JP2004224862A - イオン交換膜 - Google Patents

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稔 河島
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Abstract

【課題】ワイン等の脱塩のように、高分子量の有機イオン及び低分子塩を含む溶液から当該塩を電気透析法により除去するに際し、長期間安定に運転することができるようにするような、膜の電気抵抗が低く耐有機汚染性の高いイオン交換膜を提供する。
【解決手段】4級アンモニウム基等のイオン交換性基を有する樹脂膜の表層部に当該イオン交換性基と同種の電荷のイオン性基を有する高分子鎖、例えば前記イオン交換性基がカチオンである場合におけるポリエチレングリコール鎖やポリプロピレングリコール鎖の末端に四級アンモニウムイオンが存在するような高分子鎖が結合していることを特徴とするイオン交換膜。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なイオン交換膜、及び該イオン交換膜を用いた電気透析法により高分子有機成分を含む低分子量電解質水溶液から該低分子量電解質を除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、有機物質、特にイオン化或いは分子内の分極によって荷電を有するようになる巨大分子(以下、巨大有機イオン等ともいう。)を含有する塩の水溶液から塩をイオン交換膜法電気透析によって除去(脱塩)する場合、被処理液中の巨大有機イオン等がイオン交換膜に付着して膜の性能を低下させる、所謂膜の有機汚染という問題が生じる。有機汚染が起こると、膜の電気抵抗(以下、単に膜抵抗ともいう)の増大や電流効率の低下、また溶液pHの変化等が生じ、電気透析性能は低下する。
【0003】
従来、有機汚染を抑制するイオン交換膜として、巨大有機イオン等を容易に透過するイオン交換膜、或いは、膜内への巨大有機イオン等の侵入を膜表層部で阻止するイオン交換膜が提案されている。巨大有機イオン等の膜透過を容易にする方法としては、膜構造をルーズにする方法が知られている(非特許文献1参照)。しかし、膜構造をルーズにすると必然的にイオン選択性は低下し、その結果、効率的な脱塩は実施できなくなる。他方、巨大有機イオン等の膜内への侵入を防止するイオン交換膜としては、膜表面に中性、両性あるいはイオン交換基とは反対荷電の薄層を形成したものがあり、膜構造が緻密なものほど、また、巨大有機イオン等の分子量が大きいほど、その効果は顕著である。例えば、陰イオン交換基を有する樹脂膜の表層部に反対荷電のスルホン酸基を導入し有機陰イオンの膜内への侵入を抑制した陰イオン交換膜(特許文献1参照)等が報告されている。
【0004】
【非特許文献1】
「ディーサラネーション(Desalination)」,1973年,第13巻,p.105
【特許文献1】
特公昭51−40556号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法は、ある程度の耐有機汚染性を示すものの、膜構造をルーズにする方法では、当然イオン選択性の低下が起こり、運転効率が悪くなる。また、反対荷電を付与する方法では、前記樹脂膜の表層部に設ける反対荷電層によりイオン交換膜の電気抵抗(膜抵抗)が著しく増大するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、優れた耐有機汚染性を有し、且つ低い電気抵抗を示すイオン交換膜を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ってきた。その結果、イオン交換膜表面に当該イオン交換膜が有するイオン交換基と同種の電荷を有するイオン性基を有する高分子鎖を結合させることで、イオン選択性を変化させることなく、また膜抵抗を増大することなしに耐有機汚染性を向上させることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、イオン交換性基を有する樹脂膜の表層部に当該イオン交換性基と同種の電荷のイオン性基を有する高分子鎖が結合していることを特徴とするイオン交換膜である。
【0009】
本発明のイオン交換膜においては、イオン交換膜中に存在するイオン交換基と高分子鎖中に存在するイオン性基との静電的相互作用(具体的には斥力)或いは電気透析時に印加する電場の作用により高分子鎖が膜の外側に向かって延びるように配向することによる立体的な障害によって巨大有機アニオンの膜への接触が抑制されるばかりでなく、前記イオン性基の電荷のタイプによっては高分子鎖が巨大有機アニオンを捕捉するため、巨大有機イオン等のイオン交換膜への吸着がより効率的に抑制され、耐有機汚染性が向上する。また、本発明のイオン交換膜においてはイオン交換基と前記イオン性基の電荷が同種(正負の符号が同じ)であるため、膜抵抗の上昇も起こり難くなっている。
