JP2008298209A - 車両の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の出力変化が生じ得る場合に変速装置の耐久性低下を抑制する。
【解決手段】車両10は、変速装置としてCVT300を搭載する。また、車両10はFFVであり、エンジン200は、エタノール濃度DEが可変なエタノール混合燃料を使用可能に構成される。CVT300には、入力軸回転速度NINの上限を規定するWOTガード値NINWOTが車速Vに対応付けられる形で設定されている。このWOTガード値NINWOTは、WOT変速線としてECU100のROMに格納されたWOT変速線マップMP04に設定されている。ここで、WOT変速線は、乖離点に相当する車速V及び入力軸回転速度NINにおいて最大変速比γmaxを表す最大変速線からより低変速比側に乖離するが、この乖離点は、燃料中のエタノール濃度DEが高くなる程低車速且つ低入力軸回転速度側にシフトするよう設定される。
【選択図】図8
【解決手段】車両10は、変速装置としてCVT300を搭載する。また、車両10はFFVであり、エンジン200は、エタノール濃度DEが可変なエタノール混合燃料を使用可能に構成される。CVT300には、入力軸回転速度NINの上限を規定するWOTガード値NINWOTが車速Vに対応付けられる形で設定されている。このWOTガード値NINWOTは、WOT変速線としてECU100のROMに格納されたWOT変速線マップMP04に設定されている。ここで、WOT変速線は、乖離点に相当する車速V及び入力軸回転速度NINにおいて最大変速比γmaxを表す最大変速線からより低変速比側に乖離するが、この乖離点は、燃料中のエタノール濃度DEが高くなる程低車速且つ低入力軸回転速度側にシフトするよう設定される。
【選択図】図8
Description
本発明は、例えばCVT(Continuously Variable Transmission:連続式無段変速装置)等、変速比を連続変化させることが可能な変速装置を備えた車両の変速制御装置の技術分野に関する。
この種の装置として、燃料のアルコール濃度を考慮したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された無段変速機の制御装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、燃料のアルコール濃度と共にエンジン出力が高くなるのに応じて、エンジン回転数の低い変速パターンが採用されるため、常に同一の動力性能を得ることができ、エンジン騒音を低減することができるとされている。また、アルコール濃度の低い場合には出力を重視し、アルコール濃度が高い場合には燃費を重視することにより出力と燃費の両者を向上させることも可能であるとされている。
尚、自動変速機の変速を制御する変速制御手段がアクセル或いはスロットル全開時の自動変速機の変速に用いる変速線を、エンジン回転制御手段によってエンジンの回転速度が制御可能か否かに基づいて変更する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
この種の変速装置では、車両がアクセル全開で発進するような場合における車両のドライバビリティ確保及び変速装置の耐久性確保を目的として、入力軸回転速度の上限値が設定される。ところが、従来の技術は、このような上限値については何ら言及しておらず、燃料種によるエンジン出力の変化に伴う過剰な負荷により、変速装置の耐久性が低下しかねない。即ち、従来の技術には、エンジンの出力変化が生じ得る車両において、変速装置の耐久性が低下しかねないという技術的な問題点がある。
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、効率的且つ効果的に変速装置の耐久性の低下を抑制し得る車両の変速制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る車両の変速制御装置は、内燃機関と、該内燃機関の機関出力軸に該機関出力軸の回転に伴って回転可能に連結される入力軸及び車軸に該車軸の回転に伴って回転可能に連結される出力軸を有し、該入力軸の回転速度を表す入力軸回転速度と該出力軸の回転速度を表す出力軸回転速度との比たる変速比を連続変化させることが可能な変速装置とを備えた車両の変速制御装置であって、前記車両の速度に対応付けられた上限値以下の範囲で前記入力軸回転速度の目標値を設定する第1の設定手段と、前記入力軸回転速度が前記設定された目標値となるように前記変速装置を制御する制御手段と、前記内燃機関の燃料に係る燃料性状を特定する特定手段と、前記特定された燃料性状に応じて前記上限値を設定する第2の設定手段とを具備し、前記第1の設定手段は、前記設定された上限値以下の範囲で前記目標値を設定することを特徴とする。
本発明における「内燃機関」とは、例えば複数の気筒を有し、当該各々の燃焼室において、例えばガソリン或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する爆発力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等を適宜介して動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念であり、例えば2サイクル或いは4サイクルレシプロエンジン等を指す。
この内燃機関における、例えばクランクシャフト等の機関出力軸には、例えば、プーリ方式やトロイダル方式等、各種の物理的、機械的、機構的又は電気的態様を有するCVT等、各種態様を採り得る本発明に係る変速装置の入力軸が、例えば、物理的又は機械的に直接、又はトルクコンバータ等の流体伝達手段が介在した状態で間接的に、或いはロックアップクラッチ等各種係合手段の係合状態に応じて直接又は間接の態様が適宜に切り替わる形で、当該機関出力軸の回転に伴って回転可能に連結される。従って、内燃機関の機関出力軸の回転速度(以下、適宜「機関回転速度」と称する)は、変速装置の入力軸の回転速度(即ち、入力軸回転速度)と一義的な関係を有し得る。特に、内燃機関の機関出力軸と変速装置の入力軸とが例えばロックアップクラッチ等の摩擦係合手段等を介して直接連結されている場合、入力軸回転速度と機関回転速度とは相互に一致する。
一方、この変速装置の出力軸は、例えばプロペラシャフトを介して(例えばFR型の駆動形態を採る場合や4輪駆動である場合等)或いは介することなく(例えばFF型の駆動形態を採る場合等)、また、例えばデファレンシャル等の最終減速機を含み得る各種減速ギア装置等を介して、駆動輪と一義的な関係を保って回転する車軸(例えば、ドライブシャフトやアクスルシャフト)に連結され、車軸の回転に伴って回転可能に構成される。本発明に係る変速装置は、上述した入力軸回転速度と、この出力軸の回転速度たる出力回転速度との比たる変速比を連続変化させることが可能な物理的、機械的、機構的又は電気的構成を有する変速装置を包括する概念である。
本発明に係る車両の変速制御装置によれば、その動作時には、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第1の設定手段により、入力軸回転速度の目標値(以下、適宜「目標入力軸回転速度」と称する)が設定される。また、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る制御手段により、入力軸回転速度がこの設定された目標入力軸回転速度となるように、例えば予め適合された制御値に基づいたフィードフォワード制御、或いはそれに替えて又は加えて実行される入力軸回転速度の実測値に基づいたフィードバック制御等を介して変速装置が制御される。
尚、本発明に係る「目標値」とは、好適な一形態としては、その時点の内燃機関の運転条件、例えば車両の速度(以下、適宜「車速」と称する)及びアクセル開度等に基づいて、或いはそれらを適宜参照して算出又は取得される要求駆動力や要求出力等に基づいて算出又は取得され得る、入力軸回転速度の最終的な目標値とは異なり、入力軸回転速度を当該最終的な目標値に最終的に到達せしめるための変速制御過程における、中間的な或いは暫定的な目標値を表す概念である。この目標値は、好適な一形態として、一の変速制御過程において順次設定される、入力軸回転速度のフィードバック制御に係る収束目標値を表す。
この種の変速装置によれば、変速装置の採り得る変速比の範囲内で実現可能である限りにおいて、また少なくとも、内燃機関において例えば物理的、機械的又は機構的な理由で定まる自立回転可能な機関回転速度の下限値(以下、適宜「最低自立回転速度」と称する)と、同じく例えば物理的、機械的又は機構的な理由で定まる機関回転速度の上限値(以下、適宜「レブリミット」と称する)との間で、機関回転速度を自由に選択可能である。従って、例えばスロットル開度の制御等を介して内燃機関の負荷(例えば、実践上は出力トルク等により好適に代替される趣旨である)を変化させること等により、機関回転速度と負荷との組み合わせとして好適に規定される動作点を、少なくとも固定された変速比しか採り得ない変速装置が使用される場合と較べて明らかに自由に選択可能となる。
