JP2008295330A - 日持ち向上剤含有使用済み調味液の脱塩方法 - Google Patents

日持ち向上剤含有使用済み調味液の脱塩方法 Download PDF

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Abstract

【課題】日持ち向上剤を含有する使用済み調味液の脱塩を、効率のよい電気透析により行うことが可能な脱塩方法を提供する。
【解決手段】日持ち向上剤を含有する使用済み調味液からの脱塩方法において、アニオン交換膜の表面にアニオン性重合体層が存在する複合アニオン交換膜を用いて、前記使用済み調味液を電気透析処理することにより脱塩を行うことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、日持ち向上剤を含有する使用済み調味液から電気透析により脱塩を行う脱塩方法に関する。
イオン交換膜は、古くは海水からの食塩の製造などに使用されてきたが、近年では、アニオン交換膜とカチオン交換膜とを電極間に交互に配置し、電極間に所定の直流電圧を印加しながら処理液を流し、脱塩を行う電気透析に広く使用されている。即ち、かかる電気透析においては、アニオン交換膜とカチオン交換膜とで区画された濃縮室と、アニオン交換膜或いはカチオン交換膜を挟んで濃縮室に対峙した脱塩室が形成されており、電圧印加によって形成された電場にしたがって、アニオンが脱塩室からアニオン交換膜を通って濃縮室に導入され、一方、カチオンはカチオン交換膜を通って濃縮室に導入され、この結果、脱塩室に供給された処理液からの脱塩が行われ、濃縮室に、脱塩された塩が濃縮されるという原理に基づくものである。
上記のような電気透析による脱塩は、例えば各種の液の精製処理などに広く利用されており、最近では、梅干や漬物などの調味液にも適用されている(特許文献1〜4参照)。即ち、このような調味液は、食塩、クエン酸、各種の糖類やアミノ酸などを含有するものであり、梅干や漬物などを浸漬することにより味付けするものであり、味付けされた梅干等を取り出した後の使用済み調味液は、塩分濃度がかなり高くなっている。従って、このような使用済み調味液は、再使用は困難であるため、従来は廃棄されていたが、現在では、上記のような電気透析による脱塩処理に付され、塩分等を除いた後、有効成分を適当に調製した後、再利用に供されている。
特開2003−88731号公報 特開2003−88872号公報 特開2000−135053号公報 特許第3013869号公報
ところで、上記のような調味液に日持ち向上剤が配合されており、最近では保存安定性の観点から日持ち向上剤の配合量が増加する傾向にある。このような添加剤の配合により、脱塩処理による電気透析に際しての電圧上昇が大きくなり、イオン交換膜、特にアニオン交換膜を頻繁に洗浄することが必要となり、作業性が低下し、また膜の洗浄コスト等が増大するという問題が生じている。
上記のような問題は、日持ち向上剤に由来する巨大アニオンがアニオン交換膜表面に付着して汚染することにより生じるものであり、従って、アニオン交換膜として耐有機汚染性に優れたものを使用すれば解決できるのであるが、調味液に添加される日持ち向上剤の量が多いことなどの理由により、従来公知の耐有機汚染性アニオン交換膜を用いた場合にも、上記の問題を満足し得るレベルに改善するには至っていない。また、日持ち向上剤によるアニオン交換膜の有機汚染性がある程度改善されたとしても、膜の耐久性が乏しく、膜の交換頻度が高く、さらなる改善が必要である。
従って本発明の目的は、日持ち向上剤を含有する使用済み調味液の脱塩を、効率のよい電気透析により行うことが可能な脱塩方法を提供することにある。
本発明によれば、日持ち向上剤を含有する使用済み調味液からの脱塩方法において、アニオン交換膜の表面にアニオン性重合体層が存在する複合アニオン交換膜を用いて、前記使用済み調味液を電気透析処理することにより脱塩を行うことを特徴とする脱塩方法が提供される。
本発明においては、
(1)前記日持ち向上剤を0.2mmol/dm以上の濃度で含有する使用済み調味液を使用すること、
(2)前記日持ち向上剤がビタミンB1であること、
(3)前記複合アニオン交換膜として、25℃の温度に保持された0.1(mol/dm)塩化ナトリウム水溶液中に浸漬した状態でアニオンが脱離する方向に10mA/cmの電流密度で1時間通電を行ったとき、下記式(1):
R=(A−B)/A×100 …(1)
式中、Aは、上記通電開始時の膜表面に存在するアニオン性重合体のアニオ
ン交換膜単位重量当りの量(meq/g)を示し、
Bは、上記通電終了後の膜表面に存在するアニオン性重合体のアニオ
ン交換膜単位重量当りの量(meq/g)を示す、
で表されるアニオン性重合体層の脱離能が20%以下であるものを使用すること、
(4)前記複合アニオン交換膜として、前記アニオン性重合体層がポリスチレン換算での数平均分子量が4000以上の範囲にあるアニオン性重合体から形成されているものを使用すること、
(5)前記アニオン性重合体がポリスチレンスルホン酸であること、
(6)前記アニオン性重合体層の厚みは10μm以下の範囲にあり、且つ0.2meq/g(乾燥膜)以下のイオン交換容量を有していること、
(7)繰り返し脱塩が行われた後、前記複合アニオン交換膜を、脂肪族アルコール/水混合溶媒中に無機塩を溶質成分として含有する洗浄液を用いて洗浄した後、該複合アニオン交換膜を用いて再び電気透析による脱塩を行うこと、
