JP2008280571A - 防錆防食被覆鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、コンクリートあるいは地面に一部を埋め込まれて使用される場合に優れた防食特性を示す防錆防食被覆鋼材を提供する。
【解決手段】亜鉛めっきを施した鋼材上に、一層以上の塗装皮膜を少なくとも有する防錆防食被覆鋼材であって、前記亜鉛めっき層の一部が、η−亜鉛層を消失してなることを特徴とする防錆防食被覆鋼材である。これにより、コンクリートあるいは地面に一部埋め込まれて使用される被覆鋼材に優れた防食構造を形成することができるので、この防錆防食被覆鋼材を使用した構造物の寿命の延長が可能となる。
【選択図】なし

Description

本発明は、防錆防食被覆鋼材に関し、特にコンクリートあるいは地面に一部を埋め込まれて使用される防錆防食被覆鋼材に関するものである。
鋼材を防食する技術としては、亜鉛系のめっきが広く採用される。さらに防食能を高くするには、亜鉛めっきの上に有機樹脂塗装をすることが多い。しかし、亜鉛めっき上に直接塗装をしても、めっきと有機樹脂の密着性は必ずしも良くないこともまた周知のことであり、このため、めっき上に、リン酸塩処理、クロメート処理等の所謂化成処理をするのが一般的である。
鉄鋼構造物は、コンクリートや地面に埋め込む形で屋外使用されることも多い。しかし、このような使い方をした鉄鋼構造物は、埋設された部分の直上、即ち、地際部で激しい腐食を起こす事例があることが知られている。
この「地際腐食」の原因は、完全に解明されてはいないが、以下の要素が挙げられている。
1) コンクリート中の鉄鋼材料は、コンクリートのアルカリ性物質により不動態化している。この不動態化した部分と地表に出ている部分の鉄が局部電池を形成すること。
2) 地際部は、鉄鋼材料に付着した結露等が落ちてくるため湿り易い構造であり、かつ、この結露水には、鉄鋼材料に付着した塩分等が凝集していること。
また、通説として、動物、特に犬の排泄物が影響しているとも言われている。このような腐食を防止する方法として、埋設部界面の結露水がアルカリ性を示すことに着目し、埋設部界面の上下に防食層を設ける方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この方法は、構造物の地際部以外はめっきのままで使用されることを前提にしている。
特開2002−371372号公報 第47回材料と環境討論会予稿集 p195 (2000) 三重県科学技術振興センター講義用技術部研究報告 no.26 (2002)
しかし、現在の鉄鋼構造物は、美観及び耐食性の両面から亜鉛系めっき後にリン酸塩化成処理を行い、さらに塗装して使用されるのが一般的である。一般的な塗装方法は、めっき上に直接バインダー層を塗装するものであり、特許文献1の技術を通常の塗装前提の鋼構造物に適用する場合には、地際部分のみ全く別の塗装処理を行うことになるため、生産性を著しく低下させるという問題点があった。
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、コンクリートあるいは地面に一部を埋め込まれて使用される場合に優れた防食特性を示す防錆防食被覆鋼材を提供することを目的とする。
本発明では、地際部の腐食を促進する要因として、犬のマーキングに着目した。犬の排泄物が腐葉土等によって分解された場合の反応を調べた結果、まずアンモニアが生成すること、さらにこれが酸化されて硝酸が生成することが分かった。そして、一般的な防食構造である、亜鉛めっき−リン酸塩化成処理−塗装と言う皮膜構成の中では、亜鉛めっき層がアンモニアに最も弱いことが分かった。屋外の鋼構造物では、耐食性を高めるために、亜鉛めっき層を付与すること、特にどぶ漬けによる溶融亜鉛めっきが行われるのが一般的である。溶融亜鉛めっきの場合、亜鉛めっき層は、鋼材素地面から順に、Γ層、δ層、ζ層という厚い鉄−亜鉛合金層を生成し、さらにその上に純亜鉛層であるη層がある。