ここで、例えばアクセル全開発進時等、相対的にみて急激な加速が要求される運転条件において、例えば車両の動力性能(例えば、加速性能)が優先される場合、機関回転速度がレブリミットに到達するまで最大変速比を維持し、機関回転速度がレブリミットに到達して以降レブリミットを維持しつつ変速比を連続変化させるのが好ましい態様の一として考えられる。然るに、この場合、機関回転速度がレブリミットを維持したまま車速が上昇することとなり、ドライバビリティの著しい悪化を招きかねない。
そこで、変速装置には、車速に直接的に、又は車速と相関する例えば出力軸回転速度等によって間接的に対応付けられる形で、入力軸回転速度の上限値(車速が出力軸回転速度と一義的な関係を有し得る点に鑑みれば、即ち変速比の上限値と換言することが可能である)が設けられる。本発明に係る設定手段は、この上限値以下(上限値の設定如何により容易に「未満」と置換し得る概念である)の範囲で、例えば上述した概念としての目標入力軸回転速度を設定するため、車両は、好適には動力性能及びドライバビリティ各々の悪化を実践上無視し得ない程度に顕在化させることなく走行することができる。
一方、この種の変速装置では、変速比が大きい程、内燃機関の機関出力軸に連結される入力側におけるベルトやチェーン等の有効半径が小さくなり、歪や応力が生じ易い傾向にある。従って、変速装置に加わる物理的又は機械的な負荷、顕著には当該入力側における負荷は、少なくとも車速が一定であれば変速比が大きい程(即ち、入力軸回転速度が高い程)大きくなる傾向にある。即ち、上述した上限値は、少なくとも実践上は、変速装置の耐久性が担保され得るように設定されるのが望ましい。
ここで特に、内燃機関においては、燃料性状が変化した場合に出力特性が変化することがある。このような出力特性の変化によって一の動作条件における内燃機関の出力が上昇する場合、上述した変速装置に加わる負荷もその影響を受ける形で増加する。従って、このような出力特性の変化が何ら考慮されない場合には、入力軸回転速度の上限値は、上限値が変速装置に許容される外的負荷要因の限界量のみを規定すべく設けられるか否かは別として(言い換えれば、ドライバビリティを担保する観点からより安全側で上限値が設定されるか否かは別として)、必ずしも変速装置の物理的な、機械的な、機構的な、或いは電気的な耐久性の限界を規定しない。従って、入力軸回転速度が上限値によって制限されているにもかかわらず、過剰な負荷が変速装置に加わることにより変速装置の耐久性が低下するといった事態が発生しかねない。
そこで、本発明に係る車両の変速制御装置によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る特定手段により、内燃機関の燃料に係る燃料性状が特定され、且つ例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第2の設定手段により、この特定された燃料性状に応じて、第1の設定手段による目標入力軸回転速度の設定に際して適宜参照される上述した上限値が二値的に、段階的に或いは連続的に設定される。
ここで、本発明に係る「特定」とは、例えば、何らかの検出手段を介して直接的に又は間接的に物理的数値又は物理的数値に対応する電気信号等として検出すること、予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から該当する数値を選択又は推定すること、それら検出された物理的数値若しくは電気信号又は選択若しくは推定された数値等から、予め設定されたアルゴリズムや計算式等に従った論理演算や数値演算の結果として導出すること、或いはこのように検出、選択、推定又は導出された値等を単に電気信号等として取得すること等を包括する広い概念である。また、本発明に係る「燃料性状」とは、その変化が内燃機関の出力変化を伴い得る燃料の物理的、電気的又は化学的な状態を包括する概念である。
このように燃料性状に応じて上限値が補正されることにより、例えば内燃機関の出力が上昇する方向への燃料性状の変化に対し上限値をより安全側(即ち、好適には低回転側)で設定する等の処置が可能となり、上限値が変速装置において許容される外的負荷要因の限界のみを規定すべく設けられるか否かは別として、少なくとも入力軸回転速度が上限値に基づいて制限されているにもかかわらず変速装置の耐久性が低下するといった不具合の発生を回避することができる。この際、燃料性状を反映する形で上限値が設定されることによって、入力軸回転速度が例えば相対的に低回転側で制限を受けたとしても、燃料性状による出力変化が当該制限による出力低下を補い得るため、上限値の設定が、ドライバビリティの悪化を少なくとも実践上顕在化させることはない。即ち、本発明に係る車両の変速制御装置によれば、効率的且つ効果的に変速装置の耐久性低下を抑制することが可能となるのである。
本発明に係る車両の変速制御装置の一の態様では、前記特定手段は、前記燃料性状として前記燃料のオクタン価を特定する。
オクタン価の変化によって内燃機関の出力特性は変化し得るから、この態様によれば、変速装置の耐久性が効率的且つ効果的に担保される。
本発明に係る車両の変速制御装置の他の態様では、前記燃料は、ガソリンとアルコールとの混合燃料であり、前記特定手段は、前記燃料性状として前記アルコールの濃度を特定する。
アルコール濃度によって内燃機関の出力特性は変化し得るから、この態様によれば、変速装置の耐久性が効率的且つ効果的に担保される。
本発明に係る車両の変速制御装置の一の態様では、前記第1の設定手段は、前記車両の運転条件に基づいて前記目標値の暫定値を決定すると共に、前記決定された暫定値が前記設定された上限値以下である場合には前記決定された暫定値を、また前記決定された暫定値が前記設定された上限値よりも大きい場合には前記設定された上限値を、夫々前記目標値として設定する。
この態様によれば、第1の設定手段は、例えば車速、アクセル開度、要求駆動力或いは要求出力等の運転条件に基づいて、例えば上述した最終的な目標値としての入力軸回転速度に対し例えば時間的ななまし処理を施す等して得られる値を目標入力軸回転速度の暫定値として決定し、基本的にはこの暫定値を目標入力軸回転速度として設定する。一方で、当該暫定値が上限値よりも大きい(上限値の設定如何により容易に「以上」と置換し得る概念である)場合には、当該暫定値が上限値による制限を受け、この上限値が目標入力軸回転速度として設定される。従って、この態様によれば、上限値による目標入力軸回転速度の制限機会を可及的に低減し、効率的且つ効果的に目標入力軸回転速度を制限することができる。
本発明に係る車両の変速制御装置の他の態様では、前記第2の設定手段は、前記内燃機関の出力が上昇する方向への前記燃料性状の変化に対し前記上限値が低下するように前記上限値を設定する。
この態様によれば、例えば上述したオクタン価の上昇、或いは同じく上述したアルコール濃度の上昇等、内燃機関の出力が上昇する方向への燃料性状の変化に対し、上限値が例えば二値的に、段階的に或いは連続的に低下せしめられるため、変速装置の耐久性低下が効果的に抑制される。
尚、この態様では、前記補正手段は、前記内燃機関の出力の変化量に対応付けて前記上限値を補正してもよい。燃料性状の変化に対する内燃機関の出力(出力トルク等も含む趣旨である)の変化量は、例えば、当該変化量を明らかにすべくなされる実験、理論計算又はシミュレーション等により或いは経験的に、少なくとも実践上の不具合が顕在化しない程度の精度で推定することが可能である。従って、この燃料性状の変化により生じる内燃機関の出力変化が変速装置に加わる物理的又は機械的な負荷に与える影響を相殺するように上限値を補正することにより、変速装置の耐久性を担保しつつ上限値が変速制御に与える影響を可及的に低減することが可能となる。
本発明に係る車両の変速制御装置の他の態様では、前記第2の設定手段は、前記入力軸回転速度に対応する第1の指標値と前記車両の速度に対応する第2の指標値とを相互に交わる二軸に配してなる座標系において、少なくとも前記上限値の特性を表す上限変速線が前記変速比の最大値の特性を表す最大変速線から乖離する点として規定される乖離点を前記特定された燃料性状に応じて変化させる。
入力軸回転速度の上限値が変速制御に顕著に影響し得る、例えばアクセル全開発進時等の高負荷運転条件では、変速比が最大変速比から徐々に低下せしめられる。ここで、最大変速比に相当する変速装置の状態は、物理的又は機械的な負荷に対して最も耐久性の低い状態であり、最大変速比における入力軸回転速度は、変速装置の耐久性低下を抑制する観点からは最も重要な要素の一となる。この態様によれば、入力軸回転速度そのものを好適に含む趣旨としての第1の指標値と、車速そのものを好適に含む趣旨としての第2の指標値とを配した現実的な又は仮想的な二次元座標系において、少なくとも、上限値の特性を表す上限変速線が最大変速比を表す最大変速線から乖離する点としての乖離点が燃料性状に応じて変化せしめられるため、変速装置の耐久性低下を極めて効果的に抑制することが可能となる。