が好適である。
即ち、調味液の日持ち向上剤としては、チアミンラウリル硫酸ソーダに代表されるビタミンB1などが一般に使用されているが、本発明の脱塩方法においては、電気透析に用いる複合アニオン交換膜が表面にアニオン交換体とは反対の荷電を持つアニオン性重合体層を有しており、上記のような日持ち向上剤に由来するマイナス荷電有機高分子に対する耐汚染性が著しく優れている。このため、電気透析に対してマイナス荷電有機高分子による膜汚染が有効に防止され、この結果、膜洗浄に要する労力やコストが大幅に軽減され、しかも効率よく、使用済み調味液の脱塩処理を行うことが可能となる。
即ち、アニオン交換膜の表面に形成されているアニオン性重合体層のアニオン性基の一部は、アニオン交換膜の固定電荷(正電荷)とポリイオンコンプレックスを形成するが、日持ち向上剤に由来するマイナス荷電の有機汚染物質の排除に対して有効に作用するのは、ポリイオンコンプレックスを形成せずに処理液中で解離したアニオン性基である。従って、高分子量のアニオン性重合体の層をアニオン交換膜表面に形成した場合、立体障害により高分子が膜内に入りにくく、ポリイオンコンプレックスを形成しているアニオン性基は一部であり、膜表面で有効に作用するアニオン性基が多くなり、この結果、日持ち向上剤由来のマイナス荷電有機汚染物質を有効に排除することが可能となるのである。
例えば、図2を参照されたい。図2は、後述する実施例において、通常のアニオン交換膜(比較例)及び表面にアニオン性重合体層を有する複合アニオン交換膜(実施例1)を用いて日持ち向上剤を0.25mmol/dmの濃度で含有する仮想調味液の電気透析を行ったときの処理時間と膜電位との関係を示す図である。この図2によれば、本発明に従って複合アニオン交換膜を用いたときには、通常のアニオン交換膜を用いた場合に比して、膜電位の上昇が抑制されており、日持ち向上剤由来のマイナス荷電有機高分子による膜汚染が有効に抑制されていることが判る。
また、図3は、上記のアニオン交換膜(比較例)および複合アニオン交換膜を用い、日持ち向上剤濃度の異なる種々の仮想調味液について電気透析を行ったとき、
ΔV/ΔT:1時間あたりの膜電位上昇(V/h)
で表されるΔV/ΔTと、日持ち向上剤濃度との関係をプロットした図である。かかる図3によれば、日持ち向上剤濃度が高い使用済み調味液を用いた場合にも、本発明にしたがって複合アニオン交換膜を用いて電気透析を行えば、通常のアニオン交換膜を用いた場合に比して日持ち向上剤由来の膜汚染を有効に防止することができ、膜洗浄に要する労力やコストを軽減できることを意味しており、本発明は、日持ち向上剤濃度が0.2mmol/dm以上、特に0.25mmol/dm以上の使用済み調味液の脱塩に効果的であることが判る。
また、本発明において使用する複合アニオン交換膜は、アニオン交換膜の表面にアニオン性重合体層が形成された構造を有しているが、特に、25℃の温度に保持された0.1(mol/dm)塩化ナトリウム水溶液中に浸漬した状態でアニオンが脱離する方向に10mA/cmの電流密度で1時間通電を行ったとき、下記式(1):
R=(A−B)/A×100 …(1)
式中、Aは、上記通電開始時の膜表面に存在するアニオン性重合体のアニオ
ン交換膜単位重量当りの量(meq/g)を示し、
Bは、上記通電終了後の膜表面に存在するアニオン性重合体のアニオ
ン交換膜単位重量当りの量(meq/g)を示す、
で表されるアニオン性重合体層の脱離能Rが20%以下、特に10%以下であるものを使用するのがよい。即ち、脱離能Rが小さいということは膜表面のアニオン性重合体層がしっかりと形成されていることを意味しており、これにより、膜洗浄を行った場合においてもアニオン性重合体層が脱離しにくく、例えば逆通電を行ったときにも安定して高い耐有機汚染性が維持される。従って、本発明によれば、膜交換を最小限に抑え、長期にわたって、繰り返し脱塩処理を行うことができる。
<処理液>
本発明において、電気透析による脱塩処理に供する処理液は、使用済みの調味液であり、たとえば、梅干や漬物などを浸漬して味付けをし、これらが取り出されて残った使用済みの調味液であり、塩分(塩化ナトリウム)、各種アミノ酸や糖類と共に、日持ち向上剤を含有している。
日持ち向上剤は、防腐性、耐酸化性等を付与することにより賞味期限などを延長させる食品添加物であり、特に代表的なものとして、チアミンラウリル酸、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン酸塩酸塩、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンセチル硫酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、チアミンナフタレン−2,6−ジスルホン酸塩、チアミンフタリン塩、チアミンラウリル硫酸塩、ベンゾイルチアミンジスルフィド等のチアミン類であるビタミンB1があり、ビタミンB1以外のものとしては、安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸、L−アスコルビン酸、グリシン、リゾチーム、ポリリジン、キトサン及びこれらの塩などを例示することができる。本発明においては、処理液中の日持ち向上剤の種類は特に制限されないが、上記のアニオン交換膜の耐有機汚染性が改善されて効果的に脱塩(電気透析)を行うことができるため、上記の日持ち向上剤のなかでも、アニオン交換膜の有機汚染が特に顕著に発生していた高分子量のもの、例えばビタミンB1が添加された調味液の使用済み液を処理液として用いたときに、本発明は最も効果的である。
