JP2007176983A - マスターバッチおよび熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】カーボンナノファイバーが均一分散された熱硬化性樹脂組成物をもたらすマスターバッチおよびその製造方法を提供し、軽量で、かつ良好な力学物性を示す繊維強化複合材料を得ること。
【解決手段】樹脂成分を総量で60〜95重量%含むとともに、カーボンナノファイバーを5〜40重量%含むマスターバッチであって、重量平均分子量が600〜10000である熱硬化性樹脂を樹脂成分中に30〜100重量%の範囲で含むマスターバッチ。
【選択図】なし

Description

本発明は、各種力学物性に優れた繊維強化複合材料を得るためのカーボンナノファイバーの分散性に優れたマスターバッチおよび熱硬化性樹脂組成物に関する。
強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、その力学物性が優れているため、スポーツレジャー用途をはじめ、航空宇宙用途、一般産業用途などに広く用いられている。かかる用途において、マトリックス樹脂としては、耐熱性、力学特性、成形性のバランスに優れる熱硬化性樹脂組成物が主に用いられ、特にエポキシ樹脂組成物が好ましく用いられる。そして、そのような熱硬化性樹脂組成物には、その機能をより向上させるために、各種のフィラーが加えられることがある。
各種フィラーの中でも、特に、カーボンナノファイバーは、樹脂に高弾性、高強度をもたらすフィラーとして近年注目されているが、カーボンナノファイバーは通常大部分が凝集物として存在しているため、樹脂に分散させた際に、粗大な凝集物が混入しやすく、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂である熱硬化性樹脂組成物に適用した場合、かかる凝集物がボイドや欠陥を生じさせ力学特性向上に寄与しないことが多かった。一般に、カーボンナノファイバーのようなフィラーを含む熱硬化性樹脂組成物を製造する場合、フィラーの分散性を向上する観点から、製造しようとする熱硬化性樹脂組成物中の一部の樹脂成分とフィラーとの混合物であるマスターバッチを一旦作製し、そのマスターバッチを熱硬化性樹脂と混合するという手法が採られることが多いが、樹脂成分として熱硬化性樹脂を用いてカーボンナノファイバーをマスターバッチとし、そのマスターバッチを熱硬化性樹脂と混合しても、得られる熱硬化性樹脂組成物においてカーボンナノファイバーの凝集物の混入は避けられなかった。
これに対し、多軸押出機等での混練により、カーボンナノファイバーの良好な分散が得られている例がある(特許文献1、2参照)。しかし、これら文献で開示される技術は、種々の熱可塑性樹脂に対しては有効であるものの、熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂に対しては十分な分散性が得られなかったのが実状である。なお、熱硬化性樹脂に可溶な熱可塑性樹脂を樹脂成分として用いてマスターバッチとし、これを熱硬化性樹脂に混練することで分散させる手法も考えられるが、繊維強化複合材料で用いられる熱硬化性樹脂組成物の場合には、そこに添加できる熱可塑性樹脂の融点が高く、マスターバッチを熱硬化性樹脂に混練して希釈する際に、熱硬化性樹脂をたとえば200〜300℃という高温に設定する必要がある。カーボンナノファイバーのマスターバッチを、比較的低温で熱硬化性樹脂と混練する場合には、カーボンナノファイバーが十分に分散した熱硬化性樹脂組成物が得られるものの、200〜300℃という高温の熱硬化性樹脂と混練すると、得られる熱硬化性樹脂組成物において何故かカーボンナノファイバーが分散せずに凝集物が存在するという問題があった。また、かかる高温で混練する場合には、近年開発が進んでいる、官能基を導入した表面修飾カーボンナノチューブに適用した場合に、官能基が脱離し、ボイドの発生や接着性の悪化といった問題を生じることがあった。
特表平8−508534号公報 特開2003−12939号公報
本発明は、カーボンナノファイバーが均一分散された熱硬化性樹脂組成物をもたらすマスターバッチおよびその製造方法を提供し、軽量で、かつ良好な力学物性を示す繊維強化複合材料を得ることを目的とする。
本発明のマスターバッチは、上記目的を達成するため、次の構成を有する。すなわち、樹脂成分を総量で60〜95重量%含むとともに、カーボンナノファイバーを5〜40重量%含むマスターバッチであって、重量平均分子量が600〜10000である熱硬化性樹脂を樹脂成分中に30〜100重量%の範囲で含むマスターバッチである。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記目的を達成するため、次の構成を有する。すなわち、前記マスターバッチを10〜90重量%含有してなる熱硬化性樹脂組成物である。
さらに、本発明のマスターバッチの製造方法は、上記目的を達成するため、次の構成を有する。すなわち、重量平均分子量が600〜10000である熱硬化性樹脂を30〜100重量%の範囲で含む樹脂成分を、その粘度が10〜10Pa・sとなる温度に設定し、剪断速度10〜10000s−1の範囲内でカーボンナノファイバーと混練することを特徴とするマスターバッチの製造方法である。