尚、この態様では、前記第2の設定手段は、前記内燃機関の出力が上昇する方向への前記燃料性状の変化に対し前記乖離点を前記車両の速度が低下する側に変化させる。
この場合、燃料性状に起因する出力上昇に伴い、乖離点が低車速側に二値的に、段階的に又は連続的に変化せしめられるため、変速装置の耐久性低下が効果的に抑制される。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る車両10の構成について説明する。ここに、図1は、車両10の要部構成を概念的且つ模式的に表してなる概略構成図である。
始めに、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る車両10の構成について説明する。ここに、図1は、車両10の要部構成を概念的且つ模式的に表してなる概略構成図である。
図1において、車両10は、ECU100、エンジン200及びCVT300を備える。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、車両10の動作全体を制御する電子制御ユニットであり、本発明に係る「車両の変速制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する変速制御処理を実行することが可能に構成されている。
尚、ECU100は、本発明に係る「車両の変速制御装置」の一例として機能する一体の電子制御ユニットである。従って、本発明に係る「第1の設定手段」、「制御手段」、「特定手段」及び「第2の補正手段」における各動作は、全てECU100によって実行される。但し、本発明に係る各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれらは、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
エンジン200は、車両10の動力源として機能するように構成された、本発明に係る「内燃機関」の一例たる直列4気筒エンジンである。ここで、図2を参照して、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、エンジン200の模式図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介してクランクシャフト205(即ち、本発明に係る「機関出力軸」の一例である)の回転運動に変換することが可能に構成されている。
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。このクランクポジションセンサ206は、ECU100(不図示)と電気的に接続されており、ECU100では、このクランクポジションセンサ206から出力されるクランク角信号に基づいて、エンジン200の機関回転速度NEが算出される構成となっている。
尚、エンジン200は、紙面と垂直な方向に4本の気筒201が直列に配されてなる直列4気筒エンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、図2においては一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。また、本発明に係る内燃機関における気筒数及び各気筒の配列形態は、エンジン200のものに限定されず、例えば、6気筒、8気筒或いは12気筒エンジンであってもよいし、V型、水平対向型等であってもよく、各種の態様を採ることが可能である。
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート210を介して吸気バルブ211の開弁時に気筒201内部へ導かれる。一方、吸気ポート210には、インジェクタ212の燃料噴射弁が露出しており、吸気ポート210に対し燃料を噴射することが可能な構成となっている。インジェクタ212から噴射された燃料は、吸気バルブ211の開弁時期に前後して吸入空気と混合され、上述した混合気となる。
燃料は、図示せぬ燃料タンクに貯留されており、図示せぬフィードポンプの作用により、図示せぬデリバリパイプを介してインジェクタ212に供給される構成となっている。ここで、本実施形態における燃料は、ガソリンとエタノール(即ち、本発明に係る「アルコール」の一例)との混合燃料であり、特に、エタノールの混合比率、即ちエタノール濃度として0〜100%の値を採り得る構成となっている。エンジン200は、このように燃料中のエタノール濃度が変化しても動作に支障をきたさない、所謂FFV(Flexible Fuel Vehicle)用のエンジンであり、車両10はFFVとして構成されている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり、吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時に排気ポート214を介して排気管215に導かれる。
一方、吸気管207における、吸気ポート210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節するスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、ECU100は、基本的にはアクセル開度に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ209を制御するが、スロットルバルブモータ209の動作制御を介してドライバの意思を介在させることなくスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
排気管215には、三元触媒216が設置されている。三元触媒216は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。尚、触媒装置の採り得る形態は三元触媒に限定されず、例えば三元触媒に代えて或いは加えて、NSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)或いは酸化触媒の各種触媒が設置されていてもよい。
また、排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。更に、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。水温センサ218は、ECU100と電気的に接続されており、検出された冷却水温は、ECU100により一定又は不定の検出周期で把握される構成となっている。
図1に戻り、CVT300は、二個のプーリを備え、当該プーリ各々において無端状のベルトを巻回するためのV溝の溝幅を可変とすることにより変速比を連続変化させることが可能に構成された、本発明に係る「変速装置」の一例たる電子制御連続式無段変速機である。尚、CVT300の構成については、後に図3を参照する形で詳述する。
車両10には更に、減速機構11、左車軸SFL、右車軸SFR、左前輪FL、右前輪FR、車速センサ12、アクセル開度センサ13、アクセルペダル14及びエタノール濃度センサ15が備わる。
減速機構11は、CVT300の後述する出力回転軸340に接続され、駆動輪且つ操舵輪たる左前輪FL及び右前輪FR相互間の回転差を吸収するデファレンシャル及び各種減速ギアを含むギア機構であり、CVT300の出力回転軸340の回転速度(即ち、本発明に係る「出力軸回転速度」の一例)を固有の最終減速比に従って減速することが可能に構成されている。
左車軸SFL及び左車軸SFRは、夫々左前輪FL及び右前輪FRに連結された回転軸であり、夫々が減速機構11に連結される構成となっている。従って、車両10において、エンジン200から発せられる動力は、クランクシャフト205、CVT300、減速機構11及び当該左右の車軸を介して駆動輪たる左右の前輪に伝達される構成となっている。
車速センサ12は、車両10の車速Vを検出することが可能に構成されたセンサである。車速センサ12は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって絶えず或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
アクセル開度センサ13は、ドライバにより踏下されるアクセルペダル14の踏下量を表すアクセル開度Accを検出することが可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Accは、ECU100によって絶えず、或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
エタノール濃度センサ15は、上述したようにエタノール濃度が変化し得る燃料におけるエタノール濃度DEを検出することが可能に構成されたセンサである。エタノール濃度センサ15は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたエタノール濃度DEは、ECU100により常に或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
