以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本発明の半導体装置において、半導体素子が有する半導体膜と、該半導体膜と重なるように配置された空洞の構成について、図1を用いて説明する。図1(A)は、本発明で用いられる半導体素子が有する半導体膜100と、空洞101の上面図である。また図1(B)は、図1(A)に示す上面図の破線A−A’における断面図であり、図1(C)は、図1(A)に示す上面図の破線B−B’における断面図である。
図1に示すように、半導体膜100とベース基板103の間には空洞101が形成されており、半導体膜100と空洞101は部分的に重なっている。またベース基板103と半導体膜100の間には、凹部104を有する絶縁膜102が形成されている。絶縁膜102が有する凹部104とベース基板103とに囲まれている空間が、空洞101に相当する。なお図1(A)において空洞101は絶縁膜102とベース基板103の間に形成されているため、図1(A)ではそのレイアウトされている領域を破線で示している。また、図1では凹部104を有する絶縁膜102がベース基板103に接しているが、本発明はこの構成に限定されず、ベース基板103と絶縁膜102の間に、別途絶縁膜を設けても良い。
絶縁膜102は、単数の絶縁膜で形成されていても良いし、複数の絶縁膜が積層されるように形成されていても良い。図1では、開口部を有する絶縁膜102aと、該開口部と重なる絶縁膜102bとを、ベース基板103側から順に積層させることで、凹部104を有する絶縁膜102を形成する例を示している。
半導体膜100は、ベース基板103に貼り合わされたボンド基板を劈開することで、ベース基板103上に形成される。具体的にベース基板103とボンド基板の貼り合わせは、ボンド基板上に形成された凹部を有する絶縁膜102と、ベース基板103とを接合させることで行うことができる。或いは、ベース基板103上にも絶縁膜を形成しておき、該絶縁膜と、ボンド基板上に形成された凹部を有する絶縁膜102とを接合させることで、上記貼り合わせを行っても良い。また、複数の絶縁膜で凹部を有する絶縁膜102が構成されている場合は、該複数の絶縁膜間で接合が行われても良い。例えば、図1のように、凹部を有する絶縁膜102が絶縁膜102a及び絶縁膜102bで構成されている場合は、ボンド基板上に形成された絶縁膜102bと、ベース基板103上に形成された開口部を有する絶縁膜102aとを接合させれば良い。絶縁膜どうしを接合させる場合、ベース基板103の種類によらず、貼り合わせの強度を確実に確保することができる。
また絶縁膜102は、空洞101内へ冷媒を導入するための開口部105と、空洞101内から冷媒を排出するための開口部106とを少なくとも有する。空洞101は開口部105及び開口部106とつながっており、開口部105から導入された冷媒は、空洞101内を流れ、開口部106から排出される。冷媒は流体であることが望ましく、例えば液体であれば、純水、エチレングリコール、プロピレングリコール、水溶液、潤滑油などの油類を用いることができ、気体であれば空気、窒素、不活性ガスなどを用いることができる。なお上記水溶液には、プロピレングリコールに純水を加えたものも含まれる。
次に、図1に示す半導体膜100を用いた半導体素子の一つである、トランジスタの構成について説明する。図2(A)は、半導体膜100を活性層として用いたトランジスタの上面図である。また図2(B)は、図2(A)に示す上面図の破線A−A’における断面図であり、図2(C)は、図2(A)に示す上面図の破線C−C’における断面図である。
図2に示すトランジスタは、半導体膜100と、ゲートとして機能する電極107と、半導体膜100と電極107の間に設けられたゲート絶縁膜108とを有している。また半導体膜100は、ソースまたはドレインとして機能する一対の不純物領域109、110と、不純物領域109、110の間に設けられたチャネル形成領域111とを有する。電極107は、ゲート絶縁膜108を間に挟んでチャネル形成領域111と重なっている。
なお図1、図2では、1つの半導体膜100と1つの空洞101とが重なっている例を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。複数の半導体膜100と1つの空洞101とが重なっていても良いし、1つの半導体膜100と複数の空洞101とが重なっていても良い。
本発明の半導体装置は、半導体膜100とベース基板103の間に、冷媒の経路となる空洞101を有しているので、半導体素子のセルフヒーティングによって熱が発せられても、効率的に半導体装置を冷却することができる。また本発明の半導体装置では、エッチングなどの既に確立された手法を用いて絶縁膜102の凹部を形成することができる。よって、位置及び形状の精度が良い空洞101を形成することができるため、冷媒の経路である空洞101を半導体素子により近づけるように配置することができ、さらに効率よく半導体装置の冷却を行うことができる。従って、セルフヒーティングにより動作が不安定になるのを防ぎ、より安定した動作を確保することができる信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
なお図2に示すトランジスタでは、空洞101が、チャネル形成領域111と重なる位置に設けられている。少なくともチャネル形成領域111と重なるように空洞101を形成することで、不純物領域109、110とのみ重なるように空洞を形成する場合に比べて、よりセルフヒーティングによるトランジスタの閾値電圧の変動を抑えることが出来る。
なお本発明で用いられるトランジスタは、図2に示す構成に限定されない。例えば半導体膜100がLDD領域を有していても良いし、ゲートとして機能する電極107を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造であっても良い。
次に図3(A)に、本発明の半導体装置の全体の様子を示す上面図を、一例として示す。図3に示す半導体装置では、集積回路群120が有する複数の半導体素子と、空洞121とが重なっている。空洞121は、開口部122及び開口部123とつながっており、開口部122から導入された冷媒は空洞121を流れ、開口部123から排出される。なお図3(A)では、開口部122から開口部123へと続く経路において、空洞121が途中で分岐し、その後、再び1つになっている。
図3(B)に、図3(A)の半導体装置が有する集積回路群120の拡大図を一例として示す。ただし図3(B)では、複数の半導体素子と空洞121の位置関係を明確にするため、複数の各半導体素子が有する半導体膜124のみ図示し、空洞121は破線で示す。図3(B)に示すように、分岐している各空洞121は、半導体膜124と重なるようにレイアウトされている。
なお図3に示す半導体装置では、1つの空洞121が開口部122及び開口部123とつながっているが、本発明はこの構成に限定されない。冷媒を導入するための複数の開口部122が1つの空洞121とつながっていても良いし、冷媒を排出するための複数の開口部123が1つの空洞121とつながっていても良い。
また冷媒の導入と排出は、ポンプを用いて行うことができる。冷媒が気体の場合は、ポンプの代わりに送風機を用いることもできる。本発明の半導体装置は、ポンプまたは送風機などの冷媒の循環を行うための動力を生成する装置を、その構成の一部に有していても良い。ポンプは、冷媒の種類に合わせて最適な形態を適宜選択すればよい。また半導体装置から排出された冷媒を冷却するために、ヒートシンクを用いても良い。
図4に、MEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれる半導体プロセスを応用した微細加工技術で作製されたマイクロポンプで、半導体装置の空洞における冷媒の導入と排出を行う例を示す。図4では、マイクロポンプ130が有する流体の送出口131、吸入口132が、それぞれ半導体装置133が有する開口部134、135とチューブ136、137で接続されている。マイクロポンプ130の送出口131からチューブ136を介して送られてきた冷媒は、開口部134から破線で示す空洞138を通って開口部135まで到達し、その後、チューブ137を介してマイクロポンプ130の吸入口132に戻る。図4では、別途作製したマイクロポンプ130と半導体装置133とをチューブ136で接続しているだけだが、マイクロポンプ130を半導体装置133が有するベース基板上に固定させておいても良い。
なお本発明の範疇に含まれる半導体装置には、マイクロプロセッサ、画像処理回路などの集積回路や、半導体表示装置等、ありとあらゆる半導体装置が含まれる。半導体表示装置には、液晶表示装置、有機発光素子(OLED)に代表される発光素子を各画素に備えた発光装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)等や、半導体膜を用いた回路素子を駆動回路に有しているその他の表示装置がその範疇に含まれる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、トランジスタの有する半導体膜と、空洞との位置関係が、図2とは異なる形態について説明する。図5(A)は、半導体膜200を活性層として用いたトランジスタの上面図である。また図5(B)は、図5(A)に示す上面図の破線A−A’における断面図であり、図5(C)は、図5(A)に示す上面図の破線B−B’における断面図である。
