JP2008310277A - 光ファイバ融着接続構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバの融着接続部において、融着接続点の放熱方法を工夫することで、ファイバ被覆材の寿命を延ばすことができ、信頼性を飛躍的に向上させることができる融着接続構造の提供。
【解決手段】ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとの融着接続構造において、融着接続点を、各ファイバが通る隙間を除いて高熱伝導材からなるブロックで覆ったことを特徴とする光ファイバ融着接続構造。
【選択図】図1

Description

本発明は、光ファイバ増幅器や光ファイバレーザ光源で使用している光増幅用の希土類添加ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとの融着接続構造に関し、特に、融着接続点の放熱方法を工夫することで、ファイバ被覆材の寿命を延ばすことができ、信頼性を飛躍的に向上させることができる融着接続構造に関する。
光ファイバ増幅器や光ファイバレーザ光源では、光増幅用の光ファイバとして、ダブルクラッドファイバが利用されている。このダブルクラッドファイバは、希土類が添加されたコア領域と、そのコア領域の周囲に設けられた第1クラッド領域と、その第1クラッド領域の周囲に更に設けられた第2クラッド領域とから構成されている。ダブルクラッドファイバでは、コア領域および第1クラッド領域で励起光を伝播させ、コア領域で信号光を伝播させる。入射された励起光によって希土類イオンが励起されるので、コア領域内を信号光が伝播すると希土類イオンから誘導放出光が出力され、信号光が増幅される。出射側にシングルクラッドファイバを接続すれば、励起光は伝播せず、信号光のみがコア中を伝播し、ビーム品質の良い信号光が出射される。
従来、光ファイバの融着接続構造に関して、例えば、特許文献1〜6に開示された技術が提案されている。
特許文献1には、ダブルクラッドファイバからの残留光が1Wでも保護被膜が損傷しない構造が開示され、この従来技術では、被覆材に耐熱性の高い材料を使用している。
特許文献2には、ファイバ被覆材に透明な紫外線硬化型樹脂を用いて曲げによる漏れ光の吸収を抑制することが開示されている。この従来技術では、各層の屈折率が、クラッド<1次被覆<2次被覆の関係になっている。
特許文献3には、ダブルクラッドの被覆を一部除去して第1クラッドより屈折率の高い材料を塗布する構造が開示されている。
特許文献4には、内側壁に、アルマイト、金・銀蒸着などで光吸収する加工が開示されている。
特許文献5には、黒アルマイト加工で光を吸収することが開示されている。
特許文献6には、軟質の接着剤で第1と第2の補強基板を固定すること、及びファイバの両側と第1の補強基板は接着剤で固定する構造が開示されている。
特許第3433900号公報 WO2004/66007号パンフレット 特開2000−252559号公報 特開平10−10353号公報 米国特許第6597853号明細書 特開平5−34540号公報
ダブルクラッドファイバの第1クラッドを伝播する励起光は、希土類イオンに吸収され、減衰しながら伝播する。しかし、励起光の10%程度は、希土類イオンで吸収されず、そのまま伝播することになる。このため、ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとの接続部では、融着接続点から励起光が空間に放射され、更に一部は、シングルクラッドファイバのクラッド領域を伝播して被覆材に吸収され、熱エネルギーに変換される。信号出力を数〜数百W以上のハイパワーに増幅する場合には、励起光量も多くする必要があり、被覆材の発熱量も多い。このため、一般に使用されている被覆材では、長期間の使用中に変色したり燃焼することがあり、信頼性を低下させる一因であった。
また、光ファイバ同士を融着接続する場合、融着接続点を補強することが一般に行われている。しかし、空気より屈折率の高い樹脂で融着接続点を補強すれば、融着接続点の開口数(以下、NAと記す。)が小さくなり、更に、ハイパワーの励起光が融着接続点から放出される。このため、この部分に接している補強樹脂が燃焼する懸念があり、融着接続点に補強樹脂や被覆を近づけることができなかった。
