JP2008309206A - 免震装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】床の耐荷重が小さい建物にも設置でき、地震発生時の免震効果をより一層高めることができる免震装置を得る。
【解決手段】レール40上を転動して台枠12を一方向に移動可能とする積載荷重支持部を備え、積載荷重支持部は、台枠の移動方向の複数箇所、台枠の移動方向に直交する方向に一定間隔で複数箇所に配置され、台枠の移動方向2箇所、台枠移動方向に直交する方向における積載荷重支持部の配置間隔の中央部にベース材85上を転動するローラー81を含む補助荷重支持部8が配置され、台枠の移動方向複数箇所に、移動方向一方側の車輪14がレール40から外れたとき床面に接して台枠を支持する補助輪24が配置され、地震によって台枠が移動して移動方向前方の積載荷重支持部の車輪と補助荷重支持部のローラーがレールおよびベース材から外れたとき移動方向前方の補助輪が床面に接して台枠の荷重を支持する。
【選択図】図5

Description

本発明は、地震による載置物の落下や転倒を防止して載置物の破損を防止する免震装置に関するもので、例えば、図書館における書架に免震性を持たせるのに、あるいは、美術品、学術的価値のある資料などの保管に好適なものである。
従来、例えば、図書館などに設置されている自立式の開架書架として、地震時の利用者の身の安全を図り、あるいは、書架の転倒防止、収蔵書籍の落下防止のために、免震自立棚が提案され、普及しつつある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。特許文献1記載の発明は、地震時に棚を床に対して相対移動可能とするとともに、ばねなどを有する移動制限手段を設け、並置した一対の棚相互を上部で連結することによって自立できるようにしたものである。特許文献2記載の発明は、可動手段によって棚を移動可能にするとともに、通常は移動不能にロックしておき、感震装置が地震の揺れを感知したときロックを解除して免震機能を発揮するようにしたものである。特許文献3記載の発明は、可動台車の上に棚を一方向に移動可能に吊り下げることにより免震機能を発揮させるものである。
上記各特許文献記載の発明は、自立棚すなわち開架式の棚として構成されたものであるが、書籍を出し入れしようとする書架の前面にのみ作業用通路を形成することができるようにした閉架書架として、免震機能つき移動棚も用いられるようになってきた。
開架書架にせよ閉架書架にせよ、従来の免震機能を持った書架ないしは棚は、もともと設計の段階から免震機能を持ったものとして設計され製造されるものである。既に存在している免震性のない書架ないしは棚については、地震などによって床が大きく揺れた場合、棚の転倒防止効果、収納物品の落下防止効果を期待することはできない。したがって、既存の書架ないしは棚に免震機能を持たせようとすると、既存の書架ないしは棚を撤去して、免震機能を有する書架ないしは棚に入れ替えなければならず、大幅なコスト高になる難点がある。また、免震機能つきの書架ないしは棚に入れ替えるには、設置工事に日数がかかり、図書館であれば長い間休館せざるを得ず、その間利用者が書籍等の閲覧ができないという難点もある。前記特許文献1記載の発明によれば、並置した棚同士を上部で連結する必要がある。特許文献2記載の発明によれば、棚を設置する床の材質や状態によって免震性が変化する難点がある。特許文献3記載の発明によれば、装置が大掛かりになり、レールが見えてしまうという難点がある。
そこで本出願人は、物品あるいは物品収納手段の載置面を有する台枠と、台枠の底部に装着された走行装置と、走行装置が載せられて地震時に台枠を移動させることができるレールと、台枠を移動不能に規制するロック位置と規制を解除する非ロック位置との間で移動することができるロック手段と、地震などによる床面の振動を感知しロック手段を非ロック位置に移動させるロック解除手段と、レールの両端部に設けられていて台枠の移動範囲を規制する移動規制手段と、を有し、複数のレール上には一台の台枠が載せられていることを特徴とする免震装置を提案した(特許文献4参照)。