次に、図3を参照して、CVT300の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、CVT300の構成を概念的且つ模式的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1及び図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図3において、CVT300は、動力伝達部310、入力回転軸320、変速部330、出力回転軸340及び油圧制御部350を備える。
動力伝達部310は、エンジン200の前述したクランクシャフト205に連結され、エンジン200の発する動力を入力回転軸320に伝達することが可能に構成されたユニットであり、トルクコンバータ311、ロックアップクラッチ312、シャフト313及び前後進切替装置314を含んで構成される。
トルクコンバータ311は、クランクシャフト205に連結されたポンプインペラ311aと、シャフト313に連結されたタービンランナ311bとを有し、ポンプインペラ311aとタービンランナ311bとの間で流体(例えばATF等)の運動エネルギによる動力伝達を行うことが可能に構成されている。また、トルクコンバータ311は、ロックアップクラッチ312が解放されている場合には、伝達されるトルクを増幅することが可能に構成される。
ロックアップクラッチ312は、クランクシャフト205とシャフト313との間で、摩擦力による動力伝達が可能となるように構成された摩擦係合手段である。ロックアップクラッチ312が締結された状態にある場合、エンジン200の機関回転速度NEは、入力回転軸320の回転速度たる入力軸回転速度NINと相互に一致する。
前後進切替装置314は、出力側に入力回転軸320が、また入力側にシャフト313が連結されてなり、シャフト313に対する入力回転軸320の回転方向を正逆の間で切り替えることが可能に構成されたプラネタリギアユニットである。前後進切換装置314は、差動回転可能な3つの回転要素を有する遊星歯車機構と、遊星歯車機構の回転要素の回転を停止させるブレーキと、回転要素同士を選択的に連結するクラッチとを有しており、当該ブレーキ及びクラッチ各々の締結解放の状態に応じて、シャフト313の回転方向に対する入力回転軸320の回転方向が切り替わる構成となっている。
入力回転軸(プライマリシャフトとも称される)320は、本発明に係る「入力軸」の一例たる回転軸である。入力回転軸320は、シャフト313の回転に伴って回転可能な軸体を有し、その回転速度たる入力軸回転速度NINは、エンジン200の機関回転速度NEと少なくとも一義的な関係を有する構成となっている。
変速部330は、駆動プーリ(プライマリプーリとも称される)331、無端ベルト332及び従動プーリ(セカンダリプーリとも称される)333、油圧アクチュエータ334、回転センサ335及び336を含んで構成され、CVT300の変速比をその物理的、機械的且つ電気的な構成により規定するユニットである。駆動プーリ331と従動プーリ333とは、夫々の中心軸線を互いに平行にし、且つ所定の間隔を隔てて配置されている。
駆動プーリ331は、入力回転軸320と一体に回転し、且つ軸線方向に固定された固定プーリ片331aと、入力回転軸320と一体回転し、且つ軸線方向に動作可能に構成された可動プーリ片331bとを有している。この可動プーリ片331bの背面側には、可動プーリ片331bを軸線方向に動作させるための油圧アクチュエータ334が設けられている。油圧アクチュエータ334は更に、可動プーリ片331bに軸線方向の推力を与える油圧室(不図示)を有している。一方、これら固定プーリ片331aと可動プーリ片331bとの対向面は、テーパ角を一定とするテーパ面を形成しており、当該テーパ面によって断面視V字型の溝(以下、適宜「V溝」と称する)が形成されている。駆動プーリ331は、このV溝に係る溝幅を変更することが可能に構成されている。
一方、従動プーリ333は、減速機構11に接続された出力回転軸340(即ち、本発明に係る「出力軸」の一例)と一体に回転し、且つ軸線方向に固定された固定プーリ片333aと、出力回転軸340と一体に回転し、且つ軸線方向に動作可能な可動プーリ片333bとを有している。この可動プーリ片333bの背面側には、可動プーリ片333bを軸線方向に動作させるための油圧アクチュエータ(不図示)が設けられている。当該油圧アクチュエータは更に、可動プーリ片333bに軸線方向の推力を与える油圧室を有している。一方、これら固定プーリ片333aと可動プーリ片333bとの対向面は、テーパ角を一定とするテーパ面を形成しており、当該テーパ面によって、駆動プーリ331と同様にV溝が形成されている。
無端ベルト332は、駆動プーリ331と従動プーリ333との間の動力伝達を行うことが可能に構成された金属製且つ無端状のベルトである。無端ベルト332は、上述した各プーリのV溝に挟み込まれる形状の多数の金属片が環状に配列してなると共に、それらの金属片がフープと称される環状の金属バンドによって結束された構成を有している。
係る構成において、無端ベルト332の全長は、当該フープによって制限される。従って、各プーリによって無端ベルト332を挟み付けると、V溝のテーパ面(傾斜面)によって無端ベルト332を半径方向で外側に押し出す向きの力が作用し、その結果、無端ベルト332に張力が加えられるとともに、無端ベルト332と各プーリとの接触圧力が発生し、その接触圧力と摩擦係数とで決まる摩擦力によって、無端ベルト332と各プーリとの間でトルクが伝達される。このように無端ベルト332を挟み付ける圧力として規定される挟圧力は、例えば、従動プーリ333側の油圧アクチュエータ(不図示)の油圧室の油圧に応じて制御される。
これに対し、いずれか一方のプーリにおいて無端ベルト332を挟み付ける圧力が相対的に増大し、あるいは低下すると、無端ベルト332の張力に抗して無端ベルト332が当該一方のプーリにおいて半径方向で外側に押し出され、或いは反対に半径方向で内側に入り込み、同時に他方のプーリでは無端ベルト332が半径方向で内側に入り込み、或いは半径方向で外側に押し出される。その結果、無端ベルト332の巻き掛け半径の変化が生じ、変速が実行される。この際、例えば、駆動プーリ331側の油圧アクチュエータ334の油圧室に供給される作動油の流量が制御されることによって、当該変速に係る変速比が制御される。このように、CVT300における変速は、駆動プーリ331における上述した溝幅を変化させて、無端ベルト332の各プーリに対する巻き掛け半径を変更することにより実行される。
回転センサ335は、入力回転軸320の回転速度、即ち、入力軸回転速度NINを検出することが可能に構成されたセンサである。回転センサ335は、ECU100と電気的に接続されており、検出された入力軸回転速度NINは、ECU100によって常に、或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
回転センサ336は、出力回転軸340の回転速度、即ち、出力軸回転速度NOUTを検出することが可能に構成されたセンサである。回転センサ336は、ECU100と電気的に接続されており、検出された出力軸回転速度NOUTは、ECU100によって常に、或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
油圧制御部350は、駆動プーリ331側の油圧アクチュエータ334の油圧室に供給される作動油の油圧を制御するための制御ユニットであり、当該油圧室に対し相互に並列して配置されたアップシフト制御弁351及びダウンシフト制御弁353を備える。
アップシフト制御弁351は、駆動プーリ331側の油圧アクチュエータ334の油圧室に対する作動油の供給を制御するバルブであり、電気的に接続された第1ソレノイド352から出力される信号によって動作するように構成されている。具体的には、アップシフト制御弁351は、第1ソレノイド352における駆動デューティ比に応じて油圧アクチュエータ334の油圧室に作動油を供給するように構成されている。
ダウンシフト制御弁353は、油圧アクチュエータ334の油圧室から作動油を排出するためのバルブであり、第2ソレノイド354から出力される信号によって動作するように構成されている。具体的には、ダウンシフト制御弁353は、第2ソレノイド354における駆動デューティ比に応じて油圧アクチュエータ334の油圧室から作動油を排出する構成となっている。
