JP2008281125A - 制振装置 - Google Patents

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Kiyotaka Inoue
清孝 井上
Yukio Mifune
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Abstract

【課題】小型でありながらも減衰力の大きい制振装置を提供する。
【解決手段】ベースプレート20、21の間に、ゴム層16と補強板17を交互に重ね積層ゴム本体18を形成する。積層ゴム本体18にプラグ挿入用の孔18hを設け、降伏応力が約39.2MPaの亜鉛/アルミ合金をプラグ19を圧入する。補強板17間の間隔をtをプラグ19の半径Dp/2よりも小さく設定する。補強板17の厚さtをゴム層16の厚さtの半分以上に設定する。補強板17に設けられたプラグ挿入用の孔17hの周縁部に面取り加工を施す。
【選択図】図4

Description

本発明は、構造物に取り付けられ、構造物の振動を制御、減衰する制振装置に関する。
高層建物の制振装置としては、粘性流体を利用する粘性減衰型の制振装置や極軟鋼のパネルやブレースを用いる履歴減衰型の制振装置が一般に用いられるが、ゴム層と鋼板(補強板)を鉛直方向に交互に積層して積層ゴム体とし、積層ゴム体に各層を貫いた孔を設け、これにダンパ用の柱状の鉛プラグを圧入した積層ゴム支承を制震装置として用いることが提案されている(特許文献1)。
特開2000−291730号公報
しかし、流体を用いた粘性減衰型制振装置では、構造が複雑・大型になるとともにコストが増大する。履歴減衰型制振装置では、微少変形の繰り返しによる加工硬化でその性能が経時的に変化し、かつ単位面積当たりの減衰力が小さいため大きな減衰力が必要な場合には大型化してしまいデザイン上不利である。また、鉛プラグを圧入した積層ゴム体を用いた制振装置においても、単位面積当たりの減衰力が小さいため、大きな減衰力を必要とする場合には、鉛プラグの径を大きくする必要があり装置が大型化する。
本発明は、小型でありながらも減衰力の大きい制振装置を提供することを目的としている。
本発明の積層ゴム型制振装置は、ゴム層と補強板を交互に積層した積層ゴム本体と、ゴム層および補強板を垂直に貫通する積層ゴム本体に設けられた孔と、降伏応力が約19.61MPaを越える常温超塑性材料を用い、この孔に圧入されるプラグとを備え、補強板の厚さとゴム層の厚さの比が1/2以上であることを特徴としている。
更に、補強板の厚さとゴム層の厚さの比が1〜2.5の範囲にあることがより好ましい。またプラグには、例えば降伏応力が約39.2MPaの常温超塑性材料が用いられ、常温超塑性材料は亜鉛/アルミ合金であることが好ましい。
また、補強板に設けられたプラグが挿入される孔の周縁部に面取りが施されることが好ましい。
以上のように、本発明によれば、小型でありながらも減衰力の大きい制振装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、高層建造物に取り付けられた本発明の一実施形態である積層ゴム型制振装置の配置を示す模式図である。また、図2は、高層建造物に取り付けられた積層ゴム型制振装置の拡大斜視図である。
本実施形態の積層ゴム型制振装置10は、例えば、高層建造物11における各層の梁12の略中央に各々取り付けられ、積層ゴム型制振装置10には更にブレース13が連結される。図2に示されるように、積層ゴム型制振装置10の一方の取付面は、梁12に固定された取付板14にボルト(図示せず)などの取付手段を用いて固定される。一方、積層ゴム型制振装置10の他方の取付面は、ブレース13に固定された取付板15にボルト(図示せず)などの取付手段を用いて固定される。
次に、図3、図4を参照して本実施形態の積層ゴム型制振装置10の構造について説明する。なお、図3は、積層ゴム型制振装置10の取付面の一方を上に向けて配置したときの斜視図であり、図4は図3のIV−IV線に沿った積層ゴム型制振装置10の中央断面図である。
