JP2008303262A - 炭素繊維強化プラスチック - Google Patents

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洋明 宮田
Takuya Karaki
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Abstract

【課題】低温引張強度、低温引張伸度に優れ、かつ低温での寸法変化量が少ない炭素繊維強化プラスチックを提供する。
【解決手段】一方向に配列された炭素繊維束とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プラスチックにおいて、試料温度−60℃における引張伸度が1.8%以上であり、かつその温度の引張強度が、試料温度25℃における引張強度の95%以上であることを特徴とする炭素繊維強化プラスチック。
【選択図】なし

Description

本発明は、低温引張強度、低温引張伸度に優れ、かつ低温での寸法変化量が少ない炭素繊維強化プラスチックに関する。
強化繊維とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPと略すことがある)は、その優れた力学特性などから、近年、航空機、自動車などの産業用途に幅広く使われている。産業利用用途が増加するに従い、CFRPに対する物性要求はますます幅広く、また同時に厳しくもなってきている。用いられる部材によっては、通常の生活雰囲気をはるかに上回る特殊雰囲気・環境下での力学特性が必要とされている。
とくに、CFRPを航空機の胴体材料に用いる場合、水平飛行時は最大で上空1万メートル以上の高度となり、周囲の外気の圧力は大きく低下するため、相対的な関係で航空機内部の圧力が高くなる。このため、胴体は膨らもうとし、その結果、胴体材料へは大きな引張の力が掛かる。また、その上空における外気温は−60℃前後と、地上に比べて極めて低い。このため、航空機材料としてCFRPを用いる場合、このような低温での引張強度も他の物性同様に重要な特性の一つとなっている。
これまで引張強度に関しては、炭素繊維であれば、高い引張強度を目的とした提案が多く存在し取り上げられてきたが(例えば、特許文献1参照)、低温での引張強度まで考慮にいれた炭素繊維に関しては、必ずしも十分検討されてきたわけではなかった。また、低温領域においては、複合材料特有の問題、すなわち、炭素繊維とマトリックス樹脂の線膨張係数の違いに起因する内部残留応力の問題が特に大きく影響する(例えば、特許文献2参照)。これまでは、室温でのCFRPの引張強度を上げるためには、炭素繊維であれば高伸度を発現するものや(例えば、特許文献3参照)、樹脂であれば低い線膨張係数の樹脂を用いればよいとされてきたが、線膨張係数なども温度範囲により異なり、また、低温における炭素繊維や樹脂の物性も室温とは異なり一様ではない。
以上のように、これまで提案されている技術では、室温雰囲気のCFRPおよび構成する炭素繊維とマトリックス樹脂の各物性の検討は成されてきたが、複合材料として、内部残留応力の影響まで考慮してCFRPの低温引張強度を検討されてきた例はなく、それゆえ、低温雰囲気での高い引張強度を有するCFRPとしては、これまでの技術では必ずしも十分満足できるものではなかった。
特開2002−266173号公報 特開平9−295352号公報 特開平6−173122号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解決すること、すなわち、低温引張強度、低温引張伸度に優れ、かつ低温での寸法変化量が少ない炭素繊維強化プラスチックを提供することを目的とするものである。
本発明は、上記の目的を達するために次の構成を有する。すなわち、
(1)一方向に配列された炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プラスチックにおいて、試料温度−60℃における引張伸度が1.8%以上であり、かつその温度の引張強度が、試料温度25℃における引張強度の95%以上であることを特徴とする炭素繊維強化プラスチック。
(2)繊維長手方向と垂直な断面内において、周囲が炭素繊維に囲まれているマトリックス樹脂の繊維長手方向の試料温度−60℃と25℃の間の寸法変化量が0.1〜20nmの範囲であることを特徴とする前記(1)に記載の炭素繊維強化プラスチック。
(3)構成する炭素繊維の引張伸度が、2.2〜3.0%の範囲であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の炭素繊維強化プラスチック。
(4)構成する炭素繊維の引張弾性率が、250〜500GPaの範囲であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の炭素繊維強化プラスチック。
(5)構成する炭素繊維の繊維長手方向の線膨張係数が、−1.0×10−6〜0/℃の範囲であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の炭素繊維強化プラスチック。