本出願人はさらに、特許文献4記載の発明を改良し、物品あるいは物品収納手段の載置面を有する台枠と、台枠の底部に回転可能に軸装された複数の車輪と、この車輪が載せられて地震時に台枠を移動させることができる複数のレールと、台枠の転倒を防止する転倒防止手段と、を有し、転倒防止手段は、台枠の底部に回転可能に支持されたローラーと、台枠の移動に伴って上記ローラーを転動させるとともにこのローラーを上下方向に位置規制するローラーガイドを有し、また、物品あるいは物品収納手段の載置面を有する台枠と、台枠の底部に回転可能に軸装された複数の車輪と、互いに平行に敷設されていて上記車輪が転動可能に載せられる複数のレールと、を有し、台枠には、車輪がレールから外れたとき床面に接して台枠を支持する補助輪を有してなる免震装置につき特許出願した(特許文献5参照)。
特開平11−266941号公報 特開平10−085068号公報 特開平10−327947号公報 特開2005−172006号公報 特開2006−150045号公報
特許文献5記載の発明によれば、例えば、台枠の移動方向の車輪間隔を狭くすることによって、レール上での車輪の転動範囲を広くし、大きな地震などに対する免震効果を高めたとしても、転倒防止手段によって台枠の転倒を防止することができる。また、転倒防止手段は、台枠の底部に回転可能に支持されたローラーと、台枠の移動に伴って上記ローラーを転動させるとともにこのローラーを上下方向に位置規制するローラーガイドを有してなるため、台枠の移動に伴い、ローラーガイドに沿ってローラーが転動することによって転倒防止手段も円滑に移動し、転倒防止手段が免震効果を妨げるようなことはない。ローラーとローラーガイドを有してなる転倒防止手段は、ローラーとローラーガイドとの間の隙間をなくすことができるため、台枠の傾きを小さくすることができ、台枠に載せられる物品収納手段の上部の揺れを小さくすることができる。また、補助輪を有する場合、レールから車輪が外れても、補助輪が床面に接して転動するため、免震機能が保たれ、また、台枠の転倒も防止される。
ところで、このように多くの利点を備えている特許文献5記載の免震装置の需要が増えるにしたがって、さらに改良すべき問題点があることがわかってきた。設置すべき建築物の床の設計積載荷重の問題である。従来の免震書架などの積載荷重支持部である車輪の軸方向ピッチは最大で1800mmで、書架の荷重圧力は各積載荷重支持部に集中し、通常1000Kg/mに達する。しかし、通常の建築物の床の設計積載荷重は最大で500Kg/m程度であり、上記従来の免震書架などの仕様では、床の設計積載荷重が不足して免震装置を設置することができないことがあった。図12は、従来の免震書架において書架の荷重圧力が積載荷重支持部に集中してかかる様子を示している。図12において、免震書架は上下方向が間口方向で、間口方向に1800mmピッチで積載荷重支持部としての車輪が装着されているものとする。平行斜線を付した部分が書架の荷重圧力がかかる部分で、この例では、書架の間口方向両端部の積載荷重支持部周辺の床に集中して荷重がかかり、書架の間口方向中間部の床には荷重がかかっていない。
従来の免震書架などにおいては、上記のとおり、積載荷重支持部周辺の床に集中して1000Kg/m程度の書架の荷重がかかる。最近建てられた建物では建物の用途によって1000Kg/m程度の荷重に耐えるように設計されているものもあり、かかる設計の建物であれば、特許文献5に記載されているような免震装置をなんら問題なく設置することができる。しかし、既存の建物の床の設計積載荷重は上記のように最大で500Kg/m程度であるため、このような建物に特許文献5に記載されているような免震装置を設置するには、床の設計積載荷重補強のための工事を行う必要があった。よって、コスト高になる難点があるとともに、施工が面倒で設置が完了するまでの所要時間が長引く難点があった。また、上記のように大きな荷重が積載荷重支持部に集中すると、地震が発生したとき積載荷重支持部の動きが悪くなり、免震効果も若干制限される難点があった。
本発明は、上記のような問題点を解消し、積載荷重が分散してかかるように構造を工夫することによって、床の設計積載荷重が小さい建物にも補強工事をすることなく設置することができ、併せて、地震発生時の免震効果をより一層高めることができる免震装置を提供することを目的とする。