本実施形態の積層ゴム型制振装置10は、ゴム層16と補強板17とを交互に積層して加硫成形した積層ゴム本体18に補強板17と垂直な孔18hを設け、この孔18hに例えば降伏応力200以上の常温超塑性材料からなるダンパ用のプラグ19を圧入したものである。本実施形態において、積層ゴム型制振装置10は、例えば略直方体形状をなし、積層ゴム本体18内には、図4に示されるように、所定間隔(板厚中心間の距離)tで平行に複数の補強板17が配置され、補強板17の間には厚さtのゴム層16が設けられる。
補強板17には、例えば厚さtの薄板状の鋼板が用いられる(なおt=t+t)。積層ゴム本体18の最上部および最下部には、例えば平面形状においては補強板17と略同寸法であるが、相対的に厚みのあるベースプレート20、21(積層ゴムの変形に対して剛性を維持する板部材)が配置され、取付板14、15等が取り付けられる取付面を構成する。
ゴム層16は、補強板17よりも一回り大きく、補強板17およびベースプレート20、21は、その周囲をゴム層16を含むゴム部材によって取り囲まれる。本実施形態では円柱状の孔18hが積層ゴム本体18に例えば3つ設けられ、この孔18hは上部ベースプレート20から下部ベースプレート21まで貫通する。また、各孔18hにはそれぞれ、直径Dpの円柱状の常温超塑性材料であるプラグ19が所定の充填率で圧入される。なお、本実施形態ではプラグ19として、例えば降伏応力が約39.2MPa(400kgf/cm)の亜鉛/アルミ合金が用いられる。
積層ゴム型のダンパは、プラグを剪断変形させ、そのときの塑性変形に伴うエネルギーを用いて振動エネルギーを吸収している。プラグを有効に剪断変形させるには、プラグに大きな軸力を掛ける必要があるが、積層ゴム型のダンパを免震用の支承としてではなく制振装置として用いる場合には、プラグへの軸力が不足する。
このような問題に対し、鉛プラグを用いた従来の制振装置では、鉛を拘束する力を増大させる構造を装置に与えること(特開2000−291730号公報)や、予圧することでプラグを適切に剪断変形させることができるが、これは鉛の降伏応力が約7.86MPa(80kgf/cm)と低いことから可能である。
しかし、本実施形態では、降伏応力が19.61MPa(200kgf/cm)を越える常温超塑性材料、特に降伏応力が約39.2MPa(400kgf/cm)の亜鉛/アルミ合金をプラグ19として用いている。したがって、プラグ19全体を適切に剪断変形させるには軸力を予め与える構成では十分ではない。すなわち従来の構成では、プラグは曲げ変形を受け、局所的に大きな応力が働くこととなる。
以上のように、本実施形態では補強板17の厚さをt/t≧1/2、すなわち補強板17の厚さtをゴム層16の厚さtの半分以上に設定している(より好ましくはt/tの値を1〜2.5の範囲に設定)。補強板17は、プラグ19の周囲を取り囲み、積層ゴム体16の変形時、プラグ19と接触して水平力を与えるが、補強板17をこのような厚さ比に設定することで、補強板の剛性が高められ、制振装置の積層方向に高い圧縮力を与える構造を用いなくとも変形時の補強板の曲げを抑制することができる。すなわち、上下ベースプレート間の相対的な回転運動を抑制し、プラグの各層において剪断変形を支配的に生じさることができる。これにより、プラグの変形が分散され、局所的な変形の集中が緩和され、プラグの繰り返し変形に対する耐久性が向上する。
本実施形態では、更に、曲げ変形よりも剪断変形が支配的となるように、直径Dpと間隔tの値を、Dp/t>2に設定している(より好ましくはDp/t:5〜10)。すなわち、プラグ側面に補強板17が少なくともプラグ半径(Dp/2)よりも小さい間隔tで当接するように補強板17を密に配置し、ゴム層16の一次形状係数を高くすることで変形時の補強板の回転を抑え、プラグ19の拘束点を増やすことにより、プラグ19を強制的に剪断変形させ、剪断変形を支配的に発生させている。これにより、積層ゴム型制振装置10において、更に高い減衰力を発生させるとともに、耐久性を向上させることができる。