また、処理液中の日持ち向上剤の濃度は、特に制限されるものではないが、本発明では、先にも述べたように、この濃度は、0.2mmol/dm以上、特に0.25mmol/dm以上の範囲にあることが好ましい。即ち、この濃度が高いほど、電気透析に際しての膜汚染が顕著となるが、本発明では、特定の複合アニオン交換膜を使用して電気透析を行うことにより、日持ち向上剤濃度が高い処理液を用いた場合にも日持ち向上剤由来のマイナス荷電性有機物質による膜汚染を効果的に抑制し、特に通常のアニオン交換膜を用いた場合での膜汚染の程度の差が明確となり、本発明の効果が最大に発揮されるからである。
<脱塩処理>
上述した日持ち向上剤含有の使用済み調味液の脱塩は、後述する複合アニオン交換膜を用いることを除けば、それ自体公知の電気透析槽を用いた公知の手段により行うことができる。
即ち、この脱塩の原理を説明するための図1において、この図で示された透析槽には、負極1と正極3との間に、カチオン交換膜Cとアニオン交換膜Aとが交互に配列されている。また、負極1側に位置するカチオン交換膜Cと該膜Cの正極3側に隣接するアニオン交換膜Aとにより脱塩室5が形成され、負極1側に位置するアニオン交換膜Aと該膜Aの正極3側に隣接するカチオン交換膜Cとにより濃縮室7が形成されている。
上記のような透析槽を使用し、濃縮室7に希薄な電解質液(例えば食塩水)を流しながら、前述した日持ち向上剤含有の処理液(使用済み調味液)を脱塩室5に供給し、負極1と正極3との間に所定の電圧を印加し、これにより形成された電場によって電気透析が行われることとなる。
このようにして電気透析を行うと、脱塩室5に供給された処理液中のNaは、カチオン交換膜Cを通って隣接する濃縮室7に移行し、Clは、アニオン交換膜Aを通って隣接する濃縮室7に移行することとなるが、処理液中の日持ち向上剤由来の巨大アニオンは、アニオン交換膜Aを透過せず、そのまま脱塩室に残る。従って、脱塩室5に供給された処理液中の塩分濃度は低下していき、濃縮室に循環される電解液中の塩分濃度は増大していくこととなる。
かくして、上記のような電気透析による脱塩処理により、使用済み調味液中の塩分濃度が低下し、調味液として再利用することが可能となる。一方、濃縮室7では塩分濃度が増大し、かかる塩分を回収して再利用することができる。
上記のような電気透析において、正極1及び負極3の間に印加する電圧は、従来おこなわれている程度の範囲でよく、通常、電流密度が1mA/cm乃至100mA/cmとなる程度の電圧を印加すればよい。
上記のような原理で電気透析が行われる電気透析槽は、陽極と陰極との間にカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配置した基本構造を有している限り、種々の構造を有するものであってよく、例えば、アニオン交換膜とカチオン交換膜とが交互に配列され、これらのイオン交換膜と室枠とによって脱塩室と濃縮室とが形成されたフィルタープレス型やユニットセル型の電気透析槽を使用し、脱塩室に処理液を供給して電気透析による脱塩を行うことができる。
ところで、上記のような電気透析を続行していくと、既に述べたように、処理液(使用済み調味液)中の日持ち向上剤に由来する巨大アニオンがアニオン交換膜Aの表面に付着し、次第に膜電位が増大し、例えば印加電圧を上昇させても電気透析が効果的に行うことが困難となってしまい、このために定期的にアニオン交換膜Aの洗浄を行うことが必要となってしまう。従って、本発明では、カチオン交換膜Cとしては、従来公知のカチオン交換膜をそのまま使用することができるが、アニオン交換膜Aとしては、以下に述べる複合アニオン交換膜を使用することにより、アニオン交換膜Aの膜汚染を抑制し、膜洗浄の頻度を減らし、洗浄労力や洗浄コストの軽減を図るのである。
複合アニオン交換膜:
本発明においては、高分子量のアニオン重合体層がアニオン交換膜の表面に形成されている構造の複合アニオン交換膜を、前述したアニオン交換膜Aとして使用する。即ち、このようなアニオン重合体層を表面に形成させることにより、先に述べたように、日持ち向上剤由来の巨大アニオンによる膜汚染を有効に抑制し、膜洗浄の頻度を大幅に低減させることができる。
また、かかるアニオン性重合体層を表面に有する複合アニオン交換膜は、該膜を、25℃の温度に保持された0.1(mol/dm)塩化ナトリウム水溶液中に浸漬した状態で、アニオンが脱離する方向に10mA/cmの電流密度で1時間通電を行ったとき、下記式(1):
R=(A−B)/A×100 …(1)
式中、Aは、上記通電開始時の膜表面に存在するアニオン性重合体のアニオ
ン交換膜単位重量当りの量(meq/g)を示し、
Bは、上記通電終了後の膜表面に存在するアニオン性重合体のアニオ
ン交換膜単位重量当りの量(meq/g)を示す、