図5に示すトランジスタは、半導体膜200と、ゲートとして機能する電極201と、半導体膜200と電極201の間に設けられたゲート絶縁膜202とを有している。また半導体膜200は、ソースまたはドレインとして機能する一対の不純物領域203、204と、不純物領域203、204の間に設けられたチャネル形成領域205とを有する。電極201は、ゲート絶縁膜202を間に挟んでチャネル形成領域205と重なっている。
またベース基板206と半導体膜200の間には、凹部208を有する絶縁膜209が形成されている。絶縁膜209が有する凹部208とベース基板206とに囲まれている空間が、空洞207に相当する。なお、空洞207は絶縁膜209とベース基板206の間に形成されているため、図5(A)ではそのレイアウトされている領域を破線で示している。本実施の形態では、図5に示すように、半導体膜200が有するチャネル形成領域205及び不純物領域204と、空洞207とが部分的に重なっている。なお、図5では凹部208を有する絶縁膜209がベース基板206に接しているが、本発明はこの構成に限定されず、ベース基板206と絶縁膜209の間に、別途絶縁膜を設けても良い。
絶縁膜209は、実施の形態1と同様に、単数の絶縁膜で形成されていても良いし、複数の絶縁膜が積層されるように形成されていても良い。図5では、開口部を有する絶縁膜209aと、該開口部と重なる絶縁膜209bとを、ベース基板206側から順に積層させることで、凹部208を有する絶縁膜209を形成する例を示している。
半導体膜200は、ベース基板206に貼り合わされたボンド基板を劈開することで、ベース基板206上に形成される。具体的にベース基板206とボンド基板の貼り合わせは、ボンド基板上に形成された凹部を有する絶縁膜209と、ベース基板206とを接合させることで行うことができる。或いは、ベース基板206上にも絶縁膜を形成しておき、該絶縁膜と、ボンド基板上に形成された凹部を有する絶縁膜209とを接合させることで、上記貼り合わせを行っても良い。また、複数の絶縁膜で凹部を有する絶縁膜209が構成されている場合は、該複数の絶縁膜間で接合が行われても良い。例えば、図5のように、凹部を有する絶縁膜209が絶縁膜209a及び絶縁膜209bで構成されている場合は、ボンド基板上に形成された絶縁膜209bと、ベース基板206上に形成された開口部を有する絶縁膜209aとを接合させれば良い。絶縁膜どうしを接合させる場合、ベース基板206の種類によらず、貼り合わせの強度を確実に確保することができる。
また空洞207は、絶縁膜209に形成された2つの開口部とつながっている。一方の開口部から導入された冷媒は、空洞207内を流れ、他方の開口部から排出される。冷媒は流体であることが望ましく、例えば液体であれば、純水、エチレングリコール、プロピレングリコール、水溶液、潤滑油などの油類を用いることができ、気体であれば空気、窒素、不活性ガスなどを用いることができる。なお上記水溶液には、プロピレングリコールに純水を加えたものも含まれる。
なお図5では、1つの半導体膜200と1つの空洞207とが重なっている例を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。複数の半導体膜200と1つの空洞207とが重なっていても良いし、1つの半導体膜200と複数の空洞207とが重なっていても良い。
本発明の半導体装置は、半導体膜200とベース基板206の間に、冷媒の経路となる空洞207を有しているので、半導体素子のセルフヒーティングによって熱が発せられても、効率的に半導体装置を冷却することができる。また本発明の半導体装置では、エッチングなどの既に確立された手法を用いて絶縁膜209の凹部を形成することができる。よって、位置及び形状の精度が良い空洞207を形成することができるため、冷媒の経路である空洞207を半導体素子により近づけるように配置することができ、さらに効率よく半導体装置の冷却を行うことができる。従って、セルフヒーティングにより動作が不安定になるのを防ぎ、より安定した動作を確保することができる信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
また図5に示すトランジスタでは、空洞207が、チャネル形成領域205及びドレインとして機能する不純物領域204と重なる位置に設けられている。少なくともチャネル形成領域205と重なるように空洞207を形成することで、不純物領域203、204とのみ重なるように空洞を形成する場合に比べて、よりセルフヒーティングによるトランジスタの閾値電圧の変動を抑えることが出来る。またチャネル形成領域205のうち、ソース側よりもドレイン側の方が、セルフヒーティングによる発熱量は高くなる。よって本実施の形態のように、チャネル形成領域205のドレイン側と重なるように、言い換えると電極201のうち不純物領域204に近い側の端部210と重なるように、空洞207をレイアウトすることで、セルフヒーティングにより熱が生じても効率よく半導体装置を冷却することができる。
なお本発明で用いられるトランジスタは、図5に示す構成に限定されない。例えば半導体膜200がLDD領域を有していても良いし、ゲートとして機能する電極201を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造であっても良い。
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、凹部を有する絶縁膜が、半導体膜と重なる領域内に開口部を有する形態について説明する。図6(A)は、半導体膜220を活性層として用いたトランジスタの上面図である。また図6(B)は、図6(A)に示す上面図の破線A−A’における断面図であり、図6(C)は、図6(A)に示す上面図の破線B−B’における断面図である。
図6に示すトランジスタは、半導体膜220と、ゲートとして機能する電極221と、半導体膜220と電極221の間に設けられたゲート絶縁膜222とを有している。また半導体膜220は、ソースまたはドレインとして機能する一対の不純物領域223、224と、不純物領域223、224の間に設けられたチャネル形成領域225とを有する。電極221は、ゲート絶縁膜222を間に挟んでチャネル形成領域225と重なっている。
またベース基板226と半導体膜220の間には、絶縁膜229が形成されている。本実施の形態では、絶縁膜229が凹部228と、凹部228と重なるように形成された開口部231とを有する。開口部231が形成される領域は、少なくともその一部が凹部228と重なっていれば良い。また開口部231は、半導体膜220と重なる領域内にレイアウトする。そして絶縁膜229が有する凹部228及び開口部231と、ベース基板226と、半導体膜220とに囲まれている空間が、空洞227に相当する。開口部231は半導体膜220と重なるため、半導体膜220は該開口部231において空洞227と接する。なお、空洞227は絶縁膜229とベース基板226の間に形成されているため、図6(A)ではそのレイアウトされている領域を破線で示している。また図6(A)では開口部231も併せて破線で示している。
本実施の形態では、図6に示すように、半導体膜220が有するチャネル形成領域225及び不純物領域224と、空洞227とが部分的に重なっている。なお、図6では凹部228を有する絶縁膜229がベース基板226に接しているが、本発明はこの構成に限定されず、ベース基板226と絶縁膜229の間に、別途絶縁膜を設けても良い。
絶縁膜229は、実施の形態1と同様に、単数の絶縁膜で形成されていても良いし、複数の絶縁膜が積層されるように形成されていても良い。図6では、開口部を有する絶縁膜229aと、該開口部と重なるような位置に開口部231を有する絶縁膜229bとを、ベース基板226側から順に積層させることで、凹部228及び開口部231を有する絶縁膜229を形成する例を示している。
半導体膜220は、ベース基板226に貼り合わされたボンド基板を劈開することで、ベース基板226上に形成される。具体的にベース基板226とボンド基板の貼り合わせは、ボンド基板上に形成された凹部228及び開口部231を有する絶縁膜229と、ベース基板226とを接合させることで行うことができる。或いは、ベース基板226上にも絶縁膜を形成しておき、該絶縁膜と、ボンド基板上に形成された凹部228及び開口部231を有する絶縁膜229とを接合させることで、上記貼り合わせを行っても良い。また、複数の絶縁膜で凹部228及び開口部231を有する絶縁膜229が構成されている場合は、該複数の絶縁膜間で接合が行われても良い。例えば、図6のように、凹部を有する絶縁膜229が絶縁膜229a及び絶縁膜229bで構成されている場合は、ボンド基板上に形成された絶縁膜229bと、ベース基板226上に形成された絶縁膜229aとを接合させれば良い。絶縁膜どうしを接合させる場合、ベース基板226の種類によらず、貼り合わせの強度を確実に確保することができる。