これらの層構造の中で、η層が、最もアンモニアとの反応性が高く、溶解し易いことが分かった。その他の合金層は、亜鉛が選択的に溶解するため、長期的には耐食性が失われていくが、皮膜が完全に消失してしまうわけではない。しかし、通常のどぶ漬け亜鉛めっきでは、数μm〜数十μm厚のη層があるため、この層が溶解すると、塗装皮膜そのものは健全でも剥離してしまい、防食のためのバリアー層としての機能が失われてしまう。このため、η層がアンモニアによって、溶解・消失した時点で、アンモニアに限らず、その他の水・塩分等によるめっき層の腐蝕が急速に進むことになる。
そこで、発明者は、合金層がアンモニアに対して比較的強い性質を有することに着目し、η層を持たない、いわゆる「焼け」が生じた亜鉛めっき鋼材に、化成処理及び塗装をしてアンモニアを有する環境での耐食性を調査した。その結果、予想通り、通常のη層を有する亜鉛めっき鋼材に比べて、遥かに高い耐食性・耐アンモニア性が示された。試験材を調査した結果、合金層中の亜鉛は、一部、選択的に溶解してはいたが、めっき層の形状は破壊されてなく、このため、塗装皮膜は剥離してしまうことなく残存し、バリアー層として防食に機能し続けることができ、この結果、高い耐食性を示すことができることが分かった。
これらの結果等から、どぶ漬け等の亜鉛めっきした鋼材を部分的に再加熱して、η層を消失させ、耐地際防食性を高める防錆防食被覆鋼材を発明したものである。
即ち、本発明は、以下のとおりである。
(1) 亜鉛めっきを施した鋼材上に、一層以上の塗装皮膜を少なくとも有する防錆防食被覆鋼材であって、前記亜鉛めっき層の一部に、η−亜鉛層を消失させた部分を有することを特徴とする、防錆防食被覆鋼材。
(2) 前記亜鉛めっきを施した鋼材は、前記亜鉛めっき層上にさらに化成処理が施されていることを特徴とする、(1)記載の防錆防食被覆鋼材。
(3) 前記化成処理が、リン酸塩化成処理、クロメート化成処理又はクロメートフリー化成処理の1種以上であることを特徴とする、(2)記載の防錆防食被覆鋼材。
(4) 前記亜鉛めっきが、どぶ漬け溶融亜鉛めっきであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の防錆防食被覆鋼材。
本発明により、コンクリートあるいは地面に一部埋め込まれて使用される被覆鋼材に優れた防食構造を形成することができるので、この防錆防食被覆鋼材を使用した構造物の寿命の延長が可能となる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
先ず、本発明で用いる鋼材は、材質としてはSS400に代表される構造用鋼等、あるいは、その他の低炭素鋼であり、品種としては、H形鋼、I形鋼、鋼管、鋼矢板、あるいは、例えば、アンカーを固定するための土木建築金物等であり、使用法としてはコンクリート又は地面に埋め込まれて使用される可能性がある鉄鋼材料である。また、地面に接触して設置される鋼材であって、結果的に土等に覆われる可能性がある鉄鋼材料である。
本発明の防錆防食被覆鋼材は、めっき−有機塗装の二層、あるいは、めっき−化成処理−有機塗装の三層からなるため、この各層について以下説明する。
めっき層は、鉄鋼鋼材に対して犠牲防食作用を有する、亜鉛めっきである。特に、大型鉄鋼構造部材に後めっきをするどぶ漬け溶融亜鉛めっきに有用である。
近年着目されている亜鉛−アルミニウム等の合金めっきの場合、最表層は単純なη相でなく、亜鉛−アルミニウム等の混合組織であり、η相を亜鉛−アルミニウム層に置き換えて考える必要がある。一般的に、亜鉛−アルミニウム等の合金めっきは合金化反応速度が小さいため、めっき層全体を合金化させて最表層の亜鉛−アルミニウム層を消失させることが困難であり、本発明に用いることは困難である。ただし、最初に純亜鉛めっきを行い、続いて亜鉛−アルミニウム合金めっきを行う、いわゆる2段めっきの場合は、最初のめっきで厚い合金層が生成し、その後の合金化速度も特に遅くはないため、本発明に適用は可能である。安定して部分的に亜鉛−アルミニウム層を消失させ、表面を亜鉛−鉄合金層にすることができれば、亜鉛−アルミニウム合金めっきの適用も可能である。
