コードの組み合わせを、当該着目場所についての先訪場所特徴情報とする処理を行い、
    分析結果格納部が、個々の広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所についての先訪場所特徴情報として求められた複数の特徴コードの組み合わせと、を対応づけた分析結果を格納し、
    配信先決定部が、配信先を決定する対象となる広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、前記分析結果格納部内で対応づけられている複数の特徴コードの組み合わせを抽出し、前記場所データベースを参照することにより、「抽出した特徴コードの組み合わせ」に対して選抜基準以上の合致度を示す「特徴コードの組み合わせ」が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  11. 請求項1〜7のいずれかに記載のシステムにおいて、
    場所データベースに登録された各場所についての場所特徴情報が、それぞれ当該場所の特徴を示す複数H個の特徴コードとその重みづけを示す重み値とによって構成されており、
    傾向分析部が、ある着目場所についての先訪場所特徴情報を求める際に、各場所遷移テーブルに掲載されている当該着目場所の1つ1つについて、それぞれ先訪場所を調べ、これら各先訪場所についての場所特徴情報として登録されている各特徴コードの重み値の合計値を求め、前記合計値が高い順に複数H個の特徴コードを選択し、選択された各特徴コードについて前記合計値に応じた新しい重み値を決定し、選択された複数H個の特徴コードとその新しい重み値とを、当該着目場所についての先訪場所特徴情報とする処理を行い、
    分析結果格納部が、個々の広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所についての先訪場所特徴情報として求められた複数H個の特徴コードおよびその重み値と、を対応づけた分析結果を格納し、
    配信先決定部が、配信先を決定する対象となる広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、前記分析結果格納部内で対応づけられている複数H個の特徴コードおよび重み値からなる先訪場所特徴情報を抽出し、前記場所データベースを参照することにより、抽出した「先訪場所特徴情報」に対して選抜基準以上の合致度を示す「場所特徴情報」が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  12. 請求項11に記載のシステムにおいて、
    場所データベースに登録された1つの場所についての場所特徴情報を構成する複数H個の特徴コードの重み値の合計が所定の規格値となるような規格化が行われており、
    分析結果格納部に格納された1つの場所についての先訪場所特徴情報を構成する複数H個の特徴コードの新しい重み値の合計が前記規格値となるような規格化を経て、傾向分析部による新しい重み値の決定が行われることを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  13. 請求項11または12に記載のシステムにおいて、
    配信先決定部が、「選抜基準以上の合致度を示す」と判定するための条件として、「複数H個の特徴コードを、重み値の大きい順に並べた場合に、上位h個(1≦h≦H)の特徴コードが一致する」という条件が設定されていることを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  14. 請求項13に記載のシステムにおいて、
    配信先決定部内に、配信場所の総数の上限値Mが設定されており、
    配信先決定部が、「h=1なる最も緩い条件」から「h=Hなる最も厳しい条件」に至るまで、hの値を1ずつ増加させることにより条件設定を徐々に厳しくしながら、配信場所の総数が前記上限値M以下となるまで、配信場所の決定をやり直す処理を実行することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  15. 請求項12に記載のシステムにおいて、
    配信先決定部が、「選抜基準以上の合致度を示す」と判定するための条件として、「複数H個の特徴コードがすべて一致し、かつ、これら各特徴コードをそれぞれ0〜規格値までの座標をもつ座標軸に対応させることにより、複数H本の座標軸からなるH次元座標空間を形成し、このH次元座標空間内に、各特徴コードの重み値を座標値として、両特徴情報をそれぞれ点としてプロットしたときに、両点間のユークリッド距離Lが所定値Lth以下になる」という条件が設定されていることを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  16. 請求項15に記載のシステムにおいて、
    配信先決定部内に、配信場所の総数の上限値Mが設定されており、
    配信先決定部が、所定値Lthを初期値から徐々に減少させながら、配信場所の総数が前記上限値M以下となるまで、配信場所の決定をやり直す処理を実行することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  17. 請求項1〜16のいずれかに記載のシステムにおいて、
    配信先決定部が、広告対象となる場所に対する地理的位置関係を考慮して、当該広告対象となる場所に関する広告情報についての配信場所を決定することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  18. 請求項1〜17のいずれかに記載のシステムにおいて、
    広告情報格納部内に、個々の広告情報についての有効期限が格納されており、