また空洞227は、絶縁膜229に形成されたさらに2つの開口部とつながっている。上記2つの開口部のうち、一方の開口部から導入された冷媒は、空洞227内を流れ、他方の開口部から排出される。冷媒は流体であることが望ましく、例えば液体であれば、純水、エチレングリコール、プロピレングリコール、水溶液、潤滑油などの油類を用いることができ、気体であれば空気、窒素、不活性ガスなどを用いることができる。なお上記水溶液には、プロピレングリコールに純水を加えたものも含まれる。
なお図6では、1つの半導体膜220と1つの空洞227とが重なっている例を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。複数の半導体膜220と1つの空洞227とが重なっていても良いし、1つの半導体膜220と複数の空洞227とが重なっていても良い。
本発明の半導体装置は、半導体膜220とベース基板226の間に、冷媒の経路となる空洞227を有しているので、半導体素子のセルフヒーティングによって熱が発せられても、効率的に半導体装置を冷却することができる。また本発明の半導体装置では、エッチングなどの既に確立された手法を用いて絶縁膜229の凹部を形成することができる。よって、位置及び形状の精度が良い空洞227を形成することができるため、冷媒の経路である空洞227を半導体素子により近づけるように配置することができ、さらに効率よく半導体装置の冷却を行うことができる。従って、セルフヒーティングにより動作が不安定になるのを防ぎ、より安定した動作を確保することができる信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
また図6に示すトランジスタでは、半導体膜220と空洞227とが、開口部231において接している。よって、例えば酸化珪素などの無機絶縁膜に比べて比誘電率の低い空気、窒素、不活性ガスなどの材料を流体として用いる場合、トランジスタの寄生容量を低減することができ、半導体装置の低消費電力化を実現することが出来る。特に開口部231が一対の不純物領域223、224と重なっている場合、接合容量を低減することができ、半導体装置のさらなる低消費電力化を実現することが出来る。
なお、実際のところ半導体膜220は、空洞227とそれぞれ接する部分に自然酸化膜が形成される場合がある。しかし特許文献2に記載されている絶縁膜は数μmから数百μmの膜厚を有していることが前提となっており、自然酸化膜は、上記の意図的に形成された絶縁膜に比べてその膜厚が数nm程度と飛躍的に薄い。よって本実施の形態では、半導体膜220の空洞227に接する部分に上記膜厚を有する絶縁膜を形成した場合に比べて、トランジスタの寄生容量または接合容量を低減することが出来ると言える。
なお本発明で用いられるトランジスタは、図6に示す構成に限定されない。例えば半導体膜220がLDD領域を有していても良いし、ゲートとして機能する電極221を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造であっても良い。
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体膜がベース基板側に凹部を有する形態について説明する。図7(A)は、半導体膜240を活性層として用いたトランジスタの上面図である。また図7(B)は、図7(A)に示す上面図の破線A−A’における断面図であり、図7(C)は、図7(A)に示す上面図の破線B−B’における断面図である。
図7に示すトランジスタは、半導体膜240と、ゲートとして機能する電極241と、半導体膜240と電極241の間に設けられたゲート絶縁膜242とを有している。また半導体膜240は、ソースまたはドレインとして機能する一対の不純物領域243、244と、不純物領域243、244の間に設けられたチャネル形成領域245とを有する。電極241は、ゲート絶縁膜242を間に挟んでチャネル形成領域245と重なっている。
またベース基板246と半導体膜240の間には、凹部248が形成された絶縁膜249が設けられている。そして本実施の形態では、該凹部248と重なるように、半導体膜240が凹部250をベース基板246側に有する。図7(A)では、凹部248と凹部250とがレイアウトされている領域を破線で示している。絶縁膜249が有する凹部248と、ベース基板246とに囲まれている空間が、空洞247に相当する。なお、図7では凹部248を有する絶縁膜249がベース基板246に接しているが、本発明はこの構成に限定されず、ベース基板246と絶縁膜249の間に、別途絶縁膜を設けても良い。
凹部250をチャネル形成領域245と重なるように形成することで、チャネル形成領域245における半導体膜240の膜厚を、不純物領域243、244における半導体膜240の膜厚よりも薄くすることができる。上記構成では、チャネル形成領域245の膜厚を薄くすることで短チャネル効果をさらに抑制しつつ、ソースまたはドレインとして機能する不純物領域243、244の抵抗を下げることができる。
また絶縁膜249は、実施の形態1と同様に、単数の絶縁膜で形成されていても良いし、複数の絶縁膜が積層されるように形成されていても良い。図7では、開口部を有する絶縁膜249aと、該開口部と重なるような位置に凹部を有する絶縁膜249bとを、ベース基板246側から順に積層させることで、上記開口部及び凹部によって形成される凹部248を、絶縁膜249が有する例を示している。
半導体膜240は、ベース基板246に貼り合わされたボンド基板を劈開することで、ベース基板246上に形成される。具体的にベース基板246とボンド基板の貼り合わせは、ボンド基板上に形成された凹部248を有する絶縁膜249と、ベース基板246とを接合させることで行うことができる。或いは、ベース基板246上にも絶縁膜を形成しておき、該絶縁膜と、ボンド基板上に形成された凹部248を有する絶縁膜249とを接合させることで、上記貼り合わせを行っても良い。また、複数の絶縁膜で凹部248を有する絶縁膜249が構成されている場合は、該複数の絶縁膜間で接合が行われても良い。例えば、図7のように、凹部を有する絶縁膜249が絶縁膜249a及び絶縁膜249bで構成されている場合は、ボンド基板上に形成された絶縁膜249bと、ベース基板246上に形成された絶縁膜249aとを接合させれば良い。絶縁膜どうしを接合させる場合、ベース基板246の種類によらず、貼り合わせの強度を確実に確保することができる。
また空洞247は、絶縁膜249が有する凹部248に形成された2つの開口部とつながっている。上記2つの開口部のうち、一方の開口部から導入された冷媒は、空洞247内を流れ、他方の開口部から排出される。冷媒は流体であることが望ましく、例えば液体であれば、純水、エチレングリコール、プロピレングリコール、水溶液、潤滑油などの油類を用いることができ、気体であれば空気、窒素、不活性ガスなどを用いることができる。なお上記水溶液には、プロピレングリコールに純水を加えたものも含まれる。
なお図7では、1つの半導体膜240と1つの空洞247とが重なっている例を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。複数の半導体膜240と1つの空洞247とが重なっていても良いし、1つの半導体膜240と複数の空洞247とが重なっていても良い。
本発明の半導体装置は、半導体膜240とベース基板246の間に、冷媒の経路となる空洞247を有しているので、半導体素子のセルフヒーティングによって熱が発せられても、効率的に半導体装置を冷却することができる。また本発明の半導体装置では、エッチングなどの既に確立された手法を用いて絶縁膜249の凹部248を形成することができる。よって、位置及び形状の精度が良い空洞247を形成することができるため、冷媒の経路である空洞247を半導体素子により近づけるように配置することができ、さらに効率よく半導体装置の冷却を行うことができる。従って、セルフヒーティングにより動作が不安定になるのを防ぎ、より安定した動作を確保することができる信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
なお本発明で用いられるトランジスタは、図7に示す構成に限定されない。例えば半導体膜240がLDD領域を有していても良いし、ゲートとして機能する電極241を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造であっても良い。
また図7に示すトランジスタでは、半導体膜240と空洞247の間に絶縁膜249が形成されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば絶縁膜249が凹部248と重なる領域において開口部を有し、該開口部において半導体膜240が空洞247と接していても良い。上記開口部において半導体膜240と空洞247が接している場合、例えば酸化珪素などの無機絶縁膜に比べて比誘電率の低い空気、窒素、不活性ガスなどの材料を流体として用いれば、トランジスタの寄生容量を低減することができ、半導体装置の低消費電力化を実現することが出来る。特に上記開口部が一対の不純物領域243、244と重なっている場合、接合容量を低減することができ、半導体装置のさらなる低消費電力化を実現することが出来る。
なお、上記構成の場合、実際のところ半導体膜240が空洞247と接する部分に自然酸化膜が形成される場合がある。しかし特許文献2に記載されている絶縁膜は数μmから数百μmの膜厚を有していることが前提となっており、自然酸化膜は、上記の意図的に形成された絶縁膜に比べてその膜厚が数nm程度と飛躍的に薄い。よって、半導体膜240の空洞247に接する部分に上記膜厚を有する絶縁膜を形成した場合に比べて、トランジスタの寄生容量または接合容量を低減することが出来ると言える。