また融着接続部では、信号光のロスも発生し、漏れた信号光はシングルクラッドファイバのクラッド領域を伝播して被覆材に吸収され、熱エネルギーに変換される。信号ロスが大きい場合には、被覆部を損傷させる場合がある。信号光のNAは、小さいため、融着点から数mm〜数十mm先の被覆が損傷することがあった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバの融着接続部において、融着接続点の放熱方法を工夫することで、ファイバ被覆材の寿命を延ばすことができ、信頼性を飛躍的に向上させることができる融着接続構造の提供を目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとの融着接続構造において、融着接続点を、各ファイバが通る隙間を除いて高熱伝導材からなるブロックで覆ったことを特徴とする光ファイバ融着接続構造を提供する。
本発明の光ファイバ融着接続構造において、融着接続点付近のシングルクラッドファイバとダブルクラッドファイバを、波長800〜1100nmの範囲で透過率が90%以上ある樹脂で覆ったことが好ましい。
本発明の光ファイバ融着接続構造において、融着接続点付近のシングルクラッドファイバとダブルクラッドファイバを、波長800〜1100nmの範囲で透過率が90%以上あり、且つクラッドの屈折率より高い屈折率をもつ樹脂で覆ったことが好ましい。
本発明の光ファイバ融着接続構造において、ダブルクラッドファイバの第1クラッドを、該クラッドの屈折率より高い屈折率をもつ樹脂で被覆し、該樹脂の周りを高熱伝導材に赤外線吸収層が設けられたブロックで覆ったことが好ましい。
本発明の光ファイバ融着接続構造において、前記ブロックのそれぞれの端部にダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとのいずれかを接着し、それらの接着部のうちいずれか一方を硬質樹脂で接着し、他方を軟質のエラストマーで接着し、その先を強接着し、軟接着と強接着の間のファイバはテンションがかからないことが好ましい。
本発明の光ファイバ融着接続構造において、融着接続点が補強用の透明樹脂で覆われていることが好ましい。
本発明の光ファイバ融着接続構造において、融着接続点手前のダブルクラッドファイバの第1クラッドを覆う樹脂の屈折率が、クラッドの屈折率より小さく、光の進行方向に対して段階的に屈折率を大きくして、ダブルクラッドファイバの開口数を段階的に小さくしたことが好ましい。
本発明の光ファイバ融着接続構造において、放射された励起光量の20〜90%程度が最初に金属ブロックと反射する領域には、金属ブロック表面に赤外吸収材料が形成されておらず、該領域以外の領域の金属表面に赤外吸収材料が形成されたことが好ましい。
本発明の光ファイバ融着接続構造は、ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとの融着接続点を、各ファイバが通る隙間を除いて高熱伝導材からなるブロックで覆った構成なので、ダブルクラッドファイバからシングルクラッドファイバに伝搬される励起光が融着接続点付近のクラッドを被覆した樹脂から放射され、その周囲に設けられたブロックの赤外線吸収層に吸収されて熱に変換され、ブロックに吸収されるので、融着接続点から励起光が漏れ出してファイバの被覆を劣化させることを抑制でき、長寿命で信頼性の高い融着接続構造を提供できる。
本発明の光ファイバ融着接続構造は、ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとの端を融着接続してなる融着接続点を、ファイバが通る隙間を除いて金属ブロックで囲んでなるものなので、融着接続点から放射された光が金属ブロックで反射・吸収されてファイバ被覆に照射されないため、ファイバ被覆樹脂の劣化の進行を遅らせることができる。一例として、ダブルクラッドファイバ−シングルクラッドファイバの融着接続点における温度上昇を予測した結果、樹脂の寿命が30,000時間から50,000時間程度までとなり、信頼性が向上した。
また、シングルクラッドファイバとダブルクラッドファイバとの一方又は両方のクラッドが、クラッドの屈折率より高い屈折率を有し、且つ赤外光に対する透過率が90%以上ある透明な熱硬化型樹脂で覆われている構成とすることで、赤外光に対して吸収がないため、樹脂の劣化・燃焼の心配がなくなる。また融着接続点の手前のダブルクラッドファイバ側面から励起光を放射できるため、融着接続点の漏れ光量を減らすことができ、効率良く放熱することができる。
また、融着接続点を補強用の透明樹脂で覆った構成とすることで、融着接続点にゴミが混入する心配がなくなる。さらに融着接続点の手前で励起光を放射させ、融着接続点での漏れ光量を調整できるため、融着接続点を覆う樹脂が劣化する心配もない。