(6)構成するマトリックス樹脂中に、カップリング剤が表面に添加されている無機系フィラーを含むことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の炭素繊維強化プラスチック。
本発明によれば、一方向に配列された炭素繊維とマトリックス樹脂からなる炭素繊維強化プラスチックにおいて、構成する炭素繊維とマトリックス樹脂の低温での物性挙動や物性変動を考慮した、低温引張強度、低温引張伸度に優れ、かつ低温での寸法変化量が少ない炭素繊維強化プラスチックを提供することができる。
本発明による炭素繊維強化プラスチックは、一方向に配列された炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プラスチックにおいて、試料温度−60℃における引張伸度が1.8%以上であり、かつその温度の引張強度が、試料温度25℃における引張強度の95%以上であることを特徴とするものである。さらに試料温度−60℃における引張伸度に関しては、2.2%以上3.0%以下であることがより好ましい。これは、炭素繊維強化プラスチックの引張伸度は、炭素繊維の伸度が大きく寄与するためである。また、引張強度に関しては、試料温度−60℃における引張強度が試料温度25℃における引張強度の95%以上100%以下の範囲であることがより好ましい。これは、低温における引張強度低下が低い炭素繊維強化プラスチックほど、炭素繊維とマトリックス樹脂の複合材料の内部残留応力が小さいことを反映しているためと考えている。
本発明に用いられる炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル系繊維、レーヨン系繊維、ピッチ系繊維、あるいはポリビニルアルコール系繊維等の前駆体繊維を使用することができるが、なかでも、アクリルニトリル重合体あるいはその共重合体から得られる繊維、すなわち、ポリアクリロニトリル系繊維は、高い引張強度を発現する炭素繊維を得ることができるため、炭素繊維前駆体として好ましく用いることができる。
本発明において、その炭素繊維前駆体繊維を焼成した後に表面電解処理を行い、その後サイジング剤を付与した炭素繊維を用いることが好ましい。表面電解処理とは、酸、アルカリなどの電解質の水溶液である電解液中で炭素繊維を陽極とし、陰極との間に直流電流を通じたときに、陽極である炭素繊維側で起こる酸化反応を利用して、炭素繊維表面に官能基を付与する処理である。この表面電解処理を行うことにより、炭素繊維表面に生成する官能基量を増やし、樹脂との接着力に優れた炭素繊維を製造することができる。サイジング剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応物、ポリエチレングリコールとビスフェノールF型エポキシ樹脂との反応物、ポリエチレングリコールジグリジルエーテル、ポリグリセリンのグリシジル化合物、ポリプロピレンのグリシジル化合物、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ビフェニル型エポキシ、ダイマー酸ジグリシジルエステルおよびダイマー酸変性ビスフェノール型エポキシなどが好ましく用いられる。これらは単独でも、複数を同時に用いても良い。また、サイジング剤の付与する量は組み合わせるマトリックス樹脂により異なるが、炭素繊維に対して0.01〜5.00重量%が好ましい。
以上のように得られた、本発明の炭素繊維としては、引張伸度が2.2〜3.0%の範囲にある高伸度であるものが好ましい様態である。また、引張弾性率も250〜500GPaの範囲である高弾性率の炭素繊維がより好ましい様態である。さらに、炭素繊維の繊維長手方向の線膨張係数は、−1.0×10−6〜0/℃の範囲であることが、低温にしたときのCFRPの内部応力を小さくすることができ、より好ましい様態である。
本発明に用いられるマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂など各種の熱硬化性樹脂を使用するのが好ましく、これら2種以上を混合して用いても良い。中でも、成形が容易で物性に優れたエポキシ樹脂が好ましい。
本発明に用いるマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、少なくともエポキシ基含有化合物と硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物であることが肝要である。かかるエポキシ基含有化合物としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく用いられる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシレンジアミンの、グリシジルアニリン、グリシジルo−トルイジンなどのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂等、あるいはこれらの組み合わせが好適に用いられる。