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、半導体基板(ボンド基板)から、開口部を有する絶縁膜が形成された支持基板(ベース基板)に半導体膜を転置する、本発明の半導体装置の作製方法について説明する。
まず図8(A)に示すように、ボンド基板300上に絶縁膜301を形成する。絶縁膜301は、酸化珪素、窒化酸化珪素、窒化珪素等の絶縁性を有する材料を用いて形成する。絶縁膜301は、単数の絶縁膜を用いたものであっても、複数の絶縁膜を積層して用いたものであっても良い。例えば本実施の形態では、ボンド基板300に近い側から、窒素よりも酸素の含有量が高い窒化酸化珪素、酸素よりも窒素の含有量が高い窒化酸化珪素の順に積層された絶縁膜301を用いる。
例えば酸化珪素を絶縁膜301として用いる場合、絶縁膜301はシランと酸素、TEOS(テトラエトキシシラン)と酸素等の混合ガスを用い、熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD、バイアスECRCVD等の気相成長法によって形成することができる。この場合、絶縁膜301の表面を酸素プラズマ処理で緻密化しても良い。また、窒化珪素を絶縁膜301として用いる場合、シランとアンモニアの混合ガスを用い、プラズマCVD等の気相成長法によって形成することができる。また、窒化酸化珪素を絶縁膜301として用いる場合、シランとアンモニアの混合ガス、またはシランと酸化窒素の混合ガスを用い、プラズマCVD等の気相成長法によって形成することができる。
また絶縁膜301として、有機シランガスを用いて化学気相成長法により作製される酸化珪素を用いていても良い。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)等のシリコン含有化合物を用いることができる。
次に図8(A)に示すように、ボンド基板300に、矢印で示すように水素又は希ガス、或いは水素イオン又は希ガスイオンを注入し、ボンド基板300の表面から一定の深さの領域に、微少ボイドを有する欠陥層302を形成する。欠陥層302が形成される位置は、上記注入の加速電圧によって決まる。そして欠陥層302の位置により、ボンド基板300からベース基板304に転置する半導体膜307の厚さが決まるので、注入の加速電圧は半導体膜307の厚さを考慮して行う。当該半導体膜307の厚さは10nm乃至200nm、好ましくは10nm乃至50nmの厚さとする。例えば水素をボンド基板300に注入する場合、ドーズ量は3×1016乃至1×1017/cm2とするのが望ましい。
なお、欠陥層302を形成する上記工程において、ボンド基板300に高い濃度の水素又は希ガス、或いは水素イオン又は希ガスイオンを注入するので、ボンド基板300の表面が粗くなってしまい、ベース基板304との間における接合で十分な強度が得られない場合がある。絶縁膜301を設けることで、水素又は希ガス、或いは水素と希ガスのイオンを注入する際にボンド基板300の表面が保護され、ベース基板304とボンド基板300の間における接合を良好に行うことが出来る。
次に図8(B)に示すように、絶縁膜301上に絶縁膜303を形成する。絶縁膜303は、絶縁膜301と同様に、酸化珪素、窒化酸化珪素、窒化珪素等の絶縁性を有する材料を用いて形成する。絶縁膜303は、単数の絶縁膜を用いたものであっても、複数の絶縁膜を積層して用いたものであっても良い。また絶縁膜303として、有機シランガスを用いて化学気相成長法により作製される酸化珪素を用いていても良い。本実施の形態では、絶縁膜303として、有機シランガスを用いて化学気相成長法により作製される酸化珪素を用いる。
なお絶縁膜301または絶縁膜303に窒化珪素、窒化酸化珪素などのバリア性の高い絶縁膜を用いることで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がベース基板304または空洞308内の冷媒から半導体膜309に入るのを防ぐことができる。
なお本実施の形態では、欠陥層302を形成した後に絶縁膜303を形成しているが、絶縁膜303は必ずしも設ける必要はない。ただし絶縁膜303は欠陥層302を形成した後に形成されるので、欠陥層302を形成する前に形成される絶縁膜301よりも、その表面の平坦性は高い。よって、絶縁膜303を形成することで、後に行われる接合の強度をより高めることができる。
一方、図8(C)に示すように、ベース基板304上に、開口部305を有する絶縁膜306を形成する。開口部305は、例えばレジストで形成されたマスクを用い、エッチングにより形成することができる。ベース基板304は開口部305において露出している。開口部305は、後にトランジスタの半導体膜309とベース基板304の間に形成される空洞となる。よって開口部305の形成は、トランジスタの半導体膜のレイアウトを考慮して行われる。
なお、本実施の形態では絶縁膜306が開口部305を有する場合について例示しているが、絶縁膜306が開口部305の代わりに凹部を有していても良い。この場合、凹部においてベース基板304は露出せず、絶縁膜306に覆われていることになる。絶縁膜306は、絶縁膜301と同様に、酸化珪素、窒化酸化珪素、窒化珪素等の絶縁性を有する材料を用いて形成する。絶縁膜306は、単数の絶縁膜を用いたものであっても、複数の絶縁膜を積層して用いたものであっても良い。また絶縁膜306として、有機シランガスを用いて化学気相成長法により作製される酸化珪素を用いていても良い。本実施の形態では、絶縁膜306として酸化珪素を用いる。
次に、ボンド基板300とベース基板304とを接合により貼り合わせる前に、ボンド基板300に水素化処理を行うようにしても良い。水素化処理は、例えば、水素雰囲気中において350℃、2時間程度行う。
そして図8(D)に示すように、ボンド基板300と、ベース基板304とを、絶縁膜301、絶縁膜303、絶縁膜306を間に挟むように貼り合わせる。ボンド基板300とベース基板304の貼り合わせは、開口部305がボンド基板300側を向くように行う。絶縁膜303と絶縁膜306とが、開口部305以外の領域において接合することで、ボンド基板300とベース基板304とを貼り合わせることができる。
接合の形成はファン・デル・ワールス力を用いて行われているため、室温でも強固な接合が形成される。なお、上記接合は低温で行うことが可能であるため、ベース基板304は様々なものを用いることが可能である。例えばベース基板304としては、アルミノシリケートガラスバリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板の他、石英基板、サファイア基板などの基板を用いることが出来る。さらにベース基板304として、シリコン、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの半導体基板などを用いることができる。或いは、ステンレス基板を含む金属基板をベース基板304として用いても良い。また、プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、上記基板と比較して耐熱温度が一般的に低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであればベース基板304として用いることが可能である。プラスチック基板として、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂などが挙げられる。
ボンド基板300として、シリコン、ゲルマニウムなどの単結晶半導体基板または多結晶半導体基板を用いることができる。その他に、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体で形成された単結晶半導体基板または多結晶半導体基板を、ボンド基板300として用いることができる。またボンド基板300として、結晶格子に歪みを有するシリコン、シリコンに対しゲルマニウムが添加されたシリコンゲルマニウムなどの半導体基板を用いていても良い。歪みを有するシリコンは、シリコンよりも格子定数の大きいシリコンゲルマニウムまたは窒化珪素上における成膜により、形成することができる。
なおベース基板304とボンド基板300とを貼り合わせた後に、加熱処理又は加圧処理を行っても良い。加熱処理又は加圧処理を行うことで接合の強度を向上させることができる。
ボンド基板300とベース基板304の間で、絶縁膜303と絶縁膜306との接合を行った後、熱処理を行うことにより、欠陥層302において隣接する微少ボイドどうしが結合して、微少ボイドの体積が増大する。その結果、図9(A)に示すように、欠陥層302においてボンド基板300が劈開し、ボンド基板300の一部であった半導体膜307が乖離する。熱処理の温度はベース基板304の耐熱温度以下で行うことが好ましく、例えば400℃乃至600℃の範囲内で熱処理を行えば良い。この剥離により、半導体膜307が、絶縁膜301及び絶縁膜303と共にベース基板304に転置される。その後、絶縁膜303と絶縁膜306の接合をさらに強固にするため、400℃乃至600℃の熱処理を行うのが好ましい。絶縁膜306の開口部305が絶縁膜303とベース基板304の間に挟まれることで、空洞308が形成される。