尚、動力伝達部310及び油圧制御部350は、夫々ECU100と電気的に接続されており、その動作状態、例えば、ロックアップクラッチ312の締結状態、前後進切替装置314の切替状態、第1ソレノイド352及び第2ソレノイド354各々における駆動デューティ比等は、ECU100により制御される構成となっている。例えば、ECU100は、アクセル開度Accや車速V及び機関回転速度NE等の入力信号に基づいて変速の要否を判断するとともに、当該変速の要否に基づいて、第1ソレノイド352及び第2ソレノイド354の通電状態を制御するための駆動デューティ比等を演算し、その駆動デューティ比に応じた制御信号を出力するように構成されている。また、ECU100は、従動プーリ333が無端ベルト332を挟み付けることによって生じる上述した挟圧力を制御し、CVT300における伝達トルク容量を制御することも可能に構成されている。
このような構成の下、CVT300では、ECU100により、アクセル開度Accや車速V等の車両の走行状態に基づいて、目標変速比又は目標入力軸回転速度NINTが設定され、変速比(即ち、出力軸回転速度NOUTと入力軸回転速度NINとの比)又は入力軸回転速度NINがその目標値に一致するように制御される。この際、第1ソレノイド352又は第2ソレノイド354が、ECU100から入力された駆動デューティ比に応じた信号を出力することにより、アップシフト制御弁351から駆動プーリ331側の油圧アクチュエータ334に作動油が供給されてアップシフトが実行される。アップシフトとは、CVT300変速比を減少側に制御することを指す。これに対して、油圧アクチュエータ334からダウンシフト制御弁353を介して作動油が排出させられてダウンシフトが実行される。ダウンシフトとは、CVT300の変速比を増加側に制御することを指す。尚、アップシフト制御弁351及びダウンシフト制御弁353を制御することにより、CVT300の変速比を略一定に制御することも可能である。尚、油圧制御部350には、ロックアップクラッチ312の係合状態(即ち、締結及び解放の状態)を制御するためのソレノイドバルブも備わるが、図示は省略されている。
<実施形態の動作>
<CVT300の変速制御>
CVT300は、入力軸回転速度NINが目標入力軸回転速度NINT(即ち、本発明に係る「目標値」の一例)に収束するように、上述した油圧アクチュエータ334の油圧制御を介してフィードバック制御される。この際、このフィードバック制御の収束目標たる目標入力軸回転速度NINTは、ECU100により実行される目標値設定処理によって決定される。ここで、図4を参照し、本実施形態の動作として、目標値設定処理の詳細について説明する。ここに、図4は、目標値設定処理のフローチャートである。
<CVT300の変速制御>
CVT300は、入力軸回転速度NINが目標入力軸回転速度NINT(即ち、本発明に係る「目標値」の一例)に収束するように、上述した油圧アクチュエータ334の油圧制御を介してフィードバック制御される。この際、このフィードバック制御の収束目標たる目標入力軸回転速度NINTは、ECU100により実行される目標値設定処理によって決定される。ここで、図4を参照し、本実施形態の動作として、目標値設定処理の詳細について説明する。ここに、図4は、目標値設定処理のフローチャートである。
図4において、ECU100は、要求駆動力Ftを取得する(ステップS101)。要求駆動力Ftは、駆動輪たる左前輪FL及び右前輪FRに要求される駆動力である。ECU100のROMには、予め車速V及びアクセル開度Accに対応付ける形で要求駆動力Ftを表してなる要求駆動力マップMP01が格納されており、ECU100は、車速センサ12により検出される車速V及びアクセル開度センサ13により検出されるアクセル開度Accに対応する値を当該要求駆動力マップMP01から選択的に取得することによって要求駆動力Ftを取得する。尚、要求駆動力Ftの取得態様はこれに限定されず、各種の態様を採ってよい。
ここで、図5を参照し、要求駆動力マップMP01の詳細について説明する。ここに、図5は、要求駆動力マップMP01の模式図である。
図5において、要求駆動力マップMP01は、縦軸及び横軸に夫々要求駆動力Ft及び車速Vを配してなる二次元座標系において、アクセル開度Accをパラメータに複数の要求駆動力Ftの特性を表してなる構成を有する。図示する通り、要求駆動力Ftは、アクセル開度Accが大きい程大きく、且つ車速Vが高くなる程小さくなる。尚、ECU100のROMには、必ずしも図示する態様で要求駆動力マップMP01が格納されている必要はなく、要求駆動力マップMP01を数値化してなるデータ(即ち、要求駆動力Ft、車速V及びアクセル開度Accを相互に対応付けてなるデータ)が格納されていてもよい。
図4に戻り、要求駆動力Ftを取得すると、ECU100は、要求出力Ptを取得する(ステップS102)。この際、ECU100は、要求出力Ptを、ステップS101に係る処理において取得された要求駆動力Ftと車速センサ12により検出される車速Vとの積に基づいて算出する。例えば要求出力Ptの単位をkW(キロワット)、要求駆動力Ftの単位をN(ニュートン)、車速Vの単位をkm/h(キロメートル/時)とすれば、要求出力Ptは、「F×V×1000/3600」なる、単位換算を伴った演算処理の結果として取得される。尚、要求出力の算出態様は、ここに例示するものに限定されず公知の各種態様を採ってよい。
要求出力Ptを取得すると、ECU100は、CVT300の最終的な目標入力軸回転速度を表す最終目標入力軸回転速度NINCを決定する(ステップS103)。ここで、本実施形態に係る「最終目標入力軸回転速度NINC」とは、目標値設定処理が設定対象とする、上述した入力軸回転速度NINのフィードバック制御上の収束目標たる目標入力軸回転速度NINTとは異なり、目標入力軸回転速度NINTへの入力軸回転速度NINの収束制御(フィードバック制御)を、固定又は可変な回数繰り返し実行することによって到達が図られる、入力軸回転速度NINの最終的な到達目標である。ECU100のROMには、予め要求出力Ptに対応付ける形で最終目標入力軸回転速度NINCを表してなる最終目標入力軸回転速度マップMP02が格納されており、ECU100は、ステップS102に係る処理において取得された要求出力Ptに対応する値を当該最終目標入力軸回転速度マップMP02から選択的に取得することによって最終目標入力軸回転速度NINCを取得する。
ここで、図6を参照し、最終目標入力軸回転速度マップMP02の詳細について説明する。ここに、図6は、最終目標入力軸回転速度マップMP02の模式図である。
図6において、最終目標入力軸回転速度マップMP02は、縦軸及び横軸に夫々最終目標入力軸回転速度NINC及び要求出力Ptを配してなる二次元座標系において一の特性線として表される。図示する通り、最終目標入力軸回転速度NINCは、要求出力PtがPt1以下の領域で固定値NINC1を採り、また要求出力PtがPt2(Pt2>Pt1)以上の領域で、固定値NINC2(NINC2>NINC1)を採る。また要求出力Ptが、このPt1よりも大きく且つPt2未満となる領域では、最終目標入力軸回転速度NINCは、NINC1からNINC2へかけてリニアに増加する特性を有する。尚、ECU100のROMには、必ずしも図示する態様で最終目標入力軸回転速度マップMP02が格納されている必要はなく、最終目標入力軸回転速度マップMP02を数値化してなるデータ(即ち、最終目標入力軸回転速度NINC及び要求出力Ptを相互に対応付けてなるデータ)が格納されていてもよい。
ここで、エンジン200の動作条件を規定するものとして、エンジン200の機関回転速度NE及び出力トルクTrの組み合わせたる動作点を規定すると、CVT300の最終目標入力軸回転速度NINCは、エンジン200が、エンジン200の出力P毎に例えば実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーション等に基づいて定まる、エンジン200の燃料消費率が最小となる最適燃費動作点で動作するように設定される。その結果、エンジン200の燃料消費率は、理論的に、実質的に或いは現実的に最小に維持される。尚、動作点とは、内燃機関における機関回転速度と負荷との組み合わせを包括する概念であり、実践上は、このように機関回転速度NEと、エンジン負荷と一義的な関係を有し得る出力トルクTrとの組み合わせであってよい。
尚、ここで述べられる「燃料消費率」とは、例えば「g(グラム)/kwh(キロワット時)」等の単位を伴って、単位出力当たりの燃料消費量等として規定される、大きい程燃料消費が多く且つ小さい程燃料消費が少ないことを表す指標値である。従って、例えば「km(キロメートル)/l(リットル)」等の単位を伴って、単位燃料消費量当たりの走行距離数等として規定される、大きい程燃料消費が少なく且つ小さい程燃料消費が多いことを表す所謂「燃費」と称される指標値とは異なる趣旨である。即ち、「燃料消費率が小さい」状態とは、一義的であるか否かは別として少なくとも定性的に「燃費が大きい(所謂「低燃費」と等価である)」状態と、いずれも燃料消費が少ない点において等価である。
ここで、図7を参照し、最適燃費動作点について説明する。ここに、図7は、最適燃費動作点を規定する動作線マップMP03の模式図である。