本発明は、物品あるいは物品収納手段を載置する台枠と、この台枠の底部に回転可能に軸装された車輪と、この車輪がレールに乗ることによって台枠にかかる荷重を支持するとともに上記レール上を転動することにより上記台枠を一方向に移動可能とする積載荷重支持部と、を備え、地震時に上記車輪がレール上を転動することにより台枠に地震エネルギーが伝達されるのを回避することができる免震装置であって、上記積載荷重支持部は、台枠の移動方向複数箇所に、また、台枠の移動方向に直交する方向に一定間隔で複数箇所に配置され、上記台枠の移動方向複数箇所に、また、台枠移動方向に直交する方向における上記積載荷重支持部の配置間隔の中央部に、ベース材の上を転動するローラーを含む補助荷重支持部が配置され、上記台枠にはまた、台枠の移動方向複数箇所に、移動方向一方側の上記車輪がレールから外れたとき床面に接して台枠を支持する補助輪が配置され、上記レールおよびベース材は長さが制限されており、平常時は積載荷重支持部と補助荷重支持部によって台枠にかかる荷重を支持し、地震によって台枠が上記レールおよびベース材方向一方に移動して移動方向前方の積載荷重支持部の車輪と補助荷重支持部のローラーがレールおよびベース材から外れたとき上記移動方向前方の補助輪が床面に接して台枠の荷重を支持し、上記移動方向後方の積載荷重支持部の車輪と補助荷重支持部のローラーはレールおよびベース材上にあって台枠の荷重を支持することを最も主要な特徴とする。
地震のない平常時は、積載荷重支持部と補助荷重支持部によって台枠にかかる荷重を支持する。補助荷重支持部は、台枠移動方向に直交する方向における積載荷重支持部の配置間隔の中央部に配置されているため、積載荷重支持部と補助荷重支持部で台枠の荷重を分担して受けることになり、本発明に係る免震装置を設置する建物の床の設計積載荷重を軽減することができ、床の設計積載荷重補強のための工事を行うことなく免震装置を設置することが可能になる。積載荷重支持部と補助荷重支持部によって台枠にかかる荷重が分散して支持されるため、レールおよびベース材上での積載荷重支持部の車輪と補助荷重支持部のローラーの転動が軽快に行われるようになり、免震効果が高まる利点がある。
地震によってレールおよびベース材上を積載荷重支持部の車輪と補助荷重支持部のローラーが転動し、台枠の移動方向前方の上記車輪およびローラーが上記レールおよびベース材から外れると、移動方向前方の補助輪が設置床面に接して台枠の荷重を支持し、移動方向後方の積載荷重支持部の車輪と補助荷重支持部のローラーはレールおよびベース材上にあって台枠の荷重を支持する。上記補助輪の転がり抵抗は、移動方向後方の積載荷重支持部の車輪と補助荷重支持部のローラーの転がり抵抗よりも大きいため、地震の揺れ戻しの際に免震装置は原位置の方に向かって移動し、移動方向前後の積載荷重支持部の車輪と補助荷重支持部のローラーがレールおよびベース材上に載る。
以下、図面を参照しながら本発明にかかる免震装置の実施例を説明する。
図1において、符号12は、物品あるいは物品収納手段を載置するための載置面を有する台枠を示している。台枠12の底部には、走行車輪14を有してなる走行装置2が装着されている。走行車輪14は、免震装置を設置する床(以下「設置床」という)に敷設されたレール40の上に載せられ、レール40上を走行車輪14が転動することによって台枠12がレール40に沿い相対移動することができるようになっている。したがって、走行装置2は台枠12の積載荷重支持部を構成している。図示の例では、2本のレール40が対をなして平行に敷設され、この一対のレール40の上には、一台の台枠12の、走行装置2を構成する車輪14が載せられている。台枠12の移動方向はレール40の長手方向であり、台枠12の幅方向である。地震時に設置床が揺れる方向は不定である。しかしながら、揺れの成分としてレール40の長さ方向の揺れ成分があれば、したがって台枠12の移動方向に対して斜め方向に揺れても、レール40上を走行車輪14が転動し、台枠12はその移動方向に関してほぼその場に留まる。換言すれば、レール40に上記走行装置2が載せられることにより、地震時に台枠12がレール40に対して相対移動することができるようになっている。
図3は二つの台枠12が長さ方向に結合された例を示す。図3において、一つの台枠12の長手方向の一つの軸線上に2個一対の走行車輪14が、もう一つの台枠12の長手方向の一つの軸線上にも2個一対の走行車輪14が配置されている。ただし、図示の実施例では、隣り合う台枠12の結合部において、台枠12の走行方向前後に走行車輪14,14が配置され、これらの走行車輪14,14は、一方の台枠12の走行車輪と他方の台枠12の走行車輪とを兼ねている。したがって、図3に示す例のように台枠12が2連に結合されたものにおいては、台枠全体としてその長さ方向に3個の走行車輪14が配置され、この3個の走行車輪14が通し軸13によって一体に結合されている。通し軸13によって一体に結合された3個一対の走行車輪14が2対、台枠の移動方向前後に所定の間隔をおいて配置されている。