【0010】
本発明者等は、膜抵抗の上昇が小さく耐有機汚染性の高いイオン交換膜として、ポリアルキレングリコール鎖を有するポリエーテル化合物が膜表面及び/又は膜内部に固定化させてなることを特徴とするイオン交換膜を開発しているが(特願2002−185624号)、ポリアルキレングリコール鎖を有するポリエーテル化合物に由来する高分子鎖以外の高分子鎖を固定化したものであっても当該高分子鎖に特定のイオン性基を導入し、本発明のイオン交換膜とすることにより上記イオン交換膜と同等若しくはそれ以上の効果を得ることが可能である。さらに、ポリアルキレングリコール鎖を有するポリエーテル化合物に由来する高分子鎖であってイオン交換基と同種の電荷のイオン性基を導入した高分子鎖を固定化した場合には、前記静電効果等による配向により、このようなイオン性基を導入しないポリエーテル鎖を固定化したものよりも更に高い耐有機汚染性を得ることができる。
【0011】
また、他の本発明は、除去すべき電解質として分子量1,000以下の有機酸若しくは無機酸又は分子量1,000以下の有機塩若しくは無機塩からなる低分子量電解質を含有し、且つ、該低分子量電解質よりも分子量の大きな高分子量有機化合物又は有機イオンを含有する被透析液から、上記本発明のイオン交換膜を用いた電気透析により、前記低分子量電解質を除去することを特徴とする低分子量電解質濃度が低減された水溶液の製造方法である。
【0012】
上記本発明の製造方法では、前記したような優れた特徴を有する本発明のイオン交換膜を使用しているので長期間安定に脱塩を行なうことが可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のイオン交換膜は、イオン交換性基を有する樹脂膜の表層部に当該イオン交換性基と同種の電荷のイオン性基を有する高分子鎖が渇仰してなる。ここでイオン交換性基とは、樹脂膜に陽イオン交換能及び陰イオン交換能を付与するための陽イオン交換基又は陰イオン交換基を意味する。これらイオン交換基としては、水溶液中で負または正の電荷となりうる官能基であれば特に制限されるものではない。具体的には、陽イオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、一般的に強酸性基であるスルホン酸基が好適に用いられる。また、陰イオン交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基等が挙げられ、一般的に強塩基性基である4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基が好適に用いられる。
【0014】
また、上記イオン交換基を有する樹脂膜の材質は特に限定されず、通常のイオン交換膜に使用されている炭化水素系樹脂又はフッ素系樹脂膜が何ら制限無く使用できる。また、該樹脂膜は、重合型、縮合型、均一型、不均一型などの別なく、また補強芯材の有無、材料又は製造方法に由来する膜の種類、形式などの別なく如何なるものであってもよい。しかしながら、巨大有機イオンの多くはアニオンであり、陰イオン交換膜が有機汚染を受けて性能低下する場合が多い。従って、本発明のイオン交換膜においては、陰イオン交換膜であることが(別言すればイオン交換基を有する樹脂膜としては陰イオン交換基を有する樹脂膜を使用することが)、電気透析の透析性能の低下を抑制するという本発明の効果が顕著であるため、好適である。
【0015】
本発明のイオン交換膜は、前記のようなイオン交換基を有する樹脂膜の表層部に当該イオン交換性基と同種の電荷のイオン性基を有する高分子鎖(以下、単に荷電高分子鎖ともいう)を有することに最大の特徴を有する。このような高分子鎖を有することにより前記したような機構で膜抵抗を上昇させること無く耐有機汚染性を向上させることができる。ここで、表層部とは、表面若しくは表面近傍であって、固定化された荷電高分子鎖が静電効果又は電気透析時の電場によって動くことが可能で、巨大有機イオンが樹脂膜に接触するのを妨害し得る領域であれば特に制限されないが、このような効果および膜抵抗の上昇が起こり難いという観点からイオン交換膜外表面から膜の内部に向かって0〜200μm、特に0〜50μmの領域であるのが好適である。高分子鎖の存在領域は膜断面のIRを測定することによって確認する事ができる。
【0016】
荷電高分子鎖を構成する全原子の原子量の総和(荷電高分子鎖を分子とみなしたときの分子量に相当する。)は特に制限されないが、より効果的な耐有機汚染性を付与するうえで、50〜100,000、特に100〜50,000であるのが好適である。上記総和(分子量)が小さすぎると耐有機汚染性は低くなり、逆に大き過ぎると製造が困難と成るばかりでなく膜抵抗の増大を招くことがある。