かかるエポキシ樹脂組成物に使用される硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのような芳香族アミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、アジピン酸ヒドラジド等のカルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ポリメルカプタン、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体等あるいはこれらの組み合わせが好適に用いられる。これらの中でも良好な耐熱性および硬化性を与えることから、ジアミノジフェニルスルホンの各構造異性体およびジシアンジアミドを含むことが好ましい。
かかる硬化剤は、エポキシ樹脂組成物における全エポキシ基含有化合物100重量部に対して、1〜70重量部配合することが好ましく、15〜60重量部であることがさらに好ましい。また、ジアミノジフェニルスルホンの各構造異性体およびジシアンジアミドを含む場合は、ジアミノジフェニルスルホンの各構造異性体の配合量は、エポキシ樹脂組成物におけるエポキシ基含有化合物100重量部に対して、15〜70重量部配合するのが、また、ジシアンジアミドはエポキシ樹脂組成物におけるエポキシ基含有化合物100重量部に対して、2〜15重量部配合するのが、良好な耐熱性を与える観点でよい。
また、本発明では、硬化後のマトリックス樹脂において溶解し粒子を形成していない熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂に含んでいても良い。このような熱可塑性樹脂としては特に制限されるものではないが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドおよびポリイミドからなる群から選ばれた1種以上の樹脂が好ましく用いられる。熱可塑性樹脂を混合させるときは、エポキシ樹脂100重量部に対して熱可塑性樹脂をこのましくは1から20重量部混合させることにより、エポキシ樹脂に適度な粘弾性や力学特性を与えることができる。
また、本発明のマトリックス樹脂中には、無機系のフィラーを含むことがより好ましい形態である。無機系フィラーとしては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素から少なくとも1種選ばれることを特徴とするものが用いられる。また、これらの複合化合物であってもよい。マトリックス樹脂中の上記無機系フィラーを含有する目的は、冷却時にマトリックス樹脂の熱収縮の影響を、フィラーがない状態よりも小さくする作用があると考えている。
炭素繊維の単糸径との兼合いから、無機系フィラーの平均粒径(平均粒径:JIS R1629(1997)記載の測定法を用い、その累積分布図で50% の高さを与える直径)は、0.01〜30μmの範囲が好ましい。また、フィラーの含有量は、エポキシ基含有化合物100重量部に対して、2〜10重量部配合するのがより好ましい様態である。また、無機系フィラーの表面に、シラン(ケイ素)系、チタネート(チタン)系、ジルコネート(ジルコニア)系、アルミネート(アルミニウム)系から少なくとも1種類選ばれることを特徴とするカップリング剤を添加することが好ましい。これは、無機系ファラーとマトリックス樹脂の親和性を高めるのに有効であると考えられており、特に、無機物表面の極性や表面自由エネルギーを変える作用があるチタネート系カップリング剤を用いることが好ましく用いられる。カップリング剤の添加量は、無機系フィラーに対して、0.01〜5.00重量%が好ましい。
本発明のCFRPは、前述の炭素繊維と未硬化のマトリックス樹脂とからなるプリプレグを、所定の方法で積層し、その後昇温硬化成形させたものである。プリプレグの作製法は、炭素繊維の長繊維を用いて、その繊維長手方向を一方向に揃え、未硬化のマトリックス樹脂をロールコータなどを用いて離型紙などの表面にフィルム状に塗布し、炭素繊維の長繊維を片側あるいは両側から挟み込み、加熱・加圧して含浸して一方向プリプレグを作成する。この一方向プリプレグを所定枚数積層して硬化させ、CFRPの一方向強化材を得る。ここで長繊維とは、10mm以上の実質的に連続したマルチフィラメントの繊維束をさす。実際の使用上、好ましくは20mm以上、更に好ましくは100mm以上の実質的に連続したマルチフィラメントの繊維束である。