で表されるアニオン性重合体層の脱離能Rが20%以下、特に10%以下であることが好ましい。即ち、脱離能Rが上記のような範囲にあることは、かかるアニオン性重合体層が強固にアニオン交換膜に接合していることを意味するものであり、これにより、膜洗浄が繰り返し行われた場合にも、さらには逆通電のような再生処理を行った場合にもアニオン性重合体層の脱離を防止でき、安定して優れた耐有機汚染性を維持することができ、長期間にわたっての膜使用が可能となるからである。
また、アニオン交換膜の表面に形成されるアニオン性重合体層は、高分子量のアニオン性重合体から形成されているため、アニオン交換膜の内部まで浸透するものではないが、その厚みは10μm以下、特に0.001乃至1μmの範囲にあることが好ましい。即ち、この厚みが上記範囲よりも厚いと、膜抵抗が増大してしまい、透析による脱塩処理を行うときの効率が低下してしまうという不都合を生じてしまう。また、あまり薄いと、僅かなアニオン性重合体層の脱離により、日持ち向上剤由来の巨大アニオンに対する耐汚染性が低下してしまい、耐久性が低下するおそれがある。また、かかるアニオン性重合体層のイオン交換容量(カチオン交換容量)は、0.2meq/g(乾燥膜)以下、特に0.0001乃至0.1meq/g(乾燥膜)の範囲にあるのがよい。このイオン交換容量が上記範囲よりも大きいと、膜抵抗が増大し、透析の効率低下を招いてしまう。また、イオン交換容量が小さ過ぎると、巨大アニオンによる耐汚染性の低下を招き、膜の耐久性が低下してしまうこととなる。従って、本発明で用いる複合アニオン交換膜においては、上記のような脱離能R、イオン交換容量及び厚みが確保されるように、アニオン性重合体や製造条件を選択するのがよい。
また、本発明において、アニオン性重合体層は、少なくとも日持ち向上剤由来の巨大アニオンによる汚染が生じる側(具体的には負極側)に位置する面上に形成されていればよいが、一般には両面に形成することが好ましい。両面にアニオン性重合体層を形成した場合には、所謂逆通電による脱塩処理を行うことができ、これにより、膜の寿命をさらに高めることができるからである。尚、アニオン交換膜の両面に、アニオン性重合体層を形成する場合には、それぞれのアニオン性重合体層が、逆電界での脱離能が前述した範囲となるように設定されるべきであり、また厚みやイオン交換容量は、トータルで前述した範囲にあるのがよい。
本発明において、上記のようなアニオン性重合体層を表面に形成すべきアニオン交換膜は、それ自体公知のものであってよく、例えば、不織布、網、多孔性シートなどの形態を有している基材に、アニオン交換樹脂を設けたものが好適に使用される。かかるアニオン交換樹脂のアニオン交換基は、特に制限されず、1級〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基等の公知のアニオン交換基であってよい。特に強塩基性基であり、塩基性下においても交換基が解離している4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基が好適である。また、基材は、これに限定されるものではないが、通常、ポリ塩化ビニルや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン或いはこれらの共重合体もしくはブレンド物などのポリオレフィンからなる。
上記のようなアニオン交換膜は、一般に、0.1乃至5.0meq/g(乾燥膜)、特に0.5乃至3.0meq/g(乾燥膜)のアニオン交換容量を有しているのがよく、膜厚は、アニオン交換容量によっても異なるが、一般に、Cl等の低分子量のアニオン透過性の観点から0.001乃至1mm程度であるのがよい。
また、上記のアニオン交換膜の表面に設けられるアニオン性重合体層の形成に用いるアニオン性重合体としては、ポリスチレン換算での数平均分子量が4000以上、特に10000以上の範囲にあるものを使用するのがよい。即ち、このような高分子量のものを使用することにより、以下に述べる工程で、高いアンカー効果を確保することができ、アニオン交換膜の表面にがっちりと形成されたアニオン性重合体層により、前述した条件で測定される脱離能Rを低く抑えることが可能となるのである。即ち、アニオン性重合体の分子量が上記範囲よりも小さいと、分子鎖が短くなるために十分なアンカー効果が得られず、アニオン性重合体層をアニオン交換膜の表面にしっかりと形成させることができず、アニオン性重合体層の脱離能Rが大きくなってしまう。また、アニオン性重合体の分子量が過度に大きいと、膜抵抗の増大などの不都合を生じることがあるため、一般に、上記の数平均分子量は100万以下であることが好適である。
このようなアニオン性重合体は、ポリマー鎖にアニオン性基を有するものであり、このようなアニオン性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、水酸基、メルカプト基などがあるが、一般には、強酸基であり且つポリマー鎖への導入が容易なスルホン酸基が最も好適である。
かかるアニオン性重合体は、以下のような方法によって製造することができる。
(1)スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン等のアニオン性基を導入し得るモノマーの共重合体や、それらモノマーとポリビニル化合物モノマーとの共重合体にアニオン性基を導入する方法。