【0017】
荷電高分子鎖中に存在するイオン性基は、水中でイオン化し得る官能基であって、イオン化したときの電荷の種類(正又は負)が、当該荷電高分子鎖が固定化される樹脂膜中に存在するイオン交換基がイオン化したときの電荷の種類と同じものであれば特に限定されず、公知の官能基が採用できる。このようなイオン性基をイオン化したときのイオンの名称で示せば、陽イオン(電荷が正であるもの)としては、アンモニウム、オキソニウム、ホスホニウム、スルホニウム、セレノニウム、テルロニウム等のオニウムイオンを挙げることができる。また陰イオン(電荷が負であるもの)としては、スルホン酸基、カルボン酸基等を挙げることができる。これらイオン性基は単一の種類であっても電荷の種類が同じであれば複数の異なる種類のものであってもよい。また、イオン交換基と同一であってもよい。
【0018】
これらイオン性基は、荷電高分子鎖中のどこに存在していてもかまわないが、効果の観点から固定端から遠い方が好ましく、中央より自由端側、特に自由端部に存在するのが好適である。また、一つの荷電高分子鎖中に存在するイオン性基の数も特に限定されないが、荷電高分子鎖が耐有機汚染性を発揮し得るために有効な構造をとるという理由から1〜10個、特に1個であるのが好適である。
【0019】
前記荷電高分子鎖におけるイオン性基以外の部位の構造は特に限定されないが、基本的には線状であるのが好適である。該部位は分岐を有していてもよいが、分岐鎖は主鎖に比べて短いほうが好ましい。当該イオン性基以外の部位を構成する分子鎖の結合様式は炭素−炭素結合(二重結合も含む)、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合、炭素−珪素結合、珪素−酸素結合又はこれらの組合せから成るものであれば特に限定されないが、好適なものを例示すれば、ポリアルキレン結合、ポリエーテル結合、ポリシロキサン結合、ポリチオール、ポリセレノール結合等を挙げることができる。これら結合における炭素原子やケイ素原子は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、前記したイオン性基のほかに、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホン酸基等を挙げることができる。
【0020】
本発明における荷電高分子鎖は、「前記したような“ポリアルキレングリコール鎖を有するポリエーテル化合物に由来する高分子鎖”がオニウムイオン化されたもの」であってもそれ以外のものであってもよいが、特に好適なものとしては、ポリアルキレングリコール鎖を有するポリエーテル化合物に由来する高分子鎖がオニウムイオン化されたものとしては下記式で示される基を挙げることができる。
【0021】
【化1】
Figure 2004224862
【0022】
(式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜5のアルキレン基であり、nは1〜100の整数である。)
また、ポリアルキレングリコール鎖を有するポリエーテル化合物に由来する高分子鎖がオニウムイオン化されたもの以外のものとしては、末端にイオン性基を有するポリブタジエン鎖、ブタジエンジアミンから誘導される1価の基、スルファニル酸から誘導される1価の基等を挙げることができる。
【0023】
本発明のイオン交換膜における荷電高分子鎖の固定化量は特に限定されないが、効果の観点から、乾燥時のイオン交換膜の単位重量当たりの荷電高分子鎖重量で表して0.1〜40mg/g、特に0.1mg〜10mgの範囲であるのが好適である。荷電高分子鎖の固定化量が少ないと耐有機汚染性の効果が発現せず、逆に多すぎると電気抵抗の増大を招くことがある。
【0024】
本発明のイオン交換膜における荷電高分子鎖の結合様式は、共有結合やイオン結合の形成を伴う化学的な固定化様式であれば特に限定されない。荷電高分子鎖が単なる物理収着ではなくこのような強固な結合により固定化されているため、本発明のイオン交換膜は、優れた耐有機汚染性を長時間にわたり維持することが可能である。
【0025】
本発明のイオン交換膜の製造方法は特に限定されないが、一般的なイオン交換膜の製造方法において、ハロアルキル基が導入されたイオン交換膜を製造した後、該イオン交換膜と、荷電高分子鎖にアミノ基等の“ハロアルキル基と化学結合し得る官能基”を導入した化合物(以下、荷電高分子鎖前駆体ともいう)と反応させることにより好適に製造することができる。より具体的には、ハロアルキル基を有する単量体、架橋性単量体および重合開始剤からなる単量体組成物を膜状に成型した後、該単量体組成物を重合し、得られた膜状物を荷電高分子鎖前駆体が溶解した溶液中に浸漬して反応させ荷電高分子鎖を固定化し、必要に応じて、陽イオン交換基や陰イオン交換基を導入する方法等により製造することができる。該方法によれば、温度、時間、濃度等の浸漬条件を変えることによって荷電高分子鎖の結合量を容易に制御することができる。