本発明のCFRPにおいては、繊維長手方向と垂直な断面を研磨などで出し、その繊維長手方向の試料温度−60℃と25℃の間の寸法変化率が0.1〜20nmの範囲にあることが好ましい様態である。この寸法変化量がCFRPの低温引張強度に影響を及ぼす原因については完全に判明したわけではないが、炭素繊維に拘束された硬化後のマトリックス樹脂の繊維長手方向の寸法変化量であるため、CFRPの内部残留応力に関係する変化量と推定され、この寄与が影響しているものと推定される。以上の寸法変化量は、非常に微細な変化量であるため、少なくとも1nm以下の精度を持つ形状評価手法の走査型プローブ顕微鏡を用いることが本発明では好ましい。走査型プローブ顕微鏡とは、先端の鋭いカンチレバー(探針)を用いて試料表面をなぞる、または試料表面と一定の間隔を保ってトレースし、その時のカンチレバーの上下方向への変位を計測することで試料表面形状の観察を行う評価法である。
また、本発明では、試料温度−60℃における引張伸度が1.8%以上であり、かつその温度の引張強度が、試料温度25℃における引張強度の95%以上であることが本発明である。これは、上述した−60℃と25℃の寸法変化率、すなわち低温時の内部残留応力に関連する変化量と推定され、それゆえ本発明のCFRPが、高い低温引張強度を有することができるものと考えられる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の測定方法は下記の通りとした。
<炭素繊維の引張伸度と弾性率の測定>
測定する炭素繊維に、ユニオンカーバイド(株)製、ベークライト(登録商標)ERL−4221を1000g(930重量%)、三フッ化ホウ素モノエチルアミン(BF・MEA)を30g(3重量%)及びアセトンを40g(4重量%)混合したエポキシ樹脂組成物を含浸させ、次に130℃で、30分間加熱し、硬化させ、樹脂含浸ストランドとする。JIS R7601(1986)の樹脂含浸ストランド試験法に従い、引張伸度と引張弾性率を求めた。
<炭素繊維の繊維長手方向の線膨張係数の測定(TMA法)>
室温(23℃)の炭素繊維の長さL0とその温度変化量ΔLから、長さの変化率ΔL/L0を定義した。この線膨張率(ΔL/L0)温度曲線に基づき、下記の式により線膨張係数αを求めた。
α=(1/L0)・(dL/dT)
なお、本実施例におけるTMA装置として、島津製作所製の熱機械分析装置TMA−50を使用した。
<走査型プローブ顕微鏡による表面形状変化の測定>
CFRPの繊維長手方向に垂直な断面をだし、その面をアルミナ粉末(平均粒径0.02μm)によるバフ研磨を施し、測定面とした。試料の裏側に導通性の銀ペーストで銅製試料台に固定した。試料表面をメタノールでふき取り、汚染付着物などを落とした。その後、温度可変型の走査型プローブ顕微鏡(AFM装置)に導入し、周囲が炭素繊維円形断面に囲まれているマトリックス樹脂のみの領域で、かつ20μm以下の領域の箇所を見つけ出した。その領域の25℃と−60℃の各試料温度におけるAFM像を取得する。本実施例では、エスアイアイ・ナノテクノロジー製のE−sweep/SPI4000のAFM装置システムを用いた。測定条件と解析法に関しては下記のとおりである。
(1)測定条件
(a) 測定エリア:20μm□
(b) 測定モード:DFMモード
(c) スキャナー:150μmピエゾ
(d) 測定真空度:10−4〜10−5Pa
(2)解析方法
(a) 繊維長手方向の高低差を計測する基準となる1つの炭素繊維を決め、その1つの炭 素繊維平面状で1次補正を行う。
(b) ドリフトなどによる影響を受けないため、探針プローブのスキャン軸方向に水平なプロファイルを引き、マトリックス樹脂と炭素繊維の最大高低差を計測(試料温度25℃と−60℃の二点)する。
(c) 同様の計測を3回繰り返し、その平均の値を用いて、試料温度25℃と−60℃の寸法変化量とした。
<CFRPの引張強度と引張伸度の測定>
炭素繊維の繊維長手方向が一方向に揃えるように成形された、厚さ1mmのCFRP一方向強化材を、幅12.7mm、長さ230mmでカットし、両端に1.2mm、長さ50mmのガラス繊維強化プラスチック製のタブを接着し試験片を得た。この試験片をインストロン万能試験機と、試料温度を−60℃と25℃に制御する(試料温度は熱電対でモニタする)ため恒温槽を用いて、クロスヘッドスピード1.0mm/分でCFRP引張試験を行った。(5回の測定の平均値を引張強度と引張伸度の測定値とした。上述以外の条件は、JIS K7113(1995)記載の方法に従った。)その後、試料のVf(Vf:繊維体積分率)を求めた後、得られた引張強度の測定値をVf60%に換算を行った。なお、本実施例においては、試験機としてインストロン(登録商標)試験機4208型を用いた。
<Vfの測定>
引張強度測定用の試料の密度をJIS K7112(1999)に記載の水中置換法を用いて求めた。次にJIS K7075(1991)に記載の燃焼法に基づいて、ブンゼンバーナー(ガスバーナー)を用いてCFRPの樹脂を焼き飛ばし、繊維質量含有率を求めた。その繊維質量含有率と、事前に測定を行ったCFRP試料の密度と、CFRP試料に用いられている炭素繊維の密度から、試料のVfを測定した。
(実施例1)