本発明によれば、カーボンナノファイバーが均一分散された熱硬化性樹脂組成物を得ることができ、ひいては、軽量で、かつ良好な力学特性を示す繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明者らは、カーボンナノファイバーのマスターバッチを、高温の熱硬化性樹脂と混練して得られる熱硬化性樹脂組成物において、カーボンナノファイバーの凝集物が存在する原因について鋭意検討した結果、カーボンナノファイバーはマスターバッチにおいては十分に分散しているが、粘度の低い熱硬化性樹脂の中で、再凝集していることを突きとめ、かかる再凝集を阻止すべく、さらに検討を進めた結果、本発明に到達したものである。
本発明のマスターバッチは、樹脂成分を総量で60〜95重量%、好ましくは70重量%〜93重量%、より好ましくは75重量%〜90重量%含むとともに、カーボンナノファイバーを5重量%〜40重量%、好ましくは7重量%〜30重量%、より好ましくは10重量%〜25重量%の範囲内で含む。ここで、樹脂成分とは、マスターバッチに含まれる熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の全ての樹脂成分をいう。マスターバッチ中のカーボンナノファイバーの含有量が少なすぎる場合には、所望の力学特性付与効果が得られない一方、かかる含有量が多すぎる場合には、流動性が極端に低下し、熱硬化性樹脂との混練が困難なマスターバッチとなる。
ここで、本発明では、樹脂成分のうちに、その総量に対して、重量平均分子量が600〜10000である熱硬化性樹脂を30〜100重量%、好ましくは30〜70重量%含んでいる必要がある。重量平均分子量があまりに小さい熱硬化性樹脂が多すぎたり、前記した特定の重量平均分子量を有する熱硬化性樹脂の含有量が少なすぎる場合には、ポリマー分子鎖の絡み合いが少ないため、カーボンナノファイバーに十分な剪断力を付与できず分散が不十分となる。一方、重量平均分子量があまりに大きい熱硬化性樹脂が多すぎる場合、ポリマーの流動性が小さく、凝集物内部へ浸透しないため、分散が困難となる。なお、熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等で測定することができる。
重量平均分子量が600〜10000である熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではなく、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などで、重量平均分子量が600〜10000であれば用いることができるが、中でも、耐熱性、力学特性、および接着性のバランスに優れるエポキシ樹脂の中から選択するのが好ましい。かかるエポキシ樹脂としては、“エピコート”1001、“エピコート”1002、“エピコート”1003、“エピコート”1004、“エピコート”1007、“エピコート”1009、“エピコート”1010、“エポトート”YD−011、“エポトート”YD−014、“エポトート”YD−017、“エポトート”YD−019といったビスフェノールA型エポキシ、“エピコート”E4002P、“エピコート”E4003P、“エピコート”E4004P、“エピコート”E4007P、“エピコート”E4009P、“エピコート”E4010P、“エポトート”YDF−2001、“エポトート”YDF−2004といったビスフェノールF型エポキシ、“エピクロン”N−770、“エピクロン”N−775といったフェノールノボラック型エポキシ、“エピクロン”EXA−1514といったビスフェノールS型エポキシ、“エピコート”5050、“エピクロン”152といった臭素化ビスフェノールA型エポキシ、NC3000、NC3000Hといったビフェニル骨格含有エポキシ、NC7000、NC7300といったナフタレン骨格含有エポキシ、HP7200、HP7200H、HP7200HHといったジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ、“アラルダイト”AER4152、XAC4151といったオキサゾリドン環含有エポキシなどが挙げられる。なお、ここで、“エピコート”、“エポトート”、“エピクロン”および“アラルダイト”は登録商標である。
本発明のマスターバッチは、樹脂成分の軟化点を80℃上回る温度でのカッソン粘度が1〜1000Pa・s、かつカッソン降伏値が1〜1000Paであることが好ましい。カッソン粘度が小さすぎる場合は、熱硬化性樹脂の架橋密度が高くなる傾向があり、マトリックス樹脂の伸度特性を大きく低下させることがある。一方、カッソン粘度が大きすぎる場合は、剪断工程での温度を高く設定する必要があり、カーボンナノファイバーや樹脂に変性を生じ、所望の力学特性付与効果が得られないことがある。また、カッソン降伏値が小さすぎる場合は、カーボンナノファイバーの分散が不十分であり、所望の力学特性付与効果が得られないことがあり、カッソン降伏値が大きすぎる場合は、マスターバッチのベース樹脂への分散が困難となり、安定した特性を得にくいことがある。
なお、ここにいうカッソン粘度とカッソン降伏値とは、ニュートン流体の中に固体粒子を分散させた懸濁液のレオロジー特性を理論的に扱う式として著名な、カッソン(英語表記:Casson)方程式(式1)中で使用される特性値である。
τ0.5=τy0.5+η∞0.5・γ0.5・・・・・・(式1)
ここで、τ:剪断応力(Pa)、γ:剪断速度(s−1)、η∞:カッソン粘度(Pa・s)、τy:カッソン降伏値(Pa)である。
より詳しく説明すれば、カッソン粘度とは、剪断速度が無限大になるときの粘度を外挿法により求めた値を意味し、カッソン降伏値とは、樹脂の流動を開始させるために必要な最小の剪断応力を意味する。通常行われるパラレルプレートを用いた単一歪み量条件下での複素粘性率評価は、カーボンナノファイバーの分散状態や、マスターバッチとしての取扱い性を必ずしも反映しないものであったが、カッソン粘度およびカッソン降伏値で制御することで、カーボンナノファイバーの分散状態や、マスターバッチとしての取扱い性を適正な範囲に収めることができる。
