JP2008303197A - 細胞内プロトポルフィリンix集積量増加剤及びそれを含有した光線力学的診断用又は治療用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】5‐アミノレブリン酸の投与量を増加させることなく、安全かつ簡単に疾患組織中へのプロトポルフィリンIXの集積量を増加させることができる、細胞内プロトポルフィリンIX集積量増加剤を提供する。
【解決手段】芳香族アミノ酸を有効成分としたものとする。
【選択図】なし
【解決手段】芳香族アミノ酸を有効成分としたものとする。
【選択図】なし
Description
本発明は、5‐アミノレブリン酸を投与した場合、疾患組織細胞、例えばガン組織細胞におけるプロトポルフィリンIXの集積量を増加するための添加剤に関するものである。
近年、ガン、イボ、ニキビのような疾患組織の診断及び治療方法として光線力学的診断(Photodynamic diagnosis,以下PDDと略す)や光線力学的治療(Photodynamic therapy,以下PDTと略す)が注目されている。
このPDDはポルフィリン系又はクロリン系光増感剤を患者に投与し、これを疾患組織に集積させ、波長400nm付近の光を照射することによって、光増感剤から蛍光発光させ、これを観察することにより、疾病の有無及び患部を特定する診断法であり、またPDTは、集積した光増感剤に、波長600〜700nmの光を照射することによって、活性酸素種を生成させ、これにより疾患組織のみを選択的に壊死させる治療法である。
これらのPDD及びPDTは、これまでの診断法及び治療法と比較して、低侵襲で副作用が少ないため、患者に対する負担が少ないという利点がある。
これらのPDD及びPDTは、これまでの診断法及び治療法と比較して、低侵襲で副作用が少ないため、患者に対する負担が少ないという利点がある。
ところで、これまで、このPDD及びPDTで用いる光増感剤の1つに5‐アミノレブリン酸の投与により体内で生成するプロトポルフィリンIX(PpIXと略す)があるが(特許文献1参照)、このものはガン組織に対する集積性が低く、十分な治療効果を得るためには、多量の5‐アミノレブリン酸を投与する必要がある。
しかしながら、5‐アミノレブリン酸は、20mg/kgB.W.以上投与すると、嘔吐、日光過敏症あるいは一時的な肝機能障害を惹起することが知られているので、その投与量にはおのずから制限されるのを免れない。
したがって、5‐アミノレブリン酸の投与量を増加させることなく、PpIXの疾患組織への集積性を増大させるために、粘着付着性剤例えば水膨潤性ポリマーを添加したもの(特許文献2参照)、キレート化剤例えばアミノポリカルボン酸キレート化剤を併用したもの(特許文献3参照)、5‐アミノレブリン酸エステルを前駆体としたもの(特許文献4参照)、担体分子としてリポソームのような脂質を併用したもの(特許文献5参照)などが提案されている。
しかしながら、5‐アミノレブリン酸アルキルエステルは、疾患組織内へのPpIXの集積性は増加するものの、細胞に対する毒性も増加するため、安全性の点で問題があるし、キレート剤は安全性は高いものの非経口投与製剤として用いなければならないため、患者に対する侵襲性が高くなるという欠点がある。また、リポソームは安全性の点では問題はないが、調製工程が煩雑であり、コスト高になるのを免れない。
本発明は、5‐アミノレブリン酸の投与量を増加させることなく、安全かつ簡単に疾患組織中へのPpIXの集積量を増加させることができる、細胞内PpIX集積量増加剤を提供することを目的としてなされたものである。
本発明者らは、PpIXの前駆物質である5‐アミノレブリン酸を投与した場合、体内においてそれから生成するPpIXの疾患組織中への集積量を増大させる手段について鋭意研究した結果、芳香族アミノ酸例えばフェニルアラニンが、PpIXの疾患組織中への集積量を増大させる作用を有することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、芳香族アミノ酸を有効成分としてなる細胞内PpIX集積量増加剤、5‐アミノレブリン酸と細胞内プロトポルフィリンIX集積量増加剤とを含有する光線力学的診断用組成物及び治療用組成物を提供するものである。
上記の芳香族アミノ酸としては、例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、m‐チロシン、チロニン、チロキシン、ヨードゴルゴ酸、ドーパ、オルシルアラニン、スリナミン、ジチロシン、トリチロシン、アガリチン、アントラニル酸、イサチン酸、イサトイン酸、馬尿酸、ヒップラート、o‐トルル酸、m‐トルル酸、p‐トルル酸、フェナセツル酸、オルニツル酸あるいはキヌレニンなどが用いられる。