電気めっきとしては、純亜鉛めっきの場合は、本発明は問題なく適用できる。電気めっきの場合、一般にめっき厚が小さいため、本発明を適用する等して、耐食性を高める工夫をすることはむしろ望ましいことである。
純亜鉛めっき以外に、亜鉛−鉄合金めっき、亜鉛−ニッケル合金めっきが、製造技術しては確立されている。しかし、全体を亜鉛−鉄合金めっきすることは、本発明においては無意味であることはいうまでもない。亜鉛−ニッケル合金めっきについては、本発明に適用することは可能である。この場合、η−亜鉛層に相当するのは、亜鉛−ニッケル合金めっき層で主体となるγ相である。しかし、γ相は融点が880℃と高いため、合金化させて消失させることはプロセス的には困難が伴う。また、亜鉛−ニッケル合金めっきを加熱合金化させた場合の性能については十分な検討がなされていないため、その腐食挙動は実績もなく不明確であり、現時点では使用を推奨することはできない。
亜鉛めっきの付着量とてしては、亜鉛の量として、40〜1500g/mとすることが好ましい。耐食性の観点からは、亜鉛の絶対量が大きいほど望ましいことはいうまでもない。しかし、電気めっきで100g/mを超えるようなめっきをするのは困難であり、その後の加熱−合金化を行うにもコスト的に問題がある。そのため、電気めっきの場合には、最小で40g/mあればよい。ただし、屋外使用にあたって、この亜鉛量は、特に裸仕様においては不足しており、化成処理、塗装という防錆処理を行うことが前提である。どぶ漬け亜鉛めっきにおいては、溶融亜鉛浴への浸漬時間を長くすれば、亜鉛の付着量を大きくすることは可能である。しかし、本発明品の場合、耐食性の点で最も問題が生じる可能性が高い地際部での耐食性が大幅に改善されているため、いたずらに亜鉛量を大きくすることは無意味であり、耐食性改善効果も飽和するため、最大で1500g/mとした。どぶ漬け亜鉛めっきの場合、現実的には、400〜1000g/mの亜鉛があれば、十分である。なお、この付着量を超過してはいけないということではなく、あくまで目安にすぎない。どぶ漬け亜鉛めっきの特性上、亜鉛付着量を厳密に制御することは困難なためである。
以下、合金化させてη亜鉛層を消失させる範囲について説明する。なお、通常は地際と言えば、ちょうど地表に出ている数cmの狭い領域を指すものと考えられる。埋め込まれた鋼管柱等を調査したところ、確かに地表に出ている5〜10cm程度の部分の腐蝕が最も激しかった。しかし、その上の、地上部20〜30cmくらいの高さまで、接土部からの錆が連続している例もあった。また、地中部の腐食については調査ができなかったが、例えコンクリートで埋め込まれた場合でも、鋼材とコンクリート間に僅かに隙間が生じる可能性は高いと思われる。この場合、接地部以下数10cmは、塩分濃度、アンモニア濃度が高い「地際条件」に曝されていると考えられる。このため、本明細書では、接地部の上下±30cmを地際と表現することとする。
地際部に限って部分的に合金化させるのは、外観上の理由である。一般に、埋め込まれた鋼管柱の接地部付近は、枯葉に覆われたり、泥によって汚れたりしているため、外観はさほどは問題視されない。しかし、地上高で数10cm以上〜2m以下の部分は、最も人目につく部位であり、また疵も入り易い。疵がついた場合、純亜鉛めっき(η−亜鉛層)であれば、まず白錆が発生するが、白錆は雨水に僅かに溶解するため現実には目立つほど堆積しないことが多い。このため、外観がすぐに悪化することはない。しかし、めっきの最表層が合金化している場合は、赤錆が発生し易く、流れ錆として目立つため、外観がすぐに非常に悪くなる。