台枠12の移動方向に並ぶ2個の車輪14は、梁30によって、適宜の軸受と回転軸を介して回転自在に支持されている。上記梁30は、溝形の部材で、開放面を下向きにして台枠12の走行方向前後端を構成する一対のフレーム18に連結され、台枠12の一部を構成している。上記回転軸は、両端部がボールベアリング(玉軸受)で支持されることにより溝形の梁30を幅方向に横切って配置され、この回転軸と一体に車輪14が設けられている。車輪14を含む構成部分は積載荷重支持部としての走行装置2を構成していて、この走行装置2が、2連構成の台枠12の長手方向両端部と中央部すなわち二つの台枠12,12の連結部に配置されている。本発明にかかる免震装置は、走行装置2の構成が周知の移動棚の走行機構に似た構造になっているが、以下に述べるように、周知の移動棚とは異なった発想に基づくものである。
周知の移動棚は、移動可能な複数の棚を使用し、すべての棚を収束させた状態と、任意の棚間に物品の出し入れ作業を行うための通路を形成した状態とを作り出すようにしたものであって、空間の利用効率を高めることを目的としている。したがって、上記レールは、移動棚全体の移動範囲にまたがる長さのものが用いられる。
これに対して、本発明の実施例にかかる免震装置では、図5に示すように、レール40の長さが、台枠12あるいは前記物品収納手段10の幅とほぼ同じ長さになっている。走行車輪14は台枠12内に装着されているため、走行車輪14の回転中心軸間距離はレール40の長さよりも短く、レール40の長さと移動方向前後に配置された走行車輪14の回転中心軸間距離との差の範囲内で台枠12がレール40に対して相対移動できるようになっている。レール40の長さは、物品収納手段10の幅方向すなわち台枠12の移動方向の寸法と等しいか、または、それよりも短く、かつ、車輪14の回転中心軸間距離よりも長ければよい。
台枠12の上面は物品あるいは物品収納手段の載置面となっている。図1に示す例では、載置面に物品収納手段10が載せられ、適宜の結合手段によって台枠12と物品収納手段10が一体に結合されている。物品収納手段10は、投影平面において、長手方向の寸法および幅方向の寸法が、台枠12の長手方向の寸法および幅方向の寸法とほぼ同じになっている。しかし、物品収納手段10の長手方向の寸法および/または幅方向の寸法は、物品収納手段10とともに台枠12が安定に起立する範囲内で、台枠12の長手方向の寸法および/または幅方向の寸法よりも大きく、載置物10が台枠12から幅方向にはみ出していても差し支えない。ここで、長手方向とは物品収納手段10の間口面すなわち書籍などの物品を出し入れする面と平行な方向であり、幅方向とは物品収納手段10の移動方向すなわち物品収納手段10の奥行き方向である。物品収納手段10の形式は任意で、いわゆる単柱式の棚であっても、複柱式の棚であっても、ロッカーのようなものであってもよい。
台枠12は、間口面方向から見て前後に配置された長尺の部材であるフレーム18を主体としてなる。前後のフレーム18はその両端部が走行装置2を構成する梁30の両端部に結合されることによって一体に結合され、台枠12の基礎を構成している。フレーム18は長尺の金属板を横断面U字状に折り曲げた部材で、前後二つのフレーム18はU字の開放端を互いに対向させて配置されている。上記梁30も金属板を横断面U字状に折り曲げた部材で、U字の開放端を下向きにしてその両端部を前後のフレーム18の断面U字形の内方に挿入し、適宜の結合手段によって連結されている。梁30は車輪支持部材として機能し、梁30の長さ方向の2箇所で梁30を幅方向に横切って軸が適宜の軸受を介して支持され、これらの軸によってそれぞれ車輪14が回転自在に支持されている。
レール40上で車輪14が転動することができる範囲は、免震機能が有効に働く振幅の範囲であってレールの長さによって決まり、また、移動方向前後の車輪14の間隔によって決まる。一定長さのレールに対して車輪14の間隔が狭ければ、車輪が転動できる範囲が広くなり、免震機能が働く範囲も広くなる。ところが、前後の車輪14の間隔を狭くすると、台枠12およびこれと一体の物品収納手段10が自立するのに不安定となる。この不安定さをなくすために、転倒防止手段6、補助輪ユニット4が装着されている。