本発明において、重量平均分子量が600〜10000である熱硬化性樹脂としては、軟化点60〜150℃のエポキシ樹脂であることが好ましい。軟化点が低すぎると、ポリマーの粘性が不足するため、カーボンナノファイバーに十分な剪断力を付与できず分散が不十分となる一方、軟化点が高すぎると、ポリマーの流動性が小さく、凝集物内部へ浸透しないため、分散が困難となる。
市販のエポキシ樹脂の中で、軟化点60〜150℃の範囲内にあるものとしては、次のものが挙げられる。“エピコート”1001、“エピコート”1002、“エピコート”1003、“エピコート”1004、“エピコート”1007、“エピコート”1009、“エピコート”1010、“エポトート”YD−011、“エポトート”YD−014、“エポトート”YD−017、“エポトート”YD−019、“エピコート”E4002P、“エピコート”E4003P、“エピコート”E4004P、“エピコート”E4007P、“エピコート”E4009P、“エピコート”E4010P、“エポトート”YDF−2001、“エポトート”YDF−2004、“エピクロン”N−770、“エピクロン”N−775、“エピクロン”EXA−1514、“エピコート”5050、“エピクロン”152、NC3000H、NC7000、NC7300、HP7200、HP7200H、HP7200HH、“アラルダイト”AER4152、XAC4151などである。
本発明において、マスターバッチに用いる樹脂成分は、その軟化点が0〜80℃の範囲内にあることが好ましい。軟化点が低すぎると、粘性が不足した樹脂成分となり、カーボンナノファイバーに十分な剪断力を付与できず分散が不十分となることがあり、軟化点が高すぎると、流動性が小さい樹脂成分となり、凝集物内部へ浸透しないため、分散が困難となることがある。なお、かかる軟化点は、JIS K 7234に従い測定することができる。
本発明において、カーボンナノファイバーとは、一般的なカーボンナノチューブ(CNT)や気相法炭素繊維(VGCF)を含むものである。これらは、グラファイトの1枚面(グラフェンあるいはグラフェンシート)が筒状に積層された化学構造が主体となったものである方が、高い強度と弾性率を得られることから好ましい。グラファイトの積層構造は高分解能透過型電子顕微鏡で調べることができる。グラファイトの層は、透過型顕微鏡でまっすぐにはっきりと見えるほど好ましいが、グラファイト層が乱れていても構わない。カーボンナノファイバーは一般に、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱CVD法、プラズマCVD法などにより製造することができるが、どのような方法で製造したカーボンナノファイバーでも構わない。これらカーボンナノファイバーの形態は、針状、コイル状、チューブ状の形態など任意の形態をとることが出来る。また、これらを2種類以上混合したものでも良い。
本発明のマスターバッチにおいて、カーボンナノファイバーは、その最大凝集サイズが10μm以下、好ましくは5μm以下となっていることが好ましい。それによって、硬化物中の応力分布ムラや強化繊維のアラインメント乱れの発生が抑えられ、力学特性に優れた繊維強化複合材料が得られる。なお、本発明において、カーボンナノファイバーの最大凝集サイズとは、カーボンナノファイバーの凝集サイズのうち、後述する方法で特定される最大のものを意味し、カーボンナノファイバーの凝集サイズとは、カーボンナノファイバが形成する凝集物の最小外接円の直径を意味する。かかる凝集物とは、カーボンナノファイバーが寄り集まったものであり、元々の配合割合に対して局所的にカーボンナノファイバーの存在量が大きくなった領域である。図1に、本発明において、マスターバッチにおける凝集サイズを測定する際の顕微鏡像のイメージ図を示す。
また、本発明において、カーボンナノファイバーは、その平均繊維直径が好ましくは3nm〜300nm、より好ましくは3nm〜100nm、さらに好ましくは3nm〜50nmの範囲内で、その平均繊維長が好ましくは0.01μm〜100μm、より好ましくは0.03μm〜50μm、さらに好ましくは0.05μm〜20μmの範囲内でマスターバッチ中に存在する。平均繊維直径が小さすぎたり、平均繊維長が大きすぎるカーボンナノファイバーは樹脂中に均一に分散させることが困難であることがあり、一方、平均繊維直径が大きすぎたり、平均繊維長が小さすぎるカーボンナノファイバーは、特に所望の力学特性付与効果を得ることが出来ないことがある。なお、ここでいう平均繊維直径は、高分解能透過型電子顕微鏡観察などの方法により求めることができる。具体的には、熱硬化性樹脂組成物中あるいはプリプレグ中に含まれるカーボンナノファイバーの平均繊維直径は、熱硬化性樹脂組成物あるいはプリプレグを加熱硬化させた後、樹脂硬化物あるいは繊維強化複合材料を薄切片に加工した後、高分解能透過型電子顕微鏡などで観察する方法により求めることができる。
また、ここでいう平均繊維長は、例えば、適当な溶媒によりマトリックス樹脂を溶かし出し、濾過などで取り出したカーボンナノファイバーを走査型電子顕微鏡観察することで求めることができる。