【0026】
前記したように、本発明のイオン交換膜は耐有機汚染性が高く膜抵抗が低いという特徴を有する。このため、本発明のイオン交換膜は、耐有機汚染性を必要としない用途において使用できることは勿論、低分子量電解質及び高分子量有機化合物を含有する水溶液(被処理液)からイオン交換膜を用いた電気透析により前記低分子量電解質を除去して該低分子量電解質濃度が低減された水溶液(以下、単に脱塩液ともいう。)を製造する際のイオン交換膜としても好適に使用できる。このような電気透析に本発明のイオン交換膜を使用した場合には、巨大有機イオン等ともなり得る上記高分子量有機化合物の有機汚染を受け難いので長期間安定して電気透析を行なうことができる。しかも膜抵抗は荷電高分子鎖が固定化されていない従来のイオン交換膜と同程度であるので、電力使用量が増大することもない。
【0027】
なお、上記低分子量電解質とは、除去の対象となる電解質であり、通常は、分子量1,000以下の有機酸若しくは無機酸又は分子量1,000以下の有機塩若しくは無機塩を意味する。塩化ナトリウムや塩化カリウムなどのような無機塩類又はクエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリシン、アラニン、システイン等のような分子量1,000以下の有機酸やアミノ酸などがその具体例である。
【0028】
また、上記高分子量有機化合物とは、前記低分子量電解質よりも大きな分子量を有する有機化合物又は有機イオンであり、被透析液中に残したい有用成分であるか或いは除去する必要のない成分を意味する。このような高分子量有機化合物としては、グルコース、フラクトース、マルトース、キシロース、サッカロース、ラフィノース、およびその他のオリゴ糖などのような糖類;メタノール、エタノール、プロパノール、グリセリンなどのようなアルコール類;グリコール類;グルコン酸、フミン酸などのような有機酸またはその塩;グルタミン酸、グリシンなどのようなアミノ酸またはその塩;ビタミン類;果肉や魚介類のなどのようなエキス類;ポリフェノールや各種タンパク質、核酸、酵素などのような天然高分子;オリゴペプチド;抗生物質;補酵素;ドデシルベンゼンスルホン酸などのような界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのような水溶性の合成高分子、等が挙げられる。
【0029】
上記脱塩液の製造方法で使用される被透析液は、上記低分子量電解質及び高分子量有機化合物を含有する水溶液であれば特に限定されないが、製造効率の観点から、被透析液中の、上記低分子量電解質及び高分子量有機化合物の含有量は、それぞれ1〜100,000ppm(重量基準、以下同じ)及び1〜500,000ppm、特にそれぞれ100〜10,000ppm及び100〜100,000ppmであるのが好適である。
【0030】
このような被透析液としては、低分子量電解質として有機酸等を100〜10,000ppm含有し、高分子量有機化合物としてポリフェノールや糖分等を合計で1,000〜50,000ppm含有する未蒸留酒類(例えば、ワイン等)や果汁等;低分子量電解質として無機塩を100〜10,000ppm含有し、高分子量有機化合物として多糖類等を合計で1,000〜100,000ppm含有するグルコースやフルクトース等の糖蜜類等が例示される。即ち、前記本発明の方法は、特に、食品、医薬品、農薬などの合成工程若しくは精製工程、又はかん水若しくは廃水の脱塩工程や飲料水の製造工程において好適に採用できる。
【0031】
上記脱塩液の製造方法で使用する電気透析槽は、陽極と陰極との間に少なくとも一方が本発明のイオン交換膜からなる陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを配列して構成される基本構造を有するものであれば、公知の電気透析槽を特に制限なく用い得る。例えば、陰イオン交換膜及び陽イオン交換膜を交互に配列しこれらのイオン交換膜と室枠とによって脱塩室と濃縮室とが形成された基本構造よりなるフィルタープレス型やユニットセル型などのような電気透析槽が好適に使用できる。なお、かかる電気透析槽に用いる膜数あるいは脱塩室および濃縮室の流路間隔(膜間隔)等は、処理する有機物の種類や処理量により適宜選定される。ただし、前記高分子有機化合物が負に荷電している場合、陰イオン交換膜が有機汚染を受けやすい為、陰イオン交換膜として本発明の陰イオン交換膜を使用するのが好適であり、逆に前記高分子有機化合物が正に荷電している場合には陽イオン交換膜として本発明の陽イオン交換膜を使用するのが好適である。