物品収納手段10の間口面側から見て左右方向に対をなす車輪14は、前述のとおり通し軸13で一体に結合されている。さらに、上記各通し軸13の両端部には同径のスプロケット21が一体に設けられ、移動方向前後方向で対をなす車輪14と一体の上記スプロケット21に無端のチェーンが掛けられることにより、移動方向前後方向で対をなす車輪14は同期して回転することができるように工夫されている。かかる工夫により、地震によって車輪14がレール40上を転動するとき、移動方向前後方向に対をなす車輪14および間口面から見て左右の車輪14が同期して回転し、台枠12がレール40と平行に直線的に円滑に移動できる構造になっている。換言すれば、スプロケット21とチェーンで、前後の車輪が同期して回転する同期回転手段を構成している。また、各車輪14は両側にフランジを有し、両側のフランジがレール40を挟むことにより、台枠12が斜行しにくい構造になっている。各車輪14は両側のフランジ間の円筒面がレール40の平坦な上面に乗り、このレール40の上面上を転動するように構成されている。
図1、図3に示す実施例は、間口面側から見て物品収納区画が左右方向に2区画形成された2連構成になっているが、間口方向の連数は限定されるものではなく、1連でもよいし、3連以上であってもよい。図5は、補助荷重支持部8が組み付けられる一対のブラケット82,82を示す。ブラケット82,82は、図2にも示すように横断面が逆L字形で、L字の水平片の両端部が台枠12を構成する前記フレーム18の底面にボルトで固定され、L字の垂直片が所定の間隔をおいて相対向するように配置されている。この相対向するブラケット82,82の垂直片間に、かつ、ブラケット82,82の長さ方向両端部寄りの位置に、それぞれ軸83が掛け渡されていて、各軸83の外周には、ボールベアリング(玉軸受)84を介してローラー81が軸83を中心にして回転自在に取り付けられている。ローラー81はフランジのない円筒状のローラーで、設置床に敷設された扁平形状のベース材85の上に乗り、このベース材85上を転動することができるように構成されている。
前述のように、一つの台枠12の側部には別の台枠12が一体に結合されている。一つの台枠12ともう一つの台枠12の連結部においては、図3に示すように、走行装置2が組み付けられている梁30の幅方向約1/2が一方の台枠12のフレーム18に連結され、上記梁30の残りの幅方向約1/2が他方の台枠12のフレーム18に連結されている。換言すれば、一つの梁30が左右のフレーム18の連結部材を兼ねている。
上記のように二つの台枠12が結合されてなる免震装置において、積載荷重支持部としての走行装置2は、台枠12の長手方向において1800mm間隔で、連結された台枠の両端部および中央部に配置されている。上記補助荷重支持部8は、台枠12の移動方向に直交する方向における上記積載荷重支持部8の配置間隔の中央部に配置されている。したがって、走行装置2と積載荷重支持部8が交互に900mm間隔で配置されている。
図2に示すように、台枠12の底部には、各走行装置2に隣接して転倒防止手段6が取り付けられ、また、4個の補助輪ユニット4が取り付けられている。これら転倒防止手段6と補助輪ユニット4の具体的構成および前後の車輪14相互の寸法と転倒防止手段6の前後方向の寸法関係等を次に説明する。
図2、図5には、走行装置2と、補助輪ユニット4と、転倒防止手段6と、積載荷重支持部8を含む部分を示す。図2、図5において、補助輪ユニット4は、所定の間隔をおいて台枠12を幅方向に横切るようにして台枠12の底面に固定された一対のブラケットを有すると共に、このブラケット間に支持された軸に回転自在に支持された補助輪24を有してなる。補助輪24は台枠12の幅方向すなわち走行方向前後に配置されると共に、前記車輪14の回転中心である通し軸13の位置よりも台枠12の幅方向外側に、したがって、前後方向の車輪14の間隔よりも前後方向に広い間隔で配置されている。積載荷重支持部の車輪14がレール40に乗り、積載荷重支持部8のローラー81がベース材85に乗っている平常時ないしは静止時においては、上記車輪14とローラー81によって台枠12にかかる荷重を支持している。したがって、台枠12の長手方向において900mm間隔で荷重が支持されることになり、従来のように、積載荷重支持部としての走行装置2のみによる荷重支持の場合に比べて荷重支持位置が2倍になり、荷重が分散してかかることになる。また、上記の静止時においては、補助輪ユニット4の補助輪24は、設置床面から浮き上がっている。レール40と設置床面との間にはライナー41が介在してレール40のレベルすなわち高さ位置が調整され、ベース材85と設置床面との間にはライナー86が介在してベース材85のレベルが調整されている。レール40とベース材85のレベルが調整されることにより、上記のような車輪14、ローラー81、補助輪24の高さ位置関係が設定されている。