また、本発明で用いるカーボンナノファイバーは、表面処理を施されたものであることが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂との親和性が向上し、成形体の強度、弾性率の向上が期待できる。かかる表面処理の方法は特に限定されないが、例えば、カーボンナノファイバー表面にポリビニルピロリドンなどの極性ポリマーやポリ(アリールエチニレン)などの共役ポリマーを非共有結合的に付着させる方法、硝酸、過マンガン酸などの酸化剤と反応させ酸化させる方法、フッ素ガスにより表面をフッ素化する方法、さらに導入された官能基を、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、スルホキシル基等、あるいはそれらから誘導された活性な官能基を有する化合物で処理する方法などが挙げられる。
さらに、本発明で用いるカーボンナノファイバーは、元素分析による酸素原子と炭素原子の原子数比(O/C)が0.01〜0.20、好ましくは0.01〜0.15、より好ましくは0.02〜0.12の範囲内にあることが望ましい。かかるO/Cが小さすぎると、硬化の際に構成カーボンナノファイバーが再凝集し、その凝集サイズが大きくなる傾向にあり、それによって繊維強化複合材料の力学特性が低下する傾向がある一方で、大きすぎると、カーボンナノファイバー自体の強度が低下する傾向にあり、繊維強化複合材料の力学特性が低下する場合がある。なお、カーボンナノファイバーのO/Cは、元素分析装置を用いて求めることができる。
本発明においては、本発明の効果を奏する限り、樹脂成分に、前記した特定の重量平均分子量を有する熱硬化性樹脂以外に、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エラストマーなどを含めることもできるが、特に推奨される態様は、樹脂成分中に占める熱硬化性樹脂の割合が、90〜100重量%、好ましくは95〜100重量%、特に好ましくは樹脂成分の全てを熱硬化性樹脂で占めるようにすることである。また、本発明の効果を奏する限り、マスターバッチに、樹脂成分やカーボンナノファイバー以外に後述するような硬化剤や、各種充填剤を含めてもよい。
このようなマスターバッチは、重量平均分子量が800〜10000である熱硬化性樹脂を30〜100重量%の範囲で含む樹脂成分を、その粘度が10〜10Pa・s、好ましくは5x10〜2x10Pa・s、より好ましくは10〜10Pa・sとなる温度に設定し、剪断速度10〜10000s−1、好ましくは50〜2000s−1、より好ましくは100〜1000s−1の範囲内でカーボンナノファイバーと混練することで製造できる。樹脂成分の粘度が低すぎる場合や、剪断速度が小さすぎる場合には、カーボンナノファイバー凝集物に付与される剪断力が小さくなり、分散が不十分となる一方、樹脂成分の粘度が大きすぎる場合や、剪断速度が大きすぎる場合には、カーボンナノファイバー凝集物に付与される剪断力が大きすぎるため、カーボンナノファイバーが切断され、前記した本発明のマスターバッチが得られなくなることがある。かかる粘度は、後述する通り、動的粘弾性測定装置を用いた昇温測定により得られるものであり、また、剪断速度は、混練に用いる装置のクリアランスと変位速度から算出されるものである。混練に用いる装置が3本ロールである場合を例に挙げると、隣り合うロールの周速の差が10mm/s、ロールクリアランスが100μmであった場合、剪断速度は100s−1となる。
かかる混練工程で混練中の樹脂成分の温度は0〜200℃、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜80℃の範囲内であることが望ましい。かかる温度が低すぎる場合には、装置への結露の問題が発生しやすく、大がかりな工程となる場合がある一方で、高すぎる場合には、カーボンナノファイバーや樹脂成分に変性を生じ、所望の力学特性付与効果が得られない場合がある。かかる混練工程で用いられる装置としては、多軸押出混練機等の押出混練機、3本ロール等のオープンロール、ニーダー、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ディゾルバー、ボールミル、ビーズミル等を用いることが好ましく、中でも多軸押出混練機または3本ロールが好適に用いることができる。
本発明において、マスターバッチを熱硬化性樹脂に配合し、前記したマスターバッチを10〜90重量%、好ましくは20重量%〜80重量%、より好ましくは30重量%〜80重量%含有した熱硬化性樹脂組成物を調整する。マスターバッチの含有量が少ない場合には、熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物において所望の力学特性付与効果が得られないし、一方、多すぎると、混練が困難となりカーボンナノファイバーの分散性が低下する。
本発明において、熱硬化性樹脂組成物には、通常、熱硬化性樹脂の硬化剤が含まれるが、その硬化剤は、熱硬化性樹脂組成物の調製工程でマスターバッチと共に投入するのが一般的であるが、マスターバッチに予め含まれていても構わない。かかる硬化剤は、熱硬化性樹脂との共存下で硬化反応をもたらすものであり、一般的な硬化剤のみならず、開始剤、触媒、硬化促進剤、硬化助剤、およびこれらの組み合わせを含むものである。具体的には、硬化剤として、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミンのような活性水素を有する芳香族アミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ポリエチレンイミンのダイマー酸エステルのような活性水素を有する脂肪族アミン、これらの活性水素を有するアミンにエポキシ化合物、アクリロニトリル、フェノールとホルムアルデヒド、チオ尿素などの化合物を反応させて得られる変性アミン、ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールや1−置換イミダゾールのような活性水素を持たない第三アミン、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物のようなカルボン酸無水物、アジピン酸ヒドラジドやナフタレンジカルボン酸ヒドラジドのようなポリカルボン酸ヒドラジド、ノボラック樹脂などのポリフェノール化合物、チオグリコール酸とポリオールのエステルのようなポリメルカプタン、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体、芳香族スルホニウム塩などがあげられる。