半導体膜307の結晶面方位はボンド基板300の面方位によって制御することができる。形成する半導体素子に適した結晶面方位を有するボンド基板300を、適宜選択して用いればよい。またトランジスタの移動度は半導体膜307の結晶面方位によって異なる。より移動度の高いトランジスタを得たい場合、チャネルの向きと結晶面方位とを考慮し、ボンド基板300の貼り合わせの方向を定めるようにする。
次に、転置された半導体膜307の表面を平坦化する。平坦化は必ずしも必須ではないが、平坦化を行うことで、後に形成されるトランジスタにおいて半導体膜307とゲート絶縁膜の界面の特性を向上させることが出来る。具体的に平坦化は、化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により、行うことができる。半導体膜307の厚さは、上記平坦化により薄膜化される。
なお本実施の形態では、欠陥層302の形成により半導体膜307をボンド基板300から剥離するスマートカット法を用いる場合について示すが、ELTRAN(Epitaxial Layer Transfer)、誘電体分離法、PACE(Plasma Assisted Chemical Etching)法などの、他の貼り合わせ法を用いて半導体膜307をベース基板304に貼り合わせるようにしても良い。
次に、図9(B)に示すように、半導体膜307を所望の形状に加工(パターニング)することで、島状の半導体膜309を形成する。半導体膜307をパターニング後においても、島状の半導体膜309とベース基板304の間には、開口部305によって形成される空洞308が維持されている。
上記工程を経て形成された半導体膜309を用い、本発明はトランジスタ等の各種半導体素子を形成することが出来る。図9(C)には、半導体膜309を用いて形成されたトランジスタ310を例示している。
なお空洞308は、絶縁膜301及び絶縁膜303に形成された2つの開口部とつながっている。上記2つの開口部のうち、一方の開口部から導入された冷媒は、空洞308内を流れ、他方の開口部から排出される。冷媒は流体であることが望ましく、例えば液体であれば、純水、エチレングリコール、プロピレングリコール、水溶液、潤滑油などの油類を用いることができ、気体であれば空気、窒素、不活性ガスなどを用いることができる。なお上記水溶液には、プロピレングリコールに純水を加えたものも含まれる。
なお図7では、1つの半導体膜309と1つの空洞308とが重なっている例を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。複数の半導体膜309と1つの空洞308とが重なっていても良いし、1つの半導体膜309と複数の空洞308とが重なっていても良い。
また本実施の形態では、半導体膜309と空洞308との間に絶縁膜301及び絶縁膜303が設けられているが、接合の前に絶縁膜301及び絶縁膜303に開口部を形成しておくことで、該開口部において半導体膜309が空洞308と接するようにすることもできる。この場合、例えば酸化珪素などの無機絶縁膜に比べて比誘電率の低い空気、窒素、不活性ガスなどの材料を流体として用いれば、トランジスタ310の寄生容量または接合容量を低減することができ、半導体装置の低消費電力化を実現することが出来る。
本発明の半導体装置は、半導体膜309とベース基板304の間に、冷媒の経路となる空洞308を有しているので、半導体素子のセルフヒーティングによって熱が発せられても、効率的に半導体装置を冷却することができる。また本発明の作製方法では、エッチングなどの既に確立された手法を用いて開口部305を形成できるので、所望の深さ及び形状を有する空洞308を、簡単な手順で制御良く形成することが出来る。よって、本発明の作製方法では、位置及び形状の精度が良い空洞308を形成することができるため、冷媒の経路である空洞308を半導体膜309により近づけるように配置することができ、さらに効率よく半導体装置の冷却を行うことができる。従って、セルフヒーティングにより動作が不安定になるのを防ぎ、より安定した動作を確保することができる信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
なお本発明の作製方法を用いて形成されるトランジスタは、図9に示す構成に限定されない。例えば半導体膜309がLDD領域を有していても良いし、ゲートとして機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造であっても良い。
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
本実施の形態では、半導体基板(ボンド基板)から、開口部を有する絶縁膜が形成された支持基板(ベース基板)に、凹部を有する半導体膜を転置する、本発明の半導体装置の作製方法について説明する。
まず図10(A)に示すように、ボンド基板400上に絶縁膜401を形成する。絶縁膜401は、酸化珪素、窒化酸化珪素、窒化珪素等の絶縁性を有する材料を用いて形成する。絶縁膜401は、単数の絶縁膜を用いたものであっても、複数の絶縁膜を積層して用いたものであっても良い。例えば本実施の形態では、酸化珪素を絶縁膜401として用いる。
例えば酸化珪素を絶縁膜401として用いる場合、絶縁膜401はシランと酸素、TEOS(テトラエトキシシラン)と酸素等の混合ガスを用い、熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD、バイアスECRCVD等の気相成長法によって形成することができる。この場合、絶縁膜401の表面を酸素プラズマ処理で緻密化しても良い。また、窒化珪素を絶縁膜401として用いる場合、シランとアンモニアの混合ガスを用い、プラズマCVD等の気相成長法によって形成することができる。また、窒化酸化珪素を絶縁膜401として用いる場合、シランとアンモニアの混合ガス、またはシランと酸化窒素の混合ガスを用い、プラズマCVD等の気相成長法によって形成することができる。
また絶縁膜401として、有機シランガスを用いて化学気相成長法により作製される酸化珪素を用いていても良い。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)等のシリコン含有化合物を用いることができる。
次に図10(A)に示すように、ボンド基板400に、矢印で示すように水素又は希ガス、或いは水素イオン又は希ガスイオンを注入し、ボンド基板400の表面から一定の深さの領域に、微少ボイドを有する欠陥層402を形成する。欠陥層402が形成される位置は、上記注入の加速電圧によって決まる。そして欠陥層402の位置により、ボンド基板400からベース基板406に転置する半導体膜408の厚さが決まるので、注入の加速電圧は半導体膜408の厚さを考慮して行う。当該半導体膜408の厚さは10nm乃至200nm、好ましくは10nm乃至50nmの厚さとする。例えば水素をボンド基板400に注入する場合、ドーズ量は3×1016乃至1×1017/cm2とするのが望ましい。
なお、欠陥層402を形成する上記工程において、ボンド基板400に高い濃度の水素又は希ガス、或いは水素イオン又は希ガスイオンを注入するので、ボンド基板400の表面が粗くなってしまい、ベース基板406との間における接合で十分な強度が得られない場合がある。絶縁膜401を設けることで、水素又は希ガス、或いは水素と希ガスのイオンを注入する際にボンド基板400の表面が保護され、ベース基板406とボンド基板400の間における接合を良好に行うことが出来る。
次に図10(B)に示すように、絶縁膜401及びボンド基板400を部分的にエッチングすることで、絶縁膜401及びボンド基板400に凹部404を形成する。凹部404は、欠陥層402に到達しない程度の深さになるように、すなわち欠陥層402の深さよりも浅くなるように形成する。凹部404は、後にトランジスタの半導体膜410とベース基板406の間に形成される空洞409となる。よって凹部404の形成は、トランジスタ411の半導体膜410のレイアウトを考慮して行われる。
次に図10(C)に示すように、絶縁膜401及び凹部404を覆うように絶縁膜405を形成する。絶縁膜405は、絶縁膜401と同様に、酸化珪素、窒化酸化珪素、窒化珪素等の絶縁性を有する材料を用いて形成する。絶縁膜405は、単数の絶縁膜を用いたものであっても、複数の絶縁膜を積層して用いたものであっても良い。また絶縁膜405として、有機シランガスを用いて化学気相成長法により作製される酸化珪素を用いていても良い。本実施の形態では、ボンド基板400に近い側から、窒素よりも酸素の含有量が高い窒化酸化珪素、酸素よりも窒素の含有量が高い窒化酸化珪素、有機シランガスを用いて化学気相成長法により作製される酸化珪素の順に積層された絶縁膜405を用いる。
なお絶縁膜401または絶縁膜405に窒化珪素、窒化酸化珪素などのバリア性の高い絶縁膜を用いることで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がベース基板406または空洞409内の冷媒から半導体膜410に入るのを防ぐことができる。