また、金属ブロックと両方のファイバとの固定部分のうち、一方を硬い樹脂で接着し、他方をヤング率の低いゴム状の樹脂で固定した構成とすることで、ファイバ−金属ブロック間の線膨張係数が異なる場合でも、片側テンションフリーの状態となるため、ファイバが金属の伸縮に追従でき、ファイバに張力や曲がりが生じ難くなる。
また、融着接続点手前のダブルクラッドファイバの第1クラッドを覆う樹脂の屈折率が、クラッドの屈折率より小さく、光の進行方向に対して段階的に屈折率を大きくして、ダブルクラッドファイバの開口数を段階的に小さくした構成とすることで、ダブルクラッドファイバの側面から徐々に光が漏れるため、効率良く放熱できるようになる。
また、放射された励起光量の20〜90%程度が最初に金属ブロックと反射する領域には、金属ブロック表面に赤外吸収材料が形成されておらず、該領域以外の領域の金属表面に赤外吸収材料が形成された構成とすることで、金属ブロック領域内で均一に光を吸収できるため、熱が分散されて効率良く放熱できるようになる。
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明の光ファイバ融着接続構造の実施形態を説明する。
図1は、本発明の光ファイバ融着接続構造の第1実施形態を示す断面図である。図中、符号10はダブルクラッドファイバ、10Aはその被覆、10Bは被覆除去部、11はシングルクラッドファイバ、11Aはその被覆、11Bは被覆除去部、12は融着接続点、13はアルミブロック、14は樹脂、15は第1接着部、16は第2接着部である。
本実施形態の光ファイバ融着接続構造は、ダブルクラッドファイバ10とシングルクラッドファイバ11との融着接続構造において、シングルクラッドファイバ11の融着接続点12側の被覆除去部11Bで露出したクラッドを、該クラッドの屈折率より高い屈折率をもつ樹脂14で被覆し、さらに樹脂14の周りを高熱伝導材に赤外線吸収層が設けられたアルミブロック13で覆った構成になっている。ダブルクラッドファイバ10とシングルクラッドファイバ11とは、アルミブロック13の両端部において接着剤により接着固定され、第1接着部15及び第2接着部16が形成されている。
このダブルクラッドファイバ10は、エルビウム、イッテルビウム、ツリウムなどの希土類元素が添加された石英ガラスからなるコアと、該コアよりも屈折率の低い石英ガラスからなる第1クラッドと、第1クラッドより屈折率の低い材料からなる第2クラッドとからなっている。この第2クラッドは、低屈折率の透明樹脂により形成して被覆10Aを兼ねた構造としてもよい。このダブルクラッドファイバ10の図示していない入射端側は、そのコアに信号光が入射され、第1クラッドに励起光が入射されるように、信号光源と励起光源とが結合されている。
本実施形態の光ファイバ融着接続構造において、融着接続点12より先のシングルクラッドファイバ11の被覆11Aは、適当な長さを取り除いてクラッドを露出させた被覆除去部11Bを形成しておく。アルミブロック13のうち、A領域には、両方のファイバ10,11の端を融着接続してなる融着接続点12が位置され、この融着接続点12は、内面に赤外線吸収層として機能する黒アルマイト処理したアルミブロック13で覆われている。融着接続点12から放射された励起光のほとんどは、黒アルマイト層で吸収され、アルミブロック13に放熱される。このため、融着接続点12から漏れた光が、近傍の樹脂や部品などに照射されて変色などの悪影響を及ぼす心配がない。
アルミブロック13のB領域は、シングルクラッドファイバ10のクラッドの屈折率(≒1.45)より高い屈折率を持つ樹脂14をアルミブロック13の溝に充填し、その中にシングルクラッドファイバ11の被覆除去部11Aを埋設している。シングルクラッドファイバ11のクラッドを伝播した励起光は、B領域でクラッドから放射された後、黒アルマイトで熱に変換され、アルミブロック13本体に吸収される。B領域に充填する樹脂14の吸収率は、励起光の波長に対して90%以上であることが好ましい。樹脂14の透過率が低い場合には、樹脂自身が励起光を吸収し、温度上昇するため、耐熱性の高いシリコーン、フッ素、エポキシ系の樹脂を選定することが好ましい。
このB領域の長さは、ダブルクラッドファイバ10の第1クラッドのNAと樹脂14の屈折率とにより決まる。B領域で励起光をほぼ放射させ、シングルクラッドファイバ11の被覆11Aに励起光を伝播させないことが必要である。樹脂14の屈折率が1.53〜1.54程度の場合には、B領域の長さが30mm程度あれば、励起光を十分に放射することができる。樹脂14の屈折率は、クラッドの屈折率より高いことが必要である。クラッドの屈折率の値に近すぎると、短距離で励起光が放射されてしまうため、アルミブロックの温度上昇や樹脂の劣化が懸念される。このため、樹脂14の屈折率は1.5以上あることが望ましい。