これらの硬化剤には、硬化活性を高めるために適宜硬化助剤を組合わせることができる。好ましい例としては、ジシアンジアミドに、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンのような尿素誘導体を硬化助剤として組合わせる例、カルボン酸無水物やノボラック樹脂に第三アミンを硬化助剤として組合わせる例などがあげられる。硬化助剤として使用される化合物は、単独でもエポキシ樹脂を硬化させる能力を持つものが好ましい。
本発明において、熱硬化性樹脂組成物に熱可塑性樹脂やエラストマーを含有させる場合には、それを熱硬化性樹脂組成物の調製工程でマスターバッチと共に投入するのが一般的であるが、マスターバッチに予め含まれていても構わない。
本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂に可溶なものが好ましい。またエポキシ樹脂に不溶のものであっても、粉砕し、微粒子化したものは好ましく、配合することができる。具体的にはポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアラミド、ポリアリレーンオキシド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリベンズイミダゾール、ポリメタクリル酸メチル等が用いられる。
また、中でもエポキシ樹脂との相溶性、コンポジット物性への悪影響を及ぼさない等の理由から、分子内に水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。水素結合性官能基としては、アルコール性水酸基、アミド結合、スルホニル基などを挙げることができる。アルコール性水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂、アミド結合を有する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、スルホニル基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリスルホンを挙げることができる。ポリアミド、ポリイミドおよびポリスルホンは主鎖にエーテル結合、カルボニル基などの官能基を有してもよい。ポリアミドは、アミド基の窒素原子に置換基を有してもよい。
エポキシ樹脂可溶で、水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂の市販品を例示すると、ポリビニルアセタール樹脂として、“デンカブチラール(登録商標)”および“デンカホルマール(登録商標)”(電気化学工業(株)製)、“ビニレック(登録商標)”(チッソ(株)製)、フェノキシ樹脂として、“UCAR(登録商標)”PKHP(ユニオンカーバイド社製)、ポリアミド樹脂として“マクロメルト(登録商標)”(ヘンケル白水(株)製)、“アミラン(登録商標)”CM4000(東レ株式会社製)、ポリイミドとして“ウルテム(登録商標)”(ジェネラル・エレクトリック社製)、“Matrimid(登録商標)”5218(チバ社製)、ポリスルホンとして“Victrex(登録商標)”(三井東圧化学(株)製)、“UDEL(登録商標)”(ユニオン・カーバイド社製)、ポリメタクリル酸メチルとして“マツモトマイクロスフェアー(登録商標)”M(松本油脂製薬(株)製)などを挙げることができる。
本発明に用いるエラストマーとしては、液状ゴム、固形ゴム、熱可塑性エラストマー、コアシェルゴム粒子、架橋ゴム粒子などをいずれも好適に使用できる。また、エラストマー変性エポキシなど、エラストマーを原料とする成分も含まれるものである。
本発明で得られる熱硬化性樹脂組成物は、80℃でのカッソン粘度が0.1〜100Pa・s、かつカッソン降伏値が1〜1000Paであることが好ましい。かかるカッソン粘度が低すぎる場合には、熱硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸させた中間材料(プリプレグ)とした際に、裂けを生じる等、その形態を保持しにくく、積層作業に支障をきたすことがある一方、カッソン粘度が大きすぎる場合には、プリプレグのタック性、またはドレープ性が不足し、積層作業に支障をきたすことがある。また、ここでのカッソン降伏値が小さすぎる場合には、カーボンナノファイバーの分散が不十分であり、所望の力学特性付与効果が得られないことがある一方、カッソン降伏値が大きすぎる場合には、成形過程での熱硬化性樹脂組成物の流動性が不足し、成型物にボイドを生じることがある。
本発明のマスターバッチを用いることにより、カーボンナノファイバーの最大凝集サイズが10μm以下、好ましくは5μm以下となっている熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。かかる熱硬化性樹脂組成物によって、硬化物中の応力分布ムラや強化繊維のアラインメント乱れの発生が抑えられ、力学特性に優れた繊維強化複合材料が得られる。なお、熱硬化性樹脂組成物中のカーボンナノファイバーの最大凝集サイズは、マスターバッチと同様の方法にて評価することができる。