なお本実施の形態では、欠陥層402を形成した後に絶縁膜405を形成しているが、絶縁膜405は必ずしも設ける必要はない。ただし絶縁膜405は欠陥層402を形成した後に形成されるので、欠陥層402を形成する前に形成される絶縁膜401よりも、その表面の平坦性は高い。よって、絶縁膜405を形成することで、後に行われる接合の強度をより高めることができる。
一方、ベース基板406上に絶縁膜407を形成する。絶縁膜407は、絶縁膜401と同様に、酸化珪素、窒化酸化珪素、窒化珪素等の絶縁性を有する材料を用いて形成する。絶縁膜407は、単数の絶縁膜を用いたものであっても、複数の絶縁膜を積層して用いたものであっても良い。また絶縁膜407として、有機シランガスを用いて化学気相成長法により作製される酸化珪素を用いていても良い。本実施の形態では、絶縁膜407として酸化珪素を用いる。
次に、ボンド基板400とベース基板406とを接合により貼り合わせる前に、ボンド基板400に水素化処理を行うようにしても良い。水素化処理は、例えば、水素雰囲気中において350℃、2時間程度行う。
そして図10(D)に示すように、ボンド基板400と、ベース基板406とを、絶縁膜401、絶縁膜405、絶縁膜407を間に挟むように貼り合わせる。ボンド基板400とベース基板406の貼り合わせは、凹部404がベース基板406側を向くように行う。絶縁膜405と絶縁膜407とが、凹部404以外の領域において接合することで、ボンド基板400とベース基板406とを貼り合わせることができる。
接合の形成はファン・デル・ワールス力を用いて行われているため、室温でも強固な接合が形成される。なお、上記接合は低温で行うことが可能であるため、ベース基板406は様々なものを用いることが可能である。例えばベース基板406としては、アルミノシリケートガラスバリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板の他、石英基板、サファイア基板などの基板を用いることが出来る。さらにベース基板406として、シリコン、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの半導体基板などを用いることができる。或いは、ステンレス基板を含む金属基板をベース基板406として用いても良い。また、プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、上記基板と比較して耐熱温度が一般的に低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐え得るのであればベース基板406として用いることが可能である。プラスチック基板として、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂などが挙げられる。
ボンド基板400として、シリコン、ゲルマニウムなどの単結晶半導体基板または多結晶半導体基板を用いることができる。その他に、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体で形成された単結晶半導体基板または多結晶半導体基板を、ボンド基板400として用いることができる。またボンド基板400として、結晶格子に歪みを有するシリコン、シリコンに対しゲルマニウムが添加されたシリコンゲルマニウムなどの半導体基板を用いていても良い。歪みを有するシリコンは、シリコンよりも格子定数の大きいシリコンゲルマニウムまたは窒化珪素上における成膜により、形成することができる。
なおベース基板406とボンド基板400とを貼り合わせた後に、加熱処理又は加圧処理を行っても良い。加熱処理又は加圧処理を行うことで接合の強度を向上させることができる。
ボンド基板400とベース基板406の間で、絶縁膜405と絶縁膜407との接合を行った後、熱処理を行うことにより、欠陥層402において隣接する微少ボイドどうしが結合して、微少ボイドの体積が増大する。その結果、図11(A)に示すように、欠陥層402においてボンド基板400が劈開し、ボンド基板400の一部であった半導体膜408が乖離する。熱処理の温度はベース基板406の耐熱温度以下で行うことが好ましく、例えば400℃乃至600℃の範囲内で熱処理を行えば良い。この剥離により、半導体膜408が、絶縁膜401及び絶縁膜405と共にベース基板406に転置される。その後、絶縁膜405と絶縁膜407の接合をさらに強固にするため、400℃乃至600℃の熱処理を行うのが好ましい。絶縁膜407の凹部404が絶縁膜405とベース基板406の間に挟まれることで、空洞409が形成される。
半導体膜408の結晶面方位はボンド基板400の面方位によって制御することができる。形成する半導体素子に適した結晶面方位を有するボンド基板400を、適宜選択して用いればよい。またトランジスタ411の移動度は半導体膜408の結晶面方位によって異なる。より移動度の高いトランジスタを得たい場合、チャネルの向きと結晶面方位とを考慮し、ボンド基板400の貼り合わせの方向を定めるようにする。
次に、転置された半導体膜408の表面を平坦化する。平坦化は必ずしも必須ではないが、平坦化を行うことで、後に形成されるトランジスタにおいて半導体膜408とゲート絶縁膜の界面の特性を向上させることが出来る。具体的に平坦化は、化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により、行うことができる。半導体膜408の厚さは、上記平坦化により薄膜化される。
なお本実施の形態では、欠陥層402の形成により半導体膜408をボンド基板400から剥離するスマートカット法を用いる場合について示すが、ELTRAN(Epitaxial Layer Transfer)、誘電体分離法、PACE(Plasma Assisted Chemical Etching)法などの、他の貼り合わせ法を用いて半導体膜408をベース基板406に貼り合わせるようにしても良い。
次に、図11(B)に示すように、半導体膜408をパターニングすることで、島状の半導体膜410を形成する。半導体膜408をパターニング後においても、島状の半導体膜410とベース基板406の間には、凹部404によって形成される空洞409が維持されている。
上記工程を経て形成された半導体膜410を用い、本発明はトランジスタ等の各種半導体素子を形成することが出来る。図11(C)には、半導体膜410を用いて形成されたトランジスタ411を例示している。
なお空洞409は、絶縁膜401及び絶縁膜405に形成された2つの開口部とつながっている。上記2つの開口部のうち、一方の開口部から導入された冷媒は、空洞409内を流れ、他方の開口部から排出される。冷媒は流体であることが望ましく、例えば液体であれば、純水、エチレングリコール、プロピレングリコール、水溶液、潤滑油などの油類を用いることができ、気体であれば空気、窒素、不活性ガスなどを用いることができる。なお上記水溶液には、プロピレングリコールに純水を加えたものも含まれる。
なお図7では、1つの半導体膜410と1つの空洞409とが重なっている例を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。複数の半導体膜410と1つの空洞409とが重なっていても良いし、1つの半導体膜410と複数の空洞409とが重なっていても良い。
また本実施の形態では、半導体膜410と空洞409との間に絶縁膜401及び絶縁膜405が設けられているが、接合の前に絶縁膜401及び絶縁膜405に開口部を形成しておくことで、該開口部において半導体膜410が空洞409と接するようにすることもできる。この場合、例えば酸化珪素などの無機絶縁膜に比べて比誘電率の低い空気、窒素、不活性ガスなどの材料を流体として用いれば、トランジスタ411の寄生容量または接合容量を低減することができ、半導体装置の低消費電力化を実現することが出来る。
本発明の半導体装置は、半導体膜410とベース基板406の間に、冷媒の経路となる空洞409を有しているので、半導体素子のセルフヒーティングによって熱が発せられても、効率的に半導体装置を冷却することができる。また本発明の作製方法では、エッチングなどの既に確立された手法を用いて凹部404を形成できるので、所望の深さ及び形状を有する空洞409を、簡単な手順で制御良く形成することが出来る。よって、本発明の作製方法では、位置及び形状の精度が良い空洞409を形成することができるため、冷媒の経路である空洞409を半導体膜410により近づけるように配置することができ、さらに効率よく半導体装置の冷却を行うことができる。従って、セルフヒーティングにより動作が不安定になるのを防ぎ、より安定した動作を確保することができる信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
なお本発明の作製方法を用いて形成されるトランジスタは、図11に示す構成に限定されない。例えば半導体膜410がLDD領域を有していても良いし、ゲートとして機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造であっても良い。
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の半導体装置におけるトランジスタの具体的な作製方法の一例について説明する。なお、本実施の形態では実施の形態5に示す作製方法により形成された半導体膜を用いる場合について説明するが、実施の形態6に示す作製方法により形成された半導体膜を用いていても良い。