ここで、B領域に充填する樹脂14の吸収率が、励起光の波長に対して90%以上であることが好ましい理由を具体的に説明する。
放射された励起光が全て樹脂に吸収されると仮定すると、樹脂の温度上昇と樹脂の吸収率の関係は以下の式のようになる。
V・ρ・Cp・ΔT=p・t・α(前記式中、Vは樹脂容量、ρは密度、Cpは比熱、Tは温度、pは励起漏れ光量、tは熱平衡時間、αは吸収率をそれぞれ表す。)
例えば、シリコーン樹脂を使用し、適量の樹脂でファイバを覆う場合、p=3W,α=10%(透過率90%)のとき、ΔT=35℃程度となる。この温度であれば、分解温度から十分にマージンがある。経時で吸収率が数%変化しても、3万時間後でも樹脂の分解時間に到達するまでには至らない。
同様に、α=15%(透過率85%)の場合は、ΔT=53℃となり、α=10%の時と比べ、20℃以上上昇する。初期の温度が20℃高いと、樹脂の劣化(吸収率上昇)も加速度的に速くなり、分解温度に到達する時間は早くなってしまい。実用上、この樹脂を採用することは難しい。このため、B領域に充填する樹脂14の吸収率は10%以内(透過率90%以上)であることが好ましい。
透過率90%の樹脂Aと、透過率85%の樹脂Bとを用い、実際に、図1に示した融着接続構造においてこれらの樹脂をB領域に充填して光ファイバ増幅器を運転し、樹脂の温度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2008310277
表1のように、樹脂14の透過率が90%以上であれば、初期温度も低く、長期保管後の温度上昇も低い。透過率が90%以上の樹脂であれば分解温度のマージンが大きく、信頼性が向上する。
本実施形態において、アルミブロック13と両方のファイバ10,11との固定方法は、第2接着部16(又は第1接着部15)を硬質樹脂で接着し、第1接着部15(又は第2接着部16)をヤング率の低いエラストマーで固定することが好ましい。軟質のエラストマーで接着された第1接着部15の先は、硬質接着剤17で固定され、その間のファイバにテンションがかからない状態になっている。アルミブロック13とファイバ10,11との線膨張係数は異なるが、両方の接着部15,16のうち一方のみを強固に接着し、他方を変位可能にエラストマーによって接着しており、なおかつ、ファイバ10,11は充分に長いため、アルミブロック13の伸縮に追従し、断線することがないように構成することができる。
本実施形態の光ファイバ融着接続構造は、シングルクラッドファイバ10の融着接続点12側のクラッドを、該クラッドの屈折率より高い屈折率をもつ樹脂14で被覆し、該樹脂14の周りを高熱伝導材に赤外線吸収層が設けられたアルミブロック13で覆った構成なので、ダブルクラッドファイバ10からシングルクラッドファイバ11に伝搬される励起光がシングルクラッドファイバ11のクラッドを被覆した樹脂14から放射され、その周囲に設けられたアルミブロック13の赤外線吸収層に吸収されて熱に変換され、アルミブロック13に吸収されるので、融着接続点12から励起光が漏れ出してファイバの被覆を劣化させることを抑制でき、長寿命で信頼性の高い融着接続構造を提供できる。
[第2実施形態]
図2は、本発明の光ファイバ融着接続構造の第2実施形態を示す断面図である。本実施形態の光ファイバ融着接続構造は、前述した第1実施形態の接続構造と同じ構成要素を備えて構成され、同じ構成要素には同一符号を付してある。本実施形態の光ファイバ融着接続構造では、融着接続点12の手前(ダブルクラッドファイバ側)のC領域において、アルミブロック13内にダブルクラッドファイバ10の第1クラッドが露出した被覆除去部10Bを収容し、この被覆除去部10Bを、第1クラッドより高い屈折率を持つ樹脂14で被覆し、さらに赤外線吸収層として機能する黒アルマイトが内側に形成されたアルミブロック13で該樹脂14を囲んだ構成になっている。
また、融着接続点12近傍のD領域は、融着接続点12とその両側の各ファイバ10,11の被覆除去部10B,11Bを樹脂14で被覆して融着接続点12を補強し、さらにアルミブロック13で覆っている。また、それぞれのファイバ10,11は、アルミブロック13の両端部において接着固定され、第1接着部15及び第2接着部16が形成されている。