また本実施形態では、プラグ19を圧入するために設けられた孔18hを構成する補強板17に形成された孔17hの周縁部に、例えば円弧状の面取り加工が施される。亜鉛/アルミ合金など常温超塑性材料を用いたプラグでは、加工硬化を起こさないため、変形が局部に集中すると十分な減衰力を確保できない。したがって、プラグの塑性変形における変形の集中を更に抑え、繰り返し変形に対して安定した減衰力を発揮させるため本実施形態では孔17hの周縁部に面取り加工を施し、プラグ19が孔17hの周縁部の角部により局所的に力を受けることを防止している。また、面取り加工はプラグ19の切り裂きを更に抑える。
以上のように、本実施形態によれば、降伏応力が19.61MPa(200kgf/cm)を越える常温超塑性材料をプラグに用いることにより、小型でありながら高い減衰力を発揮する積層ゴム型の制振装置を得ることができる。
また、このような高い降伏応力を持つ常温超塑性材料を用いても、プラグ径と補強板の間隔との間の関係を本実施形態のように設定することで、変形時、プラグにおいて曲げ変形が支配的になることを抑え、剪断変形をプラグ全体に分散させることが可能となり、より安定した減衰性能を持たせることが可能となる。
また、補強板の厚さとゴム層の厚さを本実施形態のように設定することにより、更に剪断変形をプラグ全体に分散させ、プラグにおいて局所的に力が集中することを防止し、プラグ表面に切り欠きが発生することを防止でき、積層ゴム制振装置の減衰性能を更に高めるとともに、耐久性を向上することができる。また更に、本実施形態では、補強板のプラグ孔の周縁部を面取りしているため、更に変形が局部に集中することを防止できる。
なお、本実施形態では、直方体型の積層ゴム型制振装置を例に説明を行ったが、制振装置の形状は例えば円筒形など他の形状であってもよいし、プラグの数や配置も様々の形態が考えられる。本実施形態では、常温超塑性材料として亜鉛/アルミ合金を例に説明を行ったが、他の材料であっても本発明を適用することができる。また、建造物内における制振装置の配置や取付方法に関しても様々の方法が考えられる。
また、プラグの拘束力を更に高めるため、本実施形態の積層ゴム型制振装置を複数個重ねて積層ゴム部に予め圧縮力を与える構成とすることもできる。
更に、粘性体あるいは粘弾性体を用いた他の種類の制振装置を直列または/かつ並列に接続して、変形速度により変化する減衰力の要素を加えることで、更に制振設計の自由度を高めることも可能である。
高層建造物への取り付けられた本発明の一実施形態である積層ゴム型制振装置の配置を示す模式図である。 積層ゴム型制振装置の梁、ブレースへの取付構造を示す斜視図である。 本実施形態の積層ゴム型制振装置の外観を示す斜視図である。 図3のIV−IV線に沿った積層ゴム型制振装置の中央断面図である。
符号の説明
10 積層ゴム型制振装置
12 梁
13 ブレース
14、15 取付板
16 ゴム層
17 補強板
18 積層ゴム本体
19 プラグ
20、21 ベースプレート

Claims (5)

  1. ゴム層と補強板を交互に積層した積層ゴム本体と、
    前記ゴム層および前記補強板を垂直に貫通する前記積層ゴム本体に設けられた孔と、
    降伏応力が約19.61MPaを越える常温超塑性材料を用い、前記孔に圧入されるプラグとを備え、
    前記補強板の厚さと前記ゴム層の厚さの比が1/2以上であることを特徴とする積層ゴム型制振装置。
  2. 前記補強板の厚さと前記ゴム層の厚さの比が1〜2.5の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の積層ゴム型制振装置。
  3. 前記降伏応力が約39.2MPaであることを特徴とする請求項1に記載の積層ゴム型制振装置。
  4. 前記常温超塑性材料が亜鉛/アルミ合金であることを特徴とする請求項3に記載の積層ゴム型制振装置。
  5. 前記補強板に設けられた前記プラグが挿入される孔の周縁部に面取りが施されたことを特徴とする請求項1に記載の積層ゴム型制振装置。

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