まず図12(A)に示すように、凹部を有する絶縁膜502を、ベース基板501との間に有する島状の半導体膜503、島状の半導体膜504を形成する。絶縁膜502が有する凹部により、ベース基板501と島状の半導体膜503及び島状の半導体膜504との間に空洞505が形成されている。
島状の半導体膜503、504には、閾値電圧を制御するために不純物が添加されていても良い。例えば、p型を付与する不純物としてボロンを添加する場合、5×1017cm−3以上1×1018cm−3以下の濃度で添加すれば良い。閾値電圧を制御するための不純物の添加は、ベース基板501に半導体膜を転置する前に行っても良いし、転置後に行っても良い。
また島状の半導体膜503、504を形成した後、ゲート絶縁膜506を形成する前に水素化処理を行っても良い。水素化処理は、例えば、水素雰囲気中において350℃、2時間程度行う。
次に図12(B)に示すように、島状の半導体膜503、504を覆うように、ゲート絶縁膜506を形成する。ゲート絶縁膜506は、高密度プラズマ処理を行うことにより島状の半導体膜503、504の表面を酸化または窒化することで形成することができる。高密度プラズマ処理は、例えばHe、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスとを用いて行う。この場合プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化または窒化することにより、1〜20nm、望ましくは5〜10nmの絶縁膜が半導体膜に接するように形成される。この5〜10nmの絶縁膜をゲート絶縁膜506として用いる。
上述した高密度プラズマ処理による半導体膜の酸化または窒化は固相反応で進むため、ゲート絶縁膜506と島状の半導体膜503、504の界面準位密度をきわめて低くすることができる。また高密度プラズマ処理により半導体膜を直接酸化または窒化することで、形成される絶縁膜の厚さのばらつきを抑えることが出来る。また半導体膜が結晶性を有する場合、高密度プラズマ処理を用いて半導体膜の表面を固相反応で酸化させることにより、結晶粒界においてのみ酸化が速く進んでしまうのを抑え、均一性が良く、界面準位密度の低いゲート絶縁膜を形成することができる。高密度プラズマ処理により形成された絶縁膜を、ゲート絶縁膜の一部または全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを抑えることができる。
或いは、プラズマCVD法またはスパッタリング法などを用い、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウムまたは酸化タンタルを含む膜を、単層で、または積層させることで、ゲート絶縁膜506を形成しても良い。
次に図12(C)に示すように、ゲート絶縁膜506上に導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、島状の半導体膜503、504の上方に電極507を形成する。導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法等を用いることが出来る。導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることが出来る。また上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。または、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶珪素などの半導体を用いて形成しても良い。
2つの導電膜の組み合わせとして、1層目に窒化タンタルまたはタンタル(Ta)を、2層目にタングステン(W)を用いることが出来る。上記例の他に、窒化タングステンとタングステン、窒化モリブデンとモリブデン、アルミニウムとタンタル、アルミニウムとチタン等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、2層の導電膜を形成した後の工程において、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層目の導電膜の組み合わせとして、例えば、n型を付与する不純物がドーピングされた珪素とNiSi(ニッケルシリサイド)、n型を付与する不純物がドーピングされたSiとWSix等も用いることが出来る。
また、本実施の形態では電極507を単層の導電膜で形成しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。電極507は積層された複数の導電膜で形成されていても良。3つ以上の導電膜を積層する3層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造を採用するとよい。
なお電極507を形成する際に用いるマスクとして、レジストの代わりに酸化珪素、酸化窒化珪素等をマスクとして用いてもよい。この場合、パターニングして酸化珪素、酸化窒化珪素等のマスクを形成する工程が加わるが、エッチング時におけるマスクの膜減りがレジストよりも少ないため、所望の幅を有する電極507を形成することができる。またマスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的に電極507を形成しても良い。
なお液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出または噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
また電極507は、導電膜を形成後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状を有するようにエッチングすることができる。また、テーパー形状は、マスクの形状によっても角度等を制御することができる。なお、エッチング用ガスとしては、Cl2、BCl3、SiCl4もしくはCCl4などの塩素系ガス、CF4、SF6もしくはNF3などのフッ素系ガス又は酸素を適宜用いることができる。
次に図12(D)に示すように、電極507をマスクとして一導電型を付与する不純物元素を半導体膜503、504に添加する。本実施の形態では、半導体膜503にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を、半導体膜504にn型を付与する不純物元素(例えばリンまたはヒ素)を添加する。なお、p型を付与する不純物元素を半導体膜503に添加する際、n型の不純物が添加される半導体膜504はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。逆にn型を付与する不純物元素を半導体膜504に添加する際、p型の不純物が添加される半導体膜503はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。或いは、先に半導体膜503及び半導体膜504にp型もしくはn型のいずれか一方を付与する不純物元素を添加した後、一方の半導体膜のみに選択的により高い濃度でp型もしくはn型のうちの他方を付与する不純物元素のいずれか一方を添加するようにしても良い。上記不純物の添加により、半導体膜503に不純物領域508、半導体膜504に不純物領域509が形成される。
次に、図13(A)に示すように、電極507の側面にサイドウォール510を形成する。サイドウォール510は、例えば、ゲート絶縁膜506及び電極507を覆うように新たに絶縁膜を形成し、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより、新たに形成された該絶縁膜を部分的にエッチングすることで、形成することが出来る。上記異方性エッチングにより、新たに形成された絶縁膜が部分的にエッチングされて、電極507の側面にサイドウォール510が形成される。なお上記異方性エッチングにより、ゲート絶縁膜506も部分的にエッチングしても良い。サイドウォール510を形成するための絶縁膜は、プラズマCVD法やスパッタリング法等により、珪素膜、酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜または窒化酸化珪素膜や、有機樹脂などの有機材料を含む膜を、単層または積層して形成することができる。本実施の形態では、膜厚100nmの酸化珪素膜をプラズマCVD法によって形成する。またエッチングガスとしては、CHF3とHeの混合ガスを用いることができる。なお、サイドウォール510を形成する工程は、これらに限定されるものではない。
次に図13(B)に示すように、電極507及びサイドウォール510をマスクとして、半導体膜503、504に一導電型を付与する不純物元素を添加する。なお、半導体膜503、504には、それぞれ先の工程で添加した不純物元素と同じ導電型の不純物元素をより高い濃度で添加する。なお、p型を付与する不純物元素を半導体膜503に添加する際、n型の不純物が添加される半導体膜504はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。逆にn型を付与する不純物元素を半導体膜504に添加する際、p型の不純物が添加される半導体膜503はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。