上記のポリビニル化合物としては、例えばジビニルベンゼン、トリビニルシクロヘキサン、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールのジアクリル酸エステルもしくはジメタクリル酸エステル、ジビニルトルエン、ジビニルスルホン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。
例えば、スチレンとジビニルベンゼンとの架橋共重合体をスルホン化することにより、前述したアニオン性重合体層の形成に用いるアニオン性共重合体を製造することができる。
(2)メタクリル酸、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸メチル、p−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸メチル等のアニオン性基を有するビニル化合物を共重合させる方法、もしくは、それらビニル化合物と前記したポリビニル化合物モノマーとを共重合させる方法。
この方法においては、必要により、イオン性基を有していないモノマー、例えばスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルケトン、ブタジエン、クロロプレン等を共重合せしめたり、或いは得られた共重合体中のカルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基を加水分解してイオン交換容量(カチオン交換容量)を調整することもできる。
(3)アニオン性基を有するフェノール類とアルデヒド類とを重縮合する方法。
この方法において、アニオン性基を有するフェノール類としては、フェノールスルホン酸、ナフトールスルホン酸、p−オキシベンゼンスルホン酸、サリチル酸ソーダ等を例示することができる。また、アルデヒド類としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、グリオキサザール、フルフラール類などが使用される。この場合、カチオン交換容量を調整するために、フェノール、クレゾール、ナフト−ル、レゾール等を共重合成分として使用することもできる。
上記のようにして製造されるアニオン性重合体において、本発明で最も好適に使用されるのは、ポリスチレンスルホン酸である。即ち、ポリスチレンスルホン酸は強酸性であり、例えば上述した複合アニオン交換膜を用いて脱塩処理に付したとき、適宜、酸やアルカリで洗浄して表面汚染物質を洗浄除去したときに、その分解を有効に抑制することもでき、酸洗浄やアルカリ洗浄による耐汚染性の低下を有効に抑制し、長期間にわたって脱塩処理を有効に行うことができるからである。
上述した高分子量のアニオン性重合体をアニオン交換膜の表面に形成させることにより、本発明で用いる複合アニオン交換膜を得ることができるが、このような形成は、当該アニオン性重合体の水溶液に膜膨潤剤を添加した処理液を調製し、この処理液中にアニオン交換膜を浸漬して、アニオン交換膜を膨潤させた状態でアニオン性重合体を吸着せしめ、次いで、膨潤したアニオン交換膜を収縮せしめることにより行われる。
膜膨潤剤としては、アニオン交換膜を膨潤させる機能を有するものである限り、特に限定されないが、一般には、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性有機溶媒、エタノール、ジベンジルアルコール等のアルコール類、ジオキサンなどのエーテル類、フタル酸エステルなどのエステル類、ブチルアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類が好適に使用される。
また、処理液中のアニオン性重合体の濃度は、形成すべきアニオン性重合体層の厚みに応じて適宜の範囲とされるが、一般には、0.001乃至80重量%程度であり、この濃度が高いほど、アニオン性重合体層の厚みを厚くし、濃度が低いほど、厚みを薄くすることができる。また、処理液中の膜膨潤剤の濃度は、その種類によっても異なるが、一般には、0.001乃至50重量%程度である。
また、上記のような処理液中にアニオン交換膜を浸漬しての該膜の膨潤は、加熱下で行うべきであり、非加熱下で行う場合には膨潤が不十分となり、アニオン性重合体の形成を有効に行うことができない。このような膨潤に際しての加熱温度は、基材など膜構成材料の熱的性質により適宜選択すればよく、通常、50℃以上、特に60℃以上とするのがよい。例えば、ポリ塩化ビニル基材の場合、50乃至80℃、ポリオレフィン基材の場合、70乃至120℃である。また、必要以上に加熱温度を高くすると、アニオン交換膜の変形や溶媒である水の揮散などが生じ、作業性が低下するなどの不都合を生じるため、かかる加熱温度は、130℃以下とするのがよい。
上記のような膨潤によって、アニオン交換膜の表面積が増大し、且つ表面に凹凸が形成され、このようなアニオン交換膜の表面に、処理液中のアニオン性重合体が吸着されることとなる。
また、このような膨潤処理は、最終的に形成されるアニオン性重合体層の膜厚が適宜の範囲となる程度の時間行われる。この膨潤処理時間は、用いる処理液中のアニオン性重合体の濃度や加熱温度によっても異なるが、一般には、0.1時間以上、特に1乃至48時間程度である。
尚、アニオン交換膜の両面にアニオン性重合体層を形成する場合には、アニオン交換膜の両面が処理液と接触するように浸漬を行って上述した処理を行えばよく、アニオン交換膜の片面にアニオン性重合体層を形成する場合には、アニオン交換膜の片面が処理液と接触するようにして処理を行えばよい。