このため、η−亜鉛層を消失させる範囲が広過ぎた場合には、外観上問題が生じ易くなることに注意する必要がある。このような、赤錆発生による外観の低下は、地際部のみに塗装して、地上部をめっきと化成処理でのみ使用する場合には、特に問題になることは言うまでもない。理想的には、埋め込み部位の上下30cm以下、合計60cm以下の部分のみのη−亜鉛層を消失させることが望ましい。ただし、実際には、狭い範囲のみ反応制御することが困難な場合もあるため、この場合には、地面に埋没してしまう部位を中心に加熱して、地上部のη−亜鉛層の消失を30cm以下に留めて、代わりに地下部のη−亜鉛層消失部位を大きくする等して、地上部のη層の消失が過大にならないようにすることが望ましい。
めっき厚さは、亜鉛めっきは犠牲防食によって鋼材を保護するものであるため、厚い方が望ましい。しかし、通常の鋼材のめっきに比べて特別に厚くする理由はない。また、鉄−亜鉛の合金層には、ζ層、δ層、Γ層、Γ層等の種類がある。耐アンモニア性の立場からは、合金層中の鉄濃度が高い方が有利である。しかし、厚い合金層を生成させる場合、生成する合金層はζ層が殆どであり、η層を消失させる範囲を広げないで合金層中の鉄濃度を大きくするように加熱することは困難であるため、合金層の組成に制約をつけることは現実的ではない。
めっきに当たっては、耐食性を高めるために、通常の屋外使用の鋼材と同様に、厚めっきとする。どぶ漬けめっきの場合は、一般のどぶ漬けめっきと同様に、厚い合金層を生成させるように、浸漬時間を長くする。また、本発明では、後加熱処理によって合金化反応を進めてη層を消失させるものであり、η層は薄い方が望ましい。このため、浸漬温度を高くする、めっき後にガスによって溶融亜鉛を除去する、めっき浴からの引き上げ速度を小さくする等の工夫により、η層を薄く制御しておくことが望ましい。さらに、このようにしてめっきされた鋼構造物の使用に当たって、地際に相当する部分のみめっき後に再加熱することで、合金化反応を進行させる。加熱方法は、バーナー加熱、誘導加熱等によって行う。より効率的に行うには、めっき直後の、鋼材に余熱がある段階で、加熱すればよい。既に溶融めっきの段階でη層が薄く制御されていれば、合金化反応は速やかに進む。実験によれば、肉厚5mm、外径100mmの鋼管の場合、バーナーで、15秒〜60秒加熱することにより、めっき層の部分合金化が完了した。この反応が進行すると、溶融亜鉛の金属光沢が消失するため、反応の終点は容易に判断できる。η−亜鉛層の消失範囲を大きくしないようにするためには、再加熱により溶解してη層が消失し、金属光沢がなくなった時点で速やかに加熱処理を終えることが望ましい。
次に、化成処理について述べる。亜鉛めっきに塗装の前処理として通常行われるリン酸亜鉛化成皮膜は、アンモニアとの反応性がある。これは、リン酸塩結晶中の亜鉛イオンが、亜鉛−アンモニア錯体を生成して溶解するためと考えられる。このため、耐地際腐食性の観点のみからは、化成処理はむしろ無い方が望ましい。しかし、地際部以外、耐アンモニア性以外については、明らかに化成処理によって耐食性は向上する。このため、化成処理を行うか否かは、コストと、鋼材の耐食性について地際防食とそれ以外の一般的な防食のいずれを優先するかによって異なる。しかし、一般的に、塗装皮膜の総合的な耐食性という点では、化成処理は必要であるため、化成処理は行われた方が望ましい。また、地上部をめっきと化成処理でのみ使用する場合には、耐食性の向上のために、クロメート又はクロメートフリー系の化成処理が必須である。リン酸塩系の化成処理は、塗装の下地としては有効であるが、単独では必ずしも防食能が高くはないからである。
なお、η層をなくすことにより、化成処理皮膜は、亜鉛イオンのみを含むホパイト結晶だけでなく、鉄イオンを含むフォスフォフィライトも生成する。鉄イオンはアンモニアと反応しないため、若干ではあるが、フォスフォフィライトはホパイトよりも耐アンモニア性が高い。この点からも、η層をなくすことは、防食被覆の耐アンモニア性の向上に寄与する。
