JP2008298666A - 電子スピン共鳴装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】増幅器の増幅率を上げたときのベースラインの変動を抑えることで、取得信号のダイナミックレンジを拡大できる電子スピン共鳴装置を提供すること。
【解決手段】静磁場中に置かれた共振器内に被測定試料を設置し、静磁場強度を可変させながらそこに高周波を印加して、静磁場強度の変化に依存して起きる被測定試料による該高周波の吸収信号を該共振器からの反射信号として観測するように構成された電子スピン共鳴装置において、前記静磁場に第1の発振器で与えられる交流信号に基づく変調磁場を重畳させ、その結果現れる変調のかかった反射信号に該第1の発振器と同期の取れた同一周波数で発振する第2の発振器からの交流信号を加算し、加算後、該反射信号を前置増幅器により初段増幅するようにした。
【選択図】図2

Description

本発明は、磁場変調技術を利用した電子スピン共鳴装置に関する。
電子スピン共鳴装置は、磁場中に置かれた被測定試料にマイクロ波を照射しながら、照射したマイクロ波が被測定試料によって吸収される様子をスペクトルとして記録するようにした磁気共鳴装置の一種である。被測定試料中にフリーラジカルが存在すると、磁場の掃引に伴ってマイクロ波の吸収が起こり、フリーラジカルの分子構造を反映した吸収スペクトルが記録される。この吸収スペクトルを解析することにより、フリーラジカルの分子構造に関する情報を得ることができる。
図1は、従来の電子スピン共鳴装置のブロックダイアグラムである。被測定試料は、電磁石6により発生される静磁場内に設置された共振器3中に置かれる。発振器1より発生されたマイクロ波は、サーキュレータ2を介して共振器3に導入され、共振器3からの反射波がほとんどない状態に調整された後、静磁場の掃引が行なわれる。
静磁場の掃引に伴って電子スピン共鳴現象が発生すると、共振器3内で被測定試料によるマイクロ波の吸収が起こり、共振器3のQ値が変化してマイクロ波の反射が起こり、サーキュレータ2を介して、反射波が取り出される。この反射波と、位相器4を介して送られてきた参照波で、位相検波器5による位相検波が行なわれ、電子スピン共鳴による吸収信号が検出される。
尚、従来の電子スピン共鳴装置では、発振器7で発生させた例えば100kHz程度の交流電流を、パワーアンプ8を介して変調コイル9に供給することにより、静磁場に変調を与え、100kHzで変調された吸収信号を観測している。この吸収信号を増幅器10で増幅し、発振器7と同期の取れた発振器11から供給される参照信号を用いて位相検波器12で位相検波することにより、DC成分としての電子スピン共鳴吸収スペクトルを得ている。
こうして得られたスペクトル信号に対して、必要に応じてDC可変器13の出力を調整して加算器14により加算し、オフセット成分を除去して、A/D変換器15で図示しないコンピュータに取り込む。
大矢博昭、山内淳著『電子スピン共鳴―素材のミクロキャラクタリゼーション―』、1989年9月20日、講談社サイエンティフィク刊、25〜33頁。
ところで、実際の測定では、磁場変調による変調成分の漏れが発生し、それが位相検波器5のDC成分に加算され、ベースラインが変動する。そこで、このDC成分を打ち消すべく、DC可変器13の出力を可変して、A/D変換器15の動作可能範囲に電圧レベルを調整している。
しかしながら、増幅器10の増幅率を上げたり、パワーアンプ8の増幅率を上げて磁場変調幅を広げたりすると、この漏れ成分もそれに依存して増幅されたり増大したりするので、結果的にDC成分を十分に打ち消すことができなくなり、スペクトル信号が取得できない状態に陥る。
また、後段の加算器14においてDC成分を加算しても、増幅器は一般的には電源電圧レベルまでしか増幅できないため、ベースラインの変動では出力が飽和していなくても、それに所望のスペクトル信号が加わったときに出力信号が飽和してしまい、完全なスペクトル信号が取得できなくなることもある。
本発明の目的は、上述した点に鑑み、増幅器の増幅率を上げたときのベースラインの変動を抑えることで、取得信号のダイナミックレンジを拡大できる電子スピン共鳴装置を提供することにある。
この目的を達成するため、本発明にかかる電子スピン共鳴装置は、
静磁場中に置かれた共振器内に被測定試料を設置し、静磁場強度を可変させながらそこに高周波を印加して、静磁場強度の変化に依存して起きる被測定試料による該高周波の吸収信号を該共振器からの反射信号として観測するように構成された電子スピン共鳴装置において、