本発明で得られる熱硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸することにより、繊維強化複合材料の中間基材としてのプリプレグを製造することができる。強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが好ましく用いられる。これらの繊維を2種以上混合して用いても構わないが、より軽量で、より耐久性の高い成形品を得るために、炭素繊維がより好ましく用いられる。また強化繊維の形態や配列については限定されず、例えば、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物(クロス)、マット、ニット、組み紐などが用いられる。
プリプレグは、マトリックス樹脂となる熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解して低粘度化し、含浸させるウエット法と、加熱により低粘度化し、含浸させるホットメルト法(ドライ法)などの方法により製造することができる。ホットメルト法は、強化繊維と熱硬化性樹脂組成物を離型紙などの上にコーティングしたフィルムを両側あるいは片側から重ね、加熱加圧することにより樹脂を含浸させプリプレグを作製する方法である。
このようにして得られたプリプレグを裁断したパターンを積層後、積層物に圧力を付与しながら樹脂を加熱硬化させることにより繊維強化複合材料が作製される。圧力を付与する方法は、プレス成形とオートクレーブ成形が代表的な方法で、その他にもシートワインディング成形、内圧成形などがあり、いずれの方法も利用できる。
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物と強化繊維により、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法などの成形法によっても繊維強化複合材料を作製することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。まず、本実施例で用いた各種材料を次に示す。
[熱硬化性樹脂]
・“エピコート”828(ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、液状)
・“エピコート”1001(ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、軟化点:64℃)
・“エピコート”1007(ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、軟化点:128℃)
[硬化剤]
・“スミキュア”S(住友化学工業(株)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン)
・DICY7(ジャパンエポキシレジン(株)製、ジシアンジアミド)
・DCMU99(保土ヶ谷化学(株)製、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア)
[熱可塑性樹脂]
・“ビニレック”K(チッソ(株)製、ポリビニルホルマール)
[カーボンナノファイバー]
・CNF−1:多層カーボンナノチューブ(MWCNT)
K.Hernadi、A.Fonsecaらによる報告を参照(Zeolites 17:416−423、1996)し、酢酸鉄(2g)、酢酸コバルト(2g)、Y型ゼオライト(10g)を秤量し、メタノール(100ml)を加えて、振とう器にて1時間攪拌後、メタノール分を乾燥除去し、触媒を得た。次に、CVD反応装置を用いて、反応管内の石英ウール上に触媒1gをあらかじめセットし、窒素(30cc/分)雰囲気下で600℃まで昇温後、アセチレン(6cc/分)、窒素(30cc/分)雰囲気下で600℃×5時間保持しカーボンナノファイバーを合成した。その後、窒素(30cc/分)雰囲気下で室温まで冷却し、反応混合物を取り出した。
前記の反応混合物を、フッ化水素酸10%水溶液中で3時間攪拌後、ろ紙(Toyo Roshi Kaisha、Filter Paper 2号 125mm)を用いてろ過し、ろ紙上の固形物を、イオン交換水、アセトン溶液にて洗浄後、乾燥し、MWCNT(CNF−1)を得た。CNT−1の透過型電子顕微鏡(TEM)観察結果から、平均繊維直径が10nmであることが分かった。
・CNF−2:表面処理MWCNT
CNF−1をフラスコに5g測り取り、濃硫酸150g、60%硝酸50gを加え、100℃で30分加熱した。反応液を水500mlで希釈し、メンブレンフィルターで濾別後、水でよく洗浄し、表面処理MWCNT(CNF−2)を得た。
・CNF−3:気相法炭素繊維(VGCF、昭和電工(株)製)、平均繊維直径150nm、繊維長20〜50μm
・CNF−4:表面処理VGCF
CNF−3をフラスコに5g測り取り、濃硫酸150g、60%硝酸50gを加え、100℃で1時間加熱した。反応液を水500mlで希釈し、メンブレンフィルター(PTFE製、ポアサイズ1μm)で濾別後、水でよく洗浄し、表面処理VGCF(CNF−4)を得た。
また、本発明において、各種特性は次のようにして測定する。
[樹脂成分の粘度]