なお、リン酸塩化成処理皮膜にはさまざまな種類があり、金属の種類・比率によって結晶の大きさ等が異なるため、化成処理皮膜全体の付着量としては、一義的に決定されるものではない。しかし、鋼材表面を均質に被覆するためには、少なくとも300mg/mは必要である。また、化成処理皮膜は、防錆油を含浸させる目的の場合等で、意図的に厚く生成させる場合もあるが、本件の場合、付着量が大きくなった場合には、結晶が粗大化して化成処理の本来の目的である塗装後の密着性が確保できなくなる。このため、最大の付着量は8000mg/m以下であることが望ましい。
クロメート又はクロメートフリー系の化成処理については、独自開発の、あるいは市販のめっき後処理用の薬剤をそのまま用いればよい。クロメートフリー系の化成処理の種類としては、タンニン酸、チタニア、シランカップリング剤、有機樹脂等のいずれかを組合せたもの等がある。市販品としては、例えば、日本パーカライジング(株)より商品名「パーレン4500」等が販売されており、この場合は付着量として金属重量で0.5〜2.0g/mと規定されている。
塗装皮膜としては、有機樹脂の種類はエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が適用でき、特に樹脂の種類を問わず、屋外での耐候性がある塗料であればよい。また、顔料も、必要に応じて用いることができる。また、必要に応じて、2層以上に塗装することは差し支えない。
塗膜の厚さも、同様に塗装性能の面からは極端な厚膜塗装は望ましくないため、50μm以上、3mm以下が望ましい。複数の種類の有機塗装を行う場合も、塗装皮膜全体の厚さとしては、特に規定するものではないが、やはり50μm以上、3mm以下が望ましい。3mm超の厚い皮膜の場合には、本発明の効果に関係なく、有機塗装皮膜全体の寿命が長くなるためである。
塗装方法としては、スプレー塗装、流動槽浸漬、粉体塗装等の一般的な方法で差し支えない。しかし、η層を消失した部分にのみ塗装する場合には、当然ながらスプレー塗装等の方法に限定される。
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
板厚4.5mm、幅75mm、長さ300mmのSS400鋼に、表1に示す亜鉛めっき・化成処理・塗装を行った。なお、亜鉛めっきは溶融めっきによって行い、めっき付着量は亜鉛換算で530g/m〜600g/mである。比較例については、半数はそのまま、また、残りの半数は電気炉を用いて加熱処理し全面を合金化させた後、全面に浸漬型リン酸塩化成処理・スプレー塗装を行った。なお、合金化させない試験片については、めっき組成を分析した結果、平均して10〜20μmの純亜鉛層(η層)が存在していた。また、本発明例については、比較例と同一条件でめっきした直後に、小型のトーチランプで約30秒間加熱し、長さ300mmの試験片の、端部より約150mmの部分まで、面積としては約半分を合金化させ、η−亜鉛層を消失させた。これらの試験片についても、比較例と同等の条件で、全面に化成処理・塗装を行った。
この試験片について、短辺側の中央部にカッターナイフで鋼材の端部を除く短辺から短辺まで、素地に達する約280mm長の直線状の疵を入れた後、以下のように、3種類の試験を行った。
(1) 試験片をコンクリートに垂直に埋め込んで耐食性試験を行った。コンクリート中に埋め込んだ長さは約80mmであり、残りの約220mmが露出した状態である。疵は約70mm長が埋め込まれ、210mm長が露出した状態とした。本発明例については、合金化させてη層を消失させた部分を下にして、η層消失部のほぼ半分がコンクリートに没するように埋め込んだ。この試験片をコンクリートごと屋外に設置し、一日一回、約300mLの0.5質量%NaCl−0.1質量%アンモニア水を、地際部分に散布した。この試験を7月〜9月の3ヶ月間行った後、埋め込み部の直上部約50mmの範囲を観察した。