前記静磁場に第1の発振器で与えられる交流信号に基づく変調磁場を重畳させ、その結果現れる変調のかかった反射信号に該第1の発振器と同期の取れた同一周波数で発振する第2の発振器からの交流信号を加算し、加算後、該反射信号を前置増幅器により初段増幅するようにしたことを特徴としている。
また、前記2つの発振器は、周波数と位相と振幅をディジタル制御可能なDDSであることを特徴としている。
また、前記2つの発振器は、位相と振幅を固定されたアナログ周波数発生源に位相器と減衰器または増幅器を組み合わせた構成であることを特徴としている。
また、前記2つの発振器の代わりに、1台の発振器から分岐して供給される出力信号を位相器と減衰器または位相器と増幅器を介して用いるようにしたことを特徴としている。
本発明の電子スピン共鳴によれば、
静磁場中に置かれた共振器内に被測定試料を設置し、静磁場強度を可変させながらそこに高周波を印加して、静磁場強度の変化に依存して起きる被測定試料による該高周波の吸収信号を該共振器からの反射信号として観測するように構成された電子スピン共鳴装置において、
前記静磁場に第1の発振器で与えられる交流信号に基づく変調磁場を重畳させ、その結果現れる変調のかかった反射信号に該第1の発振器と同期の取れた同一周波数で発振する第2の発振器からの交流信号を加算し、加算後、該反射信号を前置増幅器により初段増幅するようにしたので、
増幅器の増幅率を上げたときのベースラインの変動を抑えることで、取得信号のダイナミックレンジを拡大できる電子スピン共鳴装置を提供することが可能になった。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図2は、本発明にかかる電子スピン共鳴装置のブロックダイアグラムである。被測定試料は、電磁石6により発生される静磁場内に設置された共振器3中に置かれる。発振器1より発生されたマイクロ波は、サーキュレータ2を介して共振器3に導入され、共振器3からの反射波がほとんどない状態に調整された後、静磁場の掃引が行なわれる。
静磁場の掃引に伴って電子スピン共鳴現象が発生すると、共振器3内で被測定試料によるマイクロ波の吸収が起こり、共振器3のQ値が変化してマイクロ波の反射が起こり、サーキュレータ2を介して、反射波が取り出される。この反射波と、位相器4を介して送られてきた参照波で、位相検波器5による位相検波が行なわれ、電子スピン共鳴による吸収信号が検出される。
本発明の電子スピン共鳴装置では、発振器7で発生させた例えば100kHz程度の交流電流を、パワーアンプ8を介して変調コイル9に供給することにより、静磁場に変調を与え、100kHzで変調された反射波を観測している。そして、この反射波に発振器7と同期の取れた発振器16から供給される同一周波数のダミー信号を加算器17で加算することにより、増幅器10の前段において、変調成分の漏れに由来する不要な交流成分を打ち消すように調整している。
発振器16の具体的な例としては、周波数と位相、さらに振幅をディジタル制御可能なDDS(Direct Digital Synthesizer)に相当するような発振器が好ましい。もちろん、位相と振幅を固定されたアナログ周波数発生源を用い、位相器と減衰器(増幅器)を組み合わせて、同様な機能を備えても良い。
また、発振器16の出力と位相検波器7の出力を合成する加算器17の具体的な例としては、発振器16の出力と位相検波器の出力の合成比率を可変できるローノイズなOPアンプ等が好ましい。
こうして観測する必要のない、不要な変調成分を加算器17を使って打ち消した後、増幅器10で信号を増幅し、発振器7と同期の取れた発振器11から供給される参照信号を用いて位相検波器12で位相検波することにより、DC成分としての電子スピン共鳴吸収スペクトルを得る。
こうして得られたスペクトル信号に対して、必要に応じてDC可変器13の出力を調整して加算器14により加算し、オフセット成分を除去して、A/D変換器15で図示しないコンピュータに取り込む。
図3に本発明の効果を示す。増幅器10の増幅率を上げても、不要な変調成分が十分に打ち消されているので、従来装置と比べてベースラインの位置が安定している。
本発明は、取得したい電子スピン共鳴信号が試料管やサンプルの不純物の信号等でかさ上げされて測定不能に陥ってしまうような場合にも有効である。
図4は、本発明にかかる別の電子スピン共鳴装置のブロックダイアグラムである。被測定試料は、電磁石6により発生される静磁場内に設置された共振器3中に置かれる。発振器1より発生されたマイクロ波は、サーキュレータ2を介して共振器3に導入され、共振器3からの反射波がほとんどない状態に調整された後、静磁場の掃引が行なわれる。