図7において、動作線マップMP03は、縦軸及び横軸に夫々出力トルクTr及び機関回転速度NEを配してなる二次元座標系として表される。最適燃費動作点は、この二次元座標系において、エンジン200の出力P毎に予めエンジン200の燃料消費率が最小となるように実験的に、経験的に、理論的に、又はシミュレーション等に基づいて定まる座標点である。図示最適燃費線MVsfcは、この最適燃費動作点を繋げて、或いは一部補間して得られる動作線であり、エンジン200の基本的な動作制御に使用される。図7では、最適燃費動作点の一つとして、動作点MV1(出力P=PWR1に対応し、機関回転速度NE1及び出力トルクTr1を採る)及び動作点MV2(出力P=PWR2に対応し、機関回転速度NE2及び出力トルクTr2を採る)が模式的に表されている。動作点MV1及びMV2は、当該ニ次元座標系において出力Pが等しい動作点を繋げて得られる等出力線EP1(P=PWR1)及びEP2(P=PWR2)上の点である。
尚、図7において、最適燃費線MVsfcの上方には、WOT動作線MVwotが表される。WOT動作線MVwotは、機関回転速度NE毎に、WOTトルク(即ち、アクセル全開状態のトルク)を規定する動作点を繋げて得られる動作線である。
ECU100は、エンジン200が、図4におけるステップS102に係る処理において取得された要求出力Ptに対応する最適燃費動作点、即ち、要求出力Ptに対応する等出力線と、この最適燃費線MVsfcとの交点に対応する動作点で動作するように、エンジン200及びCVT300を制御する。図6に示す最終目標入力軸回転速度マップMP02に規定される最終目標入力軸回転速度NINCは、この要求出力Ptにおける最適燃費動作点を規定する機関回転速度NEに対応する値(即ち、入力軸回転速度NINは、機関回転速度NEと一義的な関係を有する)であり、目標入力軸回転速度NINTは、現時点の動作点に対応する入力軸回転速度NINから、この最終目標入力軸回転速度NINCに到達するまでの変速制御過程において逐次設定される制御上の収束目標値である。
尚、ECU100のROMには、必ずしも図示する態様で動作線マップMP03が格納されている必要はなく、最適燃費動作線MVsfc及びWOT動作線MVwotを含む各種の動作線を数値化してなるデータ(即ち、個々の動作点を規定する出力トルクTr及び機関回転速度NEのデータ)が格納されていてもよい。
図4に戻り、最終目標回転速度NINCを決定すると、ECU100は、暫定目標入力軸回転速度NINSTAを決定する(ステップS104)。暫定目標入力軸回転速度NINSTAは、本発明に係る「暫定値」の一例である。ここで、暫定目標入力軸回転速度NINSTAは、下記(1)式に基づいて決定される。
NINSTA(i)=NINSTA(i−1)+K×{NINC−NINSTA(i−1)}・・・・・(1)
尚、上記(1)式において(i)とは、目標入力軸回転速度NINTの一の設定タイミングを指し、(i−1)とは、前回の設定タイミングを指す。また、Kは0より大きく且つ1未満の値を採る徐変係数であり、大きい程少ない収束制御過程を経て(即ち、少ないステップ数で)入力軸回転速度NINが最終目標入力軸回転速度NINCへ到達することを意味する。言い換えれば、徐変係数Kが大きい程、ステップS104に係る処理が繰り返される回数が少ないことになる。このように、本実施形態では、最終目標入力軸回転速度NINCがいきなりフィードバック制御の収束目標とされることはなく、最終目標入力軸回転速度NINCに対し時間的ななまし処理が施され順次収束目標が変更されつつ最終的に最終目標入力軸回転速度NINCへの到達が図られる。
尚、上記(1)式において(i)とは、目標入力軸回転速度NINTの一の設定タイミングを指し、(i−1)とは、前回の設定タイミングを指す。また、Kは0より大きく且つ1未満の値を採る徐変係数であり、大きい程少ない収束制御過程を経て(即ち、少ないステップ数で)入力軸回転速度NINが最終目標入力軸回転速度NINCへ到達することを意味する。言い換えれば、徐変係数Kが大きい程、ステップS104に係る処理が繰り返される回数が少ないことになる。このように、本実施形態では、最終目標入力軸回転速度NINCがいきなりフィードバック制御の収束目標とされることはなく、最終目標入力軸回転速度NINCに対し時間的ななまし処理が施され順次収束目標が変更されつつ最終的に最終目標入力軸回転速度NINCへの到達が図られる。
暫定目標入力軸回転速度NINSTAが決定されると、ECU100は、エタノール濃度センサ15を介して燃料中のエタノール濃度DEを取得する(ステップS105)。尚、エタノール濃度DEは、本発明に係る「燃料性状」の一例であり、且つ「アルコール濃度」の一例である。即ち、この時点で、本発明に係る「特定手段」に係る動作が実行される。
エタノール濃度DEを取得すると、ECU100は、入力軸回転速度NINのWOTガード値NINWOTを取得する(ステップS106)。WOTガード値NINWOTは、段階的に又は連続的に規定される複数のエタノール濃度DE毎に、車速Vに対応付けられた形で予め設定される、本発明に係る「上限値」の一例である。ECU100は、予めROMにこのWOTガード値NINWOTを規定するWOT変速線マップMP04を記憶しており、このWOT変速線マップMP04から、取得されたエタノール濃度DE及び現時点の車速Vに対応する値を選択的に取得することによって、WOTガード値NINWOTを取得する。即ち、この段階で、ECU100は、本発明に係る「第2の設定手段」の動作の一例を実行する。尚、WOT変速線マップMP04の詳細については後述する。
より具体的に言えば、WOTガード値NINWOTは、予めWOT変速線マップMP04上で、複数の特性線として設定されており、エタノール濃度DEに応じて一の特性線を選択する、或いは該当する特性線が存在しない場合には取得されたエタノール濃度DEを挟む二種類のエタノール濃度DEに対応する特性線から適宜補間処理を経て該当する特性線を推定する等の第1のプロセスと、選択又は推定された特性線上から現時点の車速Vに対応する値を選択的に取得する第2のプロセスとを経ることにより好適に設定される。本発明に係る「上限値を設定する」とは、このように予め用意された選択肢に基づいて或いは選択肢の中から該当する上限値(即ち、ここではWOTガード値NINWOT)を取得する態様を好適に含む趣旨であるが、必ずしもこのような態様に限定されるものではなく、最終的にアルコール濃度(ここでは、エタノール濃度DE)に応じた上限値(ここでは、WOTガード値)を設定することが可能な処理を包括する概念であって、例えば標準値としての上限値のみが用意され、当該標準値としての上限値に対し、エタノール濃度DEに応じた補正演算処理を施す等してその都度個別具体的に或いはリアルタイムにエタノール濃度DEに応じた上限値を導き出す等の処理が行われてもよい趣旨である。
WOTガード値NINWOTを取得すると、ECU100は、ステップS104に係る処理で得られた暫定目標入力軸回転速度NINSTAがWOTガード値NINWOTよりも大きいか否かを判別する(ステップS107)。当該判別処理の結果、暫定目標入力軸回転速度NINSTAがWOTガード値NINWOTよりも大きい場合(ステップS107:YES)、ECU100は、目標入力軸回転速度NINTをWOTガード値NINWOTに設定する(ステップS108)。一方、暫定目標入力軸回転速度NINSTAがWOTガード値以下である場合(ステップS107:NO)、ECU100は、暫定目標入力軸回転速度NINSTAを目標入力軸回転速度NINTとして設定する(ステップS109)。即ち、この段階で、本発明に係る「第1の設定手段」の動作の一例が実行される。尚、ステップS107に係る処理は、暫定目標入力軸回転速度NINSTAがWOTガード値NINWOT以上であるか否かを判別する処理に置換しても結果は同じである。
目標入力軸回転速度NINTが、WOTガード値NINWOT又は暫定目標入力軸回転速度NINSTAに設定されると、ECU100は、目標値設定処理を終了する。尚、目標値設定処理により設定された目標入力軸回転速度NINTは、目標値設定処理とは別プロセスとして並列的に実行される(無論、目標値設定処理に含まれる、或いは付随する処理として実行されてもよい)入力軸回転速度NINのフィードバック制御に、制御目標として供される。このフィードバック制御においては、上述したように、回転センサ335により検出される入力軸回転速度NINの実測値に基づいた油圧アクチュエータ334の油圧制御を介してCVT300におけるアップシフト又はダウンシフトが適宜に実行され、入力軸回転速度NINが目標入力軸回転速度NINTへ収束せしめられる。即ち、ECU100が、本発明に係る「制御手段」の一例として機能する。
尚、ここで「目標値設定処理を終了する」とは、一の目標入力軸回転速度NINTの設定に係る処理が終了することを便宜的に表す表現であって、実際の目標値設定処理は無論、車両10の走行期間中において絶えず実行される。補足すると、ステップS104からステップS108又はステップS109に至る一連の処理は、入力軸回転速度NINが、ステップS103に係る処理において設定された最終目標入力軸回転速度NINCに到達するまで繰り返される。入力軸回転速度NINが最終目標入力軸回転速度NINCに到達すると、処理はステップS101に戻され、ステップS101以降の一連の処理が繰り返される。即ち、新たに最終目標入力軸回転速度NINCが設定され、それに伴って上記(1)式に従った暫定目標入力軸回転速度NINSTAが設定され、適宜WOTガード値NINWOTによって制限される、等の処理が繰り返される。