    広告配信部は、有効期限経過前の広告情報についてのみ配信を行うことを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  19. 請求項1〜18のいずれかに記載のシステムにおいて、
    傾向分析部が、特定の場所についての先訪場所特徴情報を求める際に、当該特定の場所について設定された特定の時間枠内の位置情報に基づいて作成された場所遷移テーブルのみを用いた先訪場所の認定を行うことを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  20. 請求項1〜19のいずれかに記載のシステムにおいて、
    傾向分析部が、ある着目場所の直前に来訪した場所を、当該着目場所についての先訪場所として認識することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  21. 請求項1〜19のいずれかに記載のシステムにおいて、
    傾向分析部が、ある着目場所のj番目前(j≧2)までに来訪した場所すべてを、当該着目場所についての先訪場所として認識し、より直前に近い来訪場所の場所特徴情報に対して、より大きな重みづけをして、当該着目場所についての先訪場所特徴情報を求めることを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  22. 請求項1〜21のいずれかに記載のシステムにおいて、
    場所データベースが、場所識別コードと場所位置コードは登録されているが、場所特徴情報は登録されていない不完全なデータを格納しており、端末装置を携帯するユーザからの指示入力に基づいて、前記不完全なデータにおける場所特徴情報を登録する機能を有していることを特徴とする移動端末に対する広告情報配信システム。
  23. 移動可能な端末装置に対して広告情報を配信する方法であって、
    端末装置の移動範囲内に位置する複数の場所のそれぞれについて、当該場所を特定するための場所識別コードと、当該場所の位置座標を示す場所位置コードと、当該場所の特徴を示す場所特徴情報と、を互いに対応づけて登録した場所データベースを用意する段階と、
    前記場所データベースに登録されている複数の場所のうちの広告対象となる場所に関する広告情報と、当該広告対象となる場所の場所識別コードと、をそれぞれ場所ごとに対応づけて用意する段階と、
    個々の端末装置の各時点の位置座標を示す位置情報を時系列データとして収集し、これを蓄積する段階と、
    蓄積されている個々の端末装置の所定時間枠内の位置情報に基づいて、個々の端末装置が前記所定時間枠内に前記場所データベースに登録されている場所間をどのように遷移したかを推測し、その推測結果に基づいて、前記場所データベースに登録されている複数の場所を時系列で掲載した場所遷移テーブルを作成する段階と、
    作成した多数の場所遷移テーブルに基づいて、ある着目場所について、当該着目場所への来訪前に来訪していた別な場所を先訪場所として認識し、前記場所データベースに登録されている場所特徴情報を参照して、当該着目場所について、前記先訪場所の特徴を示す先訪場所特徴情報を求める段階と、
    前記広告対象となる場所について、その場所識別コードと、その場所について求められた先訪場所特徴情報と、を対応づけた分析結果を用意する段階と、
    前記広告情報の配信先を決定するために、当該広告情報に対応づけられた場所識別コードについて、前記分析結果として対応づけられている先訪場所特徴情報を抽出し、前記場所データベースを参照することにより、抽出した先訪場所特徴情報に対する合致度の高い場所特徴情報が対応づけられている1つもしくは複数の場所識別コードで特定される場所を配信場所と決定し、蓄積されている個々の端末装置の現時点もしくはその直近の位置情報に基づいて、前記配信場所の近傍領域に位置すると判定された端末装置を当該広告情報の配信先端末装置と決定する段階と、
    前記広告情報を、前記広告情報の配信先として決定された配信先端末装置に対して配信する段階と、
    を有することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信方法。
  24. 請求項23に記載の広告情報配信方法において、
    場所データベースを用意する際に、個々の場所の様々な特徴を示すキーワード群を用意し、これらキーワード群から選択した1つもしくは複数のキーワードを、1つの場所についての場所特徴情報とすることを特徴とする移動端末に対する広告情報配信方法。
  25. 移動可能な端末装置に対して店舗に関する広告情報を配信する方法であって、
    端末装置の移動範囲内に位置する複数の店舗のそれぞれについて、位置座標と当該店舗の特徴を示す店舗特徴情報とを対応づけたデータベースを用意する段階と、
    広告対象となる特定の店舗に関する広告情報を用意する段階と、
    個々の端末装置の各時点の位置座標を時系列データとして収集する段階と、
    前記時系列データに基づいて、個々の端末装置が訪問した店舗を推測し、個々の端末装置ごとに、訪問した店舗を訪問順に掲載した遷移テーブルを作成する段階と、
    作成した多数の遷移テーブルに基づいて、前記特定の店舗への来訪前に来訪していた別な店舗を先訪店舗として認識し、前記データベースを参照することにより、前記先訪店舗の特徴を示す先訪店舗特徴情報を求める段階と、
    前記データベースを参照することにより、前記先訪店舗特徴情報に類似した店舗特徴情報が対応づけられている1つもしくは複数の場所を配信場所と決定する段階と、
    前記時系列データに基づいて、前記配信場所の近傍領域に位置すると判定された端末装置を配信先端末装置と決定する段階と、
    前記広告情報を、前記配信先端末装置に対して配信する段階と、
    を有することを特徴とする移動端末に対する広告情報配信方法。
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