アクリロニトリル99.5モル%、イタコン酸0.5モル%からなる、アクリロニトリル共重合体を用いて乾湿式紡糸法により単繊維繊度0.8dtex、単繊維数が24,000本のアクリル系前駆体繊維を得た。この前駆体繊維には、アミノ変性シリコーンからなるシリコーン系油剤を、炭素繊維の重量100重量%に対して1.1重量%付与した。なお、本油剤付着量は、特開2000−146776に規定された方法において規定される測定法で確認した。このようにして得られた前駆体繊維束を、220〜260℃の空気雰囲気中で加熱して耐炎化繊維束とした。次に、窒素雰囲気中、300℃以上800℃以下の温度領域で前炭化処理し、さらに、窒素雰囲気中、1400℃の最高温度で炭化処理をおこなった。この後、電気伝導度が18ms、pHが4.0に調製された硫酸水溶液にローラー(塩化ビニール製、外径100mm、溝なしフラットロール)を介しながら4秒間浸漬させた後、20クーロン/gの電気量で表面電解処理を施した。この後、水洗工程を経て150℃に温調された乾燥機で水分を蒸発させ、サイジング工程においてエポキシ樹脂を主成分とするサイジング剤を、炭素繊維に0.5重量%付与し、さらに200℃に温調された乾燥機でサイジング剤を乾燥させ、引張伸度が2.8%、引張弾性率が450GPa、線膨張係数が−0.9×10−6/℃の炭素繊維の一方向に配列された炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の単繊維繊度は0.5dtexであった。この炭素繊維束に、トリグリシジルp−アミノフェノールとビフェニル型エポキシ樹脂、末端官能基がアミノ基のポリエーテルスホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを50/50/50/35の重量比率で配合した樹脂と、平均粒径0.1μmのシリカフィラー(酸化ケイ素)粒子表面にチタネートカップリング剤を1.00重量%添加したものを組み合わせマトリックス樹脂として、CFRP一方向強化材を得た。このCFRPを用いて、先に記したAFM装置により試料温度−60℃と25℃の繊維長手方向の寸法変化量を測定したところ、5.6nmであった。また、CFRPの試料温度−60℃と25℃における引張試験を行ったところ、Vf60%換算値の引張強度は4100MPaと4150MPaであり、また、試料温度−60℃における引張伸度は2.3%であった。
(実施例2)
耐炎化の温度を240〜280℃、炭化処理の最高温度を1380℃にした以外は、実施例1と同様の方法で、引張伸度が2.4%、引張弾性率が380GPa、線膨張係数が−0.8×10−6/℃の炭素繊維の一方向に配列された炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の単繊維繊度は0.4dtexであった。この炭素繊維束に、実施例1と同様のマトリックス樹脂と組み合わせて、CFRP一方向強化材を得た。このCFRPを用いて、試料温度−60℃と25℃の寸法変化量を測定したところ、8.4nmであった。また、CFRPの試料温度−60℃と25℃における引張試験を行ったところ、Vf60%換算値の引張強度は3950MPaと4020MPaであり、また、試料温度−60℃における引張伸度は2.1%であった。
(実施例3)
耐炎化の温度を260〜300℃、炭化処理の最高温度を1350℃にした以外は、実施例1と同様の方法で、引張伸度が2.2%、引張弾性率が350GPa、線膨張係数が−0.78×10−6/℃の炭素繊維の一方向に配列された炭素繊維束を得た。この炭素繊維束の単繊維繊度は0.5dtexであった。この炭素繊維束に、実施例1と同様のマトリックス樹脂と組み合わせて、CFRP一方向強化材を得た。このCFRPを用いて、試料温度−60℃と25℃の寸法変化量を測定したところ、10.5nmであった。また、CFRPの試料温度−60℃と25℃における引張試験を行ったところ、Vf60%換算値の引張強度は3700MPaと3820MPaであり、また、試料温度−60℃における引張伸度は2.0%であった。
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、引張伸度が2.8%、引張弾性率が450GPa、線膨張係数が−0.9×10−6/℃の炭素繊維の一方向に配列された炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に、実施例1と同様のマトリックス樹脂と組み合わせて、CFRP一方向強化材を得た。このCFRPを用いて、試料温度−60℃と25℃の寸法変化量を測定したところ、12.6nmであった。また、CFRPの試料温度−60℃と25℃における引張試験を行ったところ、Vf60%換算値の引張強度は3630MPaと3780MPaであり、また、試料温度−60℃における引張伸度は1.9%であった。
(実施例5)