ここで、図8を参照し、WOTガード値NINWOTの詳細について説明する。ここに、図8は、上述したWOT変速線マップMP04の模式図である。
図8において、WOT変速線マップMP04は、縦軸及び横軸に夫々入力軸回転速度NIN(即ち、本発明に係る「入力軸回転速度に対応する第1の指標値」の一例)及び車速V(即ち、本発明に係る「車両の速度に対応する第2の指標値」の一例)を配してなる二次元座標系として表される。このWOT変速線マップMP04では、仮想的に、CVT300の最大変速比γmaxに対応する特性線たる最大変速線PRF_γmax(即ち、本発明に係る「最大変速線」の一例であり、一点鎖線参照)と、最小変速比γminに対応する特性線たる最小変速線PRF_γmin(二点鎖線参照)とを規定することができる。CVT300において、入力軸回転速度NINは、この最大変速線PRF_γmaxと最小変速線PRF_γminとによって挟まれた範囲(以下、適宜「変速範囲」と称する)の値を採ることができる。
また、エンジン200には、エンジン200の物理的及び機械的な構成により或いは制御上の理由により最低自立回転速度(即ち、自立回転可能な機関回転速度の最低値)が規定され、同じくエンジン200の物理的及び機械的な構成により或いは制御上の理由により上限回転速度(即ち、レブリミット)が規定される。従って、クランクシャフト205に間接的に連結された入力回転軸320の回転速度たる入力軸回転速度NINの上限値は、このレブリミットに対応する上限入力軸回転速度NINmaxとなる。尚、エンジン200の最低自立回転速度に対応する入力軸回転速度NINとして下限入力軸回転速度NINminが規定されるが、CVT300においてはトルクコンバータ311によりエンジン200と入力軸320との間の動力伝達を制御できるため、入力軸回転速度NINは、下限入力軸回転速度NINmin未満の値を採ることも可能である。
WOT変速線マップMP04においては、WOTガード値NINWOTを繋げることによって(或いは一部補間することによって)WOT変速線PRF_Dex(xは、0,1,・・・の値を採り、その大小がエタノール濃度DEの高低に対応するように設定されてなる識別番号である)を規定することができる。
図8には、エタノール濃度DE0(本実施形態では、エタノール濃度0%とする)に相当するWOT変速線PRF_De0と、エタノール濃度DE1(本実施形態では、エタノール濃度50%とする)に相当するWOT変速線PRF_De1の二種類のWOT変速線が示されている。尚、WOT変速線PRF_Dexは、本発明に係る「上限変速線」の一例である。
WOT変速線PRF_Dexは、エタノール濃度DEに応じて、入力軸回転速度NINの上限を規定するように定められている。即ち、入力軸回転速度NINは、このWOT変速線PRF_Dexを超えないように制御される。尚、車両10が定常走行している等、急激な加速を要求されない場合における通常の変速制御期間においては、上述した暫定目標入力軸回転速度NINSTAがWOTガード値NINWOTに制限される事態は生じ難く、このWOTガード値NINWOTが顕著に有効となるのは、実践的にみれば、アクセル全開発進時等、急激な加速が要求される高負荷運転時に限られる。
ここで、車両10が停止している状態からアクセル全開の状態で発進したとする。この場合、最も車両10を速く走行させるには、車速ゼロ(即ち、入力軸回転速度NINもゼロである)の点から、最大変速線PRF_γmaxに沿って、即ち最大変速比γmaxを維持したまま加速し、入力軸回転速度NINが上限入力軸回転速度NINmaxに到達した図示白丸m1の点から、当該上限入力軸回転速度NINmaxを維持したままアップシフトを行って、目標車速(例えば図示白丸m2の点)に到達させるのが望ましい。ところが、この場合、加速期間の大部分において、入力軸回転速度NINがレブリミットに張り付いたまま車速だけが上昇することになり、車両10のドライバビリティは著しく悪化する。
WOT変速線PRF_Dexは、アクセル全開発進時等におけるドライバビリティの悪化を抑制することを目的の一として定められており、即ち、エタノール濃度が0%、即ち燃料がガソリンである場合のWOT変速線PRF_De0を例に採れば、車速V1に相当する入力軸回転速度NIN1において、WOT変速線PRF_De0は最大変速線PRF_γmaxから乖離する。即ち、この場合、車速V1且つ入力軸回転速度NIN1に相当する座標点が、本発明に係る「乖離点」の一例となる(これ以降、この点を適宜「乖離点」と称する)。
入力軸回転速度NINが当該乖離点に相当する値(即ち、NIN1)に達して以降、アップシフト制御により変速比は徐々に低下せしめられ、且つ入力軸回転速度NINは徐々に上昇せしめられる。このようにして、所定の車速(ここでは、車速V3(V3>V1))において入力軸回転速度NINが上限入力軸回転速度NINmaxに到達するようにWOT変速線_De0は設定される。
このため、例えばアクセル全開発進時等において、例えば図4におけるステップS103に係る処理で設定される最終目標入力軸回転速度NINCが大きくなり、ステップS104に係る処理で設定される暫定目標入力軸回転速度NINSTAが、例えば車速V2(V1<V2<V3)において最大変速線PRF_γmax上のNIN3(NIN1<NIN3<NINmax)となったとしても、目標入力軸回転速度NINTは、WOT変速線PRF_De0上のWOTガード値NINWOTたるNIN2(NIN1<NIN2<NIN3)に制限される。
一方、このようなドライバビリティの悪化抑制とは別に、WOT変速線PRF_Dexは、CVT300を物理的な又は機械的な負荷から保護するための変速線としても機能する。CVT300では、最大変速比γmaxに対応する状態、即ち、エンジン200に連結される入力側の駆動プーリ331側における無端ベルト332の巻き掛け半径が最小となっている状態において、無端ベルト332に応力或いは歪が最も生じ易くなる。従って、CVT300の耐久性は、この最大変速比γmaxに対応する状態において最も低下する。また、ベルトの巻き掛け半径が一定であれば、入力軸回転速度NINが高い程、当該歪や応力は大きくなり、CVT300の耐久性は低下する。
このため、CVT300において、現実的には、最大変速線PRF_γmaxに沿ってエンジン200のレブリミットに対応する上限入力軸回転速度NINmaxまで回転上昇を行うことは難しく、例えばWOT変速線PRF_De0を例に採れば、車速V1において入力軸回転速度NIN1が、耐久性の限界を規定する入力軸回転速度として定められる。即ち、このような理由から、WOT変速線PRF_De0では、入力軸回転速度NIN1に対応する座標点が乖離点として設定されている。
このように、WOT変速線PRF_Dexは、車両10のドライバビリティの悪化抑制及びCVT300の耐久性の低下抑制の二種類の要請から定められる。WOT変速線の設定態様は、ドライバビリティの悪化及び耐久性の低下が、夫々少なくとも実践上顕在化しない限りにおいて自由であってよいが、本実施形態に係るWOT変速線PRF_Dexでは特に、最大変速線PRF_γmaxからWOT変速線PRF_Dexが乖離する乖離点が、CVT300の耐久性のみに鑑みて、エタノール濃度DEに応じて可変に設定される。一方で、当該乖離点よりも高車速高回転側の範囲における入力軸回転速度NINの上昇特性は、耐久性が担保される範囲でドライバビリティの悪化が可及的に抑制されるように(言い換えれば、ドライバの感性に対し無視し得ない程度の違和感を与えないように)決定されている。
ここで、エンジン200に使用される燃料はエタノール混合燃料であり、且つそのエタノール濃度DEが可変である。エタノール濃度が相対的に高い場合、例えばエタノールの気化潜熱がガソリンよりも高いことに起因する吸気効率の上昇等により、エンジン200の圧縮比はエタノール濃度が低い場合よりも高くなり得、エンジン200の出力は上昇する傾向がある。
従って、WOTガード値NINWOTがエタノール濃度DEの変化に対して固定されている場合、エタノール濃度の上昇に伴って、CVT300に入力される物理的な又は機械的な負荷が限界を超え、CVT300の耐久性が低下する可能性がある。
そこで、本実施形態では、エタノール濃度DEが高くなるのに応じて、上述した乖離点がより低車速側(即ち、低回転側)にシフトするように、WOT変速線PRF_Dexが設定されている。WOT変速線PRF_De0及びPRF_De1を例に採れば、乖離点に相当する車速は、夫々V1及びV0(V0<V1)であり、同じく乖離点に相当する入力軸回転速度は、夫々NIN1及びNIN0(NIN0<NIN1)である。即ち、エタノール濃度の上昇に応じて、「V1−V0」に相当する分低車速側に乖離点がシフトされ、CVT300に入力される負荷の度合いを規定する入力軸回転速度NINは、「NIN1−NIN0」だけ低回転側にシフトされる。従って、エタノール濃度の上昇に伴う出力上昇分が入力軸回転速度NINの低下分により補償され、CVT300の耐久性低下が未然に防止される。