図2において、転倒防止手段6は、レール40と平行に固定されたローラーガイド28と、ローラー26を有してなる。ローラーガイド28は、例えば金属板を横断面U字状に折り曲げて形成されたチャンネル状の部材で、横断面U字の開放端縁側を横向きにしてレールプレート42の側面に固定されている。台枠12の下面側には、台枠12を構成する前後のフレーム18にまたがって横断面L字形のローラーホルダ27が固定され、ローラーホルダ27の垂直片に水平方向に固定された水平軸の一端側に、上記ローラー26が回転自在に支持されている。ローラーホルダ27の長さは、台枠12の幅方向の寸法とほぼ同じで、レール40の長さよりもわずかに短くなっている。ローラー26は、一つのローラーホルダ27に複数個、例えばローラーホルダ27の長さ方向両端部に配置されている。ローラー26は、ローラーガイド28にその開放端縁側から挿入され、台枠12の移動に伴ってローラー26を転動させるとともにこのローラー26を上下方向に位置規制している。
ローラーホルダ27にローラー26が上記のように配置されているため、地震などによってレール40に対して車輪14が転動し、台枠12が移動すると、すぐに一方端部のローラー26がローラーガイド28から外れる。しかし、他方の端部のローラー26はローラーガイド2に嵌まっているため、台枠12およびこれと一体の物品収納手段10が転倒することはない。加えて、転倒防止手段6はローラー26とローラーガイド28を有してなり、ローラー26がローラーガイド28に沿って転動しながら転倒防止機能を発揮し、台枠12の移動に対する抵抗力も比較的小さいので、転倒防止手段を設けたことによって免振効果が得られなくなることもない。
地震によって設置床面が揺れると、車輪14がレール40上を転動し、ローラー81がベース材85上を転動する。これらの転動による台枠の移動距離が所定の距離以上になると、レール40とベース材85の長さが制限されているため、図6、図8に示すように台枠12の移動方向前側の車輪14がレール40から外れ、ローラー81がベース材85から外れる。これによって台枠12は移動方向前後に傾き、移動方向前側の補助輪24が設置床面に接し、台枠12にかかる荷重の一部を補助輪24が支持するように、補助輪24の高さ位置が設定されている。また、補助輪24が上記のように設置床面に接しているとき、台枠12の移動方向前側の車輪14およびローラー81はレール40およびベース材85の上面から例えば1mm程度浮き上がるようにそれぞれの高さ位置が設定されている。台枠12の移動方向反対側の車輪14、ローラー81、補助輪24の高さ位置も同様に設定されている。車輪14およびローラー81は玉軸受を介して支持されている軸に設けられているのに対し、補助輪24は玉軸受を介することなく軸に回転可能に支持されている。
次に、以上説明した実施例の動作を、図5ないし図9を参照しながら説明する。図5は前述のとおり平常時すなわち静止時を示しており、台枠12の幅方向両側の車輪14、ローラー81がそれぞれレール40、ベース材81の上に乗り、補助輪24は設置床面から浮いていて、台枠12にかかる荷重を各車輪14、ローラー81で支持している。したがって、台枠12にかかる荷重が、積載荷重支持部を構成する各車輪14と、補助荷重支持部を構成する各ローラー81によって分散されて支持される。台枠12の長手方向における各車輪14と各ローラー81の間隔はそれぞれ1800mmであり、車輪14の間隔の中央部にローラー81が配置されているため、台枠12にかかる荷重は車輪14とローラー81によって900mm間隔で支持されることになる。そこで、この荷重支持の状況を、前記従来例について示した図12に準じてモデル的に表わした図11を参照すればわかるように、台枠を平面方向から見たときに設置床面にかかる荷重は、台枠の周囲に略均等に分散されている。よって、建物の床の設計積載加重が例えば最大で500Kg/m程度であったとしても、本発明に係る免震装置であれば、建物の補強工事をすることなく設置することができる。
いま、地震が発生して設置床が揺れたとする。設置床と共にレール40、ベース材81が揺れ、レール40、ベース材81の長手方向の揺れ成分があったとすると、レール40、ベース材81上を車輪14とローラー81が転動し、設置床に対して台枠12がその幅方向に相対移動する。図6に示すように、設置床が右方向に揺れ、かつ、台枠12の幅方向の揺れが一定以上となった瞬間を見ると、台枠12の図6における左側の上記車輪14とローラー81がレール40、ベース材81の左端から外れ、台枠12が左側に傾き、車輪14とローラー81が床面に接する前に、補助輪24が床面に接する。したがって、台枠にかかる荷重は、図6における右側の車輪14とローラー81および左側の補助輪24によって支持される。床面に接している左側の補助輪24の転がり抵抗は、レール40、ベース材81の上に乗っている右側の車輪14とローラー81の転がり抵抗よりも大きいため、設置床の揺れに対する台枠12の相対移動に制動がかかると共に、台枠12は設置床の揺れに伴って揺れ方向に幾分移動しようとするいわば調芯作用が生じる。ただし、この調芯作用によって設置床と一体的に台枠12が移動するわけではなく、補助輪24が床面上を転動するので、免震効果は発揮される。