本実施形態では、融着接続点12付近のダブルクラッドファイバ10の第1クラッドを、該クラッドの屈折率より高い屈折率をもつ樹脂14で被覆し、該樹脂の周りを高熱伝導材に赤外線吸収層が設けられたアルミブロック13で覆った構成なので、励起光が融着接続点12手前のダブルクラッドファイバ10のクラッドを被覆した樹脂14から放射され、その周囲に設けられたアルミブロック13の赤外線吸収層に吸収されて熱に変換され、アルミブロック13に吸収されるので、励起光が漏れ出してファイバの被覆材を劣化させることを抑制でき、長寿命で信頼性の高い融着接続構造を提供できる。
さらに本実施形態では、融着接続点12の手前のC領域に屈折率がクラッドより高い樹脂14を充填し、励起光を放射させる構成としたので、融着接続点12からは励起光が放射されなくなり、融着接続点12を樹脂14で補強することが可能となり、より信頼性の高い融着接続構造を提供できる。
[第3実施形態]
図3は、本発明の光ファイバ融着接続構造の第3実施形態を示す断面図である。本実施形態の光ファイバ融着接続構造は、前述した第1実施形態の接続構造と同じ構成要素を備えて構成され、同じ構成要素には同一符号を付してある。本実施形態の光ファイバ融着接続構造では、アルミブロック13の長手方向に沿って、融着接続点12よりもダブルクラッドファイバ10側のE領域、融着接続点12のあるF領域、及び融着接続点12よりもシングルクラッドファイバ11側のG領域の3領域で、段階的に励起光を放射させ、発熱する領域を分散させた構成になっている。
領域Eに充填する樹脂14の屈折率は、クラッドの屈折率より小さくし、励起光が伝播しているダブルクラッドファイバ10の第1クラッドのNAより小さくする。励起光は、この領域EでNA変換され、高NA成分はモードとなり、ファイバ中を伝播する励起光の出力を減衰させる。領域EのNAは、ダブルクラッドファイバ10の第1クラッドのNAの50%程度が好ましい。また、領域EのNAが第1クラッドのNAの80%以上であると、励起光がほとんど放射されない場合があることから、領域EのNAは、第1クラッドのNAの50%〜80%の範囲とすることが好ましい。
領域Fは、樹脂を被覆しておらず、融着接続点12をアルミブロック13で囲む構成としている。領域Fでは、融着接続点12から励起光を放射させ、アルミブロック13の赤外線吸収層(黒アルマイト層)で熱に変換し、アルミブロック13に伝導して吸収する。
さらに、領域Gの樹脂14の屈折率は、クラッドの屈折率より高くして、F、G領域で放射されなかった励起光を放射させ、これを熱に変えてアルミブロック13に吸収する。
なお、段階的に励起光を放射させる本実施形態において、3つの領域に限定する必要はなく、励起光出力とアルミブロック13の温度上昇の関係から、さらに領域を増やすことも可能である。この場合には、図3のE領域をさらに細かい領域に分けて、NAを段階的に小さくしていくことが好ましい。
屈折率を調整するときは、ダブルクラッドファイバ10の第1クラッドのNAの80%程度となるような屈折率の樹脂を用意し、クラッド材料と同じ微粒子が添加された溶液を混合し、クラッドの屈折率に近づけるように調整する方法が簡単である。ガラスファイバの場合には、コロイダルシリカ溶液を添加して、小さくすることが必要である。これは、微粒子で光が散乱されると、樹脂中の伝播距離が長くなり、効率よく黒アルマイト層に吸収されなくなるからである。好ましくは、波長の1/10以下程度の粒子径が良い。
なお、前記各実施形態で使用している黒アルマイト処理されたアルミブロック13は、特に限定されるものではない。熱伝導率の高い材料の表層に赤外線吸収層が設けられている構造や、赤外吸収率が高く、かつ熱伝導率の高い材料や、熱伝導率の高い材料の表層付近に赤外吸収材が分散されている構成でも良い。熱伝導率の高い材料としては、たとえば、アルミニウム、銅、マグネシウム、その合金などが挙げられる。
[第4実施形態]
図4は、本発明の光ファイバ融着接続構造の第4実施形態を示す断面図である。図4中、符号20は希土類元素が添加されたダブルクラッドファイバ、21はシングルクラッドファイバ、22は融着接続点、23は金属ブロック、24は樹脂、25はダブルクラッドファイバ固定用のゴム状樹脂、26はシングルクラッドファイバ固定用のUV硬化樹脂である。
本実施形態の光ファイバ融着接続構造は、ダブルクラッドファイバ20とシングルクラッドファイバ21との端を融着接続してなる融着接続点22を、ファイバが通る隙間を除いて金属ブロック23で囲んだ構造になっている。この金属ブロック23は、ファイバを通す貫通孔が穿設され、その内部空間のうち、A領域に融着接続点22が収容され、それよりもシングルクラッドファイバ側のB領域には、樹脂24が充填されている。またダブルクラッドファイバ側の貫通孔端部は、ゴム状樹脂25によってダブルクラッドファイバ20を変位可能に固定し、シングルクラッドファイバ21側の貫通孔端部は、比較的硬いUV硬化樹脂26によってシングルクラッドファイバ21が固定されている。