上記のような膨潤処理後には、アニオン交換膜の収縮処理が行われる。かかる収縮処理は、膨潤処理後のアニオン交換膜を処理液から取り出し、40℃以下(一般には、常温でよい)の水中に投入することにより行われる。即ち、上記のような低温の水に膨潤処理されたアニオン交換膜を投入することにより、アニオン交換膜の温度が一気に低下し、該膜が収縮すると同時に膜膨潤剤が膜外へ除去され、これにより、該膜の表面に電気的に吸着しているアニオン性重合体の分子鎖が、アニオン交換膜表面に噛み込み、物理的に強固にアニオン性重合体層が形成される。このようなアニオン性重合体の噛み込みは、該アニオン性重合体が高分子量であるために効果的に行われるのであり、前述した範囲よりも低分子量のアニオン性重合体を用いた場合には、分子鎖が短いために、このような噛み込みが不十分となり、アニオン交換膜に強固にアニオン性重合体層を形成することができない。
尚、上記のようなアニオン交換膜の収縮処理は、所定の低温に保持された水中にアニオン交換膜を投入することにより一気に行うべきである。例えば、処理液から取り出されたアニオン交換膜を徐冷した徐々に収縮させた場合には、アニオン性重合体の噛み込みが不十分となり、やはりアニオン性重合体層をアニオン交換膜表面に強固に形成することができない。即ち、アニオン性重合体の分子鎖自体も除去に収縮するために、噛み込みが不十分となるものと考えられる。従って、シャワー、スプレー噴霧などによる処理は、洗浄の点でよいが、本発明で行うような収縮処理には不適当である。また、必要に応じて、収縮処理前に余分なアニオン性重合体および膨潤剤を除去することもできる。
上記のように収縮処理が行われ、アニオン性重合体層が強固に形成されたアニオン交換膜は、必要により、さらに水洗し、乾燥することにより、前述したアニオン交換膜Aとして使用される複合アニオン交換膜が得られる。
上記のようにして得られる複合アニオン交換膜は、日持ち向上剤由来のアニオン性有機高分子(巨大アニオン)に対する耐汚染性に優れており、しかも、電気的引力に加え、分子鎖が膜表面に食い込むというアンカー効果によってアニオン性重合体層がアニオン交換膜の表面に強固に形成されており、この脱離が有効に抑制され、電気的にアニオン性重合体層をアニオン交換膜から引き離すような逆電圧を印加した場合においても、アニオン性重合体層の脱離を有効に回避することができる。アニオン交換膜に対しての反対荷電による膜抵抗(複合アニオン交換膜の電気抵抗)の増大を有効に回避し得るという利点もある。
従って、上述した複合アニオン交換膜をアニオン交換膜Aとして用いて、日持ち向上剤含有の処理液の脱塩処理を行うときには、この膜表面へのアニオン性有機高分子の付着が有効に防止されているため、このような高分子による膜抵抗の増大が有効に回避され、膜洗浄を行うことなく、長期間にわたって、効率よく脱塩処理を行うことが可能となる。また、先にも述べたように、アニオン交換膜の両面にポリアニオン層が形成されている複合アニオン交換膜を用いた場合、適宜、電流の向きを変えての逆電界により透析による脱塩を行うことにより、膜寿命を一層向上させることができる。即ち、逆通電で処理を行うときには、荷電性有機高分子が付着する表面も反対側となるため、膜表面への荷電性有機高分子の蓄積も有効に回避でき、しかも、逆通電した場合にも複合アニオン交換膜のアニオン性重合体層は脱落せず、有効に保持されているからである。
また、上記のような複合アニオン交換膜を用いて電気透析による脱塩処理を行った場合、膜電位の上昇により効率が低下した場合、膜洗浄が行われるが、かかる膜洗浄は、脂肪族アルコール/水混合溶媒中に無機塩を溶質成分として含有する洗浄液を用いて行うことが好適である。
即ち、上記のような洗浄剤により複合アニオン交換膜の洗浄を行った場合には、溶媒成分の脂肪族アルコールによって、複合アニオン交換膜中の基材であるアニオン交換膜が膨潤し、汚染物質である日持ち向上剤を離脱し易くなり、しかも離脱した日持ち向上剤を容易に溶解せしめる。また、アニオン交換膜のアニオン交換基(カチオン)とイオンコンプレックスを形成している日持ち向上剤由来のアニオンが、洗浄剤中の無機塩のアニオンとイオン交換してアニオン交換膜から離脱する。従って、上記のような洗浄液を使用することにより、高い洗浄効率で汚染物質である日持ち向上剤や日持ち向上剤由来の巨大アニオンを除去することが可能となるのである。
上記の洗浄剤において、脂肪族アルコールとしては、水と相溶性を有しているものであれば特に制限されず、例えば炭素数が10以下、特に5以下のもの、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール等が好ましく、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが最も好適である。
また、無機塩としては、脂肪族アルコール/水混合溶媒に対しての溶解度が高く、アルカリ領域でのスケールを生成しにくいものが使用される。代表的には、食塩、塩化カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等を挙げることができる。