設置床は地震によって往復移動するため、次の瞬間、設置床は左向きに揺れ戻る。設置床が原点位置まで揺れ戻った状態を図7に示す。この状態では、上記調芯作用もあって、台枠12は図5に示す原点に戻り、レール40およびベース材81の上に乗った左右の車輪14とローラー81によって、台枠12にかかる荷重が支持される。この状態では左右の補助輪24は床面から離れている。
さらに、設置床が左側に向かって揺れ、かつ、揺れが一定以上になると、図8に示すように、左右の車輪14とローラー81がレール40およびベース材81を転動し、右側の車輪14とローラー81がレール40およびベース材81から外れる。図6について説明した動作と同様に、今度は右側の車輪14とローラー81が床面に接する前に右側の補助輪24が床面に接し、台枠12の右側にかかる荷重を右側の補助輪24が受け止める。台枠12の左側の車輪14とローラー81はレール40およびベース材81の上に載っていて、台枠12の左側の荷重を受け止める。この場合も、床面に接している右側の補助輪24の転がり抵抗は、レール40、ベース材81上の左側の車輪14とローラー81の転がり抵抗よりも大きいため、設置床に対する台枠12の相対移動に制動がかかり、台枠12が設置床の揺れに伴って揺れ方向に幾分移動しようとする調芯作用が生じる。
図9は、設置床が原点位置まで戻った状態を示しており、図5、図7に示す動作態様と同じ態様になっている。したがって、レール40およびベース材81の上に乗った左右の車輪14とローラー81によって、台枠12にかかる荷重が支持され、左右の補助輪24は床面から離れている。
以上説明した実施例によれば、平常時は、台枠12の長さ方向に配列された車輪24を備える積載荷重支持部と、この積載荷重支持部の配置間隔の中央部に配置されたローラー81を含む補助荷重支持部8によって台枠12の荷重が支持されるため、台枠12の荷重支持箇所が倍に増え、個々の荷重支持箇所にかかる荷重が分散され、荷重支持部である積載荷重支持部と補助荷重支持部8が分担する荷重が1/2に軽減される。よって、設置床の設計積載荷重が500Kg/m程度の従前の建物であっても、特別な補強工事をすることなく免震装置を設置することが可能になった。
このように、台枠12の荷重を支持する部分が倍に増え、個々の荷重支持箇所にかかる荷重が分散されることによって、走行抵抗が低下して免震効果が高まる利点もある。図10は、これを表わしたグラフで、荷重支持の間隔が従来のように1800mmの場合と上記実施例のように900mmの場合につき、台枠の積載荷重(Kgf)を変えながら走行抵抗(Kgf)を測定した結果を示す。破線で示すグラフは荷重支持部の間隔が1800mmの場合、実線で示すグラフは荷重支持部の間隔が900mmの場合である。このグラフからわかるように、積載荷重が一定以上であれば、荷重支持部の間隔が狭い方が、間隔が広い場合よりも走行抵抗が小さくなる。よって、本発明の実施例によれば、車輪14とローラー81による走行抵抗が小さくなり、地震時に台枠12が軽快に動いて免震効果が高まる利点もある。
なお、地震のない平常時は台枠12がみだりに移動しないように、たとえば車輪14の回転を阻止するロック部材、地震を感知することによってロック部材による車輪14のロックを解除するロック解除部材を設けてもよい。
前述のように、台枠12が移動して、この移動方向前側の車輪14、ローラー81がレール40、ベース材85から外れ、補助輪24が床面に接することによって、台枠12を原位置に復帰させる向きの力が働く。そこで、台枠12の原位置方向への復帰を円滑に行わせるために、レール40の長さ方向両端部上面を斜めに削った形の傾斜面401を形成している(図5参照)。傾斜面401はレール40の外端側から見て内方に向かって緩やかな上り坂になっていて、台枠12の原位置方向へ復帰するとき、車輪14が上記傾斜面401に案内されながらレール40上に載ることになるため、台枠12の原位置方向への復帰が円滑に行わる。また、車輪14がレール40から外れるときも傾斜面401を転がり落ちながら外れるので、衝撃が生じることなく円滑に外れる。ベース材85の長さ方向両端部にも同様の傾斜面を設けてもよい。