動的粘弾性測定装置を使用し、半径20mmの平行平板を用い、平行平板間の距離1.0mm、測定周波数0.5Hz、発生トルク3〜200gf・cmの条件下で、所定の温度範囲で樹脂成分の粘弾性測定を行い、複素粘性率ηを読み取る。なお、本実施例では、動的粘弾性測定装置として、ティー・エイ・インスツルメント社製動的粘弾性測定装置ARESを用いた。
[マスターバッチまたは熱硬化性樹脂組成物のカッソン粘度およびカッソン降伏値]
動的粘弾性測定装置を使用し、円錐平板状治具を用い、所定温度に調整したマスターバッチまたは熱硬化性樹脂組成物について、次の(1)〜(3)の手順で剪断応力τを測定する。
(1)10秒間の助走時間を設け、マスターバッチまたは熱硬化性樹脂組成物に加える剪断速度を100s−1になるまでこの間に上昇させる。
(2)次の2分間、一定剪断速度100s−1で剪断を与え続ける。
(3)次の3分間で、剪断速度を0s−1迄減少させる。
上(3)項で得られた剪断速度γに対する剪断応力τの測定データについて、前記(式1)に基づき、剪断速度γの0.5乗に対する剪断応力τの0.5乗の1次直線回帰を行い、得られた1次式の傾きの2乗をカッソン粘度として、切片の2乗をカッソン降伏値として求める。なお、本実施例では、動的粘弾性測定装置として、ティー・エイ・インスツルメント社製動的粘弾性測定装置ARESを使用し、本実施例の全てにおいて、剪断速度γの0.5乗と剪断応力τの0.5乗との相関係数は0.997以上であり、良好な相関性を示していた。
[マスターバッチ中のカーボンナノファイバー最大凝集サイズ]
マスターバッチをスライドガラスに少量取り、カバーガラスで挟みこみ、厚み10μm程度の薄膜とした。これを、光学顕微鏡を用いて、10倍の接眼レンズと100倍の対物レンズを使用して、個々の凝集物の凝集サイズを測定する。すなわち、図1に示すように、一つの凝集物に外接する最小の円を描き、その直径を測定し、凝集サイズを得る。任意に3箇所の視野を選択し、それらの視野中で最も大きい凝集サイズを最大凝集サイズとする。なお、それぞれの視野中に凝集サイズが10μmを超える凝集物が一つもない場合、凝集サイズが10μm以下であるといえる。
[樹脂硬化物の曲げ弾性率および曲げ撓み量]
熱硬化性樹脂組成物を80℃に加熱してモールドに注入し、135℃の熱風乾燥機中で2時間加熱硬化して厚さ2mmの樹脂硬化板を作製した。次に、樹脂硬化板より、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、試験速度2.5mm、支点間距離32mmで3点曲げ試験を行い、JIS K 7203に従い、曲げ弾性率、および曲げ撓み量を求めた。なお、本試験は温度23℃、相対湿度50%の環境で行った。
(実施例1)
表1に示すマスターバッチの組成において、熱硬化性樹脂とカーボンナノファイバーとを、熱硬化性樹脂が50Pa・sとなる温度に加温して撹拌羽根を用いて予備混練して後、これを、多軸押出機を用いて、表1に示した分散条件で混練して、マスターバッチを得た。
得られたマスターバッチと残りの樹脂原料とを表1に示す組成で、ニーダー混練機によって混練して熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、ニーダー混練に際しては、残りの樹脂原料のうち、まず熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを投入し150℃で2時間混練した後、表1に示す熱硬化性樹脂組成物作製時の混練温度にて、マスターバッチを投入して混練し、60℃に降温後、硬化剤を投入してさらに混練した。
得られた熱硬化性樹脂組成物をオーブン中、180℃で2時間硬化することにより樹脂硬化物を得た。表1に、得られたマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物の特性を併せて示す。得られたマスターバッチに凝集物は全く見られず、その曲げ特性は問題ないレベルであった。
(比較例1)
カーボンナノファイバーを含まない以外は、実施例1と同様にしてマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物を得た。表1に、得られたマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物の特性を併せて示す。得られた樹脂硬化物は、樹脂曲げ弾性率が不十分なものであった。
(実施例2)
マスターバッチの樹脂組成、マスターバッチ製造時の分散条件、残りの樹脂原料の組成および熱硬化性樹脂組成物製造時の混練温度を表1のとおり変更した以外は、実施例1と同様にしてマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物を得た。表1に、得られたマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物の特性を併せて示す。得られた樹脂硬化物は、図2に示すとおり、マスターバッチに7μmのサイズの凝集物が見られたが、樹脂曲げ特性は問題ないレベルであった。
(実施例3)
マスターバッチの樹脂組成、マスターバッチ製造時の分散条件、残りの樹脂原料の組成および熱硬化性樹脂組成物製造時の混練温度を表1のとおり変更した以外は、実施例1と同様してマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物を得た。表1に、得られたマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物の特性を併せて示す。得られた樹脂硬化物は、樹脂曲げ撓み量が実施例2をやや上回るものであった。
(比較例2)