これらには、d体、l体が存在するが、本発明においては、そのいずれも用いることができる。この中で特に好ましいのは、容易に入手できるという点でフェニルアラニン及びトリプトファンであり、また安全性の点でl体が好ましい。
次に、この細胞内PpIX集積量増加剤を用いた光線力学的診断用組成物及び治療用組成物は、5‐アミノレブリン酸と上記芳香族アミノ酸からなっている。
これらの組成物中における5‐アミノレブリン酸と細胞内プロトポルフィリンIX集積量増加剤との含有割合については、所要の溶媒に溶解可能である限り、特に制限はないが、通常モル比で1:10ないし10:1、好ましくは1:4ないし4:1の範囲で選ばれる。
これらの組成物中における5‐アミノレブリン酸と細胞内プロトポルフィリンIX集積量増加剤との含有割合については、所要の溶媒に溶解可能である限り、特に制限はないが、通常モル比で1:10ないし10:1、好ましくは1:4ないし4:1の範囲で選ばれる。
5‐アミノレブリン酸は両性電解質であり、pHを変えることにより、酸性塩、中性塩又は塩基性塩のいずれの塩も形成可能であるが、安定性がよいという点で酸性塩が好ましい。酸性塩としては、例えば塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩があるが、特に塩酸塩が好ましい。
本発明の細胞内PpIX集積量増加剤を溶液として用いる場合の溶媒としては、水又は生理的食塩水が好ましいが、溶解性を高めるために、水溶性有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、n‐プロパノール、アセトン、グリセリン、プロピレングリコール、酢酸、ジメチルスルホキシドを併用することもできる。
この際の濃度は、通常の0.1〜30質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲内で選ばれる。
この際の濃度は、通常の0.1〜30質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲内で選ばれる。
診断用組成物又は治療用組成物は、通常製剤として供せられるが、この際の剤形としては、例えば散剤、顆粒剤、注射薬、液剤、軟膏、巴布剤などがある。
経口投与する場合の1回当りの投与量としては、5‐アミノレブリン酸に基づき0.1〜20mg/kgB.W.、好ましくは1〜10mg/kgB.W.の範囲内で選ばれる。これよりも多量に用いると副作用を示すし、またこれよりも少量では十分な効果が得られない。
本発明の診断用組成物を用いて、疾病の有無及び患部を特定しようとする場合には、これを投与し、3〜6時間経過したのち、波長400nm付近の光を照射して発光させ、生じる蛍光を観察する。また、治療用組成物を用いて患部を治療する場合には、これを投与し、3〜6時間経過後、患部に50〜500mW/cm2で波長600〜700nmの光を全照射エネルギーが50〜300J/cm2になるように照射し、活性酸素種を生成させ、疾患組織のみを選択的に壊死させる。
他方、軟膏又は巴布剤として経皮的に施用する場合には、経皮吸収を促進するために経皮吸収促進剤、例えばl‐メントールやd‐リモネンなどのテルペン系化合物、L‐α‐ホスファチジコリンなどのリン脂質、Tween系あるいはSpan系界面活性剤、ラウリン酸やオレイン酸などの脂肪酸又はその塩などを適宜配合して使用する。
本発明によれば、5‐アミノレブリン酸の使用量を増加することなく、PpIXの疾患組織内への集積量を増大させることができるので、光線力学的診断及び治療を安全かつ効果的に行うことができる。
次に、実施例により、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。
マウス胸腺リンパ腫瘍細胞EL−4を5×105個/mlに調製し、5‐アミノレブリン酸及び各種アミノ酸(γ‐アミノ酪酸、β‐アラニン、ベタイン及びトl‐フェニルアラニン)を、培地中の濃度が、それぞれ12mM及び20mMになるように添加後、3時間インキュベーションした後、紬胞内のPpIXの634nmにおける蛍光強度を測定した。このとき、蛍光強度が大きいほど、細胞内PpIX量が大きいことを示す。
その結果を表1に示す。ただし、5‐アミノレブリン酸単独で投与した際の蛍光強度を100%として表わした。この結果、γ‐アミノ酪酸、β‐アラニン及びベタインにおいては、PpIX量の減少が確認された。一方、l‐フェニルアラニンを添加することによって、細胞内PpIX量が増加することが分かる。