静磁場の掃引に伴って電子スピン共鳴現象が発生すると、共振器3内で被測定試料によるマイクロ波の吸収が起こり、共振器3のQ値が変化してマイクロ波の反射が起こり、サーキュレータ2を介して、反射波が取り出される。この反射波と、位相器4を介して送られてきた参照波で、位相検波器5による位相検波が行なわれ、電子スピン共鳴による吸収信号が検出される。
本発明の電子スピン共鳴装置では、発振器7で発生させた例えば100kHz程度の交流電流を、パワーアンプ8を介して変調コイル9に供給することにより、静磁場に変調を与え、100kHzで変調された反射波を観測している。そして、この反射波に発振器7と同期の取れた発振器16から供給される同一周波数のダミー信号を加算器17で加算することにより、増幅器10の前段において、変調成分の漏れに由来する不要な交流成分を打ち消すように調整している。
発振器16の具体的な例としては、周波数と位相、さらに振幅をディジタル制御可能なDDS(Direct Digital Synthesizer)に相当するような発振器が好ましい。もちろん、位相と振幅を固定されたアナログ周波数発生源を用い、位相器と減衰器(増幅器)を組み合わせて、同様な機能を備えても良い。
また、発振器16の出力と位相検波器7の出力を合成する加算器17の具体的な例としては、発振器16の出力と位相検波器の出力の合成比率を可変できるローノイズなOPアンプ等が好ましい。
こうして観測する必要のない、不要な変調成分を加算器17を使って打ち消した後、増幅器10で信号を増幅し、A/D変換器18を介してDSP(Digital Signal Processor)20に取り込ませる。
一方、発振器7と同期の取れた発振器11から供給される参照信号をA/D変換器19を介してDSP(Digital Signal Processor)20に取り込ませる。DSP20の内部でディジタル信号処理による位相検波を行なわせ、DC成分としての電子スピン共鳴吸収スペクトルを得る。
尚、図4ではDSPを採用しているが、特にDSPである必要はなく、演算ができるCPUであれば良い。
本発明は、取得したい電子スピン共鳴信号が試料管やサンプルの不純物の信号等でかさ上げされて測定不能に陥ってしまうような場合にも有効である。
上記実施例では、発振器7、11、16をいずれも別体として構成したが、変形例として、1台の発振器の出力信号を複数に分岐させて、位相器と減衰器または位相器と増幅器を介して供給させ、他の発振器の代用としても良い。
電子スピン共鳴測定に広く利用できる。
従来の電子スピン共鳴装置の一例を示す図である。 本発明にかかる電子スピン共鳴装置の一実施例を示す図である。 本発明の効果を示す図である。 本発明にかかる電子スピン共鳴装置の別の実施例を示す図である。
符号の説明
1:発振器、2:サーキュレータ、3:共振器、4:位相器、5:位相検波器、6:電磁石、7:発振器、8:パワーアンプ、9:変調コイル、10:増幅器、11:発振器、12:位相検波器、13:DC可変器、14:加算器、15:A/D変換器、16:発振器、17:加算器、18:A/D変換器、19:A/D変換器、20:DSP(CPU)

Claims (4)

  1. 静磁場中に置かれた共振器内に被測定試料を設置し、静磁場強度を可変させながらそこに高周波を印加して、静磁場強度の変化に依存して起きる被測定試料による該高周波の吸収信号を該共振器からの反射信号として観測するように構成された電子スピン共鳴装置において、
    前記静磁場に第1の発振器で与えられる交流信号に基づく変調磁場を重畳させ、その結果現れる変調のかかった反射信号に該第1の発振器と同期の取れた同一周波数で発振する第2の発振器からの交流信号を加算し、加算後、該反射信号を前置増幅器により初段増幅するようにしたことを特徴とする電子スピン共鳴装置。
  2. 前記2つの発振器は、周波数と位相と振幅をディジタル制御可能なDDSであることを特徴とする請求項1記載の電子スピン共鳴装置。
  3. 前記2つの発振器は、位相と振幅を固定されたアナログ周波数発生源に位相器と減衰器または増幅器を組み合わせた構成であることを特徴とする請求項1記載の電子スピン共鳴装置。
  4. 前記2つの発振器の代わりに、1台の発振器から分岐して供給される出力信号を位相器と減衰器または位相器と増幅器を介して用いるようにしたことを特徴とする請求項1、2、または3記載の電子スピン共鳴装置。
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