また、混合溶媒における脂肪族アルコール/水混合比率(体積比)は、アニオン交換膜を適度に膨潤させ、その性能低下を生じさせないため、20/80乃至80/20、特に50/50乃至75/25の範囲が好適である。また、無機塩量は、適度なイオン交換性を付与するため、前記混合溶媒当り1〜30重量%、特に2〜6重量%の範囲がよい。
さらに、上記の洗浄剤中には、リン酸3ナトリウム等のpH調整剤が添加され、そのpHが7〜9の範囲に調整されていることが好適である。かかるpH領域において、日持ち向上剤の溶解能を高めることができるからである。
上記のように適宜複合アニオン交換膜の洗浄を行い、或いは逆通電による脱塩を行うことにより、複合アニオン交換膜を交換することなく、長期にわたって使用することができる。
本発明を次の例で説明する。尚、以下の例で採用した各種物性の測定方法及び用いた膜材料等は、以下の通りである。
(脱離能)
銀−塩化銀電極を有する二室セルに該イオン交換膜を陽極側にアニオン性重合体層が向くように挟み、その陽極室と陰極室に0.1(mol/dm)NaCl水溶液を入れた。電流密度10mA/cm、温度25℃で1時間通電後、セルから膜を取り出した。純水に24時間浸漬した後、アニオン性重合体層のイオン交換容量を測定し、前述した式(1)からアニオン性重合体層の脱離能Rを算出した。
(アニオン交換容量)
アニオン交換膜を0.5(mol/dm)塩酸水溶液に2時間以上浸漬した。その後、1時間、イオン交換水に浸漬した。さらに、0.2(mol/dm)硝酸ナトリウム水溶液に1時間以上浸漬した。その浸漬液を0.1(mol/dm)硝酸銀水溶液で沈殿滴定を行い、溶離した塩素イオンを定量した(Pmmol)。
硝酸ナトリウム水溶液から取り出されたアニオン交換体は、海水に浸漬後、イオン交換水でよく洗浄し、液体をよく落とした後、真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させ、乾燥重量(D)を測定した。以上の結果から下記式より、アニオン交換容量を算出した。
アニオン交換容量(meq/g乾燥膜)=P/D
(アニオン性重合体層のイオン交換容量)
イオン交換膜をNaCl水溶液(0.5mol/dm)で平衡にさせ、十分水洗浄した後、減圧乾燥させた。次いで、蛍光X線分析を行い、ClとSの元素の重量比からClとSのmol比を求めた。Clは、アニオン交換基の対イオンとして存在する塩化物イオンに由来し、アニオン交換基の交換容量と同じである。Sはアニオン性重合体のスルホン酸基に由来する。得られたClとSの当量比と従来公知の方法により得られたアニオン交換膜のアニオン交換容量(meq/g乾燥膜)からスルホン酸基量を算出した。該スルホン酸基量が、アニオン性重合体層のイオン交換容量に相当する。
(耐有機汚染性)
測定すべきアニオン交換膜をNaCl水溶液(0.1mol/dm)に1時間浸漬した後、水洗浄した。次いで、銀−塩化銀電極を有する二室セルに該イオン交換膜を陰極側にアニオン性重合体層が向くように挟み、その陽極室には0.1(mol/dm)NaCl水溶液100ccを入れ、陰極室には、日持ち向上剤であるチアミンラウリル硫酸塩を所定濃度で含有する仮想使用済み調味液を入れた。両室とも1000rpmの回転速度で攪拌し、10mA/cmの電流密度で電気透析を行った。その時、両膜表面の近傍に白金線を固定し、膜間電圧の経時変化を測定した。通電中に有機汚染性が起こると膜間電圧が上昇してくる。
A.アニオン交換膜;
クロロメチルスチレン70重量部、工業用ジビニルベンゼン10重量部、過酸化ベンゾイル3重量部、ニトリルブタジエンゴム5重量部、ジオクチルフタレート12重量部が溶解したペースト状の単量体組成物を得た。得られたペースト状の単量体組成物を塩化ビニルの織布に付着させ、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として両側を被覆した後、80℃で8時間加熱重合し、膜状物を得た。得られた膜状物を30重量%トリメチルアミン水溶液10重量部、水50重量部、アセトン5重量部よりなるアミノ化浴中、室温で1日反応せしめ、更にHCl0.5(mol/dm)に浸漬した後、イオン交換水で5回洗浄して4級アンモニウム型アニオン交換膜を得た。この膜のアニオン交換容量は2.0meq/g乾燥膜、厚みは0.17mmである。
B.複合アニオン交換膜;
上記で得られたアニオン交換膜を、1重量%のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(数平均分子量:1,000,000)及び2重量%のエタノールを含有する水溶液に60℃で1日間浸漬した。その後、25℃の純水に1日間浸漬して両面にアニオン性重合体層が形成された複合アニオン交換膜を得た。得られた複合アニオン交換膜の特性は、次の通りである。
アニオン性重合体層:
厚み;0.5μm
イオン交換容量;0.01meq/g
脱離能R:1%
<比較例1>
仮想調味液として、下記組成の水溶液を用意した。
チアミンラウリル硫酸塩:0.25mmol/dm
NaCl:0.10mol/dm
上記の仮想調味液を使用し、前記A.のアニオン交換膜について耐有機汚染性を測定し、処理時間と膜電位との関係を図2に示した。
<実施例1>
アニオン交換膜の代わりに、前記B.の複合アニオン交換膜を用いた以外は比較例と全く同様にして、アニオン交換容量、厚みを測定した。測定結果を表1に示した。比較例の測定結果も併記した。
さらに、耐有機汚染性を測定し、処理時間と膜電位との関係を図2に示した。