本願発明にかかる免震装置は、台枠の部分のみを工場で生産し、設置現場において既存の定置棚などの物品収納手段を載せるようにしてもよいし、台枠と物品収納手段を一体として工場で生産してもよい。また、台枠の部分と物品収納手段を分けて工場で生産し、設置現場において一体化してもよい。
実施例について説明した積載荷重支持部間隔の1800mmは一例であって、この寸法に限られるものではない。いずれにせよ、積載荷重支持部間隔の中央部に補助荷重支持部が配置される。
本発明にかかる免震装置の実施例を示す外観正面図である。 同上実施例中の台枠の一部を拡大して走行装置、補助荷重支持部、補助輪ユニットの部分を示す正面図である。 同上台枠の平面図である。 上記補助荷重支持部を含む部分を拡大して示す平面図である。 上記実施例の要部を拡大して示す側面図である。 上記実施例の一動作態様を図5に準じて示す側面図である。 上記実施例の異なる動作態様を図5に準じて示す側面図である。 上記実施例のさらに異なる動作態様を図5に準じて示す側面図である。 上記実施例のさらに異なる動作態様を図5に準じて示す側面図である。 本発明による転がり抵抗軽減を従来例の転がり抵抗と比較して示すグラフである。 本発明によってもたらされる荷重分散効果を示す模式図である。 従来の免震装置による荷重配分の例を示す模式図である。
符号の説明
2 積載荷重支持部としての走行装置
4 補助輪ユニット
6 転倒防止手段
8 補助荷重支持部
10 物品収納手段
12 台枠
13 通し軸
14 車輪
21 同期回転手段としてのスプロケット
24 補助輪
26 ローラー
28 ローラーガイド
40 レール
43 移動規制手段としてのエンドストッパー
81 ローラー

Claims (7)

  1. 物品あるいは物品収納手段を載置する台枠と、この台枠の底部に回転可能に軸装された車輪と、この車輪がレールに乗ることによって台枠にかかる荷重を支持するとともに上記レール上を転動することにより上記台枠を一方向に移動可能とする積載荷重支持部と、を備え、地震時に上記車輪がレール上を転動することにより台枠に地震エネルギーが伝達されるのを回避することができる免震装置であって、
    上記積載荷重支持部は、台枠の移動方向複数箇所に、また、台枠の移動方向に直交する方向に一定間隔で複数箇所に配置され、
    上記台枠の移動方向複数箇所に、また、台枠移動方向に直交する方向における上記積載荷重支持部の配置間隔の中央部に、ベース材の上を転動するローラーを含む補助荷重支持部が配置され、
    上記台枠にはまた、台枠の移動方向複数箇所に、移動方向一方側の上記車輪がレールから外れたとき床面に接して台枠を支持する補助輪が配置され、
    上記レールおよびベース材は長さが制限されており、
    平常時は積載荷重支持部と補助荷重支持部によって台枠にかかる荷重を支持し、
    地震によって台枠が上記レールおよびベース材方向一方に移動して移動方向前方の積載荷重支持部の車輪と補助荷重支持部のローラーがレールおよびベース材から外れたとき上記移動方向前方の補助輪が床面に接して台枠の荷重を支持し、上記移動方向後方の積載荷重支持部の車輪と補助荷重支持部のローラーはレールおよびベース材上にあって台枠の荷重を支持することを特徴とする免震装置。
  2. 積載荷重支持部の車輪は両側にフランジを有し、この車輪が乗るレールは上記車輪の両側のフランジに挟まれて車輪の両側のフランジ間の円筒面が乗ることができる横断面形状をしている請求項1記載の免震措置。
  3. 補助荷重支持部のローラーは円筒形状で、このローラーが乗るベース材は扁平形状をしている請求項1記載の免震装置。
  4. 積載荷重支持部の車輪と補助荷重支持部のローラーは、玉軸受を介して回転可能に支持されていて、これらの回転抵抗は補助輪の回転抵抗よりも小さい請求項1記載の免震装置。
  5. 台枠の底部に回転可能に支持された転倒防止ローラーと、台枠の移動に伴って転倒防止ローラーを転動させるとともにこの転倒防止ローラーを上下方向に位置規制するローラーガイドを有してなる転倒防止手段を備えている請求項1記載の免震装置。
  6. レールおよびベース材の長さは、台枠の移動方向の長さと同じかまたはそれよりも短い請求項1記載の免震装置。
  7. レールおよびベース材は、ライナーを介して床上に敷設されることによりレベル調整されている請求項1記載の免震装置。
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