(2) (1)と同じ試験を、アンモニアを含まない0.1質量%NaCl水を用いて行った。散布は、試験片の全面に、一日一回、約100mL散布とした。試験期間は7月〜9月の3ヶ月間であり、試験片の全面を観察した。
(3) この試験片を用いて、端部より約80mmを、25g/Lのアンモニア水に25℃で2週間浸漬した。本発明例については、合金化させてη層を消失させた部分を下にして、η層消失部のほぼ半分がアンモニア水に浸漬するようにした。試験終了後、塗装を剥離し、疵部からの剥離幅を測定して耐アンモニア性を調査した。
Figure 2008280571
試験結果から、耐アンモニア性については、めっきのη−亜鉛層を消失させた試験片では塗膜の膨れはなく、腐蝕が疵部に留まっていること、アンモニア含有水に浸漬した場合の塗膜剥離幅が小さいことから、めっきのη−亜鉛層を消失させた方が地際での耐食性(耐アンモニア性)に優れていることは明らかである。また、地際でない地上部の外観については、白錆の発生のみで赤錆が出ていないことから、η−亜鉛層が存在している方が良好である。本試験は、促進試験であるため白錆が目立つが、実際の使用状況では白錆は雨水に溶解するため、目立つほどには堆積しないためである。これに対し、赤錆は、流れ錆となって外観を悪くするため好ましくない。
以上の結果から、本発明例の、地際部だけη−亜鉛層を消失させためっき鋼材が、地際部の耐食性と地上部の外観の点から優れていることが明らかである。
(実施例2)
実施例1と同じ条件で、全面にη層が残存した試験片、半分のみη層が残存した試験片、η層が完全に消失した試験片を作製した。これらの試験片に、通常のクロメート処理又はクロメートフリー化成処理を行った後、試験片の約半分の面積を塗装し、実施例1と同じ条件で評価試験を行った。本発明例の、η層が半分残った試験片については、η層が消失した部分についてのみ塗装した。クロメート処理としては、日本パーカライジング(株)製の「ジンクロムR1415A」を用い、クロム量として30〜40mg/m付着させた。クロメートフリー処理としては、日本パーカライジング(株)製の「パーレン4500」を用い、皮膜量として0.9〜1.2g/m付着させた。これらの試験片について、実施例1の(1)、(2)と同じ評価試験を行った。
以上の試験条件及び結果をまとめて表2に示す。
Figure 2008280571
アンモニア水散布試験については、実施例1と同等の結果である。地上部の耐食性試験結果では、η層が残存している方が白錆発錆に留まっているのに対し、η層が完全に消失している比較例では、全面に白錆と赤錆が発生している。塗装が無い裸での耐食性評価だけに、外観は、η層が表面に残存している方が良好であることは明らかである。
この結果からも、本発明品の、地際部だけη−亜鉛層を消失させためっき鋼材が、地際部の耐食性と地上部の外観の点から優れていることが分かる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (4)

  1. 亜鉛めっきを施した鋼材上に、一層以上の塗装皮膜を少なくとも有する防錆防食被覆鋼材であって、
    前記亜鉛めっき層の一部に、η−亜鉛層を消失させた部分を有することを特徴とする、防錆防食被覆鋼材。
  2. 前記亜鉛めっきを施した鋼材は、前記亜鉛めっき層上にさらに化成処理が施されていることを特徴とする、請求項1記載の防錆防食被覆鋼材。
  3. 前記化成処理が、リン酸塩化成処理、クロメート化成処理又はクロメートフリー化成処理の1種以上であることを特徴とする、請求項2記載の防錆防食被覆鋼材。
  4. 前記亜鉛めっきが、どぶ漬け溶融亜鉛めっきであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の防錆防食被覆鋼材。
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