本実施形態において、ダブルクラッドファイバ20とシングルクラッドファイバ21の融着接続点22は、金属ブロック23のA領域に配置している。A領域は、融着接続点22を熱伝導性の高い金属材料で覆う構造をしている。このため、融着接続点22から放射される励起光や信号光の漏れ光のほとんどは、金属ブロック23内面で反射・吸収を繰り返しながら、熱に変換されて外部に放熱される。このためB領域に充填されている樹脂24は、融着点から漏れた光の影響を受けることがなく、劣化することはない。
B領域に充填する樹脂24は、クラッドの屈折率(≒1.45)より高い樹脂を使用する。この樹脂24は、近赤外光(800〜1100mm)に対して90%以上の透過率を有することが望ましい。硬化方法は、UV,熱などの方法で良いが、樹脂24の充填量が多い場合(充填深さが数mm以上ある場合)には、熱硬化タイプの方が確実に硬化できるため、熱硬化性樹脂を用いることが望ましい。B領域には被覆の取り除かれたファイバを埋設する。シングルクラッドファイバ21のクラッドを伝播した励起光は、B領域で放射される。その後、励起光は周りの金属で反射および吸収を繰り返して熱に変換され放熱される。使用する樹脂24の種類は、透明性の高いシリコーン、フッ素、エポキシ系の樹脂など、特に限定することなく選定できる。なお、金属ブロック23のB領域内面側には、アルマイト加工や赤外線吸収材料を表面に塗布またはスパッタリングまたは蒸着加工して形成しても良い。
B領域の長さは、ダブルクラッドファイバ20の第1クラッドのNAと樹脂24の屈折率により決まる。B領域で励起光をほぼ放射させ、シングルクラッドファイバ21の被覆部に励起光を伝播させないことが必要である。樹脂24の屈折率が1.53〜1.54程度の場合には、B領域の長さが30mm程度あれば、励起光を十分に放射できる。樹脂24の屈折率は、クラッドの屈折率より高い必要がある。
金属ブロック23と各ファイバの固定方法は、片側を硬い接着剤で接着し、もう片側を弾性率の小さいゴム状の樹脂で固定する。図示した例では、ダブルクラッドファイバ側の貫通孔端部は、ゴム状樹脂25によってダブルクラッドファイバ20を変位可能に固定し、シングルクラッドファイバ21側の貫通孔端部は、比較的硬いUV硬化樹脂26によってシングルクラッドファイバ21が固定されている。金属ブロック23と各ファイバとの線膨張係数は異なるが、図示した構造では一方側の変位可能に固定しており、なおかつ、光ファイバは充分に長いため、金属ブロック23の伸縮に追従し、ファイバに張力が加わって断線することがないように構成している。
本実施形態で使用している金属ブロック23は、特に限定されるものではない。熱伝導率の高い材料の表層に赤外吸収層が設けられている構成や、赤外吸収率が高く、かつ熱伝導率の高い材料や、熱伝導率の高い材料の表層付近に赤外吸収材が分散されている構成でも良い。熱伝導率の高い材料としては、たとえば、アルミニウム、銅、マグネシウム、その合金などの金属材料が挙げられる。
この第4実施形態では、融着接続点22を金属ブロック23で囲んであり、その先の被覆や樹脂などに励起光や信号光が照射されることが無くなり、樹脂の燃焼や劣化を防止できる利点がある。
また、樹脂24を介して、信号光や励起光は熱エネルギーとなって、熱伝導率の良好な金属ブロック23に直接吸収されるため、放熱効率が高い。
[第5実施形態]
図5は、本発明の光ファイバ融着接続構造の第5実施形態を示す断面図である。本実施形態の光ファイバ融着接続構造において、図4に示す第4実施形態の光ファイバ融着接続構造と同一の構成要素には同一符号を付してある。
本実施形態では、融着接続点22の手前のC領域に、屈折率がクラッドよりも高い樹脂27を充填し、ここで励起光を放射させる構成になっている。この構造では、融着接続点22から励起光が放射されないため、金属ブロック23のD領域に収容されている融着接続点22を樹脂28で補強することが可能となった。さらに各領域はファイバの大きさ程度のすき間を除いて金属ブロック23で覆われており、各領域で漏れた光は、隣の領域に照射されることはなく、隣の樹脂に与える影響は少ない。
この第5実施形態では、融着接続点22の手前で励起光を放射できるため、融着接続点22を樹脂28で補強でき、融着接続点22にゴミ等が付着しない構造とすることができる。従来は、融着接続点22で集中してハイパワー光が出射されるため、樹脂などで補強することができず、ゴミが付着するなどの懸念があった。