実施例3と同様の方法で、引張伸度が2.2%、引張弾性率が350GPa、線膨張係数が−0.78×10−6/℃の炭素繊維の一方向に配列された炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に、実施例1と同様のマトリックス樹脂と組み合わせて、CFRP一方向強化材を得た。このCFRPを用いて、試料温度−60℃と25℃の寸法変化量を測定したところ、18.5nmであった。また、CFRPの試料温度−60℃と25℃における引張試験を行ったところ、Vf60%換算値の引張強度は3470MPaと3650MPaであり、また、試料温度−60℃における引張伸度は1.8%であった。
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、引張伸度が2.8%、引張弾性率が450GPa、線膨張係数が−0.9×10−6/℃の炭素繊維の一方向に配列された炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に、トリグリシジルp−アミノフェノールとビフェニル型エポキシ樹脂、末端官能基がアミノ基のポリエーテルスホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを50/50/50/35の重量比率で配合したものをマトリックス樹脂として(無機系フィラーはなし)、CFRP一方向強化材を得た。このCFRPを用いて、試料温度−60℃と25℃の寸法変化量を測定したところ、21.5nmであった。また、CFRPの試料温度−60℃と25℃における引張試験を行ったところ、Vf60%換算値の引張強度は3200MPaと3850MPaであり、また、試料温度−60℃における引張伸度は1.8%であった。このCFRPの低温における引張強度と伸度は、実施例1〜5と比べると低い結果であった。
(比較例2)
実施例2と同様の方法で、引張伸度が2.4%、引張弾性率が380GPa、線膨張係数が−0.8×10−6/℃の炭素繊維の一方向に配列された炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に、比較例1と同様のマトリックス樹脂と組み合わせて、CFRP一方向強化材を得た。このCFRPを用いて、試料温度−60℃と25℃の寸法変化量を測定したところ、25.4nmであった。また、CFRPの試料温度−60℃と25℃における引張試験を行ったところ、Vf60%換算値の引張強度は3150MPaと3680MPaであり、また、試料温度−60℃における引張伸度は1.2%であった。このCFRPの低温における引張強度と伸度は、実施例1〜5と比べると低い結果であった。
(比較例3)
実施例3と同様の方法で、引張伸度が2.2%、引張弾性率が350GPa、線膨張係数が−0.78×10−6/℃の炭素繊維の一方向に配列された炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に、比較例1と同様のマトリックス樹脂と組み合わせて、CFRP一方向強化材を得た。このCFRPを用いて、試料温度−60℃と25℃の寸法変化量を測定したところ、31.5nmであった。また、CFRPの試料温度−60℃と25℃における引張試験を行ったところ、Vf60%換算値の引張強度は3030MPaと3500MPaであり、また、試料温度−60℃における引張伸度は0.9%であった。このCFRPの低温における引張強度と伸度は、実施例1〜5と比べると低い結果であった。
Figure 2008303262

Claims (6)

  1. 一方向に配列された炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる炭素繊維強化プラスチックにおいて、試料温度−60℃における引張伸度が1.8%以上であり、かつその温度の引張強度が、試料温度25℃における引張強度の95%以上であることを特徴とする炭素繊維強化プラスチック。
  2. 繊維長手方向と垂直な断面内において、周囲が炭素繊維に囲まれているマトリックス樹脂の繊維長手方向の試料温度−60℃と25℃の間の寸法変化量が0.1〜20nmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化プラスチック。
  3. 構成する炭素繊維の引張伸度が、2.2〜3.0%の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭素繊維強化プラスチック。
  4. 構成する炭素繊維の引張弾性率が、250〜500GPaの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維強化プラスチック。
  5. 構成する炭素繊維の繊維長手方向の線膨張係数が、−1.0×10−6〜0/℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維強化プラスチック。
  6. 構成するマトリックス樹脂中に、カップリング剤が表面に添加されている無機系フィラーを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維強化プラスチック。
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