構成要素[B]を含まない以外は、実施例2と同様にしてマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物を得た。表1に、得られたマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物の特性を併せて示す。得られた樹脂硬化物は、樹脂曲げ弾性率が不十分なものであった。
(実施例4〜8)
マスターバッチの樹脂組成、マスターバッチ製造時の分散条件、残りの樹脂原料の組成および熱硬化性樹脂組成物製造時の混練温度を表2のとおり変更した以外は、実施例1と同様してマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物を得た。表2に、得られたマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物の特性を併せて示す。表面処理MWCNTを用いることにより、得られた樹脂硬化物は、その樹脂曲げ撓み量が大きく向上した。一方、実施例6では、表面処理MWCNTの配合量を3.8重量%に減らすことで、得られる樹脂硬化物において、樹脂曲げ弾性率の向上効果が大きく低下した。
(比較例3、4)
マスターバッチの樹脂組成、マスターバッチ製造時の分散条件、残りの樹脂原料の組成および熱硬化性樹脂組成物製造時の混練温度を表2のとおり変更した以外は、実施例1と同様してマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物を得た。表2に、得られたマスターバッチ、熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物の特性を併せて示す。比較例3では、マスターバッチ製造における分散条件として樹脂成分の粘度が15Pa・sとなる室温にて混練したため、図3に示すとおり、マスターバッチ中にカーボンナノファイバーの粗大凝集物が多発した。また、比較例4では、マスターバッチ製造における分散条件として樹脂成分の粘度が1100Pa・sとなる0℃にて混練したが、マスターバッチの樹脂成分中に重量平均分子量が600〜10000である熱硬化性樹脂を含まないため、混練後にカーボンナノファイバーの再凝集が起こり、粗大凝集物が見られた。
以上のように、樹脂成分中に、重量平均分子量600〜10000の熱硬化性樹脂を30〜100重量%含む場合、マスターバッチにおいても、それを用いた熱硬化性樹脂組成物においても、カーボンナノファイバーの分散に優れ、かかる熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化物の特性も優れたものとなる。また、マスターバッチ製造における混練工程での樹脂成分の温度が20〜80℃の場合、表面処理されたカーボンナノファイバーとの組合せで特に優れた特性が得られる。また、マスターバッチ中のカーボンナノファイバー含有量に適正な範囲が存在することが分かる。また、マスターバッチと残りの樹脂原料の混練温度が低いほど、カーボンナノファイバーの再凝集が起こりにくいことが分かる。
本発明において、カーボンナノファイバーの凝集サイズ評価に用いる顕微鏡像のイメージ図である。 実施例2で得られたマスターバッチにおけるカーボンナノファイバーの凝集サイズを評価するに用いた光学顕微鏡写真である。 比較例3で得られたマスターバッチにおけるカーボンナノファイバーの凝集サイズを評価するに用いた光学顕微鏡写真である。

Claims (11)

  1. 樹脂成分を総量で60〜95重量%含むとともに、カーボンナノファイバーを5〜40重量%含むマスターバッチであって、重量平均分子量が600〜10000である熱硬化性樹脂を樹脂成分中に30〜100重量%の範囲で含むマスターバッチ。
  2. 含まれる樹脂成分の軟化点を80℃上回る温度において、カッソン粘度が1〜1000Pa・s、かつカッソン降伏値が1〜1000Paの範囲内である請求項1に記載のマスターバッチ。
  3. 前記熱硬化性樹脂が、軟化点60〜150℃のエポキシ樹脂である請求項1または2に記載のマスターバッチ。
  4. 含まれる樹脂成分は、その軟化点が0〜80℃の範囲内である請求項1〜3のいずれかに記載のマスターバッチ。
  5. カーボンナノファイバーは、その凝集サイズが10μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のマスターバッチ。
  6. カーボンナノファイバーが表面処理を施されたものである請求項1〜5のいずれかに記載のマスターバッチ。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のマスターバッチを10〜90重量%含有してなる熱硬化性樹脂組成物。
  8. 熱硬化性樹脂組成物は、80℃において、カッソン粘度が0.1〜100Pa・s、かつカッソン降伏値が1〜1000Paの範囲内である請求項7に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  9. 重量平均分子量が600〜10000である熱硬化性樹脂を30〜100重量%の範囲で含む樹脂成分を、その粘度が10〜10Pa・sとなる温度に設定し、剪断速度10〜10000s−1の範囲内でカーボンナノファイバーと混練することを特徴とするマスターバッチの製造方法。
  10. 混練中の樹脂成分の温度が0〜200℃である請求項9に記載のマスターバッチの製造方法。
  11. 混練に用いる装置が、多軸押出混練機または3本ロールである、請求項9または10に記載のマスターバッチの製造方法。
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