[第6実施形態]
図6は、本発明の光ファイバ融着接続構造の第6実施形態を示す断面図である。本実施形態の光ファイバ融着接続構造において、図4に示す第4実施形態の光ファイバ融着接続構造と同一の構成要素には同一符号を付してある。
本実施形態の構造は、さらに高出力の励起光を放射させる場合に特に有効である。金属ブロック23の内部には、領域E,F,Gの3領域を設け、段階的に励起光を放射させ、発熱する領域を分散させている。
領域Eに充填する樹脂29の屈折率は、クラッドの屈折率より小さくし、励起光が伝播しているダブルクラッドファイバ20の第1クラッドのNAより小さくする。励起光は、領域EでNA変換され、高NA成分は放射モードとなり、ファイバ中を伝播する励起光の出力を減衰させる。この領域EのNAは、ダブルクラッドファイバ20の第1クラッドのNAの50%程度が好ましく、第1クラッドのNAの80%以上だと励起光は、ほとんど放射されない場合がある。
領域Fは、融着接続点22を金属ブロック23で囲む構造としており、ここで信号光や励起光の漏れ光を放射させる。
さらに、領域Gの樹脂30の屈折率は、クラッドの屈折率より高くして、F,G領域で放射されなかった漏れ光を放射させる。
本実施形態において、金属ブロック23の領域は3つに限定されることはなく、励起光出力と金属ブロック23の温度上昇の関係から、さらに領域を増やすことは可能である。この場合には、図6のE領域をさらに、細かい領域に分けて、NAを段階的に小さくすることが好ましい。
充填する樹脂29,30は、いずれも赤外光に対して透明な材料を選定する必要がある。屈折率調整では、コロイダルシリカなどの微粒子を添加して調整することも可能である。この場合、微粒子径は、励起光の波長に対して、1/10程度に小さくすることが望ましい。これは微粒子中で光が散乱されると、樹脂中を伝播する距離が長くなり、樹脂の吸収率が等価的に下がることになり、樹脂の耐久性が低下するためである。
この第6実施形態は、励起光量が多いときに有効である。樹脂29,30の屈折率を変えて、励起光を段階的に放射させるようにしているため、放熱量が分散され、金属ブロック23全体で効率良く放熱できる。
[第7実施形態]
図7は、本発明の光ファイバ融着接続構造の第7実施形態を示す断面図である。本実施形態の光ファイバ融着接続構造において、図4に示す第4実施形態の光ファイバ融着接続構造と同一の構成要素には同一符号を付してある。
本実施形態では、金属ブロック23のB領域の一部内面側に、漏れ光を熱に変換する赤外吸収材31が表面加工されたB−2領域が設けられている。漏れ光量の50%程度が最初に反射するB領域(B−1領域)は、赤外吸収材31が表面加工されておらず、そこ以外のB−2領域に加工されている。このため、金属ブロック23のB領域内で均一に光を吸収することができ、熱が分散されるため、効率良く放熱できる。ここで用いる赤外吸収材31は、特に制約はなく、カーボンや希土類、金属材料など近赤外(800〜1100nm)を吸収する材料であればよい。
実際に、高出力光ファイバレーザのダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとの融着接続部において、図1〜3に示す光ファイバ融着接続構造を形成し、連続運転してファイバ被覆の劣化状態を調べた結果、従来法(ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとを単に融着接続した構造)と比べ、ファイバ被覆樹脂の劣化の進行を遅らせることができた。
また図1〜3に示す光ファイバ融着接続構造においてファイバ被覆の温度上昇を測定した結果、従来法に比べ、ファイバ被覆の温度上昇を90%以上低減することができた。この温度上昇を予測した結果、樹脂の寿命が30000時間から50000時間程度までとなり、従来法に比べて信頼性が大幅に向上できることがわかった。
図1の第1実施形態では、融着接続点12をアルミブロック13で囲んでおり、その先の被覆や樹脂などに励起光が照射されることがなく、被覆樹脂の燃焼や劣化を防止できる利点がある。本実施形態では、樹脂14を介して、励起光はアルミブロック13に直接吸収されるため、放熱効率が高い。
図2の実施形態では、融着接続点12の手前で励起光を放射できるため、融着接続点12を樹脂などで補強できる利点がある。従来は、融着接続点12でハイパワー光が出射されるため、樹脂などで補強することができず、ゴミが付着するなどの懸念があった。