【0032】
このような電気透析槽を用いて前記被透析液から低分子量電解質を除去する本発明の方法は、電気透析槽の脱塩室に前記した被透析液を、濃縮室に電解質溶液をそれぞれ供給し、さらに、陰極室及び陽極室に電解質溶液よりなる電極液を供給した状態で、陽極と陰極との間に直流電流を通ずることにより実施される。このようにして通電することにより、脱塩室中に供給される有機物溶液中の低分子量電解質がアニオンとカチオンに解離し、それぞれが陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を透過して濃縮室側に排出される為、時間の経過と共に被透析液から低分子量電解質を除去することができる。なお、かかる電気透析において、電気透析槽に印加する電圧、電流密度および処理時間は除去すべき低分子電解質の種類や濃度等により適宜決定すればよい。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を更に詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例に示すイオン交換膜の特性は、以下の方法により測定した。
【0034】
(1)イオン交換容量および含水率
イオン交換膜を1(mol/l)HCl水溶液に10時間以上浸漬する。その後、陽イオン交換膜の場合には、1(mol/l)NaCl水溶液で水素イオン型をナトリウムイオン型に置換させ、遊離した水素イオンを電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(当該定量値をAmolとする)。一方、陰イオン交換膜の場合には、1(mol/l)NaNO水溶液で塩素イオン型を硝酸イオン型に置換させ、遊離した塩素イオンを電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(当該定量値もAmolとする)。
【0035】
次に、同じイオン交換膜を1(mol/l)HCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分に水洗した後膜を取り出しティッシュペーパー等で表面の水分をふき取り湿潤時の重さ{当該重量をW(g)とする}を測定し、次に、膜を減圧乾燥機に入れ60℃で5時間乾燥させた。膜を取り出し乾燥時の重さ{当該重量をD(g)とする}を測定し、イオン交換容量と含水率は次式により算出した。
【0036】
イオン交換容量=A×1000/W (mmol/g−乾燥膜)
含水率=100×(W−D)/D (%) 。
【0037】
(2)膜抵抗の測定
白金黒電極版を有する2室セル中にイオン交換膜を挟み、イオン交換膜の両側に0.5(mol/l)NaCl水溶液を満たし、交流ブリッジ(周波数1000サイクル/秒)により25℃における電極間の抵抗を測定し、該電極間抵抗とイオン交換膜を設置しない場合の電極間抵抗との差により求めた。上記測定に使用する膜は、あらかじめ0.5(mol/l)NaCl水溶液中で平衡にしたものを用いた。
【0038】
(3)耐有機汚染性の測定
得られた陰イオン交換膜をNaClの0.1(mol/l)水溶液に1時間浸漬した後、水洗浄してコンデショニングした。次いで、銀、塩化銀電極を有する二室セルに該イオン交換膜を挟み、その陽極室には0.1(mol/l)NaCl水溶液100ccを入れ、陰極室には高分子量有機化合物としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム500ppmと、低分子量電解質であるNaCをl0.1(mol/l)の濃度で含む混合溶液を入れた。両室とも1000rpmの回転速度で攪拌し、10mA/cmの電流密度で電気透析を行った。その時、両膜表面の近傍に白金線を固定し、膜間電圧の経時変化を測定した。通電中に有機汚染性が起こると膜間電圧が上昇してくる。通電を開始して30分後の膜間電圧と有機汚染物質を添加しない場合の電圧差(ΔE)をとって膜の汚染性の尺度とした。ΔEが小さいほど耐有機汚染性が高いといえる。
【0039】
実施例1〜4
クロロメチルスチレン80重量部、スチレン10重量部、工業用ジビニルベンゼン10重量部、過酸化ベンゾイル重量5部、スチレンオキサイド重量3部にニトリルブタジエンゴム5重量部が溶解したペースト状の単量体組成物を得た。得られたペースト状の単量体組成物をポリ塩化ビニルの織布に付着させ、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として両側を被覆した後、0.4MPaの窒素加圧下、80℃で8時間加熱重合した。
【0040】