その結果を表1に示す。ただし、5‐アミノレブリン酸単独で投与した際の蛍光強度を100%として表わした。この結果、γ‐アミノ酪酸、β‐アラニン及びベタインにおいては、PpIX量の減少が確認された。一方、l‐フェニルアラニンを添加することによって、細胞内PpIX量が増加することが分かる。
ヒト由来リンパ腫瘍細胞U−937を5×105個/mlに調製し、5‐アミノレブリン酸及び芳香族アミノ酸(d‐フェニルアラニン、l‐フェニルアラニン及びl‐トリプトファン)を、培地中の濃度が、それぞれ12mM及び22mMになるように添加後、3時間インキュベーションした後、細胞内のPpIXの634nmにおける蛍光強度を測定した。このとき、蛍光強度が大きいほど、細胞内PpIX量が大きいことを示す。
その結果を表2に示す。ただし、5‐アミノレブリン酸単独で投与した際の蛍光強度を100%として表わした。この結果、d‐フェニルアラニン、l‐フェニルアラニン及びl‐トリプトファンを添加することによって、細胞内PpIX量が増加することが分かる。
その結果を表2に示す。ただし、5‐アミノレブリン酸単独で投与した際の蛍光強度を100%として表わした。この結果、d‐フェニルアラニン、l‐フェニルアラニン及びl‐トリプトファンを添加することによって、細胞内PpIX量が増加することが分かる。
ヒト由来リンパ腫瘍細胞U−937を5×105個/mlに調製し、5‐アミノレブリン酸を、培地中の濃度が12mMになるように添加した。その後、d‐フェニルアラニン及びl‐フェニルアラニンを培地中で所定濃度になるように添加し、3時間インキュベーションした後、細胞内のPpIXの634nmにおける蛍光強度を測定した。このとき、蛍光強度が大きいほど、細胞内PpIX量が大きいことを示す。
その結果を表3に示す。ただし、5‐アミノレブリン酸単独で投与した際の蛍光強度を100%として表わした。この結果、d‐フェニルアラニン及びl‐フェニルアラニンの濃度増加に伴い紬胞内PpIX量が増加した。また、一定濃度で比較すると、その傾向はl‐フェニルアラニンの方が顕著であった。
その結果を表3に示す。ただし、5‐アミノレブリン酸単独で投与した際の蛍光強度を100%として表わした。この結果、d‐フェニルアラニン及びl‐フェニルアラニンの濃度増加に伴い紬胞内PpIX量が増加した。また、一定濃度で比較すると、その傾向はl‐フェニルアラニンの方が顕著であった。
ヒト由来リンパ腫瘍細胞U−937を5×105個/mlに調製し、5‐アミノレブリン酸を、培地中の濃度が12mMになるように添加して3時間インキュベーションすると同時に、d‐フェニルアラニン又はl‐フェニルアラニンを、培地中の濃度が22mMになるように添加して所定時間インキュベーションした。その後、細胞内のPpIXの634nmにおける蛍光強度を測定した。このとき、蛍光強度が大きいほど、細胞内PpIX量が大きいことを示す。
その結果を表4に示す。ただし、5‐アミノレブリン酸単独で投与し、3時間インキュベーションした際の蛍光強度を100%として表わした。この結果、いずれの系においてもインキュベーション時間の増加に伴いPpIX量は増加し、d‐フェニルアラニンでは約4時間、l‐フェニルアラニンでは約3時間で極大値を示した。
その結果を表4に示す。ただし、5‐アミノレブリン酸単独で投与し、3時間インキュベーションした際の蛍光強度を100%として表わした。この結果、いずれの系においてもインキュベーション時間の増加に伴いPpIX量は増加し、d‐フェニルアラニンでは約4時間、l‐フェニルアラニンでは約3時間で極大値を示した。
疾患組織、例えばガン細胞の診断及び治療に対し効果的に利用することができる。
Claims (5)
- 芳香族アミノ酸を有効成分としてなる細胞内プロトポルフィリンIX集積量増加剤。
- 芳香族アミノ酸が、フェニルアラニン及びトリプトファンの中から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のプロトポルフィリンIX集積量増加剤。
- 5‐アミノレブリン酸と請求項1又は2記載の細胞内プロトポルフィリンIX集積量増加剤とを含有することを特徴とする光線力学的診断用組成物。
- 5‐アミノレブリン酸と請求項1又は2記載の細胞内プロトポルフィリンIX集積量増加剤とを含有することを特徴とする光線力学的治療用組成物。
- 5‐アミノレブリン酸とプロトポルフィリンIX集積量増加剤との含有割合がモル比1:10ないし10:1の範囲にある請求項3又は4記載の組成物。
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