図3の実施形態は、励起光量が多い場合に有効である。樹脂14の屈折率を変えて、励起光を段階的に放射させるようにしているため、放熱量が分散され、アルミブロック13全体で効率良く放熱することができる。
この図3の実施形態において、NA変換領域であるE領域を分割して、NAを80%から30%程度まで段階的に小さくしていくと、さらに効率よく放熱できる。
NAを変化させるためには、樹脂の屈折率を変えることが良いが、それぞれの屈折率に合う樹脂を選定することは、樹脂の種類が多くなり、評価や保管の手間がかかる。この手間を省くために、NAが80%程度になる屈折率を有する樹脂をあらかじめ選定しておき、別途用意したコロイダルシリカを混合する。コロイダルシリカの混合量を変えることで、簡単にNAを変えることができるため、上記の手間を省略することができる。
本発明の光ファイバ融着接続構造の第1実施形態を示す断面図である。 本発明の光ファイバ融着接続構造の第2実施形態を示す断面図である。 本発明の光ファイバ融着接続構造の第3実施形態を示す断面図である。 本発明の光ファイバ融着接続構造の第4実施形態を示す断面図である。 本発明の光ファイバ融着接続構造の第5実施形態を示す断面図である。 本発明の光ファイバ融着接続構造の第6実施形態を示す断面図である。 本発明の光ファイバ融着接続構造の第7実施形態を示す断面図である。
符号の説明
10…ダブルクラッドファイバ、10A…被覆、10B…被覆除去部、11…シングルクラッドファイバ、11A…被覆、11B…被覆除去部、12…融着接続点、13…ブロック、14…樹脂、15…第1接着部、16…第2接着部、20…ダブルクラッドファイバ、21…シングルクラッドファイバ、22…融着接続点、23…金属ブロック、24,27〜30…樹脂、25…ゴム状樹脂、26…UV硬化樹脂、31…赤外吸収材。

Claims (8)

  1. ダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとの融着接続構造において、
    融着接続点を、各ファイバが通る隙間を除いて高熱伝導材からなるブロックで覆ったことを特徴とする光ファイバ融着接続構造。
  2. 融着接続点付近のシングルクラッドファイバとダブルクラッドファイバを、波長800〜1100nmの範囲で透過率が90%以上ある樹脂で覆ったことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ融着接続構造。
  3. 融着接続点付近のシングルクラッドファイバとダブルクラッドファイバを、波長800〜1100nmの範囲で透過率が90%以上あり、且つクラッドの屈折率より高い屈折率をもつ樹脂で覆ったことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ融着接続構造。
  4. ダブルクラッドファイバの第1クラッドを、該クラッドの屈折率より高い屈折率をもつ樹脂で被覆し、該樹脂の周りを高熱伝導材に赤外線吸収層が設けられたブロックで覆ったことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ファイバ融着接続構造。
  5. 前記ブロックのそれぞれの端部にダブルクラッドファイバとシングルクラッドファイバとのいずれかを接着し、それらの接着部のうちいずれか一方を硬質樹脂で接着し、他方を軟質のエラストマーで接着し、その先を強接着し、軟接着と強接着の間のファイバはテンションがかからないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ファイバ融着接続構造。
  6. 融着接続点が補強用の透明樹脂で覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光ファイバ融着接続構造。
  7. 融着接続点手前のダブルクラッドファイバの第1クラッドを覆う樹脂の屈折率が、クラッドの屈折率より小さく、光の進行方向に対して段階的に屈折率を大きくして、ダブルクラッドファイバの開口数を段階的に小さくしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光ファイバ融着接続構造。
  8. 放射された励起光量の20〜90%程度が最初に金属ブロックと反射する領域には、金属ブロック表面に赤外吸収材料が形成されておらず、該領域以外の領域の金属表面に赤外吸収材料が形成されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光ファイバ融着接続構造。
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