上記不純物元素の添加により、半導体膜503に、一対の高濃度不純物領域511と、一対の低濃度不純物領域512と、チャネル形成領域513とが形成される。また上記不純物元素の添加により、半導体膜504に、一対の高濃度不純物領域514と、一対の低濃度不純物領域515と、チャネル形成領域516とが形成される。高濃度不純物領域511、514はソース又はドレインとして機能し、低濃度不純物領域512、515はLDD(Lightly Doped Drain)領域として機能する。
なお、半導体膜504上に形成されたサイドウォール510と、半導体膜503上に形成されたサイドウォール510は、キャリアが移動する方向における幅が同じになるように形成しても良いが、該幅が異なるように形成しても良い。p型トランジスタとなる半導体膜504上のサイドウォール510の幅は、n型トランジスタとなる半導体膜503上のサイドウォール510の幅よりも長くすると良い。なぜならば、p型トランジスタにおいてソース及びドレインを形成するために注入されるボロンは拡散しやすく、短チャネル効果を誘起しやすいためである。p型トランジスタにおいて、サイドウォール510の幅より長くすることで、ソース及びドレインに高濃度のボロンを添加することが可能となり、ソース及びドレインを低抵抗化することができる。
次に、ソース及びドレインをさらに低抵抗化するために、半導体膜503、504をシリサイド化することで、シリサイド層を形成しても良い。シリサイド化は、半導体膜に金属を接触させ、加熱処理、GRTA法、LRTA法等により、半導体層中の珪素と金属とを反応させて行う。シリサイド層としては、コバルトシリサイド若しくはニッケルシリサイドを用いれば良い。半導体膜503、504の厚さが薄い場合には、この領域の半導体膜503、504の底部までシリサイド反応を進めても良い。シリサイド化に用いる金属の材料として、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、Ha(ハフニウム)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ネオジム(Nb)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等を用いることができる。また、レーザ照射やランプなどの光照射によってシリサイドを形成しても良い。
上述した一連の工程により、nチャネル型トランジスタ517と、pチャネル型トランジスタ518とが形成される。
次に図13(C)に示すように、トランジスタ517、518を覆うように絶縁膜519を形成する。絶縁膜519は必ずしも設ける必要はないが、絶縁膜519を形成することで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がトランジスタ517、518へ侵入するのを防ぐことが出来る。具体的に絶縁膜519として、窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などを用いるのが望ましい。本実施の形態では、膜厚600nm程度の酸化窒化珪素膜を、絶縁膜519として用いる。この場合、上記水素化の工程は、該酸化窒化珪素膜形成後に行っても良い。
次に、トランジスタ517、518を覆うように、絶縁膜519上に絶縁膜520を形成する。絶縁膜520は、ポリイミド、アクリル、ポリイミド、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、アルミナ等を用いることができる。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有していても良い。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜520を形成しても良い。絶縁膜520は、その表面をCMP法などにより平坦化させても良い。
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち、少なくとも1種を有していても良い。
絶縁膜520の形成には、その材料に応じて、CVD法、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
次に図14に示すように、島状の半導体膜503、504がそれぞれ一部露出するように絶縁膜519及び絶縁膜520にコンタクトホールを形成する。そして、該コンタクトホールを介して島状の半導体膜503、504に接する導電膜521、522を形成する。コンタクトホール開口時のエッチングに用いられるガスは、CHF3とHeの混合ガスを用いたが、これに限定されるものではない。
導電膜521、522は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。具体的に導電膜521、522として、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジウム(Nd)、炭素(C)、珪素(Si)等を用いることが出来る。また上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。導電膜521、522は、上記金属が用いられた膜を単層または複数積層させて形成することが出来る。
アルミニウムを主成分とする合金の例として、アルミニウムを主成分としニッケルを含むものが挙げられる。また、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素または珪素の一方または両方とを含むものも例として挙げることが出来る。アルミニウムやアルミニウムシリコンは抵抗値が低く、安価であるため、導電膜521、522を形成する材料として最適である。特にアルミニウムシリコン(Al−Si)膜は、導電膜521、522をパターニングで形成するとき、レジストベークにおけるヒロックの発生をアルミニウム膜に比べて防止することができる。また、珪素(Si)の代わりに、アルミニウム膜に0.5%程度のCuを混入させても良い。
導電膜521、522は、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造を採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデンまたはモリブデンの窒化物を用いて形成された膜である。アルミニウムシリコン(Al−Si)膜を間に挟むようにバリア膜を形成すると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生をより防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンを用いてバリア膜を形成すると、島状の半導体膜503、504上に薄い酸化膜ができていたとしても、バリア膜に含まれるチタンがこの酸化膜を還元し、導電膜521、522と島状の半導体膜503、504が良好なコンタクトをとることができる。またバリア膜を複数積層するようにして用いても良い。その場合、例えば、導電膜521、522を下層からTi、窒化チタン、Al−Si、Ti、窒化チタンの5層構造とすることが出来る。
なお、導電膜521はnチャネル型トランジスタ517の高濃度不純物領域511に接続されている。導電膜522はpチャネル型トランジスタ518の高濃度不純物領域514に接続されている。
また、絶縁膜519及び絶縁膜520と、絶縁膜502とに、空洞505につながるような開口部523を少なくとも2つ形成する。開口部523の形成はエッチング等により行うことができる。
図14には、nチャネル型トランジスタ517及びpチャネル型トランジスタ518と、空洞505の上面図が示されている。ただし図14では導電膜521、522を省略した図を示している。本実施の形態では、空洞505が部分的に分岐しており、分岐により枝分かれしている部分が島状の半導体膜503、504と重なっている。なお本発明はこの構成に限定されない。空洞505の数及びそのレイアウトは、本実施の形態で示した構成に限定されない。
また本実施の形態では、nチャネル型トランジスタ517とpチャネル型トランジスタ518が、それぞれゲートとして機能する電極507を1つずつ有する場合を例示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の半導体装置が有するトランジスタは、ゲートとして機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造を有していても良い。
また本発明の半導体装置が有するトランジスタは、ゲートプレナー構造を有していても良い。
本発明の作製方法を用いた半導体装置では、ベース基板に島状の半導体膜を形成するため、素子分離を行う必要がないので、工程を簡略化できる。また本発明の作製方法では、絶縁膜502をエッチングすることで空洞505を形成しているので、所望の深さ及び形状を有する空洞505を、簡単な手順で制御良く形成することが出来る。
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。