尚、乖離点よりも高車速側の車速領域においても、WOTガード値NINWOTに相当する入力軸回転速度NINは、エタノール濃度の上昇に応じて概ね低回転側に、即ち安全側にシフトする構成となっており、CVT300の耐久性が好適に担保される構成となっている。
また、このようにWOTガード値NINWOTがより低回転側で設定されるということは、即ち、より早い段階でアップシフト制御がなされることを意味し、回転上昇に伴うイナーシャトルクの増大によるトルク損失によって、本来動力性能は低下し易い。WOTガード値NINWOTが、アクセル全開発進時等、高負荷運転条件等において作用することに鑑みれば、係る動力性能の低下は、ドライバビリティ低下の要因となり得る。
然るに、本実施形態では、エタノール濃度の上昇によりエンジン200の出力が上昇する場合に限ってWOTガード値が低回転側にシフトするのであり、アップシフトに伴う出力損失に起因するドライバビリティの低下は、この出力上昇分により相殺され、実質的にドライバビリティの悪化は生じない。即ち、本実施形態によれば、効率的且つ効果的にCVT300の耐久性低下が抑制されるのである。
尚、本実施形態では、実践上過不足が生じない程度に細分化されたエタノール濃度DEについて(例えば、0%から100%まで1%ステップで100種類のエタノール濃度について)、WOT変速線PRF_Dexが予め適合により定められ、WOT変速マップMP04としてECU100のROMに格納されている。この際、最大変速線PRF_γmaxからの乖離点に相当する入力軸回転速度NINは、同じく事前の適合により実験的に得られた、エタノール濃度DEの上昇に伴うエンジン200の出力上昇量に対応付けられる形で決定されている。従って、乖離点においては、エタノール濃度DEに関係なく、実質的に同等とみなし得る程度の負荷がCVT300に加わる構成となっている。
尚、エタノール濃度に応じたWOT変速線の設定は、このように予め設定され且つ記憶された選択肢に基づいてなされるものでなくてもよく、例えば、エタノール濃度の変化量とエンジン200の出力変化量との対応関係が予めデータとして与えられていれば、マップとして保持する特性は、基準となるWOT変速線(例えば、PRF_De0に相当する変速線)のみであってよい。即ち、この場合、係る記憶された対応関係に基づいた補正演算により、基準となるWOT変速線を適宜補正してその時点のエタノール濃度DEに応じたWOT変速線が設定されてもよい。
尚、エタノール濃度に応じたWOTガード値NINWOTの特性は、少なくともエタノール濃度の上昇に伴って乖離点に相当する入力軸回転速度NINが低回転側にシフトするように(車速Vが低車速側にシフトするように)設定される限りにおいて自由であってよく、必ずしも図示するように各エタノール濃度に対応するWOT変速線が車速Vの広範囲にわたって相違しておらずともよい。即ち、乖離点が低車速側(低回転側)にシフトし得る限りにおいて、本発明に係る実践上の利益が担保される。
尚、本実施形態では、車両10がFFVであり、燃料中のエタノール濃度が例えば給油タイミング毎に相違し得る構成となっている。但し、必ずしも車両10がFFVである必要はなく、燃料としてガソリンのみが使用されてもよい。この場合、エタノール濃度に代えて、オクタン価に応じてWOTガード値NINWOTが可変とされてもよい。即ち、オクタン価の高低は、夫々エンジン出力の高低に対応するから、オクタン価を上述したエタノール濃度と同様に扱うことによって、本実施形態と同等の利益を享受することが容易にして可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の変速制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…車両、15…エタノール濃度センサ、100…ECU、200…エンジン、208…スロットルバルブ、300…CVT、310…動力伝達部、320…入力回転軸、330…変速部、340…出力回転軸、350…油圧制御部。
Claims (7)
- 内燃機関と、該内燃機関の機関出力軸に該機関出力軸の回転に伴って回転可能に連結される入力軸及び車軸に該車軸の回転に伴って回転可能に連結される出力軸を有し、該入力軸の回転速度を表す入力軸回転速度と該出力軸の回転速度を表す出力軸回転速度との比たる変速比を連続変化させることが可能な変速装置とを備えた車両の変速制御装置であって、
前記車両の速度に対応付けられた上限値以下の範囲で前記入力軸回転速度の目標値を設定する第1の設定手段と、
前記入力軸回転速度が前記設定された目標値となるように前記変速装置を制御する制御手段と、
前記内燃機関の燃料に係る燃料性状を特定する特定手段と、
前記特定された燃料性状に応じて前記上限値を設定する第2の設定手段と
を具備し、
前記第1の設定手段は、前記設定された上限値以下の範囲で前記目標値を設定する
ことを特徴とする車両の変速制御装置。 - 前記特定手段は、前記燃料性状として前記燃料のオクタン価を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の変速制御装置。 - 前記燃料は、ガソリンとアルコールとの混合燃料であり、
前記特定手段は、前記燃料性状として前記アルコールの濃度を特定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の変速制御装置。 - 前記第1の設定手段は、前記車両の運転条件に基づいて前記目標値の暫定値を決定すると共に、前記決定された暫定値が前記設定された上限値以下である場合には前記決定された暫定値を、また前記決定された暫定値が前記設定された上限値よりも大きい場合には前記設定された上限値を、夫々前記目標値として設定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両の変速制御装置。 - 前記第2の設定手段は、前記内燃機関の出力が上昇する方向への前記燃料性状の変化に対し前記上限値が低下するように前記上限値を設定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の変速制御装置。 - 前記第2の設定手段は、前記入力軸回転速度に対応する第1の指標値と前記車両の速度に対応する第2の指標値とを相互に交わる二軸に配してなる座標系において、少なくとも前記上限値の特性を表す上限変速線が前記変速比の最大値の特性を表す最大変速線から乖離する点として規定される乖離点を前記特定された燃料性状に応じて変化させる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両の変速制御装置。 - 前記第2の設定手段は、前記内燃機関の出力が上昇する方向への前記燃料性状の変化に対し前記乖離点を前記車両の速度が低下する側に変化させる
ことを特徴とする請求項6に記載の車両の変速制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007145864A JP2008298209A (ja) | 2007-05-31 | 2007-05-31 | 車両の変速制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Family Applications (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US9073533B2 (en) | 2013-07-30 | 2015-07-07 | Toyota Motor Engineering & Manufacturing North America, Inc. | Wide open throttle guard for a vehicle for high elevation changes |
CN108626015A (zh) * | 2017-03-17 | 2018-10-09 | 福特环球技术公司 | 用于发动机冷起动的方法和系统 |
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2007
- 2007-05-31 JP JP2007145864A patent/JP2008298209A/ja active Pending
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CN108626015B (zh) * | 2017-03-17 | 2022-12-06 | 福特环球技术公司 | 用于发动机冷起动的方法和系统 |
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