<実施例2〜4>
実施例1と膜製造条件において、使用するポリスチレンスルホン酸ナトリウムの数平均分子量を変更した複合アニオン交換膜を用いた以外は比較例と全く同様にして、アニオン交換容量、厚み、アニオン性重合体層の厚み、イオン交換容量、脱離能を測定した。測定結果を表1に示した。
Figure 2008295330
<評価実験>
NaCl濃度を変えず、チアミンラウリル硫酸塩(日持ち向上剤)の濃度を種々変更した仮想調味液を調製し、各液を使用し、比較例1のアニオン交換膜と実施例1の複合アニオン交換膜の耐有機汚染性を測定し、下記の式で表されるΔV/ΔTと、日持ち向上剤濃度との関係を表2に、また、そのデータをプロットしたグラフを図3に示した。
ΔV/ΔT:1時間あたりの膜電位上昇(V/h)
Figure 2008295330
<実施例5>
アストム社製電気透析装置「マイクロ・アシライザーS3型」(商品名)に、カチオン交換膜としてアストム社製「ネオセプタCMX−SB」(商品名)、アニオン交換膜として実施例1の複合アニオン交換膜を取り付けた。
0.5mol/dmの食塩水中で、25℃、交流1kHzでアニオン交換膜の膜抵抗を測定したところ2.20Ω・cmであった。
次いで、日保ち向上剤を含有する調味梅干用の調味液2.4リットルを準備した。この液は食塩を9重量%、チアミンラウリル硫酸塩を0.82mmol/dm含有している。
この調味液を電気透析装置の脱塩液タンクより、電気透析装置の脱塩室に循環供給し、印加電圧10V一定で、最大電流密度が50mA/cmの条件で、塩濃度3重量%まで脱塩運転をした。運転に要した平均電流はアシライザー20型換算で38.3Aであった。
その後、電気透析装置から処理液を排出し、上記と同様にしてアニオン交換膜の膜抵抗を測定したところ13.8Ω・cmであった。汚染前の電流値91.7Aを100として上記の脱塩時平均電流38.3Aを換算すると41.8であり、また、脱塩効率は41.8%にまで低下した。
食塩水と95体積%エタノールとを適量混合して、エタノール65体積%及び水35体積%を含有する溶媒成分中に食塩4重量%を含有する洗浄液を得た。
この洗浄液を電気透析装置の脱塩液タンクに200cc、濃縮液タンクに200cc仕込み、該洗浄液をもこのタンクを介して電気透析装置の脱塩室、濃縮質にそれぞれ循環供給した。
30分経過後、洗浄液の循環を止め、洗浄液を排出した。その後、純水を循環させて膜を洗浄した後、上記と同様にしてアニオン交換膜の膜抵抗を測定したところ2.41Ω・cmであった。
上記洗浄後の電気透析装置において、前記調味梅干用の調味液の電気透析を、前記と同様にして実施した結果、通電初期での電流はアシライザー20型換算で86.3Aであった。これらの結果から、本発明による洗浄運転を行うことで、脱塩効率は94.1%にまで回復したといえる。
電気透析による脱塩の原理を説明するための図。 比較例1及び実施例1で測定した耐有機汚染性における膜電位と処理時間との関係を示す図。 実施例及び比較例で測定した1時間あたりの膜電位上昇ΔV/ΔTと日持ち向上剤濃度との関係を示す図。
符号の説明
A:アニオン交換膜
C:カチオン交換膜
5:脱塩室
7:濃縮室

Claims (8)

  1. 日持ち向上剤を含有する使用済み調味液からの脱塩方法において、アニオン交換膜の表面にアニオン性重合体層が存在する複合アニオン交換膜を用いて、前記使用済み調味液を電気透析処理することにより脱塩を行うことを特徴とする脱塩方法。
  2. 前記日持ち向上剤を0.2mmol/dm以上の濃度で含有する使用済み調味液を使用する請求項1に記載の脱塩方法。
  3. 前記日持ち向上剤がビタミンB1である請求項1または2に記載の脱塩方法。
  4. 前記複合アニオン交換膜として、25℃の温度に保持された0.1(mol/dm)塩化ナトリウム水溶液中に浸漬した状態でアニオンが脱離する方向に10mA/cmの電流密度で1時間通電を行ったとき、下記式(1):
    R=(A−B)/A×100 …(1)
    式中、Aは、上記通電開始時の膜表面に存在するアニオン性重合体のアニオ
    ン交換膜単位重量当りの量(meq/g)を示し、
    Bは、上記通電終了後の膜表面に存在するアニオン性重合体のアニオ
    ン交換膜単位重量当りの量(meq/g)を示す、
    で表されるアニオン性重合体層の脱離能が20%以下であるものを使用する請求項1または2に記載の脱塩方法。
  5. 前記複合アニオン交換膜として、前記アニオン性重合体層がポリスチレン換算での数平均分子量が4000以上の範囲にあるアニオン性重合体から形成されているものを使用する請求項4に記載の脱塩方法。
  6. 前記アニオン性重合体がポリスチレンスルホン酸である請求項5に記載の脱塩方法。
  7. 前記アニオン性重合体層の厚みは10μm以下の範囲にあり、且つ0.2meq/g(乾燥膜)以下のイオン交換容量を有している請求項4に記載の脱塩方法。
  8. 繰り返し脱塩が行われた後、前記複合アニオン交換膜を、脂肪族アルコール/水混合溶媒中に無機塩を溶質成分として含有する洗浄液を用いて洗浄した後、該複合アニオン交換膜を用いて再び電気透析による脱塩を行う請求項1乃至7の何れかに記載の脱塩方法。
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