次いで、陰イオン交換膜の場合は、得られた膜状物をポリブタジエンジグリシジルエーテル(分子量2800)をジメチルアミンで開環反応させた化合物の20重量%メタノール溶液に25℃で、所定の時間浸漬した。その後、メタノールで膜に付着した未反応ポリブタジエンジアミンを除去する為にメタノールで洗浄し、次いで水洗浄を行なった。この時点で乾燥重量を測定し、反応前の乾燥重量を差し引いて高分子鎖結合量を求めた。得られた膜状物を40重量%よう化メチルのヘキサン溶液に室温で1日間浸漬して、結合部分及び末端部分の窒素原子を四級化した。この時点で上記イオン交換容量の測定を行い高分子鎖末端に電荷を付与できたことを確認した。その後、膜をメタノールと水で続けて洗浄した。得られた各膜状物を30重量%トリメチルアミン水溶液10重量部、水50重量部、アセトン5重量部よりなるアミノ化浴中、室温で16時間反応せしめ、更にHClの0.5(mol/l)水溶液に浸漬した後、イオン交換水で5回洗浄して4級アンモニウム型陰イオン交換膜を得た。
【0041】
得られたイオン交換膜をFT−IRで分析したところエーテル結合に帰属する1108cm−1にピークが認められ、末端に正電荷を有する分子量2000以上の分子鎖を持つ化合物の存在を確認した。更に、末端に正電荷を有する分子量2000以上の分子鎖を持つ化合物の存在位置を確認する為に、1重量%過マンガン酸カリウム水溶液にイオン交換膜を浸漬してMnO にイオン交換し、SEM−EDSで膜断面におけるMn元素の定状分析を行った結果、Mnに帰属するピークが膜表層部に観察された。
【0042】
実施例5
クロロメチルスチレン90重量部、工業用ジビニルベンゼン10重量部、過酸化ベンゾイル重量5部、スチレンオキサイド重量3部にニトリルブタジエンゴム5重量部が溶解したペースト状の単量体組成物を得た。得られたペースト状の単量体組成物をポリ塩化ビニルの織布に付着させ、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として両側を被覆した後、0.4MPaの窒素加圧下、80℃で8時間加熱重合した。得られた膜状物をスルファミン酸の10重量%メタノール溶液に25℃で、1日間浸漬した。その後、メタノールで膜に付着した未反応スルファミン酸を除去する為にメタノールで洗浄し、次いで水洗浄を行なった。この時点で乾燥重量を測定し、反応前の乾燥重量を差し引いて高分子鎖結合量を求めた。この時点で上記イオン交換容量の測定を行い高分子鎖末端に電荷を付与できたことを確認した。その後、膜をメタノールと水で続けて洗浄した。得られた各膜状物を、亜硫酸ナトリウムを飽和させたアセトン30重量部、水70重量部溶液浴中、還流させて1日反応せしめた後、イオン交換水で5回洗浄してスルホン酸型陽イオン交換膜を得た。
【0043】
本発明の陰イオン交換膜の高分子鎖結合量を変えたときの耐有機汚染性と初期に膜抵抗を測定した。これらの結果を表1に示した。表中のPBはポリブタジエン鎖のことを表す。
【0044】
【表1】
Figure 2004224862
【0045】
比較例1
実施例1において荷電高分子鎖を固定化する処理を行わなかったこと以外は実施例1と同じ操作を行い、4級アンモニウム型イオン交換膜を得た。得られたイオン交換膜のイオン交換膜特性を測定した。その結果を表2に示した。
【0046】
比較例2
実施例5において荷電高分子鎖を固定化する処理を行わなかったこと以外は実施例5と同じ操作を行い、スルホン酸型イオン交換膜を得た。得られたイオン交換膜のイオン交換膜特性を測定した。その結果を表2に示した。
【0047】
【表2】
Figure 2004224862
【0048】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明の膜内部の荷電と同荷電を末端に有する高分子鎖を結合させたことを特徴とするイオン交換膜は、膜抵抗の上昇を起こすことなく、優れた耐有機汚染性を付与することができる。また、本発明のイオン交換膜を用いることにより巨大有機物を含有する系の電気透析においても優れた性能を長時間持続することができる。

Claims (2)

  1. イオン交換性基を有する樹脂膜の表層部に当該イオン交換性基と同種の電荷のイオン性基を有する高分子鎖が結合していることを特徴とするイオン交換膜。
  2. 除去すべき電解質として分子量1,000以下の有機酸若しくは無機酸又は分子量1,000以下の有機塩若しくは無機塩からなる低分子量電解質を含有し、且つ、該低分子量電解質よりも分子量の大きな高分子量有機化合物又は有機イオンを含有する被透析液から、請求項1に記載のイオン交換膜を用いた電気透析により、前記低分子量電解質を除去することを特徴とする低分子量電解質濃度が低減された水溶液の製造方法。
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